説明

レーザー取付装置及びそれを用いた光ピックアップ装置

【課題】レーザー光の調整作業を容易とするレーザー取付装置およびそれを備えた光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】本発明のレーザー取付装置10は、LDパッケージ12とそれを収納するLDホルダ14から成り、LDパッケージ12の側面に当接するLDホルダ14の第1内壁18を傾斜面としている。この様にすることで、LDホルダ14に収納された発光チップ24から出射されるレーザー光が光軸16から偏っても、傾斜面である第1内壁18でLDパッケージ12の向きが補正されることにより、レーザー光の進行方向が光軸16側に補正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光の輝度分布の調整を簡易化するレーザー取付装置及びそれを用いた光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザー取付装置の一実施例として、図6に示す構造が知られている。図示の如く、レーザー取付装置のベース141には光軸調整機構部142が配置される。光軸調整機構部142は、固定座143と可動座144とから構成される。固定座143には開口領域145が形成され、開口領域145の内側面は、光学系の光軸146に対して同心状に球面加工される。一方、可動座144の外周面も同様に、光学系の光軸146に対して同心状に球面加工される。可動座144の基準面147に密接するようにLDパッケージ148が配置され、可動座144は、固定座143の開口領域145内に嵌合される。そして、光軸調整機器149により、可動座144の位置を調整することで、LDパッケージ148から出射されるレーザー光の出射方向と光学系の光軸146とが調整される。同様に、可動座144の位置調整によりレーザー光の対物レンズ(図示せず)上での輝度分布のずれも調整される。尚、光軸調整や輝度分布調整をした後は、接着剤150により、固定座143と可動座144との位置関係が固定される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−81693号公報(第3−4頁、第1−2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したように、従来のレーザー取付装置では、レーザー取付装置のベースに光軸調整機構部142が固定された後、個々のレーザー取付装置に対して可動座144の位置調整を行うことで、レーザー光の光軸の調整や輝度分布の調整が行われる。そのため、レーザー取付装置の取り付け作業やその調整作業の時間を短縮し難く、作業効率が悪く、量産性に適さず、歩留まりの向上が実現し難いという問題がある。
【0005】
また、レーザー光の調整作業では、固定座143に対して可動座144を微妙に動かす必要があり、作業員の熟練した技術が必要となり、作業員の熟練度に応じて、その調整精度にばらつきが発生するという問題がある。
【0006】
本発明はこの様な問題点を鑑みて成されたものであり、本発明の目的は、レーザー光の調整作業を容易とするレーザー取付装置およびそれを備えた光ピックアップ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光ピックアップ装置のハウジングに組み込まれてレーザー光を照射するレーザー取付装置であり、前記レーザー光を出射する発光チップが内蔵されると共に、前記レーザー光が出射される方向に沿う第1側面および第2側面を有するLDパッケージと、前記LDパッケージが収納される枠体形状を呈し、前記光ピックアップ装置の光軸に対して傾斜する第1内壁と第2内壁とを有するLDホルダと、を備え、前記LDパッケージの前記第1側面を、前記LDホルダの前記第1内壁または前記第2内壁の何れか一方に当接させ、前記LDパッケージの前記第2側面を、前記LDホルダの前記第1内壁または前記第2内壁の何れか他方から離間させることを特徴とする。
【0008】
更に本発明は、光情報記録媒体にレーザー光を照射し、前記光情報記録媒体で反射する前記レーザー光を検出する光ピックアップ装置であり、上記構成のレーザー取付装置が組み込まれたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、LDホルダの傾斜する内壁にLDパッケージの側面を密着させるのみで、LDパッケージから出射されるレーザー光を、光ピックアップ装置の光軸側に簡易に補正することが出来る。従って、背景技術の如き熟練作業員による高度な調整作業が不要となるので、レーザー取付装置および光ピックアップ装置の製造にかかる費用が低減される。
【0010】
また、本発明では、LDホルダの表裏を逆転することにより、レーザー光の進行方向が補正される方向を逆とすることが出来る。従って、1つの種類のLDホルダにより、一方向にレーザー光が偏るLDパッケージを補正可能であるし、更に他方向にレーザー光が偏るLDパッケージも補正可能である。
【0011】
更に本発明では、LDホルダの側面に、LDホルダの表裏を判別可能な認識マークを設けている。この様にすることで、LDホルダにLDパッケージを組み込む際に、表裏の状態を適切に判断することが可能となるので、この表裏を誤ることによる歩溜まりの低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(A)は本発明の実施の形態におけるレーザー取付装置を示す斜視図であり、(B)はこのレーザー取付装置が組み込まれるハウジングを示す斜視図である。
【図2】本発明のレーザー取付装置が組み込まれた光ピックアップ装置の光学系を示す概略図である。
【図3】(A)は本発明の実施の形態における光ピックアップ装置のレーザー光の輝度分布を説明する図であり、(B)は輝度分布のばらつきを説明する図である。
【図4】本発明のレーザー取付装置の構成を詳細に示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は側面図であり、(C)はLDホルダを示す平面図であり、(D)はLDパッケージを示す平面図である。
【図5】LDホルダを表裏逆にした状態のレーザー取付装置を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は側面図であり、(C)は表裏逆にした状態のLDホルダの平面図である。
【図6】従来の実施の形態におけるレーザー取付装置を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施の形態であるレーザー取付装置及びそれを用いた光ピックアップ装置について説明する。
【0014】
先ず、図1を参照して、本形態のレーザー取付装置10およびそれが組み込まれる光ピックアップ装置のハウジング42を説明する。図1(A)はレーザー取付装置10の外観を示す斜視図であり、図1(B)はこのレーザー取付装置10が組み込まれるハウジング42の一部を示す斜視図である。
【0015】
図1(A)を参照して、レーザー取付装置10は、主に、LDホルダ14と、LDホルダ14内に固着されるLDパッケージ12とから構成される。図示していないが、LDパッケージ12には、LDやLDD(LD Driver)等が配置され、LDDからLDへ電流が流れることで、LDからレーザー光が出射される。詳細は後述するが、LDから出射されたレーザー光が、光情報記録媒体上に集光し、反射することで、光情報記録媒体へのデータの書き込みや光情報記録媒体からのデータの読み取りが行われる。そのため、レーザー光の出射方向は、光ピックアップ装置の光軸に対して高精度に一致するように、LDホルダ14はハウジング42(図1(B)参照)に配置される。尚、ハウジング42は、図2に示す光学系部品を内蔵するパッケージのことを言い、例えば、LDホルダ14はハウジング42内やハウジング42側面等に固着される。
【0016】
以下の説明では、紙面X軸方向はハウジング42の幅方向(LDホルダ14の幅方向)とし、紙面Y軸方向はハウジング42の高さ方向(LDホルダ14の高さ方向)とし、紙面Z軸方向はハウジング42の奥行き方向(LDホルダ14の奥行き方向)とする。尚、紙面Z軸方向は、光ピックアップ装置の光軸方向と一致する。
【0017】
本形態では、LDホルダ内から出射されるレーザー光の進行方向は光軸と概略的に一致しているが、更に高精度に両者を一致させるために、LDホルダ14の内部でLDパッケージ12の向きを補正している。この補正を実現する具体的な構成は、図4および図5を参照して詳述する。
【0018】
LDホルダ14の外形形状は直方体形状であり、側面43、49は光軸方向に対してXY方向の基準面となり、光軸方向に対して垂直面となる。また、側面51、45は、光軸方向に対してYZ方向の基準面となり、側面53、47は、光軸に対してXZ方向の基準面となる。そして、対向する側面43、49を貫通するように、LDホルダ14には、LDパッケージ12に即した形状の内部空間が形成されている。
【0019】
図1(B)に示す如く、ハウジング42のLDホルダ14の取り付け領域には、LDホルダ14の外形形状に合わせた凹部50が形成される。凹部50内の側面44は、光軸方向に対してXY方向の基準面となり、側面46は、光軸方向に対してYZ方向の基準面となる。側面44には、LDパッケージ12の貫通孔に合わせて開口部48が形成され、一点鎖線にて示すように開口部48の中心軸が光ピックアップ装置の光軸方向と一致する。そして、LDホルダ14内から出射されたレーザー光は、開口部48を介して一点鎖線にて示す光軸上を進む。
【0020】
ここで、LDホルダ14のハウジング42への取り付け方法について説明する。先ず、LDホルダ14の側面43とハウジング42の側面44とを当接させて、光ピックアップ装置の光軸方向に対して垂直面(XY方向の基準面)を固定する。尚、この時、LDホルダ14の側面47がハウジング42の側面に当接し、XZ方向の基準面も固定される。次に、LDホルダ14をX軸方向へ移動させ、LDホルダ14の側面45とハウジング42の側面46とを当接させ、YZ方向の基準面が固定される。その後、LDホルダ14をZ軸方向へ水平移動させるように、ハウジング42に対してLDホルダ14を圧入することで、LDホルダ14はハウジング42に固着される。この簡易な取り付け作業により、LDホルダ14内から出射されるレーザー光の出射方向が、光ピックアップ装置の光軸に対して一致するように、LDホルダ14及びハウジング42が設計される。
【0021】
図2を参照して、上記した構成のレーザー取付装置10が組み込まれた光ピックアップ装置74の光学系を説明する。尚、図示した一点鎖線が、光ピックアップ装置の光軸を示し、下記に説明する光学系部品は、光軸に対して位置精度良く配置される。
【0022】
第1LDホルダ14Aは、第1波長(青紫色(青色)波長帯400nm〜420nm(例えば405nm))のレーザー光を出射する。第2LDホルダ14Bは、第2波長(赤色波長帯645nm〜675nm(例えば、655nm))のレーザー光及び第3波長(赤外波長帯765nm〜805nm(例えば、785nm))のレーザー光を出射する。尚、第1LDホルダ14A及び第2LDホルダ14Bには、前述したLDホルダ14の構造が採用される。ここで、1つのLDホルダのみを用意し、このLDホルダから上記した3つのレーザー光を射出させても良い。
【0023】
なお、上記した第1波長のレーザー光は例えば、BD(Blu-ray Disc)規格またはHD−DVD(High-Definition Digital Versatile Disc)規格のディスク(光情報記録媒体)の読み出しあるいは書き込みに用いられ、第2波長のレーザー光はDVD(Digital Versatile Disc)規格のディスクに用いられ、第3波長のレーザー光はCD(Compact Disc)規格のディスクに用いられる。
【0024】
第1回折格子72は、第1LDホルダ14Aと偏光ビームスプリッタ66との間に配置され、第1LDホルダ14Aから出射されるレーザー光が入射する。そして、第1回折格子72は、入射するレーザー光を0次光、+1次回折光、−1次回折光に分離する回折格子と、入射するレーザー光を偏光ビームスプリッタ66の偏光面に対してS偏光の直線偏光光に変換する1/2波長板とから構成される。同様に、第2回折格子70は、第2LDホルダ14Bと偏光ビームスプリッタ66との間に配置され、回折格子と1/2波長板とから構成される。尚、第2回折格子70では、入射するレーザー光を偏光ビームスプリッタ66の偏光面に対してP偏光の直線偏光光に変換する。
【0025】
カップリングレンズ68は、第2回折格子70と偏光ビームスプリッタ66との間に配置され、入射するレーザー光の発散角度を変換する。カップリングレンズ68を用いることで、複数のレーザー光に対してコリメートレンズ58と対物レンズ62を共用することができる。
【0026】
偏光ビームスプリッタ66は、第1回折格子72から入射するS偏光のレーザー光を反射し、カップリングレンズ68から入射するP偏光のレーザー光を透過する。
【0027】
ハーフミラー56は、偏光ビームスプリッタ66で反射されて入射するS偏光のレーザー光及び偏光ビームスプリッタ66を透過して入射するP偏光のレーザー光をコリメートレンズ58の方向へ反射する。また、ハーフミラー56は、コリメートレンズ58から入射するレーザー光の戻り光を透過する。そして、コリメートレンズ58は、ハーフミラー56から入射するレーザー光を平行光に変換する。コリメートレンズ58によって変換されたレーザー光の平行光は、1/4波長板60に入射する。
【0028】
1/4波長板60は、コリメートレンズ58から入射するレーザー光を直線偏光光から円偏光光に変換する。また、1/4波長板60は、対物レンズ62から入射するレーザー光の戻り光を円偏光光から直線偏光光に変換する。そして、対物レンズ62は、1/4波長板60から入射するレーザー光を夫々が対応する光情報記録媒体64の信号記録層に集光させる。
【0029】
光情報記録媒体64において反射したレーザー光の戻り光は、対物レンズ62によって平行光に変換されて1/4波長板60に入射し、1/4波長板60によって円偏光光から直線偏光光に変換される。そして、直線偏光光となったレーザー光の戻り光は、コリメートレンズ58を透過してハーフミラー56を透過し、検出レンズ54に入射する。
【0030】
検出レンズ54は、レーザー光の戻り光を光検出器52上に集光させるとともに、レーザー光の戻り光に非点収差を発生させてフォーカスエラー信号を生成する。そして、光検出器52は、受光したレーザー光の戻り光を光電変換する。
【0031】
以上が光ピックアップ装置74の構成である。
【0032】
図3を参照して、LDパッケージ12から照射されるレーザー光の特性を説明する。
【0033】
図3(A)を参照して、LDパッケージ12内から出射されるレーザー光は、一点鎖線にて示す光ピックアップ装置の光軸上を進むが、その輝度中心が光軸に対して若干傾く場合がある。その理由として、LDパッケージ12内にLDを固着する際の接着材の厚みやその接着材の偏り等が考えられる。そして、LDパッケージ12内から出射されたレーザー光は、対物レンズ62にて光情報記録媒体64上に集光されるため、レーザー光の輝度中心のばらつきによりその集光精度が悪化する場合もある。尚、レーザー光の輝度中心が光軸に対してずれる角度をr(θ)とし、光軸に垂直なXY平面にてX軸方向の+方向と−方向を用いて以下に説明する。
【0034】
図3(B)に示すように、先ず、LDパッケージ12内から出射されるレーザー光の輝度中心のばらつきが−1.5°≦r(θ)≦1.5°の範囲にある場合には、集光精度に影響は少なく許容誤差範囲内として、そのLDパッケージ12は良品として選別される。次に、許容範囲内として選別されたLDパッケージ12は、光軸に対して−方向に輝度中心が偏る(例えば、−1.5°≦r(θ)<0°)LDパッケージ12(第1LDパッケージ)と、光軸に対して+方向に輝度中心が偏る(例えば、0°≦r(θ)≦1.5°)のLDパッケージ12(第2LDパッケージ)とに区別される。
【0035】
第1LDパッケージと第2LDパッケージとでは、レーザー光が偏る方向が逆であるので、レーザー光が補正されるべき方向も逆方向となる。本形態では、第1LDパッケージと第2LDパッケージとで、このLDパッケージを収納するLDホルダを表裏逆の状態とすることにより、両者から射出されるレーザー光を光軸側に補正している。
【0036】
図4を参照して、上記した第1LDパッケージをLDホルダ14に収納する構造を示す。図4(A)はレーザー取付装置10の構成を示す平面図であり、図4(B)は図4(A)に示すレーザー取付装置10を+Z方向に見た図であり、図4(C)はLDホルダ14を示す平面図であり、図4(D)はLDパッケージ12を示す平面図である。
【0037】
図4(A)を参照して、本形態に係るレーザー取付装置10は、発光チップ24(LD)がパッケージ化されたLDパッケージ12と、このLDパッケージ12が内蔵されるLDホルダ14とを備えている。
【0038】
LDパッケージ12は、所謂リードフレーム型のパッケージであり、レーザー光を出射する発光チップ24がLDパッケージ12内のリードフレームに接続されており、このリードフレームの一部が端子部22として紙面上の下方に導出されている。発光チップ24は所定形状に射出成形された樹脂から成るケース材により保護されており、発光チップ24からレーザー光が放出される面は封止されずに解放された状態と成っている。ここで、発光チップ24は、透明樹脂により樹脂封止されても良いし、レーザー光が出射される端面がガラス板により封止されても良い。
【0039】
図4(A)を参照して明らかなように、LDパッケージ12の中心軸は、光ピックアップ装置の光軸16とは一致せずに傾斜した状態となっている。このことにより、発光チップ24から射出されるレーザー光が光軸16よりも−側に偏っても、このレーザー光の進行方向を+側(光軸16側)に補正することが出来る。
【0040】
図4(D)を参照して、LDパッケージ12は、発光チップ24が載置される先端部付近に、第1側面30と第2側面32とを有する。第1側面30および第2側面32は、LDパッケージ12の中心線(光軸)に対して平行に形成されている。LDパッケージ12がLDホルダ14に収納される際には、第1側面30が、LDパッケージ12の内壁に密着する。そして、LDパッケージ12の内壁に密着されないLDパッケージ12の側面は、LDホルダ14の内壁から離間する。
【0041】
第1当接部34および第2当接部36は、第1側面30および第2側面32と直角な側面であり、LDパッケージ12をLDホルダ14に収納させる際に、LDパッケージ12をZ軸に対して所定の位置に固定させるために用いられる。具体的には、LDパッケージ12の第1当接部34は、図4(C)に示す、LDホルダ14の第1当接部26に当接する。
【0042】
LDパッケージ12に内蔵される発光チップ24からは、1つの周波数帯のみのレーザー光が出射されても良いし、波長が異なる複数の種類のレーザー光が出射されても良い。発光チップ24から射出されるレーザー光の周波数帯は上記した通りである。
【0043】
更にまた、LDパッケージ12から波長が異なる複数のレーザー光が出射される場合は、複数個の発光源を有する1つの発光チップ24を内蔵させても良いし、複数個の発光チップ24がLDパッケージ12に内蔵されても良い。一例として、上記した第1レーザー光を出射する第1発光チップと、第2レーザー光および第3レーザー光を出射する第2発光チップとをLDパッケージ12に内蔵させても良い。
【0044】
図4(C)を参照して、LDホルダ14は、マグネシウム等の金属又はエポキシ樹脂等の樹脂を射出成形等することで枠体形状に成形したものであり、LDパッケージ12を保持した状態で、光ピックアップ装置のハウジングに固着される(図1参照)。ここで、LDホルダ14がハウジングに取り付けられる構造は、図4に示す場合でも、図5を参照して後述する場合でも同様である。
【0045】
LDホルダ14の内側には、第1内壁18および第2内壁20が設けられており、これらの内壁は収納されるLDパッケージ12の外側側面と当接する。一般的なLDホルダ14では、LDホルダ14の中心線を光軸16と一致させた場合、これらの内壁は光軸16に対して平行となるが、本形態では第1内壁18および第2内壁20は光軸16に対して傾斜している。
【0046】
具体的には、第1内壁18が平面視で光軸に対して傾斜する角度θ1は、例えば0.5°である。そして、図4(A)に示すように、LDパッケージの第1側面30が、LDホルダ14の第1内壁18に当接することにより、発光チップ24から出射されるレーザー光の進行方向が+側に0.5°調整される。結果的に、LDパッケージ12のレーザー光の輝度中心のばらつきが−1.0°≦r(θ)<0.5°の範囲に調整される。このことから、良品として選別される許容誤差の範囲(−1.5≦r(θ)≦1.5)よりも更に高精度の範囲で、LDパッケージ12がLDホルダ14内へと固着される。
【0047】
尚、紙面上では、特徴明示の為に、第1内壁18の傾斜を目視で明らかな程度としているが、実際のレーザー取付装置に設けられる第1内壁18は、目視で確認することは困難な程度の傾斜面と成っている。
【0048】
第2内壁20も同様に傾斜面とされており、第2内壁20が光軸16から傾斜する角度θ2は、上記したθ1と同様である。
【0049】
第1内壁18と第2内壁20とは、両者の間に存在する点を回転中心として、180°回転対称の関係にある。また、両者は点対称の関係にもある。この様にすることで、LDホルダ14の表裏を逆転することにより、第1内壁18および第2内壁20が光軸16に対して傾斜する方向が逆となる。ひいては、内蔵されるLDパッケージ12が傾く方向を逆とすることが出来る。この事項の詳細は図5を参照して後述する。
【0050】
図4(B)を参照して、−Z側のLDホルダ14の端面には、第1認識マーク38および第2認識マーク40が設けられている。これらマークは、LDホルダ14を射出成形で形成する際に、突起部または凹状部として設けても良いし、目視確認可能な塗料でマークが構成されても良い。更にはレーザー照射により認識マークが設けられても良い。
【0051】
第1認識マーク38は、LDホルダ14の端面の右側上端部付近に設けられており、「−」の形状を呈している。一方、第2認識マーク40は、第1認識マーク38と対角の位置に配置されており、「+」の形状を呈している。この様にLDホルダ14の端面に認識マークを設けることにより、認識マークを確認するのみでLDホルダ14の表裏の状態を知ることが可能となる。即ち、図4(C)に示す第1内壁18が傾斜する方向を、LDホルダ14の端面に設けた第1認識マーク38または第2認識マーク40を確認することで、容易に知ることが出来る。従って、LDホルダ14の取付方向の誤りが少なくなり、歩溜まりが向上する。
【0052】
ここで、第1認識マーク38および第2認識マーク40の形状としては、上記した記号や文字等の他にも、マークの違いを認識可能な記号等が用いられても良い。
【0053】
図4(A)を参照して、LDパッケージ12に内蔵される発光チップ24の発光源と、LDホルダ14の+X側の端部との距離L10は所定の長さに設定されており、この長さはLDホルダ14の表裏を逆にした状態(図5に示す状態)でも同様である。この様にすることで、LDホルダ14の表裏の状態に関係なく、発光チップ24の発光点を光軸16上に配置することが出来る。
【0054】
図5を参照して、光軸に対して+方向にレーザー光が偏る第2LDパッケージを、表裏を逆転させたLDホルダ14に収納する構成を説明する。図5(A)はこの状態のレーザー取付装置10を示す平面図であり、図5(B)は図5(A)の状態のレーザー取付装置10を+Z方向に見た図であり、図5(C)は表裏が逆転された状態のLDホルダ14を示す平面図である。ここでは、発光チップ24から+側に偏って出射されるレーザー光を−X側に補正するための構造が開示される。
【0055】
図5(A)を参照して、LDホルダ14を表裏逆転することにより、LDホルダ14の右側に第2内壁20が配置され、左側に第1内壁18が配置されることとなる。更に、LDホルダ14の第1内壁18および第2内壁20が傾斜する方向も図4(A)の場合と逆になる。一方、LDパッケージ12の表裏の状態はそのままである。
【0056】
この状態でLDパッケージ12をLDホルダ14に収納し、LDホルダ14の第2内壁20に、LDパッケージ12との第1側面30を当接させて固定する。この様にすると、LDパッケージ12の中心軸は、光軸16に対して傾いた状態でLDホルダ14内部に固着される。
【0057】
一方、LDパッケージ12の第2側面32は、LDホルダ14の第1内壁18とは接触せずに、両者の間には間隙が存在している。この間劇が存在することにより、LDホルダ14が表状態であっても裏状態であっても、LDホルダ14の内部でのLDパッケージ12の傾斜が許容される。
【0058】
この図に示すように、LDホルダ14の第2内壁20を利用して、LDパッケージ12を−X側に傾斜させることにより、レーザー光の輝度中心が−X側に補正される。
【0059】
また、LDホルダ14の表裏を逆にした状態であっても、LDパッケージ12に内蔵された発光チップ24の発光点とLDホルダ14の右端端部との距離L11は、図4(A)に示した場合(L10)と同様である。即ち、この図に示す場合であっても、発光チップ24からレーザー光が射出される発光点は、光軸16上に配置される。
【0060】
図5(B)を参照して、LDホルダ14の表裏を逆転させることにより、第2認識マーク40が紙面上における右上端部付近に配置され、第1認識マーク38が左下端部付近に配置されている。この様に、LDホルダ14の表裏を逆転させることにより、第1認識マーク38と第2認識マーク40との位置関係は入れ替わっている。
【0061】
図5(C)を参照して、第1内壁18および第2内壁20が傾斜する方向も逆方向とされている。また、第1内壁18および第2内壁20が光軸に対して傾斜する角度θ3およびθ4は、図1に示したθ1およびθ2と同様であり、発光チップ24から出射されるレーザー光が進行する角度は、この角度で補正される。
【0062】
上記構成により、+方向のずれ(例えば、0°≦r(θ)≦1.5°)を有するLDパッケージ12は、LDホルダ14の第2内壁20に当接することにより、LDホルダ14の内部で−方向に傾いた状態にてLDホルダ14内に接着固定される。そして、傾きが−方向へ0.5°調整され、LDパッケージ12のレーザー光の輝度中心のばらつきが−0.5≦r(θ)≦1.0の範囲に調整される。その結果、良品として選別される許容誤差の範囲(−1.5°≦r(θ)≦1.5°)よりも更に高精度の範囲にて、LDパッケージ12がLDホルダ14内で固着される。
【0063】
本形態の特徴は、図4(A)を参照して、LDパッケージ12を収納するLDホルダ14の内部に、光軸16に対して傾斜する第1内壁18を設けた点にある。
【0064】
具体的には、LDパッケージ12に内蔵された発光チップ24から出射されるレーザー光は、輝度分布が光軸16に対してずれている。ここでは、発光チップ24から出射されるレーザー光の輝度分布中心は、紙面上にて光軸16の左側(−方向)にずれている。従って、仮に、LDホルダ14の第1内壁18および第2内壁20を光軸16に対して平行に形成し、これらの内壁にLDパッケージ12を嵌合させると、LDパッケージ12の中心線は光軸16と一致するものの、発光チップ24から出射されるレーザー光の進行方向は光軸16から左側に若干ずれることとなる。
【0065】
そこで本形態では、LDホルダ14の第1内壁18を傾斜面とし、この傾斜する第1内壁18に、LDパッケージ12の第1側面30を当接させている。この様にすることで、LDパッケージ12全体が、LDホルダ14の第1内壁18と同様に傾斜する。従って、LDパッケージ12に内蔵された発光チップ24から出射されるレーザー光の進行方向が、光軸16側に調整されることとなる。
【0066】
更に本発明の特徴は、図4(A)を参照して、LDホルダ14の第1内壁18と第2内壁20とが離間する幅を、LDホルダ14に収納されるLDパッケージ12の幅よりも大きくしたことにある。この様にすることで、LDパッケージ12がLDホルダ14の内部で傾斜することが可能となる。
【0067】
更なる本発明の特徴は、発光チップ24から出射されるレーザー光の進行方向の偏りに応じて、LDパッケージ12の表裏を逆転してレーザー取付装置10に用いることにある。具体的には、図4(A)を参照して、発光チップ24から出射されるレーザー光が−X方向に偏る場合には、LDパッケージ12の第1内壁18が右側(+側)に傾斜する様にLDホルダ14を配置する。そして、この状態でLDホルダ14にLDパッケージ12を収納させ、LDホルダ14の第1内壁18に、LDパッケージ12の第1側面30を当接させて固着する。このことにより、LDパッケージ12が+X方向に所定角度で傾斜することとなり、発光チップ24から出射されるレーザー光の進行方向が光軸16側に補正される。
【0068】
一方、図5(A)を参照して、発光チップ24から出射されるレーザー光が+X方向に偏って出射される場合は、LDパッケージ12の表裏を図4(A)に示す状態と逆にして載置し、LDホルダ14の第2内壁20に、LDパッケージ12の第1側面30を密着させる。この様にすることで、LDパッケージ12が−X方向に傾斜し、発光チップ24から出射されるレーザー光が光軸16側に補正される。
【0069】
上記したように、発光チップ24から発光されるレーザー光は、+X側または−X側に偏って出射されるが、内部に所定角度で傾斜する内壁を備えたLDホルダ14を、表状態または裏状態で使い分けることにより、1つの種類のLDホルダ14で両方向に偏るレーザー光の進行方向を補正することが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
10 レーザー取付装置
12 LDパッケージ
14 LDホルダ
14A 第1LDホルダ
14B 第2LDホルダ
16 光軸
18 第1内壁
20 第2内壁
22 端子部
24 発光チップ
26 第1当接部
28 第2当接部
30 第1側面
32 第2側面
34 第1当接部
36 第2当接部
38 第1認識マーク
40 第2認識マーク
42 ハウジング
43 側面
44 側面
45 側面
46 側面
47 側面
48 開口部
49 側面
50 凹部
51 側面
52 光検出器
53 側面
54 検出レンズ
56 ハーフミラー
58 コリメートレンズ
60 1/4波長板
62 対物レンズ
64 光情報記録媒体
66 偏光ビームスプリッタ
68 カップリングレンズ
70 第2回折格子
72 第1回折格子
74 光ピックアップ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ピックアップ装置のハウジングに組み込まれてレーザー光を照射するレーザー取付装置であり、
前記レーザー光を出射する発光チップが内蔵されると共に、前記レーザー光が出射される方向に沿う第1側面および第2側面を有するLDパッケージと、
前記LDパッケージが収納される枠体形状を呈し、前記光ピックアップ装置の光軸に対して傾斜する第1内壁と第2内壁とを有するLDホルダと、を備え、
前記LDパッケージの前記第1側面を、前記LDホルダの前記第1内壁または前記第2内壁の何れか一方に当接させ、
前記LDパッケージの前記第2側面を、前記LDホルダの前記第1内壁または前記第2内壁の何れか他方から離間させることを特徴とするレーザー取付装置。
【請求項2】
前記LDホルダの前記第1内壁および前記第2内壁は、前記光軸に対して実質的に同じ角度で傾斜する傾斜面であることを特徴とする請求項1に記載のレーザー取付装置。
【請求項3】
LDパッケージは、出射されるレーザー光が前記光軸に対して一方側に偏る第1LDパッケージ、または前記レーザー光が前記光軸に対して他方側に偏る第2LDパッケージであり、
前記LDパッケージとして前記第1LDパッケージが採用される場合と、前記LDパッケージとして前記第2LDパッケージが採用される場合とでは、前記LDホルダを表裏逆の状態とすることにより、前記両方の場合にて前記LDパッケージから出射される前記レーザー光の進行方向を、前記光軸に補正することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーザー取付装置。
【請求項4】
前記LDホルダの側面に、前記LDホルダの主面の向きを認識可能な認識マークを設けることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のレーザー取付装置。
【請求項5】
前記認識マークは、前記認識マークが設けられる側面の隅部に設けられた第1認識マークと、前記隅部に対向する他の隅部に設けられると共に前記第1認識マークとは形状が異なる第2認識マークと、を含むことを特徴とする請求項4に記載のレーザー取付装置。
【請求項6】
光情報記録媒体にレーザー光を照射し、前記光情報記録媒体で反射する前記レーザー光を検出する光ピックアップ装置であり、
請求項1から請求項5の何れかに記載された前記レーザー取付装置が組み込まれたことを特徴とする光ピックアップ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−181133(P2011−181133A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42999(P2010−42999)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】