説明

レーザー彫刻用樹脂組成物、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版とその製造方法、及び、レリーフ印刷版とその製版方法

【課題】耐水性に優れ、且つ、レーザー彫刻により発生した彫刻カスのリンス性に優れたレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に好適な、レーザー彫刻用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(A)で表されるフェノール誘導体(A)と、バインダーポリマー(B)と、架橋剤(C)と、を少なくとも含有し、且つ、前記フェノール誘導体(A)の含有率が組成物の全固形分量に対して5質量%以上50質量%以下であるレーザー彫刻用樹脂組成物(一般式(A)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は1価の置換基を表し、R〜Rのうち少なくとも1つは−X−Rで表される構造の1価の置換基である。Xは単結合や−COO−等を表す。Rはアルキル基やアリール基等を表し、これらの基の水素原子以外の構成原子数は1から20である。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー彫刻用樹脂組成物、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版とその製造方法、及び、レリーフ印刷版とその製版方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レリーフ印刷版は、凹凸を有するレリーフ層を有する凸版印刷版であり、このような凹凸を有するレリーフ層は、主成分として、例えば、合成ゴムのようなエラストマー性ポリマー、熱可塑性樹脂などの樹脂、或いは、樹脂と可塑剤との混合物を含有する感光性組成物を含有するレリーフ形成層をパターニングし、凹凸を形成することにより得られる。このようなレリーフ印刷版うち、軟質なレリーフ層を有するものをフレキソ版と称することがある。
【0003】
近年では、走査露光によりレリーフ形成層の製版(パターニング)を行う方法が検討されている。
例えば、レリーフ形成層をレーザーにより直接彫刻し製版する、いわゆる「直彫りCTP方式」が、多く提案されている。直彫りCTP方式は、文字通りレーザーで彫刻することにより、レリーフとなる凹凸を形成する方法で、自由にレリーフ形状を制御することができるという利点がある。このため、抜き文字の如き画像を形成する場合、その領域を他の領域よりも深く彫刻する、或いは、微細網点画像では、印圧に対する抵抗を考慮し、ショルダーをつけた彫刻をする、なども可能である。
【0004】
ところで、一般に、レリーフ形成層には、相溶性、柔軟性付与の観点で、疎水的なカルボン酸エステルやリン酸エステルを可塑剤として利用されてきたが、このような可塑剤を含むことで、レーザー彫刻した際に発生するカスが版に付着し、水やアルカリ処理液ではそのカスを容易に除去することが困難であった。
なお、上記の点を考慮し、レリーフ形成層に、例えば、特許文献1、2に記載のような、酸性基を有する化合物を添加剤として用いることで、彫刻によるカスの除去性(即ち、リンス性)を向上させることは可能であるとは考えられるものの、このような版自体の耐水性が低下してしまうという問題があった。
【0005】
一方、彫刻によるカスの除去性、即ち、リンス性を高める技術としては、例えば、特許文献3に記載のように、疎水性エラストマーバインダー、不活性可塑剤、及び、架橋用の成分を含有するレリーフ形成層が知られている。このレリーフ形成層は、レーザー照射の作用によってはほとんど溶融せず、また、レリーフ形成層の分解生成物の堆積が水又は水性洗浄剤の簡単な処置によって除去されうるため、リンス性に優れることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−249291号公報
【特許文献2】特表2004−514159号公報
【特許文献3】特表2005−534525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記背景技術を鑑み、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の第1の目的は、耐水性に優れ、且つ、レーザー彫刻により発生した彫刻カスのリンス性に優れたレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に好適な、レーザー彫刻用樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、耐水性に優れ、且つ、レーザー彫刻により発生した彫刻カスのリンス性に優れたレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版とその製造方法、更には、該レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を用いたレリーフ印刷版の製版方法とその製版方法により得られたレリーフ印刷版を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、下記一般式(A)で表されるフェノール誘導体(A)と、バインダーポリマー(B)と、架橋剤(C)と、を少なくとも含有し、且つ、前記フェノール誘導体(A)の含有率が組成物の全固形分量に対して5質量%以上50質量%以下であることを特徴とする。
【0009】
【化1】

【0010】
上記一般式(A)中、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、R、R、R、R、及びRのうち少なくとも1つは、−X−Rで表される構造の1価の置換基である。Xは、単結合、−O−、−NR−、−S−、−COO−、−CONR−、−COS−、−OCO−、−NRCO−、−SCO−、−OCONH−、−NR10CONH−、−SCONH−、−SO−、−OSO−、又は−SO−を表す。Rは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、これらの基の水素原子以外の構成原子数は1から20である。R、R、R、及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、これらの基の水素原子以外の構成原子数は1から20である。
【0011】
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物において、バインダーポリマー(B)のガラス転移温度(Tg)が20℃以上200℃以下であることが好ましい。
また、バインダーポリマー(B)が、架橋剤(C)が有する架橋性基と反応可能な官能基を有することも好ましい態様である。
更に、バインダーポリマー(B)が、ポリビニルアセタール及びその誘導体、並びにアクリル樹脂からなる群より選択される1種以上であることが好ましく、特に、ポリビニルブチラール及びその誘導体から選ばれるポリマーであることが好ましい。
加えて、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、更に、700〜1300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤(D)を含有することが好ましい態様である。
【0012】
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の第1の実施態様は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有することを特徴とする。
また、本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の第2の実施態様は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を架橋した架橋レリーフ形成層を有することを特徴とする。
【0013】
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法は、(i)本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、(ii)前記レリーフ形成層を熱及び光の少なくとも一方により架橋し、架橋レリーフ形成層を形成する架橋工程、を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明のレリーフ印刷版の製版方法は、(i)本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、(ii)前記レリーフ形成層を熱及び光の少なくとも一方により架橋し、架橋レリーフ形成層を形成する架橋工程、並びに、(iii)前記架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻する彫刻工程、を含むことを特徴とする。更に、(iv)前記架橋レリーフ形成層をアルカリ処理液で洗浄するリンス工程を含むことが好ましい。また、(ii)の架橋工程が熱により行われることも好ましい態様である。
【0015】
本発明のレリーフ印刷版は、本発明のレリーフ印刷版の製版方法により製版された、レリーフ層を有するレリーフ印刷版である。
ここで、レリーフ印刷版が有するレリーフ層のショアA硬度は、50°以上90°以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐水性に優れ、且つ、レーザー彫刻により発生した彫刻カスのリンス性に優れたレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に好適な、レーザー彫刻用樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、耐水性に優れ、且つ、レーザー彫刻により発生した彫刻カスのリンス性に優れたレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版とその製造方法、更には、該レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を用いたレリーフ印刷版の製版方法とその製版方法により得られたレリーフ印刷版を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に適用しうるファイバー付き半導体レーザー記録装置を備える製版装置を示す概略構成図(斜視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
<レーザー彫刻用樹脂組成物>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物(以下、単に、「樹脂組成物」と称する場合がある。)は、一般式(A)で表されるフェノール誘導体(A)と、バインダーポリマー(B)と、架橋剤(C)と、を少なくとも含有し、且つ、前記フェノール誘導体(A)の含有率が組成物の全固形分量に対して5質量%以上50質量%以下であるレーザー彫刻用樹脂組成物ことを特徴とする。
【0019】
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、上記の構成を有することから、耐水性に優れ、且つ、レーザー彫刻により発生した彫刻カスのリンス性に優れたレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に好適である。
なお、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、レーザー彫刻が施されるレリーフ印刷版原版のレリーフ形成層の用途以外にも、特に限定なく広範囲に適用することも可能である。例えば、表面に凹凸や開口部を形成する他の材形、例えば、凹版、孔版、スタンプ等、レーザー彫刻により画像形成される各種印刷版や各種成形体の形成に適用することができる。
中でも、適切な支持体上に備えられるレリーフ形成層に適用することが好ましい態様である。
【0020】
なお、本明細書では、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の説明に関し、レーザー彫刻に供する画像形成層としての、表面が平坦な層をレリーフ形成層と称し、これをレーザー彫刻して表面に凹凸を形成した層をレリーフ層と称する。また、レリーフ形成層であっても、該層を架橋した状態のものを架橋レリーフ形成層と称する。
以下、本発明の樹脂組成物を構成する(A)〜(C)の各必須成分、更には、必要に応じて添加されるその他の成分について説明する
【0021】
〔一般式(A)で表されるフェノール誘導体(A)〕
本発明の樹脂組成物は、下記一般式(A)で表されるフェノール誘導体(A)(以下、適宜、「フェノール誘導体(A)」と称する。)を含有する。
【0022】
【化2】

【0023】
上記一般式(A)中、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、R、R、R、R、及びRのうち少なくとも1つは、−X−Rで表される構造の1価の置換基である。Xは、単結合、−O−、−NR−、−S−、−COO−、−CONR−、−COS−、−OCO−、−NRCO−、−SCO−、−OCONH−、−NR10CONH−、−SCONH−、−SO−、−OSO−、又は−SO−を表す。Rは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、これらの基の水素原子以外の構成原子数は1から20である。R、R、R、及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、これらの基の水素原子以外の構成原子数は1から20である。
【0024】
一般式(A)においては、R、R、R、R、及びRのうち少なくとも1つが−X−Rで表される構造の1価の置換基であることを特徴としている。特に、樹脂組成物を構成するその他の成分との相溶性の点から、R、R、R、R、及びRのうち1つ〜3つ(より好ましくは1つ〜2つ)が−X−Rで表される構造の1価の置換基であることが好ましい。
【0025】
−X−Rにおいて、Xは、単結合、−O−、−NR−、−S−、−COO−、−CONR−、−COS−、−OCO−、−NRCO−、−SCO−、−OCONH−、−NR10CONH−、−SCONH−、−SO−、−OSO−、又は−SO−を表すが、中でも、樹脂組成物を構成するその他の成分との相溶性の点から、単結合、−O−、−COO−、−CONR−、−SO−が好ましく、特に、−COO−が好ましい。
【0026】
また、−X−Rにおいて、Rは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、これらの基の水素原子以外の構成原子数は1から20である。中でも、Rとしては、レリーフ形成層の柔軟性の点から、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が好ましく、特に、アルキル基が好ましい。
なお、Rにおけるこれらの基は、更に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよく、この置換基を含めRは水素原子以外の構成原子数は1から20である必要がある。
【0027】
、R、R、及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、これらの基の水素原子以外の構成原子数は1から20である。
中でも、R、R、R、及びR10としては、それぞれ独立に、素材入手性の点から、水素原子、アルキル基、アリール基が好ましく、特に、水素原子、アルキル基が好ましい。
なお、R、R、R、及びR10におけるこれらの基は、更に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよく、この置換基を含めR、R、R、及びR10は水素原子以外の構成原子数は1から20である必要がある。
【0028】
一般式(A)において、R、R、R、R、及びRのうちのいずれかが、−X−Rで表される構造の1価の置換基とは異なる1価の置換基であってもよい。
この場合、−X−Rで表される構造の1価の置換基とは異なる1価の置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0029】
一般式(A)で表されるフェノール誘導体は、以下の態様であることが、樹脂組成物を構成するその他の成分との相溶性の点から好ましい。
即ち、R及びRが、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子であり、R、R、及びRのいずれか1つ又は2つが、−X−Rで表される構造の1価の置換基であり、残りが、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子であり、Xが単結合、−O−、−COO−、−CONR−、又は−SO−であり、Rがアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基である態様が好ましい。
更に、R及びRが、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、又はハロゲン原子であり、R、R、及びRのいずれか1つ又は2つが、−X−Rで表される構造の1価の置換基であり、残りが、水素原子、ヒドロキシル基、又はハロゲン原子であり、Xが−COO−であり、Rがアルキル基である態様がより好ましい。
【0030】
本発明におけるフェノール誘導体(A)において、その分子量は100〜1000が好ましく、140〜700がより好ましく、180〜400が更に好ましい。フェノール誘導体(A)の分子量が100より小さくなると、皮膜中から揮発し易くなり添加効果が低下する場合がある。また、フェノール誘導体(A)の分子量が1000より大きくなると、本発明の樹脂組成物中において他の成分と混ざり難くなる場合がある。
【0031】
また、本発明におけるフェノール誘導体(A)において、その極性ClogPは0以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1以上であることが更に好ましい。このフェノール誘導体(A)のClogPが0.5より小さいと、水溶性が高くなり、皮膜の耐水性が低下する場合がある。
なお、フェノール誘導体(A)の極性「ClogP」の計算方法は以下の通りである。
即ち、DayLight Chemical Information Systems社のPCModelsに組み込まれたCLOGPプログラムを用いて計算した。
【0032】
更に、本発明におけるフェノール誘導体(A)は、樹脂組成物を構成するその他の成分との相溶性の点から、分子内にエチレン性不飽和結合を有さない化合物であることが好ましい。また、同様の観点から、本発明におけるフェノール誘導体(A)は、ベンゼン環に結合する−OHは、1つであることが好ましい。
【0033】
以下、本発明におけるフェノール誘導体(A)の具体例(例示化合物A−1〜A−24)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
【化3】

【0035】
フェノール誘導体(A)の含有量は、本発明の樹脂組成物の全固形分に対して5質量%以上50質量%以下であり、5質量%以下ではリンス性改良効果が無く、50質量%以上ではブリードアウトの発生やレリーフ形成層とした際に強度不足が問題となる。上記の点から、5質量%以上40質量%以下が好ましく、5質量%以上30質量%以下がより好ましい。
【0036】
〔バインダーポリマー(B)〕
本発明の樹脂組成物は、バインダーポリマー(B)(以下、単に、「バインダー」と称する。)を含有する。
バインダーは、本発明の樹脂組成物に含有される高分子成分であり、一般的な高分子化合物を適宜選択し、1種又は2種以上を併用して用いることができる。特に、本発明の樹脂組成物を印刷版原版に適用する際は、レーザー彫刻性の他、インキ受与性、彫刻カス分散性などの種々の性能を考慮して選択することが必要である。
【0037】
本発明においては、バインダーは、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ヒドロキシエチレン単位を含む親水性ポリマー、アクリル樹脂、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどから選択して用いることができる。
本発明で用いられるバインダーの重量平均分子量としては、5,000〜1,000,000であることが好ましく、10,000〜700,000であることが更に好ましく、15,000〜500,000であることが特に好ましい。
【0038】
バインダーとしては、例えば、レーザー彫刻感度の観点からは、露光或いは加熱により熱分解する部分構造を含むポリマーが好ましい。このようなポリマーは、特開2008−163081号公報の段落〔0038〕に記載されているものが好ましく挙げられる。
また、例えば、柔軟で可撓性を有する膜形成が目的とされる場合には、バインダーとして、軟質樹脂や熱可塑性エラストマーが選択される。このようなポリマーは、特開2008−163081号公報の段落〔0039〕〜〔0040〕に詳述されている物が用いられる。
更に、本発明の樹脂組成物を、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層に適用する場合であれば、レリーフ形成層用組成物の調製の容易性、得られたレリーフ印刷版における油性インクに対する耐性向上の観点から、親水性又は親アルコール性ポリマーを使用することが好ましい。親水性ポリマーとしては、特開2008−163081号公報の段落〔0041〕に詳述されているものを使用することができる。
【0039】
本発明におけるバインダーとしては、ガラス転移温度(Tg)が20℃以上のものが、彫刻感度が向上の点から、特に好ましい。このようなガラス転移温度を有するポリマーを、以下、非エラストマーと称する。すなわち、エラストマーとは、一般的に、ガラス転移温度が常温以下のポリマーであるとして学術的に定義されている(科学大辞典 第2版、編者 国際科学振興財団、発行 丸善株式会社、P154参照)。従って、非エラストマーとはガラス転移温度が常温を超える温度であるポリマーを指す。この非エラストマーのガラス転移温度の上限には制限はないが、200℃以下であることが取扱い性の観点から好ましく、25℃以上120℃以下であることがより好ましい。
【0040】
バインダーとして、ガラス転移温度が室温(20℃)以上のポリマーを用いる場合、かかるポリマーは常温ではガラス状態をとるが、このためゴム状態をとる場合に比較して、熱的な分子運動はかなり抑制された状態にある。レーザー彫刻においては、レーザー照射時に、赤外線レーザーが付与する熱に加え、所望により併用される光熱変換剤の機能により発生した熱が、周囲に存在するバインダーに伝達され、これが熱分解、消散して、結果的に彫刻されて凹部が形成される。
非エラストマーを用いた場合、非エラストマーの熱的な分子運動が抑制された状態の中に光熱変換剤が存在すると非エラストマーへの熱伝達と熱分解が効果的に起こるものと考えられ、このような効果によって彫刻感度が更に増大するものと推定される。
【0041】
本発明において、加熱や露光により硬化させ、皮膜の強度を向上させる目的に使用する場合には、バインダーとして、分子内に炭素−炭素不飽和結合をもつポリマーが好ましく用いられる。
主鎖に炭素−炭素不飽和結合を含むポリマーとしては、例えば、SB(ポリスチレン−ポリブタジエン)、SBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)等が挙げられる。
また、側鎖に炭素−炭素不飽和結合をもつポリマーとしては、前述したようなポリマーの骨格の側鎖に、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニルエーテル基のような炭素−炭素不飽和結合が導入されたものが挙げられる。ポリマーの側鎖に炭素−炭素不飽和結合を導入する方法は、(1)重合性基に保護基を結合させてなる重合性基前駆体を有する構造単位をポリマーに共重合させ、保護基を脱離させて重合性基とする方法、(2)水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基などの反応性基を複数有する高分子化合物を作製し、これらの反応性基と反応する基及び炭素−炭素不飽和結合を有する化合物を高分子反応させて導入する方法など、公知方法をとることができる。これらの方法によれば、高分子化合物中への不飽和結合、重合性基の導入量を制御することができる。
【0042】
また、加熱や露光により硬化させ、皮膜の強度を向上させる目的に使用する場合、バインダーとして、ヒドロキシル基(以下、「水酸基」ともいう)、カルボキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物残基、アミノ基、及び−SiR(R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又は1価の有機基を表す。但し、R〜Rのうち少なくとも1つは、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、又はハロゲン原子である。)よりなる群から選ばれた少なくとも1つの基を側鎖に有するポリマーを用いることも好ましい。
このようなポリマーと、上記の基と反応可能な架橋剤(後述する架橋剤(C))とを併用することで、架橋膜を形成することができ、その強度向上が可能となる。
【0043】
バインダーとしては、水酸基(−OH)を有するポリマー(以下、「水酸基含有ポリマー」と称する。)を用いることが、膜強度の点から、特に好ましい。ここで、この水酸基とは、アルコール性水酸基であってもよいし、フェノール性水酸基であってもよい。
水酸基含有ポリマーの骨格としては、特に限定されないが、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ヒドロキシエチレン単位を含む親水性ポリマー、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ノボラック樹脂が好ましい。
【0044】
水酸基含有ポリマーとしてのポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸などのヒドロキシルカルボン酸ユニットからなるポリエステル樹脂を好ましく用いることができる。このようなポリエステル樹脂としては、具体的には、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、乳酸系ポリマー、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(ブチレンコハク酸)、これらの誘導体又は混合物よりなる群から選択されるものが好ましい。
【0045】
水酸基含有ポリマーとして、フェノール類とアルデヒド類を酸性条件下で縮合させた樹脂であるノボラック樹脂を用いることができる。
好ましいノボラック樹脂としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、p−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、o−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、オクチルフェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,o−又はm−/p−,m−/o−,o−/p−混合のいずれでもよい)の混合物とホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂などが挙げられる。
これらのノボラック樹脂は、重量平均分子量が800〜200,000で、数平均分子量が400〜60,000のものが好ましい。
【0046】
本発明における水酸基含有ポリマーとして、水性インキ適性とUVインキ適性を両立しつつ、かつ、彫刻感度が高く皮膜性も良好であるという観点で、ポリビニルアセタール及びその誘導体(その中でも特にポリビニルブチラール(PVB)及びその誘導体)、側鎖に水酸基を有するアクリル樹脂、及び、側鎖に水酸基を有するエポキシ樹脂等が好ましく例示される。
以下、この3種のポリマーについて詳細に説明する。
【0047】
[ポリビニルアセタール及びその誘導体]
ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニルを鹸化して得られる)を環状アセタール化することにより得られる化合物である。また、ポリビニルアセタール誘導体は、前記ポリビニルアセタールを変性させたり、他の共重合成分を加えたりしたものを指す。
ポリビニルアセタール中のアセタール含量(原料の酢酸ビニルモノマーの総モル数を100%とし、アセタール化されるビニルアルコール単位のモル%)は、30%〜90%が好ましく、50%〜85%がより好ましく、55%〜78%が特に好ましい。
ポリビニルアセタール中のビニルアルコール単位としては、原料の酢酸ビニルモノマーの総モル数に対して、10モル%〜70モル%が好ましく、15モル%〜50モル%がより好ましく、22モル%〜45モル%が特に好ましい。
また、ポリビニルアセタールは、その他の成分として、酢酸ビニル単位を有していてもよく、その含量としては0.01〜20モル%が好ましく、0.1〜10モル%が更に好ましい。ポリビニルアセタール誘導体は、更に、その他の共重合単位を有していてもよい。
【0048】
ポリビニルアセタールとしては、ポリビニルブチラール、ポリビニルプロピラール、ポリビニルエチラール、ポリビニルメチラールなどが挙げられる。中でも、ポリビニルブチラール(PVB)が好ましい。
ポリビニルブチラール(PVB)は、通常、ポリビニルアルコールをブチラール化して得られるポリマーである。また、ポリビニルブチラール誘導体を用いてもよい。
ポリビニルブチラール誘導体の例として、水酸基の少なくとも一部をカルボキシル基等の酸基に変性した酸変性PVB、水酸基の一部を(メタ)アクリロイル基に変性した変性PVB、水酸基の少なくとも一部をアミノ基に変性した変性PVB、水酸基の少なくとも一部にエチレングリコールやプロピレングリコール及びこれらの複量体を導入した変性PVB等が挙げられる。
【0049】
ポリビニルアセタール及びその誘導体から選ばれるポリマーの分子量としては、彫刻感度と皮膜性のバランスを保つ観点で、重量平均分子量として5,000〜800,000であることが好ましく、より好ましくは8,000〜500,000である。更に、彫刻カスのリンス性向上の観点からは、50,000〜300,000であることが特に好ましい。
【0050】
以下、ポリビニルアセタールの特に好ましい例として、ポリビニルブチラール(PVB)及びその誘導体を挙げて説明するが、これに限定されない。
PVBとしては、市販品としても入手可能であり、その好ましい具体例としては、アルコール溶解性(特にエタノール溶解性)の観点で、積水化学工業(株)製の「エスレックB」シリーズ、「エスレックK(KS)」シリーズ、電気化学工業(株)製の「デンカブチラール」が好ましい。更に好ましくは、アルコール溶解性(特にエタノール)の観点で積水化学工業(株)製の「エスレックB」シリーズと電気化学工業(株)製の「デンカブチラール」であり、特に好ましくは積水化学工業(株)製の「エスレックB」シリーズでは、「BL−1」、「BL−1H」、「BL−2」、「BL−5」、「BL−S」、「BX−L」、「BM−S」、「BH−S」、電気化学工業(株)製の「デンカブチラール」では「#3000−1」、「#3000−2」、「#3000−4」、「#4000−2」、「#6000−C」、「#6000−EP」、「#6000−CS」、「#6000−AS」である。
PVBを水酸基含有ポリマーとして用いてレリーフ形成層を製膜する際には、溶媒に溶かした溶液をキャストし乾燥させる方法が、膜の表面の平滑性の観点で好ましい。
【0051】
[アクリル樹脂]
水酸基含有ポリマーとして用いることができるアクリル樹脂としては、公知のアクリル単量体を用いて得るアクリル樹脂であって、分子内に水酸基を有するものであれば用いることができる。
水酸基を有するアクリル樹脂の合成に用いられるアクリル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類(メタ)アクリルアミド類であって分子内にヒドロキシル基を有するものが好ましい。この様な単量体の具体例としては例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
また、アクリル樹脂としては、上記水酸基を有するアクリル単量体以外のアクリル単量体を共重合成分として含むこともできる。このようなアクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、アセトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体のモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
更に、ウレタン基やウレア基を有するアクリル単量体を含んで構成される変性アクリル樹脂も好ましく使用することができる。
これらの中でも、水性インキ耐性の観点で、ラウリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、tert−ブチルシクロヘキシルメタクリレートなど脂肪族環状構造を有する(メタ)アクリレート類が特に好ましい。
【0053】
[エポキシ樹脂]
水酸基含有ポリマーとして、水酸基を側鎖に有するエポキシ樹脂を用いることも可能である。好ましい具体例としては、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンの付加物を原料モノマーとして重合して得られるエポキシ樹脂が好ましい。
これらのエポキシ樹脂は、重量平均分子量が800〜200,000で、数平均分子量が400〜60,000のものが好ましい。
【0054】
前述した水酸基含有ポリマーの中でも、本発明の樹脂組成物を用いてレリーフ形成層としたときのリンス性及び耐刷性の観点で、ポリビニルブチラール及びその誘導体が特に好ましい。
本発明における水酸基含有ポリマーに含まれる水酸基(ヒドロキシル基)の含有量は、前記いずれの態様のポリマーにおいても、0.1mmol/g〜15mmol/gであることが好ましく、0.5mmol/g〜7mmol/gであることがより好ましい。
【0055】
本発明の樹脂組成物にはバインダーを1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物におけるバインダーの好ましい含有量は、塗膜の形態保持性と耐水性と彫刻感度をバランスよく満足する観点で、全固形分中、2質量%〜85質量%であることが好ましく、より好ましくは5質量%〜80質量%、特に好ましくは10質量%〜60質量%である。
【0056】
〔架橋剤(C)〕
本発明の樹脂組成物は、架橋剤(C)を含有する。
本発明においては、架橋剤(C)を用いることにより、本発明の樹脂組成物を用いたレリーフ形成層中に架橋構造を形成することができる。
本発明に用いられる架橋剤は、光や熱に起因した化学反応(ラジカル重合反応や酸・塩基を開始種とした架橋反応など)により高分子化してレリーフ形成層を硬化可能であるものであれば特に限定されず用いることができる。
特に、(1)エチレン性不飽和基を有する重合性化合物(以下、単に、「重合性化合物」ともいう。)、(2)−SiR(R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又は1価の有機基を表す。但し、R〜Rのうち少なくとも1つは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、又はハロゲン原子である。)を有する架橋剤、(3)酸無水物残基、イソシアネート基、及びヒドロキシル基よりなる群から選ばれた少なくとも1つの基を複数有する化合物、が好ましく用いられる。
【0057】
[(1)エチレン性不飽和基を有する重合性化合物(重合性化合物)]
本発明において重合性化合物とは、エチレン性不飽和基を少なくとも1個有する化合物のことをいう。エチレン性不飽和基としては、特に限定されないが、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、などが好ましく用いられ、特に(メタ)アクリロイル基が好ましく用いられる。
単官能の重合性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等の重合性化合物が挙げられる。
【0058】
更に、単官能の重合性化合物としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート等のメタクリル酸誘導体、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニル化合物類、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が好ましく用いられる。
【0059】
また、多官能の重合性化合物としては、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラマレート、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド等の多価アルコール化合物又は多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのエステル化合物又はアミド化合物や、特開昭51−37193号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号の各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。更に、日本接着協会誌Vol.20、No.7、300〜308頁(1984年);山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年、大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー社);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品若しくは業界で公知のラジカル重合性又は架橋性のモノマー、オリゴマーを用いることができる。
【0060】
本発明の樹脂組成物を用いて形成されるレリーフ形成層は、膜中に架橋構造を有することが好ましい態様であることから、多官能の重合性化合物が好ましく使用される。
これら重合性化合物の分子量は、特に限定されないが、50〜3000であることが好ましく、70〜2500であることが好ましく、100〜2,000であることが好ましい。
【0061】
架橋剤(C)として重合性化合物を用いる場合、本発明の樹脂組成物中の重合性化合物の総含有量は、架橋膜の柔軟性や脆性の観点から、不揮発性成分に対して、10質量%〜60質量%が好ましく、15質量%〜45質量%の範囲がより好ましい。
【0062】
なお、(1)重合性化合物を架橋剤として用いる場合、バインダー(B)としては、分子内に炭素−炭素不飽和結合をもつポリマーを用いることが、架橋構造を形成する上で好ましいが、他のバインダーポリマーを用いても構わない。
【0063】
[(2)−SiRを有する化合物]
本発明において、架橋性基として−SiRを少なくとも有する化合物を用いることもできる。
ここで、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又は1価の有機基(例えば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基等が挙げられる。)を表す。但し、R〜Rのうち少なくとも1つは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、又はハロゲン原子である。
特に、R〜Rのうちの少なくとも2つがアルコキシ基又はハロゲン原子であることが好ましく、R〜Rはそれぞれ独立にアルコキシ基又はハロゲン原子であることが特に好ましい。また、R〜Rのうちの少なくとも2つが、化合物の取り扱いやすさの観点からは、アルコキシ基であることが好ましい。
【0064】
〜Rにおけるアルコキシ基としては、リンス性と耐刷性の観点から、炭素数1〜30のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1〜15のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数1〜5のアルコキシ基であることが更に好ましい。
また、R〜Rにおけるハロゲン原子としては、F原子、Cl原子、Br原子、I原子が挙げられ、合成のしやすさ及び安定性の観点で、Cl原子及びBr原子が好ましく挙げられ、Cl原子がより好ましく挙げられる。
これらの中でも、R〜Rの全てがメトキシ基又はエトキシ基であることが好ましい。
【0065】
また、−SiRを2以上有する化合物も好ましく用いられる。特に、−SiRを2個〜6個有する化合物が好ましく用いられる。
−SiRを2以上有する化合物における2つ以上の−SiRを連結する基としては、2価以上の有機基が挙げられ、彫刻感度が高い観点から、ヘテロ原子(N、S、O)を含む2価以上の有機基であることが好ましく、S原子を含む2価以上の有機基であることがより好ましい。
−SiRを有する化合物としては、メトキシ基又はエトキシ基がSi原子に結合した基(つまり、−SiRのR〜Rの全てがメトキシ基又はエトキシ基である)を分子内に2個有し、且つ、これらのSi原子が、ヘテロ原子、特に好ましくはS原子を含む、アルキレン基を介して結合している化合物が好適である。
【0066】
−SiRを有する化合物としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0067】
本発明に用いられる−SiRを有する化合物の具体例としては、下記式で示す化合物が好ましいものとして挙げられるが、本発明はこれらの化合物に制限されるものではない。
【0068】
【化4】

【0069】
上記各式中、Rは以下の構造から選択される部分構造を表す。分子内に複数のR及びRが存在する場合、これらは互いに同じでも異なっていてもよく、合成適性上は、同一であることが好ましい。なお、下記構造中、Etはエチル基を表し、Meはメチル基を表す。
【0070】
【化5】

【0071】
【化6】

【0072】
上記各式中、Rは以下に示す部分構造を表す。Rは前記したのと同義である。分子内に複数のR及びRが存在する場合、これらは互いに同じでも異なっていてもよく、合成適性上は、同一であることが好ましい。
【0073】
【化7】

【0074】
【化8】

【0075】
【化9】

【0076】
【化10】

【0077】
【化11】

【0078】
−SiRを有する化合物としては、適宜合成した化合物を用いても構わないが、市販されているものを用いることがコストの面から好ましい。これらの化合物は、シラン化合物やシランカップリング剤として信越化学工業(株)や東レ・ダウコーニング(株)などから購入可能である。
【0079】
−SiRを有する化合物を架橋剤(C)として用いる場合、これと反応可能な官能基(例えば、ヒドロキシル基)を有するポリマーを、バインダー(B)として用いることが好ましいが、他のバインダーポリマーを用いても構わない。
【0080】
[(3)酸無水物残基、イソシアネート基、及びヒドロキシル基よりなる群から選ばれた少なくとも1つの基を複数有する化合物]
まず、(3−1)酸無水物残基を複数有する化合物について説明する。
本発明に用いられる酸無水物残基を複数有する化合物としては、架橋性基として酸無水物残基を2以上有する化合物をいい、特に、カルボン酸無水物残基を2以上有する化合物が好ましい。
ここで、本発明における「酸無水物残基」とは、同一分子内に存在する二つの酸の脱水縮合にて生成した酸無水物構造のことをいう。
本発明に用いられる酸無水物残基を2以上有する化合物としては、四塩基酸二無水物が好ましく挙げられる。
四塩基酸二無水物の具体例としては、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピリジンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族或いは芳香族四カルボン酸二無水物等が挙げられる。また、カルボン酸無水物残基を3つ有する化合物としては、メリット酸三無水物等が挙げられる。
以下に、本発明に好適に用いられる酸無水物残基を有する化合物の具体例(1)〜(28)を挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0081】
【化12】

【0082】
【化13】

【0083】
【化14】



【0084】
【化15】

【0085】
また、本発明に用いられる酸無水物残基を複数有する化合物において、市販されているものとしては、新日本理化(株)製リカシッドTMGE−S、リカシッドTMGE−100、リカシッドTMGE−200、リカシッドTMGE−500、リカシッドTMGE−600、及びリカシッドTMCA−C等が例示できる。
【0086】
(3−2)イソシアネート基を複数有する化合物
本発明に用いられる酸無水物残基を複数有する化合物としては、架橋性基としてイソシアネート基を2以上有する化合物をいう。
イソシアネート基を2以上有する化合物としては、2以上のイソシアネート基を有する以外に特に制限はないが、芳香族ジイソシアネート化合物、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物、イソシアヌレート化合物、ジオールとジイソシアネートとの反応物であるジイソシアネート化合物等が例示できる。
【0087】
イソシアネート基を2以上有する化合物としては、下記式(I−2)で表されるジイソシアネート化合物を好ましく例示できる。
OCN−X−NCO (I−1)
式(I−1)中、Xは2価の有機基を表す。
【0088】
前記式(I−1)で表されるジイソシアネート化合物で好ましいものは、下記式(I−2)で表されるジイソシアネート化合物である。
OCN−L−NCO (I−2)
式(I−2)中、Lは置換基を有していてもよい2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を表す。必要に応じ、L中はイソシアネート基と反応しない他の構造や官能基、例えばエステル結合、ウレタン結合、アミド結合、及びウレイド基のうち1つ以上有していてもよい。
【0089】
前記式(I−2)で示されるジイソシアネート化合物としては、具体的には以下に示すものが含まれる。
即ち、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートの二量体、2,6−トリレンジレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等のような脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等のような脂環族ジイソシアネート化合物;1,3−ブチレングリコール1モルとトリレンジイソシアネート2モルとの付加体等のようなジオールとジイソシアネートとの反応物であるジイソシアネート化合物;等が挙げられる。
【0090】
また、本発明においてはトリイソシアネート化合物を用いることもでき、このトリイソシアネート化合物としては、例えば、下記に示すものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0091】
【化16】



【0092】
【化17】



【0093】
(3−3)ヒドロキシル基を複数有する化合物
本発明に用いられるヒドロキシル基を複数有する化合物としては、架橋性基としてヒドロキシル基を2以上有する化合物をいう。
ヒドロキシル基を2以上有する化合物としては、2以上のヒドロキシル基を有する以外に特に制限はないが、脂肪族ポリオール化合物、脂環族ポリオール化合物、芳香族ポリオール化合物等が例示できる。
ヒドロキシル基を2以上有する化合物におけるヒドロキシル基は、アルコール性ヒドロキシル基であっても、フェノール性ヒドロキシル基であってもよい。
【0094】
ヒドロキシル基を2以上有する化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−ビス−β−ヒドロキシエトキシシクロヘキサン、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加体、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加体、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体、ヒドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、p−キシリレングリコール、ジヒドロキシエチルスルホン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−2,4−トリレンジカルバメート、2,4−トリレンビス(2−ヒドロキシエチルカルバミド)、ビス(2−ヒドロキシエチル)−m−キシリレンジカルバメート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソフタレート、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、cis−2−ブテン−1,4−ジオール、trans−2−ブテン−1,4−ジオール、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、4−メチルカテコール、4−t−ブチルカテコール、4−アセチルカテコール、3−メトキシカテコール、4−フェニルカテコール、4−メチルレゾルシン、4−エチルレゾルシン、4−tert−ブチルレゾルシン、4−ヘキシルレゾルシン、4−クロロレゾルシン、4−ベンジルレゾルシン、4−アセチルレゾルシン、4−カルボメトキシレゾルシン、2−メチルレゾルシン、5−メチルレゾルシン、tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン、テトラメチルハイドロキノン、テトラクロロハイドロキノン、メチルカルボアミノハイドロキノン、メチルウレイドハイドロキノン、メチルチオハイドロキノン、ベンゾノルボルネン−3,6−ジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、3,3’−ジクロロビスフェノールS、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−チオジフェノール、2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン、3,4−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,4−ビス(2−(p−ヒドロキシフェニル)プロピル)ベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルアミン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシアントラキノン、2−ヒドロキシベンジルアルコール、4−ヒドロキシベンジルアルコール、2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジルアルコール、4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジルアルコール、4−ヒドロキシフェネチルアルコール、2−ヒドロキシエチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−ヒドロキシエチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、レゾルシンモノ−2−ヒドロキシエチルエーテル、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ジ−1,2−プロピレングリコール、トリ−1,2−プロピレングリコール、テトラ−1,2−プロピレングリコール、ヘキサ−1,2−プロピレングリコール、ジ−1,3−プロピレングリコール、トリ−1,3−プロピレングリコール、テトラ−1,3−プロピレングリコール、ジ−1,3−ブチレングリコール、トリ−1,3−ブチレングリコール、ヘキサ−1,3−ブチレングリコール等が例示できる。
【0095】
架橋剤(C)として、(3−3)酸無水物残基、イソシアネート基、及びヒドロキシル基よりなる群から選ばれた少なくとも1つの基を複数有する化合物を用いる場合、これらの基と反応可能な官能基(例えば、カルボキシル基、アミノ基など)を有するポリマーをバインダー(B)として用いることが架橋構造の形成の上で好ましいが、他のバインダーポリマーを用いても構わない。
【0096】
前述したような各種の化合物は、前述したバインダー(B)と反応することによりレリーフ形成層中に架橋構造を形成してもよく、又は、これらの化合物同士で反応することにより架橋構造を形成してもよく、これら両方の反応により架橋構造を形成してもよい。
これら架橋剤の分子量は、特に限定されないが、50〜3000であることが好ましく、70〜2500であることが好ましく、100〜2,000であることが好ましい。
【0097】
本発明の樹脂組成物中の架橋剤(C)の総含有量は、架橋膜の柔軟性や脆性の観点から、不揮発性成分に対して、10質量%〜60質量%が好ましく、15質量%〜45質量%の範囲がより好ましい。
【0098】
本発明の樹脂組成物は、(A)〜(C)の必須成分の他、以下に示すような成分を含有してもよい。
【0099】
〔光熱変換剤(D)〕
本発明の樹脂組成物は、光熱変換剤(D)を含有することが好ましい。
光熱変換剤は、レーザーの光を吸収し発熱することで、本発明の樹脂組成物の硬化物の熱分解を促進すると考えられる。ゆえに、彫刻に用いるレーザー波長の光を吸収する光熱変換剤を選択することが好ましい。
【0100】
波長700nm〜1,300nmの赤外線を発するレーザー(YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー、面発光レーザー等)を光源としてレーザー彫刻に用いる場合には、本発明の樹脂組成物はこれに対応して、700nm〜1,300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤を含有することが好ましい。
本発明における光熱変換剤としては、種々の染料又は顔料が用いられる。
【0101】
光熱変換剤のうち、染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、700nm〜1,300nmに極大吸収波長を有するものが挙げられ、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、ジインモニウム化合物、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。特に、ヘプタメチンシアニン色素等のシアニン系色素、ペンタメチンオキソノール色素等のオキソノール系色素、フタロシアニン系色素が好ましく用いられる。例えば、特開2008−63554号公報の段落〔0124〕〜〔0137〕に記載の染料を挙げることができる。
【0102】
本発明において使用される光熱変換剤のうち、顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0103】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0104】
カーボンブラックは、組成物中における分散性などが安定である限り、ASTMによる分類のほか、用途(例えば、カラー用、ゴム用、乾電池用など)の如何にかかわらずいずれも使用可能である。カーボンブラックには、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラックなどが含まれる。なお、カーボンブラックなどの黒色着色剤は、分散を容易にするため、必要に応じて分散剤を用い、予めニトロセルロースやバインダーなどに分散させたカラーチップやカラーペーストとして使用することができ、このようなチップやペーストは市販品として容易に入手できる。
【0105】
本発明においては、比較的低い比表面積及び比較的低いDBP吸収を有するカーボンブラックや比表面積の大きい微細化されたカーボンブラックまでを使用することも可能である。好適なカーボンブラックの例は、Printex(登録商標)U、Printex(登録商標)A、又は、Spezialschwarz(登録商標)4(Degussa社製)を含む。
【0106】
本発明に用いることができるカーボンブラックとしては、光熱変換により発生した熱を周囲のポリマー等に効率よく伝えることで彫刻感度が向上するという観点で、比表面積が少なくとも150m/g及びDBP数が少なくとも150ml/100gである、伝導性カーボンブラックが好ましい。
【0107】
この比表面積は、好ましくは少なくとも250m/g、特に好ましくは少なくとも500m/gである。DBP数は、好ましくは少なくとも200m/g、特に好ましくは少なくとも250ml/100gである。上述したカーボンブラックは酸性の又は塩基性のカーボンブラックであってよい。カーボンブラックは、好ましくは塩基性のカーボンブラックである。異なるバインダーの混合物も当然に、使用され得る。
【0108】
約1,500m/gにまで及ぶ比表面積及び約550ml/100gにまで及ぶDBP数を有する適当な伝導性カーボンブラックが、例えば、Ketjenblack(登録商標)EC300J、Ketjenblack(登録商標)EC600J(Akzoより)、Prinrex(登録商標)XE(Degussa社製)又はBlack Pearls(登録商標)2000(Cabot社製)、ケッチェンブラック(ライオン(株)製)の名称で、商業的に入手可能である。
【0109】
本発明の樹脂組成物中おける光熱変換剤の含有量は、その分子固有の分子吸光係数の大きさにより大きく異なるが、該樹脂組成物の固形分全質量に対し、0.01質量%〜20質量%であることが好ましく、0.05質量%〜10質量%であることがより好ましく、0.1質量%〜5質量%であることが更に好ましい。
【0110】
〔その他の成分〕
[重合開始剤]
本発明の樹脂組成物において、架橋剤(C)として重合性化合物を用いる場合には、重合開始剤を含有することが好ましい。
重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用することができる。以下、好ましい重合開始剤であるラジカル重合開始剤について詳述するが、本発明はこれらの記述により制限を受けるものではない。
【0111】
本発明において、好ましいラジカル重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(l)アゾ系化合物等が挙げられる。以下に、上記(a)〜(l)の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0112】
本発明においては、彫刻感度と、レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に適用した際にはレリーフエッジ形状を良好とするといった観点から、(c)有機過酸化物及び(l)アゾ系化合物がより好ましく、(c)有機過酸化物が特に好ましい。
【0113】
前記(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、及び(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物としては、特開2008−63554号公報の段落〔0074〕〜〔0118〕に挙げられている化合物を好ましく用いることができる。
【0114】
重合開始剤としては、光重合開始剤と熱重合開始剤に大別することができる。本発明では、架橋度を向上させる観点から、熱重合開始剤が好ましく用いられる。熱重合開始剤としては、(c)有機過酸化物及び(l)アゾ系化合物が好ましく用いられる。特に、以下に示す化合物が好ましい。
【0115】
(c)有機過酸化物
本発明に用いうるラジカル重合開始剤として好ましい(c)有機過酸化物としては、3,3’4,4’−テトラ−(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(tert−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(tert−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(tert−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−tert−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0116】
(l)アゾ系化合物
本発明に用いうるラジカル重合開始剤として好ましい(l)アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロピオニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等を挙げることができる。
【0117】
本発明における重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用することも可能である。
重合開始剤は、本発明の樹脂組成物の全固形分に対し、好ましくは0.01質量%〜10質量%、より好ましくは0.1質量%〜3質量%の割合で添加することができる。
【0118】
[アルコール交換反応触媒]
本発明の樹脂組成物に、架橋剤(C)として前述の「−SiRを有する化合物」などを使用する場合、架橋剤(C)とバインダー(B)との反応を促進するため、更に、アルコール交換反応触媒を含有することが好ましい。
アルコール交換反応触媒としては、一般に用いられる反応触媒であれば、限定なく適用できる。
以下、代表的なアルコール交換反応触媒である、酸又は塩基性触媒、及び、金属錯体触媒について順次説明する。
【0119】
−酸又は塩基性触媒−
触媒としては、酸又は塩基性化合物をそのまま用いるか、或いは水又は有機溶剤などの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒と称する)を用いる。溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。
酸性触媒又は塩基性触媒の種類は特に限定されないが、具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素又は置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、リン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)などのアミン類などが挙げられる。層中でのアルコール交換反応を速やかに進行させる観点で、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ピリジニウム p−トルエンスルホネート、リン酸、ホスホン酸、酢酸が好ましく、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸が特に好ましい。
【0120】
−金属錯体触媒−
本発明においてアルコール交換反応触媒として用いられる金属錯体触媒は、好ましくは、周期律表の2、4、5、及び13族よりなる群から選ばれる金属元素とβ−ジケトン(アセチルアセトンなどが好ましい)、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、及び、エノール性活性水素化合物よりなる群から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素化合物から構成されるものである。
更に、構成金属元素の中では、Mg,Ca,St,Baなどの2族元素、Ti,Zrなどの4族元素、並びに、V,Nb及びTaなどの5族元素、Al,Gaなどの13族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でも、Zr、Al又はTiから得られる錯体が優れており、好ましく、特にオルトチタン酸エチルなどが好ましく例示できる。
これらは水系塗布液での安定性、及び、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が特に好ましい。
【0121】
本発明の樹脂組成物には、アルコール交換反応触媒を1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。樹脂組成物におけるアルコール交換反応触媒の含有量は、バインダー(B)(水酸基含有ポリマー)に対して、0.01質量%〜20質量%であることが好ましく、0.1質量%〜10質量%であることがより好ましい。
【0122】
[その他の添加剤]
本発明の樹脂組成物は、可塑剤を含有することが好ましい。
可塑剤は、本発明の樹脂組成物により形成された皮膜(レリーフ形成層)を柔軟化する作用を有するものであり、バインダー(B)に対して相溶性のよいものである必要がある。
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート等や、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)が好ましく用いられる。
【0123】
また、本発明の樹脂組成物は、彫刻感度向上のための添加剤として、ニトロセルロースや高熱伝導性物質を加えることがより好ましい。ニトロセルロースは自己反応性化合物であるため、レーザー彫刻時、自身が発熱し、共存する親水性ポリマー等のバインダー(B)の熱分解をアシストする。その結果、彫刻感度が向上すると推定される。高熱伝導性物質は、熱伝達を補助する目的で添加され、熱伝導性物質としては、金属粒子等の無機化合物、導電性ポリマー等の有機化合物が挙げられる。金属粒子としては、粒径がマイクロメートルオーダーから数ナノメートルオーダーの、金微粒子、銀微粒子、銅微粒子が好ましい導電性ポリマーとしては、特に共役ポリマーが好ましく、具体的には、ポリアニリン、ポリチオフェンが挙げられる。
【0124】
更に、本発明の樹脂組成物の着色を目的として、染料又は顔料等の着色剤を添加してもよい。これにより、画像部の視認性や、画像濃度測定機適性といった性質を向上させることができる。
更に、本発明の樹脂組成物の硬化皮膜の物性を改良するために、充填剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
【0125】
また、本発明の樹脂組成物は、溶剤を含有していてもよい。
溶剤としては、揮発しやすい低分子アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコ−ルモノメチルエーテル)等が好ましく例示できる。なお、樹脂組成物の固形分量は、溶剤などの揮発性成分を除いた量である。
【0126】
<レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版>
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の第1の実施態様は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有する態様である。
また、本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の第2の実施態様は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を架橋した架橋レリーフ形成層を有する。
上記の2つの実施態様から明らかなように、本発明において「レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版(以下、単に「レリーフ印刷版原版」と称する。)」とは、レーザー彫刻用樹脂組成物からなる架橋性を有するレリーフ形成層が、架橋される前の状態、及び、光又は熱により硬化された状態の2つの状態であることをいう。
本発明において「レリーフ形成層」とは、架橋される前の状態の層をいい、すなわち、本発明の樹脂組成物からなる層であり、必要に応じ、乾燥が行われていてもよい。
また、本発明において「架橋レリーフ形成層」とは、前記レリーフ形成層を架橋した層をいう。前記架橋は、熱及び光の少なくとも一方により行われることが好ましい。
架橋レリーフ形成層を有するレーザー彫刻用印刷版原版をレーザー彫刻することにより「レリーフ印刷版」が作製される。
また、本発明において「レリーフ層」とは、レリーフ印刷版におけるレーザーにより彫刻された層、すなわち、レーザー彫刻後の前記架橋レリーフ形成層をいう。
【0127】
前記レリーフ形成層は、支持体上に設けられることが好ましい。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、必要により更に、支持体とレリーフ形成層との間に接着層を、また、レリーフ形成層上にスリップコート層、保護フィルムを有していてもよい。
【0128】
〔レリーフ形成層〕
レリーフ形成層は、本発明の樹脂組成物からなる層であり、光及び熱の少なくとも一方により硬化する層、すなわち、架橋性を有する層であることが好ましい。
本発明のレリーフ印刷版原版によるレリーフ印刷版の製版方法としては、レリーフ形成層を架橋させ、次いで、レーザー彫刻することによりレリーフ層を形成することでレリーフ印刷版を製造する製造方法であることが好ましい。レリーフ形成層を架橋することにより、印刷時におけるレリーフ層の摩耗を防ぐことができ、また、レーザー彫刻後にシャープな形状のレリーフ層を有するレリーフ印刷版を得ることができる。
なお、レリーフ形成層は、本発明の樹脂組成物を用い、これをシート状又はスリーブ状に成形することで形成することができる。
【0129】
〔支持体〕
本発明のレリーフ印刷版原版に用いることができる支持体について説明する。
本発明のレリーフ印刷版原版に支持体に使用する素材は、特に限定されないが、寸法安定性の高いものが好ましく使用され、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアクリロニトリル(PAN))やポリ塩化ビニルなどのプラスチック樹脂、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ガラスファイバーで補強されたプラスチック樹脂(エポキシ樹脂やフェノール樹脂など)が挙げられる。支持体としては、PETフィルムやスチール基板が好ましく用いられる。支持体の形態は、レリーフ形成層がシート状であるかスリーブ状であるかによって決定される。
また、架橋性の樹脂組成物を塗布し、裏面(レーザー彫刻を行う面と反対面であり、円筒状のものも含む。)から熱及び光の少なくとも一方により硬化させて作製されたレリーフ印刷版原版においては、硬化したレーザー彫刻用樹脂組成物の裏面側が支持体として機能するため、必ずしも支持体は必須ではない。
【0130】
〔接着層〕
レリーフ形成層と支持体の間には、両層間の接着力を強化する目的で接着層を設けてもよい。接着層に用いることができる材料(接着剤)としては、例えば、I.Skeist編、「Handbook of Adhesives」、第2版(1977)に記載のものを用いることができる。
【0131】
〔保護フィルム、スリップコート層〕
レリーフ形成層表面又は架橋レリーフ形成層表面への傷や凹み防止の目的で、レリーフ形成層表面又は架橋レリーフ形成層表面に保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムの厚さは、25μm〜500μmが好ましく、50μm〜200μmがより好ましい。
保護フィルムは、例えば、PETのようなポリエステル系フィルム、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)のようなポリオレフィン系フィルムを用いることができる。またフィルムの表面はマット化されていてもよい。保護フィルムは、剥離可能であることが好ましい。
【0132】
保護フィルムが剥離不可能な場合や、逆にレリーフ形成層に接着しにくい場合には、両層間にスリップコート層を設けてもよい。スリップコート層に使用される材料は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分鹸化ポリビニルアルコール、ヒドロシキアルキルセルロース、アルキルセルロース、ポリアミド樹脂など、水に溶解又は分散可能で、粘着性の少ない樹脂を主成分とすることが好ましい。
【0133】
<レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法>
次に、本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法について説明する。
本発明のレリーフ印刷版原版の製造方法は、(i)本発明の樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、(ii)レリーフ形成層を熱及び光の少なくとも一方によりで架橋し、架橋レリーフ形成層を形成する架橋工程、を含むことを特徴とする。
以下、(i)層形成工程及び(ii)架橋工程について説明する。
【0134】
〔(i)層形成工程〕
本発明のレリーフ印刷版の製版方法は、まず、本発明の樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程を含む。
レリーフ形成層の形成方法としては、本発明の樹脂組成物をレリーフ形成層用塗布液として調製し、必要に応じて、このレリーフ形成層用塗布液から溶剤を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法や、本発明の樹脂組成物をレリーフ形成層用塗布液として調製し、このレリーフ形成層用塗布液を支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して溶媒を除去する方法が好ましく例示できる。
レリーフ形成層用塗布液は、例えば、前述したフェノール誘導体(A)架橋剤(C)、バインダー(B)、及び、任意成分として、光熱変換剤(D)、可塑剤を適当な溶媒に溶解させることによって製造できる。溶媒成分のほとんどは、レリーフ印刷版原版を製造する段階で除去する必要があるので、溶媒としては、揮発しやすい低分子アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコ−ルモノメチルエーテル)等を用い、かつ温度を調整するなどして溶媒の全添加量をできるだけ少なく抑えることが好ましい。
【0135】
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層の厚さは、架橋の前後において、0.05mm以上10mm以下が好ましく、0.05mm以上7mm以下がより好ましく、0.05mm以上3mm以下が更に好ましい。
【0136】
[(ii)架橋工程]
続いて、本発明のレリーフ印刷版の製版方法では、前述の(i)層形成工程にて形成されたレリーフ形成層を熱及び光の少なくとも一方によりで架橋し、架橋レリーフ形成層を形成する架橋工程を含む。
また、ここでいう「架橋」とは、熱及び光の少なくとも一方によりレリーフ形成層が硬化する反応であれば特に限定されず、架橋剤(C)とバインダー(B)とが反応することによりレリーフ形成層中に架橋構造を形成してもよく、又は、架橋剤同士が反応することにより架橋構造を形成してもよく、これら両方の反応により架橋構造を形成してもよい。
【0137】
レリーフ形成層の架橋に用いられる光の照射は、レリーフ形成層全面に行うことが好ましい。
光としては、可視光、紫外光又は電子線が挙げられるが、紫外光が最も好ましい。レリーフ形成層の支持体側を裏面とすれば、表面に光を照射するだけでもよいが、支持体が光を透過する透明なフィルムならば、更に裏面からも光を照射することが好ましい。表面からの照射は、保護フィルムが存在する場合、これを設けたまま行ってもよいし、保護フィルムを剥離した後に行ってもよい。酸素の存在下において架橋反応が阻害される恐れがある場合は、レリーフ形成層に塩化ビニルシートを被せて真空引きした上で、光の照射を行ってもよい。
熱により架橋を行うための加熱手段としては、印刷版原版を熱風オーブンや遠赤外オーブン内で所定時間加熱する方法や、加熱したロールに所定時間接する方法が挙げられる。
また、光照射と加熱とを同時に、又は、順次行ってもよい。
【0138】
架橋工程におけるレリーフ形成層の架橋方法としては、レリーフ形成層を表面から内部まで均一に硬化(架橋)可能という観点で、熱による架橋の方が好ましい。
レリーフ形成層を架橋することで、第1にレーザー彫刻後形成されるレリーフがシャープになり、第2にレーザー彫刻の際に発生する彫刻カスの粘着性が抑制されるという利点がある。
【0139】
[その他の工程]
本発明のレリーフ印刷版原版の製造方法においては、必要に応じて、レリーフ形成層の上に保護フィルムをラミネートする工程を有していてもよい。このラミネートは、加熱したカレンダーロールなどで保護フィルムとレリーフ形成層を圧着することや、表面に少量の溶媒を含浸させたレリーフ形成層に保護フィルムを密着させることよって行うことができる。保護フィルムを用いる場合には、まず、保護フィルム上にレリーフ形成層を積層し、次いで、支持体をラミネートする方法を採ってもよい。
また、本発明のレリーフ印刷版原版の製造方法においては、必要に応じて、支持体とレリーフ形成層との間に接着層を形成する工程を有していてもよい。接着層を設ける場合は、接着層を塗布した支持体を用いることで対応できる。
更に、本発明のレリーフ印刷版原版の製造方法においては、必要に応じて、レリーフ形成層と保護フィルムとの間にスリップコート層を形成する工程を有していてもよい。スリップコート層を設ける場合は、スリップコート層を塗布した保護フィルムを用いることで対応できる。
【0140】
<レリーフ印刷版及びその製造方法>
本発明のレリーフ印刷版の製版方法は、(i)本発明の樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、(ii)レリーフ形成層を熱及び光の少なくとも一方により架橋し、架橋レリーフ形成層を形成する架橋工程、並びに、(iii)記架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻する彫刻工程、を含むことを特徴とする。
本発明のレリーフ印刷版は、本発明の樹脂組成物からなるレリーフ形成層を架橋し、得られた架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻して得られたレリーフ層を有するレリーフ印刷版であり、本発明のレリーフ印刷版の製版方法により製版されたレリーフ印刷版である。
本発明のレリーフ印刷版の製版方法における(i)層形成工程及び(ii)架橋工程は、前述の本発明のレリーフ印刷版原版の製造方法における(i)層形成工程及び(ii)架橋工程と同義であり、好ましい範囲も同様である。そのため、以下に、(iii)彫刻工程についてのみ詳述する。
【0141】
〔(iii)彫刻工程〕
本発明のレリーフ印刷版の製版方法は、(ii)架橋工程により形成された架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻する彫刻工程を含む。つまり、彫刻工程は、(ii)架橋工程で架橋された架橋レリーフ形成層を有する本発明のレリーフ印刷版原版を、レーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程である。具体的には、架橋された架橋レリーフ形成層に対して、所望の画像に対応したレーザー光を照射して彫刻を行うことによりレリーフ層を形成することが好ましい。より好ましくは、所望の画像のデジタルデータを元にコンピューターでレーザーヘッドを制御し、架橋レリーフ形成層に対して走査照射する工程が挙げられる。
この彫刻工程には、赤外線レーザーが好ましく用いられる。赤外線レーザーが照射されると、架橋レリーフ形成層中の分子が分子振動し、熱が発生する。赤外線レーザーとして炭酸ガスレーザーやYAGレーザーのような高出力のレーザーを用いると、レーザー照射部分に大量の熱が発生し、架橋レリーフ形成層中の分子は分子切断又はイオン化されて選択的な除去、すなわち、彫刻がなされる。レーザー彫刻の利点は、構造を3次元的に制御することができる点である。例えば、微細な網点を印刷する部分は、浅く又はショルダーをつけて彫刻することで、印圧でレリーフが転倒しないようにすることができ、細かい抜き文字を印刷する溝の部分は深く彫刻することで、溝にインキが埋まりにくくなり、抜き文字つぶれを抑制することが可能となる。
中でも、光熱変換剤の吸収波長に対応した赤外線レーザーで彫刻する場合には、より高感度で架橋レリーフ形成層の選択的な除去が可能となり、シャープな画像を有するレリーフ層が得られる。
【0142】
彫刻工程に用いられる赤外レーザーとしては、生産性、コスト等の面から、炭酸ガスレーザー又は半導体レーザーが好ましい。特に、ファイバー付き半導体赤外線レーザーが好ましく用いられる。一般に、半導体レーザーは、COレーザーに比べレーザー発振が高効率且つ安価で小型化が可能である。また、小型であるためアレイ化が容易である。更に、ファイバーの処理によりビーム形状を制御できる。
半導体レーザーとしては、波長が700〜1,300nmのものであれば利用可能であるが、800〜1,200nmのものが好ましく、860〜1,200nmのものがより好ましく、900〜1,100nmであるものが特に好ましい。
【0143】
以下、本発明のレリーフ印刷版における(iii)彫刻工程に好適な、ファイバー付き半導体レーザー記録装置10を備える製版装置11の一態様について、図1を参照して、その構成について説明する。
本発明に用いることができるファイバー付き半導体レーザー記録装置10を備える製版装置11は、外周面に、本発明のレリーフ印刷版原版F(記録媒体)が装着されたドラム50を主走査方向(図1における→R方向)に回転させると共に、レリーフ印刷版原版Fに彫刻(記録)すべき画像の画像データに応じた複数のレーザービーム同時に射出しつつ、所定ピッチで露光ヘッド30を主走査方向と直交する副走査方向に走査させることで、2次元画像をレリーフ印刷版原版Fに高速で彫刻(記録)する。また、狭い領域を彫刻(細線や網点などの精密彫刻)する場合などはレリーフ印刷版原版Fを浅彫りし、広い領域を彫刻する場合などはレリーフ印刷版原版Fを深彫りする。
【0144】
図1に示すように、製版装置11は、レーザービームによって彫刻され画像が記録されるレリーフ印刷版原版Fが装着され且つレリーフ印刷版原版Fが主走査方向に移動するように図1矢印R方向に回転駆動されるドラム50と、レーザー記録装置10と、を含んで構成されている。レーザー記録装置10は、複数のレーザービームを生成する光源ユニット20と、光源ユニット20で生成された複数のレーザービームをレリーフ印刷版原版Fに露光する露光ヘッド30と、露光ヘッド30を副走査方向に沿って移動させる露光ヘッド移動部40と、を含んで構成されている。
【0145】
光源ユニット20には、各々光ファイバー22A,22Bの一端部が個別にカップリングされたブロードエリア半導体レーザーによって構成された半導体レーザー21A,21Bと、半導体レーザー21A,21Bが表面に配置された光源基板24A,24Bと、光源基板24A,24Bの一端部に垂直に取り付けられると共にSC型光コネクタ25A,25Bのアダプタが複数(半導体レーザー21A,21Bと同数)設けられたアダプタ基板23A,23Bと、光源基板24A,24Bの他端部に水平に取り付けられると共にレリーフ印刷版原版Fに彫刻(記録)する画像の画像データに応じて半導体レーザー21A,21Bを駆動するLDドライバー回路が設けられたLDドライバー基板27A,27Bと、が備えられている。
【0146】
露光ヘッド30には、複数の半導体レーザー21A,21Bから射出された各レーザービームを取り纏めて射出するファイバーアレイ部300が備えられている。このファイバーアレイ部300には、各々アダプタ基板23A,23Bに接続されたSC型光コネクタ25A,25Bに接続された複数の光ファイバー70A,70Bによって、各半導体レーザー21A,21Bから射出されたレーザービームが伝送される。
【0147】
図1に示すように、露光ヘッド30には、ファイバーアレイ部300側より、コリメータレンズ32、開口部材33、及び結像レンズ34が、順番に並んで配列されている。なお、開口部材33は、ファイバーアレイ部300側からみ見て、開口がファーフィールド(far field)の位置となるように配置されている。これによって、ファイバーアレイ部300における複数の光ファイバー70A,70Bの光ファイバー端部から射出された全てのレーザービームに対して同等の光量制限効果を与えることができる。
【0148】
コリメータレンズ32及び結像レンズ34で構成される結像手段によって、レーザービームはレリーフ印刷版原版Fの露光面(表面)FAの近傍に結像される。
前記ファイバー付き半導体レーザーではビーム形状を変化させることが可能であるため、本発明においては、結像位置Pは、露光面FAから内部側(レーザービームの進行方向側)の範囲とすることで、露光面(レリーフ形成層表面)FAのビーム径を10μm〜80μmの範囲に制御することが、効率のよい彫刻を行う、細線再現性が良好となる等の観点から好ましい。
【0149】
露光ヘッド移動部40には、長手方向が副走査方向に沿うように配置されたボールネジ41及び2本のレール42が備えられており、ボールネジ41を回転駆動する副走査モーター43を作動させることによって、露光ヘッド30が設けられた台座部310をレール42に案内された状態で副走査方向に移動させることができる。また、ドラム50は主走査モーター(図示せず)を作動させることによって、図1の矢印R方向に回転させることができ、これによって主走査がなされる。
【0150】
また、彫刻したい形状の制御において、ファイバー付き半導体レーザーのビーム形状を変化させず、レーザーに供給するエネルギー量を変化させることで彫刻領域の形状を変化させることも可能である。
具体的には、半導体レーザーの出力を変えて制御する方法、レーザー照射時間を変えて制御する方法がある。
【0151】
〔その他の工程〕
本発明のレリーフ印刷版の製版方法では、(iii)彫刻工程に次いで、更に、必要に応じて、下記の(iv)リンス工程、(v)乾燥工程、及び/又は、(vi)後架橋工程を含んでもよい。
(iv)リンス工程:彫刻後のレリーフ層表面を、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスする工程。
(v)乾燥工程:彫刻されたレリーフ層を乾燥する工程。
(vi)後架橋工程:彫刻後のレリーフ層にエネルギーを付与し、レリーフ層を更に架橋する工程。
【0152】
[(iv)リンス工程]
彫刻表面に彫刻カスが付着している場合は、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスして、彫刻カスを洗い流すリンス工程を追加してもよい。リンスの手段として、水道水で水洗する方法、高圧水をスプレー噴射する方法、感光性樹脂凸版の現像機として公知のバッチ式或いは搬送式のブラシ式洗い出し機で、彫刻表面を主に水の存在下でブラシ擦りする方法などが挙げられ、彫刻カスのヌメリがとれない場合は、界面活性剤を添加したリンス液を用いてもよい。
【0153】
前記のリンス液としては、特に限定されないが、アルカリ処理液が好ましく用いられる。
アルカリ処理液としては、pH7より大きい水溶液が好ましく用いられる。なお、水溶液とは、水又は水を主成分とする液体を意味する。
前記リンス液のpHは9以上であることが好ましく、pH10以上であることがより好ましく、pH11以上であることが更に好ましい。また、リンス液のpHは14以下であることが好ましく、より好ましくは13以下であり、更に好ましくは12.5以下である。
リンス液のpHが7未満であると、十分なリンス性(洗浄性)を得ることができない。また、pHが12.5以下であると、取扱いが容易であるので特に好ましい。
【0154】
リンス液を上記のpH範囲とするために、適宜酸(酸性化合物)及び塩基(塩基性化合物)を用いてpHを調整すればよく、使用する酸及び塩基は特に限定されない。
pH調整用の塩基性化合物としては、特に制限はなく、公知の塩基性化合物を用いることができるが、無機の塩基性化合物であることが好ましく、アルカリ金属塩化合物、及び、アルカリ土類金属塩化合物であることがより好ましく、アルカリ金属水酸化物であることが更に好ましい。
塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム、同リチウム、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第三リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第二リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム及び同アンモニウム等の無機アルカリ塩が挙げられる。
また、pHの調整に酸を使用する場合、無機酸が好ましく、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸が例示される。
【0155】
また、リンス液には、界面活性剤を含有することが好ましい。
界面活性剤としては、特に制限はなく、公知の界面活性剤を用いることができ、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などが例示できる。
アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、α−オレフィンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。
【0156】
カチオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリプロピレングリコールの分子量200〜5000、トリメチロールプロパン、グリセリン又はソルビトールのポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンの付加物、アセチレングリコール系等が挙げられる。
【0157】
両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン化合物、スルホベタイン化合物、ホスホベタイン化合物、アミンオキシド化合物、又は、ホスフィンオキシド化合物等が挙げられる。
また、フッ素系、シリコーン系のノニオン界面活性剤も同様に使用することができる。
界面活性剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の使用量は、特に限定する必要はないが、リンス液の全質量に対し、0.01質量%〜20質量%であることが好ましく、0.05質量%〜10質量%であることがより好ましい。
【0158】
本発明においては、リンス液に、特に、下記式(1)で表される両性界面活性剤(式(1)で表される化合物)、及び/又は、下記式(2)で表される両性界面活性剤(式(2)で表される化合物)を含むことが好ましい。これらの中でも、リンス液には、少なくとも下記式(1)で表される両性界面活性剤(式(1)で表される化合物)を含有することが好ましい。
【0159】
【化18】



【0160】
上記式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、Rは、単結合、又は2価の連結基を表し、Aは、PO(OR)O、OPO(OR)O、O、COO、又はSOを表し、Rは、水素原子、又は1価の有機基を表し、R〜Rのうち2つ以上の基が互いに結合し環を形成してもよい。
【0161】
【化19】



【0162】
上記式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、又は1価の有機基を表し、Rは、単結合、又は2価の連結基を表し、Bは、PO(OR10)O、OPO(OR10)O、O、COO、又はSOを表し、R10は、水素原子、又は1価の有機基を表し、R〜Rのうち2つ以上の基が互いに結合し環を形成してもよい。
【0163】
前記式(1)で表される化合物又は前記式(2)で表される化合物は、カルボキシベタイン化合物、スルホベタイン化合物、ホスホベタイン化合物、アミンオキシド化合物、又はホスフィンオキシド化合物であることが好ましい。なお、本発明において、アミンオキシド化合物のN=O、及び、ホスフィンオキシド化合物P=Oの構造はそれぞれ、N−O、P−Oと見なすものとする。
【0164】
前記式(1)におけるR〜Rは、それぞれ独立に、1価の有機基を表す。また、R〜Rのうち2つ以上の基が互いに結合し環を形成してもよいが、環を形成していないことが好ましい。
〜Rにおける1価の有機基としては、特に制限はないが、アルキル基、ヒドロキシル基を有するアルキル基、アルキル鎖中にアミド結合を有するアルキル基、又はアルキル鎖中にエーテル結合を有するアルキル基であることが好ましく、アルキル基、ヒドロキシル基を有するアルキル基、又はアルキル鎖中にアミド結合を有するアルキル基であることがより好ましい。
また、前記1価の有機基におけるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
また、R〜Rのうちの2つがメチル基である、すなわち、式(1)で表される化合物が、N,N−ジメチル構造を有することが特に好ましい。この構造であると、特に良好なリンス性を示す。
【0165】
前記式(1)におけるRは、単結合、又は2価の連結基を表し、式(1)で表される化合物がアミンオキシド化合物である場合は、Rは単結合となる。
における2価の連結基としては、特に制限はないが、アルキレン基、又はヒドロキシル基を有するアルキレン基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキレン基、又はヒドロキシル基を有する炭素数1〜8のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基、又はヒドロキシル基を有する炭素数1〜3のアルキレン基であることが更に好ましい。
【0166】
前記式(1)におけるAは、PO(OR)O、OPO(OR)O、O、COO、又はSOを表し、O、COO、又はSOであることが好ましく、COOであることがより好ましい。
がOである場合、Rは単結合であることが好ましい。
PO(OR)O及びOPO(OR)OにおけるRは、水素原子、又は1価の有機基を表し、水素原子、又は1以上の不飽和脂肪酸エステル構造を有するアルキル基であることが好ましい。
また、Rは、PO(OR)O、OPO(OR)O、O、COO、及びSOを有していない基であることが好ましい。
【0167】
前記式(2)におけるR〜Rは、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、又は1価の有機基を表す。また、R〜Rのうち2つ以上の基が互いに結合し環を形成してもよいが、環を形成していないことが好ましい。
〜Rとしては、特に制限はないが、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はヒドロキシ基であることが好ましく、アルケニル基、アリール基、又はヒドロキシ基であることがより好ましい。
また、前記1価の有機基におけるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
また、R〜Rのうちの2つがアリール基であることが特に好ましい。
【0168】
前記式(2)におけるRは、単結合、又は2価の連結基を表し、式(2)で表される化合物がホスフィンオキシド化合物である場合は、Rは単結合となる。
における2価の連結基としては、特に制限はないが、アルキレン基、又はヒドロキシル基を有するアルキレン基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキレン基、又はヒドロキシル基を有する炭素数1〜8のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基、又はヒドロキシル基を有する炭素数1〜3のアルキレン基であることが更に好ましい。
前記式(2)におけるBは、PO(OR10)O、OPO(OR10)O、O、COO、又はSOを表し、Oであることが好ましい。
がOである場合、Rは単結合であることが好ましい。
PO(OR10)O及びOPO(OR10)OおけるR10は、水素原子、又は1価の有機基を表し、水素原子、又は1以上の不飽和脂肪酸エステル構造を有するアルキル基であることが好ましい。
また、Rは、PO(OR10)O、OPO(OR10)O、O、COO、及びSOを有していない基であることが好ましい。
【0169】
式(1)で表される化合物としては、下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0170】
【化20】

【0171】
上記式(3)中、Rは、1価の有機基を表し、Rは、単結合、又は2価の連結基を表し、Aは、PO(OR)O、OPO(OR)O、O、COO、又はSOを表し、Rは、水素原子、又は1価の有機基を表す。
【0172】
式(3)におけるR、A、及びRは、前記式(1)におけるR、A、及びRと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0173】
式(2)で表される化合物としては、下記式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【0174】
【化21】


(式(4)中、R〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は、ヒドロキシル基を表す。但し、R〜Rの全てが同じ基となることはない。)
【0175】
前記式(4)におけるR〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は、ヒドロキシル基を表し、アルケニル基、アリール基、又は、ヒドロキシル基であることが好ましい。
【0176】
式(1)で表される化合物、及び式(2)で表される化合物の具体例としては、下記の化合物が好ましく例示できる。
【0177】
【化22】

【0178】
【化23】

【0179】
【化24】

【0180】
本発明において、(iv)リンス工程に用いられるリンス液は、前記式(1)で表される化合物、及び/又は、前記式(2)で表される化合物を、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよいが、前記式(1)で表される化合物を少なくとも含有することが好ましい。
【0181】
本発明に用いられるリンス液における式(1)で表される化合物、及び/又は、式(2)で表される化合物の総含有量は、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、0.3質量%〜10質量%であることがより好ましく、0.5質量%〜7質量%であることが更に好ましい。
【0182】
また、本発明に用いられるリンス液は、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物以外の界面活性剤を併用してもよい。
本発明に用いられるリンス液において、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物以外の界面活性剤を使用する場合、その添加量は、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物の総質量:式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物以外の界面活性剤の総質量=1:1.2〜1:0.1であることが好ましく、1:1〜1:0.1であることがより好ましい。
【0183】
本発明に用いられるリンス液は、主成分として水を含有することが好ましいが、水以外の溶媒として、アルコール類、アセトン、テトラヒドロフラン等などの水混和性溶媒を含有していてもよい。
【0184】
本発明に用いられるリンス液は、更に、消泡剤を含有することが好ましい。
消泡剤としては、一般的なシリコン系の自己乳化型タイプ、乳化タイプ、界面活性剤ノニオン系のHLB(Hydrophile−Lipophile Balance)値の5以下等の化合物を使用することができる。シリコン消泡剤が好ましい。その中で乳化分散型及び可溶化型等がいずれも使用できる。
消泡剤として具体的には、例えば、TSA731、TSA739(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)が挙げられる。
消泡剤の含有量は、リンス液中に、0.001質量%〜1.0質量%であることが好ましい。
【0185】
また、本発明に用いられるリンス液は、必要に応じて、防腐剤、無機酸、キレート剤、溶剤等を含有していてもよい。
防腐剤、無機酸、キレート剤、及び溶剤としては、公知のものを用いることができる。
【0186】
(iv)リンス工程におけるリンス液の使用量は、少なくとも版全体が液で覆われる必要がある。使用量は、版によっても異なるが、10cc/m以上であることが好ましく、50cc/m以上であることがより好ましく、70cc/m以上であることが更に好ましい。また、リンス液の使用量は、処理液量のコストの点から、70cc/m〜500cc/mであることが特に好ましい。
【0187】
(iv)リンス工程におけるリンスの手段として、高圧水をスプレー噴射する方法、感光性樹脂凸版の現像機として公知のバッチ式或いは搬送式のブラシ式洗い出し機で、彫刻表面を主に水の存在下でブラシ擦りする方法などが挙げられる。
【0188】
彫刻表面に(iv)リンス工程を行った場合、彫刻されたレリーフ形成層を乾燥してリンス液を揮発させる工程((v)乾燥工程)を追加することが好ましい。
更に、必要に応じてレリーフ層を更に架橋させる工程((vi)後架橋工程)を追加してもよい。この(vi)後架橋工程を行うことにより、彫刻によって形成されたレリーフをより強固にすることができる。
【0189】
以上のようにして、支持体等の任意の基材表面にレリーフ層を有するレリーフ印刷版が得られる。
レリーフ印刷版が有するレリーフ層の厚さは、耐磨耗性やインキ転移性のような種々の印刷適性を満たす観点からは、0.05mm以上10mm以下が好ましく、より好ましくは0.05mm以上7mm以下、特に好ましくは0.05mm以上3mm以下である。
【0190】
また、本発明において、レリーフ印刷版が有するレリーフ層(即ち、架橋レリーフ形成層)のショアA硬度は、50°以上90°以下であることが好ましい。
レリーフ層のショアA硬度が50°以上であると、彫刻により形成された微細な網点が凸版印刷機の強い印圧を受けても倒れてつぶれることがなく、正常な印刷ができる。また、レリーフ層のショアA硬度が90°以下であると、印圧がキスタッチのフレキソ印刷でもベタ部での印刷かすれを防止することができる。
なお、本明細書におけるショアA硬度は、25℃50%RHの条件において、測定対象の表面に圧子(押針又はインデンタと呼ばれる。)を押し込み変形させ、その変形量(押込み深さ)を測定して、数値化するデュロメータ(スプリング式ゴム硬度計)により測定した値である。
【0191】
本発明において、レリーフ印刷版原版を用いて製造されたレリーフ印刷版は、凸版用印刷機による水性インキ、油性インキ、及び、UVインキ、いずれのインキを用いた場合でも、印刷が可能であり、また、フレキソ印刷機によるUVインキでの印刷も可能である。本発明において、レリーフ印刷版原版より得られるレリーフ印刷版は、リンス性に優れており彫刻カスの残存がなく、かつ、得られたレリーフ層が弾性に優れるため、インク転移性及び耐刷性に優れ、長期間にわたりレリーフ層の塑性変形や耐刷性低下の懸念がなく、印刷が実施できる。
【実施例】
【0192】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0193】
(実施例1)
1.レリーフ形成層用塗布液の調製
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、バインダーポリマー(B)としてPVB「デンカブチラール#3000−2」(電気化学工業(株)製、ポリビニルブチラール、重量平均分子量(Mw)=9万)を50質量部、フェノール誘導体(A)として前記例示化合物A−1(東京化成工業製、4−ヒドロキシ安息香酸メチル)を36質量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを47質量部添加し、撹拌しながら70℃で120分間加熱しポリマーを溶解させた。
その後、溶液を40℃にし、光熱変換剤(D)としてケッチェンブラックEC600JD(カーボンブラック、ライオン(株)製)を1質量部添加して30分間撹拌した。
その後、架橋剤(C)として前記例示化合物S−1(商品名、KBE−846として信越化学工業(株)より入手可能)を23質量部、更に、触媒としてDBUを0.8質量部添加し、40℃で10分間撹拌した。
この操作により、流動性のある架橋性のレリーフ形成層用塗布液1(樹脂組成物)を得た。
【0194】
2.レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の作製
PET基板上に所定厚のスペーサー(枠)を設置し、上記より得られたレリーフ形成層用塗布液1をスペーサー(枠)から流出しない程度に静かに流延し、65℃のオーブン中で4時間乾燥させて、厚さが約1mmのレリーフ形成層を設けた。
得られたレリーフ形成層を、100℃で3時間加熱してレリーフ形成層を熱架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を得た。
【0195】
3.レリーフ印刷版の作製
<ファイバー付き半導体レーザー(FC−LD)による彫刻(FC−LD彫刻)>
半導体レーザー彫刻機として、最大出力8.0Wのファイバー付き半導体レーザー(FC−LD)SDL−6390(JDSU社製、波長915nm)を装備した、前述の図1に示すファイバー付きレーザー記録装置を用いた。この半導体レーザー彫刻機で、レリーフ印刷版原版における架橋後の架橋レリーフ形成層に対し、レーザー出力:6W、ヘッド速度:100mm/秒、ピッチ設定:2,400DPIの条件で、1cm四方のベタ部分をラスター彫刻した。なお、このレーザーを用いて評価した結果は、表中に「FC−LD」と表記する。
【0196】
<COレーザーによる彫刻(COレーザー彫刻)>
炭酸ガスレーザー彫刻機として、高品位COレーザーマーカーML−9100シリーズ((株)キーエンス製)を用いた。この炭酸ガスレーザー彫刻機で、レリーフ印刷版原版における架橋後の架橋レリーフ形成層に対し、出力:12W、ヘッド速度:200mm/秒、ピッチ設定:2,400DPIの条件で、1cm四方のベタ部分をラスター彫刻した。なお、このレーザーを用いて評価した結果は、表中に「COレーザー」と表記する。
【0197】
得られたレリーフ印刷版が有するレリーフ層の厚さは、FC−LD彫刻及びCOレーザー彫刻のどちらの場合においても、1.1mmであった。
また、レリーフ層のショアA硬度を、前述の測定方法により測定したところ、70°であった。なお、レリーフ層のショア硬度Aの測定は、後述する各実施例及び比較例においても同様に行った。
【0198】
(実施例2〜27、及び、比較例1、2)
実施例1における「1.レリーフ形成層用塗布液の調製」において、フェノール誘導体(A)、及びバインダーポリマー(B)を下記表1及び表2に記載のものにそれぞれ変更してレリーフ形成層用塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を作製した後、該レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版からレリーフ印刷版2〜27、及び、C1、C2を作製した。
なお、実施例25〜27で使用したバインダーポリマー(B)と、比較例2でフェノール誘導体(A)の代わりに使用したポリエチレングリコールジメチルエーテルについて以下に説明する。
・水酸基含有アクリル樹脂:シクロヘキシルメタクリレート/メタクリル酸2−ヒドロキシエチルの共重合体(70/30(mol%)、Mw=50000)
・ノボラック樹脂:オクチルフェノール/ホルムアルデヒド(50/50)から得られるノボラック樹脂(Mw=20000)
・poly bd:水酸基末端ポリブタジエン、出光興産製
・ポリエチレングリコールジメチルエーテル:アルドリッチ製、Mn=500
【0199】
(実施例28)
実施例1における「1.レリーフ形成層用塗布液の調製」において、架橋剤(C)を3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(東京化成工業製、前記具体例(6))に変更してレリーフ形成層用塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を作製した後、該レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版からレリーフ印刷版28を作製した。
【0200】
(実施例29)
実施例1における「1.レリーフ形成層用塗布液の調製」において、架橋剤(C)を2,4−トリレンジイソシアネート(東京化成工業製)に変更してレリーフ形成層用塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を作製した後、該レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版からレリーフ印刷版29を作製した。
【0201】
(実施例30)
実施例1における「1.レリーフ形成層用塗布液の調製」において、架橋剤(C)と触媒とを、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(東京化成工業製)とパーブチルZ(日本油脂化学製)とにそれぞれ変更してレリーフ形成層用塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を作製した後、該レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版からレリーフ印刷版30を作製した。
【0202】
(実施例31)
実施例1における「1.レリーフ形成層用塗布液の調製」において、光熱変換剤(D)を加えずにレリーフ形成層用塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を作製した後、該レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版からレリーフ印刷版31を作製した。
【0203】
<ClogP値測定>
まず、各実施例で使用したフェノール誘導体(A)と、比較例2で使用したポリエチレングリコールジメチルエーテルのClogP値を、以下の方法で計算した。
即ち、DayLight Chemical Information Systems社のPCModelsに組み込まれたCLOGPプログラムを用いて計算した。結果を表1及び表2に示す。
【0204】
<評価>
−彫刻深さ評価−
レリーフ印刷版1〜31、及び、C1、C2が有するレリーフ層の「彫刻深さ」をそれぞれ、以下のように測定した。ここで、「彫刻深さ」とは、レリーフ層の断面を観察した場合の、彫刻された位置(高さ)と彫刻されていない位置(高さ)との差をいう。本実施例における「彫刻深さ」は、レリーフ層の断面を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK9510((株)キーエンス製)にて観察することにより測定した。彫刻深さが大きいことは、彫刻感度が高いことを意味する。結果を表1及び表2に示す。
【0205】
−リンス性評価−
水(主成分)に、pH12となるように、水酸化ナトリウム10質量%水溶液を添加し、前記両性界面活性剤(1−A)を1wt%となるように添加して、リンス液を作製した。
レーザー彫刻したレリーフ印刷版の版面に、リンス液を約100cc/mかけて、彫刻部をハブラシ(ライオン(株)クリニカハブラシ フラット)を用いて荷重200gfで版と並行に20回(30秒)こすった。その後、版面の水分を除去し、1時間ほど自然乾燥した。表面を×100のマイクロスコープ(キーエンス(株)製)で観察し、版上の取れ残りカスを評価した。評価基準は以下の通りである。3、4、及び5が実用上の許容範囲である。結果を表1及び表2に示す。
1:版全面に付着
2:版画像凸部に僅かにカスが残っており、また、画像底部(凹部)にカスが残っている
3:版画像凸部に僅かにカスが残っており、また、画像底部(凹部)に僅かにカスが残っている
4:画像底部(凹部)に僅かにカスが残っているのみである
5:まったく版上にカスが残っていない
【0206】
−不溶化率−
彫刻していないレリーフ印刷版原版を、10質量%2−プロパノール水溶液中に24時間浸漬させ、その質量変化を測定した。質量変化が5%以下で小さく、実用上許容できるものは○、質量変化が5%を超え、大きく実用上許容できないものは×とした。結果を表1及び表2に示す。
【0207】
−インキ転移性−
レーザー彫刻して得られたレリーフ印刷版を、フレキソ印刷機に装着して、ベタ画像を印刷した。印刷機はITM−4型、(株)伊予機械製作所製を、印刷紙はフルカラーフォームM 70(日本製紙(株)製、厚さ100μm)を、インキはUV硬化インキ(UVフレキソ500藍)を用いて印刷を行った。
印刷されたベタ画像の任意の1cm四方をドットサイズ10μm四方でスキャナーにて読み取り、その内の青濃度の最大濃度を255、最低濃度を0としたときの各ドットの濃度の値の標準偏差を用いて、着肉したインキの均一性を表した。値が小さい程、均一にインキが転移していることを表す。結果を表1及び表2に示す。
【0208】
【表1】

【0209】
【表2】

【0210】
表1及び表2に明らかなように、実施例1〜31のレリーフ印刷版原版は、レーザーの種類に関わらず彫刻感度が高く、リンス性に優れ、不溶化率も良好で、十分なインキ転移性も得られることが分かる。特に、フェノール誘導体(A)として好ましい態様のものを用いることで、リンス性及びインキ転移性をより高めることが可能であることが分かる。
【符号の説明】
【0211】
10 レーザー記録装置(露光装置)
30 露光ヘッド
70A 光ファイバー
70B 光ファイバー
32 コリメータレンズ(結像手段)
34 結像レンズ(結像手段)
300 ファイバーアレイ部
F レリーフ印刷版原版
FA 露光面(レリーフ印刷版原版の表面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A)で表されるフェノール誘導体(A)と、バインダーポリマー(B)と、架橋剤(C)と、を少なくとも含有し、且つ、前記フェノール誘導体(A)の含有率が組成物の全固形分量に対して5質量%以上50質量%以下であるレーザー彫刻用樹脂組成物。
【化1】



(上記一般式(A)中、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、R、R、R、R、及びRのうち少なくとも1つは、−X−Rで表される構造の1価の置換基である。Xは、単結合、−O−、−NR−、−S−、−COO−、−CONR−、−COS−、−OCO−、−NRCO−、−SCO−、−OCONH−、−NR10CONH−、−SCONH−、−SO−、−OSO−、又は−SO−を表す。Rは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、これらの基の水素原子以外の構成原子数は1から20である。R、R、R、及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、これらの基の水素原子以外の構成原子数は1から20である。)
【請求項2】
前記バインダーポリマー(B)のガラス転移温度(Tg)が20℃以上200℃以下である請求項1に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項3】
前記バインダーポリマー(B)が、前記架橋剤(C)が有する架橋性基と反応可能な官能基を有する請求項1又は請求項2に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項4】
前記バインダーポリマー(B)が、ポリビニルアセタール及びその誘導体、並びにアクリル樹脂からなる群より選択される1種以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項5】
前記バインダーポリマー(B)が、ポリビニルブチラール及びその誘導体から選ばれるポリマーである請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項6】
更に、700〜1300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤(D)を含有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有するレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項8】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を架橋した架橋レリーフ形成層を有するレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項9】
(i)請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、
(ii)前記レリーフ形成層を熱及び光の少なくとも一方により架橋し、架橋レリーフ形成層を形成する架橋工程、
を含むレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法。
【請求項10】
(i)請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、
(ii)前記レリーフ形成層を熱及び光の少なくとも一方により架橋し、架橋レリーフ形成層を形成する架橋工程、並びに、
(iii)前記架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻する彫刻工程、
を含むレリーフ印刷版の製版方法。
【請求項11】
更に、(iv)前記架橋レリーフ形成層をアルカリ処理液で洗浄するリンス工程を含む請求項10に記載のレリーフ印刷版の製版方法。
【請求項12】
前記(ii)の架橋工程が熱により行われることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載のレリーフ印刷版の製版方法。
【請求項13】
請求項10〜請求項12のいずれか1項に記載のレリーフ印刷版の製版方法により製版された、レリーフ層を有するレリーフ印刷版。
【請求項14】
前記レリーフ層のショアA硬度が、50°以上90°以下である請求項13に記載のレリーフ印刷版。

【図1】
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【公開番号】特開2011−93308(P2011−93308A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208070(P2010−208070)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】