説明

レーザー誘起表面層を有する3次元構造体及びその製造方法

【課題】基板の表面に量子ドット又は量子細線として利用可能なナノメートルオーダの凸部を形成すること、及び、基板を構成する元素と異なる元素で構成されたナノメートルオーダの凸部を形成する。
【解決手段】第一の元素を含む基板11の表面に、第二の元素を含む凸部形成物質を供給し、基板11の表面にレーザーを照射し、基板11の表面に、第二の元素を主成分とする複数個の凸部14、又は第一の元素及び第二の元素を含む複数個の凸部14をレーザーの波長以下の間隔21(頂点間距離)で形成する。第一の元素は、第二の元素と異なる元素であってもよい。レーザーは、ナノ秒パルスレーザーが望ましく、レーザーの照射条件は、2.0×10〜4.0×10mJ/m/pulse、2〜20Hz、かつ、パルス数200〜20000pulsesが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー誘起表面層を有する3次元構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、量子ドットの作製技術、表面処理による触媒作用発現技術、光特性付与技術、新物質創生技術などを含む、表面の多機能化・高機能化に関する研究が進められている。
【0003】
このうち、量子ドットは、エレクトロニクス分野においてレーザー、光増幅器、単一光子発生素子等、情報通信分野において量子暗号通信、量子コンピュータ等、環境・エネルギー分野において太陽電池等、ライフサイエンス分野においてバイオセンサー、蛍光マーカー等への応用が期待されており、一部は実用化されている。
【0004】
一方、表面加工の分野において、基板(基材)の表面に、その基板を構成する元素とは異なる元素を含む複数の量子ドットを、2次元的に整列した配列構造を保持しながら、レーザー照射により一気に同時作製した例は世の中にない。
【0005】
フォトエッチングなどのトップダウン方式による表面加工によるパターン化においては、光の波長が最小サイズとなり、マイクロメートル程度が最小加工サイズの限界値である。
【0006】
特許文献1には、半導体装置の製造において、単結晶に近い結晶性を有し、粒径が均一なシリコン薄膜を大面積で高スループットで形成することを目的として、パルスレーザー強度を空間的にラインビームの長軸方向に周期的に強度変調させる手段を有し、ラインビームの照射領域全体にわたって一定の方向に成長した結晶からなる多結晶膜をショット毎に一括形成する半導体薄膜の製造方法が開示されている。
特許文献2には、超短パルスレーザー(フェムト秒レーザー)を低フルーエンスで偏光制御して固体材料表面に照射することで、パルスレーザーの波長より小さいサイズの微細構造を形成する微細加工方法が開示されている。
【0007】
特許文献3には、レーザー直接描画技術により基板上において任意に金属配線を描画する方法が開示されている。これは、原料W(CO)ガスがレーザー(Arレーザー光)照射した部分で基板表面上に吸着し、レーザー照射ビームに沿ってW(タングステン)線を描画する方法に関するものである。この場合、W線はレーザー照射部に満遍なくデポジション形成される。
【0008】
一方、レーザー照射による加工技術として、レーザービームをレンズなどで絞り込み、照射部を削り取るトップダウン法による方法が通常法として知られている。
【0009】
非特許文献1には、Ge、Si、Al及び黄銅を対象として、リップルパターンと呼ばれる縞状の起伏を周期的に並べた構造をこの加工技術で発現させることに初めて成功したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−119919号公報
【特許文献2】特開2003−211400号公報
【特許文献3】特開平4−99874号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】J.F.Young、J.S.Preston、H.M.van Driel、and J.E.Sipe:“Laser−induced periodic structure. II. Experiments on Ge、Si、Al、and brass”、Physical Review B、vol.27、No.2(1983)、p.1155
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、基板(基材)の表面に量子ドット又は量子細線として利用可能なナノメートルオーダの凸部を形成すること、及び、基板を構成する元素と異なる元素で構成されたナノメートルオーダの凸部を形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体の製造方法は、第一の元素を含む基材の表面に、第二の元素を含む凸部形成物質を供給し前記基材の表面にレーザーを照射することにより、前記基材の表面に、前記第二の元素を主成分とする複数個の凸部、又は前記第一の元素及び前記第二の元素を含む複数個の凸部を前記レーザーの波長以下の頂点間距離で形成する方法であって、前記第二の元素は、前記第一の元素と同一の元素又は異なる元素であることを特徴とする。
【0014】
本発明のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体は、第一の元素を含む基材と、前記基材の表面にレーザーを照射することにより形成した複数個の凸部とを含む3次元構造体であって、前記凸部は、第二の元素を主成分とするもの又は前記第一の元素及び前記第二の元素を含むものであり、前記第二の元素は、前記第一の元素と同一の元素又は異なる元素であり、前記複数個の凸部の頂点間距離は、前記レーザーの波長以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レーザービームの干渉性を利用したパターニング(トップダウン法)、及び、レーザービーム照射下での表面原子の自己組織化(ボトムアップ)の両方の機能を同時に発揮させることができる。
【0016】
また、本発明によれば、基板の表面に量子ドット又は量子細線として利用可能なナノメートルオーダの凸部の規則的な配列又は不規則な配列を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】実施例のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体の製造工程(凸部形成物質の膜の形成)を示す模式断面図である。
【図1B】実施例のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体の製造工程(レーザーの照射)を示す模式断面図である。
【図1C】実施例のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体の製造工程(凸部の形成の初期段階)を示す模式断面図である。
【図1D】実施例のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体の製造工程(膜の消滅)を示す模式断面図である。
【図1E】実施例のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体の製造工程(レーザーの照射後)を示す模式断面図である。
【図2A】実施例のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体(ドット状)を示す模式断面図である。
【図2B】実施例のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体(ドット状、規則配列)を示す模式平面図である。
【図2C】実施例のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体(ドット状、ランダム配列(不規則配列))を示す模式平面図である。
【図3】実施例のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体(リップル状)を示す模式平面図である。
【図4】実施例のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体(ドット状)を示す断面TEM写真である。
【図5】実施例のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体(ドット状)の規則配列構造を示す表面SEM写真である。
【図6】実施例のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体(ドット状)のランダム配列構造を示す表面SEM写真である。
【図7】実施例のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体(リップル状)の規則配列構造を示す表面SEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、レーザーの照射を用いて、基板(基材)の表面にその基板を構成する元素と異なる元素又は同一の元素を、その波長以下の間隔で独立した複数個の凸部を有する3次元積層体(レーザー誘起表面層を有する3次元構造体とも呼ぶ。)としてレーザー照射領域内に同時に形成し、かつ、その3次元積層体を2次元方向(3次元積層体の表面)においてナノ配列させる方法に係り、この方法を用いて製造した電子・電磁デバイス、量子ドットデバイス、光電子デバイス、太陽電池材料、触媒材料、ナノバイオ材料などの3次元積層構造を表面に有する機能性材料に関する。
【0019】
ここで、ナノバイオ材料とは、遺伝子、たんぱく質、がん細胞等と結合した状態で紫外線等の光を当てることにより蛍光を発する材料であり、遺伝子、たんぱく質、がん細胞等のイメージングを可能とする材料である。現状においては、半導体であるCdSe(カドミウムセレン)の量子ドットをZnS(硫化亜鉛)で被覆し、その表面にカルボキシル基やアミノ基を末端基として有する有機物を結合してカルボキシル基やアミノ基に抗体、レクチン等を結合することにより、特定の遺伝子、たんぱく質、がん細胞等と選択的に結合する材料である。
【0020】
本発明におけるナノバイオ材料は、基材の表面に配列した3次元構造体であって、特定の遺伝子、たんぱく質、がん細胞等と選択的に結合させることができる材料であり、特定の遺伝子、たんぱく質、がん細胞等を固定してイメージングすること又は検出することを可能にする材料である。
【0021】
さらに、本発明におけるナノバイオ材料は、紫外線等の光を当てることにより発せられる蛍光を用いて、基材の表面に固定した特定の遺伝子、たんぱく質等に化学変化を生じさせ、変質させることが可能な材料である。
【0022】
さらにまた、本発明におけるナノバイオ材料は、紫外線等の光を当てることにより発せられる蛍光を用いて、基材の表面に固定した特定のがん細胞等を殺傷する機能を有し、がん細胞等の紫外線等又は蛍光に対する強さを測定する素子として利用することも可能である。
【0023】
さらに、本発明は、レーザーの照射を用いて、基板の表面にその基板を構成する元素と異なる元素又は同一の元素を、ランダムな間隔を有する不特定の位置に、複数個の凸部を有する3次元積層体としてレーザー照射領域内に同時に形成し、かつ、その3次元積層体を2次元方向においてランダムに配列させる方法に係り、その方法を用いて製造した電子・電磁デバイス、量子ドットデバイス、光電子デバイス、太陽電池材料、触媒材料、ナノバイオ材料などの3次元積層構造を表面に有する機能性材料に関する。
【0024】
ここで、量子ドットについて説明する。
【0025】
量子ドットとは、数ナノメートル〜数十ナノメートルの大きさを有する3次元の狭い領域に電子及びホール(正孔)の対である励起子を閉じ込めた半導体等の構造をいう。本明細書においては、このような構造に相当する固体表面に形成された微小ドット(数ナノメートル〜数十ナノメートルの大きさを有する凸部)を量子ドットと呼ぶことにする。
【0026】
半導体や金属においては、量子ドットの構造によって電子の移動の自由度を決めることができ、3次元で自由に電子が動くことができるバルク、2次元に限定した量子井戸、1次元に限定した量子細線がある。これに対して、量子ドットは、電子を狭い領域に閉じ込める系(0次元電子系)を作ることができる。
【0027】
すなわち、本発明のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体は、基板の表面に量子ドット、量子細線等を形成した構造体である。
【0028】
量子ドットの中に閉じ込められた電子は、運動が量子化され、離散的なエネルギー準位を形成する。そのため、バルク中で連続的なバンド構造を取って自由に動き回る電子とは振る舞いが大きく異なり、一定のエネルギー準位に留まる。また、量子ドットは、単一の電子スピンを制御することができ、半導体よりも効率が高い発光特性や電気特性を示す。
【0029】
量子ドットの作製方法としては、自己組織化成長法、液滴エピタキシー法などが挙げられる。
【0030】
現在は、自己組織化成長法の一つであるStranski−Krastanow結晶成長法(SKモード法)が主流となっている。SKモード法においては、ある基板に格子定数の異なる結晶を成長させるときの格子不整合による歪みエネルギーを利用して量子ドットを形成する。
【0031】
また、液滴エピタキシー法においては、真空環境中で基板の表面に低融点の分子をビーム状に照射する。このとき、均一な大きさの多数の微細な液滴ができ、その液滴が量子ドットとなる。
【0032】
量子ドットの材料としては、InAs、GaAsなどII−IV族化合物半導体が多く用いられているが、将来的に様々な産業分野で利用することを目指し、Siや有機化合物などの材料を用いた量子ドットの作製に関する研究が進められている。
【0033】
本発明のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体は、レーザーの照射条件を選ぶことにより、量子ドットが基板の表面に整列した構造(規則的な配列構造)、及び、量子ドットが基板の表面にランダムな跳び跳びの位置に比較的均一な密度で分布した構造(不規則な配列構造)を含む。
【0034】
レーザー照射によって基板の表面に複数個の量子ドットを同時に作製した例はなく、新規なものである。
【0035】
また、本発明のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体のようなナノ構造を形成した構造体を用いて、電子・電磁デバイス、量子ドットデバイス、光電子デバイス、太陽電池材料、触媒材料、ナノバイオ材料などの機能性材料を製造した事例は皆無である。
【0036】
本発明は、具体的には、上記の凸部を一つ一つ描画する従来のレーザー加工方法を用いないで、(1)レーザーを照射するだけで、照射範囲内で上記構造体を複数個同時に作製する新規な方法を見出すこと、及び、(2)その方法を用いて触媒作用、光特性、新物質創生などの現象を発現させた表面機能を有する材料・デバイスを作製することの2点を課題としている。このため、上記の複数の凸部は、量子ドットであってもよく、また、量子ドット以上の大きさを有する別の機能を有する積層体であってもよい。これらは、本発明の対象である。
【0037】
つぎに、量子ドットに求められている一般的な課題について以下に触れる。
【0038】
量子ドットは、サイズを均一化することにより発光の単色性や強さを向上させることができる。例えば、量子ドットレーザーの性能を上げることなどが可能となるため、量子ドットの均一化は重要な課題である。
【0039】
量子ドットサイズの均一性の指標としては、発光スペクトルの幅(=PL半値幅)が用いられ、PL半値幅が狭いほど均一である。量子ドットの面密度を高くし、構造の微細化を行うことは、キャリアを増加させ、レーザーや光増幅器などの性能を向上させるため、非常に重要な課題である。
【0040】
また、現在、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いた加工による量子ドットの配列制御は可能であるが、量子ドットが発光しないため、発光が見られる高品質な配列制御が求められている。また、SPMを用いた加工方法においては、量子ドットの構造を1つずつ加工していくため、工業的な量産に用いる機能表面作製方法としては可能性の低い方法である。
【0041】
高品質な配列制御が可能になると、例えば、規則的な量子ドットの配列が必要な量子ドット太陽電池の実用化や、量子コンピュータのための素子構造の作製実現などが期待できる。様々な産業分野において量子ドットを応用するために、現在使用されているInAs、GaAs以外に、GaN系化合物半導体、Si、C、有機化合物など、新しい材料を開発していく必要がある。また、量子ドットに用いられている材料には、Cd、Hg、Asなどの有害物質が含まれるため、それらを含まない材料を用いた量子ドットの開発も求められている。
【0042】
以上に述べたように、量子ドットの作製方法としては、自己組織化成長法の一つであるStranski−Krastanow結晶成長法(SKモード法)が主流であるが、量子ドットのサイズ制御及び配列制御が不十分である。このため、サイズ制御及び配列制御が可能であり、かつ、簡易な作製法を開発することが課題である。また、将来的に低コストで大量生産することを目的とした、全く新しい作製法を開発することも必要である。
【0043】
量子暗号通信、量子コンピュータの実現のためには、コヒーレンス時間(量子状態の重ね合わせ状態を保持し、量子ビットが演算可能な状態にある時間)を長く保ち、安定した情報伝達を行う必要がある。量子ドットのナノサイズレベルでの構造制御が上記のような物性制御に関する課題の解決に繋がるものと期待される。
【0044】
本発明は、上述の課題を踏まえ、これまで世の中で成しえなかった、レーザー照射による複数個の量子ドットの周期的な形成、及び、量子ドットの周期的な構造を2次元的にパターン配列させ、かつ、量子ドットと化学組成の異なる物質(基板)の表面に、3次元的に積層した表面周期構造の作製方法を提供することを第一の課題とした。
【0045】
さらに、これらのドット形状周期構造をレーザーにより同時付与した表面量子ドット構造を有する各種の量子デバイス、機能デバイス、電子・情報素子、エネルギー素子、ナノバイオデバイス等を提供することを第二の課題とした。
【0046】
次に、本発明は、これまで世の中で成しえなかった、レーザー照射による1種類又は2種類以上の構成元素から成るリップル構造(基板の表面の縞状(線状)の凸部)の周期的な形成、及び、この周期構造を2次元的にパターン配列させ、かつ、これらのリップル構造を、これらのリップル構造を構成する元素と異なる元素で形成された基材の表面に、3次元的に積層した表面周期構造の作製方法を提供することを課題とした。さらに、これらのリップル形状周期構造をレーザーにより同時付与した表面構造を有する各種の機能デバイス、エネルギー素子、バイオデバイス等を提供することを課題とした。
【0047】
最後に、本発明は、これまで世の中で成しえなかった、レーザー照射による1種類又は2種類以上の構成元素から成る複数個の凸部を同時にランダムに配置した構造体を形成すること、及び、これらの凸部を2次元的にランダム配列させ、かつ、これらの凸部を構成する元素と異なる元素で形成された基材の表面に、3次元的に積層した表面構造の作製方法を提供することを課題とした。さらに、これらの構造体を用いて、各種の機能デバイス、エネルギー素子、バイオデバイス等を提供することを課題とした。
【0048】
本発明においては、レーザービームの干渉性を利用したパターニング(トップダウン法)、及び、レーザービーム照射下における表面原子の自己組織化(ボトムアップ)の両方の機能を同時に発揮させるレーザー条件下において、基板の表面に、この基板を構成する物質とは異なる物質を供給し、基板を構成する物質及び基板の表面に供給した物質と異なる物質をドット状、リップル状などの積層構造を有する凸部として形成させる。
【0049】
すなわち、本発明においては、主に、ナノ秒パルスレーザーを用い、レーザー照射条件として2.0×10〜4.0×10mJ/m/pulse、2〜20Hz、パルス数200pulses〜20000pulsesが適切である。
【0050】
ここで、「供給」は、基板の表面の上方に気体状態で送ること、基板の表面に吸着させること、基板の表面に固体又は液体の膜を形成する(膜状に付着させる)こと、及び基板の表面に固体又は液体の粒子として付着させる(粒子状に付着させる)ことを含む用語である。
【0051】
さらに、本発明においては、レーザー照射条件や物質の種類の組み合わせにより、基板の表面に、基板を構成する物質と異なる物質を、ランダムな2次元配列を有しながら、基板の表面に3次元的に積層してレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を製造することも可能である。ここで、基板や積層される物質としては、絶縁物、半導体、金属、合金、又はセラミックスなどの無機系の材料を主に用いることができた。基板を構成する物質及び基板の表面に供給する物質に対し、基板の表面に形成する物質は、基板の表面に供給する物質と同じで物質でもよく、さらに、基板を構成する物質と基板の表面に供給する物質との混合物でもよい。基板の表面に形成する物質は、用いる物質の組み合わせ、レーザー照射条件などを適切に選定することにより制御することができる。
【0052】
具体的には、次に挙げる方法により、上記の凸部のパターニングを行うことができる。
【0053】
1)基板の表面に、基板を構成する物質aとは異なる物質bを供給し、その上からレーザーを照射することにより、基板の表面の跳び跳びの位置に、基板を構成する物質とは異なる物質b又はcからなる複数の凸部を形成する。
【0054】
2)上記1)に記載のレーザー照射を、物質bの供給前に実施した後、物質aの表面に、物質aとは異なる物質bを供給し、さらに、その上から先のレーザーを同じ条件で照射することにより、物質aの表面の跳び跳びの位置に、物質aとは異なる物質b又はcからなる複数の凸部を形成する。
【0055】
3)上記1)及び2)に記載の物質cは、物質bと物質aとの混合物としてもよい。
【0056】
4)上記1)及び3)に記載の物質bは、2種類以上の元素を含むものであってもよい。
【0057】
5)上記3)及び4)に記載の物質bと物質aとの混合物である物質cは、単一の相又は複数の相からなる合金で形成してもよい。すなわち、物質cは、共晶組織及び共析組織を含む混合組織を有する物質としてもよい。
【0058】
6)上記5)に記載の物質cは、1種類以上の結晶から成る物質、または、1種類以上のアモルファスから成る物質、または、1種類以上の結晶及びアモルファスが共存する物質としてもよい。すなわち、物質cは、結晶及びアモルファスのうち少なくとも一方を含む。
【0059】
7)上記1)〜6)に記載の基板の表面に形成した凸部は、ランダムな配置、整列した溝、または、整列した2次元配置を有する独立体(ドット)のいずれでもよい。
【0060】
8)上記1)〜7)に記載の物質bの供給は、レーザー照射前に終了し、物質bが粉末状又は膜状に物質aを被覆するようにしてもよい。
【0061】
9)上記8)の物質bの供給方法は、蒸着法、スパッタ法、エアロゾルデポジション法(以下、AD法と呼ぶ。)、塗布法、化学気相蒸着法(以下、CVD法と呼ぶ。)などにより物質aを被覆する方法としてもよい。
【0062】
10)上記1)〜7)に記載の物質bの供給は、レーザー照射前のみ、レーザー照射前及びレーザー照射中、又はレーザー照射中のみに実施してもよい。
【0063】
11)上記10)に記載の物質bの供給方法は、レーザー照射と同時に行うことができる蒸着法、スパッタ法、AD法、塗布法、CVD法などにより物質aを被覆する方法としてもよい。
【0064】
12)上記1)〜11)に記載のレーザー誘起表面異物質積層方法(レーザー誘起表面層を有する3次元構造体の製造方法)において、3次元表面構造体(レーザー誘起表面層を有する3次元構造体)を、レーザーを照射している状態、又はレーザー照射後、任意雰囲気における熱処理を実施して形成してもよい。
【0065】
なお、量子ドットは、円錐状であっても半球状であってもよい。また、量子ドットの底部(基板との接点)の直径に比べて量子ドットの頂点部分の直径の方が大きくなるように(すなわち、くびれ形状に)量子ドットの形状を制御することもできる。
【0066】
以上の具体的、かつ、普遍的な方法を用いることにより、従来、レーザー照射では成しえなかった、レーザーを照射する表面基材(基板)に基板とは異なる物質から成る量子ドット形状を有する3次元積層構造体(レーザー誘起表面層を有する3次元構造体)を周期配列させる量子ドット形成表面の製造方法を提供できる。
【0067】
さらに、以上の具体的、かつ、普遍的な方法を用いることにより、基板の表面に、基板とは異なる物質をドット形状の他、線状のリップル2次元パターンあるいは3次元積層体をランダムに2次元配置させた構成を有する構造表面の製造方法を提供できる。
【0068】
さらに、上記のレーザー照射条件下においては、量子ドットの直径が1〜100ナノメートル程度の大きさを有し、量子ドットの高さは、照射量を変えることによりナノメートルからマイクロメートルまで自由に制御可能である。
【0069】
また、本発明においては、レーザーの量子性(波動性及び粒子性)、表面スパッタを引き起こす光ビームの粒子性と波としての性質を制御して、物質aで構成された基板の表面に、物質aとは異なる物質bを3次元積層し、かつ、波長を下回る間隔でパターンを配列することができる。
【0070】
そのため、レーザー加工に通常用いられるようにレンズでレーザーを高強度に集光することなく(レンズ不使用で)、試料に直接レーザーを照射し、レーザー発振装置一体型光学系盤兼試料固定盤を作製し、レーザーから試料までのすべてを同一系にすることにより、レーザーの位置の振動から試料の位置まですべての光学機器の振動を同期させるようにした。
【0071】
これにより、直線偏光性のレーザーの強度及び照射量を制御して照射することにより、上記独立積層体のレーザー誘起表面ナノ配列化が可能となった。
【0072】
また、本発明においては、量子ドット等を制御する手段として、(1)レーザー波長による組織制御、(2)偏光方向による組織制御、(3)照射角度による組織制御、及び(4)ターゲット種による組織制御という4つの方法で表面組織を制御できることを見出した。
【0073】
以下、本発明者の研究結果、及び本発明の実施例について述べる。
【0074】
はじめに、本発明者の研究結果を以下に箇条書きにしてまとめる。
【0075】
1)大気中でナノ秒パルスレーザーを、照射条件2.0×10〜4.0×10mJ/m/pulse、2〜20Hzであり、かつ、パルス数が200〜20000pulsesで照射すると、基板の表面に、基板を構成する物質とは異なる物質から成る量子ドット、リップル構造の凸部、または量子ドットより大きな形状を有する3次元構造の凸部を、同時に多数(複数個以上)、2次元周期パターン配列またはランダムな2次元配列を有しながら、基板の表面に3次元的に積層して製造することができた。
【0076】
2)基板の表面に周期配列した物質と異なる物質からなる量子ドットは、高さ10〜100nm、大きさ(直径)5nm〜50nmを典型的な大きさとし、配列の間隔(頂点間距離)は、波長及び波長の1/9〜1/4(60〜130nm)程度であった。
【0077】
3)基板を構成する物質と異なる物質からなるリップルパターン(起伏)の出現は、波長間隔で並び偏光面に垂直となっているが、リップルパターンの模様の縞状線が、整列した量子ドットの配列(各縞が量子ドットの並びで構成されている。)から構成できるようになった。
【0078】
4)基板を構成する物質と異なる物質からなる表面ドットあるいはリップルは、レーザー偏光面に対して垂直に並ぶことがわかった。
【0079】
5)レーザー偏光方向を制御、或いは偏光方向を傾斜して、基板を構成する物質と異なる物質からなるドットの配列方向を変えることができた。
【0080】
6)レーザー偏光方向を傾斜して照射することにより、基板を構成する物質と異なる物質からなるドットの間隔の制御が可能となった。
【0081】
7)逐次・重畳照射により基板を構成する物質と異なる物質からなるドットの2次元パターン化が可能となった。
【0082】
8)基板を構成する物質と異なる物質からなる表面ドットの2次元配列パターン化が可能となり、特徴的な光ルミネッセンスピーク並びに表面光電子特性を有すること、及び光・電子デバイス、量子ドットレーザー、半導体集積デバイス、パターン化触媒デバイス、ナノバイオデバイス等の作製手法として有効であることが判明した。
【0083】
本発明の基板を構成する物質と異なる物質からなる量子ドット形成表面の製造方法は、基板の表面にレーザー照射を施して、該表面に量子ドット形状を有する量子ドット構造を1バッチの照射で複数個同時に形成し、かつ、前記量子ドット構造を周期配列させる工程を含むことを特徴とする。
【0084】
本発明の基板を構成する物質と異なる物質からなる量子ドットの形成表面の製造方法は、前記表面に量子ドット構造を1バッチの照射で複数個同時に形成し、かつ、前記量子ドット構造を周期配列させる工程を、バッチの偏光を変えて複数組み合わせて同一場所に逐次照射することにより、前記量子ドット構造の周期配列を2次元パターン化することを特徴とする。
【0085】
本発明の基板を構成する物質と異なる物質からなる量子ドット形成表面の製造方法は、バッチの偏光を変えて複数組み合わせて同一場所に照射する工程を、同時に行う重畳照射とすることを特徴とする。
【0086】
本発明の基板を構成する物質と異なる物質からなる量子ドット形成表面の製造方法は、量子ドットの構造が線状ないし曲線状に連なる2次元パターンを構成することを特徴とする。
【0087】
本発明の基板を構成する物質と異なる物質からなる量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法は、上記の量子ドット形成表面の製造方法を用いる量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法であって、前記レーザー照射は、集光レンズを用いず、真空中又は大気中での偏光性パルスレーザー照射を利用して、レーザーの波動性による周期構造化、及び、表面原子の自己組織化機能を利用したボトムアップ法による波長以下の短周期構造化の両方の表面ドット配列化を同時に行うことを特徴とする。
【0088】
本発明の基板を構成する物質と異なる物質からなる量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法は、前記レーザービームがナノ秒パルスレーザーであり、かつ、レーザー照射条件が2.0×10〜4.0×10mJ/m/pulse、2〜20Hzであり、かつ、パルス数が200〜20000pulsesであることを特徴とする。
【0089】
本発明の基板を構成する物質と異なる物質からなる量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法は、量子ドットの直径が1〜100ナノメートルサイズであり、量子ドットの高さは、照射量を変えることによりマイクロメートルまで自由に制御可能であることを特徴とする。
【0090】
本発明の基板物質と異なる異物質からなる量子ドット2次元周期パターン配列形成表面構造は、上記の量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法により作製した量子ドット2次元周期パターン配列形成表面構造であって、直線偏光のレーザー照射により、その直線偏光の波長に対して10%以内の誤差範囲にある間隔(頂点間距離)を有する線状のドット配列と、線内におけるドットの間隔(頂点間距離)が波長の1/9〜1/4である規則配列とを有することを特徴とする。
【0091】
ここで、凸部の一種である量子ドットの頂点とは、1個の量子ドットにおいて基板の表面から最も離れた位置をいい、その位置と基板の表面との距離は、量子ドットの高さと呼ぶべきものである。したがって、量子ドットの間隔とは、相隣る量子ドットの頂点間の距離をいい、これを相隣る量子ドットの頂点間距離と呼ぶことにする。
【0092】
複数個の量子ドットで構成された複数本の列(規則的な配列構造)の場合、相隣る列の頂点間距離は、列を構成する量子ドットのうちの1個と、隣の列を構成する量子ドットのうち最短距離にあるものとの頂点間距離と定義する。この場合に、相隣る列の頂点間距離は、他の相隣る列の頂点間距離と等しいということができる。
【0093】
また、縞状の凸部の場合、ほぼ平行に並んだ線状の凸部の尾根(稜線)の部分の任意の点を頂点と呼ぶことにする。本明細書においては、ほぼ平行に並んだ線状の凸部の頂点間距離(間隔)は、相隣る凸部の頂点間距離のうち一方の凸部の頂点を固定し、他方の凸部の頂点が最短となる距離と定義する。
【0094】
この定義によれば、縞状の凸部の場合、凸部の間隔(頂点間距離)をレーザーの波長と同程度とすることができ、凸部の間隔(頂点間距離)の誤差をレーザーの波長に対して10%以内とすることができる、ということができる。
【0095】
本発明の基板を構成する物質と異なる物質からなる量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法は、量子ドットが連なって構成される縞状起伏の結晶が、下地である前記基板の表面からエピタキシャル成長すること、または、基板を構成する物質と異なる物質の特定結晶方位及び基板の特定結晶方位に相関を有する結晶成長をすることを特徴とする。
【0096】
本発明の基板を構成する物質と異なる物質からなる量子ドット2次元周期パターン配列形成表面構造は、上記の量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法により作製した量子ドット2次元周期パターン配列形成表面構造であって、量子ドットが連なって構成される縞状起伏の結晶が、下地である前記基板の表面からエピタキシャル成長したものであること、または、基板を構成する物質と異なる物質の特定結晶方位及び基板の特定結晶方位に相関を有した結晶成長をすることを特徴とする。
【0097】
本発明の基板を構成する物質と異なる物質からなる量子ドット形成表面の製造方法は、量子ビームの逐次照射又は重畳照射を用いて量子ドットの2次元パターン化を実施することを特徴とする。
【0098】
本発明の基板を構成する物質と異なる物質からなる量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法は、量子ビームの逐次照射又は重畳照射を用いて量子ドットの2次元パターン化を実施することを特徴とする。
【0099】
本発明の基板を構成する物質と異なる物質からなる量子ドット形成表面の製造方法は、量子ビームの照射をレーザー付設電子顕微鏡内において量子ドットパターン製造工程をその場観察しながら実施することを特徴とする。
【0100】
本発明の基板を構成する物質と異なる物質からなる量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法は、量子ビームの照射をレーザー付設電子顕微鏡内において量子ドットパターン製造工程をその場観察しながら実施することを特徴とする。
【0101】
本発明の基板を構成する物質と異なる物質からなる量子ドット形成表面の製造方法は、量子ビームの照射を、レーザー発振装置一体型光学系盤兼試料固定盤を用いて大気中で実施することを特徴とする。
【0102】
本発明の基板を構成する物質と異なる物質からなる量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法は、量子ビームの照射を、レーザー発振装置一体型光学系盤兼試料固定盤を用いて大気中で実施することを特徴とする。
【0103】
本発明の電子・電磁デバイスは、上記の量子ドット形成表面の製造方法又は上記の量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法を用いて作製したことを特徴とする。
【0104】
本発明の量子ドットデバイスは、上記の量子ドット形成表面の製造方法又は上記の量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法を用いて作製したことを特徴とする。
【0105】
本発明の光電子デバイスは、上記の量子ドット形成表面の製造方法又は上記の量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法を用いて作製したことを特徴とする。
【0106】
本発明の太陽電池は、上記の量子ドット形成表面の製造方法又は上記の量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法を用いて作製したことを特徴とする。
【0107】
本発明のパターン化触媒材料は、上記の量子ドット形成表面の製造方法又は上記の量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法を用いて作製したことを特徴とする。
【0108】
本発明の機能性デバイスは、上記の量子ドット形成表面の製造方法又は上記の量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法を用いて作製したことを特徴とする。
【0109】
本発明のパターンメディア用機能性材料は、上記の量子ドット形成表面の製造方法又は上記の量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法を用いて作製したことを特徴とする。
【0110】
本発明の量子ドットレーザーは、上記の量子ドット形成表面の製造方法又は上記の量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法を用いて作製したことを特徴とする。
【0111】
本発明の光増幅器は、上記の量子ドット形成表面の製造方法又は上記の量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法を用いて作製したことを特徴とする。
【0112】
本発明の量子暗号通信・量子コンピュータ用素子は、上記の量子ドット形成表面の製造方法又は上記の量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法を用いて作製したことを特徴とする。
【0113】
本発明のバイオデバイスは、上記の量子ドット形成表面の製造方法又は上記の量子ドット2次元周期パターン配列形成表面の製造方法を用いて作製したことを特徴とする。
【0114】
本発明の光電子デバイスは、600nm近傍に光ルミネッセンスピークを有することを特徴とする。
【0115】
本発明の量子ドットデバイスは、600nm近傍に光ルミネッセンスピークを有することを特徴とする。
【0116】
本発明のパターン化触媒材料は、仕事関数約5.6eV以上、他の部位(4.4〜5eV)と比較して0.6〜1.2eV以上の付加的エネルギーを有する表面光電子特性を有することを特徴とする。
【0117】
本発明の機能性デバイスは、仕事関数約5.6eV以上、他の部位(4.4〜5eV)と比較して0.6〜1.2eV以上の付加的エネルギーを有する表面光電子特性を有することを特徴とする。
【0118】
本発明の基板を構成する物質と異なる物質からなる量子ドット形成表面構造は、レーザー照射により同時に複数の量子ドットを作製し、複数の量子ドット構造が表面にパターン化されて成ることを特徴とする。
【0119】
本発明の量子デバイスは、レーザー照射により同時に複数の基板物質と異なる物質からなる量子ドットを作製し、複数の量子ドット構造が表面にパターン化されて成ることを特徴とする。
【0120】
本発明の量子ドット形成表面構造は、レーザー照射により同時に複数の、基板物質と異なる物質からなる量子ドットを作製し、該複数の量子ドットの結晶が、その下地の結晶からエピタキシャル成長して成る均一材質を有し、複数の量子ドット構造が表面にパターン化されて成ることを特徴とする。
【0121】
本発明の基板を構成する物質と異なる物質からなる量子ドットで構成されるデバイスは、レーザー照射により同時に複数の、基板を構成する物質と異なる物質からなる量子ドットを作製し、該複数の量子ドットの結晶が、その下地の結晶にエピタキシャル的な方位関係を有して結晶成長する場合があることを具備した、基板を構成する物質と異なる物質からなる複数の量子ドット構造が表面にパターン化されて成ることを特徴とする。
【0122】
以下、図を用いて説明する。
【0123】
図1A〜1Eは、実施例のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体の製造工程を示す模式断面図である。
【0124】
図1Aは、基板11(基材)の表面に凸部形成物質の膜12を形成した状態である。
【0125】
膜12の形成は、スパッタリング又は蒸着によって行った。膜12の厚さは、約10nmとした。
【0126】
図1Bは、膜12を形成した基板11の上方からレーザー光13を照射している状態を示したものである。
【0127】
レーザー光13は、波長532nmのパルスレーザーを用い、2.0×10〜4.0×10mJ/m/pulse、2〜20Hz、かつ、パルス数200〜20000pulsesの条件で照射した。
【0128】
図1Cは、基板11の表面の跳び跳びの位置に凸部14が形成される過程を示したものである。
【0129】
膜12の厚さが減少し(膜12が徐々に薄くなり)、ドット状又はリップル状の凸部14が成長する。
【0130】
図1Dは、基板11の表面において凸部14がほぼ完成した状態を示したものである。
【0131】
膜12を構成していた凸部形成物質は、凸部14に取り込まれて消失した状態である。
【0132】
図1Eは、凸部14が完成し、レーザー光13の照射を停止した状態を示したものである。
【0133】
凸部14は、レーザー光13の波長532nmとほぼ等しい間隔で列をなしている。
【0134】
図2A〜2Cは、図1A〜1Eに示す製造工程を経て基板11の表面に形成されたドット状の凸部14を有するレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を示したものである。
【0135】
図2Aは、基板11及び凸部14を有するレーザー誘起表面層を有する3次元構造体の断面図である。
【0136】
図2Bは、規則配列構造を有するレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を示したものである。
【0137】
本図においては、ドット状の凸部14が基板11の表面に2次元的に整列した配置となっている。凸部14の間隔21は、レーザー光13の波長532nmとほぼ等しく、凸部14の間隔22(頂点間距離)は、レーザー光13の波長532nmの1/9〜1/4(60〜130nm)である。すなわち、列をなす複数個の凸部14(量子ドット)の頂点間距離は、レーザーの波長よりも短く、相隣る列の頂点間距離は、一本の列における頂点間距離より長い。
【0138】
図2Cは、ランダム配列構造を有するレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を示したものである。
【0139】
本図においては、ドット状の凸部14が基板11の表面に2次元的にランダムな配置となっている。
【0140】
本図に示すレーザー誘起表面層を有する3次元構造体のランダム配列構造は、レーザー光13の照射の際、レーザー照射部の中心位置を回転軸として基板11を一定速度(1rpm)で回転させることによって形成したものである。
【0141】
図1A〜1Eに示す製造工程を経て基板11の表面に形成されたドット状の凸部14をエネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X−ray spectroscopy:EDX)により分析した結果、凸部14は、Si及びAuのアモルファス化合物であり、非平衡な相として存在していることがわかった。通常、Si及びAuは固溶体を形成することはなく、上記のアモルファス化合物は、本実施例において見出されたものである。
【0142】
また、Si及びAuのアモルファス化合物で形成された凸部14を有する基板11を500℃以上に加熱した後は、Si及びAuの2相組織(共晶組織)となり、結晶化組織に変化したことがわかった。
【0143】
なお、基板11を形成する第一の元素と膜12を形成する第二の元素(凸部形成物質に含まれる。)との組み合わせは、本実施例に限定されるものではなく、多くの組み合わせがある。
【0144】
基板11を形成する第一の元素は、製造工程において固体状態であればよい。また、基板11は、平滑であってもよいし、凹凸を有していてもよい。
【0145】
凸部形成物質は、膜12の状態(固体状態)で用いたが、これに限定されるものではなく、凸部形成物質を基板11の表面に気体状態、液滴状態(微細液滴状態が望ましい。)又はエアロゾル状態で供給してもよいし、基板11の表面にドット状又はリップル状に固体状態又は液体状態で付着させてもよい。また、凸部形成物質を基板11の表面に吸着させてもよい。さらに、凸部形成物質は、レーザーの照射によって化学変化を起こして構成元素の一部が気化するものであってもよい。すなわち、凸部形成物質を構成する元素のうち一部の元素のみが凸部14を形成するものとしてもよい。
【0146】
第一の元素と第二の元素との組み合わせは、周期律表における同一の元素又は異なる元素の自由な組み合わせを選ぶことができる。
【0147】
すなわち、第一の元素は、C、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Ir、Pt、Au及びPbからなる群から選択される少なくとも1種類の元素であることが望ましい。
【0148】
また、第二の元素も、C、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Ir、Pt、Au及びPbからなる群から選択される少なくとも1種類の元素であることが望ましい。第二の元素に関しては、上記以外の元素であって製造工程において気体状態となる元素であっても用いることができる。
【0149】
レーザー照射条件は、大気中でナノ秒パルスレーザーを、照射条件2.0×10〜4.0×10mJ/m/pulse、2〜20Hz、かつ、パルス数200〜20000pulsesとすることが望ましい。また、パルス数は、500〜5000pulsesとすることが更に望ましい。
【0150】
図3は、リップル状のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を示す模式平面図である。
【0151】
本図に示すレーザー誘起表面層を有する3次元構造体は、基板11の表面にリップル状の凸部15を形成したものである。凸部15の間隔21は、レーザー光13の波長532nmとほぼ等しくなっている。
【0152】
以上に述べた図2A〜2C及び図3に対応するレーザー誘起表面層を有する3次元構造体の実際の写真を示し、実施例を説明する。
【実施例1】
【0153】
図4は、図2Aのドット状のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を示す断面TEM写真である。
【0154】
ここで、TEMは、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)の略称である。
【0155】
本図においては、基板11を構成する第一の元素としてSiを用い、凸部形成物質(第二の元素)としてAuを用いた。
【0156】
本図に示すレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を作製する際のレーザー照射条件は、大気中パルスレーザーであって、100mJ/pulse(3.5×10J/m/pulse)、2Hz、2000pulsesである。
【0157】
TEMによる撮影の際に試料の表面を保護するため、試料の表面には、有機金属粒子膜16(有機パラジウム)が薄くコーティングしてあり、その上にカーボン保護膜31がコーティングしてある。また、本図から、凸部14の間隔21(頂点間距離)は、照射したレーザーの波長532nmとほぼ等しいことがわかる。
【0158】
分析の結果、基板11の表面の凸部14は、Au−Si合金で形成されていることがわかった。
【実施例2】
【0159】
図5は、図2Bのドット状の規則配列構造を有するレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を示す表面SEM写真である。本図は、表面の法線方向と45°をなす角度から撮影したものである。
【0160】
ここで、SEMは、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)の略称である。
【0161】
本図においては、基板11を構成する第一の元素としてモリブデン(Mo)を用い、凸部形成物質(第二の元素)として炭素(C)を用いた。
【0162】
本図に示すレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を作製する際のレーザー照射条件は、大気中パルスレーザーであって、100mJ/pulse(3.5×10J/m/pulse)、2Hz、2000pulsesである。
【0163】
本図から、凸部14の間隔21(頂点間距離)は、照射したレーザーの波長532nmとほぼ等しく、間隔22(頂点間距離)は、照射したレーザーの波長532nmより小さいことがわかる。間隔22(頂点間距離)は、70〜130nmで若干のばらつきはあるが、概ね照射したレーザーの波長の1/8〜1/4の範囲であることがわかる。
【0164】
分析の結果、凸部14は炭素(C)で形成されていることがわかった。
【実施例3】
【0165】
図6は、図2Cのドット状のランダム配列構造を有するレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を示す表面SEM写真である。本図は、表面の法線方向と45°をなす角度から撮影したものである。
【0166】
本図においては、基板11を構成する第一の元素としてMoを用い、凸部形成物質(第二の元素)としてSiを用いた。
【0167】
本図に示すレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を作製する際のレーザー照射条件は、大気中パルスレーザーであって、100mJ/pulse(3.5×10J/m/pulse)、2Hz、500pulsesである。
【0168】
本図において、凸部14は、基板11の表面にランダムに配置されているが、基板11の表面における凸部14の密度は、ほぼ均一であることがわかる。また、凸部14の間隔(頂点間距離)は、60〜130nmで若干のばらつきはあるが、概ね照射したレーザーの波長の1/9〜1/4の範囲であることがわかる。
【0169】
分析の結果、凸部14はSiで形成されていることがわかった。
【実施例4】
【0170】
図7は、図3のリップル状の規則配列構造を有するレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を示す表面SEM写真である。本図は、表面の法線方向と45°をなす角度から撮影したものである。
【0171】
本図においては、基板11を構成する第一の元素としてNiを用い、凸部形成物質(第二の元素)としてAuを用いた。
【0172】
本図に示すレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を作製する際のレーザー照射条件は、大気中パルスレーザーであって、114mJ/pulse(4.0×10J/m/pulse)、2Hz、3000pulsesである。
【0173】
本図において、凸部15は、縞状、すなわち、ほぼ等間隔に並んだ稜線を有する形状である。
【0174】
本図から、凸部15の間隔21(頂点間距離)は、照射したレーザーの波長532nmとほぼ等しいことがわかる。
【0175】
分析の結果、凸部15はAu−Ni合金で形成されていることがわかった。
【0176】
図3のリップル状の規則配列構造を有するレーザー誘起表面層を有する3次元構造体に関しては、このほか、基板11を構成する第一の元素としてCuを用い、凸部形成物質(第二の元素)としてCrを用いた結果を次に示す。
【0177】
この場合、レーザー照射条件のうち、パルス数は500pulsesとした。
【0178】
ここで、第二の元素であるCrは、レーザー照射の前に、スパッタ法(スパッタリング)により基板11の表面に約10nmの厚さで付着させた。第二の元素を付着させる方法は、スパッタ法(スパッタリング)に限定されるものではなく、他の方法(蒸着法等)を用いても同様のリップル状の凸部15を有するレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を作製することができた。
【0179】
また、基板11を構成する第一の元素としてSiを用い、凸部形成物質(第二の元素)としてAuを用いても、同様にリップル構造を有するレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を作製することができた。この場合も、レーザー照射条件のうち、パルス数は500pulsesとした。
【0180】
パルス数は低い方が望ましく、200〜3000pulsesがよい。
【0181】
以下、いくつかの変形例について説明する。
【0182】
図1A〜1Eに示すレーザー誘起表面層を有する3次元構造体の製造工程を行う前、すなわち、基板11の表面に膜12を形成する前に、基板11の表面に実施例1と同じ条件のレーザー照射を行い、その後、基板11の表面に膜12を形成する凸部形成物質を供給し、さらに、膜12を形成した基板11の上方から上記のレーザー照射と同じ条件でレーザー照射を行った。
【0183】
この場合も、実施例1と同様に、基板11の表面における跳び跳びの位置に凸部14を形成することができた。
【0184】
また、レーザー照射と凸部形成物質の供給とを繰り返すことによっても、凸部14を形成でき、凸部14の形状を変化させることができた。
【0185】
実施例4の条件で基板11の表面に膜を形成する前に、基板11の表面に実施例4と同じ条件のレーザー照射を行い、その後、基板11の表面に膜を形成する凸部形成物質を供給し、さらに、膜を形成した基板11の上方から上記のレーザー照射と同じ条件でレーザー照射を行った。
【0186】
この場合も、実施例4と同様に、基板11の表面のリップル状の凸部15を形成することができた。
【0187】
また、レーザー照射と凸部形成物質の供給とを繰り返すことによっても、凸部15を形成でき、凸部15の形状を変化させることができた。
【0188】
実施例2〜4における凸部14を構成する元素が、凸部形成物質(第二の元素)となるように第一の元素と第二の元素との組み合わせを選択した場合にも、図2B、2C及び3に示す各種のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を形成することができた。
【0189】
この場合、第二の元素として、一般に知られている条件では、第一の元素と固溶体または金属間化合物を形成しない元素を選ぶことができる。さらに、この場合、第一の元素がレーザー照射によるスパッタリングレイトの低い物質が好ましい。
【0190】
凸部14を構成する物質は、1種類以上の結晶で構成されたものも、1種類以上のアモルファスで構成されたものも、1種類以上の結晶及びアモルファスが共存するものも製造することができた。
【0191】
凸部形成物質(第二の元素)の供給方法が、レーザー照射前に終了し、基板の表面が凸部形成物質(第二の元素)で粉末状ないし膜状に被覆している場合にも、上記レーザー誘起表面異物質構造(図2A〜2C及び図3)を形成することができた。
【0192】
凸部形成物質(第二の元素)の供給方法が、蒸着法、スパッタ法、AD法、塗布法、CVD法などの物質Aを被覆する方法である場合にも、上記レーザー誘起表面異物質構造(図2A〜2C及び図3)を形成することができた。
【0193】
凸部形成物質(第二の元素)の供給を、レーザー照射前及びレーザー照射中、又はレーザー照射中のみに実施する場合にも、上記レーザー誘起表面異物質構造(図2A〜2C及び図3)を形成できた。
【0194】
凸部形成物質(第二の元素)の供給方法が、レーザー照射と同時に行える、蒸着法、スパッタ法、AD法、塗布法、CVD法などの基板の表面を被覆する方法である場合にも、上記レーザー誘起表面異物質構造(図2A〜2C及び図3)を形成することができた。
【0195】
上記のレーザー誘起表面異物質積層方法において、3次元表面構造体が、レーザー照射と同時に、又はレーザー照射後に、任意雰囲気における熱処理を実施して形成される場合にも、上記レーザー誘起表面異物質構造(図2A〜2C及び図3)を形成することができた。
【実施例5】
【0196】
本発明の方法により製造した上記のレーザー誘起表面異物質構造有する材料のうち、量子ドットパターンを有する本発明の量子デバイスについて、量子機能物性測定を実施した量子ドットパターンの光ルミネッセンス(PL)測定を実施した。
【0197】
量子ドットパターンを壊さないように、フェムト秒パルスレーザー(波長800nm)によりPL測定を行った。量子ドットパターン材料からの信号は600nm付近に半値幅20nm程度と非常にシャープなシグナルが検出された。これはドット表面(自然酸化した界面)からのグリーンバンドの量子ドットシグナルであり、本発明の量子ドットパターンを形成した量子デバイスは良好な量子機能物性を有することが検証できた。
【実施例6】
【0198】
本発明の方法により製造した量子ドットパターン(実施例5)を有する量子デバイスについて、量子機能表面物性を測定した。
【0199】
量子機能表面物性として光電子放出測定(PEEM:光を当てて電子放出を検出)を実施した。
【0200】
測定対象部のSEM写真においては、量子ドットリップル部が白いコントラスト部となり、その他の領域がグレーコントラスト部となっていた。
【0201】
220〜280nmの紫外光を用いてPEEM測定を行うと、量子ドットリップル形成部においては、電子放出が起こらず黒くなっていた。一方、220nm(5eV)のカットフィルターを入れて短波長域をカットした場合、全域が暗くなったことから、レーザー強度が高く、リップルパターンができている領域とその周りの部分とは表面の仕事関数が異なることが判った。
【0202】
リップルパターンでない部分は、約5.0eV(4.4〜5.6eV)で、量子ドットリップル部は5.6eV以上の仕事関数値を有していると考えることができる。
【0203】
この特徴的な表面光電子特性により、本発明の量子ドットパターンを形成した量子デバイスは、付加的表面エネルギー(この場合は0.5〜1.2eV)を有する触媒デバイスや機能性表面デバイスとしても使用可能であることを確認することができた。
【0204】
本発明の方法を用いることにより、従来、レーザー照射では成しえなかった、レーザーを照射する基板の表面に基板を構成する物質とは異なる物質で構成された量子ドット形状を有する3次元積層構造(凸部)を周期配列させる量子ドット形成表面の製造方法を提供することができる。
【0205】
さらに、上述の具体的、かつ、普遍的な本発明の方法を用いることにより、表面の形状付与形態として、基板の表面に、基板を構成する物質とは異なる物質をドット形状の他、線状のリップル2次元パターンあるいは3次元積層体をランダムに2次元配置させた構成を有する構造表面の製造方法を提供することができる。
【0206】
また、上述した本発明の製造方法を用いることにより、より性能の優れた電子・電磁デバイス、量子ドットデバイス、光電子デバイス、量子ドット太陽電池、パターン化触媒材料、機能性デバイス、パターンメディア用機能性材料、量子ドットレーザー、光増幅器、量子暗号通信・量子コンピュータ用素子構造、エネルギー素子、バイオデバイス等を提供できる。
【符号の説明】
【0207】
11:基板、12:膜、13:レーザー光、14、15:凸部、16:有機金属粒子膜、21、22:間隔、31:カーボン保護膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の元素を含む基材の表面に、第二の元素を含む凸部形成物質を供給し前記基材の表面にレーザーを照射することにより、前記基材の表面に、前記第二の元素を主成分とする複数個の凸部、又は前記第一の元素及び前記第二の元素を含む複数個の凸部を前記レーザーの波長以下の頂点間距離で形成する方法であって、前記第二の元素は、前記第一の元素と同一の元素又は異なる元素であることを特徴とするレーザー誘起表面層を有する3次元構造体の製造方法。
【請求項2】
前記凸部形成物質は、前記基材の表面に吸着させ、又は、膜状若しくは粒子状に付着させ、その後、前記レーザーを照射することを特徴とする請求項1記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体の製造方法。
【請求項3】
前記凸部形成物質は、気体状態で前記基材の表面に供給することを特徴とする請求項1記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体の製造方法。
【請求項4】
前記第一の元素及び前記第二の元素はそれぞれ、C、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Ir、Pt、Au及びPbからなる群から選択される少なくとも一種類以上の元素であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体の製造方法。
【請求項5】
前記凸部形成物質は、蒸着法、スパッタ法、エアロゾルデポジション法、塗布法又は化学気相蒸着法を用いて供給することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体の製造方法。
【請求項6】
前記凸部形成物質は、前記レーザー照射前にのみ、前記レーザー照射前及び前記レーザーの照射と同時に、又は前記レーザーの照射と同時にのみ供給することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体の製造方法。
【請求項7】
前記レーザーの照射と同時に、又は前記レーザーの照射後に、熱処理を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体の製造方法。
【請求項8】
前記レーザーは、ナノ秒パルスレーザーであり、前記レーザーの照射条件は、2.0×10〜4.0×10mJ/m/pulse、2〜20Hz、かつ、パルス数200〜20000pulsesであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体の製造方法。
【請求項9】
第一の元素を含む基材と、前記基材の表面にレーザーを照射することにより形成した複数個の凸部とを含む3次元構造体であって、前記凸部は、第二の元素を主成分とするもの又は前記第一の元素及び前記第二の元素を含むものであり、前記第二の元素は、前記第一の元素と同一の元素又は異なる元素であり、前記複数個の凸部の頂点間距離は、前記レーザーの波長以下であることを特徴とするレーザー誘起表面層を有する3次元構造体。
【請求項10】
前記凸部は、前記レーザーの波長以下の頂点間距離で並んだ複数個の量子ドットで構成された複数本の列を形成し、相隣る前記列の頂点間距離は、他の相隣る前記列の頂点間距離と等しいことを特徴とする請求項9記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体。
【請求項11】
前記凸部は、前記レーザーの波長以下の頂点間距離で複数個の量子ドットが二次元的にランダムに配列されたものであることを特徴とする請求項9記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体。
【請求項12】
前記凸部は、縞状であることを特徴とする請求項9記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体。
【請求項13】
前記凸部は、電子及びホールの対である励起子を閉じ込める構造であることを特徴とする請求項9記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体。
【請求項14】
前記第一の元素及び前記第二の元素はそれぞれ、C、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Ir、Pt、Au及びPbからなる群から選択される少なくとも一種類以上の元素であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項に記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体。
【請求項15】
前記凸部は、単一の相又は複数の相からなる合金で形成されていることを特徴とする請求項9〜14のいずれか一項に記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体。
【請求項16】
前記凸部は、結晶及びアモルファスのうち少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項15記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体。
【請求項17】
前記列をなす前記複数個の量子ドットの頂点間距離は、前記レーザーの波長よりも短く、相隣る前記列の頂点間距離は、一本の前記列における前記頂点間距離より長いことを特徴とする請求項10記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体。
【請求項18】
相隣る前記列の頂点間距離は、前記波長に対して10%以内の誤差範囲であることを特徴とする請求項17記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体。
【請求項19】
前記列をなす前記複数個の量子ドットの頂点間距離は、前記波長の1/9〜1/4であることを特徴とする請求項18記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体。
【請求項20】
請求項9〜19のいずれか一項に記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を用いたことを特徴とする機能性材料。
【請求項21】
請求項9〜19のいずれか一項に記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を用いたことを特徴とする電子・電磁デバイス。
【請求項22】
請求項9〜19のいずれか一項に記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を用いたことを特徴とする量子ドットデバイス。
【請求項23】
請求項9〜19のいずれか一項に記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を用いたことを特徴とする光電子デバイス。
【請求項24】
請求項9〜19のいずれか一項に記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を用いたことを特徴とする太陽電池。
【請求項25】
請求項9〜19のいずれか一項に記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を用いたことを特徴とする触媒。
【請求項26】
請求項9〜19のいずれか一項に記載のレーザー誘起表面層を有する3次元構造体を用いたことを特徴とするナノバイオ材料。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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