説明

レンズ鏡筒及び撮像装置

【課題】光学性能の劣化が防止されたレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】本発明のレンズ鏡筒100は、メインガイドバー141及びサブガイドバー142で懸架されるベース枠210と、防振レンズL4を保持するとともに、ベース枠210に対して互いに直交する2方向に移動可能な防振レンズ保持枠220と、防振レンズ保持枠をベース枠に対して2方向のそれぞれに移動させる第1ボイスコイルモータ250Y及び第2ボイスコイルモータ250Xと、を有する防振ユニット200を備え、第1ボイスコイルモータ及び第2ボイスコイルモータは、防振ユニットにおける、メインガイドバーとサブガイドバーとを通る第1直線の一方の側に配置され、第1ボイスコイルモータは、第1直線と、該第1直線と直交し且つレンズの中心を通る第2直線と、で4分割された領域のうちの第1領域における、第2直線よりも第1直線に近い位置に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒及び撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高倍率ズームのような各群の移動量が大きい光学系をもつメカ連動ズームレンズにおいては、ガイドバーで各群を直進ガイドしているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−66690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、防振ユニットをガイドバーで懸架する場合、防振駆動用のボイスコイルモータの反力による共振等や加重の集中によって、ガイドバーが変形し、光学性能が劣化する可能性がある。
【0005】
本発明の課題は、光学性能の劣化が防止されたレンズ鏡筒及び撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0007】
請求項1に記載の発明は、メインガイドバー(141)及びサブガイドバー(142)で懸架されるベース枠(210)と、防振レンズ(L4)を保持するとともに、前記ベース枠(210)に対して互いに直交する2方向に移動可能な防振レンズ保持枠(220)と、前記防振レンズ保持枠(220)を前記ベース枠(210)に対して前記2方向のそれぞれに移動させる第1ボイスコイルモータ(250Y)及び第2ボイスコイルモータ(250X)と、を有する防振ユニット(200)を備え、前記第1ボイスコイルモータ(250Y)及び前記第2ボイスコイルモータ(250X)は、前記防振ユニット(200)における、前記メインガイドバー(141)と前記サブガイドバー(142)とを通る第1直線の一方の側に配置され、前記第1ボイスコイルモータ(250Y)は、前記第1直線と、該第1直線と直交し且つレンズの中心を通る第2直線と、で4分割された領域のうちの第1領域における、前記第2直線よりも前記第1直線に近い位置に配置されていること、を特徴とするレンズ鏡筒(100)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレンズ鏡筒(100)であって、前記第2ボイスコイルモータ(250X)は、前記4分割された領域のうちの前記1領域に隣接する第2領域における、前記第2直線よりも前記第1直線に近い位置に配置されていること、を特徴とするレンズ鏡筒(100)である。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のレンズ鏡筒(100)であって、前記防振ユニット(200)の外周に配置されるとともにカム溝(140)が形成された筒体(120)を備え、前記ベース枠(210)の外周には、前記カム溝(140)に挿入されるフォロアピン(201)が設けられ、該フォロアピン(201)は、前記第2直線よりも前記第1直線の近くに配置されていること、を特徴とするレンズ鏡筒(100)である。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒(100)であって、前記防振ユニット(200)は、該レンズ鏡筒(100)の絞り(150)を開閉する絞り連動機構(300)と係合する係合部(301)を有し、前記係合部(301)は、前記第2直線よりも前記第1直線の近くに配置されていること、を特徴とするレンズ鏡筒(100)である。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒(100)であって、前記防振ユニット(200)は、前記第1ボイスコイルモータ(250Y)及び前記第2ボイスコイルモータ(250X)に電力を供給するフレキシブルプリント基板(203)の接合部(203)を備え、前記接合部(203)は、前記第2直線よりも前記第1直線の近くに配置されていること、を特徴とするレンズ鏡筒(100)である。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒(100)を備える撮像装置(1)である。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光学性能の劣化が防止されたレンズ鏡筒及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る一実施形態であるカメラを概念的に示す図である。
【図2】図1における撮像レンズの部分拡大断面図である。
【図3】撮像レンズの図2とは異なる断面位置における部分拡大断面図である。
【図4】防振ユニットの外観斜視図である。
【図5】防振ユニットの前面カバーを外して前面側から見た図である。
【図6】絞り連動機構を説明する概念図である。
【図7】本発明の変形形態を示す防振ユニットの前面カバーを外して前面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る一実施形態であるカメラ1を概念的に示す図である。
なお、以下の各図には、説明と理解を容易にするために、XYZ直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸OAを水平として横長の画像を撮影する場合のカメラの位置(以下、正位置という)において撮影者から見て左側に向かう方向をXプラス方向とし、正位置において上側に向かう方向をYプラス方向とする。また、正位置において被写体に向かう方向をZプラス方向とする。このZプラス方向を前面側、Zマイナス方向を背面側ともいう。さらに、光軸OA(すなわちZ軸)と平行な方向の移動を「直進」、光軸OAを中心とする回動を「回転」と呼称する。
【0011】
カメラ1は、カメラ本体10と、レンズ鏡筒100と、によって構成されている。
レンズ鏡筒100は、焦点距離を可変調整可能ないわゆるズームレンズである。レンズ鏡筒100は、撮影光学系を構成する複数のレンズ群(L1〜L5)と、開口径を変化させて入射光量を調整する絞りユニット150と、を備えている。
【0012】
また、レンズ鏡筒100は、カメラマウントCMと着脱可能に係合するレンズマウントLMを備えており、このレンズマウントLMによってカメラ本体10に着脱可能に装着されるようになっている。これにより、カメラ1は、用途に応じて異なるレンズ鏡筒100を交換して撮影することができるようになっている。このレンズ鏡筒100については、後に詳述する。
【0013】
カメラ本体10は、クイックリターンミラー11、ファインダスクリーン12、ペンタプリズム13、接眼光学系14、シャッター15、撮像素子16、表示装置17及び制御装置18等を備えている。
クイックリターンミラー11は、レンズ鏡筒100によって集光された被写体像の光路を、ファインダスクリーン12に向けて屈曲させるためにカメラ本体10内に揺動可能に設けられたミラーである。クイックリターンミラー11は、レリーズ操作に応じて、被写体光の撮像素子16への入射を妨げない退避位置(図1中に二点鎖線で示す)に移動する。
【0014】
ファインダスクリーン12は、クイックリターンミラー11により反射された被写体像を結像させるスクリーンであり、クイックリターンミラー11とペンタプリズム13との間に配置されている。
ペンタプリズム13は、断面形状が五角形のプリズムであって、カメラ本体10を横位置に構えた状態の上部に配設されている。ペンタプリズム13は、ファインダスクリーン12に結像した像を正立像として接眼光学系14へと導く。
【0015】
接眼光学系14は、ペンタプリズム13により正立像となった被写体像を、拡大観察するための光学系であり、ペンタプリズム13の背面側(撮影者側)に配置されている。
シャッター15は、レリーズ操作に応じて開閉し、撮像素子16に結像する被写体像光の露光時間を制御する。
【0016】
撮像素子16は、レンズ鏡筒100によって結像された被写体像を電気信号に変換する、たとえば、CCD等の光電変換素子である。撮像素子16は、カメラ本体10の内部の背面側(図1に示す右側)に、受光面を光軸OAに対して直交させた状態で設けられている。
表示装置17は、カメラ本体10の外側の背面側(撮影者側)に設けられた液晶等の表示パネルを備えている。表示装置17は、表示パネルに撮影画像や、露光時間等の撮影に関する情報等を表示する。
制御装置18は、CPU等を備えて構成され、前述した当該カメラ本体10の各構成要素およびレンズ鏡筒100を統括的に制御する。
【0017】
カメラ本体10は、前述したようにレンズ鏡筒100が一体に結合されてカメラ1を構成する。結合状態では、カメラ本体10の制御装置18および図示しない電源が図示しない接続端子を介してレンズ鏡筒100と接続され、制御装置18によってレンズ鏡筒100における合焦モータや絞りユニット等を制御駆動するようになっている。
【0018】
そして、カメラ1は、撮影時において下記のように作用する。
カメラ本体10が備える図示しないシャッターボタンが押圧操作(レリーズ操作)されると、クイックリターンミラー11が退避位置に移動する。シャッター15は、レリーズ操作に応じて開閉し、撮像素子16に被写体像光を所定時間露光させる。撮像素子16は、被写体像光を電気信号に変換して撮像する。撮像素子16によって撮像された撮像データは、図示しない記録部に記録される。これによって、撮影が行われる。
【0019】
つぎに、前述した図1に加えて図2〜図6を参照して、レンズ鏡筒100について詳細に説明する。図2は、図1におけるレンズ鏡筒100の部分拡大断面図である。図3は、レンズ鏡筒100の図2とは異なる断面位置における部分拡大断面図である。図4は、防振ユニット200の外観を示し、(a)は前面側から、(b)は背面側から、それぞれ見た斜視図である。図5は、防振ユニット200の前面カバーを外して前面側から見た図である。図6は、絞り連動機構300を説明する概念図である。
【0020】
レンズ鏡筒100は、前述したように焦点距離を可変調整可能なズームレンズであって、固定鏡筒110の内部に、カム筒120と、ガイドバー保持筒130と、絞りユニット150と、5群のレンズ群(L1〜L5)と、を備えている。レンズ鏡筒100は、背面側の端部に設けられたレンズマウントLMを介してカメラ本体10に装着される。
【0021】
レンズ鏡筒100における焦点距離の変化(ズーミング)は、レンズ群(L1〜L5)の光軸OA方向の移動によって行われる。図1〜図3は、広角側端部を示し、望遠側では図示状態からレンズ群(L1〜L5)がそれぞれ所定量前面側に移動する。また、レンズ鏡筒100における結像位置の移動(焦点調節)は、第2レンズ群L2の光軸OA方向の移動によって行われる。さらに、レンズ鏡筒100は、手振れ等に起因する結像面における像移動を補正する防振ユニット200を備えており、第4レンズ群L4はこの防振ユニット200を構成するブレ補正光学系である。
【0022】
固定鏡筒110は、当該レンズ鏡筒100の外面を形成する外筒部111と、その内周側に同心状に位置する固定内筒112とが、基端部(背面側の端)で一体に構成されている。固定鏡筒110の背面側の端部には、レンズマウントLMが固定されている。
外筒部111の外周には、ピント操作環101とズーム操作環102とが、それぞれ回転可能に装着されている。
【0023】
外筒部111と固定内筒112の間には、径方向に所定間隔の空間が形成されており、その空間内に、図示しない合焦モータや、図1および図2に示すように当該レンズ鏡筒100を制御するレンズ制御部を構成する制御基板103が配設されている。
図3に示すように、固定内筒112は、ガイドバー保持筒130の移動を案内する直進溝113と、カム筒120を移動駆動するカム溝114と、を備えている。
【0024】
カム筒120は、固定内筒112の内側に、回転および直進移動可能として配置されている。図3に示すように、カム筒120は、外周面に突設されたフォロアピン121と、光軸OAと平行に形成された直進操作溝122と、ガイドバー保持筒130を移動操作する内筒カム溝123と、防振ユニット200(第4レンズ群L4)を移動操作する4群カム溝124とを、備えている。
フォロアピン121は、固定内筒112に形成されたカム溝114に摺動移動可能に嵌合している。直進操作溝122には、ズーム操作環102に固定された操作キー104が固定内筒112を貫通して嵌合している。これにより、カム筒120は、ピント操作環101の回転によって操作キー104を介して回転操作され、フォロアピン121が嵌合する固定内筒112のカム溝114の光軸OA方向における変位に従って直進移動するようになっている。
【0025】
第1レンズ群L1と第2レンズ群L2は、それぞれ第1レンズ枠F1および第2レンズ枠F2に保持され、固定鏡筒110に直進移動可能に設けられている。第1レンズ枠F1および第2レンズ枠F2は、図示しない連繋機構を介してカム筒120と連繋しており、第1レンズ群L1と第2レンズ群L2はカム筒120の回転および直進に連動して直進するようになっている。
【0026】
ガイドバー保持筒130は、略円筒状の部材であって、カム筒120の内側に回転および直進移動可能に配置されている。ガイドバー保持筒130は、その前方側端部近傍に第3レンズ群L3が第3レンズ枠F3を介して固定され、背面側の端部に第5レンズ群L5が第5レンズ枠F5を介して固定されている。
また、ガイドバー保持筒130の内部には、一対のガイドバー(メインガイドバー141およびサブガイドバー142)が光軸OAと平行に配設されており、これらのガイドバー141,142が、防振ユニット200(第4レンズ群L4)を直進移動可能に支持している。
【0027】
ガイドバー保持筒130の外周面には、フォロアピン133が突設されている。フォロアピン133は、カム筒120に形成された内筒カム溝123に摺動移動可能に嵌合してこれを貫通し、その先端が固定内筒112の内周に形成された直進溝113に摺動移動可能に嵌合している。これにより、ガイドバー保持筒130は、カム筒120の回転および直進に伴って、直進溝113に規定されつつ内筒カム溝123によって移動駆動されて、直進移動するようになっている。
【0028】
防振ユニット200は、所定厚さの円盤状の概略形状であり、ブレ補正光学系である第4レンズ群L4を光軸OAと直交する面内において移動駆動可能に保持している。
防振ユニット200は、その外周に、ガイド軸受部230と、回り止め係合部240と、フォロアピン201と、を備えている。
【0029】
ガイド軸受部230には、ガイドバー保持筒130におけるメインガイドバー141に所定の嵌合公差でガタ無く摺動移動可能に嵌合するスリーブ231が光軸OAと平行に圧入固定されている。回り止め係合部240は、外側に開放するU字状の係合溝241を備えている。係合溝241の幅(対向面の間隔)は、サブガイドバー142が摺動移動可能に嵌るように設定されている。
フォロアピン201は、防振ユニット200の外周所定位置に突設されている。
フォロアピン201は、図3に示すように、ガイドバー保持筒130を貫通(遊嵌)し、その外周側に位置するカム筒120の4群カム溝124に摺動移動可能に嵌合している。
【0030】
そして、防振ユニット200は、ガイド軸受部230のスリーブ231がメインガイドバー141に嵌合すると共に、回り止め係合部240の係合溝241がサブガイドバー142に嵌合し、メインガイドバー141に案内されると共にサブガイドバー142によって回転が規制され、回転することなく直進移動可能としてガイドバー保持筒130に設けられている。
防振ユニット200は、カム筒120が回転および直進するとその4群カム溝124によってフォロアピン201が操作され、メインガイドバー141に沿って直進移動する。
すなわち、防振ユニット200は、ズーム操作環102の回転によるカム筒120の回転および直進によって直進移動するガイドバー保持筒130の内部を、ガイドバー保持筒130とは独立した異なる関係で回転することなく直進移動するようになっている。
【0031】
防振ユニット200は、その保持する第4レンズ群L4を光軸OAと直交する面内で手振れ等に起因する結像面における像移動を相殺するように移動駆動し、像ブレを補正するように作用する。
なお、ガイドバー保持筒130および防振ユニット200の詳細については、後述する。
【0032】
絞りユニット150は、ガイドバー保持筒130の前面側に設けられている。
絞りユニット150は、後に詳述する絞り連動機構300(図6に示す。図1〜図3には示さず)を介したカメラ本体10側の操作によって絞り開口径を調整する。
【0033】
そして、上記のように構成されたレンズ鏡筒100は、固定鏡筒110における外筒部111に設けられたズーム操作環102が回転操作されると、操作キー104を介して回転操作されてカム筒120が回転しつつ直進する。
このカム筒120の回転および直進によって、第1レンズ枠F1(第1レンズ群L1)、第2レンズ枠F2(第2レンズ群L2)、防振ユニット200(第4レンズ群L4)およびガイドバー保持筒130(第3レンズ群L3と第5レンズ群L5)が、それぞれ所定の関係で直進して光軸OA方向に相対変位し、焦点距離の変更(ズーミング)が行われる。
【0034】
つぎに、ガイドバー保持筒130および防振ユニット200について、詳細に説明する。
ガイドバー保持筒130は、前述したように、円筒状の部材であって、カム筒120の内側に摺動回転および光軸方向に摺動移動可能に嵌合配置されている。
ガイドバー保持筒130は、所定長さの円筒状の基筒部131と、この基筒部131の背面側の端面に固定された5群フランジ132と、防振ユニット200(第4レンズ群L4)を直進移動可能に支持する一対のガイドバー(メインガイドバー141およびサブガイドバー142)と、を備えている。
【0035】
基筒部131の前面側近傍の内周には、小径の3群フランジ131Fが形成されている。また、基筒部131の外周面には、前述したようにフォロアピン133が突設されている。
5群フランジ132は、3群フランジ131Fと対応する内径の円環状の部材であって、基筒部131の背面側の端面に、図示しないネジによって締着固定されている。
【0036】
メインガイドバー141およびサブガイドバー142は、それぞれ所定径の丸軸状の部材であって、基筒部131の3群フランジ131Fと5群フランジ132とにそれぞれ端部が固定されて、ガイドバー保持筒130の内部の内周近傍に、光軸OAと平行に設けられている。
メインガイドバー141とサブガイドバー142の周方向における配設位置は、後述する防振ユニット200におけるボイスコイルモータ250X,230Yとの関係において設定されている。これについては、後に詳述する。
【0037】
そして、ガイドバー保持筒130は、カム筒120の内側に回転および直進移動可能として配置され、外周面に植設されたフォロアピン133は、前述したようにカム筒120に形成された内筒カム溝123に摺動移動可能に嵌合して貫通し、その先端が固定内筒112の内周に形成された直進溝113に摺動移動可能に嵌合している。
これにより、ガイドバー保持筒130は、カム筒120の回転および直進に伴って、直進溝113に規定されつつ内筒カム溝123によって移動駆動されて、直進するようになっている。
【0038】
前述したように、ガイドバー保持筒130における基筒部131の3群フランジ131Fには、その背面に、第3レンズ群L3が第3レンズ枠F3を介して固定されている。
また、ガイドバー保持筒130における5群フランジ132の背面側の端に、第5レンズ群L5が第5レンズ枠F5を介して固定されている。
【0039】
つぎに、防振ユニット200について説明する。
防振ユニット200は、ベース枠210と、防振レンズ保持枠220と、ベース枠210に対して防振レンズ保持枠220を移動駆動する一対(2組)のボイスコイルモータ250X,250Y等を備えている。なお、ボイスコイルモータは、以下、VCMと略記する。
【0040】
ベース枠210は、所定厚さの円盤状で、その外周面に、ガイド軸受部230と、回り止め係合部240と、フォロアピン201と、を備えている。これらガイド軸受部230、回り止め係合部240およびフォロアピン201の配設位置等については、後に詳述する。
また、ベース枠210の外周には、後述する絞り連動機構300(図6に示す。図1〜図3には示さず)における揺動レバー320が枢着ピン301によって枢着されている。この揺動レバー320の、防振ユニット200の周方向における装着位置は、ガイドバー140との関係において設定されており、これについては、後に詳述する。
【0041】
さらに、ベース枠210の背面側には、ユニット基板202が装着されている。このユニット基板202には、固定鏡筒110に配設された制御基板103とフレキシブルプリント基板(FPC)203を介して接続するための接合部203Aが設けられている。
FPC203は、固定鏡筒110(制御基板103)に対する防振ユニット200の相対直進変位を許容するために、光軸OA方向に屈曲反転して径方向において所定量重合するように配設されている。
【0042】
FPC203は、制御基板103から後述するVCM250(250X,250Y)への制御信号および駆動電力を供給する。
このFPC203の、防振ユニット200(ユニット基板202)の周方向における接続位置は、ガイドバー140との関係において設定されており、これについては、後に詳述する。
【0043】
防振レンズ保持枠220は、所定厚さの円盤状で、中央に第4レンズ群L4を保持している。防振レンズ保持枠220は、図示しないバネ等の付勢手段でベース枠210に近接する方向に付勢されると共に、ベース枠210との間に介設された図示しないボールが転動することで光軸OA方向には変位することなく光軸OAと直交する方向に円滑に移動可能となっている。
【0044】
VCM250X,250Yは、詳細は図示しないが、ベース枠210に設けられたコイルと、防振レンズ保持枠220のこれと対向する位置に設けられた駆動用マグネットおよびヨークと、により構成されている。VCM250X,250Yは、コイルに電流を流すことで、駆動用マグネットおよびヨークが固定された防振レンズ保持枠220(第4レンズ群L4)を、光軸OAと直交する面内で移動駆動する。
【0045】
一方のVCM250Xは、光軸OAを中心とするX軸マイナス側に駆動方向をX軸方向として、また、他方のVCM250Yは、光軸OAを中心とするY軸プラス側に駆動方向をY軸方向として、同一円周上(光軸OAからの距離が等しい位置)に配設されている。
このようなVCM250X,250Yの配置により、両者の駆動を組み合わせることで防振レンズ保持枠220(第4レンズ群L4)を光軸OAと直交する平面内における任意の方向に移動駆動することができるようになっている。
【0046】
つぎに、絞りユニット150を操作する絞り連動機構300について説明する。
図6に示すように、絞り連動機構300は、絞り操作環310と、揺動レバー320と、を備えて構成されている。なお、図6は、絞り連動機構300の構成を簡略化して示しており、直接関係の無い構成要素は省略してある。
【0047】
絞り操作環310は、円環状の環状部311から絞り操作アーム312が延設されて構成されている。
絞り操作環310は、図1〜図3には示さないが、環状部311が、レンズ鏡筒100の基端部に固定されたレンズマウントLMの内側に回転可能に装着されている。絞り操作環310は、図示しない絞り操作環付勢バネによって絞りユニット150における絞り羽根を開放操作する方向に回転付勢されている。そして、絞り操作環310は、図示しないレンズ側連動部が、カメラ本体10に設けられた図示しない本体側連動部に操作されて回転するようになっている。
【0048】
絞り操作アーム312は、環状部311の外周縁部から前面側に向かって光軸OAと平行に延設されている。絞り操作アーム312には、その延設方向に沿って係合スリット313が形成されている。係合スリット313には、後述する揺動レバー320の係合突起321が嵌合しており、これによって絞り操作環310の回転を揺動レバー320に伝達するようになっている。
【0049】
揺動レバー320は、所定の長さを有し、その略中央で防振ユニット200におけるベース枠210の外周面に、枢着ピン301によって揺動可能に枢支されている。この揺動レバー320の防振ユニット200への枢着位置については、後に詳述する。
揺動レバー320の両端部には、それぞれ係合突起321,322が突設されている。一方(背面側)の係合突起321は、絞り操作アーム312の係合スリット313に嵌合している。また、他方の係合突起321は、絞りユニット150における操作アーム151と係合している。
【0050】
絞りユニット150における操作アーム151は、光軸OAを中心とする回転によって絞り羽根の開口量を調整操作する絞り操作板152から、光軸OAと平行に延設されている。操作アーム151には、その延設方向に沿って操作スリット153が形成されており、この操作スリット153に揺動レバー320の係合突起321が嵌合している。
【0051】
上記のように構成された絞り連動機構300は、絞り操作環310の回転が絞り操作アーム312を介して揺動レバー320を揺動させ、揺動レバー320の揺動が絞り操作アーム151を介して絞りユニット150の絞り操作板152を回転操作する。これにより、絞りユニット150における絞り羽根の開口量が調整操作される。
【0052】
ズーミング操作時における、絞りユニット150が装着されたガイドバー保持筒130と、揺動レバー320が枢着された防振ユニット200との、直進方向における相対変位は、揺動レバー320における係合突起321,322が、絞り操作アーム312の係合スリット313、または、絞りユニット150における操作アーム151の操作スリット153に沿って移動することで許容する。
【0053】
すなわち、絞り連動機構300は、防振ユニット200に枢着された揺動レバー320が、ガイドバー保持筒130の直進移動およびガイドバー保持筒130と防振ユニット200(第4レンズ群L4)の光軸OA方向における相対変位を許容しつつ、絞り操作環310と絞りユニット150における絞り操作板152とを、連動させる。
【0054】
つぎに、図5を参照して、ガイドバー保持筒130におけるガイドバー140(メインガイドバー141およびサブガイドバー142)の周方向における配設位置に対する防振ユニット200におけるVCM250X,250Yの配設位置の関係、防振ユニット200におけるフォロアピン201の配設位置、防振ユニット200に対するFPC203の配設位置、および、防振ユニット200に対する絞り連動機構300における揺動レバー320の配設位置、について説明する。
【0055】
防振ユニット200におけるVCM250X,250Yの配設位置と、ガイドバー保持筒130におけるガイドバー140(メインガイドバー141およびサブガイドバー142)の周方向における配設位置との関係は、以下のように設定されている。
すなわち、VCM250XとVCM250Yとは、メインガイドバー141とサブガイドバー142の中心を結ぶ第1直線によって2分割された領域における一方の側に双方が位置する。さらに、VCM250Yは、第1直線と、光軸OAを通り第1直線と直交する第2直線とによって4分割された第1領域内の、第2直線より第1直線に近い位置(A1<A2)に配置される。
すなわち、VCM250Yは、メインガイドバー141の近傍に配設される。これにより、メインガイドバー141とサブガイドバー142の間の距離を確保しつつ、モーメントを抑える事ができ、光学系の振動的な偏芯による光学性能劣化を抑えられる。
【0056】
防振ユニット200におけるフォロアピン201の配設位置は、第2直線より第1直線に近い位置(B1<B2)に設定される。
すなわち、フォロアピン201は、ガイド軸受部230(メインガイドバー141嵌合位置)の近傍に配設されるものである。これにより、カム駆動効率を向上すると共に、駆動力による防振ユニット200の偏芯を抑え、ズーム駆動方向による光学性能の往復差を軽減できる。
【0057】
防振ユニット200に対するFPC203の接合部203Aの配設位置は、第2直線より第1直線に近い位置(C1<C2)に設定される。
すなわち、FPC203は、防振ユニット200におけるメインガイドバー141の近傍に配設されるものである。これにより、FPC203がその強さ(剛性)によって防振ユニット200を押圧操作することによる防振ユニット200の偏芯を抑え、光学性能の劣化を軽減できる。
【0058】
防振ユニット200に対する絞り連動機構300における揺動レバー320の配設位置は、第2直線より第1直線に近い位置(D1<D2)に設定される。
すなわち、揺動レバー320は、防振ユニット200におけるガイド軸受部230(メインガイドバー141の嵌合位置)の近傍に配設されるものである。これにより、絞り駆動時および絞り系のばねチャージ時において防振ユニット200に作用する2本のガイドバー141,142を結ぶ軸に対して捻れる方向のモーメントによる、防振ユニット200(第4レンズ群L4)の偏芯を抑制でき、光学性能劣化を抑えることができる。
【0059】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)レンズ鏡筒100は、防振ユニット200のVCM250XとVCM250Yが、ガイドバー保持筒130におけるメインガイドバー141とサブガイドバー142の中心を結ぶ第1直線によって2分割された領域における一方の側に双方が位置し、さらに、VCM250Yは第2直線より第1直線に近く、メインガイドバー141の近傍に配設されている。これにより、2本のガイドバー141,142の距離を確保しつつ、モーメントを抑える事が出来て、光学系の振動的な偏芯による光学性能劣化を抑えられる。
【0060】
(2)防振ユニット200のフォロアピン201は、第2直線より第1直線に近く、ガイド軸受部230(メインガイドバー141嵌合位置)の近傍に配設されている。これにより、カム駆動効率を向上すると共に、駆動力による防振ユニット200の偏芯を抑え、ズーム駆動方向による光学性能の往復差を軽減できる。
【0061】
(3)防振ユニット200に対するFPC203の配設位置は、第2直線より第1直線に近く、防振ユニット200におけるガイド軸受部230(メインガイドバー141嵌合位置)の近傍に配設されている。これにより、FPC203がその剛性によって防振ユニット200を押圧操作することによる防振ユニット200の偏芯を抑え、光学性能の劣化を軽減できる。
【0062】
(4)防振ユニット200に対する絞り連動機構300における揺動レバー320の配設位置は、第2直線より第1直線に近く、防振ユニット200におけるガイド軸受部230(メインガイドバー141嵌合位置)の近傍に配設されている。これにより、絞り駆動時および絞り系のばねチャージ時において防振ユニット200に作用するモーメントによる防振ユニット200(第4レンズ群L4)の偏芯を抑制でき、光学性能劣化を抑えることができる。
【0063】
(変形形態)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)上記実施形態では、VCM250Yは、メインガイドバー141とサブガイドバー142の中心を結ぶ第1直線と、光軸OAを通り第1直線と直交する第2直線とによって4分割された第1領域内の、第2直線より第1直線に近い位置(A1<A2)に設定されているが、他方のVCM250Xの位置設定については規定していない。
【0064】
そこで、図7に示すように、上記実施形態の設定に加えて、VCM250Xを、第1直線と第2直線とによって4分割された領域のうちの第1領域に隣接する第2領域における、前記第2直線よりも前記第1直線に近い位置(E1<E2)となる設定としても良い。なお、図7は、上記実施形態における図6と対応する防振ユニットの前面カバーを外して前面側から見た図であり、各構成要件には上記実施形態と同符号が付してある。
このような構成により、モーメントを最小限に抑える事が出来て、光学系の振動的な偏芯による光学性能劣化の抑制効果を更に向上できる。
【0065】
また、上記実施形態および変形形態は適宜に組み合わせて用いることができるが、各実施形態の構成は図示と説明により明らかであるため、詳細な説明を省略する。さらに、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0066】
1:カメラ、16:撮像素子、100:レンズ鏡筒、120:カム筒、124:4群カム溝、141:メインガイドバー、142:サブガイドバー、150:絞りユニット、200:防振ユニット、201:フォロアピン、203:フレキシブルプリント基板(FPC)、210:ベース枠、220:防振レンズ保持枠、250X:ボイスコイルモータ、250Y:ボイスコイルモータ、300:絞り連動機構、301:枢着ピン、320:揺動レバー、L4:第4レンズ群、OA:光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインガイドバー及びサブガイドバーで懸架されるベース枠と、
防振レンズを保持するとともに、前記ベース枠に対して互いに直交する2方向に移動可能な防振レンズ保持枠と、
前記防振レンズ保持枠を前記ベース枠に対して前記2方向のそれぞれに移動させる第1ボイスコイルモータ及び第2ボイスコイルモータと、を有する防振ユニットを備え、
前記第1ボイスコイルモータ及び前記第2ボイスコイルモータは、前記防振ユニットにおける、前記メインガイドバーと前記サブガイドバーとを通る第1直線の一方の側に配置され、
前記第1ボイスコイルモータは、前記第1直線と、該第1直線と直交し且つレンズの中心を通る第2直線と、で4分割された領域のうちの第1領域における、前記第2直線よりも前記第1直線に近い位置に配置されていること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズ鏡筒であって、
前記第2ボイスコイルモータは、前記4分割された領域のうちの前記1領域に隣接する第2領域における、前記第2直線よりも前記第1直線に近い位置に配置されていること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレンズ鏡筒であって、
前記防振ユニットの外周に配置されるとともにカム溝が形成された筒体を備え、
前記ベース枠の外周には、前記カム溝に挿入されるフォロアピンが設けられ、
該フォロアピンは、前記第2直線よりも前記第1直線の近くに配置されていること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒であって、
前記防振ユニットは、該レンズ鏡筒の絞りを開閉する絞り連動機構と係合する係合部を有し、
前記係合部は、前記第2直線よりも前記第1直線の近くに配置されていること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒であって、
前記防振ユニットは、前記第1ボイスコイルモータ及び前記第2ボイスコイルモータに電力を供給するフレキシブルプリント基板の接合部を備え、
前記接合部は、前記第2直線よりも前記第1直線の近くに配置されていること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒を備える撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−109001(P2013−109001A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251373(P2011−251373)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】