説明

レンズ鏡筒及び光学機器

【課題】光軸に対して挿脱可能な光学フィルタを備え、レンズユニットを高精度に位置決め可能なレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】レンズ鏡筒は、第一レンズを保持する第一レンズ移動枠を光軸方向に案内する複数の第一ガイド部材と、第二レンズを保持する第二レンズ移動枠を光軸方向に案内する複数の第二ガイド部材と、光学フィルタを保持し、光学フィルタを光軸に対して挿脱可能に移動する光学フィルタ保持枠と、光学フィルタ保持枠よりも第一レンズ移動枠及び第二レンズ移動枠の側に配置され、複数の第一ガイド部材及び複数の第二ガイド部材のうち少なくとも一つのガイド部材を保持する保持部を備えたフィルタ押え部材と、光学フィルタ保持枠よりも撮像素子の側に配置され、撮像素子を保持する撮像素子保持枠とを有し、フィルタ押え部材の保持部は、光軸方向から見たとき、光学フィルタの移動範囲に重なるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿脱可能な光学フィルタを備えたレンズ鏡筒及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、IRカットフィルタ(光学フィルタ)が挿脱可能に構成され、赤外光を取り込むことで夜間撮影を可能とするナイトモードに対応したビデオカメラやデジタルカメラ等の光学機器が知られている。このような光学機器におけるレンズ鏡筒は、一般的に、レンズ群の最後部に配置されたレンズと撮像素子との間にIRカットフィルタを配置し、その位置にIRカットフィルタの挿脱機構を設けて構成される。特許文献1には、レンズ群の最後部レンズであるフォーカスレンズの移動鏡筒(フォーカスレンズ移動鏡筒)をガイドするガイドバーを後部鏡筒に保持し、その後部鏡筒と撮像素子保持枠との間にIRカットフィルタの挿脱機構を配置した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−8801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、撮像素子保持枠と、フォーカスレンズ移動鏡筒のガイドバーが保持された後部鏡筒は別部品で構成され、レンズ群は撮像素子に対して高精度に位置決めを行うことが困難である。このため、撮像素子保持枠にガイドバーを保持するような構成を採用することが望ましい。しかし、撮像素子保持枠とフォーカスレンズとの間にはIRカットフィルタの挿脱機構が配置されているため、ガイドバーはIRカットフィルタを避けて配置しなければならない。また、可動群が多い場合には、ガイドバーの配置の自由度が制限されてしまう。
【0005】
そこで本発明は、光軸に対して挿脱可能な光学フィルタを備え、レンズ群を高精度に位置決め可能なレンズ鏡筒及び光学機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としてのレンズ鏡筒は、第一レンズを保持する第一レンズ移動枠を光軸方向に案内する複数の第一ガイド部材と、第二レンズを保持する第二レンズ移動枠を光軸方向に案内する複数の第二ガイド部材と、光学フィルタを保持し、該光学フィルタを光軸に対して挿脱可能に移動する光学フィルタ保持枠と、前記光学フィルタ保持枠よりも前記第一レンズ移動枠及び前記第二レンズ移動枠の側に配置され、前記複数の第一ガイド部材及び前記複数の第二ガイド部材のうち少なくとも一つのガイド部材を保持する保持部を備えたフィルタ押え部材と、前記光学フィルタ保持枠よりも撮像素子の側に配置され、該撮像素子を保持する撮像素子保持枠とを有し、前記フィルタ押え部材の前記保持部は、前記光軸方向から見たとき、前記光学フィルタの移動範囲に重なるように配置されている。
【0007】
本発明の他の側面としての光学機器は、前記レンズ鏡筒を備えた光学機器である。
【0008】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光軸に対して挿脱可能な光学フィルタを備え、レンズ群を高精度に位置決め可能なレンズ鏡筒及び光学機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施例における光学機器(カメラ)の斜視図である。
【図2】本実施例におけるレンズ鏡筒の構成図であり、(a)X−Z面断面図、(b)X−Y面断面図である。
【図3】本実施例におけるレンズ鏡筒の組立斜視図である。
【図4】本実施例のレンズ鏡筒において、フィルタ切替ユニット及び4本のガイドバーを示す組立斜視図である。
【図5】本実施例のレンズ鏡筒において、図4と同じ構成を被写体側から見た図である。
【図6】本実施例のレンズ鏡筒において、フィルタ切替ユニット、4本のガイドバー、及び、フォーカス移動枠を示す組立斜視図である。
【図7】本実施例のレンズ鏡筒において、フィルタ切替ユニット、4本のガイドバー、フォーカス移動枠、及び、シフトユニットを示す組立斜視図である。
【図8】本実施例のレンズ鏡筒において、フィルタ切替ユニットからフィルタ押え部材を取り除いた状態で、4本のガイドバーの位置関係を示す図であり、(a)IRカットフィルタ挿入状態、(b)IRカットフィルタ脱出(退避)状態を示す。
【図9】本実施例における光学機器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
まず、図1乃至図3を参照して、本発明の実施例におけるレンズ鏡筒及び光学機器(カメラ)の構成について説明する。図1は、本実施例における光学機器(ビデオカメラ)の斜視図である。図2は、本実施例におけるレンズ構成図であり、(a)X−Z面断面図、及び、(b)X−Y面断面図を示す。図3は、本実施例におけるレンズ鏡筒を示す組立斜視図である。なお、本実施例のレンズ鏡筒はビデオカメラ等の撮影装置に用いられるものであるが、これに限定されるものではなく、他の光学機器にも適して用いられる。
【0013】
図1に示されるように、本実施例の光学機器は、カメラ本体BとレンズLとを備えて構成される。図2乃至図3において、L1は第1レンズユニット、L2は撮影光学系の光軸方向に移動して変倍作用を行う第2レンズユニットである。L3は撮影光学系の光軸に対して直交する方向(以下、「光軸直交方向」という)にシフトして像振れを低減し、かつ、撮影光学系の光軸方向に移動可能な第3レンズユニットである。L4は撮影光学系の光軸方向に移動して焦点調節作用を行う第4レンズユニットである。このように、レンズ鏡筒1は、第1〜第4レンズユニットL1〜L4の4群レンズを備えて構成される。
【0014】
2は第1レンズユニットL1を保持する第1レンズ枠であり、3は第2レンズユニットL2を保持するバリエータ移動枠である。4は第3レンズユニットL3を保持するシフトユニットであり、5は第4レンズユニットL4を保持するフォーカス移動枠である。6は固定鏡筒であり、7は後部鏡筒である。固定鏡筒6は、第1レンズユニットL1を所定位置に固定するため、その後端が後部鏡筒7に結合し、その前端が第1レンズ枠2と固定されている。8は、ナイトモードとデイモードとの切換を行うIRカットフィルタ切替機構(光学フィルタ切替機構)を備えたフィルタ切替ユニットである。
【0015】
9a、9bは、固定鏡筒6と後部鏡筒7とにより両端が保持されたガイドバーである。また、ガイドバー10a、10b(図4乃至図8参照)と、ガイドバー11a、11bは、それぞれ、後部鏡筒7とフィルタ切替ユニット8により両端が保持されている。
【0016】
バリエータ移動枠3は、ガイドバー9a、9bにより、撮影光学系の光軸方向に移動可能に支持されている。シフトユニット4は、ガイドバー10a、10bにより、撮影光学系の光軸方向に移動可能に支持され、後部鏡筒7に固定されている。12は、撮影光学系に入射した光量を変化させる光量調節ユニットであり、後部鏡筒7に固定されている。光量調節ユニット12は、2枚以上の絞り羽根を光軸直交方向に移動させて開口径を変化させる。また、光量調節ユニット12には、図示しないグラデーションNDフィルタが絞り羽根とは独立して光路に対して進退可能に構成されている。フォーカス移動枠5は、ガイドバー11a、11bにより、撮影光学系の光軸方向に移動可能に支持されている。
【0017】
13は、バリエータ移動枠3を撮影光学系の光軸方向に駆動するステッピングモータである。ステッピングモータ13の出力軸には、リードスクリュー14が形成されている。ステッピングモータ13は、後部鏡筒7に固定される。リードスクリュー14には、バリエータ移動枠3に取り付けられたラック15が噛み合っている。このため、ステッピングモータ13に通電されてリードスクリュー14が回転すると、バリエータ移動枠3が撮影光学系の光軸方向に駆動される。
【0018】
16は、バリエータ移動枠3の基準位置を検出するためのズームリセットである。ズームリセット16は、バリエータ移動枠3に形成された遮光部の光軸方向への移動による遮光状態と透光状態の切り替わりを検出するフォトインタラプタにより構成されている。ズームリセット16は、基板を介して後部鏡筒7に固定されている。またバリエータ移動枠3は、光軸方向に多極着磁されたセンサマグネット17を保持し、後部鏡筒7におけるセンサマグネット17に対向した位置には、センサマグネット17の移動に伴う磁力線の変化を読み取るMRセンサ18が固定されている。MRセンサ18からの信号を用いることで、バリエータ移動枠3すなわち第2レンズユニットL2の所定の基準位置からの移動量を検出することができる。
【0019】
19は、シフトユニット4を光軸方向に駆動するステッピングモータである。ステッピングモータ19の出力軸には、リードスクリュー20が形成されている。ステッピングモータ19は後部鏡筒7に固定される。リードスクリュー20には、シフトユニット4に取り付けられたシフトラック(不図示)が噛み合っている。このため、ステッピングモータ19に通電されてリードスクリュー20が回転すると、シフトユニット4は光軸方向に駆動される。
【0020】
21は、シフトユニット4の基準位置を検出するためのズームリセットである。ズームリセット21は、シフトユニット4に形成された遮光部の光軸方向への移動による遮光状態と透光状態の切り替わりを検出するフォトインタラプタにより構成されている。ズームリセット21は、基板を介して後部鏡筒7に固定されている。更に、フォトインタラプタにより構成されているズームリセット21と、遮光部の遮光状態と透光状態の切り替わりは、シフトユニット4の移動範囲内であり、且つ、フォーカス移動枠5の移動範囲外にあるときに検出されるように設定される。
【0021】
22は、第3レンズユニットL3を保持するシフト保持枠である。シフト保持枠22には、2体化されたシフト駆動マグネット23と、マグネットの磁路を閉じるための第1ヨーク24が保持されている。25は、シフトユニット4のベース部材としてのシフトベースである。シフトベース25には、シフトコイル26と、前述のシフト駆動マグネット23の磁路を閉じるための第2ヨーク27が保持されている。シフトコイル26を通電すると、シフト駆動マグネット23に駆動力が発生し、第3レンズユニットL3がシフト保持枠22に対して相対的に撮影光学系の光軸と直交する方向に駆動される。
【0022】
シフト駆動マグネット23、第1ヨーク24、第2ヨーク27、及び、シフトコイル26はそれぞれ2セットあり、これらはシフト駆動アクチュエータ部を構成する。図2において、撮影光学系の光軸中心に対して−Z方向にはピッチ方向駆動用のシフト駆動アクチュエータ部が設けられ、Y方向にはヨー駆動用のシフト駆動アクチュエータ部が設けられている。このように、シフト駆動ユニットが2セット設けられているため、撮影光学系の光軸と垂直な平面内のいずれの方向にも、第3レンズユニットL3を駆動させることができる。
【0023】
また、シフトコイル26は、シフトフレキ28と半田付けされて電気的に導通可能に構成されている。シフトフレキ28は、後部鏡筒7に設けられた止め部(不図示)に固定されるとともに、レンズ鏡筒の内部に設けられたUターン形状部28aを介して、シフトユニット4と繋がっている。Uターン形状部28aは、シフトユニット4が光軸方向に移動する際に、シフトフレキ28の反力がシフトユニット4に加わらないような形状となっている。
【0024】
29、30、31は、それぞれ、第4レンズユニットL4を光軸方向に駆動するフォーカスモータ(ボイスコイルモータ)を構成する駆動コイル、ドライブマグネット、及び、磁束を閉じるためのヨーク部材である。駆動コイル29は、フォーカス移動枠5に取り付けられている。ドライブマグネット30は、ヨーク部材31内に設けられており、ヨーク部材31は、フィルタ切替ユニット8に取り付けられている。ここで、駆動コイル29に電流を流すと、ドライブマグネット30と駆動コイル29との間に発生する磁力線相互の反発によるローレンツ力が発生し、フォーカス移動枠5とともに第4レンズユニットL4が光軸方向に駆動される。
【0025】
またフォーカス移動枠5は、光軸方向に多極着磁されたセンサマグネット32を保持し、後部鏡筒7におけるセンサマグネット32に対向した位置には、センサマグネット32の移動に伴う磁力線の変化を読み取るMRセンサ33が固定されている。MRセンサ33からの信号を用いることで、フォーカス移動枠5すなわち第4レンズユニットL4の所定の基準位置からの移動量を検出することができる。フォーカス移動枠5は、コイルに通電されて、被写体側すなわち光軸と平行な−X方向に移動し、メカニカル端に当接した状態を基準位置として検出する。
【0026】
駆動コイル29は、フォーカスフレキ34に半田付けされて電気的に導通可能に構成されている。フォーカスフレキ34は、後部鏡筒7に設けられた止め部(不図示)に固定されるとともに、レンズ鏡筒の内部に設けられたUターン形状34aを介して、フォーカス移動枠5に固定された駆動コイル29と繋がっている。
【0027】
次に、図4乃至図7を参照して、レンズ鏡筒の要部であるシフトユニット4、シフトユニット4をガイドする2本のガイドバー、フォーカス移動枠5、フォーカス移動枠5をガイドする2本のガイドバー、及び、フィルタ切替ユニット8の構成について詳述する。図4はフィルタ切替ユニット8及び4本のガイドバーを示す組立斜視図であり、図5は図4と同じ構成を被写体側から見た組立構成図である。図6は、フィルタ切替ユニット、4本のガイドバー、及び、フォーカス移動枠5を示す組立構成図である。図7は、フィルタ切替ユニット、4本のガイドバー、フォーカス移動枠5、及び、シフトユニット4を示す組立構成図である。
【0028】
CCDホルダー8a(撮像素子保持枠)は、後述のIRホルダー8dよりも撮像素子(不図示)の側に配置され、この撮像素子を保持する部材である。フィルタ押え部材8bは、後述のIRホルダー8dよりもシフトニット4及びフォーカス移動枠5の側に配置され、後述のガイドバー10a、10b、11a、11bのうち少なくとも一つのガイド部材を保持する保持部8hを有する。本実施例では、ガイドバー11bが保持部8hにより保持されているが、これに限定されるものではない。フィルタ押え部材8bは、CCDホルダー8aに3か所のビス8cでビス止めされている。フィルタ切替ユニット8は、撮影光学系の光軸方向において、CCDホルダー8aとフィルタ押え部材8bとの間で、IRカットフィルタ(光学フィルタ)を光軸中心への挿入及び光軸中心からの脱出を可能とするように構成されている。
【0029】
ガイドバー10a、10b(複数の第一ガイド部材)は、第3レンズユニットL3(第一レンズ)を保持するシフトユニット4(第一レンズ移動枠)を光軸方向に案内する。2本のガイドバー10a、10bのうちガイドバー10aは、シフトユニット4の位置決めの機能を有するガイドバーである。一方、ガイドバー10bは、シフトユニット4の回転止めの機能を有するガイドバーである。ガイドバー10a、10bの撮像面側(CCD側)の端部は、ともに、CCDホルダー8aによって保持されている。
【0030】
ガイドバー11a、11b(複数の第二ガイド部材)は、第4レンズユニットL4(第二レンズ)を保持するフォーカス移動枠5(第二レンズ移動枠)を光軸方向に案内する。2本のガイドバー11a、11bのうちガイドバー11aは、フォーカス移動枠5の位置決めの機能を有するガイドバーである。一方、ガイドバー11bは、フォーカス移動枠5の回転止めの機能を有するガイドバーである。ガイドバー11aの撮像面側(CCD側)の端部は、CCDホルダー8aによって保持されている。一方、ガイドバー11bの撮像面側の端部は、フィルタ押え部材8bによって保持されている。
【0031】
このように、複数のガイドバーのうちガイドバー11bを除いた他のガイドバー10a、10b、11aは、CCDホルダー8aに保持され、フィルタ切替ユニット8には合計4本のガイドバー10a、10b、11a、11b)が保持されている。撮像素子はCCDホルダー8aによって保持されているため、撮像素子と各レンズユニット(フォーカス移動枠5、シフトユニット4)との間の相対位置精度を向上させるには、4本全てのガイドバーがCCDホルダー8aによって保持されることが望ましい。しかしながら、本実施例のように2つのレンズユニット(第3レンズユニットL3、第4レンズユニットL4)を保持する場合には、4本のガイドバーが必要となる。これら4本全てのガイドバーを、IRカットフィルタの挿脱機構の動作を妨げることなくCCDホルダー8aに保持させようとすると、十分なスペースの確保が困難であり、ガイドバーのレイアウト上の制約が伴う。
【0032】
そこで本実施例では、以下のようなIRカットフィルタの挿脱機構を採用している。続いて、図8を参照して、IRカットフィルタの挿脱機構について詳述する。図8は、フィルタ切替ユニット8からフィルタ押え部材8bを取り除いた状態で、4本のガイドバーの位置関係を示す図である。図8(a)はIRカットフィルタを撮像光学系の光軸に挿入した状態(IRカットフィルタ挿入状態)を示し、図8(b)はIRカットフィルタを撮像光学系の光軸から脱出(退避)させた状態(IRカットフィルタ脱出状態(退避状態))を示している。
【0033】
図8(a)、(b)において、8dは、IRカットフィルタ8g(光学フィルタ)を保持し、IRカットフィルタ8gを光軸に対して挿脱可能に移動するIRホルダー(光学フィルタ保持枠)である。8fは、IRカットフィルタ8gを光軸に挿入するか脱出させるか(IRカットフィルタ挿入状態と脱出状態)を切り替える切替レバーである。切替レバー8fの操作により、IRホルダー8dは、IRカットフィルタ8gが光軸に挿入された挿入状態と、IRカットフィルタ8gが光軸から脱出した脱出状態のいずれかの状態になるように移動する。8eは、IRカットフィルタ8gが挿入状態又は脱出状態のいずれであるかを検知するフォトインタラプタである。
【0034】
図8(b)に示されるようにIRホルダー8dが脱出状態にある場合、IRホルダー8dとガイドバー11bの位置は、光軸方向(図8(b)の紙面直交方向)から見たときに互いに重なっている。すなわち、フィルタ押え部材8bの保持部8hは、光軸方向から見たとき、IRホルダー8dの移動範囲に重なるように配置されている。本実施例において、フィルタ押え部材8bの保持部8hは、IRカットフィルタ8gが脱出状態にあるとき、IRホルダー8dと重なっている。ただし、本実施例はこれに限定されるものではなく、IRカットフィルタ8gが挿入状態にあるときにIRホルダー8dと重なるようにしてもよい。
【0035】
ガイドバー11bの撮像面側の端をCCDホルダー8aにより保持させようとすると、ガイドバー11bは、IRホルダー8dの挿入状態と脱出状態との間の移動範囲から避けた位置に配置されなければならない。そこで本実施例では、ガイドバー11bの撮像素子側の保持部(撮像面側の端)をフィルタ押え部材8bにより保持させることで、ガイドバー11bの位置を光軸中心から遠ざけることなく、コンパクトなレンズ鏡筒を構成することができる。
【0036】
上述のように、ガイドバー11aはフォーカス移動枠5の位置決めの機能を有するガイドバーであり、ガイドバー11bはフォーカス移動枠5の回転止めの機能を有するガイドバーである。このようなガイドバー11a、11bのうち、本実施例では回転止めの機能を有するガイドバー11bの方をIRホルダー8dで保持するように構成されている。位置決め用のガイドバー11aの方が、回転止め用のガイドバー11bに比べて、レンズの位置決めに要求される精度は高い。回転止め用のガイドバー11bは、フォーカス移動枠5の回転方向と垂直な方向にはある程度の精度が要求されるだけであるに対し、位置決め用のガイドバー11aは、全方向の位置ずれがダイレクトにレンズの位置精度に影響を及ぼす。このため、本実施例のように位置決め用のガイドバー11aよりも回転止め用のガイドバー11bの方が、撮像素子を直接保持していない(CCDホルダー8aと比べて精度が悪い)IRホルダー8d側に保持される方がより望ましい。
【0037】
次に、図9を参照して、本実施例におけるレンズ鏡筒を備えた光学機器(カメラ)の動作について説明する。図9は、本実施例における光学機器のブロック図である。図9において、撮影時に被写体からの光がレンズ鏡筒1内の第1〜第4レンズユニットL1〜L4を通って、撮像素子41に入射する。撮像素子41に入射した光は光電変換され、カメラ信号処理回路50に入力される。カメラ信号処理回路50は、所定の信号処理を行い、デジタル信号として出力する。このデジタル信号は、AFゲート51を通り、AF信号処理回路52にて所定の信号処理を行った後、CPU54に入力される。CPU54は、ズームスイッチ53の操作に応じて、AF信号処理回路52からの入力信号に基づき、駆動コイル29、及び、ステッピングモータ13、19で第2〜第4レンズユニットL2〜L4を光軸方向に移動するように制御する。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…レンズ鏡筒
4…シフトユニット
5…フォーカス移動枠
8a…CCDホルダー
8b…フィルタ押え部材
8d…IRホルダー
8g…IRカットフィルタ
8h…保持部
10a、10b、11a、11b…ガイドバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一レンズを保持する第一レンズ移動枠を光軸方向に案内する複数の第一ガイド部材と、
第二レンズを保持する第二レンズ移動枠を光軸方向に案内する複数の第二ガイド部材と、
光学フィルタを保持し、該光学フィルタを光軸に対して挿脱可能に移動する光学フィルタ保持枠と、
前記光学フィルタ保持枠よりも前記第一レンズ移動枠及び前記第二レンズ移動枠の側に配置され、前記複数の第一ガイド部材及び前記複数の第二ガイド部材のうち少なくとも一つのガイド部材を保持する保持部を備えたフィルタ押え部材と、
前記光学フィルタ保持枠よりも撮像素子の側に配置され、該撮像素子を保持する撮像素子保持枠と、を有し、
前記フィルタ押え部材の前記保持部は、前記光軸方向から見たとき、前記光学フィルタ保持枠の移動範囲に重なるように配置されていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記少なくとも一つのガイド部材は、前記第二レンズ移動枠の回転止めの機能を有するガイド部材であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記光学フィルタ保持枠は、前記光学フィルタが前記光軸に挿入された挿入状態と、該光学フィルタが該光軸から脱出した脱出状態のいずれかの状態になるように移動し、
前記フィルタ押え部材の前記保持部は、前記光学フィルタが前記脱出状態にあるとき、前記光学フィルタ保持枠と重なっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記複数の第一ガイド部材及び前記複数の第二ガイド部材のうち、前記少なくとも一つのガイド部材を除いた他のガイド部材は、前記撮像素子保持枠に保持されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒を備えたことを特徴とする光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−93560(P2012−93560A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240900(P2010−240900)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】