レンチウイルスベースの免疫原性ベクター
本発明は、5’の長い末端反復配列および3’LTR、組み込み核酸配列(ここで上記組み込み核酸配列は、上記5’LTRによって発現される);ならびに機能的REVコード配列をコードする核酸配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列(ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、そしてここで上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動される)を含むワクチン送達のためのレンチウイルスベクターを提供する。薬学的組成物、本発明のレンチウイルスベクターを作製し使用するための方法もまた提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、2008年3月28日に出願された仮出願第61/040,581号(この全体の内容は、その全体が本明細書に援用される)に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ウイルス感染の予防的処置および治療的処置における使用のための改善されたレンチウイルスベースの免疫原性ベクターを記載する。本発明は、より具体的には、レンチウイルスベクター、上記レンチウイルスベクターを作製し、改変し、増殖し、パッケージングするための方法、ならびにこのようなレンチウイルスベクターを、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染および他の疾患のためのワクチンとして使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ヒトにおける後天性免疫不全症候群(AIDS)、および上記疾患を引き起こすヒト免疫不全ウイルス(HIV)の最初の同定後のほぼ30年間、3300万人を超える人々が、全世界で、HIVとともに生き、400万人を超える人々が毎年HIVに新たに感染している。その一方で、推定280万人が、AIDSによって彼らの命を既に落としている。HIV世界的流行が、全世界で拡がり続けるにつれて、有効なHIVワクチンの必要性が、未だ急務となっている。HIVが変異する異常な能力、抗HIV抗体の多くの現在公知の特異性が、HIV初代単離株(primary isolate)を一貫して中和できないこと、およびHIV感染に対する防御免疫の相関の完全な理解が欠如していることが、所望の有効性を有するHIVワクチンを開発する努力を妨げてきた。現在では、ちょうど上記ウイルスに対する免疫の無効が、実質的には不可能であるように、ワクチンは、HIVに対して真に有効であることを示していない。従って、実質的な満たされていない必要性は、AIDSのための緩和処置としてのみならず、上記ウイルスの伝染を弱め、おそらく完全になくするためにも有効なワクチンについて存在する。HIV感染脾献体の大部分は、後天性免疫不全症候群(AIDS)を発症するが、患者のうちの約10〜15%は、感染の10年後もAIDSを発症せず、AIDS非進行者といわれる(非特許文献1、非特許文献2)。AIDSを実際に発症するヒトのうち、HIV感染患者のうちの約10%が、HIV感染の最初の2〜3年以内にAIDSへと進行し、AIDSへの急速進行者といわれる(非特許文献1、非特許文献2)。非進行者における抗HIV免疫応答およびAIDSへの急速進行者の最初の同定は、HIVに対する防御免疫の相関であり得るものへと、いくらかの洞察を提供した。
【0004】
一般に、AIDSへの急速進行者は、HIVタンパク質に対して低レベルの抗体を有し(非特許文献1、非特許文献3、非特許文献4)、自己由来HIV単離株を中和する抗体が低いかもしくは存在しない(非特許文献3、非特許文献4)。HIVビリオンの血漿レベルは、非進行者と比較して、急速進行者において一般により高く、急速に複製するHIV株は、免疫不全およびより高い毒性のHIV改変体の選択の結果、または急速進行者に感染するより高い毒性のHIV改変体の結果のいずれかとして(非特許文献5)、急速進行者からより頻繁に単離される(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8)。初代HIV感染におけるウイルス血症(plasma viremia)の低下は、CD8+抗HIV細胞傷害性T細胞リンパ球(「CTL」)活性の存在と相関するというデータ(非特許文献9)と合わせて考えると、これらデータは、HIV感染細胞を死滅させる抗HIV CD8+ CTLおよびHIV初代単離株を広く中和する抗体が、HIVに後に曝される非感染個体における治療的抗HIV免疫応答を提供し得ることを示唆する(非特許文献10、非特許文献11)。
【0005】
歴史的には、ワクチンは、強力な抗ウイルス中和抗体応答を誘発することによって、ウイルス感染からの防御を提供する。中和抗体は、上記ウイルス表面上のタンパク質を認識し、健康な細胞への結合および感染を妨げる。しかし、このアプローチは、HIVサブタイプの広い範囲、およびHIVが十分に多様でない免疫応答から逃れることを可能にする急速な変異速度に起因して、HIVに対して有効ではない。中和抗体を誘発するように設計されたワクチンの最も成功したもののうちのいくつかは、HIVに由来する組換えエンベロープタンパク質からなる。ワクチンによる防御が不十分であることは、今までは、強くかつ多様な細胞性免疫応答および体液性免疫応答を刺激できなかったことの結果であり得る。研究者らはまた、細胞性免疫応答に基づいて、HIVワクチンを開発している最中である。細胞性免疫は、ウイルスに感染した細胞を死滅させる上記CTL、もしくはCD8+ Tリンパ球に基づいている。このアプローチは、疾患が発症せずかつ上記ウイルスが別の個体に伝染する可能性を低くするように、上記身体におけるウイルスの増殖を妨げる。
【0006】
現在開発中である第1世代のHIVワクチンは、防御のある形態を提供し得るが、上記ワクチンは、完全には防御的ではない。疾患に対する予防は、AIDSワクチンの第1世代のプロトタイプで起こる可能性は低い。より可能性があることには、これらワクチンは、感染を妨げるのではなく、上記疾患の臨床経過に影響を及ぼし、ウイルス負荷を軽減し、そしてAIDSへの進行を遅らせることによって、症状緩和または症状無しでの生存を長期化する。最後に、このようなワクチンは、個人間伝染に影響を及ぼし得る。なぜなら高いウイルス負荷は、HIV伝染速度の増大と強く相関したからである。例えば、Holodniy 2006を参照のこと。
【0007】
従って、ワクチンは、低下した伝染を生じるレベルにまでウイルス負荷を低下させ得る。個体レベルでのワクチンは、よって、全人口のスケールにおいて、疫学的レベルでは極めて有益であり得る。しかし、部分的に有効であるとしても、ワクチンは、いくらかの個体を感染から防御することにおいて非常に有望であり得る。HIVの伝染速度を低下させることに加えて、感染個体におけるウイルス負荷を低下させることは、AIDSへの進行を遅らせ、余命を延ばす。
【0008】
上記ウイルスの2つの生物学的特徴は、ワクチン開発に対する最大の妨害を引き起こしている:その異常な遺伝的多様性およびそのエンベロープタンパク質の理解しがたい特性。例えば、Brander,Frahmら 2006;Butler,Pandreaら 2007;およびMcBurney and Ross 2007を参照のこと。以前のワクチンの主導(上記HIVエンベロープタンパク質に対する免疫応答の惹起に焦点を当てる)は、HIVのこれらの特徴に起因して大抵失敗した。近年の失敗例は、全体としてほとんど有効性がない、合成gpl20を含むワクチンであった。三価アデノウイルスワクチンを使用する別のワクチン治験は、ワクチンレシピエントにおいても予防的効果もしくは治療的効果を提供することができないことから、不意に、延期された。
【0009】
よって、HIV感染のための新たな、改善されたかつ既存のものに代わる予防的および治療的処置モダリティーの必要性が継続してあり、まだ満たされていない。
【0010】
上記文献もしくは本明細書で引用される任意の文献の引用は、前述のうちのいずれも、当を得た先行技術であるという承認として意図されない。日付に関する全ての陳述もしくはこれら文書の内容に関する説明は、出願人に入手可能な情報に基づいており、これら文書の日付もしくは内容の正確さに関する任意の承認を構成しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Sheppardら,AIDS(1993)7:1159 66
【非特許文献2】Phair,AIDS Res.Human Retroviruses(1994)10:883 885
【非特許文献3】Pantaleoら,N.Engl.J.Med.(1995)332:209 216
【非特許文献4】Caoら、N.Eng.J.Med.(1995)332:201 208
【非特許文献5】Sullivanら、J.Virol.(1995)69:4413 4422
【非特許文献6】Leeら、J.AIDS(1994)7:381 388
【非特許文献7】Mellorsら、Ann.Intern.Med.(1995)122:573 579
【非特許文献8】Jurriaansら、Virology(1994)204:223 233
【非特許文献9】Borrowら、J.Virol.(1994)68:6103
【非特許文献10】Haynesら,Science(1996)271:324 328
【非特許文献11】Haynes,Science(1993)260:1279 1286
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、レンチウイルスベクター、このようなレンチウイルスベクターを作製するための方法、改変するための方法、増殖させるための方法、およびパッケージングするための方法、ならびにこのようなベクターを使用して、被験体における1つ以上の疾患に対する免疫応答を強化するための方法を提供する。
【0013】
一局面において、本発明は、ワクチン送達のための改善されたレンチウイルスベクターを提供し、上記ベクターは、5’の長い末端反復配列および3’LTR;上記5’LTRに作動可能に連結された、第1の核酸配列(本明細書では、「有効負荷(payload)」ともいう);ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列を含む、第2の核酸配列を含み、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動される。
【0014】
一実施形態において、本発明は、ワクチン送達のための改善されたレンチウイルスベクターを提供し、上記ベクターは、5’の長い末端反復配列(LTR)(配列番号8)および3’LTR(配列番号9);上記5’LTRに作動可能に連結された第1の核酸配列(本明細書で「有効負荷」ともいわれる);ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REVコード配列(配列番号10)およびrev応答エレメント(RRE)(配列番号11)含有配列を含む第2の核酸配列を含み、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、そして上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動される。本発明は、上記有効負荷の発現が、上記5’LTRによって駆動されるという点でおよび上記有効負荷の発現がRevおよび上記RRE含有配列の活性に依存する場合に特徴付けられる。言い換えると、上記5’LTRは、上記有効負荷およびREVの発現を駆動するために十分強力なプロモーターであり得る。
【0015】
さらに別の実施形態において、このようなレンチウイルスベクターは、ウインチウイルス由来の5’LTR;レンチウイルス由来の3’LTR;第1の核酸配列(すなわち、有効負荷);ならびに上記5’LTRおよびRRE含有配列およびREVコード配列に作動可能に連結された第2の核酸配列を含み得、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列は、GagおよびPolのうちの一方もしくは両方の全長野生型配列を発現し;上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動される。
【0016】
さらに別の実施形態において、ワクチン送達のための上記レンチウイルスベクターは、5’の長い末端反復配列および3’LTR;上記5’LTRに作動可能に連結された第1の核酸配列;ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列を含む、第2の核酸配列を含み、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動され、上記レンチウイルスベクター構築物は、公知のレンチウイルス調節エレメント(例えば、Tat、Nef、Vif、Vpu、Vprもしくはこれらの組み合わせ)のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0017】
本発明のさらに別の実施形態において、ワクチン送達のための上記レンチウイルスベクターは、全ての公知のレンチウイルス調節エレメント(例えば、Tat、Nef、Vif、Vpu、およびVpr)を具体的に排除する。このような実施形態において、Vpu、Vpr、Vif、Tat、Nef、もしくは類似のレンチウイルスタンパク質のうちの少なくとも1つをコードする上記核酸配列は、上記核酸配列が、機能的なVpu、Vpr、Vif、Tat、Nefをコード出来ないか、もしくはVpu、Vpr、Vif、Tat、Nef、もしくは類似の補助タンパク質をコードする核酸配列が、本発明のレンチウイルスベクター系から除去されるように、破壊される。
【0018】
別の局面において、本発明は、本発明のレンチウイルスベクター;ならびに当該分野で公知である薬学的に受容可能なキャリアおよび/もしくは遺伝子補助剤(genetic adjuvant)を含む、インビトロもしくはインビボでの投与のための薬学的組成物を提供する。
【0019】
別の局面において、本発明は、宿主細胞においてベクターの免疫原性を増大させるための方法を提供し、上記方法は、第1のベクターを含む薬学的組成物を投与する工程、ならびに5’の長い末端反復配列および3’LTR;上記5’LTRに作動可能に連結された第1の核酸配列;ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列を含む、第2の核酸配列を含む、第2のレンチウイルスベクターを含む薬学的組成物を連続的に投与する工程を包含し、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動され、上記ベクターの免疫原性は、増大される。
【0020】
さらに別の局面において、本発明は、被験体における免疫応答を誘導するための方法を提供し、上記方法は、本明細書で開示されるレンチウイルスベクターを含む薬学的組成物を、種々の投与経路およびプロトコル(例えば、DNA初回刺激(prime)/レンチウイルスベクター追加免疫(boost)、DNA初回刺激/2回の相同なレンチウイルスベクター追加免疫、DNA初回刺激/異種ベクター追加免疫、レンチウイルス初回刺激/レンチウイルスベクター追加免疫、レンチウイルスベクターもしくはDNA初回刺激/レンチウイルスベクター追加免疫/アデノウイルスベクター追加免疫ならびに逆もまた同様)を投与する工程を包含し、ここで上記アデノウイルスベクターは、上記第1の追加免疫として投与され、そして上記レンチウイルスベクターは、第2の追加免疫として投与される。
【0021】
従って、一実施形態において、上記方法は、被験体におけるHIV、または上記構築物中にコードされる抗原性もしくは免疫原性の配列に関する他の目的の疾患に対する細胞媒介性免疫応答および体液性免疫応答の両方の生成を、種々の投与経路およびプロトコルにより本明細書で開示されるレンチウイルスワクチンベクターの投与によって提供する。
【0022】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明のレンチウイルスワクチンベクターの投与を包含する、被験体における免疫応答を誘導するための方法を提供し、ここで多様化した免疫が、誘発される。このことは、全身的にもしくは粘膜のいずれかに示される細胞性免疫もしくは体液性免疫を含む。
【0023】
ベクターの有効性および/もしくは免疫原性を増大させる初回刺激/追加免疫、または異種もしくは相同な追加免疫アプローチを提供することは、本発明のさらに別の実施形態であり、上記アプローチは、第1のベクター(例えば、DNA初回刺激プラスミドといわれるか、または本発明のレンチウイルスベクター、当該分野で公知の他のものの中でも、アデノウイルスベースのベクター、ポックスベースのベクター(MVAおよびカナリア痘を含む)、VSVベースのベクター、アルファウイルスベースのベクター(例えば、VEE、セムリキ森林ウイルス)、ヘルペスウイルスベースのベクターを使用する、核酸プラスミド構築物)を投与する工程、ならびに本発明のレンチウイルスベクターを、同じ有効負荷を含む追加免疫として連続的に投与する工程を包含し、ここで第1および第2のベクターのうちの一方もしくは両方は、上記DNA初回刺激プラスミド構築物と同じ有効負荷を含む追加免疫としての、本発明のレンチウイルスベクターであるか、またはいくつかの場合において、初回刺激/追加免疫プロトコルの初回刺激として、本発明のレンチウイルスベクター、続いて、ウイルスベクター追加免疫(例えば、アデノウイルスベースのベクター、ポックスベースのベクター(MVAおよびカナリア痘を含む)、VSVベースのベクター、アルファウイルスベースのベクター(例えば、VEE、セムリキ森林ウイルス)、ヘルペスウイルスベースのベクターを使用する)、あるいは逆もまた同様である。
【0024】
本発明のさらに別の局面において、宿主における感染性複製性ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の複製を阻害するための方法を提供し、上記方法は、5’の長い末端反復配列および3’LTR;上記5’LTRに作動可能に連結された、第1の核酸配列;ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列を含む、第2の核酸配列を含む薬学的組成物を投与する工程を包含し、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動される。
【0025】
本発明のさらに別の局面において、ウイルス、細菌、原虫、および/もしくは微生物の感染について被験体を予防的にもしくは治療的に処置するための方法を提供し、上記方法は、必要な被験体に、5’の長い末端反復配列および3’LTR;上記5’LTRに作動可能に連結された、第1の核酸配列;ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列を含む、第2の核酸配列を含むレンチウイルスベクターを投与する工程を包含し、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動される。
【0026】
このような方法は、初回刺激/レンチウイルスベクター追加免疫アプローチ、ならびに本明細書で開示される他のプロトコルの使用をさらに含み得る。上記方法は、例えば、目的の疾患(癌、もしくは他の疾患状態(例えば、アルツハイマー病、自己免疫疾患、心血管疾患、神経学的疾患、線維症疾患、脂質代謝疾患、細胞外マトリクス関連疾患、および慢性関節変形性疾患、もしくはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる)に対して、被験体における多様なおよび包括的な免疫応答を生成するために使用され得る。
【0027】
本発明のさらに別の局面において、本発明は、パッケージング細胞株および本発明のワクチンベクターを作製するためのパッケージング細胞株を作製する方法を提供する。一実施形態において、組換えレンチウイルスパッケージング細胞を生成するための方法が提供され、上記方法は、細胞に、上記パッケージング細胞において発現し得る核酸、導入能力のある(transduction−competent)ウイルス様粒子を生成する核酸配列;および上記パッケージング細胞において上記目的の配列を発現し得る少なくとも1つの核酸分子を導入する工程を包含し、上記パッケージング細胞は、上記目的の核酸配列を発現する導入能力のあるウイルス様粒子を生成する。
【0028】
前述のレンチウイルスベクター、このようなレンチウイルスベクターを含む薬学的組成物、およびこのようなレンチウイルスベクターを使用するための方法の各々において、上記レンチウイルスベクターは、以下のもの(例えば、機能的に活性なレンチウイルスRNAパッケージングエレメントをコードする核酸配列、機能的中心ポリプリン区画(functional central polypurine tract)(cPPT)、中心終結配列(central termination sequenc)(CTS)および3’LTR近位ポリプリン区画(3’ LTR proximal polypurine tract)(PPT)をコードする核酸配列、ならびに/あるいは非タンパク質もしくはタンパク質ベースのマーカーまたはタグをコードする核酸配列が挙げられるが、これらに限定されない)のうちの1つ以上をさらに含む。特定の実施形態において、本発明のレンチウイルスベクターは、図1、図2もしくは図3に示されるレンチウイルスベクター構築物、またはこれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上を含む。
【0029】
さらに、本発明のレンチウイルスベクターは、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。従って、本発明の一実施形態において、上記第1の核酸配列は、1つ以上の目的の抗原性配列をコードする。本発明のさらに別の実施形態において、1つ以上の目的の配列の発現は、REV−RRE活性に依存する。本発明のさらに別の実施形態において、上記第1の核酸配列は、gag/polコード配列を含む。本発明のさらに別の実施形態において、上記第1の核酸配列もしくは第2の核酸配列は、非改変配列である。本発明のさらに別の実施形態において、上記gagコード配列は、改変gagコード配列を含む。本発明のさらに別の実施形態において、上記改変gagコード配列は、Gagのミリストイル化レセプターのグリシン残基を変化させる少なくとも1つのヌクレオチド置換をさらに含む。本発明のさらに別の実施形態において、上記gag/polコード配列は、細胞発現を増大させるために改変される。本発明のさらに別の実施形態において、上記改変配列は、上記gag配列内のフレームシフトを含む。本発明のさらに別の実施形態において、上記改変は、翻訳フレームシフトによって媒介されないgag−pol機能タンパク質の高レベル発現を支持する。本発明のさらに別の実施形態において、上記cPPTは、上記gag/polコード配列のうちのpolコード配列の一部である。本発明のいくつかの実施形態において、上記機能的に活性なレンチウイルスRNAパッケージングエレメントは、gagパッケージング配列を含む。
【0030】
いくつかの例示的実施形態のこれらおよび他の局面は、以下の詳細な説明および添付の図面とともに考慮される場合に、よりよく認識されかつ理解される。しかし、以下の説明は、好ましい実施形態および多くの具体的な詳細を示しながら、限定ではなく例示によって示されることが理解されるべきである。多くの変化および改変は、上記実施形態の範囲内において、その趣旨から逸脱することなく行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、例示的なHIVワクチン候補およびその種々のアナログを示す。この候補は、プロモーターとしてネイティブHIV LTRを使用する、HIV−1ベースのレンチウイルスベクター(LV)である。これは、gag遺伝子、pol遺伝子およびrev遺伝子を、免疫原性有効負荷として発現する。このLVの重量な特徴は、全長REVコード配列の上流にある上記RRE含有配列の操作もしくは配置にある。このLVの別の重要な特徴は、上記RRE含有配列と上記REVコード配列との間に位置するスプライスアクセプター(SA)部位の存在である。このLVの別の重要な特徴は、免疫原性有効負荷が上記RRE含有配列に対してすぐ近位にあることである。このLVは、必要に応じて、HIV治療ワクチン状況において野生型HIVからのその同定および区別を可能にするために、非タンパク質コード遺伝子配列(non−protein coding genetic sequence)(Gtag)を含む。この配列は、上記SA部位の上流もしくは下流のいずれかに配置され得る。図1に示されるこの4つの他の模式的代表例は、考えられるLVワクチンベクターアナログの非限定的代表例である。第2の構築物は、上記RREエレメントが、上記免疫原性有効負荷の上流もしくは下流に配置され得ることを示す。第3の構築物は、上記Gtag配列が、自由になり得る(can be disposable)ことを示す。第4の構築物は、Revタンパク質をコードする配列の下流に、別の遺伝子有効負荷が配置され得、有効負荷は、遺伝子補助剤、他の免疫原、RNAアンチセンス、リボザイムなどをコードし得ることを示す。第5の構築物は、上記の模式的ベクター構築物代表例の組み合わせである。最後の第6の構築物は、導入遺伝子発現のさらなる調節のために導入され得るさらなるエレメントを含み、ここでSD/SA部位は、任意である。内部プロモーター/Rev組み合わせは、上記の全ての構築物において使用され得る。
【図2】図2は、汎用ワクチン(generic vaccine)であるHIVベースのレンチウイルスベクター構築物およびそのアナログを示す。上記汎用ワクチンベクターは、ネイティブHIV LTRをプロモーターとして使用するHIV−1ベースのレンチウイルスベクター(LV)である。このベクターは、導入された宿主細胞における生成、キャプシド形成および組み込みのための最小限のエレメント(psi、cPPT/ctsおよびpptエレメント)を含む。上記HIVワクチンベクターに関しては、このLVの重量な特徴は、全長REVコード配列の上流での上記RRE含有配列の操作もしくは配置、上記RRE含有配列と上記REVコード配列との間のスプライスアクセプター(SA)部位の配置、および上記免疫原性有効負荷が上記RRE配列に対してすぐ近くにあることにある。このLVは、HIV治療ワクチン状況において野生型HIVからその同定および区別を可能にするために、非タンパク質コード遺伝子配列(Gtag)を含む。この配列は、上記SA部位の上流もしくは下流のいずれかに配置され得る。3つの他の模式的代表例は、考えられるLV遺伝子ベクターアナログのいくつかの非限定的代表例である。第2の構築物は、上記RREエレメントが、上記遺伝子有効負荷の上流もしくは下流に配置され得ることを示す。第3の構築物は、上記Gtag配列が自由になり得ることを示す。第4の構築物は、Revタンパク質をコードする配列の下流に、別の遺伝子有効負荷が配置され得、有効負荷は、遺伝子補助剤、他の免疫原、RNAアンチセンス、リボザイムなどをコードし得ることを示す。最後の第5の構築物は、内部プロモーターに調節されたRev発現および隣り合う遺伝子の発現との配置(configuration)を示す。図1Aにおける最後の例に関しては、SD/SA部位の存在は、任意であり得る。
【図3】図3は、SIN配置を使用する、HIVワクチン候補およびアナログを示す。この図は、本願に記載されるHIVワクチンベクター候補(上から第1)の模式的代表を示す。この候補は、ネイティブHIV LTRプロモーター活性が、絶縁体(Insulator)のようなエレメントの欠失、変異もしくは挿入のいずれかによって破壊されたHIV−1ベースのレンチウイルスベクター(LV)である。このSINベースのHIVワクチンLVは、gag遺伝子、pol遺伝子およびrev遺伝子を、免疫原性有効負荷として発現する。上記HIVワクチンベクターに関しては、このLVの重要な特徴は、全長REVコード配列の上流での上記RRE含有配列の操作もしくは配置、上記RRE含有配列と上記REVコード配列との間の上記スプライスアクセプター(SA)部位の配置、および上記免疫原性有効負荷が上記RRE配列に対してすぐ近くにあることにある。このLVは、HIV治療ワクチン状況において野生型HIVからその同定および区別を可能にするために、非タンパク質コード遺伝子配列(Gtag)を含む。この配列は、上記SA部位の上流もしくは下流のいずれかに配置され得る。4つの他の模式的代表例は、考えられるSINベースのLVワクチンベクターアナログの非限定的代表例である。第2の構築物は、上記RREエレメントが、上記免疫原性有効負荷の上流もしくは下流に配置され得ることを示す。第3の構築物は、上記Gtag配列が自由になり得ることを示す。上から第4の構築物は、上記Revタンパク質をコードする配列の下流に、別の遺伝子有効負荷が配置され得、有効負荷は、遺伝子補助剤、他の免疫原、RNAアンチセンス、リボザイムなどをコードし得ることを示す。最後の第5の構築物は、上記の模式的ベクター構築物代表例の組み合わせである。
【図4】図4A、図4B、図4Cおよび図4Dは、全身および粘膜の液性免疫および細胞性免疫を誘導する、マウスの皮下(SC)HIVワクチンレンチウイルス候補(例えば、本明細書で「VRX1023」といわれる)免疫の結果を示す。マウスに、0日目と15日目に2×107 TUのVRX1023をSC注射して、2回免疫し、次いで、25日目に屠殺した(パネルA)。陰性コントロール群には、Gag導入遺伝子、Pol導入遺伝子およびRev導入遺伝子の代わりにEGFPを有する、2×107 TUのレンチウイルスベクターを与えた。抗HIV抗体を、Elisaによって全身レベル(血清,パネルB)および粘膜レベル(唾液,パネルC)において検出した。HIV−Gagペプチド刺激後にサイトカイン(同じチャネル上で組み合わされたIFNγ、TNFα、IL2)を発現するCD8+ T細胞を、ICSによって検出した(パネルD)。結果は、各群において個々の値(点)と幾何平均(バー)として示す。
【図5】図5は、VRX1023免疫原性が、DNA初回刺激、ベクター追加免疫状況において顕著に改善され得ることを示す。5匹のマウスの群に、PBS、VRX1053 DNA(別のHIVワクチンレンチウイルス候補)、VRX1023 LV、もしくはこれらの組み合わせのいずれかを免疫した。DNAで免疫した場合、マウスに、100μgのpVRX1053 IMを与えた。LV免疫については、マウスに、109 TUのVRX1023 SCを与えた。抗HIV CD8+ T細胞応答を、GagペプチドおよびPolペプチドプールでの脾細胞の刺激後に、ICSによって評価した。バーは、各動物について、CD3+ リンパ球のうちのCD8+ サブセット内で、サイトカイン(同じチャネル上で組み合わされたIFNγ、TNFα、IL2)について、および活性化マーカーCD69について陽性に染色している細胞のパーセンテージを示す。
【図6】図6は、VRXI 023免疫原性が、ベクター製造最適化によって顕著に改善され得ることを図示する。5匹のマウスの群に、pVRX1053 DNA初回刺激(100μgのpVRX1053 IM、3回)、続いて、VRXI023 LV追加免疫(109 TUのVRX1023 SC、初回刺激後2週間)を免疫した。図は、LV製造最適化によって提供された免疫原性改善の例示として、サイトカイン分泌の例を示す。Gag誘導性サイトカイン分泌の各セットは、独立した実験の結果である。右下のパネルは、最適化レンチウイルスベクターを使用することによって、強い細胞性免疫が誘発された(最大21.11%までの、HIV−Gag抗原を認識しかつサイトカイン(IFNγ、TNFα、IL2)分泌によって応答するマウスCD8+細胞)のに対して、使用したワクチン用量は、低かったことを示す。
【図7】図7は、本発明のベクターおよび初回刺激/追加免疫プロトコルによって誘発された長期の細胞媒介性および体液性の抗HIV免疫を示す。5匹のマウスの3つの群に、0日目および15日目に、8×107 導入単位(Transducing Unit)(TU)のVRX1023を2回皮下(SC)注射して免疫した。各群を、それぞれ、免疫の10日後、3週間後、および2ヶ月後に屠殺した(パネルA)。HIV−Gagに対するT細胞応答(点のプロットと左側y軸)を、細胞内サイトカイン染色(ICS)によって測定した。脾細胞を、Gagペプチドで、インビトロで刺激した。パネルBは、CD3+ CD8+ T細胞サブセットのうちのサイトカイン陽性細胞(同じチャネル上で組み合わされたIFNγ、TNFα、IL2)のパーセンテージを示す。サイトカイン生成細胞のパーセンテージは、各個々の動物について示される(点)。バーは、幾何平均を表す。各群において屠殺時に回収した血清サンプルを、抗HIV IgG検出についてElisaによって分析した(赤い折れ線グラフおよび右側のy軸)。データは、各時点について、幾何平均と標準偏差として示される。
【図8】図8は、初回刺激/追加免疫プロトコルの間の比較データを示す。ここで上記初回刺激は、レンチウイルスワクチンベクターもしくはアデノウイルスベクターのいずれかと同じHIV 有効負荷を含むDNAプラスミドであった。等しい用量において、LVは、ヒトアデノウイルス血清型5(Ad5)より高い抗HIV免疫を誘導する。5匹のマウスの群に、パネルAに記載されるスケジュールに従って、3回のDNA初回刺激(100μg DNA IM/動物)で免疫し、続いて、ベクター追加免疫(108 TU/動物,SC)で免疫した。薬物間比較(Head to head comparison)を、2つの源からLVとAd5候補との間で行った。パネルBにおいて、マウスに上記マルチHIV 有効負荷をコードするプラスミドで初回刺激し、次いで、LV VRX−マルチHIVもしくはAd5−マルチHIVのいずれかの等用量で追加免疫した。免疫の1ヶ月後に動物を屠殺し、分析のためにサンプル採取した。T細胞応答(バー、左側y軸)を、HIV−Gagに対するICSによって測定し、幾何平均と標準偏差として示す(CD8+リンパ球サブセット内のサイトカイン陽性細胞(同じチャネル上で組み合わされたIFNγ、TNFα、IL2のパーセンテージ))。抗HIV IgGを、Elisaによって1:100の血清中で検出した(折れ線グラフ;右側y軸)。示された結果は、屠殺時 対 免疫前ベースラインの抗体応答の比率を表す。パネルCおよびDにおいて、第2のAd5候補であるVRC−Ad5(そのレンチウイルス対応物であるVRX1023と同じGag−Pol導入遺伝子を含む)を、評価した。全ての動物に、同じpVRX1053プラスミドで初回刺激し、その後、等用量のいずれかのベクターで追加免疫した。パネルCは、各候補でのベクター追加免疫の2ヶ月後に得られた抗HIV細胞応答を図示し、各群内の累積幾何平均および標準偏差を表す。値は、CD4 T細胞(多機能的T細胞)の中で、3種全てのサイトカインを同時に分泌する細胞のパーセンテージである。血清中の抗HIV IgG応答を、ベクター追加免疫の1ヶ月後および2ヶ月後にElisaによって評価した(パネルD)。標準偏差とともに、線は、各群における幾何平均を表す。免疫前ベースライン値(全ての動物間で類似)を平均し、線付きのラインとして示した。
【図9】図9は、5つの異なるワクチンプロトコルでワクチン接種したマウスから単離されたCD8+細胞の抗HIV細胞媒介性応答の比較データを示す。異種免疫(heterologous immunization)は、CD8+T細胞において最高の累積HIVペプチド特異的サイトカイン応答を誘発する。5匹のマウスの群を、VRXI023もしくはAd5での同種免疫(homologous immunization)、または両方のベクターの組み合わせを使用する異種免疫に供した。HIV Gagペプチドミックス(上のパネル)もしくはPolペプチドミックス(下のパネル)での刺激後、IFNγ(左側パネル)もしくはTNFα(右側パネル)の生成を、CD3+ CD8+ T細胞でゲートを設定した(gated)サイトカイン陽性細胞を数えることによって定量した。各点は、個々のサンプルを表し、バーは、各サンプル群の平均に対応する。
【図10】図10は、ICSによって測定した場合、CD8 T細胞におけるHIV−Pol刺激に応答したT細胞多機能性を示す。サンプルを、多機能性の指標であるIFNγ、TNFαおよびIL2を分泌するT細胞についてゲート設定した。
【図11】図11は、抗ベクター抗体が、アデノウイルスベクターと比較して、レンチウイルスベクターを非常に不十分にしか中和せず;異種初回刺激/追加免疫プロトコルが、抗Ad5中和の大部分を無視することを示す。VRXI023もしくはVRC−Ad5に対して免疫したマウスにおける中和活性を、GFPを発現するレンチウイルスHIVベクター(例えば、VRX494−GFP)およびAd5−GFPを、MOI 10においてそれぞれ、免疫の17日後に得て、80倍希釈したマウス血清とインキュベートすることによってアッセイした。ベクター中和を、免疫前血清におけるGFP発現に対する免疫後血清におけるGFP発現のダウンレギュレーションの関数として計算した。各点は、個々のサンプルを表し、バーは、各サンプル群の平均に対応する。
【図12】図12は、種々のDNA初回刺激、異種追加免疫プロトコルの免疫原性を図示する。マウスに、2つの異なるDNA初回刺激/異種追加免疫プロトコルでワクチン接種した。2つのHIV抗原であるGagおよびPolに対するCD8+免疫応答を、試験したサイトカイン(INFγおよびTNFα)のいずれかを分泌するCD8+細胞のパーセンテージとして測定した。
【図13】図13は、SIV−(HIVの霊長類等価物)レンチウイルスベースのワクチンベクターを5ヶ月にわたって3回投与した後に、非ヒト霊長類において生成された抗SIV p27抗体力価のレベルを図示する。3回目の投与後に認められた追加免疫効果は、複数回の投与後ですら、最小限の抗ベクター応答を見せる。
【図14】図14Aは、本発明のレンチウイルスワクチンベクターに対するパッケージングヘルパーベクターを示す。ここで本発明のレンチウイルスワクチンベクターは、Gag−pol有効負荷を含む。図14Bは、レンチウイルスワクチンベクターに対するパッケージングヘルパーベクター構築物を示す。ここで上記ワクチンベクターの有効負荷は、全長Gag−polとは異なる。このヘルパー構築物は、上記レンチウイルスワクチンベクターをパッケージするために必要とされる全てを供給した。
【図15】図15および図16は、ワクチンレンチウイルスベクター生成のためのパッケージング細胞株ヘルパー構築物を示す。ここで上記有効負荷ヌクレオチドは、gag/polであり、そして上記有効負荷は、gag/pol以外のヌクレオチド配列である。
【図16】図15および図16は、ワクチンレンチウイルスベクター生成のためのパッケージング細胞株ヘルパー構築物を示す。ここで上記有効負荷ヌクレオチドは、gag/polであり、そして上記有効負荷は、gag/pol以外のヌクレオチド配列である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(配列表の簡単な説明)
配列番号1は、図1AのHIVワクチンベクターの例である。
【0033】
配列番号2は、図1Bのワクチンベクターの例である。
【0034】
配列番号3は、図2AのDNA初回刺激プラスミド構築物の例である。
【0035】
配列番号4は、図2Bの例である。
【0036】
配列番号5は、図3Aの例である。
【0037】
配列番号6は、図3Bの例である。
【0038】
配列番号7は、例示的なパッケージングシグナル配列である。
【0039】
配列番号8は、ベクターpNL4−3のHIVの5’LTRの例である。
【0040】
配列番号9は、ベクターpNL4−3のHIVの3’LTRの例である。
【0041】
配列番号10は、HIVベクターpNL4−3のREV遺伝子の例である。
【0042】
配列番号11は、HIVベクターpNL4−3のRREの例である。
【0043】
配列番号12は、HIVベクターpNL4−3の最小パッケージング配列の例である。
【0044】
配列番号13は、HIVベクターpNL4−3のcPPT/cTSの例である。
【0045】
配列番号14は、HIVベクターpNL4−3のPPTの例である。
【0046】
配列番号15は、HIVベクターpNL4−3のgag/polコード配列の例である。
【0047】
配列番号16は、フレームシフト変異を有するフレームシフト改変gag/polコード配列の例である。
【0048】
配列番号17は、HIVベクターpNL4−3のGagのミリストイル化レセプターグリシン残基に対する(GGT)コドンの例である。
【0049】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ウイルス感染、寄生生物感染、もしくは細菌感染、および癌の予防処置および治療処置における使用のための、改善されたレンチウイルスベースの免疫原性ベクター、ならびにこれを使用するための方法、ならびにこれらの製造のための方法に関する。本発明は、より具体的には、レンチウイルスベクター、これを作製するための方法、改変するための方法、増殖するための方法、パッケージングするための方法、このようなベクターおよび宿主細胞を使用するための方法、ならびにより具体的には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染および他の疾患で使用するための方法に関する。
【0050】
(定義)
本明細書で使用される場合、以下の用語の各々は、この節においてこれと関連した意味を有する。
【0051】
冠詞「a」および「an」は、上記冠詞の文法的目的語の1つもしくは1つより多い(すなわち、少なくとも1つ)に言及するために、本明細書で使用される。例示によれば、「1つのエレメント(要素)(an element)」は、1つのエレメント(要素)もしくは1つより多いエレメント(要素)を意味する。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」とは、宿主細胞へパッセンジャー(passenger)核酸配列(すなわち、DNAもしくはRNA)を移入するように働く核酸分子(代表的には、DNAもしくはRNA)を意味する。ベクターの3つの一般的なタイプとしては、プラスミド、ファージおよびウイルスが挙げられる。好ましくは、上記ベクターは、ウイルスであり、上記ウイルスは、ベクター核酸のキャプシド形成した形態および上記ベクター核酸がパッケージされたウイルス粒子を含む。LVでの細胞の形質導入は、3つの主な工程を含むが、これらに限定されない:細胞侵入、ベクターRNAをDNAに変換すること、およびDNAを核へ送達すること。導入能力のある(もしくはおそらくその能力のある)LVは、上記の工程全てを達成する全てのエレメントを有する。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「プロモーター/調節配列」とは、上記プロモーター/調節配列に作動可能に連結される、遺伝子産物の発現のために必要とされる核酸配列を意味する。いくつかの場合において、この配列は、コアプロモーター配列であってもよいし、他の場合においては、この配列はまた、上記遺伝子産物の発現のために必要とされるエンハンサー配列および他の調節配列を含んでいてもよい。上記プロモーター/調節配列は、例えば、組織特異的様式において上記遺伝子産物を発現するものであり得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、「組織特異的」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかもしくは特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結される場合に、実質的に生きているヒト細胞が、上記プロモーターに対応する組織タイプの細胞である場合にのみ、上記細胞において遺伝子産物を生成させるヌクレオチド配列を意味する。
【0055】
(レンチウイルスベクター)
本発明は、ワクチン送達のための改善されたレンチウイルスベクターを提供する。本発明のベクターは、5’LTR(配列番号8)および3’LTR(配列番号9);上記5’LTRに作動可能に連結された、第1の核酸配列(本明細書で「有効負荷ともいわれる」;ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REV(配列番号10)およびRRE(配列番号11)含有配列を含む、第2の核酸配列を含み、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動される。「有効負荷」とは、上記ベクターの一部であり、これは、ウイルス生成の間に上記レンチウイルスベクターのRNAバージョンをパッケージングするために必要とされる上記パッケージングシグナル(配列番号7)とは異なる。配列番号12は、最小限のパッケージング配列の例である。
【0056】
本発明のベクターはさらに、機能的に活性なレンチウイルスRNAパッケージングエレメントをコードする核酸配列(配列番号12)を含む。全長レンチウイルスRNAは、非共有結合ダイマーとしてウイルス粒子に選択的に組み込まれる。ウイルス粒子へのRNAパッケージングは、RNAと、上記Gagタンパク質のヌクレオキャプシドタンパク質(NC)ドメインとの間の特異的相互作用に依存する。本質的には、ウイルスキャプシドへのHIVゲノムRNAの組み込み(「キャプシド形成(encapsidation)」といわれる)は、上記Gag開始コドンのすぐ上流に位置し、4つのステム−ループ構造(SL1〜SL4)に折りたたまれるいわゆるPsi領域を含み、ゲノムパッケージングに重要である。特に、SL1は、おそらく、RNAのビリオンパッケージングのための必要条件である、ダイマー化開始部位(DIS)(kissing複合体形成(kissing−complex formation)を介してインビトロRNAダイマー化を媒介するGCリッチループ)を含む。さらなるcis作用性配列はまた、RNAパッケージングに寄与することが示された。これらエレメントのうちのいくつかは、SL4を含む、上記Gag遺伝子の最初の50ヌクレオチド(nt)に位置するのに対して、他のものは、上記スプライスドナー部位(SDl)の上流に位置し、実際には、SL1の上流にある約240ntを含む、ゲノムの最初の350〜400ntにわたるより大きな領域にマッピングされる。上記SL1−4領域は、RNAパッケージングに必須の1つの配列の例である。他のこのような配列は、当業者に公知である。
【0057】
上記レンチウイルスベクターはまた、機能的中心ポリプリン区画(cPPT)/cTS(配列番号13)および3’LTR近位ポリプリン区画(PPT)(配列番号9)をコードする核酸配列を含む。HIVおよび他のレンチウイルスは、当該分野で公知であるように、非分裂細胞において複製するという特有の特性を有する。この特性は、上記ウイルスDNAが、宿主細胞の核膜を横断することを可能にする核侵入経路(nuclear import pathway)の使用に依存する。HIV逆転写において、プラス鎖合成の中心的開始および集結に連続する中心的鎖置換事象は、プラス鎖重複;中心DNAフラップ(flap)を作り出す。この中心DNAフラップは、HIV逆転写の間に中心ポリプリン区画(cPPT)および中心終結配列(CTS)によって、cisで制御される中心的鎖置換事象に伴って、2つの別個の半ゲノムフラグメント(half−genomic fragment)によって作り出された三本鎖DNAの領域である。全てのレンチウイルスゲノムに存在する上記ポリプリン区画cis活性配列(cPPT)の中心コピーは、下流プラス鎖の合成を開始する。3’PPTで開始される上流プラス鎖セグメントは、鎖移入後に、上記ゲノムの中心まで進み、別個の鎖置換事象の後で終結する。HIV逆転写のこの最後の事象は、中心終結配列(CTS)によって制御される。
【0058】
上記有効負荷ならびに上記REVコード配列およびRRE含有配列の転写が同じプロモーター(すなわち、上記5’LTR(配列番号8))によって駆動されることは、本発明の一局面である.上記5’LTRは、全長抗原性配列、ならびにパッケージング配列、ならびにREVコード配列およびRRE含有配列を、同じ転写ユニット上にコードする核酸を含む有効負荷の転写を駆動するに十分な基本的活性を有するが、ただし、上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置する。上記5’LTRは、当該分野で公知であるように、HIVの種々の株およびクレードから得られ得、より強力な基本的プロモーター様機能について最適化され得る。特に、HIV−1 クレードEに由来する上記5’LTRは、強力な基本的プロモーター活性を示し得る。HIVの種々の株およびクレードが、当該分野で公知であり、本発明のレンチウイルスワクチンベクターを生成するために使用され得る。上記株およびクレードとしては、例えば、HIV−1群:M(主要のものについて)(A、B、C、D、E、F、G、H、I、およびJ)、O(アウトライアー(outlier)もしくは「外集団(outgroup)」(これは、カメルーン、ガボン、およびフランスで現在見いだされている比較的稀な群である)、ならびにN(新たな群)と称される第3の群、ならびにこれらの任意の循環している組換え形態))が挙げられるが、これらに限定されない。上記5’LTRは、上記有効負荷およびRevタンパク質の発現をさらに駆動する。上記HIV Revタンパク質は、哺乳動物細胞において核から細胞質へ、スプライスされていないかもしくは部分的にスプライスされたウイルス転写物をエクスポートすることを指向する。Revは、RNA結合ドメインを含みこのドメインは、標的転写物上に存在するRREを結合する。エクスポート活性は、遺伝的に規定されるエフェクタードメインによって媒介される。上記ドメインは、核エクスポートシグナルとして同定された。
【0059】
本発明の別の実施形態において、本発明のレンチウイルスベクターは、少なくとも1つの、しかし必要に応じて2つ以上の目的のヌクレオチド配列を含み得る。2つ以上の目的のヌクレオチド配列が発現されるために、上記ベクターゲノム内には、2つ以上の転写ユニット(各目的のヌクレオチド配列に対して1つ)が存在し得る。これらの場合において、ポリシストロン(もしくは本明細書で使用される場合、「マルチシストロン」)メッセージにおける上記第2の(およびその後ろの)コード配列の翻訳のために、1つ以上の内部リボソーム侵入部位(IRES)もしくはFMDV 2A様配列を使用することが好ましい(Adamら 1991 J.Virol.65,4985(その内容全体が、本明細書に参考として援用される))。上記IRES/2Aは、ウイルス起源(例えば、EMCV IRES、PV IRES、もしくはFMDV 2A様配列)または細胞起源(例えば、FGF2 IRES、NRF IRES、Notch 2 IRESもしくはEIF4 IRES)であり得る。IRES配列を利用する本発明のレンチウイルスベクター構築物の非限定的な例は、下記の図2および図3において見いだされ得る。
【0060】
1つ以上の目的の抗原性配列もしくは免疫原性配列をコードすることは、上記第1の核酸配列の一局面である。上記目的の抗原性配列もしくは免疫原性配列は、細胞媒介性応答もしくは体液性応答のうちのいずれかまたは両方を誘発し得る任意のタンパク質もしくはタンパク質配列をコードする配列を含み得る。上記抗原は、細菌、ウイルス、および他の微生物のタンパク質もしくはタンパク質フラグメントをコードし得る。一般に、本発明は、任意のウイルス感染、または目的の望ましい抗原性配列もしくは免疫原性配列と関連する他の感染を処置するために使用され得る。
【0061】
さらに、本発明の特定の実施形態において、目的の上記第1のヌクレオチド配列もしくは「有効負荷」配列はまた、以下をコードするヌクレオチド配列を含み得る:酵素、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ホルモン、抗体、抗酸化分子、操作された免疫グロブリン様分子、一本鎖抗体、融合タンパク質、免疫共刺激分子、免疫調節分子、標的タンパク質のトランスドミナントネガティブ変異体、毒素、仮の毒素(conditional toxin)、抗原、腫瘍サプレッサタンパク質および増殖因子、膜タンパク質、血管形成促進タンパク質およびペプチド、ならびに血管形成タンパク質およびペプチド(pro− and anti−angiogenic proteins and peptides)、血管作用性タンパク質およびペプチド、抗ウイルスタンパク質およびその誘導体(例えば、結合されたレポーター基を有する)。上記目的のヌクレオチド配列はまた、プロドラッグ活性化酵素をコードし得る。研究状況において使用される場合、上記目的のヌクレオチド配列はまた、レポーター遺伝子(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、もしくは抗生物質(例えば、とりわけ、アンピシリン、ネオマイシン、ブレオマイシン、ゼオシン、クロラムフェニコール、ハイグロマイシン、カナマイシン)に対する耐性遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない)をコードし得る。上記目的のヌクレオチド配列はまた、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、もしくはリボザイム、またはこれらの任意の組み合わせとして機能するものを含み得る。
【0062】
本発明の抗原性配列は、当該分野で公知であるように、任意の腫瘍抗原をさらに含み得る。腫瘍抗原は、宿主において免疫応答を誘発する、腫瘍細胞において生成されるタンパク質、またはタンパク質フラグメントもしくはペプチドフラグメントである。腫瘍抗原は、腫瘍細胞を同定するにあたって有用であり、癌治療における使用の潜在的候補である。腫瘍抗原としては、例えば、αフェトプロテイン、癌胎児性抗原、CA−125、上皮腫瘍抗原、チロシナーゼ(tyrsinase)、黒色腫関連抗原が挙げられ得る。また、本発明の別の局面は、アルツハイマー病と関連する抗原性化合物、タンパク質およびタンパク質フラグメントである。
【0063】
上記ベクターは、REV−RRE活性に依存する、上記目的の1つ以上の配列の発現をさらに含む。RevおよびRRE(上記有効負荷と同じ5’LTRによって発現される)が、細胞核における翻訳後に、上記有効負荷を細胞質へ移動するための必須であることが、本発明の特徴である。Revは、ウイルス複製に必須であるHIVの低分子調節タンパク質である。Revの生物学的役割は、より大きな構造タンパク質が合成されかつウイルス粒子へと組み立てられる場合に、感染早期(その間に低分子調節タンパク質が発現される)からの後期までの転写を促進することによって、ウイルス遺伝子発現のパターンを制御することである。Revは、高度に構造化されたRNA領域である、Rev応答エレメント(RRE)に結合し、ここでRevは、上記RREに結合している約8〜10個のRevタンパク質とオリゴマー性リボ核タンパク質複合体(oligomeric ribonucleoprotein complex)を形成する。上記RREの最も重要な領域は、中心接合部分から放射状に拡がる5つのステム−ループ構造からなり、Rev結合のためのコアエレメントは、プリンリッチ突出領域(bulge region)(配列番号11)を含むステム−ループ構造からなる。
【0064】
本発明の一実施形態において、本発明の第1の核酸配列は、gag/polコード配列(配列番号15)を含む。本発明は、全長gag/pol配列またはその一部もしくは誘導体をコードし得る。上記第1の核酸配列は、本願発明のgag/polもしくは任意の他の抗原性配列をコードしようがしまいが、改変配列もしくは非改変配列を含み得る(配列番号15)。上記レンチウイルスベクターは、上記gag/polコード配列のうちのpolコード配列の一部として、上記cPPTを含む。gag/pol以外の他の有効負荷が、上記ベクター中に存在する場合、cPPT、PPTおよびCTSは、上記目的の抗原性配列としてgag/polコード配列を含まない本明細書で開示される他の実施形態において議論されるように、上記ベクター中に必要とされる。
【0065】
上記gag/polコード配列が上記レンチウイルスベクター構築物における改変gagコード配列の包含を介して、細胞性発現を増大するように改変されることは、本発明の一実施形態である。本発明者らの現在のワクチンにおける上記gag/pol前駆体の形態において上記pol遺伝子を含めることは、上記Pol抗原の不十分な発現に関して、ほとんど最適には及ばないようである。上記Polタンパク質の発現レベルは、一般に、polコード配列の翻訳に必要とされるフレームシフトが原因で、天然の感染の間には低い。Pol発現のこの形態は、Gagと比較して、Polタンパク質において最大95%までの低下を生じる。Pol発現を増大させるために、gagとpolとの間のフレームシフトは、除去され得、GagおよびPolの等モルもしくはほぼ等モル発現を生じるのに対して、ウイルス様粒子(VLP)の分泌は、損なわれる。よって、上記ベクターは、発現を最適化するために、上記gag配列内でフレームシフトを含む(配列番号16).
本発明の一実施形態において、上記レンチウイルスベクターはまた、翻訳フレームシフトによって媒介されないgag−pol融合タンパク質の高レベル発現を支援する。本発明は、Gagのミリストイル化レセプターグリシン残基(配列番号17)を変える少なくとも1個のヌクレオチド弛緩をさらに含む。ミリストイル化は、HIV粒子組み立てプロセスにおいて重要な成分である。Gag p55は、マトリクスのN末端において翻訳後ミリストイル化を受ける。これは、上記Gag複合体が、上記ミリスチン酸部分を介して上記細胞膜に結合することを可能にする。上記ミリストイル化部位の破壊は、細胞質におけるGagタンパク質の蓄積を生じる。上記細胞質内のタンパク質濃度が高くなるほど、内因性抗原経路へのこれらポリペプチドのプロテオソーム分解を増大させる可能性が非常に高く、より高い免疫応答をもたらすMHCクラスI分子上でのGagペプチドの付加(loading)を生じる。
【0066】
抗原発現のレベルは、コドン最適化された遺伝子によっても増大させられ得る。合成遺伝子は、高度に発現されるヒト遺伝子において見いだされるコドンの偏りで作り出され、ヒト細胞において遙かに依り効率的に発現されかつネイティブコード配列より高いかつ再現性のよい免疫応答のレベルを誘発することが占め鎖rた。過剰発現の別の密接な関係は、免疫応答を誘発するために投与される必要があるレンチウイルスベクターもしくはDNA初回刺激の量が、大いに減少させられ得ることである。
【0067】
本発明の別の実施形態において、本発明のレンチウイルスベクターとしては、霊長類に感染するウイルス(HIV−1、HIV−2、シミアン免疫不全ウイルス(SIV))および非霊長類に感染するウイルス(ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ビスナマエディウイルス(VV)、ジェンブラナ病ウイルス(JDV))がが挙げられ得るが、これらに限定されず、それらのレンチウイルスは、これらウイルスへと分けられ得る。
【0068】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明のレンチウイルスベクターはまた、例えば、いわゆる自己不活性化(SIN)ベクター構成において、HIV LTRの転写エレメントを除去することによって改変され得る。上記ウイルスゲノムの3’末端に由来する組み込まれたプロウイルスの両方のU3領域を生成する逆転写のモダリティーは、いわゆる自己不活性化(SIN)ベクターの作製を可能にすることによって、この課題を促進する。自己不活性化は、上記ベクターRNAを生成するために使用されるDNAの3’の長い末端反復配列(LTR)のU3領域における破壊(例えば、欠失、変異およびエレメント挿入を使用する)の導入に依存する。逆転写の間に、この欠失は、上記プロウイルスDNAの5’LTRに移される。上記LTRの転写活性を除去するために十分な配列が除去された場合、形質導入細胞における全長ベクターRNAの生成は回避される。このことは、RCRが出現するというリスクを最小化する。さらに、このことは、上記3’LTRのプロモーター活性に起因して、もしくはエンハンサー効果を介してのいずれかで、上記ベクター組み込み部位に隣接して位置した細胞のコード配列が異常に発現される可能性を減少させる。最後に、上記LTRと上記導入遺伝子を駆動する内部プロモーターとの間の潜在的な転写干渉は、上記SIN設計によって防止される。SINベースのレンチウイルスベクターの一例は、米国特許第6,924,144号(その内容全体は、その全体において本明細書に参考として援用される)に記載される。本発明のSINベースのレンチウイルスベクターの非限定的代表例は、本明細書で記載される図1、図2、および/もしくは図3、またはそれらの任意の組み合わせに具体的に示される構築物のうちの1つ異常から生成され得る。
【0069】
さらに別の実施形態において、本発明は、本明細書で上記に記載のレンチウイルスベクターを含む薬学的組成物を包含し、上記組成物は、5’LTRおよび3’LTR;上記5’LTRに作動可能に連結された、第1の核酸配列;ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列を含む、第2の核酸配列を含み、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動される;そして上記薬学的組成物は、「薬学的に受容可能なキャリア」もしくは「遺伝子補助剤」をさらに含む。「薬学的に受容可能なキャリア」としては、PBS、緩衝液、水、トリス、他の等張性溶液もしくは上記ベクターのウイルス成分を損傷しないように最適化された任意の溶液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
上記レンチウイルスベクターは、ウイルス感染の予防的処置および治療的処置のために、ならびに本明細書で記載される他の理由のために、宿主細胞に導入され得る。よって、本発明は、本発明に従って、ベクターを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞の単離、および/または培養でのこのような細胞もしくはこれから得られる細胞株の維持は、当業者が十分に精通している慣用的事項になっている。
【0071】
「宿主細胞」とは、任意の細胞であり得、好ましくは、真核生物細胞である。望ましくは、上記宿主細胞は、抗原提示細胞である。このような細胞としては、皮膚線維芽細胞、腸上皮細胞、内皮細胞、上皮細胞、樹状細胞、形質細胞様樹状細胞、ランゲルハンス細胞、単球、粘膜細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、上記宿主細胞は、真核生物の多細胞種(例えば、単細胞の酵母細胞とは対照的に)であり、さらにより好ましくは、哺乳動物(例えば、ヒト細胞)である。
【0072】
細胞は、単一の実体として存在し得るか、またはより大きな細胞集団の一部であり得る。このような「より大きな細胞集団」とは、例えば、細胞培養(混合培養もしくは純粋培養のいずれでも)、組織(例えば、内皮組織、上皮組織、粘膜組織もしくは他の組織)、器官(例えば、肺、肝臓、筋肉および他の器官)、器官系(例えば、循環器系、呼吸器系、消化器系(gastrointestinal system)、泌尿器系、神経系、外皮系もしくは他の器官系)、もしくは生物(例えば、トリ、哺乳動物など)を含み得る。好ましくは、標的とされている上記器官/組織/細胞は、上記循環器系(例えば、血液(白血球を含む)、鼻、気管、気管支、細気管支、肺などの粘膜系が挙げられるが、これらに限定されない)、消化器系(例えば、口、咽頭、食道、胃、腸、唾液腺、膵臓、肝臓、胆嚢などが挙げられる)、泌尿器系(例えば、腎臓、尿管、膀胱、尿道など)、神経系(例えば、脳および脊髄が挙げられるが、これらに限定されない)、ならびに特殊感覚器(例えば、眼)および外皮系(例えば、皮膚、表皮、および皮下組織もしくは皮膚組織の細胞)のものである。よりさらに好ましくは、上記標的とされている細胞は、抗原提示細胞からなる群より選択される。上記標的細胞は、正常細胞である必要はなく、病的細胞であり得る。このような病的細胞は、腫瘍細胞、感染細胞、遺伝的に異常な細胞、または異常な組織の近位にあるかもしくはこの粗衣着に摂食している細胞(例えば、腫瘍血管内皮細胞)であり得るが、これらに限定されない。
【0073】
「ベクター」とは、パッセンジャー核酸配列(すなわち、DNAもしくはRNA)を宿主細胞に移入するように働く核酸分子(代表的には、DNAもしくはRNA)である。ベクターの3つの一般的タイプとしては、プラスミド、ファージおよびウイルスが挙げられる。好ましくは、上記ベクターはウイルスであり、上記ウイルスは、ベクター核酸のキャプシド形成された形態、および上記ベクター核酸がパッケージされたウイルス粒子を含む。LVでの細胞の形質導入は、3つの主な工程を包含するが、これらに限定されない:細胞侵入、ベクターRNAをDNAに変換すること、およびDNAを核へ送達すること。導入能力のある(もしくはおそらくその能力のある)LVは、上記の工程全てを達成する全てのエレメントを有する。
【0074】
上記ベクターは、ヒトの作製した変異もしくは改変を含むので、ウイルスの野生型株でない。従って、上記ベクターは、代表的には、本明細書でさらに記載されるように、レンチウイルスを含むために、遺伝的操作(例えば、付加、欠失、変異もしくは当該分野で公知の他の技術によって)野生型ウイルス株から得られる。本明細書で包含されるように、ベクターは、DNAもしくはRNAのいずれかを含み得る。例えば、DNAベクターもしくはRNAベクターのいずれかが、上記ウイルスを得るために使用され得る。同様に、cDNAコピーは、ウイルスRNAゲノムから作製され得る。あるいは、cDNA(もしくはウイルスゲノムDNA)部分は、RNAを生成するために、インビトロで転写され得る。これら技術は、当業者に周知であり、また、記載されている。
【0075】
一局面において、本発明は、被験体における免疫応答を誘発するための方法を提供し、上記方法は、本明細書で開示されるレンチウイルスベクターを含む薬学的組成物を提供する工程を包含する。本発明に従う方法は、免疫を強化もしくは誘導するために、上記目的の1つ以上の遺伝子の発現を提供する。誘導される免疫は、細胞性免疫であってもよいし、体液性免疫であってもよい。より具体的には、上記細胞性免疫応答は、CD8+および/もしくはCD4+細胞の活性を強化し得る。
【0076】
以下を含む、細胞における感染性複製性ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の複製を阻害することは、本発明のさらに別の実施形態である:被験体における免疫応答を誘導するための方法であって、上記方法は、レンチウイルスベクターを含む薬学的組成物を投与する工程を包含し、上記レンチウイルスベクターは、5’LTRおよび3’LTR;上記5’LTRに作動可能に連結された、第1の核酸配列;ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列を含む、第2の核酸配列を含み、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動される。
【0077】
上記方法は、上記細胞と、上記第1のレンチウイルスベクターと同じ第1の核酸を発現する第2のレンチウイルスベクターとを連続的に摂食させる工程をさらに包含する。上記方法はまた、初回刺激/追加免疫アプローチとともに使用され得、ここで上記第1のベクターは、上記初回刺激が、その後に投与される上記第2のレンチウイルスベクターと同じ有効負荷もしくは目的の遺伝子を含む限りにおいて、レンチウイルスベクターである必要はない。
【0078】
上記レンチウイルスベクターが、初回刺激/複数回追加免疫プロトコルとして投与され得ることは、本発明の方法のさらに別の実施形態である。
【0079】
上記レンチウイルスベクターが、代替の偽型化(pseudotyping)エンベロープ(例えば、VSV−Gもしくはバキュロウイルスgp−64タンパク質または以下で記載されるこれらの組み合わせ)とともに、初回刺激/追加免疫もしくは初回刺激/複数回追加免疫プロトコルとして投与され得ることは、本発明の方法のさらに別の実施形態である。
【0080】
被験体における免疫応答を高めることは、本発明のさらに別の実施形態であり、これは、細胞と、ベクターとを摂食させる工程を包含し、上記ベクターは、5’LTRおよび3’LTR;上記5’LTRに作動可能に連結された、第1の核酸配列;ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列を含む、第2の核酸配列を含み、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動される。
【0081】
上記方法は、上記細胞と、上記第1のレンチウイルスベクターと同じ第1の核酸を発現する第2のレンチウイルスベクターとを連続的に摂食させる工程をさらに包含する。上記方法はまた、初回刺激/追加免疫または初回刺激/複数回追加免疫アプローチとともに使用され得、ここで上記第1のベクターは、上記初回刺激が、その後に投与される上記第2のレンチウイルスベクターと同じ有効負荷もしくは目的の遺伝子を含む限りにおいて、レンチウイルスベクターである必要はない。その後の投与は、2週間目、4週間目、1ヶ月目、2ヶ月目、6ヶ月目、もしくは1年目であり得、そして時間を経て免疫応答を維持するために適切なレジメンとしてであり得る。
【0082】
宿主におけるベクターの免疫原性を増大させるために、初回刺激/追加免疫アプローチを提供することは本発明のさらに別の実施形態であって、これは、レンチウイルスベクターを含む薬学的組成物を投与する工程を包含し、上記レンチウイルスベクターは、5’LTRおよび3’LTR;上記5’LTRに作動可能に連結された、第1の核酸配列;ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列を含む、第2の核酸配列を含み、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動され、上記ベクターの免疫原性は、初回刺激/追加免疫もしくは初回刺激/複数回追加免疫プロトコルに起因して増大させられる。上記方法は、上記宿主に、上記第1のレンチウイルスベクターと同じ第1の核酸を発現する第2のレンチウイルスベクターを連続的に投与する工程をさらに包含する。「免疫原性」もしくは「強化」とは、上記ベクターが、全身性および/もしくは粘膜性の応答であり得る、上記導入遺伝子に対する細胞性免疫応答(すなわち、細胞媒介性免疫応答)および/もしくは体液性免疫応答を誘導する能力である。「細胞性免疫」とは、抗体を含まないが、マクロファージ、ナチュラル・キラー細胞、もしくはリンパ球の活性化(すなわち、CD8+もしくはCD4+の活性化)、ならびに抗原に応答したサイトカインもしくは他のメディエーターの放出を含む免疫応答である。体液性免疫は、抗体媒介性免疫応答である。
【0083】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明のレンチウイルスベクターを増殖させ、そして選択的にパッケージングするための方法が提供される。上記方法は、当該分野で公知である、より具体的には、共有に係る出願番号60/585,464号(2004年7月1日)、出願番号11/172,147(2005年6月30日出願)、米国特許第6,835,568号、および米国公開番号20030026791号(これら記載される出願、特許および公開出願の各々の本文は、本明細書中に完全に記載されるかのように、それらの全体が本明細書に参考として援用される)に記載される細胞、細胞株および方法を含む。
【0084】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明のレンチウイルスベクターワクチン構築物は、上記レンチウイルスインテグラーゼ機能が、欠失されたか、そして/または部位指向性変異誘発によって排除されたレンチウイルスベクターをさらに含む。挿入変異誘発は、オンコレトロウイルスベクター(oncoretroviral vector)での臨床試験において観察された。このことは、全ての組み込みベクターの遺伝子毒性の詳細研究を思いつかせた。いくつかのワクチン適用のための最も簡単なアプローチは、組み込みの可能性を回避することである。非組み込みレンチウイルスベクターは、上記インテグラーゼ遺伝子を変異するか、または上記LTRの結合配列を改変することによって開発された。特に、研究された変異の中でも、触媒ドメインにおけるD64V置換は、頻繁に使用された。なぜなら、この置換は、プロウイルスDNA合成に影響を及ぼすことなく、上記インテグラーゼの強力な阻害を示すからである。上記変異は、低ベクター用量では、組み込み型ベクターより約1000倍低い残余組み込み(residual integration)を除いて、組み込み型ベクターよりごくわずかに低い形質導入効率を可能にすることが報告された。記載される別の変異であるDl16Nは、コントロールベクターより約2000倍低い残余組み込みを生じた。2〜3の例において、インテグラーゼ(IN)欠損性SIN LVの1回の投与が、ベクター組み込みの非存在下で顕著な免疫応答を誘発し、ワクチン開発に安全かつ有用なストラテジーであり得ることが示された。従って、上記レンチウイルスベクターを、エピソーム形態で存在し得るが、導入遺伝子発現をなお提供し得るようにする改変は、本発明の範囲内で具体的に企図される。
【0085】
上記レンチウイルスベクターは、これが導入される、すなわち、上記ベクターコード核酸配列の細胞に発現を付与し得る上記宿主細胞と適合性であり得る。プロモーターがコード配列の転写を指向し得る場合、上記コード配列は、上記プロモーターに「作動可能に連結」される。
【0086】
ビリオンの「偽型化(Pseudotyping)」は、パッケージング細胞を、上記目的のレンチウイルスベクターと、別のウイルスの少なくとも1つのエンベロープタンパク質もしくは細胞表面分子をコードするヘルパーベクターとの両方で同時トランスフェクトすることによって達成される(例えば、米国特許第5,512,421号(その全本文は、その全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。レンチウイルスベクターを偽型化するために一般に使用される1つのウイルスエンベロープタンパク質は、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質G(VSV−G)である。この糖タンパク質は、ラブドウイルス由来である。使用され得る他のウイルスエンベロープタンパク質としては、例えば、狂犬病ウイルス−等タンパク質Gおよびバキュロウイルスgp−64が挙げられる。偽型化の使用は、使用される上記異種ウイルスのウイルス侵入機構のエレメントを含めることによって、上記レンチウイルスベクター粒子の宿主細胞範囲を拡げる。本発明における使用のための、例えば、VSV−Gでのレンチウイルスベクターの偽型化は、ヌクレオキャプシド中に被包された上記レンチウイルスベクター核酸を含むレンチウイルス粒子を生じ、上記レンチウイルスベクター核酸は、上記VSV−Gエンベロープタンパク質を含む膜によって囲まれている。上記ヌクレオキャプシドは、好ましくは、上記レンチウイルスベクターと通常結合するタンパク質を含む。上記囲んでいるVSV−Gタンパク質含有膜は、上記レンチウイルスベクターをパッケージするために使用されるプロデューサー細胞から出て行く際に、上記ウイルス粒子の一部を形成する。本発明の一実施形態において、上記レンチウイルス粒子は、HIVに由来し、上記VSV−Gタンパク質で偽型化される。上記VSV−Gタンパク質を含む偽型化レンチウイルス粒子は、両種指向性ウイルスベクター(amphotropic viral vector)より高い効率で、多様な細胞タイプに感染し得る。宿主細胞の範囲は、哺乳動物種および非哺乳動物種の両方(例えば、ヒト、齧歯類、魚類、両生類および昆虫)を含む。
【0087】
VSV−G偽型化が、皮膚導入にとって最も効率がよいと記載されてきたとしても、LVを使用する大きな利点は、上記ビリオンエンベロープを置換および/もしくは改変することによって、上記ベクターを特定の組織もしくは細胞に標的化することが可能であることである。LVは、広い範囲のウイルスエンベロープ糖タンパク質と顕著に適合性であり、このことは、融通性を提供する(調査したそれらウイルスエンベロープ糖タンパク質をいくつか挙げると、狂犬病ウイルス、モコラウイルス(Mokola)、LCMV、ロスリバー・ウイルス、エボラ出血熱ウイルス、MuLV、バキュロウイルスGP64、HCV、センダイウイルス(Sindai virus)Fタンパク質、ネコ内在性レトロウイルス(Feline Endogenous Retrovirus)RDl14改変、ヒト内在性レトロウイルス、セネカウイルス(Seneca virus)、GALV改変およびHAインフルエンザ糖タンパク質もしくはこれらの組み合わせ)。エンベロープ全体の改変もしくは置換に加えて、異なる細胞タイプを標的とするためのLVプラットホームの融通性を、細胞特異的リガンドのディスプレイを介して、LV粒子の改変を正確にすることによって、さらに実証した。ワクチン適用に関しては、偽型化エンベロープとしてのVSV−Gは、いくつかの重量な利点(例えば、広い細胞向性(樹状細胞を含む)およびヒト集団における既存免疫が低いこと)を付与する。VSV−Gは、最終的に、必要とされる場合、例えば、複数ベクター投与の場合に、他のエンベロープによって置換され得るが、抗VSV−G免疫は、反復されるベクター投与を妨げないようである。
【0088】
このような偽型化レンチウイルスベクターは、上記ベクターが、レンチウイルス由来の5’LTR;レンチウイルス由来の3’LTR;上記5’LTRの3’側にあるスプライスドナー部位;上記5’LTRに作動可能に連結された、第1の核酸配列;上記第1の核酸配列の3’側にあるRRE;上記RREの3’側にあるスプライスアクセプター部位;上記RREの3’側にある異種プロモーター;上記RREの3’側にあるスプライスアクセプター;ならびにスプライスアクセプター部位の3’側にあるRev遺伝子を含み得るという点でさらに特徴付けられる。繰り返すと、上記機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列は、上記RRE含有配列が、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写が、上記5’LTRによって駆動される。上記第1の核酸配列は、Gagタンパク質およびPolタンパク質のうちのいずれかもしくは両方の全長野生型配列をコードする。
【0089】
本発明の特定の実施形態において、上記異種プロモーターは、ウイルスプロモーター、ヒトプロモーター、および/もしくは合成プロモーター、またはこれらの組み合わせを含む。一実施形態において、異種ウイルスプロモーターは、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、モロニー・ウイルス、トリ白血病ウイルス(ALV)、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター/エンハンサー、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、アデノ随伴ウイルス(AAV)プロモーター;アデノウイルスプロモーター、およびエプスタイン・バー・ウイルス(EBV)プロモーター、もしくはこれらの任意の組み合わせを含む。一実施形態において、異種ヒトプロモーターは、アポリポタンパク質Eプロモーター、アルブミンプロモーター、ヒトユビキチンCプロモーター、ヒト組織特異的プロモーター(例えば、肝臓特異的プロモーター、前立腺特異的抗原(psa)プロモーター、ヒトホスホグリセレートキナーゼ(PGK)プロモーター、伸長因子−Iα(EF−Ia)プロモーター、デクチン(dectin)−2プロモーター、HLA−DRプロモーター、ヒトCD4(hCD4)プロモーター、もしくは任意のこれらの組み合わせを含む。さらに別の実施形態において、上記合成プロモーターは、米国特許第6,072,050号(その内容は、その全体が本明細書において参考として援用される)に記載されるプロモーターを含む。
【0090】
上記構築物の種々のエレメントが、本発明のレンチウイルスベクターの上記第1の核酸配列もしくは上記第2の核酸配列のヌクレオチドコード配列および/もしくはアミノ酸配列へと操作された機能的に等価な誘導体、そのフラグメントもしくは改変を含み得ることは、本発明のさらに別の局面である。天然の遺伝子型バリエーション、対立遺伝子バリエーションの結果であるか、または人工的に操作され機能的活性を変化させない、任意のかつ全てのこのようなヌクレオチドバリエーションおよび得られるアミノ酸多型もしくはバリエーションは、本発明の範囲内であることが意図される。従って、本発明のレンチウイルスベクターの上記第1の核酸配列もしくは上記第2の核酸配列の機能的に等価な誘導体、そのフラグメントもしくは改変は、1もしくは数個のヌクレオチド置換、付加もしくは欠失を、マーカー核酸のヌクレオチド配列へと導入することによって作り出され得る。その結果、上記1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、付加、もしくは欠失が、そのコードされたタンパク質へと導入される。変異は、標準的技術(例えば、部位指向性変異誘発およびPCR媒介変異誘発)によって導入され得る。好ましくは、保存的アミノ酸置換は、1もしくは数個の推定される必須でないアミノ酸残基において行われる。「保存的アミノ酸置換」は、上記アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野で既に定義されている。これらファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電の極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐した側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。あるいは、変異は、例えば、飽和変異誘発(saturation mutagenesis)によって、上記コード配列の全てもしくは一部に沿ってランダムに導入され得、得られた変異体は、活性を保持する変異体を同定するために、生物学的活性についてスクリーニングされ得る。変異誘発の後、上記コードされたタンパク質は組換え発現され得、上記タンパク質の活性が決定され得る。
【0091】
従って、一実施形態において、本発明は、配列番号7に記載されるパッケージングシグナル配列およびその機能的に活性な誘導体フラグメントもしくは変異を含み、ここで上記誘導体、フラグメントもしくは変異は、配列番号7に対して約60%〜約100%相同であり得る。
【0092】
別の実施形態において、本発明は、配列番号8に記載されるHIVベクターpNL4−3の5’LTR、およびその機能的に活性な誘導体、フラグメントもしくは変異を含み、ここで上記誘導体、フラグメントもしくは変異は、配列番号8に対して約60%〜約100%相同であり得る。
【0093】
別の実施形態において、本発明は、配列番号9に記載されるHIVベクターpNL4−3の3’LTRおよびその機能的に活性な誘導体、フラグメントもしくは変異を含み、ここで上記誘導体、フラグメントもしくは変異は、配列番号9に対して約60%〜約100%相同であり得る。
【0094】
別の実施形態において、本発明は、配列番号10に記載されるHIVベクターpNL4−3のREV遺伝子およびその機能的に活性な誘導体、フラグメントもしくは変異を含み、ここで上記誘導体、フラグメントもしくは変異は、配列番号10に対して約60%〜約100%相同であり得る。
【0095】
別の実施形態において、本発明は、配列番号11に記載されるHIVベクターpNL4−3の機能的RREの配列、およびその機能的に活性な誘導体、フラグメントもしくは変異を含み、ここで上記誘導体、フラグメントもしくは変異は、配列番号11に対して約60%〜約100%相同であり得る。
【0096】
別の実施形態において、本発明は、配列番号12に記載されるHIVベクターpNL4−3の最小パッケージング配列、およびその機能的に活性な誘導体、フラグメントもしくは変異を含み、ここで上記誘導体、フラグメントもしくは変異は、配列番号12に対して約60%〜約100%相同であり得る。
【0097】
別の実施形態において、本発明は、配列番号13に記載されるHIVベクターpNL4−3のcPPT/cTS、およびその機能的に活性な誘導体、フラグメントもしくは変異を含み、ここで上記誘導体、フラグメントもしくは変異は、配列番号13に対して約60%〜約100%相同であり得る。
【0098】
別の実施形態において、本発明は、配列番号14に記載されるHIVベクターpNL4−3のPPT、およびその機能的に活性な誘導体、フラグメントもしくは変異を含み、ここで上記誘導体、フラグメントもしくは変異は、配列番号14に対して約60%〜約100%相同であり得る。
【0099】
別の実施形態において、本発明は、配列番号15に記載されるRIVベクターpNL4−3のgag/polコード配列、およびその機能的に活性な誘導体、フラグメントもしくは変異を含み、ここで上記誘導体、フラグメントもしくは変異は、配列番号15に対して約60%〜約100%相同であり得る。
【0100】
別の実施形態において、本発明は、配列番号16に記載されるRIVベクターpNL4−3のフレームシフト改変gag/pol融合コード配列、およびその機能的に活性な誘導体、フラグメントもしくは変異を含み、ここで上記誘導体、フラグメントもしくは変異は、配列番号16に対して約60%〜約100%相同であり得る。
【0101】
本発明の組成物が、1種より多いベクターを含み得、上記ベクターは、ワクチン接種の後にヒト免疫不全ウイルスの種々のサブタイプ感染の進行を予防的にもしくは治療的に処置するために、同じであっても異なっていてもよいことは、理解されるべきである、このような組み合わせは、望ましい免疫に応じて選択され得る。レンチウイルスベースのワクチンが動物もしくはヒトに投与される場合、上記ワクチンは、当業者に公知であるように、1つ以上の遺伝子補助剤と組み合わせられ得る。「遺伝子補助剤」は本発明の上記目的の抗原性配列の発現によって誘発される免疫応答を増大もしくは増強するために、本発明のレンチウイルスベクターにおいて有効負荷として挿入され得る。これら遺伝子補助剤は、異なる構築物上にあり得るが、同時発現され得るか、または異なる初弁下セット中になお含まれる同じベクター上で同時発現され得る。このような望ましい遺伝子補助剤としては、toll様レセプター、CpG、サイトカイン(例えば、インターロイキン(IL) IL−1β、I1(ILの間違いと思われる)−2、I1−10、I1−12、I1−15、CTA1−DD、fas抗原、フラジェリンなど)、またはこれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。他の望ましい遺伝子補助剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:GM−CSF、インターフェロン(IFN)(例えば、IFN−α、IFN−β、およびIFN−γ)、TNF−α、およびこれらの組み合わせをコードするDNA配列。上記遺伝子補助剤はまた、パラポックスウイルス由来の免疫刺激ポリペプチド(例えば、パラポックスウイルス株D1701もしくはNZ2のポリペプチド)、またはパラポックス免疫刺激性ポリペプチドB2WLもしくはPP30(例えば、米国特許第6,752,995号を参照のこと)であり得る。なお他のこのような生物学的に活性な因子、および抗原特異的免疫応答を増強する、当該分野で公知の免疫調節因子もしくは免疫刺激剤は、当業者によって容易に選択され得。適切なプラスミドベクターは、公地の技術によって構築される同じ因子を含む。
【0102】
(使用方法)
本発明のレンチウイルスベクターは、種々のウイルスによって引き起こされる広い範囲のウイルス感染を処置するために使用され得、上記種々のウイルスとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:dsDNAウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルスなど);ssDNAウイルス(例えば、パルボウイルス);dsRNAウイルス(例えば、レオウイルス、ロタウイルス);(+)ssRNAウイルス(例えば、ピコルナウイルス、トガウイルスなど);(−)ssRNAウイルス(例えば、オルトミクソウイルス、ラブドウイルスなど);ssRNA−RTウイルス(例えば、レトロウイルス、HlV、SIVなど);およびdsDNA−RTウイルス(例えば、ヘパドナウイルス))を含む群のウイルス。
【0103】
本発明のレンチウイルスベクターは、多くのウイルスファミリーに由来するウイルスよって引き起こされる疾患を処置するために使用され得。上記ウイルスとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:単純ヘルペスウイルス(HSV)−1(口唇単純ヘルペス)、HSV−2(単純性器ヘルペス)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)(水痘)、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)(単核症)、サイトメガロウイルス(CMV)(トキソプラズマ症(TOXplasmosis)、風疹、単純ヘルペス)、ポックスウイルス(痘瘡)、および当該分野で公知の他のウイルス。
【0104】
本発明のレンチウイルスベクターはまた、寄生生物および微生物による病気を含む種々の疾患(ヒトへのマラリア原虫であるplasmodiumの蚊伝染によって引き起こされる疾患であるマラリアが挙げられるが、これらに限定されない)を予防的にもしくは治療的に処置するために使用され得る。上記疾患は、原生動物性のPlasmodium属寄生生物によって引き起こされる。上記plasmodium寄生生物のうちの4つのタイプのみが人に感染し得る。上記疾患のうちの最も重篤な形態は、Plasmodium falciparumおよびPlasmodium vivaxによって引き起こされるが、他の関連種(Plasmodium ovale、Plasmodium malariae)も、ヒトに罹患し得る。本発明の方法によって処置され得る他の疾患は、例示に依れば、マラリア、セントルイス脳炎、デング熱、黄熱病、西ナイルウイルス;腺ペスト;ライム病、ロッキー山紅斑熱、脳炎;ハンタウイルス;シャーガス病であるが、これらに限定されない。本発明のレンチウイルスベクターは、治療的に処置するためにもしくは予防として、上記有効負荷における上記ウイルスのうちのりずれかに由来する抗原を含むように改変され得る。
【0105】
また、細菌感染は、本発明の方法の上記レンチウイルスベクターによって処置可能であり、上記細菌感染としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ヒト疾患の原因となる、スピロヘータ目の細菌(T.pallidum(梅毒)、S.pilosicoli(特に発展途上国におけるヒト、およびHIV患者における下痢)、B.burgdorferi:(ライム病および関連障害)が挙げられる)、Spirillaceae科の細菌(C.jenuni(大腸炎、下痢、腸炎、小腸結腸炎、胃腸炎など)が挙げられる)、H pylori(胃炎、十二指腸潰瘍および消化性潰瘍、レイノー現象(Taynaud’s phenomenon)など);Spirosomaceae科の細菌(Pseudomonas(蜂巣炎、脳脊髄液シャント感染(cerebrospinal fluid shunt infection)、急性膀胱炎、心内膜炎、慢性の眼への感染、新生児髄膜炎、腹膜炎、肺炎)が挙げられる)、Legionellaceae科の細菌(Legionella(ヒトにおける肺炎(レジオネラ症(legionellosis、legionnaire’s disease)、ピッツバーグ肺炎、非肺炎性のポンティアック熱(nonpneumonic Pontiac fever)、横紋筋融解症、菌血症および敗血症、心内膜炎、細胞媒介性免疫障害における全身感染が挙げられる);細菌Rhizobiacea(Agrobacterium(持続性自己管理腹膜透析における腹膜炎);Achromobacter(術後および外傷後創傷感染性合併症);細菌Shigella(水様性下痢、赤痢);細菌Salmonella(腸熱、腸チフス、パラチフス、胃腸炎、食中毒、下痢および/もしくは嘔吐)が挙げられる)、ならびに陶業屋に公知の他の疾患の原因となる細菌。
【0106】
本発明のレンチウイルスベクターは、癌の予防的処置および治療的処置のために、癌ワクチンとして使用され得る。癌ワクチンは、癌の負荷を治療的かもしくは予防的かのいずれかで低下させることが意図される(例えば、Gardisil(登録商標))。処置もしくは治療的ワクチンは、癌患者に投与され、既に発症した癌に対する身体の自然防御能力(natural defense)を強化するように設計される。これらタイプのワクチンは、既存の癌のさらなる増殖を低下させ得るか、処置された癌の再発を低下させ得るか、または以前の処置によって死滅しなかった癌細胞の疾患進行を変化させ得る。他方で、予防的ワクチンは、健康な個体に投与され、ウイルス感染に対する予防として、癌の原因となるウイルスを標的とするように設計される。癌を処置するために使用される癌ワクチンは、特定の免疫応答を起こすために免疫系を刺激するように提示される抗原を利用する。本発明のレンチウイルスワクチンは、上記レンチウイルスベクターワクチン自体が、宿主細胞においていったん発現された抗原配列と同様に、免疫応答を刺激し得るという点で2倍の利益を有する。
【0107】
免疫系は、一般に、腫瘍を危険なものもしくは外来物質として認識せず、これらに対して強い免疫応答を誘起しない。当業者が考えている腫瘍分子が有効な免疫応答を刺激しない1つの理由は、腫瘍細胞が正常細胞に由来するということである。従って、正常細胞と腫瘍細胞との間に多くの分子的差異が存在するとしても、癌抗原は、身体に対して真に外来物質ではなく、微妙な過程で変化した正常分子である。腫瘍が免疫応答を刺激しないかもしれない別の理由は、癌細胞が免疫系から逃れる方法を発達させてきたことである。科学者はいまや、これらの逃れる様式のうちのいくつかを理解している。上記様式としては、腫瘍抗原を脱ぎ捨てること、およびT細胞(特異的免疫細胞)および他の免疫応答を活性化するために身体が通常依存する分子およびレセプターの数を減らすことが挙げられる。これら分子を減らすと、上記免疫系は、上記癌細胞に対して応答性が低くなり;上記腫瘍は、上記免疫細胞から見えなくなる。科学者は、この知見が、より有効なワクチンを設計するために研究者らによって使用され得ることを期待している。本発明のレンチウイルスベクターは、上記免疫応答を高め、上記癌を治療的に処置するために癌関連抗原を発現し得る。
【0108】
従って、別の実施形態において、本発明のレンチウイルスベクターは、癌抗原タンパク質を生成するために腫瘍抗原をコードする核酸配列をさらに含む。
【0109】
癌細胞抗原は、いくつかの腫瘍タイプによって共有されている個々の腫瘍に対して特有であり得るか、または腫瘍が増殖している正常組織によって発現され得る。癌関連抗原としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:循環血液中および前立腺癌細胞上で見いだされ得る前立腺特異的タンパク質抗原である前立腺特異的抗原(PSA)(PSAの量は、前立腺癌が発症すると上昇する)。シアリルTn(STn)(これは、ムチン分子(粘膜に存在する主な分子)を模倣する低分子の合成炭水化物であり、特定の癌細胞上で見いだされる);熱ショックタンパク質(HSP)(例えば、gp96など)(これは、熱、低い糖レベルおよび他のストレスシグナルに応じて、およびストレスに対する防御に加えて、細胞において生成される)の、これら分子はまた、上記細胞内のタンパク質の適切なプロセシング、折りたたみおよび組み立てに関与する。炭水化物および脂肪を含む複雑な分子であり、ガングリオシド分子が細胞の外膜に組み込まれかつ多くのヒト癌の細胞表面上で発現される分子であるガングリオシド分子(例えば、GM2、GD2、およびGD3)(GD2およびGD3は、ヒト癌細胞によって発現される炭水化物抗原を含む);癌胎児性抗原(CEA)(正常組織と比較して、結腸直腸癌、肺癌、乳癌および膵臓癌を有する人々における腫瘍で、高レベルで見いだされかつ腫瘍によって血中へと放出されると考えられ、患者がCEAに対するT細胞応答を誘起させることを示された);MART−1(Melan−Aとしても公知)(メラノサイトによって発現される抗原でありかつT細胞によって認識される特異的黒色腫癌マーカーであり、正常細胞より黒色腫細胞上で量が豊富である);チロシナーゼ(メラニン生成の最初の段階に関与する重要な酵素であり、チロシナーゼが黒色腫に対する特異的マーカーでありかつ正常細胞より黒色腫細胞上で量が豊富であることが研究によって示された);および癌の原因となるウイルスの外側コート上のウイルスタンパク質は、上記ウイルスによる感染を予防するために上記免疫系を刺激する抗原として一般に使用され;他の癌抗原は、当業者に公知である。
【0110】
本発明の1局面は、上記レンチウイルスベクターと、癌抗原に対する免疫応答をたかめるためのアジュバントとを会わせることであり、研究者らは、通常、身体が外来物質として認識するデコイ物質、またはアジュバントを結合させる。アジュバントは、デコイおよび腫瘍細胞の両方への攻撃の開始へと上記免疫系をだます、弱らせたタンパク質もしくは細菌である。本発明のアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。:キーホールリンペットとして公知である、癌抗原はしばしば、Tヘルパー細胞として公知の免疫細胞にさらなる認識部位を提供する上記免疫系には見えないこともあり、かつ細胞傷害性Tリンパ球(CTL)として公知の他の免疫細胞の活性化を増大させ得る比較的小さなタンパク質であるので、カリフォルニアおよびメキシコの海岸線に沿って見いだされる殻を持った海洋生物によって生成されるタンパク質でありかつ免疫応答を引き起こして癌細胞抗原のためのキャリアとして作用する大きなタンパク質であるキーホールリンペット・ヘモシアニン(KLH);結核細菌の不活性化形態であり、上記ワクチン抗原に対する免疫応答を追加免疫するためにいくつかの癌ワクチンに添加されるカルメット・ゲラン桿菌(BCG);特定の専門化された免疫系細胞(ナチュラル・キラー細胞といわれる)の癌を死滅させる能力を追加免疫し得る新田の免疫系によって作製されるタンパク質である、インターロイキン−2(IL−2)(および当該分野で公知の他のサイトカイン);抗原提示細胞の増殖を刺激するタンパク質である顆粒球単球コロニー刺激因子(GM−CSF);いくつかのワクチンに添加される場合に、上記身体の免疫応答を改善し得る植物抽出物であるQS21;免疫応答を追加免疫ためのオイルベースの液体であるMontanide ISA−51。
【0111】
上記アジュバントは、本発明のベクターと同時に投与されてもよいし、本発明のレンチウイルスベクターの投与の前にもしくはその後に、または適切な場合、遺伝子補助剤として、本明細書で開示されるように、患者における免疫応答を増強するために、連続的に投与されてもよい。
【0112】
本発明のレンチウイルスベクターは、全長Gag、Pol、有効負荷、ならびにネイティブ5’LTRの依存の下でHIVに由来するRev遺伝子およびRRE遺伝子を有し得る。上記ワクチンの最適化は、マウスにおける全身応答および粘膜応答の両方を誘発するために、慣用的な最適化を含んだ。プロトコル最適化もまた、上記レンチウイルスベクターと、他のウイルスベクターもしくはDNAプラスミド、または両方とを組み合わせることによって行った。これらプロトコルのうちのいくつかは、広く、持続した免疫原性を誘発した。全ての研究をマウスにおいて行い、抗HIV免疫原性を、細胞内サイトカイン染色(ICS)、Elispot、テトラマー染色、細胞傷害性、T細胞増殖、およびElisaによって評価した。DNA初回刺激/レンチウイルスベクター追加免疫プロトコルは、皮下投与した場合に全身レベルおよび粘膜レベルの両方において、高レベルの抗HIV体液性免疫および細胞性免疫(例えば、限定しないが、CD8+リンパ球のうちの最大21%までが、ICSによって測定した場合に、免疫したマウスにおける抗原刺激に応じてサイトカインを分泌した)を誘発した。レンチウイルスベクターで形質導入した細胞による長期の有効負荷発現は、持続した抗免疫原性を生じた。DNA初回刺激/レンチウイルスベクター追加免疫プロトコルにおけるウイルスベクターとDNAプラスミドとのプロトコル組み合わせは、多機能性抗HIV細胞性免疫を大いに増大させ、並行比較(side by side comparison)すると、類似の有効負荷を発現するAd5由来のアデノウイルスベクターによって誘発されたものを凌いだ。
【0113】
一般に、本発明の方法は、好ましくは、ウイルス感染から生じるウイルス性疾患を処置するために使用される。望ましくは、ウイルス(以下で議論されるように、上記ベクターも同様)は、RNAウイルスであるが、DNAウイルスであってもよい。RNAウイルスは、原核生物に感染する(例えば、バクテリオファージ)、および多くの真核生物(哺乳動物および特にヒトを含む)に感染する多様な群である。大部分のRNAウイルスは、それらの遺伝物質として一本鎖RNAを有するが、少なくとも1つのファミリーは、遺伝物資として二本鎖RNAを有する。上記RNAウイルスは、3つの主な群に分けられる:プラス鎖ウイルス(すなわち、上記ウイルスによって移入されるゲノムが、タンパク質に翻訳され、そのタンパク質除去核酸は、感染を開始するに十分であるもの)、マイナス鎖ウイルス(すなわち、上記ウイルスによって移入されるゲノムがメッセージセンスに対して相補的であり、かつ翻訳が生じ得る前にビリオン関連酵素によって転写されなければならないもの)、および二本鎖RNAウイルス。本発明の方法は、好ましくは、プラス鎖ウイルス、マイナス鎖ウイルス、および二本鎖RNAウイルスを処置するために使用される。本明細書で記載される方法の実施は、別段示されなければ、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝学、微生物学、組換えDNA、および免疫学(当該分野の技術範囲内)の従来からの技術を使用する。
【0114】
(薬学的組成物)
本発明の薬学的組成物は、薬学的におよび/もしくは治療上有効な量の少なくとも1つの核酸構築物、レンチウイルスベクター、レンチウイルスベクター系、ウイルス粒子/ウイルスストック、もしくは宿主細胞(すなわち、本発明の薬剤)を含む。本発明の一実施形態において、単位用量あたりの本発明の薬剤の有効量は、上記目的の遺伝子の検出可能な発現を引き起こすに十分な量である。本発明の別の実施形態において、上記単位用量あたりの薬剤の有効量は、処置されている疾患もしくは状態の有害効果(重篤度、持続時間、もしくは症状の程度が挙げられる)を予防するか、処置するか、もしくは防御するに十分な量である。
【0115】
本発明の薬学的組成物の投与は、「予防」目的もしくは「治療」目的のいずれのためであってもよい。予防的に提供される場合、上記組成物は、任意の症状に先だって提供される。上記組成物の予防的投与は、処置されている疾患もしくは状態の任意のその後の有害効果(重篤度、持続時間、もしくは症状の程度が挙げられる)を予防もしくは改善するように働く。治療的に提供される場合、上記組成物は、処置されている状態の症状の発生時に(もしくはその直後に)提供される。
【0116】
治療的使用、予防的使用および診断的使用のための本発明のさらに別の実施形態において、前述の本発明のレンチウイルスベクター、レンチウイルスベクター系、ウイルス粒子/ウイルスストック、もしくは宿主細胞(すなわち、薬剤)、ならびに他の必要な試薬および適切なデバイスおよび補助物質のうちの1つ以上は、容易に利用可能および容易に使用され得るように、キット形態で提供され得る/このようなキットは、本発明のレンチウイルスベクター、ならびに薬学的に受容可能なキャリアおよび/もしくは遺伝子補助剤を含むインビトロもしくはインビボでの投与のための薬学的組成物;ならびに上記キットの使用のための説明書を含む。
【0117】
ワクチン処方物は、便宜上、単位投与形態において提示され得、従来の薬学的技術によって調製され得る。このような技術は、上記活性成分および上記薬学的キャリアもしくは賦形剤を会合させる工程を包含する。一般に、上記処方物は、均質にかつ密接に上記活性成分と液体キャリアとを会合させることによって調製される。非経口投与に適した処方物としては、抗酸化剤、緩衝化剤、静菌剤および溶質(これは、処方物を、意図されたレシピエントの血液と等張性にする)を含み得る水性および非水性の滅菌注射用溶液;ならびに懸濁剤および濃化剤を含み得る、水性および非水性の滅菌懸濁物が挙げられる。上記処方物は、単一用量もしくは複数用量容器(例えば、密封アンプルおよびバイアル)中に提示され得る。即席の注射溶液および懸濁物は、DNAプラスミド初回刺激(priming)化合物および/もしくは当業者によって一般に使用さらえる精製ウイルスベクター化合物のための精製核酸調製物から調製され得る。好ましい単位投与量処方物は、上記投与される成分の用量もしくは単位、またはその適切な部分を含むものである。特に上記の成分に加えて、上記処方物はまた、当業者によって一般に使用される他の薬剤を含み得ることが理解されるべきである。
【0118】
上記ワクチン処方物は、異なる経路(例えば、経口(口内および舌下が挙げられる)、直腸、非経口、エアロゾル、鼻内、筋肉内、皮下、静脈内、腹腔内、眼内、頭蓋内、皮内、経皮(皮膚パッチ)、局所、または被験体の身体の関節もしくは他の領域への直接注射)を介して投与され得る。上記ワクチンは、同様に、異なる形態において投与され得る。上記形態としては、溶液、エマルジョンおよび懸濁物、マイクロスフェア、粒子、微粒子、ナノ粒子、およびリポソームが挙げられるが、これら限定されない。約1用量から約5用量(例えば、2用量−初期接種、初回刺激/追加免疫の初回刺激、および追加免疫量)が、免疫プロトコルに従って必要とされ得ることが予測される。上記最初の初回刺激および追加免疫投与は、満足のいく免疫応答を誘導するに十分な抗原量を含み得る。投与されるべき初回刺激および追加免疫の抗原の適切な量は、上記被験体もしくは患者の種々の身体的特徴(例えば、患者の年齢、ボディーマスインデックス(体重)、性別、健康状態、免疫能などが挙げられる)に基づいて、当業者によって、本明細書で開示される初回刺激/追加免疫プロトコルのいずれかのために決定される。同様に、投与体積は、投与経路に依存して変動する。例示によれば、筋肉内注射は、約0.1mL〜1.0mLの範囲に及び得る。好ましくは、患者は、正常な免疫系を有し、ヒト免疫不全ウイルスに感染していないが、上記ワクチンはまた、疾患進行を改善するために最初のHIV感染後に、またはAIDSを処置するために最初の感染後に投与されてもよい。
【0119】
上記ワクチンは、上記ワクチンがどのように処方されるかに依存して、約−80℃〜約37℃以下の温度で貯蔵され得る。当業者に公知の種々のアジュバントは、上記ワクチン組成物中のウイルスベクターとともに投与され得る。
【0120】
当業者は、上記個々の患者における望ましい「有効レベル」を達成するために、使用されている組成物の正確な処方のための適切な用量、スケジュール、および投与方法を容易に決定し得る。当業者はまた、適切な患者サンプル(例えば、血液および/もしくは組織)の直接的分析(例えば、分析的化学分析)もしくは間接的分析(例えば、ウイルス感染の代理指標(例えば、p24もしくHIV感染の場合においてはは逆転写酵素)を用いる)によって、本発明の化合物の「有効レベル」を容易に決定子、その適切な指標を使用し得る。
【0121】
さらに、特に、HIVの処置のための患者における有効レベルを決定することに関して、適切な動物モデルが利用可能であり、種々の遺伝子治療プロトコルのHIVに対するインビボ効力を評価するために広くこれが実行されてきた(Sarverら(1993b),前出)。これらモデルとしては、マウス、サル、ネコおよびウサギが挙げられる。これら動物が、HIV疾患に天然には罹りやすくないとしても、ヒト末梢血単核球(PBMC)、リンパ節、胎児肝/胸腺もしくは他の組織で再構成されたキメラマウスモデル(例えば、SCID、bg/nu/xid、NOD/SCID、SCID−hu、免疫能のあるSCID−hu、骨髄除去BALB/c)は、レンチウイルスベクターもしくはHIVに感染し得、HIV病因論および遺伝子治療のモデルとして使用され得る。同様に、シミアン免疫不全ウイルス(SIV)/サルモデルが使用され得る。ネコ免疫不全ウイルス(FIV)/ネコモデルが同様に使用され得る。上記薬学的組成物は、AIDSを治療的に処置するために使用される場合、本発明に従うベクターとともに、他の医薬を含み得る。これら他の医薬は、それらの従来の様式において(すなわち、HIV感染を処置するための薬剤として)使用され得る。
【0122】
本発明のベクターは、種々の経路(経口(口内および舌下が挙げられる)、直腸、非経口、エアロゾル、鼻内、静脈内、皮下、皮内および局所が挙げられるが、これらに限定されない)を介して投与され得る。ワクチン候補によって生成される免疫応答の動的研究において、免疫応答を、経時的に維持した。
【0123】
細胞レベルおよび体液レベルの両方において全身免疫および粘膜免疫を誘発した有効投与経路を、決定した(図4)。後に、上記ワクチンプロトコルを、DNA初回刺激/レンチウイルス追加免疫(図5)を含むか、またはベクター初回刺激/ベクター追加免疫レジメンからなるようにさらに改変され、ここでアデノウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターは、ワクチン免疫原性を改善するための同種もしくは異種の初回刺激/追加免疫ストラテジー(図9および10)において代わりに使用され得る。これら2つのプロトコルは、代わりに、DNA初回刺激、続いて、2つのベクターの追加免疫において組み合わせられ得る(図12)。これらワクチン接種ストラテジーの全ては、顕著な利点を提供し得る。なぜならDNAワクチンは、強力な細胞性免疫応答を誘導することが公知であり(例えば、Nagata,Aoshiら 2004を参照のこと)、抗ベクター免疫応答の出現は、アデノウイルス追加免疫の次に、本明細書で開示される上記レンチウイルスベクターのうちの1つを含む第2の追加免疫がある場合に得られるからである(図11)。ワクチン効力は、ICSおよびElisaを使用して研究した。
【0124】
本発明は、いまや一般的に記載され、以下の実施例を参照することによって容易に理解される。以下の実施例は、本発明の特定の局面および実施形態を例示する目的で含められるに過ぎず、本発明を限定することを意図しない。本願において至る所で言及される任意の特許、特許出願、特許公報、もしくは科学文献は、それらの全体が本明細書に参考として援用される。
【実施例】
【0125】
(実施例1)
この実施例において、非常に免疫原性の、本発明のレンチウイルスベクターは、マウスにおいて長期の抗HIV免疫を、特に、初回刺激/追加免疫プロトコルにおいて使用した場合に誘発することを実証した。
【0126】
遺伝子免疫ツールの現在の蓄積の中でも、ウイルスベクター、特に、レンチウイルスベクターは、非常に有望であることが実証された。操作されたレンチウイルスベクターは、広く種々の細胞タイプに感染し得、他のベクターとは対照的に、活発に複製していない細胞(樹状細胞を含む)すら形質導入し得、従って、種々の疾患の処置に有益な、抗原に対する強い免疫原性を誘発する。レンチウイルスベクター構築物を、HIV由来抗原を送達するためのビヒクルとして使用されるように改変した。全長Gag、PolおよびHIV由来のRev遺伝子を有し、上記ネイティブHIV 5’LTRによって駆動されるVSV−G偽型化したHIVベースのレンチウイルスベクターを、本発明のレンチウイルスベクターにおいて使用した。当業者は、本発明のレンチウイルスベクターをどのように改変して、感染性因子および/もしくは癌によって引き起こされる任意の他の疾患に対するワクチンを作り出すかを知っている。レンチウイルスベクター開発は、マウスにおける全身応答および粘膜応答の両方を誘発するために、慣用的な最適化、初回刺激/追加免疫プロトコルにおける上記レンチウイルスベクターおよびDNAプラスミドを組み合わせることによるプロトコル最適化、ならびに持続性の免疫原性の評価を含んだ。全ての研究を、マウスおよび非ヒト霊長類において行い、抗HIV免疫原性を、ICSおよびElisaによって評価した。現在のHIVワクチンと比較して極めて高度な応答、例えば、限定しないが、本発明の構築物を用いる種々の初回刺激/追加免疫プロトコルからCD8+ リンパ球のうち最大21%までが、免疫したマウスにおいてHIV抗原刺激に応じてサイトカインを分泌した(図6)。皮下免疫は、全身および粘膜の両方の区画において、高レベルの抗HIV体液性免疫および細胞性免疫を誘導した(図4)。レンチウイルスベクター形質導入した細胞による長期の抗原発現は、持続した抗HIV免疫原性を生じた(図7)。DNA初回刺激/レンチウイルスベクター追加免疫プロトコルにおけるウイルスベクターと、DNAプラスミドとの組み合わせは、大いに増大した多機能性抗HIV細胞性免疫を生じ、並行比較(side by side comparison)すると、類似の有効負荷を発現するDNA初回刺激/アデノウイルスベクター追加免疫プロトコルによって誘発された免疫応答を凌いだ(図8)。
【0127】
(実施例2)
この実施例において、HIVベースのレンチウイルスベクターでの免疫は、最小限の抗ベクター中和活性を生じることを実証した。
【0128】
ウイルス(アデノウイルスおよびレンチウイルス)ベクターは、代表的には、強力な抗原免疫を誘導するので、最も魅力的なワクチン接種手段のうちの1つを代表する。しかし、天然においてアデノウイルスベクターが広く存在しているので、アデノウイルスベクターベースのワクチンが、アデノウイルスベクター自体に対する免疫応答を生成することは、異常なことではない。これら抗アデノウイルスベクター応答は、野生型アデノウイルスに対する既存の免疫に起因して、またはアデノウイルスベクター投与によって誘導される既存の免疫に起因して、種々のアデノウイルスベクターについて後半に記載されてきており、ワクチン中和を生じ得る。このワクチン中和は、ワクチン効力の劇的な低下を生じ、この障害を克服するワクチンベクターが必要とされている。
【0129】
本発明のレンチウイルスベクターの反復投与がワクチン中和を誘導したか否か、および抗ベクター抗体がその後の免疫を妨げるか否かを評価した。動物血清サンプル中で中和抗体応答を試験するために、定量的インビトロマイクロタイターアッセイを、ワクチン接種の前後に回収した動物血清と予めインキュベートしたGFP発現レンチウイルスベクターで形質導入したJurkat細胞の蛍光レベルを比較することによって、開発した。経時的に回収したマウスおよび非ヒト霊長類に由来する血清を、種々の経路を使用する反復レンチウイルスベクター投与後に分析した。反復免疫(皮下、腹腔内、もしくは動脈内のいずれも)が、1回の注射と比較して、抗レンチウイルスベクター中和活性を増大させたとしても、抗ベクター中和力価は、非常に抗原性のアデノウイルスベースのワクチンベクターによって誘起されたものと比較して、最小限のままであった(図11)。腹腔内注射と比較すると、皮下投与は、類似の抗レンチウイルスベクター中和抗体を誘導したと同時に、はるかにより強い抗有効負荷免疫を誘導した。レンチウイルスベクターは、既存の免疫もしくは反復投与が課題である場合、他の広く使用されるウイルスベクターの代替手段であり得る。本発明のレンチウイルスベクターは、単独で、もしくは広い標的集団において、他のベクターおよびDNAプラスミドと種々組み合わせて使用され得る。
【0130】
(実施例3)
この実施例において、本発明のレンチウイルスベクターを利用する初回刺激/追加免疫プロトコルにおける異種追加免疫は、アデノウイルスワクチンベクターの免疫原性を高め、かつワクチン中和を巧みに回避することを実証した。
【0131】
2種の異なるウイルスベクターによる異種「初回刺激−追加免疫」プロトコルは、上記個々のウイルスベクターの免疫原性を顕著に増大させ、ワクチン中和活性の生成を最小限にすることを示した。偽型化レンチウイルスベクターは、抗原有効負荷を送達するために最も効率的なビヒクルのうちの1つである。なぜならそれらは、広く種々の細胞に感染し得、分裂中の細胞および分裂していない細胞を形質導入する能力を有するからである。本明細書で開示されるレンチウイルスベクターベースのワクチンを、アデノウイルスベースのベクターワクチンとの異種初回刺激/追加免疫ストラテジーを使用して、免疫原性について試験した。
【0132】
本発明のレンチウイルスベクターのうちの1つを、全長HIV Gag遺伝子、Pol遺伝子およびRev遺伝子を有するように操作し、VSV−Gで偽型化した。このレンチウイルスベクターおよびアデノウイルスベースのワクチンベクターを使用する免疫をマウスに行い、ICS、および抗HIV ELISAで免疫原性をアッセイした。中和アッセイを、上記アデノウイルスベースのワクチンベクターもしくは上記レンチウイルスベクターを使用して行って、免疫したマウスに由来する血清の存在下でHela−tat細胞を形質導入した。
【0133】
アデノウイルスベクターベースのワクチンベクターと、上記レンチウイルスワクチンベクターを、異種初回刺激/追加免疫アプローチにおいて組み合わせると、同種初回刺激/追加免疫での免疫と比較して、CD8+ T細胞において数倍高い免疫原性応答およびCD4+ T細胞においてより高い多機能性応答が誘導された(図9および図10)。さらに、同種初回刺激/追加免疫プロトコルは、アデノウイルスベクター免疫したマウスにおいて高レベルの抗ワクチン中和抗体を誘導すると解ったと同時に、等しく免疫原性のレンチウイルスベクターが、遙かに低いレベルの中和抗体を誘発した(図11)。しかし、上記異種初回刺激/追加免疫ストラテジーは、レンチウイルスベクターに対する顕著な中和抗体を誘発しない一方で、上記抗アデノウイルスベクター中和活性を劇的に低下させることが解った(図11)。さらに、レンチウイルスワクチンベクターとアデノウイルスベクターベースのワクチンベクターとを異種追加免疫プロトコルにおいて組み合わせると、両方のベクターの免疫原性および多機能性(すなわち、T細胞が抗原性刺激に応答して、複数のサイトカインを同時に分泌する能力)を劇的が改善される(図9および図10)。これら知見は、HIVワクチンおよび他の疾患に対するワクチンの開発にも大きな関係を有する。本発明のワクチンおよびプロトコルは、他のウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベースのワクチンベクター)に対する既存の免疫を有する人々を処置するために使用され得る。
【0134】
(実施例4)
この実施例において、本発明のレンチウイルスベースのワクチンベクターが、強力かつ持続した抗HIVの細胞性免疫および体液性免疫をマウスおよび非ヒト霊長類において誘発することを実証した。
【0135】
ウイルスベクターは、遺伝子免疫による組換え抗原に対して強力な免疫応答を誘導する主要な手段のうちの1つと考えられる。これらの中でも、レンチウイルスベクターを、広く種々の細胞タイプに感染させるために操作し、そして他のベクターとは対照的に、レンチウイルスベクターは、活発に複製していない細胞(免疫応答誘導の主要な主役のうちの1つである樹状細胞が挙げられる)ですら形質導入し得る。
【0136】
本明細書でより詳細に記載されるように、本発明のレンチウイルスベクターは、図4B、図4Cおよび図4Dの模式図において示されるように、多様なタイプの免疫を誘導し得る。図4Bは、「空の」レンチウイルスベクターコントロールと比較した、本発明のレンチウイルスベクターによって誘導される抗HIV IgGレベルを示す。図4Bは、Balb/cマウスにおける本発明のベクターの皮下注射後の顕著な血清IgGレベルを示す。図4Cにおいて得られ、例示される結果は、マウス唾液中の顕著な抗HIV IgAレベルを示した一方で、図4Dは、上記レンチウイルスベクターが、CD8+ T細胞における顕著な抗HIV応答を誘導することを示す。得られた結果は、治療的に進行を処置する、およびHIVもしくは他のウイルスの場合のように、伝染領域を粘膜的に、から予防的にまで処置するために(そのために、本発明は適合され得る)、多様な免疫が全身的に認められるという点で、疾患(特に、HIV)の治療的処置および予防的処置にとって重要である。このことは、HIVの治療的処置および予防的処置に重要である。上記データは、皮下経路が、HIVに対する全身免疫および粘膜免疫の両方を誘導するにおいて最も効率的であることを示した。
【0137】
予防的ワクチンおよび治療的ワクチンとして単独で使用され得ることは、本発明の特徴であるが、上記ワクチンプロトコルが、ワクチン免疫原性を改善するためのDNA初回刺激−レンチウイルス追加免疫ストラテジーおよびレンチウイルス初回刺激−レンチウイルス追加免疫ストラテジーを含むように改変した。このことは、顕著な利点を示す。なぜなら、DNAワクチンは、強力かつ集中した細胞性免疫応答を誘導するからである(例えば、Nagata,Aoshiら 2004を参照のこと)。このDNA初回刺激−レンチウイルスベクターストラテジーは、特に、Gag(HIV+非進行ともっとも相関した因子)に対する細胞性免疫を生成するために、強力な全身性免疫応答を誘発する有効な手段であることが示された。例えば、Barouch,Fuら 2001;Letvin,Barouchら 2002;Barouch,McKayら 2003;Betts,Nasonら 2006;およびHoneyborne,Prendergastら 2007を参照のこと。さらに、単独で、およびDNA初回刺激−レンチウイルスベクター追加免疫アプローチにおいても使用されるレンチウイルスベクターは、他のウイルスベクターで遭遇した最も重大な問題;免疫後の抗ベクター免疫の生成を阻止する。
【0138】
本発明は、上記レンチウイルスベクターワクチン接種と、DNA初回刺激/レンチウイルスベクター追加免疫状況におけるDNAとの成功裏の組み合わせを提供する。DNA初回刺激/レンチウイルス追加免疫の効果を研究した。図5は、DNA初回刺激/レンチウイルスベクター追加免疫が、HIV特異的CD8+応答を増大させることを開示する。上記レンチウイルスベクター(例えば、図1)と同じ有効負荷を有する裸のDNAプラスミド(例えば、図14)を、作製した。細胞媒介性(CD8+)応答を測定するために、マウス脾細胞のICSアッセイを行った。その結果は、追加免疫ストラテジーが、追加免疫として本発明のレンチウイルスベクターを使用する、DNA初回刺激もしくはレンチウイルスベクター初回刺激(同種初回刺激/追加免疫)のいずれも、増大した免疫原性を示すことを示した。各場合において、上記初回刺激および追加免疫を、同じ有効負荷を有するように構築した。
【0139】
大規模の抗HIV免疫を提供することは、本発明の一局面である。免疫応答を測定するためにICSアッセイを使用したところ、図6は、顕著な規模の抗HIV免疫の刺激が、DNA初回刺激の後のレンチウイルスベクターワクチン接種によって誘発され得ることを示す。本発明のレンチウイルスベクターは、CD8+ Tリンパ球のうちの21%において抗HIV Gag特異的応答を誘発した。これら結果は、フローサイトメトリーを介して、種々の実験において反復して確認された。
【0140】
レンチウイルスベクター免疫は、持続した長期の抗HIV免疫を誘導する。HIV感染に対処する困難のうちの1つは、持続した抗HIV免疫を長期間誘導する能力である。図7は、CD8+細胞において本発明のレンチウイルスベクターによって誘導された抗HIV Gag応答、およびマウス血清において誘導された抗HIV IgG応答を示す。結果は、本発明のレンチウイルスベクターが、上記研究全体を通して持続した免疫原性を誘導することを示す。最大9ヶ月までの追跡を伴うさらなる試験は、上記研究機関の全体にわたって免疫が持続されることを示す。LVによる持続した抗原発現はまた、図8Dにおいて示される。ここでLV誘導性抗体応答は、経時的に増大する一方で、アデノウイルスベクターによって誘発されたものは低下する。
【0141】
図8は、本発明のレンチウイルスベクターワクチンと、他のアデノウイルスベースのワクチン候補との比較を示す。図8において例示される結果は、本発明のレンチウイルスワクチンが、上記アデノウイルスワクチンによって誘発されるものより高い抗HIV細胞性免疫および体液性免疫を誘導することを示した。図8Cは、本発明によって誘発されるHIV特異的CD4細胞の多機能性を示す。上記結果は、各HIV抗原について、CD4+細胞が、CD4免疫応答におけるアデノウイルスワクチンより顕著な増大を示すことを示した。さらに、図8Dの結果は、アデノウイルスプラットフォームと比較して、抗HIV血清抗体の持続かつ増大を示す。
【0142】
図11は、同種および異種の初回刺激/追加免疫プロトコルにおけるウイルスワクチンベクターによって生成される抗ベクター中和活性を示す。Y軸は、宿主の抗体によって中和されるウイルスベクターの割合を表す。結果は、本発明のレンチウイルスワクチンが、そのアデノウイルス対応物と類似のもしくはそれより高い抗HIV免疫を誘導する(図8および9)一方で、抗ベクター免疫に遙かに感受性が低く、従って、異種初回刺激/追加免疫におけるアデノウイルスに対するその組み合わせは、抗アデノウイルス中和問題を回避し得ることを実証する。
【0143】
図12は、2つのHIV抗原であるGagおよびPolでの刺激に応答して、サイトカイン(INFγもしくはTNFα)を分泌するCD8+細胞の%を測定することによって、上記GagおよびPol抗原に対するCD8+ 免疫応答を図示する。これらCD8+細胞は、2つの異なるDNA初回刺激プロトコル/異種追加免疫プロトコルでワクチン接種したマウスに由来した。使用した全ての免疫原(DNAおよびウイルスベクター)は、同じ有効負荷を含んだ。
【0144】
図13は、SIV(HIVの霊長類等価物)ベースのレンチウイルスワクチンベクターを5ヶ月にわたって3回投与した後の非ヒト霊長類において生成された抗SIV抗体力価を図示する。上記3回目の投与後に観察された追加免疫の効果は、複数回の投与後ですら、最小限の抗ベクター応答を明らかにしない。このことは、本発明のレンチウイルスベースのワクチンベクターが、他のウイルスベクターワクチンの使用に対する主な障害であるので、数回の免疫後に、上記ワクチンを非効率的にする抗ベクター中和抗体を誘発しないことを図示する。
【0145】
図15および図16は、ワクチンレンチウイルスベクターRNAのパッケージングのためのパッケージング細胞株ヘルパー構築物を図示する。ここでgag/polは、上記ワクチンベクターにおける有効負荷であり(図15)、gag/polは、上記ワクチンベクターにおける有効負荷ではない(図16)。
【0146】
当業者は、前述の物質および装置の多くの等価物が、容易に利用可能であり、これら実施例が、慣用的な実験法のみを使用して、その原理に従って改変され得ることを認識する。本明細書で引用される全ての参考として援用される文献(特許、特許出願、および刊行物を含む)は、以前に具体的に組み込まれいようといなかろうと、それらの全体が本明細書に参考として援用される。
【0147】
いくつかの特定の実施形態の前述の説明は、現在の知見を適用することによって、他者が、包括的な概念から逸脱することなく、このような特定の実施形態の種々の適用を容易に改変もしくは適合し得る十分な情報を提供し、従って、このような適合および改変は、上記開示される実施形態の意味およびその等価物の範囲内に包含されることが意図されるべきであるし、意図される。本明細書で使用される語句もしくは用語は、説明を目的とするのであって、限定を目的とするのではないことが理解されるべきである。図面および説明において、例示的実施形態が開示されてきたが、特定の用語が使用され得、それらは、別段示されなければ、一般的な意味および説明的な意味においてのみ使用され、限定目的で使用されるのではなく、従って、特許請求の範囲は、そのようには限定されない。さらに、当業者は、本明細書で議論される方法の特定の工程が、代わりの順序で並んでいてもよいし、工程が組み合わされてもよいことを認識する。従って、添付の特許請求の範囲が、本明細書で開示される特定の実施形態に限定されないことが意図される。
【0148】
【数1】
【0149】
【数2】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、2008年3月28日に出願された仮出願第61/040,581号(この全体の内容は、その全体が本明細書に援用される)に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ウイルス感染の予防的処置および治療的処置における使用のための改善されたレンチウイルスベースの免疫原性ベクターを記載する。本発明は、より具体的には、レンチウイルスベクター、上記レンチウイルスベクターを作製し、改変し、増殖し、パッケージングするための方法、ならびにこのようなレンチウイルスベクターを、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染および他の疾患のためのワクチンとして使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ヒトにおける後天性免疫不全症候群(AIDS)、および上記疾患を引き起こすヒト免疫不全ウイルス(HIV)の最初の同定後のほぼ30年間、3300万人を超える人々が、全世界で、HIVとともに生き、400万人を超える人々が毎年HIVに新たに感染している。その一方で、推定280万人が、AIDSによって彼らの命を既に落としている。HIV世界的流行が、全世界で拡がり続けるにつれて、有効なHIVワクチンの必要性が、未だ急務となっている。HIVが変異する異常な能力、抗HIV抗体の多くの現在公知の特異性が、HIV初代単離株(primary isolate)を一貫して中和できないこと、およびHIV感染に対する防御免疫の相関の完全な理解が欠如していることが、所望の有効性を有するHIVワクチンを開発する努力を妨げてきた。現在では、ちょうど上記ウイルスに対する免疫の無効が、実質的には不可能であるように、ワクチンは、HIVに対して真に有効であることを示していない。従って、実質的な満たされていない必要性は、AIDSのための緩和処置としてのみならず、上記ウイルスの伝染を弱め、おそらく完全になくするためにも有効なワクチンについて存在する。HIV感染脾献体の大部分は、後天性免疫不全症候群(AIDS)を発症するが、患者のうちの約10〜15%は、感染の10年後もAIDSを発症せず、AIDS非進行者といわれる(非特許文献1、非特許文献2)。AIDSを実際に発症するヒトのうち、HIV感染患者のうちの約10%が、HIV感染の最初の2〜3年以内にAIDSへと進行し、AIDSへの急速進行者といわれる(非特許文献1、非特許文献2)。非進行者における抗HIV免疫応答およびAIDSへの急速進行者の最初の同定は、HIVに対する防御免疫の相関であり得るものへと、いくらかの洞察を提供した。
【0004】
一般に、AIDSへの急速進行者は、HIVタンパク質に対して低レベルの抗体を有し(非特許文献1、非特許文献3、非特許文献4)、自己由来HIV単離株を中和する抗体が低いかもしくは存在しない(非特許文献3、非特許文献4)。HIVビリオンの血漿レベルは、非進行者と比較して、急速進行者において一般により高く、急速に複製するHIV株は、免疫不全およびより高い毒性のHIV改変体の選択の結果、または急速進行者に感染するより高い毒性のHIV改変体の結果のいずれかとして(非特許文献5)、急速進行者からより頻繁に単離される(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8)。初代HIV感染におけるウイルス血症(plasma viremia)の低下は、CD8+抗HIV細胞傷害性T細胞リンパ球(「CTL」)活性の存在と相関するというデータ(非特許文献9)と合わせて考えると、これらデータは、HIV感染細胞を死滅させる抗HIV CD8+ CTLおよびHIV初代単離株を広く中和する抗体が、HIVに後に曝される非感染個体における治療的抗HIV免疫応答を提供し得ることを示唆する(非特許文献10、非特許文献11)。
【0005】
歴史的には、ワクチンは、強力な抗ウイルス中和抗体応答を誘発することによって、ウイルス感染からの防御を提供する。中和抗体は、上記ウイルス表面上のタンパク質を認識し、健康な細胞への結合および感染を妨げる。しかし、このアプローチは、HIVサブタイプの広い範囲、およびHIVが十分に多様でない免疫応答から逃れることを可能にする急速な変異速度に起因して、HIVに対して有効ではない。中和抗体を誘発するように設計されたワクチンの最も成功したもののうちのいくつかは、HIVに由来する組換えエンベロープタンパク質からなる。ワクチンによる防御が不十分であることは、今までは、強くかつ多様な細胞性免疫応答および体液性免疫応答を刺激できなかったことの結果であり得る。研究者らはまた、細胞性免疫応答に基づいて、HIVワクチンを開発している最中である。細胞性免疫は、ウイルスに感染した細胞を死滅させる上記CTL、もしくはCD8+ Tリンパ球に基づいている。このアプローチは、疾患が発症せずかつ上記ウイルスが別の個体に伝染する可能性を低くするように、上記身体におけるウイルスの増殖を妨げる。
【0006】
現在開発中である第1世代のHIVワクチンは、防御のある形態を提供し得るが、上記ワクチンは、完全には防御的ではない。疾患に対する予防は、AIDSワクチンの第1世代のプロトタイプで起こる可能性は低い。より可能性があることには、これらワクチンは、感染を妨げるのではなく、上記疾患の臨床経過に影響を及ぼし、ウイルス負荷を軽減し、そしてAIDSへの進行を遅らせることによって、症状緩和または症状無しでの生存を長期化する。最後に、このようなワクチンは、個人間伝染に影響を及ぼし得る。なぜなら高いウイルス負荷は、HIV伝染速度の増大と強く相関したからである。例えば、Holodniy 2006を参照のこと。
【0007】
従って、ワクチンは、低下した伝染を生じるレベルにまでウイルス負荷を低下させ得る。個体レベルでのワクチンは、よって、全人口のスケールにおいて、疫学的レベルでは極めて有益であり得る。しかし、部分的に有効であるとしても、ワクチンは、いくらかの個体を感染から防御することにおいて非常に有望であり得る。HIVの伝染速度を低下させることに加えて、感染個体におけるウイルス負荷を低下させることは、AIDSへの進行を遅らせ、余命を延ばす。
【0008】
上記ウイルスの2つの生物学的特徴は、ワクチン開発に対する最大の妨害を引き起こしている:その異常な遺伝的多様性およびそのエンベロープタンパク質の理解しがたい特性。例えば、Brander,Frahmら 2006;Butler,Pandreaら 2007;およびMcBurney and Ross 2007を参照のこと。以前のワクチンの主導(上記HIVエンベロープタンパク質に対する免疫応答の惹起に焦点を当てる)は、HIVのこれらの特徴に起因して大抵失敗した。近年の失敗例は、全体としてほとんど有効性がない、合成gpl20を含むワクチンであった。三価アデノウイルスワクチンを使用する別のワクチン治験は、ワクチンレシピエントにおいても予防的効果もしくは治療的効果を提供することができないことから、不意に、延期された。
【0009】
よって、HIV感染のための新たな、改善されたかつ既存のものに代わる予防的および治療的処置モダリティーの必要性が継続してあり、まだ満たされていない。
【0010】
上記文献もしくは本明細書で引用される任意の文献の引用は、前述のうちのいずれも、当を得た先行技術であるという承認として意図されない。日付に関する全ての陳述もしくはこれら文書の内容に関する説明は、出願人に入手可能な情報に基づいており、これら文書の日付もしくは内容の正確さに関する任意の承認を構成しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Sheppardら,AIDS(1993)7:1159 66
【非特許文献2】Phair,AIDS Res.Human Retroviruses(1994)10:883 885
【非特許文献3】Pantaleoら,N.Engl.J.Med.(1995)332:209 216
【非特許文献4】Caoら、N.Eng.J.Med.(1995)332:201 208
【非特許文献5】Sullivanら、J.Virol.(1995)69:4413 4422
【非特許文献6】Leeら、J.AIDS(1994)7:381 388
【非特許文献7】Mellorsら、Ann.Intern.Med.(1995)122:573 579
【非特許文献8】Jurriaansら、Virology(1994)204:223 233
【非特許文献9】Borrowら、J.Virol.(1994)68:6103
【非特許文献10】Haynesら,Science(1996)271:324 328
【非特許文献11】Haynes,Science(1993)260:1279 1286
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、レンチウイルスベクター、このようなレンチウイルスベクターを作製するための方法、改変するための方法、増殖させるための方法、およびパッケージングするための方法、ならびにこのようなベクターを使用して、被験体における1つ以上の疾患に対する免疫応答を強化するための方法を提供する。
【0013】
一局面において、本発明は、ワクチン送達のための改善されたレンチウイルスベクターを提供し、上記ベクターは、5’の長い末端反復配列および3’LTR;上記5’LTRに作動可能に連結された、第1の核酸配列(本明細書では、「有効負荷(payload)」ともいう);ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列を含む、第2の核酸配列を含み、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動される。
【0014】
一実施形態において、本発明は、ワクチン送達のための改善されたレンチウイルスベクターを提供し、上記ベクターは、5’の長い末端反復配列(LTR)(配列番号8)および3’LTR(配列番号9);上記5’LTRに作動可能に連結された第1の核酸配列(本明細書で「有効負荷」ともいわれる);ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REVコード配列(配列番号10)およびrev応答エレメント(RRE)(配列番号11)含有配列を含む第2の核酸配列を含み、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、そして上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動される。本発明は、上記有効負荷の発現が、上記5’LTRによって駆動されるという点でおよび上記有効負荷の発現がRevおよび上記RRE含有配列の活性に依存する場合に特徴付けられる。言い換えると、上記5’LTRは、上記有効負荷およびREVの発現を駆動するために十分強力なプロモーターであり得る。
【0015】
さらに別の実施形態において、このようなレンチウイルスベクターは、ウインチウイルス由来の5’LTR;レンチウイルス由来の3’LTR;第1の核酸配列(すなわち、有効負荷);ならびに上記5’LTRおよびRRE含有配列およびREVコード配列に作動可能に連結された第2の核酸配列を含み得、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列は、GagおよびPolのうちの一方もしくは両方の全長野生型配列を発現し;上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動される。
【0016】
さらに別の実施形態において、ワクチン送達のための上記レンチウイルスベクターは、5’の長い末端反復配列および3’LTR;上記5’LTRに作動可能に連結された第1の核酸配列;ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列を含む、第2の核酸配列を含み、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動され、上記レンチウイルスベクター構築物は、公知のレンチウイルス調節エレメント(例えば、Tat、Nef、Vif、Vpu、Vprもしくはこれらの組み合わせ)のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0017】
本発明のさらに別の実施形態において、ワクチン送達のための上記レンチウイルスベクターは、全ての公知のレンチウイルス調節エレメント(例えば、Tat、Nef、Vif、Vpu、およびVpr)を具体的に排除する。このような実施形態において、Vpu、Vpr、Vif、Tat、Nef、もしくは類似のレンチウイルスタンパク質のうちの少なくとも1つをコードする上記核酸配列は、上記核酸配列が、機能的なVpu、Vpr、Vif、Tat、Nefをコード出来ないか、もしくはVpu、Vpr、Vif、Tat、Nef、もしくは類似の補助タンパク質をコードする核酸配列が、本発明のレンチウイルスベクター系から除去されるように、破壊される。
【0018】
別の局面において、本発明は、本発明のレンチウイルスベクター;ならびに当該分野で公知である薬学的に受容可能なキャリアおよび/もしくは遺伝子補助剤(genetic adjuvant)を含む、インビトロもしくはインビボでの投与のための薬学的組成物を提供する。
【0019】
別の局面において、本発明は、宿主細胞においてベクターの免疫原性を増大させるための方法を提供し、上記方法は、第1のベクターを含む薬学的組成物を投与する工程、ならびに5’の長い末端反復配列および3’LTR;上記5’LTRに作動可能に連結された第1の核酸配列;ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列を含む、第2の核酸配列を含む、第2のレンチウイルスベクターを含む薬学的組成物を連続的に投与する工程を包含し、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動され、上記ベクターの免疫原性は、増大される。
【0020】
さらに別の局面において、本発明は、被験体における免疫応答を誘導するための方法を提供し、上記方法は、本明細書で開示されるレンチウイルスベクターを含む薬学的組成物を、種々の投与経路およびプロトコル(例えば、DNA初回刺激(prime)/レンチウイルスベクター追加免疫(boost)、DNA初回刺激/2回の相同なレンチウイルスベクター追加免疫、DNA初回刺激/異種ベクター追加免疫、レンチウイルス初回刺激/レンチウイルスベクター追加免疫、レンチウイルスベクターもしくはDNA初回刺激/レンチウイルスベクター追加免疫/アデノウイルスベクター追加免疫ならびに逆もまた同様)を投与する工程を包含し、ここで上記アデノウイルスベクターは、上記第1の追加免疫として投与され、そして上記レンチウイルスベクターは、第2の追加免疫として投与される。
【0021】
従って、一実施形態において、上記方法は、被験体におけるHIV、または上記構築物中にコードされる抗原性もしくは免疫原性の配列に関する他の目的の疾患に対する細胞媒介性免疫応答および体液性免疫応答の両方の生成を、種々の投与経路およびプロトコルにより本明細書で開示されるレンチウイルスワクチンベクターの投与によって提供する。
【0022】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明のレンチウイルスワクチンベクターの投与を包含する、被験体における免疫応答を誘導するための方法を提供し、ここで多様化した免疫が、誘発される。このことは、全身的にもしくは粘膜のいずれかに示される細胞性免疫もしくは体液性免疫を含む。
【0023】
ベクターの有効性および/もしくは免疫原性を増大させる初回刺激/追加免疫、または異種もしくは相同な追加免疫アプローチを提供することは、本発明のさらに別の実施形態であり、上記アプローチは、第1のベクター(例えば、DNA初回刺激プラスミドといわれるか、または本発明のレンチウイルスベクター、当該分野で公知の他のものの中でも、アデノウイルスベースのベクター、ポックスベースのベクター(MVAおよびカナリア痘を含む)、VSVベースのベクター、アルファウイルスベースのベクター(例えば、VEE、セムリキ森林ウイルス)、ヘルペスウイルスベースのベクターを使用する、核酸プラスミド構築物)を投与する工程、ならびに本発明のレンチウイルスベクターを、同じ有効負荷を含む追加免疫として連続的に投与する工程を包含し、ここで第1および第2のベクターのうちの一方もしくは両方は、上記DNA初回刺激プラスミド構築物と同じ有効負荷を含む追加免疫としての、本発明のレンチウイルスベクターであるか、またはいくつかの場合において、初回刺激/追加免疫プロトコルの初回刺激として、本発明のレンチウイルスベクター、続いて、ウイルスベクター追加免疫(例えば、アデノウイルスベースのベクター、ポックスベースのベクター(MVAおよびカナリア痘を含む)、VSVベースのベクター、アルファウイルスベースのベクター(例えば、VEE、セムリキ森林ウイルス)、ヘルペスウイルスベースのベクターを使用する)、あるいは逆もまた同様である。
【0024】
本発明のさらに別の局面において、宿主における感染性複製性ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の複製を阻害するための方法を提供し、上記方法は、5’の長い末端反復配列および3’LTR;上記5’LTRに作動可能に連結された、第1の核酸配列;ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列を含む、第2の核酸配列を含む薬学的組成物を投与する工程を包含し、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動される。
【0025】
本発明のさらに別の局面において、ウイルス、細菌、原虫、および/もしくは微生物の感染について被験体を予防的にもしくは治療的に処置するための方法を提供し、上記方法は、必要な被験体に、5’の長い末端反復配列および3’LTR;上記5’LTRに作動可能に連結された、第1の核酸配列;ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列を含む、第2の核酸配列を含むレンチウイルスベクターを投与する工程を包含し、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動される。
【0026】
このような方法は、初回刺激/レンチウイルスベクター追加免疫アプローチ、ならびに本明細書で開示される他のプロトコルの使用をさらに含み得る。上記方法は、例えば、目的の疾患(癌、もしくは他の疾患状態(例えば、アルツハイマー病、自己免疫疾患、心血管疾患、神経学的疾患、線維症疾患、脂質代謝疾患、細胞外マトリクス関連疾患、および慢性関節変形性疾患、もしくはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる)に対して、被験体における多様なおよび包括的な免疫応答を生成するために使用され得る。
【0027】
本発明のさらに別の局面において、本発明は、パッケージング細胞株および本発明のワクチンベクターを作製するためのパッケージング細胞株を作製する方法を提供する。一実施形態において、組換えレンチウイルスパッケージング細胞を生成するための方法が提供され、上記方法は、細胞に、上記パッケージング細胞において発現し得る核酸、導入能力のある(transduction−competent)ウイルス様粒子を生成する核酸配列;および上記パッケージング細胞において上記目的の配列を発現し得る少なくとも1つの核酸分子を導入する工程を包含し、上記パッケージング細胞は、上記目的の核酸配列を発現する導入能力のあるウイルス様粒子を生成する。
【0028】
前述のレンチウイルスベクター、このようなレンチウイルスベクターを含む薬学的組成物、およびこのようなレンチウイルスベクターを使用するための方法の各々において、上記レンチウイルスベクターは、以下のもの(例えば、機能的に活性なレンチウイルスRNAパッケージングエレメントをコードする核酸配列、機能的中心ポリプリン区画(functional central polypurine tract)(cPPT)、中心終結配列(central termination sequenc)(CTS)および3’LTR近位ポリプリン区画(3’ LTR proximal polypurine tract)(PPT)をコードする核酸配列、ならびに/あるいは非タンパク質もしくはタンパク質ベースのマーカーまたはタグをコードする核酸配列が挙げられるが、これらに限定されない)のうちの1つ以上をさらに含む。特定の実施形態において、本発明のレンチウイルスベクターは、図1、図2もしくは図3に示されるレンチウイルスベクター構築物、またはこれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上を含む。
【0029】
さらに、本発明のレンチウイルスベクターは、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。従って、本発明の一実施形態において、上記第1の核酸配列は、1つ以上の目的の抗原性配列をコードする。本発明のさらに別の実施形態において、1つ以上の目的の配列の発現は、REV−RRE活性に依存する。本発明のさらに別の実施形態において、上記第1の核酸配列は、gag/polコード配列を含む。本発明のさらに別の実施形態において、上記第1の核酸配列もしくは第2の核酸配列は、非改変配列である。本発明のさらに別の実施形態において、上記gagコード配列は、改変gagコード配列を含む。本発明のさらに別の実施形態において、上記改変gagコード配列は、Gagのミリストイル化レセプターのグリシン残基を変化させる少なくとも1つのヌクレオチド置換をさらに含む。本発明のさらに別の実施形態において、上記gag/polコード配列は、細胞発現を増大させるために改変される。本発明のさらに別の実施形態において、上記改変配列は、上記gag配列内のフレームシフトを含む。本発明のさらに別の実施形態において、上記改変は、翻訳フレームシフトによって媒介されないgag−pol機能タンパク質の高レベル発現を支持する。本発明のさらに別の実施形態において、上記cPPTは、上記gag/polコード配列のうちのpolコード配列の一部である。本発明のいくつかの実施形態において、上記機能的に活性なレンチウイルスRNAパッケージングエレメントは、gagパッケージング配列を含む。
【0030】
いくつかの例示的実施形態のこれらおよび他の局面は、以下の詳細な説明および添付の図面とともに考慮される場合に、よりよく認識されかつ理解される。しかし、以下の説明は、好ましい実施形態および多くの具体的な詳細を示しながら、限定ではなく例示によって示されることが理解されるべきである。多くの変化および改変は、上記実施形態の範囲内において、その趣旨から逸脱することなく行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、例示的なHIVワクチン候補およびその種々のアナログを示す。この候補は、プロモーターとしてネイティブHIV LTRを使用する、HIV−1ベースのレンチウイルスベクター(LV)である。これは、gag遺伝子、pol遺伝子およびrev遺伝子を、免疫原性有効負荷として発現する。このLVの重量な特徴は、全長REVコード配列の上流にある上記RRE含有配列の操作もしくは配置にある。このLVの別の重要な特徴は、上記RRE含有配列と上記REVコード配列との間に位置するスプライスアクセプター(SA)部位の存在である。このLVの別の重要な特徴は、免疫原性有効負荷が上記RRE含有配列に対してすぐ近位にあることである。このLVは、必要に応じて、HIV治療ワクチン状況において野生型HIVからのその同定および区別を可能にするために、非タンパク質コード遺伝子配列(non−protein coding genetic sequence)(Gtag)を含む。この配列は、上記SA部位の上流もしくは下流のいずれかに配置され得る。図1に示されるこの4つの他の模式的代表例は、考えられるLVワクチンベクターアナログの非限定的代表例である。第2の構築物は、上記RREエレメントが、上記免疫原性有効負荷の上流もしくは下流に配置され得ることを示す。第3の構築物は、上記Gtag配列が、自由になり得る(can be disposable)ことを示す。第4の構築物は、Revタンパク質をコードする配列の下流に、別の遺伝子有効負荷が配置され得、有効負荷は、遺伝子補助剤、他の免疫原、RNAアンチセンス、リボザイムなどをコードし得ることを示す。第5の構築物は、上記の模式的ベクター構築物代表例の組み合わせである。最後の第6の構築物は、導入遺伝子発現のさらなる調節のために導入され得るさらなるエレメントを含み、ここでSD/SA部位は、任意である。内部プロモーター/Rev組み合わせは、上記の全ての構築物において使用され得る。
【図2】図2は、汎用ワクチン(generic vaccine)であるHIVベースのレンチウイルスベクター構築物およびそのアナログを示す。上記汎用ワクチンベクターは、ネイティブHIV LTRをプロモーターとして使用するHIV−1ベースのレンチウイルスベクター(LV)である。このベクターは、導入された宿主細胞における生成、キャプシド形成および組み込みのための最小限のエレメント(psi、cPPT/ctsおよびpptエレメント)を含む。上記HIVワクチンベクターに関しては、このLVの重量な特徴は、全長REVコード配列の上流での上記RRE含有配列の操作もしくは配置、上記RRE含有配列と上記REVコード配列との間のスプライスアクセプター(SA)部位の配置、および上記免疫原性有効負荷が上記RRE配列に対してすぐ近くにあることにある。このLVは、HIV治療ワクチン状況において野生型HIVからその同定および区別を可能にするために、非タンパク質コード遺伝子配列(Gtag)を含む。この配列は、上記SA部位の上流もしくは下流のいずれかに配置され得る。3つの他の模式的代表例は、考えられるLV遺伝子ベクターアナログのいくつかの非限定的代表例である。第2の構築物は、上記RREエレメントが、上記遺伝子有効負荷の上流もしくは下流に配置され得ることを示す。第3の構築物は、上記Gtag配列が自由になり得ることを示す。第4の構築物は、Revタンパク質をコードする配列の下流に、別の遺伝子有効負荷が配置され得、有効負荷は、遺伝子補助剤、他の免疫原、RNAアンチセンス、リボザイムなどをコードし得ることを示す。最後の第5の構築物は、内部プロモーターに調節されたRev発現および隣り合う遺伝子の発現との配置(configuration)を示す。図1Aにおける最後の例に関しては、SD/SA部位の存在は、任意であり得る。
【図3】図3は、SIN配置を使用する、HIVワクチン候補およびアナログを示す。この図は、本願に記載されるHIVワクチンベクター候補(上から第1)の模式的代表を示す。この候補は、ネイティブHIV LTRプロモーター活性が、絶縁体(Insulator)のようなエレメントの欠失、変異もしくは挿入のいずれかによって破壊されたHIV−1ベースのレンチウイルスベクター(LV)である。このSINベースのHIVワクチンLVは、gag遺伝子、pol遺伝子およびrev遺伝子を、免疫原性有効負荷として発現する。上記HIVワクチンベクターに関しては、このLVの重要な特徴は、全長REVコード配列の上流での上記RRE含有配列の操作もしくは配置、上記RRE含有配列と上記REVコード配列との間の上記スプライスアクセプター(SA)部位の配置、および上記免疫原性有効負荷が上記RRE配列に対してすぐ近くにあることにある。このLVは、HIV治療ワクチン状況において野生型HIVからその同定および区別を可能にするために、非タンパク質コード遺伝子配列(Gtag)を含む。この配列は、上記SA部位の上流もしくは下流のいずれかに配置され得る。4つの他の模式的代表例は、考えられるSINベースのLVワクチンベクターアナログの非限定的代表例である。第2の構築物は、上記RREエレメントが、上記免疫原性有効負荷の上流もしくは下流に配置され得ることを示す。第3の構築物は、上記Gtag配列が自由になり得ることを示す。上から第4の構築物は、上記Revタンパク質をコードする配列の下流に、別の遺伝子有効負荷が配置され得、有効負荷は、遺伝子補助剤、他の免疫原、RNAアンチセンス、リボザイムなどをコードし得ることを示す。最後の第5の構築物は、上記の模式的ベクター構築物代表例の組み合わせである。
【図4】図4A、図4B、図4Cおよび図4Dは、全身および粘膜の液性免疫および細胞性免疫を誘導する、マウスの皮下(SC)HIVワクチンレンチウイルス候補(例えば、本明細書で「VRX1023」といわれる)免疫の結果を示す。マウスに、0日目と15日目に2×107 TUのVRX1023をSC注射して、2回免疫し、次いで、25日目に屠殺した(パネルA)。陰性コントロール群には、Gag導入遺伝子、Pol導入遺伝子およびRev導入遺伝子の代わりにEGFPを有する、2×107 TUのレンチウイルスベクターを与えた。抗HIV抗体を、Elisaによって全身レベル(血清,パネルB)および粘膜レベル(唾液,パネルC)において検出した。HIV−Gagペプチド刺激後にサイトカイン(同じチャネル上で組み合わされたIFNγ、TNFα、IL2)を発現するCD8+ T細胞を、ICSによって検出した(パネルD)。結果は、各群において個々の値(点)と幾何平均(バー)として示す。
【図5】図5は、VRX1023免疫原性が、DNA初回刺激、ベクター追加免疫状況において顕著に改善され得ることを示す。5匹のマウスの群に、PBS、VRX1053 DNA(別のHIVワクチンレンチウイルス候補)、VRX1023 LV、もしくはこれらの組み合わせのいずれかを免疫した。DNAで免疫した場合、マウスに、100μgのpVRX1053 IMを与えた。LV免疫については、マウスに、109 TUのVRX1023 SCを与えた。抗HIV CD8+ T細胞応答を、GagペプチドおよびPolペプチドプールでの脾細胞の刺激後に、ICSによって評価した。バーは、各動物について、CD3+ リンパ球のうちのCD8+ サブセット内で、サイトカイン(同じチャネル上で組み合わされたIFNγ、TNFα、IL2)について、および活性化マーカーCD69について陽性に染色している細胞のパーセンテージを示す。
【図6】図6は、VRXI 023免疫原性が、ベクター製造最適化によって顕著に改善され得ることを図示する。5匹のマウスの群に、pVRX1053 DNA初回刺激(100μgのpVRX1053 IM、3回)、続いて、VRXI023 LV追加免疫(109 TUのVRX1023 SC、初回刺激後2週間)を免疫した。図は、LV製造最適化によって提供された免疫原性改善の例示として、サイトカイン分泌の例を示す。Gag誘導性サイトカイン分泌の各セットは、独立した実験の結果である。右下のパネルは、最適化レンチウイルスベクターを使用することによって、強い細胞性免疫が誘発された(最大21.11%までの、HIV−Gag抗原を認識しかつサイトカイン(IFNγ、TNFα、IL2)分泌によって応答するマウスCD8+細胞)のに対して、使用したワクチン用量は、低かったことを示す。
【図7】図7は、本発明のベクターおよび初回刺激/追加免疫プロトコルによって誘発された長期の細胞媒介性および体液性の抗HIV免疫を示す。5匹のマウスの3つの群に、0日目および15日目に、8×107 導入単位(Transducing Unit)(TU)のVRX1023を2回皮下(SC)注射して免疫した。各群を、それぞれ、免疫の10日後、3週間後、および2ヶ月後に屠殺した(パネルA)。HIV−Gagに対するT細胞応答(点のプロットと左側y軸)を、細胞内サイトカイン染色(ICS)によって測定した。脾細胞を、Gagペプチドで、インビトロで刺激した。パネルBは、CD3+ CD8+ T細胞サブセットのうちのサイトカイン陽性細胞(同じチャネル上で組み合わされたIFNγ、TNFα、IL2)のパーセンテージを示す。サイトカイン生成細胞のパーセンテージは、各個々の動物について示される(点)。バーは、幾何平均を表す。各群において屠殺時に回収した血清サンプルを、抗HIV IgG検出についてElisaによって分析した(赤い折れ線グラフおよび右側のy軸)。データは、各時点について、幾何平均と標準偏差として示される。
【図8】図8は、初回刺激/追加免疫プロトコルの間の比較データを示す。ここで上記初回刺激は、レンチウイルスワクチンベクターもしくはアデノウイルスベクターのいずれかと同じHIV 有効負荷を含むDNAプラスミドであった。等しい用量において、LVは、ヒトアデノウイルス血清型5(Ad5)より高い抗HIV免疫を誘導する。5匹のマウスの群に、パネルAに記載されるスケジュールに従って、3回のDNA初回刺激(100μg DNA IM/動物)で免疫し、続いて、ベクター追加免疫(108 TU/動物,SC)で免疫した。薬物間比較(Head to head comparison)を、2つの源からLVとAd5候補との間で行った。パネルBにおいて、マウスに上記マルチHIV 有効負荷をコードするプラスミドで初回刺激し、次いで、LV VRX−マルチHIVもしくはAd5−マルチHIVのいずれかの等用量で追加免疫した。免疫の1ヶ月後に動物を屠殺し、分析のためにサンプル採取した。T細胞応答(バー、左側y軸)を、HIV−Gagに対するICSによって測定し、幾何平均と標準偏差として示す(CD8+リンパ球サブセット内のサイトカイン陽性細胞(同じチャネル上で組み合わされたIFNγ、TNFα、IL2のパーセンテージ))。抗HIV IgGを、Elisaによって1:100の血清中で検出した(折れ線グラフ;右側y軸)。示された結果は、屠殺時 対 免疫前ベースラインの抗体応答の比率を表す。パネルCおよびDにおいて、第2のAd5候補であるVRC−Ad5(そのレンチウイルス対応物であるVRX1023と同じGag−Pol導入遺伝子を含む)を、評価した。全ての動物に、同じpVRX1053プラスミドで初回刺激し、その後、等用量のいずれかのベクターで追加免疫した。パネルCは、各候補でのベクター追加免疫の2ヶ月後に得られた抗HIV細胞応答を図示し、各群内の累積幾何平均および標準偏差を表す。値は、CD4 T細胞(多機能的T細胞)の中で、3種全てのサイトカインを同時に分泌する細胞のパーセンテージである。血清中の抗HIV IgG応答を、ベクター追加免疫の1ヶ月後および2ヶ月後にElisaによって評価した(パネルD)。標準偏差とともに、線は、各群における幾何平均を表す。免疫前ベースライン値(全ての動物間で類似)を平均し、線付きのラインとして示した。
【図9】図9は、5つの異なるワクチンプロトコルでワクチン接種したマウスから単離されたCD8+細胞の抗HIV細胞媒介性応答の比較データを示す。異種免疫(heterologous immunization)は、CD8+T細胞において最高の累積HIVペプチド特異的サイトカイン応答を誘発する。5匹のマウスの群を、VRXI023もしくはAd5での同種免疫(homologous immunization)、または両方のベクターの組み合わせを使用する異種免疫に供した。HIV Gagペプチドミックス(上のパネル)もしくはPolペプチドミックス(下のパネル)での刺激後、IFNγ(左側パネル)もしくはTNFα(右側パネル)の生成を、CD3+ CD8+ T細胞でゲートを設定した(gated)サイトカイン陽性細胞を数えることによって定量した。各点は、個々のサンプルを表し、バーは、各サンプル群の平均に対応する。
【図10】図10は、ICSによって測定した場合、CD8 T細胞におけるHIV−Pol刺激に応答したT細胞多機能性を示す。サンプルを、多機能性の指標であるIFNγ、TNFαおよびIL2を分泌するT細胞についてゲート設定した。
【図11】図11は、抗ベクター抗体が、アデノウイルスベクターと比較して、レンチウイルスベクターを非常に不十分にしか中和せず;異種初回刺激/追加免疫プロトコルが、抗Ad5中和の大部分を無視することを示す。VRXI023もしくはVRC−Ad5に対して免疫したマウスにおける中和活性を、GFPを発現するレンチウイルスHIVベクター(例えば、VRX494−GFP)およびAd5−GFPを、MOI 10においてそれぞれ、免疫の17日後に得て、80倍希釈したマウス血清とインキュベートすることによってアッセイした。ベクター中和を、免疫前血清におけるGFP発現に対する免疫後血清におけるGFP発現のダウンレギュレーションの関数として計算した。各点は、個々のサンプルを表し、バーは、各サンプル群の平均に対応する。
【図12】図12は、種々のDNA初回刺激、異種追加免疫プロトコルの免疫原性を図示する。マウスに、2つの異なるDNA初回刺激/異種追加免疫プロトコルでワクチン接種した。2つのHIV抗原であるGagおよびPolに対するCD8+免疫応答を、試験したサイトカイン(INFγおよびTNFα)のいずれかを分泌するCD8+細胞のパーセンテージとして測定した。
【図13】図13は、SIV−(HIVの霊長類等価物)レンチウイルスベースのワクチンベクターを5ヶ月にわたって3回投与した後に、非ヒト霊長類において生成された抗SIV p27抗体力価のレベルを図示する。3回目の投与後に認められた追加免疫効果は、複数回の投与後ですら、最小限の抗ベクター応答を見せる。
【図14】図14Aは、本発明のレンチウイルスワクチンベクターに対するパッケージングヘルパーベクターを示す。ここで本発明のレンチウイルスワクチンベクターは、Gag−pol有効負荷を含む。図14Bは、レンチウイルスワクチンベクターに対するパッケージングヘルパーベクター構築物を示す。ここで上記ワクチンベクターの有効負荷は、全長Gag−polとは異なる。このヘルパー構築物は、上記レンチウイルスワクチンベクターをパッケージするために必要とされる全てを供給した。
【図15】図15および図16は、ワクチンレンチウイルスベクター生成のためのパッケージング細胞株ヘルパー構築物を示す。ここで上記有効負荷ヌクレオチドは、gag/polであり、そして上記有効負荷は、gag/pol以外のヌクレオチド配列である。
【図16】図15および図16は、ワクチンレンチウイルスベクター生成のためのパッケージング細胞株ヘルパー構築物を示す。ここで上記有効負荷ヌクレオチドは、gag/polであり、そして上記有効負荷は、gag/pol以外のヌクレオチド配列である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(配列表の簡単な説明)
配列番号1は、図1AのHIVワクチンベクターの例である。
【0033】
配列番号2は、図1Bのワクチンベクターの例である。
【0034】
配列番号3は、図2AのDNA初回刺激プラスミド構築物の例である。
【0035】
配列番号4は、図2Bの例である。
【0036】
配列番号5は、図3Aの例である。
【0037】
配列番号6は、図3Bの例である。
【0038】
配列番号7は、例示的なパッケージングシグナル配列である。
【0039】
配列番号8は、ベクターpNL4−3のHIVの5’LTRの例である。
【0040】
配列番号9は、ベクターpNL4−3のHIVの3’LTRの例である。
【0041】
配列番号10は、HIVベクターpNL4−3のREV遺伝子の例である。
【0042】
配列番号11は、HIVベクターpNL4−3のRREの例である。
【0043】
配列番号12は、HIVベクターpNL4−3の最小パッケージング配列の例である。
【0044】
配列番号13は、HIVベクターpNL4−3のcPPT/cTSの例である。
【0045】
配列番号14は、HIVベクターpNL4−3のPPTの例である。
【0046】
配列番号15は、HIVベクターpNL4−3のgag/polコード配列の例である。
【0047】
配列番号16は、フレームシフト変異を有するフレームシフト改変gag/polコード配列の例である。
【0048】
配列番号17は、HIVベクターpNL4−3のGagのミリストイル化レセプターグリシン残基に対する(GGT)コドンの例である。
【0049】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ウイルス感染、寄生生物感染、もしくは細菌感染、および癌の予防処置および治療処置における使用のための、改善されたレンチウイルスベースの免疫原性ベクター、ならびにこれを使用するための方法、ならびにこれらの製造のための方法に関する。本発明は、より具体的には、レンチウイルスベクター、これを作製するための方法、改変するための方法、増殖するための方法、パッケージングするための方法、このようなベクターおよび宿主細胞を使用するための方法、ならびにより具体的には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染および他の疾患で使用するための方法に関する。
【0050】
(定義)
本明細書で使用される場合、以下の用語の各々は、この節においてこれと関連した意味を有する。
【0051】
冠詞「a」および「an」は、上記冠詞の文法的目的語の1つもしくは1つより多い(すなわち、少なくとも1つ)に言及するために、本明細書で使用される。例示によれば、「1つのエレメント(要素)(an element)」は、1つのエレメント(要素)もしくは1つより多いエレメント(要素)を意味する。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」とは、宿主細胞へパッセンジャー(passenger)核酸配列(すなわち、DNAもしくはRNA)を移入するように働く核酸分子(代表的には、DNAもしくはRNA)を意味する。ベクターの3つの一般的なタイプとしては、プラスミド、ファージおよびウイルスが挙げられる。好ましくは、上記ベクターは、ウイルスであり、上記ウイルスは、ベクター核酸のキャプシド形成した形態および上記ベクター核酸がパッケージされたウイルス粒子を含む。LVでの細胞の形質導入は、3つの主な工程を含むが、これらに限定されない:細胞侵入、ベクターRNAをDNAに変換すること、およびDNAを核へ送達すること。導入能力のある(もしくはおそらくその能力のある)LVは、上記の工程全てを達成する全てのエレメントを有する。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「プロモーター/調節配列」とは、上記プロモーター/調節配列に作動可能に連結される、遺伝子産物の発現のために必要とされる核酸配列を意味する。いくつかの場合において、この配列は、コアプロモーター配列であってもよいし、他の場合においては、この配列はまた、上記遺伝子産物の発現のために必要とされるエンハンサー配列および他の調節配列を含んでいてもよい。上記プロモーター/調節配列は、例えば、組織特異的様式において上記遺伝子産物を発現するものであり得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、「組織特異的」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかもしくは特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結される場合に、実質的に生きているヒト細胞が、上記プロモーターに対応する組織タイプの細胞である場合にのみ、上記細胞において遺伝子産物を生成させるヌクレオチド配列を意味する。
【0055】
(レンチウイルスベクター)
本発明は、ワクチン送達のための改善されたレンチウイルスベクターを提供する。本発明のベクターは、5’LTR(配列番号8)および3’LTR(配列番号9);上記5’LTRに作動可能に連結された、第1の核酸配列(本明細書で「有効負荷ともいわれる」;ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REV(配列番号10)およびRRE(配列番号11)含有配列を含む、第2の核酸配列を含み、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動される。「有効負荷」とは、上記ベクターの一部であり、これは、ウイルス生成の間に上記レンチウイルスベクターのRNAバージョンをパッケージングするために必要とされる上記パッケージングシグナル(配列番号7)とは異なる。配列番号12は、最小限のパッケージング配列の例である。
【0056】
本発明のベクターはさらに、機能的に活性なレンチウイルスRNAパッケージングエレメントをコードする核酸配列(配列番号12)を含む。全長レンチウイルスRNAは、非共有結合ダイマーとしてウイルス粒子に選択的に組み込まれる。ウイルス粒子へのRNAパッケージングは、RNAと、上記Gagタンパク質のヌクレオキャプシドタンパク質(NC)ドメインとの間の特異的相互作用に依存する。本質的には、ウイルスキャプシドへのHIVゲノムRNAの組み込み(「キャプシド形成(encapsidation)」といわれる)は、上記Gag開始コドンのすぐ上流に位置し、4つのステム−ループ構造(SL1〜SL4)に折りたたまれるいわゆるPsi領域を含み、ゲノムパッケージングに重要である。特に、SL1は、おそらく、RNAのビリオンパッケージングのための必要条件である、ダイマー化開始部位(DIS)(kissing複合体形成(kissing−complex formation)を介してインビトロRNAダイマー化を媒介するGCリッチループ)を含む。さらなるcis作用性配列はまた、RNAパッケージングに寄与することが示された。これらエレメントのうちのいくつかは、SL4を含む、上記Gag遺伝子の最初の50ヌクレオチド(nt)に位置するのに対して、他のものは、上記スプライスドナー部位(SDl)の上流に位置し、実際には、SL1の上流にある約240ntを含む、ゲノムの最初の350〜400ntにわたるより大きな領域にマッピングされる。上記SL1−4領域は、RNAパッケージングに必須の1つの配列の例である。他のこのような配列は、当業者に公知である。
【0057】
上記レンチウイルスベクターはまた、機能的中心ポリプリン区画(cPPT)/cTS(配列番号13)および3’LTR近位ポリプリン区画(PPT)(配列番号9)をコードする核酸配列を含む。HIVおよび他のレンチウイルスは、当該分野で公知であるように、非分裂細胞において複製するという特有の特性を有する。この特性は、上記ウイルスDNAが、宿主細胞の核膜を横断することを可能にする核侵入経路(nuclear import pathway)の使用に依存する。HIV逆転写において、プラス鎖合成の中心的開始および集結に連続する中心的鎖置換事象は、プラス鎖重複;中心DNAフラップ(flap)を作り出す。この中心DNAフラップは、HIV逆転写の間に中心ポリプリン区画(cPPT)および中心終結配列(CTS)によって、cisで制御される中心的鎖置換事象に伴って、2つの別個の半ゲノムフラグメント(half−genomic fragment)によって作り出された三本鎖DNAの領域である。全てのレンチウイルスゲノムに存在する上記ポリプリン区画cis活性配列(cPPT)の中心コピーは、下流プラス鎖の合成を開始する。3’PPTで開始される上流プラス鎖セグメントは、鎖移入後に、上記ゲノムの中心まで進み、別個の鎖置換事象の後で終結する。HIV逆転写のこの最後の事象は、中心終結配列(CTS)によって制御される。
【0058】
上記有効負荷ならびに上記REVコード配列およびRRE含有配列の転写が同じプロモーター(すなわち、上記5’LTR(配列番号8))によって駆動されることは、本発明の一局面である.上記5’LTRは、全長抗原性配列、ならびにパッケージング配列、ならびにREVコード配列およびRRE含有配列を、同じ転写ユニット上にコードする核酸を含む有効負荷の転写を駆動するに十分な基本的活性を有するが、ただし、上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置する。上記5’LTRは、当該分野で公知であるように、HIVの種々の株およびクレードから得られ得、より強力な基本的プロモーター様機能について最適化され得る。特に、HIV−1 クレードEに由来する上記5’LTRは、強力な基本的プロモーター活性を示し得る。HIVの種々の株およびクレードが、当該分野で公知であり、本発明のレンチウイルスワクチンベクターを生成するために使用され得る。上記株およびクレードとしては、例えば、HIV−1群:M(主要のものについて)(A、B、C、D、E、F、G、H、I、およびJ)、O(アウトライアー(outlier)もしくは「外集団(outgroup)」(これは、カメルーン、ガボン、およびフランスで現在見いだされている比較的稀な群である)、ならびにN(新たな群)と称される第3の群、ならびにこれらの任意の循環している組換え形態))が挙げられるが、これらに限定されない。上記5’LTRは、上記有効負荷およびRevタンパク質の発現をさらに駆動する。上記HIV Revタンパク質は、哺乳動物細胞において核から細胞質へ、スプライスされていないかもしくは部分的にスプライスされたウイルス転写物をエクスポートすることを指向する。Revは、RNA結合ドメインを含みこのドメインは、標的転写物上に存在するRREを結合する。エクスポート活性は、遺伝的に規定されるエフェクタードメインによって媒介される。上記ドメインは、核エクスポートシグナルとして同定された。
【0059】
本発明の別の実施形態において、本発明のレンチウイルスベクターは、少なくとも1つの、しかし必要に応じて2つ以上の目的のヌクレオチド配列を含み得る。2つ以上の目的のヌクレオチド配列が発現されるために、上記ベクターゲノム内には、2つ以上の転写ユニット(各目的のヌクレオチド配列に対して1つ)が存在し得る。これらの場合において、ポリシストロン(もしくは本明細書で使用される場合、「マルチシストロン」)メッセージにおける上記第2の(およびその後ろの)コード配列の翻訳のために、1つ以上の内部リボソーム侵入部位(IRES)もしくはFMDV 2A様配列を使用することが好ましい(Adamら 1991 J.Virol.65,4985(その内容全体が、本明細書に参考として援用される))。上記IRES/2Aは、ウイルス起源(例えば、EMCV IRES、PV IRES、もしくはFMDV 2A様配列)または細胞起源(例えば、FGF2 IRES、NRF IRES、Notch 2 IRESもしくはEIF4 IRES)であり得る。IRES配列を利用する本発明のレンチウイルスベクター構築物の非限定的な例は、下記の図2および図3において見いだされ得る。
【0060】
1つ以上の目的の抗原性配列もしくは免疫原性配列をコードすることは、上記第1の核酸配列の一局面である。上記目的の抗原性配列もしくは免疫原性配列は、細胞媒介性応答もしくは体液性応答のうちのいずれかまたは両方を誘発し得る任意のタンパク質もしくはタンパク質配列をコードする配列を含み得る。上記抗原は、細菌、ウイルス、および他の微生物のタンパク質もしくはタンパク質フラグメントをコードし得る。一般に、本発明は、任意のウイルス感染、または目的の望ましい抗原性配列もしくは免疫原性配列と関連する他の感染を処置するために使用され得る。
【0061】
さらに、本発明の特定の実施形態において、目的の上記第1のヌクレオチド配列もしくは「有効負荷」配列はまた、以下をコードするヌクレオチド配列を含み得る:酵素、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ホルモン、抗体、抗酸化分子、操作された免疫グロブリン様分子、一本鎖抗体、融合タンパク質、免疫共刺激分子、免疫調節分子、標的タンパク質のトランスドミナントネガティブ変異体、毒素、仮の毒素(conditional toxin)、抗原、腫瘍サプレッサタンパク質および増殖因子、膜タンパク質、血管形成促進タンパク質およびペプチド、ならびに血管形成タンパク質およびペプチド(pro− and anti−angiogenic proteins and peptides)、血管作用性タンパク質およびペプチド、抗ウイルスタンパク質およびその誘導体(例えば、結合されたレポーター基を有する)。上記目的のヌクレオチド配列はまた、プロドラッグ活性化酵素をコードし得る。研究状況において使用される場合、上記目的のヌクレオチド配列はまた、レポーター遺伝子(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、もしくは抗生物質(例えば、とりわけ、アンピシリン、ネオマイシン、ブレオマイシン、ゼオシン、クロラムフェニコール、ハイグロマイシン、カナマイシン)に対する耐性遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない)をコードし得る。上記目的のヌクレオチド配列はまた、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、もしくはリボザイム、またはこれらの任意の組み合わせとして機能するものを含み得る。
【0062】
本発明の抗原性配列は、当該分野で公知であるように、任意の腫瘍抗原をさらに含み得る。腫瘍抗原は、宿主において免疫応答を誘発する、腫瘍細胞において生成されるタンパク質、またはタンパク質フラグメントもしくはペプチドフラグメントである。腫瘍抗原は、腫瘍細胞を同定するにあたって有用であり、癌治療における使用の潜在的候補である。腫瘍抗原としては、例えば、αフェトプロテイン、癌胎児性抗原、CA−125、上皮腫瘍抗原、チロシナーゼ(tyrsinase)、黒色腫関連抗原が挙げられ得る。また、本発明の別の局面は、アルツハイマー病と関連する抗原性化合物、タンパク質およびタンパク質フラグメントである。
【0063】
上記ベクターは、REV−RRE活性に依存する、上記目的の1つ以上の配列の発現をさらに含む。RevおよびRRE(上記有効負荷と同じ5’LTRによって発現される)が、細胞核における翻訳後に、上記有効負荷を細胞質へ移動するための必須であることが、本発明の特徴である。Revは、ウイルス複製に必須であるHIVの低分子調節タンパク質である。Revの生物学的役割は、より大きな構造タンパク質が合成されかつウイルス粒子へと組み立てられる場合に、感染早期(その間に低分子調節タンパク質が発現される)からの後期までの転写を促進することによって、ウイルス遺伝子発現のパターンを制御することである。Revは、高度に構造化されたRNA領域である、Rev応答エレメント(RRE)に結合し、ここでRevは、上記RREに結合している約8〜10個のRevタンパク質とオリゴマー性リボ核タンパク質複合体(oligomeric ribonucleoprotein complex)を形成する。上記RREの最も重要な領域は、中心接合部分から放射状に拡がる5つのステム−ループ構造からなり、Rev結合のためのコアエレメントは、プリンリッチ突出領域(bulge region)(配列番号11)を含むステム−ループ構造からなる。
【0064】
本発明の一実施形態において、本発明の第1の核酸配列は、gag/polコード配列(配列番号15)を含む。本発明は、全長gag/pol配列またはその一部もしくは誘導体をコードし得る。上記第1の核酸配列は、本願発明のgag/polもしくは任意の他の抗原性配列をコードしようがしまいが、改変配列もしくは非改変配列を含み得る(配列番号15)。上記レンチウイルスベクターは、上記gag/polコード配列のうちのpolコード配列の一部として、上記cPPTを含む。gag/pol以外の他の有効負荷が、上記ベクター中に存在する場合、cPPT、PPTおよびCTSは、上記目的の抗原性配列としてgag/polコード配列を含まない本明細書で開示される他の実施形態において議論されるように、上記ベクター中に必要とされる。
【0065】
上記gag/polコード配列が上記レンチウイルスベクター構築物における改変gagコード配列の包含を介して、細胞性発現を増大するように改変されることは、本発明の一実施形態である。本発明者らの現在のワクチンにおける上記gag/pol前駆体の形態において上記pol遺伝子を含めることは、上記Pol抗原の不十分な発現に関して、ほとんど最適には及ばないようである。上記Polタンパク質の発現レベルは、一般に、polコード配列の翻訳に必要とされるフレームシフトが原因で、天然の感染の間には低い。Pol発現のこの形態は、Gagと比較して、Polタンパク質において最大95%までの低下を生じる。Pol発現を増大させるために、gagとpolとの間のフレームシフトは、除去され得、GagおよびPolの等モルもしくはほぼ等モル発現を生じるのに対して、ウイルス様粒子(VLP)の分泌は、損なわれる。よって、上記ベクターは、発現を最適化するために、上記gag配列内でフレームシフトを含む(配列番号16).
本発明の一実施形態において、上記レンチウイルスベクターはまた、翻訳フレームシフトによって媒介されないgag−pol融合タンパク質の高レベル発現を支援する。本発明は、Gagのミリストイル化レセプターグリシン残基(配列番号17)を変える少なくとも1個のヌクレオチド弛緩をさらに含む。ミリストイル化は、HIV粒子組み立てプロセスにおいて重要な成分である。Gag p55は、マトリクスのN末端において翻訳後ミリストイル化を受ける。これは、上記Gag複合体が、上記ミリスチン酸部分を介して上記細胞膜に結合することを可能にする。上記ミリストイル化部位の破壊は、細胞質におけるGagタンパク質の蓄積を生じる。上記細胞質内のタンパク質濃度が高くなるほど、内因性抗原経路へのこれらポリペプチドのプロテオソーム分解を増大させる可能性が非常に高く、より高い免疫応答をもたらすMHCクラスI分子上でのGagペプチドの付加(loading)を生じる。
【0066】
抗原発現のレベルは、コドン最適化された遺伝子によっても増大させられ得る。合成遺伝子は、高度に発現されるヒト遺伝子において見いだされるコドンの偏りで作り出され、ヒト細胞において遙かに依り効率的に発現されかつネイティブコード配列より高いかつ再現性のよい免疫応答のレベルを誘発することが占め鎖rた。過剰発現の別の密接な関係は、免疫応答を誘発するために投与される必要があるレンチウイルスベクターもしくはDNA初回刺激の量が、大いに減少させられ得ることである。
【0067】
本発明の別の実施形態において、本発明のレンチウイルスベクターとしては、霊長類に感染するウイルス(HIV−1、HIV−2、シミアン免疫不全ウイルス(SIV))および非霊長類に感染するウイルス(ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ビスナマエディウイルス(VV)、ジェンブラナ病ウイルス(JDV))がが挙げられ得るが、これらに限定されず、それらのレンチウイルスは、これらウイルスへと分けられ得る。
【0068】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明のレンチウイルスベクターはまた、例えば、いわゆる自己不活性化(SIN)ベクター構成において、HIV LTRの転写エレメントを除去することによって改変され得る。上記ウイルスゲノムの3’末端に由来する組み込まれたプロウイルスの両方のU3領域を生成する逆転写のモダリティーは、いわゆる自己不活性化(SIN)ベクターの作製を可能にすることによって、この課題を促進する。自己不活性化は、上記ベクターRNAを生成するために使用されるDNAの3’の長い末端反復配列(LTR)のU3領域における破壊(例えば、欠失、変異およびエレメント挿入を使用する)の導入に依存する。逆転写の間に、この欠失は、上記プロウイルスDNAの5’LTRに移される。上記LTRの転写活性を除去するために十分な配列が除去された場合、形質導入細胞における全長ベクターRNAの生成は回避される。このことは、RCRが出現するというリスクを最小化する。さらに、このことは、上記3’LTRのプロモーター活性に起因して、もしくはエンハンサー効果を介してのいずれかで、上記ベクター組み込み部位に隣接して位置した細胞のコード配列が異常に発現される可能性を減少させる。最後に、上記LTRと上記導入遺伝子を駆動する内部プロモーターとの間の潜在的な転写干渉は、上記SIN設計によって防止される。SINベースのレンチウイルスベクターの一例は、米国特許第6,924,144号(その内容全体は、その全体において本明細書に参考として援用される)に記載される。本発明のSINベースのレンチウイルスベクターの非限定的代表例は、本明細書で記載される図1、図2、および/もしくは図3、またはそれらの任意の組み合わせに具体的に示される構築物のうちの1つ異常から生成され得る。
【0069】
さらに別の実施形態において、本発明は、本明細書で上記に記載のレンチウイルスベクターを含む薬学的組成物を包含し、上記組成物は、5’LTRおよび3’LTR;上記5’LTRに作動可能に連結された、第1の核酸配列;ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列を含む、第2の核酸配列を含み、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動される;そして上記薬学的組成物は、「薬学的に受容可能なキャリア」もしくは「遺伝子補助剤」をさらに含む。「薬学的に受容可能なキャリア」としては、PBS、緩衝液、水、トリス、他の等張性溶液もしくは上記ベクターのウイルス成分を損傷しないように最適化された任意の溶液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
上記レンチウイルスベクターは、ウイルス感染の予防的処置および治療的処置のために、ならびに本明細書で記載される他の理由のために、宿主細胞に導入され得る。よって、本発明は、本発明に従って、ベクターを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞の単離、および/または培養でのこのような細胞もしくはこれから得られる細胞株の維持は、当業者が十分に精通している慣用的事項になっている。
【0071】
「宿主細胞」とは、任意の細胞であり得、好ましくは、真核生物細胞である。望ましくは、上記宿主細胞は、抗原提示細胞である。このような細胞としては、皮膚線維芽細胞、腸上皮細胞、内皮細胞、上皮細胞、樹状細胞、形質細胞様樹状細胞、ランゲルハンス細胞、単球、粘膜細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、上記宿主細胞は、真核生物の多細胞種(例えば、単細胞の酵母細胞とは対照的に)であり、さらにより好ましくは、哺乳動物(例えば、ヒト細胞)である。
【0072】
細胞は、単一の実体として存在し得るか、またはより大きな細胞集団の一部であり得る。このような「より大きな細胞集団」とは、例えば、細胞培養(混合培養もしくは純粋培養のいずれでも)、組織(例えば、内皮組織、上皮組織、粘膜組織もしくは他の組織)、器官(例えば、肺、肝臓、筋肉および他の器官)、器官系(例えば、循環器系、呼吸器系、消化器系(gastrointestinal system)、泌尿器系、神経系、外皮系もしくは他の器官系)、もしくは生物(例えば、トリ、哺乳動物など)を含み得る。好ましくは、標的とされている上記器官/組織/細胞は、上記循環器系(例えば、血液(白血球を含む)、鼻、気管、気管支、細気管支、肺などの粘膜系が挙げられるが、これらに限定されない)、消化器系(例えば、口、咽頭、食道、胃、腸、唾液腺、膵臓、肝臓、胆嚢などが挙げられる)、泌尿器系(例えば、腎臓、尿管、膀胱、尿道など)、神経系(例えば、脳および脊髄が挙げられるが、これらに限定されない)、ならびに特殊感覚器(例えば、眼)および外皮系(例えば、皮膚、表皮、および皮下組織もしくは皮膚組織の細胞)のものである。よりさらに好ましくは、上記標的とされている細胞は、抗原提示細胞からなる群より選択される。上記標的細胞は、正常細胞である必要はなく、病的細胞であり得る。このような病的細胞は、腫瘍細胞、感染細胞、遺伝的に異常な細胞、または異常な組織の近位にあるかもしくはこの粗衣着に摂食している細胞(例えば、腫瘍血管内皮細胞)であり得るが、これらに限定されない。
【0073】
「ベクター」とは、パッセンジャー核酸配列(すなわち、DNAもしくはRNA)を宿主細胞に移入するように働く核酸分子(代表的には、DNAもしくはRNA)である。ベクターの3つの一般的タイプとしては、プラスミド、ファージおよびウイルスが挙げられる。好ましくは、上記ベクターはウイルスであり、上記ウイルスは、ベクター核酸のキャプシド形成された形態、および上記ベクター核酸がパッケージされたウイルス粒子を含む。LVでの細胞の形質導入は、3つの主な工程を包含するが、これらに限定されない:細胞侵入、ベクターRNAをDNAに変換すること、およびDNAを核へ送達すること。導入能力のある(もしくはおそらくその能力のある)LVは、上記の工程全てを達成する全てのエレメントを有する。
【0074】
上記ベクターは、ヒトの作製した変異もしくは改変を含むので、ウイルスの野生型株でない。従って、上記ベクターは、代表的には、本明細書でさらに記載されるように、レンチウイルスを含むために、遺伝的操作(例えば、付加、欠失、変異もしくは当該分野で公知の他の技術によって)野生型ウイルス株から得られる。本明細書で包含されるように、ベクターは、DNAもしくはRNAのいずれかを含み得る。例えば、DNAベクターもしくはRNAベクターのいずれかが、上記ウイルスを得るために使用され得る。同様に、cDNAコピーは、ウイルスRNAゲノムから作製され得る。あるいは、cDNA(もしくはウイルスゲノムDNA)部分は、RNAを生成するために、インビトロで転写され得る。これら技術は、当業者に周知であり、また、記載されている。
【0075】
一局面において、本発明は、被験体における免疫応答を誘発するための方法を提供し、上記方法は、本明細書で開示されるレンチウイルスベクターを含む薬学的組成物を提供する工程を包含する。本発明に従う方法は、免疫を強化もしくは誘導するために、上記目的の1つ以上の遺伝子の発現を提供する。誘導される免疫は、細胞性免疫であってもよいし、体液性免疫であってもよい。より具体的には、上記細胞性免疫応答は、CD8+および/もしくはCD4+細胞の活性を強化し得る。
【0076】
以下を含む、細胞における感染性複製性ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の複製を阻害することは、本発明のさらに別の実施形態である:被験体における免疫応答を誘導するための方法であって、上記方法は、レンチウイルスベクターを含む薬学的組成物を投与する工程を包含し、上記レンチウイルスベクターは、5’LTRおよび3’LTR;上記5’LTRに作動可能に連結された、第1の核酸配列;ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列を含む、第2の核酸配列を含み、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動される。
【0077】
上記方法は、上記細胞と、上記第1のレンチウイルスベクターと同じ第1の核酸を発現する第2のレンチウイルスベクターとを連続的に摂食させる工程をさらに包含する。上記方法はまた、初回刺激/追加免疫アプローチとともに使用され得、ここで上記第1のベクターは、上記初回刺激が、その後に投与される上記第2のレンチウイルスベクターと同じ有効負荷もしくは目的の遺伝子を含む限りにおいて、レンチウイルスベクターである必要はない。
【0078】
上記レンチウイルスベクターが、初回刺激/複数回追加免疫プロトコルとして投与され得ることは、本発明の方法のさらに別の実施形態である。
【0079】
上記レンチウイルスベクターが、代替の偽型化(pseudotyping)エンベロープ(例えば、VSV−Gもしくはバキュロウイルスgp−64タンパク質または以下で記載されるこれらの組み合わせ)とともに、初回刺激/追加免疫もしくは初回刺激/複数回追加免疫プロトコルとして投与され得ることは、本発明の方法のさらに別の実施形態である。
【0080】
被験体における免疫応答を高めることは、本発明のさらに別の実施形態であり、これは、細胞と、ベクターとを摂食させる工程を包含し、上記ベクターは、5’LTRおよび3’LTR;上記5’LTRに作動可能に連結された、第1の核酸配列;ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列を含む、第2の核酸配列を含み、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動される。
【0081】
上記方法は、上記細胞と、上記第1のレンチウイルスベクターと同じ第1の核酸を発現する第2のレンチウイルスベクターとを連続的に摂食させる工程をさらに包含する。上記方法はまた、初回刺激/追加免疫または初回刺激/複数回追加免疫アプローチとともに使用され得、ここで上記第1のベクターは、上記初回刺激が、その後に投与される上記第2のレンチウイルスベクターと同じ有効負荷もしくは目的の遺伝子を含む限りにおいて、レンチウイルスベクターである必要はない。その後の投与は、2週間目、4週間目、1ヶ月目、2ヶ月目、6ヶ月目、もしくは1年目であり得、そして時間を経て免疫応答を維持するために適切なレジメンとしてであり得る。
【0082】
宿主におけるベクターの免疫原性を増大させるために、初回刺激/追加免疫アプローチを提供することは本発明のさらに別の実施形態であって、これは、レンチウイルスベクターを含む薬学的組成物を投与する工程を包含し、上記レンチウイルスベクターは、5’LTRおよび3’LTR;上記5’LTRに作動可能に連結された、第1の核酸配列;ならびに上記5’LTRに作動可能に連結された、機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列を含む、第2の核酸配列を含み、ここで上記RRE含有配列は、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写は、上記5’LTRによって駆動され、上記ベクターの免疫原性は、初回刺激/追加免疫もしくは初回刺激/複数回追加免疫プロトコルに起因して増大させられる。上記方法は、上記宿主に、上記第1のレンチウイルスベクターと同じ第1の核酸を発現する第2のレンチウイルスベクターを連続的に投与する工程をさらに包含する。「免疫原性」もしくは「強化」とは、上記ベクターが、全身性および/もしくは粘膜性の応答であり得る、上記導入遺伝子に対する細胞性免疫応答(すなわち、細胞媒介性免疫応答)および/もしくは体液性免疫応答を誘導する能力である。「細胞性免疫」とは、抗体を含まないが、マクロファージ、ナチュラル・キラー細胞、もしくはリンパ球の活性化(すなわち、CD8+もしくはCD4+の活性化)、ならびに抗原に応答したサイトカインもしくは他のメディエーターの放出を含む免疫応答である。体液性免疫は、抗体媒介性免疫応答である。
【0083】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明のレンチウイルスベクターを増殖させ、そして選択的にパッケージングするための方法が提供される。上記方法は、当該分野で公知である、より具体的には、共有に係る出願番号60/585,464号(2004年7月1日)、出願番号11/172,147(2005年6月30日出願)、米国特許第6,835,568号、および米国公開番号20030026791号(これら記載される出願、特許および公開出願の各々の本文は、本明細書中に完全に記載されるかのように、それらの全体が本明細書に参考として援用される)に記載される細胞、細胞株および方法を含む。
【0084】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明のレンチウイルスベクターワクチン構築物は、上記レンチウイルスインテグラーゼ機能が、欠失されたか、そして/または部位指向性変異誘発によって排除されたレンチウイルスベクターをさらに含む。挿入変異誘発は、オンコレトロウイルスベクター(oncoretroviral vector)での臨床試験において観察された。このことは、全ての組み込みベクターの遺伝子毒性の詳細研究を思いつかせた。いくつかのワクチン適用のための最も簡単なアプローチは、組み込みの可能性を回避することである。非組み込みレンチウイルスベクターは、上記インテグラーゼ遺伝子を変異するか、または上記LTRの結合配列を改変することによって開発された。特に、研究された変異の中でも、触媒ドメインにおけるD64V置換は、頻繁に使用された。なぜなら、この置換は、プロウイルスDNA合成に影響を及ぼすことなく、上記インテグラーゼの強力な阻害を示すからである。上記変異は、低ベクター用量では、組み込み型ベクターより約1000倍低い残余組み込み(residual integration)を除いて、組み込み型ベクターよりごくわずかに低い形質導入効率を可能にすることが報告された。記載される別の変異であるDl16Nは、コントロールベクターより約2000倍低い残余組み込みを生じた。2〜3の例において、インテグラーゼ(IN)欠損性SIN LVの1回の投与が、ベクター組み込みの非存在下で顕著な免疫応答を誘発し、ワクチン開発に安全かつ有用なストラテジーであり得ることが示された。従って、上記レンチウイルスベクターを、エピソーム形態で存在し得るが、導入遺伝子発現をなお提供し得るようにする改変は、本発明の範囲内で具体的に企図される。
【0085】
上記レンチウイルスベクターは、これが導入される、すなわち、上記ベクターコード核酸配列の細胞に発現を付与し得る上記宿主細胞と適合性であり得る。プロモーターがコード配列の転写を指向し得る場合、上記コード配列は、上記プロモーターに「作動可能に連結」される。
【0086】
ビリオンの「偽型化(Pseudotyping)」は、パッケージング細胞を、上記目的のレンチウイルスベクターと、別のウイルスの少なくとも1つのエンベロープタンパク質もしくは細胞表面分子をコードするヘルパーベクターとの両方で同時トランスフェクトすることによって達成される(例えば、米国特許第5,512,421号(その全本文は、その全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。レンチウイルスベクターを偽型化するために一般に使用される1つのウイルスエンベロープタンパク質は、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質G(VSV−G)である。この糖タンパク質は、ラブドウイルス由来である。使用され得る他のウイルスエンベロープタンパク質としては、例えば、狂犬病ウイルス−等タンパク質Gおよびバキュロウイルスgp−64が挙げられる。偽型化の使用は、使用される上記異種ウイルスのウイルス侵入機構のエレメントを含めることによって、上記レンチウイルスベクター粒子の宿主細胞範囲を拡げる。本発明における使用のための、例えば、VSV−Gでのレンチウイルスベクターの偽型化は、ヌクレオキャプシド中に被包された上記レンチウイルスベクター核酸を含むレンチウイルス粒子を生じ、上記レンチウイルスベクター核酸は、上記VSV−Gエンベロープタンパク質を含む膜によって囲まれている。上記ヌクレオキャプシドは、好ましくは、上記レンチウイルスベクターと通常結合するタンパク質を含む。上記囲んでいるVSV−Gタンパク質含有膜は、上記レンチウイルスベクターをパッケージするために使用されるプロデューサー細胞から出て行く際に、上記ウイルス粒子の一部を形成する。本発明の一実施形態において、上記レンチウイルス粒子は、HIVに由来し、上記VSV−Gタンパク質で偽型化される。上記VSV−Gタンパク質を含む偽型化レンチウイルス粒子は、両種指向性ウイルスベクター(amphotropic viral vector)より高い効率で、多様な細胞タイプに感染し得る。宿主細胞の範囲は、哺乳動物種および非哺乳動物種の両方(例えば、ヒト、齧歯類、魚類、両生類および昆虫)を含む。
【0087】
VSV−G偽型化が、皮膚導入にとって最も効率がよいと記載されてきたとしても、LVを使用する大きな利点は、上記ビリオンエンベロープを置換および/もしくは改変することによって、上記ベクターを特定の組織もしくは細胞に標的化することが可能であることである。LVは、広い範囲のウイルスエンベロープ糖タンパク質と顕著に適合性であり、このことは、融通性を提供する(調査したそれらウイルスエンベロープ糖タンパク質をいくつか挙げると、狂犬病ウイルス、モコラウイルス(Mokola)、LCMV、ロスリバー・ウイルス、エボラ出血熱ウイルス、MuLV、バキュロウイルスGP64、HCV、センダイウイルス(Sindai virus)Fタンパク質、ネコ内在性レトロウイルス(Feline Endogenous Retrovirus)RDl14改変、ヒト内在性レトロウイルス、セネカウイルス(Seneca virus)、GALV改変およびHAインフルエンザ糖タンパク質もしくはこれらの組み合わせ)。エンベロープ全体の改変もしくは置換に加えて、異なる細胞タイプを標的とするためのLVプラットホームの融通性を、細胞特異的リガンドのディスプレイを介して、LV粒子の改変を正確にすることによって、さらに実証した。ワクチン適用に関しては、偽型化エンベロープとしてのVSV−Gは、いくつかの重量な利点(例えば、広い細胞向性(樹状細胞を含む)およびヒト集団における既存免疫が低いこと)を付与する。VSV−Gは、最終的に、必要とされる場合、例えば、複数ベクター投与の場合に、他のエンベロープによって置換され得るが、抗VSV−G免疫は、反復されるベクター投与を妨げないようである。
【0088】
このような偽型化レンチウイルスベクターは、上記ベクターが、レンチウイルス由来の5’LTR;レンチウイルス由来の3’LTR;上記5’LTRの3’側にあるスプライスドナー部位;上記5’LTRに作動可能に連結された、第1の核酸配列;上記第1の核酸配列の3’側にあるRRE;上記RREの3’側にあるスプライスアクセプター部位;上記RREの3’側にある異種プロモーター;上記RREの3’側にあるスプライスアクセプター;ならびにスプライスアクセプター部位の3’側にあるRev遺伝子を含み得るという点でさらに特徴付けられる。繰り返すと、上記機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列は、上記RRE含有配列が、上記REVコード配列の上流に位置し、上記第1の核酸配列および上記第2の核酸配列の転写が、上記5’LTRによって駆動される。上記第1の核酸配列は、Gagタンパク質およびPolタンパク質のうちのいずれかもしくは両方の全長野生型配列をコードする。
【0089】
本発明の特定の実施形態において、上記異種プロモーターは、ウイルスプロモーター、ヒトプロモーター、および/もしくは合成プロモーター、またはこれらの組み合わせを含む。一実施形態において、異種ウイルスプロモーターは、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、モロニー・ウイルス、トリ白血病ウイルス(ALV)、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター/エンハンサー、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、アデノ随伴ウイルス(AAV)プロモーター;アデノウイルスプロモーター、およびエプスタイン・バー・ウイルス(EBV)プロモーター、もしくはこれらの任意の組み合わせを含む。一実施形態において、異種ヒトプロモーターは、アポリポタンパク質Eプロモーター、アルブミンプロモーター、ヒトユビキチンCプロモーター、ヒト組織特異的プロモーター(例えば、肝臓特異的プロモーター、前立腺特異的抗原(psa)プロモーター、ヒトホスホグリセレートキナーゼ(PGK)プロモーター、伸長因子−Iα(EF−Ia)プロモーター、デクチン(dectin)−2プロモーター、HLA−DRプロモーター、ヒトCD4(hCD4)プロモーター、もしくは任意のこれらの組み合わせを含む。さらに別の実施形態において、上記合成プロモーターは、米国特許第6,072,050号(その内容は、その全体が本明細書において参考として援用される)に記載されるプロモーターを含む。
【0090】
上記構築物の種々のエレメントが、本発明のレンチウイルスベクターの上記第1の核酸配列もしくは上記第2の核酸配列のヌクレオチドコード配列および/もしくはアミノ酸配列へと操作された機能的に等価な誘導体、そのフラグメントもしくは改変を含み得ることは、本発明のさらに別の局面である。天然の遺伝子型バリエーション、対立遺伝子バリエーションの結果であるか、または人工的に操作され機能的活性を変化させない、任意のかつ全てのこのようなヌクレオチドバリエーションおよび得られるアミノ酸多型もしくはバリエーションは、本発明の範囲内であることが意図される。従って、本発明のレンチウイルスベクターの上記第1の核酸配列もしくは上記第2の核酸配列の機能的に等価な誘導体、そのフラグメントもしくは改変は、1もしくは数個のヌクレオチド置換、付加もしくは欠失を、マーカー核酸のヌクレオチド配列へと導入することによって作り出され得る。その結果、上記1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、付加、もしくは欠失が、そのコードされたタンパク質へと導入される。変異は、標準的技術(例えば、部位指向性変異誘発およびPCR媒介変異誘発)によって導入され得る。好ましくは、保存的アミノ酸置換は、1もしくは数個の推定される必須でないアミノ酸残基において行われる。「保存的アミノ酸置換」は、上記アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野で既に定義されている。これらファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電の極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐した側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。あるいは、変異は、例えば、飽和変異誘発(saturation mutagenesis)によって、上記コード配列の全てもしくは一部に沿ってランダムに導入され得、得られた変異体は、活性を保持する変異体を同定するために、生物学的活性についてスクリーニングされ得る。変異誘発の後、上記コードされたタンパク質は組換え発現され得、上記タンパク質の活性が決定され得る。
【0091】
従って、一実施形態において、本発明は、配列番号7に記載されるパッケージングシグナル配列およびその機能的に活性な誘導体フラグメントもしくは変異を含み、ここで上記誘導体、フラグメントもしくは変異は、配列番号7に対して約60%〜約100%相同であり得る。
【0092】
別の実施形態において、本発明は、配列番号8に記載されるHIVベクターpNL4−3の5’LTR、およびその機能的に活性な誘導体、フラグメントもしくは変異を含み、ここで上記誘導体、フラグメントもしくは変異は、配列番号8に対して約60%〜約100%相同であり得る。
【0093】
別の実施形態において、本発明は、配列番号9に記載されるHIVベクターpNL4−3の3’LTRおよびその機能的に活性な誘導体、フラグメントもしくは変異を含み、ここで上記誘導体、フラグメントもしくは変異は、配列番号9に対して約60%〜約100%相同であり得る。
【0094】
別の実施形態において、本発明は、配列番号10に記載されるHIVベクターpNL4−3のREV遺伝子およびその機能的に活性な誘導体、フラグメントもしくは変異を含み、ここで上記誘導体、フラグメントもしくは変異は、配列番号10に対して約60%〜約100%相同であり得る。
【0095】
別の実施形態において、本発明は、配列番号11に記載されるHIVベクターpNL4−3の機能的RREの配列、およびその機能的に活性な誘導体、フラグメントもしくは変異を含み、ここで上記誘導体、フラグメントもしくは変異は、配列番号11に対して約60%〜約100%相同であり得る。
【0096】
別の実施形態において、本発明は、配列番号12に記載されるHIVベクターpNL4−3の最小パッケージング配列、およびその機能的に活性な誘導体、フラグメントもしくは変異を含み、ここで上記誘導体、フラグメントもしくは変異は、配列番号12に対して約60%〜約100%相同であり得る。
【0097】
別の実施形態において、本発明は、配列番号13に記載されるHIVベクターpNL4−3のcPPT/cTS、およびその機能的に活性な誘導体、フラグメントもしくは変異を含み、ここで上記誘導体、フラグメントもしくは変異は、配列番号13に対して約60%〜約100%相同であり得る。
【0098】
別の実施形態において、本発明は、配列番号14に記載されるHIVベクターpNL4−3のPPT、およびその機能的に活性な誘導体、フラグメントもしくは変異を含み、ここで上記誘導体、フラグメントもしくは変異は、配列番号14に対して約60%〜約100%相同であり得る。
【0099】
別の実施形態において、本発明は、配列番号15に記載されるRIVベクターpNL4−3のgag/polコード配列、およびその機能的に活性な誘導体、フラグメントもしくは変異を含み、ここで上記誘導体、フラグメントもしくは変異は、配列番号15に対して約60%〜約100%相同であり得る。
【0100】
別の実施形態において、本発明は、配列番号16に記載されるRIVベクターpNL4−3のフレームシフト改変gag/pol融合コード配列、およびその機能的に活性な誘導体、フラグメントもしくは変異を含み、ここで上記誘導体、フラグメントもしくは変異は、配列番号16に対して約60%〜約100%相同であり得る。
【0101】
本発明の組成物が、1種より多いベクターを含み得、上記ベクターは、ワクチン接種の後にヒト免疫不全ウイルスの種々のサブタイプ感染の進行を予防的にもしくは治療的に処置するために、同じであっても異なっていてもよいことは、理解されるべきである、このような組み合わせは、望ましい免疫に応じて選択され得る。レンチウイルスベースのワクチンが動物もしくはヒトに投与される場合、上記ワクチンは、当業者に公知であるように、1つ以上の遺伝子補助剤と組み合わせられ得る。「遺伝子補助剤」は本発明の上記目的の抗原性配列の発現によって誘発される免疫応答を増大もしくは増強するために、本発明のレンチウイルスベクターにおいて有効負荷として挿入され得る。これら遺伝子補助剤は、異なる構築物上にあり得るが、同時発現され得るか、または異なる初弁下セット中になお含まれる同じベクター上で同時発現され得る。このような望ましい遺伝子補助剤としては、toll様レセプター、CpG、サイトカイン(例えば、インターロイキン(IL) IL−1β、I1(ILの間違いと思われる)−2、I1−10、I1−12、I1−15、CTA1−DD、fas抗原、フラジェリンなど)、またはこれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。他の望ましい遺伝子補助剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:GM−CSF、インターフェロン(IFN)(例えば、IFN−α、IFN−β、およびIFN−γ)、TNF−α、およびこれらの組み合わせをコードするDNA配列。上記遺伝子補助剤はまた、パラポックスウイルス由来の免疫刺激ポリペプチド(例えば、パラポックスウイルス株D1701もしくはNZ2のポリペプチド)、またはパラポックス免疫刺激性ポリペプチドB2WLもしくはPP30(例えば、米国特許第6,752,995号を参照のこと)であり得る。なお他のこのような生物学的に活性な因子、および抗原特異的免疫応答を増強する、当該分野で公知の免疫調節因子もしくは免疫刺激剤は、当業者によって容易に選択され得。適切なプラスミドベクターは、公地の技術によって構築される同じ因子を含む。
【0102】
(使用方法)
本発明のレンチウイルスベクターは、種々のウイルスによって引き起こされる広い範囲のウイルス感染を処置するために使用され得、上記種々のウイルスとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:dsDNAウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルスなど);ssDNAウイルス(例えば、パルボウイルス);dsRNAウイルス(例えば、レオウイルス、ロタウイルス);(+)ssRNAウイルス(例えば、ピコルナウイルス、トガウイルスなど);(−)ssRNAウイルス(例えば、オルトミクソウイルス、ラブドウイルスなど);ssRNA−RTウイルス(例えば、レトロウイルス、HlV、SIVなど);およびdsDNA−RTウイルス(例えば、ヘパドナウイルス))を含む群のウイルス。
【0103】
本発明のレンチウイルスベクターは、多くのウイルスファミリーに由来するウイルスよって引き起こされる疾患を処置するために使用され得。上記ウイルスとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:単純ヘルペスウイルス(HSV)−1(口唇単純ヘルペス)、HSV−2(単純性器ヘルペス)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)(水痘)、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)(単核症)、サイトメガロウイルス(CMV)(トキソプラズマ症(TOXplasmosis)、風疹、単純ヘルペス)、ポックスウイルス(痘瘡)、および当該分野で公知の他のウイルス。
【0104】
本発明のレンチウイルスベクターはまた、寄生生物および微生物による病気を含む種々の疾患(ヒトへのマラリア原虫であるplasmodiumの蚊伝染によって引き起こされる疾患であるマラリアが挙げられるが、これらに限定されない)を予防的にもしくは治療的に処置するために使用され得る。上記疾患は、原生動物性のPlasmodium属寄生生物によって引き起こされる。上記plasmodium寄生生物のうちの4つのタイプのみが人に感染し得る。上記疾患のうちの最も重篤な形態は、Plasmodium falciparumおよびPlasmodium vivaxによって引き起こされるが、他の関連種(Plasmodium ovale、Plasmodium malariae)も、ヒトに罹患し得る。本発明の方法によって処置され得る他の疾患は、例示に依れば、マラリア、セントルイス脳炎、デング熱、黄熱病、西ナイルウイルス;腺ペスト;ライム病、ロッキー山紅斑熱、脳炎;ハンタウイルス;シャーガス病であるが、これらに限定されない。本発明のレンチウイルスベクターは、治療的に処置するためにもしくは予防として、上記有効負荷における上記ウイルスのうちのりずれかに由来する抗原を含むように改変され得る。
【0105】
また、細菌感染は、本発明の方法の上記レンチウイルスベクターによって処置可能であり、上記細菌感染としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ヒト疾患の原因となる、スピロヘータ目の細菌(T.pallidum(梅毒)、S.pilosicoli(特に発展途上国におけるヒト、およびHIV患者における下痢)、B.burgdorferi:(ライム病および関連障害)が挙げられる)、Spirillaceae科の細菌(C.jenuni(大腸炎、下痢、腸炎、小腸結腸炎、胃腸炎など)が挙げられる)、H pylori(胃炎、十二指腸潰瘍および消化性潰瘍、レイノー現象(Taynaud’s phenomenon)など);Spirosomaceae科の細菌(Pseudomonas(蜂巣炎、脳脊髄液シャント感染(cerebrospinal fluid shunt infection)、急性膀胱炎、心内膜炎、慢性の眼への感染、新生児髄膜炎、腹膜炎、肺炎)が挙げられる)、Legionellaceae科の細菌(Legionella(ヒトにおける肺炎(レジオネラ症(legionellosis、legionnaire’s disease)、ピッツバーグ肺炎、非肺炎性のポンティアック熱(nonpneumonic Pontiac fever)、横紋筋融解症、菌血症および敗血症、心内膜炎、細胞媒介性免疫障害における全身感染が挙げられる);細菌Rhizobiacea(Agrobacterium(持続性自己管理腹膜透析における腹膜炎);Achromobacter(術後および外傷後創傷感染性合併症);細菌Shigella(水様性下痢、赤痢);細菌Salmonella(腸熱、腸チフス、パラチフス、胃腸炎、食中毒、下痢および/もしくは嘔吐)が挙げられる)、ならびに陶業屋に公知の他の疾患の原因となる細菌。
【0106】
本発明のレンチウイルスベクターは、癌の予防的処置および治療的処置のために、癌ワクチンとして使用され得る。癌ワクチンは、癌の負荷を治療的かもしくは予防的かのいずれかで低下させることが意図される(例えば、Gardisil(登録商標))。処置もしくは治療的ワクチンは、癌患者に投与され、既に発症した癌に対する身体の自然防御能力(natural defense)を強化するように設計される。これらタイプのワクチンは、既存の癌のさらなる増殖を低下させ得るか、処置された癌の再発を低下させ得るか、または以前の処置によって死滅しなかった癌細胞の疾患進行を変化させ得る。他方で、予防的ワクチンは、健康な個体に投与され、ウイルス感染に対する予防として、癌の原因となるウイルスを標的とするように設計される。癌を処置するために使用される癌ワクチンは、特定の免疫応答を起こすために免疫系を刺激するように提示される抗原を利用する。本発明のレンチウイルスワクチンは、上記レンチウイルスベクターワクチン自体が、宿主細胞においていったん発現された抗原配列と同様に、免疫応答を刺激し得るという点で2倍の利益を有する。
【0107】
免疫系は、一般に、腫瘍を危険なものもしくは外来物質として認識せず、これらに対して強い免疫応答を誘起しない。当業者が考えている腫瘍分子が有効な免疫応答を刺激しない1つの理由は、腫瘍細胞が正常細胞に由来するということである。従って、正常細胞と腫瘍細胞との間に多くの分子的差異が存在するとしても、癌抗原は、身体に対して真に外来物質ではなく、微妙な過程で変化した正常分子である。腫瘍が免疫応答を刺激しないかもしれない別の理由は、癌細胞が免疫系から逃れる方法を発達させてきたことである。科学者はいまや、これらの逃れる様式のうちのいくつかを理解している。上記様式としては、腫瘍抗原を脱ぎ捨てること、およびT細胞(特異的免疫細胞)および他の免疫応答を活性化するために身体が通常依存する分子およびレセプターの数を減らすことが挙げられる。これら分子を減らすと、上記免疫系は、上記癌細胞に対して応答性が低くなり;上記腫瘍は、上記免疫細胞から見えなくなる。科学者は、この知見が、より有効なワクチンを設計するために研究者らによって使用され得ることを期待している。本発明のレンチウイルスベクターは、上記免疫応答を高め、上記癌を治療的に処置するために癌関連抗原を発現し得る。
【0108】
従って、別の実施形態において、本発明のレンチウイルスベクターは、癌抗原タンパク質を生成するために腫瘍抗原をコードする核酸配列をさらに含む。
【0109】
癌細胞抗原は、いくつかの腫瘍タイプによって共有されている個々の腫瘍に対して特有であり得るか、または腫瘍が増殖している正常組織によって発現され得る。癌関連抗原としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:循環血液中および前立腺癌細胞上で見いだされ得る前立腺特異的タンパク質抗原である前立腺特異的抗原(PSA)(PSAの量は、前立腺癌が発症すると上昇する)。シアリルTn(STn)(これは、ムチン分子(粘膜に存在する主な分子)を模倣する低分子の合成炭水化物であり、特定の癌細胞上で見いだされる);熱ショックタンパク質(HSP)(例えば、gp96など)(これは、熱、低い糖レベルおよび他のストレスシグナルに応じて、およびストレスに対する防御に加えて、細胞において生成される)の、これら分子はまた、上記細胞内のタンパク質の適切なプロセシング、折りたたみおよび組み立てに関与する。炭水化物および脂肪を含む複雑な分子であり、ガングリオシド分子が細胞の外膜に組み込まれかつ多くのヒト癌の細胞表面上で発現される分子であるガングリオシド分子(例えば、GM2、GD2、およびGD3)(GD2およびGD3は、ヒト癌細胞によって発現される炭水化物抗原を含む);癌胎児性抗原(CEA)(正常組織と比較して、結腸直腸癌、肺癌、乳癌および膵臓癌を有する人々における腫瘍で、高レベルで見いだされかつ腫瘍によって血中へと放出されると考えられ、患者がCEAに対するT細胞応答を誘起させることを示された);MART−1(Melan−Aとしても公知)(メラノサイトによって発現される抗原でありかつT細胞によって認識される特異的黒色腫癌マーカーであり、正常細胞より黒色腫細胞上で量が豊富である);チロシナーゼ(メラニン生成の最初の段階に関与する重要な酵素であり、チロシナーゼが黒色腫に対する特異的マーカーでありかつ正常細胞より黒色腫細胞上で量が豊富であることが研究によって示された);および癌の原因となるウイルスの外側コート上のウイルスタンパク質は、上記ウイルスによる感染を予防するために上記免疫系を刺激する抗原として一般に使用され;他の癌抗原は、当業者に公知である。
【0110】
本発明の1局面は、上記レンチウイルスベクターと、癌抗原に対する免疫応答をたかめるためのアジュバントとを会わせることであり、研究者らは、通常、身体が外来物質として認識するデコイ物質、またはアジュバントを結合させる。アジュバントは、デコイおよび腫瘍細胞の両方への攻撃の開始へと上記免疫系をだます、弱らせたタンパク質もしくは細菌である。本発明のアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。:キーホールリンペットとして公知である、癌抗原はしばしば、Tヘルパー細胞として公知の免疫細胞にさらなる認識部位を提供する上記免疫系には見えないこともあり、かつ細胞傷害性Tリンパ球(CTL)として公知の他の免疫細胞の活性化を増大させ得る比較的小さなタンパク質であるので、カリフォルニアおよびメキシコの海岸線に沿って見いだされる殻を持った海洋生物によって生成されるタンパク質でありかつ免疫応答を引き起こして癌細胞抗原のためのキャリアとして作用する大きなタンパク質であるキーホールリンペット・ヘモシアニン(KLH);結核細菌の不活性化形態であり、上記ワクチン抗原に対する免疫応答を追加免疫するためにいくつかの癌ワクチンに添加されるカルメット・ゲラン桿菌(BCG);特定の専門化された免疫系細胞(ナチュラル・キラー細胞といわれる)の癌を死滅させる能力を追加免疫し得る新田の免疫系によって作製されるタンパク質である、インターロイキン−2(IL−2)(および当該分野で公知の他のサイトカイン);抗原提示細胞の増殖を刺激するタンパク質である顆粒球単球コロニー刺激因子(GM−CSF);いくつかのワクチンに添加される場合に、上記身体の免疫応答を改善し得る植物抽出物であるQS21;免疫応答を追加免疫ためのオイルベースの液体であるMontanide ISA−51。
【0111】
上記アジュバントは、本発明のベクターと同時に投与されてもよいし、本発明のレンチウイルスベクターの投与の前にもしくはその後に、または適切な場合、遺伝子補助剤として、本明細書で開示されるように、患者における免疫応答を増強するために、連続的に投与されてもよい。
【0112】
本発明のレンチウイルスベクターは、全長Gag、Pol、有効負荷、ならびにネイティブ5’LTRの依存の下でHIVに由来するRev遺伝子およびRRE遺伝子を有し得る。上記ワクチンの最適化は、マウスにおける全身応答および粘膜応答の両方を誘発するために、慣用的な最適化を含んだ。プロトコル最適化もまた、上記レンチウイルスベクターと、他のウイルスベクターもしくはDNAプラスミド、または両方とを組み合わせることによって行った。これらプロトコルのうちのいくつかは、広く、持続した免疫原性を誘発した。全ての研究をマウスにおいて行い、抗HIV免疫原性を、細胞内サイトカイン染色(ICS)、Elispot、テトラマー染色、細胞傷害性、T細胞増殖、およびElisaによって評価した。DNA初回刺激/レンチウイルスベクター追加免疫プロトコルは、皮下投与した場合に全身レベルおよび粘膜レベルの両方において、高レベルの抗HIV体液性免疫および細胞性免疫(例えば、限定しないが、CD8+リンパ球のうちの最大21%までが、ICSによって測定した場合に、免疫したマウスにおける抗原刺激に応じてサイトカインを分泌した)を誘発した。レンチウイルスベクターで形質導入した細胞による長期の有効負荷発現は、持続した抗免疫原性を生じた。DNA初回刺激/レンチウイルスベクター追加免疫プロトコルにおけるウイルスベクターとDNAプラスミドとのプロトコル組み合わせは、多機能性抗HIV細胞性免疫を大いに増大させ、並行比較(side by side comparison)すると、類似の有効負荷を発現するAd5由来のアデノウイルスベクターによって誘発されたものを凌いだ。
【0113】
一般に、本発明の方法は、好ましくは、ウイルス感染から生じるウイルス性疾患を処置するために使用される。望ましくは、ウイルス(以下で議論されるように、上記ベクターも同様)は、RNAウイルスであるが、DNAウイルスであってもよい。RNAウイルスは、原核生物に感染する(例えば、バクテリオファージ)、および多くの真核生物(哺乳動物および特にヒトを含む)に感染する多様な群である。大部分のRNAウイルスは、それらの遺伝物質として一本鎖RNAを有するが、少なくとも1つのファミリーは、遺伝物資として二本鎖RNAを有する。上記RNAウイルスは、3つの主な群に分けられる:プラス鎖ウイルス(すなわち、上記ウイルスによって移入されるゲノムが、タンパク質に翻訳され、そのタンパク質除去核酸は、感染を開始するに十分であるもの)、マイナス鎖ウイルス(すなわち、上記ウイルスによって移入されるゲノムがメッセージセンスに対して相補的であり、かつ翻訳が生じ得る前にビリオン関連酵素によって転写されなければならないもの)、および二本鎖RNAウイルス。本発明の方法は、好ましくは、プラス鎖ウイルス、マイナス鎖ウイルス、および二本鎖RNAウイルスを処置するために使用される。本明細書で記載される方法の実施は、別段示されなければ、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝学、微生物学、組換えDNA、および免疫学(当該分野の技術範囲内)の従来からの技術を使用する。
【0114】
(薬学的組成物)
本発明の薬学的組成物は、薬学的におよび/もしくは治療上有効な量の少なくとも1つの核酸構築物、レンチウイルスベクター、レンチウイルスベクター系、ウイルス粒子/ウイルスストック、もしくは宿主細胞(すなわち、本発明の薬剤)を含む。本発明の一実施形態において、単位用量あたりの本発明の薬剤の有効量は、上記目的の遺伝子の検出可能な発現を引き起こすに十分な量である。本発明の別の実施形態において、上記単位用量あたりの薬剤の有効量は、処置されている疾患もしくは状態の有害効果(重篤度、持続時間、もしくは症状の程度が挙げられる)を予防するか、処置するか、もしくは防御するに十分な量である。
【0115】
本発明の薬学的組成物の投与は、「予防」目的もしくは「治療」目的のいずれのためであってもよい。予防的に提供される場合、上記組成物は、任意の症状に先だって提供される。上記組成物の予防的投与は、処置されている疾患もしくは状態の任意のその後の有害効果(重篤度、持続時間、もしくは症状の程度が挙げられる)を予防もしくは改善するように働く。治療的に提供される場合、上記組成物は、処置されている状態の症状の発生時に(もしくはその直後に)提供される。
【0116】
治療的使用、予防的使用および診断的使用のための本発明のさらに別の実施形態において、前述の本発明のレンチウイルスベクター、レンチウイルスベクター系、ウイルス粒子/ウイルスストック、もしくは宿主細胞(すなわち、薬剤)、ならびに他の必要な試薬および適切なデバイスおよび補助物質のうちの1つ以上は、容易に利用可能および容易に使用され得るように、キット形態で提供され得る/このようなキットは、本発明のレンチウイルスベクター、ならびに薬学的に受容可能なキャリアおよび/もしくは遺伝子補助剤を含むインビトロもしくはインビボでの投与のための薬学的組成物;ならびに上記キットの使用のための説明書を含む。
【0117】
ワクチン処方物は、便宜上、単位投与形態において提示され得、従来の薬学的技術によって調製され得る。このような技術は、上記活性成分および上記薬学的キャリアもしくは賦形剤を会合させる工程を包含する。一般に、上記処方物は、均質にかつ密接に上記活性成分と液体キャリアとを会合させることによって調製される。非経口投与に適した処方物としては、抗酸化剤、緩衝化剤、静菌剤および溶質(これは、処方物を、意図されたレシピエントの血液と等張性にする)を含み得る水性および非水性の滅菌注射用溶液;ならびに懸濁剤および濃化剤を含み得る、水性および非水性の滅菌懸濁物が挙げられる。上記処方物は、単一用量もしくは複数用量容器(例えば、密封アンプルおよびバイアル)中に提示され得る。即席の注射溶液および懸濁物は、DNAプラスミド初回刺激(priming)化合物および/もしくは当業者によって一般に使用さらえる精製ウイルスベクター化合物のための精製核酸調製物から調製され得る。好ましい単位投与量処方物は、上記投与される成分の用量もしくは単位、またはその適切な部分を含むものである。特に上記の成分に加えて、上記処方物はまた、当業者によって一般に使用される他の薬剤を含み得ることが理解されるべきである。
【0118】
上記ワクチン処方物は、異なる経路(例えば、経口(口内および舌下が挙げられる)、直腸、非経口、エアロゾル、鼻内、筋肉内、皮下、静脈内、腹腔内、眼内、頭蓋内、皮内、経皮(皮膚パッチ)、局所、または被験体の身体の関節もしくは他の領域への直接注射)を介して投与され得る。上記ワクチンは、同様に、異なる形態において投与され得る。上記形態としては、溶液、エマルジョンおよび懸濁物、マイクロスフェア、粒子、微粒子、ナノ粒子、およびリポソームが挙げられるが、これら限定されない。約1用量から約5用量(例えば、2用量−初期接種、初回刺激/追加免疫の初回刺激、および追加免疫量)が、免疫プロトコルに従って必要とされ得ることが予測される。上記最初の初回刺激および追加免疫投与は、満足のいく免疫応答を誘導するに十分な抗原量を含み得る。投与されるべき初回刺激および追加免疫の抗原の適切な量は、上記被験体もしくは患者の種々の身体的特徴(例えば、患者の年齢、ボディーマスインデックス(体重)、性別、健康状態、免疫能などが挙げられる)に基づいて、当業者によって、本明細書で開示される初回刺激/追加免疫プロトコルのいずれかのために決定される。同様に、投与体積は、投与経路に依存して変動する。例示によれば、筋肉内注射は、約0.1mL〜1.0mLの範囲に及び得る。好ましくは、患者は、正常な免疫系を有し、ヒト免疫不全ウイルスに感染していないが、上記ワクチンはまた、疾患進行を改善するために最初のHIV感染後に、またはAIDSを処置するために最初の感染後に投与されてもよい。
【0119】
上記ワクチンは、上記ワクチンがどのように処方されるかに依存して、約−80℃〜約37℃以下の温度で貯蔵され得る。当業者に公知の種々のアジュバントは、上記ワクチン組成物中のウイルスベクターとともに投与され得る。
【0120】
当業者は、上記個々の患者における望ましい「有効レベル」を達成するために、使用されている組成物の正確な処方のための適切な用量、スケジュール、および投与方法を容易に決定し得る。当業者はまた、適切な患者サンプル(例えば、血液および/もしくは組織)の直接的分析(例えば、分析的化学分析)もしくは間接的分析(例えば、ウイルス感染の代理指標(例えば、p24もしくHIV感染の場合においてはは逆転写酵素)を用いる)によって、本発明の化合物の「有効レベル」を容易に決定子、その適切な指標を使用し得る。
【0121】
さらに、特に、HIVの処置のための患者における有効レベルを決定することに関して、適切な動物モデルが利用可能であり、種々の遺伝子治療プロトコルのHIVに対するインビボ効力を評価するために広くこれが実行されてきた(Sarverら(1993b),前出)。これらモデルとしては、マウス、サル、ネコおよびウサギが挙げられる。これら動物が、HIV疾患に天然には罹りやすくないとしても、ヒト末梢血単核球(PBMC)、リンパ節、胎児肝/胸腺もしくは他の組織で再構成されたキメラマウスモデル(例えば、SCID、bg/nu/xid、NOD/SCID、SCID−hu、免疫能のあるSCID−hu、骨髄除去BALB/c)は、レンチウイルスベクターもしくはHIVに感染し得、HIV病因論および遺伝子治療のモデルとして使用され得る。同様に、シミアン免疫不全ウイルス(SIV)/サルモデルが使用され得る。ネコ免疫不全ウイルス(FIV)/ネコモデルが同様に使用され得る。上記薬学的組成物は、AIDSを治療的に処置するために使用される場合、本発明に従うベクターとともに、他の医薬を含み得る。これら他の医薬は、それらの従来の様式において(すなわち、HIV感染を処置するための薬剤として)使用され得る。
【0122】
本発明のベクターは、種々の経路(経口(口内および舌下が挙げられる)、直腸、非経口、エアロゾル、鼻内、静脈内、皮下、皮内および局所が挙げられるが、これらに限定されない)を介して投与され得る。ワクチン候補によって生成される免疫応答の動的研究において、免疫応答を、経時的に維持した。
【0123】
細胞レベルおよび体液レベルの両方において全身免疫および粘膜免疫を誘発した有効投与経路を、決定した(図4)。後に、上記ワクチンプロトコルを、DNA初回刺激/レンチウイルス追加免疫(図5)を含むか、またはベクター初回刺激/ベクター追加免疫レジメンからなるようにさらに改変され、ここでアデノウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターは、ワクチン免疫原性を改善するための同種もしくは異種の初回刺激/追加免疫ストラテジー(図9および10)において代わりに使用され得る。これら2つのプロトコルは、代わりに、DNA初回刺激、続いて、2つのベクターの追加免疫において組み合わせられ得る(図12)。これらワクチン接種ストラテジーの全ては、顕著な利点を提供し得る。なぜならDNAワクチンは、強力な細胞性免疫応答を誘導することが公知であり(例えば、Nagata,Aoshiら 2004を参照のこと)、抗ベクター免疫応答の出現は、アデノウイルス追加免疫の次に、本明細書で開示される上記レンチウイルスベクターのうちの1つを含む第2の追加免疫がある場合に得られるからである(図11)。ワクチン効力は、ICSおよびElisaを使用して研究した。
【0124】
本発明は、いまや一般的に記載され、以下の実施例を参照することによって容易に理解される。以下の実施例は、本発明の特定の局面および実施形態を例示する目的で含められるに過ぎず、本発明を限定することを意図しない。本願において至る所で言及される任意の特許、特許出願、特許公報、もしくは科学文献は、それらの全体が本明細書に参考として援用される。
【実施例】
【0125】
(実施例1)
この実施例において、非常に免疫原性の、本発明のレンチウイルスベクターは、マウスにおいて長期の抗HIV免疫を、特に、初回刺激/追加免疫プロトコルにおいて使用した場合に誘発することを実証した。
【0126】
遺伝子免疫ツールの現在の蓄積の中でも、ウイルスベクター、特に、レンチウイルスベクターは、非常に有望であることが実証された。操作されたレンチウイルスベクターは、広く種々の細胞タイプに感染し得、他のベクターとは対照的に、活発に複製していない細胞(樹状細胞を含む)すら形質導入し得、従って、種々の疾患の処置に有益な、抗原に対する強い免疫原性を誘発する。レンチウイルスベクター構築物を、HIV由来抗原を送達するためのビヒクルとして使用されるように改変した。全長Gag、PolおよびHIV由来のRev遺伝子を有し、上記ネイティブHIV 5’LTRによって駆動されるVSV−G偽型化したHIVベースのレンチウイルスベクターを、本発明のレンチウイルスベクターにおいて使用した。当業者は、本発明のレンチウイルスベクターをどのように改変して、感染性因子および/もしくは癌によって引き起こされる任意の他の疾患に対するワクチンを作り出すかを知っている。レンチウイルスベクター開発は、マウスにおける全身応答および粘膜応答の両方を誘発するために、慣用的な最適化、初回刺激/追加免疫プロトコルにおける上記レンチウイルスベクターおよびDNAプラスミドを組み合わせることによるプロトコル最適化、ならびに持続性の免疫原性の評価を含んだ。全ての研究を、マウスおよび非ヒト霊長類において行い、抗HIV免疫原性を、ICSおよびElisaによって評価した。現在のHIVワクチンと比較して極めて高度な応答、例えば、限定しないが、本発明の構築物を用いる種々の初回刺激/追加免疫プロトコルからCD8+ リンパ球のうち最大21%までが、免疫したマウスにおいてHIV抗原刺激に応じてサイトカインを分泌した(図6)。皮下免疫は、全身および粘膜の両方の区画において、高レベルの抗HIV体液性免疫および細胞性免疫を誘導した(図4)。レンチウイルスベクター形質導入した細胞による長期の抗原発現は、持続した抗HIV免疫原性を生じた(図7)。DNA初回刺激/レンチウイルスベクター追加免疫プロトコルにおけるウイルスベクターと、DNAプラスミドとの組み合わせは、大いに増大した多機能性抗HIV細胞性免疫を生じ、並行比較(side by side comparison)すると、類似の有効負荷を発現するDNA初回刺激/アデノウイルスベクター追加免疫プロトコルによって誘発された免疫応答を凌いだ(図8)。
【0127】
(実施例2)
この実施例において、HIVベースのレンチウイルスベクターでの免疫は、最小限の抗ベクター中和活性を生じることを実証した。
【0128】
ウイルス(アデノウイルスおよびレンチウイルス)ベクターは、代表的には、強力な抗原免疫を誘導するので、最も魅力的なワクチン接種手段のうちの1つを代表する。しかし、天然においてアデノウイルスベクターが広く存在しているので、アデノウイルスベクターベースのワクチンが、アデノウイルスベクター自体に対する免疫応答を生成することは、異常なことではない。これら抗アデノウイルスベクター応答は、野生型アデノウイルスに対する既存の免疫に起因して、またはアデノウイルスベクター投与によって誘導される既存の免疫に起因して、種々のアデノウイルスベクターについて後半に記載されてきており、ワクチン中和を生じ得る。このワクチン中和は、ワクチン効力の劇的な低下を生じ、この障害を克服するワクチンベクターが必要とされている。
【0129】
本発明のレンチウイルスベクターの反復投与がワクチン中和を誘導したか否か、および抗ベクター抗体がその後の免疫を妨げるか否かを評価した。動物血清サンプル中で中和抗体応答を試験するために、定量的インビトロマイクロタイターアッセイを、ワクチン接種の前後に回収した動物血清と予めインキュベートしたGFP発現レンチウイルスベクターで形質導入したJurkat細胞の蛍光レベルを比較することによって、開発した。経時的に回収したマウスおよび非ヒト霊長類に由来する血清を、種々の経路を使用する反復レンチウイルスベクター投与後に分析した。反復免疫(皮下、腹腔内、もしくは動脈内のいずれも)が、1回の注射と比較して、抗レンチウイルスベクター中和活性を増大させたとしても、抗ベクター中和力価は、非常に抗原性のアデノウイルスベースのワクチンベクターによって誘起されたものと比較して、最小限のままであった(図11)。腹腔内注射と比較すると、皮下投与は、類似の抗レンチウイルスベクター中和抗体を誘導したと同時に、はるかにより強い抗有効負荷免疫を誘導した。レンチウイルスベクターは、既存の免疫もしくは反復投与が課題である場合、他の広く使用されるウイルスベクターの代替手段であり得る。本発明のレンチウイルスベクターは、単独で、もしくは広い標的集団において、他のベクターおよびDNAプラスミドと種々組み合わせて使用され得る。
【0130】
(実施例3)
この実施例において、本発明のレンチウイルスベクターを利用する初回刺激/追加免疫プロトコルにおける異種追加免疫は、アデノウイルスワクチンベクターの免疫原性を高め、かつワクチン中和を巧みに回避することを実証した。
【0131】
2種の異なるウイルスベクターによる異種「初回刺激−追加免疫」プロトコルは、上記個々のウイルスベクターの免疫原性を顕著に増大させ、ワクチン中和活性の生成を最小限にすることを示した。偽型化レンチウイルスベクターは、抗原有効負荷を送達するために最も効率的なビヒクルのうちの1つである。なぜならそれらは、広く種々の細胞に感染し得、分裂中の細胞および分裂していない細胞を形質導入する能力を有するからである。本明細書で開示されるレンチウイルスベクターベースのワクチンを、アデノウイルスベースのベクターワクチンとの異種初回刺激/追加免疫ストラテジーを使用して、免疫原性について試験した。
【0132】
本発明のレンチウイルスベクターのうちの1つを、全長HIV Gag遺伝子、Pol遺伝子およびRev遺伝子を有するように操作し、VSV−Gで偽型化した。このレンチウイルスベクターおよびアデノウイルスベースのワクチンベクターを使用する免疫をマウスに行い、ICS、および抗HIV ELISAで免疫原性をアッセイした。中和アッセイを、上記アデノウイルスベースのワクチンベクターもしくは上記レンチウイルスベクターを使用して行って、免疫したマウスに由来する血清の存在下でHela−tat細胞を形質導入した。
【0133】
アデノウイルスベクターベースのワクチンベクターと、上記レンチウイルスワクチンベクターを、異種初回刺激/追加免疫アプローチにおいて組み合わせると、同種初回刺激/追加免疫での免疫と比較して、CD8+ T細胞において数倍高い免疫原性応答およびCD4+ T細胞においてより高い多機能性応答が誘導された(図9および図10)。さらに、同種初回刺激/追加免疫プロトコルは、アデノウイルスベクター免疫したマウスにおいて高レベルの抗ワクチン中和抗体を誘導すると解ったと同時に、等しく免疫原性のレンチウイルスベクターが、遙かに低いレベルの中和抗体を誘発した(図11)。しかし、上記異種初回刺激/追加免疫ストラテジーは、レンチウイルスベクターに対する顕著な中和抗体を誘発しない一方で、上記抗アデノウイルスベクター中和活性を劇的に低下させることが解った(図11)。さらに、レンチウイルスワクチンベクターとアデノウイルスベクターベースのワクチンベクターとを異種追加免疫プロトコルにおいて組み合わせると、両方のベクターの免疫原性および多機能性(すなわち、T細胞が抗原性刺激に応答して、複数のサイトカインを同時に分泌する能力)を劇的が改善される(図9および図10)。これら知見は、HIVワクチンおよび他の疾患に対するワクチンの開発にも大きな関係を有する。本発明のワクチンおよびプロトコルは、他のウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベースのワクチンベクター)に対する既存の免疫を有する人々を処置するために使用され得る。
【0134】
(実施例4)
この実施例において、本発明のレンチウイルスベースのワクチンベクターが、強力かつ持続した抗HIVの細胞性免疫および体液性免疫をマウスおよび非ヒト霊長類において誘発することを実証した。
【0135】
ウイルスベクターは、遺伝子免疫による組換え抗原に対して強力な免疫応答を誘導する主要な手段のうちの1つと考えられる。これらの中でも、レンチウイルスベクターを、広く種々の細胞タイプに感染させるために操作し、そして他のベクターとは対照的に、レンチウイルスベクターは、活発に複製していない細胞(免疫応答誘導の主要な主役のうちの1つである樹状細胞が挙げられる)ですら形質導入し得る。
【0136】
本明細書でより詳細に記載されるように、本発明のレンチウイルスベクターは、図4B、図4Cおよび図4Dの模式図において示されるように、多様なタイプの免疫を誘導し得る。図4Bは、「空の」レンチウイルスベクターコントロールと比較した、本発明のレンチウイルスベクターによって誘導される抗HIV IgGレベルを示す。図4Bは、Balb/cマウスにおける本発明のベクターの皮下注射後の顕著な血清IgGレベルを示す。図4Cにおいて得られ、例示される結果は、マウス唾液中の顕著な抗HIV IgAレベルを示した一方で、図4Dは、上記レンチウイルスベクターが、CD8+ T細胞における顕著な抗HIV応答を誘導することを示す。得られた結果は、治療的に進行を処置する、およびHIVもしくは他のウイルスの場合のように、伝染領域を粘膜的に、から予防的にまで処置するために(そのために、本発明は適合され得る)、多様な免疫が全身的に認められるという点で、疾患(特に、HIV)の治療的処置および予防的処置にとって重要である。このことは、HIVの治療的処置および予防的処置に重要である。上記データは、皮下経路が、HIVに対する全身免疫および粘膜免疫の両方を誘導するにおいて最も効率的であることを示した。
【0137】
予防的ワクチンおよび治療的ワクチンとして単独で使用され得ることは、本発明の特徴であるが、上記ワクチンプロトコルが、ワクチン免疫原性を改善するためのDNA初回刺激−レンチウイルス追加免疫ストラテジーおよびレンチウイルス初回刺激−レンチウイルス追加免疫ストラテジーを含むように改変した。このことは、顕著な利点を示す。なぜなら、DNAワクチンは、強力かつ集中した細胞性免疫応答を誘導するからである(例えば、Nagata,Aoshiら 2004を参照のこと)。このDNA初回刺激−レンチウイルスベクターストラテジーは、特に、Gag(HIV+非進行ともっとも相関した因子)に対する細胞性免疫を生成するために、強力な全身性免疫応答を誘発する有効な手段であることが示された。例えば、Barouch,Fuら 2001;Letvin,Barouchら 2002;Barouch,McKayら 2003;Betts,Nasonら 2006;およびHoneyborne,Prendergastら 2007を参照のこと。さらに、単独で、およびDNA初回刺激−レンチウイルスベクター追加免疫アプローチにおいても使用されるレンチウイルスベクターは、他のウイルスベクターで遭遇した最も重大な問題;免疫後の抗ベクター免疫の生成を阻止する。
【0138】
本発明は、上記レンチウイルスベクターワクチン接種と、DNA初回刺激/レンチウイルスベクター追加免疫状況におけるDNAとの成功裏の組み合わせを提供する。DNA初回刺激/レンチウイルス追加免疫の効果を研究した。図5は、DNA初回刺激/レンチウイルスベクター追加免疫が、HIV特異的CD8+応答を増大させることを開示する。上記レンチウイルスベクター(例えば、図1)と同じ有効負荷を有する裸のDNAプラスミド(例えば、図14)を、作製した。細胞媒介性(CD8+)応答を測定するために、マウス脾細胞のICSアッセイを行った。その結果は、追加免疫ストラテジーが、追加免疫として本発明のレンチウイルスベクターを使用する、DNA初回刺激もしくはレンチウイルスベクター初回刺激(同種初回刺激/追加免疫)のいずれも、増大した免疫原性を示すことを示した。各場合において、上記初回刺激および追加免疫を、同じ有効負荷を有するように構築した。
【0139】
大規模の抗HIV免疫を提供することは、本発明の一局面である。免疫応答を測定するためにICSアッセイを使用したところ、図6は、顕著な規模の抗HIV免疫の刺激が、DNA初回刺激の後のレンチウイルスベクターワクチン接種によって誘発され得ることを示す。本発明のレンチウイルスベクターは、CD8+ Tリンパ球のうちの21%において抗HIV Gag特異的応答を誘発した。これら結果は、フローサイトメトリーを介して、種々の実験において反復して確認された。
【0140】
レンチウイルスベクター免疫は、持続した長期の抗HIV免疫を誘導する。HIV感染に対処する困難のうちの1つは、持続した抗HIV免疫を長期間誘導する能力である。図7は、CD8+細胞において本発明のレンチウイルスベクターによって誘導された抗HIV Gag応答、およびマウス血清において誘導された抗HIV IgG応答を示す。結果は、本発明のレンチウイルスベクターが、上記研究全体を通して持続した免疫原性を誘導することを示す。最大9ヶ月までの追跡を伴うさらなる試験は、上記研究機関の全体にわたって免疫が持続されることを示す。LVによる持続した抗原発現はまた、図8Dにおいて示される。ここでLV誘導性抗体応答は、経時的に増大する一方で、アデノウイルスベクターによって誘発されたものは低下する。
【0141】
図8は、本発明のレンチウイルスベクターワクチンと、他のアデノウイルスベースのワクチン候補との比較を示す。図8において例示される結果は、本発明のレンチウイルスワクチンが、上記アデノウイルスワクチンによって誘発されるものより高い抗HIV細胞性免疫および体液性免疫を誘導することを示した。図8Cは、本発明によって誘発されるHIV特異的CD4細胞の多機能性を示す。上記結果は、各HIV抗原について、CD4+細胞が、CD4免疫応答におけるアデノウイルスワクチンより顕著な増大を示すことを示した。さらに、図8Dの結果は、アデノウイルスプラットフォームと比較して、抗HIV血清抗体の持続かつ増大を示す。
【0142】
図11は、同種および異種の初回刺激/追加免疫プロトコルにおけるウイルスワクチンベクターによって生成される抗ベクター中和活性を示す。Y軸は、宿主の抗体によって中和されるウイルスベクターの割合を表す。結果は、本発明のレンチウイルスワクチンが、そのアデノウイルス対応物と類似のもしくはそれより高い抗HIV免疫を誘導する(図8および9)一方で、抗ベクター免疫に遙かに感受性が低く、従って、異種初回刺激/追加免疫におけるアデノウイルスに対するその組み合わせは、抗アデノウイルス中和問題を回避し得ることを実証する。
【0143】
図12は、2つのHIV抗原であるGagおよびPolでの刺激に応答して、サイトカイン(INFγもしくはTNFα)を分泌するCD8+細胞の%を測定することによって、上記GagおよびPol抗原に対するCD8+ 免疫応答を図示する。これらCD8+細胞は、2つの異なるDNA初回刺激プロトコル/異種追加免疫プロトコルでワクチン接種したマウスに由来した。使用した全ての免疫原(DNAおよびウイルスベクター)は、同じ有効負荷を含んだ。
【0144】
図13は、SIV(HIVの霊長類等価物)ベースのレンチウイルスワクチンベクターを5ヶ月にわたって3回投与した後の非ヒト霊長類において生成された抗SIV抗体力価を図示する。上記3回目の投与後に観察された追加免疫の効果は、複数回の投与後ですら、最小限の抗ベクター応答を明らかにしない。このことは、本発明のレンチウイルスベースのワクチンベクターが、他のウイルスベクターワクチンの使用に対する主な障害であるので、数回の免疫後に、上記ワクチンを非効率的にする抗ベクター中和抗体を誘発しないことを図示する。
【0145】
図15および図16は、ワクチンレンチウイルスベクターRNAのパッケージングのためのパッケージング細胞株ヘルパー構築物を図示する。ここでgag/polは、上記ワクチンベクターにおける有効負荷であり(図15)、gag/polは、上記ワクチンベクターにおける有効負荷ではない(図16)。
【0146】
当業者は、前述の物質および装置の多くの等価物が、容易に利用可能であり、これら実施例が、慣用的な実験法のみを使用して、その原理に従って改変され得ることを認識する。本明細書で引用される全ての参考として援用される文献(特許、特許出願、および刊行物を含む)は、以前に具体的に組み込まれいようといなかろうと、それらの全体が本明細書に参考として援用される。
【0147】
いくつかの特定の実施形態の前述の説明は、現在の知見を適用することによって、他者が、包括的な概念から逸脱することなく、このような特定の実施形態の種々の適用を容易に改変もしくは適合し得る十分な情報を提供し、従って、このような適合および改変は、上記開示される実施形態の意味およびその等価物の範囲内に包含されることが意図されるべきであるし、意図される。本明細書で使用される語句もしくは用語は、説明を目的とするのであって、限定を目的とするのではないことが理解されるべきである。図面および説明において、例示的実施形態が開示されてきたが、特定の用語が使用され得、それらは、別段示されなければ、一般的な意味および説明的な意味においてのみ使用され、限定目的で使用されるのではなく、従って、特許請求の範囲は、そのようには限定されない。さらに、当業者は、本明細書で議論される方法の特定の工程が、代わりの順序で並んでいてもよいし、工程が組み合わされてもよいことを認識する。従って、添付の特許請求の範囲が、本明細書で開示される特定の実施形態に限定されないことが意図される。
【0148】
【数1】
【0149】
【数2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンチウイルスベクターであって、
5’の長い末端反復配列および3’LTR;
該5’LTRに作動可能に連結された、第1の核酸配列;
機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列を含む、該5’LTRに作動可能に連結された、第2の核酸配列であって、ここで該RRE含有配列は、該REVコード配列の上流に位置する、第2の核酸配列;
を含み、ここで
該第1の核酸配列および該第2の核酸配列の転写は、該5’LTRによって駆動される、
レンチウイルスベクター。
【請求項2】
1つ以上の機能的に活性なレンチウイルスRNAパッケージングエレメントをコードする核酸配列をさらに含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
機能的中心ポリプリン区画(cPPT)、中心終結配列(cTS)、および3’LTR近位ポリプリン区画(PPT)エレメントをコードする核酸配列をさらに含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項4】
前記第1の核酸配列は、1種以上の目的の抗原性配列をコードする、請求項1に記載のベクター。
【請求項5】
前記1種以上の目的の抗原性配列の発現は、REV−RRE活性に依存する、請求項4に記載のベクター。
【請求項6】
前記第1の核酸配列は、Gag/Polコード配列もしくはその誘導体を含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項7】
前記第1の核酸配列は、非改変配列である、請求項6に記載のベクター。
【請求項8】
前記Gag/Polコード配列は、改変Gag/Polコード配列を含む、請求項6に記載のベクター。
【請求項9】
前記cPPT/cTSは、前記Gag/Polコード配列のうちのPolコード配列の一部である、請求項6に記載のベクター。
【請求項10】
前記機能的に活性なレンチウイルスRNAパッケージングエレメントは、Gagパッケージング配列もしくはその誘導体を含む、請求項2に記載のベクター。
【請求項11】
前記RREの3’側に位置した異種プロモーターをさらに含み、ここで該異種プロモーターは、ウイルスプロモーター、ヒトプロモーター、もしくは合成プロモーター、またはこれらの組み合わせを含む、請求項5に記載のベクター。
【請求項12】
請求項1に記載のレンチウイルスベクターを含む、薬学的組成物。
【請求項13】
被験体における免疫応答を誘導するための方法であって、該方法は、
請求項12に記載の薬学的組成物を投与する工程
を包含する、方法。
【請求項14】
前記レンチウイルスベクターは、1種以上の目的の遺伝子を発現して、免疫を強化し、前記免疫応答は、体液性免疫応答、細胞媒介性免疫応答もしくはこれらの組み合わせを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記体液性免疫応答、細胞媒介性免疫応答もしくはこれらの組み合わせは、癌、アルツハイマー病、自己免疫疾患、心血管疾患、神経学的疾患、線維症疾患、脂質代謝疾患、細胞外マトリクス関連疾患、および慢性関節変形性疾患、もしくはこれらの任意の組み合わせを含む、目的の疾患もしくは状態に特異的である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
宿主細胞におけるベクターの免疫原性を増大させる方法であって、該方法は、第1のベクター、続いて、請求項1に記載のレンチウイルスベクターを1回以上連続的に投与する工程を包含する、方法。
【請求項17】
必要とする哺乳動物における感染性の複製性ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の複製を阻害もしくは制御する方法であって、該方法は、請求項1に記載のレンチウイルスベクターを含む薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項18】
必要とする被験体におけるベクターの免疫原性を増大させる方法であって、該方法は、
a)初回刺激を投与する工程;および
b)追加免疫を連続的に投与する工程、
を包含し、ここで該初回刺激もしくは該追加免疫のうちの少なくとも一方は、請求項1に記載のレンチウイルスベクターを含む、方法。
【請求項19】
組換えレンチウイルスパッケージング細胞であって、該細胞は、
該パッケージング細胞において、目的の核酸配列を発現して、導入能力のあるウイルス様粒子を生成し得る第1の核酸分子;
を含み、ここで該細胞は、第2の核酸分子の非存在下では導入能力のあるウイルス様粒子を生じない、細胞。
【請求項20】
組換えレンチウイルスパッケージング細胞を生成する方法であって、該方法は、
細胞に、該パッケージング細胞において発現し得る核酸、導入能力のあるウイルス様粒子を生成する核酸配列;該パッケージング細胞において該目的の配列を発現し得る少なくとも1つの核酸分子を導入する工程
を包含し、ここで該パッケージング細胞は、該目的の核酸配列を発現する、導入能力のあるウイルス様粒子を生成する、
方法。
【請求項1】
レンチウイルスベクターであって、
5’の長い末端反復配列および3’LTR;
該5’LTRに作動可能に連結された、第1の核酸配列;
機能的REVコード配列およびrev応答エレメント(RRE)含有配列を含む、該5’LTRに作動可能に連結された、第2の核酸配列であって、ここで該RRE含有配列は、該REVコード配列の上流に位置する、第2の核酸配列;
を含み、ここで
該第1の核酸配列および該第2の核酸配列の転写は、該5’LTRによって駆動される、
レンチウイルスベクター。
【請求項2】
1つ以上の機能的に活性なレンチウイルスRNAパッケージングエレメントをコードする核酸配列をさらに含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
機能的中心ポリプリン区画(cPPT)、中心終結配列(cTS)、および3’LTR近位ポリプリン区画(PPT)エレメントをコードする核酸配列をさらに含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項4】
前記第1の核酸配列は、1種以上の目的の抗原性配列をコードする、請求項1に記載のベクター。
【請求項5】
前記1種以上の目的の抗原性配列の発現は、REV−RRE活性に依存する、請求項4に記載のベクター。
【請求項6】
前記第1の核酸配列は、Gag/Polコード配列もしくはその誘導体を含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項7】
前記第1の核酸配列は、非改変配列である、請求項6に記載のベクター。
【請求項8】
前記Gag/Polコード配列は、改変Gag/Polコード配列を含む、請求項6に記載のベクター。
【請求項9】
前記cPPT/cTSは、前記Gag/Polコード配列のうちのPolコード配列の一部である、請求項6に記載のベクター。
【請求項10】
前記機能的に活性なレンチウイルスRNAパッケージングエレメントは、Gagパッケージング配列もしくはその誘導体を含む、請求項2に記載のベクター。
【請求項11】
前記RREの3’側に位置した異種プロモーターをさらに含み、ここで該異種プロモーターは、ウイルスプロモーター、ヒトプロモーター、もしくは合成プロモーター、またはこれらの組み合わせを含む、請求項5に記載のベクター。
【請求項12】
請求項1に記載のレンチウイルスベクターを含む、薬学的組成物。
【請求項13】
被験体における免疫応答を誘導するための方法であって、該方法は、
請求項12に記載の薬学的組成物を投与する工程
を包含する、方法。
【請求項14】
前記レンチウイルスベクターは、1種以上の目的の遺伝子を発現して、免疫を強化し、前記免疫応答は、体液性免疫応答、細胞媒介性免疫応答もしくはこれらの組み合わせを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記体液性免疫応答、細胞媒介性免疫応答もしくはこれらの組み合わせは、癌、アルツハイマー病、自己免疫疾患、心血管疾患、神経学的疾患、線維症疾患、脂質代謝疾患、細胞外マトリクス関連疾患、および慢性関節変形性疾患、もしくはこれらの任意の組み合わせを含む、目的の疾患もしくは状態に特異的である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
宿主細胞におけるベクターの免疫原性を増大させる方法であって、該方法は、第1のベクター、続いて、請求項1に記載のレンチウイルスベクターを1回以上連続的に投与する工程を包含する、方法。
【請求項17】
必要とする哺乳動物における感染性の複製性ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の複製を阻害もしくは制御する方法であって、該方法は、請求項1に記載のレンチウイルスベクターを含む薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項18】
必要とする被験体におけるベクターの免疫原性を増大させる方法であって、該方法は、
a)初回刺激を投与する工程;および
b)追加免疫を連続的に投与する工程、
を包含し、ここで該初回刺激もしくは該追加免疫のうちの少なくとも一方は、請求項1に記載のレンチウイルスベクターを含む、方法。
【請求項19】
組換えレンチウイルスパッケージング細胞であって、該細胞は、
該パッケージング細胞において、目的の核酸配列を発現して、導入能力のあるウイルス様粒子を生成し得る第1の核酸分子;
を含み、ここで該細胞は、第2の核酸分子の非存在下では導入能力のあるウイルス様粒子を生じない、細胞。
【請求項20】
組換えレンチウイルスパッケージング細胞を生成する方法であって、該方法は、
細胞に、該パッケージング細胞において発現し得る核酸、導入能力のあるウイルス様粒子を生成する核酸配列;該パッケージング細胞において該目的の配列を発現し得る少なくとも1つの核酸分子を導入する工程
を包含し、ここで該パッケージング細胞は、該目的の核酸配列を発現する、導入能力のあるウイルス様粒子を生成する、
方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2011−517409(P2011−517409A)
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502099(P2011−502099)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/038535
【国際公開番号】WO2009/120947
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(503081933)バイレクシス コーポレイション (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/038535
【国際公開番号】WO2009/120947
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(503081933)バイレクシス コーポレイション (6)
【Fターム(参考)】
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