説明

レンズ装置およびカメラシステム

【課題】低コストで動画撮影モードと静止画撮影モードの切り換え時における画像劣化を低減したレンズ装置を提供する。
【解決手段】レンズ装置は、動画および静止画の撮影が可能なカメラ本体に着脱可能なレンズ装置であって、カメラ本体との間で撮影モードに応じた制御情報を含む通信方式で通信を行う通信手段と、通信手段を介して得られた制御情報を用いて光学素子の駆動制御を行う制御手段とを有し、制御手段は、撮影モードが切り換わった場合に、切り換え後の撮影モードに応じた制御情報を受け取るまでの間、切り換え前の撮影モードに応じた制御情報を、切り換え後の撮影モードに応じた制御情報に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ本体との間で通信を行うレンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、静止画撮影時にレンズとカメラ本体の通信を互いにクロック同期通信で行い、動画撮影時にカメラ本体からレンズへの通信はクロック同期通信で行い、レンズからカメラ本体への通信はUART等の非同期通信で行う構成が開示されている。このように特許文献1では、複数の種類の通信方式で通信が行われる。クロック同期通信のみでは、クロックの出力側に通信タイミングを依存することになり、クロックの入力側は必要な時に通信できないという問題があるが、特許文献1の構成によれば、このような問題を解決することができる。
【0003】
また特許文献2には、動画撮影モードと静止画撮影モードを迅速に切り換えるため、撮影モードの切り換え直後は、切り換え前の撮影モードで得られたレンズ情報を用いて切り換え後の撮影モードによる制御を行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−258558号公報
【特許文献2】特開2005−84339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1において複数の通信方式を用いて同時に通信を行うには、複数の通信ユニットをレンズ及びカメラ本体の双方に設ける必要がある。このため、通信ユニットとして複数の電子回路を具備する必要があり、製品単価が高くなる。特許文献2の構成では、撮影モードを迅速に切り換え可能であるが、撮影モードに応じた適切なレンズ情報が得られるわけでなく、一時的かつ省略された情報であるため、撮影画像が劣化するおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、低コストで静止画撮影モードと動画撮影モードの切り換え時における画像劣化を低減したレンズ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としてのレンズ装置は、動画および静止画の撮影が可能なカメラ本体に着脱可能なレンズ装置であって、前記カメラ本体との間で、撮影モードに応じた制御情報を含む通信方式で通信を行う通信手段と、前記通信手段を介して得られた前記制御情報を用いて光学素子の駆動制御を行う制御手段とを有し、前記制御手段は、前記撮影モードが切り換わった場合に、切り換え後の撮影モードに応じた制御情報を受け取るまでの間、切り換え前の撮影モードに応じた制御情報を、該切り換え後の撮影モードに応じた制御情報に変換する。
【0008】
本発明の他の側面としてのカメラシステムは、前記動画撮影モードと前記静止画撮影モードとを選択する選択手段を備えたカメラ本体と、前記レンズ装置とを有する。
【0009】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低コストで動画撮影モードと静止画撮影モードの切り換え時における画像劣化を低減したレンズ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施例におけるカメラおよび交換レンズの内部ブロック図である。
【図2】本実施例におけるレンズマイコンとカメラマイコンとの通信回路を示す概略図である。
【図3】本実施例における非同期通信信号を示す図である。
【図4】本実施例における同期通信信号を示す図である。
【図5】本実施例における通信情報の一例である。
【図6】本実施例におけるレンズ通信割り込み処理を示すフローチャートである。
【図7】本実施例におけるカメラ通信処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
まず、図1を参照して、本実施例におけるカメラ(カメラ本体)および交換レンズ(レンズ装置)の動作について説明する。本実施例のレンズ装置は、動画および静止画の撮影が可能なカメラ本体に着脱可能なレンズ装置である。図1は、本実施例におけるカメラ本体と交換レンズの内部ブロック図であり、交換レンズ1およびカメラ本体2の構成を模式的に示し、また、その内部の制御系を示している。交換レンズ1(レンズ装置)は、交換式オートフォーカスレンズであり、フォーカスユニット3、モータ4、移動量検出ユニット5、絶対位置検出ユニット6、EEPROM7、レンズマイコン8、接点ユニット9、および、フォーカスレンズ10を備える。
【0014】
フォーカスユニット3は、フォーカスレンズ10を光軸OAの方向(光軸方向)に移動可能に保持し、被写体にピントを合わせるための保持機構である。モータ4は、フォーカスユニット3を駆動させるアクチュエータである。本実施例のモータ4は電磁式モータであるが、これに限定されるものではなく、超音波式やボイスコイル式等のモータも適用可能である。移動量検出ユニット5は、モータ4の回転量および回転速度を検出する検出手段である。移動量検出ユニット5は、円周上に同一ピッチで形成された切り欠きを有し、モータ4の回転と同期して回転する円板を備えている。移動量検出ユニット5は、この円板にLEDから投光された光がフォトインタラプタ素子(受光素子)に到達するか遮光されるかに応じた信号変化を検出する。フォーカスユニット3の移動量はモータ4の回転量と比例するため、移動量検出ユニット5はフォーカスユニット3の移動量を計測することができる。
【0015】
絶対位置検出ユニット6は、フォーカスユニット3の絶対位置を検出する検出手段である。絶対位置検出ユニット6は、フォーカスユニット3に連動して移動する複数の金属のブラシと、固定された金属パターンとの導通による信号変化を検出し、この信号変化に基づいてフォーカスユニット3の現在位置を特定する。EEPROM7(又は、フラッシュメモリ)は、書き換え可能な不揮発性メモリ(記憶手段)である。EEPROM7に記憶されるデータは、交換レンズ1の調整データとなる。
【0016】
レンズマイコン8は、交換レンズ1の内部の各構成要素を制御するレンズ制御手段(制御手段)である。レンズマイコン8は、交換レンズ1とカメラ本体2との間で通信を行うための通信回路(通信手段)、リセット例外処理、A/D、タイマー、入出力ポート、ROM、および、RAM等の機能を有する。通信回路は、カメラ本体2との間で、撮影モード(動画撮影モード、静止画撮影モード)に応じた制御情報を含む通信方式(同期通信、非同期通信)で通信を行う。レンズマイコン8は、通信回路を介して得られた制御情報を用いてレンズや絞りなどの光学素子の駆動制御を行う。
【0017】
接点ユニット9は、交換レンズ1とカメラ本体2との間で通信を行うための複数の金属接点を備え、レンズマイコン8とカメラマイコン12とを電気的に接続する接続手段である。複数の金属接点は、カメラ本体2側に設置された複数の金属突起と、交換レンズ1側に設置された複数の金属片とにより構成される。複数の金属突起と複数の金属片はそれぞれ、機械的に接触する。複数の金属接点は、カメラ本体2から交換レンズ1に対して電源を供給する機能も有する。
【0018】
カメラ本体2(撮像装置本体)は、測距ユニット11、カメラマイコン12、および、CCDセンサ13を備える。測距ユニット11は、被写体までの距離に対するフォーカスユニット3の現在位置のフィルム面でのズレ量を測距する測定手段である。一般に、オートフォーカスカメラでは、複数のラインCCDを用いたピントのズレ方式が採用される。この場合、被写体のコントラスト(明暗)の違いを読み取ることで、予め距離の離れた他のラインCCDと比較し、コントラストの状態が同じとなるCCDライン上の位置のズレを検出する。すなわち、ピントが合っている状態(合焦状態)では、CCDライン上の同じ位置にコントラストが合うことになる。ただし、本実施例は測距方式に限定されるものではなく、例えば、赤外発光(ILED)体を用いて三角測距を行う測距方式を採用してもよい。また、オートフォーカスに関する説明は、本実施例の主旨とは無関係であるため省略する。
【0019】
カメラマイコン12は、カメラ本体2の内部の各構成要素を制御するカメラ制御手段である。カメラマイコン12は、レンズマイコン8との間で通信を行うための通信コントローラ、A/D、電流検出器、タイマー、レンズへの電源供給スイッチ、入出力ポート、ROM、および、RAM等の機能を有する。CCDセンサ13は、被写体像からの反射光を電気信号に変換する撮像素子である。またカメラ本体2は、撮影モード(動画撮影モード、静止画撮影モード)を選択する選択手段(不図示)を有する。更にカメラ本体2は、その他の種々の機能を有するが、本発明の主旨とは無関係であるため省略する。
【0020】
次に、交換レンズ1(レンズ装置)の作用について説明する。まず、カメラ本体2(撮像装置本体)のオートフォーカス(AF)動作について説明する。カメラマイコン12は、ユーザによるAFスイッチ(不図示)からのAF開始の指示があるまで待機し、指示があった場合にAF動作を開始する。本実施例のカメラ本体2は、2つのAF方式、すなわち位相差検出方式とコントラストAF方式とを備える。位相差検出方式は、通常の写真撮影である静止画撮影を行う場合に機能し、測距ユニット11からの測距データに基づいてAF動作を行う方式である。一方、コントラストAF方式は、ビデオカメラのような動画撮影を行う場合に機能し、CCDセンサ13で撮像した被写体像のコントラストを検出することでAF動作を行う方式である。本実施例の交換レンズ1は、静止画写真撮影時は主に位相差検出方式、ビデオのような動画撮影時には主にコントラストAF方式と、それぞれの機能時にAF動作を切り換えながら作用する。
【0021】
次に、交換レンズ1(レンズ装置)における通信処理について説明する。まず、接点ユニット9を介したレンズマイコン8とカメラマイコン12との通信回路(通信手段)について説明する。図2は、レンズマイコン8とカメラマイコン12との通信回路を示す概略図である。一般に、交換レンズ1とカメラ本体2との通信では、レンズマイコン8およびカメラマイコン12に設定されたシリアル通信機能によって各種データを交換する。図2に示されるように、レンズマイコン8は、入力端子Lin、出力端子Lout、および、同期クロック入力端子Lclkを備える。入力端子Linは、カメラマイコン12からの出力データを受信する端子である。出力端子Loutは、カメラマイコン12へ出力データを送信する端子である。同期クロック入力端子Lclkは、入力端子Linおよび出力端子Loutにおける各データ通信において、各信号変化を検出するための同期信号用入力端子である。
【0022】
同様に、カメラマイコン12は、入力端子Cin、出力端子Cout、同期クロック出力端子Cclkを備える。入力端子Cinは、レンズマイコン8からの出力データを受信する端子である。出力端子Coutは、レンズマイコン8へ出力データを送信する端子である。同期クロック出力端子Cclkは、入力端子Cinおよび出力端子Coutの各データ通信において、各信号変化を検出するための同期信号用出力端子である。このような通信方式は、一般的に、クロック同期式シリアル通信と呼ばれる。カメラマイコン12は、同期クロック出力端子Cclkから8周期分のクロック信号を出力し、レンズマイコン8はこの信号を同期クロック入力信号Lclkとして受信する。このように、互いにこのクロック信号に同期させて1回の通信で1バイト(8bit)単位の情報がやり取りされる。
【0023】
図3は、本実施例における非同期通信信号を示す図であり、図2を参照して説明したクロック同期式シリアル通信における各端子の通信波形を表している。図3に示されるように、同期クロック出力端子Cclkの信号変化と同じタイミングで、入力端子Cinおよび出力端子Coutの信号が変化する。この通信波形は、カメラ本体2の撮影モードが静止画撮影モードであることを表しており、番号1〜7で示されるそれぞれの通信タイミングは、特定の信号に同期したタイミングではなく、独立したタイミングで、いわゆる非同期通信が行われる。これは、静止画撮影モード時は、ユーザのレリーズタイミングに対する遅れが無いように、カメラ本体2における操作が無い場合には通信間隔を長くし、レリーズと同時に通信間隔を短くするように構成されているためである。
【0024】
図4は、本実施例における同期通信信号を示す図であり、図2を参照して説明したクロック同期式シリアル通信における各端子の通信波形を表している。図4に示されるように、同期クロック出力端子Cclkの信号変化と同じタイミングで、入力端子Cinおよび出力端子Coutの信号が変化する。この通信波形は、カメラ本体2の撮影モードが動画撮影モードであることを表しており、番号1〜7で示されるそれぞれの通信タイミングは、同期信号Vsyncに同期している。Vsync信号は、動画撮影時の被写体像を撮像するタイミング(撮像タイミング周期)を示す。一般的に、このタイミングは、Vsync=1/30秒やVsync×2=1/60秒、Vsync×4=1/120秒などのような時間間隔となる。これは、動画撮影モード時には常に撮像を繰り返すため、その撮像タイミングで通信することが動画の制御上望ましいと考えられるためである。図4に示されるように、通信間隔は同期信号Vsyncの信号間隔と同一に設定される。また、同期信号Vsync×2の場合には、通信間隔を2倍に設定することができる。ただしこの場合でも通信間隔を同期信号Vsyncの信号間隔に設定してもよい。これは、撮像タイミングが速い場合でもAFなどの制御は顕著に変化せず、通信間隔を小さくする必要がない場合もあるからである。一般的には、このような同期通信は、撮像タイミング周期の整数倍ごとに行うことが可能である。
【0025】
以上のように、本実施例では、カメラ本体2の撮影モードが静止画撮影モードの場合には非同期通信に設定し、動画撮影モードの場合には同期信号Vsyncによる同期通信に設定する。すなわち本実施例において、通信タイミングは、カメラ本体2の撮影モードに応じて切り換えられる。
【0026】
図5は交換レンズ1とカメラ本体2との間の通信情報(制御情報)を示す表であり、図5(a)は非同期通信の場合を示し、図5(b)はVsync同期通信の場合を示している。以下、図5(a)、(b)を参照して、交換レンズ1とカメラ本体2との間の通信内容とデータの保持方法について説明する。
【0027】
図5(a)、(b)に示されるように、非同期通信(静止画撮影モード)およびVsync同期通信(動画撮影モード)のいずれでも、通信データ順に、フォーカス駆動量、絞り駆動量、フォーカス駆動速度、および、絞り駆動速度に関する通信情報が含まれる。フォーカス駆動量(1)は、カメラ本体2からの駆動量情報(非同期通信:0.005mm単位、Vsync同期通信:0.01mm単位)であり、AFの測距結果に基づいて被写体にピントを合わせるためのフォーカス像面移動量である。レンズマイコン8は、フォーカス駆動量情報を受信すると、指示された像面移動量を駆動するようにフォーカスユニット3の移動を開始する。絞り駆動量(2)は、絞り機構(不図示)を動作させて被写体光量の調整に必要な駆動量(非同期通信:0.05段単位、Vsync同期通信:0.1段単位)である。レンズマイコン8は、この駆動量情報を受信すると指示された絞り段数分だけ絞り機構を駆動する。
【0028】
フォーカス駆動速度(3)は、フォーカスユニット3の像面での駆動速度(非同期通信:5mm/sec単位、Vsync同期通信:0.01mm/sec単位)である。この駆動速度情報は、フォーカス駆動量(1)とセットで指定され、レンズマイコン8は、このフォーカス駆動速度になるようにフォーカスユニット3を駆動制御する。絞り駆動速度(4)は、絞り機構(不図示)の駆動速度(非同期通信:1msec/段単位、Vsync同期通信:100msec/段単位)である。この駆動速度情報は、絞り駆動量(2)とセットで指定され、レンズマイコン8は、この駆動速度になるように絞り機構を駆動制御する。
【0029】
図5(a)、(b)に示される2つの表を比較すると、データ(情報)は同一であるが、非同期通信かVsync同期通信かにより、各データの単位が異なる。すなわち、動画撮影モードに応じた制御情報と静止画撮影モードに応じた制御情報は、互いに異なる単位を有する。このため、カメラ本体2から同一のデータが送信された場合でも、交換レンズ1内の制御上の移動量や速度は異なる。データの単位が異なるのは、静止画の場合には瞬間的な撮影であるため高精度で高速な制御が必要であり、動画の場合にはモータ等の騒音が記録されないように比較的低精度で低速な制御が必要なためである。すなわち、2つの撮影モードに応じて制御が異なり、通信で取り扱う制御情報も撮影モードに応じて変化させることが望ましいからである。
【0030】
近年、動画撮影中に静止画の撮影が可能なカメラが開発され、動画と静止画を瞬間的に切り換える必要性がある。この場合、同期通信から非同期通信又は非同期通信から同期通信に通信方式を切り換えるようとしても電気回路的に瞬時に切り換えるのは困難である。このため、それまでの制御情報が継続して使用できるように、制御情報のデータ変換が必要となる。
【0031】
そこで本実施例のレンズマイコン8は、撮影モードが切り換わった場合に、切り換え後の撮影モードに応じた制御情報を受け取るまでの間、切り換え前の撮影モードに応じた制御情報を、切り換え後の撮影モードに応じた制御情報に変換する。具体的には、レンズマイコン8は、撮影モードが動画撮影モードから静止画撮影モードに切り換わった場合、静止画撮影モードに応じた制御情報を受け取るまでの間、動画撮影モードに応じた制御情報を静止画撮影モードに応じた制御情報に変換する。逆に、撮影モードが静止画撮影モードから動画撮影モードに切り換わった場合も、同様に制御情報が変換される。
【0032】
例えば前述の通信情報のフォーカス駆動量(1)に関し、動画撮影モードから静止画撮影モードに切り替わる場合には2倍、逆の場合には1/2倍とすることで、データの整合性を図る。すなわち、この単位演算を行うことによって、突然に撮影モードが切り換わった場合でも、それまでの動作や制御の継続が可能となり、切り換わった後も被写体のピントや露出が最適な状態で撮影を継続することができる。
【0033】
次に、図6を参照して、レンズマイコン8による通信処理について説明する。図6は、カメラマイコン12からの通信を受信した後のレンズマイコン8による処理の流れ(レンズ通信割り込み処理)を示すフローチャートである。図6のフローチャートは、レンズマイコン8の指令に基づいて実行される。
【0034】
まずレンズマイコン8は、レンズ通信処理ルーチン(ステップ100)に移行すると、ステップ101において、現在の通信方式が同期通信(動画撮影モード)か非同期通信(静止画撮影モード)のいずれであるかを判定する。非同期通信の場合にはステップ102に移行し、同期通信の場合にはステップ106に移行する。ステップ101において現在の通信が非同期通信である場合、レンズマイコン8は、ステップ102において、通信の切り換え直後であるか否かを判定する。ここで、通信の切り換え直後とは、カメラの撮影モードが動画から静止画に切り換えられた直後であって、非同期通信に切り換えたが一度も非同期通信が行われていない状態のことをいう。通信が行われていない状態ではあるが、撮影モードが切り換えられただけであり、被写体へのピントや露出の制御は以前の撮影モードを引き継ぐため、通信の切り換え直後の場合にはステップ103に移行する。通信切り換え直後ではない場合にはステップ104に移行する。
【0035】
ステップ103では、同期通信で受信した情報を非同期通信の情報に切り換えるため、レンズマイコン8は単位の変換演算を行う。これにより、動画撮影モードで決定された各移動量自体は以前の制御情報と変わらない状態で精度を良くすることが可能となる。また速度情報に関しても、同期通信からの速度変換情報をレンズマイコン8内に記憶して変換すれば、安定した制御の継続が可能となる。一方ステップ102において通信の切り換え直後ではない場合、ステップ104において、レンズマイコン8は通常の非同期通信による情報として処理する。
【0036】
ステップ101で現在の通信方式が同期通信(動画撮影モード)である場合、続いてステップ106において、レンズマイコン8は同期通信の切り換え直後であるか否かを判定する。ここで通信の切り換え直後とは、カメラの撮影モードが静止画から動画に切り換えられた直後であって、同期通信に切り換えられたが一度も同期通信が行われていない状態のことをいう。通信の切り換え直後の場合には、ステップ107に移行する。一方、通信切り換え直後ではない場合には、ステップ108に移行する。
【0037】
レンズマイコン8は、ステップ107において、非同期通信で受信した制御情報を同期通信の制御情報に切り換えるために単位の変換演算を行う。これにより、静止画撮影モードで決定された各移動量自体は以前の制御情報と変わらない状態で精度を変えることが可能となる。また速度情報に関しても、非同期通信からの速度変換情報をレンズマイコン8内に記憶して変換すれば、安定した制御の継続が可能となる。一方、ステップ106で通信の切り換え直後ではない場合、レンズマイコン8は、ステップ108において、通常の同期通信による情報として処理する。
【0038】
続いてステップ105において、レンズマイコン8は、ステップ103、104、107、または、ステップ108で処理されたカメラ情報に基づいて、レンズのフォーカス制御や絞りの制御を行う。次に、カメラの撮影モードがユーザによって切り換えられた場合、通信の同期又は非同期を切り換える必要がある。このためステップ109において、レンズマイコン8は、その命令をカメラマイコン12が送信しているかを判定する。切り換え命令が送信された場合、ステップ110において、次回の通信から撮影モードを切り換えるようにレンズマイコン8の通信処理部を設定して通信処理を終了する(ステップ111)。一方、撮影モードを切り換えない場合にはそのまま通信処理を終了する(ステップ111)。以上がレンズマイコン8の通信処理である。本来は更に多くの処理や判定が必要であるが、本実施例とは無関係のため省略している。
【0039】
次に、図7を参照して、カメラマイコン12による通信処理について説明する。図7は、カメラマイコン12の通信処理(カメラ通信処理)を示すフローチャートである。まずカメラマイコン12は、通信処理ルーチン(ステップ200)に移行すると、現在の撮影モードが静止画または動画のいずれかであるかを判定する。ステップ201でカメラの撮影モードが静止画の場合には非同期通信であると認識し、ステップ202において、カメラマイコン12はレンズマイコン8に転送する情報の生成処理を行う。
【0040】
一方、ステップ201でカメラの撮影モードが動画の場合には同期通信と認識し、ステップ203において、カメラマイコン12はレンズマイコン8に転送する情報の生成処理を行う。続いてステップ204において、カメラマイコン12は、レンズマイコン8への信号の送信時間(待ち時間)を監視し、通信タイミングになるまで待機する。ここで待ち時間とは、動画撮影時の撮像タイミングであるVsync周期またはその整数倍に等しい時間である。ただし本実施例は、上述の時間だけ待つ必要はなく、撮像素子の蓄積開始タイミングが検出できれば、それをトリガーとしてステップ204を抜け出す処理を採用してもよい。また、ステップ202およびステップ203では、今までのカメラの撮影モードが今回から切り換えられたか否かが判定される。撮影モードが切り換えられたと判定した場合、その情報をレンズマイコン8に優先して送信する情報を生成する。すなわち、静止画から動画に切り換えられたと判定した場合、次の通信は同期通信であり、逆の場合には非同期通信にする旨の情報となる。ここで、カメラ本体2は、撮影モードが切り換えられると、ミラー(不図示)の上げ下げや被写体までの測距方式の切り換え、測光機能切り換え等の各処理を行う必要が生じ、しばらくステップ200に移行しない状態が継続する。すなわち、その間は交換レンズ1が独自に動作することになる。
【0041】
次にステップ205において、カメラマイコン12は、ステップ202またはステップ203で生成した情報をレンズマイコン8に送信し、通信処理を終了する(ステップ206)。
カメラマイコン12からレンズマイコン8に送信された制御情報は、送信されて瞬時にその制御情報に基づく制御が交換レンズ1で実行されるのではなく、処理待ちのために一時的に例えばレンズマイコン8内のメモリに保存される。そして、そのメモリにカメラマイコン12から送信された制御情報が保存されている間に撮影モードの切り換えがあった場合、その保存されている制御情報に対して変換演算を行う。これにより、撮影モード切り換えが行われた直後から、切り換え後の撮影モードに応じた制御を行うことが可能となる。
【0042】
このように、本実施例によれば、低コストで動画撮影モードと静止画撮影モードの切り換え時における画像劣化を低減したレンズ装置を提供することができる。また本実施例は、相互に通信可能な交換レンズ(レンズ装置)とカメラ本体(撮像装置本体)からなるレンズ交換式のデジタルカメラやビデオカメラ等のカメラシステムに利用可能である。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0044】
例えば本実施例は、カメラとレンズ間の通信情報はAFや絞りなどの制御情報に限定されるものではなく、動画撮影モードと静止画撮影モードの切り換えによって変換される全ての情報に関して適用可能である。また、変換される情報に関しても、単位以外に係数や関数などを変更することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 交換レンズ
2 カメラ本体
8 レンズマイコン
12 カメラマイコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画および静止画の撮影が可能なカメラ本体に着脱可能なレンズ装置であって、
前記カメラ本体との間で、撮影モードに応じた制御情報を含む通信方式で通信を行う通信手段と、
前記通信手段を介して得られた前記制御情報を用いて光学素子の駆動制御を行う制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記撮影モードが切り換わった場合に、切り換え後の撮影モードに応じた制御情報を受け取るまでの間、切り換え前の撮影モードに応じた制御情報を、該切り換え後の撮影モードに応じた制御情報に変換する、ことを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記カメラ本体から送信された前記制御情報を記憶する記憶手段を有し、
前記制御手段は、前記撮影モードが切り換わった場合に、前記撮影モードが切り換わる前に前記カメラ本体から受け取り前記記憶手段に記憶されている制御情報を、前記切り換え後の撮影モードに応じた制御情報に変換することを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記撮影モードは、動画撮影モードと静止画撮影モードとを含み、
前記制御手段は、前記撮影モードが前記動画撮影モードから前記静止画撮影モードに切り換わった場合、該静止画撮影モードに応じた制御情報を受け取るまでの間、該動画撮影モードに応じた制御情報を該静止画撮影モードに応じた制御情報に変換することを特徴とする請求項1または2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記動画撮影モードに応じた制御情報と前記静止画撮影モードに応じた制御情報は、互いに異なる単位を有することを特徴とする請求項3に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記通信方式は、前記動画撮影モードの場合には撮像タイミング周期に同期した同期通信であり、前記静止画撮影モードの場合には非同期通信であることを特徴とする請求項3または4に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記同期通信は、前記撮像タイミング周期の整数倍ごとに行われる通信方式であることを特徴とする請求項5に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記動画撮影モードと前記静止画撮影モードとを選択する選択手段を備えたカメラ本体と、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のレンズ装置と、を有することを特徴とするカメラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−11776(P2013−11776A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145088(P2011−145088)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】