説明

レベル計測装置

【課題】装置の状態を示す装置情報を外部装置に送信しなくても、装置に異常が発生したことを外部装置に伝えることができるレベル計測装置を提供すること。
【解決手段】本発明のレベル計測装置は、レベル情報検出部と、制御部と、データ送信部と、を備えている。レベル情報検出部は、容器内に収納された測定物のレベル値を得るためのレベル情報を検出する。制御部は、レベル情報から測定物のレベル値を算出する。そして、制御部は、レベル情報検出部にエラーが発生したか否かを検知し、エラーが発生していなければ、算出したレベル値を表すレベルデータを生成する。一方、レベル情報検出部にエラーが発生していれば、計測されることのないレベル値を表す異常用レベルデータを生成する。データ送信部は、制御部により生成されたレベルデータ及び異常用レベルデータを外部装置に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液面や境界面などのレベル(高さ)を計測するレベル計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液面の高さや液境界面の高さを計測するレベル計測装置としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。この特許文献1に記載されたレベル計測装置は、ワイヤドラムと、このワイヤドラムに巻回された測定ワイヤと、測定ワイヤの先端に設けられたディスプレーサとを有している。
【0003】
ディスプレーサは、計測対象である液体に部分的に浸されており、その液体によって浮力を受ける。ワイヤドラムは、ディスプレーサに作用する浮力の変化に応じて回転制御され、浮力が常に一定の値となるようにディスプレーサを上昇或いは下降させる。そして、ワイヤドラムの回転量に基づいて液面(液境界面)の高さが算出される。
【特許文献1】特開昭63−16226号公報
【0004】
一般的なレベル計測装置は、計測した液面の高さ(レベル値)をレベルデータとしてパーソナルコンピュータなどの外部装置に送信する。このレベルデータの送信は、例えば、デジタル信号やアナログ信号を用いて行われる。レベルデータを受信する外部装置は、通常、計測対象である液体が収納されたタンクから離れた場所に設置されており、複数のレベル計測装置から送信される各レベルデータを集中管理する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的なレベル計測装置では、レベルデータの他に、装置の状態を示すステータスデータ(装置情報)を外部装置に送信していた。そして、外部装置は、受信したステータスデータに基づいてレベル計測装置に不具合(エラー)が生じているか否かを判定していた。そのため、外部装置には、レベルデータを読み取るソフトウェアとは別に、ステータスデータを読み取るためのソフトウェアが必要になるという問題があった。
【0006】
また、外部装置がステータスデータを読み取ってレベル計測装置の不具合を発見するため、その不具合を発見するまでに時間がかかるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、上述の問題点を考慮し、装置の状態を示す装置情報を外部装置に送信しなくても、装置に異常が発生したことを外部装置に伝えることができるレベル計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のレベル計測装置は、容器内に収納された測定物のレベル値を得るためのレベル情報を検出するレベル情報検出部と、レベル情報からレベル値を算出すると共に、レベル情報検出部にエラーが発生したか否かを検知し、エラーが発生していなければ、レベル値を表すレベルデータを生成し、エラーが発生していれば、計測されることのないレベル値を表す異常用レベルデータを生成する制御部と、制御部により生成されたレベルデータ及び異常用レベルデータを外部装置に送信するデータ送信部と、を備えたことを最も主要な特徴とする。
【0009】
本発明のレベル計測装置では、レベル情報検出部によって検出されたレベル情報から測定物のレベル値を算出する。このとき、レベル情報検出部にエラーが発生していなければ、算出したレベル値を表すレベルデータを生成し、外部装置に送信する。外部装置は、受信したレベルデータを所定のソフトウェアで読み取ることにより、レベル計測装置で測定された測定物のレベル値を得ることができる。
【0010】
一方、レベル情報検出部にエラーが発生していれば、計測されることのないレベル値を表す異常用レベルデータを生成し、外部装置に送信する。外部装置は、受信した異常用レベルデータを所定のソフトウェアで読み取ることにより、レベル計測装置にエラー(異常)が発生したと判断することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のレベル計測装置によれば、装置の状態を示す装置情報を外部装置に送信しなくても、装置にエラーが発生したことを外部装置に伝えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のレベル計測装置を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明するが、本発明は以下の形態に限定されるものではない。
【0013】
[装置の構成例]
図1は、本発明のレベル計測装置の第1の実施の形態の構成を示す構成図である。このレベル計測装置1は、測定物である液体にディスプレーサを部分的に浸し、ディスプレーサが受ける浮力を一定に保つことで液面或いは液境界面の高さ(レベル)を計測する、いわゆるディスプレーサ式のレベル計測装置である。
【0014】
レベル計測装置1は、レベル情報検出部2と、制御部の一具体例を示すCPU(Central Processing Unit)3と、データ送信部4を備えている。
レベル情報検出部2は、容器100内に収納された液体101のレベル値を得るためのレベル情報を検出する。CPU3は、レベル情報からレベル値を算出すると共に、液体101のレベル値を表すレベルデータや、容器100内に収納された液体101から計測されることのないレベル値を表す異常用レベルデータを生成する。データ送信部4は、CPU3により生成されたレベルデータ及び異常用レベルデータをパーソナルコンピュータなどの外部装置に送信する。
【0015】
レベル情報検出部2は、液体101に部分的に浸されるディスプレーサ5と、このディスプレーサ5を吊り下げる測定ワイヤ6と、測定ワイヤ6が巻回されるワイヤドラム7と、ワイヤドラム7を回転させるドラム回転機構8と、測定ワイヤ6に作用する張力の変化を検出するホール素子9と、レベル情報としてワイヤドラム7の回転量を検出するエンコーダ10とを有している。
【0016】
レベル情報検出部2のディスプレーサ5は、例えば、ステンレス鋼によって略円柱状に形成されている。このディスプレーサ5の重量をWとし、液体101に部分的に浸されたディスプレーサ5が液体101から受ける浮力をCとすると、ディスプレーサ5の見かけ重量Wは、
=W−C
となる。
【0017】
また、ディスプレーサ5の底面から液面101aまでの垂直距離(喫水)が所定の値であるとき、測定ワイヤ6に作用する張力がFであったとする。ディスプレーサ5の喫水が所定の値よりも小さくなると、ディスプレーサ5が液体101から受ける浮力Cが小さくなり、ディスプレーサ5の見かけ重量Wが大きくなる。そのため、測定ワイヤ6に作用する張力Fは、F+ΔFに変化する。
【0018】
一方、ディスプレーサ5の喫水が所定の値よりも大きくなると、ディスプレーサ5が液体101から受ける浮力Cが大きくなり、ディスプレーサ5の見かけ重量Wが小さくなる。そのため、測定ワイヤ6に作用する張力Fは、F−ΔFに変化する。
【0019】
本実施の形態のレベル計測装置1では、測定ワイヤ6に作用する張力が一定(張力F)となるようにディスプレーサ5を上昇或いは下降させる。言い換えれば、ディスプレーサ5に作用する浮力Cが一定となるようにディスプレーサ5を上昇或いは下降させる。これにより、ディスプレーサ5は、液面101aの上昇及び下降に追従して移動することになる。
【0020】
ワイヤドラム7は、一方が閉じられた有底の円筒体からなっている。このワイヤドラム7の外周面には、螺旋状に形成された溝部が設けられており、この溝部に沿って測定ワイヤ6が巻回されている。測定ワイヤ6は、途中でワイヤドラム7の溝部を外れて垂直に垂れ下がり、ワイヤドラム7の回転量に応じて巻き取られたり繰り出されたりする。測定ワイヤ6が巻き取られると、ディスプレーサ5が上昇し、測定ワイヤ6が繰り出されると、ディスプレーサ5が下降する。
【0021】
ドラム回転機構8は、駆動軸11と、この駆動軸11とワイヤドラム7を結合するカップリングマグネット12と、動力発生源となるモータ13と、このモータ13の回転力を駆動軸11に伝達するギア列14と、を備えている。モータ13は、後述するモータ駆動回路22に電気的に接続されている。
【0022】
ドラム回転機構8のカップリングマグネット12は、ドラム側マグネット12Aと、このドラム側マグネット12Aの内側に配置される軸側マグネット12Bからなっている。ドラム側マグネット12Aは、円筒体からなり、一方の端面がワイヤドラム7に固定されている。このドラム側マグネット12Aには、N極とS極が周方向に交互に並ぶように着磁されている(図2Aを参照)。
【0023】
軸側マグネット12Bは、一方が閉じられた有底の円筒体からなり、底部の中心に駆動軸11が固定されている。この軸側マグネット12Bは、ドラム側マグネット12Aの直径よりも小さい直径に設定されている。これにより、軸側マグネット12Bの外周面は、ドラム側マグネット12Aの内周面に所定の間隔をあけて対向されている。
【0024】
軸側マグネット12Bとドラム側マグネット12Aとの間の間隙には、図示しない仕切り壁が設けられている。この仕切り壁により、レベル計測装置1には、ワイヤドラム7及びドラム側マグネット12Aなどが配置されるドラム室と、モータ13、駆動軸11、軸側マグネット12B、CPU3が実装される基板などが配置される電気室が形成されている。電気室には、この電気室内の温度を検出する温度センサ(図示せず)が取り付けられている。温度センサは、検出した電気室内の温度情報をCPU3に出力する。
【0025】
軸側マグネット12Bには、N極とS極が周方向に交互に並ぶように着磁されている(図2Aを参照)。軸側マグネット12BのN極は、仕切り壁(図示せず)を挟んでドラム側マグネット12AのS極と対向しており、軸側マグネット12BのS極は、仕切り壁を挟んでドラム側マグネット12AのN極と対向している。そのため、ドラム側マグネット12Aと軸側マグネット12Bは、互いに引き合って一体的に動作(回転)する。つまり、モータ13の駆動により駆動軸11及び軸側マグネット12Bが回転されると、軸側マグネット12Bと一体的にドラム側マグネット12A及びワイヤドラム7が回転する。
【0026】
軸側マグネット12Bの外周面には、張力検知手段の一具体例を示すホール素子9が固定されている。このホール素子9は、軸側マグネット12Bの隣り合う磁極の境界部に配置されている。
【0027】
ここで、ホール素子9を用いて行われる測定ワイヤ6に作用する張力の変化の検知について図2A〜図2Cを参照して説明する。
【0028】
図2Aは、測定ワイヤ6に作用する張力Fに変化がないときのカップリングマグネット12の状態を示す断面図である。図2Bは、測定ワイヤ6に作用する張力がF+ΔFに変化したときのカップリングマグネット12の状態を示す断面図である。図2Cは、測定ワイヤ6に作用する張力がF−ΔFに変化したときのカップリングマグネット12の状態を示す断面図である。
【0029】
ホール素子9は、入力端子と出力端子(図示せず)を有している。ホール素子9の入力端子に制御電流Iを流し、ホール素子9の素子面に磁界Bを加えると、出力端子からホール電圧Vが出力される。このホール電圧Vは、磁界Bと制御電流Iの積に比例する。したがって、制御電流Iが一定であれば、ホール電圧Vは磁界Bに比例する。
【0030】
そこで、図2Aに示すように、張力Fに変化がない状態(以下、「平衡状態」という)のときに出力されるホール電圧Vを0ボルトに調整する。平衡状態では、軸側マグネット12BのN極がドラム側マグネット12AのS極と対向し、軸側マグネット12BのS極がドラム側マグネット12AのN極と対向しており、両マグネット12A,12Bが静止している。
【0031】
図2Bに示すように、液体101の液面101aが下降し、測定ワイヤ6に作用する張力がF+ΔFに変化すると、ワイヤドラム7に作用するトルクの大きさが変化し、ワイヤドラム7が僅かに回転変位する。つまり、張力の変化量(ΔF)に対応するトルクが矢印R1方向(測定ワイヤ6を繰り出す方向)に加わり、ワイヤドラム7及びこれに固定されたドラム側マグネット12Aが、矢印R1方向に回転変位する。
【0032】
一方、駆動軸11に固定された軸側マグネット12Bは、駆動軸11がモータ13の回転力によって回転しない限り静止している。したがって、測定ワイヤ6に作用する張力がF+ΔFに変化すると、ドラム側マグネット12Aは、軸側マグネット12Bに対してα1で示すように僅かにずれる。
【0033】
ドラム側マグネット12Aがα1で示すようにずれると、ホール素子9の素子面に作用する磁界Bが変化する。本例では、ドラム側マグネット12Aが矢印R1方向にずれた場合に、ホール電圧Vが正電圧となる。つまり、本例では、ホール電圧Vが正電圧であると、張力の変化量(ΔF)が張力Fに付加されたと判断し、その絶対値から張力の変化量(ΔF)の大きさを検知する。
【0034】
図2Cに示すように、液体101の液面101aが上昇し、測定ワイヤ6に作用する張力がF−ΔFに変化した場合も、ワイヤドラム7が僅かに回転変位する。つまり、張力の変化量(ΔF)に対応するトルクが矢印R2方向(測定ワイヤ6を繰り出す方向)に加わり、ワイヤドラム7及びこれに固定されたドラム側マグネット12Aが、矢印R2方向に回転変位する。したがって、ドラム側マグネット12Aは、軸側マグネット12Bに対してα2で示すように僅かにずれる。
【0035】
ドラム側マグネット12Aがα2で示すようにずれると、ホール素子9の素子面に作用する磁界Bが変化し、ホール素子9から出力されるホール電圧Vが負電圧となる。本例では、ホール電圧Vが負電圧であると、張力の変化量(ΔF)が張力Fから減少したと判断し、その絶対値から張力の変化量(ΔF)の大きさを検知する。
【0036】
図1に示すように、レベル情報検出部2には、駆動軸11と一緒に回転するホール素子9とCPU3及び電源回路(図示せず)との間で電気信号や電源を伝送するためのスリップリング16が設けられている。このスリップリング16は、電極リングを備えた回転部と、この回転部に対向して配置され、接触ブラシを備えた固定部とを有し、電極リングと接触ブラシとの接触により回転部と固定部との間の通電が行われるようになっている。
【0037】
スリップリング16の回転部は、駆動軸11に固定されている。この回転部の電極リングは、駆動軸11の内部を通るリード線(図示せず)を介してホール素子9の入力端子及び出力端子と接続されている。一方、スリップリング16の固定部は、上述した電気室に取り付けられている。この固定部の接触ブラシは、リード線(図示せず)を介して電源回路及びCPU3に接続されている。
【0038】
エンコーダ10は、駆動軸11の軸側マグネット12Bが固定される側と反対の端部に配置されている。このエンコーダ10は、リード線(図示せず)によってCPU3と接続されている。エンコーダ10は、駆動軸11、つまり、ワイヤドラム7の回転量を検出し、その検出結果をディスプレーサ位置データとしてCPU3に出力する。このディスプレーサ位置データは、レベル情報の一具体例を示すものである。
【0039】
CPU3は、レベル計測装置1の動作を制御する制御回路21の一部を構成する。この制御回路21は、上述したCPU3及びデータ送信部4と、モータ駆動回路22と、記憶部23とを有している。
【0040】
CPU3には、モータ駆動回路22と、記憶部23と、データ送信部4と、スリップリング16と、エンコーダ10が電気的に接続されている。このCPU3は、スリップリング16を介して供給されるホール素子9の出力(ホール電圧V)に基づいて制御信号を生成し、モータ駆動回路22に出力する。また、CPU3は、エンコーダ10から供給されるディスプレーサ位置データに基づいて液体101のレベル値を算出する。さらに、CPU3は、エラーの発生を検知する診断機能を有しており、エラーが発生していなければレベルデータを生成し、エラーが発生していれば異常用レベルデータを生成する。
【0041】
モータ駆動回路22は、CPU3から出力される制御信号を受けて、モータ13の駆動を制御する。記憶部23には、CPU3が実行するプログラム(例えば、図3を参照)や、このプログラムを実行するときに参照するデータなどが記憶されている。データ送信部4は、CPU3から出力されたレベルデータ及び異常用レベルデータをパーソナルコンピュータなどの外部装置に送信する。
【0042】
[レベル値の計測]
次に、レベル計測装置1によって行われるレベル値の計測について図1及び図2を参照して説明する。
【0043】
容器100に収納された液体101の液面101aの位置が変化すると、測定ワイヤ6に作用する張力が変化し、ワイヤドラム7が僅かに回転変位する。これにより、ワイヤドラム7に固定されたドラム側マグネット12Aが、軸側マグネット12Bに対してワイヤドラム7の回転方向にずれる。
【0044】
ドラム側マグネット12Aが軸側マグネット12Bに対してずれると、軸側マグネット12Bに固定されたホール素子9の素子面に作用する磁界Bが変化する。その結果、ホール素子9から出力されるホール電圧Vが変化する。このホール電圧Vの変化量は、測定ワイヤ6に作用する張力の変化量ΔFに比例する。
【0045】
ホール素子9から出力されたホール電圧Vは、スリップリング16を介してCPU3に伝送される。CPU3は、供給されたホール電圧Vに基づいて制御信号を生成し、モータ駆動回路22に出力する。この制御信号は、測定ワイヤ6に作用する張力が、平衡状態であるとき(張力が変化する前)の張力Fとなるように、ドラム回転機構8を介してワイヤドラム7を回転させるための信号である。
【0046】
モータ駆動回路22は、入力された制御信号に基づいてモータ駆動信号を生成し、モータ13に出力する。これにより、モータ13が駆動してワイヤドラム7を回転させる。その結果、測定ワイヤ6に吊り下げられたディスプレーサ5が、液面101aの変化(上昇や下降)に追従して移動し、測定ワイヤ6に作用する張力が張力Fとなる。
【0047】
一方、エンコーダ10は、駆動軸11、つまり、ワイヤドラム7の回転量を検出し、その検出結果をディスプレーサ位置データとしてCPU3に出力する。CPU3は、エンコーダ10から供給されたディスプレーサ位置データに基づいて液面101aのレベル値を算出する。その結果、容器100に収納された液体101のレベル値が計測される。
【0048】
[レベルデータ及び異常用レベルデータの生成]
次に、CPU3によって行われるレベルデータ及び異常用レベルデータの生成処理について図3を参照して説明する。
図3は、レベルデータ及び異常用レベルデータの生成処理を示すフローチャートである。
【0049】
最初に、CPU3は、エンコーダ10から供給されたディスプレーサ位置データに基づいて液体101のレベル値を算出する(ステップS1)。次に、CPU3は、自己診断処理を行う(ステップS2)。この自己診断処理において、CPU3は、装置の内部(電気室)の温度、電源電圧の値、ホール電圧Vの値、モータ駆動パルス値、エンコーダパルス値などを取得し、記憶部23に一時的に格納する。
【0050】
次に、CPU3は、レベル情報検出部2にエラーが生じているか否かを判別する(ステップS3)。CPU3は、ステップS2の処理で記憶部23に格納された各データをチェックし、すべてのデータが正常な値であればレベル情報検出部2にエラーが生じていないと判別する。一方、CPU3は、格納された複数のデータのなかに正常な値ではないものが含まれていると、レベル情報検出部2にエラーが生じていると判別する。
【0051】
データが正常な値ではない場合としては、例えば、装置の内部(電気室)の温度が所定の値を超えている場合、電源電圧が所定の値よりも低い場合、ホール電圧Vが所定の範囲を超えた場合などを挙げることができる。
【0052】
判断ステップS3の処理において、レベル情報検出部2にエラーが生じていないと判別したとき、CPU3は、装置情報に正常値を設定する(ステップS4)。ここで装置情報とは、パーソナルコンピュータなどの外部装置が読み取るレベル計測装置1の状態を表す情報であり、ステータスデータの一具体例を示すものである。装置情報は、パーソナルコンピュータなどの外部装置から問い合わせがあった場合に応答される。外部装置は、装置情報を読み取ることでレベル計測装置1の状態を監視することができる。
【0053】
また、正常値とは、装置が正常であるということを示す値(フラグ)である。本例では、装置情報を8バイトのデータで表し、正常値を「00000000」としている。そして、正常値を除くいくつかの値を異常値としている。異常値は、それぞれエラーの種類を示しており、例えば、「00000001」が装置の内部(電気室)の温度が所定の値を超えたときの温度エラーを示す。
【0054】
装置情報に正常値を設定すると、CPU3は、ステップS1の処理で算出したレベル値に基づいてレベルデータを生成し(ステップS5)、ステップS10の処理に移行する。CPU3は、レベル値をアドレスとして、記憶部23に予め記録されているデータを読み出すことでレベルデータを生成する。つまり、CPU3は、ルックアップテーブル方式を用いてレベルデータを生成する。
【0055】
判断ステップS3の処理において、レベル情報検出部2にエラーが生じていると判別したとき、CPU3は、装置情報にエラーの種類に応じた異常値を設定する(ステップS6)。次に、CPU3は、レベル計測装置1が異常用レベルデータ送信運転に設定されているか否かを判別する(ステップS7)。
【0056】
本例のレベル計測装置1では、異常用レベルデータ送信運転と、異常用レベルデータ否送信運転とを選択可能に構成されている。異常用レベルデータ送信運転は、レベル計測装置1(レベル情報検出部2)にエラーが発生すると、異常用レベルデータを外部装置に送信する運転である。異常用レベルデータ否送信運転は、レベル計測装置1(レベル情報検出部2)にエラーが発生しても異常用レベルデータを外部装置に送信しない運転である。異常用レベルデータ送信運転及び異常用レベルデータ否送信運転は、レベル計測装置1に設けられた操作部(図示せず)を操作することにより設定される。
【0057】
判断ステップS7の処理において、異常用レベルデータ送信運転に設定されていないと判別したとき、CPU3は、処理をステップS5に移す。一方、異常用レベルデータ送信運転に設定されていると判別したとき、異常用レベルデータを生成する(ステップS8)。例えば、CPU3は、特定の値をアドレスとして、記憶部23に予め記録されているデータを読み出して異常用レベルデータを生成する。つまり、CPU3は、ルックアップテーブル方式を用いて異常用レベルデータを生成する。
【0058】
本例において、異常用レベルデータは、容器100内に収納された液体101から検出可能な最大のレベル値よりも大きいレベル値を表すデータとなっている。例えば、容器100に収納された液体101のレベル値として最大15000mmまで測定可能である場合に、異常用レベルデータが表すレベル値を99999mmとする。なお、アドレスとする特定の値は、異常用レベルデータが表すレベル値としてもよい。
【0059】
次に、CPU3は、処理の続行が可能であるか否を判別する(ステップS9)。CPU3は、レベル値の計測動作が可能であれば、処理の続行が可能であると判別し、レベル値の計測動作が不可能であれば、処理の続行が可能ではない(不可能である)と判別する。レベル値の計測動作が可能か否かは、エラーの種類によって判断される。例えば、モータ13の故障に係るエラーや、ホール素子9の故障に係るエラーが生じている場合は、レベル値の計測動作が不可能となり、処理の続行が可能ではないと判別する。
【0060】
なお、モータ13の故障に係るエラーは、ステップS2の自己判断処理において取得されるモータ駆動パルス値とエンコーダパルス値の差分によって検知することができる。つまり、指令パルス値であるモータ駆動パルス値とそのフィードバックであるエンコーダパルス値との間に、所定の範囲に設定された基準値を超えた誤差が生じると、CPU3は、モータ13が故障していると判断する。その場合、CPU3は、ステップS3の処理において、レベル情報検出部2にエラーが生じていると判別する。
【0061】
判断ステップS9の処理において、処理の続行が可能ではないと判別したとき、CPU3は、レベルデータ及び異常用レベルデータの生成処理を終了する。そして、CPU3は、レベル値の計測動作を停止させる。
【0062】
判断ステップS9の処理において、処理の続行が可能であると判別したとき、又は、ステップS5の処理を終えると、ステップS5の処理で生成したレベルデータ又はステップS8の処理で生成した異常用レベルデータをデータ送信部4に出力する(ステップS10)。
【0063】
データ送信部4は、入力されたレベルデータ及び異常用レベルデータをパーソナルコンピュータなどの外部装置に送信する。外部装置は、レベルデータを受信すると、そのレベルデータを所定のソフトウェアで読み取り、レベル計測装置で測定された測定物のレベル値を得る。
【0064】
外部装置は、異常用レベルデータを受信すると、その異常用レベルデータを所定のソフトウェアで読み取り、容器100内に収納された液体101から検出可能な最大のレベル値よりも大きいレベル値を得る。その結果、外部装置は、レベル計測装置1に異常(エラー)が発生したと判断することができる。
【0065】
例えば、外部装置が異常用レベルデータに応じたレベル値を、ディスプレイなどの表示手段に表示させることにより、ユーザは、レベル計測装置1に異常(エラー)が発生したことを迅速に確認することができる。レベル計測装置1に異常が発生した場合は、レベル計測装置1の修理や、レベル計測装置1の交換などの処置が施される。
【0066】
また、ステップS9の処理において、処理の続行が可能ではないと判別したとき、外部装置には、レベルデータ及び異常用レベルデータのどちらのデータも送信されない。この場合、外部装置は、レベル計測装置1にエラーが生じた、或いはレベル計測装置1と外部装置間の通信経路に問題が生じたと判断することができる。
【0067】
また、レベル計測装置1では、装置情報に異常値を設定した後に、異常用レベルデータ送信運転に設定されているか否かの判別を行う。そのため、レベル計測装置1が異常用レベルデータ送信運転に設定されていなくて、異常用レベルデータを生成しない場合であっても、装置情報に異常値が設定される。したがって、外部装置から装置情報の問い合わせがあれば、レベル計測装置1にエラーが発生していることを伝えることができる。
【0068】
本例では、異常用レベルデータが容器100内に収納された液体101から検出可能な最大のレベル値よりも大きいレベル値を表すように設定した。しかしながら、本発明に係る異常用レベルデータとしては、例えば、異常用レベルデータが表すレベル値をマイナスの値に設定してもよい。
【0069】
また、本例では、所定の異常用レベルデータを予め記憶部23に記憶させる構成とし、異常用レベルデータが表すレベル値を予め設定しておく構成としたが、異常用レベルデータが表すレベル値を任意に設定可能な構成とすることもできる。この場合、異常用レベルデータが表すレベル値の設定は、レベル計測装置1に設けられた操作部(図示せず)によって行う。
【0070】
また、本例では、ステップS9で処理の続行が可能であるか否を判別する構成としたが、本発明のレベル計測装置としては、レベル情報検出部2にエラーが発生した場合に、そのエラーの種類にかかわらずレベル値の計測動作を停止させる構成としてもよい。その場合、CPU3は、生成した異常レベルデータをデータ送信部4に出力すると共に、レベル値の計測動作を停止させる。
【0071】
[実施の形態の効果]
上述した実施の形態のレベル計測装置1では、レベル情報検出部2にエラーが発生していなければ、CPU3が計測したレベル値に基づいてレベルデータを生成し、データ送信部4からパーソナルコンピュータなどの外部装置に送信する。外部装置は、受信したレベルデータを所定のソフトウェアで読み取ることにより、容器100内に収納された液体101のレベル値を得ることができる。
【0072】
一方、レベル情報検出部2にエラーが発生していれば、CPU3が異常用レベルデータを生成し、データ送信部4から外部装置に送信する。この異常用レベルデータは、容器100内に収納された液体101から検出可能な最大のレベル値よりも大きいレベル値を表すデータである。外部装置は、受信した異常用レベルデータを所定のソフトウェアで読み取ることにより、レベル計測装置1にエラーが発生したことを検知する。
【0073】
したがって、レベル計測装置1によれば、装置の状態を示す装置情報を外部装置に送信しなくても、装置に異常が発生したことを外部装置に伝えることができる。つまり、外部装置は、レベル値を表すデータを読み取るだけでレベル計測装置1にエラーが発生したことを迅速に検知することができる。
【0074】
上述した実施の形態のレベル計測装置1は、異常用レベルデータを外部装置に送信するか否かの設定を行う操作部を備えている。そのため、異常用レベルデータを外部装置に送信するか否かをユーザが選択することができ、汎用性を向上させることができる。
【0075】
上述した実施の形態のレベル計測装置1によれば、異常用レベルデータが表すレベル値を操作部(図示せず)により任意に設定可能な構成とすることもできる。これにより、異常用レベルデータが表すレベル値を、ユーザが自由に決定することができる。
【0076】
[実施の形態の変形例]
本発明は、前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。前記実施の形態では、レベル計測装置としてディスプレーサ式のレベル計測装置を適用した例について説明したが、本発明のレベル計測装置としては、例えば、静電容量式、超音波式、レーザ式等のその他のレベル計測装置とすることもできる。
【0077】
本実施の形態では、張力検出手段としてホール素子9を適用する構成としたが、磁気抵抗素子やサーチコイル等の磁電変換器を適用してもよい。また、本発明に係る張力検出手段としては、磁電変換器に限定されるものではなく、例えば、ワイヤドラム7に作用するトルクを検出するトルク検出器を適用することもできる。
【0078】
また、本実施の形態では、1種類の異常用レベルデータを生成する構成としたが、レベル計測装置に発生するエラーの種類に応じて複数の異常用レベルデータを生成する構成とすることもできる。複数の異常用レベルデータを設けることにより、各異常用レベルデータが表すレベル値からエラーの種類を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明のレベル計測装置の第1の実施の形態の構成を示す構成図である。
【図2】本発明のレベル計測装置の第1の実施の形態に係るホール素子を用いて行われる測定ワイヤに作用する張力の変化の検知を説明する説明図である。
【図3】本発明のレベル計測装置の第1の実施の形態に係るレベルデータ及び異常用レベルデータの生成処理例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
1…レベル計測装置、 2…レベル情報検出部、 3…CPU(制御部)、 4…データ送信部、 5…ディスプレーサ、 6…測定ワイヤ、 7…ワイヤドラム、 8…ドラム回転機構、 9…ホール素子(張力検出手段)、 10…エンコーダ、 11…駆動軸、 12…カップリングマグネット、 12A…ドラム側マグネット、 12B…軸側マグネット、 13…モータ、 16…スリップリング、 21…制御回路、 22…モータ駆動回路、 23…記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に収納された測定物のレベル値を得るためのレベル情報を検出するレベル情報検出部と、
前記レベル情報から前記レベル値を算出すると共に、前記レベル情報検出部にエラーが発生したか否かを検知し、エラーが発生していなければ、前記レベル値を表すレベルデータを生成し、エラーが発生していれば、計測されることのないレベル値を表す異常用レベルデータを生成する制御部と、
前記制御部により生成された前記レベルデータ及び前記異常用レベルデータを外部装置に送信するデータ送信部と、を備えた
ことを特徴とするレベル計測装置。
【請求項2】
前記異常用レベルデータが予め記憶された記憶部を備え、
前記制御部は、前記レベル情報検出部にエラーが発生している場合に、前記記憶部から前記異常用レベルデータを読み出す
ことを特徴とする請求項1記載のレベル計測装置。
【請求項3】
前記計測されることのないレベル値は、任意の値に設定可能であることを特徴とする請求項2記載のレベル計測装置。
【請求項4】
前記計測されることのないレベル値は、容器内に収納された測定物から検出可能な最大のレベル値よりも大きいレベル値である
ことを特徴とする請求項1記載のレベル計測装置。
【請求項5】
前記異常用レベルデータを前記外部装置に送信するか否かを設定する操作部を備えた
ことを特徴とする請求項1記載のレベル計測装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記レベル情報検出部に発生したエラーの検知に基づいて、装置の状態を示す装置情報を生成する
ことを特徴とする請求項1記載のレベル計測装置。
【請求項7】
前記レベル情報検出部は、前記測定物に部分的に浸されるディスプレーサと、前記ディスプレーサを吊り下げる測定ワイヤと、前記測定ワイヤが巻回されるワイヤドラムと、前記ワイヤドラムを回転させるドラム回転機構と、前記測定ワイヤに作用する張力の変化を検出する張力検出手段と、前記レベル情報として前記ワイヤドラムの回転量を検出するエンコーダと、を有し、
前記制御部は、前記張力検出手段を用いて検知した前記張力の変化に基づいて前記ドラム回転機構の駆動制御を行うと共に、前記ワイヤドラムの回転量に基づいて前記レベル値を算出する
ことを特徴とする請求項1記載のレベル計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−294181(P2009−294181A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150717(P2008−150717)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(308011982)エンドレスハウザー山梨株式会社 (1)
【Fターム(参考)】