レリーフ記録媒体の製造方法およびこれに用いる凹凸構造データ生成装置
【課題】 任意の立体画像の特徴をモチーフとして、媒体上に凹凸構造を形成する。
【解決手段】 XYZ座標系上に立体画像Aを定義し、XY平面上に画素P(i,j)からなる画素配列を定義する。画素の中心点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像Aの構成面との交点Q(x,y,z)を求め、その高さH(x,y)を求める。媒体上に形成する凹凸構造の最大高低差Dを定め、各画素P(i,j)について、M(x,y)=H(x,y) mod Dなる演算を行い、剰余M(x,y)を求める。各画素P(i,j)を構成する矩形状の単位面を、剰余M(x,y)だけ上方に平行移動した面をレリーフ単位面とし、このレリーフ単位面の集合体を用いて、媒体の表面に形成するレリーフ構成面を決定する。
【解決手段】 XYZ座標系上に立体画像Aを定義し、XY平面上に画素P(i,j)からなる画素配列を定義する。画素の中心点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像Aの構成面との交点Q(x,y,z)を求め、その高さH(x,y)を求める。媒体上に形成する凹凸構造の最大高低差Dを定め、各画素P(i,j)について、M(x,y)=H(x,y) mod Dなる演算を行い、剰余M(x,y)を求める。各画素P(i,j)を構成する矩形状の単位面を、剰余M(x,y)だけ上方に平行移動した面をレリーフ単位面とし、このレリーフ単位面の集合体を用いて、媒体の表面に形成するレリーフ構成面を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元構造体からなる立体画像の特徴を、表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造する方法に関する。また、そのようなレリーフ記録媒体を製造するために利用される凹凸構造データを生成する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カタログ、パンフレット、ポスター、カレンダー、トレーディングカード、包装パッケージ、書籍などの様々な印刷物において、表面に凹凸構造を形成してレリーフ模様を浮き上がらせる手法は古くから用いられている。また、この凹凸構造の表面に金属箔を張りつけた箔押製品も様々な商品として利用されている。このようなレリーフ記録媒体としては、紙の他にも様々な材質のものが利用されている。たとえば、金属製の銘板や樹脂成型品からなる贈答品、土産物、雑貨など様々である。
【0003】
このようなレリーフ記録媒体の特徴は、表面の凹凸構造として模様や絵柄となるモチーフが表現されるため、平面的な印刷物に比べて、より立体感のある表現が可能になる点である。もちろん、通常の平面的な印刷物でも、三次元立体を照明環境に配慮して撮影して印刷するようにすれば、ある程度は立体感をもった画像の提示を行うことは可能であるが、そこに再現されている陰影情報は、あくまでも被写体を特定の照明環境で撮影して得られた情報であり、単なる二次元画像にすぎない。これに対して、レリーフ記録媒体では、表面に実際の凹凸構造が形成されているため、より立体感をもった模様や絵柄の表現が可能になる。
【0004】
なお、二次元記録媒体上に三次元画像を記録する方法としては、ホログラムの手法があるが、製造コストが高く、一般的な印刷物に商業的に利用するのには不適当である。また、ホログラム記録媒体の再生像は、あくまでも視覚的にのみ把握される虚像であるのに対して、レリーフ記録媒体上に記録される模様や絵柄は、実在の凹凸構造体であり、触覚的な把握を行うことができる点において、レリーフ記録媒体は固有の利点を有している。
【0005】
このようなレリーフ記録媒体を製造する手法として、たとえば、下記の特許文献1には、二値画像に基づいてレリーフ模様となる凹凸構造を作成する手法が開示されており、特許文献2には、階調画像に基づいてレリーフ模様となる凹凸構造を作成する手法が開示されている。更に、特許文献3〜5には、階調画像に基づいてレリーフ模様となる凹凸構造を作成する手法が開示されている。
【特許文献1】特開平5−120450号公報
【特許文献2】特開平5−158207号公報
【特許文献3】特開平5−158208号公報
【特許文献4】特開平5−158209号公報
【特許文献5】特開平5−158210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前掲の各特許文献に開示されている従来技術を利用すれば、原画像として二次元画像を用い、この二次元画像上に表現された模様や絵柄をモチーフとして、レリーフ記録媒体上に凹凸構造を形成することができる。しかしながら、これらの従来技術では、原画像として三次元の立体画像を用いることはできない。
【0007】
最近は、コンピュータグラフィックス技術の発展により、様々な三次元オブジェクトの立体画像データを容易に入手することができるようになってきている。したがって、任意の立体画像を原画像として利用し、この立体画像の特徴をモチーフとして、レリーフ記録媒体上に凹凸構造を形成することができれば、レリーフとして表現可能な模様や絵柄の自由度は著しく向上する。しかしながら、レリーフ記録媒体の表面に形成される凹凸構造は、その高低差の寸法が限られているため、一般的な立体画像をそのままレリーフ記録媒体に記録することはできない。
【0008】
たとえば、高さ5cmの物体からなる立体画像を、高低差1mmの凹凸構造をもったレリーフ記録媒体上にそのまま記録するには、従来の手法では、高さ寸法を1/50に縮小して記録するような方法を採らざるを得ないが、このような方法では、もとの物体の特徴を適確に表現することは困難である。
【0009】
そこで本発明は、原画像として任意の立体画像を用い、この立体画像の特徴をモチーフとして、レリーフ記録媒体上に凹凸構造を形成する手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明の第1の態様は、三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造する方法において、
XYZ三次元座標系におけるXY平面上に配列された多数の画素からなる二次元画素配列から構成され、個々の画素にはZ軸に沿った高さを示す画素値Hが定義されており、画素値Hにより三次元構造体が表現された立体画像データを用意する段階と、
凹凸構造の最大高低差D(但し、Dは、三次元構造体のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階と、
立体画像データを構成する個々の画素の画素値Hに対して、M=H mod Dなる演算を施し、画素値Hを新たな画素値Mに置き換えた二次元画素配列から構成される置換画像データを求める段階と、
XY平面に沿って置かれた媒体の表面上に、置換画像データの各画素値Mに応じた高さをもつ凹凸構造からなるレリーフ構成面を形成する段階と、
を行うようにしたものである。
【0011】
(2) 本発明の第2の態様は、三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造する方法において、
XYZ三次元座標系上に、任意の面から構成される立体画像を定義する段階と、
この座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を定義する段階と、
各画素Pの所定位置に、座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、個々の画素Pについて、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める段階と、
個々の画素Pについて、交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める段階と、
凹凸構造の最大高低差D(但し、Dは、立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階と、
個々の画素Pについて、M(x,y)=H(x,y) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める段階と、
個々の画素Pのサンプル点S(x,y)の上方における剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通るレリーフ構成面を決定する段階と、
レリーフ構成面を媒体表面上に形成する段階と、
を行うようにしたものである。
【0012】
(3) 本発明の第3の態様は、三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造する方法において、
XYZ三次元座標系上に、任意の面から構成される立体画像を定義する段階と、
座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を定義する段階と、
各画素Pの所定位置に、座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、個々の画素Pについて、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める段階と、
個々の画素Pについて、交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める段階と、
凹凸構造の最大高低差Dと所定の調整パラメータK(但し、D/Kは、立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階と、
個々の画素Pについて、M(x,y)=(K・H(x,y)) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める段階と、
個々の画素Pのサンプル点S(x,y)の上方における剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通るレリーフ構成面を決定する段階と、
レリーフ構成面を媒体表面上に形成する段階と、
を行うようにしたものである。
【0013】
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第2または第3の態様に係るレリーフ記録媒体の製造方法において、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定するようにしたものである。
【0014】
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第4の態様に係るレリーフ記録媒体の製造方法において、
隣接するレリーフ単位面PP間の境界に生じる段差部に、XY平面に垂直な段差壁面Fを定義し、レリーフ単位面PPと段差壁面Fとの集合体をレリーフ構成面とするようにしたものである。
【0015】
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第2または第3の態様に係るレリーフ記録媒体の製造方法において、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面を傾斜させた面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定するようにしたものである。
【0016】
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第2〜第6の態様に係るレリーフ記録媒体の製造方法において、
記録対象となる立体画像を、XYZ三次元座標系上に配置された多数のポリゴンもしくはパラメトリック曲面として定義し、参照直線Lとの交点Q(x,y,z)を、ポリゴンもしくはパラメトリック曲面を示すデータを用いた演算処理によって求めるようにしたものである。
【0017】
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第2〜第7の態様に係るレリーフ記録媒体の製造方法において、
個々の画素Pを互いに同一サイズの矩形領域によって構成し、この矩形領域を縦横に隙間なく並べることによって二次元画素配列の定義を行い、各画素Pの中心位置にサンプル点S(x,y)を定義するようにしたものである。
【0018】
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第2〜第8の態様に係るレリーフ記録媒体の製造方法において、
最大のZ座標値をもつ交点もしくは最小のZ座標値をもつ交点のいずれか一方を統一して選択する選択ルールを予め定めておき、
所定の画素Pについて、参照直線Lに対して交差する面が複数あるために複数の交点が求まる場合には、選択ルールに基づいて選択された単一の交点を、当該画素Pについての交点Q(x,y,z)とするようにしたものである。
【0019】
(10) 本発明の第10の態様は、上述した第1〜第9の態様に係るレリーフ記録媒体の製造方法において、
表面にレリーフ構成面が形成された原版となる媒体を作成した後、当該原版を用いたプレス加工により、多数の媒体を製造するようにしたものである。
【0020】
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第10の態様に係るレリーフ記録媒体の製造方法において、
NC工作機械を用いた切削加工により、被加工媒体の表面にレリーフ構成面を形成し、原版となる媒体を作成するようにしたものである。
【0021】
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第10の態様に係るレリーフ記録媒体の製造方法において、
表面に被加工媒体を巻き付けた状態で回転駆動する回転ドラムと、強度変調したレーザビームを照射するレーザビーム照射部と、このレーザビームを回転ドラムの回転軸方向に走査する走査部と、を有する製版装置を用いたレーザ加工により、被加工媒体の表面にレリーフ構成面を形成し、原版となる媒体を作成するようにしたものである。
【0022】
(13) 本発明の第13の態様は、三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造するプロセスで用いられるプログラムにおいて、
XYZ三次元座標系上に定義された立体画像Aを示す立体画像データを入力する段階と、
この座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を示すデータを設定する段階と、
各画素Pの所定位置に、座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、個々の画素Pについて、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める段階と、
個々の画素Pについて、交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める段階と、
凹凸構造の最大高低差D(但し、Dは、立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階と、
個々の画素Pについて、M(x,y)=H(x,y) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める段階と、
個々の画素Pのサンプル点S(x,y)の上方における剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通るレリーフ構成面を決定する段階と、
レリーフ構成面を示すデータを出力する段階と、
をコンピュータに実行させるようにしたものである。
【0023】
(14) 本発明の第14の態様は、三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造するプロセスで用いられるプログラムにおいて、
XYZ三次元座標系上に定義された立体画像Aを示す立体画像データを入力する段階と、
この座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を示すデータを設定する段階と、
各画素Pの所定位置に、座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、個々の画素Pについて、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める段階と、
個々の画素Pについて、交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める段階と、
凹凸構造の最大高低差Dと所定の調整パラメータK(但し、D/Kは、立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階と、
個々の画素Pについて、M(x,y)=(K・H(x,y)) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める段階と、
個々の画素Pのサンプル点S(x,y)の上方における剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通るレリーフ構成面を決定する段階と、
レリーフ構成面を示すデータを出力する段階と、
をコンピュータに実行させるようにしたものである。
【0024】
(15) 本発明の第15の態様は、上述した第13または第14の態様に係るプログラムにおいて、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定する処理をコンピュータに実行させるようにしたものである。
【0025】
(16) 本発明の第16の態様は、上述した第15の態様に係るプログラムにおいて、
隣接するレリーフ単位面PP間の境界に生じる段差部に、XY平面に垂直な段差壁面Fを定義し、レリーフ単位面PPと段差壁面Fとの集合体をレリーフ構成面とする処理をコンピュータに実行させるようにしたものである。
【0026】
(17) 本発明の第17の態様は、上述した第13または第14の態様に係るプログラムにおいて、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面を傾斜させた面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定する処理をコンピュータに実行させるようにしたものである。
【0027】
(18) 本発明の第18の態様は、三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造するために利用される、凹凸構造データを生成する装置において、
XYZ三次元座標系上に定義された立体画像を示す立体画像データを格納する立体画像データ格納部と、
この座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を定義するための画素配列データを格納し、各画素Pの所定位置に定義されたサンプル点S(x,y)の位置を示すサンプル点位置データと、各画素Pを構成する単位面を示す画素単位面データと、を提供する画素配列データ提供部と、
サンプル点位置データと立体画像データとに基づいて、個々の画素Pについて、そのサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める交点演算部と、
個々の画素Pについて、交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める高さ演算部と、
凹凸構造の最大高低差D(但し、Dは、立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を格納するパラメータ格納部と、
個々の画素Pについて、M(x,y)=H(x,y) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める剰余演算部と、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる各単位面をそれぞれレリーフ単位面PPとして求めるレリーフ単位面演算部と、
レリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定し、このレリーフ構成面を示すデータを、レリーフ記録媒体の表面に形成すべき凹凸構造データとして出力するレリーフ構成面作成部と、
を設けるようにしたものである。
【0028】
(19) 本発明の第19の態様は、三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造するために利用される、凹凸構造データを生成する装置において、
XYZ三次元座標系上に定義された立体画像を示す立体画像データを格納する立体画像データ格納部と、
この座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を定義するための画素配列データを格納し、各画素Pの所定位置に定義されたサンプル点S(x,y)の位置を示すサンプル点位置データと、各画素Pを構成する単位面を示す画素単位面データと、を提供する画素配列データ提供部と、
サンプル点位置データと立体画像データとに基づいて、個々の画素Pについて、そのサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める交点演算部と、
個々の画素Pについて、交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める高さ演算部と、
凹凸構造の最大高低差Dと所定の調整パラメータK(但し、D/Kは、立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を格納するパラメータ格納部と、
個々の画素Pについて、M(x,y)=(K・H(x,y)) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める剰余演算部と、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる各単位面をそれぞれレリーフ単位面PPとして求めるレリーフ単位面演算部と、
レリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定し、このレリーフ構成面を示すデータを、レリーフ記録媒体の表面に形成すべき凹凸構造データとして出力するレリーフ構成面作成部と、
を設けるようにしたものである。
【0029】
(20) 本発明の第20の態様は、上述した第18または第19の態様に係るレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置において、
立体画像データ格納部が、XYZ三次元座標系上に配置された多数のポリゴンもしくはパラメトリック曲面を示すデータを、立体画像データとして格納するようにしたものである。
【0030】
(21) 本発明の第21の態様は、上述した第18〜第20の態様に係るレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置において、
画素配列データ提供部が、画素Pを構成する矩形の縦サイズと横サイズを示すデータを画素配列データとして格納しており、この画素Pを縦横に隙間なく並べることによって二次元画素配列の定義を行い、各画素Pの中心位置に定義されたサンプル点S(x,y)の位置を示すサンプル点位置データと、各画素Pを構成する矩形を示す画素単位面データと、を演算によって求めるようにしたものである。
【0031】
(22) 本発明の第22の態様は、上述した第18〜第21の態様に係るレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置において、
交点演算部が、最大のZ座標値をもつ交点もしくは最小のZ座標値をもつ交点のいずれか一方を統一して選択する選択ルールを保持しており、
所定の画素Pについて、参照直線Lに対して交差する面が複数あるために複数の交点が求まる場合には、選択ルールに基づいて選択された単一の交点を、当該画素Pについての交点Q(x,y,z)とするようにしたものである。
【0032】
(23) 本発明の第23の態様は、上述した第18〜第22の態様に係るレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置において、
レリーフ構成面作成部が、隣接するレリーフ単位面PP間の境界に生じる段差部に、XY平面に垂直な段差壁面Fを定義し、レリーフ単位面PPと段差壁面Fとの集合体を示すデータを、レリーフ記録媒体の表面に形成すべき凹凸構造データとして出力するようにしたものである。
【0033】
(24) 本発明の第24の態様は、上述した第18〜第22の態様に係るレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置において、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面を傾斜させた面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係るレリーフ記録媒体の製造方法およびこれに用いる凹凸構造データ生成装置によれば、原画像として任意の立体画像を用い、この立体画像の特徴をモチーフとして、レリーフ記録媒体上に凹凸構造を形成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0036】
<<< §1.立体画像をモチーフとするレリーフ記録媒体 >>>
ここでは、まず、立体画像をモチーフとするレリーフ記録媒体を作成する一般的な手順とその問題点を述べておく。
【0037】
たとえば、図1に示すような立体画像Aをレリーフ記録媒体の表面に記録することを考えてみよう。図示の立体画像Aは、三次元の複雑な構造をもった「やかん」を示す立体画像であり、実際には、その表面を形成する面のデータによって定義することができる(内部構造を示すデータは不要である)。ここでは、この立体画像Aの高さ寸法がGであったとしよう。このような立体画像Aを、レリーフ記録媒体の表面に記録しようとしても、立体情報をそのまま記録することはできない。レリーフ記録媒体は、表面に凹凸構造が形成された三次元物体であるが、当該凹凸構造の最大高低差Dには制限があり(カタログ、パンフレット、ポスター、カレンダーなどの一般的な紙製品の場合、せいぜいD=数mm程度である)、立体画像Aの高さ方向の立体情報をそのまま凹凸構造として記録することはできない。
【0038】
図2は、図1に示す立体画像Aを高さ方向に縮小してレリーフ記録媒体R上に記録した例を示す斜視図である。すなわち、立体画像Aを高さ方向にD/G倍に縮小した立体構造が、レリーフ記録媒体Rの表面に凹凸構造として形成されることになる。このように、高さ方向について縮小すれば、レリーフ記録媒体Rの表面上の凹凸構造の高低差はDに抑えられる。しかしながら、縮小倍率D/Gが小さくなればなるほど、レリーフ記録媒体R上に形成される立体構造体の立体画像Aに対する形状の歪みが増大し、観察者による、もとの立体画像Aの形状把握が困難になる。
【0039】
本発明の根源は、もとの立体画像Aを縮小して媒体上に記録するという手法を採る代わりに、もとの立体画像Aの立体的な形状の特徴を抽出して媒体上に記録するという手法を採るという発想にある。本願発明者は、図1に示すような立体画像Aを上方から観察したときの立体画像A表面各部の面の傾きの情報を抽出し、この傾きの情報を媒体Rの表面上に凹凸構造として記録することにより、立体画像Aを上方から観察した場合の特徴を記録できるのではないかと考えた。以下に述べる手法は、このような基本的な考え方に基づくものである。
【0040】
結局、本発明では、レリーフ記録媒体R上には、立体画像Aの各部分ごとの面の傾きの情報のみが記録されることになるので、観察者に対して、もとの立体画像Aの全体的な形状を正確に伝達することはできない。しかしながら、カタログ、パンフレット、ポスター、カレンダーなど、一般的な用途に利用されるレリーフ記録媒体の役割は、観察者に対して、何らかの模様や絵柄を提示することにあるので、もとの立体画像Aの特徴に由来する何らかのモチーフが表現されていれば足りる。したがって、以下に述べる本発明に係る手法で作成されるレリーフ記録媒体は、産業上、十分な利用可能性を有するものである。
【0041】
<<< §2.本発明に係るレリーフ記録媒体の製造方法の基本概念 >>>
次に、本発明に係るレリーフ記録媒体の製造方法の基本概念を説明する。本発明では、図1に示す「やかん」をモチーフとした立体画像Aのように、任意の三次元構造体からなる立体画像に基づいて、レリーフ記録媒体を製造することが可能である。ただ、ここでは、説明の便宜上、図3に示すように、半球状の立体画像Aを用いてレリーフ記録媒体を製造する単純な例について、本発明の基本概念を説明しよう。
【0042】
いま、図3に示すように、XYZ三次元座標系を定義し、この座標系上に半球状の立体画像Aが配置されているものとする。説明の便宜上、この半球状の立体画像Aが、XY平面上に置かれているものとしよう(立体画像Aの円形底面がXY平面に一致するものとする)。ここで、XY平面上における座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像Aを構成する上面との交点Q(x,y,z)を求め、当該交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める。サンプル点S(x,y)は、XY平面上の点であるから、結局、交点Qの高さH(x,y)は、交点QのZ座標値に一致することになるが、ここでは、座標(x,y)で示される位置における立体画像Aの表面の高さを示す値という意味で、H(x,y)という表記を行うことにする。
【0043】
一方、この座標系のXY平面上に、図4に示すような二次元画素配列を定義する。ここでは、この二次元画素配列の構成要素となる1つの画素を、P(i,j)で示すことにする。ここで、iは当該画素が位置する配列の行数を示し、jは当該画素が位置する配列の列数を示している。したがって、画素P(i,j)は、この二次元画素配列の第i行・第j列目に位置する画素ということになる。たとえば、図の左上に示した画素P(2,3)は、第2行・第3列目の画素である。画素P(2,3)は、図にハッチングを施して示すように、正方形状の単位面から構成されている。
【0044】
このように、図示の例では、個々の画素P(i,j)は正方形状の単位面から構成されているが、画素を構成する単位面の形状は任意でかまわない。要するに、XY平面上に、それぞれ任意形状をもった単位面からなる画素Pを多数配列することにより、二次元画素配列が定義されていればよい。もっとも、実用上は、個々の画素Pを互いに同一サイズの矩形領域によって構成し、この矩形領域を縦横に隙間なく並べることによって二次元画素配列の定義を行うのが好ましい。
【0045】
そして、個々の画素P(i,j)内にそれぞれサンプル点Sを定義する。画素P(i,j)内に定義されたサンプル点はS(i,j)と表記することも可能であるが、ここでは、各サンプル点は、XY座標系における何らかの座標値(x,y)をもった点であるため、サンプル点S(x,y)と表記することにする。ここでは、図4に示すように、各画素P(i,j)の中心位置にサンプル点S(x,y)を定義した例を示すが、個々のサンプル点Sの位置は、個々の画素Pを構成する単位面内の任意の位置(単位面を構成する領域の境界線上でもよい)でかまわない。たとえば、図4に示す正方形状の各画素Pの左上隅点に、当該画素のサンプル点Sを定義してもよい。
【0046】
さて、図3で説明したように、XY平面上の任意のサンプル点S(x,y)について、当該サンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像Aを構成する面との交点Q(x,y,z)を求め、当該交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求めることができるので、図4に示す個々の画素P(i,j)について、それぞれサンプル点S(x,y)の位置における立体画像Aの上面の高さH(x,y)を求めることができる。なお、上方に立体画像Aが存在せずに、交点Qが存在しない画素については、たとえば、高さH(x,y)=0のように、便宜的に何らかの高さを定義しておけばよい。
【0047】
こうして各画素ごとに求められた高さH(x,y)を、当該画素の画素値とすれば、このような画素値をもった画素の集合体からなるデータは、形式的には二次元画像データの形態をとるが、その実体は、三次元の立体画像を示すデータになる。もっとも、1つの画素には、1つの高さを示す画素値しか定義できないので、表現可能な立体画像の形状は制限を受けることになる。たとえば、図3に示すような半球状の立体画像Aを表現することはできるが、完全な球状の立体画像を表現することはできない。このように、高さの値を画素値にもつ二次元画素配列からなるデータは、一般に、Height Field データと呼ばれている。
【0048】
本発明は、このようなHeight Field データで表現される三次元構造体からなる立体画像をモチーフとして、その特徴をレリーフ記録媒体の表面に凹凸構造として記録することを前提とした技術である。上述したとおり、このHeight Field データは、XYZ三次元座標系におけるXY平面上に配列された多数の画素からなる二次元画素配列から構成され、個々の画素にはZ軸に沿った高さを示す画素値Hが定義されており、この画素値Hにより三次元構造体が表現された立体画像データということができる。
【0049】
続いて、レリーフ記録媒体の表面に形成する凹凸構造の最大高低差Dを決定する。この最大高低差Dは、たとえば、図2に示す例のように、レリーフを構成する凹凸構造の最大高さに相当する寸法であり、前述したように、カタログ、パンフレット、ポスター、カレンダーなどの一般的な紙製品の場合、せいぜいD=数mm程度である。一方、図1に示すように、モチーフとして用いる「やかん」を示す立体画像の高さGは、G>Dである(G≦Dの場合、そもそも本発明に係る工夫を施す必要はない)。したがって、ここで設定する最大高低差Dは、モチーフとして用いる立体画像(三次元構造体)のZ軸方向の最大寸法よりも小さいことが前提となる。
【0050】
最大高低差Dが定まったら、上述した立体画像データ(Height Field データ)を構成する個々の画素の画素値Hに対して、M=H mod Dなる演算を施し、画素値Hを新たな画素値Mに置き換えた二次元画素配列から構成される置換画像データを求める。たとえば、第i行・第j列目に位置する画素P(i,j)については、その画素値H(x,y)を用いた「M(x,y)=H(x,y) mod D」なる演算により、新たな画素値M(x,y)が求められる。置換画像データは、すべての画素についての画素値Hを新たな画素値Mに置き換えることによって得られる。ここで、「mod」は剰余を求めるための演算子であり、「H(x,y) mod D」は、H(x,y)の値をDで除したときの剰余を示している。したがって、新たな画素値M(x,y)は、H(x,y)の値をDで除したときの剰余を示している。
【0051】
図5は、図3の正面図であり、縦方向に引いた多数の実線は、この半球のY軸に平行な直径上に並んだ各サンプル点S(x,y)の位置に立てた垂線(Z軸に平行な線)を示しており、その上端は、半球状の立体画像Aの上面位置となっている。別言すれば、これら垂線の下端はサンプル点S(x,y)の位置となり、上端は交点Q(x,y,z)の位置となり、その長さは、高さH(x,y)に対応する。一方、図5において、横方向に引いた水平破線は、Dの整数倍の位置を示している。各画素についての剰余M(x,y)は、当該画素内のサンプル点S(x,y)の位置に立てた垂線が交差する水平破線のうち、最も上方にある水平破線より上の半端な部分の長さということになる。
【0052】
図6は、各サンプル点S(x,y)の垂直上方に、上空点QQ(x,y,z)をプロットした状態を示す正面図である。ここで、上空点QQ(x,y,z)は、サンプル点S(x,y)の上方における、図5に示す剰余M(x,y)の高さに位置する点である。剰余M(x,y)<最大高低差Dであるから、図6に示すように、各上空点QQ(x,y,z)は、Z軸上の0〜Dの区間内に位置することになり、Z軸上のD〜5Dの区間内には存在しない。
【0053】
結局、図5に示す半球状の立体画像Aを示す立体画像データ(Height Field データ)を構成する個々の画素の画素値Hを、新たな画素値M(剰余M)に置き換えることにより得られる置換画像データは、図6に示す上空点QQ(x,y,z)の集合体からなる新たな立体画像を示すデータということになる。そこで、XY平面に沿って置かれた媒体の表面上に、この置換画像データの各画素値Mに応じた高さをもつ凹凸構造からなるレリーフ構成面を形成すれば、個々の上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通るレリーフ構成面が形成されたレリーフ記録媒体を得ることができる。
【0054】
図7は、図6に示す各上空点QQ(x,y,z)を通るレリーフ構成面Bを表面に形成したレリーフ記録媒体Rを示す縦断面図である。レリーフ構成面Bは、図6に示す各上空点QQ(x,y,z)を連結する凹凸面になる。図示の例の場合、Z=−Eなる式で示される平面上に、このレリーフ記録媒体Rの底面が位置しており、レリーフを構成する凹凸構造は、Z=Dなる式で示される平面と、Z=0なる式で示される平面(XY平面)との間に形成されている。ここでDは、前述のように設定した「レリーフ記録媒体Rに形成する凹凸構造の最大高低差」であり、Eは、「レリーフ記録媒体Rの基体部の厚み」ということになる。
【0055】
図7に示すレリーフ記録媒体Rの上面を形成するレリーフ構成面Bと、図5に示す半球状の立体画像Aの上面とを比較すると、全体的な形状は全く異なっているが、図5に示す立体画像Aの上面の各部の傾斜に関する情報が、図7に示すレリーフ構成面Bの部分部分に表現されていることがわかる。すなわち、図7に示すレリーフ構成面Bには、原画像として用いられた半球状の立体画像Aの特徴をモチーフとした凹凸構造が形成されていることになり、レリーフ記録媒体Rに記録されているレリーフのデザインには、半球状の立体画像Aの特徴が反映されていることになる。
【0056】
なお、図6に示すように、各画素の上方にそれぞれ上空点QQ(x,y,z)が定義された後に、これら個々の上空点QQ(x,y,z)を通るレリーフ構成面を形成する方法の一例としては、たとえば、個々の上空点QQ(x,y,z)を滑らかに連結するような自由曲面を演算によって求める手法を採ることが可能である。一般に、三次元空間上に配置された複数の任意点を滑らかに連結するような自由曲面は、ベジェ曲面やスプライン曲面など、様々な曲面が知られており、これらの曲面を演算によって求める手法も様々なものが知られている。したがって、図6に示す個々の上空点QQ(x,y,z)の座標値が得られれば、これら座標値を用いた演算により、図7に示すようなレリーフ構成面Bを求めることができる。もちろん、この場合、必ずしも全上空点QQ(x,y,z)の位置を正確に通る自由曲面を求める必要はなく、多少の誤差が生じてもかまわない。
【0057】
ただ、そのような自由曲面を求める演算は、通常、コンピュータに多大な負荷を課することになり、また、そのような自由曲面からなるレリーフ構成面Bを、実際の物理的な媒体の表面上に形成する際にも、加工作業上の技術的な負担は大きい。そこで、実用上は、次のような簡便な方法で、レリーフ構成面Bを求めるようにするのが好ましい。
【0058】
ここで述べる簡便な方法は、XY平面上に定義した画素P(i,j)を構成する単位面を、当該画素P(i,j)について求められた剰余M(x,y)だけ上方に(Z軸方向に)平行移動し、移動後に得られる単位面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面Bを決定する方法である。
【0059】
図8は、図7に示すレリーフ構成面Bを、このような簡便な方法で形成した場合の部分拡大図である。図8のY軸上に示す太線部分は、XY平面上に定義された画素P(i,j)の単位面であり、その上方に示されているPP(i,j)は、この単位面を上方に剰余M(x,y)だけ平行移動することにより得られたレリーフ単位面である。ここに示す例の場合、サンプル点S(x,y)は、画素P(i,j)の中心点であるから、上空点QQ(x,y,z)は、レリーフ単位面PP(i,j)の中心点になる。
【0060】
結局、図4の二次元画素配列上に示す個々の画素P(i,j)の単位面(この例は、正方形の領域)が四角いタイルであるとすれば、これら個々のタイルを、Z軸方向(図4の紙面垂直上方)に、それぞれ剰余M(x,y)だけ平行移動して固定することにより、レリーフ構造面Bが得られることになる。この場合、移動後の個々のタイルが、それぞれレリーフ単位面PPということになる。ただ、隣接するレリーフ単位面PP間の境界には段差部が生じるので、この段差部には、XY平面に垂直な段差壁面Fを定義し、レリーフ単位面PPと段差壁面Fとの集合体をレリーフ構成面Bとする。図8において、隣接するレリーフ単位面PP間を連結している破線は、この段差壁面Fを示しており、水平方向の実線で示されているレリーフ単位面PPと、垂直方向の破線で示されている段差壁面Fとの集合体が、レリーフ構成面Bを形成していることになる。
【0061】
このような簡便な方法を採ると、レリーフ構成面Bは、滑らかな曲面にはならず、段差構造をもった多数の平面の集合体によって構成されることになるが、1つの画素P(i,j)の縦横寸法を十分に小さく設定すれば、各レリーフ単位面PPも非常に微小な平面領域となるので、実用上は問題は生じない。たとえば、1つの画素P(i,j)を、一辺が100μmの正方形に設定すれば、各レリーフ単位面PP(i,j)も一辺が100μmの正方形になるので、肉眼でレリーフ構成面Bを観察する限り、図7に示すような滑らかな曲面として観察されることになる。
【0062】
<<< §3.本発明に係るレリーフ記録媒体の製造方法の具体的手順 >>>
図9は、本発明に係るレリーフ記録媒体の製造方法の手順を示す流れ図であり、三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造するプロセスが示されている。
【0063】
この流れ図におけるステップS1〜S4の手順は、前述した「Height Field データ」を作成する手順であり、ステップS5〜S8の手順は、この「Height Field データ」を構成する個々の画素の画素値H(x,y)を、剰余M(x,y)に置換し、レリーフ構成面を作成する手順である。このステップS1〜S8の手順は、設計者が手作業や計算機を利用して実行することも可能であるが、実用上は、これらの各手順を実行する専用プログラムを用意し、当該プログラムを組み込んだコンピュータによって実行させることになる。したがって、ステップS1〜S8の処理は、実際には、コンピュータによって実行される処理ということになる。
【0064】
これに対して、最後のステップS9は、このコンピュータから出力される凹凸構造データを利用して、物理的な媒体の表面に凹凸構造を形成する工程であり、何らかの加工装置を用いて行われるプロセスになる。このステップS9の具体的なプロセスについては後述する。
【0065】
さて、まずステップS1において、XYZ三次元座標系上に、立体画像Aを定義する段階が行われる。この立体画像Aは、原画像となる仮想物体であり、この仮想物体の表面形状の特徴(各部の面の傾きの情報)が抽出され、記録媒体Rの表面上に凹凸構造として記録されることになる。前述した§2では、便宜上、非常に単純は半球状の立体画像Aを用いた説明を行ったが、ここでは、図10に示すように、XYZ三次元座標系上に、「やかん」を示す立体画像Aが定義されたものとしよう。上述したとおり、本発明で用いられる立体画像Aは、その表面が定義されていれば足り、内部構造の定義は不要である。
【0066】
コンピュータ上での立体画像Aの定義は、立体画像Aを示す三次元形状データをコンピュータ内の格納場所に格納することによって行われる。通常、コンピュータグラフィックスの分野では、三次元の立体画像は、XYZ三次元座標系上に配置された多数のポリゴンもしくはパラメトリック曲面として定義される。本発明においても、このようなポリゴンもしくはパラメトリック曲面を示すデータによって、立体画像Aを定義することができる。
【0067】
続くステップS2では、このXYZ三次元座標系におけるXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を定義する段階が行われる。個々の画素Pは、それぞれが単位面を構成していれば、どのような大きさ、どのような形状のものであってもかまわない。もちろん、個々の画素の大きさや形状が、それぞれ異なっていてもかまわないし、これらの画素をどのように並べて二次元画素配列を定義してもかまわない。ただ、後のステップにおける演算負担を軽減するために、実用上は、個々の画素Pを互いに同一サイズの矩形領域によって構成し、この矩形領域を縦横に隙間なく並べることによって二次元画素配列の定義を行うようにするのが好ましい。
【0068】
図10に示す例では、XY平面上に正方形状をした画素Pを縦横にマトリックス状に隙間なく並べることによって二次元画素配列の定義が行われた例が示されている。図に示す画素P(i,j)は、この二次元画素配列におけるi行j列目の画素である。コンピュータ上で、このような二次元画素配列を定義するには、1つの画素Pの寸法(正方形状の画素の場合は、その一辺の長さ)を示すデータをコンピュータ内の格納場所に格納するだけで足りる。矩形状の画素Pの寸法が規定されていれば、図示のように、座標系の原点Oを基準として、多数の画素を座標系に正則な状態で多数配置することが可能であるから、i行j列目の画素の位置を一義的に求めることができる。
【0069】
次のステップS3では、ステップS1で定義した立体画像上に、ステップS2で定義した各画素P(i,j)に対応する交点Q(x,y,z)を求める処理が行われる。具体的には、各画素P(i,j)の所定位置(この例では中心位置)に、座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、個々の画素P(i,j)について、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像Aを構成する面との交点Q(x,y,z)を求めればよい。
【0070】
図10には、画素P(i,j)について定義された参照直線Lが破線で示されており、参照直線Lと立体画像Aを構成する面との交点Q(x,y,z)が求められた状態が示されている。前述したとおり、立体画像Aは、多数のポリゴンもしくはパラメトリック曲面として定義されているので、参照直線Lとの交点Q(x,y,z)は、これらポリゴンもしくはパラメトリック曲面を示すデータを用いた演算処理によって求めることができる。なお、任意の直線とポリゴンもしくはパラメトリック曲面との交点座標(x,y,z)を求める具体的な演算手法は、既にコンピュータグラフィックスの分野で広く利用されている手法であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0071】
ところで、図10では、参照直線Lと立体画像Aを構成する面との交点Q(x,y,z)を1点だけしか示していないが、図示のような複雑な立体構造をもつ立体画像Aを用いた場合、参照直線Lとの交点が複数存在する場合もありうる。このように複数の交点が存在する場合には、いずれか1つの交点を選択する必要がある。図11は、この交点選択プロセスの一例を示す断面図である。図示の例の場合、参照直線Lと立体画像Aを構成する面との交点として、Q1〜Q4の4点が示されている。これは、参照直線Lが立体画像Aを構成する4つの独立した面と交差するためである。
【0072】
このように、複数の交点が存在する場合には、予めいずれか1つの交点を選択するための選択ルールを定めておき、当該ルールに従って、1つの交点のみを選択するようにすればよい。具体的には、たとえば、「最大のZ座標値をもつ交点を選択する」という統一した選択ルールを予め定めておき、いずれの画素についても、複数の交点が存在する場合には、常に「最大のZ座標値をもつ交点を選択する」という選択ルールを適用して1つの交点を選択するようにすればよい。図11に示す例の場合、交点Q4が選択されることになる。
【0073】
もちろん、「最小のZ座標値をもつ交点を選択する」という統一した選択ルールを予め定めた場合は、図11に示す例の場合、交点Q1が選択されることになる。要するに、予め何らかの統一した選択ルールを定めておくようにし、所定の画素Pについて、参照直線Lに対して交差する面が複数あるために複数の交点が求まる場合には、当該選択ルールに基づいて選択された単一の交点を、当該画素Pについての交点Q(x,y,z)とすればよい。
【0074】
このように、統一した選択ルールを予め定めることは、結局、立体画像Aのうちの特定の面を選択することに他ならない。たとえば、「最大のZ座標値をもつ交点を選択する」という選択ルールを定めた場合、図11に示す例において、立体画像Aを上方から見下ろすように観察した場合に最前面に位置する面を選択することを意味し、後述するステップで最終的に作成される凹凸構造データは、当該最前面の特徴を抽出したデータということになる。したがって、この場合、「やかん」の把手の上面を含めた特徴情報が、レリーフ記録媒体上に記録されることになる。
【0075】
一方、「最小のZ座標値をもつ交点を選択する」という選択ルールを定めた場合、図11に示す例において、立体画像Aを上方から見下ろすように観察した場合に最背面(実際には、隠面となる)に位置する面を選択することを意味し、後述するステップで最終的に作成される凹凸構造データは、当該最背面の特徴を抽出したデータということになる。したがって、この場合、「やかん」の底面を含めた特徴情報が、レリーフ記録媒体上に記録されることになる。
【0076】
結局、図11に示す「やかん」のような複雑な立体構造をもった立体画像Aの全表面のデータを用意したとしても、選択ルールによって選択された面のデータのみが利用されることになるので、実用上は、ステップS1で定義する立体画像Aは、特徴を抽出する対象となる特定の面のみを有する画像で十分である。たとえば、図11に示す「やかん」の場合、「最大のZ座標値をもつ交点を選択する」という選択ルールを定めるのであれば、「やかんの底面」を示すデータなどは不要になる。
【0077】
図12は、立体画像Aとして、上方に凸となる半球面を用いた場合の交点決定プロセスを示す斜視図である(§2で説明した単純なモデル)。この立体画像Aを示すデータは、半球面の表面を示すデータのみで十分であり、底面を示すデータは必要ない。このようなデータによって立体画像Aを示せば、交点Q(x,y,z)は常に単一の点となるので、上述したような選択処理を行う必要はなくなる。なお、§2では、図3に示すように、半球面の底面がXY平面上に位置する例を示したが、実際は、図12に示す例のように、立体画像Aの底面は、必ずしもXY平面上に位置している必要はない。
【0078】
さて、こうして、各画素P(i,j)についての交点Q(x,y,z)が求まったら、続くステップS4において、各画素P(i,j)について、交点Q(x,y,z)の高さH(x,y)を求める処理が行われる。もっとも、この高さH(x,y)は、交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さであるから、実際には、交点Q(x,y,z)のZ座標値がそのまま高さH(x,y)になる。したがって、ステップS4の処理は、各画素P(i,j)について、対応する交点Q(x,y,z)のZ座標値を高さH(x,y)として抽出する処理ということになる。既に述べたとおり、こうして抽出した高さH(x,y)の値を各画素の画素値とする二次元画素配列は、「Height Field データ」を構成することになる。
【0079】
なお、最近は、コンピュータグラフィックス技術の発展により、様々な三次元オブジェクトの立体画像データを容易に入手することができるようになってきている。したがって、何らかの「Height Field データ」が既に準備されており、これを流用することが可能な場合は、図9に示すステップS1〜S4のプロセスを省略することができる。
【0080】
続く、ステップS5では、レリーフの最大高さDの設定が行われる。このDは、既に述べたとおり、これから作成するレリーフ記録媒体R上に形成される凹凸構造の最大高低差Dであり、レリーフ記録媒体Rの用途などに応じて、適宜、所望の値を設定すればよい。
【0081】
一方、ステップS6では、調整パラメータKが設定される。この調整パラメータKは、ステップS1で定義した立体画像Aの寸法を調整するためのパラメータであり、立体画像Aの寸法が適切な値に設定されている場合には不要である。ただ、ステップS1で定義する立体画像Aは、多くの場合、様々な方法で用意された三次元オブジェクトの立体画像データであるため、その寸法は、必ずしも本発明の実施に適切な値になっているとは限らない。したがって、実用上は、この調整パラメータKを自由な値に設定できるようにしておき、適宜、必要な調整を行うことができるようにしておくのが好ましい。
【0082】
なお、すべての画素について、剰余M=高さHとなるような場合には、本発明を実施する意味がないので、ここで設定する調整パラメータKは、立体画像AのZ軸方向の最大寸法をGとした場合、D/K<Gとなるような値に設定する必要がある。
【0083】
続く、ステップS7では、個々の画素Pについて、「M(x,y)=(K・H(x,y)) mod D」なる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める処理が行われる。§2では、「M(x,y)=H(x,y) mod D」なる演算式を示したが、ここでは、上記調整パラメータKを高さH(x,y)に乗じた「K・H(x,y)」をDで除したときの剰余をM(x,y)としている。このように調整パラメータKを乗じることにより、立体画像Aの寸法が適切な値に設定されていなかった場合に、調整が可能になる点は、上述したとおりである。
【0084】
次のステップS8では、レリーフ構成面を決定する処理が行われる。レリーフ構成面Bは、個々の画素Pのサンプル点S(x,y)の上方における剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通る面として、様々な方法で決定することができる。ただ、実用上は、§2で述べたとおり、個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面Bを決定すれば、単純な演算でレリーフ構成面を決定できる。実際には、図8で説明したとおり、隣接するレリーフ単位面PP間の境界に生じる段差部に、XY平面に垂直な段差壁面Fを定義し、レリーフ単位面PPと段差壁面Fとの集合体をレリーフ構成面Bとすることになる。
【0085】
なお、ステップS6で設定する調整パラメータKの値を種々変更すると、ステップS8で決定されるレリーフ構成面Bの形状も変化することになる。したがって、オペレータは、調整パラメータKの値に様々な値を設定し、その都度、でき上がるレリーフ構成面Bの形状を確認し、試行錯誤で、最も好ましいレリーフ構成面を得ることができる。
【0086】
こうして、ステップS8が完了した段階で、レリーフ構成面Bが求められていることになるので、最後のステップS9では、こうして得られたレリーフ構成面Bを媒体表面上に形成する処理が行われ、最終的に、物理的なレリーフ記録媒体Rが得られることになる。得られたレリーフ記録媒体R上には、図10に示す「やかん」の形状そのものが表現されているわけではないが、「やかん」の各部の傾斜に関する情報が表現されていることになり、記録されているレリーフのデザインには、「やかん」の形状に関する特徴が反映されていることになる。別言すれば、得られたレリーフ記録媒体R上の凹凸構造は、「やかん」の特徴をモチーフとした異方性反射を生じる構造になり、観察者に対して、原画像となった「やかん」の特徴を彷彿させる模様を提示することができる。
【0087】
<<< §4.本発明に係る凹凸構造データの生成装置 >>>
続いて、本発明に係るレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置の構成および動作を説明する。このデータ生成装置は、三次元構造体から構成される立体画像の特徴を、表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造するために利用される、凹凸構造データを生成するための装置であり、図9の流れ図に示すステップS1〜S8までの手順を実行する機能を有する。実際には、当該装置は、コンピュータに専用のプログラムを組み込むことによって構成される。このようなプログラムは、次のような各処理段階から構成される。
【0088】
(1) XYZ三次元座標系上に定義された立体画像Aを示す立体画像データを入力する段階(図9のステップS1の処理段階に対応)。
【0089】
(2) 当該座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を示すデータを設定する段階(図9のステップS2の処理段階に対応)。
【0090】
(3) 各画素Pの所定位置に、座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、個々の画素Pについて、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像Aを構成する面との交点Q(x,y,z)を求める段階(図9のステップS3の処理段階に対応)。
【0091】
(4) 個々の画素Pについて、上記交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める段階(図9のステップS4の処理段階に対応)。
【0092】
(5) レリーフ記録媒体上に形成される凹凸構造の最大高低差Dを設定する段階(図9のステップS5の処理段階に対応)。
【0093】
(6) 所定の調整パラメータK(但し、D/Kは、立体画像AのZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階(図9のステップS6の処理段階に対応)。
【0094】
(7) 個々の画素Pについて、M(x,y)=(K・H(x,y)) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める段階(図9のステップS7の処理段階に対応)。
【0095】
(8) 個々の画素Pのサンプル点S(x,y)の上方における剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通るレリーフ構成面を決定する段階(図9のステップS8の処理段階に対応)。より具体的には、個々の画素Pを構成する各単位面を、画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定すればよい。このとき、隣接するレリーフ単位面PP間の境界に生じる段差部には、XY平面に垂直な段差壁面Fを定義し、レリーフ単位面PPと段差壁面Fとの集合体をレリーフ構成面とすればよい。
【0096】
(9) 決定されたレリーフ構成面を示すデータを出力する段階(図9のステップS9の処理段階に対応)。
【0097】
なお、上述した(6) の処理段階は、本発明を実施する上では必須の段階ではなく、立体画像Aの寸法が適切であれば、省略することができる。この場合、(7) の処理段階では、「M(x,y)=H(x,y) mod D」なる演算により剰余M(x,y)を求めればよい。
【0098】
本発明に係るレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置は、上記各段階を実行するプログラムを組み込んだコンピュータによって実現されることになるが、その基本構成は、図13のブロック図に示す各構成要素の集合として把握することができる。以下、この図13に示す個々の構成要素の機能を説明する。
【0099】
「Height Fieldデータ作成部100」
前述したHeight Fieldデータを作成するための構成要素であり、立体画像データ格納部110,画素配列データ提供部120,交点演算部130,高さ演算部140によって構成されている。
【0100】
「立体画像データ格納部110」
XYZ三次元座標系上に定義された立体画像Aを示す立体画像データを格納する構成要素である。前述したとおり、立体画像Aは、XYZ三次元座標系上に配置された多数のポリゴンもしくはパラメトリック曲面を示すデータとして用意することができる。
【0101】
「画素配列データ提供部120」
XYZ三次元座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を定義するための画素配列データを格納し、各画素Pの所定位置に定義されたサンプル点S(x,y)の位置を示すサンプル点位置データと、各画素Pを構成する単位面を示す画素単位面データと、を提供する構成要素である。実用上は、§2で述べたとおり、個々の画素Pを互いに同一サイズの矩形領域によって構成し、この矩形領域を縦横に隙間なく並べることによって二次元画素配列の定義を行うようにするのが好ましい。この場合、画素配列データ提供部120内には、画素Pを構成する矩形の縦サイズと横サイズを示すデータを画素配列データとして格納しておけばよい。たとえば、縦サイズ=a、横サイズ=bというデータを格納しておけば、原点Oを基準として、a×bのサイズの矩形からなる画素を縦横に隙間なく並べることによって二次元画素配列の定義を行うことができ、各画素の中心位置に定義されたサンプル点の位置を示すサンプル点位置データと、各画素を構成する画素単位面を示すデータ(たとえば、輪郭線のデータ)と、を演算によって求めることができる。
【0102】
「交点演算部130」
画素配列データ提供部120から提供されるサンプル点位置データと立体画像データ格納部110内に格納されている立体画像データとに基づいて、個々の画素Pについて、そのサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像Aを構成する面との交点Q(x,y,z)を求める構成要素である。交点の座標値(x,y,z)は、幾何学的な演算によって求めることができる。なお、図11に示すように、参照直線Lに対して交差する面が複数あるために複数の交点が求まるケースがあるので、この交点演算部130内には、1つの交点を選択する選択ルールを格納しておくようにする。たとえば、最大のZ座標値をもつ交点を統一して選択する選択ルールを格納しておき(もしくは最小のZ座標値をもつ交点を統一して選択する選択ルールを格納しておいてもよい)、所定の画素Pについて複数の交点が求まる場合には、この選択ルールに基づいて選択された単一の交点を、当該画素Pについての交点Q(x,y,z)とすればよい。
【0103】
「高さ演算部140」
個々の画素Pについて、交点演算部130によって求められた交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める構成要素である。実際には、交点Q(x,y,z)のZ座標値をそのまま高さH(x,y)の値として抽出する処理を行えばよい。
【0104】
「剰余演算部210」
個々の画素Pについて、「M(x,y)=(K・H(x,y)) mod D」なる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める処理を行う構成要素である。演算に用いるK,Dは、パラメータ格納部220に格納されている値を利用する。
【0105】
「パラメータ格納部220」
作成するレリーフ記録媒体R上に形成される凹凸構造の最大高低差Dと所定の調整パラメータK(但し、D/Kは、立体画像AのZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を格納する構成要素である。D,Kの値は、予め何らかの固定値を格納しておくことも可能であるが、実用上は、D,Kの値を、オペレータからの入力操作によって任意の値に設定できるようにしておくのが好ましい。たとえば、調整パラメータKを可変値とするのであれば、オペレータからの入力操作に応じて、0<K<1の範囲内の値を任意に設定できるようにしておけばよい。なお、DおよびKに任意の値を設定した結果、D/Kが、立体画像AのZ軸方向の最大寸法Gと等しくなるか、Gよりも大きくなった場合は、M(x,y)は常にK・H(x,y)と等しくなるので、本発明の本来の処理を実行することはできなくなるが、レリーフ記録媒体Rを製造するために利用される凹凸構造データを生成する装置としては、支障なく機能する。この場合、立体画像AをK倍した画像がそのままレリーフ記録媒体R上に表現されることになる。
【0106】
「レリーフ単位面演算部230」
個々の画素P(i,j)を構成する各単位面を、当該画素P(i,j)について求められた剰余M(x,y)だけ上方(Z軸の正負いずれの方向を上方にとってもよい)に平行移動し、移動後に得られる各単位面をそれぞれレリーフ単位面PP(i,j)として求める構成要素である。
【0107】
「レリーフ構成面作成部240」
レリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面Bを決定し、このレリーフ構成面Bを示すデータを、レリーフ記録媒体の表面に形成すべき凹凸構造データとして出力する構成要素である。具体的には、図8に例示したように、隣接するレリーフ単位面PP間の境界に生じる段差部に、XY平面に垂直な段差壁面Fを定義し、レリーフ単位面PPと段差壁面Fとの集合体を示すデータを、レリーフ構成面B(レリーフ記録媒体Rの表面に形成すべき凹凸構造データ)として出力する処理を行う。
【0108】
なお、レリーフ単位面演算部230において、個々の画素P(i,j)を構成する各単位面を、当該画素P(i,j)について求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動した後、移動後に得られる単位面を傾斜させた面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面Bを決定するようにすることも可能である。すなわち、図8に示す例では、レリーフ単位面PP(i,j)は、画素P(i,j)を構成する単位面を上方に平行移動した面であるため、XY平面に平行な面になっているが、これを、たとえば、上空点QQ(x,y,z)を回転中心として傾斜させ、XY平面に対して非平行になるようにしてもかまわない。
【0109】
この場合、隣接するレリーフ単位面PP間の境界に生じる段差部に形成すべき段差壁面F′は、必ずしもXY平面に垂直な面にはならない。図14は、このように、レリーフ単位面PPを傾斜させることにより、レリーフ構成面Bを形成した例を示す斜視図である。各レリーフ単位面PPは、必ずしもXY平面に平行にはならないので、図にハッチングを施して示す段差壁面F′も、必ずしもXY平面に垂直な面にはならない。
【0110】
<<< §5.物理的な媒体の製造方法 >>>
最後に、§4で説明した凹凸構造データの生成装置から出力される凹凸構造データに基づいて、物理的な媒体を製造する具体的な方法(図9の流れ図におけるステップS9のプロセス)を説明する。
【0111】
既に述べたとおり、本発明に係るレリーフ記録媒体は、カタログ、パンフレット、ポスター、カレンダー、トレーディングカード、包装パッケージ、書籍などの様々な印刷物、金属製の銘板や樹脂成型品からなる贈答品、土産物、雑貨など様々な商品に利用される。通常、これらの商品は量産されることになるので、まず、表面にレリーフ構成面Bが形成された原版となる媒体を作成した後、当該原版を用いたプレス加工により、多数の媒体を製造するのが一般的な手法となる。
【0112】
このような原版となる媒体を作成する具体的な方法の一例は、NC工作機械を用いた切削加工により、被加工媒体の表面にレリーフ構成面Bからなる凹凸構造を形成する方法である。レリーフ構成面作成部240からレリーフ構成面データとして出力される凹凸構造データを、NC工作機械に与え、金属からなる被加工媒体の表面に対して切削加工を施せば、表面にレリーフ構成面Bからなる凹凸構造を有する原版を作成することができる。
【0113】
より寸法精度の高い加工装置として、フレキソ製版機を用いることができる。図15は、一般的なフレキソ製版機の基本構成を示す図である。図示のとおり、この製版機は、表面に被加工媒体310を巻き付けた状態で、回転軸αを中心として回転駆動する回転ドラム320と、強度変調したレーザビームβ1を照射するレーザビーム照射部330と、このレーザビームβ1を回転ドラム320の回転軸α方向に走査して、走査されたレーザビームβ2を被加工媒体310の表面に照射する走査部340と、を有している。回転ドラム320による回転駆動と、走査部340による走査を制御することにより、レーザビームβ2を被加工媒体310の表面上の任意の位置に照射することができる。また、レーザビームの強度を変調することができるので、各位置ごとに、照射エネルギーを制御することができる。
【0114】
このような制御を、レリーフ構成面作成部240からレリーフ構成面データとして出力される凹凸構造データに基づいて行えば、被加工媒体310の表面にレリーフ構成面Bからなる凹凸構造をレーザ加工により形成することができる。一般的なフレキソ製版機は、10μm程度の解像度で加工を行うことが可能である。したがって、たとえば、1画素Pの縦横サイズをそれぞれ100μmに設定しても、一般的なフレキソ製版機を用いた加工が十分に可能である。
【0115】
もちろん、本発明を実施する際に用いる物理的な媒体の製造方法は、上述したNC工作機械を用いた切削加工や、フレキソ製版機を用いたレーザ加工に限定されるものではない。要するに、何らかの媒体上に凹凸構造が形成できればよいので、たとえば、インクや樹脂などを盛り上げて媒体上に付着させる印刷技術を利用して、凹凸構造を形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】原画像として利用される任意の立体画像Aの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す立体画像Aを高さ方向に縮小してレリーフ記録媒体R上に記録した例を示す斜視図である。
【図3】XY平面上のサンプル点S(x,y)を通る参照直線Lと半球面からなる立体画像Aとの交点Q(x,y,z)を示す斜視図である。
【図4】XY平面上に定義された二次元画素配列の一例を示す平面図である。
【図5】図3に示す例において、多数のサンプル点と交点との関係を示す正面図である。
【図6】図5に示す例において、各サンプル点S(x,y)の垂直上方における剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)を示す正面図である。
【図7】図6に示す各上空点QQ(x,y,z)を通るレリーフ構成面Bを表面に形成したレリーフ記録媒体Rを示す縦断面図である。
【図8】図7に示すレリーフ記録媒体Rの部分拡大図である。
【図9】本発明に係るレリーフ記録媒体の製造方法の手順を示す流れ図である。
【図10】図9に示す流れ図におけるステップS1〜S4までの手順を具体例に即して示す斜視図である。
【図11】図9に示すステップS3における交点選択プロセスの一例を示す断面図である。
【図12】半球面からなる立体画像Aを用いた場合の交点決定プロセスを示す斜視図である。
【図13】本発明に係るレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置の基本構成を示すブロック図である。
【図14】レリーフ単位面PPを傾斜させることにより、レリーフ構成面Bを形成する例を示す斜視図である。
【図15】媒体上に凹凸構造を形成するフレキソ製版機の基本構成を示す図である。
【符号の説明】
【0117】
100:Height Field データ作成部
110:立体画像データ格納部
120:画素配列データ提供部
130:交点演算部
140:高さ演算部
210:剰余演算部
220:パラメータ格納部
230:レリーフ単位面演算部
240:レリーフ構成面作成部
310:被加工媒体
320:回転ドラム
330:レーザビーム照射部
340:走査部
A:立体画像
B:レリーフ構成面
D:レリーフ記録媒体に形成する凹凸構造の最大高低差
E:レリーフ記録媒体の基体部の厚み
F,F′:段差壁面
G:立体画像Aの高さ寸法
H(x,y):交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さ
i:二次元画素配列の行番号
j:二次元画素配列の列番号
K:調整パラメータ
L:参照直線
M(x,y):高さH(x,y)に基づいて算出された剰余
O:XYZ三次元座標系の原点
P(i,j):XY平面上に定義されたi行j列目の画素/当該画素の単位面
PP(i,j):レリーフ単位面
Q(x,y,z):参照直線Lと立体画像Aを構成する面との交点
QQ(x,y,z):サンプル点S(x,y)から高さM(x,y)の位置にある上空点
Q1〜Q4:参照直線Lと立体画像Aの各表面との交点
R:レリーフ記録媒体
S(x,y):座標値(x,y)をもつサンプル点
S1〜S9:流れ図の各ステップ
X,Y,Z:XYZ三次元座標系の各座標軸
α:回転ドラムの回転軸
β1:強度変調されたレーザビーム
β2:走査されたレーザビーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元構造体からなる立体画像の特徴を、表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造する方法に関する。また、そのようなレリーフ記録媒体を製造するために利用される凹凸構造データを生成する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カタログ、パンフレット、ポスター、カレンダー、トレーディングカード、包装パッケージ、書籍などの様々な印刷物において、表面に凹凸構造を形成してレリーフ模様を浮き上がらせる手法は古くから用いられている。また、この凹凸構造の表面に金属箔を張りつけた箔押製品も様々な商品として利用されている。このようなレリーフ記録媒体としては、紙の他にも様々な材質のものが利用されている。たとえば、金属製の銘板や樹脂成型品からなる贈答品、土産物、雑貨など様々である。
【0003】
このようなレリーフ記録媒体の特徴は、表面の凹凸構造として模様や絵柄となるモチーフが表現されるため、平面的な印刷物に比べて、より立体感のある表現が可能になる点である。もちろん、通常の平面的な印刷物でも、三次元立体を照明環境に配慮して撮影して印刷するようにすれば、ある程度は立体感をもった画像の提示を行うことは可能であるが、そこに再現されている陰影情報は、あくまでも被写体を特定の照明環境で撮影して得られた情報であり、単なる二次元画像にすぎない。これに対して、レリーフ記録媒体では、表面に実際の凹凸構造が形成されているため、より立体感をもった模様や絵柄の表現が可能になる。
【0004】
なお、二次元記録媒体上に三次元画像を記録する方法としては、ホログラムの手法があるが、製造コストが高く、一般的な印刷物に商業的に利用するのには不適当である。また、ホログラム記録媒体の再生像は、あくまでも視覚的にのみ把握される虚像であるのに対して、レリーフ記録媒体上に記録される模様や絵柄は、実在の凹凸構造体であり、触覚的な把握を行うことができる点において、レリーフ記録媒体は固有の利点を有している。
【0005】
このようなレリーフ記録媒体を製造する手法として、たとえば、下記の特許文献1には、二値画像に基づいてレリーフ模様となる凹凸構造を作成する手法が開示されており、特許文献2には、階調画像に基づいてレリーフ模様となる凹凸構造を作成する手法が開示されている。更に、特許文献3〜5には、階調画像に基づいてレリーフ模様となる凹凸構造を作成する手法が開示されている。
【特許文献1】特開平5−120450号公報
【特許文献2】特開平5−158207号公報
【特許文献3】特開平5−158208号公報
【特許文献4】特開平5−158209号公報
【特許文献5】特開平5−158210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前掲の各特許文献に開示されている従来技術を利用すれば、原画像として二次元画像を用い、この二次元画像上に表現された模様や絵柄をモチーフとして、レリーフ記録媒体上に凹凸構造を形成することができる。しかしながら、これらの従来技術では、原画像として三次元の立体画像を用いることはできない。
【0007】
最近は、コンピュータグラフィックス技術の発展により、様々な三次元オブジェクトの立体画像データを容易に入手することができるようになってきている。したがって、任意の立体画像を原画像として利用し、この立体画像の特徴をモチーフとして、レリーフ記録媒体上に凹凸構造を形成することができれば、レリーフとして表現可能な模様や絵柄の自由度は著しく向上する。しかしながら、レリーフ記録媒体の表面に形成される凹凸構造は、その高低差の寸法が限られているため、一般的な立体画像をそのままレリーフ記録媒体に記録することはできない。
【0008】
たとえば、高さ5cmの物体からなる立体画像を、高低差1mmの凹凸構造をもったレリーフ記録媒体上にそのまま記録するには、従来の手法では、高さ寸法を1/50に縮小して記録するような方法を採らざるを得ないが、このような方法では、もとの物体の特徴を適確に表現することは困難である。
【0009】
そこで本発明は、原画像として任意の立体画像を用い、この立体画像の特徴をモチーフとして、レリーフ記録媒体上に凹凸構造を形成する手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明の第1の態様は、三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造する方法において、
XYZ三次元座標系におけるXY平面上に配列された多数の画素からなる二次元画素配列から構成され、個々の画素にはZ軸に沿った高さを示す画素値Hが定義されており、画素値Hにより三次元構造体が表現された立体画像データを用意する段階と、
凹凸構造の最大高低差D(但し、Dは、三次元構造体のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階と、
立体画像データを構成する個々の画素の画素値Hに対して、M=H mod Dなる演算を施し、画素値Hを新たな画素値Mに置き換えた二次元画素配列から構成される置換画像データを求める段階と、
XY平面に沿って置かれた媒体の表面上に、置換画像データの各画素値Mに応じた高さをもつ凹凸構造からなるレリーフ構成面を形成する段階と、
を行うようにしたものである。
【0011】
(2) 本発明の第2の態様は、三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造する方法において、
XYZ三次元座標系上に、任意の面から構成される立体画像を定義する段階と、
この座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を定義する段階と、
各画素Pの所定位置に、座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、個々の画素Pについて、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める段階と、
個々の画素Pについて、交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める段階と、
凹凸構造の最大高低差D(但し、Dは、立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階と、
個々の画素Pについて、M(x,y)=H(x,y) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める段階と、
個々の画素Pのサンプル点S(x,y)の上方における剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通るレリーフ構成面を決定する段階と、
レリーフ構成面を媒体表面上に形成する段階と、
を行うようにしたものである。
【0012】
(3) 本発明の第3の態様は、三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造する方法において、
XYZ三次元座標系上に、任意の面から構成される立体画像を定義する段階と、
座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を定義する段階と、
各画素Pの所定位置に、座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、個々の画素Pについて、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める段階と、
個々の画素Pについて、交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める段階と、
凹凸構造の最大高低差Dと所定の調整パラメータK(但し、D/Kは、立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階と、
個々の画素Pについて、M(x,y)=(K・H(x,y)) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める段階と、
個々の画素Pのサンプル点S(x,y)の上方における剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通るレリーフ構成面を決定する段階と、
レリーフ構成面を媒体表面上に形成する段階と、
を行うようにしたものである。
【0013】
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第2または第3の態様に係るレリーフ記録媒体の製造方法において、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定するようにしたものである。
【0014】
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第4の態様に係るレリーフ記録媒体の製造方法において、
隣接するレリーフ単位面PP間の境界に生じる段差部に、XY平面に垂直な段差壁面Fを定義し、レリーフ単位面PPと段差壁面Fとの集合体をレリーフ構成面とするようにしたものである。
【0015】
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第2または第3の態様に係るレリーフ記録媒体の製造方法において、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面を傾斜させた面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定するようにしたものである。
【0016】
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第2〜第6の態様に係るレリーフ記録媒体の製造方法において、
記録対象となる立体画像を、XYZ三次元座標系上に配置された多数のポリゴンもしくはパラメトリック曲面として定義し、参照直線Lとの交点Q(x,y,z)を、ポリゴンもしくはパラメトリック曲面を示すデータを用いた演算処理によって求めるようにしたものである。
【0017】
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第2〜第7の態様に係るレリーフ記録媒体の製造方法において、
個々の画素Pを互いに同一サイズの矩形領域によって構成し、この矩形領域を縦横に隙間なく並べることによって二次元画素配列の定義を行い、各画素Pの中心位置にサンプル点S(x,y)を定義するようにしたものである。
【0018】
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第2〜第8の態様に係るレリーフ記録媒体の製造方法において、
最大のZ座標値をもつ交点もしくは最小のZ座標値をもつ交点のいずれか一方を統一して選択する選択ルールを予め定めておき、
所定の画素Pについて、参照直線Lに対して交差する面が複数あるために複数の交点が求まる場合には、選択ルールに基づいて選択された単一の交点を、当該画素Pについての交点Q(x,y,z)とするようにしたものである。
【0019】
(10) 本発明の第10の態様は、上述した第1〜第9の態様に係るレリーフ記録媒体の製造方法において、
表面にレリーフ構成面が形成された原版となる媒体を作成した後、当該原版を用いたプレス加工により、多数の媒体を製造するようにしたものである。
【0020】
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第10の態様に係るレリーフ記録媒体の製造方法において、
NC工作機械を用いた切削加工により、被加工媒体の表面にレリーフ構成面を形成し、原版となる媒体を作成するようにしたものである。
【0021】
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第10の態様に係るレリーフ記録媒体の製造方法において、
表面に被加工媒体を巻き付けた状態で回転駆動する回転ドラムと、強度変調したレーザビームを照射するレーザビーム照射部と、このレーザビームを回転ドラムの回転軸方向に走査する走査部と、を有する製版装置を用いたレーザ加工により、被加工媒体の表面にレリーフ構成面を形成し、原版となる媒体を作成するようにしたものである。
【0022】
(13) 本発明の第13の態様は、三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造するプロセスで用いられるプログラムにおいて、
XYZ三次元座標系上に定義された立体画像Aを示す立体画像データを入力する段階と、
この座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を示すデータを設定する段階と、
各画素Pの所定位置に、座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、個々の画素Pについて、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める段階と、
個々の画素Pについて、交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める段階と、
凹凸構造の最大高低差D(但し、Dは、立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階と、
個々の画素Pについて、M(x,y)=H(x,y) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める段階と、
個々の画素Pのサンプル点S(x,y)の上方における剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通るレリーフ構成面を決定する段階と、
レリーフ構成面を示すデータを出力する段階と、
をコンピュータに実行させるようにしたものである。
【0023】
(14) 本発明の第14の態様は、三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造するプロセスで用いられるプログラムにおいて、
XYZ三次元座標系上に定義された立体画像Aを示す立体画像データを入力する段階と、
この座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を示すデータを設定する段階と、
各画素Pの所定位置に、座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、個々の画素Pについて、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める段階と、
個々の画素Pについて、交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める段階と、
凹凸構造の最大高低差Dと所定の調整パラメータK(但し、D/Kは、立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階と、
個々の画素Pについて、M(x,y)=(K・H(x,y)) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める段階と、
個々の画素Pのサンプル点S(x,y)の上方における剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通るレリーフ構成面を決定する段階と、
レリーフ構成面を示すデータを出力する段階と、
をコンピュータに実行させるようにしたものである。
【0024】
(15) 本発明の第15の態様は、上述した第13または第14の態様に係るプログラムにおいて、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定する処理をコンピュータに実行させるようにしたものである。
【0025】
(16) 本発明の第16の態様は、上述した第15の態様に係るプログラムにおいて、
隣接するレリーフ単位面PP間の境界に生じる段差部に、XY平面に垂直な段差壁面Fを定義し、レリーフ単位面PPと段差壁面Fとの集合体をレリーフ構成面とする処理をコンピュータに実行させるようにしたものである。
【0026】
(17) 本発明の第17の態様は、上述した第13または第14の態様に係るプログラムにおいて、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面を傾斜させた面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定する処理をコンピュータに実行させるようにしたものである。
【0027】
(18) 本発明の第18の態様は、三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造するために利用される、凹凸構造データを生成する装置において、
XYZ三次元座標系上に定義された立体画像を示す立体画像データを格納する立体画像データ格納部と、
この座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を定義するための画素配列データを格納し、各画素Pの所定位置に定義されたサンプル点S(x,y)の位置を示すサンプル点位置データと、各画素Pを構成する単位面を示す画素単位面データと、を提供する画素配列データ提供部と、
サンプル点位置データと立体画像データとに基づいて、個々の画素Pについて、そのサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める交点演算部と、
個々の画素Pについて、交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める高さ演算部と、
凹凸構造の最大高低差D(但し、Dは、立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を格納するパラメータ格納部と、
個々の画素Pについて、M(x,y)=H(x,y) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める剰余演算部と、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる各単位面をそれぞれレリーフ単位面PPとして求めるレリーフ単位面演算部と、
レリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定し、このレリーフ構成面を示すデータを、レリーフ記録媒体の表面に形成すべき凹凸構造データとして出力するレリーフ構成面作成部と、
を設けるようにしたものである。
【0028】
(19) 本発明の第19の態様は、三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造するために利用される、凹凸構造データを生成する装置において、
XYZ三次元座標系上に定義された立体画像を示す立体画像データを格納する立体画像データ格納部と、
この座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を定義するための画素配列データを格納し、各画素Pの所定位置に定義されたサンプル点S(x,y)の位置を示すサンプル点位置データと、各画素Pを構成する単位面を示す画素単位面データと、を提供する画素配列データ提供部と、
サンプル点位置データと立体画像データとに基づいて、個々の画素Pについて、そのサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める交点演算部と、
個々の画素Pについて、交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める高さ演算部と、
凹凸構造の最大高低差Dと所定の調整パラメータK(但し、D/Kは、立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を格納するパラメータ格納部と、
個々の画素Pについて、M(x,y)=(K・H(x,y)) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める剰余演算部と、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる各単位面をそれぞれレリーフ単位面PPとして求めるレリーフ単位面演算部と、
レリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定し、このレリーフ構成面を示すデータを、レリーフ記録媒体の表面に形成すべき凹凸構造データとして出力するレリーフ構成面作成部と、
を設けるようにしたものである。
【0029】
(20) 本発明の第20の態様は、上述した第18または第19の態様に係るレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置において、
立体画像データ格納部が、XYZ三次元座標系上に配置された多数のポリゴンもしくはパラメトリック曲面を示すデータを、立体画像データとして格納するようにしたものである。
【0030】
(21) 本発明の第21の態様は、上述した第18〜第20の態様に係るレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置において、
画素配列データ提供部が、画素Pを構成する矩形の縦サイズと横サイズを示すデータを画素配列データとして格納しており、この画素Pを縦横に隙間なく並べることによって二次元画素配列の定義を行い、各画素Pの中心位置に定義されたサンプル点S(x,y)の位置を示すサンプル点位置データと、各画素Pを構成する矩形を示す画素単位面データと、を演算によって求めるようにしたものである。
【0031】
(22) 本発明の第22の態様は、上述した第18〜第21の態様に係るレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置において、
交点演算部が、最大のZ座標値をもつ交点もしくは最小のZ座標値をもつ交点のいずれか一方を統一して選択する選択ルールを保持しており、
所定の画素Pについて、参照直線Lに対して交差する面が複数あるために複数の交点が求まる場合には、選択ルールに基づいて選択された単一の交点を、当該画素Pについての交点Q(x,y,z)とするようにしたものである。
【0032】
(23) 本発明の第23の態様は、上述した第18〜第22の態様に係るレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置において、
レリーフ構成面作成部が、隣接するレリーフ単位面PP間の境界に生じる段差部に、XY平面に垂直な段差壁面Fを定義し、レリーフ単位面PPと段差壁面Fとの集合体を示すデータを、レリーフ記録媒体の表面に形成すべき凹凸構造データとして出力するようにしたものである。
【0033】
(24) 本発明の第24の態様は、上述した第18〜第22の態様に係るレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置において、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面を傾斜させた面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係るレリーフ記録媒体の製造方法およびこれに用いる凹凸構造データ生成装置によれば、原画像として任意の立体画像を用い、この立体画像の特徴をモチーフとして、レリーフ記録媒体上に凹凸構造を形成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0036】
<<< §1.立体画像をモチーフとするレリーフ記録媒体 >>>
ここでは、まず、立体画像をモチーフとするレリーフ記録媒体を作成する一般的な手順とその問題点を述べておく。
【0037】
たとえば、図1に示すような立体画像Aをレリーフ記録媒体の表面に記録することを考えてみよう。図示の立体画像Aは、三次元の複雑な構造をもった「やかん」を示す立体画像であり、実際には、その表面を形成する面のデータによって定義することができる(内部構造を示すデータは不要である)。ここでは、この立体画像Aの高さ寸法がGであったとしよう。このような立体画像Aを、レリーフ記録媒体の表面に記録しようとしても、立体情報をそのまま記録することはできない。レリーフ記録媒体は、表面に凹凸構造が形成された三次元物体であるが、当該凹凸構造の最大高低差Dには制限があり(カタログ、パンフレット、ポスター、カレンダーなどの一般的な紙製品の場合、せいぜいD=数mm程度である)、立体画像Aの高さ方向の立体情報をそのまま凹凸構造として記録することはできない。
【0038】
図2は、図1に示す立体画像Aを高さ方向に縮小してレリーフ記録媒体R上に記録した例を示す斜視図である。すなわち、立体画像Aを高さ方向にD/G倍に縮小した立体構造が、レリーフ記録媒体Rの表面に凹凸構造として形成されることになる。このように、高さ方向について縮小すれば、レリーフ記録媒体Rの表面上の凹凸構造の高低差はDに抑えられる。しかしながら、縮小倍率D/Gが小さくなればなるほど、レリーフ記録媒体R上に形成される立体構造体の立体画像Aに対する形状の歪みが増大し、観察者による、もとの立体画像Aの形状把握が困難になる。
【0039】
本発明の根源は、もとの立体画像Aを縮小して媒体上に記録するという手法を採る代わりに、もとの立体画像Aの立体的な形状の特徴を抽出して媒体上に記録するという手法を採るという発想にある。本願発明者は、図1に示すような立体画像Aを上方から観察したときの立体画像A表面各部の面の傾きの情報を抽出し、この傾きの情報を媒体Rの表面上に凹凸構造として記録することにより、立体画像Aを上方から観察した場合の特徴を記録できるのではないかと考えた。以下に述べる手法は、このような基本的な考え方に基づくものである。
【0040】
結局、本発明では、レリーフ記録媒体R上には、立体画像Aの各部分ごとの面の傾きの情報のみが記録されることになるので、観察者に対して、もとの立体画像Aの全体的な形状を正確に伝達することはできない。しかしながら、カタログ、パンフレット、ポスター、カレンダーなど、一般的な用途に利用されるレリーフ記録媒体の役割は、観察者に対して、何らかの模様や絵柄を提示することにあるので、もとの立体画像Aの特徴に由来する何らかのモチーフが表現されていれば足りる。したがって、以下に述べる本発明に係る手法で作成されるレリーフ記録媒体は、産業上、十分な利用可能性を有するものである。
【0041】
<<< §2.本発明に係るレリーフ記録媒体の製造方法の基本概念 >>>
次に、本発明に係るレリーフ記録媒体の製造方法の基本概念を説明する。本発明では、図1に示す「やかん」をモチーフとした立体画像Aのように、任意の三次元構造体からなる立体画像に基づいて、レリーフ記録媒体を製造することが可能である。ただ、ここでは、説明の便宜上、図3に示すように、半球状の立体画像Aを用いてレリーフ記録媒体を製造する単純な例について、本発明の基本概念を説明しよう。
【0042】
いま、図3に示すように、XYZ三次元座標系を定義し、この座標系上に半球状の立体画像Aが配置されているものとする。説明の便宜上、この半球状の立体画像Aが、XY平面上に置かれているものとしよう(立体画像Aの円形底面がXY平面に一致するものとする)。ここで、XY平面上における座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像Aを構成する上面との交点Q(x,y,z)を求め、当該交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める。サンプル点S(x,y)は、XY平面上の点であるから、結局、交点Qの高さH(x,y)は、交点QのZ座標値に一致することになるが、ここでは、座標(x,y)で示される位置における立体画像Aの表面の高さを示す値という意味で、H(x,y)という表記を行うことにする。
【0043】
一方、この座標系のXY平面上に、図4に示すような二次元画素配列を定義する。ここでは、この二次元画素配列の構成要素となる1つの画素を、P(i,j)で示すことにする。ここで、iは当該画素が位置する配列の行数を示し、jは当該画素が位置する配列の列数を示している。したがって、画素P(i,j)は、この二次元画素配列の第i行・第j列目に位置する画素ということになる。たとえば、図の左上に示した画素P(2,3)は、第2行・第3列目の画素である。画素P(2,3)は、図にハッチングを施して示すように、正方形状の単位面から構成されている。
【0044】
このように、図示の例では、個々の画素P(i,j)は正方形状の単位面から構成されているが、画素を構成する単位面の形状は任意でかまわない。要するに、XY平面上に、それぞれ任意形状をもった単位面からなる画素Pを多数配列することにより、二次元画素配列が定義されていればよい。もっとも、実用上は、個々の画素Pを互いに同一サイズの矩形領域によって構成し、この矩形領域を縦横に隙間なく並べることによって二次元画素配列の定義を行うのが好ましい。
【0045】
そして、個々の画素P(i,j)内にそれぞれサンプル点Sを定義する。画素P(i,j)内に定義されたサンプル点はS(i,j)と表記することも可能であるが、ここでは、各サンプル点は、XY座標系における何らかの座標値(x,y)をもった点であるため、サンプル点S(x,y)と表記することにする。ここでは、図4に示すように、各画素P(i,j)の中心位置にサンプル点S(x,y)を定義した例を示すが、個々のサンプル点Sの位置は、個々の画素Pを構成する単位面内の任意の位置(単位面を構成する領域の境界線上でもよい)でかまわない。たとえば、図4に示す正方形状の各画素Pの左上隅点に、当該画素のサンプル点Sを定義してもよい。
【0046】
さて、図3で説明したように、XY平面上の任意のサンプル点S(x,y)について、当該サンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像Aを構成する面との交点Q(x,y,z)を求め、当該交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求めることができるので、図4に示す個々の画素P(i,j)について、それぞれサンプル点S(x,y)の位置における立体画像Aの上面の高さH(x,y)を求めることができる。なお、上方に立体画像Aが存在せずに、交点Qが存在しない画素については、たとえば、高さH(x,y)=0のように、便宜的に何らかの高さを定義しておけばよい。
【0047】
こうして各画素ごとに求められた高さH(x,y)を、当該画素の画素値とすれば、このような画素値をもった画素の集合体からなるデータは、形式的には二次元画像データの形態をとるが、その実体は、三次元の立体画像を示すデータになる。もっとも、1つの画素には、1つの高さを示す画素値しか定義できないので、表現可能な立体画像の形状は制限を受けることになる。たとえば、図3に示すような半球状の立体画像Aを表現することはできるが、完全な球状の立体画像を表現することはできない。このように、高さの値を画素値にもつ二次元画素配列からなるデータは、一般に、Height Field データと呼ばれている。
【0048】
本発明は、このようなHeight Field データで表現される三次元構造体からなる立体画像をモチーフとして、その特徴をレリーフ記録媒体の表面に凹凸構造として記録することを前提とした技術である。上述したとおり、このHeight Field データは、XYZ三次元座標系におけるXY平面上に配列された多数の画素からなる二次元画素配列から構成され、個々の画素にはZ軸に沿った高さを示す画素値Hが定義されており、この画素値Hにより三次元構造体が表現された立体画像データということができる。
【0049】
続いて、レリーフ記録媒体の表面に形成する凹凸構造の最大高低差Dを決定する。この最大高低差Dは、たとえば、図2に示す例のように、レリーフを構成する凹凸構造の最大高さに相当する寸法であり、前述したように、カタログ、パンフレット、ポスター、カレンダーなどの一般的な紙製品の場合、せいぜいD=数mm程度である。一方、図1に示すように、モチーフとして用いる「やかん」を示す立体画像の高さGは、G>Dである(G≦Dの場合、そもそも本発明に係る工夫を施す必要はない)。したがって、ここで設定する最大高低差Dは、モチーフとして用いる立体画像(三次元構造体)のZ軸方向の最大寸法よりも小さいことが前提となる。
【0050】
最大高低差Dが定まったら、上述した立体画像データ(Height Field データ)を構成する個々の画素の画素値Hに対して、M=H mod Dなる演算を施し、画素値Hを新たな画素値Mに置き換えた二次元画素配列から構成される置換画像データを求める。たとえば、第i行・第j列目に位置する画素P(i,j)については、その画素値H(x,y)を用いた「M(x,y)=H(x,y) mod D」なる演算により、新たな画素値M(x,y)が求められる。置換画像データは、すべての画素についての画素値Hを新たな画素値Mに置き換えることによって得られる。ここで、「mod」は剰余を求めるための演算子であり、「H(x,y) mod D」は、H(x,y)の値をDで除したときの剰余を示している。したがって、新たな画素値M(x,y)は、H(x,y)の値をDで除したときの剰余を示している。
【0051】
図5は、図3の正面図であり、縦方向に引いた多数の実線は、この半球のY軸に平行な直径上に並んだ各サンプル点S(x,y)の位置に立てた垂線(Z軸に平行な線)を示しており、その上端は、半球状の立体画像Aの上面位置となっている。別言すれば、これら垂線の下端はサンプル点S(x,y)の位置となり、上端は交点Q(x,y,z)の位置となり、その長さは、高さH(x,y)に対応する。一方、図5において、横方向に引いた水平破線は、Dの整数倍の位置を示している。各画素についての剰余M(x,y)は、当該画素内のサンプル点S(x,y)の位置に立てた垂線が交差する水平破線のうち、最も上方にある水平破線より上の半端な部分の長さということになる。
【0052】
図6は、各サンプル点S(x,y)の垂直上方に、上空点QQ(x,y,z)をプロットした状態を示す正面図である。ここで、上空点QQ(x,y,z)は、サンプル点S(x,y)の上方における、図5に示す剰余M(x,y)の高さに位置する点である。剰余M(x,y)<最大高低差Dであるから、図6に示すように、各上空点QQ(x,y,z)は、Z軸上の0〜Dの区間内に位置することになり、Z軸上のD〜5Dの区間内には存在しない。
【0053】
結局、図5に示す半球状の立体画像Aを示す立体画像データ(Height Field データ)を構成する個々の画素の画素値Hを、新たな画素値M(剰余M)に置き換えることにより得られる置換画像データは、図6に示す上空点QQ(x,y,z)の集合体からなる新たな立体画像を示すデータということになる。そこで、XY平面に沿って置かれた媒体の表面上に、この置換画像データの各画素値Mに応じた高さをもつ凹凸構造からなるレリーフ構成面を形成すれば、個々の上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通るレリーフ構成面が形成されたレリーフ記録媒体を得ることができる。
【0054】
図7は、図6に示す各上空点QQ(x,y,z)を通るレリーフ構成面Bを表面に形成したレリーフ記録媒体Rを示す縦断面図である。レリーフ構成面Bは、図6に示す各上空点QQ(x,y,z)を連結する凹凸面になる。図示の例の場合、Z=−Eなる式で示される平面上に、このレリーフ記録媒体Rの底面が位置しており、レリーフを構成する凹凸構造は、Z=Dなる式で示される平面と、Z=0なる式で示される平面(XY平面)との間に形成されている。ここでDは、前述のように設定した「レリーフ記録媒体Rに形成する凹凸構造の最大高低差」であり、Eは、「レリーフ記録媒体Rの基体部の厚み」ということになる。
【0055】
図7に示すレリーフ記録媒体Rの上面を形成するレリーフ構成面Bと、図5に示す半球状の立体画像Aの上面とを比較すると、全体的な形状は全く異なっているが、図5に示す立体画像Aの上面の各部の傾斜に関する情報が、図7に示すレリーフ構成面Bの部分部分に表現されていることがわかる。すなわち、図7に示すレリーフ構成面Bには、原画像として用いられた半球状の立体画像Aの特徴をモチーフとした凹凸構造が形成されていることになり、レリーフ記録媒体Rに記録されているレリーフのデザインには、半球状の立体画像Aの特徴が反映されていることになる。
【0056】
なお、図6に示すように、各画素の上方にそれぞれ上空点QQ(x,y,z)が定義された後に、これら個々の上空点QQ(x,y,z)を通るレリーフ構成面を形成する方法の一例としては、たとえば、個々の上空点QQ(x,y,z)を滑らかに連結するような自由曲面を演算によって求める手法を採ることが可能である。一般に、三次元空間上に配置された複数の任意点を滑らかに連結するような自由曲面は、ベジェ曲面やスプライン曲面など、様々な曲面が知られており、これらの曲面を演算によって求める手法も様々なものが知られている。したがって、図6に示す個々の上空点QQ(x,y,z)の座標値が得られれば、これら座標値を用いた演算により、図7に示すようなレリーフ構成面Bを求めることができる。もちろん、この場合、必ずしも全上空点QQ(x,y,z)の位置を正確に通る自由曲面を求める必要はなく、多少の誤差が生じてもかまわない。
【0057】
ただ、そのような自由曲面を求める演算は、通常、コンピュータに多大な負荷を課することになり、また、そのような自由曲面からなるレリーフ構成面Bを、実際の物理的な媒体の表面上に形成する際にも、加工作業上の技術的な負担は大きい。そこで、実用上は、次のような簡便な方法で、レリーフ構成面Bを求めるようにするのが好ましい。
【0058】
ここで述べる簡便な方法は、XY平面上に定義した画素P(i,j)を構成する単位面を、当該画素P(i,j)について求められた剰余M(x,y)だけ上方に(Z軸方向に)平行移動し、移動後に得られる単位面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面Bを決定する方法である。
【0059】
図8は、図7に示すレリーフ構成面Bを、このような簡便な方法で形成した場合の部分拡大図である。図8のY軸上に示す太線部分は、XY平面上に定義された画素P(i,j)の単位面であり、その上方に示されているPP(i,j)は、この単位面を上方に剰余M(x,y)だけ平行移動することにより得られたレリーフ単位面である。ここに示す例の場合、サンプル点S(x,y)は、画素P(i,j)の中心点であるから、上空点QQ(x,y,z)は、レリーフ単位面PP(i,j)の中心点になる。
【0060】
結局、図4の二次元画素配列上に示す個々の画素P(i,j)の単位面(この例は、正方形の領域)が四角いタイルであるとすれば、これら個々のタイルを、Z軸方向(図4の紙面垂直上方)に、それぞれ剰余M(x,y)だけ平行移動して固定することにより、レリーフ構造面Bが得られることになる。この場合、移動後の個々のタイルが、それぞれレリーフ単位面PPということになる。ただ、隣接するレリーフ単位面PP間の境界には段差部が生じるので、この段差部には、XY平面に垂直な段差壁面Fを定義し、レリーフ単位面PPと段差壁面Fとの集合体をレリーフ構成面Bとする。図8において、隣接するレリーフ単位面PP間を連結している破線は、この段差壁面Fを示しており、水平方向の実線で示されているレリーフ単位面PPと、垂直方向の破線で示されている段差壁面Fとの集合体が、レリーフ構成面Bを形成していることになる。
【0061】
このような簡便な方法を採ると、レリーフ構成面Bは、滑らかな曲面にはならず、段差構造をもった多数の平面の集合体によって構成されることになるが、1つの画素P(i,j)の縦横寸法を十分に小さく設定すれば、各レリーフ単位面PPも非常に微小な平面領域となるので、実用上は問題は生じない。たとえば、1つの画素P(i,j)を、一辺が100μmの正方形に設定すれば、各レリーフ単位面PP(i,j)も一辺が100μmの正方形になるので、肉眼でレリーフ構成面Bを観察する限り、図7に示すような滑らかな曲面として観察されることになる。
【0062】
<<< §3.本発明に係るレリーフ記録媒体の製造方法の具体的手順 >>>
図9は、本発明に係るレリーフ記録媒体の製造方法の手順を示す流れ図であり、三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造するプロセスが示されている。
【0063】
この流れ図におけるステップS1〜S4の手順は、前述した「Height Field データ」を作成する手順であり、ステップS5〜S8の手順は、この「Height Field データ」を構成する個々の画素の画素値H(x,y)を、剰余M(x,y)に置換し、レリーフ構成面を作成する手順である。このステップS1〜S8の手順は、設計者が手作業や計算機を利用して実行することも可能であるが、実用上は、これらの各手順を実行する専用プログラムを用意し、当該プログラムを組み込んだコンピュータによって実行させることになる。したがって、ステップS1〜S8の処理は、実際には、コンピュータによって実行される処理ということになる。
【0064】
これに対して、最後のステップS9は、このコンピュータから出力される凹凸構造データを利用して、物理的な媒体の表面に凹凸構造を形成する工程であり、何らかの加工装置を用いて行われるプロセスになる。このステップS9の具体的なプロセスについては後述する。
【0065】
さて、まずステップS1において、XYZ三次元座標系上に、立体画像Aを定義する段階が行われる。この立体画像Aは、原画像となる仮想物体であり、この仮想物体の表面形状の特徴(各部の面の傾きの情報)が抽出され、記録媒体Rの表面上に凹凸構造として記録されることになる。前述した§2では、便宜上、非常に単純は半球状の立体画像Aを用いた説明を行ったが、ここでは、図10に示すように、XYZ三次元座標系上に、「やかん」を示す立体画像Aが定義されたものとしよう。上述したとおり、本発明で用いられる立体画像Aは、その表面が定義されていれば足り、内部構造の定義は不要である。
【0066】
コンピュータ上での立体画像Aの定義は、立体画像Aを示す三次元形状データをコンピュータ内の格納場所に格納することによって行われる。通常、コンピュータグラフィックスの分野では、三次元の立体画像は、XYZ三次元座標系上に配置された多数のポリゴンもしくはパラメトリック曲面として定義される。本発明においても、このようなポリゴンもしくはパラメトリック曲面を示すデータによって、立体画像Aを定義することができる。
【0067】
続くステップS2では、このXYZ三次元座標系におけるXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を定義する段階が行われる。個々の画素Pは、それぞれが単位面を構成していれば、どのような大きさ、どのような形状のものであってもかまわない。もちろん、個々の画素の大きさや形状が、それぞれ異なっていてもかまわないし、これらの画素をどのように並べて二次元画素配列を定義してもかまわない。ただ、後のステップにおける演算負担を軽減するために、実用上は、個々の画素Pを互いに同一サイズの矩形領域によって構成し、この矩形領域を縦横に隙間なく並べることによって二次元画素配列の定義を行うようにするのが好ましい。
【0068】
図10に示す例では、XY平面上に正方形状をした画素Pを縦横にマトリックス状に隙間なく並べることによって二次元画素配列の定義が行われた例が示されている。図に示す画素P(i,j)は、この二次元画素配列におけるi行j列目の画素である。コンピュータ上で、このような二次元画素配列を定義するには、1つの画素Pの寸法(正方形状の画素の場合は、その一辺の長さ)を示すデータをコンピュータ内の格納場所に格納するだけで足りる。矩形状の画素Pの寸法が規定されていれば、図示のように、座標系の原点Oを基準として、多数の画素を座標系に正則な状態で多数配置することが可能であるから、i行j列目の画素の位置を一義的に求めることができる。
【0069】
次のステップS3では、ステップS1で定義した立体画像上に、ステップS2で定義した各画素P(i,j)に対応する交点Q(x,y,z)を求める処理が行われる。具体的には、各画素P(i,j)の所定位置(この例では中心位置)に、座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、個々の画素P(i,j)について、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像Aを構成する面との交点Q(x,y,z)を求めればよい。
【0070】
図10には、画素P(i,j)について定義された参照直線Lが破線で示されており、参照直線Lと立体画像Aを構成する面との交点Q(x,y,z)が求められた状態が示されている。前述したとおり、立体画像Aは、多数のポリゴンもしくはパラメトリック曲面として定義されているので、参照直線Lとの交点Q(x,y,z)は、これらポリゴンもしくはパラメトリック曲面を示すデータを用いた演算処理によって求めることができる。なお、任意の直線とポリゴンもしくはパラメトリック曲面との交点座標(x,y,z)を求める具体的な演算手法は、既にコンピュータグラフィックスの分野で広く利用されている手法であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0071】
ところで、図10では、参照直線Lと立体画像Aを構成する面との交点Q(x,y,z)を1点だけしか示していないが、図示のような複雑な立体構造をもつ立体画像Aを用いた場合、参照直線Lとの交点が複数存在する場合もありうる。このように複数の交点が存在する場合には、いずれか1つの交点を選択する必要がある。図11は、この交点選択プロセスの一例を示す断面図である。図示の例の場合、参照直線Lと立体画像Aを構成する面との交点として、Q1〜Q4の4点が示されている。これは、参照直線Lが立体画像Aを構成する4つの独立した面と交差するためである。
【0072】
このように、複数の交点が存在する場合には、予めいずれか1つの交点を選択するための選択ルールを定めておき、当該ルールに従って、1つの交点のみを選択するようにすればよい。具体的には、たとえば、「最大のZ座標値をもつ交点を選択する」という統一した選択ルールを予め定めておき、いずれの画素についても、複数の交点が存在する場合には、常に「最大のZ座標値をもつ交点を選択する」という選択ルールを適用して1つの交点を選択するようにすればよい。図11に示す例の場合、交点Q4が選択されることになる。
【0073】
もちろん、「最小のZ座標値をもつ交点を選択する」という統一した選択ルールを予め定めた場合は、図11に示す例の場合、交点Q1が選択されることになる。要するに、予め何らかの統一した選択ルールを定めておくようにし、所定の画素Pについて、参照直線Lに対して交差する面が複数あるために複数の交点が求まる場合には、当該選択ルールに基づいて選択された単一の交点を、当該画素Pについての交点Q(x,y,z)とすればよい。
【0074】
このように、統一した選択ルールを予め定めることは、結局、立体画像Aのうちの特定の面を選択することに他ならない。たとえば、「最大のZ座標値をもつ交点を選択する」という選択ルールを定めた場合、図11に示す例において、立体画像Aを上方から見下ろすように観察した場合に最前面に位置する面を選択することを意味し、後述するステップで最終的に作成される凹凸構造データは、当該最前面の特徴を抽出したデータということになる。したがって、この場合、「やかん」の把手の上面を含めた特徴情報が、レリーフ記録媒体上に記録されることになる。
【0075】
一方、「最小のZ座標値をもつ交点を選択する」という選択ルールを定めた場合、図11に示す例において、立体画像Aを上方から見下ろすように観察した場合に最背面(実際には、隠面となる)に位置する面を選択することを意味し、後述するステップで最終的に作成される凹凸構造データは、当該最背面の特徴を抽出したデータということになる。したがって、この場合、「やかん」の底面を含めた特徴情報が、レリーフ記録媒体上に記録されることになる。
【0076】
結局、図11に示す「やかん」のような複雑な立体構造をもった立体画像Aの全表面のデータを用意したとしても、選択ルールによって選択された面のデータのみが利用されることになるので、実用上は、ステップS1で定義する立体画像Aは、特徴を抽出する対象となる特定の面のみを有する画像で十分である。たとえば、図11に示す「やかん」の場合、「最大のZ座標値をもつ交点を選択する」という選択ルールを定めるのであれば、「やかんの底面」を示すデータなどは不要になる。
【0077】
図12は、立体画像Aとして、上方に凸となる半球面を用いた場合の交点決定プロセスを示す斜視図である(§2で説明した単純なモデル)。この立体画像Aを示すデータは、半球面の表面を示すデータのみで十分であり、底面を示すデータは必要ない。このようなデータによって立体画像Aを示せば、交点Q(x,y,z)は常に単一の点となるので、上述したような選択処理を行う必要はなくなる。なお、§2では、図3に示すように、半球面の底面がXY平面上に位置する例を示したが、実際は、図12に示す例のように、立体画像Aの底面は、必ずしもXY平面上に位置している必要はない。
【0078】
さて、こうして、各画素P(i,j)についての交点Q(x,y,z)が求まったら、続くステップS4において、各画素P(i,j)について、交点Q(x,y,z)の高さH(x,y)を求める処理が行われる。もっとも、この高さH(x,y)は、交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さであるから、実際には、交点Q(x,y,z)のZ座標値がそのまま高さH(x,y)になる。したがって、ステップS4の処理は、各画素P(i,j)について、対応する交点Q(x,y,z)のZ座標値を高さH(x,y)として抽出する処理ということになる。既に述べたとおり、こうして抽出した高さH(x,y)の値を各画素の画素値とする二次元画素配列は、「Height Field データ」を構成することになる。
【0079】
なお、最近は、コンピュータグラフィックス技術の発展により、様々な三次元オブジェクトの立体画像データを容易に入手することができるようになってきている。したがって、何らかの「Height Field データ」が既に準備されており、これを流用することが可能な場合は、図9に示すステップS1〜S4のプロセスを省略することができる。
【0080】
続く、ステップS5では、レリーフの最大高さDの設定が行われる。このDは、既に述べたとおり、これから作成するレリーフ記録媒体R上に形成される凹凸構造の最大高低差Dであり、レリーフ記録媒体Rの用途などに応じて、適宜、所望の値を設定すればよい。
【0081】
一方、ステップS6では、調整パラメータKが設定される。この調整パラメータKは、ステップS1で定義した立体画像Aの寸法を調整するためのパラメータであり、立体画像Aの寸法が適切な値に設定されている場合には不要である。ただ、ステップS1で定義する立体画像Aは、多くの場合、様々な方法で用意された三次元オブジェクトの立体画像データであるため、その寸法は、必ずしも本発明の実施に適切な値になっているとは限らない。したがって、実用上は、この調整パラメータKを自由な値に設定できるようにしておき、適宜、必要な調整を行うことができるようにしておくのが好ましい。
【0082】
なお、すべての画素について、剰余M=高さHとなるような場合には、本発明を実施する意味がないので、ここで設定する調整パラメータKは、立体画像AのZ軸方向の最大寸法をGとした場合、D/K<Gとなるような値に設定する必要がある。
【0083】
続く、ステップS7では、個々の画素Pについて、「M(x,y)=(K・H(x,y)) mod D」なる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める処理が行われる。§2では、「M(x,y)=H(x,y) mod D」なる演算式を示したが、ここでは、上記調整パラメータKを高さH(x,y)に乗じた「K・H(x,y)」をDで除したときの剰余をM(x,y)としている。このように調整パラメータKを乗じることにより、立体画像Aの寸法が適切な値に設定されていなかった場合に、調整が可能になる点は、上述したとおりである。
【0084】
次のステップS8では、レリーフ構成面を決定する処理が行われる。レリーフ構成面Bは、個々の画素Pのサンプル点S(x,y)の上方における剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通る面として、様々な方法で決定することができる。ただ、実用上は、§2で述べたとおり、個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面Bを決定すれば、単純な演算でレリーフ構成面を決定できる。実際には、図8で説明したとおり、隣接するレリーフ単位面PP間の境界に生じる段差部に、XY平面に垂直な段差壁面Fを定義し、レリーフ単位面PPと段差壁面Fとの集合体をレリーフ構成面Bとすることになる。
【0085】
なお、ステップS6で設定する調整パラメータKの値を種々変更すると、ステップS8で決定されるレリーフ構成面Bの形状も変化することになる。したがって、オペレータは、調整パラメータKの値に様々な値を設定し、その都度、でき上がるレリーフ構成面Bの形状を確認し、試行錯誤で、最も好ましいレリーフ構成面を得ることができる。
【0086】
こうして、ステップS8が完了した段階で、レリーフ構成面Bが求められていることになるので、最後のステップS9では、こうして得られたレリーフ構成面Bを媒体表面上に形成する処理が行われ、最終的に、物理的なレリーフ記録媒体Rが得られることになる。得られたレリーフ記録媒体R上には、図10に示す「やかん」の形状そのものが表現されているわけではないが、「やかん」の各部の傾斜に関する情報が表現されていることになり、記録されているレリーフのデザインには、「やかん」の形状に関する特徴が反映されていることになる。別言すれば、得られたレリーフ記録媒体R上の凹凸構造は、「やかん」の特徴をモチーフとした異方性反射を生じる構造になり、観察者に対して、原画像となった「やかん」の特徴を彷彿させる模様を提示することができる。
【0087】
<<< §4.本発明に係る凹凸構造データの生成装置 >>>
続いて、本発明に係るレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置の構成および動作を説明する。このデータ生成装置は、三次元構造体から構成される立体画像の特徴を、表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造するために利用される、凹凸構造データを生成するための装置であり、図9の流れ図に示すステップS1〜S8までの手順を実行する機能を有する。実際には、当該装置は、コンピュータに専用のプログラムを組み込むことによって構成される。このようなプログラムは、次のような各処理段階から構成される。
【0088】
(1) XYZ三次元座標系上に定義された立体画像Aを示す立体画像データを入力する段階(図9のステップS1の処理段階に対応)。
【0089】
(2) 当該座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を示すデータを設定する段階(図9のステップS2の処理段階に対応)。
【0090】
(3) 各画素Pの所定位置に、座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、個々の画素Pについて、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像Aを構成する面との交点Q(x,y,z)を求める段階(図9のステップS3の処理段階に対応)。
【0091】
(4) 個々の画素Pについて、上記交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める段階(図9のステップS4の処理段階に対応)。
【0092】
(5) レリーフ記録媒体上に形成される凹凸構造の最大高低差Dを設定する段階(図9のステップS5の処理段階に対応)。
【0093】
(6) 所定の調整パラメータK(但し、D/Kは、立体画像AのZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階(図9のステップS6の処理段階に対応)。
【0094】
(7) 個々の画素Pについて、M(x,y)=(K・H(x,y)) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める段階(図9のステップS7の処理段階に対応)。
【0095】
(8) 個々の画素Pのサンプル点S(x,y)の上方における剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通るレリーフ構成面を決定する段階(図9のステップS8の処理段階に対応)。より具体的には、個々の画素Pを構成する各単位面を、画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定すればよい。このとき、隣接するレリーフ単位面PP間の境界に生じる段差部には、XY平面に垂直な段差壁面Fを定義し、レリーフ単位面PPと段差壁面Fとの集合体をレリーフ構成面とすればよい。
【0096】
(9) 決定されたレリーフ構成面を示すデータを出力する段階(図9のステップS9の処理段階に対応)。
【0097】
なお、上述した(6) の処理段階は、本発明を実施する上では必須の段階ではなく、立体画像Aの寸法が適切であれば、省略することができる。この場合、(7) の処理段階では、「M(x,y)=H(x,y) mod D」なる演算により剰余M(x,y)を求めればよい。
【0098】
本発明に係るレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置は、上記各段階を実行するプログラムを組み込んだコンピュータによって実現されることになるが、その基本構成は、図13のブロック図に示す各構成要素の集合として把握することができる。以下、この図13に示す個々の構成要素の機能を説明する。
【0099】
「Height Fieldデータ作成部100」
前述したHeight Fieldデータを作成するための構成要素であり、立体画像データ格納部110,画素配列データ提供部120,交点演算部130,高さ演算部140によって構成されている。
【0100】
「立体画像データ格納部110」
XYZ三次元座標系上に定義された立体画像Aを示す立体画像データを格納する構成要素である。前述したとおり、立体画像Aは、XYZ三次元座標系上に配置された多数のポリゴンもしくはパラメトリック曲面を示すデータとして用意することができる。
【0101】
「画素配列データ提供部120」
XYZ三次元座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を定義するための画素配列データを格納し、各画素Pの所定位置に定義されたサンプル点S(x,y)の位置を示すサンプル点位置データと、各画素Pを構成する単位面を示す画素単位面データと、を提供する構成要素である。実用上は、§2で述べたとおり、個々の画素Pを互いに同一サイズの矩形領域によって構成し、この矩形領域を縦横に隙間なく並べることによって二次元画素配列の定義を行うようにするのが好ましい。この場合、画素配列データ提供部120内には、画素Pを構成する矩形の縦サイズと横サイズを示すデータを画素配列データとして格納しておけばよい。たとえば、縦サイズ=a、横サイズ=bというデータを格納しておけば、原点Oを基準として、a×bのサイズの矩形からなる画素を縦横に隙間なく並べることによって二次元画素配列の定義を行うことができ、各画素の中心位置に定義されたサンプル点の位置を示すサンプル点位置データと、各画素を構成する画素単位面を示すデータ(たとえば、輪郭線のデータ)と、を演算によって求めることができる。
【0102】
「交点演算部130」
画素配列データ提供部120から提供されるサンプル点位置データと立体画像データ格納部110内に格納されている立体画像データとに基づいて、個々の画素Pについて、そのサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと立体画像Aを構成する面との交点Q(x,y,z)を求める構成要素である。交点の座標値(x,y,z)は、幾何学的な演算によって求めることができる。なお、図11に示すように、参照直線Lに対して交差する面が複数あるために複数の交点が求まるケースがあるので、この交点演算部130内には、1つの交点を選択する選択ルールを格納しておくようにする。たとえば、最大のZ座標値をもつ交点を統一して選択する選択ルールを格納しておき(もしくは最小のZ座標値をもつ交点を統一して選択する選択ルールを格納しておいてもよい)、所定の画素Pについて複数の交点が求まる場合には、この選択ルールに基づいて選択された単一の交点を、当該画素Pについての交点Q(x,y,z)とすればよい。
【0103】
「高さ演算部140」
個々の画素Pについて、交点演算部130によって求められた交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める構成要素である。実際には、交点Q(x,y,z)のZ座標値をそのまま高さH(x,y)の値として抽出する処理を行えばよい。
【0104】
「剰余演算部210」
個々の画素Pについて、「M(x,y)=(K・H(x,y)) mod D」なる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める処理を行う構成要素である。演算に用いるK,Dは、パラメータ格納部220に格納されている値を利用する。
【0105】
「パラメータ格納部220」
作成するレリーフ記録媒体R上に形成される凹凸構造の最大高低差Dと所定の調整パラメータK(但し、D/Kは、立体画像AのZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を格納する構成要素である。D,Kの値は、予め何らかの固定値を格納しておくことも可能であるが、実用上は、D,Kの値を、オペレータからの入力操作によって任意の値に設定できるようにしておくのが好ましい。たとえば、調整パラメータKを可変値とするのであれば、オペレータからの入力操作に応じて、0<K<1の範囲内の値を任意に設定できるようにしておけばよい。なお、DおよびKに任意の値を設定した結果、D/Kが、立体画像AのZ軸方向の最大寸法Gと等しくなるか、Gよりも大きくなった場合は、M(x,y)は常にK・H(x,y)と等しくなるので、本発明の本来の処理を実行することはできなくなるが、レリーフ記録媒体Rを製造するために利用される凹凸構造データを生成する装置としては、支障なく機能する。この場合、立体画像AをK倍した画像がそのままレリーフ記録媒体R上に表現されることになる。
【0106】
「レリーフ単位面演算部230」
個々の画素P(i,j)を構成する各単位面を、当該画素P(i,j)について求められた剰余M(x,y)だけ上方(Z軸の正負いずれの方向を上方にとってもよい)に平行移動し、移動後に得られる各単位面をそれぞれレリーフ単位面PP(i,j)として求める構成要素である。
【0107】
「レリーフ構成面作成部240」
レリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面Bを決定し、このレリーフ構成面Bを示すデータを、レリーフ記録媒体の表面に形成すべき凹凸構造データとして出力する構成要素である。具体的には、図8に例示したように、隣接するレリーフ単位面PP間の境界に生じる段差部に、XY平面に垂直な段差壁面Fを定義し、レリーフ単位面PPと段差壁面Fとの集合体を示すデータを、レリーフ構成面B(レリーフ記録媒体Rの表面に形成すべき凹凸構造データ)として出力する処理を行う。
【0108】
なお、レリーフ単位面演算部230において、個々の画素P(i,j)を構成する各単位面を、当該画素P(i,j)について求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動した後、移動後に得られる単位面を傾斜させた面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面Bを決定するようにすることも可能である。すなわち、図8に示す例では、レリーフ単位面PP(i,j)は、画素P(i,j)を構成する単位面を上方に平行移動した面であるため、XY平面に平行な面になっているが、これを、たとえば、上空点QQ(x,y,z)を回転中心として傾斜させ、XY平面に対して非平行になるようにしてもかまわない。
【0109】
この場合、隣接するレリーフ単位面PP間の境界に生じる段差部に形成すべき段差壁面F′は、必ずしもXY平面に垂直な面にはならない。図14は、このように、レリーフ単位面PPを傾斜させることにより、レリーフ構成面Bを形成した例を示す斜視図である。各レリーフ単位面PPは、必ずしもXY平面に平行にはならないので、図にハッチングを施して示す段差壁面F′も、必ずしもXY平面に垂直な面にはならない。
【0110】
<<< §5.物理的な媒体の製造方法 >>>
最後に、§4で説明した凹凸構造データの生成装置から出力される凹凸構造データに基づいて、物理的な媒体を製造する具体的な方法(図9の流れ図におけるステップS9のプロセス)を説明する。
【0111】
既に述べたとおり、本発明に係るレリーフ記録媒体は、カタログ、パンフレット、ポスター、カレンダー、トレーディングカード、包装パッケージ、書籍などの様々な印刷物、金属製の銘板や樹脂成型品からなる贈答品、土産物、雑貨など様々な商品に利用される。通常、これらの商品は量産されることになるので、まず、表面にレリーフ構成面Bが形成された原版となる媒体を作成した後、当該原版を用いたプレス加工により、多数の媒体を製造するのが一般的な手法となる。
【0112】
このような原版となる媒体を作成する具体的な方法の一例は、NC工作機械を用いた切削加工により、被加工媒体の表面にレリーフ構成面Bからなる凹凸構造を形成する方法である。レリーフ構成面作成部240からレリーフ構成面データとして出力される凹凸構造データを、NC工作機械に与え、金属からなる被加工媒体の表面に対して切削加工を施せば、表面にレリーフ構成面Bからなる凹凸構造を有する原版を作成することができる。
【0113】
より寸法精度の高い加工装置として、フレキソ製版機を用いることができる。図15は、一般的なフレキソ製版機の基本構成を示す図である。図示のとおり、この製版機は、表面に被加工媒体310を巻き付けた状態で、回転軸αを中心として回転駆動する回転ドラム320と、強度変調したレーザビームβ1を照射するレーザビーム照射部330と、このレーザビームβ1を回転ドラム320の回転軸α方向に走査して、走査されたレーザビームβ2を被加工媒体310の表面に照射する走査部340と、を有している。回転ドラム320による回転駆動と、走査部340による走査を制御することにより、レーザビームβ2を被加工媒体310の表面上の任意の位置に照射することができる。また、レーザビームの強度を変調することができるので、各位置ごとに、照射エネルギーを制御することができる。
【0114】
このような制御を、レリーフ構成面作成部240からレリーフ構成面データとして出力される凹凸構造データに基づいて行えば、被加工媒体310の表面にレリーフ構成面Bからなる凹凸構造をレーザ加工により形成することができる。一般的なフレキソ製版機は、10μm程度の解像度で加工を行うことが可能である。したがって、たとえば、1画素Pの縦横サイズをそれぞれ100μmに設定しても、一般的なフレキソ製版機を用いた加工が十分に可能である。
【0115】
もちろん、本発明を実施する際に用いる物理的な媒体の製造方法は、上述したNC工作機械を用いた切削加工や、フレキソ製版機を用いたレーザ加工に限定されるものではない。要するに、何らかの媒体上に凹凸構造が形成できればよいので、たとえば、インクや樹脂などを盛り上げて媒体上に付着させる印刷技術を利用して、凹凸構造を形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】原画像として利用される任意の立体画像Aの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す立体画像Aを高さ方向に縮小してレリーフ記録媒体R上に記録した例を示す斜視図である。
【図3】XY平面上のサンプル点S(x,y)を通る参照直線Lと半球面からなる立体画像Aとの交点Q(x,y,z)を示す斜視図である。
【図4】XY平面上に定義された二次元画素配列の一例を示す平面図である。
【図5】図3に示す例において、多数のサンプル点と交点との関係を示す正面図である。
【図6】図5に示す例において、各サンプル点S(x,y)の垂直上方における剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)を示す正面図である。
【図7】図6に示す各上空点QQ(x,y,z)を通るレリーフ構成面Bを表面に形成したレリーフ記録媒体Rを示す縦断面図である。
【図8】図7に示すレリーフ記録媒体Rの部分拡大図である。
【図9】本発明に係るレリーフ記録媒体の製造方法の手順を示す流れ図である。
【図10】図9に示す流れ図におけるステップS1〜S4までの手順を具体例に即して示す斜視図である。
【図11】図9に示すステップS3における交点選択プロセスの一例を示す断面図である。
【図12】半球面からなる立体画像Aを用いた場合の交点決定プロセスを示す斜視図である。
【図13】本発明に係るレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置の基本構成を示すブロック図である。
【図14】レリーフ単位面PPを傾斜させることにより、レリーフ構成面Bを形成する例を示す斜視図である。
【図15】媒体上に凹凸構造を形成するフレキソ製版機の基本構成を示す図である。
【符号の説明】
【0117】
100:Height Field データ作成部
110:立体画像データ格納部
120:画素配列データ提供部
130:交点演算部
140:高さ演算部
210:剰余演算部
220:パラメータ格納部
230:レリーフ単位面演算部
240:レリーフ構成面作成部
310:被加工媒体
320:回転ドラム
330:レーザビーム照射部
340:走査部
A:立体画像
B:レリーフ構成面
D:レリーフ記録媒体に形成する凹凸構造の最大高低差
E:レリーフ記録媒体の基体部の厚み
F,F′:段差壁面
G:立体画像Aの高さ寸法
H(x,y):交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さ
i:二次元画素配列の行番号
j:二次元画素配列の列番号
K:調整パラメータ
L:参照直線
M(x,y):高さH(x,y)に基づいて算出された剰余
O:XYZ三次元座標系の原点
P(i,j):XY平面上に定義されたi行j列目の画素/当該画素の単位面
PP(i,j):レリーフ単位面
Q(x,y,z):参照直線Lと立体画像Aを構成する面との交点
QQ(x,y,z):サンプル点S(x,y)から高さM(x,y)の位置にある上空点
Q1〜Q4:参照直線Lと立体画像Aの各表面との交点
R:レリーフ記録媒体
S(x,y):座標値(x,y)をもつサンプル点
S1〜S9:流れ図の各ステップ
X,Y,Z:XYZ三次元座標系の各座標軸
α:回転ドラムの回転軸
β1:強度変調されたレーザビーム
β2:走査されたレーザビーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造する方法であって、
XYZ三次元座標系におけるXY平面上に配列された多数の画素からなる二次元画素配列から構成され、個々の画素にはZ軸に沿った高さを示す画素値Hが定義されており、前記画素値Hにより三次元構造体が表現された立体画像データを用意する段階と、
前記凹凸構造の最大高低差D(但し、Dは、前記三次元構造体のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階と、
前記立体画像データを構成する個々の画素の画素値Hに対して、M=H mod Dなる演算を施し、画素値Hを新たな画素値Mに置き換えた二次元画素配列から構成される置換画像データを求める段階と、
前記XY平面に沿って置かれた媒体の表面上に、前記置換画像データの各画素値Mに応じた高さをもつ凹凸構造からなるレリーフ構成面を形成する段階と、
を有することを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項2】
三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造する方法であって、
XYZ三次元座標系上に、任意の面から構成される立体画像を定義する段階と、
前記座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を定義する段階と、
各画素Pの所定位置に、座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、個々の画素Pについて、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと前記立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める段階と、
前記個々の画素Pについて、前記交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める段階と、
前記凹凸構造の最大高低差D(但し、Dは、前記立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階と、
前記個々の画素Pについて、M(x,y)=H(x,y) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める段階と、
前記個々の画素Pのサンプル点S(x,y)の上方における前記剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通るレリーフ構成面を決定する段階と、
前記レリーフ構成面を媒体表面上に形成する段階と、
を有することを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項3】
三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造する方法であって、
XYZ三次元座標系上に、任意の面から構成される立体画像を定義する段階と、
前記座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を定義する段階と、
各画素Pの所定位置に、座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、個々の画素Pについて、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと前記立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める段階と、
前記個々の画素Pについて、前記交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める段階と、
前記凹凸構造の最大高低差Dと所定の調整パラメータK(但し、D/Kは、前記立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階と、
前記個々の画素Pについて、M(x,y)=(K・H(x,y)) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める段階と、
前記個々の画素Pのサンプル点S(x,y)の上方における前記剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通るレリーフ構成面を決定する段階と、
前記レリーフ構成面を媒体表面上に形成する段階と、
を有することを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の製造方法において、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定することを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法において、
隣接するレリーフ単位面PP間の境界に生じる段差部に、XY平面に垂直な段差壁面Fを定義し、レリーフ単位面PPと段差壁面Fとの集合体をレリーフ構成面とすることを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項6】
請求項2または3に記載の製造方法において、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面を傾斜させた面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定することを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれかに記載の製造方法において、
記録対象となる立体画像を、XYZ三次元座標系上に配置された多数のポリゴンもしくはパラメトリック曲面として定義し、参照直線Lとの交点Q(x,y,z)を、前記ポリゴンもしくはパラメトリック曲面を示すデータを用いた演算処理によって求めることを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれかに記載の製造方法において、
個々の画素Pを互いに同一サイズの矩形領域によって構成し、この矩形領域を縦横に隙間なく並べることによって二次元画素配列の定義を行い、各画素Pの中心位置にサンプル点S(x,y)を定義することを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項9】
請求項2〜8のいずれかに記載の製造方法において、
最大のZ座標値をもつ交点もしくは最小のZ座標値をもつ交点のいずれか一方を統一して選択する選択ルールを予め定めておき、
所定の画素Pについて、参照直線Lに対して交差する面が複数あるために複数の交点が求まる場合には、前記選択ルールに基づいて選択された単一の交点を、当該画素Pについての交点Q(x,y,z)とすることを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法において、
表面にレリーフ構成面が形成された原版となる媒体を作成した後、当該原版を用いたプレス加工により、多数の媒体を製造することを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法において、
NC工作機械を用いた切削加工により、被加工媒体の表面にレリーフ構成面を形成し、原版となる媒体を作成することを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の製造方法において、
表面に被加工媒体を巻き付けた状態で回転駆動する回転ドラムと、強度変調したレーザビームを照射するレーザビーム照射部と、このレーザビームを前記回転ドラムの回転軸方向に走査する走査部と、を有する製版装置を用いたレーザ加工により、前記被加工媒体の表面にレリーフ構成面を形成し、原版となる媒体を作成することを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項13】
三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造するプロセスで用いられるプログラムであって、
XYZ三次元座標系上に定義された立体画像Aを示す立体画像データを入力する段階と、
前記座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を示すデータを設定する段階と、
各画素Pの所定位置に、座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、個々の画素Pについて、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと前記立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める段階と、
前記個々の画素Pについて、前記交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める段階と、
前記凹凸構造の最大高低差D(但し、Dは、前記立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階と、
前記個々の画素Pについて、M(x,y)=H(x,y) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める段階と、
前記個々の画素Pのサンプル点S(x,y)の上方における前記剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通るレリーフ構成面を決定する段階と、
前記レリーフ構成面を示すデータを出力する段階と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項14】
三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造するプロセスで用いられるプログラムであって、
XYZ三次元座標系上に定義された立体画像Aを示す立体画像データを入力する段階と、
前記座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を示すデータを設定する段階と、
各画素Pの所定位置に、座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、個々の画素Pについて、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと前記立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める段階と、
前記個々の画素Pについて、前記交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める段階と、
前記凹凸構造の最大高低差Dと所定の調整パラメータK(但し、D/Kは、前記立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階と、
前記個々の画素Pについて、M(x,y)=(K・H(x,y)) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める段階と、
前記個々の画素Pのサンプル点S(x,y)の上方における前記剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通るレリーフ構成面を決定する段階と、
前記レリーフ構成面を示すデータを出力する段階と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項15】
請求項13または14に記載のプログラムにおいて、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定する処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項16】
請求項15に記載のプログラムにおいて、
隣接するレリーフ単位面PP間の境界に生じる段差部に、XY平面に垂直な段差壁面Fを定義し、レリーフ単位面PPと段差壁面Fとの集合体をレリーフ構成面とする処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項17】
請求項13または14に記載のプログラムにおいて、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面を傾斜させた面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定する処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項18】
三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造するために利用される、凹凸構造データを生成する装置であって、
XYZ三次元座標系上に定義された立体画像を示す立体画像データを格納する立体画像データ格納部と、
前記座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を定義するための画素配列データを格納し、各画素Pの所定位置に定義されたサンプル点S(x,y)の位置を示すサンプル点位置データと、各画素Pを構成する単位面を示す画素単位面データと、を提供する画素配列データ提供部と、
前記サンプル点位置データと前記立体画像データとに基づいて、個々の画素Pについて、そのサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと前記立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める交点演算部と、
前記個々の画素Pについて、前記交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める高さ演算部と、
前記凹凸構造の最大高低差D(但し、Dは、前記立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を格納するパラメータ格納部と、
前記個々の画素Pについて、M(x,y)=H(x,y) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める剰余演算部と、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる各単位面をそれぞれレリーフ単位面PPとして求めるレリーフ単位面演算部と、
前記レリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定し、このレリーフ構成面を示すデータを、レリーフ記録媒体の表面に形成すべき凹凸構造データとして出力するレリーフ構成面作成部と、
を備えることを特徴とするレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置。
【請求項19】
三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造するために利用される、凹凸構造データを生成する装置であって、
XYZ三次元座標系上に定義された立体画像を示す立体画像データを格納する立体画像データ格納部と、
前記座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を定義するための画素配列データを格納し、各画素Pの所定位置に定義されたサンプル点S(x,y)の位置を示すサンプル点位置データと、各画素Pを構成する単位面を示す画素単位面データと、を提供する画素配列データ提供部と、
前記サンプル点位置データと前記立体画像データとに基づいて、個々の画素Pについて、そのサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと前記立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める交点演算部と、
前記個々の画素Pについて、前記交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める高さ演算部と、
前記凹凸構造の最大高低差Dと所定の調整パラメータK(但し、D/Kは、前記立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を格納するパラメータ格納部と、
前記個々の画素Pについて、M(x,y)=(K・H(x,y)) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める剰余演算部と、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる各単位面をそれぞれレリーフ単位面PPとして求めるレリーフ単位面演算部と、
前記レリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定し、このレリーフ構成面を示すデータを、レリーフ記録媒体の表面に形成すべき凹凸構造データとして出力するレリーフ構成面作成部と、
を備えることを特徴とするレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置。
【請求項20】
請求項18または19に記載の生成装置において、
立体画像データ格納部が、XYZ三次元座標系上に配置された多数のポリゴンもしくはパラメトリック曲面を示すデータを、立体画像データとして格納することを特徴とするレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置。
【請求項21】
請求項18〜20に記載の生成装置において、
画素配列データ提供部が、画素Pを構成する矩形の縦サイズと横サイズを示すデータを画素配列データとして格納しており、この画素Pを縦横に隙間なく並べることによって二次元画素配列の定義を行い、各画素Pの中心位置に定義されたサンプル点S(x,y)の位置を示すサンプル点位置データと、各画素Pを構成する矩形を示す画素単位面データと、を演算によって求めることを特徴とするレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置。
【請求項22】
請求項18〜21のいずれかに記載の生成装置において、
交点演算部が、最大のZ座標値をもつ交点もしくは最小のZ座標値をもつ交点のいずれか一方を統一して選択する選択ルールを保持しており、
所定の画素Pについて、参照直線Lに対して交差する面が複数あるために複数の交点が求まる場合には、前記選択ルールに基づいて選択された単一の交点を、当該画素Pについての交点Q(x,y,z)とすることを特徴とするレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置。
【請求項23】
請求項18〜22のいずれかに記載の生成装置において、
レリーフ構成面作成部が、隣接するレリーフ単位面PP間の境界に生じる段差部に、XY平面に垂直な段差壁面Fを定義し、レリーフ単位面PPと段差壁面Fとの集合体を示すデータを、レリーフ記録媒体の表面に形成すべき凹凸構造データとして出力することを特徴とするレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置。
【請求項24】
請求項18〜22のいずれかに記載の生成装置において、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面を傾斜させた面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定することを特徴とするレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置。
【請求項1】
三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造する方法であって、
XYZ三次元座標系におけるXY平面上に配列された多数の画素からなる二次元画素配列から構成され、個々の画素にはZ軸に沿った高さを示す画素値Hが定義されており、前記画素値Hにより三次元構造体が表現された立体画像データを用意する段階と、
前記凹凸構造の最大高低差D(但し、Dは、前記三次元構造体のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階と、
前記立体画像データを構成する個々の画素の画素値Hに対して、M=H mod Dなる演算を施し、画素値Hを新たな画素値Mに置き換えた二次元画素配列から構成される置換画像データを求める段階と、
前記XY平面に沿って置かれた媒体の表面上に、前記置換画像データの各画素値Mに応じた高さをもつ凹凸構造からなるレリーフ構成面を形成する段階と、
を有することを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項2】
三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造する方法であって、
XYZ三次元座標系上に、任意の面から構成される立体画像を定義する段階と、
前記座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を定義する段階と、
各画素Pの所定位置に、座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、個々の画素Pについて、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと前記立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める段階と、
前記個々の画素Pについて、前記交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める段階と、
前記凹凸構造の最大高低差D(但し、Dは、前記立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階と、
前記個々の画素Pについて、M(x,y)=H(x,y) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める段階と、
前記個々の画素Pのサンプル点S(x,y)の上方における前記剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通るレリーフ構成面を決定する段階と、
前記レリーフ構成面を媒体表面上に形成する段階と、
を有することを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項3】
三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造する方法であって、
XYZ三次元座標系上に、任意の面から構成される立体画像を定義する段階と、
前記座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を定義する段階と、
各画素Pの所定位置に、座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、個々の画素Pについて、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと前記立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める段階と、
前記個々の画素Pについて、前記交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める段階と、
前記凹凸構造の最大高低差Dと所定の調整パラメータK(但し、D/Kは、前記立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階と、
前記個々の画素Pについて、M(x,y)=(K・H(x,y)) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める段階と、
前記個々の画素Pのサンプル点S(x,y)の上方における前記剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通るレリーフ構成面を決定する段階と、
前記レリーフ構成面を媒体表面上に形成する段階と、
を有することを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の製造方法において、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定することを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法において、
隣接するレリーフ単位面PP間の境界に生じる段差部に、XY平面に垂直な段差壁面Fを定義し、レリーフ単位面PPと段差壁面Fとの集合体をレリーフ構成面とすることを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項6】
請求項2または3に記載の製造方法において、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面を傾斜させた面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定することを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれかに記載の製造方法において、
記録対象となる立体画像を、XYZ三次元座標系上に配置された多数のポリゴンもしくはパラメトリック曲面として定義し、参照直線Lとの交点Q(x,y,z)を、前記ポリゴンもしくはパラメトリック曲面を示すデータを用いた演算処理によって求めることを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれかに記載の製造方法において、
個々の画素Pを互いに同一サイズの矩形領域によって構成し、この矩形領域を縦横に隙間なく並べることによって二次元画素配列の定義を行い、各画素Pの中心位置にサンプル点S(x,y)を定義することを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項9】
請求項2〜8のいずれかに記載の製造方法において、
最大のZ座標値をもつ交点もしくは最小のZ座標値をもつ交点のいずれか一方を統一して選択する選択ルールを予め定めておき、
所定の画素Pについて、参照直線Lに対して交差する面が複数あるために複数の交点が求まる場合には、前記選択ルールに基づいて選択された単一の交点を、当該画素Pについての交点Q(x,y,z)とすることを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法において、
表面にレリーフ構成面が形成された原版となる媒体を作成した後、当該原版を用いたプレス加工により、多数の媒体を製造することを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法において、
NC工作機械を用いた切削加工により、被加工媒体の表面にレリーフ構成面を形成し、原版となる媒体を作成することを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の製造方法において、
表面に被加工媒体を巻き付けた状態で回転駆動する回転ドラムと、強度変調したレーザビームを照射するレーザビーム照射部と、このレーザビームを前記回転ドラムの回転軸方向に走査する走査部と、を有する製版装置を用いたレーザ加工により、前記被加工媒体の表面にレリーフ構成面を形成し、原版となる媒体を作成することを特徴とするレリーフ記録媒体の製造方法。
【請求項13】
三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造するプロセスで用いられるプログラムであって、
XYZ三次元座標系上に定義された立体画像Aを示す立体画像データを入力する段階と、
前記座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を示すデータを設定する段階と、
各画素Pの所定位置に、座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、個々の画素Pについて、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと前記立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める段階と、
前記個々の画素Pについて、前記交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める段階と、
前記凹凸構造の最大高低差D(但し、Dは、前記立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階と、
前記個々の画素Pについて、M(x,y)=H(x,y) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める段階と、
前記個々の画素Pのサンプル点S(x,y)の上方における前記剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通るレリーフ構成面を決定する段階と、
前記レリーフ構成面を示すデータを出力する段階と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項14】
三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造するプロセスで用いられるプログラムであって、
XYZ三次元座標系上に定義された立体画像Aを示す立体画像データを入力する段階と、
前記座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を示すデータを設定する段階と、
各画素Pの所定位置に、座標値(x,y)をもつサンプル点S(x,y)を定義し、個々の画素Pについて、このサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと前記立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める段階と、
前記個々の画素Pについて、前記交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める段階と、
前記凹凸構造の最大高低差Dと所定の調整パラメータK(但し、D/Kは、前記立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を設定する段階と、
前記個々の画素Pについて、M(x,y)=(K・H(x,y)) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める段階と、
前記個々の画素Pのサンプル点S(x,y)の上方における前記剰余M(x,y)の高さに位置する上空点QQ(x,y,z)をそれぞれ通るレリーフ構成面を決定する段階と、
前記レリーフ構成面を示すデータを出力する段階と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項15】
請求項13または14に記載のプログラムにおいて、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定する処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項16】
請求項15に記載のプログラムにおいて、
隣接するレリーフ単位面PP間の境界に生じる段差部に、XY平面に垂直な段差壁面Fを定義し、レリーフ単位面PPと段差壁面Fとの集合体をレリーフ構成面とする処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項17】
請求項13または14に記載のプログラムにおいて、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面を傾斜させた面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定する処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項18】
三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造するために利用される、凹凸構造データを生成する装置であって、
XYZ三次元座標系上に定義された立体画像を示す立体画像データを格納する立体画像データ格納部と、
前記座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を定義するための画素配列データを格納し、各画素Pの所定位置に定義されたサンプル点S(x,y)の位置を示すサンプル点位置データと、各画素Pを構成する単位面を示す画素単位面データと、を提供する画素配列データ提供部と、
前記サンプル点位置データと前記立体画像データとに基づいて、個々の画素Pについて、そのサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと前記立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める交点演算部と、
前記個々の画素Pについて、前記交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める高さ演算部と、
前記凹凸構造の最大高低差D(但し、Dは、前記立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を格納するパラメータ格納部と、
前記個々の画素Pについて、M(x,y)=H(x,y) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める剰余演算部と、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる各単位面をそれぞれレリーフ単位面PPとして求めるレリーフ単位面演算部と、
前記レリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定し、このレリーフ構成面を示すデータを、レリーフ記録媒体の表面に形成すべき凹凸構造データとして出力するレリーフ構成面作成部と、
を備えることを特徴とするレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置。
【請求項19】
三次元構造体からなる立体画像の特徴を表面の凹凸構造として記録したレリーフ記録媒体を製造するために利用される、凹凸構造データを生成する装置であって、
XYZ三次元座標系上に定義された立体画像を示す立体画像データを格納する立体画像データ格納部と、
前記座標系のXY平面上に、それぞれ単位面からなる画素Pを多数配列することによって構成される二次元画素配列を定義するための画素配列データを格納し、各画素Pの所定位置に定義されたサンプル点S(x,y)の位置を示すサンプル点位置データと、各画素Pを構成する単位面を示す画素単位面データと、を提供する画素配列データ提供部と、
前記サンプル点位置データと前記立体画像データとに基づいて、個々の画素Pについて、そのサンプル点S(x,y)を通りZ軸に平行な参照直線Lと前記立体画像を構成する面との交点Q(x,y,z)を求める交点演算部と、
前記個々の画素Pについて、前記交点Q(x,y,z)のXY平面からの高さH(x,y)を求める高さ演算部と、
前記凹凸構造の最大高低差Dと所定の調整パラメータK(但し、D/Kは、前記立体画像のZ軸方向の最大寸法よりも小さい)を格納するパラメータ格納部と、
前記個々の画素Pについて、M(x,y)=(K・H(x,y)) mod Dなる演算を施し、それぞれ剰余M(x,y)を求める剰余演算部と、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる各単位面をそれぞれレリーフ単位面PPとして求めるレリーフ単位面演算部と、
前記レリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定し、このレリーフ構成面を示すデータを、レリーフ記録媒体の表面に形成すべき凹凸構造データとして出力するレリーフ構成面作成部と、
を備えることを特徴とするレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置。
【請求項20】
請求項18または19に記載の生成装置において、
立体画像データ格納部が、XYZ三次元座標系上に配置された多数のポリゴンもしくはパラメトリック曲面を示すデータを、立体画像データとして格納することを特徴とするレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置。
【請求項21】
請求項18〜20に記載の生成装置において、
画素配列データ提供部が、画素Pを構成する矩形の縦サイズと横サイズを示すデータを画素配列データとして格納しており、この画素Pを縦横に隙間なく並べることによって二次元画素配列の定義を行い、各画素Pの中心位置に定義されたサンプル点S(x,y)の位置を示すサンプル点位置データと、各画素Pを構成する矩形を示す画素単位面データと、を演算によって求めることを特徴とするレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置。
【請求項22】
請求項18〜21のいずれかに記載の生成装置において、
交点演算部が、最大のZ座標値をもつ交点もしくは最小のZ座標値をもつ交点のいずれか一方を統一して選択する選択ルールを保持しており、
所定の画素Pについて、参照直線Lに対して交差する面が複数あるために複数の交点が求まる場合には、前記選択ルールに基づいて選択された単一の交点を、当該画素Pについての交点Q(x,y,z)とすることを特徴とするレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置。
【請求項23】
請求項18〜22のいずれかに記載の生成装置において、
レリーフ構成面作成部が、隣接するレリーフ単位面PP間の境界に生じる段差部に、XY平面に垂直な段差壁面Fを定義し、レリーフ単位面PPと段差壁面Fとの集合体を示すデータを、レリーフ記録媒体の表面に形成すべき凹凸構造データとして出力することを特徴とするレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置。
【請求項24】
請求項18〜22のいずれかに記載の生成装置において、
個々の画素Pを構成する各単位面を、当該画素Pについて求められた剰余M(x,y)だけ上方に平行移動し、移動後に得られる単位面を傾斜させた面をレリーフ単位面PPとし、このレリーフ単位面PPの集合体を用いてレリーフ構成面を決定することを特徴とするレリーフ記録媒体用の凹凸構造データ生成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−199230(P2009−199230A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38772(P2008−38772)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]