説明

レンズ装置

【課題】レンズ装置単体で偏芯を調整することができるレンズ装置を提供する。
【解決手段】カメラ本体に装着されるレンズ装置であって、可動レンズ群と、偏芯補正を行う少なくとも1つのレンズとを含む補正レンズ群とを備える光学系と、可動レンズ群と補正レンズ群を駆動する駆動部と、可動レンズ群と補正レンズ群のレンズ位置を取得するレンズ位置取得部と、補正レンズ群を駆動する駆動部を制御する制御部と、を備え、更に、光学系が、調芯レンズ群の像側に配置されてカメラ本体に向かう第1光路と第2光路とに分岐するビームスプリッタと、第2光路の光束が結像される少なくとも1つの撮像素子と、を含み、制御部が、画質評価用チャートを撮像素子によって撮像して得られるチャート画像に基づいて可動レンズ群と補正レンズ群の補正位置情報を設定し、該補正位置情報を記憶部に記憶し、撮影時には記憶部に記憶された補正位置情報に基づいて駆動部を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラは、高画質化に対応するため、カメラ本体に装着されるレンズ装置における各レンズ群の組立て誤差の少ないことが要望されている。レンズ装置の組立て誤差には、各レンズ群が有する偏芯成分が含まれており、更なる高画質化を実現するために、各レンズ群の偏芯を取り除くことで画質の向上が望まれている。一般に、レンズ群をレンズ装置に組み付け、レンズ装置をカメラ本体に装着した後に各レンズ群の誤差を調整し、各レンズ群の偏芯成分を光軸に合わせ込むために調芯が行なわれている。
【0003】
撮像素子で取得された画像情報に基づいて、撮影時の偏芯レンズの位置情報を設定する光学装置としては、特許文献1に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−175240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の光学装置は、カメラ本体に設けられた撮像素子から得られる画像情報に基づいて偏芯の調整を行なう構成であるため、レンズ装置をカメラ本体に接続した状態でなければ、光学系の調芯を行なうことができない。
【0006】
通常、レンズ装置とカメラ本体とは別個に製造されることから、レンズ装置単体では調芯を行なうことができない。また、レンズ装置をカメラ本体から取り外してメンテナンスを行なう際にも、レンズ装置単体では調芯を行なうことができなかった。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、レンズ装置単体で偏芯を調整することができるレンズ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)カメラ本体に装着されるレンズ装置であって、
可動レンズ群と、偏芯補正を行う少なくとも1つのレンズとを含む補正レンズ群とを備える光学系と、
前記可動レンズ群と前記補正レンズ群を駆動する駆動部と、
前記可動レンズ群と前記補正レンズ群のレンズ位置を取得するレンズ位置取得部と、
前記補正レンズ群を駆動する前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
更に、前記光学系が、調芯レンズ群の像側に配置されてカメラ本体に向かう第1光路と第2光路とに分岐するビームスプリッタと、
前記第2光路の光束が結像される少なくとも1つの撮像素子と、を含み、
前記制御部が、画質評価用チャートを前記撮像素子によって撮像して得られるチャート画像に基づいて前記可動レンズ群と前記補正レンズ群の補正位置情報を設定し、該補正位置情報を記憶部に記憶し、撮影時には前記記憶部に記憶された前記補正位置情報に基づいて前記駆動部を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レンズ装置単体で偏芯を調整することができるレンズ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】レンズ装置を備えるカメラシステムの主要の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のカメラシステムの光学系を模式的に示す図である。
【図3】図1のカメラシステムによって焦点調整の方法を説明する図である。
【図4】図1のレンズ装置において偏芯調整を行なう手順を示すフローチャートである。
【図5】レンズ装置のCCDで取得した画像と、画像のエリアごとのコントラストとを示す図である。
【図6】図1のレンズ装置において、チャート画像に基づいて倒れ補正レンズ群の倒れ角を設定する方法を説明する図である。
【図7】レンズ装置を備えるカメラシステムの他の構成例を示すブロック図である。
【図8】図7のカメラシステムの光学系を模式的に示す図である。
【図9】図7のレンズ装置において調芯を行なう手順を示すフローチャートである。
【図10】図7のレンズ装置において、チャート画像に基づいて倒れ補正レンズ群の倒れ角を設定する方法を説明する図である。
【図11】カメラシステムの構成を示すブロック図である。
【図12】図11のカメラシステムの光学系を模式的に示す図である。
【図13】レンズ装置の記憶部に記憶されるデータテーブルのデータ構造を示す図である。
【図14】全体画像、及び切出し画像を示す図である。
【図15】図11のカメラシステムにおいて、補正レンズ群を用いて画質を調整する手順を示すフローチャートである。
【図16】カメラシステムの他の構成例を示すブロック図である。
【図17】全体画像、及び顔枠内の画像を示す図である。
【図18】図16のカメラシステムにおいて、補正レンズ群を用いて画質を調整する手順を示すフローチャートである。
【図19】カメラシステムの他の構成例を示す図である。
【図20】全体画像、及び該全体画像を分割した複数のエリアのうちコントラストが最も大きいエリアの画像を示す図である。
【図21】図19のカメラシステムにおいて、補正レンズ群を用いて画質を調整する手順を示すフローチャートである。
【図22】本発明の実施形態を説明するためのカメラシステムの他の例の主要な構成を示すブロック図である。
【図23】図22のカメラシステムの光学系を模式的に示す図である。
【図24】図22のレンズ装置の記憶部に記憶されるデータテーブルのデータ構造を示す図である。
【図25】図22のレンズ装置の第2補正レンズ群を駆動して像中心の変位を補正する手順を示すフローチャートである。
【図26】図22のレンズ装置の第2補正レンズ群を駆動して像中心の変位を補正する手順の他の例を示すフローチャートである。
【図27】本発明の実施形態を説明するためのカメラシステムの他の例の主要な構成を示すブロック図である。
【図28】図27のカメラシステムの光学系を模式的に示す図である。
【図29】図28の光学系の補正レンズ群を保持する保持部の一例の構成を模式的に示す図である。
【図30】保持部の他の例の構成を模式的に示す図である。
【図31】図28の光学系の補正レンズ群を移動させる制御プロセスを示すフローチャートである。
【図32】本発明の実施形態を説明するためのカメラシステムの他の例の主要な構成を示すブロック図である。
【図33】図32のカメラシステムの光学系を模式的に示す図である。
【図34】補正レンズ群を移動させる制御プロセスを示すフローチャートである。
【図35】補正レンズ群を移動させる制御プロセスを示すフローチャート
【図36】図35の制御プロセスにおけるデューティー比を設定する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明のレンズ装置を備えたカメラシステムの主要の構成を示すブロック図である。図2は、レンズ装置の光学系を模式的に示す図である。
【0012】
図1に示すように、カメラシステム1は、レンズ装置10と、カメラ本体40とを備える。
【0013】
レンズ装置10は、例えば、放送用に使用されるEFPレンズ又はENGレンズ等のレンズ装置である。レンズ装置10は、カメラ本体40にマウントによって装着される撮影レンズ(光学系)と、光学系を制御する制御系とを備える。
【0014】
レンズ装置10の光学系は、被写体の像をカメラ本体40の撮像素子42の撮像面に結ぶ撮影光学系である。光学系において、フォーカスレンズ群FLと、ズームレンズ群ZLと、絞りIと、倒れ補正レンズ群34と、ビームスプリッタ31と、マスターレンズ群MLとが、被写体側から撮像面に向かって、この順に設けられている。
【0015】
ビームスプリッタ31は、偏芯補正レンズ群を透過した光束を、撮像面に向かう第1光路と、該第1光路に対して略垂直方向に反射する第2光路とに分岐するハーフミラーである。
【0016】
第2光路において、該ビームスプリッタ31によって反射された光を集光する集光レンズ33と、該集光レンズ33によって集光された光を更に分岐させるビームスプリッタ35とが設けられている。
【0017】
ビームスプリッタ35は、第2光路に沿って入射した光束を2つの光束に分岐するキューブ型のハーフミラーである。ビームスプリッタには2つの光出射面が形成され、2つの光出射面それぞれには、CCD32A、32Bが設けられている。また、CCD32A、32Bは、第2光路を通る光束の結像位置に、互いに共役となる位置関係で配置されている。
【0018】
CCD32A、32Bは、合焦状態を検出するのに用いられる。また、CCD32A、32Bは、後述するように偏芯補正にも用いられる。
【0019】
フォーカスレンズ群FLは、光軸方向に移動することによって、被写体距離を変更する。ズームレンズ群ZLは、光軸方向に移動することによって、焦点距離を変更する。絞りIは、開閉駆動されて絞り開口が変化することにより、絞り値を変更する。ここで、フォーカスレンズ群FL及びズームレンズ群ZLのように、撮影条件に基づいて各レンズ群の位置を移動させることができるレンズ群を総称して可動レンズ群という。
【0020】
倒れ補正レンズ群34は、光軸方向に直交する方向を軸に回動し、倒れ角が変化する。倒れ補正レンズ群34は、後述のように駆動制御されて光学系の光軸に対する倒れ角を変えて光学系を透過する光束の中心線の位置を調整することにより、個々のレンズに存在する偏芯に依存する画質の低下を抑制する補正レンズ群である。
【0021】
レンズ装置10の制御系は、CPU20、EEPROM28、アンプFA、ZA、IA、34A、モータFM、ZM、IM、34M、ポテンショメータFP、ZP、IP、34Pを備える。
【0022】
また、レンズ装置10に外部機器として接続されるレンズ操作部50、カメラ本体40、カメラコントロールユニット(CCU)60、モニタ80もレンズシステム全体として制御系を構成する。
【0023】
カメラ本体40は、レンズ装置10の光学系によって画像が結像される撮像素子42を備える。撮像素子42はCCDである。
【0024】
レンズ装置10のCPU20は、フォーカスレンズ群FLやズームレンズ群ZL等のレンズ制御を統括的に行う制御部である。
【0025】
EEPROM28は、レンズ装置10の動作に関する各種データを格納する記憶部である。
【0026】
CPU20は、D/A変換器22を介して各アンプFA、ZA、IAに駆動信号を出力する。これにより、各アンプFA、ZA、IAに接続された各モータFM、ZM、IMがその駆動信号の値(電圧)に応じた回転速度で駆動される。
【0027】
各モータFM、ZM、IMは、撮影レンズのフォーカスレンズFL、ズームレンズZL、絞りIに連結されている。各モータFM、ZM、IMは、モータの駆動によってフォーカスレンズFL、ズームレンズZL、絞りIを駆動する駆動部である。
【0028】
フォーカスレンズFL、ズームレンズZL、絞りIの各々には、それらの位置を検出するための位置センサとしてポテンショメータFP、ZP、IPが連結されている。なお、ポテンショメータFP、ZP、IPは、各モータFM、ZM、IMの出力軸等にフォーカスレンズFL、ズームレンズZL、絞りIと連動するように設けられていればよい。
【0029】
各ポテンショメータFP、ZPは、レンズ位置取得手段として設置されたもので、ポテンショメータFPからは、フォーカスレンズFLの位置に対応した値(絶対位置を示す値)の電圧信号が、ポテンショメータZPからは、ズームレンズZLの位置に対応した値(絶対位置を示す値)の電圧信号がそれぞれ出力され、A/D変換器24を介してCPU20に与えられる。ポテンショメータIPは、絞りIの絞り位置に対応した値(絶対位置を示す値)の電圧信号を出力し、出力された電圧信号がA/D変換器24を介してCPU20に与えられる。
【0030】
CPU20は、ポテンショメータFP、ZPによって検出されたフォーカスレンズFL、ズームレンズZLのレンズ位置を参照しながら各アンプFA、ZAに出力する駆動信号の値を変更することによってフォーカスレンズFL、ズームレンズZLの位置又は動作速度を所望の状態に制御する。
【0031】
レンズ操作部50は、撮影レンズのフォーカス(フォーカスレンズFL)やズーム(ズームレンズZL)の目標となる位置や移動速度をマニュアル操作で指定するマニュアル操作部材を備えたコントローラである。レンズ操作部50は、図示しないフォーカスデマンドとズームデマンドを含み、A/D変換器24を介してCPU20と接続される。フォーカスデマンド及びズームデマンドにはそれぞれ、マニュアル操作部材が設けられている。
【0032】
レンズ操作部50のフォーカスデマンドのマニュアル操作部材を操作すると、その操作部材の位置に対応したフォーカスの目標位置を指定するフォーカス指令信号がCPU20に与えられる。CPU20は、ポテンショメータFPにより検出されるフォーカスレンズFLの位置がそのフォーカス指令信号により指定された目標位置となるように、アンプFAに出力する駆動信号によりモータFMを制御してフォーカスレンズFLの位置を制御する。なお、一般に、マニュアルフォーカスではフォーカスデマンドから与えられる目標位置に従ってフォーカスレンズFLの位置制御が行われるが、フォーカスデマンドから目標の移動速度が与えられ、それに従ってフォーカスレンズFLの速度制御を行うことも可能である。
【0033】
レンズ操作部50のズームデマンドのマニュアル操作部材を操作すると、その操作部材の位置に対応したズームの目標の移動速度を指定するズーム指令信号がCPU20に与えられる。CPU20は、ズームレンズZLの移動速度がそのズーム指令信号により指定された目標の移動速度となるように、アンプZAに出力する駆動信号によりモータZMを制御してズームレンズZLの移動速度を制御する。なお、速度制御において、ポテンショメータZPから得られたズームレンズZLの位置の情報は端近傍での減速制御等に使用される。また、ズーム制御ではズームデマンドから与えられる目標の移動速度に従ってズームレンズZLの速度制御が行われるが、ズームデマンドから目標位置が与えられ、それに従ってズームレンズZLの位置制御を行うことも可能である。
【0034】
また、CPU20は、外部機器との通信制御を行う。CPU20は、シリアルコミュニケーションインターフェース(SCI)26、46を通じてカメラ本体40のカメラCPU44とシリアル通信を行い、又は、カメラ本体40とパラレル通信を行えるようになっている。レンズ装置10のCPU20は、例えば、上記ポテンショメータFP、ZPによって検出されたズーム位置やフォーカス位置等のレンズ情報をカメラ本体40のカメラCPU44に送信する。カメラCPU44は、CPU20に絞りの目標位置を指定するアイリス指令信号等を与える。CPU20は、ポテンショメータIPにより検出される絞りIの絞り位置(開閉度)がカメラCPU44により与えられたアイリス指令信号により指定された目標位置となるように、アンプIAに出力する駆動信号によりモータIMを制御して絞りIの絞り位置を制御する。
【0035】
CCU60は、カメラ本体40に接続されている。CCU60は、カメラ本体40のCCD42で取得した画像信号が入力され、該画像信号に各種機能によって画質を調整する機能を有している。
【0036】
モニタ80は、カメラ本体40からCCU60を通じて画像信号が与えられ、画像信号に基づいて作成された画像をモニタの画面に表示する。
【0037】
CPU20は、倒れ補正レンズ群を制御する際には、D/A変換器22を介してアンプ34Aに駆動信号を出力する。これにより、アンプ34Aに接続されたモータ34Mがその駆動信号の値(電圧)に応じた回転速度で駆動される。
【0038】
モータ34Mは、偏芯補正レンズ群12に連結されている。モータ34Mは、倒れ補正レンズ群34に連結されており、倒れ補正レンズ群34を光軸に直交する面(X−Y平面)に対して傾斜させて、該倒れ補正レンズ群34の倒れ角を変えるように駆動する。
【0039】
ポテンショメータ34Pは、補正レンズ群の位置取得手段として設置されている。ポテンショメータ34Pからは、倒れ補正レンズ群34の倒れ角に対応した値の電圧信号が出力される。ポテンショメータ34Pから出力された電圧信号がA/D変換器24を介してCPU20に与えられる。
【0040】
CPU20は、ポテンショメータ34Pによって検出された倒れ補正レンズ群34の倒れ角と、可動レンズ群のレンズ位置と、データテーブルを参照しながら、アンプ34Aに出力する駆動信号の値を変更することによって、倒れ補正レンズ群34の倒れ角を制御する。
【0041】
レンズ装置10は、CCD32A、CCD32Bを用いてコントラスト方式の合焦位置を検出する機能を有する。次に、この方式の合焦位置検出について説明する。
【0042】
レンズ装置10において、光学系の第2光路の結像位置には、光束の中心線方向において結像位置から前後等間隔に位置をずらしてCCD32A、CCD32Bそれぞれが配置されている。こうすることで、CCD32A、32Bによって同時に合焦状態を検知することができ、ワブリングに比較して合焦位置を特定する速度が向上する。
【0043】
レンズ装置10によって焦点調整の方法を説明する図である。図3は、フォーカスレンズ群FLの位置と、CCD32A、32Bそれぞれから検出されるコントラストとの関係を示している。
【0044】
図3に示すように、レンズ装置10の合焦位置検出では、カメラ本体40側のCCD42の結像面でのコントラストを表す焦点評価値(以下、評価値)が最大となるように、CCD32Aの評価値とCCD32Bの評価値とが等しくなる位置に、フォーカスレンズ群FLを制御する。
【0045】
2つのCCD32A、32Bそれぞれの評価値の大小を比較することで、フォーカスレンズ群FLをFAR端及びNEAR端のうちどちからに移動させれば良いかを判別でき、それぞれの評価値の差(または比)に応じてフォーカス速度を設定することができる。
このため、一般的な山登り方式AFとは異なり、レンズ装置10のAF方式は、合焦点を行き過ぎる動作が必要なくなる。
【0046】
レンズ装置10は、上述のCCD32A、CCD32Bを利用し、カメラ本体40のCCD42を利用せずに、レンズ装置10の光学系の偏芯補正を行う。
【0047】
レンズ装置10は、製造工場での組立て時やメンテナンス時において、レンズ装置10単体で偏芯補正を行う。
【0048】
ここで、第1光路における光学系と、第2光路における光学系とは、等価である。つまり、第2光路において、CCD32A、CCD32Bを利用して偏芯補正を行うことで、第1光路の光束が結像されるカメラ本体40のCCD42を用いて偏芯補正を用いたことと等しい調整を行なうことができる。
【0049】
図4は、図1のレンズ装置において偏芯補正を行なう手順を示すフローチャートである。
【0050】
先ず、レンズ装置10は、CPU20の制御によって、偏芯補正を行う場合には、図2に示すように画質評価用チャートCHをCCD32A、32Bのそれぞれで撮像し、チャート画像を取得する。このとき、CCD32Aで取得したチャート画像のうち、中心エリアと、4隅エリアとの計5つの画像を取得する(ステップS110)。そして、CPU20は、中心エリアの画像と、4隅エリアそれぞれの画像のコントラストの値を算出する。この例では、コントラストの値を評価値として用いることとする。
【0051】
その後、CPU20は、各エリアにおいて算出された評価値に基づいて、中心エリアの画像のコントラスト値と4隅エリアの各画像のコントラスト値とを比較する(ステップS112)。図5は、チャート画像の各エリアのコントラストを模式的に示す図である。図5では、一つのCCDで取得されたチャート画像を模式的に示しているが、この例ではCCD32A、CCD32Bそれぞれからチャート画像を取得し、2つのチャート画像それぞれにおいて、中心エリアの画像と他の各エリアの画像との比較を行なっている。
【0052】
図5では、左上のエリアの画像が最もコントラストが高く、中心のエリア、右上のエリア、左下のエリアそれぞれの画像が次いでコントラストが高く、右下のエリアの画像が最もコントラストが低い。図5では、中心のエリアの画像のコントラストに比べて、左上のエリアの画像のコントラストが高く、その差分が他のエリアよりも大きいため、左上エリアの画像の画質が良好であると判定して「◎」とした。一方で、右下エリアの画像のコントラストは、中心のエリアの画像のコントラストに比べて低いため、右下エリアの画像の画質が不良であると判定して「×」で示している。
【0053】
ここで、各エリアの画像の比較は、予め設定した閾値を基準に行なっても良い。閾値よりもコントラストの値が大きい場合には、「○」とし、閾値よりもコントラストの値が小さい場合には、「×」とすることができる。また、閾値よりもコントラストの値が大きく、その差分が一定値以上の場合に「◎」としても良い。
【0054】
なお、各エリアの画像を比較する方法は、上述のように閾値を用いる方法に限定されない。例えば、各エリアのコントラストの値のうち、コントラストの平均値を算出し、この平均値を基準に、各エリアの画像の画質を評価しても良い。
【0055】
CPU20は、上述のように各エリアの画像の画質を比較することによって、CCD32Aと、CCD32Bそれぞれの画像の画質が最も低いエリアを特定する(S114)。続いて、この画質の低いエリアの画像の評価値が高くなるように、CPU20は倒れ補正レンズ群34を駆動し、倒れ角を変更することで各エリアの画像がほぼ等しい画質となるように調整する(ステップS116)。
【0056】
図6は、チャート画像に基づいて倒れ補正レンズ群34の倒れ角を設定する方法を説明する図である。
【0057】
CCD32A、CCD32Bは、第2光路の結像位置において互いに共役となる位置関係で配置されているため、CCD32A、CCD32Bそれぞれから得られるチャート画像は、各エリアの評価値が対称性を示す。図6に示すように、CCD32Aの左上エリアの画像の評価値が最も高いが、CCD32Bでは、右下エリアの画像の評価値が最も高くなる。また、CD32Aの右下エリアの画像の評価値が最も低いが、CCD32Bでは、左上エリアの画像の評価値が最も低くなる。このように、CCD32A、CCD32Bそれぞれから得られるチャート画像は、各エリアの評価値の関係が互いに共役となる。レンズ装置10は、CCD32A、CCD32Bそれぞれから得られるチャート画像の対称性に基づき、CPU20の駆動制御によって、倒れ補正レンズ群34の倒れ角を設定する。
【0058】
ここで、倒れ補正レンズ群34の倒れ角を変化させるときの方向は、レンズ装置10の光学系の設計に応じて決定される。図6では、模式的に、倒れ補正レンズ群34を単一レンズとして表記して説明しているが、実際には、倒れ補正レンズ群34の被写体側及び像面側に他のレンズ群が配置されており、これら他のレンズ群のレンズ形状やその数に応じて、倒れ補正レンズ群34を傾斜させたときの画像がシフトする方向が変化する。このため、レンズ装置10の光学系の設計を考慮して倒れ補正レンズ群34の倒れ角をどの方向に移動させたときに画像がどの方向にシフトするか決定するため、偏芯補正の際にCPU20が光学系のその設計に合わせて、倒れ補正レンズ群34を所定の方向に駆動制御すれば良い。
【0059】
CPU20は、倒れ補正レンズ群34の倒れ角を変化させることによって、各エリアの画像のコントラストの値が閾値以上となった場合には、各エリアの画像の画質が均質となったと判断する。または、CPU20は、各エリアの画像のコントラストの最大値と最小値との差分が所定の範囲になったときに各エリアの画像の画質が均質となったと判断してもよい。または、CPU20は、各エリアの画像のコントラストの値が閾値以上であり、かつ、各エリアの画像のコントラストの最大値と最小値との差分が所定の範囲になったときに各エリアの画像の画質が均質となったと判断してもよい
【0060】
図4のフローチャートにおいて、各エリアの画像の画質が均質となるように調整した後、CPU20は、各エリアの画像の画質が均質に設定された状態における、フォーカスレンズ群FL、ズームレンズ群ZL、絞りI等の補正位置情報と、倒れ補正レンズ群34の補正位置情報をEEPROM28に書き込む(ステップS118)。補正位置情報は、光学系の各ポテンショメータFP、ZP、IP、34Pの出力値に基づいてCPU20によって決定される。こうして、レンズ装置20において偏芯補正の手順が終了する。
【0061】
次に、レンズ装置20をカメラ本体40に装着し、実際に撮影を行う場合の手順を説明する。
【0062】
レンズ装置20は、電源が起動されると、CPU20がEEPROM28から補正位置情報を読み出す(ステップS120)。
【0063】
続いて、CPU20は、読み出した補正位置情報に基づいて、各モータFM、ZM、IM、34Mを駆動する(ステップS122)。こうして、レンズ装置20は、撮影の可能な状態に設定される。
【0064】
本発明のレンズ装置10によれば、カメラ本体40に装着しなくても、レンズ装置単体で偏芯を調整することができる。また、レンズ装置10をカメラ本体40から取り外した状態でメンテナンスを行なう際にも、レンズ装置10単体で調芯補正を行なうことができ、使い勝手が良い。
【0065】
次に、レンズ装置10の構成の変形例を説明する。
【0066】
図7は、レンズ装置10の他の構成例を示している。図7のカメラシステム1は、基本的に、図1に示すものと同じである。以下では、図1の構成と相違している点を説明し、上述のレンズ装置10と共通する構成や部材については、説明を適宜簡略又は省略する。
【0067】
レンズ装置10は、焦点検出用として1つのCCD32を備えている。
【0068】
図8は、図7のレンズ装置10の光学系を示している。光学系において、フォーカスレンズ群FLと、ズームレンズ群ZLと、絞りIと、倒れ補正レンズ群34と、ビームスプリッタ31と、マスターレンズ群MLとが、被写体側から撮像面に向かって、この順に設けられている点で、上述したレンズ装置10と共通する。
【0069】
第2光路において、該ビームスプリッタ31によって反射された光を集光する集光レンズ33が設けられ、該集光レンズ33を透過する光束の結像位置にCCD32が設けられている。このCCD32は、偏芯補正に用いられる。
【0070】
図9は、図7のレンズ装置によって偏芯補正を行う手順を示すフローチャートである。図10は、CCD32から取得されるチャート画像に基づいて倒れ補正レンズ群34の倒れ角を設定する方法を説明する図である。
【0071】
先ず、レンズ装置10は、CPU20の制御によって、偏芯補正を行う場合には、図8に示すように画質評価用チャートCHをCCD32で撮像し、チャート画像を取得する。このとき、CCD32で取得したチャート画像のうち、中心エリアと、4隅エリアとの計5つの画像を取得する(ステップS130)。そして、CPU20は、中心エリアの画像と、4隅エリアそれぞれの画像のコントラストの値を算出する。この例では、コントラストの値を評価値として用いる。
【0072】
その後、CPU20は、各エリアにおいて算出された評価値に基づいて、中心エリアの画像と他の各エリアの画像との比較を行なう(ステップS132)。
【0073】
図10を参照すると、中心のエリアの画像が最もコントラストが高く、次いで、右上、右下、左下のエリアの画像がコントラストが高く、右上のエリアの画像が最もコントラストが低い。図10では、中心のエリアの画像のコントラストに比べて、左上のエリアの画像のコントラストが低く、その差分が所定の範囲外であるため、左上のエリアの画像の画質が不良であると判定して「×」で示している。一方、右上、右下、左下のエリアの画像のコントラストが、中心エリアの画像のコントラストよりも低いが、その差分が所定の範囲内であるため、右上、右下、左下のエリアの画像の画質は許容範囲であると判定して「○」とした。
【0074】
ここでは、各エリアの画像の比較は、既に説明したように、予め設定した閾値を基準に行なう。また、各エリアの画像を比較する方法は、上述のように閾値を用いる方法に限定されない。例えば、各エリアのコントラストの値のうち、コントラストの平均値を算出し、この平均値を基準に、各エリアの画像の画質を評価しても良い。
【0075】
CPU20は、上述のように各エリアの画像の画質を比較することによって、CCD32の画像の画質が最も低いエリアを特定する(S134)。続いて、この画質の低いエリアの画像の評価値が高くなるように、CPU20は倒れ補正レンズ群34を駆動し、倒れ角を変更することで各エリアの画像がほぼ等しい画質となるように調整する(ステップS136)。
【0076】
図9のフローチャートにおいて、各エリアの画像の画質が均質となるように調整した後、CPU20は、各エリアの画像の画質が均質に設定された状態における、フォーカスレンズ群FL、ズームレンズ群ZL、絞りI等の補正位置情報と、倒れ補正レンズ群34の補正位置情報をEEPROM28に書き込む(ステップS138)。補正位置情報は、光学系の各ポテンショメータFP、ZP、IP、34Pの出力値に基づいてCPU20によって決定される。こうして、レンズ装置20において偏芯補正の手順が終了する。
【0077】
次に、レンズ装置10をカメラ本体40に装着し、実際に撮影を行う場合の手順を説明する。
【0078】
レンズ装置10は、電源が起動されると、CPU20がEEPROM28から補正位置情報を読み出す(ステップS140)。
【0079】
続いて、CPU20は、読み出した補正位置情報に基づいて、各モータFM、ZM、IM、34Mを駆動する(ステップS142)。こうして、レンズ装置20は、撮影の可能な状態に設定される。
【0080】
本発明のレンズ装置10によれば、CCD32が一つ設けられていれば、カメラ本体40に装着しなくても、レンズ装置単体で偏芯を調整することができる。また、レンズ装置10をカメラ本体40から取り外した状態でメンテナンスを行なう際にも、レンズ装置10単体で調芯補正を行なうことができ、使い勝手が良い。
【0081】
上述した倒れ補正レンズ群は、光軸に対して傾斜するように駆動制御されるものに限定されず、後述するように光軸に対して平行移動するものであっても良い。
【0082】
次に、レンズ装置及びカメラシステムの他の構成例を説明する。
【0083】
図11は、カメラシステムの主要の構成を示すブロック図である。図12は、カメラシステムに用いられるレンズ装置の光学系を模式的に示す図である。
【0084】
レンズ装置10の光学系は、被写体の像をカメラ本体40の撮像素子42の撮像面に結ぶ撮影光学系である。光学系において、フォーカスレンズ群FLと、ズームレンズ群ZLと、絞りIと、偏芯補正レンズ群12と、倒れ補正レンズ群14と、マスターレンズ群MLとが、被写体側からこの順に設けられている。
【0085】
フォーカスレンズ群FL、ズームレンズ群ZLは、絞りI、マスターレンズ群MLは、上述したものと同じである。
【0086】
偏芯補正レンズ群12は、光軸方向に対して垂直な面(図12のX−Y平面に平行な面)に移動する。倒れ補正レンズ群14は、光軸方向に対して平行に(図12のZ方向)に移動する。偏芯補正レンズ群12は、撮像素子42の撮像面に結像される画像の中心位置を調整するために駆動制御される。倒れ補正レンズ群14は、撮像面に結像される画像全体に対して解像度等の光学性能を向上させるために駆動制御される。偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14を総称して補正レンズ群ともいう。
【0087】
レンズ装置10の制御系は、CPU20、EEPROM28、アンプFA、ZA、IA、HA、VA、14A、モータFM、ZM、IM、HM、VM、14M、ポテンショメータFP、ZP、IP、HP、VP、14Pを備える。
【0088】
また、レンズ装置10に外部機器として接続されるレンズ操作部50、カメラ本体40、カメラコントロールユニット(CCU)60、切出し操作部70、モニタ80もレンズシステム全体として制御系を構成する。
【0089】
切出し操作部70は、ジョイスティック等のマニュアル操作部を含み、このマニュアル操作部を操作することによって、モニタ80の画面に表示された画像の一部の領域を切出してなる切出し画面の位置の設定や変更を行なうことができる。
【0090】
このカメラシステム1は、予め可動レンズ群と補正レンズ群とのそれぞれの位置情報と光学性能とを関連付けたデータテーブルがEEPROM28に記憶されている。そして、レンズ装置10のCPU20は、EEPROM28からこのデータテーブルを読み出し、このデータテーブルに基づいて、切出し画像が高い光学性能になるように補正レンズ群を制御する。
【0091】
CPU20は、補正レンズ群を制御する際には、D/A変換器22を介して各アンプHA、VA、14Aに駆動信号を出力する。これにより、各アンプHA、VA、14Aに接続された各モータHM、VM、14Mがその駆動信号の値(電圧)に応じた回転速度で駆動される。
【0092】
各モータHM、VMは、偏芯補正レンズ群12に連結されている。モータHMは、偏芯補正レンズ群12を光軸に対して垂直な面におけるX方向に駆動し、モータVMは、偏芯補正レンズ群12を光軸に対して垂直な面におけるY方向に駆動する。モータ14Mは、倒れ補正レンズ群14に連結されており、倒れ補正レンズ群14を光軸に対して平行(Z方向)に駆動する。
【0093】
各ポテンショメータHP、VP、14Pは、補正レンズ群の位置取得手段として設置されている。ポテンショメータHPからは、偏芯補正レンズ群12のX方向の位置に対応した値(絶対位置を示す値)の電圧信号が出力される。ポテンショメータVPからは、偏芯補正レンズ群12のY方向の位置に対応した値(絶対位置を示す値)の電圧信号が出力される。ポテンショメータ14Pからは、倒れ補正レンズ群14の光軸方向(Z方向)の位置に対応した値(絶対位置を示す値)の電圧信号が出力される。各ポテンショメータHP、VP、14Pから出力された電圧信号がA/D変換器24を介してCPU20に与えられる。
【0094】
CPU20は、ポテンショメータHP、VP、14Pによって検出された偏芯補正レンズ群12、倒れ補正レンズ群14のレンズ位置と、可動レンズ群のレンズ位置と、データテーブルを参照しながら、各アンプHA、VA、14Aに出力する駆動信号の値を変更することによって偏芯補正レンズ群12、倒れ補正レンズ群14の位置を制御する。
【0095】
次に、データテーブルのデータ構造について説明する。
【0096】
図13は、データテーブルのデータ構造を示す図である。図13(a)に示すテーブルは、可動レンズ群及び絞りそれぞれの位置と、偏芯補正レンズ群12の位置と、そのときの画像の解像度とを関連付けたものである。図13(b)に示すテーブルは、可動レンズ群及び絞りそれぞれの位置と、倒れ補正レンズ群14の位置と、そのときの画像の解像度とを関連付けたものである。
【0097】
フォーカスレンズ群FLの位置情報を示すパラメータ(「a01」、「a02」、「a03」・・・)には、フォーカスレンズ群FLの絶対位置を示す値が与えられている。ズームレンズ群ZLの位置情報を示すパラメータ(「b01」、「b02」、「b03」・・・)には、ズームレンズ群ZLの絶対位置を示す値が与えられている。絞りの絞り位置を示すパラメータ(「c01」、「c02」、「c03」・・・)には絞りIの絞り位置を示す値が与えられている。上述の各パラメータには、例えば「0」、「−1」、「+1」等の数値が与えられている。
【0098】
偏芯補正レンズ群12の位置情報を示すパラメータ(「d01」、「d02」、「d03」・・・)には、偏芯補正レンズ群12の光軸に対して垂直な面における位置を示す値が与えられている。これら値は、偏芯補正レンズ群12のX方向位置とY方向位置を示す座標である。
【0099】
倒れ補正レンズ群14の位置情報を示すパラメータ(「e01」「e02」「e03」・・・)には、倒れ補正レンズ群14の光軸方向における位置を示す値が与えられている。これら値は、光軸方向の基準位置を「0」として、Z方向の位置を示す「−1」、「+1」等の数値である。
【0100】
解像度は、対応する可動レンズ群及び補正レンズ群のパラメータに基づいて撮像される画像の解像度を示す値である。解像度の値が高いほど光学性能が高く、解像度の低いほど光学性能が低い。
【0101】
上述したデータテーブルでは、光学性能を示す指標として解像度を用いたが、これに限定されず、MTF(Modulation Transfer Function)であっても良い。
【0102】
また、上述したデータテーブルは、可動レンズ群及び絞りの位置と偏芯補正レンズ群12の位置とを関連付けたテーブルと、可動レンズ群及び絞りの位置と倒れ補正レンズ群14の位置とを関連付けたテーブルを別々にしたデータ構造とした。しかし、データテーブルのデータ構造はこれに限定されず、可動レンズ群及び絞りの位置と偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14それぞれの位置とを関連付けて1つのテーブルとしたデータ構造であっても良い。
【0103】
次に、全体画像から切出した切出し画像の画質を調整することの意義を説明する。
【0104】
図14は、全体画像と切出し画像を示す図である。
【0105】
トリミングや電子ズームでは、カメラ本体40のCCD42で取得した画像情報に基づき生成された画像を全体画像としたとき、全体画像の一部の領域の画像を切出し、この切出し画像を全体画像の一部に表示させる処理や、この切出し画像のみを拡大してモニタ80の画面全体に表示させる処理が行なわれる。このとき、全体画像の画質が良くても切出し画像の画質が十分に良くない場合には、これらの処理を実行することでユーザによる視認性が低下してしまう。一般に、撮像レンズを含む光学系では、全体画像の中央の光学性能が高く、周辺に行くほど光学性能が中央に比べて低くなる。すると、全体画像において周辺部分で画像を切出した場合には、切出し画像の画質が、全体画像の画質より低くなる。上述のトリミングや電子ズームのような画像処理においては、全体画像の画質よりもこの切出し画像の画質を高くすることが重要である。
【0106】
そこで、このカメラシステム1は、撮影の際に、偏芯補正レンズ群12を駆動制御することによって切出し画像の中心Cの画質が高い光学性能となるように制御し、また、倒れ補正レンズ群14を駆動制御することによって切出し画像全体の画質が高い光学性能となるように制御する。
【0107】
なお、偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14を駆動する方向は、フォーカスレンズ群FLやズームレンズ群ZLの可動レンズ群を含む、各レンズの構成によって一義的に決まる。データテーブルを作成する際に、実際に搭載される光学系のレンズの構成に合わせて、偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の駆動方向及び駆動量を実測的に求め、求められた値を可動レンズ群及び絞りの位置とそのときの光学性能(ここでは解像度)とを関連付けたデータを作成すれば良い。
【0108】
次に、切出し画像の画質を調整する手順を説明する。
【0109】
図15は、図1のカメラシステムにおいて、補正レンズ群によって切出し画像の画質を調整する手順を示すフローチャートである。以下の説明では、図11のカメラシステム1の構成を適宜参照する。
【0110】
最初に、可動レンズ群及び絞りと、補正レンズ群とを所定の初期位置に設定する。
【0111】
フォーカス操作やズーム操作を実行する(ステップS10)。ここでは、補正レンズ群を駆動する以外の操作が適宜実行される。
【0112】
続いて、カメラ本体40で取得した全体画像から画像の切出しを実行する操作が行なわれたか否かを検出する(ステップS12)。切出しの操作の有無は、切出し操作部70からの入力信号に基づいて、カメラ本体40のカメラCPU44が判別する。切出しの操作が検出された場合には、後述するステップに示すように、補正レンズ群の制御による切出し画像の画質を調整するフローを実行する。切出しの操作が検出されなかった場合には、補正レンズ群の制御による切出し画像の画質を調整するフローを実行せずに、ステップS10におけるレンズ装置10の状態を維持する。
【0113】
切出し画像の画質を調整するフローでは、レンズ装置10は、CPU20がカメラ本体40から切出し画像の対角座標を読み出す(ステップS14)。続いて、CPU20は、対角座標に基づいて切出し画像の中心座標を算出する(ステップS16)。こうして、CPU20は、全体画像において切出し画像の位置を特定することができる。
【0114】
続いて、CPU20は、ポテンショメータZPの出力値を読み込むことによって現時点のズームレンズ群ZLの位置を検出し(ステップS18)、ポテンショメータFPの出力値を読み込むことによって現時点のフォーカスレンズ群FLの位置を検出し(ステップS20)、ポテンショメータIPの出力値を読み込むことによって現時点の絞りIの絞り位置を検出する(ステップS22)。ステップS18、S20、S22を実行する順番はこの順に限られずに適宜変更しても良く、または、同時に実行されても良い。
【0115】
その後、CPU20は、記憶部28に予め記憶されているデータテーブルを参照し、フォーカスレンズ群FL、ズームレンズ群ZL、絞りIの位置に基づいて、切出し画像の中心の光学性能(ここでは解像度)が最大となる偏芯補正レンズ群12の位置を求める(ステップS24)。そして、CPU20は、求めた偏芯補正レンズ群12の位置に応じて、偏芯補正レンズ群12を駆動制御する(ステップS26)。
【0116】
また、CPU20は、記憶部28に予め記憶されているデータテーブルを参照し、フォーカスレンズ群FL、ズームレンズ群ZL、絞りIの位置に基づいて、切出し画像全体の光学性能(ここでは解像度)が最大となる倒れ補正レンズ群14の位置を求める(ステップS28)。そして、CPU20は、求めた倒れ補正レンズ群14の位置に応じて、倒れ補正レンズ群14を駆動制御する(ステップS30)。
【0117】
こうして、カメラシステム1は、レンズ装置10の偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14を駆動制御することによって、切出し画像の画質を向上することができる。
【0118】
次に、図16に基づいて、カメラシステムの他の構成例を説明する。このカメラシステムは、全体画像において顔認識によって被写体人物像に顔枠を設定した場合に、上述した補正レンズ群を駆動制御することによって顔枠内の画像の画質を調整することができる。
【0119】
図16のカメラシステム1は、基本的に、図11に示すものと同じである。以下では、図11の構成と相違している点を説明する。
【0120】
レンズ装置10にAFユニット29が設けられている。AFユニット29は、SCI26によってCPU20に接続されている。
【0121】
また、カメラシステム1は、顔検出部52を備えている。顔検出部52は、カメラCPU44によって制御される。なお、カメラシステム1は、切出し操作部を備えていない。
【0122】
AFユニット29は、図示を省略するが、AF処理部、AF用撮像回路等から構成されている。AF用撮像回路はAF処理用の映像信号を取得するためにレンズ装置10に配置されており、撮像素子CCD等の撮像素子(AF用撮像素子という)やAF用撮像素子の出力信号を所定形式の映像信号として出力する処理回路等を備えている。なお、AF用撮像回路から出力される映像信号は輝度信号である。
【0123】
AF用撮像素子の撮像面には、光学系の光路上に配置されたハーフミラー等によってカメラ本体40の撮像素子に入射する被写体光から分岐された被写体光が結像するようになっている。AF用撮像素子の撮像エリアに対する撮影範囲及び被写体距離(ピントが合う被写体の距離)は、カメラ本体40の撮像素子の撮像エリアに対する撮影範囲及び被写体距離に一致するように構成されており、AF用撮像素子により取り込まれる被写体画像は、カメラ本体40の撮像素子により取り込まれる被写体画像と一致している。尚、両者の撮影範囲に関しては完全に一致している必要はなく、例えば、AF用撮像素子の撮影範囲の方がカメラ本体40の撮像素子の撮影範囲を包含する大きな範囲であってもよい。
【0124】
AF処理部は、AF用撮像回路から映像信号を取得し、その映像信号に基づいて被写体画像のコントラストの高低を示す焦点評価値を算出する。例えば、AF用撮像素子から得られた映像信号の高域周波数成分の信号をハイパスフィルタによって抽出した後、その高域周波数成分の信号のうちAFの対象とするAFエリアに対応する範囲の信号を1画面(1フレーム)分ずつ積算する。このようにして1画面分ごとに得られる積算値は被写体画像のコントラストの高低を示し、焦点評価値としてCPUに与えられる。
【0125】
CPU20は、AFエリアの範囲(輪郭)を示すAF枠の情報(AF枠情報)を、カメラCPU44を介して取得し、そのAF枠情報により指定されたAF枠内の範囲をAFエリアとしてAF処理部に指定する。そして、そのAFエリア内の画像(映像信号)により求められる焦点評価値をAF処理部から取得する。
【0126】
このようにしてAF用撮像回路から1画面分の映像信号が取得されるごとに(AF処理部で焦点評価値が求められるごとに)AF処理部から焦点評価値を取得すると共に、取得した焦点評価値が最大(極大)、即ち、AFエリアの被写体画像のコントラストが最大となるようにフォーカスレンズ群FLを制御する。例えば、焦点評価値に基づくフォーカスレンズ群FLの制御方式として山登り方式が一般的に知られており、フォーカスレンズ群FLを焦点評価値が増加する方向に移動させて行き、焦点評価値が減少し始める点を検出すると、その位置にフォーカスレンズ群FLを設定する。これにより、AF枠内の被写体に自動でピントが合わせられる。
【0127】
顔検出部52は、撮像された被写体画像中の被写体人物について顔認証を行い、その被写体人物が例えばオートフォーカスをかけて追尾するように予め設定されていた被写体(フォーカス対象)であると認定された場合には、AFユニット29を通じてレンズ装置10をオートフォーカス制御するものである。
【0128】
また、顔検出部52によって顔認証を行なった結果、特定の人物を認定した場合には、カメラCPU44は、モニタ80に被写体画像中の被写体人物に合わせて顔枠84を、CCU60を通じて表示させる。
【0129】
このカメラシステム1は、予め可動レンズ群と補正レンズ群とのそれぞれの位置情報と光学性能とを関連付けたデータテーブルがEEPROM28に記憶されている。そして、レンズ装置10のCPU20は、EEPROM28からこのデータテーブルを読み出し、このデータテーブルに基づいて、顔枠84内の画像が高い光学性能になるように補正レンズ群を制御する。
【0130】
なお、データテーブルのデータ構造は、上述したものと同じである。
【0131】
次に、全体画像において顔枠84内の画像の画質を調整することの意義を説明する。
【0132】
図17は、全体画像と顔枠内の画像を示す図である。
【0133】
顔枠84内の画像は、撮影者が撮影対象としているため、この顔枠84内の画像を拡大しても似た80に表示させる処理を行なうことが多い。このとき、全体画像の画質が良くても顔枠84内の画像の画質が十分に良くない場合には、これらの処理を実行することでユーザによる視認性が低下してしまう。一般に、撮像レンズを含む光学系では、全体画像の中央の光学性能が高く、周辺に行くほど光学性能が中央に比べて低くなる。すると、全体画像において周辺部分で顔枠84が設定された場合には、顔枠84内の画像の画質が、全体画像の画質より低くなる。顔認識においては、全体画像の画質よりもこの顔枠84内の画像の画質を高くすることが重要である場合が考えられる。
【0134】
そこで、このカメラシステム1は、撮影の際に、偏芯補正レンズ群12を駆動制御することによって顔枠84内の画像の中心Cの画質が高い光学性能となるように制御し、また、倒れ補正レンズ群14を駆動制御することによって顔枠84内の画像全体の画質が高い光学性能となるように制御する。
【0135】
次に、顔枠内の画像の画質を調整する手順を説明する。
【0136】
図18は、図16のカメラシステムにおいて、補正レンズ群によって顔枠内の画像の画質を調整する手順を示すフローチャートである。以下の説明では、図16のカメラシステム1の構成を適宜参照する。
【0137】
最初に、可動レンズ群及び絞りと、補正レンズ群とを所定の初期位置に設定する。
【0138】
フォーカス操作やズーム操作を実行する(ステップS40)。ここでは、補正レンズ群を駆動する操作以外の操作が適宜実行される。
【0139】
続いて、顔認識によって設定された顔枠内の画像を補正するモードになっているか否か検出する(ステップS42)。顔枠内の画像を補正するモードの設定は、例えば、レンズ操作部50やカメラ本体40においってオン、オフを選択可能である。また、顔枠内の画像を補正するモードの検出は、カメラCPU44が判別する。顔枠内の画像を補正するモードがオンの場合には、後述するステップに示すように、補正レンズ群の制御による顔枠84内の画像の画質を調整するフローを実行する。顔枠内の画像を補正するモードがオフの場合には、補正レンズ群の制御による顔枠84内の画像の画質を調整するフローを実行せずに、ステップS40におけるレンズ装置10の撮影状態を維持する。
【0140】
顔枠84内の画像の画質を調整するフローでは、レンズ装置10は、CPU20がカメラ本体40から全体画像における顔枠84の対角座標を読み出す(ステップS44)。続いて、CPU20は、対角座標に基づいて顔枠84内の画像の中心座標を算出する(ステップS46)。こうして、CPU20は、全体画像において顔枠84内の画像の位置を特定することができる。
【0141】
続いて、CPU20は、ポテンショメータZPの出力値を読み込むことによって現時点のズームレンズ群ZLの位置を検出し(ステップS48)、ポテンショメータFPの出力値を読み込むことによって現時点のフォーカスレンズ群FLの位置を検出し(ステップS50)、ポテンショメータIPの出力値を読み込むことによって現時点の絞りIの絞り位置を検出する(ステップS52)。ステップS48、S50、S52を実行する順番はこの順に限られずに適宜変更しても良く、または、同時に実行されても良い。
【0142】
その後、CPU20は、記憶部28に予め記憶されているデータテーブルを参照し、フォーカスレンズ群FL、ズームレンズ群ZL、絞りIの位置に基づいて、顔枠84内の画像の中心の光学性能(ここでは解像度)が最大となる偏芯補正レンズ群12の位置を求める(ステップS54)。そして、CPU20は、求めた偏芯補正レンズ群12の位置に応じて、偏芯補正レンズ群12を駆動制御する(ステップS56)。
【0143】
また、CPU20は、記憶部28に予め記憶されているデータテーブルを参照し、フォーカスレンズ群FL、ズームレンズ群ZL、絞りIの位置に基づいて、顔枠84内の画像全体の光学性能(ここでは解像度)が最大となる倒れ補正レンズ群14の位置を求める(ステップS58)。そして、CPU20は、求めた倒れ補正レンズ群14の位置に応じて、倒れ補正レンズ群14を駆動制御する(ステップS60)。
【0144】
こうして、カメラシステム1は、レンズ装置10の偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14を駆動制御することによって、顔枠84内の画像の画質を向上することができる。
【0145】
次に、図19に基づいて、カメラシステムの他の構成例を説明する。このカメラシステム1は、全体画像を複数のエリアに分割し、この複数のエリアのうちコントラストが最大となるエリアを求め、上述した補正レンズ群を駆動制御することによって、コントラストが最大となるエリアの画像の画質を調整することができる。
【0146】
図19のカメラシステム1は、基本的に、図11に示すものと同じである。以下では、図11の構成と相違している点を説明する。
【0147】
カメラシステム1は、コントラスト検出部54を備えている。コントラスト検出部54は、カメラCPU44によって制御される。なお、カメラシステム1は、切出し操作部を備えていない。
【0148】
また、カメラシステム1は、AFユニット29を備えている。AFユニット29は、既に説明したものと同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0149】
図20は、全体画像、及び該全体画像を分割した複数のエリアのうちコントラストが最も大きいエリアの画像を示す図である。
【0150】
コントラスト検出部54は、図示しない画像処理部を備えており、カメラ本体40から撮像によって得られた画像を複数のエリアに分割し、複数のエリアそれぞれのコントラストの値を算出する。また、コントラスト検出部54は、分割された複数のエリアごとに座標情報を生成し、各エリアと座標情報とコントラストの値とを関連付けた情報を管理する。
【0151】
次に、全体画像を分割した複数のエリアのうちコントラストが最も大きいエリアの画像の画質を調整することの意義を説明する。
【0152】
例えば、オートフォーカスでは、全体画像のうち、撮影者が撮影したい被写体像に焦点を合わせるため、被写体増において光学性能が最大となることが望ましい。被写体像に焦点をあわせると、全体画像において被写体像を含む領域のコントラストが高くなる傾向がある。このカメラシステム1は、撮影の際に、偏芯補正レンズ群12を駆動制御することによって、コントラストが最大となるエリアの画像の中心Cの画質が高い光学性能となるように制御し、また、倒れ補正レンズ群14を駆動制御することによって上記エリアの画像全体の画質が高い光学性能となるように制御する。
【0153】
次に、コントラストが最大となるエリアの画像の画質を調整する手順を説明する。
【0154】
図21は、図19のカメラシステムにおいて、補正レンズ群により、コントラストが最大となるエリアの画像の画質を調整する手順を示すフローチャートである。以下の説明では、図19のカメラシステム1の構成を適宜参照する。
【0155】
最初に、可動レンズ群及び絞りと、補正レンズ群とを所定の初期位置に設定する。
【0156】
フォーカス操作やズーム操作を実行する(ステップS70)。ここでは、補正レンズ群を駆動する以外の操作が適宜実行される。
【0157】
続いて、画像を分割してコントラストに基づく画質の調整を行うモードに設定されているか否か検出する(ステップS72)。このモードの設定は、例えば、レンズ操作部50やカメラ本体40においってオン、オフを選択可能である。また、このモードの検出は、カメラCPU44が判別する。このモードがオンの場合には、後述するステップに示すように、画像を分割してコントラストに基づいて画質を調整するフローを実行する。モードがオフの場合には、画像を分割してコントラストに基づいて画質を調整するフローを実行せずに、ステップS70におけるレンズ装置10の撮影状態を維持する。
【0158】
画像を分割してコントラストに基づいて画質を調整するフローでは、カメラCPU40が、コントラスト検出部を制御し、コントラスト検出部54が、カメラ本体40で取得された画像を複数に分割し、分割された複数のエリアごとにコントラストの値を算出する。そして、コントラスト検出部54は、複数のエリアのうちコントラストの値が最大となるエリアを特定する。レンズ装置10は、コントラスト検出部54から、コントラストの値が最大となるエリアの座標情報を、カメラCPU44を通じて受信する(ステップS74)。続いて、CPU20は、座標情報に基づいてコントラストの値が最大となるエリアの中心座標を算出する(ステップS76)。
【0159】
続いて、CPU20は、ポテンショメータZPの出力値を読み込むことによって現時点のズームレンズ群ZLの位置を検出し(ステップS78)、ポテンショメータFPの出力値を読み込むことによって現時点のフォーカスレンズ群FLの位置を検出し(ステップS80)、ポテンショメータIPの出力値を読み込むことによって現時点の絞りIの絞り位置を検出する(ステップS82)。ステップS78、S80、S82を実行する順番はこの順に限られずに適宜変更しても良く、または、同時に実行されても良い。
【0160】
その後、CPU20は、記憶部28に予め記憶されているデータテーブルを参照し、フォーカスレンズ群FL、ズームレンズ群ZL、絞りIの位置に基づいて、コントラストの値が最大となるエリアの画像の中心の光学性能(ここでは解像度)が最大となる偏芯補正レンズ群12の位置を求める(ステップS84)。そして、CPU20は、求めた偏芯補正レンズ群12の位置に応じて、偏芯補正レンズ群12を駆動制御する(ステップS86)。
【0161】
また、CPU20は、記憶部28に予め記憶されているデータテーブルを参照し、フォーカスレンズ群FL、ズームレンズ群ZL、絞りIの位置に基づいて、コントラストの値が最大となるエリアの画像全体の光学性能(ここでは解像度)が最大となる倒れ補正レンズ群14の位置を求める(ステップS88)。そして、CPU20は、求めた倒れ補正レンズ群14の位置に応じて、倒れ補正レンズ群14を駆動制御する(ステップS90)。
【0162】
こうして、カメラシステム1は、レンズ装置10の偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14を駆動制御することによって、コントラストの値が最大となるエリアの画像の画質を向上することができる。
【0163】
上述の光学性能が最大となるように補正する例では、解像度又はMTFを例示したが、これに限定されない。例えば、以下に示すように解像度又はMTF以外の特性を代用して補正レンズ群を制御しても良い。
【0164】
(解像度又はMTF以外の特性の例1)
画像のコントラスト評価値を測定し、コントラスト評価値が最大となるように補正レンズ群を駆動する。この場合には、データテーブルには、予め可動レンズ群の位置と、補正レンズ群の位置と、コントラスト評価値とを関連付けた情報が含まれていれば良い。
【0165】
(解像度又はMTF以外の特性の例2)
画像における所定のエリア内の高輝度部分の面積を測定し、面積が最小となるようにレンズを駆動する。
【0166】
(解像度又はMTF以外の特性の例3)
画像を複数の領域に分割して、最も輝度値が高くなる領域を検出し、最も高輝度な領域の輝度が、画面において、最大の輝度値となるようにレンズを駆動する。
【0167】
(解像度又はMTF以外の特性の例4)
画像の被写体像の輪郭を画像解析し、輪郭の境界が最も細くなるようにレンズを駆動する。
【0168】
(解像度又はMTF以外の特性の例5)
画像の形状を画像解析し、形状の解析結果が(何の画像かによって個別の)所定の画像解析値に最も近くなるように、レンズを駆動する。(例えば画像が顔であると判断すれば、顔の解析値に一致するようにレンズを動かすことで、最も顔らしく見えるようにレンズを制御する。
【0169】
(解像度又はMTF以外の特性の例6)
その他の評価値を使い、光学性能を表す様々なパラメータの値(コントラスト値やMTFに置換できる値)が最大となるようにレンズを制御する
【0170】
(解像度又はMTF以外の特性の例7)
その他の評価値を使い、エリア内を細分化した区画の光学性能を表す様々なパラメータの値(コントラスト値やMTFに置換できる値)が最大となるようにレンズを制御する。
【0171】
以上、撮影条件に基づいて補正レンズ群(偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14)を駆動制御して画質を調整する例を説明したが、補正レンズ群の移動によって、結像される像の中心が変位する場合がある。以下に、像中心の変位を補正するように構成されたレンズ装置について説明する。
【0172】
図22は、本発明の実施形態を説明するためのカメラシステムの他の例の主要な構成を示すブロック図であり、図23は図22のカメラシステムの光学系を模式的に示す図である。なお、図11に示すカメラシステムと共通する要素には、共通の符号を付することにより説明を省略する。
【0173】
カメラシステム101は、レンズ装置110と、カメラ本体40とを備え、レンズ装置110は、偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14からなる補正レンズ群の移動に伴う像中心の変位を補正する第2補正レンズ群111を備えており、本例においては、この第2補正レンズ群111は、手ぶれ補正レンズ群として構成されている。
【0174】
手ぶれ補正レンズ群111は、光学系の光軸に対して垂直な面(図23のX−Y平面に平行な面)内において移動可能に設けられており、レンズ装置110は、手ぶれ補正レンズ群111を水平方向(図23のX方向)に駆動するモータHM2,VM2、これらのモータHM2,VM2に駆動信号を入力するアンプHA2,VA2、手ぶれ補正レンズ群111の位置を取得するためのポテンショメータHP2,VP2、及びテブレを検出するセンサ(図示せず)を備えている。
【0175】
CPU20は、手ぶれ補正レンズ群を制御する際には、D/A変換器22を介して各アンプHA2,VA2に駆動信号を出力する。これにより、各アンプHA2,VA2に接続された各モータHM2,VM2がその駆動信号の値(電圧)に応じた回転速度で駆動される。
【0176】
モータHM2は、手ぶれ補正レンズ群111を光軸に対して垂直な面におけるX方向に駆動し、モータVM2は、手ぶれ補正レンズ群111を光軸に対して垂直な面におけるY方向に駆動する。
【0177】
ポテンショメータHP2からは、手ぶれ補正レンズ群111のX方向の位置に対応した値(絶対位置を示す値)の電圧信号が出力される。ポテンショメータVP2からは、手ぶれ補正レンズ群111のY方向の位置に対応した値(絶対位置を示す値)の電圧信号が出力される。ポテンショメータHP2,VP2の各々から出力された電圧信号はA/D変換器24を介してCPU20に与えられ、手ぶれ補正レンズ群111が目標位置となるようにCPU20によってフィードバック制御される。
【0178】
手ぶれ補正レンズ群111の目標位置は、補正レンズ群の移動に伴う像中心の変位を相殺するように設定され、予め補正レンズ群(偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14)の位置と関連付けられたデータテーブルとしてEEPROM28に記憶されている。CPU20は、このデータテーブルを参照して、補正レンズ群(偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14)の位置に応じた手ぶれ補正レンズ群111の目標位置を決定し、手ぶれ補正レンズ群111が目標位置となるように上記のフィードバック制御を行う。
【0179】
次に、データテーブルのデータ構造について説明する。
【0180】
図24は、データテーブルのデータ構造を示す図である。
【0181】
偏芯補正レンズ群12の位置情報を示すパラメータ(「d01」、「d02」、「d03」・・・)には、偏芯補正レンズ群12の絶対位置を示す値が与えられている。倒れ補正レンズ群14の位置情報を示すパラメータ(「e01」、「e02」、「e03」・・・)には、倒れ補正レンズ群14の絶対位置を示す値が与えられている。
【0182】
手ぶれ補正レンズ群111の位置情報を示すパラメータ(「f01」、「f02」、「f03」・・・)には、手ぶれ補正レンズ群111の光軸に対して垂直な面における位置を示す値が与えられている。これら値は、手ぶれ補正レンズ群111のX方向位置とY方向位置を示す座標である。
【0183】
図25は、手ぶれ補正レンズ群111を駆動して像中心の変位を補正する手順を示すフローチャートである。以下の説明では、図22のカメラシステム101の構成を適宜参照する。
【0184】
最初に、可動レンズ群及び絞りと、補正レンズ群とを所定の初期位置に設定する。
【0185】
フォーカス操作やズーム操作を実行する(ステップS101)。ここでは、補正レンズ群及び手ぶれ補正レンズ群を駆動する以外の操作が適宜実行される。
【0186】
続いて、CPU20は、ポテンショメータZPの出力値を読み込むことによって現時点のズームレンズ群ZLの位置を検出し(ステップS102)、ポテンショメータFPの出力値を読み込むことによって現時点のフォーカスレンズ群FLの位置を検出し(ステップS103)、ポテンショメータIPの出力値を読み込むことによって現時点の絞りIの絞り位置を検出する(ステップS104)。ステップS102、S103、S104を実行する順番はこの順に限られずに適宜変更しても良く、または、同時に実行されても良い。
【0187】
続いて、CPU20は、EEPROM28に予め記憶されているズームレンズ群ZL及びフォーカスレンズ群FL並びに絞りIの位置と偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の位置とを関連付けたデータテーブル(図13参照)を参照し、検出されたフォーカスレンズ群FL、ズームレンズ群ZL、絞りIの位置に基づいて、偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の位置を求める(ステップS105)。
【0188】
続いて、CPU20は、EEPROM28に予め記憶されている偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の位置と手ぶれ補正レンズ群111の位置とを関連付けたデータテーブルを参照し、求めた偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の位置に基づいて、手ぶれ補正レンズ群111の位置を求める(ステップS106)。
【0189】
そして、CPU20は、求めた偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の位置に応じて、偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14を駆動制御し(ステップS107)、求めた手ぶれ補正レンズ群111の位置に応じて、手ぶれ補正レンズ群111を駆動制御する(ステップS108)。
【0190】
なお、ステップS105、S106、S107、S108を実行する順番は上記の順に限られず、偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の位置を求め(ステップS105)、求めた偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の位置基づいて偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14を駆動制御し(ステップS107)、その後に、手ぶれ補正レンズ群111の位置を求め(ステップS106)、求めた手ぶれ補正レンズ群111の位置に応じて、手ぶれ補正レンズ群111を駆動制御する(ステップS108)ように実行されても良い。
【0191】
以上の手順により、偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の移動によって、光学系の光学性能が撮影条件に応じて調整され、さらに、手ぶれ補正レンズ群111の移動によって、偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の移動に伴う像中心の変位が補正される。
【0192】
手ぶれ補正レンズ群111による手ぶれ補正は、上述した像中心の変位を補正する手順によって定められた手ぶれ補正レンズ群111の位置を中心にして、手ぶれを検出するセンサによって検出される手ぶれに基づいて、手ぶれ補正レンズ群111を適宜移動させることによってなされる。
【0193】
図26は、手ぶれ補正レンズ群111を駆動して像中心の変位を補正する手順の他の例を示すフローチャートである。
【0194】
図25に示す例においては、偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の位置と手ぶれ補正レンズ群111の位置とを関連付けたデータテーブルを参照して手ぶれ補正レンズ群111の位置を求めるに際し、フォーカスレンズ群FL、ズームレンズ群ZL、絞りIの位置に基づいて求めた偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の位置が用いられているが、図26に示す例においては、ポテンショメータHP,VP,14Pによって検出された偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の位置が用いられる。
【0195】
CPU20は、EEPROM28に予め記憶されている偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の位置と手ぶれ補正レンズ群111の位置とを関連付けたデータテーブルを参照し、検出されたフォーカスレンズ群FL、ズームレンズ群ZL、絞りIの位置に基づいて、偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14を駆動制御する(ステップS107)。
【0196】
偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の移動が完了した後、CPU20は、ポテンショメータHP及びVPの出力値を読み込むことによって現時点の偏芯補正レンズ群12の位置を検出し、ポテンショメータ14Pの出力値を読み込むことによって現時点の倒れ補正レンズ群14の位置を検出する(ステップS109)。
【0197】
続いて、CPU20は、EEPROM28に予め記憶されている偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の位置と手ぶれ補正レンズ群111の位置とを関連付けたデータテーブルを参照し、検出された偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の位置に基づいて、手ぶれ補正レンズ群111の位置を求め(ステップS110)、求めた手ぶれ補正レンズ群111の位置に応じて、手ぶれ補正レンズ群111を駆動制御する(ステップS111)。
【0198】
このように、偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の位置と手ぶれ補正レンズ群111の位置とを関連付けたデータテーブルを参照して手ぶれ補正レンズ群111の位置を求めるに際し、偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の実際の位置を検出して、これらのレンズ群12,14の検出された位置情報を用いることにより、これらのレンズ群12,14の駆動制御における制御誤差を排し、より正確に像中心の変位を補正することができる。
【0199】
以上の例は、偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の移動に伴う像中心の変位を、手ぶれ補正レンズ群111を用いて補正するものであるが、手ぶれ補正レンズ群111とは別に、光軸に対して垂直な面内において移動可能に設けられるレンズ群を用いて補正するように構成することもできる。
【0200】
また、ズームレンズ群ZL及びフォーカスレンズ群FL並びに絞りIの位置と偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の位置とを関連付けたデータテーブル、及び偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14の位置と手ぶれ補正レンズ群111の位置とを関連付けたデータテーブルが、いずれもレンズ装置110のEEPROM28に記憶され、また、レンズ装置110のCPU20によって、これらのデータテーブルを参照して、偏芯補正レンズ群12及び倒れ補正レンズ群14並びに手ぶれ補正レンズ群111の位置を求め、これらのレンズ群の駆動を制御するものとして説明したが、上記のデータテーブルの記憶及びレンズ群の駆動の制御をカメラ本体40において行うように構成することもできる。
【0201】
図27は、本発明の実施形態を説明するためのカメラシステムの他の例の主要な構成を示すブロック図であり、図28は図27のカメラシステムの光学系を模式的に示す図である。なお、図11に示すカメラシステム1と共通する要素には、共通の符号を付することにより説明を省略する。
【0202】
図27に示すカメラシステム201のレンズ装置210において、補正レンズ群は、光軸に対して垂直な面(図28のX−Y平面に平行な面)内において移動される偏芯補正レンズ群12によって構成されており、図11に示すカメラシステムのレンズ装置10において偏芯補正レンズ群12と共に補正レンズ群を構成する倒れ補正レンズ群14は省略されている。
【0203】
本カメラシステム201においては、可動レンズ群や絞りの位置などの撮影条件との関係において偏芯補正レンズ群12を駆動制御して画質を調整する調芯モードと、撮影条件によらず偏芯補正レンズ群12を所定の位置に保持する非調芯モードとを備えており、レンズ操作部50又はカメラ本体40にて調芯モードと非調芯モードとを選択可能に構成されている。
【0204】
レンズ装置210のEEPROM28には、予め撮影条件と偏芯補正レンズ群12の位置情報とを関連付けたデータテーブル(例えば図13参照)が記憶されている。また、EEPROM28には、レンズ装置210の組み立て時において、CCD42の各エリアにおける画質が均質となるように光学性能が調整された際の偏芯補正レンズ群12の初期位置情報が記憶されている。
【0205】
調芯モードが選択されている場合に、CPU20は、EEPROM28に記憶されたデータテーブルに基づき、偏芯補正レンズ群12を移動させるモータHM,VMの駆動制御を行う。非調芯モードが選択されている場合に、CPU20は、EEPROM28に記憶された初期位置情報に基づき、偏芯補正レンズ群12を移動させるモータHM,VMの駆動制御を行う。
【0206】
レンズ装置210には、偏芯補正レンズ群12を保持する保持部が設けられている。保持部は、偏芯補正レンズ群12を支持するレンズ枠12aに機械的に係合して、CPU20による駆動制御の下でモータHM及びVMによって移動された偏芯補正レンズ群12を、その位置に保持する。
【0207】
図29は、保持部の一例の構成を示す。
【0208】
図29に示す保持部212は、摩擦部材220を有し、摩擦部材220は、ばね221によって光軸方向に付勢されてレンズ枠12aに接触しており、レンズ枠12aに対して偏芯補正レンズ群12の移動方向(X方向及びY方向)に摩擦力を常に作用させ、偏芯補正レンズ群12をその位置に保持する。モータHM及びVMは、この摩擦力に抗して偏芯補正レンズ群12を移動させる。
【0209】
図30は、保持部の他の例の構成を示す。
【0210】
図30に示す保持部213は、送りネジ223とナット224とで構成されるガイド機構222を、X方向及びY方向にそれぞれ備えており、X方向のガイド機構222xのナット224xは、レンズ枠12aに対してX方向のみ規制し、Y方向のガイド機構222yのナット224yは、レンズ枠12aに対してY方向のみ規制するよう構成されている。
【0211】
図31は、偏芯補正レンズ群12を移動させる制御プロセスを示すフローチャートである。
【0212】
CPU20は、調芯モード及び非調芯モードのいずれのモードが選択されているかを判定する(ステップS201)。
【0213】
調芯モードが選択されている場合に、CPU20は、ポテンショメータZPの出力値を読み込むことによって現時点のズームレンズ群ZLの位置を検出し(ステップS202)、ポテンショメータFPの出力値を読み込むことによって現時点のフォーカスレンズ群FLの位置を検出し(ステップS203)、ポテンショメータIPの出力値を読み込むことによって現時点の絞りIの絞り位置を検出する(ステップS204)。
【0214】
続いて、CPU20は、EEPROM28に予め記憶されているズームレンズ群ZL及びフォーカスレンズ群FL並びに絞りIの位置と偏芯補正レンズ群12とを関連付けたデータテーブル(例えば図13参照)を参照し、検出されたフォーカスレンズ群FL、ズームレンズ群ZL、絞りIの位置に基づいて、偏芯補正レンズ群12の目標位置を求める(ステップS205)。
【0215】
そして、CPU20は、求めた偏芯補正レンズ群12の目標位置に応じて、偏芯補正レンズ群12を移動させるモータHM,VMを駆動制御する(ステップS206)。
【0216】
非調芯モードが選択されている場合に、CPU20は、ポテンショメータHP,VPの出力値を読み込むことによって現時点での偏芯補正レンズ群12の位置を検出する(ステップS207)。
【0217】
続いて、CPU20は、EEPROM28に予め記憶されている偏芯補正レンズ群12の初期位置情報を参照し、検出された偏芯補正レンズ群12の位置に応じて偏芯補正レンズ群12を移動させるモータHM,VMを駆動制御し、偏芯補正レンズ群12を初期位置に移動させる(ステップS208)。
【0218】
そして、偏芯補正レンズ群12が初期位置に移動された後、CPU20は、偏芯補正レンズ群12を移動させるモータHM,VMの駆動制御を停止する(モータHM,VM、及びアンプHA,VA、並びにポテンショメータHP,VPへの電力供給を停止)する(ステップS209)。偏芯補正レンズ群12は、保持部212によってメカニカルにロックされ、その位置に保持される。
【0219】
このように、本カメラシステム201のレンズ装置210によれば、偏芯補正レンズ群12を移動させて光学系の光学性能を調整することにより、経年変化や撮影条件の変化によらず高画質な撮影が可能となる。そして、偏芯補正レンズ群12をその位置に保持する保持部212は、偏芯補正レンズ群12を支持するレンズ枠12aとの機械的に係合によって偏芯補正レンズ群12をその位置に保持するので、偏芯補正レンズ群12をその位置に保持するにあたって電力を消費せず、レンズ装置210における消費電力量を低減することができる。
【0220】
なお、上記のプロセスにおいて、撮影条件(フォーカスレンズ群FL、ズームレンズ群ZL、絞りIの位置)は時々刻々と変化するため、調芯モードにおいては、CPU20によるモータHM,VMの駆動制御が継続される(モータHM,VM、及びアンプHA,VA、並びにポテンショメータHP,VPへの電力供給が継続される)が、CPU20においてポテンショメータZP,FP,IPの出力値の変化をモニタし、変化がある場合にのみモータHM,VMの駆動制御を行い、変化がない間はモータHM,VMの駆動制御を停止するよう構成することもでき、それによれば、レンズ装置210における消費電力量のさらなる低減を図ることができる。
【0221】
図32はカメラシステム201の変形例の主要な構成を示し、図33は図32のカメラシステムの光学系を模式的に示す。
【0222】
図32に示すカメラシステム201においては、レンズ装置210の光学系に手ぶれ補正レンズ群211が設けられており、レンズ装置210には、手ぶれを検出するセンサ(図示せず)が設けられている。
【0223】
手ぶれ補正レンズ群211は、光学系の光軸に対して垂直な面(図33のX−Y平面に平行な面)内において移動可能に設けられている。
【0224】
CPU20は、手ぶれを検出する上記のセンサによって検出された手ブレ情報を取得し、手ぶれに起因する像ぶれを補正するように、手ぶれ補正レンズ群211を移動させる駆動部を制御する。
【0225】
ここで、偏芯補正レンズ群12は、保持部212によって定位置に保持可能であり、よって、偏芯補正レンズ群12を移動させるための駆動部(モータHM,VM、及びこれらのモータHM,VMに駆動信号を入力するアンプHA,VA)は、上記の非調芯モードにおいては偏芯補正レンズ群12を初期位置に移動させる際に、また上記の調芯モードにおいても撮影条件(フォーカスレンズ群FL、ズームレンズ群ZL、絞りIの位置)が変化した際に動作すれば足りる。
【0226】
そこで、本例のカメラシステム201において、手ぶれ補正レンズ群211を移動させる駆動部は、この手ぶれ補正レンズ群211と同じく光学系の光軸に対して垂直な面内において移動可能に設けられた偏芯補正レンズ群12を移動させるモータHM,VM、及びこれらのモータHM,VMに駆動信号を入力するアンプHA,VAによって構成されており、偏芯補正レンズ群12と手ぶれ補正レンズ群211とで駆動部が共用されている。
【0227】
偏芯補正レンズ群12と手ぶれ補正レンズ群211とで駆動部を共用するにあたり、この駆動部による駆動対象を偏芯補正レンズ群12と手ぶれ補正レンズ群211とで切り替えられるように構成されている。例えば、モータHM,VMとしてムービングコイル型のボイスコイルモータを用いる場合に、移動される偏芯補正レンズ群12及び手ぶれ補正レンズ群211の各々にコイルを設け、マグネットを共用することにより、偏芯補正レンズ群12と手ぶれ補正レンズ群211とで駆動部を共用することができ、各々のコイルへの通電を選択的に行うことによって駆動部による駆動対象を偏芯補正レンズ群12と手ぶれ補正レンズ群211とで切り替えることができる。
【0228】
また、偏芯補正レンズ群12と手ぶれ補正レンズ群211とで駆動部を共用するにあたり、駆動部によって偏芯補正レンズ群12が駆動され、手ぶれ補正レンズ群211が駆動部から解放されている際に、手ぶれ補正レンズ群211を定位置に保持しておく必要があり、そのための保持部が設けられている。保持部は、例えば、複数のバネを用いて手ぶれ補正レンズ群211をセンター位置(手ぶれ補正レンズ群の光軸が光学系の光軸に一致する位置)に復帰させ、これらのバネによってセンター位置に保持するように構成することができる。
【0229】
そして、本例のカメラシステム201においては、偏芯補正レンズ群12のみを駆動制御する調芯モードと、少なくとも手ぶれ補正レンズ群211を駆動制御する手ぶれ補正モードとが設けられ、さらに、手ぶれ補正モードにおいて、手ぶれ補正レンズ群211のみを駆動制御する第1モードと、偏芯補正レンズ群12の駆動と手ぶれ補正レンズ群211の駆動とを1サイクルとしてこのサイクルを繰り返し行う第2モードとが設けられており、レンズ操作部50又はカメラ本体40にて調芯モード、第1モード、第2モードを選択可能に構成されている。調芯モードは、例えば、三脚使用時など、手ぶれ補正が不要な場合などに選択される。
【0230】
図34及び図35は、偏芯補正レンズ群12を移動させる制御プロセスを示すフローチャートである。
【0231】
まず、CPU20は、選択されているモードが調芯モードか否かを判定する(ステップS211)。
【0232】
調芯モードが選択されている場合に、CPU20は、駆動部による駆動対象を偏芯補正レンズ群211に切り替える(ステップS212)。
【0233】
そして、CPU20は、図31に示すステップS202〜S206を実行して撮影条件との関係において目標位置に偏芯補正レンズ群12を駆動制御する(ステップS213)。なお、撮影条件に変化がない間は、上述の通り偏芯補正レンズ群12の駆動制御を停止するよう構成してもよい。
【0234】
調芯モードが選択されていない場合に、続いてCPU20は、選択されているモードが第1モード(手ぶれ補正レンズ群211のみを駆動して手ぶれ補正を行うモード)か否かを判定する(ステップS214)。
【0235】
第1モードが選択されている場合に、CPU20は、駆動部による駆動対象を偏芯補正レンズ群211に切り替えて(ステップS215)、図31に示すステップS207,S208を実行し、偏芯補正レンズ群12を初期位置に移動させる(ステップS216)。
【0236】
続いて、CPU20は、偏芯補正レンズ群12が初期位置に移動された後、駆動部による駆動対象を手ぶれ補正レンズ群211に切り替えて固定する(ステップS217)。
【0237】
そして、CPU20は、手ぶれを検出する上記のセンサによって検出された手ぶれ情報を取得し、手ぶれに起因する像ぶれを補正するように、手ぶれ補正レンズ群211を駆動制御する(ステップS218)。
【0238】
第1モードが選択されていない場合に、即ち、第2モード(偏芯補正レンズ群12の駆動と手ぶれ補正レンズ群211の駆動とを1サイクルとしてこのサイクルを繰り返し行うモード)が選択されている場合に、CPU20は、1サイクル当たりにおける偏芯補正レンズ群12を駆動する時間割合(デューティー比)を設定する(ステップS221)。デューティー比の設定方法については、後述する。
【0239】
続いて、CPU20は、撮影条件との関係において偏芯補正レンズ群12の駆動制御の要否を判定する(ステップS222)。
【0240】
撮影条件との関係において偏芯補正レンズ群12の駆動制御は不要、すなわち撮影条件に変化がないと判定した場合に、CPU20は、駆動部による駆動対象を手ぶれ補正レンズ群211に切り替える(ステップS223)。
【0241】
そして、CPU20は、上記のデューティー比によって定められる1サイクル当たりにおける手ぶれ補正レンズ群211を駆動する時間が経過するまでの間、手ぶれを検出する上記のセンサによって検出された手ぶれ情報を取得し、手ぶれに起因する像ぶれを補正するように、手ぶれ補正レンズ群211を駆動制御する(ステップS224)。
【0242】
撮影条件との関係において偏芯補正レンズ群12の駆動制御が必要、すなわち撮影条件に変化があると判定した場合に、CPU20は、駆動部による駆動対象を偏芯補正レンズ群12に切り替える(ステップS225)。
【0243】
続いて、CPU20は、図31に示すステップS202〜S206を実行して撮影条件との関係において目標位置に偏芯補正レンズ群12を駆動制御する(ステップS226)。
【0244】
続いて、CPU20は、上記のデューティー比によって定められる1サイクル当たりにおける偏芯補正レンズ群12を駆動する時間が経過するのを待って(ステップS227)、その時間が経過した後に、駆動部による駆動対象を手ぶれ補正レンズ群211に切り替える(ステップS223)。
【0245】
そして、CPU20は、上記のデューティー比によって定められる1サイクル当たりにおける手ぶれ補正レンズ群211を駆動する時間が経過するまでの間、手ぶれを検出する上記のセンサによって検出された手ブレ情報を取得し、手ぶれに起因する像ぶれを補正するように、手ぶれ補正レンズ群211を駆動制御する(ステップS224)。
【0246】
なお、1サイクル当たりにおける偏芯補正レンズ群12を駆動する時間が経過するのを待つこと(ステップS227)に替えて、偏芯補正レンズ群12が目標位置に達した後に、駆動部による駆動対象を手ぶれ補正レンズ群211に切り替えるように構成することもできる。
【0247】
図36は、デューティー比の設定方法の一例を説明するための図である。
【0248】
デューティー比(1サイクル当たりの偏芯補正レンズ群12を駆動する時間割合)は、撮影条件によらず例えば50%に固定されてもよいが、本例のカメラシステム201においては、撮影条件に応じて変更される。
【0249】
図36は、ズームレンズ群ZLの位置との関係においてデューティー比を設定する例を示しており、一般に、手ぶれの影響は、ズーム位置がワイド端からテレ端に向かうにしたがって大きくなるため、図36に示す例では、デューティー比を、ワイド端において50%、テレ端において0%とし、その間を適宜補間している。なお、図示の例においては、直線により補間されているが、曲線により補間されていてもよい。
【0250】
また、デューティー比の設定は、フォーカスレンズ群FLの位置との関係において設定することもできる。一般に、手ぶれの影響は、フォーカス位置が至近端から∞端に向かうにしたがって大きくなるため、デューティー比を、例えば至近端において50%、∞端において0%とし、その間を適宜補間して設定することもできる。
【0251】
また、デューティー比の設定は、絞りIの位置との関係において設定することもできる。一般に、手ぶれの影響は、絞り位置が開放から最小絞りに向かうにしたがって大きくなるため、デューティー比を、例えば開放において50%、最小絞りにおいて0%とし、その間を適宜補間して設定することもできる。
【0252】
レンズ装置210のEEPROM28には、予めズームレンズ群ZLの位置やフォーカスレンズ群FLの位置や絞りIの位置とデューティー比とが関連付けられたデータテーブルが記憶されており、CPU20は、EEPROM28に記憶されたデータテーブルを参照して、検出されたズームレンズ群ZLやフォーカスレンズ群FLや絞りIの位置に基づいて、デューティー比を設定する。
【0253】
このように、偏芯補正レンズ群12と手ぶれ補正レンズ群211とで駆動部を共用することにより、レンズ装置210を小型化・軽量化することができ、さらにレンズ装置210における電力消費量を一層低減することができる。
【0254】
なお、レンズ操作部50又はカメラ本体40にて、偏芯補正レンズ群12の駆動制御のみ行う調芯モードと少なくとも手ぶれ補正レンズ群211の駆動制御を行う手ぶれ補正モード(第1モード又は第2モード)の選択を行うものとして説明したが、例えば、第1モード及び第2モードのいずれのモードで手ぶれ補正をおこなうかを、予めレンズ操作部50又はカメラ本体40にて設定しておき、手ぶれを検出する上記のセンサの検出結果に応じて、CPU20において調芯モードと手ぶれ補正モードとを切り替えるように構成してもよい。
【0255】
本明細書は次の事項を開示する。
(1)カメラ本体に装着されるレンズ装置であって、
可動レンズ群と、偏芯補正を行う少なくとも1つのレンズとを含む補正レンズ群とを備える光学系と、
前記可動レンズ群と前記補正レンズ群を駆動する駆動部と、
前記可動レンズ群と前記補正レンズ群のレンズ位置を取得するレンズ位置取得部と、
前記補正レンズ群を駆動する前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
更に、前記光学系が、調芯レンズ群の像側に配置されてカメラ本体に向かう第1光路と第2光路とに分岐するビームスプリッタと、
前記第2光路の光束が結像される少なくとも1つの撮像素子と、を含み、
前記制御部が、画質評価用チャートを前記撮像素子によって撮像して得られるチャート画像に基づいて前記可動レンズ群と前記補正レンズ群の補正位置情報を設定し、該補正位置情報を記憶部に記憶し、撮影時には前記記憶部に記憶された前記補正位置情報に基づいて前記駆動部を制御するレンズ装置。
(2)(1)に記載のレンズ装置であって、
前記撮像素子を2つ備え、
2つの前記撮像素子それぞれから得られる評価値に基づいて焦点調整を行なうレンズ装置。
(3)(2)に記載のレンズ装置であって、
前記2つの撮像素子は、前記第2光路の結像位置に、互いに共役となる位置関係で配置され、
前記制御部は、前記2つの撮像素子それぞれから得られる前記チャート画像に基づいて、前記補正位置情報を設定するレンズ装置。
(4)(3)に記載のレンズ装置であって、
前記補正レンズ群は、光軸に対する倒れ角によって収差を補正する倒れ補正レンズ群を含み、
前記制御部は、前記2つの撮像素子それぞれから得られる前記チャート画像の評価値の対称性に基づき、光軸と直交する方向を軸に前記倒れ補正レンズ群の倒れ角を設定するレンズ装置。
【符号の説明】
【0256】
1 カメラシステム
10 レンズ装置
12 偏芯補正レンズ群
14 倒れ補正レンズ群
20 CPU
31、35 ビームスプリッタ
32、32A、32B CCD
40 カメラ本体
42 CD
44 カメラCPU
50 レンズ操作部
52 顔検出部
54 コントラスト検出部
70 切出し操作部
FL フォーカスレンズ群
ZL ズームレンズ群
I 絞り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ本体に装着されるレンズ装置であって、
可動レンズ群と、偏芯補正を行う少なくとも1つのレンズとを含む補正レンズ群とを備える光学系と、
前記可動レンズ群と前記補正レンズ群を駆動する駆動部と、
前記可動レンズ群と前記補正レンズ群のレンズ位置を取得するレンズ位置取得部と、
前記補正レンズ群を駆動する前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
更に、前記光学系が、調芯レンズ群の像側に配置されてカメラ本体に向かう第1光路と第2光路とに分岐するビームスプリッタと、
前記第2光路の光束が結像される少なくとも1つの撮像素子と、を含み、
前記制御部が、画質評価用チャートを前記撮像素子によって撮像して得られるチャート画像に基づいて前記可動レンズ群と前記補正レンズ群の補正位置情報を設定し、該補正位置情報を記憶部に記憶し、撮影時には前記記憶部に記憶された前記補正位置情報に基づいて前記駆動部を制御するレンズ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズ装置であって、
前記撮像素子を2つ備え、
2つの前記撮像素子それぞれから得られる評価値に基づいて焦点調整を行なうレンズ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレンズ装置であって、
前記2つの撮像素子は、前記第2光路の結像位置に、互いに共役となる位置関係で配置され、
前記制御部は、前記2つの撮像素子それぞれから得られる前記チャート画像に基づいて、前記補正位置情報を設定するレンズ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレンズ装置であって、
前記補正レンズ群は、光軸に対する倒れ角によって収差を補正する倒れ補正レンズ群を含み、
前記制御部は、前記2つの撮像素子それぞれから得られる前記チャート画像の評価値の対称性に基づき、光軸と直交する方向を軸に前記倒れ補正レンズ群の倒れ角を設定するレンズ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2013−76784(P2013−76784A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215642(P2011−215642)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】