説明

レーザー加工装置における光路確認方法

【課題】レーザー光線が被加工物を保持する保持面に対して垂直に照射されているか否かを正確に確認することができるレーザー加工装置における光路確認方法。
【解決手段】レーザー光線発振器と、光学伝送手段と、チャックテーブルに保持された被加工物に照射する集光器とを具備しているレーザー加工装置における光路確認方法であって、チャックテーブルの保持面に反射鏡を保持する反射鏡保持工程と、ピンホール81が設けられた発光プレート8を該レーザー光線発振器が発振したレーザー光線の光路にレーザー光線がピンホールを通過するように位置付ける発光プレート位置付け工程と、レーザー光線発振器から発振され発光プレートに設けられたピンホールを通過して反射鏡に照射されたレーザー光線の反射光を発光プレートで捉え、発光プレートにおける反射光によって発光した位置と発光プレートに設けられたピンホールとのズレを検出するズレ確認工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置のレーザー光線発振手段から発振されたレーザー光線が被加工物に照射されるまでの光路が適正か否かを確認するためのレーザー加工装置における光路確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー加工装置は、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段とを具備している。そして、レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振器と、該レーザー光線発振器が発振したレーザー光線を伝送する光学伝送手段と、該光学伝送手段によって伝送されたレーザー光線を集光して該チャックテーブルに保持された被加工物に照射する集光器とを具備している。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
上述したレーザー加工装置においては、レーザー光線照射手段の集光器から照射されるレーザー光線はチャックテーブルの保持面に対して垂直となる必要がある。従って、レーザー加工装置の組み立て完了時やメンテナンス時等においては、レーザー光線照射手段の集光器から照射されるレーザー光線がチャックテーブルの保持面に対して垂直であるか否かを確認する光路確認作業を実施している。従来実施されている光路確認方法は、チャックテーブルの保持面に反射鏡を載置し、レーザー光線の光路に株式会社住田光学ガラスによって製造販売されている蛍光ガラス板(「ルミラス」)を配置してレーザー光線発振器からレーザー光線を発振する。そして、蛍光ガラス板におけるレーザー光線発振器から発振されたレーザー光線が通過する発光点と、反射鏡で反射した反射光が通過する戻り点とのズレを検出する。蛍光ガラス板における上記発光点と戻り点が一致していれば、レーザー光線照射手段の集光器から照射されるレーザー光線はチャックテーブルの保持面に対して垂直である。一方、蛍光ガラス板における上記発光点と戻り点にズレがあれば、レーザー光線照射手段の集光器から照射されるレーザー光線はチャックテーブルの保持面に対して垂直ではないため、発光点と戻り点が一致するように光学伝送手段または集光器を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−138143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、上記蛍光ガラス板の面をレーザー光線の光軸に対して垂直に位置付けられていない場合には、レーザー光線が屈折して光路を精密に調整することができない。また、蛍光ガラス板の厚みにバラツキがあると、同様の問題が生ずる。更に、レーザー光線発振器から発振されたレーザー光線の光強度に対して反射光の光強度は弱いことから、蛍光ガラス板を通過したレーザー光線による発光点によって反射光が通過する戻り点が消されてしまい光路を精密に調整することができないという問題もある。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、レーザー加工装置のレーザー光線発振器から発振されたレーザー光線が被加工物を保持する保持面に対して垂直に照射されているか否かを正確に確認することができるレーザー加工装置における光路確認方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術的課題を解決するために、本発明によれば、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段とを具備し、該レーザー光線照射手段はレーザー光線を発振するレーザー光線発振器と、該レーザー光線発振器が発振したレーザー光線を伝送する光学伝送手段と、該光学伝送手段によって伝送されたレーザー光線を集光して該チャックテーブルに保持された被加工物に照射する集光器とを具備している、レーザー加工装置における光路確認方法であって、
該チャックテーブルの保持面に反射鏡を保持する反射鏡保持工程と、
ピンホールが設けられた発光プレートを該レーザー光線発振器が発振したレーザー光線の光路にレーザー光線がピンホールを通過するように位置付ける発光プレート位置付け工程と、
該レーザー光線発振器から発振され該発光プレートに設けられたピンホールを通過して該チャックテーブルの保持面に保持された反射鏡に照射されたレーザー光線の反射光を該発光プレートで捉え、該発光プレートにおける反射光によって発光した位置と該発光プレートに設けられたピンホールとのズレを検出するズレ確認工程と、を含む、
ことを特徴とするレーザー加工装置における光路確認方法が提供される。
【0008】
上記発光プレートは、厚紙に蛍光塗料を塗布して形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるレーザー加工装置における光路確認方法は、チャックテーブルの保持面に反射鏡を保持し、ピンホールが設けられた発光プレートをレーザー光線発振器が発振したレーザー光線の光路にレーザー光線がピンホールを通過するように位置付け、レーザー光線発振器から発振され発光プレートに設けられたピンホールを通過してチャックテーブルの保持面に保持された反射鏡に照射されたレーザー光線の反射光を発光プレートで捉え、発光プレートにおける反射光によって発光した位置と発光プレートに設けられたピンホールとのズレを検出するので、発光プレートが上記従来用いられている蛍光ガラス板のようにレーザー光線の光軸に垂直に位置付けられていない場合でもレーザー光線はピンホールを通過するため、反射光による発光点とピンホールとのズレを精密に検出することができる。また、発光プレートにはピンホールが設けられているので、発光プレートの厚みにバラツキがあってもレーザー光線はピンホールを通過するため、レーザー光線が屈折することによる不具合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明によるレーザー加工装置における光路確認方法が実施されるレーザー加工装置のブロック構成図。
【図2】本発明によるレーザー加工装置における光路確認方法に用いる反射鏡の斜視図。
【図3】本発明によるレーザー加工装置における光路確認方法に用いる発光プレートの斜視図。
【図4】本発明によるレーザー加工装置における光路確認方法におけるズレ確認工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明によるレーザー加工装置における光路確認方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0012】
図1には、本発明によるレーザー加工装置における光路確認方法が実施されるレーザー加工装置のブロック構成図が示されている。図1に示すレーザー加工装置1は、被加工物を保持するチャックテーブル2と、該チャックテーブル2に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段3と、を具備している。チャックテーブル2は、上面に被加工物を保持する保持面21を備え、該保持面21上に載置された被加工物を吸引保持するように構成されている。上記レーザー光線照射手段3は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振器4と、該レーザー光線発振器4が発振したレーザー光線を伝送する光学伝送手段5と、該光学伝送手段5によって伝送されたレーザー光線を集光してチャックテーブル2に保持された被加工物に照射する集光器6とを具備している。レーザー光線発振器4は、例えば波長が355nmであるレーザー光線LBを発振するYVO4レーザー発振器或いはYAGレーザー発振器からなっている。なお、レーザー光線発振器4から発振されるレーザー光線LBの直径は、図示の実施形態においては1mmに設定されている。上記集光器6は、レーザー光線発振器4から発振され光学伝送手段5を介して伝送されたレーザー光線LBをチャックテーブル2の保持面21に向けて方向変換する方向変換ミラー61と、該方向変換ミラー61によって方向変換されたレーザー光線LBを集光する集光レンズ62を具備している。
【0013】
以上のように構成されたレーザー加工装置1は、レーザー光線照射手段3の集光器6から照射されるレーザー光線LBがチャックテーブル2の保持面21に対して垂直となる必要がある。このため、レーザー加工装置の組み立て完了時やメンテナンス時等においては、レーザー光線照射手段の集光器から照射されるレーザー光線がチャックテーブルの保持面に対して垂直であるか否かを確認する光路確認作業を実施している。以下、光路確認方法について説明する。
【0014】
光路確認方法を実施するには、図2に示す反射鏡7と図3に示す発光プレート8を用意する。反射鏡7は、図示の実施形態においては上面および下面が互いに平行な円盤状に形成され、上面が反射面となっている。発光プレート8は、厚紙に蛍光塗料が塗布されて形成され、中央部にピンホール81が設けられている。このピンホール81は、図示の実施形態においては直径が0.5mmに設定されている。このような発光プレート8を構成する素材としては、株式会社ササガワが製造販売する「ケイコーカード」(商品名)を用いることができる。
【0015】
上述した反射鏡7および発光プレート8を用いて光路確認方法を実施するには、先ず、図1に示すようにチャックテーブル2の保持面21上に反射鏡7を載置し、図示しない吸引手段を作動することによりチャックテーブル2の保持面21上に反射鏡7を吸引保持する(反射鏡保持工程)。
【0016】
次に、発光プレート8を図1において2点鎖線で示すようにレーザー光線発振器4と光学伝送手段5とを結ぶ光路に配置する。このとき、レーザー光線発振器4から発振されたレーザー光線LBがピンホール81を通過するように位置付ける(発光プレート位置付け工程)。
【0017】
上述したように反射鏡7および発光プレート8を所定の位置にセットし、レーザー光線発振器4からレーザー光線LBを発振する。なお、レーザー光線発振器4から発振されるレーザー光線LBは、図示の実施形態においては平均出力が0.05Wに設定されている。レーザー光線発振器4から発振されたレーザー光線LBは、発光プレート8に設けられたピンホール81を通過し、光学伝送手段5を介して集光器6に伝送される。このようにして集光器6に伝送されレーザー光線LBは、方向変換ミラー61によって方向変換され集光レンズ62によって集光されてチャックテーブル2の保持面21上に保持された反射鏡7の上面(反射面)に照射される。反射鏡7の上面(反射面)に照射されたレーザー光線LBは反射鏡7の上面(反射面)で反射され、反射光LBaが集光レンズ62、方向変換ミラー61および光学伝送手段5を介して発光プレート8に向けて導かれる。このようにして発光プレート8に向けて導かれた反射光LBaは、集光器6から照射されるレーザー光線LBがチャックテーブル2の保持面21に対して垂直であれば、発光プレート8に設けられたピンホール81を通過する。しかるに、集光器6から照射されるレーザー光線LBがチャックテーブル2の保持面21に対して垂直でない場合には、反射光LBaは図4に示すようにピンホール81からズレた位置(A)(発光点)で発光プレート8を発光せしめる。このように反射光LBaによって発光された発光点(A)のピンホール81からのズレを検出する(ズレ確認工程)。このとき、発光プレート8として上記「ケイコーカード」(商品名)を用いることにより、レーザー光線発振器4から発振されたレーザー光線LBが発光プレート8に設けられたピンホール81を通過する際の入射側における周りの色と、反射光による発光点(A)の色が異なるので、上記ズレを明確に確認することができる。このように、図示の実施形態においては反射光LBaを捉える発光プレート8はレーザー光線発振器4から発振されたレーザー光線LBを通過させるピンホール81が設けられているので、上記従来用いられている蛍光ガラス板のようにレーザー光線LBの光軸に垂直に位置付けられていない場合でもレーザー光線LBはピンホール81を通過するため、反射光による発光点(A)とピンホール81とのズレを精密に検出することができる。また、発光プレート8にはピンホール81が設けられているので、発光プレート8の厚みにバラツキがあってもレーザー光線LBはピンホール81を通過するため、レーザー光線が屈折することによる不具合を解消することができる。
【0018】
以上のようにして、反射光LBaによって発光された位置(A)のピンホール81からのズレを検出したならば、このズレを補正し発光点(A)をピンホール81と一致させるための光路調整作業を実施する。この光路調整は、方向変換ミラー61の取り付け角度、集光器6またはレーザー光線発振器4の取り付け位置或いは光学伝送手段5の構成要素を調整することにより実施する。このとき、発光プレート8として上記「ケイコーカード」(商品名)を用いることにより、上述したようにレーザー光線発振器4から発振されたレーザー光線LBが発光プレート8に設けられたピンホール81を通過する際の入射側における周りの色と、反射光による発光点(A)の色が異なるので、精密に調整することができる。
【符号の説明】
【0019】
1:レーザー加工装置
2:チャックテーブル
3:レーザー光線照射手段
4:レーザー光線発振器
5:光学伝送手段
6:集光器
61:方向変換ミラー
62:集光レンズ
7:反射鏡
8:発光プレート
81:ピンホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段とを具備し、該レーザー光線照射手段はレーザー光線を発振するレーザー光線発振器と、該レーザー光線発振器が発振したレーザー光線を伝送する光学伝送手段と、該光学伝送手段によって伝送されたレーザー光線を集光して該チャックテーブルに保持された被加工物に照射する集光器とを具備している、レーザー加工装置における光路確認方法であって、
該チャックテーブルの保持面に反射鏡を保持する反射鏡保持工程と、
ピンホールが設けられた発光プレートを該レーザー光線発振器が発振したレーザー光線の光路にレーザー光線がピンホールを通過するように位置付ける発光プレート位置付け工程と、
該レーザー光線発振器から発振され該発光プレートに設けられたピンホールを通過して該チャックテーブルの保持面に保持された反射鏡に照射されたレーザー光線の反射光を該発光プレートで捉え、該発光プレートにおける反射光によって発光した位置と該発光プレートに設けられたピンホールとのズレを検出するズレ確認工程と、を含む、
ことを特徴とするレーザー加工装置における光路確認方法。
【請求項2】
該発光プレートは、厚紙に蛍光塗料を塗布して形成されている、請求項1記載のレーザー加工装置における光路確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−94832(P2013−94832A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241286(P2011−241286)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】