説明

レムニスケート形状攪拌パターンを用いて容器中の液体サンプルを混合するための改善された方法

サンプリング用プローブを、溶液内において概略的にレムニスケート形状のパターンで迅速にかつ反復して動かすことにより、生化学的分析機器内の溶液を迅速にかつ均一に混合するための方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器中の液体サンプル、試薬または他の溶液を均一に混合するための方法および装置に関する。具体的には、本発明は、溶液中でサンプリング用プローブニードルを2次元的にレムニスケート形状パターンで繰り返して動かすことにより、液体の溶液を迅速にかつ均一に混合するための改善された方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
患者の診断および治療に関連する種々のタイプの分析検査は、患者の感染部、体液または膿瘍から採取された液体サンプルを分析することで実施することができる。これらの検査は、一般的に、患者のサンプルが入っているチューブまたはバイアルを載せた自動化された臨床分析機器で行われる。分析機器はバイアルから液体サンプルを吸引し、サンプルを特製の反応キュベットまたはチューブの中で種々の試薬と混合する。通常、サンプル−試薬溶液は温置されるか、またはそうでなければ分析を行う前に処理される。分析測定は多くの場合、サンプル−試薬混合物と相互作用するインターロゲート(interrogating)放射ビームを用いて、たとえば比濁法、蛍光定量法、吸収測定(absorption readings)、または同様のもので実施される。測定では、周知の調正技術を用いて判定することができ、それによって患者の健康状態に関連する検体量の、最終点または評価値の判定を行うことができる。
【0003】
臨床分析機器は検体を識別するために多くの異なるプロセスを用い、それらのプロセスを通して、患者の液体サンプルおよび種々の他の液体(たとえば試薬、希釈液または再水和された成分のような)を組み合わせたサンプルを高度に均一になるように混合することが頻繁に必要とされる。臨床検査所に対して分析感度を向上させようとする圧力が増大しているため、臨床分析機器の全体的な処理効率を改善する必要性が絶え間なく存在している。具体的には、検査処理量を増加させるという観点から、サンプル分析を絶え間なくより効率的にさせる必要がある。サンプル−試薬混合器に対して、分析器のコストを過度に増加させずに、または不釣合いな空間を必要としないで、液体溶液を非常に高速で高度に均一に混合する必要性が依然として残っている。
【0004】
均一なサンプル溶液混合物を提供するために、攪拌、混合、ボールミル粉砕などを含む、種々の方法が歴史的に実施されてきた。1つの評判のよい手法は、ピペットを用いて液体容器内の液体溶液の一部を交互に吸引および放出することを含む。磁気的混合は、渦混合の動作が、液体サンプルおよび液体または非溶解性試薬の溶液内に適用され、臨床機器や検査装置においても特に使用される。液体容器中の液体溶液は、溶液中で、自由に配置された球状の混合用部材を、概略円形パターンを描いて、高速で往復運動させることで混合され、そのような混合は米国特許第6,382,827号に開示される。球状の混合用部材は、溶液中で、磁場を液体容器の近傍で概略円形パターンを描くように高速で回転させることにより、高速で動く。磁力は、磁気混合用部材に働いて、液体溶液中で磁気混合用部材に混合用運動を引き起こさせる。
【0005】
米国特許第4,720,374号に記載のような超音波混合技術は、反応コンパートメント内の材料の固体タブレットが溶解するか、またはそこに入っている液体が均一に混合するように、容器の外側から加えられ、反応コンパートメント内に及ぶ超音波エネルギーを用いる。容器は、タブレットを受け取るアレイと容器の残りの部分の両方を繋ぐ再循環経路を造りだすために、その中に取り付けられ、互いに間隔があいている超音波処理を改善する突起のアレイを、作動中には突起がタブレット状材料を比較的高い超音波エネルギー領域に閉じ込める役目をして、同時に、それによりタブレット状材料を迅速に溶解させるために、水和液を高エネルギー領域から経路を通して流すように、含むことができる。
【0006】
米国特許第6,382,827号は、自由に配置された球状の混合用部材を容器中で概略円形パターンを描いて溶液中で高速で往復運動させることにより液体容器中に入っている液体溶液を混合する方法を開示する。液体容器の近傍で磁場を概略円形パターンを描いて高速で回転させることにより、球状の混合用部材が溶液中で高速で動く。磁力が磁気混合用部材に働いて、磁気混合用部材に液体溶液中で混合用運動を引き起こさせる。
【0007】
米国特許第5,824,276号は、そのレンズが長時間その容器に接触することなく容器内で上下動をおこすように、溶液に振動する方法で流れを与えることによりコンタクトレンズを洗浄する方法を開示する。方法は、その品物が実質上または長時間にわたって容器内部に接触しないように、容器内の溶液中に品物を浮遊させることを含む。所定の流速の溶液が容器内を通過し、それにより、品物の密度が溶液の密度より高い場合には、品物への下向きの重力に打ち勝つ浮力に関連する上向きの力を与える。もう一つの方法として、品物の密度が処理溶液の密度より低い場合には、実質上定常状態の効果を生み出すために、流れが容器の上部に発生する。
【0008】
本出願の譲り受け人に譲渡され、参考として本明細書に組み込まれる米国特許第7,258,480号は、サンプリング用プローブニードルを、概略放物線を描くか、または通常「ブーメラン形状」を描くプローブニードルの混合用パターンで2次元的に動かすことにより、生化学的分析機器内の溶液を混合する混合装置を開示する。
【0009】
このように、簡素化され、空間効率の良い液体サンプルおよび/またはサンプル−試薬混合器の改善された設計手法への必要性は継続している。具体的には、チューブに入った溶液を、高速で高度に均一に混合することを、望ましくは短期間で提供するような、改善されたサンプル−試薬溶液混合器に対する必要性が絶え間なく存在している。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、好ましくない気泡、泡沫または同様のものを発生させないで、生化学的分析機器内の溶液をより短時間で均一に混合する、改善された混合装置を提供することである。本発明は可動アームに取り付けられたサンプリング用プローブニードルを有する磁気混合器を含み、混合器は可動アームを互いに直角を成す第1および第2方向に往復運動させる。例示的実施態様においては、可動アームは、固定ブロック上のローラーベアリングに接触する垂直のピンを支える突出した脚部を有する。可動アームは、交流電磁石によって往復運動させられ、これによりピンがローラーベアリングの外周に沿って回動させられ、これによりアームが往復運動する。プローブニードルの運動の大きさを一定の臨界範囲に制限することと、同時に可動アームを狭い周波数範囲で往復運動させることを組み合わせると、驚くべきことに、プローブニードルの「レムニスケート形状」の混合用パターンができることが見出された。そのようなプローブニードルのレムニスケート形状の混合用パターンは、好ましくない気泡の発生を誘発することなく、非常に短時間で、高度に均一な混合を実現するうえで極めて効果的であることが判明した。
【0011】
本発明は、本出願の部分をなす添付の図に関連して行われる下記の詳細な記載によってより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を実施するように構成される自動化された分析器の概略平面図である。
【図2】図1に記載の分析器の一部の拡大概略平面図である。
【図2A】図1に記載の分析器が作動するときに使用できる反応キュベットの斜視図である。
【図3】図1に記載の分析器において使用されるアリコート(小分け)容器のアレイの斜視図である。
【図4】図1に記載の分析器のアリコート容器のアレイのストレージおよび処理ユニットの斜視図である。
【図5】図1に記載の分析器が作動するときに使用される試薬カートリッジの斜視図である。
【図6】図1に記載の分析器が作動するときに使用でされる試薬カートリッジ処理システムの上面平面図である。
【図7】図6に記載の試薬カートリッジ処理システムにおいて使用される試薬カートリッジの斜視図である。
【図8】図1に記載の分析器において使用される液体吸引および分注システムの概略図である。
【図9】図6に記載の試薬カートリッジから試薬を吸引している図8に記載の液体吸引および分注システムの概略図である。
【図10】図2Aに記載の反応キュベットに試薬を分注している図8に記載の液体吸引および分注システムの概略図である。
【図11】先行技術の混合用パターン動作を示す拡大図である。
【図12】レムニスケート形状混合用パターン動作を示す図である。
【図12A】図12に記載のレムニスケート形状混合用パターンのアスペクト比を示す図である。
【図13】本発明を実施するときに使用できる混合用アセンブリの側面立面図である。
【図14】本発明を実施するときに使用できる混合用アセンブリの正面図である。
【図15】本発明を実施するときに使用できる混合用アセンブリの上面図である。
【図15A】本発明の混合用アセンブリに使用される液体吸引および分注システムを示す概略図である。
【図16】図13に記載の混合用アセンブリの可動本体部分およびプローブニードル先端部分の運動振幅が上記混合用アセンブリの作動周波数で変化する様子を示すグラフである。
【図17】図12に記載の混合用パターンが図13に記載の混合用アセンブリの周波数で変化する様子を示すグラフである。
【図18】図13に示す可動アーム部分の運動の大きさを制限するための重要な特徴を示す、本発明を実施するときに使用できる混合用アセンブリの下面図である。
【図19】混合用運動の振幅範囲が図13に示す可動アーム部分の運動の大きさを制限することで変化する様子を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は図2と共に本発明を有利に実施することができる自動化学分析器10の要素の概略図を示す。分析器10は、その中にキュベットポート20を備えた外側回転ラック14と、その中に容器ポート22を備えた内側回転ラック16と、を支える反応用回転ラック12を含む。外側回転ラック14および内側回転ラック16は、開口溝18で分離されている。キュベットポート20は、従来式での臨床および免疫検査のための種々の試薬およびサンプル液の入っている複数の図2Aに示す反応キュベット24を格納するように構成され、その一方、容器ポート22は、超高感度発光免疫検査のための特製の試薬の入っている複数の反応用容器25を格納するように構成される。反応用回転ラック12は、ステップ的動作で一定方向に回転可能であり、ステップ的動作は、一定の滞留時間で区切られて、その間、反応用回転ラック12は静止状態に維持され、たとえばセンサー、試薬添加ステーション、混合ステーションなどのようなコンピューター制御された検査実施装置13が、必要に応じて、キュベット24内に入っている検査混合物に対して作動する。
【0014】
分析器10は、Deerfield, ILのSiemens Healthcare Diagnostics Inc.で販売されているDimension(登録商標)臨床化学分析機器で用いられ、コンピューターベースの電気機械的制御プログラムの当業者によって広く使われているような機械言語で書かれたコンピュータープログラムに基づいて、コンピューター15で実施されるソフトウェアにより制御される。コンピューター15は、同様に、分析器10内の種々の分析手段17で行われる検査を実行するためのアプリケーションソフトウエアプログラムを実施する。
【0015】
図1に示すように、双方向に出入りするサンプル液チューブの搬送システム34は、たとえばサンプル液チューブ40のような開放または密閉サンプル液容器を格納するサンプル液チューブラック38を、中抜き矢印35Aで示すように、入り側レーン35の第1端部にあるラック入り側搭載位置から入り側レーン35の第2端部へ搬送するための機構を含む。サンプル液チューブ40に入っている液体試料は、いくつかある項目の中で、患者の識別、行うべき検査、サンプルアリコート(小分け)を分析器10内で保持する必要があるかと、その場合の期間、を判定するために、従来式のバーコードリーダーを用いて、その上に付けたバーコード証印を読み取ることで識別される。サンプル液チューブ40およびサンプル液チューブのラック38の位置を確認、制御および追跡するために、サンプル液チューブのラック38にバーコード証印を付け、分析器10の各所に設置した多数のバーコードリーダーを用いることも同様に一般的な方法である。
【0016】
従来式の液体のサンプリング用プローブ42は、入り側レーン35の第2端部近傍に配置され、必要な検査を行うため及びサンプル液アリコートを分析器10の人工気候室48内に保持するために必要とされるサンプル液の量に応じて、サンプル液チューブ40からサンプル液のアリコート分を吸引し、アリコート容器アレイ44中の1個以上の複数の図3に示すような容器52Vに、サンプル液のアリコート分を分注するように動作可能である。サンプル液は、ラック38上の全てのサンプル液チューブ40から吸引され、アリコート容器52Vに分注され、図4に示すようなアリコート容器アレイのストレージおよび搬送システム50内にストレージされた後、ラック38は、中抜き矢印36Aで示されたように、操作員が分析器10からラック38を取り外すためにアクセスできる分析器10の前面に移動される。
【0017】
図4で示すように、アリコート容器アレイの搬送システム50は、アリコート容器アレイのストレージおよび分注モジュール56、および、本明細書に後述され、本発明の例示的実施態様であり、反応用回転ラック12の近傍に設置されたサンプル吸引プローブ54の下の、いくつかのアリコート容器アレイトラック57内のアリコート容器アレイ52を双方向に移動させるように構成された、いくつかのリニア駆動モーター58を含む。サンプル吸引プローブ54は、コンピューター15で制御され、トラック57内のサンプリング位置に設置された個々の容器52Vから定められた量のサンプルを吸引し、その後、1個以上の検体を分析器10で検査するために、1個以上のキュベット24に適切な量の吸引されたサンプルが分注される分注位置に折り返すように制御される。サンプルが反応キュベット24に分注された後、必要に応じて、従来式の搬送手段で、アリコート容器アレイ52を、アリコート容器アレイ搬送システム50と、人工気候室48および廃棄区域(図示されていない)の間で移動させる。
【0018】
温度が調節されたストレージ区域またはサーバー26、27および28には、図5に示し、本発明の譲り受け人に譲渡された米国特許第6,943,030号に記載されたような、必要に応じいくつかの異なる検査を行うために、複数の縦穴32内に試薬が入っている、複数のコンパートメントを有する細長い試薬カートリッジ(又は、試薬容器、試薬キャリアー)30が保管されている。図6に関連して後述するように、サーバー26は、試薬カートリッジ30を、試薬吸引プローブ60がアクセスできるように第2回転ラック26Bに移動するまで、その中に保管することができる第1回転ラック26A、および、本発明の例示的実施態様であるレムニスケート形状混合用アセンブリ55を含む。図6は、回転ラック26Aおよび回転ラック26Bが円形で同軸であり、第1回転ラック26Aが第2回転ラック26Bの内側にある、有利な実施態様を示す。試薬容器30は、そのような試薬容器30を自動的に容器30を後述する折り返し位置に移動するように構成される搭載トレイ29内に置くことにより、搭載される。
【0019】
追加の試薬吸引プローブ61および62は、独立して取り付けられ、サーバー27および28のそれぞれ、および外側のキュベット回転ラック14の間で移動可能である。プローブ62は、適切な試薬カートリッジ30内の縦穴32から、試薬添加位置で特定の検査を行うのに必要な試薬を吸引するための従来式の機構を含み、プローブ62は、その次に、試薬がキュベット24に分注される分注位置に折り返す。
【0020】
図6は図7と共に、試薬カートリッジ30を、試薬カートリッジ30を自動的にシャトル72の下の折り返し位置に設置するモーター付きのレーキ73を有する搭載トレイ29から、取り外すように構成される単一の双方向搬送シャトル72を示す。カートリッジ30は、従来式のバーコード状証印および搭載トレイ29の近傍のバーコードリーダー41を用いて、その中に入っている試薬溶液の種類で識別される。コンピューター15は、分析器10内のあらゆる試薬カートリッジ30の位置を追跡するようにプログラムされている。シャトル72は、さらに、試薬容器30をそれぞれ少なくとも1つの試薬ストレージ区域27または28の中にある、少なくとも1個のスロットのある試薬容器トレイ27Tまたは28T内のスロットに配置するように構成される。同様に、シャトル72はさらに、試薬容器30を、試薬容器トレイ27Tおよび28Tから取り外し、そのような試薬容器30を、試薬ストレージ区域26内の2つの同軸の試薬回転ラック26Aおよび26Bのいずれかの中に配置するように構成される。シャトル72は、同様に、試薬容器30を、2つの同軸の試薬回転ラック26Aおよび26Bの間で移動させるように構成される。
弓形の両方向矢印で示されるように、試薬回転ラック26Aは、その上に配置した試薬容器30の任意の特定の1個を試薬吸引プローブ60の下に設置するために、両方向に回転させることができる。試薬容器トレイ27Tおよび28T内に配置された試薬容器30の任意の1個は、試薬ストレージ区域27および28内の試薬容器シャトル27Sおよび28Sで、それぞれ試薬容器シャトル72の下の搭載位置、または吸引および分注プローブ62の下の試薬吸引位置に、設置することができる。試薬容器シャトル27Sおよび28Sは、図7に示す試薬容器シャトル72と同様の設計である。外側回転ラック14内で支えられる反応キュベット24および内側回転ラック16内で支えられる反応用容器25は、それらが回転ラック26Bの表面の下に設置されていることを示すために、点線で示される。
【0021】
図7に示す搬送シャトル72は、本発明の譲り受け人に譲渡された米国特許第7,207,913号に記載されるように、モーター72Mで駆動されるベルト72Bの長さの未知の変化を自動テンショナ72Tで自動的に補償するように構成される。シャトル72は、さらに、クランプ72Cでそこに取り付けられる試薬容器30を、両方向矢印で示すような、ベルト72Bの方向に沿って正確に設置させ、試薬容器シャトル72の下、またはベルト72Bが磨耗した場合のストレージ区域26、27または28内のその折り返し位置に配置することができるように、駆動方向が急に変化した場合にでも、ベルト72Bの張力を一定に保つように構成される。試薬容器シャトル27Sおよび28Sは、互いに同様な設計になっていて、トレイ28Tが、両矢印で示す方向に沿って自由に往来できるように、ベルトの一方の支持部に固定される、試薬容器トレイ28Tを含む。従って、トレイ28T内のスロットの中の試薬容器30は、自動的に容器シャトル72の下の折り返し位置に設置される。
【0022】
図8に示す本発明を実施するときに使用できる吸引プローブ60は、水平駆動部品60H、垂直駆動部品60V、洗浄モジュール部品(洗浄マニホールド)60W、ポンプモジュール部品60P、オリフィスサイズを減少し、試薬カートリッジ30の蓋を通して挿入した時に吸引量を増加させるように設計された、テーパの付いたニードル先端60Tを伴う吸引および分注プローブニードル60N、および下記表1に記載の主要機能を有する洗浄マニホールド部品60Mを含む。図9に示す洗浄モジュール部品60Wおよびポンプモジュール部品60Pの部品は、下記に説明される。
水平駆動部品60Hおよび垂直駆動部品60Vは、概略的にコンピューター制御のステッパーモーターまたはリニアアクチュエーターで、水平駆動部品60Hおよび垂直駆動部品60Vに正確に制御された動きを与えるために、コンピューター15で制御される。
【0023】
【表1】

【0024】
図9は、従来式の輪郭の内外表面を有し、洗浄マニホールド60Mで支えられる、従来式の中空の液体搬送プローブ先端60Tに接続するポンプモジュール60Pを示し、洗浄マニホールド60Mは、中空の空気チューブ70で三方弁71に接続する。プローブニードル60Nは、数個のねじ状コネクタ(図示されていない)、または交互に取り外せないような溶接、の任意のいずれかを用いて、洗浄マニホールド60Mに接続することができる。弁71は、空気チューブ70を、必要に応じて、(1)大気通気チューブ74に接続する通気弁73、または(2)中空の空気チューブ77でピストンタイプのシリンジポンプ76、に接続するように動作可能である。従来式の空気圧測定変換器78は、ポンプ76と弁71の間の空気チューブ77に、中空の空気チューブ79で接続する。
【0025】
図9は同様に、試薬キャリヤー30の蓋にすでに穴を開け、その中に入っている試薬液の中に位置するプローブニードル60Nを示す。レベル検出手段(たとえば周知の容量性信号を用いる)は、プローブニードル60Nが、液体が流動できることを保証するために、有利には用いることができる。ピストン76は、プローブニードル60Nに試薬液の調節された量が引抜かれ、または吸引されるように、起動されて、その移動距離がコンピューター15で制御される。このプロセスの間、弁71は、通気チューブ72と遮断されるが、空気チューブ77および空気チューブ70に対しては開いている。弁71は、空気チューブ70を大気通気チューブ74に接続するオプションの通気弁73に必要に応じて接続するように動作可能である。図9は、同様に、洗浄マニホールド60Wに中空の液体搬送チューブ81で接続するフラッシュバルブ82を含む、オプションの洗浄マニホールド60Wを示す。フラッシュバルブ82は、液体搬送チューブ81を、加圧洗浄水源84に、中空液体チューブ83で接続するように動作可能である。試薬キャリヤー30から調正液または品質管理液の吸引が終了した後、洗浄マニホールド60Mが、垂直駆動部品60Vで引き上げられ、水平駆動部品60Hで、図10に示すように、プローブ60が、調正液または品質管理液を、回転ラック14中のポート20内に格納されるキュベット24に分注するように設置される。
【0026】
図2〜9に示す装置を用いて分析器10が作動している間には、液体または1つ以上の液体の溶液が、迅速かつ均一に混合されることが極めて重要であり、過度に分析器のコストを増加させるか、または不釣合いな空間、または、混合のみに特化した特製の装置を必要とすることなく、液体または液体溶液を、非常に高速に高い均一性にいたるまで混合するといった、混合装置に対する要求が発生する、いくつかの場合がある。たとえば、
1.サンプル吸引プローブ60が、第1試薬を、第1試薬カートリッジ30から吸引し、反応キュベット24に試薬を分注した後、
2.サンプル吸引プローブ54が、サンプルを、アリコート容器アレイ52内の容器52Vから吸引し、反応キュベット24にサンプルを分注する前、または
3.サンプル吸引プローブ54が、第2試薬を、第2試薬カートリッジ30から吸引し、反応キュベット24に試薬を分注した後、
に、均一に分散した溶液を得るために、高速混合が必要となる。
【0027】
先行技術の混合方法では、概略的に、サンプリング用プローブニードルを、直線的な混合用パターン、または、円形または楕円形の混合用パターン、のいずれかで動かす。直線的な混合用パターンは、必要とされる所要時間の観点から、効率が悪い。円形または楕円形のパターンは、効率の良い混合を実現するものの、円形の混合用パターンで発生する渦の下端に空気の気泡が形成される、という望ましくない副作用が存在する。気泡は、その後、表面に上昇する前に、一定時間溶液中に浮遊する。他の先行技術の混合用パターンでは、サンプリング用プローブを、図11に示すように、概略的に、放物線、または、概略的に「ブーメラン形状」の混合用パターンで、2次元的に動かす。しかしながら、この手法は、いわゆる「混合に敏感な」免疫試験のために許容できる均一な混合溶液を作り出すためには、望ましくない長時間を必要とする。
【0028】
本発明の重要な特徴は、プローブ先端54T、60T、または62Tを、図10に示す分注プロセスの後に、アリコート容器アレイ44内の容器52V中に保持されるサンプルの中で、または、キュベット24内のサンプル−試薬混合物の中で、図12に示すような「8の字」または「レムニスケート形状」の混合用パターンで、迅速に動かすことにより、予想外に高度の混合均一性が、望ましくない気泡を発生することなく、短時間で達成できるということが発見されたことにある。
【0029】
本発明の提供する混合動作は、プローブ先端60Tが、概略的に、図12に示すように、レムニスケート形状の混合用パターンの周期を成す。図12Aで示し定義するようなレムニスケート形状の混合用パターンに、アスペクト比を維持することで、混合時間、混合均一性(混合不足に敏感な臨床検査法で測定した場合)、および気泡生成を最小化する(過剰混合に敏感な概略的に血漿タンパクタイプ法である臨床化学法で混合した後で、過渡応答のサイズで測定した場合)の観点から、非常に効率的な混合ができることが判明した。従って、レムニスケート形状の混合用パターンは、広範囲の臨床化学測定法に関して、可能な限り最も広い範囲で作動することが可能であるため、臨床分析器への適用に有利である。驚くべきことに、レムニスケート形状パターンは、均質な混合結果、気泡発生の最小化、および40〜250マイクロリットル(μL)の範囲の体積の液体を500ミリ秒(ms)で混合すること、に関する多数の必要条件を満足するため、円形または楕円形パターンよりも改善されたものである。具体的には、レムニスケート形状の混合用パターンを良好に作り出すためには、従来の臨床化学試薬−患者サンプル溶液にみられるような粘性を有する液体溶液に対して、プローブニードル54N、60Nおよび62Nのプローブ先端54T、60Tおよび62Tの運動振幅が、約1.7〜2.6mmの目的範囲内に維持される必要があり、同時に、可動アーム85(プローブ先端54T、60Tおよび62Tが垂下する)の往復運動周波数は、同様に、一定の周波数範囲内に維持される必要があることが判明した。そのような場合には、所謂「良好」である混合プロセスは、少なくとも97%の溶液の均一度を作り出し、約500ミリ秒より短時間で完了し、溶液中で気泡または泡沫のような不均一性を発生させない混合プロセスであることを意味する。
【0030】
そのようなレムニスケート形状の混合用パターンは、可動アームから垂下する、プローブニードルの先端60Tを有する混合用アセンブリを用いて実現され、その可動アームが、往復運動手段を伴う磁性板に取り付けられ、その往復運動手段が、レムニスケート形状の混合用パターンで可動アームを往復運動させるように構成される。一般的に、可動アームは、バイアス機構、および、それに接触する固定された湾曲面を含む。たとえば、可動体85から垂下するプローブニードル60Nの側面図である図13に示す混合用アセンブリを用いて、レムニスケート形状の混合用パターンを作り出すことができる。可動体85は、垂直上向きに延伸されて、第2ピン90で固定ブロック89に取り付けられているローラーベアリング88が形成する湾曲表面に接する第1ピン86を支える、突出する脚部87を有する。図14(磁気混合用アセンブリ55の正面図)および図15(磁気混合用アセンブリ55の上面図)に示すように、プローブ本体85は、強磁性板91の近傍に設置した従来式の交流電磁石92を用いて、往復運動させることができる。可動体85のそのような往復運動は、アーム85が、互いに直角な第1および第2方向に往復運動するように、ローラーピン86をローラーベアリング88の外周に沿って往復回動させることで起こる。図15Aは、従来式のフラッシュバルブ114に接続する流量調節ポンプ112に、中空空気チューブ70で接続する、液体搬送プローブ先端60Tを含む、代替ポンプモジュール100を示す。バルブ114は、空気チューブ70を、フラッシュポンプ116、または、ピストンタイプの給水部118に接続するように動作可能である。従来式の空気圧測定変換器120は、プローブ先端60Tと、流量調節ポンプ112との間に接続される。
【0031】
図16は、電磁石92が可動体85を往復運動させる周波数によって、可動体85およびプローブニードル先端60Tの運動振幅が、変化する様子を示す。可動体85は、約125〜150Hzを中心とする概略範囲で、固有または共振周波数を有することが判っていて、この同じ概略範囲内で、往復運動の最大振幅が生じる。プローブニードル60Nが、より小型で、より小さい質量を有しているため、ニードル先端60Tは、約310〜340Hzを中心とする、より高い周波数範囲の、固有または共振周波数を有することが判っていて、この同じ概略範囲内で、往復運動の最大振幅が生じる。プローブニードル60Nで引き起こされる動きのパターンは、往復運動周波数が、可動体85の固有周波数に向かって増加するにつれて、いくつかの一連の「連結された小型長円形」から、レムニスケート形状の混合用パターンに進展することが判明した。このことは、図17に示され、図17では、同様に、混合器本体85の共振周波数を超えて、往復運動周波数が増加する場合には、プローブ60Tの混合用パターンが、長円形状になる傾向にあることが判明した。さらに、混合器本体85の共振周波数より小さく往復運動周波数が減少する場合には、プローブ60Tの混合用パターンは、独自性を失う。基本的に、図17に示すように、プローブ本体85の往復運動周波数を変化させると、プローブ60Tの種々の「レムニスケート形状」の混合用パターンができ、プローブ先端60Tの最適なレムニスケート形状の動きは、混合器本体85の、固有または共振周波数を中心とする周波数帯で引き起こされることが判明した。
【0032】
プローブニードル60Nの最下部、および、プローブ先端60Tの両方が、アリコート容器アレイ52内の試薬カートリッジ30、反応キュベット24、または、容器52Vの中で溶液の混合動作を行うので、先行技術の経験内では、一見したところ、ニードル先端60Tの混合用運動振幅を最大にすることを望んで、指向してきたように思われる。しかしながら、ニードル先端60Tの過大な混合用運動振幅は、とりわけ、比濁分析測定技術が用いられる血漿タンパク検査の場合には、「過剰混合」として知られる状況を引き起こしうる。従って、ニードル先端60Tの混合用運動振幅の範囲を注意深く管理することが望ましくなる。
【0033】
下記表2は、ニードル先端60Tの運動振幅の範囲の、検査結果への影響を、図12に示されるレムニスケート形状の混合用パターンの、アスペクト比への結果としての影響と、一緒にまとめたものである。プローブ先端60Tの運動振幅の望ましい範囲は、アスペクト比0.4〜0.6のレムニスケート形状の混合用パターンを作り出す、約1.7〜2.6mm(太線で囲んだ部分)の範囲であることが判明する。加えて、プローブ先端60Tの運動振幅を約1.7〜2.6mmの範囲に維持することは、過剰混合に敏感であることが知られているいくつかの検査の結果には悪影響を与えていない。
【0034】
【表2】

【0035】
可動体85の底部の小型タブ94は、図18(混合用アセンブリ55の下面図)に示されるように、固定ブロック89の最下部98に入り込むように設計される間隙96の中に設置されている。タブ94は、ニードル先端60Tの混合用運動振幅の範囲を制御する要素である。可動体85の運動振幅を減少させるために、タブ94および間隙96の寸法を矢印19Aに示す方向に変化させることができ、従って、プローブニードル60N、および、ニードル先端60Tの対応する運動振幅を減少させる。その効果は、図19に示され、可動体85の運動振幅は、大幅に減少するにもかかわらず、ニードル先端60Tの運動振幅は、適度に小さな範囲内に維持されることが明確に判明した。
【0036】
図19は、間隙96の大きさを、実験的に決定した1番目および2番目の値の間の範囲内で変化させることにより、プローブ先端60Tの運動振幅を、約1.7〜2.6mmの範囲内に維持することができる様子を示す。最も有利には、磁気混合用アセンブリ55の設計パラメータは、「良好」な混合が、0.5秒以下で実現し、泡沫を形成しないように選択される。「良好」な混合は、ゼロベースラインからの逸脱が2%未満の信号変化があること、として定義される。使用するプローブニードル60Nの剛性に応じて、電磁石92と板91の間の距離である空気間隙14G、間隙96の大きさ、および、可動体85の往復運動周波数を、プローブニードル54N、60Nおよび62Nの先端のレムニスケート形状混合用パターンの変位が約1.7〜約2.6mmの範囲内であり、アスペクト比が約0.5である範囲に収めるように調整する必要があることが判明した。
【0037】
本発明は、広範囲に、有用であり、適用することが可能であることが、当業者には当然理解される。本明細書に記載される以外の本発明の多くの実施態様、および、変更の他に、多くの変異、変更および同等の翻案も、また、本発明の本質または範囲から逸脱することなく、本発明およびその上述の記載から明らかであり、または、本発明およびその上述の記載で、正当に提案される。たとえば、往復運動をおこすために、電磁石および磁性板のかわりに、振動モーターを用いることができる。このように本発明は、特定の実施態様に関連して本明細書中に詳細に記載されてきたが、本開示は、本発明の実例および例示をするのみであり、本開示は、本発明の完全で使用可能な開示を与える目的で行われることが理解されるべきである。上述の開示は、本発明を制限することを意図するものではなく、または、本発明を制限すると解釈されるものではなく、または、そうでなければ、任意のそのような他の実施態様、改作、変異、変更、および、同等の翻案を排除することを意図するものではなく、本発明は、本明細書に添付の請求項、および、その同等物のみで制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨床分析機器内の溶液を混合するための改善された方法であって、
a)磁性板を有して該磁性板が取り付けられた可動アームから垂下して前記溶液に接触するプローブニードルと、
固定の湾曲表面に接触するバイアス機構を含む前記可動アームを往復運動させるように適応される往復運動手段と、
を含む混合用アセンブリを提供すること、
b)前記改善が、前記バイアス機構を前記湾曲表面に沿って回動させるように前記可動アームを往復運動させることであり、それにより前記プローブニードルが略レムニスケート形状のパターンで往復運動すること
を含む改善された方法。
【請求項2】
前記往復運動手段が、前記磁性板の近傍の電磁石を含む、
請求項1に記載の改善された方法。
【請求項3】
前記バイアス機構が、前記可動アームから突出する脚部を含み、前記脚部が垂直上向きに延伸されるピンを含む、
請求項1に記載の改善された方法。
【請求項4】
前記略レムニスケート形状のパターンが、約0.5のアスペクト比を有する、
請求項1に記載の改善された方法。
【請求項5】
往復運動が、約200〜750ミリ秒の時間間隔の間に実施され、
前記溶液が、約25〜250μLの範囲の体積を含み、
97%を超える混合の均一度が達成される、
請求項1に記載の改善された方法。
【請求項6】
前記可動アームの往復運動の周波数が、前記可動アームの固有周波数を略中心として50Hz以内の周波数範囲である、
請求項1に記載の改善された方法。
【請求項7】
前記固定されたブロックが、その中に形成された間隙を有し、
前記可動アームが、前記プローブの先端の混合用運動の振幅が約1.7〜2.5mmの範囲内であるように、前記間隙内に位置して延伸されたタブを有する、
請求項1に記載の改善された方法。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図12A】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図15A】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2013−500847(P2013−500847A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522893(P2012−522893)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/042600
【国際公開番号】WO2011/014386
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(508147326)シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】