説明

レーザシート形成装置、粒子計測装置、レーザシート形成方法および粒子計測方法

【課題】高精度な計測を可能とするレーザシートを提供すること。
【解決手段】本発明の粒子計測装置10は、流体速度計測装置として好適に使用され、複数のレーザシートを形成するためのレーザ装置12と、偏光軸が平行な対となった第1偏光子30および第2偏光子32を含むタンデム偏光子と、第1偏光子30からの反射光を第2偏光子32に反射させる光路変更手段34とを含み、レーザ光線を、偏光軸に平行な偏光成分を透過させ、垂直な偏光成分を反射させて並列レーザビームを生成する並列ビーム生成手段(30、32、34)と、並列ビーム生成手段(30、32、34)により生成された並列レーザビームから並列したレーザシートを形成するレーザシート生成光学系36とを含み、近接して形成された並列レーザシートを、粒子を含む流体に照射して、散乱光を画像解析している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザシート作成技術に関し、より詳細には、高精度な計測を可能とするレーザシートを提供する、レーザシート形成装置、粒子計測装置、レーザシート形成方法および粒子計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、流体速度を計測する方法として粒子画像流速計(PIV)が注目されている。PIVは、通常流体内に微小な粒子を混入してシート状のレーザ光を照射し、粒子による散乱光をカメラで撮影する。その後、撮影された画像を画像解析して流体速度を求める。多くのPIVでは、一面のレーザシートが使用され、1つの2次元断面における速度を、時間的に遅延させた複数のレーザシート・パルスを形成して計測を行う。
【0003】
レーザを使用した流速計測技術はこれまでにも提案されている。例えば、特開平8−54408号公報(特許文献1)では、レーザを用いて被測定流体中の微粒子の速度を測定し、当該速度を被測定流体速度として出力する流速計が提案されている。特許文献1では、レーザ光を幅の異なる2つのレーザ光に分割するビームスプリッタと、ビームスプリッタからの分割された2つのレーザ光を測定領域に2つの幅の異なる焦点として集光させる集光手段と、2つの幅の異なる焦点からの光を受光する半導体受光素子と、半導体受光素子の出力信号の時間間隔で2つの焦点間距離を除算して流速を測定する。
【0004】
特開平5−249129号公報(特許文献2)では、レーザ装置と、レーザ装置からの出力レーザ光を2つのレーザ光に分割し、かつ偏光方向を変える偏光プリズムと、この2つのレーザ光を測定領域に2つの焦点として集光させる集光手段とを備え、2つの光電変換素子からの出力の時間間隔を測定し、2つの焦点間距離を時間間隔で除算して流速を得る流速計が開示されている。
【0005】
さらに特開2005−140756号公報(特許文献3)では、励起による屈折率の変化を光の偏向により検出する検出光照射手段と偏光検出器とを備え、屈折率検出時の時間差を用いて流体流速を計測する微細流路用流速計が開示されている。
【0006】
この他、特開2001−281263号公報(特許文献4)では、計測対象の雰囲気中で高輝度領域が形成されるようにレーザ光を交差させて照射する、少なくとも1つのレーザ装置と高輝度領域を撮影する撮像手段と、所定以上の輝度の領域を抽出し、抽出した領域を仮想粒子として出力する出力手段とを備えた計測対象可視化装置を開示している。
【0007】
特許文献1〜4では、レーザ光線を使用して粒子計測を行うことは開示するものの、レーザ光線を2つの焦点に集光させ、その間を計測対象が移動する時間を測定し焦点間距離を移動時間で除算して速度を取得するか、またはレーザ光線を交差させてガウス分布の測定領域を形成させ、当該測定領域を複数形成して計測領域を移動する時間間隔で除算することで粒子速度を取得するものである。
【0008】
一方、レーザシートを使用して計測を行う技術も提案されており、例えば特開2003−84005号公報(特許文献5)では、レーザシート形成用走査光学系とレーザシート上の2次元粒子軌跡画像を撮像する画像撮像手段と、レーザ発信装置と画像撮像手段のタイミングを取って同期化駆動するタイミングコントロール手段とを備える流動計測システムが開示されている。
【0009】
さらに、特開2004−20385号公報(特許文献6)では、レーザ装置と、レーザシート生成光学系と1台または複数台のCCDあるいはCMOS撮像素子を搭載した高速ビデオカメラを備え、光源と画像取得システムとを同期させ、微少時間差を与えて連続撮影し、時間スペクトルを生成し、生成した時間スペクトルをフーリエ変換・フィルタリング・逆フーリエ変換することにより時間スペクトルを再生して流体速度を計測するシステムが開示されている。
【0010】
また、特開2005−140528号公報(特許文献7)では、トレーサ粒子と気泡とを含む気液2相流の流体にレーザ光を照射するレーザ発振装置を備え、トレーサ粒子の発光と気泡からの散乱光とを分離して画像情報を取得して計測を行う、流体計測装置を開示する。
【0011】
この他、特開2006−17616号公報(特許文献8)では、レーザシートの2次元粒子軌跡画像を撮影する画像撮影手段と撮影のタイミングを同期させる制御手段とを備え、放射線環境下で撮影を行う流体流動計測システムを開示している。
【特許文献1】特開平8−54408号公報
【特許文献2】特開平5−249129号公報
【特許文献3】特開2005−140756号公報
【特許文献4】特開2001−281263号公報
【特許文献5】特開2003−84005号公報
【特許文献6】特開2004−20385号公報
【特許文献7】特開2005−140528号公報
【特許文献8】特開2006−17616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、レーザを利用した流体計測技術は種々提案されているものの、レーザシートを使用したものではなく、またレーザシートを使用したとしても1平面のレーザシートを使用するものである。この理由として種々考えられるが、2平面のレーザシート光の生成に必要となる平行なレーザ光を生成するために、連続するパルスを与えるレーザシート分の台数のパルスレーザ、または内部でダブルパルス化されたレーザをレーザシート数分だけ用意しなければならないことからシステムコストが高まってしまうこと、およびレーザシートを空間的に有意義な領域に近接して、充分平行に形成することが必要とされていたこと、などの問題点を挙げることができる。
【0013】
一方、2平面PIVとして参照される計測法は、微小間隔だけ離間させた2つのレーザシートを形成させ、2つのレーザシートで同時に速度計測することにより、計測平面に沿った方向の他、計測平面に垂直な方向の速度変化も計測可能とし、レーザシートによる従来の2次元的測定ばかりではなく、多点での同時的2次元観測による3次元流速情報を提供することが可能となる。
【0014】
さらに、2つのレーザシートの間隔をレーザ装置の大幅な設定変更を伴うことなく調節することができれば、2次元ばかりではなく3次元的に連続した流速計測を行うことが可能となり、従来と同程度の装置/スペースを保ちながら、より高精度な流体速度計測のために使用できる粒子計測装置、粒子計測方法を提供できることが期待できる。
【0015】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明は、従来と同一のレーザ装置およびレーザシート生成光学系を使用しながら最小の光学要素を追加するだけで近接した複数のレーザシートを形成し、粒子計測を可能とするレーザシート形成装置、粒子計測装置、レーザシート形成方法および粒子計測方法を提供することを目的とする。
【0016】
さらに、本発明は、複数のレーザシートの間隔を、主要な光学要素の大幅な変更を伴わずに外部制御することを可能とするレーザシート形成装置、粒子計測装置、レーザシート形成方法および粒子計測を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決するために、レーザ装置を、レーザシートを提供するために必要な台数以下使用し、近接した複数のレーザシートを効率的に形成する。本発明は、上記目的を達成するために偏光軸が平行とされた第1偏光子、第2偏光子および光路変更手段を備えるタンデム偏光子を使用する。レーザ光線は、第1偏光子により互いに垂直な偏光成分に分離され、一方は、第1偏光子を透過し、他方は、第1偏光子により反射され、光路変更手段により第2偏光子に再帰的に反射され、近接した並列レーザビームとされる。
【0018】
生成された並列レーザビームは、シリンドリカル・レンズなどを備えるレーザシート生成光学系へと入射され、入射した間隔の2つのレーザシートが形成され、粒子からの散乱光計測のために使用できる。
【0019】
本発明では、反射ミラーと、タンデム偏光子の各偏光子との間の空間的配置を制御することにより、外部制御により、間隔の異なる並列するレーザシートが提供できる。
【0020】
さらに、本発明によれば、最小のレーザ装置および光学系を使用して近接した略平行のレーザシートを提供でき、この並列したレーザシートの間隔は、光路変更手段により調節可能とされる。
【0021】
すなわち、本発明によれば、複数のレーザシートを形成するためのレーザ装置と、
偏光軸が平行な対となった第1偏光子および第2偏光子を含むタンデム偏光子と、前記第1偏光子からの反射光を前記第2偏光子に反射させる光路変更手段とを含み、前記レーザ光線を、前記偏光軸に平行な偏光成分を透過させ、垂直な偏光成分を反射させて並列レーザビームを生成する並列ビーム生成手段と
を含む、レーザシート形成装置が提供される。
【0022】
本発明では、前記並列ビーム生成手段は、前記第2偏光子へと反射される前記反射光の光軸を変化させる光軸変更手段を含むことができる。本発明では、前記並列ビーム生成手段の上流側に配置され、前記並列ビーム生成手段の前記偏光軸に相対して回転させる1/2波長板と、前記並列ビーム生成手段により生成された前記並列レーザビームから並列したレーザシートを形成するレーザシート生成光学系と、を含むことができる。
【0023】
本発明では、さらに、前記第1の1/2波長板の下流側、かつ前記並列ビーム生成手段の上流側に配置され、前記並列ビーム生成手段に入射される複数の偏光面を前記偏光軸に相対して回転する第2の1/2波長板を含むことができる。本発明では、前記レーザ装置は、形成される前記レーザシートの数以下とすることができる。本発明では、前記レーザシートの離間幅が可変とすることができる。
【0024】
本発明によれば、上記いずれか1項に記載のレーザシート形成装置と、
各偏光面を分離して粒子からの散乱光を測定する撮像手段と
を含む、粒子計測装置が提供される。本発明の前記粒子計測装置は、流体速度計測装置とすることができる。
【0025】
本発明によれば、並列したレーザシートの形成方法であって、
レーザ装置からのレーザ光を、偏光軸が平行な対となった第1偏光子および第2偏光子と前記第1偏光子からの反射光を前記第2偏光子に反射させる光路変更手段とを含むタンデム偏光子を備える並列ビーム生成手段に入射させて、前記偏光軸に平行な偏光成分を透過させ、垂直な偏光成分を反射させて並列レーザビームを生成するステップと、
レーザシート生成光学系に前記並列レーザビームを入射させ、並列したレーザシートを形成するステップと
を含む、レーザシート形成方法が提供できる。
【0026】
本発明では、前記レーザ装置からのレーザ光の偏光面を、前記並列ビーム生成手段の前記偏光軸に相対して回転させる第1の1/2波長板に前記レーザ装置からの前記レーザ光を入射して偏光面を回転させるステップと、
前記第1の1/2波長板の下流側、かつ前記並列ビーム生成手段の上流側に配置された第2の1/2波長板により、複数の偏光面を前記偏光軸に相対して回転するステップとを含むことができる。本発明によれば、さらに、光軸変更手段により、前記第2偏光子へと反射される前記レーザ光の光軸を変化させるステップを含むことができる。
【0027】
本発明によれば、
レーザ装置からのレーザ光を、偏光軸が平行な対となった第1偏光子および第2偏光子を含むタンデム偏光子と、前記第1偏光子からの反射光を前記第2偏光子に反射させる光路変更手段とを含む並列ビーム生成手段に入射させて、前記偏光軸に平行な偏光成分を透過させ、垂直な偏光成分を反射させて並列レーザビームを生成するステップと、
レーザシート生成光学系に前記並列レーザビームを入射させ、並列したレーザシートを形成するステップと、
撮像手段により前記各偏光面を分離して粒子からの散乱光を測定するステップと
を含む、粒子計測方法が提供される。
【0028】
本発明では、光軸変更手段により、前記第2偏光子へと反射される前記レーザ光の光路を変化させ、前記並列レーザビームの離間幅を変化させるステップと、
前記レーザ装置からのレーザ光の偏光面を、前記並列ビーム生成手段の前記偏光軸に相対して回転させる第1の1/2波長板に前記レーザ装置からの前記レーザ光を入射して偏光面を回転させるステップとを含むことができる。本発明では、さらに、前記第1の1/2波長板の下流側、かつ前記並列ビーム生成手段の上流側に配置された第2の1/2波長板により、複数の偏光面を前記偏光軸に相対して回転するステップを含むことができる。本発明では、さらに、流体中に存在する粒子を計測することにより、流体速度を計測するステップを含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を図面に示した特定の実施形態を以て説明するが、本発明は、図面に示した特定の実施形態に限定されるものではない。図1は、本発明のレーザシート形成装置を含む粒子計測装置の実施形態を示す。図1に示した粒子計測装置10は、本発明の特定の実施形態では、流体速度計測装置として構成することができる。しかしながら、本発明は、粒子からの散乱光を使用して、粒子からの散乱光を使用する粒子濃度、粒径、粒子分布などを測定する粒子計測装置に適用することができる。
【0030】
図1は、本発明による粒子計測装置10の第1の実施形態を示した図である。図1に示した粒子計測装置10は、流体速度計測装置として構成され、流体中に存在する粒子からの散乱を使用して流体の速度を計測している。レーザ装置12は、本発明の特定の実施形態では、26.7kHzの繰返し周波数で駆動されるNd:YAGレーザとされており、シングルパルス駆動でも良く、ダブルパルス駆動でも良く、特に限定されるものではない。しかしながら、高速・高精度測定のためには、例えば、特開2004−20385号公報に開示のタイミングパルスを発生させることができる、レーザ装置を使用することが好ましい。なお、本発明では上述したNd:YAGレーザ以外にも、Arイオンレーザ、Cu蒸気レーザなどの気体レーザ、半導体レーザなど、偏光面の規定されたレーザ装置であれば、いかなるレーザ装置でも用いることができる。
【0031】
レーザ装置12からは、紙面垂直方向の偏光面を有するレーザ光18が射出され、ビームサンプラー14を通過して、1/2波長板16に到達する。ビームサンプラー14で反射されたレーザ光は、光電変換素子26により光電変換され、レーザ光のモニタとして使用される。1/2波長板16は、その光学主軸(高速軸または進相軸)がレーザ光の偏光面をπ/4ラジアン回転させるようにアラインメントされている。ビームサンプラー14を通過して、レーザ光はタンデム偏光子30、32に入射する。タンデム偏光子30は、偏光面に対してπ/4ラジアン傾斜した偏光軸が与えられている。レーザ光18が、タンデム偏光子30に入射すると、偏光軸に対して平行成分であるP||偏光成分20および垂直成分であるP偏光成分22が分離される。タンデム偏光子30では、P||偏光成分20が透過し、P偏光成分22が等しい強度で反射されて、再度、タンデム偏光子32により透過および反射が発生し、並列レーザビームが生成される。
【0032】
タンデム偏光子30により反射されたP偏光成分22は、光路変更手段として提供される反射ミラー34でタンデム偏光子32へと再帰的に反射される。なお、タンデム偏光子30、32および反射ミラー34は、本発明の並列ビーム生成手段を構成する。このとき、反射ミラー34は、P偏光成分22がタンデム偏光子32の表面でタンデム偏光子30を通過したP||偏光成分20から所定の距離だけ離間した位置で反射するようにアライメントされる。タンデム偏光子32で反射されたP偏光成分22およびタンデム偏光子32を通過したP||偏光成分20は、ともにレーザシート生成光学系36に入射される。なお、本発明では、反射ミラー34に代えて、偏光子など同様の機能を有する光学要素を使用することができる。
【0033】
レーザシート生成光学系36は、シリンドリカル・レンズなどの光学要素を備えており、入射したレーザ光線を2次元的に広がったレーザシートに変換する。レーザシート生成光学系36を通過した並列レーザシートは、さらにシリンドリカル・レンズ38により平行度が調整され、略平行なレーザシートとされて測定セル40内の測定スポットSに照射される。
【0034】
測定セル40に近接して偏光ビームスプリッタ(PBS)42、48を介して、撮像手段として使用されるCMOSカメラ44、46、50、52が配置されている。CMOSカメラ44、46、50、52は、測定セル40の測定スポットSからの散乱光を検出し、2平面PIV計測データを取得する。CMOSカメラ44、46、50、52としては、本発明では、例えば、512×512ピクセル以上、シャッタ周波数1kHz以上の高速CMOSカメラを使用することが好ましい。また、CMOSカメラ44、46、50、52は、タイミング制御装置58により同期制御され、時間分解測定を行う。
【0035】
本発明では、近接したレーザシートからの散乱光は、偏光面が異なっているので、PBS42により分離され、CMOSカメラ44、46により計測することができる。また、CMOSカメラ50、52についても同様に、各レーザシートからの散乱光を区別して測定が行われる。なお、本発明では、測定光学系の配置および測定シーケンスなどについては特に限定されるものではない。
【0036】
各CMOSカメラ44、46、50、52の出力は、信号/トリガライン54を介して高速フーリエ変換・フィルタ処理・逆フーリエ変換および画像処理を実行するコンピュータ装置56に取込まれる。コンピュータ装置56は、取込んだデータを、例えば特開2004−20385号公報に開示された方法を使用して処理し、2次元画像、または3次元画像として流体速度計測結果を出力する。
【0037】
図1に示した第1の実施形態では、レーザ12から出力されたレーザ光をタンデム偏光子30、32を使用して効率的に分離し、最小の光学系で近接した並列レーザシートを提供することができる。
【0038】
図2には、本発明の他の実施形態を示す。図2に示す実施形態では、粒子計測装置70は、近接する並列レーザシートを生成するための2台のレーザ装置72、74を備えている。レーザ装置74から射出された第1レーザ光は、1/2波長板76に導入され、反射ミラー78により、レーザ装置72から射出された第2レーザ光と偏光子80により同軸または近接して平行にアライメントされ、反射ミラー82へと導入される。偏光子80は、第2レーザ光の偏光面に沿った偏光軸を備え、第2レーザ光を高効率で通過させる。一方、1/2波長板76は、本発明の特定の実施形態では、その光学主軸が第1レーザ光の偏光面に対して+π/4ラジアン回転してアライメントされる。このため、第1レーザ光の偏光面は、1/2波長板76を通過した後、第2レーザ光の偏光面から−π/2ラジアン(90°)回転した偏光面とされる。第1レーザ光は、その後、偏光子80へと反射され、偏光子80は、第1レーザ光を反射させ、同時に第2レーザ光を透過させることにより、第1レーザ光および第2レーザ光の偏光面を含むレーザ光として反射ミラー82へと伝搬してゆく。
【0039】
その後、レーザ光は、反射ミラー82で反射された後、ビームサンプラー84を通過して第2の1/2波長板に導入される。第2の1/2波長板28は、その光学主軸が第1レーザ光の偏光面を、+3/4πラジアン回転させ、第2レーザ光の偏光面を−π/4ラジアン回転させるようにアライメントされている。このため、第2の1/2波長板28を通過した後、第2レーザ光は、第1レーザ光に対して90°ずれた偏光面が与えられる。その後、変調レーザ光は、タンデム偏光子30、32に入射する。
【0040】
形成された並列レーザビームは、レーザシート生成光学系36へと入射され、並列レーザシートが与えられる。さらに、図2に示した本発明の実施形態では、2台のレーザ装置で、偏光面が異なる2つの並列レーザシートを提供でき、2平面PIV計測を、既存のシステムに対して最小の光学系を追加するだけで、低コスト、省スペースで効率的に行うことができる。なお、図2に示した実施形態では、1/2波長板76を、レーザ装置72の外部ではなく内部に配置して外見上、1/2波長板をレーザ装置72内に設置することもできる。
【0041】
図3は、図1および図2で説明した本発明における変調レーザ光が含む偏光面の実施形態を示した図である。図3(a)、図3(b)が偏光面を1つだけ含むレーザ光の場合にも適用できる光ビーム分離機構を説明した図(図1の実施形態に対応する。)であり、図3(c)〜図3(e)が直交する複数の偏光面を含む場合(第2実施形態)に使用することができる、第2の光ビーム分離機構を説明した図である。なお、図3(a)、(b)で説明する実施形態においては、レーザ装置は、シングルパルス・レーザでも、ダブルパルス・レーザでも使用することができるし、また複数の偏光面を含むレーザ光を分離する場合にも適用することができる。本発明の、並列ビーム生成手段の光ビーム分離機構の第1の実施形態では、図3(a)に示すように、光学主軸Pa1を、偏光面に対して+π/8ラジアンまたは−π/8ラジアン回転させた1/2波長板で、レーザビームの偏光面を+π/4ラジアンまたは−π/4ラジアン回転させる。その後、タンデム偏光子30の偏光軸Pを図2(b)のように、偏光面に対してπ/4ラジアンだけ傾斜して配置し、45°の角度でレーザビームを入射させることで、偏光軸に対して平行な成分P||および垂直の成分Pに分離する。
【0042】
一般に、偏光子の偏光軸に対して偏光が角度θだけ傾斜して入射したとき、透過光強度は、偏光分離が理想的である場合、下記式(1)で与えられる。
【0043】
【数1】



透過光を除く入射光は、反射される。また、透過光は、偏光子の偏光軸で規定される偏光面を有し、一方、反射光は、偏光軸に直交する偏光面を有する。したがって、タンデム偏光子30、32に入射させるレーザ光の偏光方向を、偏光軸に対してπ/4ラジアン傾斜させておくことにより、互いに垂直な偏光面を含む等強度のレーザビームを形成することができる。
【0044】
その後、平行なP||偏光成分は、タンデム偏光子32を通過し、垂直なP偏光成分は、タンデム偏光子32により反射され、レーザシート生成光学系36に入射される時点では、偏光面が直交した並列レーザビームが形成される。形成された並列ビームは、レーザシート生成光学系36に入射され、並列レーザシートを形成する。なお、図3(b)で示した実施形態は、特に1/2波長板を使用することなく、レーザ装置からの偏光面が良好に規定されている限り、タンデム偏光子の偏光軸のアライメント調節により、レーザ光線の偏光面と、タンデム偏光子の偏光軸とが45°の角度をなすように設置することでも達成することができる。
【0045】
図3(c)〜図3(e)は、図3(a)および図3(b)とは異なり、偏光子の偏光軸をレーザ光の偏光面に一致させて分離させる実施形態である。第1レーザ光60および第2レーザ光62は、図3(c)に示すように、各レーザ装置から射出した段階では共通の偏光面を有している。第1レーザ光60は、図2の矢線Aで示されるポイントでは、光学主軸Pa2を有する第1の1/2波長板16により相対的にπ/2ラジアン(90°)偏光面が回転され、図3(d)に示す偏光面とされる。第2の1/2波長板28は、その光学主軸Pa3が第2レーザ光62の偏光面を相対的にπ/4ラジアン回転させ、かつ第1レーザ光60を、第1の1/2波長板16とは相対する回転方向に3/4πラジアンだけ偏光面を回転させるようにアライメントされている。
【0046】
この結果、図2の矢線Bで示したポイントでは、図3(e)で示すように、第1レーザ光60および第2レーザ光62のそれぞれの偏光面は、π/4ラジアン(45°)回転され、直交する偏光面を含むレーザ光が提供される。
【0047】
また、本発明では、必ずしも偏光軸Pを第1レーザ光の偏光面と合わせる必要はない。まず、シングルパルス・レーザ装置を2台使用し、それぞれのレーザ光の偏光面を、偏光軸Pについて互いにπ/4ラジアン(45°)ずらしておくことでも、同様の偏光面構成、および透過光および反射光を与えることができる。さらに図2に示した実施形態について説明すると、図3(e)に示した偏光面とされた後、直交する偏光面を含むレーザ光は、タンデム偏光子30に入射する。このとき、タンデム偏光子30の偏光軸Pを第1レーザ光60の偏光方向となるようにアライメントすることで、第1レーザ光60を透過させ、第2レーザ光62を反射させることができる。この場合、第2レーザ光62は、タンデム偏光子32による反射効率分だけ強度が低下するものの、一方のレーザ光線だけを複数回反射させることによる並列レーザビームの強度差を最小にしたままで並列レーザシートを生成することができる。
【0048】
本発明では、タンデム偏光子30、32に入射される第1レーザ光および第2レーザ光の偏光面成分は必ずしも直交する必要はなく、測定系により各レーザシートからの散乱光を検出できる限り、測定系、光学要素、S/N比に応じて適宜設定することができるし、また各レーザシートの強度比についても測定系の設定により対応できる限り、必ずしも同程度の強度とされずとも良い。
【0049】
また、本発明の粒子計測装置では、光軸変更手段として使用される、反射ミラー34を、ステッピング・モータにより並進運動させることで、間隔の異なる並列レーザシートを外部的に制御して形成することができる。このため、この実施形態では、所定の空間範囲内におけるほぼ同時的な3次元粒子計測を行うことを可能とし、計測範囲および計測情報をより高精度に得ることができる。
【0050】
なお、本発明の粒子計測装置を流体速度計測装置として使用する場合、1レーザシートあたりの測定には、2パルスを要する。レーザ装置として26.7kHzのレピテーション・レートのレーザ装置を使用すると、最高、13.4kHz(測定間隔=74.6μs)間隔で3次元空間の流体速度計測を行うことが可能となり、高精度の流体速度計測装置が提供できる。
【0051】
図4は、本発明で生成された並列レーザシートの近接性を、並列レーザシートの第1レーザシートの水平偏光および垂直偏光成分について観測したときの強度プロファイル(○、△)および第2レーザシートを水平偏光および垂直偏光成分について観測した時(●、黒三角)の強度プロファイルを示す。また、図4には、破線で第1レーザシートの強度をフィッティングした結果を示す。同様に、実線で第2レーザ光の強度分布をフィッティングした結果を示す。図4に示されるように、2つのレーザシートは、約600μmのピーク間隔で離間しており、その幅(FWHM)は、約500μmであった。
【0052】
図5は、本発明のレーザシート形成装置を使用して生成された並列レーザシートのレーザシート面内で入射方向に対して垂直な方向の強度分布を示した図である。図5中、○および●は、レーザシートの水平偏光の強度分布であり、■および□は、垂直偏光の強度分布を、垂直方向の位置に対してプロットした図である。図5に示すように、第1レーザ光および第2レーザ光について水平偏光成分に関して垂直方向にわずかにレーザ強度が異なるものの、両レーザシートはほとんど同一の特性を有していることがわかる。また、垂直偏光成分については、どちらのレーザシートについても良好な均一性が得られていることが示され、本発明により均一な強度特性を有する並列レーザシートが得られることが示された。図4および図5に示すように、本発明により、シート幅程度にまで近接した、ほぼ平行のレーザシートが提供できたことが示された。
【0053】
図6は、本発明で形成された並列レーザシートを使用して計測した流体速度ベクトル分布および計測した流体速度から算出した渦度分布(濃淡)の結果を示す。図6は、粒子を含む流体からの散乱を、レーザシート間隔を約600μmに設定し、(時間分解能を7.9kHzとして流体速度計測を行い、計測結果のある時刻をt=0(図6(a))の基準として、t=253μs(図6(b))およびt=506μs(図6(c))後の流体速度計測結果を示したものである。図6に示されるように、2面のレーザシートからの粒子散乱光が明確に分離されて観測されるのが示された。
【0054】
本発明ではレーザシートの数を特に限定するものではなく、特定の用途および目的に応じて適宜選択して1レーザシートについて最小コストで、近接した並列レーザシートを増加することができる。さらに、本発明において、レーザシート生成光学系をレーザ光の入射方向に等価なシリンドリカル・レンズ系を使用する光学系を用いることにより、容易に並列レーザシートの離間幅に対する調整マージンを広げることができる。
【0055】
これまで本発明を図面に示した実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、他の実施の形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように本発明によれば、従来と同一のレーザ装置およびレーザシート形成光学系を使用しながら最小の光学要素を追加するだけで、近接した複数のレーザシートを形成し、流体速度計測を可能とするレーザシート形成装置、粒子計測装置、レーザシート作成方法および粒子計測方法を提供することができる。
【0057】
さらに、本発明によれば、複数のレーザシートの間隔を、主要な光学要素の大幅な変更を伴わずに外部制御することを可能とする、レーザシート形成装置、粒子計測装置、レーザシート作成方法および粒子計測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の粒子計測装置の実施形態を示した図。
【図2】本発明による粒子計測装置の第2の実施形態を示した図。
【図3】本発明のレーザ光の偏光分離機能を説明した図。
【図4】本発明で生成される並列レーザシートの強度プロファイルを示したプロット。
【図5】本発明で生成される並列レーザシートの強度プロファイルを示したプロット。
【図6】本発明の粒子計測装置による測定例を示した図。
【符号の説明】
【0059】
10…粒子計測装置、12…レーザ装置、14…ビームサンプラー、16…1/2波長板、18…レーザ光、20…P||偏光成分、22…P偏光成分、26…光電変換素子、28…1/2波長板、30、32…タンデム偏光子、34…反射ミラー、36…レーザシート生成光学系、38…シリンドリカル・レンズ、40…測定セル、42…PBS、44、46…高速CMOSカメラ、48…PBS、50、52…高速CMOSカメラ、54…信号/トリガライン、60…第1レーザ光、62…第2レーザ光、70…粒子計測装置(第2の実施形態)、72…レーザ装置、74…レーザ装置、76…1/2波長板、78…反射ミラー、80…偏光子、82…反射ミラー、84…ビームサンプラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレーザシートを形成するためのレーザ装置と、
偏光軸が平行な対となった第1偏光子および第2偏光子を含むタンデム偏光子と、前記第1偏光子からの反射光を前記第2偏光子に反射させる光路変更手段とを含み、前記レーザ光線を、前記偏光軸に平行な偏光成分を透過させ、垂直な偏光成分を反射させて並列レーザビームを生成する並列ビーム生成手段と
を含む、レーザシート形成装置。
【請求項2】
前記並列ビーム生成手段は、前記第2偏光子へと反射される前記反射光の光軸を変化させる光軸変更手段を含む、請求項1に記載のレーザシート形成装置。
【請求項3】
前記並列ビーム生成手段の上流側に配置され、前記並列ビーム生成手段の前記偏光軸に相対して回転させる1/2波長板と、前記並列ビーム生成手段により生成された前記並列レーザビームから並列したレーザシートを形成するレーザシート生成光学系と、を含む、請求項1または2に記載のレーザシート形成装置。
【請求項4】
さらに、前記第1の1/2波長板の下流側、かつ前記並列ビーム生成手段の上流側に配置され、前記並列ビーム生成手段に入射される複数の偏光面を前記偏光軸に相対して回転する第2の1/2波長板を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザシート形成装置。
【請求項5】
前記レーザ装置は、形成される前記レーザシートの数以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザシート形成装置。
【請求項6】
前記レーザシートの離間幅が可変である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザシート形成装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザシート形成装置と、
各偏光面を分離して粒子からの散乱光を測定する撮像手段と
を含む、粒子計測装置。
【請求項8】
前記粒子計測装置は、流体速度計測装置である、請求項7に記載の粒子計測装置。
【請求項9】
並列したレーザシートの形成方法であって、
レーザ装置からのレーザ光を、偏光軸が平行な対となった第1偏光子および第2偏光子と前記第1偏光子からの反射光を前記第2偏光子に反射させる光路変更手段とを含むタンデム偏光子を備える並列ビーム生成手段に入射させて、前記偏光軸に平行な偏光成分を透過させ、垂直な偏光成分を反射させて並列レーザビームを生成するステップと、
レーザシート生成光学系に前記並列レーザビームを入射させ、並列したレーザシートを形成するステップと
を含む、レーザシート形成方法。
【請求項10】
前記レーザ装置からのレーザ光の偏光面を、前記並列ビーム生成手段の前記偏光軸に相対して回転させる第1の1/2波長板に前記レーザ装置からの前記レーザ光を入射して偏光面を回転させるステップと、
前記第1の1/2波長板の下流側、かつ前記並列ビーム生成手段の上流側に配置された第2の1/2波長板により、複数の偏光面を前記偏光軸に相対して回転するステップとを含む、請求項9に記載のレーザシート形成方法。
【請求項11】
さらに、光軸変更手段により、前記第2偏光子へと反射される前記レーザ光の光軸を変化させるステップを含む、請求項9または10のいずれか1項に記載のレーザシート形成方法。
【請求項12】
レーザ装置からのレーザ光を、偏光軸が平行な対となった第1偏光子および第2偏光子を含むタンデム偏光子と、前記第1偏光子からの反射光を前記第2偏光子に反射させる光路変更手段とを含む並列ビーム生成手段に入射させて、前記偏光軸に平行な偏光成分を透過させ、垂直な偏光成分を反射させて並列レーザビームを生成するステップと、
レーザシート生成光学系に前記並列レーザビームを入射させ、並列したレーザシートを形成するステップと、
撮像手段により前記各偏光面を分離して粒子からの散乱光を測定するステップと
を含む、粒子計測方法。
【請求項13】
光軸変更手段により、前記第2偏光子へと反射される前記レーザ光の光路を変化させ、前記並列レーザビームの離間幅を変化させるステップと、
前記レーザ装置からのレーザ光の偏光面を、前記並列ビーム生成手段の前記偏光軸に相対して回転させる第1の1/2波長板に前記レーザ装置からの前記レーザ光を入射して偏光面を回転させるステップとを含む、請求項12に記載の粒子計測方法。
【請求項14】
さらに、前記第1の1/2波長板の下流側、かつ前記並列ビーム生成手段の上流側に配置された第2の1/2波長板により、複数の偏光面を前記偏光軸に相対して回転するステップを含む、請求項13に記載の粒子計測方法。
【請求項15】
さらに、流体中に存在する粒子を計測することにより、流体速度を計測するステップを含む、請求項12〜14のいずれか1項に記載の粒子計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−64697(P2008−64697A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245064(P2006−245064)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】