説明

レンズシート及びこれを用いたバックライトユニット

【課題】 所定角度範囲内の方向の光線をすべて法線方向付近に屈折でき、また光線の法線方向への屈折に寄与しないレンズ部側面による法線方向以外への屈折を低減できるレンズシートの提供を目的とするものである。
【解決手段】 表面に突条のレンズ部3を複数並列に有し、前記レンズ部3における一方側の側面5の断面形状が結像レンズの断面形状の一部と同じのレンズシート1である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示装置のバックライトユニットに用いられるレンズシート及びこれを用いたバックライトユニットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】液晶表示装置は、液晶層を背面から照らして発光させるバックライト方式が普及し、液晶層の下面側にバックライトユニットを装備している。かかるバックライトユニット20は、一般的には図5(a)に示すように、光源としての線状のランプ21と、このランプ21に端部が沿うように配置される略方形板状の導光板22と、導光板22の上面側に配設される光拡散シート23と、光拡散シート23の上面側に配設されるレンズシート(「プリズムシート」ともいう)24とを装備している。なお、図5(a)にはレンズシート24は1枚しか記載していないが、2枚のレンズシート24が配設される場合もある。また、レンズシート24の上方に光コントロールシートが配設される場合もある。
【0003】このバックライトユニット20の機能を説明すると、まず、ランプ21より導光板22に入射した光線は、導光板22裏面の反射ドットまたは反射シート(図示されず)および導光板22の各側面で反射され、導光板22表面から出射される。この光線は光拡散シート23に入射し、光拡散シート23で拡散され、光拡散シート23表面より出射される。その後、光拡散シート23から出射された光線は、レンズシート24に入射し、レンズシート24表面から出射され、さらに上方の図示していない液晶層全面を照明するものである。
【0004】上記導光板22の表面から出射される光線の輝度分布は、導光板22の種類によって異なり、例えば斜め上方等の特定方向に強いピークを示す。かかる導光板21の出光特性に合わせ、導光板21から出射する光線のピーク方向を法線方向(平行に配設されるレンズシート、光拡散シート等の各シートに対して垂直方向を意味する。以下同じ)に変えるように光拡散シート23及びレンズシート24の屈折能を設定する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記従来のレンズシート24にあっては、図5(b)に示すように、レンズ部25の断面形状が三角形であって、屈折に寄与するレンズ部25の側面26が所定の角度傾斜した平面であることから、特定方向Aの光線を法線方向に屈折させることができるが、特定方向Aと少し異なる方向B及びCの光線は法線方向とは大きくずれて出射される。つまり、法線方向に屈折可能な特定方向Aを通過光線のピーク方向に設定しておけば、ピーク方向の光線のみを法線方向に向けることができるが、ピーク方向以外の方向B、Cの光線は法線方向とは大きくずれた方向に向けられることになる。
【0006】また、上記レンズシート24によれば、レンズ部25を構成する一対の側面26、27のうち、通過光線のピーク方向に対して垂直に近い側面26のみが光線の屈折に寄与し、通過光線のピーク方向に対して平行に近い側面27は光線の屈折にはほとんど寄与せず、むしろ法線方向への屈折に不利に働くこともある。
【0007】本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、所定角度範囲内の方向の光線をすべて法線方向付近に屈折でき、また、光線の法線方向への屈折に寄与しないレンズ部側面による法線方向以外への屈折を低減できるレンズシートの提供を目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するためになされた発明は、光拡散シートの上方に積層され出射光線のピーク方向を法線方向に屈折させるレンズシートであって、突条のレンズ部を複数並列に有し、前記レンズ部における一方側の側面の断面形状を凸状に湾曲させるものであるこの手段によれば、上記レンズ部における一方側の側面の断面形状が凸状に湾曲していることから、この一方側の側面の傾斜角は、低い位置ほど大きく、高い位置ほど小さく、高さによって漸進的に変化する。一方、通過する光線は、その方向の傾斜角が小さいほど一方側の側面の低い位置を通過し、傾斜角が大きいほど一方側の側面の高い位置を通過する量が多いと考えられる。従って、一方側の側面の各高さ位置を通る光線の方向を法線方向に屈折できるように一方側の側面を湾曲させることで、多くの方向の光線を略法線方向に向けることができる。
【0009】上記一方側の側面の断面形状を結像レンズの断面形状の一部と同じにするとよい。この手段によれば、所定角度範囲内の方向の多くの光線を略法線方向に屈折させることができる。
【0010】上記一方側の側面に対向する他方側の側面の傾斜角が、通過する光線のピーク方向の傾斜角より大きくするとよい。この手段によれば、他方側の側面と通過光線のピーク方向とが略平行になるように当該レンズシートを配設することで、他方側の側面を通過する光線がほとんどなくなる。従って、他方側の側面によって通過光線を法線方向以外に屈折させることが防止できる。なお本明細書に記載の「傾斜角」は、レンズシートのシート面を基準とした角度である。
【0011】上述のレンズシートをバックライトユニットに用いると、当該レンズシートによって上述のように法線方向の出光量を増大させることができることから、液晶表示装置の輝度を向上させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。図1は本発明の一実施形態に係るレンズシートを示す斜視図で、図2は図1のレンズシートの部分断面図で、図3は図1のレンズシートを装備したバックライトユニットを説明する模式的斜視図で、図4は図1のレンズシートとは異なる形態に係るレンズシートを示す部分断面図である。
【0013】図1のレンズシート1は、シート部2と、シート部2表面に並列にかつ隣接して形成された複数のレンズ部3とからなる。このレンズ部3は、一方側の側面5と他方側の側面4とを有し、その断面形状が略三角形の突条部である。この他方側の側面4は、シート部2と垂直な平面である。
【0014】一方、レンズ部3の一方側の側面5は円筒周面状の湾曲面である。また、この一方側の側面5の断面形状は結像レンズの断面形状の一部と同じである。かかる結像レンズとしては、球面レンズでも非球面レンズでもよい。ただし、非球面レンズの断面形状の一部にすると、側面5は完全な円筒周面状の湾曲面とはならない。
【0015】上述の形状を有するレンズシート1によれば、光線が通過するレンズ部3の側面5が結像レンズ形状に湾曲していることから、所定方向の光線Aを法線方向に屈折でき、さらに光線Aより傾斜角が小さい光線C及び傾斜角が大きい光線Bも法線方向に屈折させることができる。つまり所定角度範囲内の方向の多くの光線を略法線方向に向けることができる。また、他方側の側面4は光線が通過しないことから、この側面4によって法線方向以外に屈折させてしまうことがなく、法線方向への屈折が可能な側面5に全光線を通過させることができる。
【0016】このレンズシート1は、光線を透過させる必要があるので透明、好ましくは無色透明とされており、その材料は特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロースアセテート、耐候性塩化ビニル等の合成樹脂が挙げられる。
【0017】またレンズシート1のサイズは特には限定されないが、シート部2の厚さは50μm以上500μm以下が好ましい。これは、シート部2の厚みが上記範囲未満であると、レンズシートとしての強度が確保できず、逆に、シート部2の厚みが上記範囲を超えると、液晶表示装置の輝度が低下してしまい、またバックライトユニットの厚みが大きくなって液晶表示装置の薄型化の要求に反することからである。また、レンズ部3のサイズは、例えば、底辺が30μm以上200μm以下とされ、高さが10μm以上200μm以下とされる。
【0018】上述のレンズシート1を形成する方法としては、■レンズ部3を反転させた形状を有するシート型に合成樹脂を積層し、そのシート型を剥がすことでシート部2の表面にレンズ部3を形成する方法、■レンズ部3の反転形状を有する金型に溶融樹脂を注入する射出成型法、■シート化された樹脂を再加熱して前記と同様の金型と金属板との間にはさんでプレスして形状を転写する方法、■レンズ部3の反転形状を周面に有するロールと他のロールとのニップに溶融状態のシート状の樹脂を通し、上記形状を転写する押し出しシート成形法、■基材フィルムにUV硬化樹脂を塗布して上記と同様の反転形状を有するロールに押さえ付けて未硬化のUV硬化樹脂に形状を転写し、その後紫外線をあててUV硬化樹脂を硬化させる方法、■UV硬化樹脂の代わりにEB硬化樹脂を使用する方法、■紡錘形状の光拡散剤を混合した塗料を中心軸が揃うように塗工する方法などがある。
【0019】図1のレンズシート1が組み込まれたバックライトユニット10は、図3に示すように、光線発生源としてのランプ11と、このランプ11の側方に配置されてランプ11から発せられる光線を表側方向に導く導光板12と、その導光板12の表側に積層された光拡散シート13と、その光拡散シート13の表面側に積層されたレンズシート1とを備えている。かかるバックライトユニット10におけるレンズシート1は、レンズ部3の側面5と光線のピーク方向とが交叉するように配設する。
【0020】このバックライトユニット10における光線の軌跡を説明する。まず光線はランプ11から発せられ、導光板12の内部に導かれる。次に、導光板12内の光線は導光板12裏側の反射ドット、反射シート(図示されず)又は側面で反射され、上方の光拡散シート13に出射される。上方へ出射された光線は光拡散シート13通過中に拡散され、レンズシート1に出射される。このようにレンズシート1に入射する光線は、導光板12及び光拡散シート13の出光特性により、特定方向に傾斜している。レンズシート1はそのレンズ部3によって特定方向に傾斜している光線を法線方向に屈折させ、上方に出射させるものである。このとき当該レンズシート1によれば、上述のように所定角度範囲内の方向の多くの光線を略法線方向に向けることができることから、レンズシート1に入射する光線の方向がずれても法線方向に向けることができ、また、光線のピーク方向以外の多くの方向成分をも略法線方向に向けることができる。従って、バックライトユニット10において、レンズシート1によって光拡散シート13で拡散された光線のほとんどを法線方向に向け、さらに上方の偏向膜(図示されず)等に出射されることから、液晶表示装置の画面の輝度を向上させることができる。
【0021】図4のレンズシート15は、シート部16表面に突条のレンズ部17を有し、またレンズ部17の一方側の側面19が結像レンズの断面形状の一部と同じ湾曲面であり、さらにレンズ部17の他方側の側面18が平面である点で、上記レンズシート1と同様である。ただし、当該レンズシート15の側面18がシート部16と垂直ではなく、所定の角度傾斜している点で異なる。この側面18の傾斜角は、通過する光線のピーク方向より大きくする。当該レンズシート15によっても、上記レンズシート1と同様に、側面19によって所定角度範囲内の方向の多くの光線を略法線方向に向けることができ、かつ、側面18を通過する光線を低減することができる。なお、当該レンズシート15の材料及び製法も、上記レンズシート1と同様である。
【0022】なお本発明のレンズシートは、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、シート部の下面側にレンズ部を形成してもよい。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のレンズシートによれば以下に示す効果が発揮できる。すなわち、(1)ピーク方向が所定角度範囲内の多くの光線を略法線方向に向けて出射させることができる。そのため、導光板や光拡散シートの出光特性に対する許容度を向上させることができる。
【0024】(2)通過光線の輝度分布のうちピーク方向成分だけでなく、その他の成分をも略法線方向に屈折させることができる。そのため、従来のレンズシートと比較して、飛躍的に法線方向の出光量を増大させることができる。
【0025】(3)法線方向への屈折に寄与しないレンズ部側面における光線の通過を低減することで、当該側面による法線方向以外の方向に屈折させてしまう悪影響を低減でき、かつ、上述のように種々の方向の光線を法線方向に屈折可能な側面を有効に活用することができる。かかる観点からも、当該レンズシートによる法線方向の出光量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るレンズシートを示す斜視図である。
【図2】図1のレンズシートを示す部分断面図である。
【図3】図1のレンズシートを装備したバックライトユニットを説明する模式的斜視図である。
【図4】図1のレンズシートとは異なる形態に係るレンズシートを示す部分断面図である。
【図5】(a)は一般的なバックライトユニットを説明する模式的斜視図で、(b)は一般的なレンズシートを通過する光線の方向を説明するためのレンズ部の模式的断面図である。
【符号の説明】
1 レンズシート
2 シート部
3 レンズ部
4 他方側の側面
5 一方側の側面
10 バックライトユニット
11 ランプ
12 導光板
13 光拡散シート
15 レンズシート
16 シート部
17 レンズ部
18 他方側の側面
19 一方側の側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】 突条のレンズ部を複数並列に有し、このレンズ部における一方側の側面の断面形状が凸状に湾曲しているレンズシート。
【請求項2】 上記一方側の側面の断面形状が、結像レンズの断面形状の一部と同じである請求項1に記載のレンズシート。
【請求項3】 上記一方側の側面に対向する他方側の側面の傾斜角が、通過する光線のピーク方向の傾斜角より大きい請求項1又は請求項2に記載のレンズシート。
【請求項4】 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレンズシートを備えたバックライトユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2000−347011(P2000−347011A)
【公開日】平成12年12月15日(2000.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−155995
【出願日】平成11年6月3日(1999.6.3)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【Fターム(参考)】