説明

レーザ加工機の光路用蛇腹及びこのレーザ加工機の光路用蛇腹の製造方法

【課題】 反射板等の特別な板材を配置する作業が全く不要となり短時間に低コストで製造することができる新規なレーザ加工機の光路用蛇腹及びそのレーザ加工機の光路用蛇腹の製造方法を提供する。
【解決手段】 積層された複数のシート体が一体的に折曲されることにより、山部と谷部とが交互に形成され、これら山部及び谷部の角度が変化することにより全体の長さが伸縮自在となされ、最も内側に位置する内側シート体は、乱光となったり逆進したりしたレーザ光を吸収又は反射して該内側シート体を保護する素材からなるか又は該レーザ光を吸収又は反射して該内側シート体を保護する素材からなる保護層が内側面に形成されてなるとともに、該内側シート体には、上記山部と谷部が交互に形成されるように他のシート体と一体的に折曲することにより自動的に上記谷部の頂点よりもさらに内側に突出してなる突出片部が形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工機に形成された光路に沿って該レーザ加工機に配置されるレーザ加工機の光路用蛇腹及びこのレーザ加工機の光路用蛇腹の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工機には、レーザ発振器から出射されたレーザ光を加工ヘッドに配置された集光レンズまで導く光路や、上記発振器から加工ヘッドまでの中途部に反射ミラーが配置されている場合には、上記発振器から反射ミラーまでレーザ光を導く光路と、この反射ミラーから上記集光レンズまで導く光路とが形成され、これらの光路には、大気中の塵埃から上記集光レンズやミラーを保護し、又は作業者にレーザ光が照射されることを防止するために蛇腹が配置されている。しかしながら、上記発振器から出射されたレーザ光は、必ずしも常に直線的な光路を経ることはなく、発散したり乱光となったりして、蛇腹の内側に照射され、蛇腹が破損する場合が多い。この原因の一つとしては、上記加工ヘッド等の移動に伴う蛇腹の伸縮動作により、該蛇腹内に塵埃が侵入し、この塵埃にレーザ光が衝突したり、塵埃が上記集光レンズや反射ミラーに付着したりすることにより乱光となり、或いはレーザ光が金属等からなるワークの表面から反射して逆進する場合があるからである。このようにレーザ光が乱光となったり逆進したりして、蛇腹に照射されると、難燃性の素材からなる蛇腹であっても焼損する危険性が高く、こうした蛇腹の焼損によりレーザ加工機による生産性は大きく損なわれる事態を招来する。
【0003】
そこで従来では、こうしたレーザ光による蛇腹の損傷・焼損を防止するために、レーザ加工機の光路用蛇腹を構成する蛇腹本体の内側であって、該蛇腹本体に形成された山部と谷部との間に形成された傾斜面に、それぞれアルミ板や銅板等の金属板からなる反射板を配置したものが提案されている(特許文献1参照)。こうした反射板が配置されたレーザ加工機の光路用蛇腹によれば、上述したように、レーザ光が乱光等となったり逆進したりする等して蛇腹本体の内側に照射されたとしても、上記反射板により蛇腹本体が保護され破損したり焼損したりする危険性を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−71584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示されたレーザ加工機の光路用蛇腹では、上記反射板による上記効果が実現できるものの、その作業工程では、上記蛇腹の内側に形成された傾斜面に反射板を一つ一つ接着等して固定しなければならず、製造には長時間を要し高コストとならざるを得ない。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来のレーザ加工機の光路用蛇腹やその製造方法が有する課題を解決するために提案されたものであって、レーザ光が乱光となったり逆進したりして蛇腹の内側に照射されたとしても、蛇腹が保護され破損したり焼損したりする危険性を防止することが可能となるばかりか、上記反射板等の特別な板材を配置する作業が全く不要となり短時間に低コストで製造することができる新規なレーザ加工機の光路用蛇腹及びそのレーザ加工機の光路用蛇腹の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、第1の発明(請求項1記載の発明)は、レーザ加工機の光路用蛇腹に係るものであって、発振器からレーザ光を照射するレーザ加工機に形成された光路に配置される光路用蛇腹であって、最も内側に配置された内側シート体を含んで積層された複数のシート体が一体的に折曲されることにより、山部と谷部とが交互に形成され、これら山部及び谷部の角度が変化することにより全体の長さが伸縮自在となされ、上記内側シート体は、乱光となったり逆進したりしたレーザ光を吸収又は反射して該内側シート体を保護する素材からなるか又は該レーザ光を吸収又は反射して該内側シート体を保護する素材からなる保護層が内側面に形成されてなるとともに、該内側シート体には、上記山部と谷部が交互に形成されるように他のシート体と一体的に折曲することにより自動的に上記谷部の頂点よりもさらに内側に突出してなる突出片部が形成されてなることを特徴とするものである。
【0008】
上記第1の発明に係るレーザ加工機の光路用蛇腹(以下、光路用蛇腹と言う。)では、上記内側シート体は、乱光となったり逆進したりしたレーザ光を吸収又は反射して該内側シート体を保護する素材からなるか又は該レーザ光を吸収又は反射して該内側シート体を保護する素材からなる保護層が内側面に形成されてなることから、塵埃が上記集光レンズや反射ミラーに付着したりすることにより乱光となったり、或いはレーザ光が金属等からなるワークの表面から反射して逆進するなどして上記内側シート体に照射された場合であっても、該光路用蛇腹が損傷したり焼損する危険性を有効に防止することができる。また、この光路用蛇腹では、谷部の頂点よりもさらに内側に突出されてなる突出片部が形成されていることから、上記逆進したレーザ光が、上記突出片部に照射された場合には、そのレーザ光が照射された突出片部よりも後方に(発振器側に)配置された突出片部を含めた内側シート体には照射されない。したがって、こうした突出片部が光路用蛇腹の内側に突出していることにより、より一層焼損等の危険性を防止することができる。
【0009】
しかも、上記乱光等となったレーザ光が照射される上記突出片部は、上記山部と谷部が交互に形成されるように他のシート体と一体的に上記内側シート体を折曲することにより自動的に形成(突出)されるものであって、従来の光路用蛇腹のように反射板等の特別な板材を完成した蛇腹本体の内側に(又は、蛇腹本体を成形する前工程において)一つ一つ貼付するものではないことから、極めて短時間且つ低コストで製造することができる。換言すれば、従来の光路用蛇腹を構成する蛇腹本体の製造が完了することにより完成品となり、その後に行われていた反射板等の板材を貼付する作業は一切不要となることから、部品点数の低減やそれに伴う軽量化も実現することができることは勿論、大幅に製造時間を短縮することが可能となる。
【0010】
なお、この光路用蛇腹を構成するシート体は、例えば、該光路用蛇腹の表生地となる外側シート体と、内側面を形成する上記内側シート体との2種類のシート体からなるものであっても良いし、上記外側シート体と内側シート体との間に、1枚又は2枚の他のシート体を介在させたものであっても良い。また、これらの複数のシート体は、この光路用蛇腹の表層(表生地)を形成するシート体を除いて、必ずしも単一の光路用蛇腹に対して単数(1枚)である必要はなく、例えば、この第1の発明を構成する内側シート体は複数枚に分割されているものであっても良い。なお、上記発明を構成する山部とは、光路用蛇腹の外側に突出した部位を指し、谷部とは、該光路用蛇腹の内側に突出した部位を指す。また、上記内側シート体は、乱光となったり逆進したりしたレーザ光を吸収又は反射して該内側シート体を保護する素材からなるか又は該レーザ光を吸収又は反射して該内側シート体を保護する素材からなる保護層が内側面に形成されてなるものであれば良く、乱光となったり逆進したりしたレーザ光を吸収又は反射する素材としては、例えば、アルミニウム等のようにアルマイト処理された素材を上げることができ、その単体がシート状に成形されてなるもの(例えば、アルミ箔)を使用することもできるし、こうした素材がシート状の基材にコーティング又は蒸着されることにより保護層が形成されてなるものであっても良い。また、上記内側シート体に形成された上記突出片部は、外形形状がほぼ直方体状(正面形状が方形状となされた筒状)に成形された光路用蛇腹である場合には、左右両側及び上下両側に位置する谷部から内側に突出された状態で配置することが好ましいが、こうした場合であっても、左右両側や上下両側に並ぶ全ての谷部から突出された状態で必ず形成する必要はなく、部分的に該突出片部が形成されていない部位が存在しても良い。例えば、後述するように、伸縮方向に並ぶ各谷部に対して1つ置きに上記突出片部が形成されているものであっても良い。
【0011】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記山部及び谷部は、左右両側に形成された縦方向山部と縦方向谷部と、上下両側に形成された横方向山部と横方向谷部とからなり、上記縦方向谷部と横方向谷部との全てに又は一つ置きに前記突出片部が形成されてなることを特徴とするものである。
【0012】
上記左右に形成された縦方向山部と縦方向山部は、具体的には、左側に形成された各縦方向山部と、これら左側の各縦方向山部の間に形成された各縦方向谷部と、右側に形成された各縦方向山部と、これら右側の縦方向山部との間に形成された各縦方向谷部としても表現することもでき、また、上記上下両側に形成された横方向山部と横方向谷部は、上側に形成された各横方向山部と、これら上側の各横方向山部との間に形成された各横方向谷部と、下側に形成された各横方向山部と、これら下側の各横方向山部との間に形成された各横方向谷部としても表現することもできる。そして、この第2の発明では、上記縦方向谷部と横方向谷部との全て又は一つ置きに前記突出片部が形成されてなるものである。
【0013】
こうした第2の発明による場合であっても、上記第1の発明と同じように、レーザ光が乱光等となったり逆進したりして蛇腹本体の内側に照射されたとしても、蛇腹本体が保護され破損したり焼損したりする危険性を防止することが可能となるばかりか、反射板を配置する作業が全く不要となり短時間に低コストで製造することができる。
【0014】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第1又は第2の発明の何れかにおいて、前記内側シート体であって、前記山部又は縦方向山部及び横方向山部の頂点に対応した部位には、該山部又は縦方向山部及び横方向山部の全長よりも短い直線状のスリットが形成されてなることを特徴とするものである。
【0015】
ここで、前記山部は、前記第1の発明(請求項1記載の発明)を構成する山部を指し、縦方向山部及び横方向山部とは、前記第2の発明(請求項2記載の発明)を構成する縦方向山部及び横方向山部を指す。そして、この第3の発明では、前記内側シート体であって、これらの山部又は縦方向山部及び横方向山部の頂点に対応した部位には、該山部又は縦方向山部及び横方向山部の全長よりも短い直線状のスリットが形成されており、この直線状のスリットは、刃物で上記内側シート体を切断することにより形成し幅を有しないものであっても良いし、所定の幅を有したものであっても良い。因みに、上記山部又は縦方向山部及び横方向山部の頂点は、この光路用蛇腹が伸縮動作する際に、上記内側シート体の折曲が繰り返される部位である。
【0016】
したがって、こうした構成からなる第3の発明では、前記山部又は縦方向山部及び横方向山部の頂点に対応した部位には、該山部又は縦方向山部及び横方向山部の全長よりも短い直線状のスリットが形成されてなることから、上記内側シート体が、伸縮動作に伴い繰り返し折曲されることによる疲労の結果、一部が破断・剥離され、それが光路用蛇腹の内部に塵埃となって浮遊し、これがレーザ光に照射されることにより乱光となって該光路用蛇腹の焼損等に繋がる危険性を防止することができる。特に、上記内側シート体が、アルミ箔等のような金属箔単体で構成されている場合には、上記伸縮動作に伴い繰り返し折曲されることによる(金属)疲労が激しく、より一層破断され、それが光路用蛇腹の内部に塵埃となって浮遊し、これがレーザ光に照射されることにより乱光となって該光路用蛇腹の焼損等に繋がる危険性を防止することができる。
【0017】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、上記第2の発明において、前記左側に形成された各縦方向山部と前記上側に形成された各横方向谷部とはそれぞれ一方の左上角部を介して連続し、前記左側に形成された各縦方向谷部と前記上側に形成された各横方向山部とはそれぞれ他方の左上角部を介して連続し、前記右側に形成された各縦方向山部と前記上側に形成された各横方向谷部とはそれぞれ一方の右上角部を介して連続し、前記右側に形成された各縦方向谷部と前記上側に形成された各横方向山部とはそれぞれ他方の右上角部を介して連続し、前記左側に形成された各縦方向山部と前記下側に形成された各横方向谷部とはそれぞれ一方の左下角部を介して連続し、前記左側に形成された各縦方向谷部と前記下側に形成された各横方向山部とはそれぞれ他方の左下角部を介して連続し、前記右側に形成された各縦方向山部と前記下側に形成された各横方向谷部とはそれぞれ一方の右下角部を介して連続し、前記右側に形成された各縦方向谷部と前記下側に形成された各横方向山部とはそれぞれ他方の右下角部を介して連続し、上記内側シート体の内側には、それぞれ伸縮方向に長さを有する第1ないし第4の補強シート体が貼付されてなり、上記第1の補強シート体は、上記各一方及び他方の左上角部を覆い、上記第2の補強シート体は、上記各一方及び他方の右上角部を覆い、上記第3の補強シート体は上記各一方及び他方の左下角部を覆い、上記第4の補強シート体は各一方及び他方の右下角部を覆ってなることを特徴とするものである。
【0018】
上記第4の発明によれば、内側シート体の上述した各角部が上記第1、第2、第3又は第4の補強シート体により覆われているので、伸縮動作に伴い繰り返し該内側シート体が折曲されることによる疲労の結果、その一部が破断・剥離され、それが光路用蛇腹の内部に塵埃となって浮遊し、これがレーザ光に照射されることにより乱光となって該光路用蛇腹の焼損等に繋がる危険性を防止することができる。
【0019】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)は、上記請求項4記載の発明において、前記内側シート体には、谷部として折曲される以前に予めコ字状のスリットが成形され、上記突出片部の外形は上記コ字状のスリットの形状に対応した形状となされてなるとともに、前記第1ないし第4の補強シートは、前記直線状のスリットの端部から上記コ字状のスリットの端部まで幅とされてなることを特徴とするものである。
【0020】
この第5の発明に係るレーザ加工機の光路用蛇腹では、上記内側シート体が山部や谷部として折曲される部位であって、上記第1ないし第4の補強シートにより覆われた部位以外は、上記直線状のスリットやコ字状のスリットが形成されている部位となる。したがって、この第5の発明によれば、より一層伸縮動作に伴い繰り返し該内側シート体が折曲されることによる疲労の結果、その一部が破断・剥離され、それが光路用蛇腹の内部に塵埃となって浮遊し、これがレーザ光に照射されることにより乱光となって該光路用蛇腹の焼損等に繋がる危険性を防止することができる。
【0021】
また、第6の発明(請求項6記載の発明)は、レーザ加工機の光路用蛇腹の製造方法に係るものであって、外側シート体と中間シート体と内側シート体とを順番に積層し一体的となして蛇腹用積層シート体を得る蛇腹用シート体作成工程と、上記蛇腹用積層シート体を折曲し、山部と谷部とを交互に形成する折曲工程と、を有し、上記内側シート体には、上記谷部が形成されるよう折曲することにより自動的に該谷部の頂点から突出した突出片部となるコ字状のスリットが形成されてなることを特徴とするものである。
【0022】
また、第7の発明(請求項7記載の発明)は、上記第6の発明において、前記内側シート体には、前記コ字状のスリットの長さ方向に所定間隔を経て直線状のスリットが形成され、上記コ字状のスリットが形成された部位が谷部となり、上記直線状のスリットが山部となるよう前記蛇腹用積層シート体を折曲することを特徴とするものである。
【0023】
上記第6又は第7の発明に係るレーザ加工機の光路用蛇腹の製造方法によれば、上記第1ないし第5の発明に係るレーザ加工機の光路用蛇腹を製造することができる。
【発明の効果】
【0024】
上記第1の発明(請求項1記載の発明)に係る光路用蛇腹では、上記内側シート体は、乱光となったり逆進したりしたレーザ光を吸収又は反射して該内側シート体を保護する素材からなるか又は該レーザ光を吸収又は反射して該内側シート体を保護する素材からなる保護層が内側面に形成されてなることから、塵埃が上記集光レンズや反射ミラーに付着したりすることにより乱光となったり、或いはレーザ光が金属等からなるワークの表面から反射して逆進するなどして上記内側シート体に照射された場合であっても、該光路用蛇腹が損傷したり焼損する危険性を有効に防止することができる。また、この光路用蛇腹では、谷部の頂点よりもさらに内側に突出されてなる突出片部が形成されていることから、上記逆進したレーザ光が、上記突出片部に照射された場合には、そのレーザ光が照射された突出片部よりも後方に(発振器側に)配置された突出片部を含めた内側シート体には照射されない。したがって、こうした突出片部が光路用蛇腹の内側に突出していることにより、より一層焼損等の危険性を防止することができる。
【0025】
しかも、上記乱光となったり逆進したりしたレーザ光が照射される上記突出片部は、上記山部と谷部が交互に形成されるように他のシート体と一体的に上記内側シート体を折曲することにより自動的に形成(突出)されるものであって、従来の光路用蛇腹のように反射板等の特別な板材を完成した蛇腹本体の内側に(又は、蛇腹本体を成形する前工程において)一つ一つ貼付するものではないことから、極めて短時間且つ低コストで製造することができる。換言すれば、従来の光路用蛇腹を構成する蛇腹本体の製造が完了することにより完成品となり、その後に行われていた反射板等の板材を貼付する作業は一切不要となることから、部品点数の低減やそれに伴う軽量化も実現することができることは勿論、大幅に製造時間を短縮することが可能となる。
【0026】
また、上記第2の発明(請求項2記載の発明)に係る光路用蛇腹では、上記第1の発明と同じように、レーザ光が乱光等となったり逆進したりして蛇腹本体の内側に照射されたとしても、蛇腹本体が保護され破損したり焼損したりする危険性を防止することが可能となるばかりか、反射板を配置する作業が全く不要となり短時間に低コストで製造することができる。
【0027】
また、上記第3の発明(請求項3記載の発明)に係る光路用蛇腹では、前記山部又は縦方向山部及び横方向山部の頂点に対応した部位には、該山部又は縦方向山部及び横方向山部の全長よりも短い直線状のスリットが形成されてなることから、上記内側シート体が、伸縮動作に伴い繰り返し折曲されることによる疲労の結果、一部が破断・剥離され、それが光路用蛇腹の内部に塵埃となって浮遊し、これがレーザ光に照射されることにより乱光となって該光路用蛇腹の焼損等に繋がる危険性を防止することができる。特に、上記内側シート体が、アルミ箔等のような金属箔単体で構成されている場合には、上記伸縮動作に伴い繰り返し折曲されることによる(金属)疲労が激しく、より一層破断されて、それが光路用蛇腹の内部に塵埃となって浮遊し、これがレーザ光に照射されることにより乱光となって該光路用蛇腹の焼損等に繋がる危険性を防止することができる。
【0028】
また、上記第4の発明(請求項4記載の発明)に係る光路用蛇腹では、内側シート体の上述した各角部が上記第1ないし第4の補強シート体により覆われているので、伸縮動作に伴い繰り返し該内側シート体が折曲されることによる疲労の結果、その一部が破断・剥離され、それが光路用蛇腹の内部に塵埃となって浮遊し、これがレーザ光に照射されることにより乱光となって該光路用蛇腹の焼損等に繋がる危険性を防止することができる。
【0029】
また、上記第5の発明(請求項5記載の発明)に係る光路用蛇腹では、上記内側シート体が山部や谷部として折曲される部位であって、上記第1ないし第4の補強シートにより覆われた部位以外は、上記直線状のスリットやコ字状のスリットが形成されている部位となる。したがって、この第5の発明によれば、より一層伸縮動作に伴い繰り返し該内側シート体が折曲されることによる疲労の結果、その一部が破断・剥離され、それが光路用蛇腹の内部に塵埃となって浮遊し、これがレーザ光に照射されることにより乱光となって該光路用蛇腹の焼損等に繋がる危険性を防止することができる。
【0030】
また、上記第6の発明(請求項6記載の発明)及び第7の発明(請求項7記載の発明)に係るレーザ加工機の光路用蛇腹の製造方法によれば、上記第1ないし第5の発明に係るレーザ加工機の光路用蛇腹を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係るレーザ加工機の光路用蛇腹を部分的に破断して示す斜視図である。
【図2】図1に示すレーザ加工機の光路用蛇腹を破断して示す斜視図である。
【図3】図1に示すレーザ加工機の光路用蛇腹の正面図である。
【図4】図3に示すレーザ加工機の光路用蛇腹のA−A線断面図である。
【図5】図3に示すレーザ加工機の光路用蛇腹のB−B線断面図である。
【図6】図3に示すレーザ加工機の光路用蛇腹の左側面図である。
【図7】図3に示すレーザ加工機の光路用蛇腹の右側面図である。
【図8】図1に示すレーザ加工機の光路用蛇腹を破断して示す斜視図である。
【図9】蛇腹用積層シート体を一部破断して示す平面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 レーザ加工機の光路用蛇腹
2 蛇腹用積層シート体
2a 左側縦方向山部
2b 左側縦方向谷部
2c 右側縦方向山部
2d 右側縦方向谷部
2e 上側横方向山部
2f 上側横方向谷部
2g 下側横方向山部
2h 下側横方向谷部
6 第4のシート体
6a 左側突出片部
6b 右側突出片部
6c 上側突出片部
6d 下側突出片部
6e (コ字状の)左側スリット
6f (コ字状の)右側スリット
6g (コ字状の)上側スリット
6h (コ字状の)下側スリット
6s 左直線スリット
6t 下直線スリット
6u 右直線スリット
6v 上直線スリット
8 第1の補強用シート体
9 第2の補強用シート体
10 第3の補強用シート体
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための最良の形態に係るレーザ加工機の光路用蛇腹について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
この実施の形態に係るレーザ加工機の光路用蛇腹(以下、光路用蛇腹という。)1は、図1に示すように、蛇腹用積層シート体2が折曲されることにより筒状に成形されてなるものである。なお、この光路用蛇腹1は、図示しないレーザ加工機に形成された発振器から発信されたレーザ光の光路を覆うように配置されるものであって、各図面中、矢印A方向に上記発振器が配置され、矢印B方向に、この発振器側から反射ミラー又は集光レンズ側までの光路を覆うものである。以下、上記A方向に位置する部位を正面側とし、B方向に位置する部位を背面側として説明する。
【0035】
そして、上記蛇腹用積層シート体2は、図1に示すように、上記光路用蛇腹1の表生地である第1のシート体3と、この第1のシート体3の内側に芯材として配置されてなる第2のシート体4と、この第2のシート体4と以下に説明する第4のシート体6とを互いに貼付する第3のシート体5と、この第3のシート体5に貼付された第4のシート体6と、さらに、後述の光路用蛇腹の製造方法において説明する第1ないし第4の補強シート体(符号は省略する。)とからなるものである。なお、この図1は、蛇腹用積層シート体2の構成が分かるように、上記第2のシート体4、第3のシート体5及び第4のシート体6、を破断し、この光路用蛇腹1の外観を図示したものである。そして、上記第1のシート体3は、本発明を構成する外側シート体であるとともにこの光路用蛇腹1の表生地であって、本実施の形態においては、合成皮革からなるシート体により構成されている。なお、この第1のシート体3の内側面(裏面)には、図示しない接着剤(又は粘着剤)が塗布されている。また、上記第2のシート体4は、本発明を構成する中間シート体であるとともにこの光路用蛇腹1の保形性を担保する芯材であり、上記第1のシート体3よりもやや剛性が高い素材からなるものである。この第2のシート体4は、具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)等を素材とするものであり、後述するように、この蛇腹用積層シート体2を折曲し、山部や谷部となる箇所に直線状のスリットが連続して形成されている。なお、この実施の形態に係る光路用蛇腹1においては、この第2のシート体4は、全部で4枚に分割されている。こうした第2のシート体4の具体的構成は、後述の光路用蛇腹の製造方法において説明する。また、上記第4のシート体6は、本発明を構成する内側シート体であって、具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)等からなるフィルム状の基材の内側面又は外側面にアルマイト層(保護層)が形成されてなるものであり、後述するように、2種類のスリット(コ字状のスリットと直線状のスリット)が形成されている。なお、この第4のシート体6は、本実施の形態に係る光路用蛇腹1においては、全部で4枚に分割されている。また、上記第3のシート体5は、上記第2のシート体4と第4のシート体6とを貼付するものであり、両面に接着剤(又は粘着剤)が塗布されている。なお、この実施の形態に係る光路用蛇腹1においては、上記第3のシート体5も、上記第4のシート体6の数に対応して全部で4枚に分割されている。これら第3のシート体5と第4のシート体6の詳細な構成についても後述する。したがって、上記第1のシート体3と第2のシート体4とは、該第1のシート体3の内側面に塗布された接着剤(又は粘着剤)により接着され、上記第2のシート体4と第4のシート体6とは上記第3のシート体5により接着されている。したがって、上記蛇腹用積層シート体2は、こうした第1ないし第4のシート体3・・・6が積層され一体化されている。なお、上記第1ないし第4の補強用シート体は、前述した通り、後に説明する。
【0036】
そして、上記第1ないし第4のシート体3・・・6(及び第1ないし第4の補強用シート体)が一体化してなる蛇腹用積層シート体2は、図1に示すように、山部と谷部(それぞれ符号は省略する。)とが交互に形成されるよう折曲されてなるものである。以下、これらの山部及び谷部を更に詳細に説明する。すなわち、図2、図3、図4又は図5に示すように、この光路用蛇腹1の左側には、それぞれ縦方向に長さを有する左側縦方向山部2aと、これら左側縦方向山部2aの間に形成された左側縦方向谷部2bとが形成され、該光路用蛇腹1の右側には、それぞれ縦方向に長さを有する右側縦方向山部2cと、これら右側縦方向山部2cの間に形成された右側縦方向谷部2dとが形成されている(それぞれ図5参照)。また、この光路用蛇腹1の上側には、それぞれ横方向に長さを有する上側横方向山部2eと、これら上側横方向山部2eの間に形成された上側横方向谷部2fとが形成され、該光路用蛇腹1の下側には、それぞれ横方向に長さを有する下側横方向山部2gと、これら下側横方向山部2gの間に形成された下側横方向谷部2hとが形成されている(それぞれ図4参照)。そして、上記左側縦方向山部2aの各上端は、図6に示すように、上記各上側横方向谷部2fに角部(本発明を構成する一方の左上角部:符号は省略する。)を介して連続し、各下端は、上記各下側横方向谷部2hに角部(本発明を構成する一方の左下角部:符号は省略する。)を介して連続している。また、上記左側縦方向谷部2bの各上端は、上記上側横方向山部2eに角部(本発明を構成する他方の左上角部:符号は省略する。)を介して連続し、下端は、上記下側横方向山部2gに角部(本発明を構成する他方の左下角部:符号は省略する。)を介して連続している。同じように、上記右側縦方向山部2cの各上端は、図7に示すように、上記各上側横方向谷部2fに角部(本発明を構成する一方の右上角部:符号は省略する。)を介して連続し、各下端は、上記各下側横方向谷部2hに角部(本発明を構成する一方の右下角部:符号は省略する。)を介して連続している。また、上記右側縦方向谷部2dの各上端は、上記上側横方向山部2eに角部(本発明を構成する他方の右上角部:符号は省略する。)を介して連続し、下端は、上記下側横方向山部2gに角部(本発明を構成する他方の右下角部:符号は省略する。)を介して連続している。
【0037】
なお、上記上側横方向山部2eの左端と、この上側横方向山部2eよりも正面側(矢印A方向)に位置する上側横方向谷部2fの左端までは、図6に示すように、それぞれ一方の左上傾斜山部2jが形成され、該上側横方向山部2eの左端と、この上側横方向山部2eよりも背面側(矢印B方向)に位置する上側横方向谷部2fの左端までは、他方の左上傾斜山部2kがそれぞれ形成されている。また、上記下側横方向山部2gの左端と、この下側横方向山部2gよりも正面側(矢印A方向)に位置する下側横方向谷部2hの左端までは、それぞれ一方の左下傾斜山部2lが形成され、該下側横方向山部2gの左端と、この下側横方向山部2gよりも背面側(矢印B方向)に位置する下側横方向谷部2hの左端までは、それぞれ他方の左下傾斜山部2mがそれぞれ形成されている。また、上記上側横方向山部2eの右端と、この上側横方向山部2eよりも正面側(矢印A方向)に位置する上側横方向谷部2fの右端までは、図7に示すように、それぞれ一方の右上傾斜山部2nが形成され、該上側横方向山部2eの右端と、この上側横方向山部2eよりも背面側(矢印B方向)に位置する上側横方向谷部2fの右端までは、他方の右上傾斜山部2oがそれぞれ形成されている。また、上記下側横方向山部2gの右端と、この下側横方向山部2gよりも正面側(矢印A方向)に位置する下側横方向谷部2hの右端までは、それぞれ一方の右下傾斜山部2pが形成され、該下側横方向山部2gの左端と、この下側横方向山部2gよりも背面側(矢印B方向)に位置する下側横方向谷部2hの右端までは、それぞれ他方の右下傾斜山部2qがそれぞれ形成されている。したがって、この実施の形態に係る光路用蛇腹1では、上記左側縦方向山部2a、左側縦方向谷部2b、右側縦方向山部2c、右側縦方向谷部2d、上側横方向山部2e、上側横方向谷部2f、下側横方向山部2g、下側横方向谷部2h、一方の左上傾斜山部2j、他方の左上傾斜山部2k、一方の左下傾斜山部2l、他方の左下傾斜山部2m、一方の右上傾斜山部2n、他方の右上傾斜山部2o、一方の右下傾斜山部2p、他方の右下傾斜山部2qの角度が変化することにより伸縮される。
【0038】
そして、この光路用蛇腹1の内側には、本発明を構成する突出片部が形成されている。この突出片部は、具体的には、図1、図2又は図3に示すように、複数の左側突出片部6aと、複数の右側突出片部6bと、複数の上側突出片部6cと、複数の下側突出片部6dとからなるものである。これら各左側突出片部6a、右側突出片部6b、上側突出片部6c及び下側突出片部6dは、何れも本発明を構成する内側シート体としての上記第4のシート体6の一部である。そして、上記左側突出片部6aは、上記左側縦方向谷部2bの内側(頂点)からこの光路用蛇腹1の内側に向かって突出し、図3に又は図4に示すように、該左側縦方向谷部2bの全長よりも短い長さとされている。また、上記各右側突出片部6bは、上記右側縦方向谷部2dの内側(頂点)からこの光路用蛇腹1の内側に向かって突出してなるものであり、該右側縦方向谷部2dの全長よりも短い長さとされている。また、上記各上側突出片部6cは、上記各上側横方向谷部2fの内側(頂点)からこの光路用蛇腹1の内側に向かって突出してなるものであり、該上側横方向谷部2fの全長よりも短い長さとされている。また、上記各下側突出片部6dは、上記各下側横方向谷部2hの内側(頂点)からこの光路用蛇腹1の内側に向かって突出してなるものであり、該下側横方向谷部2hの全長よりも短い長さとされている。そして、上記第4のシート体6であって、上記左側突出片部6aが形成されている部位の後方(この光路用蛇腹1の背面側、すなわち、矢印B方向)の近傍には、該左側突出片部6aの外形形状と同じ(コ字状)の左側スリット6e(図4参照)が形成されている。また、上記第4のシート体6であって、上記右側突出片部6bが形成されている部位の後方(この光路用蛇腹1の背面側)の近傍には、該右側突出片部6bの外形形状と同じ(略コ字状)の左側スリット6e(図8参照)が形成されている。また、上記第4のシート体6であって、上記上側突出片部6cが形成されている部位の後方(この光路用蛇腹1の背面側)の近傍には、該上側突出片部6cの外形形状と同じ(略コ字状)の上側スリット6g(図8参照)が形成されている。また、上記第4のシート体6であって、上記下側突出片部6dが形成されている部位の後方(この光路用蛇腹1の背面側)の近傍には、該下側突出片部6dの外形形状と同じ(略コ字状)の左側スリット6h(図5、図1又は図8参照)が形成されている。
【0039】
なお、上記第4のシート体6(本発明を構成する内側シート体)であって、上記各左側縦方向山部2aに対応した部位にはそれぞれ左直線スリットが、上記右側縦方向山部2cに対応した部位にはそれぞれ右直線スリットが、上記各上側横方向山部2eに対応した部位には上直線スリットが、また、上記各下側横方向山部2gにはそれぞれ下直線スリットが形成されているが、これら左直線スリット、右直線スリット、上直線スリット及び下直線スリットは、以下の光路用蛇腹1の製造方法において説明する。
【0040】
そこで、以下、上述した光路用蛇腹1の製造方法について工程順に説明するが、その説明に先だって、先ず上記第1ないし第4のシート体3・・・6の構成について説明する。図9は、上記第1ないし第4のシート体3・・・6及び冒頭で説明した第1ないし第4の補強用シート体8,9,10(第4の補強シート体は図示しない)を積層した上記蛇腹用積層シート体2を部分的に破断した平面図であり、上記第1のシート体3は、前述したように、この光路用蛇腹1の表生地であって、本発明を構成する外側シート体である。この第1のシート体3は、合成皮革を素材とするものであり、長方形状に成形されており、同図中、右側には、蛇腹用積層シート体2を折曲するとともに筒状とする際に第1のシート体3に重ねて貼付する貼り代3aが形成されている。
【0041】
また、この第1のシート体3上(光路用蛇腹1としては第1のシート体3の裏面)に貼付されているシート体が上記第2のシート体4であり、本発明を構成する中間シート体である。なお、この第2のシート体4は、本実施の形態に係る光路用蛇腹1においては、4つに分割されている。すなわち、上記第2のシート体4は、図9中、最も左側に配置されている左芯材41と、この左芯材41に僅かな隙間を介して並ぶ下芯材42と、この下芯材42に僅かな隙間を介して並ぶ右芯材43と、この右芯材43に僅かな隙間を介して並び最も右側に配置された上芯材44とから構成されている。上記左芯材41は、図1に示す光路用蛇腹1の左側に位置する部位であり、上記下芯材42は、該光路用蛇腹1の下側に位置する部位であり、上記右芯材43は、該光路用蛇腹1の右側に位置する部位であり、上記上芯材44は、該光路用蛇腹1の上側に位置する部位である。そして、上記左芯材41には、前記左側縦方向山部2aとして折曲される部位に、それぞれスリット(ミシン目)41aが(この左芯材41の長さ方向に)並んで形成され、これらのスリット(ミシン目)41aとスリット(ミシン目)41aとの中間位置には、上記左側縦方向谷部2bとなるスリット(ミシン目)41bが形成されている。また、上記下芯材42には、前記下側横方向谷部2hとして折曲される部位に、それぞれスリット(ミシン目)42aが(この下芯材41の長さ方向に)並んで形成され、これらのスリット(ミシン目)42aとスリット(ミシン目)42aとの中間位置には、上記下側横方向山部2gとなるスリット(ミシン目)42bが形成されている。また、上記右芯材43には、前記右側縦方向山部2cとして折曲される部位に、それぞれスリット(ミシン目)43aが(この右芯材43の長さ方向に)並んで形成され、これらのスリット(ミシン目)43aとスリット(ミシン目)43aとの中間位置には、上記右側縦方向谷部2dとなるスリット(ミシン目)43bが形成されている。また、上記上芯材44には、前記上側横方向谷部2fとして折曲される部位に、それぞれスリット(ミシン目)44aが(この上芯材44の長さ方向に)並んで形成され、これらのスリット(ミシン目)44aとスリット(ミシン目)44aとの中間位置には、上記上側横方向山部2eとなるスリット(ミシン目)44bが形成されている。また、上記左芯材41の左側と上記上芯材44の右側とには、前記一方の左上傾斜山部2jと他方の左上傾斜山部2kとなる傾斜縁41c,41d,44c,44dが形成されている。また、上記左芯材41の右側と上記下芯材42の左側には、前記一方の左下傾斜山部2lと他方の左下傾斜山部2mとなる傾斜縁41e,41f,42c,42dが形成されている。また、上記下芯材42の右側と上記右芯材43の左側には、前記一方の右下傾斜山部2pと他方の右下傾斜山部2qとなる傾斜縁42e,42f,43c,43dが形成されている。また、上記右芯材43の右側と上記上芯材44の左側には、前記一方の右上傾斜山部2nと他方の右上傾斜山部2oとなる傾斜縁43e,43f,44e,44fが形成されている。
【0042】
また、上記(第2のシート体4である)左芯材41上には左接着シート体51が、下芯材42の上には下接着シート体52が、右芯材43の上には右接着シート体53が、上芯材44の上には上接着シート体54がそれぞれ接着されている。これら左接着シート体51、下接着シート体52、右接着シート体53、上接着シート体54は、上記第3のシート体5である。すなわち、上記第3のシート体5は4つに分割されている。そして、これら左接着シート体51、下接着シート体52、右接着シート体53、上接着シート体54はそれぞれ表裏両面に接着剤が塗布されてなるとともに、長さはそれぞれ上記左芯材41、下芯材42、右芯材43、上芯材44と同じ長さに成形され、幅は、上記スリット(ミシン目)41a,42b,43a,44bと同じ幅とされている。そしてさらに、これら左接着シート体51、下接着シート体52、右接着シート体53、上接着シート体54には、長穴51a,52a,53a,54aが該左接着シート体51等の長さ方向に並んで形成されている。これらの長穴51a,52a,53a,54aは、上記スリット(ミシン目)41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bにより2分割される位置(中央)に形成され、それらの長さは該左接着シート体51等の幅よりもやや短いものとされている。すなわち、上記左接着シート体51に形成されたそれぞれの長穴51aの長さは、後述するように折曲されて光路用蛇腹1とされた際に上記左側縦方向山部2aや左側縦方向谷部2bの長さよりもやや短いものとされ、下接着シート体52に形成されたそれぞれの長穴52aの長さは、後述するように折曲されて光路用蛇腹1とされた際に上記下側横方向山部2gや下側横方向谷部2hの長さよりもやや短いものとされている。同時に、右接着シート体53に形成されたそれぞれの長穴53aの長さは、後述するように折曲されて光路用蛇腹1とされた際に上記右側縦方向山部2cや右側縦方向谷部2dの長さよりもやや短いものとされ、上接着シート体54に形成されたそれぞれの長穴54aの長さは、後述するように折曲されて光路用蛇腹1とされた際に上記上側横方向山部2eや上側横方向谷部2fの長さよりもやや短いものとされている。
【0043】
そして、上記左接着シート体51、下接着シート体52、右接着シート体53、上接着シート体54の上には、左保護シート体61、下保護シート体62、右保護シート体63、上保護シート体64が貼付されている。これら左保護シート体61、下保護シート体62、右保護シート体63、上保護シート体64は、上記第4のシート体6である。すなわち、先に説明した光路用蛇腹1とされる蛇腹用積層シート2を構成する第4のシート体4は4つに分割されている。そして、上記左保護シート体61には先に説明した左側スリット6eが、上記下保護シート体62には前記下側スリット6hが、上記右保護シート体63には前記右側スリット6fが、上記上保護シート64には上側スリット6gがそれぞれ複数形成されている。上記左側スリット6e、下側スリット6h、右側スリット6f、上側スリット6gは、それぞれ前述したコ字状に成形されたスリットである。したがって、上記左側スリット6e、下側スリット6h、右側スリット6f、上側スリット6gにより、上記左接着シート体51、下接着シート体52、右接着シート体53、上接着シート体54には、それぞれ複数の左側突出片部6a、複数の下側突出片部6d、複数の右側突出片部6b、複数の上側突出片部6cが形成されている。さらに、これら左保護シート体61、下保護シート体62、右保護シート体63、上保護シート体64には、左側スリット6eと左側スリット6eとの中間位置に左直線スリット6sが形成され、上記下側スリット6hと下側スリット6hとの中間位置に下直線スリット6tが形成され、上記右側スリット6fと右側スリット6fとの中間位置には右直線スリット6uが形成され、上記上側スリット6gと上側スリット6gとの中間位置には上直線スリット6vが形成されている。そして、上記各左側突出片部6a、下側突出片部6d、右側突出片部6b、上側突出片部6cと、上記各左直線スリット6s、下直線スリット6t、右直線スリット6u、上直線スリット6vは、全て上記左接着シート体51、下接着シート体52、右接着シート体53、上接着シート体54に形成された長穴51a,52a,53a,54a内に位置していることから、接着されておらずフリーな状態となっている。なお、上記左保護シート体61、下保護シート体62、右保護シート体63、上保護シート体64の左右両側には、これらを上記左接着シート体51、下接着シート体52、右接着シート体53、上接着シート体54上に貼付する際における位置決めを容易にするために、それぞれ複数の円弧状部(符号は省略する。)が形成されている。
【0044】
そして、この蛇腹用積層シート体2の最も上面(光路用蛇腹1としては最も内側)には、第1ないし第4の補強シート体8,9,10(第4の補強シート体は図示しない)が接着剤により接着(貼付)されている。これら第1ないし第4の補強シート体8,9,10,11(第4の補強シート体は、この蛇腹用積層シート体2を折曲し、上記のり代3aにより筒状に成形した後に貼付するものであることから、図9においては図示しない。図2ないし図4参照)は、何れも難燃性の素材からなる帯状体であって、何れも上記第1のシート体3の幅と同じ長さを有している。そして、上記第1の補強シート体8は、上記左側スリット6eと下直線スリット6tとの間ないし左直線スリット6sと左側スリット6hとの間に対応した位置に貼付され,上記第2の補強シート体9は、上記下側スリット6hと右直線スリット6uとの間ないし下直線スリット6tと右側スリット6fとの間に対応した位置に貼付され、上記第3の補強シート体10は、上記右側スリット6fと上直線スリット6vとの間ないし右直線スリット6uと上側スリット6gとの間に対応した位置に貼付されている。すなわち、上記第1ないし第4の補強シート体8,9,10,11は、上記各スリットとスリット(何れも符号は省略する)との間の幅とされている。なお、上記第4の補強シート体は、上記長穴54aと上記長穴51aとの間に対応した位置に貼付されている。したがって、これら第1ないし第4の補強シート体8,9,10は、前記各角部(本発明を構成する一方及び他方の左上角部、一方及び他方の左下角部、一方及び他方の右下角部並びに一方及び他方の右上角部)や、一方及び他方の左上傾斜山部2j,2k、一方及び他方の左下傾斜山部2l,2m、一方及び他方の右下傾斜山部2p,2q、一方及び他方の右上傾斜山部2n,2oを被覆している。
【0045】
そこで、このように構成された上記蛇腹用積層シート体2を、上記左芯材41、下芯材42、右芯材43、上芯材44の各スリット(ミシン目)41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bが形成された位置で上記左側縦方向山部2a、左側縦方向谷部2b、右側縦方向山部2c、右側縦方向谷部2d、上側横方向山部2e、上側横方向谷部2f、下側横方向山部2g、下側横方向谷部2hが形成されるようにそれぞれ折曲し、また、上記各一方の左上傾斜山部2j、他方の左上傾斜山部2k、一方の左下傾斜山部2l、他方の左下傾斜山部2m、一方の右上傾斜山部2n、他方の右上傾斜山部2o、一方の右下傾斜山部2p、他方の右下傾斜山部2qが形成されるようにそれぞれ折曲する(折曲工程)。すると、上記各左直線スリット6s、下直線スリット6t、右直線スリット6u、上直線スリット6vの各近傍からは、自動的に上記各左側突出片部6a、下側突出片部6d、右側突出片部6b、上側突出片部6cがそれぞれ上記左側縦方向谷部2b、右側縦方向谷部2d、上側横方向谷部2f、下側横方向谷部2hから延長された状態となる。こうした折曲工程が終了すると、この折曲された蛇腹用積層シート体2が筒状となるように、上記貼り代3aを第1のシート体3の外側に貼付し、この後に前記第4の補強シート体を内側に貼付する。
【0046】
したがって、上述した製造方法に係る光路用蛇腹1によれば、内側シート体である第4のシート体6(左保護シート体61、下保護シート体62、右保護シート体63、上保護シート体64)に、乱光となったり逆進したレーザ光が照射された場合であっても、該レーザ光を吸収又は反射などして該光路用蛇腹1が損傷したり焼損したりする危険性を有効に防止することができる。また、この光路用蛇腹1では、本発明を構成する突出片部として、上記第4のシート体6(左保護シート体61、下保護シート体62、右保護シート体63、上保護シート体64)に形成された上記各左側突出片部6a、下側突出片部6d、右側突出片部6b、上側突出片部6cにレーザ光が照射されると、そのレーザ光が照射された上記左側突出片部6a等よりも後方に(発振器側とは反対方向に)配置された左側突出片部6a等を含めた第4のシート体6には照射されない。したがって、こうした左側突出片部6a等が光路用蛇腹1の内側に突出していることにより、より一層焼損等の危険性を防止することができる。
【0047】
しかも、上記突出片部としての左側突出片部6a、下側突出片部6d、右側突出片部6b、上側突出片部6cは、上述したように、蛇腹用積層シート体2を折曲することにより自動的に形成(突出)されるものであることから、極めて短時間且つ低コストで製造することができ、さらに、部品点数の低減やそれに伴う軽量化も実現することができる。
【0048】
特に、上記実施の形態に係る光路用蛇腹1では、上記左保護シート体61、下保護シート体62、右保護シート体63、上保護シート体64には、それぞれ左直線スリット6s、下直線スリット6t、右直線スリット6u、上直線スリット6vが、上記左側縦方向山部2a、右側縦方向山部2c、上側横方向山部2e、下側横方向山部2gにそれぞれ対応した位置に形成されていることから、この光路用蛇腹1の伸縮動作により該左保護シート体61等が繰り返し折曲されることにより破断したり上記保護層が剥離し浮遊することを防止できる。そしてさらに、前記各角部(本発明を構成する一方及び他方の左上角部、一方及び他方の左下角部、一方及び他方の右下角部並びに一方及び他方の右上角部)や、一方及び他方の左上傾斜山部2j,2k、一方及び他方の左下傾斜山部2l,2m、一方及び他方の右下傾斜山部2p,2q、一方及び他方の右上傾斜山部2n,2oは、上記第1ないし第4の補強シート体8,9,10により被覆されていることから、より一層左保護シート体61等が繰り返し折曲されることにより破断したり上記保護層が剥離し浮遊することを防止できる。
【0049】
なお、上記実施の形態に係る光路用蛇腹1では、本発明を構成する内側シート体を、第3のシート体6として、該左保護シート体61、下保護シート体62、右保護シート体63、上保護シート体64の4つに分割した例を図示して説明したが、該内側シート体は、1枚のシート体からなるものであっても良い。また、この実施の形態に係る光路用蛇腹1は、上述したように、一方の左上傾斜山部2j、他方の左上傾斜山部2k、一方の左下傾斜山部2l、他方の左下傾斜山部2m、一方の右上傾斜山部2n、他方の右上傾斜山部2o、一方の右下傾斜山部2p、他方の右下傾斜山部2qが形成されたものであるが、本発明に係る光路用蛇腹1は、こうした各傾斜山部(符号は省略する。)が形成されていない形状のものであっても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振器からレーザ光を照射するレーザ加工機に形成された光路に配置される光路用蛇腹であって、
最も内側に配置された内側シート体を含んで積層された複数のシート体が一体的に折曲されることにより、山部と谷部とが交互に形成され、これら山部及び谷部の角度が変化することにより全体の長さが伸縮自在となされ、
上記内側シート体は、乱光となったり逆進したりしたレーザ光を吸収又は反射して該内側シート体を保護する素材からなるか又は該レーザ光を吸収又は反射して該内側シート体を保護する素材からなる保護層が内側面に形成されてなるとともに、
該内側シート体には、上記山部と谷部が交互に形成されるように他のシート体と一体的に折曲することにより自動的に上記谷部の頂点よりもさらに内側に突出してなる突出片部が形成されてなることを特徴とするレーザ加工機の光路用蛇腹。
【請求項2】
前記山部及び谷部は、左右両側に形成された縦方向山部と縦方向谷部と、上下両側に形成された横方向山部と横方向谷部とからなり、上記縦方向谷部と横方向谷部との全て又は一つ置きに前記突出片部が形成されてなることを特徴とする請求項1記載のレーザ加工機の光路用蛇腹。
【請求項3】
前記内側シート体であって、前記山部又は縦方向山部及び横方向山部の頂点に対応した部位には、該山部又は縦方向山部及び横方向山部の全長よりも短い直線状のスリットが形成されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の何れかのレーザ加工機の光路用蛇腹。
【請求項4】
前記左側に形成された各縦方向山部と前記上側に形成された各横方向谷部とはそれぞれ一方の左上角部を介して連続し、前記左側に形成された各縦方向谷部と前記上側に形成された各横方向山部とはそれぞれ他方の左上角部を介して連続し、前記右側に形成された各縦方向山部と前記上側に形成された各横方向谷部とはそれぞれ一方の右上角部を介して連続し、前記右側に形成された各縦方向谷部と前記上側に形成された各横方向山部とはそれぞれ他方の右上角部を介して連続し、前記左側に形成された各縦方向山部と前記下側に形成された各横方向谷部とはそれぞれ一方の左下角部を介して連続し、前記左側に形成された各縦方向谷部と前記下側に形成された各横方向山部とはそれぞれ他方の左下角部を介して連続し、前記右側に形成された各縦方向山部と前記下側に形成された各横方向谷部とはそれぞれ一方の右下角部を介して連続し、前記右側に形成された各縦方向谷部と前記下側に形成された各横方向山部とはそれぞれ他方の右下角部を介して連続し、上記内側シート体の内側には、それぞれ伸縮方向に長さを有する第1ないし第4の補強シート体が貼付されてなり、上記第1の補強シート体は、上記各一方及び他方の左上角部を覆い、上記第2の補強シート体は、上記各一方及び他方の右上角部を覆い、上記第3の補強シート体は上記各一方及び他方の左下角部を覆い、上記第4の補強シート体は各一方及び他方の右下角部を覆ってなることを特徴とする請求項2記載のレーザ加工機の光路用蛇腹。
【請求項5】
前記内側シート体には、谷部として折曲される以前に予めコ字状のスリットが成形され、上記突出片部の外形は上記コ字状のスリットの形状に対応した形状となされてなるとともに、前記第1ないし第4の補強シートは、前記直線状のスリットの端部から上記コ字状のスリットの端部まで幅とされてなることを特徴とする請求項4記載のレーザ加工機の光路用蛇腹。

【請求項6】
外側シート体と中間シート体と内側シート体とを順番に積層し一体的となして蛇腹用積層シート体を得る蛇腹用シート体作成工程と、
上記蛇腹用積層シート体を折曲し、山部と谷部とを交互に形成する折曲工程と、を有し、
上記内側シート体には、上記谷部が形成されるよう折曲することにより自動的に該谷部の頂点から突出した突出片部となるコ字状のスリットが形成されてなることを特徴とするレーザ加工機の光路用蛇腹製造方法。
【請求項7】
前記内側シート体には、前記コ字状のスリットの長さ方向に所定間隔を経て直線状のスリットが形成され、上記コ字状のスリットが形成された部位が谷部となり、上記直線状のスリットが山部となるよう前記蛇腹用積層シート体を折曲することを特徴とする請求項6記載のレーザ加工機の光路用蛇腹製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−167727(P2011−167727A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34292(P2010−34292)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(593208751)株式会社ナベル (20)
【Fターム(参考)】