説明

レンズ研削方法及びレンズ研削装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は加工済レンズが枠入れされるフレームの形状データに基づいて加工前レンズを研削するレンズ研削方法及びレンズ研削装置に関する。
【0002】
【従来の技術】眼鏡レンズの研削に際しては、一般に眼鏡フレームのレンズ枠のどの位置にレンズの光学中心をセットするかを考慮する必要がある。従来、この種のレンズ研削装置としては、特公平3−25298号公報に記載されたものが知られていた。ここに開示された装置は、眼鏡フレームの形状測定機構により眼鏡フレームのレンズ枠内周、またはレンズ型板をトレースして、レンズ枠の形状データを読み取り、この形状データを研削データに変換して加工前レンズを研削するものである。
【0003】この装置の特徴は、眼鏡フレームのレンズ枠の計測により、レンズ枠の幾何学中心からの寄せ量に応じて修正された研削データを自動的に求め、加工前レンズを眼鏡レンズの光学中心(以下、単にレンズ光心という。)から偏心させずにレンズ回転軸に取り付けて、レンズ研削ができる点にある。すなわち、レンズ光心を研削装置のレンズ回転軸に一致させた状態でレンズ研削ができるため、高精度なレンズの加工が可能である。
【0004】また、一方のレンズ枠の形状データだけを入力し、他方の形状データは既に記憶されている一方の形状データを反転している。したがって、眼鏡フレームの一方のレンズ枠形状を測定するだけで左右2枚の加工済レンズの研削データが得られるため、眼鏡レンズの効率良い研削が可能になるという特徴をも有している。
【0005】なお、ここで寄せ量とは、レンズ枠の幾何学中心に対するレンズ光心の偏位であって、左右方向の寄せ量は、眼鏡フレームのレンズ枠の幾何学中心間距離(以下、FPDという。)と装用者の瞳孔間距離(以下、PDという。)との関係で決定されるべきものである。
【0006】図15は、かかる従来装置におけるレンズ研削方法の概略を示すフローチャートである。図において、Sに続く数値はステップ番号を示す。
〔S1〕左右いずれか一方のフレーム形状を測定する。この測定結果は、一方のレンズ枠の形状データとして、RAM等の記憶手段に保持される。
〔S2〕上記形状データからレンズ枠の幾何学中心を求める。
〔S3〕寄せ量を入力する。
〔S4〕レンズ光心を、ステップS2で求めた幾何学中心と上記寄せ量から演算により求める。
〔S5〕先の形状データを修正する。そのために、レンズ枠の測定中心をレンズ光心に原点を移動して、再度ステップS1と同様にレンズ枠形状が測定される。この測定結果は、一方のレンズ枠についてのレンズ光心を原点とする形状データとして保持される。
〔S6〕修正された形状データを反転して、他方のレンズ枠の形状データを決定する。
〔S7〕一方の加工前レンズをレンズ研削装置にセットして、ステップS5で修正されたレンズ枠の形状データに基づいて研削する。
〔S8〕他方の加工前レンズをレンズ研削装置にセットして、ステップS6で演算により求めた他方のレンズ枠の形状データに基づいて研削する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】図16は眼鏡装用者の寄せ量の一例を示す図である。ここでは、FPDが70mm、PDが64mmと計測された場合を示している。この図から理解されるように、レンズ研削にあたってFPD>PDの関係があるときには、レンズ光心を幾何学中心より鼻側方向に偏心させるための内寄せ量が設定される。そして片眼ずつの内寄せ量は、一般には(FPD−PD)/2と求められる。しかし、図示した例では瞳孔の位置が左右で異なる(R=30mm、L=34mm)ために、右側レンズの内寄せ量として5mmを、左側レンズの内寄せ量として1mmをそれぞれ入力しなくてはならない。
【0008】上記従来装置によるレンズ研削では、形状データを反転して他方のレンズ枠の形状データを求める際に、元になる形状データは既にレンズ光心を原点として修正されている。そのために、図16に示すように眼鏡装用者の瞳孔位置が左右眼で異なっていると、瞳孔の眼鏡中央部分からの距離(瞳孔距離)が左右で異なるから、レンズ枠の幾何学中心に対して寄せ量を適正値に設定することができない。すなわち、従来の研削装置では寄せ量が左右のレンズ枠について一致している場合のみ、高精度な眼鏡レンズの加工が可能であって、そうでない場合に両眼の加工前レンズの研削データを得るためには、両方のレンズ枠形状を別個に測定しなくてはならない。
【0009】また、上述した研削装置では、レンズ光心をレンズ回転軸に一致させた状態でレンズ研削ができるが、そのためにはフレーム形状測定機構によるレンズ枠の形状測定が2回必要となっている(ステップS1、及びS5)。このため、計測時間がかかり、加工前レンズの切削の所要時間が長くなる。また、フレーム形状測定機構では、レンズ枠の形状データを再測定する際に、レンズ枠の移動を必要とし、そのための機械的な構成が複雑になる。さらに予め測定した眼鏡フレーム毎のレンズ枠の形状データを入力しておいても、被加工レンズの研削の際に、装用者データの入力だけで研削を開始することができず、いちいちレンズ枠形状の計測をしなくてはならないという問題点があった。
【0010】本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、瞳孔距離が左右で異なる場合でも、一方のレンズ枠の形状データを入力するだけで左右2枚の被加工レンズの研削データを得てレンズ研削ができるレンズ研削方法及びレンズ研削装置を提供することを目的とする。
【0011】また、本発明の他の目的は、レンズ枠形状を一回測定するだけで、その測定結果に基づいてレンズ光心とレンズ回転軸とを一致させた状態でレンズ研削ができるレンズ研削方法及びレンズ研削装置を提供することである。
【0012】本発明のさらに他の目的及び効果は、以下に説明する実施例によって明らかにされる。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明のレンズ研削方法は、フレームのレンズ枠の形状データに基づいて、加工前レンズを前記レンズ枠の形状に研削加工するレンズ研削方法において、前記レンズ枠の幾何学中心を原点とし、左右レンズ枠の対称軸に関して対称な一対の形状データを設定し、左右独立の寄せ量データに基づいて左右のレンズ枠におけるレンズ光心を求め、前記一対の形状データをそれぞれレンズ枠における左右のレンズ光心を原点とする一対の研削データに修正し、前記一対の研削データに基づいて前記加工前レンズをこのレンズ光心と一致する回転軸に保持して研削することを特徴とする。
【0014】さらに、前記一対の形状データは、前記左右レンズ枠の対称軸に関して前記レンズ枠の幾何学中心を原点とする一方のレンズ枠の形状データを反転する演算によって設定し、前記一対の研削データは、レンズ枠におけるレンズ光心を原点とする直交座標系における演算により修正することを特徴とする。
【0015】そして、前記研削データの求め方の手順は、直交座標系のデータとして求め、ついで前記レンズ枠に設定した基準線及び基準点からの回転角度θi(iは0,1,…n)毎の動径距離riに基づいて極座標表示されたデータ(ri,θi)に変換し、前記データ(ri,θi)に基づく補間により、回転角度データ(θj)が等差数列をなす研削データ(rj,θj)に修正することを特徴とする。
【0016】また、本発明のレンズ研削装置では、フレームのレンズ枠の形状データに基づいて、前記加工前レンズを前記レンズ枠の形状に研削加工するレンズ研削装置において、前記レンズ枠の幾何学中心を原点とし、左右レンズ枠の対称軸に関して対称な一対の形状データを設定する形状データ設定手段と、前記幾何学中心からのレンズ枠におけるレンズ光心の偏位を左右独立の寄せ量データとして入力する寄せ量入力手段と、前記一対の形状データを、前記寄せ量データに基づくレンズ枠におけるレンズ光心を原点とする一対の研削データに修正するデータ修正手段と、前記一対の研削データに基づいて前記加工前レンズをこのレンズ光心と一致する回転軸に保持して研削するレンズ研削手段と、を有することを特徴とする。
【0017】さらに、前記レンズ枠の形状データを計測する形状データ計測手段と、前記左右レンズ枠の対称軸に関して前記レンズ枠の幾何学中心を原点とする一方のレンズ枠の形状データを反転することによって、前記フレームについての一対の形状データを演算する演算手段と、によって構成することを特徴とする。
【0018】そして、前記データ設定手段を、予め測定された前記形状データを読み取る形状データ読取手段と、前記フレームの左右レンズ枠の対称軸に関して前記レンズ枠の幾何学中心を原点とする前記一方のレンズ枠の形状データを反転することによって、前記フレームについての一対の形状データを演算する演算手段と、によって構成することを特徴とする。
【0019】
【作用】本発明のレンズ研削方法では、左右レンズ枠の一対の形状データを設定して、左右独立の寄せ量データに基づいてレンズ枠における左右のレンズ光心を求め、レンズ枠におけるレンズ光心を原点とする一対の研削データに修正して、一対の研削データによって、加工前レンズを加工することにより、左右の瞳孔距離が異なる場合でも、それに対応したレンズ研削を可能にしている。
【0020】さらに、一方のレンズ枠の形状データを反転する演算によって他方の形状データを得ることにより、一方のレンズ枠の形状データの計測のみで、レンズ研削が可能になる。
【0021】そして、直交座標系で求めたデータを、回転角度θi (iは0,1,…n)毎の動径距離ri に基づいて極座標表示されたデータ(ri ,θi )に変換し、このデータ(ri ,θi )に基づいて補間演算を行うことにより、回転角度データ(θj )が等差数列をなす研削データ(rj ,θj )に修正することによって、研削時のレンズ回転軸とダイヤモンドホイール軸の同期制御を簡単にしている。
【0022】また、本発明のレンズ研削装置では、形状データ設定手段とによって、一対の形状データを入力し、寄せ量入力手段によって寄せ量データを入力する。これらの一対の形状データと寄せ量データを、データ修正手段によって、レンズ枠におけるレンズ光心を原点とする一対の研削データに修正している。レンズ研削手段はこの研削データに基づいて加工前レンズをこのレンズ光心と一致する回転軸に保持して研削する。
【0023】さらに、形状データ計測手段によって一方の形状データを計測し、演算手段によってこの形状データを反転して、一対の形状データを演算している。これによって、一方のレンズ枠の形状データの計測のみで足りるようにしている。
【0024】そして、形状データ読取手段によって一方の形状データを読み取り、演算手段によってこの形状データを反転して、一対の形状データを演算している。これによって、一方のレンズ枠の形状データの読み取りのみで足りるようにしている。
【0025】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、レンズ研削装置の一例を示すブロック図である。
【0026】レンズ研削装置は、形状データ計測手段100、レンズ研削手段200、演算制御回路300及びデータ入力手段400を主要な要素として構成されている。形状データ計測手段100はレンズ枠の形状を測定するフレーム形状測定部110とフレーム形状測定部110と演算制御回路300を接続するフレーム形状測定回路120からなる。形状データ計測手段100は加工済レンズが枠入れされるフレームの形状データを計測する。
【0027】レンズ研削手段200はレンズ研削部200aと、レンズ研削部200aと演算制御回路300の間にあり、モータ駆動回路等を有するレンズ研削回路200bからなる。レンズ研削手段200は研削データに基づいて被加工レンズをレンズ光心と一致する回転軸に保持して研削する。
【0028】演算制御回路300はマイクロプロセッサ構成になっており、フレームの左右レンズ枠の対称軸に関してレンズ枠の幾何学中心を原点とする一方のレンズ枠の形状データを反転することによって、フレームの一対のレンズ枠形状データを演算し、寄せ量データに基づくレンズ枠におけるレンズ光心を原点とする一対の研削データ330に修正するためのデータ修正手段310、一方のレンズ枠の形状データを反転して他方の形状データに変換する演算手段320等からなる。
【0029】データ入力手段400は寄せ量を入力する数値キー(寄せ量入力手段)401、レンズが右か左かを選択する選択キー402と、フレーム枠の形状データをICカード等に保存し、このICカードから形状データを読み込むICカード読取装置(形状データ読取手段)403からなる。すなわち、形状データは、形状データ計測手段100で測定する場合と、予め測定してICカードに格納しておいて、ICカード読取装置403で読み取る場合がある。
【0030】図2は、加工済レンズが枠入れされるレンズ枠の形状データを設定するためのフレーム形状測定部110を示す詳細図である。眼鏡フレーム111は図示しないフレームテーブル上の所定位置に、フレーム保持部材によって固定して保持される。この位置で眼鏡フレーム111のレンズ枠の内周溝には、測定子112が当接する。この測定子112は、回転軸113を中心にして回転する回転板114に固定して設けられて、スライド機構を構成するスライド板115に拘束されながら、眼鏡フレーム111のレンズ枠の内周溝に沿って移動することができる。測定子112が移動するときの回転角度は、測定子用モータ116が回転軸113を回転させる角度によって規定され、その時点における測定子112の基準位置からの変位量は、スライド板115が図の左右方向にスライドした量を更に回転角度に変換して、ポテンショメータ117に伝達されて計測できる。ロータリエンコーダ118によって、回転板114の基準位置からの回転角度が計測され、またフォトインタラプタで構成された原点位置検出回路119によって、測定子用モータ116の原点位置が検出できる。
【0031】図3は、フレーム形状測定回路120を示すブロック図である。測定子112を眼鏡フレーム111のレンズ枠の内周に当てた状態でモータ駆動回路116aに回転指令を与えて、測定子用モータ116を駆動する。測定子112は、回転軸113、回転板114、及びスライド板115とともに移動し、眼鏡フレーム111のリムの内周溝に沿って移動する。この時の回転板114の回転角度θがロータリエンコーダ118から出力され、カウンタ118aによって計数される。また、測定子112の測定基準位置からの変位量rがポテンショメータ117から出力され、A/D変換回路117aによってディジタル値に変換される。測定子112が眼鏡フレーム111のリムの内周溝を一回転すると、カウンタ118aから1回転信号が出力され、演算制御手段300からモータ駆動回路116aに停止指令が与えられる。
【0032】なお、眼鏡フレーム左右眼判定回路119aは、測定子112が眼鏡フレーム111の左右眼いずれのリムに接触しているかを判定して、これら回転角度θの計数値や変位量rのディジタル値を後述する演算制御回路300の所定の記憶領域に格納する。
【0033】このフレーム形状測定部110では、測定子がレンズ枠の内周溝に沿って所定の接触圧を保持しつつ移動して、レンズ枠の形状データが読み取られる。測定子112の変位量rは眼鏡フレーム111のレンズ枠の動径の長さ(以下、単に動径という。)に相当し、回転板114の回転角度θは眼鏡フレーム111の枠の回転角度に相当する。
【0034】図4は、図1のレンズ研削装置を構成するレンズ研削部200aを示す詳細図である。また、図5はレンズ研削回路200bを示すブロック図である。図4R>4のレンズ研削部は横方向をZ軸、縦方向をY軸としている。レンズ研削部200aは被加工レンズ201を支持しつつ、Z軸方向に移動可能な収納ボックス202を備えている。この収納ボックス202は、レンズ研削部200aの基台203上でZ軸方向に移動され、さらに基台203がY軸方向に移動されることにより、当初は円形の加工前レンズ201に対する所定量の加工を可能にする。研削圧調整機構210は加工前レンズ201の研削圧を調整するもので、キャリッジ202を載せた基台203のY軸方向に位置決めしている。Z軸方向駆動機構220は、収納ボックス202とともに加工前レンズ201を図4の左右方向(Z軸)に位置決めする。被加工レンズ回転機構230は、加工前レンズ201を回転させるレンズ軸231を備え、このレンズ軸231は被加工レンズチャック機構240によって加工前レンズ201を保持した状態で回転させる。Y軸方向駆動機構250は、加工前レンズ201のY軸方向の位置を基台203に固定されたセンサバー251によって調整しつつ所定量づつ移動させる。ダイヤモンドホイール261は、加工前レンズ201を研削するためにダイヤモンドホイール回転機構260によって所定速度で回転可能に設けられている。
【0035】基台203は研削圧調整機構210のワイヤロープ211a、211bにより繋がれ、常時それを上方に吊り上げていて、被加工レンズ201がダイヤモンドホイール261に対して所定の研削圧で接触するように制御している。そのために、研削圧調整モータ212が設けられ、更に原点位置検出センサ213がワイヤロープ211a、211bの原点位置を検出しており、研削圧調整モータ212によるワイヤロープ211aの巻き出し長さは、巻取量検出センサ214で検出するようにしている。ワイヤロープ211a、211bの途中にはスリーブ215の中に挿入された切削圧調整バネ216が設けられている。
【0036】図5に示すように、原点位置検出回路213aと巻取量検出回路214aの検出信号を演算制御回路300に出力しており、演算制御回路300ではそれに応じて研削圧調整信号が演算される。研削圧調整モータ212は、モータ駆動回路212aに入力される調整信号に応じて回転量が調整される。
【0037】Z軸方向駆動機構220のパルスモータ221によって、加工前レンズ201はダイヤモンドホイール261の外周面に形成された複数の研削部(砥石)、例えば加工前レンズ201を荒研削するための荒研削部、ヤゲン研削(V溝の加工)するためのヤゲン砥石部のそれぞれの位置まで移動される。このZ軸方向駆動機構220のパルスモータ221はプーリ223a,ベルト222及びプーリ223bを介してクラッチ224と連結され、更にクラッチ224の反対側のプーリ225に掛け渡されたベルト226によって、移動板227を介して収納ボックス202をZ軸方向に位置決めする。プーリ228を介してベルト226の移動量は遮光板229aの回転角度に変換されて、Z軸方向の原点位置フォトインタラプタ229によって検知するようにしている。
【0038】図5に示すように、フォトインタラプタ229が検知した原点位置は、原点位置検出回路229aから演算制御回路300に出力され、また、演算制御回路300では研削データに応じてZ軸位置指令信号が演算される。そしてZ軸パルスモータ221は、モータ駆動回路221aに入力される指令信号に応じて回転する。
【0039】被加工レンズ回転機構230のレンズ軸モータ232によって、被加工レンズ201はそのレンズ軸231を中心にして回転される。レンズ軸モータ232の回転は、4つのプーリ233a〜233dと2本のベルト234a、234bによりレンズ軸231に伝達され、また、加工前レンズ201の回転角度はレンズ軸231に設けたエンコーダ235によって計測される。
【0040】図5に示すように、エンコーダ235の回転量検出回路235aはカウンタ回路235bで計数した回転角度信号を演算制御回路300に出力し、演算制御回路300ではレンズ枠形状に関する計測データに基づいて決定された加工前レンズ201の回転角度θと一致するように、モータ駆動回路232aに回転角度指令信号が供給される。
【0041】被加工レンズチャック機構240のレンズ押えモータ241は、レンズ軸231に加工前レンズ201を保持し、或いは加工済レンズを取り外すように回転するモータであって、プーリ243a、ベルト242及びプーリ243bを介してレンズ軸231と接続されている。
【0042】図5に示すように、モータ駆動回路241aに対して演算制御回路300から加工前レンズ201の交換指令に基づく指令信号が所定のタイミングでモータ駆動回路241aに対して供給され、加工前レンズ201の交換が可能になる。
【0043】Y軸方向駆動機構250のY軸サーボモータ252は、プーリ253a、253bを介してY軸に平行なねじ軸254の一端とベルト255で連結され、このねじ軸254を所定の速度で回転させる。そして、このねじ軸254に螺合するスイッチングバー256はY軸サーボモータ252が回転することによりY軸方向に移動し、スイッチングボタン257を図4の下方から適当な圧力で押圧するように構成されている。スイッチングボタン257は遮蔽棒257aの一端側に設けられ、また遮蔽棒257aの他端側には研削終了検出用のフォトインタラプタ257bが設けられている。この遮蔽棒257aはセンサバー251の先端部分でY軸方向に移動可能に、かつ所定の弾性の圧縮ばねを介して取り付けられていて、スイッチングバー256と当接してセンサバー251をY軸方向に押し上げる力として作用し、収納ボックス202及び基台203のY軸方向位置を規制する。フォトインタラプタ257bは遮蔽棒257aがスイッチングバー256によって押された状態で作動し、この遮蔽棒257aが移動すると、その移動量に対応して加工前レンズ201の押え中心位置が図4の下方に移動する。ねじ軸254の他端は、ベルト258によってY軸方向位置を検出するためのエンコーダ259が設けられている。
【0044】図5に示すように、エンコーダ259で検出される移動量は、移動量検出回路259aからカウンタ回路259bに出力されて、このカウンタ回路259bにおける計数値が演算制御回路300に送られる。これにより、遮蔽棒257aの移動量が求まって、加工前レンズ201の回転中心とダイヤモンドホイール261の回転中心までの距離が計測可能になる。Y軸サーボモータ252はモータ駆動回路252aに対して指令されるレンズ枠の研削データによって駆動され、加工前レンズ201の回転角度θに関連して制御される。そして、加工前レンズ201が360°にわたって研削された場合に、研削終了検出用のフォトインタラプタ257bで遮蔽棒257aがスイッチングバー256によって押されなくなり、研削終了検出回路257cから信号が出力される。この信号を受けて演算制御回路300では加工前レンズ201の回転方向を反転させ、更には研削を終了するタイミングが指令される。
【0045】ダイヤモンドホイール回転機構260では、砥石回転軸モータ262が駆動するとプーリ264a、ベルト263、プーリ264bを介してダイヤモンドホイール261を回転させ、更に加工前レンズ201を挟持しているレンズ軸231が同時に回転される。図5R>5に示すように、砥石回転軸モータ262はモータ駆動回路262aに対する演算制御回路300からの指令に従って所定速度で回転制御される。こうして加工前レンズ201の周縁部分に砥石が接触して互いに回転しながら研削が実行される。
【0046】図6は、フレーム形状測定部110及びレンズ研削部200aを制御する演算制御回路300を示すブロック図である。CPU301では入力されたフレーム形状の測定データ等に所定の演算処理が施され、その処理結果はRAM302に格納される。ROM303には、次に説明するレンズ枠の幾何学中心を決定するための演算プログラム、レンズ枠の形状データを反転するための演算プログラム、寄せ量データに基づいてレンズ枠における左右のレンズ光心を求めるための演算プログラム、形状データからダイヤモンドホイール261の半径値に応じた包絡線を求めるための演算プログラム、レンズ軸の中心軸線が砥石回転軸の中心軸線に対して包絡線上に位置するように、レンズ枠の形状データを研削データに変換するための演算プログラムなどが格納されている。
【0047】次に、図1から図6までに示された本発明のレンズ研削装置による研削の手順について説明する。図7は、本発明のレンズ研削方法の概略を示すフローチャートである。以下の説明において、Sに続く数値によってステップ番号を示す。
〔S11〕形状データ計測手段100によって、眼鏡フレームについての左右一方の測定データを入力する。この測定データはRAM302に格納される。
〔S12〕CPU301によりレンズ枠形状の幾何学中心を決定する。
〔S13〕RAM302に格納されている測定データから、一方のレンズ枠についての幾何学中心を原点とする形状データAを演算し、眼鏡フレームの一方の形状データを修正する。このデータはRAM302に格納される。
〔S14〕修正された形状データAを、眼鏡フレームの左右レンズ枠の対称軸に関して反転することによって、他方のレンズ枠についての形状データBを作成して、形状データAとともに一対の形状データとしてRAM302に格納する。
〔S15〕左右レンズ枠についての寄せ量を数値キー401でそれぞれ入力し、RAM302に格納する。
〔S16〕形状データA,Bに基づいてそれぞれのレンズ枠におけるレンズ光心を演算する。すなわち、形状データAに対応する寄せ量から、一方のレンズ枠のレンズ光心を演算し、同様に形状データBに対応する寄せ量から、他方のレンズ枠のレンズ光心を演算する。
〔S17〕レンズ光心に原点に移して形状データA,Bを修正する。すなわち、一対の形状データA,Bから、それぞれ左右のレンズ光心を原点とした一対の研削データを求める。
〔S18〕レンズ研削装置に一方の被加工レンズをセットして、研削データの一方を呼び出し、加工前レンズの研削を行う。次に他方の加工前レンズを同様に研削する。
【0048】前述した従来の研削方法(図15)と比較した場合に、本発明のレンズ研削方法では左右の寄せ量を独立した値として入力している点、及び図15に示すレンズ枠の形状データの修正(ステップS5)が本発明では演算処理のみで実行される点に特徴がある。すなわち、瞳孔距離が左右で異なる場合でも寄せ量を適正値に設定でき、しかも、フレーム形状の修正のために実際の測定子による再トレースを必要としない。そのために、上記ステップS15における寄せ量の入力に先立って、ステップS14で幾何学中心を基準にして形状データAを反転している。
【0049】なお、予め一対の形状データを眼鏡フレームごとに計測してICカードなどに登録してあれば、ICカードをICカード入力装置403から読み込むことができ、その場合には、図15に示すステップS11からステップS14までの手順は省略される。
【0050】次に、フレーム形状の計測処理について、図8乃至図10を参照しながら説明する。なお、図8の処理は図7のS11〜S14の処理に対応している。図8R>8は、フレーム形状の計測処理を示すフローチャートである。
〔S21〕眼鏡フレーム111をフレーム形状測定部110の所定の測定位置に固定する。
〔S22〕フレーム形状測定部110に設けられた眼鏡フレーム左右眼判定回路119aにより、測定位置が眼鏡フレーム111の右枠か左枠かを判定する。これは眼鏡フレーム111の測定位置に応じて、測定された形状データはRAM302に設定された左あるいは右のレンズ枠についてのデータ記憶領域に格納するためである。
〔S23〕加工済レンズが枠入れされる眼鏡フレーム111に設定した基準線及び基準点からの回転角度θi (iは0,1,…n)毎の動径距離ri に基づいて、極座標表示された形状データD1 (ri,θi )が測定値として記憶される。すなわち、図9に示すように測定子112がレンズ枠の内周溝に沿って移動して、所定の時間間隔で位置112ao,112a1 ,112a2 ,112a3 ,…112aiのデータがレンズ枠の全周にわたって、例えば100程度のデータ値が測定され、フレームの測定基準位置Omから内側に引いた水平線の方向を0°とする極座標表示された形状データとして記憶される。
〔S24〕レンズ枠の幾何学中心を決定するために、RAM302に格納された極座標形式の形状データD1 (ri ,θi )を直交座標形式の形状データD1 (Xi ,Yi )に変換する。ここで座標変換式は、Xi =ri cosθi 、Yi =ri sinθi である。
【0051】次に、直交座標値D1 (Xi ,Yi )の中から、それぞれ各軸成分Xi ,Yi が最大(Xmax,Ymax)、最小(Xmin,Ymin)の値をとる座標点A(Xa,Ymax),B(Xmin,Yb),C(Xc,Ymin),D(Xmax,Yd)を決定し、これらの座標点データに基づいてレンズ枠の幾何学中心OpのX座標値Xp、Y座標値Ypを次の式から求める。
【0052】
Xp=(Xmax+Xmin)/2Yp=(Ymax+Ymin)/2〔S25〕RAM302に格納された形状データD1 (Xi ,Yi )を幾何学中心Opを原点とする形状データD2 (Xj ,Yj )(jは0,1,…n)に修正する。ここで、幾何学中心OpのX座標値Xp、Y座標値Ypより、Xj =Xi −XpYj =Yi −Ypの関係から、Opを原点とする形状データD2 の各座標成分を求めることができる。
〔S26〕レンズ枠の幾何学中心Opを基準にして反転された形状データD3 (rn-j ,θj )を求める。そのためにまず、形状データD2 (Xj ,Yj )を極座標形式の形状データD2 (rj ,θj )に逆変換する。
【0053】D2 (Xj ,Yj )からD2(rj ,θj )への逆変換は、Xj 2 +Yj 2 =rj 2 arctan(Yj /Xj )=θj の関係式に基づいて計算することができる。
【0054】ステップS22において右枠と判定されていたとして、この逆変換によって、右のレンズ枠の幾何学中心Opを原点とする極座標形式の形状データD2 (rj ,θj )が求められたことになる。さらに、右枠の幾何学中心を原点とするレンズ枠の形状データD2 (rj ,θj )のj番目の回転角度θj の動径距離データを回転角度θn-j の動径距離データに置換して形状データD3 (rn-j ,θj )を求める。右枠の形状データD2 が、いま例えば100の点のデータ列D2 (r0 ,θ0 ),D2 (r1 ,θ1 ),…D2 (r99,θ99)として求められている場合には、これらのデータ列をデータ列D3 (r99,θ0 ),D3 (r98,θ1 ),…D3 (r0 ,θ99)のように修正して左枠の形状データD3 の100の点のデータ列を決めることができる。
【0055】なお、ステップS22における判定が左枠と判定されていれば、同様にして、右枠の形状データを求めることができる。
〔S27〕極座標形式の形状データとして求められた形状データD3 (rn-j ,θj )を、直交座標形式の形状(Xk,Yk)に変換する。
【0056】この図8に示すフレーム形状の計測処理では、加工済レンズが枠入れされるフレームの左右のレンズ枠の形状データが、それぞれレンズ枠の幾何学中心を原点として求められる。これによって、以下に説明するようにして、独立した寄せ量に基づいて形状データの修正処理を実行できる。したがって左右の寄せ量が互いに異なる場合であっても、従来のレンズ研削装置のように両方のレンズ枠の形状を別個に測定せずに、適正な寄せ量によるレンズ研削が可能になる。
【0057】次に、フレームの左右のレンズ枠についての一対の形状データから、レンズ枠におけるレンズ光心を原点とする一対の研削データに修正する修正処理について、図11及び図12を参照しながら説明する。
【0058】図11は、形状データの修正処理を示すフローチャートである。なお、図11の処理は、図7のS15〜S17の処理に対応している。
〔S31〕予め測定されている眼鏡装用者の眼の位置の偏位に関する寄せ量のうち、右眼の寄せ量(ΔXR ,ΔYR )を数値キー401から入力する。
〔S32〕先の計測処理のステップS25で求めた形状データD2 (Xj ,Yj )をRAM302からCPU301に読み出す。
〔S33〕右のレンズ枠の形状データを修正するために、レンズ光心Osを演算する。
【0059】図10に示すように、眼鏡フレーム111の中央部を基準にした右眼の瞳孔の位置までの距離がR(mm)である場合、右眼の寄せ量のX軸成分ΔXR は、ΔXR =(FPD/2)−Rとなる。したがって、幾何学中心Opを原点とする直交座標系でレンズ光心Os(Xs,Ys)は、Xs=−ΔXR =−(FPD/2)+RYs=−ΔYR と求められる。ここで、ΔYR は眼鏡フレーム111の幾何学中心と右眼の瞳孔位置の高さ方向についての偏差を意味する。
〔S34〕RAM302から読み出された形状データD2 (Xj,Yj )を、レンズ光心Osを原点とする形状データD4 (Xi ,Yi )(iは0,1,…n)に修正する。ステップS33で求めた(Xs,Ys)から、レンズ光心Osを原点とする形状データD2 の各座標成分は、Xi =Xj −{(FPD/2)−R}
i =Yj −ΔYR の関係式によって求めることができる。
〔S35〕形状データD4 (Xi ,Yi )を極座標形式の形状データD4 (ri ,θi )に逆変換する。
【0060】この逆変換は、先の計測処理のステップS26と同様にして、Xi 2 +Yi 2 =ri 2 arctan(Yi /Xi )=θi の関係式に基づいて計算することができる。この逆変換によって、右のレンズ枠のレンズ光心Osを原点とする極座標形式の形状データD4 (ri ,θi )が求められたことになる。
〔S36〕形状データD4 (ri ,θi )に基づいて、極座標表示されたときの回転角度データθが等差数列をなす新たな研削データD5 (rj ,θj )に修正する。このような修正が必要な理由は、次の通りである。
【0061】一般に、加工前レンズ201を所望する形状に研削するには、研削データの数は多ければ多い程、精密な形状の加工が実現できる。しかし、形状データを演算処理する場合のデータ数は計測手段や計測の速度に規定されるから、レンズ枠の形状を一定の間隔で計測することが好ましい。最初の計測時の測定中心Omはレンズ枠の幾何学中心Opと一致しない。特に、幾何学中心Opからの瞳孔位置の偏差が大きい場合には、ステップS34などの原点の移動によって形状データD4 (ri ,θi )の回転角度の成分(θi )は等差数列ではなくなってしまう。したがって、たとえ最初のフレーム形状の計測処理で、均等な回転角度Δθ毎に動径距離ri を測定してレンズ枠の形状データD1 (ri ,θi )が得られていたとしても、形状データD4 (ri ,θi )でそのまま切削すると、レンズ枠の形状変化が大きい場所では、正確な研削加工が困難になる。その場合に、図15のステップS5のように、形状データを修正する。そのために、レンズ枠の測定中心をレンズ枠におけるレンズ光心に原点を移動して、再度フレーム形状の測定により、新たな極座標表示された形状データを得る方法もあるが、そのぶんの測定に余計な時間を要し、かつ眼鏡フレームの位置決め操作が煩わしいなどの問題が発生する。
【0062】そこで、本発明では図12に示すようにレンズ光心Osを原点とする形状データD4 (ri ,θi )から、次のようにして角転角度の成分{θj }を等差数列とするD5 (rj ,θj )を求めている。ここでは、新たな形状データD5 (rj ,θj )の角度成分{θj }を定める条件は、θi-1 ≦θj <θi ,又はθi-1 <θj ≦θi θj −θj-1 =θs(公差)
であり、その角度成分θj に対応する動径成分rj を求めるには、 rj =ri +(ri+1 −ri )・(θj −θi )/(θi+1 −θi
の関係式が利用される。
【0063】なお、形状データD4 のデータ数がいくつあるかを調べて、その数が1000であれば全周360°をそのデータ数で割って、その商の値(=0.36)を公差θsに定める。またレンズ枠の形状変化が小さい、例えばθ0 <θj ≦θ1 の範囲に適当な値のθsを公差としても良い。その場合に、新たな形状データD5 のデータ数が元の形状データD4 のデータ数を越えるように、公差θsを選択することが好ましい。
〔S37〕左眼の寄せ量(ΔXL ,ΔYL )を数値キー401から入力する。
〔S38〕先の計測処理のステップS27で求めた形状データD3 (Xk ,Yk )をRAM302からCPU301に読み出して、ステップS32乃至36と同様にして左のレンズ枠の形状データを修正し、左右のレンズについての一対の研削データを作成する。
【0064】次に、レンズ研削手段200により加工前レンズ201を研削する研削処理の手順を説明する。図1313は、修正された研削データによるレンズ研削の工程を示すフローチャートである。なお、図13の工程は図7R>7のS18に対応している。
〔S41〕左右いずれかの加工前レンズをレンズ研削装置に取り付ける。この場合に、加工前レンズ201はそのレンズ光心がレンズ回転軸231の回転中心に一致させる。
〔S42〕データ入力手段400から加工前レンズ201の種類、即ち左側のレンズか右側のレンズかを選択キー402で選択する。右側のレンズが取り付けられたとすると、ステップS43に進む。
〔S43〕右眼用レンズの研削データとして、RAM302から研削データD5 (rj ,θj )を読み出す。
〔S44〕この形状データD5 (rj ,θj )に基づいて、CPU301によりサーボモータ252を制御してレンズ研削を実行する。
【0065】図14は加工前レンズの研削方法を示す説明図である。ダイヤモンドホイール261の中心位置Odと加工前レンズ201の回転中心(即ち、レンズ光心)Osとの位置関係は、ダイヤモンドホイール261の半径値Rと形状データD5 (rj ,θj )の動径距離rj に基づいて、レンズ回転軸231の回転角度θj 毎に決定される。ついで、図13へ戻って説明する。
〔S45〕フォトインタラプタ257bにより研削終了を検知したとき、レンズ研削装置は停止するから、レンズ回転軸231から加工前レンズ201(ここでは加工済レンズとなる)を取り外す。
〔S46〕眼鏡フレーム111の他方のレンズを加工前レンズとしてレンズ研削装置に取り付ける。
〔S47〕左眼用レンズの研削データとして、図11のステップS38で求めた研削データをRAM302から読み出す。
〔S48〕ステップS44と同様にして、左眼用レンズを研削する。
〔S49〕研削終了後に加工前レンズ201(ここでは加工済レンズとなる)を取り外して、全ての加工を終了する。
〔S50〕ステップS42において、最初に左側のレンズが取り付けられた場合には、左眼用レンズの研削データとして、図11のステップS38で求めた研削データをRAM302から読み出す。
〔S51乃至S56〕以下、ステップS44乃至S49と同様に順次に両方の加工前レンズ201を加工する。
【0066】上記の説明では、眼鏡フレーム111の片側からレンズ枠の形状データを実際に測定するようにしたが、被加工レンズが枠入れされるフレームの形状データを予めICカードに記憶させ、ICカード入力装置403(図1)から入力することもできる。
【0067】また、形状データの修正処理(図11)に代えて、眼鏡フレーム111の測定中心を移動させて実際に極座標データを再度測定する場合であっても、本発明では一方のレンズ枠の形状データを入力するだけで左右2枚の被加工レンズの研削データを得てレンズ研削ができるから、瞳孔距離が左右で異なっている眼鏡フレームについてのレンズ研削において所定の効果を有する。
【0068】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のレンズ研削方法では左右レンズ枠の一対の形状データを設定して、左右独立の寄せ量データに基づいてレンズ枠における左右のレンズ光心を求め、レンズ光心を原点とする一対の研削データに修正して、被加工レンズを加工するようにしたので、左右の瞳孔距離が異なる場合でも、瞳孔距離に対応したレンズ研削が可能になる。
【0069】さらに、一方のレンズ枠の形状データを反転する演算によって他方の形状データを得るようにしたので、一方のレンズ枠の形状データの計測のみで、レンズ研削が可能になる。
【0070】そして、直交座標系で求めたデータを、回転角度データが等差数列をなす研削データに修正するようにしたので、研削時のレンズ回転軸とダイヤモンドホイール軸の同期制御が簡単になる。
【0071】また、本発明のレンズ研削装置では、一対の形状データと左右独立の寄せ量データを、データ修正手段によって、レンズ光心を原点とする一対の研削データに修正し、レンズ研削手段で、この研削データに基づいて加工前レンズをレンズ光心と一致する回転軸に保持して研削するように構成したので、左右の瞳孔距離が異なる場合でも、瞳孔距離に対応したレンズ研削が可能になる。
【0072】さらに、形状データ計測手段によって一方の形状データを計測し、演算手段によってこの形状データを反転して、一対の形状データを演算するように構成したので、一方のレンズ枠の形状データの計測のみで足り、計測時間が短縮される。
【0073】そして、形状データ読取手段によって一方の形状データを読み取り、演算手段によってこの形状データを反転して、一対の形状データを演算するように構成したので、一方のレンズ枠の形状データの読み取りのみで足り、形状データの保存、読み取りが簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレンズ研削装置の一例を示すブロック図である。
【図2】レンズ研削装置を構成するフレーム形状測定部を示す詳細図である。
【図3】フレーム形状測定回路を示すブロック図である。
【図4】レンズ研削装置を構成するレンズ研削部を示す詳細図である。
【図5】レンズ研削回路を示すブロック図である。
【図6】フレーム形状測定部及びレンズ研削部を制御する演算制御回路を示すブロック図である。
【図7】本発明のレンズ研削方法の概略を示すフローチャートである。
【図8】フレーム形状の計測処理を示すフローチャートである。
【図9】フレーム形状の測定方法を示す説明図である。
【図10】フレーム形状の幾何学中心の位置算出方法を示す説明図である。
【図11】形状データの修正処理を示すフローチャートである。
【図12】形状データの修正方法を示す説明図である。
【図13】修正された研削データによるレンズ研削の工程を示すフローチャートである。
【図14】加工前レンズの研削方法を示す説明図である。
【図15】従来装置におけるレンズ研削方法の概略を示すフローチャートである。
【図16】左右の瞳孔位置が異なる場合の寄せ量を示す図である。
【符号の説明】
100 形状データ計測手段
200 レンズ研削手段
201 被加工レンズ
300 演算制御回路
400 データ入力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 フレームのレンズ枠の形状データに基づいて、加工前レンズを前記レンズ枠の形状に研削加工するレンズ研削方法において、前記レンズ枠の幾何学中心を原点とし、左右レンズ枠の対称軸に関して対称な一対の形状データを設定し、左右独立の寄せ量データに基づいて左右のレンズ枠におけるレンズ光心を求め、前記一対の形状データをそれぞれ前記左右のレンズ枠におけるレンズ光心を原点とする一対の研削データに修正し、前記一対の研削データに基づいて前記加工前レンズをこのレンズ光心と一致する回転軸に保持して研削することを特徴とするレンズ研削方法。
【請求項2】 前記一対の形状データは、前記左右レンズ枠の対称軸に関して前記レンズ枠の幾何学中心を原点とする一方のレンズ枠の形状データを反転する演算によって設定し、前記一対の研削データは、レンズ枠におけるレンズ光心を原点とする直交座標系における演算により修正することを特徴とする請求項1記載のレンズ研削方法。
【請求項3】 前記研削データの求め方の手順は、直交座標系のデータとして求め、ついで前記レンズ枠に設定した基準線及び基準点からの回転角度θi(iは0,1,…n)毎の動径距離riに基づいて極座標表示されたデータ(ri,θi)に変換し、前記データ(ri,θi)に基づく補間により、回転角度データ(θj)が等差数列をなす研削データ(rj,θj)に修正することを特徴とする請求項1記載のレンズ研削方法。
【請求項4】 フレームのレンズ枠の形状データに基づいて、加工前レンズを前記レンズ枠の形状に研削加工するレンズ研削装置において、前記レンズ枠の幾何学中心を原点とし、左右レンズ枠の対称軸に関して対称な一対の形状データを設定する形状データ設定手段と、前記幾何学中心からの前記レンズ枠におけるレンズ光心の偏位を左右独立の寄せ量データとして入力する寄せ量入力手段と、前記一対の形状データを、前記寄せ量データに基づく前記レンズ枠におけるレンズ光心を原点とする一対の研削データに修正するデータ修正手段と、前記一対の研削データに基づいて前記加工前レンズをこのレンズ光心と一致する回転軸に保持して研削するレンズ研削手段と、を有することを特徴とするレンズ研削装置。
【請求項5】 前記データ設定手段を、前記レンズ枠の形状データを計測する形状データ計測手段と、前記左右レンズ枠の対称軸に関して前記レンズ枠の幾何学中心を原点とする一方のレンズ枠の形状データを反転することによって、前記フレームについての一対の形状データを演算する演算手段と、によって構成することを特徴とする請求項4記載のレンズ研削装置。
【請求項6】 前記データ設定手段を、予め測定された前記形状データを読み取る形状データ読取手段と、前記フレームの左右レンズ枠の対称軸に関してレンズ枠の幾何学中心を原点とする一方のレンズ枠の形状データを反転することによって、前記フレームについての一対の形状データを演算する演算手段と、によって構成することを特徴とする請求項4記載のレンズ研削装置。
【請求項7】前記形状データは、眼鏡フレームに設定した基準線及び基準点からの回転角度θi (iは0,1,…n)毎の動径距離ri に基づいて極座標表示される形状データ(ri ,θi )であることを特徴とする請求項5又は6記載のレンズ研削装置。
【請求項8】 前記演算手段では、レンズ枠の幾何学中心を原点とする一方のレンズ枠の形状データ(rj ,θj )(jは0,1,…n)と、そのj番目の回転角度θj の動径距離データを(n−j)番目の動径距離データに置換した形状データ(rn-j ,θj )とを、極座標表示された一対の形状データとして演算することを特徴とする請求項7記載のレンズ研削装置。
【請求項9】 前記データ修正手段は、前記寄せ量データによってレンズ枠の幾何学中心から偏位した前記レンズ光心の位置を求めて、前記レンズ光心を原点とするように前記一対の形状データを修正する修正手段と、前記修正手段により修正された前記一対の形状データを、前記レンズ枠の基準線及び基準点からの回転角度θi (iは0,1,…n)毎の動径距離ri に基づいて極座標表示されるデータ(ri ,θi )に変換する変換手段と、を有することを特徴とする請求項4記載のレンズ研削装置。
【請求項10】 前記データ修正手段は、前記データ(ri ,θi )に基づく補間により、回転角度データ(θj )が等差数列をなす研削データ(rj ,θj )を演算する修正演算手段を有することを特徴とする請求項9記載のレンズ研削装置。

【図2】
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【図16】
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【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図14】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【図15】
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【図8】
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【図11】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【特許番号】特許第3242956号(P3242956)
【登録日】平成13年10月19日(2001.10.19)
【発行日】平成13年12月25日(2001.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−274096
【出願日】平成3年10月22日(1991.10.22)
【公開番号】特開平5−111862
【公開日】平成5年5月7日(1993.5.7)
【審査請求日】平成9年12月10日(1997.12.10)
【出願人】(000113263)ホーヤ株式会社 (3,820)
【参考文献】
【文献】特開 昭61−274859(JP,A)
【文献】特公 平3−25298(JP,B2)