説明

レーザマーキング装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電子部品,機構部品,工具,プレス型などの工業製品,貴金属,装身具等に文字,数字,図形などを高速でマーキングするレーザマーキング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、レーザマーキング装置は半導体や電子部品のみならず多種類の製品の製品番号,分類記号,図形などをマーキングするための方法として用いられている。
【0003】以下に従来のレーザマーキング装置について説明する。図6は従来のレーザマーキング装置の加工部材の搬送方法の例を示すものである。図6において1はレーザマーカ、2は加工部材搬入用の主搬送路、3a〜3dは加工部材の貯蔵装置、4a〜4dは加工部材搬入用の副搬送路、5は加工部材搬出用の主搬送路、6a〜6dは加工済部材の貯蔵装置、7a〜7dは加工部材搬出用の副搬送路である。
【0004】以上のように構成されたレーザマーキング装置の加工部材の搬送方法について、以下その動作について説明する。
【0005】まず、貯蔵装置3dから副搬送路4dを経て主搬送路2に搬送された加工部材をレーザマーカ1まで搬送する場合の搬送方法について説明する。
【0006】貯蔵装置3dより取り出した加工部材を副搬送路4dへ移す。次に副搬送路4dから主搬送路2上へ加工部材を移した後、主搬送路2上の加工部材を搬送する。この動作を複数回にわたって間歇的に返すことで加工部材がレーザマーカ1の位置へ到達するとレーザマーキング処理が開始される。レーザマーキング処理が完了すると上記動作と同じように加工済の加工部材が搬出用の主搬送部5より搬出用の副搬送部7aを経由して貯蔵装置6aへ収納される。
【0007】次に図7は従来のレーザマーキング装置で複数個の加工部材をマーキングする場合の例を示すものである。図7において8はレーザ発振器、9は光ファイバ、10はレーザビーム分岐光学系、11a,11bはレーザビーム、12a,12bは反射鏡、13a,13bは加工部材、14a,14bはレンズである。
【0008】以上のように構成されたレーザマーキング装置について、以下その動作について説明する。
【0009】レーザ発振器8のレーザ発振端に光ファイバ9の一端が接続され、この光ファイバ9の他端は、レーザビーム分岐光学系10に接続されている。このレーザビーム分岐光学系10により、レーザ発振器8から発振され、光ファイバ9を通ってレーザビーム分岐光学系10に伝送される単一レーザビームを2本のレーザビーム11a,11bに分岐し、反射鏡12a,12bおよびレンズ14a,14bを経由して複数個の加工部材13a,13bがマーキングされる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記の従来の加工部材の搬送方法の構成では加工部材搬入用および搬出用の主搬送路2,5と複数個の加工部材の貯蔵装置3a〜3dと貯蔵装置6a〜6dと主搬送路2,5間で加工部材を搬送する複数個の副搬送路4a〜4d,7a〜7dがあり複雑な構成となっている。また、この搬送方法では加工部材の位置決め部がないため加工部材へのマーキング位置精度が問題となる。
【0011】次に、従来の複数個の加工部材をマーキングする場合の構成ではレーザ発振器8で発振されたレーザビームをレーザビーム分岐光学系10で複数のレーザビーム11a,11bに分岐するという問題点を有していた。
【0012】また、従来の技術では加工部材13の供給および取出し時間,位置決め時間,マーキング確認時間および多面体や円筒形加工部材の複数個所へのマーキングの場合、1面マーキング完了後次面への割出し時間の間マーキングを停止しなければならないという問題を有していた。
【0013】本発明は上記従来の問題点を解決し、簡単な構成で確実なマーキングが行えるレーザマーキング装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために本発明は、割出し回転されるターンテーブルと、このターンテーブルの周囲の第1ステーションに設けられ、加工部材の供給、取出しを行う供給、取出し部と、前記ターンテーブルの周囲の第2ステーションに設けられ、加工部材の保持位置の位置決めを行う位置決め部と、前記ターンテーブルの周囲の第3ステーションに設けられ、加工部材にレーザを照射してレーザマーキングを行うレーザマーキング部と、前記ターンテーブルの周囲の第4ステーションに設けられ、マーキングの確認を行うマーキング確認部とを備え、前記ターンテーブルの第1〜第4ステーションに対応する部分にそれぞれ部品保持部を設けるとともに、前記第3ステーションには部品保持部を回転させる部材割出部を設けた構成としたものである。
【0015】
【作用】この構成によって、簡単な搬送システムを実現し、ターンテーブル上に位置決め部を設けることで加工部材へのマーキング位置精度が向上し、また、一系統のレーザビームで複数個の加工部材をマーキングし、レーザマーキング停止時間を大幅に削減できるとともに、多面体や円筒形の加工部材の複数個所へのマーキングが可能となる。
【0016】
【実施例】以下、本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。
【0017】図1は本発明のレーザマーキング装置の一実施例を示すものである。図1において、21は加工部材の貯蔵部、22は主搬送路、23は供給・取出し部、24a〜24bはチャック、25はターンテーブル、26a〜26dは部材保持部、27は位置決め部、28はレーザ発生部、29はレーザマーキング部、30は部材割出し部、31はマーキング確認部、32はマーキング済加工部材の貯蔵部である。
【0018】なお、本実施例は多面体の加工部材であり、また、ターンテーブル25上に部材保持部26a〜26dが4ヵ所あり、各箇所に3個ずつ計12個の部材保持部がある。
【0019】以上のように構成されたレーザマーキング装置について以下その動作を説明する。
【0020】まず加工部材が加工部材の貯蔵部21より加工部材の主搬送路22(たとえばフリーフローコンベア)へ移替えられる。主搬送路22上に並んだ複数個の加工部材はチャック24aで保持し、供給・取出し部23でターンテーブル25上の部材保持部26aへ移替えられると同時に複数個(本実施例では3個)の加工済の部材がチャック24bで保持され、供給・取出し部23でターンテーブル25上の部材保持部26aより主搬送路22へ移替えられる。
【0021】複数個の加工部材が主搬送路22よりターンテーブル25上の部材保持部26aに移替えられた後、ターンテーブル25が回転割出しされ、部材保持部26a上の複数個の加工部材が位置決め部27へ移動する。部材保持部26a上の複数個の加工部材が位置決め部27で高さ方向および回転方向の位置決めがなされる。高さ方向の位置決めは複数個の加工部材の上部を押すことで、また、回転方向の位置決めは、部材保持部26aを回転することで部材保持部26a上の複数個の加工部材をそれぞれ回転させ、位置決め位置で各加工部材を停止させ位置決めする。位置決め完了後、ターンテーブル25が回転割出しされ、部材保持部上の複数個の加工部材がレーザマーキング部29へ移動する。部材保持部26a上の複数個の加工部材の1個の第1面にレーザ発生部28からのレーザ光を照射しレーザマーキングを施す。レーザマーキング完了後隣りの加工部材の第1面にレーザマーキングを施す。この間先にレーザマーキング完了の加工部材は部材保持部26aを部材割出し部30により回転割出しさせ、加工部材の第2面目へのレーザマーキングのために回転割出しされる。この動作を複数個の加工部材間で繰り返し、すべての加工部材へのレーザマーキングが行われる。なお、図2に複数個の各加工部材(1),(2),(3)へのレーザマーキングと各加工部材の回転割出しのタイミングチャートを示す。
【0022】複数個の加工部材全てのレーザマーキング完了後ターンテーブル25が回転割出しされ、部材保持部26a上の複数個の加工済部材がマーキング確認部31へ移動する。部材保持部26a上の複数個の加工済部材1個ずつ回転割出ししながらカメラ等を用いて外観検査しマーキング,文字,図形などを確認検査する。なお、このステーションはマーキング確認のみならず他の目的にも利用できる。複数個の加工済部材すべてのマーキングが確認検査された後、ターンテーブル25が回転割出しされ、部材保持部26a上の複数個の加工済部材が供給・取出し部23へ移動する。そこで、前記したように、複数個の加工済部材はチャック24bで保持され、供給・取出し部23でターンテーブル25上の部材保持部26aより主搬送路22へ移替えられる。その後、加工済部材は主搬送路22よりマーキング済加工部材の貯蔵部32へと移替えられ収納される。
【0023】図3〜図5に本発明のレーザマーキング装置のターンテーブル部上の部材保持部および部材割出し部の詳細図を示し、レーザマーキングと加工部材の動きについて詳細に説明する。図3〜図5において、33は加工部材、34はレーザ光、26は部材保持部、35は回転軸(A)、36はホルダ(A)、37は軸受(A)、25はターンテーブル、39はブレーキ取付板、40はブレーキ板、41はバネ、42はブレーキリング、43はカムフォロア取付板、44はカムフォロア、45はガイドプレート、46は回転軸(B)、47はホルダ(B)、48は軸受(B)、49はベアリングナット、50はタイミングプーリ(A)、51は検出板、52はセンサ、53はセンサ取付板、54はタイミングベルト、55はタイミングプーリ(B)、56はモータ、59はモータ取付板、58はフレンジシャフト、59はインデックスユニット、60はベース、61は筐体である。
【0024】以上のように構成されたレーザマーキング装置のターンテーブル部上の部材保持部および部材割出し部について、以下その機構ならびに動作とレーザマーキングについて説明する。
【0025】まず複数個の加工部材33が位置決め部にて位置決め完了後インデックスユニット59の入力軸が回転し、出力軸に取付けられたフランジシャフト58をかえしてターンテーブル25が回転割出しされる。その時、カムフォロア44は図5に示すようにガイドプレート45と回転軸(B)46にある溝の中をころがりながら位置決め部27よりレーザマーキング部29へと移動する。レーザマーキング部29へ移動した複数個の加工部材33の1個目の第1面にレーザ発生部からのレーザ光34を照射しレーザマーキングを施す。加工部材33の1個目の第1面のレーザマーキングが完了すると隣りの加工部材33(2個目)の第1面にレーザマーキングを施す。この間先にレーザマーキングが完了した1個目の加工部材33は第1面より第2面へと回転割出しされる。この機構および動作について詳細に説明すると、加工部材33は部材保持部26により保持されている。部材保持部26は回転軸(A)35に取付けてあり、ホルダ(A)36と軸受(A)37によりターンテーブル25上で回転できるようになっている。この回転軸(A)35にはブレーキリング42が取付けてあり、ブレーキ取付板39よりバネ41のバネ力によりブレーキ板40をブレーキリング42に押えつけることで回転軸(A)35,部材保持部26と加工部材33の回転オーバーランを防ぐ構造になっている。また、回転軸(A)35の端にカムフォロア取付板43でカムフォロア44が取付けてある。このカムフォロア44は回転軸(B)46の溝にはまっている。回転軸(B)46はガイドプレート45に取付けているホルダ(B)47と軸受(B)48により回転できる。なお軸受(B)48はベアリングナット49で固定されている。筐体61上のベース60に取付けられたモータ取付板57上のモータ56を回転させることでタイミングプーリ(B)55,タイミングベルト54,タイミングプーリ(A)50を通じ、回転軸(B)46は回転する。また回転軸(B)46の回転方向の原点および回転角度はセンサ取付板53に取付けられたセンサ52と検出板51で確認できる機構となっている。
【0026】そこで、加工部材33の第1面のレーザマーキング完了の信号により、加工部材33の第1面より第2面への回転割出しが開始する。まず、モータ56が回転割出しの角度分だけ回転を始める。タイミングプーリ(B)55,タイミングベルト54,タイミングプーリ(A)50を通じて回転軸(B)46が回転する。回転軸(B)46の溝にはまっているカムフォロア44とカムフォロア取付板43を介して回転軸(A)35が回転し、その上に取付けられた部材保持部26,加工部材33も回転する。モータ56により回転割出しの角度分だけ回転したか回転軸(B)46端に取付けてある検出板51とセンサ52で確認し加工部材33の回転割出しが完了する。
【0027】以上の動作が複数個の加工部材33に渡り全ての加工面の順に割出し回転,レーザマーキングがなされ再び複数個の加工部材33が回転原点(検出板51とセンサ52で確認)にくると複数個の加工部材33の全面にレーザマーキングが施され、レーザマーキング完了となる。続いて、インデックスユニット59,フランジシャフト58によりターンテーブル25が回転し、新しい複数個の加工部材33がレーザマーキング部29へと移動する。
【0028】なお、以上は多面体の加工部材33へのレーザマーキングの場合の例であるが円筒形,円柱形等の加工部材の場合は上記の方法でも、また加工部材を部材割出し部30で連続回転させながらレーザマーキングを施すことでも可能となる。
【0029】
【発明の効果】以上のように本発明は簡単な搬送システムの実現および1系統のレーザビームで複数個の加工部材をレーザマーキングすることで設備価格を低減することができる。また、ターンテーブル上に位置決め部およびマーキング確認部を設けることでレーザマーキングの品質の確保,保証ができる。さらに、複数個の加工部材へのレーザマーキングと加工面の回転割出しを連続的に行うことでレーザマーキング停止時間が大幅に削減でき生産性が向上する。また、多面体や円筒形,円柱形の加工部材の複数箇所へのレーザマーキングが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレーザマーキング装置の一実施例を示す概略構成図
【図2】同レーザマーキングと各加工部材の回転割出しのタイミングチャート
【図3】同装置の上面図
【図4】同装置の要部断面正面図
【図5】同図4のA−Aからみた上面図
【図6】従来のレーザマーキング装置の概略構成図
【図7】同装置の動作説明図
【符号の説明】
21 加工部材の貯蔵部
22 主搬送路
23 供給・取出し部
24a,24b チャック
25 ターンテーブル
26a〜26d 部材保持部
27 位置決め部
28 レーザ発生部
29 レーザマーキング部
30 部材割出し部
31 マーキング確認部
32 マーキング済加工部材の貯蔵部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 割出し回転されるターンテーブルと、このターンテーブルの周囲の第1ステーションに設けられ、加工部材の供給、取出しを行う供給、取出し部と、前記ターンテーブルの周囲の第2ステーションに設けられ、加工部材の保持位置の位置決めを行う位置決め部と、前記ターンテーブルの周囲の第3ステーションに設けられ、加工部材にレーザを照射してレーザマーキングを行うレーザマーキング部と、前記ターンテーブルの周囲の第4ステーションに設けられ、マーキングの確認を行うマーキング確認部とを備え、前記ターンテーブルの第1〜第4ステーションに対応する部分にそれぞれ部品保持部を設けるとともに、前記第3ステーションには部品保持部を回転させる部材割出部を設けたレーザマーキング装置。

【図7】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】第2833284号
【登録日】平成10年(1998)10月2日
【発行日】平成10年(1998)12月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−227768
【出願日】平成3年(1991)9月9日
【公開番号】特開平5−69164
【公開日】平成5年(1993)3月23日
【審査請求日】平成9年(1997)1月7日
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【参考文献】
【文献】特開 昭48−36651(JP,A)
【文献】実開 昭51−76089(JP,U)