説明

レーザー距離計

【課題】光源からの光が受光光路に混入するのを防止し、小型で測定距離の長大化と測定精度の高精度化を図ることが可能なレーザー距離計を提供する。
【解決手段】レーザー距離計300は、目標物体側から順に、対物レンズ30、部分反射部材20、プリズム部材50、及び、接眼レンズ80からなる視準光学系と、部分反射部材20に設けられ、視準光学系の光路から第1の測定光路を分岐させる第1の光路分岐面21aと、プリズム部材50内の一つの反射面であって、視準光学系の光路から第2の測定光路を分岐させる第2の光路分岐面54aと、第1の測定光路または第2の測定光路のいずれか一方に配置され、対物レンズ30を介して目標物体に投射するための光を発射する光源10と、第1の測定光路または第2の測定光路の他方に配置され、目標物体で反射して対物レンズ30で集光した反射光を受光する受光素子40と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー距離計に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー距離計は、送光レンズ系と受光レンズ系とを有し、送光レンズ系を介して目標物体に光を投射し、その反射光を受光レンズ系を介して受光することでこの目標物体までの距離を測定する装置である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−350543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなレーザー距離計を小型化するために、単一の対物レンズで、視準、送光及び受光の全てを行うように構成することが考えられる。しかしながら、このような構成とすると、送光光路と受光光路とが接近して配置されることになるため、光源から発射された光の一部が、このレーザー距離計の内部で受光光路に混入してノイズとなり、S/N比を低下させ、距離測定精度が低下してしまうという課題があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、光源からの光が受光光路に混入するのを防止し、小型で測定距離の長大化と測定精度の高精度化を図ることが可能なレーザー距離計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係るレーザー距離計は、目標物体側から順に、対物レンズ、部分反射部材、及び、正立プリズムからなる視準光学系と、部分反射部材に設けられ、視準光学系の光路から第1の測定光路を分岐させる第1の光路分岐面と、正立プリズム内の一つの反射面であって、視準光学系の光路から第2の測定光路を分岐させる第2の光路分岐面と、第1の測定光路または第2の測定光路のいずれか一方に配置され、対物レンズを介して目標物体に投射するための光を発射する光源と、第1の測定光路または第2の測定光路の他方に配置され、目標物体で反射して対物レンズで集光した光を受光する受光素子と、を有し、第1の光路分岐面を含み、この第1の光路分岐面から第2の光路分岐面までの間に存在する光学面毎の像側の次の光学面までの光軸上の距離をdiとし、各々の光学面の像側の媒質の屈折率をniとし、対物レンズの焦点距離をfとしたとき、次式
0.05 ≦ (Σdi/ni)/f ≦ 0.5
の条件を満足することを特徴とする。
【0007】
このようなレーザ距離計において、第1の光路分岐面は、可視光を透過し且つ前記光を反射する反射領域と、可視光及び前記光を透過する透過領域とを有することが好ましい。
【0008】
また、このようなレーザ距離計において、第2の光路分岐面は、可視光を反射し且つ前記光を透過することが好ましい。
【0009】
また、このようなレーザ距離計は、第1の光路分岐面に対する前記光の入射角をθ1としたとき、次式
20° ≦ θ1 ≦ 40°
の条件を満足することが好ましい。
【0010】
また、このようなレーザ距離計は、第2の光路分岐面に対する前記光の入射角をθ2としたとき、次式
15° ≦ θ2 ≦ 40°
の条件を満足することが好ましい。
【0011】
また、このようなレーザー距離計において、視準光学系は、対物レンズにより形成された像を観察する接眼レンズを有することが好ましい。
【0012】
また、このようなレーザー距離計は、対物レンズの少なくとも一部を、視準光学系の光軸に対して直交する方向の成分を持つように移動させることが好ましい。
【0013】
また、このようなレーザー距離計は、合焦に際し、対物レンズの少なくとも一部を、視準光学系の光軸に沿って移動させることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るレーザー距離計を以上のように構成すると、送光光路と受光光路とが適度に距離を隔てて配置されるため、光源から発射された光の一部が、レーザー距離計の内部で受光光路に混入してノイズとなることが起こりにくく、小型で測定距離の長大化と測定精度の高精度化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】測距のための送光及び受光の構成を説明するための説明図であって、部分反射部材の送光領域を反射領域とした場合を示す。
【図2】測距のための送光及び受光の構成を説明するための説明図であって、部分反射部材の送光領域を透過領域とした場合を示す。
【図3】送光領域を反射領域としたときのレーザー距離計の構成を示す説明図である。
【図4】送光領域を透過領域としたときのレーザー距離計の構成を示す説明図である。
【図5】対物レンズで防振及び合焦するためのレーザー距離計の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、図1に示すレーザ距離計100を用いて、単一の対物レンズを用いて測距のための送光及び受光を行うための構成について説明する。このレーザー距離計100は、半導体レーザーである光源10と、部分反射部材20と、対物レンズ30と、受光素子40と、を有して構成される。光源10は、対物レンズ30を含む送光レンズ系の焦点若しくはその近傍に配置されている。また、部分反射部材20は、光軸に対して斜めに傾けて配置される部分反射面21を有し、光源10と対物レンズ30との間に配置されている。この部分反射面21は、3つの領域に分割されており、光軸を含むように位置する略矩形状の送光領域21aと、その上下に配置された略矩形状の2つの受光領域21bと、から構成されている。また、この第1の実施形態においては、送光領域21aは光源10からの光を反射する反射領域(R)として構成され、受光領域21bは、対物レンズ30側から入射してきた反射光を透過する透過領域(T)として構成されている。そしてこの受光領域21bを透過した光が集光する位置(対物レンズ30を含む受光レンズ系の焦点若しくはその近傍)に受光素子40が配置されている。
【0017】
このような構成のレーザー距離計100において、光源10からパルス状に発射されたレーザー光(以下、「測定光」とも呼ぶ)は、部分反射面21の略中央部に形成された送光領域21aで反射されて対物レンズ30に入射し、この対物レンズ30で略平行光に変換されて図示しない目標物体に投射される。そして、この目標物体で反射し拡散された測定光(以下、「反射光」とも呼ぶ)は、その一部が対物レンズ30に入射して集光され、部分反射面21に形成された受光領域21bを透過して受光素子40に集光される。そのため、受光した反射光に応じてこの受光素子40から出力される電気信号を図示しない距離算出部により処理し、測定光の発射から反射光の受光までの時間を測定することにより、この時間と光の速さを用いてレーザー距離計100から目標物体までの距離を算出することができる。このように、測定光の送光と反射光の受光とを、共通の部分反射部材20及び対物レンズ30を用いて構成すると、このレーザー距離計100を小型化することができる。
【0018】
また、図2に示すレーザー距離計200のように、部分反射部材20に形成された部分反射面21は、送光領域21aを透過領域(T)とし、2つの受光領域21bを反射領域(R)として構成することもできる。この場合、光源10から発射された測定光は、部分反射面21の中央部に形成された送光領域21aを透過して対物レンズ30に入射し、この対物レンズ30で略平行光に変換されて図示しない目標物体に投射され、この目標物体で反射し拡散された反射光は、その一部が対物レンズ30に入射して集光され、部分反射面21に形成された受光領域21bで反射されて受光素子40に結像するように構成される。なお、このような構成においても、光源10(発光部10a)及び部分反射面21(送光領域21a及び受光領域21b)の配置については上述の通りである。
【0019】
それでは、図3を用いて上述のレーザー距離計100を基本構成として有し、目標物体を対物レンズ30を介して視準しながら測距することができるレーザ距離計300について説明する。このレーザー距離計300は、物体側から順に、対物レンズ30と、部分反射部材20と、プリズム部材50と、保護フィルター60と、液晶表示素子70と、接眼レンズ80と、を有して構成される。また、部分反射部材20の部分反射面21で分岐された第1の測定光路上に、コンデンサレンズ11と、光源10と、が配置されている。なお、部分反射面21の送光領域21aは、レーザー光(上述の測定光であって、赤外光)を反射し、可視光を透過するダイクロイックミラーで構成されている(すなわち、この部分反射部材20は、ダイクロイックプリズムの構成を有している)。
【0020】
光源10から放射された測定光はコンデンサレンズ11で集光されて部分反射部材20の入射面20aから入射する。そして、この部分反射部材20内で全反射を2回して部分反射面21の送光領域21aに導かれる。なお、光源10から発射されて部分反射面21の送光領域21aに入射した測定光が、対物レンズ30の光軸に沿って反射するように、この部分反射面21の光軸に対する角度及び光源10の位置が調整されている。そして、この部分反射面21の送光領域21aで反射した測定光は対物レンズ30で略平行光に変換され、目標物体に投射される。
【0021】
なお、部分反射部材20の入射面20aは、光源10からの測定光がこの入射面20aに略垂直に入射するように構成されている。また、光源10から放射されて部分反射面21を透過した測定光(送光領域21aを透過した測定光または、受光領域21bを透過した測定光)が、受光レンズ系に混入しないように、透過した測定光が入射する位置に、この測定光を吸収する赤外吸収フィルター22が配置されている。
【0022】
一方、目標物体に投射された測定光の一部はこの目標物体で反射して散乱され、その一部が上述のように対物レンズ30に入射する。そして、この対物レンズ30で集光されて部分反射部材20に入射し、部分反射面21の受光領域21bを透過し、プリズム部材50に入射する。このプリズム部材50は、対物レンズ30で形成される被写体(目標物体)の倒立像を正立像に変換する正立プリズムを構成する第1プリズム51及び第2プリズム52と、第2プリズム52に接合されて、その接合面に目標物体を視準するための可視光を反射し、レーザ光である測定光(反射光)を透過することによりこれらの光を分離する第2の光路分岐面である波長分離面54aが形成された第3プリズム53と、から構成されている。このように、第2プリズム52及び第3プリズム53でダイクロイックプリズム54を形成している。この第2の光路分岐面(波長分離面54a)で分岐された第2の測定光路上に、背景光遮断フィルター41と、受光素子40と、が配置されている。
【0023】
部分反射部材20の部分反射面21(受光領域21b)を透過してプリズム部材50の第1プリズム51に入射した反射光は、この第1プリズム51内で全反射を3回行い、第2プリズム52に入射し、この第2プリズム52と第3プリズム53との接合面に形成された波長分離面54aに入射する。上述のように、この波長分離面54aはレーザー光を透過するため、反射光は波長分離面54aを透過して第3プリズム53の射出面53aから射出し、背景光遮断フィルター41を透過して受光素子40に集光される。なお、このような反射光(目標物体で反射された測定光)には、この測定光以外の光が含まれているため、受光素子40で受光されたときにノイズとなってSN比を低下させてしまう。そのため、背景光遮断フィルター41を用いて、測定光以外の光を極力遮断し、SN比を向上させている。また、第3プリズム53の射出面53aは、反射光がこの射出面53aに略垂直に入射(射出)するように構成されている。
【0024】
また、このような構成のレーザー距離計300において、被写体(目標物体)から射出された光(可視光)は、対物レンズ30で集光され、部分反射部材20を透過して、第1プリズム51に入射し、この第1プリズム51内で3回全反射して第2プリズム52に入射し、さらに、波長分離面54aに入射する。この波長分離面54aは、上述のように可視光を反射するため、目標物体からの可視光は波長分離面54aで反射し、さらに、第2プリズム52内で1回全反射して第2プリズム52から射出し、保護フィルター60を透過した後、被写体の一次像(正立像)として結像される。この一次像と略同一位置には、液晶表示素子70が配置されており、測定者は、接眼レンズ80を介して、被写体の一次像と液晶表示素子70に表示された画像とを重ね合わせて拡大観察することができる。このように、対物レンズ30、正立プリズム(第1及び第2プリズム51,52)、保護フィルター60、液晶表示素子70及び接眼レンズ80で構成された視準光学系により、測定者は目標物体の視準を行うことができる。
【0025】
ここで、反射光(レーザー光)は、上述のように波長分離面54aを透過させることにより可視光から分離することができるが、この波長分離面54aで分離されずに残った(波長分離面54aで反射した)レーザー光が測定者の眼に届かないように、保護フィルター60でこのようなレーザー光を除去している。
【0026】
それでは、このようなレーザー距離計300を構成するために光学系に要求される条件について説明する。まず、このレーザー距離計300は、第1の光路分岐面(部分反射面21の送光領域21a)を含み、この第1の光路分岐面から第2の光路分岐面(波長分離面54a)までの間に存在する光学面の各面から像側の次の光学面までの面間隔(光軸上の距離)をdiとし、各面の像側の媒質の屈折率をniとし、対物レンズ30の焦点距離をfとしたとき、次式(1)を満足することが望ましい。なお、Σは、上記各面iにおいてdi/niを演算しそれらの総和を求める関数である。
【0027】
0.05 ≦ (Σdi/ni)/f ≦ 0.5 (1)
【0028】
条件式(1)は、手に持って使用される携帯型のレーザー距離計300であって、光源10から発射された測定光の一部が、このレーザー距離計300の内部で受光光路に混入してノイズとなり、反射光検出のS/N比を低下させ、距離測定の精度が低下するのを防止するための条件である。この条件式(1)の下限値を下回ると、送光光路と受光光路が接近しすぎて、光源10から発射された測定光の一部が、レーザー距離計300の内部で受光光路に混入してノイズとなり、S/N比を低下させ、距離測定精度が低下する場合がある。反対に、条件式(1)の上限値を上回ると、レーザー距離計300全体が大きくなり過ぎて、手に持って使用できるように小型化することが困難となる。
【0029】
また、このレーザー距離計300は、第1の光路分岐面(部分反射面21の送光領域21a)に入射して反射するときの測定光(光源10から放射され、第1の光路分岐面で反射した後、対物レンズ30の光軸上を進む光線)の入射角をθ1としたとき、次の条件式(2)を満足することが望ましい。
【0030】
20° ≦ θ1 ≦ 40° (2)
【0031】
条件式(2)は、第1の光路分岐面を適切に構成するための条件である。この条件式(2)の下限値を下回ると、距離測定に必要な測定光の光量を確保するために、部分反射部材(ダイクロイックプリズム)20が大きくなり過ぎて、小型のレーザー距離計300を提供することができなくなる。反対に、条件式(2)の上限値を上回ると、比較的少ない層数で、可視光を反射し、レーザー光(赤外光)を透過するのに十分な特性を有した送光領域21aが形成された部分反射部材(ダイクロイックプリズム)20を作成するのが困難になる。
【0032】
また、このレーザー距離計300は、第2の光路分岐面(波長分離面54a)に入射する反射光(目標物体で反射した光のうち、対物レンズ30の光軸上を進み、第2の光路分岐面に入射する光線)の入射角をθ2としたとき、次の条件式(3)を満足することが望ましい。
【0033】
15° ≦ θ2 ≦ 40° (3)
【0034】
条件式(3)は、第2の光路分岐面を適切に構成するための条件である。この条件式(3)の下限値を下回ると、レーザー距離計300の小型化に有効な正立プリズム(プリズム部材50)の作成、または、その中で可視光を反射し、レーザー光(赤外光)を透過するダイクロイックプリズム54を構成する反射面(波長分離面54a)の選択が困難となる。反対に条件式(2)の上限値を上回ると、比較的少ない層数で、可視光を反射し、レーザー光(赤外光)を透過するのに十分な特性を有したダイクロイックプリズム54を作成するのが困難になる。
【0035】
また、図3に示すレーザー距離計300は、第1の光路分岐面で測定光を対物レンズ30の光軸上に重畳させ、第2の光路分岐面で反射光を受光素子40側に分離するように構成した場合ついて示したが、図4に示すように、光源10と受光素子40の位置を逆にした図2に示すレーザー距離計200を基本構成としても良く、以下、この図4に示すレーザー距離計400の構成について説明する。なお、図3と同一の部材については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0036】
図4に示すレーザー距離計400の場合、送光レンズ系は、光源10側から順に、コンデンサレンズ11と、上述の波長分離面54aが形成されたプリズム部材50と、部分反射面21が形成された部分反射部材20と、対物レンズ30と、から構成される。また、受光レンズ系は、測定物体側から順に、対物レンズ30と、部分反射部材20と、から構成される。ここで、部分反射面21の受光領域21bは、レーザー光(上述の測定光であって、赤外光)を反射し、可視光を透過するダイクロイックミラーで構成されている。すなわち、部分反射部材20の部分反射面21を構成する受光領域21b(第1の光路分岐面)で分岐された第1の測定光路上に背景光遮断フィルター41及び受光素子40が配置され、プリズム部材50の波長分離面54a(第2の光路分岐面)で分岐された第2の測定光路上にコンデンサレンズ11及び光源10が配置されている。さらに、図3に示す例では、対物レンズ30で集光され、部分反射部材20を透過した光(反射光または可視光)は、第1プリズム51、第2プリズム52の順で入射して第2の波長分岐面(波長分離面54a)に入射したが、この図4では、第2のプリズム52に入射し、波長分離面54aで分離された可視光が第1のプリズム51に入射するように構成されている。
【0037】
このようなレーザー距離計400において、光源10から発射された測定光は、コンデンサレンズ11で集光されて入射面53aから第3プリズム53に入射し、第2の光路分岐面である波長分離面54aに入射する。この波長分離面54aはレーザー光を透過するため、測定光はこの波長分離面54aを透過し第2プリズム52に入射し、内部で全反射を1回してこの第2プリズム52から出射する。そして、この測定光は部分反射部材20に入射し、一部の測定光が第1の光路分岐面である部分反射面21の送光領域21aを透過し、対物レンズ30で略平行光に変換されて測定物体に投射される。なお、部分反射面21で反射した測定光は赤外吸収フィルタ22に入射して吸収されるため、この測定光が受光レンズ系に混入することはない。
【0038】
一方、測定物体に投射された測定光の一部はこの測定物体で反射して散乱し、再び対物レンズ30に入射して集光される。この対物レンズ30で集光された反射光は部分反射部材20に入射して部分反射面21の受光領域21bで反射し、さらに、この部分反射部材20内で2回全反射して、射出面20aから射出し、背景光遮断フィルター41を透過して受光素子40に結像する。また、被写体(目標物体)から射出された光(可視光)は、対物レンズ30で集光され、部分反射部材20を透過して、第2プリズム52に入射し、この第2プリズム52内で全反射を1回して波長分離面54aに入射する。波長分離面54aは可視光を反射するため、この波長分離面54aで反射し、第1プリズム51に入射して内部で3回全反射してこの第1プリズム51を射出し、保護フィルター60を透過した後、被写体の一次像(正立像)として結像される。この一次像と略同一位置には、液晶表示素子70が配置されており、測定者は、接眼レンズ80を介して、被写体の一次像と液晶表示素子70に表示された画像とを重ね合わせて拡大観察することができる。
【0039】
また、このレーザー距離計400において、部分反射面21を透過した反射光(送光領域21aまたは受光領域21bを透過した反射光)は、第2プリズム52に入射し、全反射を1回して波長分離面54aを透過して分離されるが、この波長分離面54aを透過できずに反射した反射光(レーザー光)は、保護フィルター60でカットされるため測定者の眼に届くことはない。
【0040】
なお、レーザ距離計300を用いて説明した条件式は、このレーザ距離計400にも適用することが可能である。このレーザ距離計400の場合、条件式(2)においては、第1の光路分岐面(部分反射面21の受光領域21b)に入射して反射する反射光(目標物体で反射した光のうち、対物レンズ30の光軸上を進み、第1の光路分岐面で反射する光線)の入射角がθ1となり、条件式(3)においては、第2の光路分岐面(波長分離面54a)に入射する測定光(光源10から放射され、第2の光路分岐面を透過したのち、対物レンズ30の光軸上を進む光線)の入射角がθ2となる。
【0041】
また、上述したような手持ちの携帯式のレーザー距離計300,400では、手ブレによって視準している目標物体の像がブレるため、測定位置を定めにくいという課題があった。そこで、図3に示すレーザー距離計300を構成する対物レンズの少なくとも一部を防振レンズとし、この防振レンズを光軸に対して直交する方向の成分を持つように移動させることにより、像のブレを抑えるように構成したレーザー距離計500について説明する。なお、レーザー距離計300と同一の部材については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
図5に示すレーザー距離計500は、図3に示すレーザー距離計300の対物レンズ30を、防振を行うために適したレンズ系(対物レンズ530)に置き換えている。すなわち、この対物レンズ530は、物体側から順に正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、から構成され、第2レンズ群G2を光軸に対して直交する方向の成分を持つように移動させて防振を行うように構成されている。物体側に配置された第1レンズ群G1が正の屈折力を有することにより、この第1レンズ群G1で光束を絞ることができ、第2レンズ群G2の径を小さくすることができる。そのため、第2レンズ群G2は、防振のために移動させるのが容易になる。なお、この場合、手ブレを検出するためのジャイロセンサー(角速度センサーなど)を設け、検出されたブレを打ち消す方向に防振レンズを移動させるように構成する。
【0043】
また、このような構成のレーザー距離計500は、近距離物体との距離を測定する場合に、対物レンズ530の少なくとも一部を合焦レンズとし、この合焦レンズを光軸に沿って移動させることにより、近距離物体に合焦を行いその像を鮮明に観察できるように構成することができる。図5に示す構成のレーザー距離計500においては、第2レンズ群G2を合焦レンズとしている。
【0044】
なお、対物レンズ530全体を防振レンズや合焦レンズとして用いることもできるし、この対物レンズ530を3群以上のレンズ群で構成し、その一部を防振レンズや合焦レンズとすることができる。このとき、防振と合焦のそれぞれを異なるレンズ群で行っても良い。
【実施例】
【0045】
それでは、上述したレーザー距離計300,400の構成に基づく実施例について説明する。
【0046】
[第1実施例]
図3は、第1実施例に係るレーザー距離計300の光学系の構成を示している。この図3に示すレーザー距離計300において、測定物体から受光素子40までの光路上には、測定物体側から順に、両凸レンズと両凹レンズとを接合した接合レンズからなる対物レンズ30と、平板状の光学部材に部分反射面21が形成された部分反射部材20と、入射面及び射出面が平面の第1プリズム51と、第2プリズム52及び第3プリズム53を接合した接合面に波長分離面54aを形成し、入射面及び射出面が平面のダイクロックプリズム54と、平板状の背景光遮断フィルター41と、が配置されている。
【0047】
以下の表1に、第1実施例に係るレーザー距離計300の測定物体から受光素子40までの光路上にある光学部材の諸元値と、条件対応値を示す。この表1において、fは焦点距離を示す。また、諸元表において、第1欄mは光線の進行する方向に沿った測定物体側からのレンズ面の番号を、第2欄rは各レンズ面の曲率半径を、第3欄dは各光学面から次の光学面までの光軸上の距離を、第4欄nd及び第5欄νdはd線に対する屈折率及びアッベ数を、それぞれ示している。なお、曲率半径0.000は平面を示し、空気の屈折率1.00000は省略してある。また、表1における面番号に対応する光学面を図3において、「m」を付して表示している。ここで、以下の全ての諸元値において掲載されている焦点距離、曲率半径、面間隔、その他長さの単位は一般に「mm」が使われるが、光学系は、比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。これらの符合の説明及び諸元表の説明は、以降の実施例においても同様である。
【0048】
(表1)
f=112.0

m r d nd νd
1 73.370 5.0 1.51680 64.1
2 -43.200 2.0 1.62004 36.3
3 -142.755 61.3
4 0.000 2.0 1.51680 64.1
5 0.000 2.0 1.51680 64.1
6 0.000 2.0
7 0.000 33.9 1.51680 64.1
8 0.000 0.4
9 0.000 5.4 1.51680 64.1
10 0.000 3.1 1.51680 64.1
11 0.000 7.6
12 0.000 3.0 1.51680 64.1
13 0.000 5.3
14 0.000

(1)(Σdi/ni)/f=0.265
(2)θ1=30°
(3)θ2=24°
【0049】
このように、この第1実施例に係るレーザー距離計300は、上記条件式(1)〜(3)を全て満足していることが分かる。なお、第1の光路分岐面21aは第5面に相当し、第2の光路分岐面54aは第10面に相当し、受光素子40は第14面に相当する。
【0050】
[第2実施例]
図4は、第2実施例に係るレーザー距離計400の光学系の構成を示している。この図4に示すレーザー距離計400において、測定物体から光源10までの光路上には、測定物体側から順に、両凸レンズと両凹レンズとを接合した接合レンズからなる対物レンズ30と、平板状の光学部材に部分反射面21(受光領域21b)が形成された部分反射部材20と、第2プリズム52及び第3プリズム53を接合した接合面に波長分離面54aが形成され、入射面及び射出面が平面のダイクロックプリズム54と、測定物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなるコンデンサレンズ11と、が配置されている。以下の表2に、第2の実施例に係るレーザー距離計400の測定物体から光源10までの光路上にある光学部材の諸元と、条件対応値を示す。
【0051】
(表2)
f=112.0

r d nd νd
1 73.370 5.0 1.51680 64.1
2 -43.200 2.0 1.62004 36.3
3 -142.755 57.4
4 0.000 4.0 1.51680 64.1
5 0.000 6.0 1.51680 64.1
6 0.000 2.0
7 0.000 6.5 1.51680 64.1
8 0.000 8.1 1.51680 64.1
9 0.000 5.4 1.51680 64.1
10 0.000 3.0
11 8.000 2.0 1.75520 27.6
12 15.800 9.6
13 0.000

(1)(Σdi/ni)/f=0.139
(2)θ1=30°
(3)θ2=24°
【0052】
このように、この第2実施例に係るレーザー距離計400は、上記条件式(1)〜(3)を全て満足していることが分かる。なお、第1の光路分岐面21bは第5面に相当し、第2の光路分岐面54aは第9面に相当し、光源10は第13面に相当する。
【符号の説明】
【0053】
20 部分反射部材 21 部分反射面 21a 送光領域(第1の光路分岐面)
30 対物レンズ 40 受光素子
50 プリズム部材(正立プリズム) 54a 波長分離面(第2の光路分岐面)
80 接眼レンズ 300,400 レーザー距離計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標物体側から順に、対物レンズ、部分反射部材、及び、正立プリズムからなる視準光学系と、
前記部分反射部材に設けられ、前記視準光学系の光路から第1の測定光路を分岐させる第1の光路分岐面と、
前記正立プリズム内の一つの反射面であって、前記視準光学系の光路から第2の測定光路を分岐させる第2の光路分岐面と、
前記第1の測定光路または前記第2の測定光路のいずれか一方に配置され、前記対物レンズを介して前記目標物体に投射するための光を発射する光源と、
前記第1の測定光路または前記第2の測定光路の他方に配置され、前記目標物体で反射して前記対物レンズで集光した前記光を受光する受光素子と、を有し、
前記第1の光路分岐面を含み、前記第1の光路分岐面から前記第2の光路分岐面までの間に存在する光学面毎の像側の次の光学面までの光軸上の距離をdiとし、各々の前記光学面の像側の媒質の屈折率をniとし、前記対物レンズの焦点距離をfとしたとき、次式
0.05 ≦ (Σdi/ni)/f ≦ 0.5
の条件を満足することを特徴とするレーザー距離計。
【請求項2】
前記第1の光路分岐面は、可視光を透過し且つ前記光を反射する反射領域と、可視光及び前記光を透過する透過領域とを有することを特徴とする請求項1に記載のレーザー距離計。
【請求項3】
前記第2の光路分岐面は、可視光を反射し且つ前記光を透過することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザー距離計。
【請求項4】
前記第1の光路分岐面に対する前記光の入射角をθ1としたとき、次式
20° ≦ θ1 ≦ 40°
の条件を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザー距離計。
【請求項5】
前記第2の光路分岐面に対する前記光の入射角をθ2としたとき、次式
15° ≦ θ2 ≦ 40°
の条件を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のレーザー距離計。
【請求項6】
前記視準光学系は、前記対物レンズにより形成された像を観察する接眼レンズを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザー距離計。
【請求項7】
前記対物レンズの少なくとも一部を、前記視準光学系の光軸に対して直交する方向の成分を持つように移動させる請求項1〜6のいずれか一項に記載のレーザー距離計。
【請求項8】
合焦に際し、前記対物レンズの少なくとも一部を、前記視準光学系の光軸に沿って移動させる請求項1〜7のいずれか一項に記載のレーザー距離計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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