レーザー−マーキング性材料を形成するための塗布組成物およびレーザー−マーキング性材料
本発明は、約150℃〜約190℃なる範囲のガラス転移温度:Tgを持つポリマーでカプセル化された、電子供与性染料プリカーサ粒子を含む、レーザー-マーキング性材料を形成するための、塗布組成物を提供するものであり、ここで該染料プリカーサ粒子の全体積の少なくとも約90%が、約0.2μm〜約5μmなる範囲の径を持つ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
製品および包装品のラベル付けは、様々な工業分野において、ますます重要になってきており、またはっきりと見ることができ、鮮鋭で、高いコントラストを示すマークを与えることが、一般的に有利である。幾つかの用途においては、白黒の像ではなく寧ろ有色の像を与えることが有益であり得る。
従来の方法の中でも、印刷、エンボス処理、スタンピングおよびラベルの貼付が、製品のマーキングのための主な手段である。しかし、特別な用途においては、頻繁な情報の変更、例えば個性化された製品の認識、コード化、製造日、ロット番号、または期限日のマーキングを可能とすることが望ましいことであり得る。従って、内容の迅速な変更を可能とする、マーキング手段に対する要望がある。
特に、自己接着性ラベル上での直接的な感熱印刷、熱的染料転写印刷、インクジェット印刷、エンボス処理またはスタンピングを含む様々な印刷技術が、このような用途に対して利用されている。しかし、特に、各製品またはラベルとの物理的な接触を要する場合、例えば感熱印刷(直接または染料転写)、ドロップ-オン-デマンド(drop-on-demand; DOD)式のインクジェット印刷、エンボス処理またはスタンピングの場合には、製造の際の処理量は、該印刷速度における障害のために、しばしば制限されてしまう。更に、これらのマーキング技術は、物理的な接触に拠っているので、不規則な表面を持つ製品上にマーキングするには不適当である。感熱印刷装置は、また他の欠点、例えばサーマルヘッド上での汚れの蓄積、および該装置の接触表面の摩耗等の欠点を有しており、これらは、マーキング性能および信頼性を損なう。
【0002】
非-衝撃高速マーキング用途に対して、連続インクジェット(CIJ)技術も、しばしば利用される。しかし、CIJ技術は、頻繁なノズルの詰まり、および非-吸収性表面、例えばプラスチックフィルム、金属またはプラスチック容器等の上のマークの、緩慢な乾燥速度による、溶剤型のインクシステムに係るVOCの問題、または水性インクシステムに係るマークの擦れの問題等の問題を有している。CIJ技術のもう一つの欠点は、マーキング性能に関連する、その低い解像度および低いコントラストにある。これは、特にバーコードの印刷において問題となる。
特定の波長および強度を持つ電磁波の集束ビーム、例えばレーザービームを用いる、非接触式の迅速マーキング法が、当分野において公知である。ここで、レーザービームを用いる方法は、一般に「レーザーマーキング」として知られている。しかし、レーザーマーキング技術の主な一つの欠点は、該レーザービームと、マーキングすべき物質との間に強力な相互作用を必要とする点にあり、これは非-マーキング領域にかなりの色彩または濃度変化を生じる。この難点は、多くの包装材料、例えばプラスチックフィルムまたは容器、金属製の缶またはガラス製ボトルの何れもが、レーザービーム(特に、低出力および/または長波長のレーザービーム)と十分な相互作用をせず、あるいは該相互作用が、高性能のマークを生成すべく、該材料上で著しいコントラスト変化を生じることがなく、あるいは該相互作用が強力である場合において、該材料自身に直接損傷を引起すことにある。
【0003】
該レーザービーム-材料間の相互作用を高めるために、エネルギー吸収性化合物を、マーキングすべき該包装材料に分散させるか、あるいは該マーキングすべき材料の表面に塗布されることとなる、塗布組成物と混合することが提案されている。このような技術の典型的な例は、米国特許第6884289号、同第6855910号、同第677683号、同第6727308号、同第6719837号、同第6693657号、同第6689205号、同第6545065号、同第6521688号、同第6444068号、同第6376577号、同第6291551号、同第6214917号、同第5977514号、同第5928780号、同第5866644号、同第5855969号、同第5576377号、同第5030551号、日本国特許開同第2003/277570号、および国際特許出願WO 2004/050766号、同第WO 01/00719号および同第WO 03/006558号に記載されているように、無機物質を主成分とするフィロ珪酸塩、金属酸化物およびシリケート化合物、例えばタルク、カオリン、セリサイト、マイカまたは金属酸化物被覆マイカ、酸化チタン、酸化スズ、酸化鉄、またはSb、As、Bi、Cu、Ga、Ge、Si等の酸化物などである。
【0004】
しかし、該レーザービーム-材料間の相互作用を高めたとしても、マークの濃度またはコントラストが、しばしば弱過ぎるために、満足な工業的製品とはなり得ない。その理由は、この技術が、マーキングすべき該材料を炭化または分解し、結果として該材料中に濃色マークとして炭素に富む構造を形成し、あるいはトラップされた微細な気泡(分解された物質由来の)を生成して、白色のマークとして該材料中に発泡構造を形成するという技術を拠所としているからである。これらのマーク形成メカニズムは、しばしば貧弱な性能のマークを生成する。というのは、多くのポリマー材料は、過度に燃焼し、気化させ、または完全に分解させないと、炭化することが困難であり、これは材料の保全性を損うことになる。レーザー感度の問題を克服するための、無機レーザー吸収性物質の使用に基くこの技術のもう一つの欠点は、該媒体材料の低い透明度として観測される、マーキングすべき該材料内に含められる、これら添加剤の不透明性である。低い透明性は、レーザーマーキング性材料の使用を、狭い範囲の工業的な用途に制限してしまう。
【0005】
マークのコントラストおよび色彩を高めるために、当分野においては、有機金属錯体、無機酸化物または塩の顔料、あるいはカーボンブラック顔料を、該包装材料に分散すべきあるいは塗布組成物中に混合すべき添加物として使用できることは公知であり、該顔料は、結果として該マーキングすべき材料の表面上に塗布されることになる。更に、コントラスト色を持つ二重の塗布層も提案されており、そこでは上部塗膜は、該レーザーマーキングによって蒸発(融除)されることになり、また結果としてコントラスト色を持つ該底部の塗膜を露出する。これら技術において使用される化合物の典型的な例は、米国特許および米国公開特許出願第2005/0032957号、同第6888095号、同第6855910号、同第6284184号、同第6207240号、同第6139614号、同第6022905号、同第5840791号、同第5667580号、同第5626966号、同第5576377号、同第4861620号および同第4401992号に記載されているような、有機金属錯体、例えば銅フタロシアニン、アミンモリブデート、または有色金属酸化物および水酸化物、または金属リン酸塩/酸化物混合-相顔料、硫化物および硫化物/セレン顔料、カーボネート顔料、クロメートおよびクロメート/モリブデート混合-相顔料、錯塩顔料およびシリケート顔料を包含する。
【0006】
しかし、顔料を基本とするレーザーマーク形成は、所望の基板または塗膜の厚みに対して、該顔料の粒径が大きいという問題、およびこれら固体粒子の、該媒体における、不均一な分布の問題を包含する。これら問題は、不均一なマークの形成および不均一な塗膜の被覆率、または該マーキング領域における過度の燃焼をもたらし、結果として媒体の保全性に害を及ぼす。その上、一般的に知られているマーキング顔料の幾つかは、環境上不利な重金属を含んでいる。上記融除法に基くレーザーマーキングに関連して、融除された物質または破壊屑の、周囲環境への過度の放出は、重大な欠点の一つであり、危険な物質が環境に放出されるばかりでなく、該レーザーマーキングヘッド上のレンズの頻繁な清浄化を行って、該融除されたマーキング材料から遊離され、蓄積されたフラグメントまたは破壊屑を除去することも必要となる。該融除法のもう一つの欠点は、マーキングすべき該物質上の該塗布層を完全に蒸発させるのに十分に強力な、大きなレーザーエネルギードーズを必要とすることである。このことは、より緩慢なマーキング速度、即ちより低い生産性、またはより高出力のレーザー装置のために費やされる、機器および操作の一層の増大へと導く。
【0007】
染料を主成分とするレーザーマーキング処方物は、上記諸欠点を回避し、またより一層低いレーザーエネルギードーズにおいてさえも、より一層高いコントラストを持つ、良好なマーキング性能を与えることができる。従来の接触式感熱印刷に対して開発された、染料に基くマーキング技術が、レーザーマーキング用途用に提案されている。例えば、JP 2001-246860は、感熱記録材料の使用を開示しており、これは、電子供与性染料プリカーサおよびウレア-ウレタン現像剤を含み、また米国特許第5413629号は、該印刷法において、電子供与性染料プリカーサおよび電子受容性現像剤を含むインクを使用することによる、レーザー-マーキング性材料の製法を開示している。
【0008】
しかし、従来の直接的な感熱印刷技術に基く、これらの系は、接触式熱転写に基いており、該接触界面近傍で速やかに発色反応を誘発し、従って約80℃〜約110℃なる範囲の閾値温度における、該反応性媒体の色彩変化を必要とする、直接的な感熱印刷における該エネルギー放出手段の特性のために、長期保存安定性または耐熱性が低いという欠点を有している。他方において、包装並びにラベル付け用途に対して、該媒体はしばしば広い温度範囲に渡る、また長い暴露期間に対して、広い許容度を必要とする。これら用途において、直接的熱媒体の長期保存安定性または耐熱性は、しばしば不十分であり、また望ましからぬカブリが、製品の保存中または輸送中に起こる可能性があった。
直接的な感熱印刷技術に基く、染料を主成分とする媒体のもう一つの重大な欠点は、望ましからぬ化学物質に対する暴露、特に酸および塩基溶液または有機溶媒に対して暴露した際のその感受性である。しかし、幾つかの包装並びにラベル付け用途に対して、該被覆された基板は、しばしば様々な化学物質による攻撃に対して、高い耐性を持つことが要求される。例えば、典型的なラベルの印刷において、溶剤型のフレキソインクが、高頻度で使用され、あるいは幾つかの場合には、ラベルフィルム上の、溶剤型の下塗り層を適用して、平坦性および該フィルムへのインクの接着性を高めている。両者の場合において、これら処方物中の有機溶媒は、しばしば、該染料-現像剤系の不安定化のために、上記の像形成層上に望ましからぬ色彩、不透明性または密度の変化を引起す。
【0009】
該媒体の安定性を改善し、また染料を主成分とするレーザーマーキング性媒体の耐熱性を高めるために、米国特許第5,691,757号および日本国特許JP3,391,000号は、融点が200℃を越える高融点現像剤を用いて、高融点現像剤の使用によるマーキング感度の喪失を回避する、レーザーマーキング性組成物を開示している。このような組成物は、少なくとも200-250℃なる範囲またはそれ以上の、極めて高いマーク形成閾値に導く。この方法の一つの問題は、該高温マーキング工程中の、該ポリマー媒体の分解の恐れ、および「煙」としての、望ましからぬ化学物質蒸気の放出の恐れがある点にあり、事実この問題は、マーキングすべき物質の炭化に基く、これらレーザー-マーキング法についてしばしば観測される。更に、このような高温マーキング媒体に関連して、より高出力のレーザーマーキング装置が必要となるか、あるいはより低速のマーキング速度、結果としてより低い生産性を容認しなければならない。
【0010】
望ましからぬ化学物質蒸気の放出を回避するために、従来技術においては、透明な「カバーシート」を使用するという考えが示唆された。米国特許第、5,843,547号は、多層レーザーマーキング性ラベルの製法を開示しており、この方法では、透明な接着性組成物を含む、少なくとも1層の透明な保護フィルム材料が、レーザー-マーキング性媒体の上部に積重ねられ、接着されている。このレーザー-マーキング法を、該透明な「カバーシート」を介して適用して、その下部のレーザー-マーキング性媒体中にマークを形成している。適用が望ましい場合には、該上部の透明「カバーシート」を、該透明な接着性組成物と共に、マーキング完了後に、該レーザーマーキング性媒体から剥ぎ取ることができる。同様な構造が、米国特許第5,340,628号および日本国特許第3,391,000号に記載されている。但し、両者ともに、該レーザーマーキング性層は、無機顔料の代わりに、染料に基く感熱印刷技術に拠っており、また日本国特許第3,391,000号の場合には、既に上で述べた通り、高融点現像剤を、無機レーザー吸収性添加物と共に使用している。
【0011】
レーザーマーキング工程中に分解された化学物質蒸気の放出は、これら従来技術の方法によって阻止できるが、米国特許第5,843,547号に記載された方法の欠点は、その無機顔料を主成分とするレーザー像形成媒体であり、これは、染料を主成分とするマーキング系と比較して、劣ったマーク品位、貧弱なコントラストおよびコンシステンシーを持つ傾向がある。米国特許第5,340,628号に記載された方法の欠点は、その貧弱な長期保存安定性または貧弱な耐熱性にあり、これらの欠点は、従来の熱的な像形成媒体の原因を受け継ぐものである。日本国特許第3,391,000号に記載された方法の欠点は、この方法が、>200℃なるマーク形成温度を必要とする点にあり、この欠点は、高温マーキング工程中に、該透明な「カバーシート」に対して使用する幾つかのポリマー材料の分解、望ましからぬ化学物質の蒸気放出に導く恐れがあり、あるいは少なくとも、残留熱応力のために、該マーキング媒体に、著しい物理的な歪が導入される恐れがある。というのは、該マーク形成温度は、この特許に記載されているポリマー材料の殆どのガラス転移温度:Tgを大幅に越える可能性があるからである。最後に、これら方法の全ては、前に述べたように、固体分散種を含む全てのレーザーマーキング性塗膜に共通する、高度の濁り度をもたらし、また結果的に該マーク形成媒体の透明性を減じるという欠点を持つ。
【0012】
従って、上記した従来の方法および組成物においては、良好なマーク品位、高いコントラスト、マーキング材料の高い保存安定性または耐熱性を同時に達成し、かつ同時に良好なレーザー感度を維持し、しかもマーキング工程中の、望ましからぬ化学物質蒸気の放出を排除することは極めて困難であることに注意すべきである。
従来のレーザー融除手段の使用に係る別の欠点は、該手段の使用が、マーキングされない領域と比較して、大幅な色彩または濃度変化を生じるために、該マーキング基板と該レーザービームとの間に強力な相互作用を必要とする点にある。プラスチックフィルム、容器およびガラスボトル等の包装材料が、レーザービームエネルギーと十分に相互作用することができず、該相互作用が、該材料上に十分なコントラスト変化を生成できず、および/または該相互作用が、該基板表面に望ましからぬ損傷を生じる恐れがある点にある。
該基板上に、塗膜を形成することができ、該塗膜は、レーザービームのエネルギーを吸収して、該塗布された基板上に視認性のマークを生成し得る。この種のレーザー-マーキング性塗膜は、顔料、染料、バインダ、並びに他の塗膜用添加剤を含むことができる。該塗布組成物は、実質的にフィルム形成剤として機能する、バインダを含むことができる。バインダは、そのフィルム形成機能のために使用できるだけではなく、レーザー-マーキング性組成物において特定の効果を得る目的で、様々な用途において使用することができる。
【0013】
公知のバインダの使用は、干渉マーク効果として説明することのできる、様々な悪影響に導く可能性がある。このような干渉マークの形成は、マーク付けされた材料のマーク品位の劣化に寄与する恐れがある。干渉マーク効果は、数種の異なる方法で表すことができる。例えば、白色化、不透明化、または濁りが、レーザーで暴露した領域近傍において起こる可能性があり、これは肉眼で見ることのできるものである。公知のバインダは、レーザービームに暴露した際に、物理的な変化を起こして、微細な空隙、気泡、架橋、微細粒子および/または混在物を生成する可能性があり、これらの形成は、該マークの不透明化あるいはまた劣化をもたらす恐れがある。該干渉マークは、該材料のマーク付け領域における、低いマーク濃度、貧弱な色彩純度、および/または視覚的に不鮮明な/歪んだ像の形成に導く恐れがある。機械および/またはヒトの信頼性は、レーザーの暴露により形成すべき、意図したマークが、性能において所要レベルよりも低い場合には、低下する可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の第一の目的は、高いコントラスト、高い解像度、および高度の性能のコンシステンシーを持つ、優れたマーク性能を与える、レーザーでマーク付けできる媒体であって、また該レーザーによる暴露領域における材料の保全性に物理的な損傷を与えることに拠らない、例えば融除、炭化、または塗布成分の化学的な分解により放出される気泡のトラップ等に拠らずに、レーザーでマーク付けできる上記媒体を提供することにある。
本発明の第二の目的は、良好な媒体保存安定性または耐熱性およびレーザー暴露に対する最適な感度との間の釣合いのとれた性能を持つ、媒体を提供することにある。
本発明の第三の目的は、広い範囲の用途における要求を満たす、高い透明度を持つ、レーザー-マーキング性媒体を提供することにある。
更に別の本発明の目的は、レーザー-マーキング性媒体の構成であって、レーザーマーキング工程中に分解された化学物質の蒸気または破壊屑を放出せず、また該マーク形成層を、環境に対する直接的暴露から隔離することができ、また結果として該マーク形成層を、直接的な機械的磨滅または化学的攻撃から保護する、レーザー-マーキング性媒体の構成を提供することにある。
本発明の更なる目的は、該媒体の使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一局面によれば、レーザー-マーキング性材料を製造するための塗布組成物が提供され、該塗布組成物は、約150〜約190℃なる範囲のガラス転移温度:Tgを持つポリマーでカプセル化した、電子供与性染料プリカーサ粒子を含有しており、該染料プリカーサ粒子全体積の少なくとも約90%が、約0.2μm〜約5μmなる範囲の径を持つことを特徴とする。
もう一つの局面によれば、レーザー-マーキング性材料が提供され、該レーザー-マーキング性材料は、塗布層を含み、該塗布層は、約150〜約190℃なる範囲のガラス転移温度:Tgを持つポリマーでカプセル化した、電子供与性染料プリカーサ粒子を含み、該染料プリカーサ粒子全体積の少なくとも90%が、約0.2μm〜約5μmなる範囲の径を持つことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
A. 該マーク形成層の組成:
本発明の最初の三つの目的を達成するために、該マーク形成層の組成は、以下の主な要素を含む:好ましくは特定の範囲内のTgを持つポリマー内に、マイクロカプセル化された、電子供与性染料プリカーサ、該電子供与性染料プリカーサと反応して、可視スペクトルの波長領域において、強い吸収性を持つ染料に転化することのできる、電子受容性化合物およびこれら二つの種が分散され、またこれらの種が、相互に反応可能な距離の極近傍にあるように塗布される、ポリマー分散媒。
電子供与性染料プリカーサ:
本発明において好ましく使用できる電子供与性染料プリカーサは、実質的に無色であり、好ましくは電子の供与によりあるいは酸からプロトンを受容することによって発色するような特性を持つ、無色化合物である限り、特に限定されるものではない。該電子供与性染料プリカーサの骨格における、特に好ましい構造上の特徴は、開環反応に付される、または電子受容性化合物と接触状態に置かれた場合に、開裂するリング構造を含むことである。このような構造上の特徴の、典型的な例は、特にラクトン、ラクタム、サルトン(saltone)、またはスピロピランである。
【0017】
該電子供与性染料プリカーサの例は、トリフェニルメタンフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、フルオレン系化合物、ピリジン系化合物、およびピラジン系化合物を包含する。
該フルオラン系化合物の具体的な例は、米国特許第3624107号、同第3627787号、同第3641011号、同第3462828号、同第3681390号、同第3920510号および同第3959571号に記載されている化合物を含む。該フルオレン系化合物の具体的な例は、日本国特許出願第61-240989号に記載されている化合物を含む。該スピロピラン系化合物の具体的な例は、米国特許第3971808号に記載されている化合物を含む。該ピリジン系化合物およびピラジン系化合物の具体的な例は、米国特許第3775424号、同第3853869号および同第4246318号に記載されている化合物を含む。
該フルオラン系化合物としては、以下の構造式(1)によって表される化合物が好ましい。というのは、これら化合物は、極めて高濃度にてマイクロカプセル内に組込むことができ、そのために高いマーク濃度を得ることができるからである。
式(1):
【0018】
【化1】
【0019】
ここで、R1およびR2は、各々独立に、水素原子、C1-C8アルキル基、無置換のまたはC1-C4アルキル-またはハロゲン-置換C4-C7シクロアルキル基、無置換フェニル基またはC1-C4アルキル-、ヒドロキシ-またはハロゲン-置換フェニル基、C3-C6アルケニル基、C1-C4アルコキシ基、フェニル-C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ-C1-C4アルキル基および2-テトラヒドロフラニル基から選択される基であり、あるいはR1およびR2は、これらが結合している窒素原子と共に、無置換のまたはC1-C4アルキル-置換ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノまたはピペラジノリングを形成する。好ましい態様において、R1はC4H9を表すことができ、またR2はC2H5を表すことができる。
【0020】
該フルオレン系化合物としては、2-アリールアミノ-3-(H、ハロゲン、アルキル、またはアルコキシ-6-置換フルオラン)が、好ましいものとして例示される。その具体的な例としては、2-アニリノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-N-シクロヘキシル-N-メチラールフルオラン、2-p-クロロアニリノ-3-メチル-6-ジブチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-ジオクチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-クロロ-6-ジエチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-N-エチル-N-イソアミルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-N-エチル-N-ドデシルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メトキシ-6-ジブチルアミノフルオラン、2-o-クロロアニリノ-6-ジブチルアミノフルオラン、2-p-クロロアニリノ-3-エチル-6-N-エチル-N-イソアミルアミノフルオラン、2-o-クロロアニリノ-6-p-ブチルアニリノフルオラン、2-アニリノ-3-ペンタデシル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-エチル-6-ジブチルアミノフルオラン、2-o-トルイジノ-3-メチル-6-ジイソプロピルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-N-イソブチル-N-エチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-N-エチル-N-テトラヒドロフルフリルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-クロロ-6-N-エチル-N-イソアミルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-N-メチル-N-γ-エトキシプロピルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-N-エチル-N-γ-エトキシプロピルアミノフルオランおよび2-アニリノ-3-メチル-6-N-エチル-N-γ-プロポキシプロピルアミノフルオランが含まれる。
【0021】
該フタリド系化合物の具体的な例は、米国特許第Re.23024号、同第3491111号、同第3491112号、同第3491116号および同第3509174号に記載されている化合物を含む。該フタリド系化合物の中では、以下の構造式(2)で表される化合物が、最も好ましい。というのは、該化合物は、極めて高い濃度にてマイクロカプセル中に封入することができ、また高いマーク濃度を与えることができるからである:
式(2):
【0022】
【化2】
【0023】
他の好ましい化合物は、以下のような式(3)によって表される:
式(3):
【0024】
【化3】
【0025】
本発明の好ましい一態様は、該電子供与性染料プリカーサの溶解度が、酢酸エチル100g当たり約10gを越える値、より好ましくは酢酸エチル100g当たり約15gを越える値、および最も好ましくは酢酸エチル100g当たり約18gを越える値であるような態様である。
本発明の好ましい一態様は、約80質量%を越える量の該電子供与性染料プリカーサが、上記構造式(1)または(2)で表される化合物であるような態様であり、またより好ましい態様は、約100質量%が、該化合物であるようなものである。
【0026】
マイクロカプセル化:
本発明の組成物における該電子供与性染料プリカーサは、好ましくは表面重合法によって、マイクロカプセルとした後に使用することが好ましい。例えば、該表面重合法は、該マイクロカプセルのコアを形成するための該電子供与性染料プリカーサを、疎水性有機溶媒に溶解または分散させて、油相を製造するように使用することができる。次いで、該油相を、例えば水溶性ポリマーを水に溶解することによって得られる、水性相と混合し、更に、例えばホモジナイザー等を使用して、乳化および分散処理することができる。引き続きこれを加熱して、該油性液滴の界面においてポリマー-形成反応を行って、ポリマー物質のマイクロカプセル壁を形成することができる。
該ポリマーカプセル材料の具体的な例は、例えばポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ウレア-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、スチレン-メタクリレートコポリマー、およびスチレン-アクリレートコポリマーを包含する。これらの中では、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステルおよびポリカーボネートが好ましく、またポリウレタンおよびポリウレア特に好ましい。
【0027】
例えば、該カプセル壁材料として、ポリウレアを使用する場合において、マイクロカプセル壁は、ポリイソシアネート、例えばジイソシアネート、トリイソシアネート、テトライソシアネートまたはポリイソシアネートプレポリマーと、ポリアミン、例えばジアミン、トリアミンまたはテトラミン、2またはそれ以上のアミノ基を持つプレポリマー、ピペリジンまたはその誘導体、またはポリオールとを、水性相中で、該界面重合法に従って反応させることにより、容易に製造することができる。
ポリウレアおよびポリアミドにより形成される複合壁またはポリウレタンおよびポリアミドにより形成される複合壁は、例えばポリイソシアネートおよびこれとの反応によって該カプセル壁を形成する第二の物質(例えば、酸クロリド、ポリアミンまたはポリオール)を、水溶性ポリマーの水性溶液(水性相)またはカプセル化すべき油性媒体(油性相)と混合し、乳化および分散処理に掛け、引続き加熱する等の方法で製造できる。ポリウレアおよびポリアミドにより形成される複合壁の、この製法は、JP-A-58-66948において詳しく説明されており、その内容を、参考としてここに組み入れる。このような方法の付随的な詳しい説明については、公開されている公知文献、例えば「ポリウレタンハンドブック(Polyurethane Handbook)」Keiji Iwata著, (1987), 日刊工業新聞社(Nikkan Kogyo Shimbun, Ltd.)刊、および「ポリウレタンハンドブック(Polyurethane Handbook)」,Dr. Gunter Oertal編, ハンサーガードナー出版社(Hanser Gardner Publications, Inc.)刊(第二版, 1993)を参照のこと。これら文献の内容を、参考としてここに組み入れる。
【0028】
ポリイソシアネート化合物の一例として、3またはそれ以上の官能基のうち、一つのイソシアネート基を持つ化合物を使用することができ、また二官能性のイソシアネート化合物を、上記の化合物と組合せて使用することができる。例えば、以下の例示化合物を使用することができる:ジイソシアネート、例えばキシレンジイソシアネートまたはその水添生成物、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはその水添生成物、トリレンジイソシアネートまたはその水添生成物、およびイソホロンジイソシアネート;これらのダイマーまたはトリマー(ビウレットまたはイソシアヌレート);ポリオールの付加生成物としての多官能性を持つ化合物、例えばトリメチロールプロパン、および二官能性イソシアネート、例えばキシレンジイソシアネート;活性水素を含むポリエーテル等のポリマー化合物を含む、トリメチロールプロパン等のポリオールと、キシレンジイソシアネート等の二官能性イソシアネートとの付加生成物としての化合物、例えば導入されたポリオキシエチレンオキシドを含むもの;およびベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合生成物。
【0029】
JP-A-62-212190、JP-A-4-26189、JP-A-5-317694および日本国特許出願第8-268721号に記載されている化合物を使用することができ、これらの内容を参考としてここに組み入れる。前記水性相および/または前記油性相に、該マイクロカプセル壁の構成成分として、該ポリイソシアネートとの反応を介して添加される、該ポリオールおよび/または該ポリアミドの具体的な例は、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ソルビトール、およびヘキサメチレンジアミンを含む。ポリオールを添加する場合には、ポリウレタン壁を形成することができる。
本発明において、該マイクロカプセル化反応の条件は、前記電子供与性染料プリカーサ粒子の全体積の少なくとも約90%が、約0.2〜約12μmなる範囲、好ましくは約0.3μm〜約5μmなる範囲、および最も好ましくは約0.3μm〜約2μmなる範囲の、該マイクロカプセルの平均粒径を持つように、設定される。該マイクロカプセル壁の厚みは、任意の適当な厚み、例えば約0.01〜約0.3μmなる範囲であり得る。
【0030】
該マイクロカプセル材料およびマイクロカプセル化反応は、該マイクロカプセル壁が、約120℃〜約190℃なる範囲、好ましくは約150℃〜約190℃なる範囲、より好ましくは約150℃〜約180℃なる範囲、より好ましくは約160℃〜約180℃なる範囲、および最も好ましくは約165℃〜約175℃なる範囲のガラス転移温度:Tgを持つように、注意深く選択し、かつ制御することができる。該マイクロカプセル壁のTgは、任意の適当な手段、例えば公知の示唆熱分析法、例えばDSC(示唆走査式熱量計)または様々な温度範囲に渡る非熱(Cp)変化を測定する、DDSC(ダイナミックDSC)を利用することにより測定することができる。このような測定のために使用できる装置は、パーキンエルマーダイアモンド(Perkin Elmer Diamond) DSC、サファイア(Sapphire) DSC、ハイパーDSC(HyperDSCTM)、およびTAインスツルメンツ(Instruments) Q-シリーズを包含する。
【0031】
例えば、上記諸特性を得るために、マイクロカプセル製造のための特定の反応条件を選択し、かつ制御することができる。これらの条件は、該電子供与性染料プリカーサの乳化方法、該マイクロカプセル壁を形成するための、該ポリイソシアネートおよびポリアミンの添加速度およびその量、および/または混合および反応温度、期間、および攪拌条件を含むことができる。この反応において、該反応速度は、例えば高い反応温度を維持することによって、および/または適当な重合触媒を添加することによって高めることができる。
該懸濁液中の該マイクロカプセルの粒径は、任意の適当な手段を利用して測定することができ、例えば該懸濁液を水溶液中に希釈し、またミー(Mie)-散乱理論に基くレーザー散乱法を利用して、該粒子の粒径および分布を測定することができる。このような測定のために使用できる装置は、ホリバ(Horiba)社製のLAシリーズ、ベックマンコールター(Beckman Coulter)社製のLSシリーズまたはマルバーンインスツルメンツ(Malvern Instrument)社製のマスターサイザー(Mastersizer)シリーズを含む。
【0032】
該マイクロカプセル壁は、更に必要に応じて、金属-含有染料、電荷調節剤、例えばニグロシン、および他の任意の添加材物質を含むことができる。これら添加剤は、壁形成前またはその最中に添加される場合には、該カプセル壁中に含めることができ、あるいは必要により、他の任意の時点において添加することができる。該カプセル壁表面の帯電特性を調節するためには、モノマー、例えばビニルモノマーを、必要に応じてグラフト-重合することができる。
その上、所定のマーキング温度において優れた物質透過性を持つマイクロカプセル壁を製造するために、また高い彩色効果を持つ優れた性能のマークを得るためには、該選択された壁材料の該ポリマーに対して適当な、可塑剤を使用することが好ましい。該可塑剤は、好ましくは約50℃またはそれ以上、およびより好ましくは約120℃またはそれ以上の融点を持つ。可塑剤としては、室温にて固体状態にある物質を選択することが好ましい。
例えば、該壁材料がポリウレアまたはポリウレタンを含む場合、ヒドロキシル化合物、カルバメート化合物、芳香族アルコキシ化合物、有機スルホンアミド化合物、脂肪族アミド化合物およびアリールアミド化合物を、可塑剤として使用することが好ましい。
【0033】
該マイクロカプセルのコアは、好ましくは約100〜約300℃なる範囲の沸点を持つ疎水性有機溶媒に、該電子供与性染料プリカーサ化合物を溶解して、上記の油性相を生成することによって製造することができる。該疎水性有機溶媒は、1種またはそれ以上の化合物を含むことができる。該溶媒の具体的な例は、エステル化合物、ジメチルナフタレン、ジエチルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、ジメチルビフェニル、ジイソプロピルジフェニル、ジイソブチルビフェニル、1-メチル-1-ジメチルフェニル-2-フェニルメタン、1-エチル-1-ジメチルフェニル-1-フェニルメタン、1-プロピル-1-ジメチルフェニル-1-フェニルメタン、トリアリールメタン(例えば、トリトルイルメタン、またはトルイルジフェニルメタン)、ターフェニル化合物(例えば、ターフェニル)、アルキル化合物、アルキル化ジフェニルエーテル(例えば、プロピルジフェニルエーテル)、水添ターフェニル(例えば、ヘキサヒドロターフェニル)およびジフェニルターフェニルを包含する。これらの疎水性有機溶媒は、単独でまたは2またはそれ以上の組合せで使用することができる。
【0034】
例えば、上記乳化分散液の乳化安定性の観点から、好ましくはエステル化合物を使用できる。該エステル化合物は、例えばトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ブチルホスフェート、オクチルホスフェートまたはクレジルフェニルホスフェート等のホスフェート;ジブチルフタレート、2-エチルヘキシルフタレート、エチルフタレート、オクチルフタレートまたはブチルベンジルフタレート等のフタレート;ジオクチルテトラヒドロフタレート;エチルベンゾエート、プロピルベンゾエート、ブチルベンゾエート、イソペンチルベンゾエートまたはベンジルベンゾエート等のベンゾエート;エチルアビエテートまたはベンジルアビエテート等のアビエテート;ジオクチルアジペート;イソデシルサクシネート;ジオクチルアゼレート;ジブチルオキサレートまたはジペンチルオキサレート等のオキサレート;ジエチルマロネート;ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、またはジブチルマレエート等のマレエート;トリブチルシトレート;メチルソルベート、エチルソルベートまたはブチルソルベート等のソルベート;ジブチルセバケートまたはジオクチルセバケート等のセバケート;蟻酸モノエステルまたはジエステル、酪酸モノエステルまたはジエステル、ラウリン酸モノエステルまたはジエステル、パルミチン酸モノエステルまたはジエステル、ステアリン酸モノエステルまたはジエステル、またはオレイン酸モノエステルまたはジエステル等のエチレングリコールエステル;トリアセチン;ジエチルカーボネート;ジフェニルカーボネート;エチレンカーボネート;プロピレンカーボネート;およびトリブチルボレートまたはトリペンチルボレート等のボレートを含む。一例示的態様において、該疎水性有機溶媒は、少なくともトリクレジルホスフェートを含むことができ、その使用は、良好なエマルションの安定性に寄与し得る。
【0035】
カプセル化すべき該電子供与性染料プリカーサが、該疎水性有機溶媒に対して低い溶解度を持つ場合には、高い溶解度を持つ低沸点溶媒を、補助的に組合せて使用することができる。該低沸点溶媒好ましい例は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、および塩化メチレンを含む。
該電子供与性染料プリカーサ化合物は、レーザー-マーキング性材料のレーザー-感受性記録層中に、任意の有効量で存在し得る。好ましくは、該電子供与性染料プリカーサは、十分な色濃度を与えることができ、しかも該レーザー-マーキング性材料の透明性を維持できる量にて存在し得る。例えば、該電子供与性染料プリカーサの含有率は、約0.1〜約5.0g/m2なる範囲および好ましくは約1.0〜約4.0g/m2なる範囲の値であり得る。
【0036】
マイクロカプセルの製造中に、水溶性ポリマーを、該反応混合物の該水性相に添加して、生成する乳化分散液を安定化するために、保護コロイドを生成する。該水溶性ポリマーの型およびその添加量は、生成する本発明の塗布組成物の粘度が、約5センチポアズ(cps)〜約30cpsなる範囲、好ましくは約10cps〜約25cpsなる範囲、および最も好ましくは約10cps〜約20cpsなる範囲、となるように選択される。粘度は、S21小型スピンドルを備えた、ブルックフィールドプログラマブル(Brookfield Programmable) DV-II+粘度計を用いて、100-200RPMにて測定される。サンプルの品質に応じて、レギュラー(Regular) RVシリーズのスピンドルを使用することも可能である。
【0037】
該保護コロイドを製造するのに使用する該水溶性ポリマーは、公知のアニオン性ポリマー、ノニオン性ポリマーおよび両性ポリマーから、適切に選択することができる。該水溶性ポリマーは、好ましくはその乳化を行うべき温度において、水に対して5%またはそれ以上の溶解度を持つ。該ポリマーの具体的な例は、ポリビニルアルコールおよびその変性製品、ポリアクリル酸アミドおよびその誘導体、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、エチレン-無水マレイン酸コポリマー、イソブチレン-無水マレイン酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、エチレン-アクリル酸コポリマー、酢酸ビニル-アクリル酸コポリマー、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースおよびメチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、デンプン誘導体、アラビアゴムおよびアルギン酸ナトリウムを含む。これらの中では、ポリビニルアルコール、ゼラチンおよびセルロース誘導体が、特に好ましい。
該油性相と該水性相との混合比は、例えば適当な粘度を維持するための任意の値であり得る。一例示的な態様において、該油性相と該水性相との混合比は、質量基準で約0.02〜約0.6なる範囲、およびより好ましくは質量基準で約0.1〜約0.4なる範囲の値であり得る。例えば、このような混合比を用いることによって、該塗布組成物の改善された生産性並びに該塗布組成物の最適の安定性を達成することができる。
【0038】
該油性相と該水性相とを、更に均一に乳化し、かつ分散させるために、該油性相および該水性相の少なくとも何れか一方に、界面活性剤を添加してもよい。該界面活性剤の添加量は、該油性相の質量を基準として、好ましくは約0.1%〜約5%なる範囲、およびより好ましくは約0.5〜約2%なる範囲内にある。該界面活性剤を該水性相に添加する場合には、該保護コロイドとの相互作用を通して、沈殿形成または凝集を引起さない、アニオン性またはノニオン性界面活性剤を適切に選択すべきである。このような界面活性剤の好ましい例は、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、およびポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)を含む。
【0039】
エマルションは、上記成分を含む該油性相および該保護コロイドおよび界面活性剤を含有する該水性相から製造することができる。例えば、高速攪拌または超音波分散により、微細粒子を乳化するためのデバイスが、利用可能である。例えば、マントンゴーリン(Manton Gaulin)ホモジナイザー、超音波分散装置、溶解装置またはカディー(KADY)ミル等のホモジナイザーを使用することができる。この乳化処理の後、得られるエマルションを、場合により例えば約30℃〜約70℃なる範囲の温度にて加熱して、上記カプセル壁形成反応を促進することができる。この反応中に、該エマルションに水を添加することができるが、これは、該カプセル同士が衝突する確率を下げ、および/または該カプセルの凝集を減じまたは阻止するのに効果的であり得る。凝集を阻止するための分散液を、該反応中に添加することも可能である。
該カプセル壁形成反応は、任意の適当な期間に渡り、例えば数時間程度行って、目的とするマイクロカプセルを得ることができる。例えば、該カプセル壁形成反応は、二酸化炭素の生成を結果する可能性があり、またこのようなガスの生成が停止することは、該反応の完了を示す徴候であり得る。
【0040】
電子受容性現像分散液:
該電子供与性染料プリカーサと反応する、該電子受容性現像剤化合物は、単独で、または2種またはそれ以上の組合せで使用することができる。本発明の塗布組成物は、該電子受容性現像剤化合物を含有する分散液と併合することができる。一例示的な態様において、本発明の塗布組成物は、該塗布組成物の安定性を維持するために、該電子受容性現像分散液とは別々に提供することができる。
該電子受容性化合物の例は、酸性物質、例えばフェノール化合物、サリチル酸誘導体、有機酸またはその金属塩、オキシベンゾエート、および/またはフェノール化合物を含む。その具体的な例は、JP-A-61-291183に記載されている化合物を含む。この文献の内容を、参考としてここに組入れる。これらの内で、良好な着色特性が得られるという観点から、ビスフェノール化合物が好ましい。電子受容性現像剤の組成物は、ディベロッパーエマルションディスパージョン(Developer Emulsion Dispersion)として、米国特許第6,797,318号の実施例-1に、エマルションディスパージョン(Emulsion Dispersion)として、米国特許第5,409,797号の実施例-1に、およびカラーディベロッパー(Color Developer)として、米国特許第5,691,757号の実施例に記載されている。これら米国特許の内容を、参考としてここに組入れる。
【0041】
該ビスフェノール化合物の例は、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)プロパン(一般名: ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジクロロフェニル)プロパン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)-2-メチルペンタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,4-ビス(p-ヒドロキシフェニルクミル)ベンゼン、1,3-ビス(p-ヒドロキシフェニルクミル)ベンゼン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、およびビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジルエステルを含む。サリチル酸誘導体の例は、3,5-ジ-α-メチルベンジルサリチル酸、3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸、3-α,α-ジメチルベンジルサリチル酸および4-(β-p-メトキシフェノキシエトキシ)サリチル酸を含む。これらの多価金属塩の例は、亜鉛塩またはアルミニウム塩を含む。該オキシベンゾエートの例は、p-ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシルエステル、およびβ-レゾルシン酸2-フェニルエチルエステルを含む。該フェノール化合物の例は、p-フェニルフェノール、3,5-ジフェニルフェノール、クミルフェノール、4-ヒドロキシ-4'-フェノキシジフェニルスルホンを含む。
【0042】
該電子受容性化合物は、水溶性ポリマー、有機塩基、および他の色-形成助剤を含む分散液として使用でき、あるいは僅かに水溶性であるか、あるいは水-不溶性の、高沸点有機溶媒中に溶解し、界面活性剤および/または保護コロイドとしての水溶性ポリマーを含有するポリマーの水性溶液(水性相)と混合し、次いで例えばホモジナイザーによって乳化することによって得られる、乳化分散液として使用することも可能である。この場合、低沸点溶媒を、必要に応じて溶解助剤として使用することもできる。
更に、該電子受容性化合物および該有機塩基は、別々に乳化分散に掛けることができ、また混合後に高沸点溶媒に溶解し、引き続き乳化分散を行うことも可能である。該乳化分散液の粒子径は、好ましくは約1μmまたはそれ未満である。この場合、使用する該高沸点有機溶媒は、例えばJP-A-2-141279に記載されている高沸点オイルから、適切に選択することができる。これらの内で、エステル化合物の使用が、該乳化分散物の乳化安定性の観点から好ましく、またリン酸トリクレジルが特に好ましい。該オイルは、その混合物として、および他のオイルとの混合物として使用できる。
【0043】
該保護コロイドとして含まれる該水溶性ポリマーは、公知のアニオン性ポリマー、ノニオン性ポリマーおよび両性ポリマーから適切に選択することができる。好ましくは、該水溶性ポリマーは、その乳化が行われる温度において、水に対して約5%またはそれを越える溶解度を持つ。その具体的な例は、ポリビニルアルコールおよびその変性生成物、ポリアクリル酸アミドおよびその誘導体、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、エチレン-無水マレイン酸コポリマー、イソブチレン-無水マレイン酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、エチレン-アクリル酸コポリマー、酢酸ビニル-アクリル酸コポリマー、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエーテルを主成分とするポリウレタンコポリマー、スチレンアクリル酸ポリマー、アクリル酸またはメタクリル酸のポリマーおよびその誘導体、ポリエステルまたはその誘導体、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースおよびメチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、デンプン誘導体、アラビアゴムおよびアルギン酸ナトリウムを含む。これらの中では、ポリビニルアルコール、ゼラチン、およびセルロース誘導体が、特に好ましい。
該油性相と該水性相との混合比は、質量基準で、好ましくは0.02〜0.6なる範囲、およびより好ましくは0.1〜0.4なる範囲にある。該混合比が、0.02〜0.6なる範囲内にある場合、適当な粘度を維持することができ、また結果的に該塗布組成物の十分な生産性が得られ、またその安定性は優れたものとなる。
【0044】
混合塗布分散液:
レーザー-マーキング性材料の製造において、該塗布組成物は、該電子受容性現像剤を含有する、第二の現像剤塗布組成物と混合して、混合塗布分散液を製造することができる。該混合塗布分散液は、次に、レーザー-マーキングのための、レーザー-感受性記録層として使用するための基板上に塗布することができる。該塗布組成物と該第二の現像剤塗布組成物との間の、任意の適当な比を使用することができる。例えば、該比は、該電子供与性染料プリカーサの全質量と該現像剤の全質量との比が、約1:0.5〜約1:30なる範囲、好ましくは約1:1〜約1:10なる範囲となるように調節できる。
【0045】
該マイクロカプセル組成物を製造する際に、該保護コロイドとして使用される、該水溶性ポリマーおよび該乳化分散液を製造する際に、該保護コロイドとして使用される、該水溶性ポリマーは、該レーザー-感受性記録層のバインダとして機能し得る。該塗布組成物は、また該保護コロイドとは別に、バインダを添加し、また混合することによって製造することも可能である。該付随的なバインダとして、水に対する溶解性を持つものを使用することができる。その例は、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エピクロルヒドリン-変性ポリアミド、エチレン-無水マレイン酸コポリマー、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、イソブチレン-無水マレイン酸サリチル酸コポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アミド、メチロール-変性ポリアクリルアミド、デンプン誘導体、カゼインおよびゼラチンを含む。該バインダに耐水性を付与するために、これに耐水化剤を添加することができる。補助的にまたは代わりに、疎水性ポリマーのエマルション、例えばスチレン-ブタジエンゴムラテックス、またはアクリル樹脂エマルションを、これに添加することができる。
【0046】
任意の適当な塗布技術を使用して、該レーザー-感受性記録層を製造するために、基板を該混合塗布分散液で塗布するのに使用できる。該レーザー-感受性記録材料は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン化合物、ゼラチン、ポリビニルアルコール、カルボキシル-変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリスチレンまたはそのコポリマー、ポリエステルまたはそのコポリマー、ポリエチレンまたはそのコポリマー、エポキシ樹脂、アクリレート系樹脂またはそのコポリマー、メタクリレート系樹脂またはそのコポリマー、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂またはポリビニルブチラール樹脂を含むことができ、これらは、該塗膜の均一性および該塗布フィルムの強度を改善するのに有効であり得る。
【0047】
その他の添加剤:
上記マーク形成層におけるその他の成分は、特に限定されるものではなく、必要に応じて適切に選択することができ、またその例は、UV吸収剤として知られ、また酸化防止剤として知られる、公知の融解剤を含む。
融解剤は、レーザー-応答性を改善し、および/または該染料形成反応を促進するのに有効な量で、該マーク形成層中に、含めることができる。融解剤の例は、芳香族エーテル、チオエーテル、エステル、脂肪族アミド、およびウレイドを含む。その具体的な例は、JP-A-58-57989、JP-A-58-87094、JP-A-61-58789、JP-A-62-109681、JP-A-62-132674、JP-A-63-151478、JP-A-63-235961、JP-A-2-184489およびJP-A-2-215585に記載されている。
【0048】
該UV吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸系、シアノアクリレート系、およびシュウ酸アニリド系の吸収剤を含む。その具体的な例は、JP-A-47-10537、JP-A-58-111942、JP-A-58-212844、JP-A-59-19945、JP-A-59-46646、JP-A-59-109055、JP-A-63-53544、JP-B-36-10466、JP-B-42-26187、JP-B-48-30492、JP-B-48-31255、JP-B-48-41572、JP-B-48-54965、JP-B-50-10726、および米国特許第2719086号、同第3707375号、同第3754919号および同第4220711号に記載されている。
該酸化防止剤の好ましい例は、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、アニリン系およびキノリン系を含む。その具体的な例は、JP-A-59-155090、JP-A-60-107383、JP-A-60-107384、JP-A-61-137770、JP-A-61-139481およびJP-A-61-160287に記載されている。
該他の成分の塗布量は、好ましくは約0.05〜約1.0g/m2なる範囲、およびより好ましくは約0.1〜約0.4g/m2なる範囲内にある。該他の成分は、該マイクロカプセルの内部、または該マイクロカプセルの外部に、あるいは本発明の組成物の該電子受容性化合物の分散液中に添加することができる。
【0049】
該マーク形成層の形成:
本発明の該マーク形成層用の塗布組成物を得るために、上記の主な成分を、均一に混合し、選択されたポリマー媒体(バインダ)中に分散させることができる。この方法において、本発明の塗布組成物の混合比は、電子供与性染料プリカーサの全質量と電子受容性化合物の全質量との比が、約1:0.5〜約1:30なる範囲、好ましくは約1:1〜約1:10なる範囲となるような値である。
該マーク形成層内の電子供与性染料プリカーサの量は、約0.1〜5.0g/m2なる範囲にあることが好ましい。この範囲内において、十分な色濃度を達成することができ、しかも該レーザー-感受性記録層の透明性を維持することができる。より好ましくは、該電子供与性染料プリカーサの量は、約1.0〜約4.0g/m2なる範囲にある。
【0050】
該マーク形成層の調製において、該電子供与染料プリカーサ組成物またはそのマイクロカプセル組成物を準備する際に、該保護コロイドとして使用される、該水溶性ポリマー、および本発明の電子受容分散液を調製する際に、保護コロイドとして使用される、該水溶性ポリマー両者が、該マーク形成層のバインダとして機能する。
上記保護コロイドとは別の、もう一つのバインダを添加しかつ混合することも可能である。好ましくは、一般的に水溶性ポリマーが使用され、またその例は、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エピクロルヒドリン-変性ポリアミド、エチレン-無水マレイン酸コポリマー、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、イソブチレン-無水マレイン酸サリチル酸コポリマー、ポリアクリル酸アミド、メチロール変性ポリアクリルアミド、カゼインおよびゼラチンを含む。
該バインダに耐水性を付与するために、これに耐水化剤を添加することができ、また疎水性ポリマーのエマルション、具体的にはスチレン-ブタジエンラテックス、スチレンアクリル酸ポリマー、アクリル酸またはメタクリル酸系ポリマーまたはコポリマーおよびその誘導体、ポリエステルまたはそのコポリマーをこれに添加することができる。
【0051】
該マーク形成層を安全にかつ均一に被覆するために、また該被覆フィルムの強度を維持するために、本発明のマーク形成層は、更にメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシル-変性ポリビニルアルコール、ポリスチレンまたはそのコポリマー、ポリエーテル、ポリウレタン樹脂またはその誘導体、ポリエーテルを主成分とするポリウレタンコポリマー、ポリエチレンまたはそのコポリマー、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂またはデンプン化合物を含むことができる。
マーク形成層を製造すべく、基板を混合被覆分散液で被覆するために、水性または有機溶媒系の被覆組成物に適した公知の被覆法を使用する。
B. レーザーマーキング性媒体
支持層:
該レーザーマーキング性媒体は、該マーク形成層を被覆する基板として機能し得る、支持層を含むことができる。該マーク形成層を、以下に記載する隔離層上に被覆する場合には、該支持層および該隔離層は、同一のものであり得る。他の場合においては、該支持層は、該マーク形成層の下部であり得、即ち該入射レーザービームの方向から離れたものであり得る。
【0052】
透明なレーザーマーキング性材料を得るために、可視スペクトル範囲内の波長をもつ、透明な支持層を使用することができる。該透明な支持体の例は、合成ポリマー材料を含むが、これらに制限されず、その例は、ポリエステルフィルム、例えばポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート、セルローストリアセテートフィルム、ポリラクチドフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ナイロンフィルム、ポリオレフィンフィルム、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、またはBOPP、およびポリアクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、およびエポキシを含み、これらは単独で、または積層による2またはそれ以上の組合せとして使用できる。
【0053】
トップコートおよび中間層
該レーザー-感受性記録材料は、該支持体上に、少なくとも1種の付随的な層、例えばトップコートおよび/または中間層および下塗り層を含むことができる。該トップコートおよび中間層は、保護被覆層として機能して、該層の混合を減じまたは防止し、および/または該レーザー-感受性記録層にとって有害なものであり得る、ガス(例えば、酸素)を遮断することを可能とする。該トップコートおよび中間層においてバインダを使用することができるが、これは特に制限はない。例えば、該バインダは、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、およびセルロース誘導体を含むことができる。塗布適性を付与するために、様々な種類の界面活性剤を添加することができる。そのガス遮断特性を、更に改善するために、マイカ等の無機微粒子を、例えば該バインダの量を基準として、約2〜約20質量%なる範囲、より好ましくは約5〜約10質量%なる範囲の有効量で添加することができる。
下塗り層
下塗り層を、該レーザー感受性記録層を被覆する前に、該支持体上に設けて、該支持体に対する該レーザー感受性記録層の接着性を改善することができる。例えば、アクリレートコポリマー、ポリビニリデンクロリド、SBR、または水性ポリエステルを使用することができる。この層は、任意の適当な厚み、例えば約0.05〜約0.5μmなる範囲の厚みを持つものであり得る。
【0054】
該下塗り層は、硬化剤を用いて、硬化することができる。該硬化剤の使用は、該レーザー-感受性記録層塗布組成物中に含まれる水(これは、該レーザー-感受性記録層上に記録される像の劣化に導く可能性がある)の含有率による該下塗り層の膨潤を減じまたは防止するのに効果的であり得る。該硬化剤の例は、例えばジアルデヒド化合物、例えばグルタルアルデヒドまたは2,3-ジ-ヒドロキシ-1,4-ジオキサン、およびホウ酸を含む。任意の有効な量の硬化剤を、該下塗り層の材料に依存して、例えば所定の硬化度に応じて、約0.2〜約3.0質量%なる範囲の量で使用することができる。該硬化剤は、単独でまたは2種またはそれ以上の組合せで使用することができる。該下塗り層は、好ましくは該レーザー-感受性記録層の透明性を維持するのに効果的なものである。例えば、該下塗り層は、約1.45〜約1.75なる範囲の屈折率を持つ微粒子状物質を含むことができる。
【0055】
隔離層:
本発明の該レーザーマーキング性媒体の隔離層は、該マーク形成層と該レーザー照射源との間の媒体として定義される。これは、上部に該マーク形成層が塗布される、支持シートあるいは該マーク形成層の上部における塗布層であり得る。該隔離層および該マーク形成層は、塗布または加圧積層処理によって密接な接触状態に置かれ、あるいは接着層により隣接状態に置くことができる。後者の場合において、該接着物質は、以下に定義する隔離物質に関する同一の透過率基準を満たすべきである。この隔離物質の利点は、a) レーザーマーキング工程の、該マーク形成層の分解によって生じる、望ましからぬ化学物質の蒸気の放出を阻止し、b) 機械的な磨耗並びに、例えば大気中への、O2、O3およびSO2等の有害なガスの放出を含む、化学的な攻撃から、該マーク形成層を保護することにある。該有害ガスは、長期間保存した際に、マークの退色、バックグラウンドの曇り、または黄変を促進する傾向がある。
【0056】
本発明のレーザー-マーキング性媒体を使用する、用途および目的に対して選択された、レーザーの型に依存して、該隔離材料は、選択されたレーザーの特定波長に対して実質的に透明であるべきである。好ましくは、該隔離層の透過率は、少なくとも約70%以上、より好ましくは約80%またはそれ以上、および最も好ましくは約90%またはそれ以上である。該選択されたレーザーの特定の波長におけるより高い透過率は、該マーク形成層における、放出されたレーザーエネルギーの最少の減衰率を保証し、また結果として与えられたレーザー出力において、達成し得るマーキング速度を最大にすることを可能とする。該選択されたレーザーの特定波長における、より高い透過率に係る第二の利点は、該材料に望ましからぬ熱応力を誘発し、また物理的な歪みを生じる、該隔離媒体内で発生する熱が、最小化されることにある。
【0057】
更に、該隔離層材料は、該マーク形成温度よりも十分に高い、熱分解発生温度を持つべきである。これは、該マーキング工程中に該隔離物質の如何なる分解をも生じず、また結果として望ましからぬ化学物質の蒸気を放出しないことを保証するであろう。該電子供与性染料プリカーサをカプセル化する場合、本発明のマイクロカプセル化材料のTgは、該隔離層材料の熱分解発生温度を十分に下回る範囲内に入るように調節すべきである。該電子供与性染料プリカーサおよび該電子受容性化合物が、他の分散手段により分離されている場合には、該分散または分離媒体のガラス転移点または融点は、該隔離物質の熱分解発生温度を十分に下回るように選択すべきである。何れの場合にも、本発明の該隔離物質の、好ましい熱分解発生温度は、少なくとも約200℃、より好ましくは約250℃またはそれ以上とすべきである。
本発明の該隔離物質は、用途の要求に依存して、可視スペクトルの波長範囲(約400-700nm)において透明である必要はない。殆どの用途において、可視スペクトルの波長範囲において透明な隔離物質が好ましく、これは、機械的な磨耗並びに化学的な攻撃から、該隔離層によって保護されている、視認性のマークを与えるであろう。
【0058】
適当な隔離材料は、ポリマーフィルムまたは塗布組成物を包含し、その例は、以下に列挙するものを含むが、これらに限定されない:ポリオレフィンフィルム、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、または二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、ポリエステルフィルム、例えばポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート、セルローストリアセテートフィルム、ポリラクチドフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ナイロンフィルム、およびポリウレタン樹脂またはポリウレタンコポリマーを主成分とする塗布組成物、例えばウレタン-アクリレートコポリマーおよびポリエーテルポリウレタンコポリマー、ポリアミド樹脂、エピクロルヒドリン-変性ポリアミド、ポリアクリレート、ポリ(メタ)アクリレートまたはその誘導体、コア-シェルアクリル系ラテックス、ポリアクリル酸アミド、スチレンアクリル酸ポリマーポリスチレンまたはそのコポリマー、例えばスチレン-無水マレイン酸コポリマーおよびスチレン-ブタジエンゴムラテックス、エポキシ樹脂、エチレン-無水マレイン酸コポリマー、イソブチレン-無水マレイン酸サリチル酸コポリマー、ポリカーボネート、ポリエステルまたはそのコポリマー、ポリエーテル、ポリエーテルを主成分とするポリエチレンまたはそのコポリマー、ポリビニルブチラール樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびポリビニルピロリドン。CO2レーザーマーキング性媒体に関連して、ポリオレフィンフィルムおよびポリウレタンまたはポリウレタンコポリマー樹脂を主成分とする塗布配合物は、本発明の該隔離層用の好ましい材料である。レーザーマーキング装置を説明する以下の章において、掲載されるレーザーの型の全ての放出波長に対して、上に列挙した材料全てが適している訳ではないことを理解すべきである。
【0059】
他の層:
本発明のレーザー-マーキング性材料は、更に該基板上に、他の層、例えばプライマー層、剥離ライナーを伴う接着層を含むことができる。該プライマー層は、該マーク形成層の該基板に対する接着性を改善するために、該マーク形成層の塗布前に設けることができる。用途の要求に依存して、接着層および、必要な場合には、剥離層を、該マーク形成層とは反対側の該基板上に塗布/積層して、レーザーマーキング性自己接着性媒体を形成することができる。
プライマー層として、アクリレートコポリマー、ポリビニリデンクロリド、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、または水性ポリエステルを使用することができ、また該層の厚みは、好ましくは0.05〜0.5μmなる範囲にある。該プライマー層上に該マーク形成層を塗布する際に、該プライマー層が、該マーク形成層用の組成物中に含まれる水分によって膨潤し、これにより、該マーク形成層における該マークの品質を劣化させる可能性がある場合が存在する。従って、該プライマー層は、硬化剤、例えばジアルデヒド化合物、例えばグルタルアルデヒドまたは2,3-ジヒドロキシ-1,4-ジオキサン、およびホウ酸により硬化することが好ましい。これらの硬化剤は、単独でまたは2またはそれ以上の組合せで使用することができる。
【0060】
該硬化剤の添加量は、凡そ該プライマー層の材料に応じて決定され、また所望の硬化度に応じて、0.2〜3.0質量%なる範囲から選択される。好ましくは、該層は、また該レーザー-マーキング性媒体の透明性を維持するという観点から、約1.45〜約1.75なる範囲の屈折率を持つ微粒状物質をも含む。
レーザー-マーキング性媒体の形成:
本発明のレーザー-マーキング性媒体は、好ましくは以下に記載する方法によって製造することができるが、これに限定されない。
本発明のレーザー-マーキング性媒体製法は、以下のような諸工程を含む:該支持体に該プライマー層(使用する場合には)を塗布する工程;該支持体上の該プライマー層上に、マーク形成層(使用する場合には)を塗布する工程;および該支持体層が、上記の隔離層ではない場合に、該マーク形成層の上部に隔離層を塗布する工程。該支持体層が、該隔離層としても機能する場合には、該プライマー層は、場合により該支持体の両側に塗布して、該マーク形成層の反対側における追加の印刷を容易にすることができる。必要に応じて、他の層を形成することも可能である。
【0061】
本発明のレーザー-マーキング性媒体の製法において、該支持体層が、該隔離層として機能しない場合には、該マーク形成層および該隔離層は、場合により同時に塗布することができ、またこの場合において、該マーク形成層および該隔離層の塗布組成物は、多層塗布処理に掛けられ、それにより該マーク形成層および該隔離層を、同時に形成することができる。多層同時塗布技術は、該マーク形成層が、電子供与性染料プリカーサ分散液の、および電子受容性化合物の分散液の、別々の層を更に含む場合には、特に適している。
あるいはまた、本発明のレーザー-マーキング性媒体は、以下の順序にて、公知の塗布法により順次塗布することができる:該プライマー層、該マーク形成層、および該隔離層。これら塗布法の例は、ブレードコーティング法、エアーナイフコーティング法、グラビアコーティング法およびバーコーティング法を含むが、これらに限定されない。
本発明のレーザー-マーキング性媒体の様々な構成を、本発明の精神の範囲内において以下に例示するが、これらに限定されない。
【0062】
図1に示した態様において、該マーク形成層1は、該マーク形成層上に塗布またはこれと積層されていてもよい、支持体2と隔離層3との間に挟まれている。該マーク形成層は、カプセル壁5によってカプセル化されている電子供与性染料プリカーサ4、および電子受容性化合物6を含み、これら両者は、該レーザー-マーキング性材料が、該ポリマーのTg以下の周囲温度下にある場合には、反応距離に極近い状態にあるが、該カプセル壁および該媒体のポリマーによって、直接接触することは防止されている、同一のポリマー媒体7内に配置されている。レーザービーム8を通して、該マーク形成層にエネルギーを放出し、また該媒体温度を該カプセル壁のTgを越える温度まで高めると、該カプセル壁が膨張し、かつ開放されて、移動または拡散によって、これら2種の化合物間の直接的な接触に導き、また該染料プリカーサが、染料に転化される。該マーキング工程中に発生する、該マーク形成層内の揮発性化合物は、該隔離層の下部に維持される。その結果、望ましからぬ化学物質が遊離されることはない。
【0063】
図2に示した本発明の第二の態様では、電子供与性染料プリカーサ4および電子受容性化合物6は、上記カプセル壁の値と類似するガラス転移温度Tgを持つ、随意の第三のポリマースペーサ層9によって隔離された、ポリマー媒体7'および7"(これらは同一または異なる物質であり得る)の2種の別々の層内に分散され、またこれら別々の層として塗布され、また追加のレーザー吸収性増強添加剤10は、場合によりスペーサ層のみに、またはこれと該電子受容性層との両者に分散させることができる。
この態様において、該入射レーザービームのエネルギーが、露光領域の増感剤によって吸収された場合、該スペーサポリマーは、局所的に溶融または軟化され、該電子供与性染料プリカーサと該電子受容性物質との間の層間拡散および反応の発生を可能とし、マーク11を形成する。この配列は、レーザー-マーキング性媒体の熱安定性を高めて、マークが形成されない領域における曇りを発生する、該電子供与性染料プリカーサと該電子受容性物質との間の望ましからぬ反応の発生を防止する。
【0064】
図3に示した更に別の態様においては、該レーザー-マーキング性媒体は、図1に示した態様と同一の構成を持つ。しかし、該レーザービーム8は、該支持体側から照射され(定義に基いて、この支持体層12は、今や隔離層となっている)、該支持体は、該レーザービームの波長に対して実質的に透明であるが、可視スペクトルの波長範囲においては、実質的に不透明である。他方、該隔離層13は、可視スペクトルの波長範囲において実質的に透明であり、従って該マーク形成層1において形成されたマークは、裏側から視認可能なものとなる。場合により、接着層(図示せず)を、該支持体/隔離層12の他方の側に塗布できるが、該層も、必ず該レーザービームの波長に対して実質上透明でなければならない。
【0065】
図4に示された上記態様の1変形において、隔離層14および15両者は、可視スペクトルの波長範囲において実質的に透明である。しかし、該隔離層14は、また放出波長λ(1)を持つレーザービーム8'に対して実質上透明であり、一方該隔離層15は、また放出波長λ(2)を持つレーザービーム8”に対して実質上透明であり、ここでλ(1)およびλ(2)は、同一であっても異なっていてもよく、これら2つの隔離層は、λ(1)およびλ(2)両者が異なっている場合には、これら両者に対して実質的に透明であっても、また透明でなくてもよい。これら2つの隔離層は、剛性または可撓性の何れでもよく、あるいは一方が剛性であり、他方が可撓性であり、および/または異なる材料から製造されたものであり得る。図4において、該カプセル化された電子供与性染料プリカーサ4および該電子受容性化合物は、更にレーザー吸収性添加剤16の粒子をも含む、該マーク形成層1のポリマー媒体7中に局在している。
このように、該マークは、両側から、同一または異なる周波数のマーキングビームによって形成し得る。この態様において形成された該マークは、従って両側からの、化学的な攻撃および機械的な磨耗に対して耐性である。更に、該マーキングビームのエネルギーは、2つの隔離層により挟まれている、該マーク形成層においてのみ吸収され、従って該マーキング工程中に、分解された化学物質または蒸発された成分が、大気中に放出されることはない。
【0066】
図5に示された更に別の態様において、該マーク形成層1は、隔離層/支持体16上の接着層としても機能する。該カプセル化された電子供与性染料プリカーサ4および該電子受容性化合物両者は、接着性媒体17中に分散される。この態様の該レーザー-マーキング性媒体は、製品包装表面に接着され、また次いでレーザービーム8でマーキングすることができ、あるいはその逆も可能である。
レーザー-マーキング装置:
本発明のレーザー-マーキング性媒体は、CO2レーザー、YAGレーザー、固体レーザー、例えばルビーレーザー、または例えばInGaAsPおよびGaAsレーザー等を含むがこれらに限定されないダイオードレーザー等のレーザーによってマーキング可能である。例示的な一態様において、CO2レーザーを、このようなレーザーとして使用でき、これは、該塗布された物質上に高濃度のマークを設ける上で効果的である。例えば、放出波長範囲9.3-10.6μmを持つ、5-20W CW CO2レーザーを使用することができる。好ましいレーザー-マーキング装置は、XまたはX/Y軸に1またはそれ以上の回転する鏡を備え、コンピュータでビームを制御できる、ガルバノメータービームステアリング技術を使用するものである。ベクトルおよびラスター(Raster)走査スキーム両者を、用途に応じて使用することができる。好ましくは、レーザービーム性能、f-θレンズ性能、および焦点距離の組合せは、該焦点面におけるマーキングスポット-サイズを、約300μm以下、より好ましくは約100μm以下に調節することを可能とする。
【0067】
C. 塗布組成物およびレーザー-マーキング性材料
もう一つの局面によれば、基板上にレーザー-記録性の層等の塗膜を形成するのに使用される、塗布組成物が提供される。該塗膜は、多層レーザー-記録性材料の一部を構成し得る。この塗布組成物を使用することによって、比較的高品質のレーザーマークを得ることができる。
該塗布組成物は、色-形成剤の少なくとも一つの成分を含む。該色-形成剤は、レーザーに暴露した際に所定の色を発生するように寄与できる。例えば、該色-形成剤は、レーザーに暴露した際に少なくとも他の成分と反応する、少なくとも一つの成分を含むことができ、ここでこのような反応が、色の形成をもたらす。該色-形成剤は、電子供与性染料プリカーサ、電子受容性現像剤、あるいはこれら成分両者を含むことができ、レーザーに暴露した際の、これら成分間の該反応が、色の形成をもたらす。該塗布組成物は、上で論じた材料の何れかを含むことができる。例えば、該電子供与性染料プリカーサは、1またはそれ以上の上で論じた電子供与性染料プリカーサを含むことができる。同様に、該電子受容性現像剤は、1またはそれ以上の上で論じた電子受容性現像剤を含むことができる。
【0068】
好ましい一態様において、多数の塗布組成物を形成することができ、ここで第一の塗布組成物は、該電子供与性染料プリカーサを含み、かつ第二の塗布組成物は、該電子受容性現像剤を含む。このような第一および第二組成物は、これら組成物の安定性を改善するために、別々に維持することができ、またその使用前に一緒に併合し、混合することができる。
該電子供与性染料プリカーサは、例えばトリフェニルメタンフタリド系の化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、フルオレン系化合物、ピリジン系化合物、ピラジン系化合物およびこれらの組合せを含むことができる。該電子供与性染料プリカーサと反応させるための該電子受容性現像剤は、酸性物質、例えば活性化されたベントナイト、サリチレートの金属塩、フェノール化合物、有機酸またはその金属塩、オキシベンゾエート、およびこれらの組合せを含むことができる。
【0069】
該組合せは、上で論じた添加剤の何れかを含むことができる。付随的にあるいは別途に、該組成物は、少なくとも1種の助剤、例えば界面活性剤、消泡剤、可塑剤、レオロジー特性改善剤、殺生物剤、静電防止剤、溶剤、放射線硬化用の光開始剤、またはこれらの組合せを含むことができる。該助剤は、またレーザー-マーキング性能を改善するための添加剤、例えば伝熱剤、溶融剤、UV吸収剤、酸化防止剤またはこれらの組合せを含むことも可能である。
該伝熱剤は、943cm-1におけるCO2レーザー放出エネルギーを吸収し、またこれを熱に転化し得る化合物を含むことができる。該伝熱剤は、例えばマイカ、ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、および900cm-1〜1000cm-1なる波長範囲において、強力な吸収性を持つ、様々な無機並びに有機化合物を含むことができる。該溶融剤は、レーザー応答性を改良するように機能し得る。その例は、芳香族エーテル、チオエーテル、エステル脂肪族アミド、ウレイドまたはこれらの組合せを含むことができる。該UV吸収剤は、例えばベンゾフェノン系UV吸収剤、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤、サリチル酸系UV吸収剤、シアノアクリレート系UV吸収剤、シュウ酸アニリド系UV吸収剤、またはこれらの組合せを含むことができる。該酸化防止剤は、例えばヒンダードアミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アニリン系酸化防止剤、キノリン系酸化防止剤、またはこれらの組合せを含むことができる。
【0070】
該塗布組成物は、また上記色-形成剤の媒体として機能し得るバインダをも含む。該バインダは、上で論じたバインダから選択することができる。好ましくは、該バインダは、塗膜またはフィルム内で加工することができる。一例示的な態様において、該バインダは、置換または無置換のポリウレタン化合物を含むことができる。該置換または無置換のポリウレタン化合物は、イソシアネートと、例えば「ポリウレタンハンドブック(Polyurethane Handbook)」, 第二版, Dr. Gunter Oertel編, ハンサー出版社(Hanser Publishers), ミュンヘン, pp. 17-25 (1994)において論じられている、様々な有機化合物との反応により生成されるポリウレタンを含むことができる。この文献の内容を、参考としてここに組入れる。塗膜を形成するのに適した任意の置換または無置換のポリウレタン化合物、例えばポリエステルから誘導されたポリウレタン、ポリエーテルから誘導されたポリウレタン、ポリカーボネートから誘導されたポリウレタン、ヒマシ油から誘導されたポリウレタン、またはこれらの組合せを使用することができる。該置換または無置換のポリウレタン化合物は、該バインダの全含有率の少なくとも約50質量%なる量で存在し得る。好ましくは、該置換または無置換のポリウレタン化合物は、干渉マークの形成を減じもしくは実質的に排除するのに有効な量で存在し得る。例えば、該置換または無置換のポリウレタンは、レーザーエネルギー、例えばCO2レーザービームに暴露した後に、実質上干渉マークを生成しないものであり得る。好ましくは、該バインダは、該色-形成剤に対して実質上化学的に不活性であり、また結果として、好ましくは該色-形成反応を妨害することのないものである。該バインダは、水溶性の樹脂であり得る。
【0071】
例示的な一態様において、該ポリウレタン化合物は、該塗布組成物中に存在する実質的に全てのバインダを構成し得る。あるいはまた、追加のバインダ材料を、該ポリウレタン化合物と組み合わせて使用することができる。このような追加のバインダ材料は、デンプンおよびその変性誘導体、セルロースおよびその変性誘導体、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、シリケート樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリル系樹脂、エポキシ、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアクリル酸アミド、スチレン-アクリル酸コポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、エチレン-無水マレイン酸コポリマー、イソブチレン-無水マレイン酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、アクリル系、エチレン-アクリル酸コポリマー、酢酸ビニル-アクリル酸コポリマー、およびこれらの組合せを含む。追加のバインダを、例えば、このような追加のバインダによって付与される特別な技術的特性が望まれる場合に、使用することができる。
【0072】
該塗布組成物は、任意の適当なバインダを含むことができる。例示的な一態様において、該バインダは、該塗布組成物の全固形分質量の少なくとも約50%なる量で存在し得る。例示的な一態様において、該バインダは、該塗布組成物の全固形分質量の約5%〜約40%なる範囲、より好ましくは約10%〜約20%なる範囲、および最も好ましくは約15%なる量で存在し得る。
該塗布組成物は、該組成物の様々な成分の実質的に全てを含有する、ワン-パート(single-part)塗布組成物であり得る。あるいはまた、多数の塗布組成物を使用して、該組成物の使用前の保存安定性を与えることも可能であり、また該バインダは、該多数の塗布組成物の何れに配合することも可能である。
【0073】
該塗布組成物は、任意の適当な技術を利用して、塗膜またはフィルムを形成するのに使用できる。例えば、該塗膜またはフィルムは、水性、溶液型、例えば有機溶剤型、放射線-硬化型、例えばUV-輻射線、および/または電子ビーム硬化型のものであり得る。該ポリウレタン化合物を含有する該バインダを、該バインダとして使用して、該塗布組成物の特定の塗膜形成法とは無関係に、干渉マーク作用を減じまたは実質的に排除することを可能とする。
電子受容性現像剤と相溶性の任意の適当な電子供与性染料プリカーサを、該色-形成剤において使用できる。極めて高濃度にてマイクロカプセル中に配合でき、また高いマーク濃度を与えることのできる、以下の一般的な構造式1により表される化合物を、使用することができる。
式1:
【0074】
【化4】
【0075】
ここで、R1およびR2は、アルキル基、例えばブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、プロピル基、エチル基、メチル基等を表し;R3は、水素原子、またはアルキル基、例えばブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、プロピル基、エチル基、メチル基等を表し;またR4は、イミノ-ベンゼン基あるいは水素原子を表す。一例示的な化合物は、以下の式2で表されるものである。
式2:
【0076】
【化5】
【0077】
好ましい一態様において、該電子供与性染料プリカーサの溶解度は、酢酸エチル100g当たり約10gを越え、より好ましくは酢酸エチル100g当たり約15gを越え、また最も好ましくは酢酸エチル100g当たり約18gを越えることができる。
例示的な一態様において、該電子供与性染料プリカーサは、約80質量%を越える、より好ましくは約90質量%を越える、および最も好ましくは約100質量%なる量で、上記構造式1によって表される化合物を含む。
該色-形成剤は、任意の適当な技術、例えば上記の方法によって、該塗布組成物中に配合することができる。例えば、該色-形成剤は、a) 固体粉末形状にある該色-形成剤を、該バインダ媒体に分散し、b) 溶媒中に該色-形成剤を溶解し、この色-形成剤の溶液を、該バインダ媒体に添加し、およびc) 該色-形成剤をマイクロカプセル化し、該カプセル化された色-形成剤を、該バインダ媒体に分散させることによって配合することができる。例示的な一態様においては、該色-形成剤を、マイクロカプセル化し、該バインダ媒体に分散させる。例えば、該色-形成剤は、上記方法でマイクロカプセル化することができる。
【0078】
該色-形成剤の少なくとも一つの成分は、マイクロカプセル状態で該塗布組成物中に存在し得る。例えば、該電子供与性染料プリカーサおよび/または該電子受容性現像剤を、マイクロカプセル化することができる。これは、例えばこのような成分の一方または両者を、該塗布組成物の任意の他の成分との接触から保護することが推奨されるか否かに依存する可能性がある。例示的な一態様において、該染料プリカーサをマイクロカプセル化し、該現像剤から分離することができる。
次に、該色-形成剤、例えば電子供与性染料プリカーサの成分をマイクロカプセル化する例示的な1方法を説明する。マイクロカプセル化のためには、表面重合法を、該マイクロカプセルのコアとなる該電子供与性染料プリカーサを、疎水性有機溶媒に溶解または分散させて、油相を形成し、該油相を、次に水溶性ポリマーを水に溶解することにより調製した水性相と混合する。次いで、得られる物質を、例えばホモジナイザーを使用して乳化および分散させ、次に加熱して、該油状の液滴表面において、ポリマー形成反応を行い、それによりポリマー物質のマイクロカプセル壁を形成する。該ポリマー物質生成用の試薬は、該油状液滴の内部および/または該油状液滴の外部に添加することができる。該ポリマー物質の具体的な例は、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ウレア-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂を含む。これらの中では、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステルおよびポリカーボネートが好ましく、またポリウレタンおよびポリウレアが、特に好ましい。例えば、ポリウレアを、マイクロカプセル壁形成材料として使用する場合、該マイクロカプセル壁は、ポリイソシアネート、例えばジイソシアネート、トリイソシアネート、テトライソシアネートまたはポリイソシアネートプレポリマーと、ポリアミン、例えばジアミン、トリアミン、またはテトラミン、2またはそれ以上のアミノ基を含むプレポリマー、ピペラジンまたはその誘導体、またはポリオールとを、水性相中で、界面重合法に従って容易に形成することができる。
【0079】
ポリウレアおよびポリアミドで形成した複合壁またはポリウレタンおよびポリアミドで形成した複合壁は、例えばポリイソシアネートおよびこれとの反応により該カプセル壁を形成するための第二の物質(例えば、酸クロリド、ポリアミドまたはポリオール)とを、水溶性ポリマーの水性溶液(水性相)またはカプセル化すべき油状媒体(油相)と混合し、乳化および分散させ、次いで加熱する等の方法で製造することができる。ポリウレアおよびポリアミドを用いて形成される該複合壁の製造方法は、JP-A-58-66948において詳しく説明されている。
【0080】
該ポリイソシアネート化合物としては、3またはそれ以上の官能基の内一つのイソシアネート基を持つ化合物が好ましく、また二官能性イソシアネート化合物を、これと組合せて使用することができる。その具体的な例は、主成分としての、ジイソシアネート、例えばキシレンジイソシアネートまたはその水素添加生成物、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはその水素添加生成物、トリレンジイソシアネートまたはその水素添加生成物、およびイソホロンジイソシアネート;これらのダイマーまたはトリマー(ビウレットまたはイソシアヌレート)、ポリオールの付加生成物としての多官能性を持つ化合物、例えばトリメチロールプロパン、および二官能性イソシアネート、例えばキシリレンジイソシアネート;ポリオールの付加生成物としての化合物、例えばトリメチロールプロパン、および二官能性イソシアネート、例えばキシリレンジイソシアネートであって、その中に導入されたポリマー化合物、例えば活性水素を持つポリエーテル、例えばポリオキシエチレンオキサイドを持つもの;およびベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合生成物を含む。
【0081】
好ましくは、JP-A-62-212190、JP-A-4-26189、JP-A-5-317694および日本国特許出願第8-268721号に記載されている化合物を使用することができる。該ポリイソシアネートとの反応を通して形成される該マイクロカプセル壁の一構成成分としての、該水性相および/または該油相に添加される該ポリオールおよび/または該ポリアミンの具体例は、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ソルビトールおよびヘキサメチレンジアミンを含む。ポリオールを添加する場合、ポリウレタン壁が生成される。該マイクロカプセルを形成するためのポリイソシアネート、ポリオール、反応触媒、およびポリアミンの例は、「ポリウレタンハンドブック(Polyurethane Handbook)」Keiji Iwata著, 日刊工業新聞社刊(1987)および「ポリウレタンハンドブック(Polyurethane Handbook)」, 第二版, Dr. Gunter Oertel編, ハンサー出版社(Hanser Publishers), ミュンヘン(1994)に記載されている。
【0082】
一例示的な態様において、該染料プリカーサ粒子全体積の少なくとも約90%が、約0.3〜約12μmなる範囲、好ましくは約0.2〜約5μmなる範囲、および最も好ましくは約0.2〜2μmなる範囲内の平均粒子径を持つマイクロカプセル中に存在する。好ましくは、該マイクロカプセルは、約0.3〜約12μmなる範囲、好ましくは約0.2〜約5μmなる範囲、および最も好ましくは約0.2〜2μmなる範囲内の平均粒子径を持つ。該マイクロカプセル壁の厚みは、約0.01〜約0.3μmなる範囲内であり得る。該懸濁液中の該マイクロカプセルの粒径は、該懸濁液を水性溶液に希釈し、ミー散乱理論に基くレーザー散乱法を利用して該粒径および分布を決定することにより測定できる。このような測定のために使用される典型的な装置は、ホリバ(Horiba's) LAシリーズ、ベックマンコールター(Beckman Coulter's) LSシリーズ、またはマルバーンインスツルメンツマスターサイザー(Malvern Instruments' Mastersizer)シリーズである。
【0083】
該マイクロカプセル化反応は、また該マイクロカプセル壁が、約150℃〜約190℃なる範囲、好ましくは約160℃〜約180℃なる範囲、および最も好ましくは約165℃〜約175℃なる範囲のガラス転移温度:Tgを持つように制御することができる。該マイクロカプセル壁のTgは、公知の示唆熱分析法、例えばDSC(示唆走査熱量計)またはDDSC(ダイナミックDSC)によって測定することができ、該測定装置は、種々の温度範囲に渡る、比熱(Cp)の変化を測定する。マイクロカプセル-含有懸濁液およびブランク懸濁液両者を、測定前に、同一のサンプルトレーに配置する。このような測定のために使用される典型的な装置は、パーキンエルマーダイアモンド(Perkin Elmer Diamond) DSC、サファイアDSC、ハイパーDSCTM、またはTAインスツルメンツ(Instruments) Q-シリーズである。
【0084】
該マイクロカプセルの製造方法の様々な反応条件を、好ましい諸特性を持つマイクロカプセルを得るために制御し、調節することができる。これら条件は、例えば該電子供与性染料プリカーサの乳化方法、該マイクロカプセル壁を形成するためのポリイソシアネートおよびポリアミンの添加速度およびその量、並びに混合並びに反応温度、時間および攪拌を含むことができる。該反応において、該反応速度は、例えば高い反応温度を維持することにより、あるいは適当な重合触媒を添加することによって高めることができる。
該マイクロカプセル壁は、更に特定の用途に応じて、金属-含有染料、電荷調節剤、例えばニグロシン、および/または他の添加物質を含むことができる。これら添加物質は、カプセル壁製造中に、該壁に含め、あるいは該マイクロカプセル化工程中の他の時点において添加することができる。該カプセル壁表面の帯電特性を調節するため、モノマー、例えばビニルモノマーを、必要に応じて、グラフト-重合することができる。
更に、低温において優れた物質の透過性を持ち、また高い着色特性を持つマイクロカプセル壁を製造するために、該壁材料として使用される該ポリマーにとって適した可塑剤を使用することができる。該可塑剤は、約50℃またはそれ以上、およびより好ましくは約120℃またはそれ以上の融点を持つことができる。可塑剤としては、常温において固体状態にあるものを、好ましく使用することができる。例えば、該壁材料が、ポリウレアまたはポリウレタンを含む場合、該可塑剤としては、ヒドロキシル化合物、カルバメート化合物、芳香族アルコキシ化合物、有機スルホンアミド化合物、脂肪族アミド化合物、アリールアミド化合物またはこれらの組合せを使用することができる。
【0085】
上記油相を製造する際に、該電子供与性染料プリカーサ化合物を溶解することによって、該マイクロカプセルのコアを形成するのに使用する疎水性有機溶媒として、約100〜約300℃なる範囲の沸点を持つ有機溶媒を使用することができる。その具体的な例は、エステル化合物、ジメチルナフタレン、ジエチルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、ジメチルビフェニル、ジイソプロピルビフェニル、ジイソブチルビフェニル、1-メチル-1-ジメチルフェニル-2-フェニルメタン、1-エチル-1-ジメチルフェニル-1-フェニルメタン、1-プロピル-1-ジメチルフェニル-1-フェニルメタン、トリアリールメタン(例えば、トリトルイルメタンまたはトルイルジフェニルメタン)、ターフェニル化合物(例えば、ターフェニル)、アルキル化合物、アルキル化ジフェニルエーテル(例えば、プロピルジフェニルエーテル)、水添ターフェニル(例えば、ヘキサヒドロターフェニル)およびジフェニルターフェニルを含む。これらの中では、乳化分散液の乳化安定性の観点から、好ましくはエステル化合物を使用することができる。該エステル化合物の例は、ホスフェート、例えばトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ブチルホスフェート、オクチルホスフェート、またはクレジルフェニルホスフェート;フタレート、例えばジブチルフタレート、2-エチルヘキシルフタレート、エチルフタレート、オクチルフタレートまたはブチルベンジルフタレート;ジオクチルテトラヒドロフタレート;ベンゾエート、例えばエチルベンゾエート、プロピルベンゾエート、ブチルベンゾエート、イソペンチルベンゾエートまたはベンジルベンゾエート;アビエテート、例えばエチルアビエテートまたはベンジルアビエテート;ジオクチルアジペート;イソデシルサクシネート;ジオクチルアゼレート;オキサレート、例えばジブチルオキサレートまたはジペンチルオキサレート;ジエチルマロネート;マレエート、例えばジメチルマレエート、ジエチルマレエートまたはジブチルマレエート;トリブチルシトレート;ソルベート、例えばメチルソルベート、エチルソルベートまたはブチルソルベート;セバケート、例えばジブチルセバケートまたはジオクチルセバケート;エチレングリコールエステル、例えば蟻酸モノエステルまたはジエステル、酪酸モノエステルまたはジエステル、ラウリン酸モノエステルまたはジエステル、パルミチン酸モノエステルまたはジエステル、ステアリン酸モノエステルまたはジエステル、またはオレイン酸モノエステルまたはジエステル;トリアセチン;ジエチルカーボネート;ジフェニルカーボネート;エチレンカーボネート;プロピレンカーボネート;およびボレート、例えばトリブチルボレートまたはトリペンチルボレートを含む。
【0086】
該疎水性有機溶媒は、単独でまたは2種またはそれ以上の組合せで使用することができる。これらの中で、トリクレジルホスフェートは、これが高いエマルションの安定性を与えることから、好ましくは単独であるいは他の溶媒との混合物として使用することができる。カプセル化すべき電子供与性染料プリカーサが、該疎水性有機溶媒に対して低い溶解度を持つ場合には、高い溶解度を持つ低沸点溶媒を、付随的に組合せて使用することができる。該低沸点溶媒の例は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、およびメチレンクロリドを含む。
上記レーザー-感受性記録材料のレーザー-感受性記録層において、該電子供与性染料プリカーサ化合物を使用する、例示的な一態様においては、該電子供与性染料プリカーサの含有率は、好ましくは約0.1〜約5.0g/m2なる範囲、およびより好ましくは約1.0〜約4.0g/m2なる範囲内にある。如何なる特別な理論にも拘泥するつもりはないが、該電子供与性染料プリカーサの含有率が、約0.1〜約5.0g/m2なる範囲内にある場合には、十分な着色強度を得ることができ、また該含有率が5.0g/m2またはそれ以下である場合には、十分な着色強度が達成され、しかもレーザー-感受性記録層の透明性をも維持することができるものと考えられる。
【0087】
マイクロカプセル製造中、水溶性樹脂を、バインダとして該反応混合物の該水性相に添加して、該乳化された分散液および生成したマイクロカプセルを安定化することができる。該水溶性樹脂の型およびその添加量は、該塗布組成物の粘度が、約5センチポアズ(cP)〜約30cPなる範囲、好ましくは約10cP〜約25cPなる範囲、および最も好ましくは約10cP〜約20cPなる範囲となるように選択することができる。粘度は、小さなサンプルアダプタ+S21スピンドルを備えた、ブルックフィールドプログラマブルDV-II+粘度計を、100-200RPMにて用いて測定することができる。サンプルの量に応じて、レギュラー(Regular) RVシリーズのスピンドルを使用することもできる。
該油相と該水性相とを更に均一に乳化し、かつ分散させるために、該油相および該水性相の少なくとも一方に、界面活性剤を添加することができる。乳化用の任意の適当な界面活性剤を使用することができる。該界面活性剤の添加量は、該油相の質量を基準として、約0.1%〜約5%なる範囲、より好ましくは約0.5〜約2%なる範囲内であり得る。該水性相中に含まれる該界面活性剤としては、該バインダとの相互作用を介して析出または凝集を起こさないものを、アニオン性およびノニオン性界面活性剤から適切に選択して使用することができる。該界面活性剤の好ましい例は、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、およびポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)を含む。
【0088】
該乳化は、上記成分を含有する油相および該バインダおよび該界面活性剤を含有する水性相を、微粒子の乳化のために通常使用されているデバイス、例えば公知の乳化装置、例えばホモジナイザー、マントンゴーリン(Manton Gaulin)、超音波分散装置、溶解装置またはカディー(KADY)ミルを使用して、高速攪拌または超音波分散処理することで、実施することができる。乳化処理後、得られるエマルションを、該カプセル壁-形成反応を促進する目的で、30〜70℃なる範囲の温度まで加熱することができる。この反応中、該エマルションに水を添加して、該カプセル同士の衝突の確率を下げ、あるいは十分な攪拌を行って、該カプセルの凝集を防止することができる。
更に、該ポリウレタン化合物を含有する分散液を、該反応中に添加して、凝集の発生を減じ、またはこれを実質的に防止することができる。この反応の進行に伴う、二酸化炭素ガスの発生を観測することができ、またその生成の停止を、該カプセル壁-形成反応の完了と見做すことができる。一般に、該反応を、数時間継続して、目的とするマイクロカプセルを得ることができる。
該電子供与性染料プリカーサと反応し得る、該電子受容性化合物の例は、酸性物質、例えば活性化されたベントナイト、サリチル酸の金属塩、フェノール化合物、有機酸またはその金属塩、オキシベンゾエートまたはこれらの組合せを含む。
【0089】
該電子受容性化合物の具体的な例は、ビスフェノール化合物、例えば2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)プロパン(一般名:ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジクロロフェニル)プロパン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)-2-メチルペンタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,4-ビス(p-ヒドロキシフェニルクミル)ベンゼン、1,3-ビス(p-ヒドロキシフェニルクミル)ベンゼン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホンおよびビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジルエステル;サリチル酸誘導体、例えば3,5-ジ-α-メチルベンジルサリチル酸、3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸、3-α,α-ジメチルベンジルサリチル酸および4-(β-p-メトキシフェノキシエトキシ)サリチル酸;これらの多価金属塩(特に、亜鉛塩およびアンモニウム塩が好ましい);オキシベンゾエート、例えばp-ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシルエステルおよびβ-レゾルシン酸2-フェノキシエチルエステル;およびフェノール化合物、例えばp-フェニルフェノール、3,5-ジフェニルフェノール、クミルフェノール、4-ヒドロキシ-4'-フェノキシジフェニルスルホンを包含する。これらの中で、サリチル酸の金属塩、例えばサリチル酸亜鉛が、好ましく使用できる。例えば、このような現像剤を使用することによって、良好な着色特性を達成することができる。使用できる追加の電子受容性現像剤は、米国特許第6,797,318号、同第5,409,797号および同第5,691,757号に記載されている。これら米国特許の内容を、参考としてここに組入れる。該電子受容性化合物は、単独でまたはその2種またはそれ以上の組合せとして使用することができる。
【0090】
該電子受容性化合物は、サンドミル内で、水溶性ポリマー、有機塩基、および他の色-形成助剤と共に、調製された固体分散物として使用することができ、あるいは僅かに水溶性であるか、あるいは水-不溶性である高沸点溶媒中に溶解し、バインダ(水性相)としての、水性ポリウレタンおよびその変性誘導体と混合し、次いで、例えばホモジナイザーで乳化することによって得られる、乳化分散物として使用することができる。この場合、必要により、溶解助剤として低沸点溶媒を使用することができる。
更に、該電子受容性化合物および該有機塩基は、別々に乳化分散処理に掛けることができ、また混合後に、高沸点溶媒中に溶解し、次いで乳化分散処理に掛けることができる。該乳化分散体の粒径は、約1μmまたはそれ以下であり得る。この場合、使用する該高沸点有機溶媒は、例えばJP-A-2-141279に記載されている高沸点オイルから適切に選択することができる。これらの中で、該乳化分散体の乳化安定性の観点から、エステル化合物の使用が好ましく、またトリクレジルホスフェートの使用が特に好ましい。該オイルは、その混合物として、また他のオイルとの混合物として使用できる。
【0091】
例示的塗布組成物において、該バインダは、該電子受容性現像剤を含有する該塗布組成物の全固形分質量の約5%〜約50%なる範囲、好ましくは約10%〜約30%なる範囲、より好ましくは約15%なる量で存在し得る。
該電子受容性現像剤を含有する塗布組成物および該電子供与性染料プリカーサを含有する第二の塗布組成物を一緒に混合して、混合塗布分散物を調製することができ、これは、後にレーザー-マーキング用のレーザー-感受性記録層として使用するための、基板上に塗布される。この方法において、該2種の塗布組成物は、例えば電子供与性染料プリカーサの全質量と、該現像剤の全質量との比を、約1:0.5〜約1:30なる範囲、好ましくは約1:1〜約1:10なる範囲とするような、任意の適当な比で混合することができる。
【0092】
該レーザー-感受性記録層塗布組成物を安全に、かつ均一に塗布し、また該塗布されたフィルムの強度を維持するために、上記した2種の塗布組成物に加えて、余分な量のバインダ樹脂および補助的な添加剤を使用することができる。更に、該混合塗布分散物を基板に塗布して、レーザー-感受性記録層を製造するために、水性または有機溶媒系塗布組成物に適用される公知の方法を利用して、基板上に該レーザー-感受性記録層塗布組成物を被覆することができる。
例示的な一態様において、レーザー-マーキング性材料が準備され、これは、置換または無置換のポリウレタン化合物を含有する塗膜;およびレーザー-マーキング性層を含む。該塗膜は、該レーザー-マーキング性層と接触した状態であり得る。
【0093】
該レーザー-マーキング性材料は、追加の層、例えば保護層、中間層、下塗り層(プライマー層)、光反射防止層等を含むことができる。該保護層は、この材料の最上層であり得、また該レーザー-感受性記録層上におよび/またはこれと接触した状態で配置することができる。この保護層の機能は、物理的な損傷、例えば磨耗、水分による攻撃に対して、該レーザー-感受性記録層を保護し、瞬間的な熱衝撃等に対するその抵抗性を高めることにある。該中間層は、該レーザー-感受性記録層上に適用できる。この層の機能は、これらの層の相互の混合を減じ、または防止し、形成後の像を保存するために、有害である可能性のあるガス(例えば、酸素)を遮断することにある。該下塗り層、光反射防止層および他の機能性の層、例えば接着層は、該レーザー-感受性記録層を塗布する前に、該基板上に適用することができる。
【0094】
該保護層は、レーザー-マーキング性材料中の該色-形成層に対する保護をもたらす点で有利なので、保護層形成組成物も、例示的な態様に従って提供することができる。例えば、該保護用塗布組成物は、上記のような所要の保護機能を与えるのみならず、レーザーマーキングされた材料のマーク品位に悪影響を及ぼす、干渉マークの形成を減じ、あるいは排除するのに有効であり得る。該保護層に対する該バインダの量は、例えば該塗布組成物の全固形分質量を基準として、約50%であり得る。該バインダの量の百分率は、用途の違いに応じて、約10質量%〜約80質量%なる範囲、より好ましくは約30質量%〜約60質量%なる範囲で変えることができる。
良好なマーク品位を得るためには、該追加の層のバインダとしては、実質的にポリウレタン化合物のみを使用することが好ましい。ポリウレタンと他の型の樹脂、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース等との組合せを、特別な技術的特性が、レーザー-マーキング性材料に要求される場合には、選択することができる。例えば、ポリウレタンおよびその変性誘導体の量は、塗布組成物中のバインダ全量の、50%以上であることが好ましく、これにより上記干渉マーク効果の増強を減じ、または防止する。
【0095】
該追加の層は、補助的な添加剤、例えば通常の塗膜添加剤、例えば界面活性剤、消泡剤、可塑剤、レオロジー改善剤、殺生物剤、静電防止剤、溶剤、水、放射線硬化用の光開始剤、硬化剤等を含むことができる。例えば、該追加の層は、該レーザー-マーキング性材料の透明性を維持するという観点から、約1.45〜約1.75なる範囲の屈折率を持つ、微粒子状物質を含むことができる。
上記のレーザー-マーキング性材料、方法および装置を使用することにより、様々な利点、例えば低い装置並びに運転費;微細な文字および簡単なパターンによる高品位かつ迅速なマーキング(ベクトル走査);融通性のある解像度の調節、色調の制御およびパターン変化(ラスター走査);比較的大きくまた融通性のあるマーキング領域;および・または可変情報マーキングを伴う、小規模ロット(短期間稼働)、高処理量を実現することができる。上記レーザー-マーキング性材料、方法および装置の使用は、レーザービーム(例えば、比較的低出力の、低コストCO2レーザー)に対して典型的な応答性を示さない、あるいは弱い応答性を示す物質、または高品位のマークを形成せずに、該レーザー照射により容易に損傷を被る物質を包含する、広範囲に及ぶ様々な基板上に、高品質で、迅速なレーザーマーキングを可能とする。例えば、レーザー-マーキング性材料の使用は、広範囲に渡る材質および幾何形状を持つ基板、例えばエンジニアリング材料または工業用製品用の硬質および軟質プラスチックおよびポリマー(PET、BOPP、HDPE、PMMA、ポリカーボネートおよびナイロン)、または紙、厚紙、ガラス繊維、ガラス、金属等の基板のマーキングを可能とする。
【0096】
上記のレーザー-マーキング性材料、方法および装置は、材料がレーザーマーキングされるあらゆる用途において利用することができる。このような用途の例は、識別、トラッキングまたは消費者に対する警告を目的とする、包装または製品の直接的なラベル付け、コード付けおよびマーキング(バッチまたは通し番号、消費期限);個々のまたは包装された製品用の、感圧性、自己接着性フィルムまたはラベル;輸送、運送ラベル(直接および接着性ラベル両者);大量郵送および無料配送用のアドレス指定;IDタグのマーキング、例えば服飾のタグ付けおよび動物IDのタグ付け;紙製チケットの印刷;IDカードの印刷;保証用途、例えばスマートカード、偽造防止、または改竄防止シールおよびラベル用途を含むが、これらに制限されない。
【実施例】
【0097】
本発明の様々な態様の例を、以下に与えるが、本発明は、これらに制限されるものと解釈すべきではない。
実施例1:
[カプセル化された電子供与性染料プリカーサを含有する液状分散体(A)の製造]
13.3gの、R1がC4H9であり、かつR2がC2H5である、上記式(1)によって表される、電子供与性染料プリカーサおよび0.47gのUV光吸収剤(商品名:チヌビン(Tinuvin) P、チバガイギー社(Ciba Geigy Corp.)製)を、20gの酢酸エチルに添加し、70℃まで加熱することにより溶解させ、次いで45℃まで冷却した。12.6gのジイソシアネート化合物(商品名:タケネート(Takenate) D-140N、三井武田ケミカル社(Mitsui Takeda Chemical Co., Ltd.)製)を、該酢酸エチル溶液に添加した。次いで、上記酢酸エチル溶液を、53gの6%(w/w)ポリビニルアルコールの水性溶液(商品名:クラレポバール(Kuraray Poval) MP-217C、クラレ(Kuraray)社製)に添加し、またホモジナイザーで5分間乳化させた。最後に、90gの水および0.5gのテトラエチレンペンタミンを含むアミン溶液を、上記混合物に徐々に添加し、一方60℃にて4時間攪拌して、カプセル化反応を行った。
【0098】
該反応が完結した後、該カプセル化された電子供与性染料プリカーサ粒子の粒度分布を、ベックマンコールター(Beckman Coulter's) LS-100Q粒径分析装置によって測定し、該液状塗布組成物の粘度を、S21小型スピンドルを備えた、ブルックフィールドプログラマブル(Brookfield Programmable) DV-II+粘度計によって、100-200RPMにて測定し、また該マイクロカプセル壁のTgを、基準としてマイクロカプセルを含まないブランク懸濁液を用い、パーキンエルマーダイアモンド(Perkin Elmer's Diamond) DSCを使用して測定した。以下のような結果が得られた:該液状分散物の粘度=18cps、ここで該マイクロカプセルの99%(体積)が、0.2-2μmなる範囲内の粒径を持ち、また該マイクロカプセル壁のTgは、156℃であった。
【0099】
[電子受容性化合物を含む液状分散物(B)の調製]
4.2gのUV光吸収剤(商品名:チヌビン(Tinuvin) 328、チバガイギー製)、1.0gのトリクレジルホスフェート、および36.4gの電子受容性化合物(米国特許第6,797,318号記載の化合物301)を、16.0gの酢酸エチルに添加し、70℃まで加熱することにより溶解させた。この酢酸エチル溶液を、以下の水性溶液に添加し、ホモジナイザーで5分間分散させた。
乳化分散物(B)用の水性溶液
水 68.4g
15%(w/w)ポリビニルアルコール(商品名:ポバール(Poval)PVA205 19.8g
クラレ社(Kuraray Co., Ltd.)
8%(w/w)ポリビニルアルコール(商品名:ポバール(Poval)PVA217 55.7g
クラレ社(Kuraray Co., Ltd.)
界面活性剤A、C12H15SO3Naの2%溶液 11.2g
界面活性剤B、C9H19(C6H4)O(CH2)4SO3Na 11.2g
【0100】
[該マーク形成層塗布用混合塗布組成物の調製]
上記分散物(A)および分散物(B)を以下のように混合した:
分散物(A) 8.9g
分散物(B) 33g
[支持体上への該マーク形成層の塗布]
上記塗布組成物を、厚み75μmのA4サイズの透明PETフィルム上に、バーコーターを用いて、厚み約10μmにて塗布し、次いで60℃にて約3分間乾燥した。このPETフィルムを、プライマーとしての、SBRラテックスとゼラチンとの混合物によって予め被覆した。
【0101】
[該レーザーマーキング性媒体の完成およびCO2レーザーマーカーによる該媒体のマーキング]
上記シートを、3つの等しい部分に分割した。その一つ(本発明)を、該塗布されたマーク形成層の上部において50μmの透明なポリエチレン(PE)フィルムと積層し、もう一つの部分(本発明)を、更に該塗布されたマーク形成層の上部において、透明なコア-シェル型のアクリルラテックス分散液(商品名:ロプレックスマルチローブ(Rhoplex Multilobe) 200)で被覆した。また、最後の部分は、更に処理することなしに、そのままとする(比較)。
発光波長10.3μmを有し、および80mmf-θレンズを備えた、ドミノ(Domino) S100 10W CO2レーザーマーカーを使用した。そのマーキング条件は、「マーキング速度」=8000ビット/msおよび「CO2レーザー(Laser on CO2)」= 200μsに設定した。該レーザーマーカーを始動させた後、鮮鋭かつ高コントラストのマークが、3種全てのサンプル上に生成した。しかし、隔離層を持たない比較サンプルは、該マーキング工程中に煙の放出を示し、一方本発明の2つのサンプルは、煙を放出しなかった。更に、顕微鏡を使用して、マークを形成した該サンプルの表面を観察したところ、隔離層を持たない比較サンプルは、該塗膜の表面上に明らかな損傷の存在を示したが、本発明の2つのサンプルは損傷の存在を示さなかった。磨耗テストも、該比較サンプルが、該媒体上でより一層重度の損傷を有していることを示した。
【0102】
実施例2:
参考のために、以下の表1に、電子供与性染料プリカーサ化合物を列挙し、また表1は、対応する酢酸エチルに対する溶解度を含むが、これらを以下の実施例において使用する。
表1:
【0103】
【表1】
【0104】
式(4):
【0105】
【化6】
【0106】
式(5):
【0107】
【化7】
【0108】
式(6):
【0109】
【化8】
【0110】
実施例2-1
[カプセル化された電子供与性染料プリカーサを含む塗布組成物の調製]
サンプル1(比較例):
13.3gの電子供与性染料プリカーサD-1および0.47gのUV光吸収剤(商品名:チヌビン(Tinuvin) P、チバガイギー社製)を、20gの酢酸エチルに添加し、70℃まで加熱することによって溶解し、次いで45℃まで冷却した。14.1gのカプセル壁材料W-1(商品名:タケネート(Takenate) D-127N、三井武田ケミカル社製)および2.5gのカプセル壁材料W-2(商品名:タケネート(Takenate) D-110N、三井武田ケミカル社製)を、該酢酸エチル溶液に添加した。
上記酢酸エチル溶液を、53gの6%(w/w)ポリビニルアルコール水性溶液B-1(商品名:クラレポバール(Kuraray Poval) MP-217C、クラレ社製)に添加し、ホモジナイザーで5分間乳化させた。
【0111】
90gの水および0.75gのテトラエチレンペンタミンを添加し、カプセル化反応のために、60℃にて4時間攪拌機で混合した。
該反応の完結後、該カプセル化された電子供与性染料プリカーサ粒子の粒度分布および該液状塗布組成物の粘度をベックマンコールターのLS-100Q粒径分析装置を用い、またS21小型スピンドルを備えたブルックフィールドプログラマブルDV-II+粘度計を100-200RPMにて使用して測定した。
該マイクロカプセル壁のTgを、パーキンエルマーダイアモンド(Perkin Elmer's Diamond) DSC、サファイアDSC、ハイパーDSC(HyperDSCTM)、またはTAインスツルメンツ(Instruments) Q-シリーズを使用して測定した。マイクロカプセルを含まないブランク懸濁液を、基準サンプルと同一条件下で調製した。該マイクロカプセル含有懸濁液および該ブランク懸濁液両者を、測定前にサンプルトレーに入れた。
【0112】
サンプル2(比較例)
上記サンプル1の調製において記載した方法と同様の方法で、サンプル2を調製したが、該カプセル壁材料W-1およびW-2を、12.6gのW-3(商品名:タケネート(Takenate) D-140N、三井武田ケミカル社製)に変えた。
サンプル3(比較例)
上記サンプル1の調製において記載した方法と同様の方法で、サンプル3を調製したが、該カプセル壁材料W-1およびW-2を、12.6gのW-3(商品名:タケネート(Takenate) D-140N、三井武田ケミカル社製)に変え、6%(w/w)ポリビニルアルコール水性溶液B-1の添加量を40gに変え、また該乳化のための水の添加量を103gに変えた。
サンプル4(比較例)
上記サンプル1の調製において記載した方法と同様の方法で、サンプル4を調製したが、該カプセル壁材料W-1およびW-2を、12.6gのW-3(商品名:タケネート(Takenate) D-140N、三井武田ケミカル社製)および2.3gのW-4(商品名:バーノック(Barnoc) D750、大日本インキ(Dai Nippon Ink Co., Ltd.)社製)に変え、6%(w/w)ポリビニルアルコール水性溶液B-1の添加量を33gに変え、かつ20gの8%(w/w)ポリビニルアルコール水性溶液B-2(商品名:クラレポバール(Kuraray Poval) PVA217、クラレ社(Kuraray Co., Ltd.)製)を添加した。
【0113】
サンプル5(本発明)
上記サンプル1の調製において記載した方法と同様の方法で、サンプル5を調製したが、該カプセル壁材料W-1およびW-2を、12.6gのW-3(商品名:タケネート(Takenate) D-140N、三井武田ケミカル社製)で置換し、また該テトラエチレンペンタミンの添加量を0.5gに変えた。
サンプル6(本発明)
上記サンプル1の調製において記載した方法と同様の方法で、サンプル6を調製したが、該カプセル壁材料W-1およびW-2を、12.6gのW-3(商品名:タケネート(Takenate) D-140N、三井武田ケミカル社製)で置換した。
サンプル7(本発明)
上記サンプル1の調製において記載した方法と同様の方法で、サンプル7を調製したが、該カプセル壁材料W-1およびW-2を、12.6gのW-3(商品名:タケネート(Takenate) D-140N、三井武田ケミカル社製)で置換し、6%(w/w)ポリビニルアルコール水性溶液B-1の添加量を45gに変え、該乳化のための水の添加量を98gに変え、かつ該テトラエチレンペンタミンの添加量を2.0gに変えた。
【0114】
サンプル8(本発明)
上記サンプル1の調製において記載した方法と同様の方法で、サンプル8を調製したが、R1がC4H9であり、かつR2がC2H5である、上記式(1)によって表される、該電子供与性染料プリカーサの添加量を8.3gに減じ、5.0gの電子供与性染料プリカーサD-6を添加し、該カプセル壁材料W-1およびW-2を、12.6gのW-3(商品名:タケネート(Takenate) D-140N、三井武田ケミカル社製)で置換し、6%(w/w)ポリビニルアルコール水性溶液B-1の添加量を40gに変更し、かつ13gの8%(w/w)ポリビニルアルコール水性溶液B-2(商品名:クラレポバール(Kuraray Poval) PVA217、クラレ社(Kuraray Co., Ltd.)製)を添加した。
上記サンプル1〜サンプル8のTg、粒度分布、および粘度を、以下の表2に列挙する。
該サンプルに関する保存安定性テスト:
サンプル1〜8を、ポリエチレンボトルに入れ、次いでオーブン内に保存し、その温度を、4週間に渡り、12時間毎に20℃と40℃との間で変化させ、次いで各サンプルの外観を観察した。得られた結果を、表-2に列挙する。
表2:
【0115】
【表2】
【0116】
塗布したフィルムサンプルの性能評価
以下の塗布フィルムサンプルを、該4週間の保存テスト前およびその後の上記サンプル1〜8および乳化した現像剤分散物を使用して、以下のようにして製造した。
[乳化した現像剤分散物の製造]
4.2gのUV光吸収剤(商品名:チヌビン(Tinuvin) 328、チバガイギー社製)、1.0gのトリクレジルホスフェート、および36.4gの現像剤(米国特許第6,797,318号記載の化合物301)を、16.0gの酢酸エチルに添加し、70℃まで加熱することにより溶解した。この酢酸エチル溶液を、以下に記載の水性溶液に添加し、ホモジナイザーで5分間分散させた。
乳化現像剤用の水性溶液
水 68.4g
15%w/wポリビニルアルコール(商品名:ポバールPVA205、クラレ社) 19.8g
8%w/wポリビニルアルコール(商品名:ポバールPVA217、クラレ社) 55.7g
界面活性剤A、C12H15SO3Naの2%溶液 11.2g
界面活性剤B、C9H19(C6H4)O(CH2)4SO3Na 11.2g
[塗膜用混合物の調製]
上記サンプル1〜8の各々および該乳化した現像剤分散物を混合し、即ち各サンプル8.9gと該乳化した現像剤分散物33gとを混合することにより、塗布用混合物を得た。
[PETフィルム上への混合物の塗布]
【0117】
上記混合物各々を、予めSBRラテックスおよびゼラチンを塗布した、A4サイズおよび75μmなる厚みを持つフィルム上に、15ml/m2にて塗布し、乾燥後に、以下のレーザーマーキングを行った。
[レーザーマーキングテスト]
70個の同一のマーク、即ち文字「M」からなるマトリックス露光を、f=80mmレンズを備え、35mm×35mmなるマーキング視野および約250〜約280μmなる範囲のスポットサイズを与える、ドミノ(Domino) S100 CO2レーザーマーカーを用いて、該塗布フィルムサンプルの各々に対して行った。該テストマーキングマトリックスのデザインは、各行が7文字からなり、これに対してレーザーの出力は26.5%から100%まで増大(左から右へ、5.2W→19.6W)し、また隣接行間のレーザー出力増加は20%であり、また該マトリックスの各列は10文字からなり、これに対してマーキング速度は1300ビット/mSから9500ビット/msまで増大し(下から上へ)、また隣接文字間のマーキング速度における増加は20%であった。各塗布フィルムサンプルのレーザー暴露に対する感度および寛容度は、完全にマーキングされ、また明確に読み取り得る文字を計数することにより評価した。このレーザーマーキングテストの結果を、以下の表3に示す。
更に、塗布されたフィルムサンプルの保存安定性テストを、80℃、および相対湿度70%の下で1週間行った。該保存安定性を、X-ライトデンシトメータ(X-Rite Densitometer)で可視および透明モード(反射および透過モード)にて測定した後、曇り度は増加する。このテスト用の該塗布フィルムサンプルは、該4週間の保存前の上記サンプル1〜8から製造した。このテストで得られた結果も、以下の表3に示す。
表3:
【0118】
【表3】
【0119】
表2および3に示したように、本発明に従って製造した該液状塗布組成物は、物理化学的に極めて安定であり、また比較的長期間に渡り保存することができる。該塗布組成物は、またレーザー露光に対して高い感度および広い寛容度を有し、また老化による曇り度における増加は低い。
【0120】
実施例2-2:
塗布フィルムサンプル9〜12を、上記塗布フィルムサンプル6と同様な方法で製造した。但し、以下の表4にまとめたように、電子供与性染料プリカーサ化合物の型および量に変更を加えた。
表4:
【0121】
【表4】
【0122】
上記サンプル9〜12の各々は、上記実施例1において記載した方法と同一のレーザーマーキングテスト法に掛けた。各塗布フィルムサンプルの、レーザー露光に対する感度および寛容度(ラティチュード)は、完全にマーキングされ、また明確に読み取り得る文字を計数することにより評価した。このレーザーマーキングテストの結果を、以下の表5に示す。
表5:
【0123】
【表5】
【0124】
実施例3:
実施例3-1:様々なバインダ材料のレーザー暴露
数種の異なる型のバインダ材料を、CO2レーザーに暴露して、その効果を測定した。この実験手順は、以下の工程を含んでいた:a) 該サンプル樹脂溶液を、Kコントロールコーター(K Control Coater)(RKプリントコートインスツルメンツ社(Print Coat Instruments, Ltd.)製)を用いて、約2.54×10.16cm(1in×4in)のガラススライド上に塗布する工程、ここではNo.8塗布バーを使用して、湿潤時厚み100μmのフィルムを生成し;b) 該塗布された樹脂溶液を、周囲条件下で一夜乾燥させる工程;c) 該塗布された樹脂を、ドミノ(Domino) S100レーザーマーカー(ドミノアムジェット社(Domino Amjet, Inc.)製)により、等価なレーザー強度条件下で走査する工程;d) ライカ(Leica) GZ6顕微鏡観察下で、干渉マーク(例えば、微細気泡、発泡効果)形成について観察し、生成された干渉マーク(発泡効果)の量を、1〜10なる範囲にてランク付けする工程;e) レーザーの走査速度を調節することによって、レーザー線量を変えて、最大発泡効果を示すサンプルおよび最小発泡効果を示すサンプルを、再度レーザー走査に掛け、レーザー照射率との関連で、発泡効果における差異を観測する工程。実験結果を、以下の表3-1-1に示す。
表3-1-1:
【0125】
【表6】
【0126】
表3-1-1から理解することができるように、走査速度2000ビット/ms(ビッツパーミリ秒)において、ジョンクリル89は、最高の程度の発泡効果を発生し、またメイスコート9525は、最低の程度の発泡効果を発生した。これら2つは、変動するレーザー走査速度で、再度操作し(上記工程に従って)、その結果を図6に示した。ここで、Aはジョンクリル89に相当し、またBは、メイスコート9525に相当する。
図6に示したマークを生成するために使用した様々な走査速度を、以下の表3-1-2にまとめる。
表3-1-2:
【0127】
【表7】
【0128】
図6に明確に示されているように、ジョンクリル89(A)およびメイスコート9525(B)は、匹敵する速度で走査した際に、極めて異なる応答を示した。ジョンクリル89は、著しく発泡し、一方メイスコート9525は、僅かに最低限の発泡効果を有していた。とりわけ、10,000ビッツ/msなる走査速度において、メイスコート9525は、レーザービームに対して、比較的僅かな応答を示した。これらの実験結果は、メイスコート9525(ポリエーテルを主成分とするポリウレタン)は、CO2レーザー暴露条件下で、少ない干渉マークを生成する点で、他のテストした樹脂と比較して、優れた結果を与えた。
実施例3-2:様々な本発明のおよび比較例のバインダのレーザー暴露
5種の本発明のポリウレタン分散液(サンプルNo. 3〜7)に関するレーザー暴露効果を、ポリビニルアルコールおよびスチレン変性あクリレート(夫々比較例サンプルNo. 1および2)に関するレーザー暴露効果と比較した。基準として、ブランクのガラススライドを使用した。
表3-2-1:
【0129】
【表8】
【0130】
実験的な手順は以下の諸工程を含む:a) 該テストサンプル溶液を、Kコントロールコーター(K Control Coater)(RKプリントコートインスツルメンツ社(RK Print Coat Instruments, Ltd.)を用いて、約2.54cm×10.16cm(1in×4in)のガラススライド上に塗布する工程、ここではNo.7塗布バーを使用して、湿潤時厚み80μmのフィルムを生成し;b) 該塗布されたサンプル溶液を、周囲条件下で一夜乾燥させる工程;c) 該塗布されたサンプルを、ドミノ(Domino) S100レーザーマーカー(ドミノアムジェット社(Domino Amjet, Inc.)製)により、マトリックス暴露条件下で、露光する工程。該マトリックス暴露は、70個の同一のマーク、即ち文字「M」からなり、f=80mmレンズを備え、35mm×35mmなるマーキング視野および約250〜約280μmなる範囲のスポットサイズを与える、ドミノ(Domino) S-100 CO2レーザーマーカーを用いて、該塗布サンプルの各々に対して行った。該テストマーキングマトリックスのデザインは、各行が7文字からなり、これに対してレーザーの出力は26.5%から100%まで増大(左から右へ、5.2W→19.6W)し、また隣接文字のレーザー出力増加は20%であり、また該マトリックスの各列は10文字からなり、これに対してマーキング速度は1300ビット/mSから9500ビット/mSまで増大し(下から上へ)、また隣接文字間のマーキング速度における増加は20%であった。
【0131】
黒の背景上の、該CO2レーザーマトリックス-暴露サンプルについて、写真を撮影した。白色の文字「M」の数および該文字の白色度を比較して、CO2レーザーエネルギーに対する最小応答性を持つサンプルを決定した。写真を図7A〜7Hに示したが、これらは、夫々ポリビニルアルコール、ジョンクリル89、メイスコート9525、アルバーディンクU 400N、アルバーディンクU2101VP、アルバーディンクU 9152VP、アルバーディンクCUR 21、およびブランクのガラススライドに相当する。これらの実験結果は、ポリエーテルを主成分とするポリウレタン、ポリエステルを主成分とするポリウレタン、ポリカーボネートを主成分とするポリウレタンおよびヒマシ油を主成分とするポリウレタンを包含する、ポリウレタンおよびその誘導体が、ポリビニルアルコールおよびスチレン変性アクリレートと比較して、CO2レーザー露光によって引起される干渉マーキングを減じる上で、改善された性能を与え得ることを示している。
【0132】
実施例3-3:2つの部分から形成される塗布組成物の調製およびレーザー暴露
本実験において、塗布組成物の2つの部分の製造において、バインダとして様々なポリウレタン化合物を使用し、ここで部分Aは、該マイクロカプセル化された染料プリカーサを含有する塗布組成物であり、また部分Bは、該電子受容型現像剤を含有する塗布組成物であった。実験結果を比較するための基準バインダとして、本例においては、ポリビニルアルコールを使用した。
1) 部分A(マイクロカプセル化された染料プリカーサを含有する塗布組成物)の製造
13.3gの電子供与体型染料プリカーサ(PSD-184、日本ソーダ(Nippon Soda)社製)および0.47gのUV光吸収剤(チヌビン(Tinuvin) P、チバガイギー社製)を、20gの酢酸エチルに添加し、70℃まで加熱することにより溶解し、次いで45℃まで冷却した。12.6gのカプセル壁材料(D-140N、三井武田ケミカル社)を、該酢酸エチル溶液に添加した。上記酢酸エチル溶液を、53gの6%w/wポリビニルアルコール水性溶液(クラレポバール(Kuraray Poval)MP-217C、クラレ社製)に添加し、ホモジナイザーを用いて5分間乳化させた。水80gおよびテトラエチレンペンタ民0.75gを、60℃にて4時間攪拌しつつ、添加混合して、カプセル化反応を行った。該部分Aが完成した。また、この塗布組成物をArefとする。
【0133】
該カプセル化された電子供与体型染料プリカーサ粒子の粒度分布および該液状塗布組成物の粘度を、ベックマンコールターのLS-100Q粒径分析装置を用い、またS21小型スピンドルを備えたブルックフィールドプログラマブルDV-II+粘度計を100-200RPMにて使用して測定した。該マイクロカプセル壁のTgを、パーキンエルマーダイアモンド(Perkin Elmer Diamond) DSC、サファイアDSC、ハイパーDSC(HyperDSCTM)、またはTAインスツルメンツ(Instruments) Q-シリーズを使用して測定した。マイクロカプセルを含まないブランク懸濁液を、該基準サンプルと同一条件下で調製した。該マイクロカプセル含有懸濁液および該ブランク懸濁液両者を、測定前にサンプルトレーに入れた。
他のテスト溶液(A1、A2、A3、およびA4)を、Arefと同様にして製造したが、ここで該バインダサンプルの量は、必要に応じて、固形分含有率を基準として、Arefにおける量と等しくなるように調節した。以下の表3-3-1に、かくして製造した様々な部分A塗布組成物を列挙する。
表3-3-1:
【0134】
【表9】
【0135】
2) 部分B(電子受容体型現像剤を含有する塗布組成物)の製造
4.2gのUV光吸収剤(チヌビン(Tinuvin) 328、チバガイギー社製)、1.0gのトリクレジルホスフェート、および36.4gの現像剤(RO54、サンコーケミカルズ(Sanko Chemicals)社製)を、16.0gの酢酸エチルに添加し、70℃まで加熱することにより溶解した。該酢酸エチル溶液を、以下の表3-3-2に記載の水性溶液に添加し、ホモジナイザーで5分間分散させた。
表3-3-2:
【0136】
【表10】
【0137】
該部分Bを、この段階において完成させた。この塗布組成物を、以下においてBrefとする。
その他の部分Bのサンプル溶液(B1、B2、B3およびB4)を、Brefと同様な方法で製造したが、ここで各サンプルについて使用した量は、必要ならば、固形分含有率を基準として、Brefにおける量と等しくなるように調節した。以下の表3-3-3に、かくして製造した部分B塗布組成物のサンプルを列挙する。
表3-3-3:
【0138】
【表11】
【0139】
3) 部分Aおよび部分Bを混合することによる塗布用ポット溶液の製造
該部分Aサンプル各々を、その対応する部分B溶液と混合した(Ai+Bi)。その混合比は以下のように設定した:
部分A 5.04g
部分B 19.13g
脱イオン水 6.40g
塗布用ポット溶液製造のため 30.57g
Ai+Biから製造した、これら塗布用ポット溶液を、以下Tiと呼ぶ。
4) 該塗布用ポット溶液の、PETフィルムへの塗布
上記混合物各々を、A4サイズの厚み75μmを持つPET製のフィルムに、15mL/m2なる量で塗布したが、ここで該フィルムには、予めSBRラテックスおよびゼラチンが塗布されており、また乾燥後に、以下のレーザーマーキング処理を行った。塗布は、Kコントロールコーター(RKプリントコートインスツルメンツ社)を用いて行い、またNo.3塗布バーを使用して、湿潤時のフィルム厚み24μmのフィルムを製造した。
【0140】
5) レーザー暴露
該塗布したサンプルを、ドミノS100レーザーマーカー(ドミノアムジェット社)によって、実施例3-2に記載のようにマトリックス露光条件下で露光を行った。該マトリックスに、一定量のレーザーエネルギーを照射した後に、最良のマーキング結果を示した、特定の文字「M」のマーキング濃度を観察し、その実験結果を、図8A〜8Eに示した。特定のレーザー露光条件(レーザー照射時間=53μs、およびマーキング速度=2030ビット/ms)を表す、該マトリックス中の文字「M」を、各テストサンプルのマーク濃度を比較するために選択した。該文字の同一位置における濃度を測定した。これらの図から分かるように、該塗布組成物におけるバインダとしての、置換または無置換ポリウレタン化合物の使用は、レーザー-マーキング性物質のマーク濃度を改善する上で効果的であった。
【0141】
実施例3-4:バインダ-含有保護層のレーザー露光
様々なポリウレタン化合物をバインダとして使用して、保護層用塗布組成物のサンプルを製造した。ポリビニルアルコールを、基準バインダとして使用して、得られる実験結果を比較した。
1) 保護層用塗布組成物の製造
以下の表3-4-1を、順次添加した。ここで、引続き添加される各成分は、その前の成分が完全に溶解し、または分散した後に添加した。
表3-4-1:
【0142】
【表12】
【0143】
該保護層用の塗布組成物は、この時点において完成した。この塗布組成物は、以下においてPCrefとする。
その他のサンプル溶液(PC1、PC2、PC3およびPC4)を、PCrefと同様な方法で製造したが、ここで使用したバインダの量は、必要ならば、固形分含有率を基準として、PCrefにおける量と等しくなるように調節した。以下の表3-4-2に、かくして製造した保護層用塗布組成物のサンプルを列挙する。
表3-4-2:
【0144】
【表13】
【0145】
2) 色-形成層への該保護層用塗布組成物の塗布
実施例3-3の塗布されたフィルム(T1、T2、T3およびT4)の各々を、上で製造した該保護層用塗布組成物で被覆した。Tiは、PCiおよびPCrefで塗布して、レーザーマーク品位におけるあらゆる差異を観察した。例えば、T1をPC1およびPCrefで被覆し、以下同様に被覆した。塗布は、Kコントロールコーター(RKプリントコートインスツルメンツ社)を用いて行い、またNo.3塗布バーを使用して、湿潤時のフィルム厚み24μmのフィルムを製造した。
【0146】
3) レーザー暴露
該塗布したサンプルを、ドミノS100レーザーマーカー(ドミノアムジェット社)によって、実施例3-2に記載のようにマトリックス露光条件下で露光を行った。該マトリックスに、一定量のレーザーエネルギーを照射した後に、最良のマーキング結果を示した、特定の文字「M」のマーキング濃度を観察し、その実験結果を、図4A〜4Hに示した。特定のレーザー露光条件(レーザー照射時間=53μs、およびマーキング速度=2030ビット/ms)を表す、該マトリックス中の文字「M」を、各テストサンプルのマーク濃度を比較するために選択した。該文字の同一位置における濃度を測定した。これらの図の結果から分かるように、保護層におけるバインダとして、ポリビニルアルコールを、該ポリウレタン化合物によって置換すると、レーザー-マーキング性物質の、記録層においてマーキング処理により形成された、マーク濃度の維持において改善が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明の例示的な媒体の断面図である。
【図2】本発明の例示的な媒体の断面図である。
【図3】本発明の例示的な媒体の断面図である。
【図4】本発明の例示的な媒体の断面図である。
【図5】本発明の例示的な媒体の断面図である。
【図6】CO2レーザーに暴露された、2種の例示的な塗膜の像を示す図である。
【図7】図7A〜7Hは、CO2レーザーに暴露された、様々な例示的な塗膜の像を示す図である。
【図8】図8A〜8Eは、CO2レーザーに暴露された、様々な例示的な塗膜の像を示す図である。
【図9】図9A〜9Hは、CO2レーザーに暴露された、様々な例示的な塗膜の像を示す図である。
【符号の説明】
【0148】
1・・マーク−形成層;
2・・支持体;
3、13、14、15・・隔離層;
4・・電子供与性染料プリカーサ;
5・・カプセル壁;
6・・電子受容性化合物;
7、7’、7”・・ポリマー性媒体;
8、8’、8”・・レーザービーム;
9・・スペーサ層;
10・・レーザー吸収性増強添加剤;
11・・マーク;
12・・支持層;
16・・レーザー吸収性添加剤;
17・・接着性媒体
【背景技術】
【0001】
製品および包装品のラベル付けは、様々な工業分野において、ますます重要になってきており、またはっきりと見ることができ、鮮鋭で、高いコントラストを示すマークを与えることが、一般的に有利である。幾つかの用途においては、白黒の像ではなく寧ろ有色の像を与えることが有益であり得る。
従来の方法の中でも、印刷、エンボス処理、スタンピングおよびラベルの貼付が、製品のマーキングのための主な手段である。しかし、特別な用途においては、頻繁な情報の変更、例えば個性化された製品の認識、コード化、製造日、ロット番号、または期限日のマーキングを可能とすることが望ましいことであり得る。従って、内容の迅速な変更を可能とする、マーキング手段に対する要望がある。
特に、自己接着性ラベル上での直接的な感熱印刷、熱的染料転写印刷、インクジェット印刷、エンボス処理またはスタンピングを含む様々な印刷技術が、このような用途に対して利用されている。しかし、特に、各製品またはラベルとの物理的な接触を要する場合、例えば感熱印刷(直接または染料転写)、ドロップ-オン-デマンド(drop-on-demand; DOD)式のインクジェット印刷、エンボス処理またはスタンピングの場合には、製造の際の処理量は、該印刷速度における障害のために、しばしば制限されてしまう。更に、これらのマーキング技術は、物理的な接触に拠っているので、不規則な表面を持つ製品上にマーキングするには不適当である。感熱印刷装置は、また他の欠点、例えばサーマルヘッド上での汚れの蓄積、および該装置の接触表面の摩耗等の欠点を有しており、これらは、マーキング性能および信頼性を損なう。
【0002】
非-衝撃高速マーキング用途に対して、連続インクジェット(CIJ)技術も、しばしば利用される。しかし、CIJ技術は、頻繁なノズルの詰まり、および非-吸収性表面、例えばプラスチックフィルム、金属またはプラスチック容器等の上のマークの、緩慢な乾燥速度による、溶剤型のインクシステムに係るVOCの問題、または水性インクシステムに係るマークの擦れの問題等の問題を有している。CIJ技術のもう一つの欠点は、マーキング性能に関連する、その低い解像度および低いコントラストにある。これは、特にバーコードの印刷において問題となる。
特定の波長および強度を持つ電磁波の集束ビーム、例えばレーザービームを用いる、非接触式の迅速マーキング法が、当分野において公知である。ここで、レーザービームを用いる方法は、一般に「レーザーマーキング」として知られている。しかし、レーザーマーキング技術の主な一つの欠点は、該レーザービームと、マーキングすべき物質との間に強力な相互作用を必要とする点にあり、これは非-マーキング領域にかなりの色彩または濃度変化を生じる。この難点は、多くの包装材料、例えばプラスチックフィルムまたは容器、金属製の缶またはガラス製ボトルの何れもが、レーザービーム(特に、低出力および/または長波長のレーザービーム)と十分な相互作用をせず、あるいは該相互作用が、高性能のマークを生成すべく、該材料上で著しいコントラスト変化を生じることがなく、あるいは該相互作用が強力である場合において、該材料自身に直接損傷を引起すことにある。
【0003】
該レーザービーム-材料間の相互作用を高めるために、エネルギー吸収性化合物を、マーキングすべき該包装材料に分散させるか、あるいは該マーキングすべき材料の表面に塗布されることとなる、塗布組成物と混合することが提案されている。このような技術の典型的な例は、米国特許第6884289号、同第6855910号、同第677683号、同第6727308号、同第6719837号、同第6693657号、同第6689205号、同第6545065号、同第6521688号、同第6444068号、同第6376577号、同第6291551号、同第6214917号、同第5977514号、同第5928780号、同第5866644号、同第5855969号、同第5576377号、同第5030551号、日本国特許開同第2003/277570号、および国際特許出願WO 2004/050766号、同第WO 01/00719号および同第WO 03/006558号に記載されているように、無機物質を主成分とするフィロ珪酸塩、金属酸化物およびシリケート化合物、例えばタルク、カオリン、セリサイト、マイカまたは金属酸化物被覆マイカ、酸化チタン、酸化スズ、酸化鉄、またはSb、As、Bi、Cu、Ga、Ge、Si等の酸化物などである。
【0004】
しかし、該レーザービーム-材料間の相互作用を高めたとしても、マークの濃度またはコントラストが、しばしば弱過ぎるために、満足な工業的製品とはなり得ない。その理由は、この技術が、マーキングすべき該材料を炭化または分解し、結果として該材料中に濃色マークとして炭素に富む構造を形成し、あるいはトラップされた微細な気泡(分解された物質由来の)を生成して、白色のマークとして該材料中に発泡構造を形成するという技術を拠所としているからである。これらのマーク形成メカニズムは、しばしば貧弱な性能のマークを生成する。というのは、多くのポリマー材料は、過度に燃焼し、気化させ、または完全に分解させないと、炭化することが困難であり、これは材料の保全性を損うことになる。レーザー感度の問題を克服するための、無機レーザー吸収性物質の使用に基くこの技術のもう一つの欠点は、該媒体材料の低い透明度として観測される、マーキングすべき該材料内に含められる、これら添加剤の不透明性である。低い透明性は、レーザーマーキング性材料の使用を、狭い範囲の工業的な用途に制限してしまう。
【0005】
マークのコントラストおよび色彩を高めるために、当分野においては、有機金属錯体、無機酸化物または塩の顔料、あるいはカーボンブラック顔料を、該包装材料に分散すべきあるいは塗布組成物中に混合すべき添加物として使用できることは公知であり、該顔料は、結果として該マーキングすべき材料の表面上に塗布されることになる。更に、コントラスト色を持つ二重の塗布層も提案されており、そこでは上部塗膜は、該レーザーマーキングによって蒸発(融除)されることになり、また結果としてコントラスト色を持つ該底部の塗膜を露出する。これら技術において使用される化合物の典型的な例は、米国特許および米国公開特許出願第2005/0032957号、同第6888095号、同第6855910号、同第6284184号、同第6207240号、同第6139614号、同第6022905号、同第5840791号、同第5667580号、同第5626966号、同第5576377号、同第4861620号および同第4401992号に記載されているような、有機金属錯体、例えば銅フタロシアニン、アミンモリブデート、または有色金属酸化物および水酸化物、または金属リン酸塩/酸化物混合-相顔料、硫化物および硫化物/セレン顔料、カーボネート顔料、クロメートおよびクロメート/モリブデート混合-相顔料、錯塩顔料およびシリケート顔料を包含する。
【0006】
しかし、顔料を基本とするレーザーマーク形成は、所望の基板または塗膜の厚みに対して、該顔料の粒径が大きいという問題、およびこれら固体粒子の、該媒体における、不均一な分布の問題を包含する。これら問題は、不均一なマークの形成および不均一な塗膜の被覆率、または該マーキング領域における過度の燃焼をもたらし、結果として媒体の保全性に害を及ぼす。その上、一般的に知られているマーキング顔料の幾つかは、環境上不利な重金属を含んでいる。上記融除法に基くレーザーマーキングに関連して、融除された物質または破壊屑の、周囲環境への過度の放出は、重大な欠点の一つであり、危険な物質が環境に放出されるばかりでなく、該レーザーマーキングヘッド上のレンズの頻繁な清浄化を行って、該融除されたマーキング材料から遊離され、蓄積されたフラグメントまたは破壊屑を除去することも必要となる。該融除法のもう一つの欠点は、マーキングすべき該物質上の該塗布層を完全に蒸発させるのに十分に強力な、大きなレーザーエネルギードーズを必要とすることである。このことは、より緩慢なマーキング速度、即ちより低い生産性、またはより高出力のレーザー装置のために費やされる、機器および操作の一層の増大へと導く。
【0007】
染料を主成分とするレーザーマーキング処方物は、上記諸欠点を回避し、またより一層低いレーザーエネルギードーズにおいてさえも、より一層高いコントラストを持つ、良好なマーキング性能を与えることができる。従来の接触式感熱印刷に対して開発された、染料に基くマーキング技術が、レーザーマーキング用途用に提案されている。例えば、JP 2001-246860は、感熱記録材料の使用を開示しており、これは、電子供与性染料プリカーサおよびウレア-ウレタン現像剤を含み、また米国特許第5413629号は、該印刷法において、電子供与性染料プリカーサおよび電子受容性現像剤を含むインクを使用することによる、レーザー-マーキング性材料の製法を開示している。
【0008】
しかし、従来の直接的な感熱印刷技術に基く、これらの系は、接触式熱転写に基いており、該接触界面近傍で速やかに発色反応を誘発し、従って約80℃〜約110℃なる範囲の閾値温度における、該反応性媒体の色彩変化を必要とする、直接的な感熱印刷における該エネルギー放出手段の特性のために、長期保存安定性または耐熱性が低いという欠点を有している。他方において、包装並びにラベル付け用途に対して、該媒体はしばしば広い温度範囲に渡る、また長い暴露期間に対して、広い許容度を必要とする。これら用途において、直接的熱媒体の長期保存安定性または耐熱性は、しばしば不十分であり、また望ましからぬカブリが、製品の保存中または輸送中に起こる可能性があった。
直接的な感熱印刷技術に基く、染料を主成分とする媒体のもう一つの重大な欠点は、望ましからぬ化学物質に対する暴露、特に酸および塩基溶液または有機溶媒に対して暴露した際のその感受性である。しかし、幾つかの包装並びにラベル付け用途に対して、該被覆された基板は、しばしば様々な化学物質による攻撃に対して、高い耐性を持つことが要求される。例えば、典型的なラベルの印刷において、溶剤型のフレキソインクが、高頻度で使用され、あるいは幾つかの場合には、ラベルフィルム上の、溶剤型の下塗り層を適用して、平坦性および該フィルムへのインクの接着性を高めている。両者の場合において、これら処方物中の有機溶媒は、しばしば、該染料-現像剤系の不安定化のために、上記の像形成層上に望ましからぬ色彩、不透明性または密度の変化を引起す。
【0009】
該媒体の安定性を改善し、また染料を主成分とするレーザーマーキング性媒体の耐熱性を高めるために、米国特許第5,691,757号および日本国特許JP3,391,000号は、融点が200℃を越える高融点現像剤を用いて、高融点現像剤の使用によるマーキング感度の喪失を回避する、レーザーマーキング性組成物を開示している。このような組成物は、少なくとも200-250℃なる範囲またはそれ以上の、極めて高いマーク形成閾値に導く。この方法の一つの問題は、該高温マーキング工程中の、該ポリマー媒体の分解の恐れ、および「煙」としての、望ましからぬ化学物質蒸気の放出の恐れがある点にあり、事実この問題は、マーキングすべき物質の炭化に基く、これらレーザー-マーキング法についてしばしば観測される。更に、このような高温マーキング媒体に関連して、より高出力のレーザーマーキング装置が必要となるか、あるいはより低速のマーキング速度、結果としてより低い生産性を容認しなければならない。
【0010】
望ましからぬ化学物質蒸気の放出を回避するために、従来技術においては、透明な「カバーシート」を使用するという考えが示唆された。米国特許第、5,843,547号は、多層レーザーマーキング性ラベルの製法を開示しており、この方法では、透明な接着性組成物を含む、少なくとも1層の透明な保護フィルム材料が、レーザー-マーキング性媒体の上部に積重ねられ、接着されている。このレーザー-マーキング法を、該透明な「カバーシート」を介して適用して、その下部のレーザー-マーキング性媒体中にマークを形成している。適用が望ましい場合には、該上部の透明「カバーシート」を、該透明な接着性組成物と共に、マーキング完了後に、該レーザーマーキング性媒体から剥ぎ取ることができる。同様な構造が、米国特許第5,340,628号および日本国特許第3,391,000号に記載されている。但し、両者ともに、該レーザーマーキング性層は、無機顔料の代わりに、染料に基く感熱印刷技術に拠っており、また日本国特許第3,391,000号の場合には、既に上で述べた通り、高融点現像剤を、無機レーザー吸収性添加物と共に使用している。
【0011】
レーザーマーキング工程中に分解された化学物質蒸気の放出は、これら従来技術の方法によって阻止できるが、米国特許第5,843,547号に記載された方法の欠点は、その無機顔料を主成分とするレーザー像形成媒体であり、これは、染料を主成分とするマーキング系と比較して、劣ったマーク品位、貧弱なコントラストおよびコンシステンシーを持つ傾向がある。米国特許第5,340,628号に記載された方法の欠点は、その貧弱な長期保存安定性または貧弱な耐熱性にあり、これらの欠点は、従来の熱的な像形成媒体の原因を受け継ぐものである。日本国特許第3,391,000号に記載された方法の欠点は、この方法が、>200℃なるマーク形成温度を必要とする点にあり、この欠点は、高温マーキング工程中に、該透明な「カバーシート」に対して使用する幾つかのポリマー材料の分解、望ましからぬ化学物質の蒸気放出に導く恐れがあり、あるいは少なくとも、残留熱応力のために、該マーキング媒体に、著しい物理的な歪が導入される恐れがある。というのは、該マーク形成温度は、この特許に記載されているポリマー材料の殆どのガラス転移温度:Tgを大幅に越える可能性があるからである。最後に、これら方法の全ては、前に述べたように、固体分散種を含む全てのレーザーマーキング性塗膜に共通する、高度の濁り度をもたらし、また結果的に該マーク形成媒体の透明性を減じるという欠点を持つ。
【0012】
従って、上記した従来の方法および組成物においては、良好なマーク品位、高いコントラスト、マーキング材料の高い保存安定性または耐熱性を同時に達成し、かつ同時に良好なレーザー感度を維持し、しかもマーキング工程中の、望ましからぬ化学物質蒸気の放出を排除することは極めて困難であることに注意すべきである。
従来のレーザー融除手段の使用に係る別の欠点は、該手段の使用が、マーキングされない領域と比較して、大幅な色彩または濃度変化を生じるために、該マーキング基板と該レーザービームとの間に強力な相互作用を必要とする点にある。プラスチックフィルム、容器およびガラスボトル等の包装材料が、レーザービームエネルギーと十分に相互作用することができず、該相互作用が、該材料上に十分なコントラスト変化を生成できず、および/または該相互作用が、該基板表面に望ましからぬ損傷を生じる恐れがある点にある。
該基板上に、塗膜を形成することができ、該塗膜は、レーザービームのエネルギーを吸収して、該塗布された基板上に視認性のマークを生成し得る。この種のレーザー-マーキング性塗膜は、顔料、染料、バインダ、並びに他の塗膜用添加剤を含むことができる。該塗布組成物は、実質的にフィルム形成剤として機能する、バインダを含むことができる。バインダは、そのフィルム形成機能のために使用できるだけではなく、レーザー-マーキング性組成物において特定の効果を得る目的で、様々な用途において使用することができる。
【0013】
公知のバインダの使用は、干渉マーク効果として説明することのできる、様々な悪影響に導く可能性がある。このような干渉マークの形成は、マーク付けされた材料のマーク品位の劣化に寄与する恐れがある。干渉マーク効果は、数種の異なる方法で表すことができる。例えば、白色化、不透明化、または濁りが、レーザーで暴露した領域近傍において起こる可能性があり、これは肉眼で見ることのできるものである。公知のバインダは、レーザービームに暴露した際に、物理的な変化を起こして、微細な空隙、気泡、架橋、微細粒子および/または混在物を生成する可能性があり、これらの形成は、該マークの不透明化あるいはまた劣化をもたらす恐れがある。該干渉マークは、該材料のマーク付け領域における、低いマーク濃度、貧弱な色彩純度、および/または視覚的に不鮮明な/歪んだ像の形成に導く恐れがある。機械および/またはヒトの信頼性は、レーザーの暴露により形成すべき、意図したマークが、性能において所要レベルよりも低い場合には、低下する可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の第一の目的は、高いコントラスト、高い解像度、および高度の性能のコンシステンシーを持つ、優れたマーク性能を与える、レーザーでマーク付けできる媒体であって、また該レーザーによる暴露領域における材料の保全性に物理的な損傷を与えることに拠らない、例えば融除、炭化、または塗布成分の化学的な分解により放出される気泡のトラップ等に拠らずに、レーザーでマーク付けできる上記媒体を提供することにある。
本発明の第二の目的は、良好な媒体保存安定性または耐熱性およびレーザー暴露に対する最適な感度との間の釣合いのとれた性能を持つ、媒体を提供することにある。
本発明の第三の目的は、広い範囲の用途における要求を満たす、高い透明度を持つ、レーザー-マーキング性媒体を提供することにある。
更に別の本発明の目的は、レーザー-マーキング性媒体の構成であって、レーザーマーキング工程中に分解された化学物質の蒸気または破壊屑を放出せず、また該マーク形成層を、環境に対する直接的暴露から隔離することができ、また結果として該マーク形成層を、直接的な機械的磨滅または化学的攻撃から保護する、レーザー-マーキング性媒体の構成を提供することにある。
本発明の更なる目的は、該媒体の使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一局面によれば、レーザー-マーキング性材料を製造するための塗布組成物が提供され、該塗布組成物は、約150〜約190℃なる範囲のガラス転移温度:Tgを持つポリマーでカプセル化した、電子供与性染料プリカーサ粒子を含有しており、該染料プリカーサ粒子全体積の少なくとも約90%が、約0.2μm〜約5μmなる範囲の径を持つことを特徴とする。
もう一つの局面によれば、レーザー-マーキング性材料が提供され、該レーザー-マーキング性材料は、塗布層を含み、該塗布層は、約150〜約190℃なる範囲のガラス転移温度:Tgを持つポリマーでカプセル化した、電子供与性染料プリカーサ粒子を含み、該染料プリカーサ粒子全体積の少なくとも90%が、約0.2μm〜約5μmなる範囲の径を持つことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
A. 該マーク形成層の組成:
本発明の最初の三つの目的を達成するために、該マーク形成層の組成は、以下の主な要素を含む:好ましくは特定の範囲内のTgを持つポリマー内に、マイクロカプセル化された、電子供与性染料プリカーサ、該電子供与性染料プリカーサと反応して、可視スペクトルの波長領域において、強い吸収性を持つ染料に転化することのできる、電子受容性化合物およびこれら二つの種が分散され、またこれらの種が、相互に反応可能な距離の極近傍にあるように塗布される、ポリマー分散媒。
電子供与性染料プリカーサ:
本発明において好ましく使用できる電子供与性染料プリカーサは、実質的に無色であり、好ましくは電子の供与によりあるいは酸からプロトンを受容することによって発色するような特性を持つ、無色化合物である限り、特に限定されるものではない。該電子供与性染料プリカーサの骨格における、特に好ましい構造上の特徴は、開環反応に付される、または電子受容性化合物と接触状態に置かれた場合に、開裂するリング構造を含むことである。このような構造上の特徴の、典型的な例は、特にラクトン、ラクタム、サルトン(saltone)、またはスピロピランである。
【0017】
該電子供与性染料プリカーサの例は、トリフェニルメタンフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、フルオレン系化合物、ピリジン系化合物、およびピラジン系化合物を包含する。
該フルオラン系化合物の具体的な例は、米国特許第3624107号、同第3627787号、同第3641011号、同第3462828号、同第3681390号、同第3920510号および同第3959571号に記載されている化合物を含む。該フルオレン系化合物の具体的な例は、日本国特許出願第61-240989号に記載されている化合物を含む。該スピロピラン系化合物の具体的な例は、米国特許第3971808号に記載されている化合物を含む。該ピリジン系化合物およびピラジン系化合物の具体的な例は、米国特許第3775424号、同第3853869号および同第4246318号に記載されている化合物を含む。
該フルオラン系化合物としては、以下の構造式(1)によって表される化合物が好ましい。というのは、これら化合物は、極めて高濃度にてマイクロカプセル内に組込むことができ、そのために高いマーク濃度を得ることができるからである。
式(1):
【0018】
【化1】
【0019】
ここで、R1およびR2は、各々独立に、水素原子、C1-C8アルキル基、無置換のまたはC1-C4アルキル-またはハロゲン-置換C4-C7シクロアルキル基、無置換フェニル基またはC1-C4アルキル-、ヒドロキシ-またはハロゲン-置換フェニル基、C3-C6アルケニル基、C1-C4アルコキシ基、フェニル-C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ-C1-C4アルキル基および2-テトラヒドロフラニル基から選択される基であり、あるいはR1およびR2は、これらが結合している窒素原子と共に、無置換のまたはC1-C4アルキル-置換ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノまたはピペラジノリングを形成する。好ましい態様において、R1はC4H9を表すことができ、またR2はC2H5を表すことができる。
【0020】
該フルオレン系化合物としては、2-アリールアミノ-3-(H、ハロゲン、アルキル、またはアルコキシ-6-置換フルオラン)が、好ましいものとして例示される。その具体的な例としては、2-アニリノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-N-シクロヘキシル-N-メチラールフルオラン、2-p-クロロアニリノ-3-メチル-6-ジブチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-ジオクチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-クロロ-6-ジエチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-N-エチル-N-イソアミルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-N-エチル-N-ドデシルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メトキシ-6-ジブチルアミノフルオラン、2-o-クロロアニリノ-6-ジブチルアミノフルオラン、2-p-クロロアニリノ-3-エチル-6-N-エチル-N-イソアミルアミノフルオラン、2-o-クロロアニリノ-6-p-ブチルアニリノフルオラン、2-アニリノ-3-ペンタデシル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-エチル-6-ジブチルアミノフルオラン、2-o-トルイジノ-3-メチル-6-ジイソプロピルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-N-イソブチル-N-エチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-N-エチル-N-テトラヒドロフルフリルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-クロロ-6-N-エチル-N-イソアミルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-N-メチル-N-γ-エトキシプロピルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-N-エチル-N-γ-エトキシプロピルアミノフルオランおよび2-アニリノ-3-メチル-6-N-エチル-N-γ-プロポキシプロピルアミノフルオランが含まれる。
【0021】
該フタリド系化合物の具体的な例は、米国特許第Re.23024号、同第3491111号、同第3491112号、同第3491116号および同第3509174号に記載されている化合物を含む。該フタリド系化合物の中では、以下の構造式(2)で表される化合物が、最も好ましい。というのは、該化合物は、極めて高い濃度にてマイクロカプセル中に封入することができ、また高いマーク濃度を与えることができるからである:
式(2):
【0022】
【化2】
【0023】
他の好ましい化合物は、以下のような式(3)によって表される:
式(3):
【0024】
【化3】
【0025】
本発明の好ましい一態様は、該電子供与性染料プリカーサの溶解度が、酢酸エチル100g当たり約10gを越える値、より好ましくは酢酸エチル100g当たり約15gを越える値、および最も好ましくは酢酸エチル100g当たり約18gを越える値であるような態様である。
本発明の好ましい一態様は、約80質量%を越える量の該電子供与性染料プリカーサが、上記構造式(1)または(2)で表される化合物であるような態様であり、またより好ましい態様は、約100質量%が、該化合物であるようなものである。
【0026】
マイクロカプセル化:
本発明の組成物における該電子供与性染料プリカーサは、好ましくは表面重合法によって、マイクロカプセルとした後に使用することが好ましい。例えば、該表面重合法は、該マイクロカプセルのコアを形成するための該電子供与性染料プリカーサを、疎水性有機溶媒に溶解または分散させて、油相を製造するように使用することができる。次いで、該油相を、例えば水溶性ポリマーを水に溶解することによって得られる、水性相と混合し、更に、例えばホモジナイザー等を使用して、乳化および分散処理することができる。引き続きこれを加熱して、該油性液滴の界面においてポリマー-形成反応を行って、ポリマー物質のマイクロカプセル壁を形成することができる。
該ポリマーカプセル材料の具体的な例は、例えばポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ウレア-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、スチレン-メタクリレートコポリマー、およびスチレン-アクリレートコポリマーを包含する。これらの中では、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステルおよびポリカーボネートが好ましく、またポリウレタンおよびポリウレア特に好ましい。
【0027】
例えば、該カプセル壁材料として、ポリウレアを使用する場合において、マイクロカプセル壁は、ポリイソシアネート、例えばジイソシアネート、トリイソシアネート、テトライソシアネートまたはポリイソシアネートプレポリマーと、ポリアミン、例えばジアミン、トリアミンまたはテトラミン、2またはそれ以上のアミノ基を持つプレポリマー、ピペリジンまたはその誘導体、またはポリオールとを、水性相中で、該界面重合法に従って反応させることにより、容易に製造することができる。
ポリウレアおよびポリアミドにより形成される複合壁またはポリウレタンおよびポリアミドにより形成される複合壁は、例えばポリイソシアネートおよびこれとの反応によって該カプセル壁を形成する第二の物質(例えば、酸クロリド、ポリアミンまたはポリオール)を、水溶性ポリマーの水性溶液(水性相)またはカプセル化すべき油性媒体(油性相)と混合し、乳化および分散処理に掛け、引続き加熱する等の方法で製造できる。ポリウレアおよびポリアミドにより形成される複合壁の、この製法は、JP-A-58-66948において詳しく説明されており、その内容を、参考としてここに組み入れる。このような方法の付随的な詳しい説明については、公開されている公知文献、例えば「ポリウレタンハンドブック(Polyurethane Handbook)」Keiji Iwata著, (1987), 日刊工業新聞社(Nikkan Kogyo Shimbun, Ltd.)刊、および「ポリウレタンハンドブック(Polyurethane Handbook)」,Dr. Gunter Oertal編, ハンサーガードナー出版社(Hanser Gardner Publications, Inc.)刊(第二版, 1993)を参照のこと。これら文献の内容を、参考としてここに組み入れる。
【0028】
ポリイソシアネート化合物の一例として、3またはそれ以上の官能基のうち、一つのイソシアネート基を持つ化合物を使用することができ、また二官能性のイソシアネート化合物を、上記の化合物と組合せて使用することができる。例えば、以下の例示化合物を使用することができる:ジイソシアネート、例えばキシレンジイソシアネートまたはその水添生成物、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはその水添生成物、トリレンジイソシアネートまたはその水添生成物、およびイソホロンジイソシアネート;これらのダイマーまたはトリマー(ビウレットまたはイソシアヌレート);ポリオールの付加生成物としての多官能性を持つ化合物、例えばトリメチロールプロパン、および二官能性イソシアネート、例えばキシレンジイソシアネート;活性水素を含むポリエーテル等のポリマー化合物を含む、トリメチロールプロパン等のポリオールと、キシレンジイソシアネート等の二官能性イソシアネートとの付加生成物としての化合物、例えば導入されたポリオキシエチレンオキシドを含むもの;およびベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合生成物。
【0029】
JP-A-62-212190、JP-A-4-26189、JP-A-5-317694および日本国特許出願第8-268721号に記載されている化合物を使用することができ、これらの内容を参考としてここに組み入れる。前記水性相および/または前記油性相に、該マイクロカプセル壁の構成成分として、該ポリイソシアネートとの反応を介して添加される、該ポリオールおよび/または該ポリアミドの具体的な例は、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ソルビトール、およびヘキサメチレンジアミンを含む。ポリオールを添加する場合には、ポリウレタン壁を形成することができる。
本発明において、該マイクロカプセル化反応の条件は、前記電子供与性染料プリカーサ粒子の全体積の少なくとも約90%が、約0.2〜約12μmなる範囲、好ましくは約0.3μm〜約5μmなる範囲、および最も好ましくは約0.3μm〜約2μmなる範囲の、該マイクロカプセルの平均粒径を持つように、設定される。該マイクロカプセル壁の厚みは、任意の適当な厚み、例えば約0.01〜約0.3μmなる範囲であり得る。
【0030】
該マイクロカプセル材料およびマイクロカプセル化反応は、該マイクロカプセル壁が、約120℃〜約190℃なる範囲、好ましくは約150℃〜約190℃なる範囲、より好ましくは約150℃〜約180℃なる範囲、より好ましくは約160℃〜約180℃なる範囲、および最も好ましくは約165℃〜約175℃なる範囲のガラス転移温度:Tgを持つように、注意深く選択し、かつ制御することができる。該マイクロカプセル壁のTgは、任意の適当な手段、例えば公知の示唆熱分析法、例えばDSC(示唆走査式熱量計)または様々な温度範囲に渡る非熱(Cp)変化を測定する、DDSC(ダイナミックDSC)を利用することにより測定することができる。このような測定のために使用できる装置は、パーキンエルマーダイアモンド(Perkin Elmer Diamond) DSC、サファイア(Sapphire) DSC、ハイパーDSC(HyperDSCTM)、およびTAインスツルメンツ(Instruments) Q-シリーズを包含する。
【0031】
例えば、上記諸特性を得るために、マイクロカプセル製造のための特定の反応条件を選択し、かつ制御することができる。これらの条件は、該電子供与性染料プリカーサの乳化方法、該マイクロカプセル壁を形成するための、該ポリイソシアネートおよびポリアミンの添加速度およびその量、および/または混合および反応温度、期間、および攪拌条件を含むことができる。この反応において、該反応速度は、例えば高い反応温度を維持することによって、および/または適当な重合触媒を添加することによって高めることができる。
該懸濁液中の該マイクロカプセルの粒径は、任意の適当な手段を利用して測定することができ、例えば該懸濁液を水溶液中に希釈し、またミー(Mie)-散乱理論に基くレーザー散乱法を利用して、該粒子の粒径および分布を測定することができる。このような測定のために使用できる装置は、ホリバ(Horiba)社製のLAシリーズ、ベックマンコールター(Beckman Coulter)社製のLSシリーズまたはマルバーンインスツルメンツ(Malvern Instrument)社製のマスターサイザー(Mastersizer)シリーズを含む。
【0032】
該マイクロカプセル壁は、更に必要に応じて、金属-含有染料、電荷調節剤、例えばニグロシン、および他の任意の添加材物質を含むことができる。これら添加剤は、壁形成前またはその最中に添加される場合には、該カプセル壁中に含めることができ、あるいは必要により、他の任意の時点において添加することができる。該カプセル壁表面の帯電特性を調節するためには、モノマー、例えばビニルモノマーを、必要に応じてグラフト-重合することができる。
その上、所定のマーキング温度において優れた物質透過性を持つマイクロカプセル壁を製造するために、また高い彩色効果を持つ優れた性能のマークを得るためには、該選択された壁材料の該ポリマーに対して適当な、可塑剤を使用することが好ましい。該可塑剤は、好ましくは約50℃またはそれ以上、およびより好ましくは約120℃またはそれ以上の融点を持つ。可塑剤としては、室温にて固体状態にある物質を選択することが好ましい。
例えば、該壁材料がポリウレアまたはポリウレタンを含む場合、ヒドロキシル化合物、カルバメート化合物、芳香族アルコキシ化合物、有機スルホンアミド化合物、脂肪族アミド化合物およびアリールアミド化合物を、可塑剤として使用することが好ましい。
【0033】
該マイクロカプセルのコアは、好ましくは約100〜約300℃なる範囲の沸点を持つ疎水性有機溶媒に、該電子供与性染料プリカーサ化合物を溶解して、上記の油性相を生成することによって製造することができる。該疎水性有機溶媒は、1種またはそれ以上の化合物を含むことができる。該溶媒の具体的な例は、エステル化合物、ジメチルナフタレン、ジエチルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、ジメチルビフェニル、ジイソプロピルジフェニル、ジイソブチルビフェニル、1-メチル-1-ジメチルフェニル-2-フェニルメタン、1-エチル-1-ジメチルフェニル-1-フェニルメタン、1-プロピル-1-ジメチルフェニル-1-フェニルメタン、トリアリールメタン(例えば、トリトルイルメタン、またはトルイルジフェニルメタン)、ターフェニル化合物(例えば、ターフェニル)、アルキル化合物、アルキル化ジフェニルエーテル(例えば、プロピルジフェニルエーテル)、水添ターフェニル(例えば、ヘキサヒドロターフェニル)およびジフェニルターフェニルを包含する。これらの疎水性有機溶媒は、単独でまたは2またはそれ以上の組合せで使用することができる。
【0034】
例えば、上記乳化分散液の乳化安定性の観点から、好ましくはエステル化合物を使用できる。該エステル化合物は、例えばトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ブチルホスフェート、オクチルホスフェートまたはクレジルフェニルホスフェート等のホスフェート;ジブチルフタレート、2-エチルヘキシルフタレート、エチルフタレート、オクチルフタレートまたはブチルベンジルフタレート等のフタレート;ジオクチルテトラヒドロフタレート;エチルベンゾエート、プロピルベンゾエート、ブチルベンゾエート、イソペンチルベンゾエートまたはベンジルベンゾエート等のベンゾエート;エチルアビエテートまたはベンジルアビエテート等のアビエテート;ジオクチルアジペート;イソデシルサクシネート;ジオクチルアゼレート;ジブチルオキサレートまたはジペンチルオキサレート等のオキサレート;ジエチルマロネート;ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、またはジブチルマレエート等のマレエート;トリブチルシトレート;メチルソルベート、エチルソルベートまたはブチルソルベート等のソルベート;ジブチルセバケートまたはジオクチルセバケート等のセバケート;蟻酸モノエステルまたはジエステル、酪酸モノエステルまたはジエステル、ラウリン酸モノエステルまたはジエステル、パルミチン酸モノエステルまたはジエステル、ステアリン酸モノエステルまたはジエステル、またはオレイン酸モノエステルまたはジエステル等のエチレングリコールエステル;トリアセチン;ジエチルカーボネート;ジフェニルカーボネート;エチレンカーボネート;プロピレンカーボネート;およびトリブチルボレートまたはトリペンチルボレート等のボレートを含む。一例示的態様において、該疎水性有機溶媒は、少なくともトリクレジルホスフェートを含むことができ、その使用は、良好なエマルションの安定性に寄与し得る。
【0035】
カプセル化すべき該電子供与性染料プリカーサが、該疎水性有機溶媒に対して低い溶解度を持つ場合には、高い溶解度を持つ低沸点溶媒を、補助的に組合せて使用することができる。該低沸点溶媒好ましい例は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、および塩化メチレンを含む。
該電子供与性染料プリカーサ化合物は、レーザー-マーキング性材料のレーザー-感受性記録層中に、任意の有効量で存在し得る。好ましくは、該電子供与性染料プリカーサは、十分な色濃度を与えることができ、しかも該レーザー-マーキング性材料の透明性を維持できる量にて存在し得る。例えば、該電子供与性染料プリカーサの含有率は、約0.1〜約5.0g/m2なる範囲および好ましくは約1.0〜約4.0g/m2なる範囲の値であり得る。
【0036】
マイクロカプセルの製造中に、水溶性ポリマーを、該反応混合物の該水性相に添加して、生成する乳化分散液を安定化するために、保護コロイドを生成する。該水溶性ポリマーの型およびその添加量は、生成する本発明の塗布組成物の粘度が、約5センチポアズ(cps)〜約30cpsなる範囲、好ましくは約10cps〜約25cpsなる範囲、および最も好ましくは約10cps〜約20cpsなる範囲、となるように選択される。粘度は、S21小型スピンドルを備えた、ブルックフィールドプログラマブル(Brookfield Programmable) DV-II+粘度計を用いて、100-200RPMにて測定される。サンプルの品質に応じて、レギュラー(Regular) RVシリーズのスピンドルを使用することも可能である。
【0037】
該保護コロイドを製造するのに使用する該水溶性ポリマーは、公知のアニオン性ポリマー、ノニオン性ポリマーおよび両性ポリマーから、適切に選択することができる。該水溶性ポリマーは、好ましくはその乳化を行うべき温度において、水に対して5%またはそれ以上の溶解度を持つ。該ポリマーの具体的な例は、ポリビニルアルコールおよびその変性製品、ポリアクリル酸アミドおよびその誘導体、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、エチレン-無水マレイン酸コポリマー、イソブチレン-無水マレイン酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、エチレン-アクリル酸コポリマー、酢酸ビニル-アクリル酸コポリマー、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースおよびメチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、デンプン誘導体、アラビアゴムおよびアルギン酸ナトリウムを含む。これらの中では、ポリビニルアルコール、ゼラチンおよびセルロース誘導体が、特に好ましい。
該油性相と該水性相との混合比は、例えば適当な粘度を維持するための任意の値であり得る。一例示的な態様において、該油性相と該水性相との混合比は、質量基準で約0.02〜約0.6なる範囲、およびより好ましくは質量基準で約0.1〜約0.4なる範囲の値であり得る。例えば、このような混合比を用いることによって、該塗布組成物の改善された生産性並びに該塗布組成物の最適の安定性を達成することができる。
【0038】
該油性相と該水性相とを、更に均一に乳化し、かつ分散させるために、該油性相および該水性相の少なくとも何れか一方に、界面活性剤を添加してもよい。該界面活性剤の添加量は、該油性相の質量を基準として、好ましくは約0.1%〜約5%なる範囲、およびより好ましくは約0.5〜約2%なる範囲内にある。該界面活性剤を該水性相に添加する場合には、該保護コロイドとの相互作用を通して、沈殿形成または凝集を引起さない、アニオン性またはノニオン性界面活性剤を適切に選択すべきである。このような界面活性剤の好ましい例は、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、およびポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)を含む。
【0039】
エマルションは、上記成分を含む該油性相および該保護コロイドおよび界面活性剤を含有する該水性相から製造することができる。例えば、高速攪拌または超音波分散により、微細粒子を乳化するためのデバイスが、利用可能である。例えば、マントンゴーリン(Manton Gaulin)ホモジナイザー、超音波分散装置、溶解装置またはカディー(KADY)ミル等のホモジナイザーを使用することができる。この乳化処理の後、得られるエマルションを、場合により例えば約30℃〜約70℃なる範囲の温度にて加熱して、上記カプセル壁形成反応を促進することができる。この反応中に、該エマルションに水を添加することができるが、これは、該カプセル同士が衝突する確率を下げ、および/または該カプセルの凝集を減じまたは阻止するのに効果的であり得る。凝集を阻止するための分散液を、該反応中に添加することも可能である。
該カプセル壁形成反応は、任意の適当な期間に渡り、例えば数時間程度行って、目的とするマイクロカプセルを得ることができる。例えば、該カプセル壁形成反応は、二酸化炭素の生成を結果する可能性があり、またこのようなガスの生成が停止することは、該反応の完了を示す徴候であり得る。
【0040】
電子受容性現像分散液:
該電子供与性染料プリカーサと反応する、該電子受容性現像剤化合物は、単独で、または2種またはそれ以上の組合せで使用することができる。本発明の塗布組成物は、該電子受容性現像剤化合物を含有する分散液と併合することができる。一例示的な態様において、本発明の塗布組成物は、該塗布組成物の安定性を維持するために、該電子受容性現像分散液とは別々に提供することができる。
該電子受容性化合物の例は、酸性物質、例えばフェノール化合物、サリチル酸誘導体、有機酸またはその金属塩、オキシベンゾエート、および/またはフェノール化合物を含む。その具体的な例は、JP-A-61-291183に記載されている化合物を含む。この文献の内容を、参考としてここに組入れる。これらの内で、良好な着色特性が得られるという観点から、ビスフェノール化合物が好ましい。電子受容性現像剤の組成物は、ディベロッパーエマルションディスパージョン(Developer Emulsion Dispersion)として、米国特許第6,797,318号の実施例-1に、エマルションディスパージョン(Emulsion Dispersion)として、米国特許第5,409,797号の実施例-1に、およびカラーディベロッパー(Color Developer)として、米国特許第5,691,757号の実施例に記載されている。これら米国特許の内容を、参考としてここに組入れる。
【0041】
該ビスフェノール化合物の例は、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)プロパン(一般名: ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジクロロフェニル)プロパン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)-2-メチルペンタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,4-ビス(p-ヒドロキシフェニルクミル)ベンゼン、1,3-ビス(p-ヒドロキシフェニルクミル)ベンゼン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、およびビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジルエステルを含む。サリチル酸誘導体の例は、3,5-ジ-α-メチルベンジルサリチル酸、3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸、3-α,α-ジメチルベンジルサリチル酸および4-(β-p-メトキシフェノキシエトキシ)サリチル酸を含む。これらの多価金属塩の例は、亜鉛塩またはアルミニウム塩を含む。該オキシベンゾエートの例は、p-ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシルエステル、およびβ-レゾルシン酸2-フェニルエチルエステルを含む。該フェノール化合物の例は、p-フェニルフェノール、3,5-ジフェニルフェノール、クミルフェノール、4-ヒドロキシ-4'-フェノキシジフェニルスルホンを含む。
【0042】
該電子受容性化合物は、水溶性ポリマー、有機塩基、および他の色-形成助剤を含む分散液として使用でき、あるいは僅かに水溶性であるか、あるいは水-不溶性の、高沸点有機溶媒中に溶解し、界面活性剤および/または保護コロイドとしての水溶性ポリマーを含有するポリマーの水性溶液(水性相)と混合し、次いで例えばホモジナイザーによって乳化することによって得られる、乳化分散液として使用することも可能である。この場合、低沸点溶媒を、必要に応じて溶解助剤として使用することもできる。
更に、該電子受容性化合物および該有機塩基は、別々に乳化分散に掛けることができ、また混合後に高沸点溶媒に溶解し、引き続き乳化分散を行うことも可能である。該乳化分散液の粒子径は、好ましくは約1μmまたはそれ未満である。この場合、使用する該高沸点有機溶媒は、例えばJP-A-2-141279に記載されている高沸点オイルから、適切に選択することができる。これらの内で、エステル化合物の使用が、該乳化分散物の乳化安定性の観点から好ましく、またリン酸トリクレジルが特に好ましい。該オイルは、その混合物として、および他のオイルとの混合物として使用できる。
【0043】
該保護コロイドとして含まれる該水溶性ポリマーは、公知のアニオン性ポリマー、ノニオン性ポリマーおよび両性ポリマーから適切に選択することができる。好ましくは、該水溶性ポリマーは、その乳化が行われる温度において、水に対して約5%またはそれを越える溶解度を持つ。その具体的な例は、ポリビニルアルコールおよびその変性生成物、ポリアクリル酸アミドおよびその誘導体、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、エチレン-無水マレイン酸コポリマー、イソブチレン-無水マレイン酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、エチレン-アクリル酸コポリマー、酢酸ビニル-アクリル酸コポリマー、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエーテルを主成分とするポリウレタンコポリマー、スチレンアクリル酸ポリマー、アクリル酸またはメタクリル酸のポリマーおよびその誘導体、ポリエステルまたはその誘導体、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースおよびメチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、デンプン誘導体、アラビアゴムおよびアルギン酸ナトリウムを含む。これらの中では、ポリビニルアルコール、ゼラチン、およびセルロース誘導体が、特に好ましい。
該油性相と該水性相との混合比は、質量基準で、好ましくは0.02〜0.6なる範囲、およびより好ましくは0.1〜0.4なる範囲にある。該混合比が、0.02〜0.6なる範囲内にある場合、適当な粘度を維持することができ、また結果的に該塗布組成物の十分な生産性が得られ、またその安定性は優れたものとなる。
【0044】
混合塗布分散液:
レーザー-マーキング性材料の製造において、該塗布組成物は、該電子受容性現像剤を含有する、第二の現像剤塗布組成物と混合して、混合塗布分散液を製造することができる。該混合塗布分散液は、次に、レーザー-マーキングのための、レーザー-感受性記録層として使用するための基板上に塗布することができる。該塗布組成物と該第二の現像剤塗布組成物との間の、任意の適当な比を使用することができる。例えば、該比は、該電子供与性染料プリカーサの全質量と該現像剤の全質量との比が、約1:0.5〜約1:30なる範囲、好ましくは約1:1〜約1:10なる範囲となるように調節できる。
【0045】
該マイクロカプセル組成物を製造する際に、該保護コロイドとして使用される、該水溶性ポリマーおよび該乳化分散液を製造する際に、該保護コロイドとして使用される、該水溶性ポリマーは、該レーザー-感受性記録層のバインダとして機能し得る。該塗布組成物は、また該保護コロイドとは別に、バインダを添加し、また混合することによって製造することも可能である。該付随的なバインダとして、水に対する溶解性を持つものを使用することができる。その例は、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エピクロルヒドリン-変性ポリアミド、エチレン-無水マレイン酸コポリマー、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、イソブチレン-無水マレイン酸サリチル酸コポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アミド、メチロール-変性ポリアクリルアミド、デンプン誘導体、カゼインおよびゼラチンを含む。該バインダに耐水性を付与するために、これに耐水化剤を添加することができる。補助的にまたは代わりに、疎水性ポリマーのエマルション、例えばスチレン-ブタジエンゴムラテックス、またはアクリル樹脂エマルションを、これに添加することができる。
【0046】
任意の適当な塗布技術を使用して、該レーザー-感受性記録層を製造するために、基板を該混合塗布分散液で塗布するのに使用できる。該レーザー-感受性記録材料は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン化合物、ゼラチン、ポリビニルアルコール、カルボキシル-変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリスチレンまたはそのコポリマー、ポリエステルまたはそのコポリマー、ポリエチレンまたはそのコポリマー、エポキシ樹脂、アクリレート系樹脂またはそのコポリマー、メタクリレート系樹脂またはそのコポリマー、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂またはポリビニルブチラール樹脂を含むことができ、これらは、該塗膜の均一性および該塗布フィルムの強度を改善するのに有効であり得る。
【0047】
その他の添加剤:
上記マーク形成層におけるその他の成分は、特に限定されるものではなく、必要に応じて適切に選択することができ、またその例は、UV吸収剤として知られ、また酸化防止剤として知られる、公知の融解剤を含む。
融解剤は、レーザー-応答性を改善し、および/または該染料形成反応を促進するのに有効な量で、該マーク形成層中に、含めることができる。融解剤の例は、芳香族エーテル、チオエーテル、エステル、脂肪族アミド、およびウレイドを含む。その具体的な例は、JP-A-58-57989、JP-A-58-87094、JP-A-61-58789、JP-A-62-109681、JP-A-62-132674、JP-A-63-151478、JP-A-63-235961、JP-A-2-184489およびJP-A-2-215585に記載されている。
【0048】
該UV吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸系、シアノアクリレート系、およびシュウ酸アニリド系の吸収剤を含む。その具体的な例は、JP-A-47-10537、JP-A-58-111942、JP-A-58-212844、JP-A-59-19945、JP-A-59-46646、JP-A-59-109055、JP-A-63-53544、JP-B-36-10466、JP-B-42-26187、JP-B-48-30492、JP-B-48-31255、JP-B-48-41572、JP-B-48-54965、JP-B-50-10726、および米国特許第2719086号、同第3707375号、同第3754919号および同第4220711号に記載されている。
該酸化防止剤の好ましい例は、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、アニリン系およびキノリン系を含む。その具体的な例は、JP-A-59-155090、JP-A-60-107383、JP-A-60-107384、JP-A-61-137770、JP-A-61-139481およびJP-A-61-160287に記載されている。
該他の成分の塗布量は、好ましくは約0.05〜約1.0g/m2なる範囲、およびより好ましくは約0.1〜約0.4g/m2なる範囲内にある。該他の成分は、該マイクロカプセルの内部、または該マイクロカプセルの外部に、あるいは本発明の組成物の該電子受容性化合物の分散液中に添加することができる。
【0049】
該マーク形成層の形成:
本発明の該マーク形成層用の塗布組成物を得るために、上記の主な成分を、均一に混合し、選択されたポリマー媒体(バインダ)中に分散させることができる。この方法において、本発明の塗布組成物の混合比は、電子供与性染料プリカーサの全質量と電子受容性化合物の全質量との比が、約1:0.5〜約1:30なる範囲、好ましくは約1:1〜約1:10なる範囲となるような値である。
該マーク形成層内の電子供与性染料プリカーサの量は、約0.1〜5.0g/m2なる範囲にあることが好ましい。この範囲内において、十分な色濃度を達成することができ、しかも該レーザー-感受性記録層の透明性を維持することができる。より好ましくは、該電子供与性染料プリカーサの量は、約1.0〜約4.0g/m2なる範囲にある。
【0050】
該マーク形成層の調製において、該電子供与染料プリカーサ組成物またはそのマイクロカプセル組成物を準備する際に、該保護コロイドとして使用される、該水溶性ポリマー、および本発明の電子受容分散液を調製する際に、保護コロイドとして使用される、該水溶性ポリマー両者が、該マーク形成層のバインダとして機能する。
上記保護コロイドとは別の、もう一つのバインダを添加しかつ混合することも可能である。好ましくは、一般的に水溶性ポリマーが使用され、またその例は、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エピクロルヒドリン-変性ポリアミド、エチレン-無水マレイン酸コポリマー、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、イソブチレン-無水マレイン酸サリチル酸コポリマー、ポリアクリル酸アミド、メチロール変性ポリアクリルアミド、カゼインおよびゼラチンを含む。
該バインダに耐水性を付与するために、これに耐水化剤を添加することができ、また疎水性ポリマーのエマルション、具体的にはスチレン-ブタジエンラテックス、スチレンアクリル酸ポリマー、アクリル酸またはメタクリル酸系ポリマーまたはコポリマーおよびその誘導体、ポリエステルまたはそのコポリマーをこれに添加することができる。
【0051】
該マーク形成層を安全にかつ均一に被覆するために、また該被覆フィルムの強度を維持するために、本発明のマーク形成層は、更にメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシル-変性ポリビニルアルコール、ポリスチレンまたはそのコポリマー、ポリエーテル、ポリウレタン樹脂またはその誘導体、ポリエーテルを主成分とするポリウレタンコポリマー、ポリエチレンまたはそのコポリマー、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂またはデンプン化合物を含むことができる。
マーク形成層を製造すべく、基板を混合被覆分散液で被覆するために、水性または有機溶媒系の被覆組成物に適した公知の被覆法を使用する。
B. レーザーマーキング性媒体
支持層:
該レーザーマーキング性媒体は、該マーク形成層を被覆する基板として機能し得る、支持層を含むことができる。該マーク形成層を、以下に記載する隔離層上に被覆する場合には、該支持層および該隔離層は、同一のものであり得る。他の場合においては、該支持層は、該マーク形成層の下部であり得、即ち該入射レーザービームの方向から離れたものであり得る。
【0052】
透明なレーザーマーキング性材料を得るために、可視スペクトル範囲内の波長をもつ、透明な支持層を使用することができる。該透明な支持体の例は、合成ポリマー材料を含むが、これらに制限されず、その例は、ポリエステルフィルム、例えばポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート、セルローストリアセテートフィルム、ポリラクチドフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ナイロンフィルム、ポリオレフィンフィルム、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、またはBOPP、およびポリアクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、およびエポキシを含み、これらは単独で、または積層による2またはそれ以上の組合せとして使用できる。
【0053】
トップコートおよび中間層
該レーザー-感受性記録材料は、該支持体上に、少なくとも1種の付随的な層、例えばトップコートおよび/または中間層および下塗り層を含むことができる。該トップコートおよび中間層は、保護被覆層として機能して、該層の混合を減じまたは防止し、および/または該レーザー-感受性記録層にとって有害なものであり得る、ガス(例えば、酸素)を遮断することを可能とする。該トップコートおよび中間層においてバインダを使用することができるが、これは特に制限はない。例えば、該バインダは、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、およびセルロース誘導体を含むことができる。塗布適性を付与するために、様々な種類の界面活性剤を添加することができる。そのガス遮断特性を、更に改善するために、マイカ等の無機微粒子を、例えば該バインダの量を基準として、約2〜約20質量%なる範囲、より好ましくは約5〜約10質量%なる範囲の有効量で添加することができる。
下塗り層
下塗り層を、該レーザー感受性記録層を被覆する前に、該支持体上に設けて、該支持体に対する該レーザー感受性記録層の接着性を改善することができる。例えば、アクリレートコポリマー、ポリビニリデンクロリド、SBR、または水性ポリエステルを使用することができる。この層は、任意の適当な厚み、例えば約0.05〜約0.5μmなる範囲の厚みを持つものであり得る。
【0054】
該下塗り層は、硬化剤を用いて、硬化することができる。該硬化剤の使用は、該レーザー-感受性記録層塗布組成物中に含まれる水(これは、該レーザー-感受性記録層上に記録される像の劣化に導く可能性がある)の含有率による該下塗り層の膨潤を減じまたは防止するのに効果的であり得る。該硬化剤の例は、例えばジアルデヒド化合物、例えばグルタルアルデヒドまたは2,3-ジ-ヒドロキシ-1,4-ジオキサン、およびホウ酸を含む。任意の有効な量の硬化剤を、該下塗り層の材料に依存して、例えば所定の硬化度に応じて、約0.2〜約3.0質量%なる範囲の量で使用することができる。該硬化剤は、単独でまたは2種またはそれ以上の組合せで使用することができる。該下塗り層は、好ましくは該レーザー-感受性記録層の透明性を維持するのに効果的なものである。例えば、該下塗り層は、約1.45〜約1.75なる範囲の屈折率を持つ微粒子状物質を含むことができる。
【0055】
隔離層:
本発明の該レーザーマーキング性媒体の隔離層は、該マーク形成層と該レーザー照射源との間の媒体として定義される。これは、上部に該マーク形成層が塗布される、支持シートあるいは該マーク形成層の上部における塗布層であり得る。該隔離層および該マーク形成層は、塗布または加圧積層処理によって密接な接触状態に置かれ、あるいは接着層により隣接状態に置くことができる。後者の場合において、該接着物質は、以下に定義する隔離物質に関する同一の透過率基準を満たすべきである。この隔離物質の利点は、a) レーザーマーキング工程の、該マーク形成層の分解によって生じる、望ましからぬ化学物質の蒸気の放出を阻止し、b) 機械的な磨耗並びに、例えば大気中への、O2、O3およびSO2等の有害なガスの放出を含む、化学的な攻撃から、該マーク形成層を保護することにある。該有害ガスは、長期間保存した際に、マークの退色、バックグラウンドの曇り、または黄変を促進する傾向がある。
【0056】
本発明のレーザー-マーキング性媒体を使用する、用途および目的に対して選択された、レーザーの型に依存して、該隔離材料は、選択されたレーザーの特定波長に対して実質的に透明であるべきである。好ましくは、該隔離層の透過率は、少なくとも約70%以上、より好ましくは約80%またはそれ以上、および最も好ましくは約90%またはそれ以上である。該選択されたレーザーの特定の波長におけるより高い透過率は、該マーク形成層における、放出されたレーザーエネルギーの最少の減衰率を保証し、また結果として与えられたレーザー出力において、達成し得るマーキング速度を最大にすることを可能とする。該選択されたレーザーの特定波長における、より高い透過率に係る第二の利点は、該材料に望ましからぬ熱応力を誘発し、また物理的な歪みを生じる、該隔離媒体内で発生する熱が、最小化されることにある。
【0057】
更に、該隔離層材料は、該マーク形成温度よりも十分に高い、熱分解発生温度を持つべきである。これは、該マーキング工程中に該隔離物質の如何なる分解をも生じず、また結果として望ましからぬ化学物質の蒸気を放出しないことを保証するであろう。該電子供与性染料プリカーサをカプセル化する場合、本発明のマイクロカプセル化材料のTgは、該隔離層材料の熱分解発生温度を十分に下回る範囲内に入るように調節すべきである。該電子供与性染料プリカーサおよび該電子受容性化合物が、他の分散手段により分離されている場合には、該分散または分離媒体のガラス転移点または融点は、該隔離物質の熱分解発生温度を十分に下回るように選択すべきである。何れの場合にも、本発明の該隔離物質の、好ましい熱分解発生温度は、少なくとも約200℃、より好ましくは約250℃またはそれ以上とすべきである。
本発明の該隔離物質は、用途の要求に依存して、可視スペクトルの波長範囲(約400-700nm)において透明である必要はない。殆どの用途において、可視スペクトルの波長範囲において透明な隔離物質が好ましく、これは、機械的な磨耗並びに化学的な攻撃から、該隔離層によって保護されている、視認性のマークを与えるであろう。
【0058】
適当な隔離材料は、ポリマーフィルムまたは塗布組成物を包含し、その例は、以下に列挙するものを含むが、これらに限定されない:ポリオレフィンフィルム、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、または二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、ポリエステルフィルム、例えばポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート、セルローストリアセテートフィルム、ポリラクチドフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ナイロンフィルム、およびポリウレタン樹脂またはポリウレタンコポリマーを主成分とする塗布組成物、例えばウレタン-アクリレートコポリマーおよびポリエーテルポリウレタンコポリマー、ポリアミド樹脂、エピクロルヒドリン-変性ポリアミド、ポリアクリレート、ポリ(メタ)アクリレートまたはその誘導体、コア-シェルアクリル系ラテックス、ポリアクリル酸アミド、スチレンアクリル酸ポリマーポリスチレンまたはそのコポリマー、例えばスチレン-無水マレイン酸コポリマーおよびスチレン-ブタジエンゴムラテックス、エポキシ樹脂、エチレン-無水マレイン酸コポリマー、イソブチレン-無水マレイン酸サリチル酸コポリマー、ポリカーボネート、ポリエステルまたはそのコポリマー、ポリエーテル、ポリエーテルを主成分とするポリエチレンまたはそのコポリマー、ポリビニルブチラール樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびポリビニルピロリドン。CO2レーザーマーキング性媒体に関連して、ポリオレフィンフィルムおよびポリウレタンまたはポリウレタンコポリマー樹脂を主成分とする塗布配合物は、本発明の該隔離層用の好ましい材料である。レーザーマーキング装置を説明する以下の章において、掲載されるレーザーの型の全ての放出波長に対して、上に列挙した材料全てが適している訳ではないことを理解すべきである。
【0059】
他の層:
本発明のレーザー-マーキング性材料は、更に該基板上に、他の層、例えばプライマー層、剥離ライナーを伴う接着層を含むことができる。該プライマー層は、該マーク形成層の該基板に対する接着性を改善するために、該マーク形成層の塗布前に設けることができる。用途の要求に依存して、接着層および、必要な場合には、剥離層を、該マーク形成層とは反対側の該基板上に塗布/積層して、レーザーマーキング性自己接着性媒体を形成することができる。
プライマー層として、アクリレートコポリマー、ポリビニリデンクロリド、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、または水性ポリエステルを使用することができ、また該層の厚みは、好ましくは0.05〜0.5μmなる範囲にある。該プライマー層上に該マーク形成層を塗布する際に、該プライマー層が、該マーク形成層用の組成物中に含まれる水分によって膨潤し、これにより、該マーク形成層における該マークの品質を劣化させる可能性がある場合が存在する。従って、該プライマー層は、硬化剤、例えばジアルデヒド化合物、例えばグルタルアルデヒドまたは2,3-ジヒドロキシ-1,4-ジオキサン、およびホウ酸により硬化することが好ましい。これらの硬化剤は、単独でまたは2またはそれ以上の組合せで使用することができる。
【0060】
該硬化剤の添加量は、凡そ該プライマー層の材料に応じて決定され、また所望の硬化度に応じて、0.2〜3.0質量%なる範囲から選択される。好ましくは、該層は、また該レーザー-マーキング性媒体の透明性を維持するという観点から、約1.45〜約1.75なる範囲の屈折率を持つ微粒状物質をも含む。
レーザー-マーキング性媒体の形成:
本発明のレーザー-マーキング性媒体は、好ましくは以下に記載する方法によって製造することができるが、これに限定されない。
本発明のレーザー-マーキング性媒体製法は、以下のような諸工程を含む:該支持体に該プライマー層(使用する場合には)を塗布する工程;該支持体上の該プライマー層上に、マーク形成層(使用する場合には)を塗布する工程;および該支持体層が、上記の隔離層ではない場合に、該マーク形成層の上部に隔離層を塗布する工程。該支持体層が、該隔離層としても機能する場合には、該プライマー層は、場合により該支持体の両側に塗布して、該マーク形成層の反対側における追加の印刷を容易にすることができる。必要に応じて、他の層を形成することも可能である。
【0061】
本発明のレーザー-マーキング性媒体の製法において、該支持体層が、該隔離層として機能しない場合には、該マーク形成層および該隔離層は、場合により同時に塗布することができ、またこの場合において、該マーク形成層および該隔離層の塗布組成物は、多層塗布処理に掛けられ、それにより該マーク形成層および該隔離層を、同時に形成することができる。多層同時塗布技術は、該マーク形成層が、電子供与性染料プリカーサ分散液の、および電子受容性化合物の分散液の、別々の層を更に含む場合には、特に適している。
あるいはまた、本発明のレーザー-マーキング性媒体は、以下の順序にて、公知の塗布法により順次塗布することができる:該プライマー層、該マーク形成層、および該隔離層。これら塗布法の例は、ブレードコーティング法、エアーナイフコーティング法、グラビアコーティング法およびバーコーティング法を含むが、これらに限定されない。
本発明のレーザー-マーキング性媒体の様々な構成を、本発明の精神の範囲内において以下に例示するが、これらに限定されない。
【0062】
図1に示した態様において、該マーク形成層1は、該マーク形成層上に塗布またはこれと積層されていてもよい、支持体2と隔離層3との間に挟まれている。該マーク形成層は、カプセル壁5によってカプセル化されている電子供与性染料プリカーサ4、および電子受容性化合物6を含み、これら両者は、該レーザー-マーキング性材料が、該ポリマーのTg以下の周囲温度下にある場合には、反応距離に極近い状態にあるが、該カプセル壁および該媒体のポリマーによって、直接接触することは防止されている、同一のポリマー媒体7内に配置されている。レーザービーム8を通して、該マーク形成層にエネルギーを放出し、また該媒体温度を該カプセル壁のTgを越える温度まで高めると、該カプセル壁が膨張し、かつ開放されて、移動または拡散によって、これら2種の化合物間の直接的な接触に導き、また該染料プリカーサが、染料に転化される。該マーキング工程中に発生する、該マーク形成層内の揮発性化合物は、該隔離層の下部に維持される。その結果、望ましからぬ化学物質が遊離されることはない。
【0063】
図2に示した本発明の第二の態様では、電子供与性染料プリカーサ4および電子受容性化合物6は、上記カプセル壁の値と類似するガラス転移温度Tgを持つ、随意の第三のポリマースペーサ層9によって隔離された、ポリマー媒体7'および7"(これらは同一または異なる物質であり得る)の2種の別々の層内に分散され、またこれら別々の層として塗布され、また追加のレーザー吸収性増強添加剤10は、場合によりスペーサ層のみに、またはこれと該電子受容性層との両者に分散させることができる。
この態様において、該入射レーザービームのエネルギーが、露光領域の増感剤によって吸収された場合、該スペーサポリマーは、局所的に溶融または軟化され、該電子供与性染料プリカーサと該電子受容性物質との間の層間拡散および反応の発生を可能とし、マーク11を形成する。この配列は、レーザー-マーキング性媒体の熱安定性を高めて、マークが形成されない領域における曇りを発生する、該電子供与性染料プリカーサと該電子受容性物質との間の望ましからぬ反応の発生を防止する。
【0064】
図3に示した更に別の態様においては、該レーザー-マーキング性媒体は、図1に示した態様と同一の構成を持つ。しかし、該レーザービーム8は、該支持体側から照射され(定義に基いて、この支持体層12は、今や隔離層となっている)、該支持体は、該レーザービームの波長に対して実質的に透明であるが、可視スペクトルの波長範囲においては、実質的に不透明である。他方、該隔離層13は、可視スペクトルの波長範囲において実質的に透明であり、従って該マーク形成層1において形成されたマークは、裏側から視認可能なものとなる。場合により、接着層(図示せず)を、該支持体/隔離層12の他方の側に塗布できるが、該層も、必ず該レーザービームの波長に対して実質上透明でなければならない。
【0065】
図4に示された上記態様の1変形において、隔離層14および15両者は、可視スペクトルの波長範囲において実質的に透明である。しかし、該隔離層14は、また放出波長λ(1)を持つレーザービーム8'に対して実質上透明であり、一方該隔離層15は、また放出波長λ(2)を持つレーザービーム8”に対して実質上透明であり、ここでλ(1)およびλ(2)は、同一であっても異なっていてもよく、これら2つの隔離層は、λ(1)およびλ(2)両者が異なっている場合には、これら両者に対して実質的に透明であっても、また透明でなくてもよい。これら2つの隔離層は、剛性または可撓性の何れでもよく、あるいは一方が剛性であり、他方が可撓性であり、および/または異なる材料から製造されたものであり得る。図4において、該カプセル化された電子供与性染料プリカーサ4および該電子受容性化合物は、更にレーザー吸収性添加剤16の粒子をも含む、該マーク形成層1のポリマー媒体7中に局在している。
このように、該マークは、両側から、同一または異なる周波数のマーキングビームによって形成し得る。この態様において形成された該マークは、従って両側からの、化学的な攻撃および機械的な磨耗に対して耐性である。更に、該マーキングビームのエネルギーは、2つの隔離層により挟まれている、該マーク形成層においてのみ吸収され、従って該マーキング工程中に、分解された化学物質または蒸発された成分が、大気中に放出されることはない。
【0066】
図5に示された更に別の態様において、該マーク形成層1は、隔離層/支持体16上の接着層としても機能する。該カプセル化された電子供与性染料プリカーサ4および該電子受容性化合物両者は、接着性媒体17中に分散される。この態様の該レーザー-マーキング性媒体は、製品包装表面に接着され、また次いでレーザービーム8でマーキングすることができ、あるいはその逆も可能である。
レーザー-マーキング装置:
本発明のレーザー-マーキング性媒体は、CO2レーザー、YAGレーザー、固体レーザー、例えばルビーレーザー、または例えばInGaAsPおよびGaAsレーザー等を含むがこれらに限定されないダイオードレーザー等のレーザーによってマーキング可能である。例示的な一態様において、CO2レーザーを、このようなレーザーとして使用でき、これは、該塗布された物質上に高濃度のマークを設ける上で効果的である。例えば、放出波長範囲9.3-10.6μmを持つ、5-20W CW CO2レーザーを使用することができる。好ましいレーザー-マーキング装置は、XまたはX/Y軸に1またはそれ以上の回転する鏡を備え、コンピュータでビームを制御できる、ガルバノメータービームステアリング技術を使用するものである。ベクトルおよびラスター(Raster)走査スキーム両者を、用途に応じて使用することができる。好ましくは、レーザービーム性能、f-θレンズ性能、および焦点距離の組合せは、該焦点面におけるマーキングスポット-サイズを、約300μm以下、より好ましくは約100μm以下に調節することを可能とする。
【0067】
C. 塗布組成物およびレーザー-マーキング性材料
もう一つの局面によれば、基板上にレーザー-記録性の層等の塗膜を形成するのに使用される、塗布組成物が提供される。該塗膜は、多層レーザー-記録性材料の一部を構成し得る。この塗布組成物を使用することによって、比較的高品質のレーザーマークを得ることができる。
該塗布組成物は、色-形成剤の少なくとも一つの成分を含む。該色-形成剤は、レーザーに暴露した際に所定の色を発生するように寄与できる。例えば、該色-形成剤は、レーザーに暴露した際に少なくとも他の成分と反応する、少なくとも一つの成分を含むことができ、ここでこのような反応が、色の形成をもたらす。該色-形成剤は、電子供与性染料プリカーサ、電子受容性現像剤、あるいはこれら成分両者を含むことができ、レーザーに暴露した際の、これら成分間の該反応が、色の形成をもたらす。該塗布組成物は、上で論じた材料の何れかを含むことができる。例えば、該電子供与性染料プリカーサは、1またはそれ以上の上で論じた電子供与性染料プリカーサを含むことができる。同様に、該電子受容性現像剤は、1またはそれ以上の上で論じた電子受容性現像剤を含むことができる。
【0068】
好ましい一態様において、多数の塗布組成物を形成することができ、ここで第一の塗布組成物は、該電子供与性染料プリカーサを含み、かつ第二の塗布組成物は、該電子受容性現像剤を含む。このような第一および第二組成物は、これら組成物の安定性を改善するために、別々に維持することができ、またその使用前に一緒に併合し、混合することができる。
該電子供与性染料プリカーサは、例えばトリフェニルメタンフタリド系の化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、フルオレン系化合物、ピリジン系化合物、ピラジン系化合物およびこれらの組合せを含むことができる。該電子供与性染料プリカーサと反応させるための該電子受容性現像剤は、酸性物質、例えば活性化されたベントナイト、サリチレートの金属塩、フェノール化合物、有機酸またはその金属塩、オキシベンゾエート、およびこれらの組合せを含むことができる。
【0069】
該組合せは、上で論じた添加剤の何れかを含むことができる。付随的にあるいは別途に、該組成物は、少なくとも1種の助剤、例えば界面活性剤、消泡剤、可塑剤、レオロジー特性改善剤、殺生物剤、静電防止剤、溶剤、放射線硬化用の光開始剤、またはこれらの組合せを含むことができる。該助剤は、またレーザー-マーキング性能を改善するための添加剤、例えば伝熱剤、溶融剤、UV吸収剤、酸化防止剤またはこれらの組合せを含むことも可能である。
該伝熱剤は、943cm-1におけるCO2レーザー放出エネルギーを吸収し、またこれを熱に転化し得る化合物を含むことができる。該伝熱剤は、例えばマイカ、ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、および900cm-1〜1000cm-1なる波長範囲において、強力な吸収性を持つ、様々な無機並びに有機化合物を含むことができる。該溶融剤は、レーザー応答性を改良するように機能し得る。その例は、芳香族エーテル、チオエーテル、エステル脂肪族アミド、ウレイドまたはこれらの組合せを含むことができる。該UV吸収剤は、例えばベンゾフェノン系UV吸収剤、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤、サリチル酸系UV吸収剤、シアノアクリレート系UV吸収剤、シュウ酸アニリド系UV吸収剤、またはこれらの組合せを含むことができる。該酸化防止剤は、例えばヒンダードアミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アニリン系酸化防止剤、キノリン系酸化防止剤、またはこれらの組合せを含むことができる。
【0070】
該塗布組成物は、また上記色-形成剤の媒体として機能し得るバインダをも含む。該バインダは、上で論じたバインダから選択することができる。好ましくは、該バインダは、塗膜またはフィルム内で加工することができる。一例示的な態様において、該バインダは、置換または無置換のポリウレタン化合物を含むことができる。該置換または無置換のポリウレタン化合物は、イソシアネートと、例えば「ポリウレタンハンドブック(Polyurethane Handbook)」, 第二版, Dr. Gunter Oertel編, ハンサー出版社(Hanser Publishers), ミュンヘン, pp. 17-25 (1994)において論じられている、様々な有機化合物との反応により生成されるポリウレタンを含むことができる。この文献の内容を、参考としてここに組入れる。塗膜を形成するのに適した任意の置換または無置換のポリウレタン化合物、例えばポリエステルから誘導されたポリウレタン、ポリエーテルから誘導されたポリウレタン、ポリカーボネートから誘導されたポリウレタン、ヒマシ油から誘導されたポリウレタン、またはこれらの組合せを使用することができる。該置換または無置換のポリウレタン化合物は、該バインダの全含有率の少なくとも約50質量%なる量で存在し得る。好ましくは、該置換または無置換のポリウレタン化合物は、干渉マークの形成を減じもしくは実質的に排除するのに有効な量で存在し得る。例えば、該置換または無置換のポリウレタンは、レーザーエネルギー、例えばCO2レーザービームに暴露した後に、実質上干渉マークを生成しないものであり得る。好ましくは、該バインダは、該色-形成剤に対して実質上化学的に不活性であり、また結果として、好ましくは該色-形成反応を妨害することのないものである。該バインダは、水溶性の樹脂であり得る。
【0071】
例示的な一態様において、該ポリウレタン化合物は、該塗布組成物中に存在する実質的に全てのバインダを構成し得る。あるいはまた、追加のバインダ材料を、該ポリウレタン化合物と組み合わせて使用することができる。このような追加のバインダ材料は、デンプンおよびその変性誘導体、セルロースおよびその変性誘導体、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、シリケート樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリル系樹脂、エポキシ、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアクリル酸アミド、スチレン-アクリル酸コポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、エチレン-無水マレイン酸コポリマー、イソブチレン-無水マレイン酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、アクリル系、エチレン-アクリル酸コポリマー、酢酸ビニル-アクリル酸コポリマー、およびこれらの組合せを含む。追加のバインダを、例えば、このような追加のバインダによって付与される特別な技術的特性が望まれる場合に、使用することができる。
【0072】
該塗布組成物は、任意の適当なバインダを含むことができる。例示的な一態様において、該バインダは、該塗布組成物の全固形分質量の少なくとも約50%なる量で存在し得る。例示的な一態様において、該バインダは、該塗布組成物の全固形分質量の約5%〜約40%なる範囲、より好ましくは約10%〜約20%なる範囲、および最も好ましくは約15%なる量で存在し得る。
該塗布組成物は、該組成物の様々な成分の実質的に全てを含有する、ワン-パート(single-part)塗布組成物であり得る。あるいはまた、多数の塗布組成物を使用して、該組成物の使用前の保存安定性を与えることも可能であり、また該バインダは、該多数の塗布組成物の何れに配合することも可能である。
【0073】
該塗布組成物は、任意の適当な技術を利用して、塗膜またはフィルムを形成するのに使用できる。例えば、該塗膜またはフィルムは、水性、溶液型、例えば有機溶剤型、放射線-硬化型、例えばUV-輻射線、および/または電子ビーム硬化型のものであり得る。該ポリウレタン化合物を含有する該バインダを、該バインダとして使用して、該塗布組成物の特定の塗膜形成法とは無関係に、干渉マーク作用を減じまたは実質的に排除することを可能とする。
電子受容性現像剤と相溶性の任意の適当な電子供与性染料プリカーサを、該色-形成剤において使用できる。極めて高濃度にてマイクロカプセル中に配合でき、また高いマーク濃度を与えることのできる、以下の一般的な構造式1により表される化合物を、使用することができる。
式1:
【0074】
【化4】
【0075】
ここで、R1およびR2は、アルキル基、例えばブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、プロピル基、エチル基、メチル基等を表し;R3は、水素原子、またはアルキル基、例えばブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、プロピル基、エチル基、メチル基等を表し;またR4は、イミノ-ベンゼン基あるいは水素原子を表す。一例示的な化合物は、以下の式2で表されるものである。
式2:
【0076】
【化5】
【0077】
好ましい一態様において、該電子供与性染料プリカーサの溶解度は、酢酸エチル100g当たり約10gを越え、より好ましくは酢酸エチル100g当たり約15gを越え、また最も好ましくは酢酸エチル100g当たり約18gを越えることができる。
例示的な一態様において、該電子供与性染料プリカーサは、約80質量%を越える、より好ましくは約90質量%を越える、および最も好ましくは約100質量%なる量で、上記構造式1によって表される化合物を含む。
該色-形成剤は、任意の適当な技術、例えば上記の方法によって、該塗布組成物中に配合することができる。例えば、該色-形成剤は、a) 固体粉末形状にある該色-形成剤を、該バインダ媒体に分散し、b) 溶媒中に該色-形成剤を溶解し、この色-形成剤の溶液を、該バインダ媒体に添加し、およびc) 該色-形成剤をマイクロカプセル化し、該カプセル化された色-形成剤を、該バインダ媒体に分散させることによって配合することができる。例示的な一態様においては、該色-形成剤を、マイクロカプセル化し、該バインダ媒体に分散させる。例えば、該色-形成剤は、上記方法でマイクロカプセル化することができる。
【0078】
該色-形成剤の少なくとも一つの成分は、マイクロカプセル状態で該塗布組成物中に存在し得る。例えば、該電子供与性染料プリカーサおよび/または該電子受容性現像剤を、マイクロカプセル化することができる。これは、例えばこのような成分の一方または両者を、該塗布組成物の任意の他の成分との接触から保護することが推奨されるか否かに依存する可能性がある。例示的な一態様において、該染料プリカーサをマイクロカプセル化し、該現像剤から分離することができる。
次に、該色-形成剤、例えば電子供与性染料プリカーサの成分をマイクロカプセル化する例示的な1方法を説明する。マイクロカプセル化のためには、表面重合法を、該マイクロカプセルのコアとなる該電子供与性染料プリカーサを、疎水性有機溶媒に溶解または分散させて、油相を形成し、該油相を、次に水溶性ポリマーを水に溶解することにより調製した水性相と混合する。次いで、得られる物質を、例えばホモジナイザーを使用して乳化および分散させ、次に加熱して、該油状の液滴表面において、ポリマー形成反応を行い、それによりポリマー物質のマイクロカプセル壁を形成する。該ポリマー物質生成用の試薬は、該油状液滴の内部および/または該油状液滴の外部に添加することができる。該ポリマー物質の具体的な例は、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ウレア-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂を含む。これらの中では、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステルおよびポリカーボネートが好ましく、またポリウレタンおよびポリウレアが、特に好ましい。例えば、ポリウレアを、マイクロカプセル壁形成材料として使用する場合、該マイクロカプセル壁は、ポリイソシアネート、例えばジイソシアネート、トリイソシアネート、テトライソシアネートまたはポリイソシアネートプレポリマーと、ポリアミン、例えばジアミン、トリアミン、またはテトラミン、2またはそれ以上のアミノ基を含むプレポリマー、ピペラジンまたはその誘導体、またはポリオールとを、水性相中で、界面重合法に従って容易に形成することができる。
【0079】
ポリウレアおよびポリアミドで形成した複合壁またはポリウレタンおよびポリアミドで形成した複合壁は、例えばポリイソシアネートおよびこれとの反応により該カプセル壁を形成するための第二の物質(例えば、酸クロリド、ポリアミドまたはポリオール)とを、水溶性ポリマーの水性溶液(水性相)またはカプセル化すべき油状媒体(油相)と混合し、乳化および分散させ、次いで加熱する等の方法で製造することができる。ポリウレアおよびポリアミドを用いて形成される該複合壁の製造方法は、JP-A-58-66948において詳しく説明されている。
【0080】
該ポリイソシアネート化合物としては、3またはそれ以上の官能基の内一つのイソシアネート基を持つ化合物が好ましく、また二官能性イソシアネート化合物を、これと組合せて使用することができる。その具体的な例は、主成分としての、ジイソシアネート、例えばキシレンジイソシアネートまたはその水素添加生成物、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはその水素添加生成物、トリレンジイソシアネートまたはその水素添加生成物、およびイソホロンジイソシアネート;これらのダイマーまたはトリマー(ビウレットまたはイソシアヌレート)、ポリオールの付加生成物としての多官能性を持つ化合物、例えばトリメチロールプロパン、および二官能性イソシアネート、例えばキシリレンジイソシアネート;ポリオールの付加生成物としての化合物、例えばトリメチロールプロパン、および二官能性イソシアネート、例えばキシリレンジイソシアネートであって、その中に導入されたポリマー化合物、例えば活性水素を持つポリエーテル、例えばポリオキシエチレンオキサイドを持つもの;およびベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合生成物を含む。
【0081】
好ましくは、JP-A-62-212190、JP-A-4-26189、JP-A-5-317694および日本国特許出願第8-268721号に記載されている化合物を使用することができる。該ポリイソシアネートとの反応を通して形成される該マイクロカプセル壁の一構成成分としての、該水性相および/または該油相に添加される該ポリオールおよび/または該ポリアミンの具体例は、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ソルビトールおよびヘキサメチレンジアミンを含む。ポリオールを添加する場合、ポリウレタン壁が生成される。該マイクロカプセルを形成するためのポリイソシアネート、ポリオール、反応触媒、およびポリアミンの例は、「ポリウレタンハンドブック(Polyurethane Handbook)」Keiji Iwata著, 日刊工業新聞社刊(1987)および「ポリウレタンハンドブック(Polyurethane Handbook)」, 第二版, Dr. Gunter Oertel編, ハンサー出版社(Hanser Publishers), ミュンヘン(1994)に記載されている。
【0082】
一例示的な態様において、該染料プリカーサ粒子全体積の少なくとも約90%が、約0.3〜約12μmなる範囲、好ましくは約0.2〜約5μmなる範囲、および最も好ましくは約0.2〜2μmなる範囲内の平均粒子径を持つマイクロカプセル中に存在する。好ましくは、該マイクロカプセルは、約0.3〜約12μmなる範囲、好ましくは約0.2〜約5μmなる範囲、および最も好ましくは約0.2〜2μmなる範囲内の平均粒子径を持つ。該マイクロカプセル壁の厚みは、約0.01〜約0.3μmなる範囲内であり得る。該懸濁液中の該マイクロカプセルの粒径は、該懸濁液を水性溶液に希釈し、ミー散乱理論に基くレーザー散乱法を利用して該粒径および分布を決定することにより測定できる。このような測定のために使用される典型的な装置は、ホリバ(Horiba's) LAシリーズ、ベックマンコールター(Beckman Coulter's) LSシリーズ、またはマルバーンインスツルメンツマスターサイザー(Malvern Instruments' Mastersizer)シリーズである。
【0083】
該マイクロカプセル化反応は、また該マイクロカプセル壁が、約150℃〜約190℃なる範囲、好ましくは約160℃〜約180℃なる範囲、および最も好ましくは約165℃〜約175℃なる範囲のガラス転移温度:Tgを持つように制御することができる。該マイクロカプセル壁のTgは、公知の示唆熱分析法、例えばDSC(示唆走査熱量計)またはDDSC(ダイナミックDSC)によって測定することができ、該測定装置は、種々の温度範囲に渡る、比熱(Cp)の変化を測定する。マイクロカプセル-含有懸濁液およびブランク懸濁液両者を、測定前に、同一のサンプルトレーに配置する。このような測定のために使用される典型的な装置は、パーキンエルマーダイアモンド(Perkin Elmer Diamond) DSC、サファイアDSC、ハイパーDSCTM、またはTAインスツルメンツ(Instruments) Q-シリーズである。
【0084】
該マイクロカプセルの製造方法の様々な反応条件を、好ましい諸特性を持つマイクロカプセルを得るために制御し、調節することができる。これら条件は、例えば該電子供与性染料プリカーサの乳化方法、該マイクロカプセル壁を形成するためのポリイソシアネートおよびポリアミンの添加速度およびその量、並びに混合並びに反応温度、時間および攪拌を含むことができる。該反応において、該反応速度は、例えば高い反応温度を維持することにより、あるいは適当な重合触媒を添加することによって高めることができる。
該マイクロカプセル壁は、更に特定の用途に応じて、金属-含有染料、電荷調節剤、例えばニグロシン、および/または他の添加物質を含むことができる。これら添加物質は、カプセル壁製造中に、該壁に含め、あるいは該マイクロカプセル化工程中の他の時点において添加することができる。該カプセル壁表面の帯電特性を調節するため、モノマー、例えばビニルモノマーを、必要に応じて、グラフト-重合することができる。
更に、低温において優れた物質の透過性を持ち、また高い着色特性を持つマイクロカプセル壁を製造するために、該壁材料として使用される該ポリマーにとって適した可塑剤を使用することができる。該可塑剤は、約50℃またはそれ以上、およびより好ましくは約120℃またはそれ以上の融点を持つことができる。可塑剤としては、常温において固体状態にあるものを、好ましく使用することができる。例えば、該壁材料が、ポリウレアまたはポリウレタンを含む場合、該可塑剤としては、ヒドロキシル化合物、カルバメート化合物、芳香族アルコキシ化合物、有機スルホンアミド化合物、脂肪族アミド化合物、アリールアミド化合物またはこれらの組合せを使用することができる。
【0085】
上記油相を製造する際に、該電子供与性染料プリカーサ化合物を溶解することによって、該マイクロカプセルのコアを形成するのに使用する疎水性有機溶媒として、約100〜約300℃なる範囲の沸点を持つ有機溶媒を使用することができる。その具体的な例は、エステル化合物、ジメチルナフタレン、ジエチルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、ジメチルビフェニル、ジイソプロピルビフェニル、ジイソブチルビフェニル、1-メチル-1-ジメチルフェニル-2-フェニルメタン、1-エチル-1-ジメチルフェニル-1-フェニルメタン、1-プロピル-1-ジメチルフェニル-1-フェニルメタン、トリアリールメタン(例えば、トリトルイルメタンまたはトルイルジフェニルメタン)、ターフェニル化合物(例えば、ターフェニル)、アルキル化合物、アルキル化ジフェニルエーテル(例えば、プロピルジフェニルエーテル)、水添ターフェニル(例えば、ヘキサヒドロターフェニル)およびジフェニルターフェニルを含む。これらの中では、乳化分散液の乳化安定性の観点から、好ましくはエステル化合物を使用することができる。該エステル化合物の例は、ホスフェート、例えばトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ブチルホスフェート、オクチルホスフェート、またはクレジルフェニルホスフェート;フタレート、例えばジブチルフタレート、2-エチルヘキシルフタレート、エチルフタレート、オクチルフタレートまたはブチルベンジルフタレート;ジオクチルテトラヒドロフタレート;ベンゾエート、例えばエチルベンゾエート、プロピルベンゾエート、ブチルベンゾエート、イソペンチルベンゾエートまたはベンジルベンゾエート;アビエテート、例えばエチルアビエテートまたはベンジルアビエテート;ジオクチルアジペート;イソデシルサクシネート;ジオクチルアゼレート;オキサレート、例えばジブチルオキサレートまたはジペンチルオキサレート;ジエチルマロネート;マレエート、例えばジメチルマレエート、ジエチルマレエートまたはジブチルマレエート;トリブチルシトレート;ソルベート、例えばメチルソルベート、エチルソルベートまたはブチルソルベート;セバケート、例えばジブチルセバケートまたはジオクチルセバケート;エチレングリコールエステル、例えば蟻酸モノエステルまたはジエステル、酪酸モノエステルまたはジエステル、ラウリン酸モノエステルまたはジエステル、パルミチン酸モノエステルまたはジエステル、ステアリン酸モノエステルまたはジエステル、またはオレイン酸モノエステルまたはジエステル;トリアセチン;ジエチルカーボネート;ジフェニルカーボネート;エチレンカーボネート;プロピレンカーボネート;およびボレート、例えばトリブチルボレートまたはトリペンチルボレートを含む。
【0086】
該疎水性有機溶媒は、単独でまたは2種またはそれ以上の組合せで使用することができる。これらの中で、トリクレジルホスフェートは、これが高いエマルションの安定性を与えることから、好ましくは単独であるいは他の溶媒との混合物として使用することができる。カプセル化すべき電子供与性染料プリカーサが、該疎水性有機溶媒に対して低い溶解度を持つ場合には、高い溶解度を持つ低沸点溶媒を、付随的に組合せて使用することができる。該低沸点溶媒の例は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、およびメチレンクロリドを含む。
上記レーザー-感受性記録材料のレーザー-感受性記録層において、該電子供与性染料プリカーサ化合物を使用する、例示的な一態様においては、該電子供与性染料プリカーサの含有率は、好ましくは約0.1〜約5.0g/m2なる範囲、およびより好ましくは約1.0〜約4.0g/m2なる範囲内にある。如何なる特別な理論にも拘泥するつもりはないが、該電子供与性染料プリカーサの含有率が、約0.1〜約5.0g/m2なる範囲内にある場合には、十分な着色強度を得ることができ、また該含有率が5.0g/m2またはそれ以下である場合には、十分な着色強度が達成され、しかもレーザー-感受性記録層の透明性をも維持することができるものと考えられる。
【0087】
マイクロカプセル製造中、水溶性樹脂を、バインダとして該反応混合物の該水性相に添加して、該乳化された分散液および生成したマイクロカプセルを安定化することができる。該水溶性樹脂の型およびその添加量は、該塗布組成物の粘度が、約5センチポアズ(cP)〜約30cPなる範囲、好ましくは約10cP〜約25cPなる範囲、および最も好ましくは約10cP〜約20cPなる範囲となるように選択することができる。粘度は、小さなサンプルアダプタ+S21スピンドルを備えた、ブルックフィールドプログラマブルDV-II+粘度計を、100-200RPMにて用いて測定することができる。サンプルの量に応じて、レギュラー(Regular) RVシリーズのスピンドルを使用することもできる。
該油相と該水性相とを更に均一に乳化し、かつ分散させるために、該油相および該水性相の少なくとも一方に、界面活性剤を添加することができる。乳化用の任意の適当な界面活性剤を使用することができる。該界面活性剤の添加量は、該油相の質量を基準として、約0.1%〜約5%なる範囲、より好ましくは約0.5〜約2%なる範囲内であり得る。該水性相中に含まれる該界面活性剤としては、該バインダとの相互作用を介して析出または凝集を起こさないものを、アニオン性およびノニオン性界面活性剤から適切に選択して使用することができる。該界面活性剤の好ましい例は、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、およびポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)を含む。
【0088】
該乳化は、上記成分を含有する油相および該バインダおよび該界面活性剤を含有する水性相を、微粒子の乳化のために通常使用されているデバイス、例えば公知の乳化装置、例えばホモジナイザー、マントンゴーリン(Manton Gaulin)、超音波分散装置、溶解装置またはカディー(KADY)ミルを使用して、高速攪拌または超音波分散処理することで、実施することができる。乳化処理後、得られるエマルションを、該カプセル壁-形成反応を促進する目的で、30〜70℃なる範囲の温度まで加熱することができる。この反応中、該エマルションに水を添加して、該カプセル同士の衝突の確率を下げ、あるいは十分な攪拌を行って、該カプセルの凝集を防止することができる。
更に、該ポリウレタン化合物を含有する分散液を、該反応中に添加して、凝集の発生を減じ、またはこれを実質的に防止することができる。この反応の進行に伴う、二酸化炭素ガスの発生を観測することができ、またその生成の停止を、該カプセル壁-形成反応の完了と見做すことができる。一般に、該反応を、数時間継続して、目的とするマイクロカプセルを得ることができる。
該電子供与性染料プリカーサと反応し得る、該電子受容性化合物の例は、酸性物質、例えば活性化されたベントナイト、サリチル酸の金属塩、フェノール化合物、有機酸またはその金属塩、オキシベンゾエートまたはこれらの組合せを含む。
【0089】
該電子受容性化合物の具体的な例は、ビスフェノール化合物、例えば2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)プロパン(一般名:ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジクロロフェニル)プロパン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)-2-メチルペンタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,4-ビス(p-ヒドロキシフェニルクミル)ベンゼン、1,3-ビス(p-ヒドロキシフェニルクミル)ベンゼン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホンおよびビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジルエステル;サリチル酸誘導体、例えば3,5-ジ-α-メチルベンジルサリチル酸、3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸、3-α,α-ジメチルベンジルサリチル酸および4-(β-p-メトキシフェノキシエトキシ)サリチル酸;これらの多価金属塩(特に、亜鉛塩およびアンモニウム塩が好ましい);オキシベンゾエート、例えばp-ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシルエステルおよびβ-レゾルシン酸2-フェノキシエチルエステル;およびフェノール化合物、例えばp-フェニルフェノール、3,5-ジフェニルフェノール、クミルフェノール、4-ヒドロキシ-4'-フェノキシジフェニルスルホンを包含する。これらの中で、サリチル酸の金属塩、例えばサリチル酸亜鉛が、好ましく使用できる。例えば、このような現像剤を使用することによって、良好な着色特性を達成することができる。使用できる追加の電子受容性現像剤は、米国特許第6,797,318号、同第5,409,797号および同第5,691,757号に記載されている。これら米国特許の内容を、参考としてここに組入れる。該電子受容性化合物は、単独でまたはその2種またはそれ以上の組合せとして使用することができる。
【0090】
該電子受容性化合物は、サンドミル内で、水溶性ポリマー、有機塩基、および他の色-形成助剤と共に、調製された固体分散物として使用することができ、あるいは僅かに水溶性であるか、あるいは水-不溶性である高沸点溶媒中に溶解し、バインダ(水性相)としての、水性ポリウレタンおよびその変性誘導体と混合し、次いで、例えばホモジナイザーで乳化することによって得られる、乳化分散物として使用することができる。この場合、必要により、溶解助剤として低沸点溶媒を使用することができる。
更に、該電子受容性化合物および該有機塩基は、別々に乳化分散処理に掛けることができ、また混合後に、高沸点溶媒中に溶解し、次いで乳化分散処理に掛けることができる。該乳化分散体の粒径は、約1μmまたはそれ以下であり得る。この場合、使用する該高沸点有機溶媒は、例えばJP-A-2-141279に記載されている高沸点オイルから適切に選択することができる。これらの中で、該乳化分散体の乳化安定性の観点から、エステル化合物の使用が好ましく、またトリクレジルホスフェートの使用が特に好ましい。該オイルは、その混合物として、また他のオイルとの混合物として使用できる。
【0091】
例示的塗布組成物において、該バインダは、該電子受容性現像剤を含有する該塗布組成物の全固形分質量の約5%〜約50%なる範囲、好ましくは約10%〜約30%なる範囲、より好ましくは約15%なる量で存在し得る。
該電子受容性現像剤を含有する塗布組成物および該電子供与性染料プリカーサを含有する第二の塗布組成物を一緒に混合して、混合塗布分散物を調製することができ、これは、後にレーザー-マーキング用のレーザー-感受性記録層として使用するための、基板上に塗布される。この方法において、該2種の塗布組成物は、例えば電子供与性染料プリカーサの全質量と、該現像剤の全質量との比を、約1:0.5〜約1:30なる範囲、好ましくは約1:1〜約1:10なる範囲とするような、任意の適当な比で混合することができる。
【0092】
該レーザー-感受性記録層塗布組成物を安全に、かつ均一に塗布し、また該塗布されたフィルムの強度を維持するために、上記した2種の塗布組成物に加えて、余分な量のバインダ樹脂および補助的な添加剤を使用することができる。更に、該混合塗布分散物を基板に塗布して、レーザー-感受性記録層を製造するために、水性または有機溶媒系塗布組成物に適用される公知の方法を利用して、基板上に該レーザー-感受性記録層塗布組成物を被覆することができる。
例示的な一態様において、レーザー-マーキング性材料が準備され、これは、置換または無置換のポリウレタン化合物を含有する塗膜;およびレーザー-マーキング性層を含む。該塗膜は、該レーザー-マーキング性層と接触した状態であり得る。
【0093】
該レーザー-マーキング性材料は、追加の層、例えば保護層、中間層、下塗り層(プライマー層)、光反射防止層等を含むことができる。該保護層は、この材料の最上層であり得、また該レーザー-感受性記録層上におよび/またはこれと接触した状態で配置することができる。この保護層の機能は、物理的な損傷、例えば磨耗、水分による攻撃に対して、該レーザー-感受性記録層を保護し、瞬間的な熱衝撃等に対するその抵抗性を高めることにある。該中間層は、該レーザー-感受性記録層上に適用できる。この層の機能は、これらの層の相互の混合を減じ、または防止し、形成後の像を保存するために、有害である可能性のあるガス(例えば、酸素)を遮断することにある。該下塗り層、光反射防止層および他の機能性の層、例えば接着層は、該レーザー-感受性記録層を塗布する前に、該基板上に適用することができる。
【0094】
該保護層は、レーザー-マーキング性材料中の該色-形成層に対する保護をもたらす点で有利なので、保護層形成組成物も、例示的な態様に従って提供することができる。例えば、該保護用塗布組成物は、上記のような所要の保護機能を与えるのみならず、レーザーマーキングされた材料のマーク品位に悪影響を及ぼす、干渉マークの形成を減じ、あるいは排除するのに有効であり得る。該保護層に対する該バインダの量は、例えば該塗布組成物の全固形分質量を基準として、約50%であり得る。該バインダの量の百分率は、用途の違いに応じて、約10質量%〜約80質量%なる範囲、より好ましくは約30質量%〜約60質量%なる範囲で変えることができる。
良好なマーク品位を得るためには、該追加の層のバインダとしては、実質的にポリウレタン化合物のみを使用することが好ましい。ポリウレタンと他の型の樹脂、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース等との組合せを、特別な技術的特性が、レーザー-マーキング性材料に要求される場合には、選択することができる。例えば、ポリウレタンおよびその変性誘導体の量は、塗布組成物中のバインダ全量の、50%以上であることが好ましく、これにより上記干渉マーク効果の増強を減じ、または防止する。
【0095】
該追加の層は、補助的な添加剤、例えば通常の塗膜添加剤、例えば界面活性剤、消泡剤、可塑剤、レオロジー改善剤、殺生物剤、静電防止剤、溶剤、水、放射線硬化用の光開始剤、硬化剤等を含むことができる。例えば、該追加の層は、該レーザー-マーキング性材料の透明性を維持するという観点から、約1.45〜約1.75なる範囲の屈折率を持つ、微粒子状物質を含むことができる。
上記のレーザー-マーキング性材料、方法および装置を使用することにより、様々な利点、例えば低い装置並びに運転費;微細な文字および簡単なパターンによる高品位かつ迅速なマーキング(ベクトル走査);融通性のある解像度の調節、色調の制御およびパターン変化(ラスター走査);比較的大きくまた融通性のあるマーキング領域;および・または可変情報マーキングを伴う、小規模ロット(短期間稼働)、高処理量を実現することができる。上記レーザー-マーキング性材料、方法および装置の使用は、レーザービーム(例えば、比較的低出力の、低コストCO2レーザー)に対して典型的な応答性を示さない、あるいは弱い応答性を示す物質、または高品位のマークを形成せずに、該レーザー照射により容易に損傷を被る物質を包含する、広範囲に及ぶ様々な基板上に、高品質で、迅速なレーザーマーキングを可能とする。例えば、レーザー-マーキング性材料の使用は、広範囲に渡る材質および幾何形状を持つ基板、例えばエンジニアリング材料または工業用製品用の硬質および軟質プラスチックおよびポリマー(PET、BOPP、HDPE、PMMA、ポリカーボネートおよびナイロン)、または紙、厚紙、ガラス繊維、ガラス、金属等の基板のマーキングを可能とする。
【0096】
上記のレーザー-マーキング性材料、方法および装置は、材料がレーザーマーキングされるあらゆる用途において利用することができる。このような用途の例は、識別、トラッキングまたは消費者に対する警告を目的とする、包装または製品の直接的なラベル付け、コード付けおよびマーキング(バッチまたは通し番号、消費期限);個々のまたは包装された製品用の、感圧性、自己接着性フィルムまたはラベル;輸送、運送ラベル(直接および接着性ラベル両者);大量郵送および無料配送用のアドレス指定;IDタグのマーキング、例えば服飾のタグ付けおよび動物IDのタグ付け;紙製チケットの印刷;IDカードの印刷;保証用途、例えばスマートカード、偽造防止、または改竄防止シールおよびラベル用途を含むが、これらに制限されない。
【実施例】
【0097】
本発明の様々な態様の例を、以下に与えるが、本発明は、これらに制限されるものと解釈すべきではない。
実施例1:
[カプセル化された電子供与性染料プリカーサを含有する液状分散体(A)の製造]
13.3gの、R1がC4H9であり、かつR2がC2H5である、上記式(1)によって表される、電子供与性染料プリカーサおよび0.47gのUV光吸収剤(商品名:チヌビン(Tinuvin) P、チバガイギー社(Ciba Geigy Corp.)製)を、20gの酢酸エチルに添加し、70℃まで加熱することにより溶解させ、次いで45℃まで冷却した。12.6gのジイソシアネート化合物(商品名:タケネート(Takenate) D-140N、三井武田ケミカル社(Mitsui Takeda Chemical Co., Ltd.)製)を、該酢酸エチル溶液に添加した。次いで、上記酢酸エチル溶液を、53gの6%(w/w)ポリビニルアルコールの水性溶液(商品名:クラレポバール(Kuraray Poval) MP-217C、クラレ(Kuraray)社製)に添加し、またホモジナイザーで5分間乳化させた。最後に、90gの水および0.5gのテトラエチレンペンタミンを含むアミン溶液を、上記混合物に徐々に添加し、一方60℃にて4時間攪拌して、カプセル化反応を行った。
【0098】
該反応が完結した後、該カプセル化された電子供与性染料プリカーサ粒子の粒度分布を、ベックマンコールター(Beckman Coulter's) LS-100Q粒径分析装置によって測定し、該液状塗布組成物の粘度を、S21小型スピンドルを備えた、ブルックフィールドプログラマブル(Brookfield Programmable) DV-II+粘度計によって、100-200RPMにて測定し、また該マイクロカプセル壁のTgを、基準としてマイクロカプセルを含まないブランク懸濁液を用い、パーキンエルマーダイアモンド(Perkin Elmer's Diamond) DSCを使用して測定した。以下のような結果が得られた:該液状分散物の粘度=18cps、ここで該マイクロカプセルの99%(体積)が、0.2-2μmなる範囲内の粒径を持ち、また該マイクロカプセル壁のTgは、156℃であった。
【0099】
[電子受容性化合物を含む液状分散物(B)の調製]
4.2gのUV光吸収剤(商品名:チヌビン(Tinuvin) 328、チバガイギー製)、1.0gのトリクレジルホスフェート、および36.4gの電子受容性化合物(米国特許第6,797,318号記載の化合物301)を、16.0gの酢酸エチルに添加し、70℃まで加熱することにより溶解させた。この酢酸エチル溶液を、以下の水性溶液に添加し、ホモジナイザーで5分間分散させた。
乳化分散物(B)用の水性溶液
水 68.4g
15%(w/w)ポリビニルアルコール(商品名:ポバール(Poval)PVA205 19.8g
クラレ社(Kuraray Co., Ltd.)
8%(w/w)ポリビニルアルコール(商品名:ポバール(Poval)PVA217 55.7g
クラレ社(Kuraray Co., Ltd.)
界面活性剤A、C12H15SO3Naの2%溶液 11.2g
界面活性剤B、C9H19(C6H4)O(CH2)4SO3Na 11.2g
【0100】
[該マーク形成層塗布用混合塗布組成物の調製]
上記分散物(A)および分散物(B)を以下のように混合した:
分散物(A) 8.9g
分散物(B) 33g
[支持体上への該マーク形成層の塗布]
上記塗布組成物を、厚み75μmのA4サイズの透明PETフィルム上に、バーコーターを用いて、厚み約10μmにて塗布し、次いで60℃にて約3分間乾燥した。このPETフィルムを、プライマーとしての、SBRラテックスとゼラチンとの混合物によって予め被覆した。
【0101】
[該レーザーマーキング性媒体の完成およびCO2レーザーマーカーによる該媒体のマーキング]
上記シートを、3つの等しい部分に分割した。その一つ(本発明)を、該塗布されたマーク形成層の上部において50μmの透明なポリエチレン(PE)フィルムと積層し、もう一つの部分(本発明)を、更に該塗布されたマーク形成層の上部において、透明なコア-シェル型のアクリルラテックス分散液(商品名:ロプレックスマルチローブ(Rhoplex Multilobe) 200)で被覆した。また、最後の部分は、更に処理することなしに、そのままとする(比較)。
発光波長10.3μmを有し、および80mmf-θレンズを備えた、ドミノ(Domino) S100 10W CO2レーザーマーカーを使用した。そのマーキング条件は、「マーキング速度」=8000ビット/msおよび「CO2レーザー(Laser on CO2)」= 200μsに設定した。該レーザーマーカーを始動させた後、鮮鋭かつ高コントラストのマークが、3種全てのサンプル上に生成した。しかし、隔離層を持たない比較サンプルは、該マーキング工程中に煙の放出を示し、一方本発明の2つのサンプルは、煙を放出しなかった。更に、顕微鏡を使用して、マークを形成した該サンプルの表面を観察したところ、隔離層を持たない比較サンプルは、該塗膜の表面上に明らかな損傷の存在を示したが、本発明の2つのサンプルは損傷の存在を示さなかった。磨耗テストも、該比較サンプルが、該媒体上でより一層重度の損傷を有していることを示した。
【0102】
実施例2:
参考のために、以下の表1に、電子供与性染料プリカーサ化合物を列挙し、また表1は、対応する酢酸エチルに対する溶解度を含むが、これらを以下の実施例において使用する。
表1:
【0103】
【表1】
【0104】
式(4):
【0105】
【化6】
【0106】
式(5):
【0107】
【化7】
【0108】
式(6):
【0109】
【化8】
【0110】
実施例2-1
[カプセル化された電子供与性染料プリカーサを含む塗布組成物の調製]
サンプル1(比較例):
13.3gの電子供与性染料プリカーサD-1および0.47gのUV光吸収剤(商品名:チヌビン(Tinuvin) P、チバガイギー社製)を、20gの酢酸エチルに添加し、70℃まで加熱することによって溶解し、次いで45℃まで冷却した。14.1gのカプセル壁材料W-1(商品名:タケネート(Takenate) D-127N、三井武田ケミカル社製)および2.5gのカプセル壁材料W-2(商品名:タケネート(Takenate) D-110N、三井武田ケミカル社製)を、該酢酸エチル溶液に添加した。
上記酢酸エチル溶液を、53gの6%(w/w)ポリビニルアルコール水性溶液B-1(商品名:クラレポバール(Kuraray Poval) MP-217C、クラレ社製)に添加し、ホモジナイザーで5分間乳化させた。
【0111】
90gの水および0.75gのテトラエチレンペンタミンを添加し、カプセル化反応のために、60℃にて4時間攪拌機で混合した。
該反応の完結後、該カプセル化された電子供与性染料プリカーサ粒子の粒度分布および該液状塗布組成物の粘度をベックマンコールターのLS-100Q粒径分析装置を用い、またS21小型スピンドルを備えたブルックフィールドプログラマブルDV-II+粘度計を100-200RPMにて使用して測定した。
該マイクロカプセル壁のTgを、パーキンエルマーダイアモンド(Perkin Elmer's Diamond) DSC、サファイアDSC、ハイパーDSC(HyperDSCTM)、またはTAインスツルメンツ(Instruments) Q-シリーズを使用して測定した。マイクロカプセルを含まないブランク懸濁液を、基準サンプルと同一条件下で調製した。該マイクロカプセル含有懸濁液および該ブランク懸濁液両者を、測定前にサンプルトレーに入れた。
【0112】
サンプル2(比較例)
上記サンプル1の調製において記載した方法と同様の方法で、サンプル2を調製したが、該カプセル壁材料W-1およびW-2を、12.6gのW-3(商品名:タケネート(Takenate) D-140N、三井武田ケミカル社製)に変えた。
サンプル3(比較例)
上記サンプル1の調製において記載した方法と同様の方法で、サンプル3を調製したが、該カプセル壁材料W-1およびW-2を、12.6gのW-3(商品名:タケネート(Takenate) D-140N、三井武田ケミカル社製)に変え、6%(w/w)ポリビニルアルコール水性溶液B-1の添加量を40gに変え、また該乳化のための水の添加量を103gに変えた。
サンプル4(比較例)
上記サンプル1の調製において記載した方法と同様の方法で、サンプル4を調製したが、該カプセル壁材料W-1およびW-2を、12.6gのW-3(商品名:タケネート(Takenate) D-140N、三井武田ケミカル社製)および2.3gのW-4(商品名:バーノック(Barnoc) D750、大日本インキ(Dai Nippon Ink Co., Ltd.)社製)に変え、6%(w/w)ポリビニルアルコール水性溶液B-1の添加量を33gに変え、かつ20gの8%(w/w)ポリビニルアルコール水性溶液B-2(商品名:クラレポバール(Kuraray Poval) PVA217、クラレ社(Kuraray Co., Ltd.)製)を添加した。
【0113】
サンプル5(本発明)
上記サンプル1の調製において記載した方法と同様の方法で、サンプル5を調製したが、該カプセル壁材料W-1およびW-2を、12.6gのW-3(商品名:タケネート(Takenate) D-140N、三井武田ケミカル社製)で置換し、また該テトラエチレンペンタミンの添加量を0.5gに変えた。
サンプル6(本発明)
上記サンプル1の調製において記載した方法と同様の方法で、サンプル6を調製したが、該カプセル壁材料W-1およびW-2を、12.6gのW-3(商品名:タケネート(Takenate) D-140N、三井武田ケミカル社製)で置換した。
サンプル7(本発明)
上記サンプル1の調製において記載した方法と同様の方法で、サンプル7を調製したが、該カプセル壁材料W-1およびW-2を、12.6gのW-3(商品名:タケネート(Takenate) D-140N、三井武田ケミカル社製)で置換し、6%(w/w)ポリビニルアルコール水性溶液B-1の添加量を45gに変え、該乳化のための水の添加量を98gに変え、かつ該テトラエチレンペンタミンの添加量を2.0gに変えた。
【0114】
サンプル8(本発明)
上記サンプル1の調製において記載した方法と同様の方法で、サンプル8を調製したが、R1がC4H9であり、かつR2がC2H5である、上記式(1)によって表される、該電子供与性染料プリカーサの添加量を8.3gに減じ、5.0gの電子供与性染料プリカーサD-6を添加し、該カプセル壁材料W-1およびW-2を、12.6gのW-3(商品名:タケネート(Takenate) D-140N、三井武田ケミカル社製)で置換し、6%(w/w)ポリビニルアルコール水性溶液B-1の添加量を40gに変更し、かつ13gの8%(w/w)ポリビニルアルコール水性溶液B-2(商品名:クラレポバール(Kuraray Poval) PVA217、クラレ社(Kuraray Co., Ltd.)製)を添加した。
上記サンプル1〜サンプル8のTg、粒度分布、および粘度を、以下の表2に列挙する。
該サンプルに関する保存安定性テスト:
サンプル1〜8を、ポリエチレンボトルに入れ、次いでオーブン内に保存し、その温度を、4週間に渡り、12時間毎に20℃と40℃との間で変化させ、次いで各サンプルの外観を観察した。得られた結果を、表-2に列挙する。
表2:
【0115】
【表2】
【0116】
塗布したフィルムサンプルの性能評価
以下の塗布フィルムサンプルを、該4週間の保存テスト前およびその後の上記サンプル1〜8および乳化した現像剤分散物を使用して、以下のようにして製造した。
[乳化した現像剤分散物の製造]
4.2gのUV光吸収剤(商品名:チヌビン(Tinuvin) 328、チバガイギー社製)、1.0gのトリクレジルホスフェート、および36.4gの現像剤(米国特許第6,797,318号記載の化合物301)を、16.0gの酢酸エチルに添加し、70℃まで加熱することにより溶解した。この酢酸エチル溶液を、以下に記載の水性溶液に添加し、ホモジナイザーで5分間分散させた。
乳化現像剤用の水性溶液
水 68.4g
15%w/wポリビニルアルコール(商品名:ポバールPVA205、クラレ社) 19.8g
8%w/wポリビニルアルコール(商品名:ポバールPVA217、クラレ社) 55.7g
界面活性剤A、C12H15SO3Naの2%溶液 11.2g
界面活性剤B、C9H19(C6H4)O(CH2)4SO3Na 11.2g
[塗膜用混合物の調製]
上記サンプル1〜8の各々および該乳化した現像剤分散物を混合し、即ち各サンプル8.9gと該乳化した現像剤分散物33gとを混合することにより、塗布用混合物を得た。
[PETフィルム上への混合物の塗布]
【0117】
上記混合物各々を、予めSBRラテックスおよびゼラチンを塗布した、A4サイズおよび75μmなる厚みを持つフィルム上に、15ml/m2にて塗布し、乾燥後に、以下のレーザーマーキングを行った。
[レーザーマーキングテスト]
70個の同一のマーク、即ち文字「M」からなるマトリックス露光を、f=80mmレンズを備え、35mm×35mmなるマーキング視野および約250〜約280μmなる範囲のスポットサイズを与える、ドミノ(Domino) S100 CO2レーザーマーカーを用いて、該塗布フィルムサンプルの各々に対して行った。該テストマーキングマトリックスのデザインは、各行が7文字からなり、これに対してレーザーの出力は26.5%から100%まで増大(左から右へ、5.2W→19.6W)し、また隣接行間のレーザー出力増加は20%であり、また該マトリックスの各列は10文字からなり、これに対してマーキング速度は1300ビット/mSから9500ビット/msまで増大し(下から上へ)、また隣接文字間のマーキング速度における増加は20%であった。各塗布フィルムサンプルのレーザー暴露に対する感度および寛容度は、完全にマーキングされ、また明確に読み取り得る文字を計数することにより評価した。このレーザーマーキングテストの結果を、以下の表3に示す。
更に、塗布されたフィルムサンプルの保存安定性テストを、80℃、および相対湿度70%の下で1週間行った。該保存安定性を、X-ライトデンシトメータ(X-Rite Densitometer)で可視および透明モード(反射および透過モード)にて測定した後、曇り度は増加する。このテスト用の該塗布フィルムサンプルは、該4週間の保存前の上記サンプル1〜8から製造した。このテストで得られた結果も、以下の表3に示す。
表3:
【0118】
【表3】
【0119】
表2および3に示したように、本発明に従って製造した該液状塗布組成物は、物理化学的に極めて安定であり、また比較的長期間に渡り保存することができる。該塗布組成物は、またレーザー露光に対して高い感度および広い寛容度を有し、また老化による曇り度における増加は低い。
【0120】
実施例2-2:
塗布フィルムサンプル9〜12を、上記塗布フィルムサンプル6と同様な方法で製造した。但し、以下の表4にまとめたように、電子供与性染料プリカーサ化合物の型および量に変更を加えた。
表4:
【0121】
【表4】
【0122】
上記サンプル9〜12の各々は、上記実施例1において記載した方法と同一のレーザーマーキングテスト法に掛けた。各塗布フィルムサンプルの、レーザー露光に対する感度および寛容度(ラティチュード)は、完全にマーキングされ、また明確に読み取り得る文字を計数することにより評価した。このレーザーマーキングテストの結果を、以下の表5に示す。
表5:
【0123】
【表5】
【0124】
実施例3:
実施例3-1:様々なバインダ材料のレーザー暴露
数種の異なる型のバインダ材料を、CO2レーザーに暴露して、その効果を測定した。この実験手順は、以下の工程を含んでいた:a) 該サンプル樹脂溶液を、Kコントロールコーター(K Control Coater)(RKプリントコートインスツルメンツ社(Print Coat Instruments, Ltd.)製)を用いて、約2.54×10.16cm(1in×4in)のガラススライド上に塗布する工程、ここではNo.8塗布バーを使用して、湿潤時厚み100μmのフィルムを生成し;b) 該塗布された樹脂溶液を、周囲条件下で一夜乾燥させる工程;c) 該塗布された樹脂を、ドミノ(Domino) S100レーザーマーカー(ドミノアムジェット社(Domino Amjet, Inc.)製)により、等価なレーザー強度条件下で走査する工程;d) ライカ(Leica) GZ6顕微鏡観察下で、干渉マーク(例えば、微細気泡、発泡効果)形成について観察し、生成された干渉マーク(発泡効果)の量を、1〜10なる範囲にてランク付けする工程;e) レーザーの走査速度を調節することによって、レーザー線量を変えて、最大発泡効果を示すサンプルおよび最小発泡効果を示すサンプルを、再度レーザー走査に掛け、レーザー照射率との関連で、発泡効果における差異を観測する工程。実験結果を、以下の表3-1-1に示す。
表3-1-1:
【0125】
【表6】
【0126】
表3-1-1から理解することができるように、走査速度2000ビット/ms(ビッツパーミリ秒)において、ジョンクリル89は、最高の程度の発泡効果を発生し、またメイスコート9525は、最低の程度の発泡効果を発生した。これら2つは、変動するレーザー走査速度で、再度操作し(上記工程に従って)、その結果を図6に示した。ここで、Aはジョンクリル89に相当し、またBは、メイスコート9525に相当する。
図6に示したマークを生成するために使用した様々な走査速度を、以下の表3-1-2にまとめる。
表3-1-2:
【0127】
【表7】
【0128】
図6に明確に示されているように、ジョンクリル89(A)およびメイスコート9525(B)は、匹敵する速度で走査した際に、極めて異なる応答を示した。ジョンクリル89は、著しく発泡し、一方メイスコート9525は、僅かに最低限の発泡効果を有していた。とりわけ、10,000ビッツ/msなる走査速度において、メイスコート9525は、レーザービームに対して、比較的僅かな応答を示した。これらの実験結果は、メイスコート9525(ポリエーテルを主成分とするポリウレタン)は、CO2レーザー暴露条件下で、少ない干渉マークを生成する点で、他のテストした樹脂と比較して、優れた結果を与えた。
実施例3-2:様々な本発明のおよび比較例のバインダのレーザー暴露
5種の本発明のポリウレタン分散液(サンプルNo. 3〜7)に関するレーザー暴露効果を、ポリビニルアルコールおよびスチレン変性あクリレート(夫々比較例サンプルNo. 1および2)に関するレーザー暴露効果と比較した。基準として、ブランクのガラススライドを使用した。
表3-2-1:
【0129】
【表8】
【0130】
実験的な手順は以下の諸工程を含む:a) 該テストサンプル溶液を、Kコントロールコーター(K Control Coater)(RKプリントコートインスツルメンツ社(RK Print Coat Instruments, Ltd.)を用いて、約2.54cm×10.16cm(1in×4in)のガラススライド上に塗布する工程、ここではNo.7塗布バーを使用して、湿潤時厚み80μmのフィルムを生成し;b) 該塗布されたサンプル溶液を、周囲条件下で一夜乾燥させる工程;c) 該塗布されたサンプルを、ドミノ(Domino) S100レーザーマーカー(ドミノアムジェット社(Domino Amjet, Inc.)製)により、マトリックス暴露条件下で、露光する工程。該マトリックス暴露は、70個の同一のマーク、即ち文字「M」からなり、f=80mmレンズを備え、35mm×35mmなるマーキング視野および約250〜約280μmなる範囲のスポットサイズを与える、ドミノ(Domino) S-100 CO2レーザーマーカーを用いて、該塗布サンプルの各々に対して行った。該テストマーキングマトリックスのデザインは、各行が7文字からなり、これに対してレーザーの出力は26.5%から100%まで増大(左から右へ、5.2W→19.6W)し、また隣接文字のレーザー出力増加は20%であり、また該マトリックスの各列は10文字からなり、これに対してマーキング速度は1300ビット/mSから9500ビット/mSまで増大し(下から上へ)、また隣接文字間のマーキング速度における増加は20%であった。
【0131】
黒の背景上の、該CO2レーザーマトリックス-暴露サンプルについて、写真を撮影した。白色の文字「M」の数および該文字の白色度を比較して、CO2レーザーエネルギーに対する最小応答性を持つサンプルを決定した。写真を図7A〜7Hに示したが、これらは、夫々ポリビニルアルコール、ジョンクリル89、メイスコート9525、アルバーディンクU 400N、アルバーディンクU2101VP、アルバーディンクU 9152VP、アルバーディンクCUR 21、およびブランクのガラススライドに相当する。これらの実験結果は、ポリエーテルを主成分とするポリウレタン、ポリエステルを主成分とするポリウレタン、ポリカーボネートを主成分とするポリウレタンおよびヒマシ油を主成分とするポリウレタンを包含する、ポリウレタンおよびその誘導体が、ポリビニルアルコールおよびスチレン変性アクリレートと比較して、CO2レーザー露光によって引起される干渉マーキングを減じる上で、改善された性能を与え得ることを示している。
【0132】
実施例3-3:2つの部分から形成される塗布組成物の調製およびレーザー暴露
本実験において、塗布組成物の2つの部分の製造において、バインダとして様々なポリウレタン化合物を使用し、ここで部分Aは、該マイクロカプセル化された染料プリカーサを含有する塗布組成物であり、また部分Bは、該電子受容型現像剤を含有する塗布組成物であった。実験結果を比較するための基準バインダとして、本例においては、ポリビニルアルコールを使用した。
1) 部分A(マイクロカプセル化された染料プリカーサを含有する塗布組成物)の製造
13.3gの電子供与体型染料プリカーサ(PSD-184、日本ソーダ(Nippon Soda)社製)および0.47gのUV光吸収剤(チヌビン(Tinuvin) P、チバガイギー社製)を、20gの酢酸エチルに添加し、70℃まで加熱することにより溶解し、次いで45℃まで冷却した。12.6gのカプセル壁材料(D-140N、三井武田ケミカル社)を、該酢酸エチル溶液に添加した。上記酢酸エチル溶液を、53gの6%w/wポリビニルアルコール水性溶液(クラレポバール(Kuraray Poval)MP-217C、クラレ社製)に添加し、ホモジナイザーを用いて5分間乳化させた。水80gおよびテトラエチレンペンタ民0.75gを、60℃にて4時間攪拌しつつ、添加混合して、カプセル化反応を行った。該部分Aが完成した。また、この塗布組成物をArefとする。
【0133】
該カプセル化された電子供与体型染料プリカーサ粒子の粒度分布および該液状塗布組成物の粘度を、ベックマンコールターのLS-100Q粒径分析装置を用い、またS21小型スピンドルを備えたブルックフィールドプログラマブルDV-II+粘度計を100-200RPMにて使用して測定した。該マイクロカプセル壁のTgを、パーキンエルマーダイアモンド(Perkin Elmer Diamond) DSC、サファイアDSC、ハイパーDSC(HyperDSCTM)、またはTAインスツルメンツ(Instruments) Q-シリーズを使用して測定した。マイクロカプセルを含まないブランク懸濁液を、該基準サンプルと同一条件下で調製した。該マイクロカプセル含有懸濁液および該ブランク懸濁液両者を、測定前にサンプルトレーに入れた。
他のテスト溶液(A1、A2、A3、およびA4)を、Arefと同様にして製造したが、ここで該バインダサンプルの量は、必要に応じて、固形分含有率を基準として、Arefにおける量と等しくなるように調節した。以下の表3-3-1に、かくして製造した様々な部分A塗布組成物を列挙する。
表3-3-1:
【0134】
【表9】
【0135】
2) 部分B(電子受容体型現像剤を含有する塗布組成物)の製造
4.2gのUV光吸収剤(チヌビン(Tinuvin) 328、チバガイギー社製)、1.0gのトリクレジルホスフェート、および36.4gの現像剤(RO54、サンコーケミカルズ(Sanko Chemicals)社製)を、16.0gの酢酸エチルに添加し、70℃まで加熱することにより溶解した。該酢酸エチル溶液を、以下の表3-3-2に記載の水性溶液に添加し、ホモジナイザーで5分間分散させた。
表3-3-2:
【0136】
【表10】
【0137】
該部分Bを、この段階において完成させた。この塗布組成物を、以下においてBrefとする。
その他の部分Bのサンプル溶液(B1、B2、B3およびB4)を、Brefと同様な方法で製造したが、ここで各サンプルについて使用した量は、必要ならば、固形分含有率を基準として、Brefにおける量と等しくなるように調節した。以下の表3-3-3に、かくして製造した部分B塗布組成物のサンプルを列挙する。
表3-3-3:
【0138】
【表11】
【0139】
3) 部分Aおよび部分Bを混合することによる塗布用ポット溶液の製造
該部分Aサンプル各々を、その対応する部分B溶液と混合した(Ai+Bi)。その混合比は以下のように設定した:
部分A 5.04g
部分B 19.13g
脱イオン水 6.40g
塗布用ポット溶液製造のため 30.57g
Ai+Biから製造した、これら塗布用ポット溶液を、以下Tiと呼ぶ。
4) 該塗布用ポット溶液の、PETフィルムへの塗布
上記混合物各々を、A4サイズの厚み75μmを持つPET製のフィルムに、15mL/m2なる量で塗布したが、ここで該フィルムには、予めSBRラテックスおよびゼラチンが塗布されており、また乾燥後に、以下のレーザーマーキング処理を行った。塗布は、Kコントロールコーター(RKプリントコートインスツルメンツ社)を用いて行い、またNo.3塗布バーを使用して、湿潤時のフィルム厚み24μmのフィルムを製造した。
【0140】
5) レーザー暴露
該塗布したサンプルを、ドミノS100レーザーマーカー(ドミノアムジェット社)によって、実施例3-2に記載のようにマトリックス露光条件下で露光を行った。該マトリックスに、一定量のレーザーエネルギーを照射した後に、最良のマーキング結果を示した、特定の文字「M」のマーキング濃度を観察し、その実験結果を、図8A〜8Eに示した。特定のレーザー露光条件(レーザー照射時間=53μs、およびマーキング速度=2030ビット/ms)を表す、該マトリックス中の文字「M」を、各テストサンプルのマーク濃度を比較するために選択した。該文字の同一位置における濃度を測定した。これらの図から分かるように、該塗布組成物におけるバインダとしての、置換または無置換ポリウレタン化合物の使用は、レーザー-マーキング性物質のマーク濃度を改善する上で効果的であった。
【0141】
実施例3-4:バインダ-含有保護層のレーザー露光
様々なポリウレタン化合物をバインダとして使用して、保護層用塗布組成物のサンプルを製造した。ポリビニルアルコールを、基準バインダとして使用して、得られる実験結果を比較した。
1) 保護層用塗布組成物の製造
以下の表3-4-1を、順次添加した。ここで、引続き添加される各成分は、その前の成分が完全に溶解し、または分散した後に添加した。
表3-4-1:
【0142】
【表12】
【0143】
該保護層用の塗布組成物は、この時点において完成した。この塗布組成物は、以下においてPCrefとする。
その他のサンプル溶液(PC1、PC2、PC3およびPC4)を、PCrefと同様な方法で製造したが、ここで使用したバインダの量は、必要ならば、固形分含有率を基準として、PCrefにおける量と等しくなるように調節した。以下の表3-4-2に、かくして製造した保護層用塗布組成物のサンプルを列挙する。
表3-4-2:
【0144】
【表13】
【0145】
2) 色-形成層への該保護層用塗布組成物の塗布
実施例3-3の塗布されたフィルム(T1、T2、T3およびT4)の各々を、上で製造した該保護層用塗布組成物で被覆した。Tiは、PCiおよびPCrefで塗布して、レーザーマーク品位におけるあらゆる差異を観察した。例えば、T1をPC1およびPCrefで被覆し、以下同様に被覆した。塗布は、Kコントロールコーター(RKプリントコートインスツルメンツ社)を用いて行い、またNo.3塗布バーを使用して、湿潤時のフィルム厚み24μmのフィルムを製造した。
【0146】
3) レーザー暴露
該塗布したサンプルを、ドミノS100レーザーマーカー(ドミノアムジェット社)によって、実施例3-2に記載のようにマトリックス露光条件下で露光を行った。該マトリックスに、一定量のレーザーエネルギーを照射した後に、最良のマーキング結果を示した、特定の文字「M」のマーキング濃度を観察し、その実験結果を、図4A〜4Hに示した。特定のレーザー露光条件(レーザー照射時間=53μs、およびマーキング速度=2030ビット/ms)を表す、該マトリックス中の文字「M」を、各テストサンプルのマーク濃度を比較するために選択した。該文字の同一位置における濃度を測定した。これらの図の結果から分かるように、保護層におけるバインダとして、ポリビニルアルコールを、該ポリウレタン化合物によって置換すると、レーザー-マーキング性物質の、記録層においてマーキング処理により形成された、マーク濃度の維持において改善が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明の例示的な媒体の断面図である。
【図2】本発明の例示的な媒体の断面図である。
【図3】本発明の例示的な媒体の断面図である。
【図4】本発明の例示的な媒体の断面図である。
【図5】本発明の例示的な媒体の断面図である。
【図6】CO2レーザーに暴露された、2種の例示的な塗膜の像を示す図である。
【図7】図7A〜7Hは、CO2レーザーに暴露された、様々な例示的な塗膜の像を示す図である。
【図8】図8A〜8Eは、CO2レーザーに暴露された、様々な例示的な塗膜の像を示す図である。
【図9】図9A〜9Hは、CO2レーザーに暴露された、様々な例示的な塗膜の像を示す図である。
【符号の説明】
【0148】
1・・マーク−形成層;
2・・支持体;
3、13、14、15・・隔離層;
4・・電子供与性染料プリカーサ;
5・・カプセル壁;
6・・電子受容性化合物;
7、7’、7”・・ポリマー性媒体;
8、8’、8”・・レーザービーム;
9・・スペーサ層;
10・・レーザー吸収性増強添加剤;
11・・マーク;
12・・支持層;
16・・レーザー吸収性添加剤;
17・・接着性媒体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー-マーキング性材料を製造するための塗布組成物であって、約150〜約190℃なる範囲のガラス転移温度:Tgを持つポリマーでカプセル化した、電子供与性染料プリカーサ粒子を含み、該染料プリカーサ粒子全体積の少なくとも約90%が、約0.2μm〜約5μmなる範囲の径を持つことを特徴とする、前記塗布組成物。
【請求項2】
前記電子供与性染料プリカーサ全量の少なくとも70%(w/w)が、酢酸エチル100g当たり約10gを越える溶解度を持つ、請求項1記載の塗布組成物。
【請求項3】
前記組成物が、約5cp〜約30cpなる範囲の粘度を持つ、請求項1記載の塗布組成物。
【請求項4】
前記約150〜約190℃なる範囲のガラス転移温度:Tgを持つポリマーが、ポリウレタンを含む、請求項1記載の塗布組成物。
【請求項5】
前記レーザー-マーキング性材料が、ピークにおいて約10.6μmなる波長をもつ、CO2レーザービームによってマーキングし得る、請求項1記載の塗布組成物。
【請求項6】
前記電子供与性染料プリカーサ全量の少なくとも80%(w/w)が、酢酸エチル100g当たり約10gを越える溶解度を持つ、請求項1記載の塗布組成物。
【請求項7】
前記電子供与性染料プリカーサが、以下の式(1)で表される化合物を含む、請求項1記載の塗布組成物:
式(1):
【化1】
ここで、R1およびR2は、各々独立に、水素原子、C1-C8アルキル基、無置換のまたはC1-C4アルキル-またはハロゲン-置換C4-C7シクロアルキル基、無置換フェニル基またはC1-C4アルキル-、ヒドロキシ-またはハロゲン-置換フェニル基、C3-C6アルケニル基、C1-C4アルコキシ基、フェニル-C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ-C1-C4アルキル基および2-テトラヒドロフラニル基から選択される基であり、あるいはR1およびR2は、これらが結合している窒素原子と共に、無置換のまたはC1-C4アルキル-置換ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノまたはピペラジノリングを形成する。
【請求項8】
前記電子供与性染料プリカーサが、以下の式(2)で表される化合物を含む、請求項1記載の塗布組成物:
式(2):
【化2】
【請求項9】
前記電子供与性染料プリカーサが、以下の式(3)で表される化合物を含む、請求項1記載の塗布組成物:
式(3):
【化3】
【請求項10】
塗布層を含むレーザー-マーキング性材料であって、該塗布層が、約150〜約190℃なる範囲のガラス転移温度:Tgを持つポリマーでカプセル化した、電子供与性染料プリカーサ粒子を含み、該染料プリカーサ粒子全体積の少なくとも約90%が、約0.2μm〜約5μmなる範囲の径を持つことを特徴とする、前記レーザー-マーキング性材料。
【請求項11】
前記塗布層中の、前記電子供与性染料プリカーサ全量の少なくとも70%(w/w)が、酢酸エチル100g当たり約10gを越える溶解度を持つ、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料。
【請求項12】
前記塗布層が、約5cp〜約30cpなる範囲の粘度を持つ組成物塗布組成物から形成される、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料。
【請求項13】
前記の約150〜約190℃なる範囲のガラス転移温度:Tgを持つポリマーが、ポリウレタンを含む、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料。
【請求項14】
前記レーザー-マーキング性材料が、ピークにおいて約10.6μmなる波長をもつ、CO2レーザービームによってマーキングし得る、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料。
【請求項15】
前記塗布層中の、前記電子供与性染料プリカーサ全量の少なくとも80%(w/w)が、酢酸エチル100g当たり約10gを越える溶解度を持つ、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料。
【請求項16】
前記電子供与性染料プリカーサが、以下の式(1)で表される化合物を含む、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料:
式(1):
【化4】
ここで、R1およびR2は、各々独立に、水素原子、C1-C8アルキル基、無置換のまたはC1-C4アルキル-またはハロゲン-置換C4-C7シクロアルキル基、無置換フェニル基またはC1-C4アルキル-、ヒドロキシ-またはハロゲン-置換フェニル基、C3-C6アルケニル基、C1-C4アルコキシ基、フェニル-C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ-C1-C4アルキル基および2-テトラヒドロフラニル基から選択される基であり、あるいはR1およびR2は、これらが結合している窒素原子と共に、無置換のまたはC1-C4アルキル-置換ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノまたはピペラジノリングを形成する。
【請求項17】
前記電子供与性染料プリカーサが、以下の式(2)で表される化合物を含む、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料:
式(2):
【化5】
【請求項18】
前記電子供与性染料プリカーサが、以下の式(3)で表される化合物を含む、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料:
式(3):
【化6】
【請求項19】
更に、前記塗布層を堆積させる基盤をも含む、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料。
【請求項20】
更に、前記塗布層上に設けられた、保護層をも含み、該保護層が、これを通して、該塗布層を暴露した際にマークを形成するのに効果的な、レーザービームの通過を可能とする、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料。
【請求項21】
更に、前記塗布層上に設けられた、保護層をも含み、該保護層が、該塗布層を暴露した際にマークを形成するのに効果的な、レーザービームに対して実質的に透明である、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料。
【請求項22】
請求項10記載のレーザー-マーキング性材料を、レーザービームに暴露する工程を含むことを特徴とする、レーザー-マーキング性材料のマーキング方法。
【請求項1】
レーザー-マーキング性材料を製造するための塗布組成物であって、約150〜約190℃なる範囲のガラス転移温度:Tgを持つポリマーでカプセル化した、電子供与性染料プリカーサ粒子を含み、該染料プリカーサ粒子全体積の少なくとも約90%が、約0.2μm〜約5μmなる範囲の径を持つことを特徴とする、前記塗布組成物。
【請求項2】
前記電子供与性染料プリカーサ全量の少なくとも70%(w/w)が、酢酸エチル100g当たり約10gを越える溶解度を持つ、請求項1記載の塗布組成物。
【請求項3】
前記組成物が、約5cp〜約30cpなる範囲の粘度を持つ、請求項1記載の塗布組成物。
【請求項4】
前記約150〜約190℃なる範囲のガラス転移温度:Tgを持つポリマーが、ポリウレタンを含む、請求項1記載の塗布組成物。
【請求項5】
前記レーザー-マーキング性材料が、ピークにおいて約10.6μmなる波長をもつ、CO2レーザービームによってマーキングし得る、請求項1記載の塗布組成物。
【請求項6】
前記電子供与性染料プリカーサ全量の少なくとも80%(w/w)が、酢酸エチル100g当たり約10gを越える溶解度を持つ、請求項1記載の塗布組成物。
【請求項7】
前記電子供与性染料プリカーサが、以下の式(1)で表される化合物を含む、請求項1記載の塗布組成物:
式(1):
【化1】
ここで、R1およびR2は、各々独立に、水素原子、C1-C8アルキル基、無置換のまたはC1-C4アルキル-またはハロゲン-置換C4-C7シクロアルキル基、無置換フェニル基またはC1-C4アルキル-、ヒドロキシ-またはハロゲン-置換フェニル基、C3-C6アルケニル基、C1-C4アルコキシ基、フェニル-C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ-C1-C4アルキル基および2-テトラヒドロフラニル基から選択される基であり、あるいはR1およびR2は、これらが結合している窒素原子と共に、無置換のまたはC1-C4アルキル-置換ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノまたはピペラジノリングを形成する。
【請求項8】
前記電子供与性染料プリカーサが、以下の式(2)で表される化合物を含む、請求項1記載の塗布組成物:
式(2):
【化2】
【請求項9】
前記電子供与性染料プリカーサが、以下の式(3)で表される化合物を含む、請求項1記載の塗布組成物:
式(3):
【化3】
【請求項10】
塗布層を含むレーザー-マーキング性材料であって、該塗布層が、約150〜約190℃なる範囲のガラス転移温度:Tgを持つポリマーでカプセル化した、電子供与性染料プリカーサ粒子を含み、該染料プリカーサ粒子全体積の少なくとも約90%が、約0.2μm〜約5μmなる範囲の径を持つことを特徴とする、前記レーザー-マーキング性材料。
【請求項11】
前記塗布層中の、前記電子供与性染料プリカーサ全量の少なくとも70%(w/w)が、酢酸エチル100g当たり約10gを越える溶解度を持つ、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料。
【請求項12】
前記塗布層が、約5cp〜約30cpなる範囲の粘度を持つ組成物塗布組成物から形成される、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料。
【請求項13】
前記の約150〜約190℃なる範囲のガラス転移温度:Tgを持つポリマーが、ポリウレタンを含む、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料。
【請求項14】
前記レーザー-マーキング性材料が、ピークにおいて約10.6μmなる波長をもつ、CO2レーザービームによってマーキングし得る、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料。
【請求項15】
前記塗布層中の、前記電子供与性染料プリカーサ全量の少なくとも80%(w/w)が、酢酸エチル100g当たり約10gを越える溶解度を持つ、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料。
【請求項16】
前記電子供与性染料プリカーサが、以下の式(1)で表される化合物を含む、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料:
式(1):
【化4】
ここで、R1およびR2は、各々独立に、水素原子、C1-C8アルキル基、無置換のまたはC1-C4アルキル-またはハロゲン-置換C4-C7シクロアルキル基、無置換フェニル基またはC1-C4アルキル-、ヒドロキシ-またはハロゲン-置換フェニル基、C3-C6アルケニル基、C1-C4アルコキシ基、フェニル-C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ-C1-C4アルキル基および2-テトラヒドロフラニル基から選択される基であり、あるいはR1およびR2は、これらが結合している窒素原子と共に、無置換のまたはC1-C4アルキル-置換ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノまたはピペラジノリングを形成する。
【請求項17】
前記電子供与性染料プリカーサが、以下の式(2)で表される化合物を含む、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料:
式(2):
【化5】
【請求項18】
前記電子供与性染料プリカーサが、以下の式(3)で表される化合物を含む、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料:
式(3):
【化6】
【請求項19】
更に、前記塗布層を堆積させる基盤をも含む、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料。
【請求項20】
更に、前記塗布層上に設けられた、保護層をも含み、該保護層が、これを通して、該塗布層を暴露した際にマークを形成するのに効果的な、レーザービームの通過を可能とする、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料。
【請求項21】
更に、前記塗布層上に設けられた、保護層をも含み、該保護層が、該塗布層を暴露した際にマークを形成するのに効果的な、レーザービームに対して実質的に透明である、請求項10記載のレーザー-マーキング性材料。
【請求項22】
請求項10記載のレーザー-マーキング性材料を、レーザービームに暴露する工程を含むことを特徴とする、レーザー-マーキング性材料のマーキング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図9G】
【図9H】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図9G】
【図9H】
【公表番号】特表2009−532226(P2009−532226A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502749(P2009−502749)
【出願日】平成18年5月3日(2006.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/016929
【国際公開番号】WO2007/114829
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(508293726)フジフイルム ハント ケミカルズ ユー.エス.エイ. インコーポレイテッド (3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月3日(2006.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/016929
【国際公開番号】WO2007/114829
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(508293726)フジフイルム ハント ケミカルズ ユー.エス.エイ. インコーポレイテッド (3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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