説明

レーザーマーキング可能な包装材料および包装袋

【課題】基材の安定性に優れ、印字識別性に優れるレーザーマーキング可能な包装材料を提供する。
【解決手段】少なくとも一部に前記包装材料の外層から内層に向かって淡色インキ塗工層30、銀インキ塗工層20、前記基材層10、濃色インキ塗工層40が積層されたレーザーマーキング領域120を有し、前記プラスチック基材層10または前記濃色インキ塗工層40側に前記熱融着性樹脂層60が積層されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック基材層の表面に淡色インキ塗工層、銀インキ塗工層とを形成し、プラスチック基材層の内側に濃色インキ塗工層を形成したレーザーマーキング領域を有する包装材料、および該包装材料を成型してなる包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や飲料、食品などの包装容器に使用する包装材の表面には通常、商品名、品質表示、商品デザイン、注意書き、バーコード等、商品の共通情報と共に、製造所、製造年月日、賞味期限、製造責任者などが記載されている。前者共通情報は、内容物が包装袋に収納・密封される前に包装袋に印刷されるが、後者はその性質上、内容物が収納・密封された時点で記入されることが多く、かつ袋外面の所定の記録枠部分に記入されることが一般的である。
【0003】
この記載方法として包装材の表面に直接、インキ等で印字する方法や、別のラベル等に印字して貼付する方法がある。しかし不定形の表面を有する包装体や衝撃に弱い内容物を収納した軟包装などの場合は機械的な印字方法は適当ではなく、また、印字部が取り扱いの過程や輸送の過程で消滅したり脱離するなどの問題がある。
【0004】
その対策として、包装体の印刷表面にレーザー照射によって文字や記号を描画させることによって印字する方法が行われている。例えば、包装容器などに使用されるプラスチックフィルム、金属箔、紙等の基材に印刷した後、オーバーコート層を設けた包装材にレーザーを照射し、印刷層の被照射部を溶融、あるいは昇華させることにより白抜き文字やデザインを印字させる方法(特許文献1)、印刷層に感熱発色性の染料等の着色成分を配合することにより印字させる方法(特許文献2)等がある。
【0005】
更に、レーザー照射によって印字すべき金属箔を有する包装材において、金属箔面に下刷り層を設け、該下刷り層の上に印刷層を設けてなるレーザー印字可能な包装材もある(特許文献3)。特許文献3では、8μm以上の厚さのアルミニウム箔等の金属箔を使用する場合に、印刷層およびオーバーコート層を設けた包装材では、レーザー照射による印字は輪郭が崩れて識別が不鮮明となる場合に鑑み、金属箔を基材とし、下刷り層を設け、さらに印刷層を形成することでレーザー照射による印字が明瞭且つ鮮明な包装材を提供する、というものである。下刷り層は、プライマーとして機能する有機質皮膜によって形成することができる、という。
【0006】
さらに、基材フィルム層と透明インキ層と金属層をこの順に備える積層体を、前記基材フィルム層が最表面となるように有する包装材料からなる包装袋であって、前記基材フィルム層の側からのレーザー光の照射により前記基材フィルム層および透明インキ層が除去されてなるマーキングを有することを特徴とするマーキング付き包装袋もある(特許文献4)。基材フィルム層側からのレーザー光の照射により基材フィルム層および透明インキ層を除去し、この除去痕によりマーキングを形成するというものである。
【特許文献1】特開平6−227137号公報
【特許文献2】特開平6−255254号公報
【特許文献3】特開平11−152117号公報
【特許文献4】特開2006−305889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3記載の方法は金属箔を基材層とするものであり、基材フィルムの範囲が限定される。また、特許文献4記載の方法も基材フィルム層と透明インキ層と金属層とをこの順に備える積層体であり、基材フィルム層側からレーザー光を照射して基材フィルム層および透明インキ層を除去するため、基材フィルムの除去によって機械的強度が低下し、内容物の保存環境を低下させる恐れがある。
【0008】
そこで本発明は、レーザー光によって品質等の管理情報を印字することが可能であり、耐熱性のあるインキ塗工層を包装材料に設けることによって記入した情報の改竄を困難とする包装材料、および該包装材料を成型してなる包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、レーザー光の照射による印字可能な包装材料について詳細に検討した結果、プラスチック基材層の片面に銀インキ塗工層と淡色インキ塗工層とを形成し、他面に濃色インキ塗工層を形成すると、淡色インキ塗工層の側からレーザー光を照射して淡色インキ塗工層および銀インキ塗工層を消失させ、これによって濃色インキ塗工層を現出させて印字情報を提供しうること、および淡色インキ塗工層と銀インキ塗工層との2層を形成することでプラスチック基材層のレーザー光照射による劣化を防止できることなどを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の第一は、プラスチック基材層と熱融着性樹脂層とを有する包装材料であって、少なくとも一部に前記包装材料の外層から内層に向かって淡色インキ塗工層、銀インキ塗工層、前記基材層、濃色インキ塗工層が積層されたレーザーマーキング領域を有し、前記プラスチック基材層または前記濃色インキ塗工層側に前記熱融着性樹脂層が積層されることを特徴とするレーザーマーキング可能な包装材料を提供するものである。
【0011】
また、本発明の目的の第二は、前記包装材料を袋状に成型してなる包装袋を提供するものである。
また、本発明の目的の第三は、外層から内層に向かって淡色インキ塗工層、銀インキ塗工層、プラスチック基材層、濃色インキ塗工層が積層された積層体に、レーザー光を照射して、前記淡色インキ塗工層と銀インキ塗工層とを消失させ、前記濃色インキ塗工層を現出させて印字情報を提供することを特徴とする、印字方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の包装材料は、プラスチック基材層の内側に形成された濃色インキ塗工層によって印字情報が提供されるため、印字面に接触することによる印字薄れがなく、表示の改竄が困難で、印刷内容の信頼性に優れる。
【0013】
本発明の包装材料は、レーザー光の吸収層として薄層の銀インキ塗工層を使用するため、包装材料を薄く形成することができる。
本発明の包装材料は、濃色インキ塗工層と同時にデザイン印刷層を形成することができ、印字情報の信頼性に優れると共に、高い意匠性を確保することができる。
【0014】
本発明の包装材料は、金属箔以外のプラスチックを基材として使用することができるため、多用な包装材料を提供することができる。
本発明の包装材料は、更に中間基材層を積層することができ、機械的強度、ガスバリア性などの調整が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、プラスチック基材層と熱融着性樹脂層とを有する包装材料であって、
少なくとも一部に前記包装材料の外層から内層に向かって淡色インキ塗工層、銀インキ塗工層、前記基材層、濃色インキ塗工層が積層されたレーザーマーキング領域を有し、前記プラスチック基材層または前記濃色インキ塗工層側に前記熱融着性樹脂層が積層されることを特徴とするレーザーマーキング可能な包装材料である。また、外層から内層に向かって淡色インキ塗工層、銀インキ塗工層、プラスチック基材層、濃色インキ塗工層が積層された積層体に、レーザー光を照射して、前記淡色インキ塗工層と銀インキ塗工層とを消失させ、前記濃色インキ塗工層を現出させて印字情報を提供することを特徴とする、印字方法である。以下、本発明の包装材料および包装袋を詳細に説明する。
【0016】
(1)プラスチック基材層
本発明におけるプラスチック基材層を構成するプラスチックは、特に限定するものではなく、従来、包装材料に使用される各種のプラスチックを使用することができる。例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム;6,6−ナイロン等のポリアミドフィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリアクリロニトリルフィルム;ポリイミドフィルム等が用いられる。
【0017】
上記プラスチックは、延伸、未延伸のどちらでもよいが、機械強度や寸法安定性を有するものが好ましい。本発明では、上記プラスチックを二軸方向に任意に延伸した二軸延伸フィルムを好適に使用することができる。
【0018】
なお、上記樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数10%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
【0019】
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤、その他等を任意に使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することができる。
【0020】
また、プラスチック基材層は、単層に限定されず積層フィルムであってもよい。例えばプラスチック基材層にガスバリア性を付与する場合は、上記プラスチックからフィルムを形成し、これに酸化アルミ、酸化珪素などの無機酸化物の蒸着層を形成したものを使用することができる。このような蒸着フィルムとしては、二軸延伸ポリエステルフィルムの透明蒸着フィルム、二軸延伸ポリアミドフィルムの透明蒸着フィルムなどがある。更に、ポリ塩化ビニリデンやポリビニルアルコール等を塗工した二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルムなどもガスバリア性フィルムとして使用することができる。更に、メタキシレンジアミン(MXD)ナイロン層やエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂層を含む二軸延伸多層ポリアミドフィルム等も、ガスバリア性フィルムとして好適に使用することができる。
【0021】
本発明で使用するプラスチック基材層の厚さは、特に制限を受けるものではないが、包装材料としての適性及び加工性を考慮すると、3〜200μmであることが好ましく、より好ましくは6〜30μmである。
【0022】
(2)インキ塗工層
本発明では上記プラスチック基材層に淡色インキ塗工層、銀インキ塗工層、濃色インキ塗工層を形成する。
【0023】
インキ塗工層としては、通常のインキビヒクルの1種ないし2種以上を主成分とし、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の添加剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練してインキ組成物を調整して得たインキ組成物を使用することができる。このようなインキビヒクルとしては、公知のもの、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、硝化綿、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、その他などの1種または2種以上を併用することができる。本発明の包装材料は、レーザー光を淡色インキ塗工層と銀インキ塗工層とに照射することで、レーザー光の熱エネルギーによってこれらを加熱蒸発して消失させることができる。このため、使用する淡色インキ塗工層や銀インキ塗工層には、レーザー光吸収剤を配合したり、使用するビヒクルを特定してレーザー光吸収能を向上させることもできる。しかしながら、本発明では、従来公知のインク塗工層によってレーザーマーキング可能な包装材料を提供しうる点が特徴であり、市販のインク塗工層を使用することができる。
【0024】
本発明では、プラスチック基材層の片側に淡色インキ塗工層と銀インキ塗工層とを形成し、他面に濃色インキ塗工層を形成するが、淡色インキと濃色インキとのコントラストによって印字情報を明瞭に提供することができる。したがって、淡色インクとは明度が高いものであり、白色インクを主成分として他の色インクを配合したものを意味する。また、濃色インクとは明度が低いものであり、墨インクを主成分として他の色インクを配合したもの、そのた濃色インクを意味する。本発明では、淡色インキと濃色インキのコントラストによって印字情報を提供することができればよい。本発明では淡色インクとして白色インキを、濃色インクとして墨インキを好適に使用することができる。なお、銀インキとしては、例えばアルミペーストを使用することができる。
【0025】
なお、本発明は、レーザー光の照射によって銀インキ塗工層および淡インキ塗工層を消失させ、消失部から濃色インキ塗工層を出現させて印字情報を提供するレーザーマーキング可能な包装材料であるから、レーザーマーキング予定個所に前記した淡色インキ塗工層、銀インキ塗工層、および濃色インキ塗工層を形成すればよく、プラスチック基材層の全面にこれらを形成する必要は無い。
【0026】
上記インキ塗工層は、グラビア印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他の従来の印刷方式で形成することができる。各インキ塗工層の厚さは、0.1〜5.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜2.5μmである。
【0027】
(3)熱融着性樹脂層
熱融着性樹脂層は、熱によって溶融し相互に融着し得る各種の熱融着性を有するポリオレフィン系樹脂等を使用することができる。
【0028】
具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、及びそれらの金属架橋物等の樹脂、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂からなる1種以上のフィルムもしくはシートまたは塗布膜などを使用することができる。また上記樹脂からなるフィルムに、アルミニウム等の金属蒸着層を設けたものであってもよい。
【0029】
厚さは、特に制限を受けるものではなく、目的に応じて決めることができ、一般的には15〜200μmの範囲である。
熱融着性樹脂層の形成方法としては、上記樹脂からなるフィルムを、2液反応硬化型接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法、無溶剤接着剤を用いて貼り合わせるノンソルベントラミネート法、上述した樹脂を加熱溶融させて押し出し貼り合わせるエキストルージョンラミネート法等いずれの公知の積層方法によって形成することができる。
【0030】
(4)中間基材層
本発明では、上記プラスチック基材層と熱融着性樹脂層との間に、更に中間基材層を設けることができる。中間基材層によって、耐熱性、防湿性、耐ピンホール性、耐突き刺し性などを向上させることができる。
【0031】
一般的には、上記プラスチック基材層と同じものを使用することができ、例えば、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂フィルムなどが例示できる。また、上記プラスチック基材層と同様に、単層に限定されず、2層以上の積層フィルムであってもよく、MXDナイロン層やエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層を含む二軸延伸多層ポリアミドフィルムやアルミニウム箔、アルミニウム等の金属蒸着膜を持つ二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム等のガスバリア性フィルムも好適に使用することができる。
【0032】
中間基材層の厚さは、包装材料に収納される内容物の種類、その他によって適宜選択することができ、一般的には6〜30μmの範囲である。なお、中間基材層の積層方法も従来公知の方法を採用することができ、ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法、エキストルージョンラミネート法、その他のいずれの公知の積層方法であってもよい。
【0033】
(5)デザイン印刷層
本発明の包装材料は、前記プラスチック基材層の前記レーザーマーキング領域以外の内層または外層に、デザイン印刷層を有していてもよい。デザイン印刷層が、包装材料のプラスチック基材層の外層に形成される場合には、包装材料の外側からデザイン印刷層を認識することができる。また、プラスチック基材層の墨インキ塗工層以外に裏印刷によってデザイン印刷層が形成される場合でも、プラスチック基材層を通してデザイン印刷層を認識することができる。このようなデザイン印刷層は、前記したインキ塗工層を構成するインキ組成物を使用して形成することができる。なお、印刷方法としては、グラビア印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他の従来の印刷方式で形成することができる。本発明では、デザイン印刷層を、前記淡色インキ塗工層、銀インキ塗工層、墨インキ塗工層の形成と同時に行ってもよい。
【0034】
(6)その他の層
本発明では、上記構成層以外に、更に他の層を含んでいてもよい。このような他の層としては、各層をドライラミネート積層法で積層するためのラミネート用接着剤層や、熱融着性樹脂層を溶融押出し法で積層する場合のプライマー層やアンカーコート層、その他、アンダーコート剤層や表面処理によって形成された表面処理層などがある。なお、表面処理層としては、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理などがある。
【0035】
また、本発明の包装材料は、最外層としてプラスチック基材層や前記淡色インキ塗工層を保護しうるオーバーコート層を有していてもよい。なお、オーバーコート層は、レーザー光の透過が必要であり、印字後の視認のために透明ないし透光であることが必要である。
【0036】
(7)印字方法
本発明の印字方法は、外層から内層に向かって淡色インキ塗工層、銀インキ塗工層、プラスチック基材層、濃色インキ塗工層が積層された積層体にレーザー光を照射して、前記淡色インキ塗工層と銀インキ塗工層とを消失させ、前記濃色インキ塗工層を現出させて印字情報を提供することを特徴とする。レーザー光を照射すると銀インキ塗工層がレーザー光のエネルギーを吸収して加熱蒸発し、プラスチック基材層を透過して濃色インキ塗工層が現出される。この際、淡色インキ塗工層が存在しないと、吸収エネルギーが強すぎるため下層にあるプラスチック基材層が溶融したり、シワやピンホールを形成する場合がある。このため、上記構成の包装材料にレーザー光を照射すると、包装材料がレーザー光の影響を受け、内容物の保護が十分でない場合がある。しかしながら、本発明の包装材料は、プラスチック基材層の上に淡色インキ塗工層と銀インキ塗工層とを積層することでレーザー光エネルギーを緩和することができ、このためプラスチック基材層に対するレーザー光の影響を制御し、溶融、破損、ピンホール、シワの発生を抑制することができる。このため、本発明の包装材料は、機械的強度やガスバリア性が要求される用途に好適に使用することができる。
【0037】
本発明の印字方法で使用するレーザー光は、包装材料のプラスチック基材層の種類や厚さなどに応じて適宜選択することができ、レーザーマーキングに使用可能なものであれば特に制限はない。例えば、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザーなどを使用することができる。照射出力、印字速度などは、包装材料のプラスチック基材層の種類や厚さなどに応じて適宜選択することができる。
【0038】
(8)包装材料
本発明の包装材料は、少なくとも一部に上記構成からなるレーザーマーキング領域を有し、前記プラスチック基材層または前記濃色インキ塗工層側に前記熱融着性樹脂層が積層されることを特徴とする。図1に示すように、プラスチック基材層(10)に、銀インキ塗工層(20)および淡色インキ塗工層(30)を順に形成し、前記プラスチック基材層(10)の他の面に濃色インキ塗工層(40)を形成し、濃色インキ塗工層(40)の側に、例えば接着剤層(50)を介して熱融着性樹脂層(60)を積層して調製することができる。また、プラスチック基材層(10)や墨インキ塗工層(40)と熱融着性樹脂層(60)との間に、更に中間基材層(70)を有していてもよく、例えば、図2に示すように接着剤層(50)を介して中間基材層(70)が積層されてもよい。
【0039】
本発明の包装材料は、レーザーマーキング可能な包装材料であり、レーザーマーキングが要求される領域に上記構成を有すればよく、包装材料の全面に上記構成を有する必要は無い。たとえば商品名、品質表示、商品デザイン、注意書き、バーコード等の共通情報を提供するデザイン印刷領域と、製造所、製造年月日、賞味期限、製造責任者などの個別情報を提供するレーザーマーキング領域とに区分けし、ことなる層構成の積層部分を含む包装材料であってもよい。このような態様の一例を図3に示す。
【0040】
図3は、本発明の包装材料の一例の横断面図である。レーザーマーキング領域(120)として、プラスチック基材層(10)に、銀インキ塗工層(20)および淡色インキ塗工層(30)を順に形成し、前記プラスチック基材層(10)の他の面に濃色インキ塗工層(40)を形成した層構成を有し、デザイン印刷領域(110)は、プラスチック基材層(10)の内側に印刷層(90)を形成したものである。レーザーマーキング領域(120)およびデザイン印刷領域(110)は、包装材料の内側に接着剤層(50)を介して熱融着性樹脂層(60)が積層されている。この包装材料を使用して、例えば図4に示す、商品名などが記載されたデザイン印刷領域(110)の下部に、賞味期限などの情報を記載しうるレーザーマーキング領域(120)が形成された包装袋を製造することができる。なお、図4に示す包装袋の表層材のA−A’線切断面が図3の横断面図となっている。
【0041】
したがって、本発明の包装材料を製造するには、例えば、プラスチック基材層(10)のレーザーマーキング領域(120)に、銀インキ塗工層(20)と淡色インキ塗工層(30)とを形成し、次いで、プラスチック基材層(10)の内側の前記レーザーマーキング領域(120)に墨インキ塗工層(40)を形成し、同時にデザイン印刷領域(110)に共通情報その他の印刷層(90)を裏印刷によって形成し、ついで、プラスチック基材層(10)の墨インキ塗工層(40)や印刷層(90)を有する側に、接着剤層(50)を介して熱融着性樹脂層(60)を積層すればよい。なお、エキストルージョンラミネート法によって、熱融着性樹脂層(60)を積層することもできる。
【0042】
また、本発明においては、いずれかのフィルムや層の積層を行う際に、必要ならば、前記したように、コロナ処理、オゾン処理等の前処理をフィルムに施すことができ、また、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジェン系、有機チタン系等のアンカーコーティング剤、あるいはポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、その他等のラミネート用接着剤等の公知の前処理のほか、アンカーコート剤などを使用することができる。
【0043】
(9)包装袋
本発明の包装袋は、上記包装材料の熱融着性樹脂層を対向するように重ね合わせ、しかる後、その外周周辺の端部の三方を熱融着して熱融着部を形成すると共にその上部に開口部を形成して、三方シール型の包装袋を製造することができる。その他、本発明の包装袋の形状としては、ピロー包装形態、ガセット包装形態、スタンディング(自立性)パウチ包装形態、その他等の内容物に合った種々の形態からなる包装用袋を製造し得る。なお、熱融着の方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0044】
本発明の包装材料は、前記したように少なくともその一部に上記構成からなるレーザーマーキング領域を有する。包装袋におけるレーザーマーキング領域の形成箇所に限定はなく、たとえば図4に示すように、包装袋(100)の表面または裏面のいずれかの下部にレーザーマーキング領域(120)を形成することができる。
【0045】
包装袋は、その上部に開封操作を容易にするノッチなどの易開封性手段であってもよい。ノッチは、通常、一字形やV字形などのノッチが使用されているが、形状は特に限定されず、切り取り方向に鋭角部分を有する形状であれば何でも使用することができる。
【実施例】
【0046】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
実施例1
20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムに厚さ1.0μmの銀インキ塗工層を形成し、前記銀インキ塗工層の上層に厚さ1.0μmの白インキ塗工層を形成した。
【0047】
次いで、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの反対側の面に、厚さ0.7μmの墨インキ塗工層を形成し、接着剤で厚さ25μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層して包装材料を調製した。
【0048】
この包装材料にキーエンス製、炭酸ガスレーザマーカML−Z9520(出力30W)を用いて、表1に示すレーザー出力および印字速度でレーザー光を照射して印字し、印字状態および基材層の状態を観察した。結果を表1に示す。
【0049】
実施例2
12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに厚さ1.0μmの銀インキ塗工層を形成し、前記銀インキ塗工層の上層に厚さ1.0μmの白インキ塗工層を形成した。
【0050】
次いで、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの反対側の面に、厚さ0.7μmの墨インキ塗工層を形成し、接着剤で厚さ12μmの/アルミ蒸着二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層し、ついで、アンカーコート層を形成した後に厚さ15μmに低密度ポリエチレンを押し出し、厚さ40μmの/直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを積層して包装材料を調製した。
【0051】
実施例1と同様にして、この包装材料にキーエンス製、炭酸ガスレーザマーカML−Z9520(出力30W)を用いて、表1に示すレーザー出力および印字速度でレーザー光を照射して印字し、印字状態および基材層の状態を観察した。結果を表1に示す。
【0052】
比較例1
20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムに厚さ0.7μmの墨インキ塗工層を形成し、接着剤で厚さ25μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層して包装材料を調製した。
【0053】
実施例1と同様にして、この包装材料にキーエンス製、炭酸ガスレーザマーカML−Z9520(出力30W)を用いて、表1に示すレーザー出力および印字速度でレーザー光を照射して印字し、印字状態および基材層の状態を観察した。結果を表1に示す。
【0054】
比較例2
20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムに厚さ1.0μmの白インキ塗工層を形成し、前記白インキ塗工層の上層に厚さ1.0μmの銀インキ塗工層を形成し、更に、銀インキ塗工層の上層に厚さ0.7μmの墨インキ塗工層を形成し、接着剤で厚さ25μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層して包装材料を調製した。
【0055】
実施例1と同様にしてこの包装材料にキーエンス製、炭酸ガスレーザマーカML−Z9520(出力30W)を用いて、表1に示すレーザー出力および印字速度でレーザー光を照射して印字し、印字状態および基材層の状態を観察した。結果を表1に示す。
【0056】
比較例3
12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに厚さ1.0μmの銀インキ塗工層を形成した。
【0057】
次いで、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの反対側の面に、厚さ0.7μmの墨インキ塗工層を形成し、接着剤で厚さ12μmのアルミ蒸着二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層し、ついで、アンカーコート層を形成した後に厚さ15μmに低密度ポリエチレンを押し出し、厚さ40μmの/直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを積層して包装材料を調製した。
【0058】
実施例1と同様にして、この包装材料にキーエンス製、炭酸ガスレーザマーカML−Z9520(出力30W)を用いて、表1に示すレーザー出力および印字速度でレーザー光を照射して印字し、印字状態および基材層の状態を観察した。結果を表1に示す。表1において、評価Aは印字状態であって、1は良好、2は認識可能、3は認識不可能を示し、評価Bは包装材料の状態であって、1は問題なし、2はシワあるがピンホールなし、3はピンホールあり、を示す。
【0059】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る包装材料は、レーザーマーキング領域にレーザー光の照射によってロットなどの個別の情報を印字することができるため印字が容易で、かつレーザー光の照射によって印字するため印字情報の信頼性が高く、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、本発明で使用する包装材料を説明する横断面図である。
【図2】図1は、更に中間基材層を含む、本発明で使用する包装材料を説明する横断面図である。
【図3】本発明の包装材料の横断面図であり、プラスチック基材層にレーザーマーキング領域とデザイン印刷領域とが形成される状態を説明する図である。
【図4】本発明で使用する包装袋の外観を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
10・・・プラスチック基材層、
20・・・銀インキ塗工層、
30・・・淡色インキ塗工層、
40・・・濃色インキ塗工層、
50・・・接着剤膜、
60・・・熱融着樹脂層、
70・・・中間基材層、
90・・・印刷層、
100・・・包装袋、
110・・・デザイン印刷領域、
120・・・レーザーマーキング領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基材層と熱融着性樹脂層とを有する包装材料であって、
少なくとも一部に前記包装材料の外層から内層に向かって淡色インキ塗工層、銀インキ塗工層、前記基材層、濃色インキ塗工層が積層されたレーザーマーキング領域を有し、前記プラスチック基材層または前記濃色インキ塗工層側に前記熱融着性樹脂層が積層されることを特徴とするレーザーマーキング可能な包装材料。
【請求項2】
前記プラスチック基材層の前記レーザーマーキング領域以外の内層または外層に、デザイン印刷層を有することを特徴とする、請求項1に記載のレーザーマーキング可能な包装材料。
【請求項3】
前記淡色インキが白色インキであり、濃色インキが墨インキである、請求項1または2記載のレーザーマーキング可能な包装材料。
【請求項4】
請求項1及び2に記載の包装材料を袋状に成型してなる包装袋。
【請求項5】
外層から内層に向かって淡色インキ塗工層、銀インキ塗工層、プラスチック基材層、濃色インキ塗工層が積層された積層体に、レーザー光を照射して、前記淡色インキ塗工層と銀インキ塗工層とを消失させ、前記濃色インキ塗工層を現出させて印字情報を提供することを特徴とする、印字方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−67467(P2009−67467A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240873(P2007−240873)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】