説明

レンズ駆動装置、及び、それを備えた光ピックアップ

【課題】ナット部材を用いてリードスクリュの回転を直線方向の動きに変換してレンズを移動させるレンズ駆動装置であって、部品点数を低減しつつ安定した動作が期待できるレンズ駆動装置を提供する。
【解決手段】レンズ駆動装置50が備えるナット部材3には、リードスクリュ2のネジ部2aから非ネジ部2bへと外れたナット部材3をネジ部2aに復帰させる弾性部32が一体成型されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナット部材を用いてリードスクリュの回転を直線方向の動きに変換してレンズを移動させるレンズ駆動装置に関する。また、本発明は、そのようなレンズ駆動装置を備える光ピックアップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば光ピックアップ等の光学装置に、ナット部材を用いてリードスクリュの回転を直線方向の動きに変換してレンズを移動させるレンズ駆動装置が備えられている。例えば光ピックアップにおいては、球面収差の補正を行う目的等で、このレンズ駆動装置が使用される(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
なお、このレンズ駆動装置が光ピックアップに備えられる場合においては、例えば、コリメートレンズがレンズ駆動装置によって移動される。コリメートレンズの位置が光軸方向に移動されることで、コリメートレンズから出射されて対物レンズに入射する光の収束発散状態が変更される。このために、レンズ駆動装置によるコリメートレンズの駆動によって球面収差の補正を行うことが可能になる。なお、ここでいう対物レンズは、光源から出射された光を光記録媒体の情報記録面に集光するレンズのことで、コリメートレンズは光源と対物レンズとの間の光路中に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−117000号公報
【特許文献2】特開2009−277330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8は、本出願人の先行開発の光ピックアップが備えるレンズ駆動装置100の構成を示す概略斜視図である。先行開発の光ピックアップのレンズ駆動装置100は、光ピックアップを構成するベース(図示せず)上に設けられる。なお、光ピックアップを構成するベースには、レンズ駆動装置100のほか、光源、光学部材、光検出器、対物レンズアクチュエータ、各種の回路基板等が取り付けられる。
【0006】
図8に示すように、レンズ駆動装置100は、ステッピングモータ1と、リードスクリュ2と、リードナット3と、レンズホルダ4と、ガイドシャフト5と、与圧バネ6と、リターンスプリング7と、を備える。
【0007】
ステッピングモータ1は、リードスクリュ2を回転する駆動源である。駆動源としてステッピングモータが用いられることで、リードスクリュ2の回転によって移動するレンズホルダ4(レンズ)の移動量を、ステップ数で管理することが可能になる。なお、レンズ駆動装置100は、レンズホルダ4が基準位置にあることを検知するフォトインタラプタ(図示せず)を備えている。そして、このフォトインタラプタからの情報とステッピングモータ1のステップ数とから、レンズホルダ4の位置を把握することが可能になっている。
【0008】
ステッピングモータ1の出力軸に取り付けられる金属製のリードスクリュ2には、螺旋状のネジが切られたネジ部2aが設けられている。なお、リードスクリュ2の両端部側には螺旋状のネジが切られていない非ネジ部2bが存在する。平面視(図8のX方向に沿って見た場合を想定)略十字形状に設けられる樹脂製のリードナット3は、その略中央部に、内面にネジが切られた貫通孔を有し、リードスクリュ2のネジ部2aと螺合する。リードナット3は、レンズホルダ4よりもステッピングモータ1側に配置されている。
【0009】
なお、リードナット3は、その下部が光ピックアップを構成するベースに設けられるガイド溝(図示せず)に係合するように配置される。このために、リードナット3は、リードスクリュ2が回転しても自身は回転することなく、リードスクリュ2の長手方向(図8のX方向)に移動する。
【0010】
レンズホルダ4は、コリメートレンズを保持するレンズ保持部4aを有する。また、レンズホルダ4は、リードナット3と当接可能となるように、レンズ保持部4aから延出する略「く」の字状の延出部4bを有する。延出部4bには、リードスクリュ2と略平行となるように配置されるガイドシャフト5が挿通される軸受け部4cが設けられている。この軸受け部4cに挿通されるガイドシャフト5は、リードスクリュ2よりもレンズ保持部4a側に位置するように設けられている。
【0011】
また、レンズホルダ4は、レンズ保持部4aから延出部4bとは反対側に突出するガイド突起4dを有する。このガイド突起4dは、図9に示すように、ベース101(光ピックアップを構成する部材)の壁に設けられるガイド溝8と係合する。なお、図9は、先行開発の光ピックアップが備えるレンズ駆動装置100における、ガイド突起4dとガイド溝8との関係を示す模式図である。
【0012】
レンズホルダ4は、その移動時には、軸受け部4cに挿通されるガイドシャフト5と、ガイド突起4dに係合するガイド溝8とにガイドされて移動する。なお、ガイドシャフト5とガイド溝8とによるガイド方向は、レンズホルダ4に保持されるコリメートレンズの光軸方向(図8のX方向が該当)と一致している。
【0013】
ガイドシャフト5に遊嵌される与圧バネ(圧縮コイルバネ)6は、その一端がレンズホルダ4に当接し、他端が光ピックアップを構成するベースの壁に当接している。この与圧バネ6は、レンズホルダ4を、それが保持するコリメートレンズの光軸方向と平行な方向に付勢して、レンズホルダ4とリードナット3との当接が保たれるようにしている。
【0014】
リードスクリュ2の回転により、リードナット3がステッピングモータ1から離れる方向に移動すると、レンズホルダ4はリードナット3によって押される。これにより、レンズホルダ4は、与圧バネ6の付勢力に反してステッピングモータ1から離れる方向に移動する。一方、リードナット3がステッピングモータ1に近づく方向に移動すると、レンズホルダ4は与圧バネ6の付勢力によって押され、リードナット3に当接しながらステッピングモータ1に近づく方向に移動する。
【0015】
リターンスプリング7は、ステッピングモータ1に近づく方向に移動するリードナット3がリードスクリュ2のネジ部2aから非ネジ部2bへと外れて(抜け落ちて)使用できなくなるのを防止するために設けられる。このリターンスプリング7は、板金を折り曲げ形成して得られる。なお、このリターンスプリングは、板バネでなくコイルバネで構成されることもある。
【0016】
例えば、ステッピングモータ1の動作を制御する制御ソフトが誤動作を起こした場合等に、リードナット3がステッピングモータ1に接近する動作が止まらなくなることがある。このような場合に、リードナット3は、リードスクリュ2のネジ部2aから一旦外れるが、制御ソフトが正常な状態に戻った場合に、リターンスプリング7の作用(弾性力)によってネジ部2aへと復帰可能となっている。すなわち、リターンスプリング7は、上述の誤動作等が起こった場合でも、リードナット3がリードスクリュ2に食い付く(噛み込む)ことを防止しつつ(リードナット3が一旦脱落される効果による)、リードナット3がリードスクリュ2のネジ部2aから非ネジ部2bへと外れて使用できなくなるという事態を防止する。
【0017】
ところで、近年においては、光ピックアップは小型化される傾向にあり、そのベースに配置される部品はできる限り少なくすることが望まれている。この点を考慮して、特許文献1に開示されるように、リードナットにリターンスプリングと同様の機能を発揮するバネ部材を組み付けることが考えられる。しかしながら、リードナットは非常に小さな部材とされる傾向にあり、リードナットにバネ部材を組み付けるのは容易ではない。
【0018】
また、リードナットにリターンスプリングと同様の機能を発揮するバネ構造を一体的に設けることも考えられる。しかし、このような構成は、リードナットを形成するための金型が複雑となったり(金型の抜き方向を一方向とし難い)、小型なリードナットを形成し難かったりする等の課題があり、従来実現されていない。
【0019】
以上の点に鑑みて、本発明の目的は、ナット部材を用いてリードスクリュの回転を直線方向の動きに変換してレンズを移動させるレンズ駆動装置であって、部品点数を低減しつつ安定した動作が期待できるレンズ駆動装置を提供することである。また、本発明の他の目的は、そのようなレンズ駆動装置を備え、信頼性が高く、低コストな光ピックアップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために本発明のレンズ駆動装置は、リードスクリュの回転を該リードスクリュのネジ部に螺合するナット部材によって直線方向の動きに変換してレンズを移動させるレンズ駆動装置であって、前記ナット部材には、前記リードスクリュのネジ部から非ネジ部へと外れた前記ナット部材を前記ネジ部に復帰させる弾性部が一体成型されている構成(第1の構成)となっている。
【0021】
本構成によれば、例えば制御ソフトの異常等によってネジ部からナット部材が脱落しても、異常が解消された後に、ナット部材に設けられる弾性部の作用によってリードナットがネジ部に復帰可能である。すなわち、本構成のレンズ駆動装置は、制御ソフトの異常解消によって元の状態に復帰可能な構成であり、安定した動作が期待できる。そして、ナット部材のネジ部への復帰を可能にする弾性部が、ナット部材に一体成型されているために、復帰用のバネ部材を別に準備する必要がなく、装置の低コスト化や小型化が期待できる。
【0022】
上記第1の構成のレンズ駆動装置において、前記ナット部材は、前記ネジ部に係合するネジ孔部が形成された板状部と、前記板状部から延び出す延出部と、有し、前記板状部と前記延出部との接続部分近傍に、くびれ部が形成され、前記弾性部は、前記延出部が前記くびれ部で前記板状部に対して折り曲げられてなる構成(第2の構成)とするのが好ましい。
【0023】
この構成では、ナット部材を、抜き方向が一方向の金型を用いて形成可能である。このために、ナット部材に弾性部を設けても金型の構成が複雑にならず、低コスト化が期待できる。また、一方向抜きの金型を使用可能とするための貫通孔を板状部に無駄に設ける必要がなく、ナット部材を小型化し易い。
【0024】
上記第2の構成のレンズ駆動装置において、前記延出部は、延出方向が前記板状部の板状面と略平行な方向であるとともに、前記板状部と略平行な平板形状である構成(第3の構成)としてもよい。本構成によれば、ナット部材の構造を簡単なものとし易い。
【0025】
また、上記第2の構成のレンズ駆動装置において、前記延出部は、延出方向が前記板状部の板状面と略平行な方向であるとともに、屈曲又は湾曲形状である構成(第4の構成)としてもよい。そして、この第4の構成のレンズ駆動装置においては、前記板状部には、前記延出部の折り曲げられた先端側を挿通する貫通孔が形成されている構成(第5の構成)とするのが好ましい。本構成では、弾性部を得るための延出部の折り曲げ状態が維持し易い。
【0026】
上記目的を達成するために本発明は、上記第1から第5のいずれかの構成のレンズ駆動装置を備える光ピックアップである構成となっている。この光ピックアップは、光源と、前記光源から出射される光を光記録媒体の情報記録面に集光する対物レンズと、前記光源と前記対物レンズとの間の光路中に配置されるコリメートレンズと、を備え、前記レンズ駆動装置によって前記コリメートレンズの位置が移動される構成であってもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ナット部材を用いてリードスクリュの回転を直線方向の動きに変換してレンズを移動させるレンズ駆動装置であって、部品点数を低減しつつ安定した動作が期待できるレンズ駆動装置を提供可能である。また、本発明によれば、そのようなレンズ駆動装置を備えるために、信頼性が高く、低コストで製造可能な光ピックアップを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態の光ピックアップの外観構成を示す概略斜視図
【図2】本実施形態の光ピックアップの光学構成を示す概略平面図
【図3】本実施形態の光ピックアップが備えるレンズ駆動装置の構成を示す概略平面図
【図4】本実施形態のレンズ駆動装置が備える第1形態のリードナットの構成を示す概略平面図
【図5】第1形態のリードナットが金型から取り出された状態を示す概略図
【図6】本実施形態のレンズ駆動装置が備える第2形態のリードナットの構成を示す概略平面図
【図7】第2形態のリードナットが金型から取り出された状態を示す概略図
【図8】本出願人の先行開発の光ピックアップが備えるレンズ駆動装置の構成を示す概略斜視図
【図9】先行開発の光ピックアップが備えるレンズ駆動装置における、ガイド突起とガイド溝との関係を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明のレンズ駆動装置が適用された光ピックアップの実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態の光ピックアップは、ブルーレイディスク(BD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)といった3種類の規格の光ディスク(光記録媒体の一例)に対して情報の読み取りや書き込みを行うことが可能となっている。
【0030】
図1は、本実施形態の光ピックアップ10の外観構成を示す概略斜視図である。光ピックアップ10を構成するピックアップベース101には、光源、光学部材、本発明のレンズ駆動装置、対物レンズアクチュエータ、光検出器(これらについては後述する)が搭載される。また、ピックアップベース101には、光ピックアップ10の動作を制御する上で必要となる各種の回路基板や配線部材(いずれも不図示)等も取り付けられる。
【0031】
なお、ピックアップベース101の左右の端部には軸受け部101a、101bが設けられている。ピックアップベース101は、この軸受け部101a、101bによって、光ディスク装置(光ディスクの再生や記録を行うための装置)に設けられるガイドシャフト(図示せず)に摺動可能に支持されることになる。そして、ガイドシャフトに対して摺動可能に設けられる光ピックアップ10は、回転する光ディスクの所望のアドレスにアクセスして情報の読み取りや書き込みを行うことが可能となる。
【0032】
図2は、本実施形態の光ピックアップ10の光学構成を示す概略平面図である。光ピックアップ10には、第1の半導体レーザ11から出射される光を光ディスクの情報記録面に導くとともに、情報記録面で反射される反射光(戻り光)を光検出器23に導く、BD用の光路が形成されている。また、光ピックアップ10には、第2の半導体レーザ18から出射される光を光ディスクの情報記録面に導くとともに、情報記録面で反射される反射光(戻り光)を光検出器23に導く、DVD及びCD用の光路が形成されている。
【0033】
なお、光ピックアップ10においては、複数の光学部材が、BD用の光路と、DVD及びCD用の光路とで共用される構成となっている。このような構成を採用しているため、光ピックアップ10は、BD、DVD、及び、CDに対応する光ピックアップを少ない部品点数で形成可能になっている。
【0034】
まず、BD用の光路について説明する。第1の半導体レーザ11は、BD用のレーザ光(例えば波長405nm帯のレーザ光)を出射可能になっている。第1の半導体レーザ11から出射されたレーザ光は、回折素子12によって主光と2つの副光とに分けられる。回折素子12を経たレーザ光は偏光ビームスプリッタ13によって反射され、1/4波長板14及びコリメートレンズ15を透過する。コリメートレンズ15を透過したレーザ光は、第1の立ち上げミラー16によって反射されて、第1の立ち上げミラー16の上方にある第1の対物レンズ17へと至る。
【0035】
第1の対物レンズ17は、入射したレーザ光を光ディスクの情報記録面に集光する機能を有する。第1の対物レンズ17によって情報記録面に集光されたレーザ光は、情報記録面で反射される。この反射光(戻り光)は、第1の対物レンズ17を通過後、第1の立ち上げミラー16で反射され、コリメートレンズ15、1/4波長板14、偏光ビームスプリッタ13、ビームスプリッタ19を順に透過する。そして、ビームスプリッタ19を透過した戻り光は、センサーレンズ22によって非点収差を与えられて光検出器23の所定の受光領域に集光される。
【0036】
光検出器23は、受光した光信号を電気信号に変換する光電変換手段として機能する。光検出器23から出力された電気信号は図示しない信号処理部に送られ、この信号処理部で、再生信号、フォーカスエラー(FE)信号、トラッキングエラー(TE)信号等が生成される。
【0037】
次に、DVD及びCD用の光路について説明する。第2の半導体レーザ18は、DVD用のレーザ光(例えば波長650nm帯のレーザ光)とCD用のレーザ光(例えば波長780nm帯のレーザ光)とを切り換えて出射可能となっている。すなわち、第2の半導体レーザ18は2種類の光源を含む構成となっている。このようなレーザ光源は、例えばモノリシックタイプ或いはハイブリッドタイプの2波長レーザによって構成できる。
【0038】
第2の半導体レーザ18から出射されたレーザ光は、ビームスプリッタ19によって反射され、その後、偏光ビームスプリッタ13、1/4波長板14、コリメートレンズ15、及び、第1の立ち上げミラー16を順に透過する。第1の立ち上げミラー16を透過したレーザ光は、第2の立ち上げミラー20によって反射されて、第2の立ち上げミラー20の上方にある第2の対物レンズ21へと至る。
【0039】
なお、偏光ビームスプリッタ13は、BD用のレーザ光に作用する光学部材であり、DVD用のレーザ光及びCD用のレーザ光は、その偏光状態に関係なく透過する。また、第1の立ち上げミラー16はダイクロイックミラーであり、BD用のレーザ光は反射されるが、DVD用のレーザ光及びCD用のレーザ光は透過可能となっている。
【0040】
第2の対物レンズ21は、入射したレーザ光を光ディスクの情報記録面に集光する機能を有する。第2の対物レンズ21によって情報記録面に集光されたレーザ光は、情報記録面で反射される。この反射光(戻り光)は、第2の対物レンズ21を通過後、第2の立ち上げミラー20で反射され、第1の立ち上げミラー16、コリメートレンズ15、1/4波長板14、偏光ビームスプリッタ13、ビームスプリッタ19を順に透過する。そして、ビームスプリッタ19を透過した戻り光は、センサーレンズ22によって非点収差を与えられて光検出器23の所定の受光領域に集光される。
【0041】
BD対応の場合と同様に、光検出器23から出力された電気信号は図示しない信号処理部に送られ、この信号処理部で、再生信号、FE信号、TE信号等が生成される。
【0042】
なお、コリメートレンズ15は、詳細は後述するレンズ駆動装置によって、その光軸方向(図2のX方向)に移動可能となっている。そして、コリメートレンズ15の位置は、光ピックアップ10が対応する光ディスク種の変更やレイヤージャンプ等に応じて適宜移動される。
【0043】
このようにコリメートレンズ15を移動可能とするのは、対物レンズ17、21に入射する光の収束・発散度合いを調整して、球面収差の影響を適切に抑制できるようにするためである。例えばBDは、情報記録面を厚み方向に複数有する多層ディスクが一般的となっている。このため、BD対応の場合にはレイヤージャンプが行われるのが一般的であり、その際に球面収差を適切に補正することが必要になる。コリメートレンズ15は、本発明のレンズ駆動装置によって移動されるレンズの一例である。
【0044】
また、第1の対物レンズ17及び第2の対物レンズ21は、ピックアップベース101に取り付けられる対物レンズアクチュエータ40(図1参照)に搭載された状態で、ピックアップベース101に搭載されることになる。対物レンズアクチュエータ40は、光ピックアップ10に備えられる2つの対物レンズ17、21をフォーカス方向(図1のZ方向が該当)及びトラッキング方向(図1のY方向が該当)に移動可能とする装置である。
【0045】
光ピックアップ10においては、情報の読み取りや書き込みを行う際に、第1の対物レンズ17(或いは第2の対物レンズ21)の焦点位置が常に光ディスクの情報記録面に合うようにフォーカシング制御を行う必要がある。また、光ピックアップ10においては、情報の読み取りや書き込みを行う際に、第1の対物レンズ17(或いは第2の対物レンズ21)によって光ディスクの情報記録面に集光される光スポットの位置が、光ディスクのトラックに常に追随するようにトラッキング制御を行う必要がある。対物レンズアクチュエータ40は、例えば、これらフォーカシング制御及びトラッキング制御を行う際に駆動される。
【0046】
対物レンズアクチュエータ40は、対物レンズ17、21を保持するレンズホルダ41を有し、レンズホルダ41をワイヤ42で揺動可能に支持する構成のものである。そして、コイル及び磁石を利用して発生させた力でレンズホルダ41(すなわち対物レンズ17、21)を動かすものである。このようなタイプの対物レンズアクチュエータは公知であるので、ここでは、その構成に関する詳細な説明は省略する。
【0047】
図3は、本実施形態の光ピックアップ10が備えるレンズ駆動装置50の構成を示す概略平面図である。レンズ駆動装置50は、リードスクリュ2の回転をそのネジ部2aに螺合するリードナット3によって直線方向の動きに変換し、コリメートレンズ15をその光軸方向に移動(ピックアップベース101に対して相対移動)させる装置である。ピックアップベース101上に設けられるレンズ駆動装置50は、図1の破線領域に内蔵される。
【0048】
光ピックアップ1が備えるレンズ駆動装置50の構成は、上述した先行開発の光ピックアップが備えるレンズ駆動装置100(図8参照)の構成と概ね同様である。このために、本実施形態のレンズ駆動装置50のうち、上述したレンズ駆動装置100と重複する部分については同一の符号を付し、特に必要がない場合には、その説明を省略する。
【0049】
なお、レンズ駆動装置50が備えるモータ1は、ステッピングモータが好ましいが、場合によってはDCモータ等でもよい。モータ1をDCモータとする場合には、例えばエンコーダを利用することでレンズホルダ4の位置を把握可能である。また、ネジ部2aと非ネジ部2bとを有するリードスクリュ2は、本発明のリードスクリュの一例である。
【0050】
また、レンズ駆動装置50においては、ガイドシャフト5、及び、ガイド溝8(ピックアップベース101の壁に設けられる)によってガイド機構を形成しているが、本発明のレンズ駆動装置は、この構成に限定されるものではない。前述の構成に代えて、例えば、2本のガイドシャフトによってガイド機構を形成する構成が採用されても構わない。
【0051】
本実施形態のレンズ駆動装置50は、その詳細は後述するが、先行開発の光ピックアップが備えるレンズ駆動装置100とは異なる構成のリードナット3を備える。このリードナット3は、例えばポリアセタール(POM)等の弾性変形可能な樹脂によって形成される。そして、このリードナット3には、リードスクリュ2のネジ部2aから非ネジ部2b(モータ1側の非ネジ部)へと外れたリードナット3をネジ部2aに復帰させる弾性部32が一体成型されている。以下、このリードナット3の詳細構成について、2つの形態を例示する。
【0052】
なお、リードナット3は、本発明のナット部材の一例である。また、上述のように、レンズ駆動装置50が備えるリードナット3には、ネジ部2aから脱落したリードナット3をネジ部2aに復帰させる復帰機構として機能する弾性部31が含まれる。このために、レンズ駆動装置50においては、先行開発のレンズ駆動装置100において設けられたリターンスプリング7(図8参照)が不要になっている。
【0053】
(第1形態のリードナット)
図4は、本実施形態のレンズ駆動装置50が備える第1形態のリードナット3の構成を示す概略平面図で、図4(a)は正面図、図4(b)は側面図である。なお、図4(b)の破線部分は、本来は見えない部分である。
【0054】
図4に示すように、リードナット3は、リードスクリュ2のネジ部2aに係合するネジ孔部31aが形成された板状部31を有する。ネジ孔部31aは平面視略円形状の貫通孔であって、その内面には、ネジ部2aと噛み合うネジ山(図示せず)が形成されている。板状部31には、リードスクリュ2の回転とともにリードナット3自身が回転するのを防止するための回転防止部31bも形成されている。このため、板状部31は、平面視「逆凸の字」状となっている。
【0055】
なお、回転防止部31bは、その大部分がピックアップベース101に設けられる係合溝(図示せず;図3のリードスクリュ2の下側に形成される)に嵌り込む。係合溝は、回転防止部31bの幅(図4(a)の左右方向の長さ)と略同一に形成されている(正確には若干大きく形成されている)ために、リードナット3の回転が防止される。
【0056】
また、リードナット3は、板状部31と一体的に設けられる一対の弾性部32を有する。一対の弾性部32は、板状部31の板面に対して略直交する方向に沿って見た場合に、左右の端部側において板状部31と重なるように形成されている。一対の弾性部32は、板状部31の一端(図4では上端)から斜め方向(斜め下方向)に直線的に延び出しており、その端部は板状部31の板面から所定の距離離れている。
【0057】
図5を参照して、このようなリードナット3の形成方法について説明する。なお、図5は、第1形態のリードナットが金型から取り出された状態を示す概略図で、図5(a)は平面図、図5(b)は図5(a)のA−A位置における断面図である。
【0058】
まず、リードナット3は、一方向抜きの金型を用いて樹脂成型される。図5に示すように、この時点においては上述の弾性部32は形成されていない。金型から取り出されたリードナット3は、上述の板状部31と、板状部31の一側面から延び出す一対の延出部32´とを備える。なお、一対の延出部32´は後述のように折り曲げられて弾性部32となる部分である。
【0059】
延出部32´の延出方向は、板状部31の板状面と略平行な方向である。延出部32´は、板状部31と略平行な平板形状であり、また、図5(a)に示すように平面視略矩形状である。延出部32´の厚みは、特に限定されるものではないが、本形態では板状部31の厚みより薄くなっている。図5(b)に示すように、板状部31と延出部32´との接続部分近傍に、他の部分に比べて厚みが薄くなる、くびれ部(薄厚部)33が形成されている。くびれ部33の幅(図5(a)の左右方向の長さ)は、延出部32´の幅と同じである。
【0060】
延出部32´が、このくびれ部33を利用して板状部31に重なる方向に折り曲げられる(図5(b)の矢印方向に折り曲げられる)ことにより、上述の弾性部32が得られる。なお延出部32´が折り曲げられた状態は、くびれ部33近傍に接着剤を塗付することによって維持される。
【0061】
このように形成されたリードナット3は、図3に示すように、弾性部32が設けられる側がモータ1と対向する姿勢とされて、リードスクリュ2を回転しながらリードスクリュ2の先端側から取り付けられる。
【0062】
例えば制御ソフトの誤動作等によって、リードスクリュ2がリードナット3をモータ1に近づける方向に回転し続ける場合について説明する。この場合、リードナット3は、リードスクリュ2の回転によりモータ1に接近し、リードナット3の弾性部32がモータ1に当接する。このため、リードナット3は、弾性部32の作用によってその進行方向(モータ1に近づく方向)とは逆向きの力を受けることになるが、リードスクリュ2が回転を続けるために更にモータ1に接近して非ネジ部2bへと脱落する。
【0063】
なお、リードナット3の弾性部32の弾性力は、異常動作を続けるリードスクリュ2の回転によってリードナット2がネジ部2aから脱落するように調整されている。これは、リードスクリュ2のネジ部2aとリードナット3との間で食い付き(噛み込み)が生じるのを防止するためである。
【0064】
リードスクリュ2が異常動作を続けている間は、リードナット3はリードスクリュ2のネジ部2aから外れて非ネジ部2bに存在する。この間、リードナット3の弾性部32は弾性変形を起こし弾性力を発生した状態である。異常状態が解消されると、リードナット3は、弾性部32の弾性力によってネジ部2a側に押される。このために、リードナット3がモータ1から離れる方向の回転をリードスクリュ2に与えることにより、リードナット3はネジ部2aと噛み合った状態になる(ネジ部2aに復帰する)。
【0065】
以上のように、本実施形態では、先行開発のレンズ駆動装置100が有するリターンスプリング7(図8参照)を抹消して、非ネジ部2bへと脱落したリードナット3をネジ部2aへと復帰させられる。このために、レンズ駆動装置50は、リードナット3がリードスクリュ2に食い付く可能性を低減して安定した動作を行う構成を、部品点数を削減して実現でき、装置の低コスト化や小型化が期待できる。また、弾性部32を一体成型したリードナット3を一方向抜きの金型を用いて形成できるために、リードナット32に弾性部32を設けたことによる金型のコスト上昇は避けられる。また、弾性部32はくびれ部33を利用した折り曲げによって得られる構成としているために、一方向抜きの金型を使用可能とするための貫通孔を板状部31に無駄に設ける必要がなく、リードナット31を小型化し易い。
【0066】
(第2形態のリードナット)
次に、第2形態のリードナット3について説明する。図6は、本実施形態のレンズ駆動装置50が備える第2形態のリードナット3の構成を示す概略平面図で、図6(a)は正面図、図6(b)は側面図である。なお、図6(b)の破線部分は、本来は見えない部分である。また、第1形態のリードナット3と重複する部分については、その説明を適宜省略する。
【0067】
図6に示すように、リードナット3は、ネジ孔部31aと回転防止部31bとが形成された、平面視「逆凸の字」状の板状部31を有する。また、リードナット3は、板状部31と一体的に設けられる一対の弾性部32を有する。一対の弾性部32は、板状部31の板面に対して略直交する方向に沿って見た場合に、左右の端部側において板状部31と重なるように形成されている。
【0068】
一対の弾性部32は、板状部31の一端(図6では上端)から斜め方向(斜め下方向)に直線的に延び出すとともに、途中で板状部31に向けて屈曲している。そして、一対の弾性部32のそれぞれは、先端側が板状部31に設けられる貫通孔31c(2つ設けられる;本発明の貫通孔の一例)に挿通されている。
【0069】
なお、一対の貫通孔31cは、板状部31を二等分する対称線を基準として対称配置されている。貫通孔31cの形状は特に限定されるものではないが、ここでは平面視略矩形状とされている。
【0070】
図7を参照して、このようなリードナット3の形成方法について説明する。なお、図7は、第2形態のリードナットが金型から取り出された状態を示す概略図で、図7(a)は平面図、図7(b)は図7(a)のB−B位置における断面図である。
【0071】
まず、第2形態のリードナット3も第1形態同様に、一方向抜きの金型を用いて樹脂成型される。図7に示すように、この時点においては上述の弾性部32は形成されていない。金型から取り出されたリードナット3は、上述のネジ孔部31b、回転防止部31b及び貫通孔31cを含む板状部31と、板状部31の一側面から延び出す一対の延出部32´とを備える。なお、一対の延出部32´は後述のように折り曲げられて弾性部32となる部分である。
【0072】
延出部32´の延出方向は、板状部31の板状面と略平行な方向である。延出部32´は、図7(b)に示すように断面視略V字状の屈曲形状(上向きに屈曲している)であり、また、図7(a)に示すように平面視略矩形状である。延出部32´の厚みは、特に限定されるものではないが、板状部31の厚みより薄くなっている。図7(b)に示すように、板状部31と延出部32´との接続部分近傍には、第1形態と同様のくびれ部33が形成されている。
【0073】
延出部32´が、このくびれ部33を利用して板状部31に重なる方向に折り曲げられる(図7(b)の矢印方向に折り曲げられる)とともに、延出部32´の先端側が板状部31の貫通孔31cに挿通されることにより、上述の弾性部32が得られる。なお延出部32´が折り曲げられた状態は、その先端側が貫通孔31cに挿通されているために、くびれ部33近傍に接着剤を塗付しなくても維持される。ただし、第1形態同様に、くびれ部33に接着剤が塗付されてもよい。
【0074】
このように形成された第2形態のリードナット3のリードスクリュ2への取り付け、及び、その作用効果は第1形態と同様であるために、その説明は省略する。なお、第2形態では、延出部32´が屈曲形状とされたが、それに代えて、延出部32´は湾曲形状であっても構わない。
【0075】
以上に示した実施形態は本発明の例示であり、本発明の適用範囲は、以上に示した実施形態の構成に限定されるものではない。
【0076】
例えば、以上に示したリードナット3の形状は例示にすぎず、その形状は適宜変更されてよい。弾性部32の弾性力は、例えば延出部32´の長さや厚み、弾性部32を得るための延出部32´の折り曲げ角度等によって変わるものである。必要な弾性力が得られるように、延出部32´やくびれ部33の構成は適宜変更してよい。また、弾性部32の配置方向は、以上に示した実施形態の構成(上下方向)から例えば90°回転した構成(左右方向)等としても構わない。
【0077】
また、以上に示した実施形態では、リードナット3の弾性部32がモータ1と当接する構成としたが、弾性部32がピックアップベース101の壁に当接する構成等としても構わない。また、レンズホルダ4を基準として、リードナット3と与圧バネ6(図3参照)との位置関係が逆とされる構成も可能であり、この場合には、リードナット3は、弾性部32がモータ1とは反対方向に向く姿勢とされればよい。
【0078】
また、以上に示した実施形態では、レンズ駆動装置50を構成するベースがピックアップベース101である構成とした。しかし、この構成に限らず、レンズ駆動装置50を構成するベースをピックアップベース101とは別に設けて、これをピックアップベース101に取り付けるようにしても構わない。
【0079】
また、以上に示した実施形態では、レンズ駆動装置50によって移動されるレンズがコリメートレンズ15である場合を示した。しかし、本発明の適用範囲はこの構成に限らず、他のレンズが移動される場合にも本発明は適用可能である。例えば、球面収差の補正を行うためにビームエキスパンダーが使用される場合に、これに対して本発明のレンズ駆動装置を適用することも可能である。また、本発明のレンズ駆動装置は、光ピックアップに限らず、例えばカメラ等の他の光学装置にも適用可能である。
【0080】
また、以上に示した実施形態では、光ピックアップ10はBD、DVD、CDに対応する構成とした。しかしながら、本発明は、光ピックアップが対応可能な光ディスクの種類が、以上に示した実施形態以外の場合(対応可能な光ディスクの種類が複数の場合ばかりでなく単数の場合も含む)でも適用できるのは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のレンズ駆動装置は、例えば光ピックアップ等の光学装置に好適である。
【符号の説明】
【0082】
2 リードスクリュ
2a ネジ部
2b 非ネジ部
3 リードナット(ナット部材)
10 光ピックアップ
11 第1の半導体レーザ(光源)
15 コリメートレンズ(レンズ)
17 第1の対物レンズ
18 第2の半導体レーザ(光源)
21 第2の対物レンズ
31 板状部
31a ネジ孔部
31c 貫通孔
32 弾性部
32´ 延出部
33 くびれ部
50 レンズ駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードスクリュの回転を該リードスクリュのネジ部に螺合するナット部材によって直線方向の動きに変換してレンズを移動させるレンズ駆動装置であって、
前記ナット部材には、前記リードスクリュのネジ部から非ネジ部へと外れた前記ナット部材を前記ネジ部に復帰させる弾性部が一体成型されている、レンズ駆動装置。
【請求項2】
前記ナット部材は、前記ネジ部に係合するネジ孔部が形成された板状部と、前記板状部から延び出す延出部と、有し、
前記板状部と前記延出部との接続部分近傍に、くびれ部が形成され、
前記弾性部は、前記延出部が前記くびれ部で前記板状部に対して折り曲げられてなる、請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記延出部は、延出方向が前記板状部の板状面と略平行な方向であるとともに、前記板状部と略平行な平板形状である、請求項2に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記延出部は、延出方向が前記板状部の板状面と略平行な方向であるとともに、屈曲又は湾曲形状である、請求項2に記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記板状部には、前記延出部の折り曲げられた先端側を挿通する貫通孔が形成されている、請求項4に記載のレンズ駆動装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のレンズ駆動装置を備える、光ピックアップ。
【請求項7】
光源と、
前記光源から出射される光を光記録媒体の情報記録面に集光する対物レンズと、
前記光源と前記対物レンズとの間の光路中に配置されるコリメートレンズと、を備え、
前記レンズ駆動装置によって前記コリメートレンズの位置が移動される、請求項6に記載の光ピックアップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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