説明

レンズユニット及びその製造方法

【課題】 レンズに与える熱的影響を高いレベルで抑制しつつ、撮像用プラスチックレンズとこのレンズを保持する保持部材とが強固に接合したレンズユニットを得る。
【解決手段】 撮像用プラスチックレンズ1と、前記プラスチックレンズの外周縁部を保持するためのプラスチック保持部材2とを備え、かつ前記プラスチックレンズ1と前記保持部材2との界面部分において少なくともレーザー光を吸収可能であるレンズユニット10において、前記外周縁部1bと、プラスチック保持部材2とを接触させ、接触部分にレーザー光を照射して、プラスチックレンズ1と保持部材2とをレーザー溶着する。この方法では、レンズに与える熱的影響を極力抑制するため、プラスチックレンズの外周縁部と保持部材との周方向の複数箇所のスポットにおいて溶着(スポット溶着)してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像用(又は撮影用又は撮像系)プラスチックレンズ(携帯電話用カメラレンズなどの小型カメラ用レンズなど)と、このプラスチックレンズを保持するプラスチック保持部材とが強固に接合(又は溶着)したレンズユニット、その製造方法および前記レンズユニットを備えた機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズをプラスチック製の保持部材(又は鏡筒)に取り付けて固定する場合、ガラス製レンズを用い、このガラス製レンズとプラスチック製の鏡筒のレンズ保持部とを熱カシメしていた。しかし、このようなガラス製レンズは、(1)コストが高い、(2)重量が重い、(3)形状的に自由度がない(ボス、孔などのカシメ形状を形成することができないなど)などの欠点があり、レンズのプラスチック化が進んできた。
【0003】
しかし、プラスチックレンズの場合、熱による影響を受け易いため、熱カシメは適当なレンズの保持又は固定方法ではない。このような熱による影響を緩和するため、特開2002−189160号公報(特許文献1)には、プラスチックレンズ1のフランジ11の外周面12を前低後高の傾斜乃至テーパー面に形成し、また、プラスチック鏡筒2の内部に上記フランジ11を陥入嵌合させて熱カシメするレンズ支持小筒21を形成するとともに、前記レンズ支持小筒の内周面26を上記フランジ外周面12の最小嵌合周形状に適合させ、次に、そのレンズ支持小筒21内に上記フランジ11を圧陥入させ、該圧陥入でレンズ支持小筒21に生じる収縮応力を維持しつつそのレンズ支持小筒21の端部を内方へと熱カシメする方法が開示されている。この文献の熱カシメ方法では、ある程度熱による影響を低減できるものの、基本的に熱を用いてカシメる場合、非常に小部分であっても、熱により樹脂を変形させるため、ある程度以上の熱量が必要であり、その熱がレンズに影響を与えないようにすることは、非常に困難である。
【0004】
また、熱カシメの他の接合方法としては、接着剤による固定があるが、接着剤塗布後、乾燥(反応)固化の工程があり、作業性が悪く、歩留まりも悪いというのが現状である。その他、超音波溶着による接合は、工程中の振動による微細な削りカスが発生し、この削りカスがレンズに付着するといった問題があり、適切ではない。
【特許文献1】特開2002−189160号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、高精度が要求される撮像用プラスチックレンズ(携帯電話用カメラレンズなど)とこのレンズを保持するための保持部材とが強固に接合したレンズユニット、その製造方法および前記レンズユニットを備えた機器を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、携帯電話用カメラレンズなどの小型の撮像用プラスチックレンズであっても、レンズに与える熱的影響を高いレベルで抑制しつつ保持部材に強固に接合できるレンズユニット、その製造方法および前記レンズユニットを備えた機器を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、撮像用プラスチックレンズであっても、高い作業性や生産効率で保持部材と接合できるレンズユニット、その製造方法および前記レンズユニットを備えた機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、撮像用プラスチックレンズとこのレンズを保持するための保持部材とをレーザー溶着により接合すると、高い精度が要求される撮像用プラスチックレンズ(特に、携帯電話用カメラレンズなどの小型の撮像用プラスチックレンズ)であっても、光学的特性などに悪影響を与える熱的影響を高いレベルで抑制しつつ強固に保持部材に接合できること見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明のレンズユニットは、撮像用プラスチックレンズと、前記プラスチックレンズの外周縁部を保持するためのプラスチック保持部材とを備え、かつ前記プラスチックレンズと前記保持部材との界面部分において少なくともレーザー光を吸収可能であるレンズユニットであって、前記プラスチックレンズと前記保持部材とがレーザー光の照射により接合している。
【0010】
前記プラスチックレンズは、環状オレフィン系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、又はポリカーボネート系樹脂で構成されていてもよい。また、前記保持部材は、環状オレフィン系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびポリカーボネート系樹脂から選択された少なくとも1種で構成されていてもよい。保持部材を構成するプラスチックは、プラスチックレンズを構成するプラスチックに対して相溶性を有する樹脂で構成してもよく、例えば、前記保持部材を構成するプラスチックは、前記相溶性を有する樹脂を保持部材用プラスチック全体の10重量%以上含んでいてもよい。
【0011】
プラスチックレンズを構成するプラスチック(1)と保持部材を構成するプラスチック(2)との代表的な組合せは、以下の(i)〜(iii)のいずれかの組合せであってもよい。
【0012】
(i)プラスチック(1)が環状オレフィン系樹脂であり、かつプラスチック(2)が環状オレフィン系樹脂を10重量%以上含む樹脂である組合せ
(ii)プラスチック(1)がメタクリル酸エステル系樹脂であり、かつプラスチック(2)が、メタクリル酸エステル系樹脂、シアン化ビニルを重合成分とするスチレン系樹脂およびポリカーボネート系樹脂から選択された少なくとも1種を10重量%以上含む樹脂である組合せ
(iii)プラスチック(1)がポリカーボネート系樹脂であり、かつプラスチック(2)が、メタクリル酸エステル系樹脂、シアン化ビニルを重合成分とするスチレン系樹脂、ポリアルキレンアリレート系樹脂、およびポリカーボネート系樹脂から選択された少なくとも1種を10重量%以上含む樹脂である組合せ。
【0013】
前記保持部材を構成するプラスチックは、廃プラスチックで構成されていてもよく、例えば、前記保持部材を構成するプラスチックは、プラスチックレンズの成形により生成する廃プラスチックで構成されていてもよい。前記保持部材は、保持部材を構成するプラスチック100重量部に対して、無機充填剤を5〜150重量部の割合で含んでいてもよい。
【0014】
前記プラスチックレンズの外周縁部と保持部材とは、レーザー光による影響を極力抑制するため、周方向の複数箇所のスポットにおいて接合していてもよい。前記スポットの幅(又は、レーザー溶着時のレーザーのスポット径)は0.1〜0.8mm程度であってもよい。前記スポットとレンズとは熱的影響などを抑制するため、できるだけ離れていてもよい。例えば、前記プラスチックレンズが、撮像可能なレンズ本体部と、このレンズ本体部の周囲に位置するレンズ外周縁部とを有するプラスチックレンズであって、レンズ外周縁部の幅が0.2〜5mmであり、スポットとレンズ本体部との距離が0.3mm以上であってもよい。代表的には、前記レンズ本体部の幅に対するレンズ外周縁部の幅の比が0.2〜0.7であり、前記レンズ外周縁部の幅が0.3〜2mmであり、かつスポットとレンズ本体部との距離が0.5mm以上であってもよい。
【0015】
本発明は、撮像用プラスチックレンズの外周縁部とプラスチック保持部材とを接触させ、接触部分にレーザー光を照射して、プラスチックレンズと保持部材とを接合する前記レンズユニットの製造方法を含む。また、本発明には、前記レンズユニットを備えた機器を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、高精度が要求される撮像用プラスチックレンズ(携帯電話用カメラレンズなど)とこのレンズを保持するための保持部材とを強固に接合できる。特に、レーザー溶着により接合するので、携帯電話用カメラレンズなどの小型の撮像用レンズであっても、レンズに与える熱的影響を高いレベルで抑制しつつ保持部材に強固に接合できる。また、レーザー溶着(さらには、スポット溶着)により接合できるので、撮像用プラスチックレンズであっても、高い作業性や生産効率で保持部材と接合できる。そのため、本発明では、熱カシメ、接着剤、超音波溶着などによる接合において見られるような熱によるレンズへの悪影響、光学的特性の低下(レンズ機能の低下)、歩留まりなどが少ないだけでなく、削りカスなどのゴミの問題もなく、長期に亘ってレンズの光学的特性を維持しつつ撮像用レンズと保持部材とを接合できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、必要により添付図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。
【0018】
図1Aは、本発明のレンズユニットの一例を示す概略断面図であり、図1Bは、図1Aに示すレンズユニットの平面図である。図1Aにおいて、レンズユニット10は、球面体状の撮像用プラスチックレンズ1と、このプラスチックレンズ1を保持(載置)するための中空円筒状の保持部材(又は鏡筒)2とを備えており、プラスチックレンズ1の外周縁部1bと保持部材2との接触面において接合(溶着)している。すなわち、前記プラスチックレンズ1は、撮像可能な球面体状レンズ本体部1aと、このレンズ本体部1aの周囲に位置する外周縁部1bとで構成されており、前記外周縁部1bを保持又は支持するための前記保持部材2の開口上端面は、前記外周縁部1bに対して面接触して前記レンズ1を保持している。詳細には、保持部材2の開口上端面は、外周縁部1bに対して面接触しており、レンズ本体部1aと接触することなく、プラスチックレンズ1を保持している。
【0019】
そして、レーザー光を透過可能なプラスチックレンズ1(レーザー透過性プラスチックレンズ)と、レーザー光を吸収可能な保持部材2(レーザー吸収性保持部材)とは、レーザー光の照射により、プラスチックレンズ1の外周縁部1bと保持部材2との接触面のうち、周方向の複数箇所(図1Bの例ではほぼ等間隔な3箇所)のスポット(スポット溶着部)3において接合している。なお、前記スポット3は、レーザー光照射によるレンズに対する影響を緩和するため、レンズ1と保持部材2との接触界面のうち、レンズ本体部1aから比較的離れた界面に位置している。
【0020】
図2Aは、本発明のレンズユニットの他の例を示す概略断面図であり、図2Bは、図2Aに示すレンズユニットの平面図である。この例のレンズユニット20は、前記レンズ1と同様の構造を有する撮像用レンズ11と、この撮像用レンズ11を装着して保持するための中空円筒状の保持部材(又は鏡筒)12とを備えている。すなわち、前記保持部材12の開口上端面の内周部には、レンズ本体部11aと外周縁部11bとで構成された撮像用プラスチックレンズ11の外周縁部11bを保持(戴置)するとともに、外周縁部11bをレンズの周方向において支持および固定して装着するために環状の切欠段部(又は載置段部)が形成されており、この切欠段部(又は載置段部)の載置面12aと外周縁部11bの少なくとも底面(この例では、側端面および底面)とが面接触している。
【0021】
[プラスチックレンズ]
プラスチックレンズの形状は、保持部材により保持可能な形状である限り特に限定されず、非凸面状(例えば、平板状などの非球面状)、凸面状(両面が凸面状、一方の面が凸面状および他方の面が凹面状の形状など)などであってもよく、通常、球面体状(又は球面状、例えば、両面が凸面状の球面体状など)であってもよい。また、プラスチックレンズの断面形状(光軸に対して垂直方向の断面形状)は、多角形状(例えば、三角形状、四角形状)などであってもよく、通常、円形状、楕円形状などであってもよい。
【0022】
また、保持部材により保持される外周縁部は、プラスチックレンズの外周縁部であればよく、レンズ機能を有する外周縁部(すなわち、前記レンズ機能部の外周縁部)であってもよいが、実質的なレンズ機能を有する部分への熱の影響を極力少なくするため、実質的にレンズ機能(撮像機能、撮像系のレンズ機能)を有しない(又は撮像に関与しない)外周縁部(又は外周取付部)であってもよい。外周縁部の形状は、保持部材により保持可能であればよく、図1Aおよび図2Aに示すように平らな形状であってもよく、保持部材の形状(詳細には保持部材と接触させる部分の形状)に応じて、凸状、凹状などであってもよい。なお、レンズの端(外周縁部の端)部は、レンズの光軸に対して平行な方向に切断された切断面を有していてもよく、このような切断面において保持部材と接触可能であってもよい。
【0023】
プラスチックレンズは、単層構造であってもよく、積層構造を有していてもよい。例えば、プラスチックレンズは、非球面状レンズ(非球面状層)と球面状レンズ(球面状層)との積層体であってもよい。
【0024】
プラスチックレンズの厚み(又は最大厚み、図1Aでは厚みd1、図2Aでは厚みd2)および幅(又は直径、図1Aでは幅e1+2×g1、図2Aでは幅e2+2×g2に相当)は、用途に応じて適宜選択できる。例えば、小型カメラ用レンズ(例えば、携帯電話用カメラレンズなど)などの小型の撮像用レンズにおいて、厚みは0.1〜20mm、好ましくは0.3〜10mm、さらに好ましくは0.5〜5mm、特に1〜3mm(例えば、1.5〜2.5mm)程度であってもよく、幅は1〜30mm、好ましくは1.5〜20mm、さらに好ましくは2〜15mm(例えば、2.5〜12mm)、特に10mm以下[例えば、3〜10mm(例えば、3〜7mm)程度]であってもよい。
【0025】
なお、プラスチックレンズが、撮像可能なレンズ本体部と実質的に撮像に関与しない外周縁部とで構成されている場合、小型の撮像用レンズにおいて、レンズ本体部の厚みは、上記と同様の範囲の厚みであってもよく、幅(図1Aではe1、図2Aではe2に相当)は0.5〜20mm、好ましくは1〜15mm、さらに好ましくは1.5〜10mm(例えば、1.8〜8mm)、特に2〜5mm(例えば、2.5〜4mm)程度であってもよい。
【0026】
また、外周縁部の厚み(又は最大厚み、図1Aでは厚みf1、図2Aでは厚みf2に相当)および幅(図1Aでは幅g1、図2Aでは幅g2に相当)は、用途に応じて適宜選択できる。例えば、小型の撮像用レンズにおいて、厚みは、プラスチックレンズと同じ厚みか又は小さい厚み、例えば、0.1〜20mm、好ましくは0.2〜8mm(例えば、0.3〜5mm)、さらに好ましくは0.5〜3mm、特に0.6〜2mm(例えば、0.8〜1.5mm)程度であってもよく、幅は0.1〜10mm、好ましくは0.15〜8mm、さらに好ましくは0.2〜5mm(例えば、0.25〜3mm)、特に0.3〜2mm(例えば、0.5〜1.8mm)程度であってもよい。本発明では、上記のような狭い幅の外周縁部であっても、レーザー溶着(特にスポット溶着)により、レンズに対する熱的影響を抑えつつ外周縁部と保持部材とを強固に接合できる。
【0027】
プラスチックレンズにおいて、外周縁部を除く部分(通常、前記レンズ本体部)の幅(又は直径)に対するレンズ外周縁部の幅の比(図1Aではf1/e1、図2Aではf2/e2に相当)は、例えば、0.1〜1、好ましくは0.15〜0.8、さらに好ましくは0.2〜0.7(例えば、0.25〜0.6)程度であってもよい。
【0028】
なお、プラスチックレンズの少なくとも一方の面には、種々の加工処理、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、防曇処理、防汚処理、ミラー加工処理などが施されていてもよく、これらの複数の加工処理を組み合わせて処理されていてもよい。
【0029】
(レンズ用プラスチック)
プラスチックレンズを構成するプラスチック(以下、プラスチック(1)、レンズ用プラスチックなどということがある)としては、撮像(又は撮影用)に用いることができれば特に限定されず、例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂(メタクリル酸エステル系樹脂など)、スチレン系樹脂[例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル変性アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(透明ABS樹脂)など]、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂(脂環族ポリアミド樹脂など)、ポリエステル系樹脂(アルキレンアリレート単位を有するホモ又はコポリエステル又は芳香族ポリエステル系樹脂)などが挙げられる。レンズ用プラスチックは、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性(又は光硬化性)樹脂であってもよい。これらの樹脂は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0030】
これらのレンズ用プラスチックのうち、光学的特性などの観点から、オレフィン系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、又はポリカーボネート系樹脂を好適に使用できる。
【0031】
(オレフィン系樹脂)
オレフィン系樹脂としては、例えば、鎖状オレフィン系樹脂[例えば、メチルペンテン系樹脂[例えば、ポリ(4−メチルペンテン−1)などのメチルペンテンの単独又は共重合体、メチルペンテンとオレフィン系モノマー(例えば、エチレン、プロピレンなどのα−C2-20オレフィン、好ましくはα−C2-6オレフィン)との共重合体など)など]、環状オレフィン系樹脂などが挙げられる。オレフィン系樹脂は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。好ましいオレフィン系樹脂は、環状オレフィン系樹脂である。
【0032】
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを少なくとも重合成分とする樹脂であればよい。環状オレフィンは、単環式オレフィンであってもよく、多環式オレフィンであってもよい。また、環状オレフィンは、置換基{例えば、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基などのC1-10アルキル基、好ましくはC1-5アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基などのC6-10アリール基)、アルケニル基(例えば、プロペニル基などのC2-10アルケニル基など)、シクロアルケニル基(例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などのC5-10シクロアルケニル基など)、アルキリデン基(例えば、エチリデン基などのC2-10アルキリデン基、好ましくはC2-5アルキリデン基など)など]、アルコキシ基(例えば、メトキシ基などのC1-10アルコキシ基、好ましくはC1-6アルコキシ基)、アシル基(例えば、アセチル基などのC2-5アシル基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1-10アルコキシ−カルボニル基)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基(=O)、複素環基(ピリジル基などの窒素原子含有複素環基など)など}を有していてもよい。環状オレフィンは、単独で又は2種以上組みあわせて置換基を有していてもよい。
【0033】
具体的な環状オレフィンとしては、単環式オレフィン類[例えば、シクロアルケン(例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのシクロC3-10アルケンなど)など、シクロアルカジエン(例えば、シクロペンタジエンなどのシクロC3-10アルカジエン)など];二環式オレフィン類{例えば、ビシクロアルケン[例えば、ノルボルネン類(例えば、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5又は5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,6−ジメトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,6−ジ(トリフルオロメチル)−2−ノルボルネン、7−オキソ−2−ノルボルネンなど)などのC4-20ビシクロアルケンなど]、ビシクロアルカジエン[例えば、ノルボルナジエン類(例えば、2,5−ノルボルナジエン、5−メチル−2,5−ノルボルナジエン、5−シアノ−2,5−ノルボルナジエン、5−メトキシカルボニル−2,5−ノルボルナジエン、5−フェニル−2,5−ノルボルナジエン、5,6−ジメチル−2,5−ノルボルナジエン、5,6−ジ(トリフルオロメチル)−2,5−ノルボルナジエン、7−オキソ−2−ノルボルナジエンなど)など]など}、三環式オレフィン{例えば、トリシクロアルケン[例えば、ジヒドロジシクロペンタジエン類(ジヒドロジシクロペンタジエンなど)などのC6-25トリシクロアルケンなど]、トリシクロアルカジエン[例えば、ジシクロペンタジエン類(ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエンなど)、トリシクロ[4.4.0.12,5 ]ウンデカ−3,7−ジエン、トリシクロ[4.4.0.12,5 ]ウンデカ−3,8−ジエンなどのC6-25トリシクロアルカジエンなど]など}、四環以上の多環式オレフィン{例えば、四環式オレフィン[例えば、テトラシクロアルケン(例えば、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンなどのC8-30テトラシクロアルケンなど)など]、五環式オレフィン[例えば、ペンタシクロアルカジエン(例えば、トリシクロペンタジエンなどのC10-35ペンタシクロアルカジエン)など]、六環式オレフィン[例えば、ヘキサシクロアルケン(例えば、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘプタデセンなどのC12-40ヘキサシクロアルケン)など]など}などの多環式オレフィン類などが挙げられる。
【0034】
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンの単独又は共重合体(例えば、単環式オレフィンと多環式オレフィンとの共重合体など)であってもよく、環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体であってもよい。共重合性単量体としては、共重合可能な限り特に限定されないが、鎖状オレフィン[アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどのC2-20アルケン)、アルカジエン(例えば、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役C5-20アルカジエン)など]、重合性ニトリル化合物(例えば、(メタ)アクリロニトリルなど)、(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸など)、不飽和ジカルボン酸又はその誘導体(無水マレイン酸など)などが挙げられる。共重合性単量体は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0035】
好ましい環状オレフィン系樹脂には、多環式オレフィン(例えば、二乃至六環式オレフィンなど)を重合成分とする樹脂、特に、多環式オレフィンのうち、ノルボルネン系単量体(又はノルボルネン骨格を有する単量体、例えば、前記ノルボルネン類、前記ジシクロペンタジエン類など)を重合成分とする樹脂などが挙げられる。環状オレフィン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
【0036】
なお、環状オレフィン系樹脂は、付加重合により得られた樹脂であってもよく、開環重合(開環メタセシス重合など)により得られた樹脂であってもよい。また、環状オレフィン系樹脂(例えば、開環メタセシス重合により得られた樹脂など)は、水素添加された水添樹脂であってもよい。また、環状オレフィン系樹脂は、結晶性又は非晶性樹脂であってもよく、通常、非晶性樹脂であってもよい。
【0037】
多環式オレフィンを重合成分とする樹脂は、多環式オレフィンの単独又は共重合体であってもよく、多環式オレフィンを重合成分とする共重合体(多環式オレフィンと共重合性単量体との共重合体)であってもよい。多環式オレフィンを重合成分とする共重合体において、多環式オレフィン(ノルボルネン系単量体など)の割合は、単量体全体[多環式オレフィンと共重合性単量体(例えば、エチレンなどの前記鎖状オレフィンなど)との総量]の30重量%以上(例えば、35〜99.5重量%程度)、好ましくは40重量%以上(例えば、45〜99重量%程度)、さらに好ましくは50重量%以上(例えば、55〜98重量%程度)、特に60重量%以上(例えば、65〜95重量%程度)であってもよい。
【0038】
なお、環状オレフィン系樹脂は、慣用の重合方法(例えば、チーグラー型触媒を用いた付加重合、メタセシス重合触媒を用いた開環メタセシス重合など)により調製してもよく、市販品を使用してもよい。例えば、環状オレフィン系樹脂は、日本ゼオン(株)から商品名「ZEONEX」、JSR(株)から商品名「ARTON」、三井化学(株)から商品名「アペル」などとして入手することもできる。
【0039】
オレフィン系樹脂(環状オレフィン系樹脂)のアッベ数は、通常、40以上(例えば、42〜70程度)の範囲から選択でき、例えば、45以上(例えば、48〜65程度)、好ましくは50以上(例えば、52〜63程度)、さらに好ましくは53以上(例えば、54〜62程度)、特に55〜60程度であってもよい。
【0040】
(メタクリル酸エステル系樹脂)
メタクリル酸エステル系樹脂としては、少なくともメタクリル酸エステルを重合成分として得られた樹脂であり、レンズ特性の観点から、通常、少なくともメタクリル酸アルキルエステル[例えば、メタクリル酸アルキルエステル(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのメタクリル酸C1-20アルキルエステル、好ましくはメタクリル酸C1-8アルキルエステル、さらに好ましくはメタクリル酸C1-4アルキルエステル、特にメタクリル酸メチル)など]を重合成分とする樹脂である場合が多い。メタクリル酸アルキルエステルは、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0041】
メタクリル酸エステル系樹脂は、例えば、メタクリル酸アルキルエステル(特に、メタクリル酸メチル)の単独又は共重合体であってもよく、メタクリル酸アルキルエステル(特に、メタクリル酸メチル)と共重合性単量体(共重合可能な重合性不飽和単量体)との共重合体であってもよい。
【0042】
共重合性単量体としては、共重合可能であれば特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸又はメタクリル酸の意。以下同様)、アクリル酸アルキルエステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸C1-10アルキルエステル)、脂環族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル[例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C5-10シクロアルキルエステル;デカリニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどのビ乃至テトラシクロアルキル(メタ)アクリレートなど]、(メタ)アクリル酸アルケニルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸アリルなど]、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシC2-6アルキルエステルなど]、(メタ)アクリル酸グリシジル、多官能性(メタ)アクリレート[例えば、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート(エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなど)、アルカントリオールジ乃至トリ(メタ)アクリレート(トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなど)、アルカンテトラオールジ乃至テトラ(メタ)アクリレート(ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなど)などのポリオールポリ(メタ)アクリレート、ポリオールのアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシドなどのC2-4アルキレンオキシド)付加体のポリ(メタ)アクリレートなど]などの(メタ)アクリル系単量体;(メタ)アクリロニトリル;スチレン系単量体(スチレンなど);ビニルエステル系単量体(酢酸ビニルなど);不飽和カルボン酸又はその無水物(無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸など)などが例示できる。共重合性単量体は、通常、(メタ)アクリル系単量体であってもよい。
【0043】
共重合性単量体は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0044】
好ましいメタクリル酸エステル系樹脂は、メタクリル酸メチルを重合成分(又は主成分)とする樹脂、例えば、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルを重合成分とする共重合体[例えば、メタクリル酸メチルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸C2-8アルキルエステル共重合体など)など]が挙げられる。このようなメタクリル酸メチルを重合成分とする共重合体において、メタクリル酸メチルの割合は、単量体全体[メタクリル酸メチルおよび他の単量体(メタクリル酸C2-8アルキルエステル、前記共重合性単量体など)]の50重量%以上(例えば、55〜99.9重量%程度)、好ましくは60重量%以上(例えば、65〜99重量%程度)、さらに好ましくは70重量%以上(例えば、75〜95重量%程度)であってもよい。
【0045】
メタクリル酸エステル系樹脂は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0046】
なお、メタクリル酸エステル系樹脂は、代表的な重合方法(懸濁重合、乳化重合、溶液重合など)を用いて製造したメタクリル酸エステル系樹脂をレンズの形成(又は製造又は調製)にそのまま使用してもよく、上記のような単量体を含むシラップ(アクリルシラップ、シラップ状のメタクリル酸エステル系樹脂)を重合(又は硬化)させることによりレンズを形成してもよい。このようなシラップは、慣用の方法、例えば、塊状予備重合により部分重合物(重合体)を得る方法、重合物を単量体に溶解する方法などにより調製でき、キャステイング時の注入を考慮して、重合体含有率をシラップ全体の35重量%以下(例えば、1〜30重量%、好ましくは3〜20重量%程度)に調整することが好ましい。
【0047】
メタクリル酸エステル系樹脂のアッベ数は、例えば、45以上(例えば、48〜65程度)、好ましくは50以上(例えば、52〜64程度)、さらに好ましくは53以上(例えば、55〜62程度)、特に56〜61程度であってもよい。
【0048】
(ポリカーボネート系樹脂)
ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)などの二価フェノール類と、カーボネート前駆体(カーボネート形成性化合物)とを反応させて得られるポリカーボネート樹脂(芳香族ポリカーボネート)、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートなどの脂肪族カーボネートを重合成分とする脂肪族ポリカーボネートなどが挙げられる。
【0049】
ビスフェノール類としては、例えば、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシフェニル)C1-4アルカンなど]、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類[例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシフェニル)C5-8シクロアルカンなど]、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンなど]、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィドなど]、ビス(ヒドロキシフェニル−アルキル)アレーン類[例えば、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールなどのビス(ヒドロキシフェニル−C1-4アルキル)ベンゼン]などが含まれる。ビスフェノール類は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0050】
カーボネート前駆体としては、例えば、カーボネート類[例えば、ジアリールカーボネート(ジフェニルカーボネートなど)ジアルキルカーボネート(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど)などの炭酸ジエステル類]、カルボニルハライド類[例えば、ホスゲン類(ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲンなど)など]、ハロホルメート類[例えば、非芳香族ビスハロホルメート(エチレングリコールビスクロロホルメート、1,4−ブタンジオールビスクロロホルメート、1,6−ヘキサンジオールビスクロロホルメートなどのC2-10アルカンジオールビスハロホルメート;ジエチレングリコールビスクロロホルメート、トリエチレングリコールビスクロロホルメートなどのポリC2-4アルカンジオールビスハロホルメートなど)、芳香族ビスハロホルメート(例えば、ハイドロキノンビスクロロホルメート、レゾルシノールビスクロロホルメートなどのジヒドロキシアレーンビスハロホルメート;ビスフェノールA−ビスクロロホルメートなどのビスフェノール類のビスハロホルメート)など]などが挙げられる。カーボネート前駆体は、単独で又は2種以上組みあわせて用いてもよい。
【0051】
ポリカーボネート系樹脂のアッベ数は、例えば、40以下(例えば、20〜38程度)、好ましくは36以下(例えば、23〜35程度)、さらに好ましくは34以下(例えば、25〜33程度)、特に26〜32程度であってもよい。
【0052】
これらのレンズ用プラスチックのうち、環状オレフィン系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂でレンズ用プラスチックを構成するのが好ましく、特に、環状オレフィン系樹脂でレンズ用プラスチックを構成するのが好ましい。このような環状オレフィン系樹脂で構成されたレンズ用プラスチックにおいて、環状オレフィン系樹脂の割合は、例えば、レンズ用プラスチック全体の50重量%以上(例えば、55〜100重量%程度)、好ましくは60重量%以上(例えば、65〜100重量%程度)、さらに好ましくは70重量%以上(例えば、75〜100重量%程度)であってもよい。
【0053】
プラスチック(1)の数平均分子量は、例えば、3000〜300000、好ましくは5000〜200000、さらに好ましくは10000〜100000程度であってもよい。
【0054】
プラスチック(1)は、種々の添加剤、例えば、安定剤(熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤など)、可塑剤、滑剤、充填剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。レンズ用プラスチックは、これらの添加剤を単独で又は2種以上組みあわせて含有してもよい。
【0055】
レンズ用プラスチックの屈折率は、樹脂の種類にもよるが、例えば、1.4以上、好ましくは1.45以上(例えば、1.46〜1.7)、さらに好ましくは1.48以上(例えば、1.49〜1.65)、特に1.5以上(例えば、1.51〜1.6)程度であってもよい。
【0056】
また、レンズ用プラスチック(又はプラスチックレンズ)の全光線透過率は、例えば、80%以上(例えば、83〜99%程度)、好ましくは85%以上(例えば、86〜98%程度)、さらに好ましくは88%以上(例えば、90〜95%程度)であってもよい。
【0057】
レンズ用プラスチックの熱変形温度は、例えば、70〜200℃、好ましくは80〜180℃、さらに好ましくは90〜170℃程度であってもよい。
【0058】
なお、プラスチックレンズは、慣用の成形法、例えば、圧縮成形法、トランスファー成形法、押出成形法、射出成形法などで形成でき、射出成形法(インサート射出成形法、射出圧縮成形法を含む)により成形する場合が多い。
【0059】
なお、プラスチックレンズは、通常、レーザー透過性であるが、後述するように、プラスチックレンズのうち、少なくともプラスチック保持部材との接触部分(外周縁部)には、レーザー吸収性被膜が形成されていてもよい。
【0060】
[プラスチック保持部材]
保持部材は、レンズの光軸方向に中空部を有し、少なくとも前記外周縁部を保持できる部材(中空状保持部材、筒状保持部材)であればよい。中空部の断面形状は、前記レンズ(通常レンズ本体部)の形状に対応しており、多角形状(例えば、三角形状、四角形状)などであってもよく、通常、円形状、楕円形状などであってもよい。
【0061】
保持部材の径(図1Aでは、e1+2×g1、図2Aではe2+2×g2+2×(h2−k2)に相当)は、レンズの幅に対応しており、例えば、1〜30mm、好ましくは1.5〜20mm、さらに好ましくは2〜15mm(例えば、2.5〜12mm)、特に3〜10mm(例えば、3〜7mm)程度であってもよい。
【0062】
また、保持部材の幅(非中空部の幅又は厚み、前記図1Aではg1、前記図2Aではh2に相当)は、プラスチックレンズ(又は外周縁部)の幅に応じて適宜選択でき、例えば、小型の撮像用レンズにおいて、例えば、0.1〜30mm、好ましくは0.15〜10mm、さらに好ましくは0.2〜5mm(例えば、0.25〜3mm)、特に0.3〜2mm(例えば、0.5〜1.8mm)程度であってもよい。なお、保持部材に切欠段部(又は載置段部)を設ける場合、切欠段部の高さは、外周縁部の高さなどに応じて適宜調整できる。
【0063】
また、プラスチックレンズの外周縁部が接触可能な保持部材の上端面には、溶着部[図の例では、スポット状の溶着部(スポット溶着部)]からの放熱を促進するため、溶着部に隣接して切欠凹部(例えば、半径方向に延び、かつ筒状保持部材の中空部に通じる凹部又は溝部)を周方向に形成してもよい。
【0064】
さらに、保持部材の上端面の内周域には、プラスチックレンズの外周縁部を載置又は保持するための切欠段部(又は載置段部)を形成し、この切欠段部(又は載置段部)の周方向には、スポット溶着部からの放熱を促進するため、スポット溶着部に隣接して切欠凹部(例えば、半径方向に延び、かつ保持部材の中空部に通じる凹部又は溝部)を形成してもよい。
【0065】
(保持部材用プラスチック)
保持部材は、プラスチックで形成(又は構成)されていればよく、このような保持部材を構成するプラスチック(以下、プラスチック(2)、保持部材用プラスチックなどということがある)としては、特に限定されず、例えば、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12、ポリアミド612、ポリアミド6/66などの脂肪族ポリアミド系樹脂;ポリアミド6Tなどの芳香族ポリアミド系樹脂;脂環族ポリアミド系樹脂など)、ポリエステル系樹脂(ポリアルキレンアリレート系樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂[ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレンゴムなどの鎖状オレフィンの単独又は共重合体(エラストマーも含む)、環状オレフィン系樹脂など]、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂(例えば、メタクリル酸エステル系樹脂など)、ビニル系樹脂(塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)、ポリフェニレンオキシド系樹脂[ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド(ポリスチレンとのブレンド、ポリスチレンがグラフトしたポリフェニレンオキシドなど)など]などが挙げられる。保持部材用プラスチックは、熱可塑性樹脂又は熱硬化(又は光硬化)性樹脂であってもよく、通常、熱可塑性樹脂であってもよい。保持部材用プラスチックは、結晶性樹脂であってもよく、非結晶性樹脂であってもよい。保持部材用プラスチックは、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0066】
これらのうち、レンズ用プラスチックに対する溶着性(又は相溶性)の観点から、保持部材用プラスチックは、オレフィン系樹脂(特に、前記例示の環状オレフィン系樹脂などの環状オレフィン系樹脂)、メタクリル酸エステル系樹脂(前記例示のメタクリル酸エステル系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびポリカーボネート系樹脂(前記例示のポリカーボネート系樹脂)から選択された少なくとも1種で構成されているのが好ましい。
【0067】
スチレン系樹脂としては、芳香族ビニル系単量体(例えば、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、およびこれらの組合せなど)を構成成分とする樹脂、例えば、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、メタクリル酸メチル変性HIPS(透明HIPS)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、ゴム成分を含有するスチレン系樹脂[スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸メチル変性ABS樹脂(透明ABS樹脂)、α−メチルスチレン変性ABS樹脂、イミド変性ABS樹脂、スチレン−メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体(MBS樹脂)などのジエン系ゴム(ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合体ゴムなど)を含むスチレン系樹脂;AXS樹脂、メタクリル酸メチル変性AXS樹脂など]などが挙げられる。ここで、AXS樹脂とは、ゴム成分X(アクリルゴム、塩素化ポリエチレン、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)にアクリロニトリルAとスチレンSとがグラフト重合した樹脂を指し、具体的には、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン樹脂(AAS樹脂)、アクリロニトリル−エチレン・プロピレンゴム−スチレン樹脂(AES樹脂)などである。なお、ゴム含有スチレン系樹脂は、ゴム成分(ジエン系ゴムなど)の存在下に、少なくとも芳香族ビニル単量体(および必要に応じて、さらにアクリル系単量体及び/又はシアン化ビニル系単量体、他の共重合性単量体など)をグラフト共重合したグラフト共重合体である場合が多い。これらのスチレン系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0068】
これらのスチレン系樹脂のうち、好ましいスチレン系樹脂には、例えば、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、AS樹脂、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、MBS樹脂、メタクリル酸変性AAS樹脂などのアクリル系単量体[(メタ)アクリル酸、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル]及び/又はシアン化ビニル系単量体(アクリロニトリルなど)を重合成分とするスチレン系樹脂(アクリル変性スチレン系樹脂、アクリル含有スチレン系樹脂)が含まれ、特に、シアン化ビニルを重合成分とするスチレン系樹脂[例えば、ABS系樹脂(ABS樹脂、ABS樹脂とAS樹脂の混合物など)などのシアン化ビニルを重合成分とするジエン系ゴム含有スチレン系樹脂]が好ましい。
【0069】
アクリル変性スチレン系樹脂において、芳香族ビニル系単量体と、アクリル系単量体及び/又はシアン化ビニル系単量体との割合は、前者/後者(重量比)=20/80〜95/5、好ましくは30/70〜90/10、さらに好ましくは55/45〜85/15程度であってもよい。また、ゴム(ジエン系ゴムなど)を含むアクリル変性スチレン系樹脂において、ジエン系ゴムの割合は、芳香族ビニル系単量体とアクリル系単量体及び/又はシアン化ビニル系単量体との総量100重量部に対して、例えば、10〜250重量部、好ましくは20〜200重量部、さらに好ましくは30〜150重量部程度であってもよい。また、アクリル変性スチレン系樹脂は、他の共重合性モノマーを重合成分とする樹脂であってもよく、他の共重合性モノマーの割合は、樹脂を構成する単量体全体の0〜30重量%程度であってもよい。
【0070】
なお、ABS樹脂とAS樹脂とを混合する場合、ABS樹脂とAS樹脂との割合は、前者/後者(重量比)=99/1〜10/90、好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは90/10〜30/70、特に好ましくは80/20〜40/60程度であってもよい。
【0071】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂などが含まれる。ポリエステル系樹脂としては、通常、芳香族ポリエステル系樹脂(例えば、ポリアルキレンアリレート系樹脂など)が使用される。
【0072】
芳香族ポリエステル系樹脂は、例えば、芳香族ジカルボン酸成分[例えば、フタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの炭素数8〜14程度の芳香族ジカルボン酸、これらのエステル(例えば、ジメチルテレフタレートなどのC1-3アルキルエステルなど)など]を含むジカルボン酸成分と、ジオール成分[脂肪族ジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの炭素数2〜12程度の飽和脂肪族グリコールなど)、脂環族ジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールなど)など]との重縮合反応によって得ることができる。なお、芳香族ジカルボン酸成分、ジオール成分は、それぞれ、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。また、ジカルボン酸成分には、芳香族ジカルボン酸に加えて、脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの炭素数2〜14程度の飽和脂肪族ジカルボン酸など)、脂環族ジカルボン酸(例えば、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロイソフタル酸、テトラヒドロテレフタル酸など)などが含まれていてもよい。
【0073】
代表的な芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリアルキレンアリレート系樹脂[ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2-4アルキレンテレフタレート;このポリアルキレンテレフタレートに対応するポリC2-4アルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレートなど)など]、ポリ1,4−シクロへキシルジメチレンテレフタレート(PCT)などが例示できる。
【0074】
これらのポリエステル系樹脂は単独でまたは二種以上組み合わせて使用することができる。
【0075】
好ましいポリエステル系樹脂には、ポリアルキレンアリレート系樹脂、特に少なくともC2-4アルキレンアリレート単位(例えば、エチレンテレフタレートやブチレンテレフタレートなどのC2-4アルキレンテレフタレート単位、特にブチレンテレフタレート単位)を含むポリエステル系樹脂が含まれる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、エチレンテレフタレート単位を含むコポリエステル、ブチレンテレフタレート単位を含むコポリエステル、又はこれらの組み合わせなどが好ましい。
【0076】
なお、ポリアルキレンアリレート系樹脂は、アルキレンアリレート単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステルであってもよく、共重合成分には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなどのC2-6アルキレングリコール、ポリC2-4アルキレングリコール、フタル酸、イソフタル酸などの非対称芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などが例示できる。さらに、少量のポリオール及び/又はポリカルボン酸を用い、線状ポリエステルに分岐鎖構造を導入してもよい。
【0077】
保持部材用プラスチックは、レーザー溶着性を高めるため、レンズ用プラスチックに対して相溶性(又は混和性)を有する樹脂で構成されていてもよい。このような相溶性を有する樹脂は、レンズ用プラスチックと同じ樹脂(又は同種の樹脂)であってもよい。なお、熱カシメや接着剤などを用いるレンズと保持部材との接合において、保持部材用プラスチックとレンズ用プラスチックとの相溶性は、通常、要求されない。
【0078】
相溶性を有する樹脂の割合は、例えば、保持部材用プラスチック全体の10重量%以上(例えば、20〜100重量%)、好ましくは30重量%以上(例えば、40〜99重量%程度)、さらに好ましくは50重量%以上(例えば、60〜98重量%程度)であってもよい。
【0079】
保持部材用プラスチックの数平均分子量は、例えば、3000〜500000、好ましくは5000〜300000、さらに好ましくは10000〜200000程度であってもよい。
【0080】
以下に、代表的なレンズ用プラスチック(1)と保持部材用プラスチック(2)(特に、レンズ用プラスチックに対して相溶性を有する樹脂)との組合せを例示する。
【0081】
(i)プラスチック(1)が、環状オレフィン系樹脂であり、かつプラスチック(2)が環状オレフィン系樹脂を10重量%以上含む樹脂である組合せ
(ii)プラスチック(1)がメタクリル酸エステル系樹脂であり、かつプラスチック(2)が、メタクリル酸エステル系樹脂、スチレン系樹脂(特に、ABS系樹脂などのシアン化ビニルを重合成分とするスチレン系樹脂)およびポリカーボネート系樹脂から選択された少なくとも1種を10重量%以上含む樹脂である組合せ
(iii)プラスチック(1)がポリカーボネート系樹脂であり、かつプラスチック(2)が、メタクリル酸エステル系樹脂、スチレン系樹脂(特に、ABS系樹脂などのシアン化ビニルを重合成分とするスチレン系樹脂)、ポリアルキレンアリレート系樹脂(特に、少なくともC2-4アルキレンアリレート単位を含むポリエステル系樹脂)、およびポリカーボネート系樹脂から選択された少なくとも1種を10重量%以上含む樹脂である組合せ。
【0082】
上記の組合せのなかでも、特に、レンズ用プラスチックおよび保持部材用プラスチックが環状オレフィン系樹脂で構成されている組合せ(i)が好ましい。
【0083】
なお、保持部材を構成するプラスチックは、廃プラスチック(リサイクル用プラスチック、再利用プラスチック、リサイクル品)で構成されていてもよい。このような廃プラスチックとしては、特に限定されないが、例えば、プラスチックレンズの成形により生成(又は発生)する廃プラスチックなどが挙げられる。成形により生成(副生)する廃プラスチック(又は回収品)としては、例えば、成形不良品、前記プラスチックレンズの射出成形(射出圧縮成形などを含む)により得られるスプルー(スプルー部のプラスチック、スプルーに残存するプラスチック)やランナー(ランナー部のプラスチック、ランナーに残存するプラスチック)などが挙げられる。
【0084】
このようなプラスチックレンズの成形(又は成形過程)において生成又は副生する廃プラスチック(特に、スプルー、ランナーなど)は、前記のようにレンズ用プラスチックと同じであり、レンズ用プラスチックに対して相溶性を有している。そのため、このような廃プラスチックの使用は、レーザー溶着性を向上できるとともに、レンズ成形により発生するプラスチックを有効に利用でき、極めて有用である。
【0085】
保持部材用プラスチックを廃プラスチック(特に、レンズの成形により生成する廃プラスチック)で構成する場合、廃プラスチックの割合は、保持部材用プラスチック全体の10重量%以上(例えば、20〜100重量%程度)の範囲から選択でき、例えば、30重量%以上(例えば、35〜100重量%程度)、好ましくは40重量%以上(例えば、45〜99重量%程度)、さらに好ましくは50重量%以上(例えば、60〜98重量%程度)であってもよい。
【0086】
なお、保持部材は、種々の添加剤、例えば、安定剤(熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤など)、可塑剤、滑剤、充填剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。保持部材は、これらの添加剤を単独で又は2種以上組みあわせて含んでいてもよい。特に、保持部材は、レンズを保持するという点から、充填剤(通常、無機充填剤)を含んでいてもよい。
【0087】
充填剤としては、例えば、繊維状充填剤、板状充填剤、粉粒状充填剤などが含まれる。
【0088】
繊維状充填剤としては、例えば、無機繊維[ガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、金属繊維(ステンレス繊維、酸化アルミニウム繊維など)、セラミック繊維、チタン酸ウイスカー、ボロンウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー、アスベストなど]、有機繊維(アラミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維など)などが挙げられる。板状充填剤としては、例えば、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイカ、グラファイト、金属箔などが挙げられる。粉粒状充填剤としては、例えば、カーボンブラック、炭化ケイ素、シリカ、石英粉末、ハイドロタルサイト、ガラス類(ガラスビーズ、ガラス粉、ミルドガラスファイバー)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、ケイ酸塩(ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、クレー、ケイ藻土、ウォラストナイトなど)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなど)、硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)などが挙げられる。
【0089】
これらの充填剤のうち、機械的特性などの点から、無機充填剤(例えば、ガラス繊維などの繊維状無機充填剤、タルク、マイカなど板状無機充填剤)が好ましく、特にガラス繊維などが好ましい。
【0090】
繊維状充填剤の平均繊維長は、例えば、10mm以下(例えば、0.1〜10mm)、好ましくは0.1〜8mm、さらに好ましくは0.2〜4mm程度であってもよい。また、繊維状充填剤の平均繊維径は、例えば、0.1〜50μm、好ましくは0.5〜30μm、さらに好ましくは1〜20μm程度であってもよい。また、非繊維状充填剤(粉粒状又は板状充填剤)の平均粒径(又は平均径)は、30μm以下程度の範囲から選択でき、例えば、10μm以下(0.1〜10μm)、好ましくは5μm以下(例えば、0.3〜5μm)、さらに好ましくは0.5〜5μm(特に1〜5μm)程度であってもよい。
【0091】
これらの充填剤は、必要に応じて、集束剤、シラン系化合物(シランカップリング剤など)などの処理剤によって表面処理されていてもよい。これらの充填剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0092】
充填剤(特に無機充填剤)の割合は、保持部材を構成するプラスチック(保持部材用プラスチック)100重量部に対して、例えば、5〜150重量部、好ましくは10〜100重量部、さらに好ましくは15〜80重量部、特に20〜70重量部(例えば、20〜60重量部)程度であってもよい。
【0093】
また、保持部材は、後述するようにレーザー吸収剤を含んでいてもよく、着色剤(レーザー吸収剤の範疇に属さない着色剤)を含んでいてもよい。着色剤としては、レーザー光を透過可能な有彩色又は無彩色着色剤(又はレーザー光に対して非吸収性の着色剤)が使用できる。このような着色剤としては、例えば、白色染顔料(例えば、チタン白、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポンなどの無機顔料)、黄色顔料[例えば、カドミイエロー(カドミ黄)、黄鉛(クロム黄)、ジンククロメート、黄土(オーカー)などの無機顔料、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピグメントイエローなどの有機顔料]、橙色顔料、赤色顔料[例えば、赤口顔料、アンバー、カドミウムレッド(火赤)、鉛丹(四三酸化鉛、光明丹)などの無機顔料、パーマンネントレッド、レーキレッド、ウォッチャンレッド、ブリリアント・カーミン6Bなどの有機顔料]、青色顔料[例えば、紺青、群青、コバルトブルー(テナール青)などの無機顔料、フタロシアニンブルーなどの有機顔料]、緑色顔料[例えば、クロムグリーンなどの無機顔料、フタロシアニングリーンなどの有機顔料]などが挙げられる。また、黒色系の着色剤としては、レーザー光に対して非吸収性の黒色染顔料、例えば、オリヱント化学工業(株)から「eBINDLTW-817OC」、「eBINDLTW-8012」、「eBINDLTW-8620C」、「eBINDLTW-8630C」、「eBINDLTW-8400C」、「eBINDLTW-8950C」、「eBINDLTW-8200」、「eBINDLTW-8300」、「eBINDLTW-8250C」などとして入手可能な黒色染顔料などが使用できる。
【0094】
着色剤は、前記例示の染顔料などを単独で用いてもよく、複数の着色剤を組み合わせて用いて所望の色調に調整してもよい。例えば、3原色を用いて、保持部材を黒色に着色することもできる。
【0095】
着色剤(レーザー光を実質的に吸収しない着色剤)の割合は、特に制限されないが、保持部材用プラスチックや着色剤の種類、レーザー光の発振波長などに応じて適宜選択でき、例えば、保持部材用プラスチック100重量部に対して、0〜10重量部(例えば、0.0001〜10重量部)、好ましくは0.001〜7重量部、さらに好ましくは0.01〜5重量部程度であってもよい。
【0096】
プラスチック保持部材(又はプラスチック(2))の全光線透過率(又は可視光線透過率)は、例えば、30%以下(例えば、0〜25%)、好ましくは20%以下(例えば、0〜15%程度)、さらに好ましくは10%以下(例えば、0〜5%程度)であってもよい。
【0097】
なお、保持部材は、慣用の成形法、例えば、圧縮成形法、トランスファー成形法、押出成形法、射出成形法などで成形できる。
【0098】
レンズユニットにおいて、前記プラスチックレンズと前記保持部材との界面部分(接触部分、レーザー溶着部)は、少なくともレーザー光を吸収可能である。例えば、プラスチックレンズ(特にその外周縁部)と保持部材との界面部分(又は接触部分)において、少なくとも一方の部材がレーザー吸収性を有しており、レーザー溶着が可能である限り、双方の部材が接触部においてレーザー吸収性を有していてもよい。前記界面部分を少なくともレーザー吸収可能にする具体的な方法としては、保持部材にレーザーを吸収可能なレーザー吸収剤を含有させる方法、プラスチックレンズの外周縁部のうち保持部材との少なくとも接触部分にレーザー吸収剤を含む被膜(レーザー吸収性被膜)を形成する方法、これらを組みあわせる方法などが挙げられる。代表的な方法では、保持部材をレーザー吸収剤で構成することにより、前記界面部分でレーザー吸収可能にする場合が多い。
【0099】
レーザー吸収剤(又はレーザー光吸収剤)としては、例えば、レーザー光の波長に応じて選択でき、レーザー光の波長域に吸収を有する無機又は有機染顔料が使用できるが、通常、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなど)、チタンブラック、黒色酸化鉄などの黒色顔料(レーザー吸収性を有する黒色顔料)を使用する場合が多い。これらのレーザー光吸収剤は、単独で又は二種以上組合せて使用できる。なお、黒色顔料の平均粒径は、例えば10nm〜3μm(好ましくは10nm〜1μm)程度の広い範囲から選択できる。特に、カーボンブラックの平均粒径は、例えば、10〜100nm、好ましくは15〜90nm程度であってもよい。
【0100】
保持部材にレーザー光吸収剤を含有させる場合、レーザー光吸収剤の割合は、保持部材用プラスチック100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部、さらに好ましくは0.4〜4重量部(例えば、0.5〜3重量部)程度であってもよい。なお、保持部材は、前記レーザー光吸収剤を着色剤(レーザー吸収性の着色剤)として含有していてもよく、さらに前記のように着色剤(無機又は有機染顔料などのレーザー非吸収性の着色剤)を含有してもよい。
【0101】
なお、レーザー吸収性被膜は、例えば、レーザー吸収剤を含む塗布剤をレンズの外周縁部(詳細には、少なくとも保持部材との接触部分)に塗布(又はコーティング)するなどの方法により形成できる。レーザー吸収性被膜の厚み(乾燥厚み)は、例えば、0.1〜20μm、好ましくは0.3〜10μm、さらに好ましくは0.5〜5μm程度であってもよい。
【0102】
また、プラスチックレンズおよび保持部材のうち、少なくとも一方の部材(通常、少なくともプラスチックレンズ)がレーザー光を透過可能である場合が多い。具体的には、(i)外周縁部のうち保持部材との接触部にレーザー吸収性被膜が形成されたレーザー透過性のプラスチックレンズと、レーザー吸収性保持部材又はレーザー透過性保持部材とを組みあわせたり、(ii)レーザー透過性プラスチックレンズとレーザー吸収可能なレーザー吸収性保持部材とを組み合わせて、レーザー光の照射によりプラスチックレンズと保持部材とをレーザー溶着してもよい。なお、レーザー透過性保持部材は、プラスチックレンズの種類やその用途にもよるが、通常、レーザー光を透過可能であって、可視光を実質的に透過しない(例えば、全光線透過率10%以下程度を有する)場合が多い。このようなレーザー透過性保持部材は、例えば、保持部材プラスチックにレーザー非吸収性の着色剤を添加することにより調製してもよい。
【0103】
[レンズユニット]
レンズユニットにおいて、プラスチックレンズの保持形態は、特に限定されず、種々の形態が採用できる。すなわち、保持部材は、少なくとも外周縁部と接触することによりプラスチックレンズを保持すればよく、外周縁部の一部又は全部に接触して保持してもよい。また、プラスチックレンズの外周縁部と保持部材との接触は、レーザー溶着が可能である限り、点接触、線接触又は面接触のいずれであってもよい。通常、保持安定性及び加工性の点から、プラスチックレンズの外周縁部と保持部材とは、少なくとも溶着部において面接触している場合が多い。この場合、レーザー溶着可能な種々の態様、例えば、プラスチックレンズの外周縁部が面接触可能な載置凸部を保持部材の開口端面に形成し、この載置凸部でプラスチックレンズの外周縁部を保持する態様、外周縁部の上面及び下面に対して接触可能又は外周縁部を嵌合可能な凹部(コの字状凹部)を有する保持部材に、プラスチックレンズを保持(又は挟持)する態様などの態様外周縁部と保持部材とを接触(面接触)させてレーザー溶着してもよい。
【0104】
なお、保持部材において、保持部材の外周縁部と接触する部分(接触部、界面部)の幅(前記図1Aおよび図2Aでは外周縁部を戴置する戴置部の幅、すなわち、図1Aではg1、図2Aではk2に相当)、例えば、0.2〜10mm、好ましくは0.3〜5mm(例えば、0.3〜4mm)、さらに好ましくは0.4〜3.5mm(例えば、0.5〜3mm)、特に0.6〜2mm(例えば、0.7〜1.5mm)程度であってもよい。本発明では、このように狭い幅の接触部であっても、レーザー溶着(特にスポット溶着)により、レンズに作用する熱的影響を極力抑えつつ接合できる。
【0105】
また、必要であれば、プラスチックレンズをさらに強固に保持又は固定するため、プラスチックレンズを挟持可能な部材を用いてもよい。例えば、筒状保持部材の開口上端面の内周域に、プラスチックレンズの外周縁部の厚みよりも大きな深さの切欠段部(又は載置段部)を形成し、この切欠段部(又は載置段部)に載置されたプラスチックレンズの外周縁部を保持又は固定するため、前記切欠段部(又は載置段部)に適合した挟持部材(リング状挟持部材)を、プラスチックレンズの外周縁部の上から筒状保持部材の開口上端面の内周域に装着してもよい。
【0106】
なお、保持部材は、少なくとも一つのレンズを保持可能であればよく、複数のレンズを保持可能であってもよい。また、保持部材の保持(又は接触)形態は、図1Aおよび図2Aの例のように、保持部材の開口上端面に戴置してもよく、保持部材により外周縁部(又はレンズ)を挟持してもよく、複数のレンズを保持する場合には、これらを組みあわせてもよい。例えば、挟持により保持する場合、保持部材は、非中空部(又は保持部材の内壁面)にレンズの外周縁部を挟持および接触させて保持可能であってもよい。このような場合、挟持した状態でレーザー溶着することにより保持部材(又は保持部材の内壁面)とレンズとを接合できる。
【0107】
本発明のレンズユニットでは、前記プラスチックレンズと前記保持部材との界面部分が、レーザー光の照射により接合している。プラスチックレンズの外周縁部と保持部材とは、界面部分にレーザーを走査(スキャン)するなどの方法により、プラスチックレンズ(又はその外周縁部)の外周域の全周に亘る部分において接合していてもよいが、通常、プラスチックレンズの光学的特性に対する影響(熱による歪みなど)を極力抑制するため、前記界面部分の周方向[又は前記界面部分の周方向又はプラスチックレンズ(又はその外周縁部)及び保持部材の周方向]の複数箇所(例えば、2〜10箇所、好ましくは3〜5箇所)のスポット(又は点)において接合している場合が多い。スポットの数が少なすぎると、溶着(接合)が不十分になる虞があり、スポット数が多すぎるとレンズにレーザーによる熱の影響を及ぼす虞がある。
【0108】
スポットの幅(又は直径又はレーザー溶着時のレーザーのスポット径、図1Aではs1、図2Aではs2に相当)は、レンズや保持部材の幅などに応じて、2mm以下(例えば、0.05〜1.5mm程度)の範囲から選択でき、例えば、0.1〜0.8mm、好ましくは0.15〜0.7mm、さらに好ましくは0.2〜0.5mm、特に0.25〜0.45mm程度であってもよい。スポットの幅を小さくすることにより、発生熱量を小さくし、プラスチックレンズに対する熱的影響を効率よく抑えることができる。なお、スポットの幅は、通常、外周縁部(又は戴置部)の幅より同じであるか又は小さい場合が多い。また、外周縁部の幅に対するスポットの幅の比は、0.01〜0.8、好ましくは0.05〜0.7、さらに好ましくは0.1〜0.5程度であってもよい。
【0109】
また、スポットの位置(レーザーにより溶着している部分、レーザー溶着部、接合部)は、レンズに対する熱的影響を抑制するため、前記レンズのうち、実質的なレンズ機能を有する部分(レンズ本体部)からできるだけ離れているのが好ましい。そのため、スポットとレンズ本体部(又は外周縁部とレンズ本体部との境界部)との距離(図1Aではm1、図2Aではm2に相当)は、小型カメラ用レンズユニットなどにおいて、例えば、0.3mm以上(例えば、0.35〜10mm)、好ましくは0.4mm以上(例えば、0.45〜5mm)、さらに好ましくは0.5mm以上(例えば、0.55〜3mm程度)であってもよい。
【0110】
[レンズユニットの製造方法]
本発明のレンズユニットは、前記撮像用プラスチックレンズの外周縁部と前記プラスチック保持部材とを接触させ、接触部(又は接触部分又は界面部)にレーザー光を照射して(さらに接触部を発熱させ)、プラスチックレンズと保持部材とを接合することにより得ることができる。
【0111】
溶着に用いるレーザー光源としては、レンズの種類や保持部材、さらにはレーザー吸収剤の吸収波長などに応じて選択でき、通常、YAGレーザー、半導体レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、He−Neレーザー、窒素レーザー、キレートレーザー、色素レーザーなどの公知のレーザーを使用できる。通常、撮像用レンズの接合に用いるレーザーの発振波長は、193〜1600nm、好ましくは600〜1500nm、さらに好ましくは800〜1200nm程度であってもよい。
【0112】
なお、接合(レーザー溶着)は、前記のように、外周縁部と保持部材との接触部(又は界面部)にレーザーを走査(スキャン)して行ってもよいが、通常、接触部の周方向の複数箇所のスポットにレーザーを照射してスポット溶着する場合が多い。
【0113】
照射するレーザー光の出力は、例えば、1〜30W、好ましくは、1〜10W、さらに好ましくは1〜5W程度であってもよい。
【0114】
また、スポット溶着において、レーザー光の照射時間は、例えば、0.05〜1.0秒、好ましくは0.05〜0.5秒、さらに好ましくは0.1〜0.3秒であってもよい。
【0115】
なお、接触部に対するレーザー光の照射方向は、レーザー溶着可能であれば特に限定されないが、プラスチックレンズの光学的特性を低下させない方向、例えば、プラスチックレンズのレンズ機能を有する部分(前記レンズ本体部など)にレーザー光を透過させない方向であるのが好ましい。具体的には、例えば、(i)レーザー透過性プラスチックレンズとレーザー吸収性保持部材とを接合する場合には、プラスチックレンズの外周縁部(実質的にレンズ機能を有しない外周縁部)にレーザーを透過して接触部でレーザー溶着してもよく、(ii)レーザー透過性被膜を形成したレーザー透過性プラスチックレンズとレーザー透過性保持部材とを接合する場合には、プラスチックレンズの外周縁部(実質的にレンズ機能を有しない外周縁部)にレーザーを透過するか、又は保持部材の側面(外側面)からレーザー光を照射して、接触部(レーザー透過性被膜部分)でレーザー溶着してもよい。
【0116】
なお、レンズユニットは、前記プラスチックレンズと前記保持部材とを少なくとも備えていればよく、ハウジング(又はケーシング)されていてもよい。このようなハウジングされたレンズユニットは、保持部材を介してレンズユニットをハウジング(又はケーシング)可能な部材(いわゆる鏡筒など)によりハウジングされていてもよく、保持部材そのものがハウジング(いわゆる鏡筒など)を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明では、レンズに作用する熱的影響を極力抑制し、レンズや保持部材の変形、それに伴う光軸のズレ、光学的な歪みなどを高いレベルで抑制又は防止しつつ強固にレンズと保持部材とを接合できる。そのため、本発明のレンズユニットは、撮像用レンズ(又は撮像系レンズ)ユニットを備えた種々の機器、例えば、カメラ、コンピューター、ワードプロセッサー、プリンター、コピー機、ファックス、電話、モバイル機器(携帯電話、携帯情報端末(PDA)など)、自動車機器、建築用機器、天文用機器などに利用できる。特に、本発明では、小型の撮像用レンズ(さらには高精度のレンズ)であっても、悪影響を及ぼすことなくレンズと保持部材とを接合でき、例えば、小型カメラ[例えば、携帯電話用カメラ(いわゆるカメラ付き携帯電話のカメラ)、車載用カメラモジュールなど]などの撮像レンズユニットとして有用である。このような小型カメラレンズの幅(又は直径)は10mm以下程度であってもよい。
【実施例】
【0118】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0119】
[実施例1〜11]
(プラスチックレンズの作成)
表1に示したレンズ用プラスチックを用いて、射出成形機により表1に示すシリンダー温度で前記図1Aに示すプラスチックレンズを成形した。なお、図1Aにおいて、レンズ本体部の厚みd1は2mm、幅e1は3mmとし、外周縁部の厚みf1は1mm、幅g1は1mmとして成形した。
【0120】
(保持部材の作成)
表1に示した保持部材用プラスチック95.5重量部と、カーボンブラック0.5重量部とを、二軸押出機(日本製鋼所(株)製、「TEX30」)を用いて混合し、シリンダー温度250℃で押出してペレットを得た。なお、ガラス繊維を添加する場合、ガラス繊維は、サイドフィードにより混合してペレットを得た。
【0121】
そして、得られたペレットを用いて、射出成形機により表1に示すシリンダー温度で前記図1Aに示す保持部材を成形した。なお、図1Aにおいて、保持部材の厚みg1は1mmとして成形した。
【0122】
(レンズユニットの作成)
上記方法により得られたプラスチックレンズおよび保持部材を、図1Aと同様にして接触させ、レーザー溶着装置(ファインデバイス社製 「FD-200」)を用いて、外周縁部からレーザー光を透過させるとともに、前記レンズと保持部材との界面部(接触部)の周方向のほぼ等間隔に位置する3つのスポットに対してレーザー光を照射して接合(レーザー溶着)した。レーザー光の照射において、スポット径s1は0.35mm、スポットとレンズ本体部との距離m1は0.6mmとし、レーザー出力は3W、レーザー照射時間は0.2秒とした。
【0123】
[実施例12〜22]
(プラスチックレンズの作成)
表2に示したレンズ用材料を用いて、射出成形機により表2に示すシリンダー温度で前記図2Aに示すプラスチックレンズを成形した。なお、図2Aにおいて、レンズ本体部の厚みd2は2mm、幅e2は3mmとし、外周縁部の厚みf2は1mm、幅g2は1.5mmとして成形した。
【0124】
(保持部材の作成)
表2に示した保持部材用材料95.5重量部と、カーボンブラック0.5重量部とを、二軸押出機(日本製鋼所(株)製、「TEX30」)を用いて混合し、シリンダー温度250℃で押出してペレットを得た。なお、ガラス繊維を添加する場合、ガラス繊維は、サイドフィードにより混合してペレットを得た。
【0125】
そして、得られたペレットを用いて、射出成形機により表2に示すシリンダー温度で前記図2Aに示す保持部材を成形した。なお、図2Aにおいて、保持部材の厚みh2は1.5mm、戴置部の幅k2は1mm、切欠段部の高さf2は1mmとして成形した。
【0126】
(レンズユニットの作成)
上記方法により得られたプラスチックレンズおよび保持部材を、図2Aと同様にして接触させ、レーザー溶着装置(ファインデバイス社製 「FD-200」)を用いて、外周縁部からレーザー光を透過させるとともに、前記レンズと保持部材との界面部(接触部)の周方向のほぼ等間隔に位置する3つのスポットに対してレーザー光を照射して接合(レーザー溶着)した。レーザー光の照射において、スポット径s2は0.35mm、スポットとレンズ本体部との距離m2は1.1mm(0.5mm+0.6mm)とし、レーザー出力は3W、レーザー照射時間は0.2秒とした。
【0127】
実施例1〜22で得られたレンズユニットのレーザー溶着性を以下の基準で評価した。
【0128】
○:2つの成形体が接合した
×:2つの成形体が接合しなかった。
【0129】
結果を表1および表2に示す。
【0130】
なお、実施例で用いた樹脂及びガラス繊維は以下の通りである。表1および表2では、以下の略称を使用している。
【0131】
PC:ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアプラスチック(株)製、商品名「ユーピロンH4000」)
COC−1:環状オレフィン系樹脂(三井化学株式会社(株)製、商品名「アペル 5014DP」)
COC−2:環状オレフィン系樹脂(日本ゼオン(株)製、商品名「ゼオネックス E48R」)
PMMA:ポリメタクリル酸メチル(三菱レーヨン(株)製、商品名「VH」)
ABS−GF:ABS樹脂(ダイセルポリマー(株)製、「セビアン−V VGR20 (GF 20%充填ABS) 黒色着色品」)
PBT−GF:ポリブチレンテレフタレート樹脂(ウィンテックポリマー(株)製、商品名「ジュラネックス 3200 黒色着色品」)
GF−1:オレフィン用ガラス繊維(日本電気硝子(株)製、商品名「ECS−03−T−480」13μ径、3mmチョップド)
GF−2:ポリエステル用ガラス繊維(日本電気硝子(株)製、商品名「ECS−03−T−120」13μ径、4mmチョップド)
PC/GF−1:「PC」80重量部および「GF−2」20重量部を含む混合物
PC/COC/GF−1:「PC」60重量部、「COC−2」20重量部および「GF−2」20重量部を含む混合物
PC/COC/GF−2:「PC」10重量部、「COC−1」70重量部および「GF−1」20重量部を含む混合物
COC/GF−1:「COC−1」80重量部および「GF−1」20重量部を含む混合物
PC/PMMA:「PC」40重量部および「PMMA」60重量部を含む混合物。
【0132】
【表1】

【0133】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1A】図1Aは、本発明のレンズユニットの一例を示す概略断面図である、
【図1B】図1Bは、図1Aに示すレンズユニットの平面図である。
【図2A】図2Aは、本発明のレンズユニットの他の例を示す概略断面図である。
【図2B】図2Bは、図2Aに示すレンズユニットの平面図である。
【符号の説明】
【0135】
10,20…レンズユニット
1,11…撮像用プラスチックレンズ
1a,11a…レンズ本体部
1b,11b…外周縁部
2,12…保持部材
12a…戴置面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像用プラスチックレンズと、前記プラスチックレンズの外周縁部を保持するためのプラスチック保持部材とを備え、かつ前記プラスチックレンズと前記保持部材との界面部分において少なくともレーザー光を吸収可能であるレンズユニットであって、前記プラスチックレンズと前記保持部材とがレーザー光の照射により接合しているレンズユニット。
【請求項2】
プラスチックレンズが、環状オレフィン系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、又はポリカーボネート系樹脂で構成されている請求項1記載のユニット。
【請求項3】
保持部材が、環状オレフィン系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびポリカーボネート系樹脂から選択された少なくとも1種で構成されている請求項1記載のユニット。
【請求項4】
保持部材を構成するプラスチックが、プラスチックレンズを構成するプラスチックに対して相溶性を有する樹脂を、保持部材用プラスチック全体の10重量%以上含む請求項1記載のユニット。
【請求項5】
プラスチックレンズを構成するプラスチック(1)と保持部材を構成するプラスチック(2)とが、以下の(i)〜(iii)のいずれかの組合せである請求項1記載のユニット。
(i)プラスチック(1)が環状オレフィン系樹脂であり、かつプラスチック(2)が環状オレフィン系樹脂を10重量%以上含む樹脂である組合せ
(ii)プラスチック(1)がメタクリル酸エステル系樹脂であり、かつプラスチック(2)が、メタクリル酸エステル系樹脂、シアン化ビニルを重合成分とするスチレン系樹脂およびポリカーボネート系樹脂から選択された少なくとも1種を10重量%以上含む樹脂である組合せ
(iii)プラスチック(1)がポリカーボネート系樹脂であり、かつプラスチック(2)が、メタクリル酸エステル系樹脂、シアン化ビニルを重合成分とするスチレン系樹脂、ポリアルキレンアリレート系樹脂、およびポリカーボネート系樹脂から選択された少なくとも1種を10重量%以上含む樹脂である組合せ
【請求項6】
保持部材を構成するプラスチックが、廃プラスチックで構成されている請求項1記載のユニット。
【請求項7】
保持部材を構成するプラスチックが、プラスチックレンズの成形により生成する廃プラスチックで構成されている請求項1記載のユニット。
【請求項8】
保持部材が、保持部材を構成するプラスチック100重量部に対して、無機充填剤を5〜150重量部の割合で含む請求項1記載のユニット。
【請求項9】
プラスチックレンズの外周縁部と保持部材とが、周方向の複数箇所のスポットにおいて接合している請求項1記載のユニット。
【請求項10】
スポットの幅が0.1〜0.8mmである請求項9記載のユニット。
【請求項11】
プラスチックレンズが、撮像可能なレンズ本体部と、このレンズ本体部の周囲に位置するレンズ外周縁部とを有するプラスチックレンズであって、レンズ外周縁部の幅が0.2〜5mmであり、スポットとレンズ本体部との距離が0.3mm以上である請求項9記載のユニット。
【請求項12】
レンズ本体部の幅に対するレンズ外周縁部の幅の比が0.2〜0.7であり、レンズ外周縁部の幅が0.3〜2mmであり、かつスポットとレンズ本体部との距離が0.5mm以上である請求項11記載のユニット。
【請求項13】
撮像用プラスチックレンズの外周縁部とプラスチック保持部材とを接触させ、接触部分にレーザー光を照射して、プラスチックレンズと保持部材とを接合する請求項1記載のレンズユニットの製造方法。
【請求項14】
請求項1記載のレンズユニットを備えた機器。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2006−235123(P2006−235123A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48019(P2005−48019)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(595144466)稲畑産業株式会社 (7)
【出願人】(397003105)株式会社ファインディバイス (4)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】