説明

レムナント様リポ蛋白コレステロールの定量方法及びそのためのキット

【課題】検体試料中のRLPコレステロールを、分離操作を必要とせず、簡便、かつ正確に定量するための方法及びそのためのキットを提供すること。
【解決手段】レムナント様リポ蛋白を包含する複数種類のリポ蛋白を含む検体中のレムナント様リポ蛋白コレステロールの定量方法は、 (1)レムナント様リポ蛋白以外のリポ蛋白中のコレステロールを消去する工程と、 (2)残存するレムナント様リポ蛋白中のコレステロールを定量する工程とを含む。工程(1)では分子量が40kDaを超えるコレステロールエステラーゼであって分子量40kDa以下のサブユニットを持たないコレステロールエステラーゼを作用させ、工程(2)では分子量が40kDa以下のコレステロールエステラーゼ又は分子量40kDa以下のサブユニットを持つコレステロールエステラーゼを作用させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レムナント様リポ蛋白(RLP)中のコレステロールの定量方法及びそのためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
血液中に含まれるリポ蛋白は、超遠心分離による密度の違いから、カイロミクロン、超低密度リポ蛋白(VLDL)、中間密度リポ蛋白(IDL)、低密度リポ蛋白(LDL)、高密度リポ蛋白(HDL)に分けられる。これらのリポ蛋白は、トリグリセリドやコレステロールなどの脂質や蛋白等の含有量が違っており、それぞれ生体内で異なった作用を示すことが知られている。
【0003】
RLPは、カイロミクロンやVLDLなどのトリグリセリドの含有量が多いリポ蛋白の中間代謝産物で、通常は速やかに代謝され血液中より消失するが、代謝に何らかの異常が生じた場合、血液中に停滞、蓄積する。RLPは動脈壁に沈着しやすく、動脈硬化惹起性のリポ蛋白の1つと考えられている。
【0004】
RLP中のコレステロールの定量方法としては、抗アポA−Iモノクローナル抗体および抗アポB−100モノクローナル抗体を含有するアフィニティーゲルにより、血清からRLPを分離し、分離したRLPに含まれるコレステロールを測定する方法が知られており、そのための試薬が市販されている。
【0005】
一方、最近になり分離操作を必要としないRLPコレステロールの定量方法として、検体試料にコレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼまたはコレステロールデヒドロゲナーゼ、およびホスホリパーゼを作用させる方法が報告されている(特許文献1)。また他にも、2種類の界面活性剤を用いる方法(特許文献2)、リポ蛋白リパーゼ活性とコレステロールエステラーゼ活性の比率が12〜7000であるコレステロールエステラーゼを用いる方法(特許文献3)、ベンゼンスルホン酸構造を有する界面活性剤またはポリアクリル酸系界面活性剤を用いる方法(特許文献4)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4456715号公報
【特許文献2】WO2007/066760号公報
【特許文献3】WO2006/057377号公報
【特許文献4】WO2007/083523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、検体試料中のRLPコレステロールを、分離操作を必要とせず、簡便、かつ正確に定量するための方法及びそのためのキットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、種々のリポ蛋白を含有する被検体試料のコレステロールを酵素的に測定する際、分子量が40kDaを超えるコレステロールエステラーゼであって分子量40kDa以下のサブユニットを持たないコレステロールエステラーゼを作用させるとRLP以外のリポ蛋白が反応し、分子量が40kDa以下のコレステロールエステラーゼ又は分子量40kDa以下のサブユニットを持つコレステロールエステラーゼを作用させるとRLPを含めたすべてのリポ蛋白が反応することを見出した。そして、この知見を利用することにより、分離操作を行うことなく簡便にRLP中のコレステロールを定量できることに想到し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] レムナント様リポ蛋白を包含する複数種類のリポ蛋白を含む検体中のレムナント様リポ蛋白コレステロールの定量方法であって、
(1) レムナント様リポ蛋白以外のリポ蛋白中のコレステロールを消去する工程と、
(2) 残存するレムナント様リポ蛋白中のコレステロールを定量する工程とを含み、
前記工程(1)において、分子量が40kDaを超えるコレステロールエステラーゼであって分子量40kDa以下のサブユニットを持たないコレステロールエステラーゼを作用させ、前記工程(2)において分子量が40kDa以下のコレステロールエステラーゼ又は分子量40kDa以下のサブユニットを持つコレステロールエステラーゼを作用させること含む方法。
【0010】
[2] 前記工程(1)は、前記コレステロールエステラーゼとコレステロールオキシダーゼを作用させ、生じた過酸化水素を消去することを含み、前記工程(2)は、前記コレステロールエステラーゼとコレステロールオキシダーゼを作用させ、生じた過酸化水素を定量することを含む[1]記載の方法。
【0011】
[3] 前記工程(1)および前記工程(2)が、非イオン系界面活性剤の存在下で行われる[1]又は[2]記載の方法。
【0012】
[4] 前記工程(1)および前記工程(2)で用いられる前記非イオン系界面活性剤が、HLB値が11以上13以下のポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種である[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
【0013】
[5] 前記工程(1)において、さらにホスホリパーゼを作用させる[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
【0014】
[6] 少なくとも以下の2種類の試薬組成物を含む、レムナント様リポ蛋白コレステロール定量用キット:
(i) コレステロールエステラーゼとして、分子量が40kDaを超えるコレステロールエステラーゼであって分子量40kDa以下のサブユニットを持たないコレステロールエステラーゼを含む、被検体試料中のレムナント様リポ蛋白以外のリポ蛋白中コレステロールを消去し反応系外に導くための試薬組成物;
(ii) コレステロールエステラーゼとして、分子量が40kDa以下のコレステロールエステラーゼ又は分子量40kDa以下のサブユニットを持つコレステロールエステラーゼを含む、レムナント様リポ蛋白コレステロールを定量するための試薬組成物。
【0015】
[7] 少なくとも前記(i)の試薬組成物が、コレステロールオキシダーゼを含む[6]記載のキット。
【0016】
[8] 前記(i)及び(ii)の試薬組成物が、少なくともHLB値が11以上13以下のポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種の非イオン界面活性剤を含む[6]又は[7]記載のキット。
【0017】
前記(i)の試薬組成物がさらにホスホリパーゼを含む[6]〜[8]のいずれかに記載のキット。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、検体試料中のRLPコレステロールを、分離操作を必要とせず、簡便、かつ正確に定量することができる新規な方法及びそのためのキットが提供された。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】下記実施例1に記載した本発明の方法によるRLP中コレステロールの定量結果と、抗RLPモノクローナル抗体を用いる公知の方法による定量結果との相関関係を示す図である。
【図2】下記実施例2に記載した本発明の方法によるRLP中コレステロールの定量結果と、抗RLPモノクローナル抗体を用いる公知の方法による定量結果との相関関係を示す図である。
【図3】下記実施例3に記載した本発明の方法によるRLP中コレステロールの定量結果と、抗RLPモノクローナル抗体を用いる公知の方法による定量結果との相関関係を示す図である。
【図4】下記実施例4に記載した本発明の方法によるRLP中コレステロールの定量結果と、抗RLPモノクローナル抗体を用いる公知の方法による定量結果との相関関係を示す図である。
【図5】下記実施例5に記載した本発明の方法によるRLP中コレステロールの定量結果と、抗RLPモノクローナル抗体を用いる公知の方法による定量結果との相関関係を示す図である。
【図6】下記実施例6に記載した本発明の方法によるRLP中コレステロールの定量結果と、抗RLPモノクローナル抗体を用いる公知の方法による定量結果との相関関係を示す図である。
【図7】下記実施例7に記載した本発明の方法によるRLP中コレステロールの定量結果と、抗RLPモノクローナル抗体を用いる公知の方法による定量結果との相関関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
リポ蛋白中に含まれるコレステロールとしては、エステル型コレステロール(コレステロールエステル)及び遊離型コレステロールがある。本発明において単に「コレステロール」という場合にはこれらの両者を包含する。
【0021】
本発明の方法で定量しようとするRLPとは、カイロミクロンレムナントとVLDLレムナントを合わせたリポ蛋白を意味する。
【0022】
本発明の方法に供される検体は、レムナント様リポ蛋白を包含する複数種類のリポ蛋白を含むものであれば特に限定されないが、通常、血液(全血、血清及び血漿を包含する)等の体液やその希釈物である。
【0023】
本発明における工程(1)では、RLP以外のリポ蛋白中のコレステロールを選択的に消去する。ここで「消去」とはコレステロールを分解し、かつ、その分解物が次の工程(2)で検出されないようにすることを意味する。RLP以外のリポ蛋白に含まれるコレステロールを選択的に消去する方法としては、例えば被検体試料に、コレステロールオキシダーゼ、特定のコレステロールエステラーゼ(後述)を作用させ、生じた過酸化水素を除去する方法があげられる。過酸化水素を除去する方法としては、カタラーゼを作用させて水と酸素に分解する方法、またはペルオキシダーゼの作用により例えば過酸化水素と反応して無色キノンを生じる水素供与体化合物を無色キノンに転化する方法等をあげることができるがこれらに限定されるものではない。
【0024】
なお、第1工程において特定のリポ蛋白中のコレステロールを選択的に消去する方法は、LDLコレステロールの定量方法(例えばWO98/47005等)やHDLコレステロールの定量方法(例えばWO98/26090等)等に広く採用され、周知となっているものである。本発明の工程(1)も、後述する特定のコレステロールエステラーゼを使用すること以外は、これらの周知の方法により実施することが可能である。
【0025】
本発明の工程(1)では、ホスホリパーゼを用いても用いなくてもよいが、好適なホスホリパーゼを用いれば、RLP以外のリポ蛋白中コレステロールの消去を促進することができる。ホスホリパーゼの好ましい具体例としては、ホスホリパーゼC(PLC)、スフィンゴミエリナーゼ(SPC)、ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC(PI-PLC、以上旭化成ファーマ社製)、スフィンゴミエリナーゼ(bacillus cereus由来)、スフィンゴミエリナーゼ(staphylococcus aureus由来)、ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC (bacillus cereus由来、以上SIGMA社製)等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
続く工程(2)では、前記工程(1)の産物に後述する特定のコレステロールエステラーゼを加えてRLP中のコレステロールを酵素的に定量する。コレステロールの酵素的な定量方法自体はこの分野において周知であり、例えばコレステロールにコレステロールオキシダーゼおよびコレステロールエステラーゼを作用させ、生成した過酸化水素をペルオキシダーゼと水素供与体および水素受容体によりキノン色素に変え、該色素を吸光度測定して定量する方法があげられる。これらは広く用いられている周知の方法であり、上記したWO98/47005やWO98/26090にも記載されている。
【0027】
なお、工程(1)において生じた過酸化水素をカタラーゼで分解し、工程(2)でこのカタラーゼを阻害する必要がある場合は、工程(2)において例えばアジ化ナトリウムのようなカタラーゼ阻害剤を用いてカタラーゼを阻害する。
【0028】
本発明の工程(1)および工程(2)には、非イオン系界面活性剤を共存させることが望ましい。好適な界面活性剤を用いれば、それぞれの工程における酵素反応を促進することができる。好適な界面活性剤としてはHLB値が11以上13以下のポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルがあげられる。界面活性剤の具体例として、エマルゲンA-60、エマルゲン707、エマルゲン709、エマルゲン909(以上花王社製)、ブラウノンDSP-9、ブラウノンDSP-12.5(以上青木油脂社製)等があげられる。
【0029】
工程(1)および工程(2)で共存させる界面活性剤は、同一でも異なっても良い。界面活性剤の反応液中の濃度は0.05%〜5%が好ましく、0.1%〜1%がより好ましい。
【0030】
本発明で使用するコレステロールオキシダーゼとしては、コレステロールを酸化して過酸化水素を生成する能力を有する酵素であれば特に限定されず、例えば動物または微生物由来のコレステロールエステラーゼがあげられる。これらは、遺伝子操作により作られたものでも良く、化学修飾の有無も問わない。
【0031】
本発明で使用する各酵素の使用量は、酵素によって異なり、特に制限されるものではないが通常、0.001U〜2000U/mLで、好ましくは0.1〜1000U/mLで使用される。
【0032】
本発明で使用する水素供与体としてはアニリン誘導体が好ましく、アニリン誘導体としてはN−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン(TOOS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン(MAOS)、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン(TOPS)、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(HDAOS)、N−(3−スルホプロピル)アニリン(HALPS)、N−(3−スルホプロピル)−3−メトキシ−5−アニリン(HMMPS)等があげられる。
【0033】
水素受容体としては4−アミノアンチピリンやメチルベンゾチアゾロンヒドラゾン等を用いることができる。
【0034】
本発明の各工程は、pH5〜pH10で行うことが好ましく、pH6〜pH8で行うことがさらに好ましい。
【0035】
反応温度は各工程とも2℃〜45℃で行うことが好ましく、25℃〜40℃で行うことがさらに好ましい。反応時間は各工程とも1〜10分間で行うことが好ましく、3〜7分で行うことがさらに好ましい。
【0036】
本発明は、工程(1)と工程(2)において、それぞれ異なる特定のコレステロールエステラーゼを用いることに最大の特徴がある。上記の通り、本願発明者らは、種々のリポ蛋白を含有する被検体試料のコレステロールを酵素的に測定する際、分子量が40kDaを超えるコレステロールエステラーゼであって分子量40kDa以下のサブユニットを持たないコレステロールエステラーゼ(以下、便宜的に「高分子量コレステロールエステラーゼ」と呼ぶことがある)を作用させるとRLP以外のリポ蛋白が反応し、分子量が40kDa以下のコレステロールエステラーゼ又は分子量40kDa以下のサブユニットを持つコレステロールエステラーゼ(以下、便宜的に「低分子量コレステロールエステラーゼ」と呼ぶことがある)を作用させるとRLPを含めたすべてのリポ蛋白が反応することを見出した。理論に縛られるものではないが、RLP内部にはエステル型コレステロールと共にトリグリセリドが多量に存在しており、これが立体障害となり、大型の高分子量コレステロールエステラーゼは粒子内部のエステル型コレステロールに接近できず、反応できないのではないかと考えられる。
【0037】
上記知見を利用し、本発明の方法では、工程(1)において、高分子量コレステロールエステラーゼを作用させ、工程(2)において低分子量コレステロールエステラーゼを作用させる。上記の通り、工程(1)では、生じたコレステロール(RLP以外のリポ蛋白由来のコレステロール)が消去されるので、工程(2)では、RLPコレステロールのみが定量される。
【0038】
コレステロールエステラーゼ及びそのサブユニットの分子量は、常法であるSDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)により測定される。周知の通り、SDS-PAGEは、還元条件下での電気泳動であるので、コレステロールエステラーゼが複数のサブユニットから構成される場合、コレステロールエステラーゼは各サブユニットに解離されるので、各サブユニットの分子量が測定される。一方、コレステロールエステラーゼがサブユニットを持たない場合には、コレステロールエステラーゼの分子量が測定される。
【0039】
高分子量コレステロールエステラーゼの市販例としては、コレステロールエステラーゼ(CEBP-M;旭化成ファーマ社製、分子量62kDa)、コレステロールエステラーゼ(CHE-XE;キッコーマン社製、分子量54kDa)、等があげられる。
【0040】
低分子量コレステロールエステラーゼの市販例としては、コレステロールエステラーゼ(CEN;旭化成ファーマ社製、分子量29.5kDa)、コレステロールエステラーゼ”Amano”2(CHE2;天野エンザイム社製、分子量30kDa)、コレステロールエステラーゼ”Amano”3(CHE3;天野エンザイム社製、分子量30kDa)、等があげられる。
【0041】
本発明の定量方法を実施するに当たり、用いる試薬を複数の試薬組成物に分けてもよい。本発明においては、試薬としては例えばRLP以外のリポ蛋白中のコレステロールを消去する工程(すなわち工程(1))を行うための試薬組成物と、RLPのコレステロールを測定する工程(すなわち工程(2))を行うための試薬組成物の、2種類の試薬組成物を調製することができる。
【0042】
工程(1)を行うための試薬組成物には、少なくとも高分子量コレステロールエステラーゼが含まれる。該試薬組成物にはさらに、上記した界面活性剤やコレステロールオキシダーゼ、アニリン誘導体等の水素供与体、過酸化水素を消去するカタラーゼ等を含ませればよい。
【0043】
工程(2)を行うための試薬組成物には、少なくとも低分子量コレステロールエステラーゼが含まれる。該試薬組成物にはさらに、界面活性剤や4-アミノアンチピリン等の水素受容体、ペルオキシダーゼ等を含ませることができる。
【0044】
工程(1)を行うための試薬組成物及び工程(2)を行うための試薬組成物には、必要に応じて、1価の陽イオン(例えば一価の金属イオン)、2価の陽イオン(例えば二価の金属イオン)もしくはそれらの塩、ポリアニオン(例えばヘパリン、デキストラン硫酸塩、リンタングステン酸塩)、血清アルブミンを添加してもよい。また、各試薬組成物のpHは、中性付近、例えばpH5〜pH9、好ましくはpH6〜8であり、緩衝液を添加してpHを調整すればよい。
【0045】
本発明の方法によりをRLP中のコレステロールを定量するには、被検体試料に工程(1)を行うための試薬組成物を添加し反応させ、次いで工程(2)を行うための試薬組成物を添加し反応させ、吸光度を測定することにより行えばよい。なお、上記の通り、工程(1)と工程(2)において、上記したそれぞれ特定のコレステロールエステラーゼを用いること以外は、通常の方法で行うことができる。
【0046】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
実施例1
工程(1)を行うための試薬組成物A(実施例2以降でも工程(1)を行うための試薬組成物を「試薬組成物A」と呼ぶ)、工程(2)を行うための試薬組成物B(実施例2以降でも工程(2)を行うための試薬組成物を「試薬組成物B」と呼ぶ)を以下のように調製した。
【0048】
試薬組成物A
PIPES緩衝液,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ[旭化成ファーマ製 CEBP-M] 5U/mL
コレステロールオキシダーゼ 2.5U/mL
カタラーゼ 1000U/mL
TOOS 2.0mmol/L
エマルゲンA-60(商品名) 0.1%(w/v)
【0049】
試薬組成物B
PIPES緩衝液,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ[旭化成ファーマ製 CEN] 4U/mL
4−アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 20単位/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
エマルゲンA-60(商品名) 0.1%(w/v)
【0050】
血清試料5μLに試薬組成物A270μLを加え、37℃で5分間反応させた後に、試薬組成物B90μLを加え5分間反応させ、主波長600nm、副波長700nmでの吸光度を測定した。
【0051】
比較対象法として、抗RLPモノクローナル抗体を用いる、大塚製薬社製のRLP−コレステロール「JIMRO」II(商品名)を用いてRLPコレステロール濃度を比較した。その結果を図1に示す。
【0052】
図1に示すように、本実施例の方法はRLPコレステロール測定用試薬RLP−コレステロール「JIMRO」II(商品名)を用いた方法と良好な相関性を示した。
【0053】
実施例2
試薬組成物A及び試薬組成物Bを以下のように調製した。
【0054】
試薬組成物A
PIPES緩衝液,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ[旭化成ファーマ製 CEBP-M] 5U/mL
コレステロールオキシダーゼ 2.5U/mL
スフィンゴミエリナーゼ[旭化成ファーマ製 SPC] 2.5U/mL
カタラーゼ 1000U/mL
TOOS 2.0mmol/L
エマルゲンA-60(商品名) 0.1%(w/v)
【0055】
試薬組成物B
PIPES緩衝液,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ[旭化成ファーマ製 CEN] 4U/mL
4−アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 20単位/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
エマルゲンA-60(商品名) 0.1%(w/v)
【0056】
実施例1と同様の手順で測定を行い、RLP−コレステロール「JIMRO」II(商品名)によって得られる値と比較した。その結果を図2に示す。
【0057】
図2に示すように、本実施例の方法はRLPコレステロール測定用試薬RLP−コレステロール「JIMRO」II(商品名)を用いた方法と良好な相関性を示した。
【0058】
実施例3
試薬組成物A及び試薬組成物Bを以下のように調製した。
【0059】
試薬組成物A
PIPES緩衝液,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ[旭化成ファーマ製 CEBP-M] 5U/mL
コレステロールオキシダーゼ 2.5U/mL
スフィンゴミエリナーゼ[旭化成ファーマ製 SPC] 2.5U/mL
カタラーゼ 1000U/mL
TOOS 2.0mmol/L
エマルゲンA-60(商品名) 0.1%(w/v)
【0060】
試薬組成物B
PIPES緩衝液,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ[旭化成ファーマ製 CEN] 4U/mL
4−アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 20単位/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
エマルゲン709(商品名) 0.1%(w/v)
【0061】
実施例1と同様の手順で測定を行い、RLP−コレステロール「JIMRO」II(商品名)によって得られる値と比較した。その結果を図3に示す。
【0062】
図3に示すように、本実施例の方法はRLPコレステロール測定用試薬RLP−コレステロール「JIMRO」II(商品名)を用いた方法と良好な相関性を示した。
【0063】
実施例4
試薬組成物A及び試薬組成物Bを以下のように調製した。
【0064】
試薬組成物A
PIPES緩衝液,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ[旭化成ファーマ製 CEBP-M] 5U/mL
コレステロールオキシダーゼ 2.5U/mL
スフィンゴミエリナーゼ[旭化成ファーマ製 SPC] 2.5U/mL
カタラーゼ 1000U/mL
TOOS 2.0mmol/L
ブラウノンDSP-12.5(商品名) 0.1%(w/v)
【0065】
試薬組成物B
PIPES緩衝液,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ[旭化成ファーマ製 CEN] 4U/mL
4−アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 20単位/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
エマルゲンA-60(商品名) 0.1%(w/v)
【0066】
実施例1と同様の手順で測定を行い、RLP−コレステロール「JIMRO」II(商品名)によって得られる値と比較した。その結果を図4に示す。
【0067】
図4に示すように、本実施例の方法はRLPコレステロール測定用試薬RLP−コレステロール「JIMRO」II(商品名)を用いた方法と良好な相関性を示した。
【0068】
実施例5
試薬組成物A及び試薬組成物Bを以下のように調製した。
【0069】
試薬組成物A
PIPES緩衝液,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ[旭化成ファーマ製 CEBP-M] 5U/mL
コレステロールオキシダーゼ 2.5U/mL
スフィンゴミエリナーゼ[旭化成ファーマ製 SPC] 2.5U/mL
カタラーゼ 1000U/mL
TOOS 2.0mmol/L
エマルゲンA-60(商品名) 0.1%(w/v)
ウシ血清アルブミン 0.1%(w/v)
【0070】
試薬組成物B
PIPES緩衝液,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ[旭化成ファーマ製 CEN] 4U/mL
4−アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 20単位/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
エマルゲンA-60(商品名) 0.1%(w/v)
【0071】
実施例1と同様の手順で測定を行い、RLP−コレステロール「JIMRO」II(商品名)によって得られる値と比較した。その結果を図5に示す。
【0072】
図5に示すように、本実施例の方法はRLPコレステロール測定用試薬RLP−コレステロール「JIMRO」II(商品名)を用いた方法と良好な相関性を示した。
【0073】
実施例6
試薬組成物A及び試薬組成物Bを以下のように調製した。
【0074】
試薬組成物A
PIPES緩衝液,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ[キッコーマン製 CHE-XE] 5U/mL
コレステロールオキシダーゼ 2.5U/mL
スフィンゴミエリナーゼ[旭化成ファーマ製 SPC] 2.5U/mL
カタラーゼ 1000U/mL
TOOS 2.0mmol/L
エマルゲンA-60(商品名) 0.1%(w/v)
ウシ血清アルブミン 0.1%(w/v)
【0075】
試薬組成物B
PIPES緩衝液,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ[旭化成ファーマ製 CEN] 4U/mL
4−アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 20単位/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
エマルゲン709(商品名) 0.1%(w/v)
【0076】
実施例1と同様の手順で測定を行い、RLP−コレステロール「JIMRO」II(商品名)によって得られる値と比較した。その結果を図6に示す。
【0077】
図6に示すように、本実施例の方法はRLPコレステロール測定用試薬RLP−コレステロール「JIMRO」II(商品名)を用いた方法と良好な相関性を示した。
【0078】
実施例7
試薬組成物A及び試薬組成物Bを以下のように調製した。
【0079】
試薬組成物A
PIPES緩衝液,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ[旭化成ファーマ製 CEBP-M] 5U/mL
コレステロールオキシダーゼ 2.5U/mL
スフィンゴミエリナーゼ[旭化成ファーマ製 SPC] 2.5U/mL
カタラーゼ 1000U/mL
TOOS 2.0mmol/L
エマルゲンA-60(商品名) 0.1%(w/v)
【0080】
試薬組成物B
PIPES緩衝液,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ[天野エンザイム製 CHE-2] 4U/mL
4−アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 20単位/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
エマルゲン709(商品名) 0.1%(w/v)
【0081】
実施例1と同様の手順で測定を行い、RLP−コレステロール「JIMRO」II(商品名)によって得られる値と比較した。その結果を図7に示す。
【0082】
図7に示すように、本実施例の方法はRLPコレステロール測定用試薬RLP−コレステロール「JIMRO」II(商品名)を用いた方法と良好な相関性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レムナント様リポ蛋白を包含する複数種類のリポ蛋白を含む検体中のレムナント様リポ蛋白コレステロールの定量方法であって、
(1) レムナント様リポ蛋白以外のリポ蛋白中のコレステロールを消去する工程と、
(2) 残存するレムナント様リポ蛋白中のコレステロールを定量する工程とを含み、
前記工程(1)において、分子量が40kDaを超えるコレステロールエステラーゼであって分子量40kDa以下のサブユニットを持たないコレステロールエステラーゼを作用させ、前記工程(2)において分子量が40kDa以下のコレステロールエステラーゼ又は分子量40kDa以下のサブユニットを持つコレステロールエステラーゼを作用させること含む方法。
【請求項2】
前記工程(1)は、前記コレステロールエステラーゼとコレステロールオキシダーゼを作用させ、生じた過酸化水素を消去することを含み、前記工程(2)は、前記コレステロールエステラーゼとコレステロールオキシダーゼを作用させ、生じた過酸化水素を定量することを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記工程(1)および前記工程(2)が、非イオン系界面活性剤の存在下で行われる請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記工程(1)および前記工程(2)で用いられる前記非イオン系界面活性剤が、HLB値が11以上13以下のポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(1)において、さらにホスホリパーゼを作用させる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも以下の2種類の試薬組成物を含む、レムナント様リポ蛋白コレステロール定量用キット:
(i) コレステロールエステラーゼとして、分子量が40kDaを超えるコレステロールエステラーゼであって分子量40kDa以下のサブユニットを持たないコレステロールエステラーゼを含む、被検体試料中のレムナント様リポ蛋白以外のリポ蛋白中コレステロールを消去し反応系外に導くための試薬組成物;
(ii) コレステロールエステラーゼとして、分子量が40kDa以下のコレステロールエステラーゼ又は分子量40kDa以下のサブユニットを持つコレステロールエステラーゼを含む、レムナント様リポ蛋白コレステロールを定量するための試薬組成物。
【請求項7】
少なくとも前記(i)の試薬組成物が、コレステロールオキシダーゼを含む請求項6記載のキット。
【請求項8】
前記(i)及び(ii)の試薬組成物が、少なくともHLB値が11以上13以下のポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種の非イオン界面活性剤を含む請求項6又は7記載のキット。
【請求項9】
前記(i)の試薬組成物がさらにホスホリパーゼを含む請求項6〜8のいずれか1項に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−100581(P2012−100581A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251511(P2010−251511)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(591125371)デンカ生研株式会社 (72)
【Fターム(参考)】