説明

レンズチルト学習制御方法および光ディスク装置

【課題】レンズチルト学習制御を短時間で行うことが可能なレンズチルト学習制御方法と、このレンズチルト学習制御方法を用いて起動時間を短縮する事が可能な光ディスク装置を提供することを目的とする。
【解決手段】対物レンズにより集光されたレーザ光を光ディスクに照射して情報の記録再生を行う際に、対物レンズと光ディスクとの間の相対角度を適正な状態に保つように学習制御するレンズチルト学習制御方法において、チルト学習を実施する光ディスク領域を光ディスクの径方向について複数に分割し、起動時には分割された光ディスク領域のうち最内周の領域でのみチルト学習を行い、シークが発生するときにそのシーク先でチルト学習が行われているか否かを判定し、チルト学習が行われていない場合にはその位置にシークする前に、その位置を含む領域でチルト学習を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズに対して光ディスクが傾いている場合でも記録・再生特性を理想的な状態に維持するために、対物レンズと光ディスクの間の相対角度を適正な状態に保つように学習制御する、レンズチルト学習制御方法と、このレンズチルト学習制御機能を有する光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置は、オーディオ用CDをはじめとして、CD−ROM、CD−R/RW、DVDなどがすでに実用化されており、各方面への応用と高性能化への開発が活発に行われている。特に最近では、パーソナルコンピュータの急速な市場拡大に伴い光ディスク装置のパーソナルコンピュータへの内蔵普及率も高くなっている。
【0003】
光ディスクに対する情報の記録または再生は、対物レンズで集光したレーザ光を光ディスクに照射して行われる。正確な記録再生を行うためには、対物レンズと光ディスクとの距離が適正に保たれていることが必要であり、これはフォーカスエラー信号を取得することによって行われている。
【0004】
記録型DVDのドライブ装置では、対物レンズに対して光ディスクが傾いている場合でも記録・再生特性を理想的な状態に維持するために、対物レンズと光ディスクの間の相対角度を適正な状態に保つように学習制御する、レンズチルト学習制御が行われている。
【0005】
従来のレンズチルト学習制御は、光ディスクの全面に対して光ピックアップを移動しながら、複数のポイントでチルトを測定し、光ディスクの全面に亘るチルトの近似曲線を求める全面チルト学習技術や、その近似曲線をもとに、光ディスクの任意の径方向の位置にシークする際に、その位置に対応するチルト駆動値をチルトアクチュエータに印加するチルト制御技術が用いられていた。
【0006】
従来のレンズチルト学習制御方法の一例として、光ディスク全面に亘ってチルト学習する技術が、(特許文献1)に記載されている。
【特許文献1】特開2003−281761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の方法によると、起動時に光ディスク全面に亘ってチルト測定を行わねばならず、起動に要する時間が長くなる。また、温度が変化すると、光ディスクのそりの状態が変化するため、学習したチルト曲線にずれが生じ、再度光ディスク全面に亘って学習することが必要であった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、レンズチルト学習制御を短時間で行うことが可能なレンズチルト学習制御方法と、このレンズチルト学習制御方法を用いて起動時間を短縮する事が可能な光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、対物レンズにより集光されたレーザ光を光ディスクに照射して情報の記録再生を行う際に、前記対物レンズと前記光ディスクとの間の相対角度を適正な状態に保つように学習制御するレンズチルト学習制御方法において、チルト学習を実施する光ディスク領域を光ディスクの径方向について複数に
分割し、起動時には分割された光ディスク領域のうち最内周の領域でのみチルト学習を行い、シークが発生するときにそのシーク先でチルト学習が行われているか否かを判定し、チルト学習が行われていない場合にはその位置にシークする前に、その位置を含む領域でチルト学習を行うことを特徴とするレンズチルト学習制御方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、レンズチルト学習制御を短時間で行うことができ、起動時間を短縮することが可能となる。また、温度が変化により光ディスクのそりの状態が変化しても、シークが発生する際に、そのシーク先近傍において、ある決められた温度毎にチルト学習を行なうため、温度変化に対応したチルト学習を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の請求項1に記載の発明は、対物レンズにより集光されたレーザ光を光ディスクに照射して情報の記録再生を行う際に、対物レンズと光ディスクとの間の相対角度を適正な状態に保つように学習制御するレンズチルト学習制御方法において、チルト学習を実施する光ディスク領域を光ディスクの半径方向について複数に分割し、起動時には分割された光ディスク領域のうち内周側の領域でのみチルト学習を行い、シークが発生するときにそのシーク先でチルト学習が行われているか否かを判定し、チルト学習が行われていない場合にはその位置にシークする前に、その位置を含む領域でチルト学習を行うことを特徴とするレンズチルト学習制御方法である。
【0012】
起動時には、光ディスク領域のうち内周側の領域でのみチルト学習を行い、他の領域におけるチルト学習は、シークが発生するごとに所定の判定のもとに行うことによって、起動に要する時間を短縮することができ、チルト学習の効率化と時間短縮を図ることができる。また、温度が変化により光ディスクのそりの状態が変化しても、シークが発生する際に、そのシーク先近傍において、ある決められた温度毎にチルト学習を行なうため、温度変化に対応したチルト学習を行うことが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、光ディスクの半径方向に対して対物レンズがチルト方向に可動であるチルトアクチュエータと、チルトアクチュエータを駆動するチルト駆動手段と、対物レンズに対するディスクの傾きに対して、記録/再生特性が最適となる対物レンズのチルト量もしくはチルト駆動電圧を学習するチルト学習手段と、学習されたチルト量もしくはチルト駆動電圧をもとに、光ディスク全面に亘るチルト曲線を演算するチルト曲線演算手段と、チルト曲線をもとに、任意の光ディスク半径位置にシークする際に該当するディスク半径位置におけるチルト駆動電圧をチルト駆動手段に印加するチルト制御手段とを具備する光ディスク装置において、光ディスクの領域を光ディスクの半径方向について複数に分割し、起動時には内周側の領域でのみチルト学習とチルト曲線演算を行なう手段を有することを特徴とする光ディスク装置である。
【0014】
起動時には内周側の領域でのみチルト学習とチルト曲線演算を行なうため、起動に要する時間を短縮することができる。チルト学習の効率化と時間短縮を図ることが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、起動後に、起動時にチルト学習とチルト曲線演算を行っていない領域を目標アドレスとするシークが発生した場合、目標アドレスを含む領域でのチルト曲線演算に必要な光ディスク半径位置でチルト学習を行い、その学習されたチルト量もしくはチルト駆動電圧をもとに、当該領域でのチルト曲線を演算する手段を有することを特徴とする。
【0016】
これにより、チルト学習とチルト曲線演算の効率化と時間短縮を図ることが可能となる

【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、光ディスクの分割された領域のうち、目標アドレスを含む領域で記録が実施される前のシークでのみチルト学習、およびチルト曲線演算する手段を有することを特徴とする。記録が実施される前のシークでのみチルト学習、およびチルト曲線演算することにより、チルト学習が必要となった時点で、必要な領域だけチルト学習がなされるため、チルト学習とチルト曲線演算の効率化が図られる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項2において、任意のステップの温度もしくは温度範囲ごとに、チルト学習ポイント毎のチルト学習チルト量もしくはチルト駆動電圧、もしくはチルト曲線のデータを保存する、チルト学習値保存手段を備えたことを特徴とする。
【0019】
上記のチルト学習値保存手段を備えることにより、温度変化により光ディスクのそりの状態が変化しても、これに対応することが可能となる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5において、起動時より所定の温度変化が生じたとき、変化後の温度でチルト学習およびチルト曲線演算していない領域を目標アドレスとするシークが発生した場合、目標アドレスを含む領域でチルト曲線演算に必要な光ディスク半径位置でチルト学習を行い、その学習されたチルト量もしくはチルト駆動電圧をもとに、当該領域でのチルト曲線を演算し、チルト学習値保存手段に学習値を保存する手段を有することを特徴とする。
【0021】
これにより、温度変化により光ディスクのそりの状態が変化しても、シークが発生するごとにチルト学習を行うため、温度変化に対応したチルト学習を行うことが可能な光ディスク装置を実現することができる。
【0022】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態における光ディスク装置のブロック図である。図1において、1は記録可能な光ディスク、2はピックアップモジュールであり、ピックアップモジュール2には、光ディスク1を可変的に回転させたりあるいは一定回転させたりするスピンドルモータ3、光ディスク1に光を照射することで光ディスク1に所定の情報を記録したりあるいは光ディスク1に照射した光の反射光を元に情報を読み出したりする光ピックアップ4、光ピックアップ4を搭載したキャリッジ5、キャリッジ5を光ディスク1の半径方向に往復移動させるように駆動するフィード部6、フィード部6の駆動源となるフィードモータ7がそれぞれ固定されており、この様な構成によって、小型/薄型の光ディスク1を実現している。8はアナログ信号処理部、9はサーボ処理部、10はモータ駆動部、11はディジタル信号処理部、12はレーザ駆動部、13はコントローラである。
【0024】
以上のように構成された本発明の実施の形態における光ディスク装置の動作について説明する。図1において、ピックアップモジュール2は、光ディスク1を回転させるスピンドルモータ3と光ディスク1の情報信号を読み取るための光ピックアップ4と光ピックアップ4が搭載されたキャリッジ5を光ディスク1の半径方向に移動させるためのフィード部6が構成されたものである。
【0025】
フィード部6はフィードモータ7,ギヤ(図示せず),スクリューシャフト(図示せず)等から構成され、フィードモータ7を回転させることによってキャリッジ5が光ディスク1の内周−外周間を移動するように構成されている。
【0026】
アナログ信号処理部8はピックアップモジュール2の内部に構成されるキャリッジ5中の光ピックアップ4内部の光センサ(図示せず)からの信号出力を基に、フォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号を生成し、サーボ処理部9に出力する。
【0027】
サーボ処理部9はアナログ信号処理部8から送られてきたアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器、A/D変換器で変換されたディジタル信号を一時的に記憶するメモリ、メモリに記録されたディジタル信号あるいはA/D変換器から送られてきたディジタル信号を所定の方法で演算する演算回路、演算回路にて演算されたディジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換機等によって構成され、光ビームスポットが光ディスク1の情報トラックに追従するようにフィルタ信号処理や各種演算処理をディジタル演算によって行う構成になっている。このため、コントローラ13からの司令によりいろいろなパラメータ設定やシーケンス制御がフレキシブルに行うことができる。
【0028】
そしてサーボ処理部9はモータ駆動部10を介して光ピックアップ4に搭載されている対物レンズをフォーカス方向/トラッキング方向に移動させる制御、フィード部6の移送制御、さらにスピンドルモータ3の回転制御等を行う。
【0029】
再生動作時は、光ディスク1に光ピックアップ4から光を照射し、その光ディスク1からの反射光を図示していない受光素子で受光し、その受光した光に応じて光ピックアップ4から出力された再生信号がアナログ信号処理部8を介してディジタル信号処理部11に入力される。
【0030】
ディジタル信号処理部11はデータスライサ、データPLL回路、ジッタ測定回路、エラー訂正部、変/復調部、バッファメモリ、レーザ制御部等から構成されており、ホスト(図中のHOST)側へ有効なデータとして転送される。
【0031】
記録動作時は、ディジタル信号処理部11によってホストから送られてきたデータを変調し、レーザ制御部によってレーザ駆動部12を介して光ピックアップ4内のレーザ(図示せず)等の光源に所定の電流を供給し、光源を例えばパルス状に発光させ、光ディスク1の情報トラックに記録を行う。コントローラ13はこのように構成された光ディスク装置全体のコントロールを行うものである。
【0032】
本発明のレンズチルト学習制御方法では、チルト学習を実施する光ディスク領域を光ディスクの径方向について複数に分割し、起動時において、分割された光ディスク領域のうち、最内周の領域でのみチルト学習を行い、この領域でのチルト近似曲線を得る。そして、シークが発生するときに、そのシーク先でチルト学習がすでに行われている場合には、学習したチルト曲線に基づいてその位置に対応するチルト駆動値をチルトアクチュエータに印加する。シークが発生するときに、そのシーク先でチルト学習が行われていない場合には、その位置にシークする前に、その位置を含む領域でチルト学習を行い、この領域で学習したチルト曲線に基づいてその位置に対応するチルト駆動値をチルトアクチュエータに印加する。また、温度がある一定温度変化したら、シーク先の領域でチルト学習を実施する。
【0033】
図2に、本発明の実施の形態に係るレンズチルト学習制御方法における学習条件判別処理手順を示す。
【0034】
学習条件判別指示がなされると(S1)、対象となるシーク位置とそこでの温度についての情報にもとづいて、チルト学習がなされているか否かの判定を行う(S2)。チルト学習がなされていないと、チルト学習条件が成立するとして(S3)、学習条件判別処理を終了する(S4)。チルト学習がなされていると、チルト学習条件が成立しない(非成
立)として(S5)、学習条件判別処理を終了する(S4)。
【0035】
上記の処理を実施するために、シーク位置と温度についてのマトリックス形式で、学習されたチルト駆動電圧を格納するテーブルが備えられている。このテーブルについては後述する。学習温度は5〜15℃程度のステップとしており、現在の温度によって、当該温度の各ポイントのチルト駆動電圧がテーブルより引き出され、それをもとにディスク半径に対するチルト駆動電圧曲線(関数)を演算する。
【0036】
図3に、光ディスクの全領域を4分割してチルト学習する例を示す図であり、図4は、光ディスク上の位置におけるチルトの算出方法を示す図である。また、図5は、本発明の実施の形態に係るレンズチルト学習制御方法の処理手順を示す図である。
【0037】
図3に示すように、傾斜またはそりを有する光ディスク1を内周側から外周側に向かってエリア1、エリア2、エリア3、エリア4と4つの領域に分割し、それぞれの領域においてチルト測定がなされる。P1〜P8は、フォーカス低域駆動電圧測定点(Fc低域駆動電圧測定点)であり、P12〜P78は、チルト演算点、すなわち、平均チルトを算出するための、2点のFc低域駆動電圧測定点間の中点である。
【0038】
図4に示すように、位置Pnにおけるレンズの高さh(Pn)と、隣接する測定位置Pn+1におけるレンズの高さh(Pn+1)との差であるΔhを、PnとPn+1との間隔で割った傾きを、その傾斜角t(n n+1)で表したものをチルトとして定めている。
【0039】
V(Pn)をPnにおけるフォーカス駆動電圧とし、αをフォーカス感度(変位/駆動電圧)とすると、
h(Pn)=V(Pn)×α
と表すことができる。
【0040】
また、βをチルト感度(チルト量/駆動電圧)とし、V(Pn+1)をPn+1におけるフォーカス駆動電圧とし、Vt(Pn n+1)を、t(n n+1)のチルトを発生させるチルト駆動電圧すると、
t(n n+1)=Tan-1(Δh/l)
=Tan-1((V(Pn+1)−V(Pn))×α/l)
=Vt(Pn n+1)×β
t(n n+1)が十分小さいときには、
Tant(n、n+1)≒(V(Pn+1)−V(Pn))×α/l
従って、
Vt(Pn n+1)=(V(Pn+1)−V(Pn))×α/l/β
となる。
【0041】
図5に従って、光ディスクの全領域を4分割したときのレンズチルト学習制御方法の処理手順の詳細を説明する。
【0042】
チルト学習処理が開始されると(S11)、起動学習時であるか否かの判定を行い(S12)、起動学習時であるときには、P12、P23のチルト学習が実施され(S17)、チルト学習処理が終了する(S28)。
【0043】
起動学習時でないときには、エリア1のシーク前であるか否かの判定を行い(S13)、エリア1のシーク前であるときは、P12、P23のチルト学習条件が成立しているか否かの判定を行う(S16)。その結果、P12、P23のチルト学習条件が成立してい
るときは、P12、P23のチルト学習が実施され(S17)、チルト学習処理が終了する(S28)。P12、P23のチルト学習条件が成立していないときはそのままチルト学習処理が終了する(S28)。
【0044】
エリア1のシーク前でないときは、エリア2のシーク前であるか否かの判定を行い(S14)、エリア2のシーク前であるときは、P12、P23のチルト学習条件が成立しているか否かの判定を行う(S18)。その結果、P12、P23のチルト学習条件が成立しているときは、P12、P23のチルト学習が実施され(S19)、P45のチルト学習条件が成立しているか否かの判定を行う(S20)。また、P12、P23のチルト学習条件が成立していないときは、直ちにP45のチルト学習条件が成立しているか否かの判定を行う(S20)。
【0045】
判定により、P45のチルト学習条件が成立しているときは、P45のチルト学習が実施され(S21)、チルト学習処理が終了する(S28)。P45のチルト学習条件が成立していないときはそのままチルト学習処理が終了する(S28)。
【0046】
エリア2のシーク前でないときは、エリア3のシーク前であるか否かの判定を行い(S15)、エリア2のシーク前であるときは、P45のチルト学習条件が成立しているか否かの判定を行う(S22)。その結果、P45のチルト学習条件が成立しているときは、P45のチルト学習が実施され(S23)、P67、P78のチルト学習条件が成立しているか否かの判定を行う(S24)。また、P45のチルト学習条件が成立していないときは、直ちにP67、P78のチルト学習条件が成立しているか否かの判定を行う(S24)。
【0047】
判定により、P67、P78のチルト学習条件が成立しているときは、P67、P78のチルト学習が実施され(S25)、チルト学習処理が終了する(S28)。P67、P78のチルト学習条件が成立していないときはそのままチルト学習処理が終了する(S28)。
【0048】
エリア3のシーク前でないときは、P67、P78のチルト学習条件が成立しているか否かの判定を行う(S26)。判定により、P67、P78のチルト学習条件が成立しているときは、P67、P78のチルト学習が実施され(S27)、チルト学習処理が終了する(S28)。P67、P78のチルト学習条件が成立していないときはそのままチルト学習処理が終了する(S28)。
【0049】
図6は、図4に示すPn、Pn+1におけるチルト学習の実施手段を示す図である。
【0050】
チルト学習開始の指示がなされると(S31)、Pnの位置にシークされ(S32)、Pnにおいてフォーカス低域駆動電圧(Fc低域駆動電圧)が測定される(S33)。次に、Pn+1の位置にシークされ(S34)、Pn+1においてフォーカス低域駆動電圧(Fc低域駆動電圧)が測定される(S35)。これらの測定結果に基づいて、Pn(n+1)のチルト駆動電圧が演算される(S36)。
【0051】
次に、Pn+2での測定が必要であるか否かの判断がなされ(S37)、必要である場合には、Pn+2の位置にシークされ(S38)、Pn+2においてフォーカス低域駆動電圧(Fc低域駆動電圧)が測定される(S39)。上記の測定結果に基づいて、Pn(n+1)(n+2)のチルト駆動電圧が演算され(S40)、チルト学習を終了する(S41)。Pn+2での測定が必要でない場合には、直ちにチルト学習を終了する(S41)。
【0052】
図7に、起動時におけるチルト学習のタイミングチャートを、トラッキングエラー信号(TE信号)に基づいて、本発明と従来のものとを比較して示す。図7(a)が本発明であり、図7(b)が従来のものである。
【0053】
本発明においては、図7(a)に示すように、光ディスクの最内周側において、P1、P2、P3で順次測定し、エリア1での学習を終了して、学習開始点に復帰する。これに対し、従来のものでは、図7(b)に示すように、光ディスク全面に亘って、P1からP8までについて順次測定を行い、全面についての学習を終了して、学習開始点に復帰する。従って、本発明の学習方法によると、起動に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0054】
図8は、チルトアクチュエータの駆動原理を示す図である。図8(a)はチルト駆動しない場合を示し、図8(b)は光ディスクの傾きに応じて、対物レンズのディスク外周側が持ち上がるように最適チルト駆動する場合を示す。
【0055】
図8(a)においては、光ディスクに対して対物レンズに相対チルトがあり、記録/再生特性が最適でない。このとき、Fcアクチュエータ1(内周側)とFcアクチュエータ2(外周側)の駆動力はともにF0であり等しい。
【0056】
図8(b)においては、光ディスクに対して対物レンズに相対チルトがない状態であり、記録/再生特性が最適化されている。右上がりの傾きにチルト駆動する場合、Fcアクチュエータ1(内周側)の駆動力F1は、
F1=F0−FT
であり、Fcアクチュエータ2(外周側)の駆動力F2は、
F2=F0+FT
である。
【0057】
このように、本発明におけるFcアクチュエータは、内周側(Fc1)と外周側(Fc2)との2つの駆動手段を持ち、両者に同一の駆動力を発生させる場合、すなわち、同じ電圧を印加する場合にはチルトがない通常のFc駆動がなされる。その駆動力(印加電圧)に対して、一方に一定の駆動力(印加電圧)を加算し、他方に同じ駆動力(印加電圧)を減算すれば、内周側と外周側のFc駆動力のバランスが崩れ、チルトが発生する。このアクチュエータ方式では、上記の駆動方法を用いて、Fcアクチュエータとチルトアクチュエータとを兼用している。
【0058】
Fcアクチュエータの駆動力の発生は、対物レンズを含む可動部に、図示しないコイルが内周側(Fc1)、外周側(Fc2)にそれぞれ具備され、それぞれのコイルに上記のように電圧が印加された場合に、基台(キャリッジ)に固定された磁石との間に発生するローレンツ力によってなされる。この他に、チルトを発生させる専用のアクチュエータを独立して持たせることも可能であり、その場合にはFcアクチュエータは内周側、外周側の2つに分割されない。
【0059】
図9は、Fc低域駆動電圧測定回路、及びチルトアクチュエータ制御・駆動回路の構成を示す図である。
【0060】
フォーカスエラー信号(FE信号)は、図9に示すフィルタを介し、Fcアクチュエータ駆動回路を経てFcアクチュエータに入力されるとともに、Fc低域駆動電圧測定回路を経て演算回路に入力される。Fc低域駆動電圧測定回路では、光ディスクの面ぶれによる回転周期のチルト変動が発生する場合を考慮し、1回転分以上のサンプリング数で測定する。演算回路では、Fc低域駆動電圧からチルト測定点における最適チルト駆動電圧、
すなわち再生/記録品質が最良になるチルト駆動電圧を演算する。また、光ディスク半径に対して離散的に演算されたチルト駆動電圧より、ディスク全面に亘って連続的なチルト駆動電圧曲線(関数)を求め、その曲線(関数)より任意の光ディスク半径位置における最適チルト駆動値を求められるようにしている。
【0061】
演算回路による演算結果は、チルトアクチュエータ制御回路、チルトアクチュエータ駆動回路を経てチルトアクチュエータに入力される。チルトアクチュエータ制御回路では、シーク時など行き先の光ディスク半径位置情報が入力されると、その半径位置に応じたチルト駆動電圧を設定する。
【0062】
次に、(表1)に基づいて、チルト学習駆動電圧温度テーブルについて説明する。
【0063】
【表1】

【0064】
(表1)は、時間経過とともに次のような動作をした場合のチルト学習駆動電圧温度テーブルの埋まり方を示すものである。なお、(表1)に示す駆動電圧Vtは、学習位置と温度をマトリックス形式で示すものであり、Vt(学習位置−温度)という形式で記載し
ている。
【0065】
(1)ドライブ温度35℃で起動→チルト12、チルト23が学習されて、テーブルに保存される。
【0066】
(2)ドライブ温度45℃で起動後、初めてエリア2にシーク発生→チルト12、チルト23、チルト45が学習されて、テーブルに保存される(チルト12の学習は省いても良い)。
【0067】
(3)ドライブ温度55℃で起動後、初めてエリア3にシーク発生→チルト45、チルト67、チルト78が学習されて、テーブルに保存される(チルト78の学習は省いても良い)。
【0068】
(4)ドライブ温度65℃で起動後、初めてエリア4にシーク発生→チルト67、チルト78が学習されて、テーブルに保存される。
【0069】
(表1)からわかるように、ドライブ温度の如何によって学習を必要としないエリアが多く存在しており、実際には使用しない無駄な学習をすることなく、必要最低限の学習だけを行なっており、学習の効率化を図ることができる。
【0070】
図10に、チルト学習駆動電圧を基に、光ディスクの半径方向の2点の学習位置間を直線補間近似した場合のチルト駆動曲線を示す。P12,P23,P45、P67,P78は、図3におけるチルト演算点である。分割式チルト学習では、この曲線が温度によって部分的に(全エリアにシークが発生する場合は全面に)近似曲線が演算される。本発明では、学習点が少ない状態で近似曲線を生成するため、測定点2点間を直線補間することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、レンズチルト学習制御を短時間で行うことができ、起動時間を短縮することが可能な光ディスク装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態における光ディスク装置のブロック図
【図2】本発明の実施の形態に係るレンズチルト学習制御方法における学習条件判別処理手順を示す図
【図3】光ディスクの全領域を4分割してチルト学習する例を示す図
【図4】光ディスク上の位置におけるチルトの算出方法を示す図
【図5】本発明の実施の形態に係るレンズチルト学習制御方法の処理手順を示す図
【図6】チルト学習の実施手段を示す図
【図7】起動時におけるチルト学習のタイミングチャートを、トラッキングエラー信号(TE信号)に基づいて、本発明と従来のものとを比較して示す図
【図8】チルトアクチュエータの駆動原理を示す図
【図9】Fc低域駆動電圧測定回路、及びチルトアクチュエータ制御・駆動回路の構成を示す図
【図10】チルト学習駆動電圧を基に、光ディスクの半径方向の2点の学習位置間を直線補間近似した場合のチルト駆動曲線を示す図
【符号の説明】
【0073】
1 光ディスク
2 ピックアップモジュール
3 スピンドルモータ
4 光ピックアップ
5 キャリッジ
6 フィード部
7 フィードモータ
8 アナログ信号処理部
9 サーボ処理部
10 モータ駆動部
11 ディジタル信号処理部
12 レーザ駆動部
13 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズにより集光されたレーザ光を光ディスクに照射して情報の記録再生を行う際に、前記対物レンズと前記光ディスクとの間の相対角度を適正な状態に保つように学習制御するレンズチルト学習制御方法において、チルト学習を実施する光ディスク領域を光ディスクの半径方向について複数に分割し、起動時には分割された光ディスク領域のうち内周側の領域でのみチルト学習を行い、シークが発生するときにそのシーク先でチルト学習が行われているか否かを判定し、チルト学習が行われていない場合にはその位置にシークする前に、その位置を含む領域でチルト学習を行うことを特徴とするレンズチルト学習制御方法。
【請求項2】
光ディスクの半径方向に対して対物レンズがチルト方向に可動であるチルトアクチュエータと、チルトアクチュエータを駆動するチルト駆動手段と、対物レンズに対するディスクの傾きに対して、記録/再生特性が最適となる対物レンズのチルト量もしくはチルト駆動電圧を学習するチルト学習手段と、学習されたチルト量もしくはチルト駆動電圧をもとに、光ディスク全面に亘るチルト曲線を演算するチルト曲線演算手段と、前記チルト曲線をもとに、任意の光ディスク半径位置にシークする際に該当するディスク半径位置におけるチルト駆動電圧をチルト駆動手段に印加するチルト制御手段とを具備する光ディスク装置において、光ディスクの領域を光ディスクの半径方向について複数に分割し、起動時には内周側の領域でのみチルト学習とチルト曲線演算を行なう手段を有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
起動後に、起動時にチルト学習とチルト曲線演算を行っていない領域を目標アドレスとするシークが発生した場合、前記目標アドレスを含む領域でのチルト曲線演算に必要な光ディスク半径位置でチルト学習を行い、その学習されたチルト量もしくはチルト駆動電圧をもとに、当該領域でのチルト曲線を演算する手段を有することを特徴とする請求項2の光ディスク装置。
【請求項4】
光ディスクの分割された領域のうち、前記目標アドレスを含む領域で記録が実施される前のシークでのみチルト学習、およびチルト曲線演算する手段を有することを特徴とする請求項3の光ディスク装置。
【請求項5】
任意のステップの温度もしくは温度範囲ごとに、チルト学習ポイント毎のチルト学習チルト量もしくはチルト駆動電圧、もしくはチルト曲線のデータを保存する、チルト学習値保存手段を備えたことを特徴とする請求項2の光ディスク装置。
【請求項6】
起動時より所定の温度変化が生じたとき、変化後の温度でチルト学習およびチルト曲線演算していない領域を目標アドレスとするシークが発生した場合、前記目標アドレスを含む領域でチルト曲線演算に必要な光ディスク半径位置でチルト学習を行い、その学習されたチルト量もしくはチルト駆動電圧をもとに、当該領域でのチルト曲線を演算し、チルト学習値保存手段に学習値を保存する手段を有することを特徴とする請求項5の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−48824(P2006−48824A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227959(P2004−227959)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】