説明

レーザ加工機

【課題】遮蔽部材の変形によりレーザを遮ることで、遮蔽部材が破損することを防止できるレーザ加工機を提供する。
【解決手段】このレーザ加工機じゃ、遮蔽部材1に沿って当該遮蔽部材1の一方の端部から他方の端部に向う光の当該遮蔽部材1の変形による遮断を検知する光学センサ20を備えている。光学センサ20は、移動するレーザ加工ヘッド10に設けられるミラー22と、遮蔽部材1の基端側を固定している固定支持部8に設けられる光学センサ本体21とを備えている。光学センサ本体21は、発光素子と、受光素子とを備える反射型である。遮蔽部材1が変形すると、遮蔽部材1に光のビーム25が遮られ、変形した遮蔽部材1が当該遮蔽部材1内を伝送されるレーザビーム9を遮断する前に光学センサ20による光のビーム25の遮断に基づいてレーザビーム9が停止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物にレーザ光源からのレーザビームを照射するために、レーザ光源から移動するレーザ加工ヘッド(加工トーチ)まで、レーザビームを空間伝送させる際に、空間伝送されるレーザビームを外部から遮蔽するジャバラ状の遮蔽部材を使用するレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、被加工物にレーザを照射するレーザ加工ヘッドを被加工物に対して移動するフライングオプティクス系のレーザ加工装置では、レーザビームがベンドミーラや各種レンズ等を介して、レーザ光源からレーザ加工ヘッドまで空間中を伝送される。
この際に、レーザビームを外部から遮蔽するためにジャバラ状の遮蔽部材が用いられている。遮蔽部材は、断面四角形の筒状で、筒の4面で内側から外側、外側から内側への折り返しが繰り返されたもので、伸縮自在となっており、基端部がレーザ加工ヘッドの一軸方向の移動の所定位置に固定され、先端側がレーザ加工ヘッド側に固定され、レーザ加工ヘッドの一軸方向の移動に伴なって伸縮するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、遮蔽部材の基端部と先端部は、それぞれ支持された状態となるが、それらの間の部分が自重で下側に撓まないように支持されている。
例えば、図6に示すように、ジャバラ状の遮蔽部材1の伸縮範囲の上側には、ジャバラ移動ガイド(以下移動ガイドと略す)2として、左右2本の円筒シャフト3が互いに間隔をあけて配置されている。
このジャバラ移動ガイド2には、左右の円筒シャフト3がそれぞれ貫通する一対のガイドブッシュ4を備えたジャバラ吊り支持中間板5(以下支持中間板と略す)が複数移動ガイド2に沿って並んで配置されている。
【0004】
各支持中間板5は、前記左右一対のガイドブッシュ4が設けられた上部6と、遮蔽部材1が固定される本体部7を備え、本体部7は四角枠状に形成されて四角筒状の遮蔽部材1を囲むような状態で遮蔽部材1に固定されている。
また、移動ガイド2の円筒シャフト3が貫通した状態となるガイドブッシュ4の開口は、円筒シャフト3の外径に対して比較的大きな内径を有し、円筒シャフト3に対して円滑に移動可能となっている。
【0005】
したがって、円筒シャフト3に対して支持中間板5のガイドブッシュ4は、上下左右に少し移動可能となっているが、支持中間板5のガイドブッシュ4には、遮蔽部材1の荷重が下方に向かってかかっているので、ガイドブッシュ4は、円筒シャフト3に対して最も下側となった位置とされることで、左右への移動も規制された状態となっている。また、支持中間板5では、それぞれ左右一対のガイドブッシュ4が左右一対の円筒シャフト3に支持されているので、左右への移動がさらに規制された状態となる。円筒シャフト3に対してガイドブッシュ4が最も下側の位置となることで、円筒シャフト3の外周の下端となる部分とガイドブッシュ4の内周の下端となる部分には、比較的大きな遊びaがある状態となる。
【0006】
したがって、円筒シャフト3の外周面と、ガイドブッシュ4の内周面との間に大きな遊びaがあっても、支持中間板5が上下左右に変位する可能性は低いものとなっているが、前後方向(移動方向)に容易に傾く構成となっている。
この構成により、遮蔽部材1のジャバラの伸縮状態が部分的に異なるような状態となっても、円滑に遮蔽部材1を伸縮させてレーザ加工ヘッドを移動させることができる。
なお、図6においては、レーザ加工ヘッドの図示を省略している。また、図6において、符号8は、遮蔽部材1の基端部を固定的に支持する固定支持部であり、固定支持部8に遮蔽部材1の基端部が固定されている。また、符号9は、遮蔽部材1内を伝送されるレーザビームを示すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−156576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、例えば、遮蔽部材1がレーザ加工ヘッドの移動により伸びながら移動している際に、ガイドブッシュ4の摩耗等により、ガイドブッシュ4が円筒シャフト3に対して円滑に移動せずに、引っ掛かった状態となることや、ジャバラの老朽化などにより遮蔽部材1の一部が円滑に伸びなくなることなどにより、1つのジャバラ吊り支持中間板5の移動が止まるかレーザ加工ヘッドの移動よりも極端に遅くなった場合に、以下のような状態となる。
【0009】
すなわち、ほぼ止まった状態の支持中間板5に対してそれより先側の支持中間板5がさらに先に進むと、止まった状態の支持中間板5のガイドブッシュ4より下側の本体部7が遮蔽部材1に引っ張られて、止まった状態の支持中間板5は、下側に行くほど先側に向うように傾斜した状態となる。また、止まった状態の支持中間板5より先側の支持中間板5は、先に進もうとすると、後ろ側の支持中間板5が止まっていることにより遮蔽部材1に引っ張られた状態となり、下側に向うほど後ろ側に傾いた状態となる。
【0010】
これにより前後に並んだ2つの支持中間板5が互いに下端部を近づけるように傾斜することから、その間の遮蔽部材1は、上側が伸び、下側が縮んだ状態でアーチ状の形状となり、上側に向かって凸となるように変形してしまう。
この場合に、遮蔽部材1の上部が2つの支持中間板5の間で上側に突出した状態となるとともに、遮蔽部材1下部が2つの支持中間板の間で上側に突出した状態となる。但し、遮蔽部材1の上側が伸び、下側が縮んだ状態なので、遮蔽部材1の下側の方が上方向に上側より大きく突出した状態となる。
【0011】
この際に、遮蔽部材1の下側の上への突出量が大きくなりすぎてしまうと、遮蔽部材1内の空間を伝送されるレーザビーム9の経路に入ってしまう虞があり、この場合にレーザビーム9を遮ることにより、加工中の被加工物の加工に問題が生じる虞があるとともに、遮蔽部材1が破損する虞がある。
なお、上述のようなガイド機構ではなく、例えば、LM(リニアモーション)ガイド等の要素部品を用いてジャバラ状の遮蔽部材を案内して移動させるようにすれば、ガイドする部材の耐久性が向上し、上述のような問題が生じる可能性が低くなるが、コストが高くなってしまう。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、遮蔽部材の変形によりレーザを遮ることで、遮蔽部材が破損することを防止できるレーザ加工機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、請求項1に記載のレーザ加工機は、光源から移動するレーザ加工ヘッドにレーザビームを空間伝送するとともに、当該レーザビームの伝送経路を、前記レーザ加工ヘッドの移動に対応して伸縮自在なジャバラ状で筒状の遮蔽部材により囲って外部と遮蔽するレーザ加工機であって、
前記遮蔽部材に沿って当該遮蔽部材の一方の端部から他方の端部に向う光の当該遮蔽部材の変形による遮断を検知する光学センサを備えていることを特徴とする。
【0014】
請求項1に記載の発明においては、ジャバラ状の遮蔽部材の伸縮で、伸縮の不良等により変形が生じた際に、光学センサにより検知されるので、遮蔽部材が変形することで、その内部を伝送されるレーザビームの経路内に入りこんでレーザを遮断したり、遮蔽部材がレーザビームにより破損したりする前に、警告等のための音や光の発生や、レーザビームの停止等を行うことが可能となる。
【0015】
請求項2に記載のレーザ加工機は、請求項1に記載の発明において、
前記遮蔽部材は、当該遮蔽部材の伸縮方向に沿って移動自在に案内されるとともに伸縮方向に並んで配置され、かつ、前記伸縮方向に傾斜可能な移動支持部材に支持され、
前記光学センサが前記遮蔽部材の上側に配置され、
前記光学センサが前記光の遮断を検知した際に、前記光源からレーザ加工ヘッドへの光の伝送を停止することを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明においては、移動支持部材(中間支持板)の移動の異常などにより、前後に並んだ移動支持部材が互いの下端部を近づけるように傾斜することで、遮蔽部材が上側に凸となるように湾曲した状態に変形した場合に、遮蔽部材の上側に配置された光学センサが、遮蔽部材の上側を遮蔽部材に沿って通過する前記光の遮断を検知することになる。
【0017】
移動支持部材が遮蔽部材の伸縮方向に傾斜可能となっていることで、万が一遮蔽部材が曲がる場合に、上述のように上側に凸となるように遮蔽部材が変形する(曲がる)可能性が極めて高いので、遮蔽部材の上側で遮蔽部材の曲がりを検知することで、確実に遮蔽部材の曲がりを検知することができる。
【0018】
また、上述のように、前後に並んだ移動支持部材が互いの下端部を近づけるように傾斜した場合に、遮蔽部材の上側が伸長した状態で、下側は収縮した状態となる。このため、遮蔽部材が上に凸となるように曲がった際に、遮蔽部材の下側の方が、遮蔽部材の上側より大きく上に突出した状態となるが、遮蔽部材の下側が上に突出してレーザビームの位置に達する前に、遮蔽部材の上側も通常より上に突出した状態となり、遮蔽部材の下側がレーザビームを遮断する前に、遮蔽部材の曲がりを検知できる。
【0019】
また、上述のように遮蔽部材の変形を検知した際に、光源から光学ヘッドへの光の伝送を停止するので、遮蔽部材の曲がりの検知が早く、かつ、検知した際にレーザが直ぐに停止した状態となるので、遮蔽部材が内部を通るレーザビームにより破損するのを確実に防止することができる。
なお、レーザの停止は、光源をオフとしたり、レーザビームを遮断したりすることで行ってもよい。
【0020】
請求項3に記載のレーザ加工機は、請求項1または請求項2に記載の発明において、
前記光学センサは、前記遮蔽部材の一方の端部側に設けられる一端部装置と、前記遮蔽部材の他方の端部側に設けられる他端部装置とを備え、当該一端部装置と他端部装置との間を通過する光の遮断を検出し、
前記一端部装置の前記他端部装置に対向する面および、前記他端部装置の前記一端部装置に対向する面には、それぞれ前記光の方向に沿って延出して、前記光を仕切る仕切り板が設けられていることを特徴とする。
【0021】
請求項3に記載の発明においては、例えば、光学センサが光の遮断を検知することで、レーザ加工中でもレーザを停止してしまうような場合に、光学センサが誤作動することで、レーザ加工が中断してしまうことになる。光学センサの誤作動として、最も問題となるのが、蛾等の虫が侵入し、光学センサの光学面に止まった状態となることである。例えば、光学センサが認識する光の部分を虫が飛んだ状態で遮った場合には、所定時間(例えば、1秒等)以上光が遮られた場合にのみ、レーザを停止する構成とすれば、一時的な光の遮断で誤作動するのを防止できる。
【0022】
しかし、光学センサの光が発射されたり、入射されたり、反射されたりする面(光学面)に虫が止まると、長い期間光が遮断されることになり、制御的に誤作動を防止することができない。ここで、互いに対向して配置される光学センサの一端部装置と他端部装置とには、互いに対向する面に、それぞれ一端部装置と他端部装置をと繋ぐ直線、すなわち、前記光の方向に沿って延出して、前記光を仕切る仕切り板が設けられているので、当該仕切り板により、虫によって光が完全に遮られるのを防止することができる。
【0023】
すなわち、仕切り板により、一端部装置と他端部装置の互いに対向する面、すなわち、光の入射、出射、反射等が行われる光学面を仕切り板で仕切ることにより、虫は、仕切り板で仕切られた2つの領域のうちの一方の領域にしか止まれないので、一匹の虫により光の多くの部分を遮断することができなくなる。すなわち、前記面の仕切り板で仕切られた2つの領域のうちの一方の領域に虫がとまっても、他方の領域で、光の入射、出射、反射等を行うことが可能となり、光学センサで光が遮断されたと判断されるのを防止することができる。すなわち、光学センサの虫による誤作動を防止できる。
【0024】
したがって、虫による光学センサの誤作動が防止され、レーザ加工中の光学センサの誤作動による加工の中断を防止することができる。
なお、仕切り板を例えば、十字状やY字状に配置して、光が入射、出射、反射される面を3つの領域や、4つの領域に仕切るものとしてもよい。また、仕切り板を筒状として、筒の内側の領域と外側の領域に仕切るものとしてもよい。
また、一端部装置側と、他端部装置側とで、仕切り板の位置や形状等が同じであってもよいし、異なっていてもよい。しかし、仕切り板は、ビーム状とされる光の断面範囲を2分割以上する必要がある。
【0025】
請求項4に記載のレーザ加工機は、請求項3記載の発明において、前記一端部装置に設けられる前記仕切り板の厚みの中央を通る平面と、前記他端部装置に設けられる前記仕切り板の厚みの中央を通る平面とが互いに異なり、これら平面の間に前記仕切り板の厚さ以上の間隔があいていることを特徴とする。
【0026】
請求項4に記載の発明においては、一端部装置側の仕切り板を延長した仮想の板と、他端部装置側の仕切り板を延長した仮想の板との間に、隙間があるので、例えば、二枚の仕切り板が略平行だった場合に、一端部装置側で前記面の仕切り板で仕切られた一方の領域に虫がとまった際に、他端部装置側で前記面の仕切り板で仕切られた他方の領域に虫が止まった状態となっても、これら仕切り板同士の間に光が通る空間があるので、光が遮断された状態とならず、光学センサの虫による誤作動を防止できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のレーザ加工機によれば、レーザが伝送される空間を周囲から遮蔽するジャバラ状の遮蔽部材が変形することにより、遮蔽部材がレーザビームを伝送する経路を遮断するような状態となる前に、警告を行ったり、レーザを停止したりすることが可能となり、レーザ加工の長い中断を防止したり、遮蔽部材の破損を防止したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係るレーザ加工機を示す要部概略側面図である。
【図2】前記レーザ加工機で用いられる光学センサを示す概略平面図である。
【図3】前記レーザ加工機で用いられる光学センサを示す概略側面図である。
【図4】前記光学センサの変形例を示す概略平面図である。
【図5】前記光学センサの別の変形例を示す概略平面図である。
【図6】従来のレーザ加工機を示す要部概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係るレーザ加工機について説明する。
図1に示すように、このレーザ加工機は、従来と同様の遮蔽部材1と、遮蔽部材1の伸縮による移動をガイドするジャバラ移動ガイド2(左右に2本の円筒シャフト3,3)と支持中間板(移動支持部材)5とを有するものとなっている。なお、図1においては、これらジャバラ移動ガイド2および支持中間板5の図示を省略している。
【0030】
このレーザ加工機は、被加工物にレーザを照射するレーザ加工ヘッド10を有している。この例では、レーザ加工ヘッド10は、例えば、鉛直方向下側にレーザを出力するようになっている。レーザ加工ヘッド10は、ボールネジ11からなる移動装置12により支持されるとともに一軸方向に移動可能となっている。
【0031】
移動装置12は、ボールネジ11と、当該ボールネジ11を回転自在に支持する軸受13と、ボールネジ11を回転駆動するモータ14と、ボールネジ11に螺合したボールネジナット15とを備える。ボールネジナット15には、レーザ加工ヘッド10の上端部が固定されており、ボールネジ11の回転に伴ってレーザ加工ヘッド10と一体にボールネジナット15が一軸方向に前進および後退するようになっている。
なお、移動装置12は、ボールネジ機構を使ったものに限られず、例えば、リニアモータやラックアンドピニオンなどの機構を使ったものであってもよい。
【0032】
また、レーザ加工ヘッド10には、光源側からレーザビーム9が入射するが、最終的にレーザ加工ヘッド10に入射するレーザビーム9は、一軸方向に沿った状態とされている。なお、レーザ加工ヘッド10に最終的に入射する前のレーザビーム9は、一軸方向に沿っている必要はなく、図示しないミラー等の光学素子により方向を変更されて、一軸方向に沿ったものとされる。
【0033】
レーザ加工ヘッド10の移動範囲の基端側には、上述のジャバラ状の遮蔽部材1の基端部を支持する固定支持部8が配置されている。固定支持部8は、レーザ加工ヘッド10の一軸方向の移動に対して固定となっている。なお、上述の各構成部材が前記一軸方向に直交する方向に移動自在となっていてもよい。すなわち、レーザ加工ヘッド10がX軸方向およびY軸方向の両方に移動するようになっていてもよい。ここで、X軸方向およびY軸方向は、例えば、互いに直交するとともに水平な方向である。この場合に前記一軸方向としてのX軸方向と直交するY軸方向の移動においても、この例と同様の遮蔽部材1と遮蔽部材1を支持する機構が用いられることになり、この部分においても、この例と同様に本発明を適用することができる。
【0034】
固定支持部8の前面側と、レーザ加工ヘッド10の背面側との間には、遮蔽部材1が配置され、遮蔽部材1の基端部が固定支持部8に固定され、遮蔽部材1の先端部がレーザ加工ヘッド10の背面に接続されている。
これにより、レーザ加工ヘッド10が移動した場合に、レーザ加工ヘッド10の移動に伴なって、遮蔽部材1の先端部が移動するとともに、遮蔽部材1が伸縮する。
【0035】
レーザビーム9は、遮蔽部材1内を伝送されてレーザ加工ヘッド内部に至り、レーザ加工ヘッド内部で2つのミラー16,17により水平方向から鉛直方向にレーザビーム9の向きが変更され、対物光学素子18を介してレーザ加工ヘッドの先端からレーザビーム9が照射される。
固定支持部8の上部およびレーザ加工ヘッド10背面の上部には、それぞれ光学センサ20の一端部装置と、他端部装置とが設けられている。
【0036】
固定支持部8に設けられる一端部装置が光学センサ本体21であり、内部に発光素子と受光素子とが配置された反射形光学センサとなっている。また、他端部装置が反射形の光学センサ20のミラー(反射手段)22となっている。光学センサ20では、光学センサ本体21の発光素子から光学系を介してミラー22に向かって光が照射され、ミラー22から反射された光が光学系を介して光学センサ本体21の受光素子に受光されるようになっている。
なお、一端部装置と他端部装置とのうちの一方に発光素子が配置され他方に受光素子が配置される透過型光学センサを用いるものとしてもよい。しかし、固定側に発光素子および受光素子が配置され、移動側にミラー22が配置される構成とした場合には、固定側だけで配線を行うことが可能となり、配線の取り回しが容易となる。なお、光は、例えば、光学素子によりビーム状とされるが、レーザビームであってもよい。
【0037】
光学センサ20による検出位置は、たとえば、遮蔽部材1の左右の略中央で、遮蔽部材1より少し上となる位置である。
また、検出位置の高さ位置は、上述のように遮蔽部材1が上に凸となるアーチ状に変形した際に、遮蔽部材1の下側がレーザビーム9の高さ位置に達する際の遮蔽部材1の上側で最も高く変形した部分の位置より少し低い位置である。言い換えれば、遮蔽部材1の変形により遮蔽部材1の下側がレーザビーム9の経路を遮断した状態となる直前の状態の遮蔽部材1の上側の最も高くなった変形位置である。
【0038】
したがって、この直前の状態でレーザビーム9を停止すれば、変形した遮蔽部材1がレーザビーム9を遮断する前、すなわち、遮蔽部材1にレーザビーム9が当たる前の段階でレーザビーム9を停止することができる。
なお、遮蔽部材1の上側には、支持中間板5のガイドブッシュ4を有する上部6が配置されているので、上部6に光学センサ20の光のビーム25が通過可能な開口もしくは切欠部を設けておく必要がある。
また、レーザ加工ヘッド10の上部は、移動ガイド2の一対の円筒シャフト3の間を通過するようになっている。
【0039】
光学センサ20の信号の出力は、レーザ加工機の制御部に接続されており、当該制御部では、光学センサ20から光の遮断を検知したことを示す信号が入力した際に、レーザビーム9の出力を停止するようになっている。
したがって、図1に示されるように、遮蔽部材1が上に凸となるアーチ状に変形した場合に、変形が大きくなって、遮蔽部材1の下側がレーザビーム9の経路に入りそうになると、光学センサ20の光のビーム25を遮蔽部材1の上側の変形部分が遮断し、光学センサ20の受光素子で受光される光量が減少したことに基づいて、制御部に信号が出力される。当該信号が制御部に入力すると、制御部では、レーザビーム9の出力を停止する。これにより、遮蔽部材1がレーザビーム9で破損するのを防止することができる。
【0040】
また、遮蔽部材1の変形を直すことで、作業を再開することもできる。なお、遮蔽部材1もしくは支持中間板5のガイドブッシュ4等が老朽化している場合には、これらを交換してから作業を再開することが好ましい。
なお、遮蔽部材1が損傷した場合には、遮蔽部材1の交換または修理が必ず必要となり、作業の再開に時間がかかることで、作業の遅れが発生する。その場合に比較して、作業の遅れを最低限のものとすることができる。
【0041】
また、図2、図3に示すように、光学センサ20の光学センサ本体21と、ミラー22との互いに対向する面(光が入射、出射もしくは反射する光学面)31,32には、ミラー22と光学センサ本体21との間を通る光のビーム25に沿って延出する仕切り板34,35がそれぞれ設けられている。また、仕切り板34,35は、略上下方向に沿って設けられている。光学センサ本体21の仕切り板34は、光学センサ本体21のミラー22と対向する面で、かつ、光が出射されるとともに入射される範囲を略均等に左右に二分するように設けられている。仕切り板34の面方向と、光の出射方向および入射方向は、略平行となっている。
【0042】
ミラー22の仕切り板35は、ミラー22の光学センサ本体21と対向する面で、かつ、光が入射されるとともに反射される範囲を略均等に左右に二分するように設けられている。仕切り板35の面方向と、光の入射方向および反射方向は、略平行となっている。
また、この例において、光のビーム25の断面形状は、縦横の長さが異なるものとなっており、上下方向(縦方向)の長さが水平方向(横方向)の長さよりも長いものとされている。
【0043】
また、仕切り板34,35の先端部は、三角形状に形成されて尖った状態となっている。また、仕切り板34の尖った先端の位置は、光学センサ本体21の光のビーム25が出射および入射する範囲の略中央とされ、また、仕切り板35の尖った先端の位置は、ミラー22の光のビーム25が入射および反射する範囲の略中央となっている。
また、光学センサ本体21とミラー22とのそれぞれに設けられる仕切り板34,35は、この例では、ほぼ同一平面状に配置された状態となっている。
【0044】
このような光学センサ20においては、万が一にレーザ加工機が設置された場所に虫が侵入してしまった場合に、光学センサ本体21もしくはミラー22に虫が止まってしまうことにより、光学センサ20で検知される光が遮断されても、仕切り板34,35により仕切られた2つの領域のうちの一方の領域に虫が止まることになり、他方の領域では光が遮断されず、光が通った状態となる。したがって、虫によって、光学センサ20が誤作動するのを防止することができる。
【0045】
また、仕切り板34,35に虫が止まる可能性があるが、仕切り板34,35の先端を尖った状態とすることで、仕切り板34,35の中央に虫が止まるのを防止している。仕切り板34,35の中央に虫が止まった場合には、光学センサ本体21とミラー22との間で大きな割合で光が遮断されて、光学センサ20が誤作動する可能性があるが、虫が止まる位置が中央からずれていれば、虫により遮られる光量を少なくすることができ、光学センサ20の誤作動を防止することができる。
また、仕切り板34,35が上下方向を向いているとともに、上下幅の狭い光のビームが仕切り板3,35の上下の中央部を通過するようになっているので、仕切り板34,35に乗った状態なった虫は、光のビーム25から外れた位置となり、ビーム25を遮ることがない。
【0046】
図4は、光学センサ20の変形例を示すものであり、上記例では、光学センサ本体21側の仕切り板34と、ミラー22側の仕切り板35とがほぼ同一平面上に配置されていたが、この例では、2つの仕切り板34,35の厚みの中心がそれぞれ異なる平面上に配置されるとともに、これら2つの平面の間に仕切り板34,35の厚さ以上の距離が開けられている。
【0047】
この例においても、仕切り板34,35は、光学センサ本体21とミラー22との間を通る光のビーム25の方向に沿って配置されるとともに、上下方向に沿って配置されている。そして、仕切り板34の中心線と、仕切り板35の中心線とが左右に少しオフセットした状態で配置されており、オフセットされた間隔dが仕切り板34,35の厚さより広くなっている。なお、この例では、2枚の仕切り板34,35は、同じ厚さとされている。
これにより、例えば、ミラー22側の一方の領域と、光学センサ本体21側の他方の領域とにそれぞれ虫が止まっても、仕切り板34,35どうしの間となる部分を光が通過可能となっている。
【0048】
したがって、ミラー22側と光学センサ本体21側とでそれぞれ異なる領域に同時に虫がとまっても光学センサ20が誤作動するのを防止することができる。
なお、ミラー22側の一方の領域と、光学センサ本体21側の一方の領域とが対向し、ミラー22側の他方の領域と、光学センサ本体21側の他方の領域とが対向しており、光学センサ本体21側の一方の領域を出射した光の多くはミラー22の一方の領域で反射して、再び光学センサ本体21側の一方の領域に戻るようになっている。また、光学センサ本体21側の他方の領域を出射した光の多くはミラー22の他方の領域で反射して、再び光学センサ本体21側の他方の領域に戻るようになっている。
【0049】
また、この例では、光学センサ本体21側の仕切り板34と、ミラー22側の仕切り板35とが略平行となっているが、平行となっていなくとも、光学センサ本体21とミラー22との間の光のビーム35の経路内において、仕切り板34,35の厚さ以上の間隔dをあけて、二つの仕切り板34,35が配置されていればよい。
図5は、光学センサ20の別の変形例を示すもので、ミラー22側に第1の仕切り板35と第2の仕切り板37とが配置され、光学センサ本体21側にそれぞれ第1の仕切り板34と第2の仕切り板36とが設けられている。
【0050】
2枚の第1仕切り板34,35は、それらの厚さの中心が同一平面上に配置され、2枚の第2仕切り板36,37は、それらの厚さの中心が同一平面上に配置されている。第1の仕切り板34,35が配置される平面と、第2の仕切り板36,37が配置される平面とがそれぞれ別の平面とされるとともに、これら平面の間には、仕切り板34,35,36,37の厚さ以上の間隔dがあけられている。
仕切り板34,35,36,37は、光学センサ本体21とミラー22との間を通る光のビーム25の方向に沿って配置されるとともに、上下方向に沿って配置されている。なお、仕切り板34,35,36,37の形状および光のビーム25の断面形状は、図2から図5に示す例で略同じとなっている。
第1の仕切り板34,35の中心線と、第2の仕切り板36,37の中心線とが左右に離した状態で配置されており、オフセットされた間隔dが仕切り板34,35,36,37の厚さより広くなっている。この例では、全ての仕切り板34,35,36,37が略同じ厚さとなっている。
【0051】
また、2枚一組の光学センサ本体21側の第1仕切り板34および第2仕切り板36と、2枚一組のミラー22側の第1仕切り板35および第2仕切り板37とを境に光のビーム25の経路を第1の領域と第2の領域とに分けるとともに、第1の仕切り板34,35と、第2の仕切り板36,37との間の第3の領域に分けている。なお、前記光の経路の範囲内において、第1の領域と第2の領域の面積に対して、第3の領域の面積が最も狭いものとなっている。また、第3の領域が2枚の仕切り板34,36、35,37により挟まれているのに対して、第1の領域および第2の領域は、一方側に仕切り板34,35,36,37があるが、他方側は開放された状態となっている。したがって、第1の領域および第2の領域は、虫が止まり易い状態なのに対して第3の領域は、虫が止まりにくい状態となっている。また、第1の領域や第2の領域に止まれる虫の大きさより、第3の領域に止まれる虫の大きさの方が小さくなっている。
【0052】
このような光学センサ20においては、ミラー22側の第1の領域および第2の領域にそれぞれ虫が止まり、光学センサ本体21側の第1の領域および第2の領域にそれぞれ虫が止まっても、ミラー22もしくは光学センサ本体21の第3の領域に虫が止まらなければ、第3の領域を介して光のビーム25がミラー22と光学センサ本体21との間を通り、虫による誤作動を防止することができる。
また、第3の領域は、虫が入り辛い構造となっているとともに、特に光の通過を完全に遮るような大きな虫が入れないので、誤作動をより確実に防止することができる。
【0053】
以上のようなレーザ加工機によれば、変形した遮蔽部材1が伝送されるレーザビーム9を遮って、遮蔽部材1が破損するのを防止できるとともに、遮蔽部材1の破損による作業の遅延を防止することができる。
また、虫が侵入した場合の光学センサ20の誤作動を防止することができ、光学センサ20の誤作動によるレーザ加工の中断を防止することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 遮蔽部材
5 ジャバラ吊り支持中間板(移動支持部材)
9 レーザビーム
10 レーザ加工ヘッド
20 光学センサ
25 光のビーム(光)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から移動するレーザ加工ヘッドにレーザビームを空間伝送するとともに、当該レーザビームの伝送経路を、前記レーザ加工ヘッドの移動に対応して伸縮自在なジャバラ状で筒状の遮蔽部材により囲って外部と遮蔽するレーザ加工機であって、
前記遮蔽部材に沿って当該遮蔽部材の一方の端部から他方の端部に向う光の当該遮蔽部材の変形による遮断を検知する光学センサを備えていることを特徴とするレーザ加工機。
【請求項2】
前記遮蔽部材は、当該遮蔽部材の伸縮方向に沿って移動自在に案内されるとともに伸縮方向に並んで配置され、かつ、前記伸縮方向に傾斜可能な移動支持部材に支持され、
前記光学センサが前記遮蔽部材の上側に配置され、
前記光学センサが前記光の遮断を検知した際に、前記光源からレーザ加工ヘッドへの光の伝送を停止することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工機。
【請求項3】
前記光学センサは、前記遮蔽部材の一方の端部側に設けられる一端部装置と、前記遮蔽部材の他方の端部側に設けられる他端部装置とを備え、当該一端部装置と他端部装置との間を通過する光の遮断を検出し、
前記一端部装置の前記他端部装置に対向する面および、前記他端部装置の前記一端部装置に対向する面には、それぞれ前記光の方向に沿って延出して、前記光を仕切る仕切り板が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーザ加工機。
【請求項4】
前記一端部装置に設けられる前記仕切り板の厚みの中央を通る平面と、前記他端部装置に設けられる前記仕切り板の厚みの中央を通る平面とが互いに異なり、これら平面の間に前記仕切り板の厚さ以上の間隔があいていることを特徴とする請求項3に記載のレーザ加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−274302(P2010−274302A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128913(P2009−128913)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【Fターム(参考)】