説明

レーザ周波数変動評価装置および方法

【課題】安価に構成でき、迅速な評価測定が行えるようにする。
【解決手段】波長可変レーザ光源22から出射されたレーザ光Prを、ファブリペローエタロン型の光フィルタ25に入射させた状態でレーザ光の波長を変化させ、その光フィルタ25の光周波数対透過率の変化を表す選択特性を求めて記憶する。また、被測定レーザ光Pinを光フィルタ25に入射させたときの透過率を求め、その被測定レーザ光の周波数変動に伴う透過率の変化の領域が、光フィルタ25の波長選択特性の最大透過率と最小透過率の間の単調変化領域となるように光フィルタ25の共振周波数を調整し、その後に被測定レーザ光に対する光フィルタ25の透過率の変化を求め、その透過率の変化と波長選択特性に基づいて、被測定レーザ光の周波数変動特性を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光の周波数変動を評価するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ伝送システムにおいて、一波長当たりの伝送容量を増大するための検討が進められており、それを実現する有効な方式として、周波数利用効率を向上させる光OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)や、デジタルコヒーレント等の光コヒーレント通信技術が注目されている。
【0003】
光コヒーレント通信技術では、レーザの光周波数変動(変動周期、変動振幅)が、伝送信号の品質劣化を招くため、このレーザの光周波数変動の特性を把握することが極めて重要である。
【0004】
このレーザ光の周波数変動の測定に関し、非特許文献1には、周波数変動が極めて少ない参照光と被測定レーザ光とを光カプラで合波してフォトダイオードに入射し、その出力信号をデジタルストレージオシロスコープに入力して、参照光と被測定レーザ光の干渉波形を測定する技術が開示され、その測定結果から、100GbpsのDP−QPSK方式において、そのキャリアとなるレーザ光の周波数変動の変動周期が2μs以下と短い場合、周波数の変動振幅が100MHz以下では、信号品質を表すQペナルティが0.1dB以下となり品質劣化は見られないが、変動振幅が150MHzになるとQペナルティが急激に増加し、また、レーザ光の周波数変動の変動周期が5μs以上と長い場合には、周波数の変動振幅が増加してもQペナルティの悪化は顕在化しないという趣旨の報告がなされており、この報告からも、レーザ光の周波数変動の信号品質への重要性がわかる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“デジタルコヒーレント受信におけるレーザ周波数変動特性の影響” 信学技報 IEICE Technical Report OCS2009-25(2009-7) p35-p38
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的にレーザは周波数を安定化するための周波数オフセット補償回路を備えている。この補償回路は、低周波数でレーザ周波数を変化(以下、ディザ信号と呼ぶ)させることにより周波数シフトを抑制する技術である。
【0007】
このディザ信号によるレーザ周波数の変動評価は極めて有用であるが、従来から行われている光干渉計を用いて波長変化を検出する技術では、高速の波長変動の評価が行えない。
【0008】
また、被測定レーザ光と、周波数が安定したレーザ光(参照光)とをカプラで合波し、それをフォトダイオードに入射して、両光のビート信号成分を検出するヘテロダイン/ホモダイン方式により、ディザ信号の周波数変動を観測する方法も提案されている。
【0009】
しかし、この方法では、原理的に被測定レーザ光と参照光の周波数変動が区別できない。また、安定した参照光が必要なため非常に高価である。しかも、この方法では、ビート信号検出のために基本的に参照光波長の掃引が必要で、それを複数回行うので測定に時間がかかるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題を解決し、安価に構成でき、迅速な評価測定が行えるレーザ周波数変動評価装置および方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1のレーザ周波数変動評価装置は、
被測定レーザ光を入射させる光入射部(21)と、
波長可変レーザ光源(22)と、
前記光入射部に入射された被測定レーザ光と前記波長可変レーザ光源から出射されたレーザ光とを受け、その一方を選択的に出射する光スイッチ(23)と、
前記光スイッチから出射された光を分岐する光分岐器(24)と、
光に対する共振周波数を可変でき、前記光分岐器によって分岐された一方の光を受けて前記共振周波数帯域の光を選択的に出射するファブリペローエタロン型の光フィルタ(25)と、
前記光フィルタを透過した光の強度を検出する透過光強度検出手段(26)と、
前記光分岐器によって分岐された他方の光を受けて、前記光フィルタに入射される光の強度を検出する入射光強度検出手段(31)と、
前記波長可変レーザ光源、前記光スイッチおよび前記光フィルタを制御しつつ、前記透過光強度検出手段および前記入射光強度検出手段の出力を受けて、前記被測定レーザ光の周波数変動特性を求める測定処理部(40)とを有するレーザ周波数変動評価装置であって、
前記測定処理部は、
前記波長可変レーザ光源から出射されたレーザ光を前記光フィルタに入射させた状態で、該レーザ光の波長を変化させながら前記透過光強度検出手段および前記入射光強度検出手段の出力を取得して、前記光フィルタの光周波数対透過率の変化を表す選択特性を求めて記憶する選択特性取得手段(40a)と、
前記被測定レーザ光を前記光フィルタに入射させた状態で、前記透過光強度検出手段および前記入射光強度検出手段の出力を取得してその比から透過率を求め、前記被測定レーザ光の周波数変動に伴う透過率の変化範囲が、前記波長選択特性取得手段によって求めた波長選択特性の最大透過率と最小透過率の間の単調変化領域内となるように前記光フィルタの共振周波数を調整する光フィルタ調整手段(40c)と、
前記光フィルタ調整手段によって前記光フィルタの共振周波数が調整された後の前記透過光強度検出手段と前記入射光強度検出手段の出力を連続的に取得し、その比で得られる透過率と前記光フィルタの選択特性に基づいて、前記被測定レーザ光の周波数変動特性を算出する周波数変動特性算出手段(40d)とを備えている。
【0012】
また、本発明の請求項2のレーザ周波数変動評価装置は、請求項1記載のレーザ周波数変動評価装置において、
前記光フィルタが、共振器長が互いに異なる複数の光フィルタ(25(1)〜25(n))からなり、
前記複数の光フィルタのいずれかを選択的に用いる切替手段(51、52)を有しており、
前記測定処理部は、被測定レーザ光の周波数変動の変動幅に応じて、前記複数の光フィルタを選択的に用いることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項2のレーザ周波数変動評価方法は、
波長可変レーザ光源から出射されたレーザ光を、ファブリペローエタロン型の光フィルタに入射させた状態でレーザ光の波長を変化させ、該光フィルタの光周波数対透過率の変化を表す選択特性を求める段階と、
被測定レーザ光を前記光フィルタに入射させてその透過率を求め、該被測定レーザ光の周波数変動に伴う透過率の変化範囲が、前記波長選択特性取得手段によって求めた波長選択特性の最大透過率と最小透過率の間の単調変化領域内となるように前記光フィルタの共振周波数を調整する段階と、
前記光フィルタの共振周波数が調整された後の前記被測定レーザ光に対する前記光フィルタの透過率の変化を求め、該透過率の変化と前記求めた波長選択特性に基づいて、被測定レーザ光の周波数変動特性を算出する段階とを含んでいる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明のレーザ周波数変動評価装置および方法は、波長可変レーザ光源から出射されたレーザ光を、ファブリペローエタロン型の光フィルタに入射させた状態でレーザ光の波長を変化させ、その光フィルタの光周波数対透過率の変化を表す選択特性を求め、被測定レーザ光を光フィルタに入射させたときの透過率を求め、その被測定レーザ光の周波数変動に伴う透過率の変化範囲が、波長選択特性の最大透過率と最小透過率の間の単調変化領域内となるように光フィルタの共振周波数を調整した後に、被測定レーザ光に対する光フィルタの透過率の変化を求め、その透過率の変化と波長選択特性に基づいて、被測定レーザ光の周波数変動特性を算出しているので、安価に構成でき、迅速な評価測定が行える。
【0015】
また、共振器長が異なる複数の光フィルタを選択的に用いるようにした場合、被測定レーザ光の周波数変動に対する測定レンジを拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態の全体構成図
【図2】実施形態の光フィルタの透過率特性の一例
【図3】実施形態の光フィルタを微調整した後の透過率特性
【図4】測定結果の一例を示す図
【図5】測定結果の一例を示す図
【図6】本発明の他の実施形態の全体構成図
【図7】他の実施形態の動作を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用したレーザ周波数変動評価装置20の全体構成を示している。
【0018】
被測定レーザ光(ディザ信号で周波数制御されているレーザ光とする)Pinは、光コネクタ21aやコリメータ21bを含む光入射部21を介して装置内に入射され、波長可変レーザ光源22から出射されたレーザ光(参照光)Prとともに光スイッチ23に出射される。
【0019】
光スイッチ23は、被測定レーザ光Pinと参照光Prの一方を選択して光分岐器24に出射する。
【0020】
光分岐器24で分岐された一方の光は、ファブリペローエタロン型の光フィルタ25に入射される。この光フィルタ25は、光に対する共振特性をもつ、その共振周波数帯域の光を選択的に出射するものであり、しかも、入射光に対する透過率が、周波数変化に対して周期的に変化する特性をもっている。
【0021】
この光フィルタ25の具体的な構成としては、エアギャップ方式、ファイバ方式、導波路型ファイバ方式のものなどがあり、いずれも波長に対する透過率の変化特性の変動が極めて少ないという特徴をもっている。
【0022】
この光フィルタ25を透過した光の強度は、透過光強度検出手段26によって検出される。透過光強度検出手段26は、透過光を受光器26aで受光し、入力された光の強度に応じた電気信号をローパスフィルタ26bに出力する。ローパスフィルタ26bは、入力信号から被測定レーザ光や波長可変レーザ光源22のレーザ光に含まれるディザ信号の周波数成分を抽出する。
【0023】
ローパスフィルタ26bの出力は、A/D変換器28によって所定のサンプリング周波数(前記したディザ信号成分の2倍以上の周波数)でサンプリングされて、デジタルのデータ信号に変換され、後述する測定処理部40に出力される。
【0024】
一方、光分岐器24で分岐された他方の光の強度は、入射光強度検出手段31によって検出される。入射光強度検出手段31は、入射される光を受光器31aで受光し、その入力光の強度(即ち、光フィルタ25に入射される光の強度)に応じた電気信号をローパスフィルタ31bに出力する。ローパスフィルタ31bは、入力信号から被測定レーザ光やレーザ光に含まれるディザ信号の周波数成分を抽出し、その出力は、A/D変換器33によって所定のサンプリング周波数(前記したディザ信号成分の2倍以上の周波数)でサンプリングされて、デジタルのデータ信号に変換され、後述する測定処理部40に出力される。
【0025】
測定処理部40は、波長可変レーザ光源22、光スイッチ23および光フィルタ25を制御しつつ、A/D変換器28、33の出力を受けて、被測定レーザ光Pinの周波数変動特性を求め、その結果を表示部41に表示させる。
【0026】
測定処理部40には、選択特性取得手段40a、選択特性メモリ40b、光フィルタ調整手段40cおよび周波数変動特性算出手段40dが設けられている。
【0027】
選択特性取得手段40aは、光スイッチ23を波長可変レーザ光源22側に接続してレーザ光Prを光フィルタ25に入射させた状態で、レーザ光Prの波長λrを変化させながら透過光強度検出手段26の出力PD1rおよび入射光強度検出手段31の出力PD2rを取得して、光フィルタ25の光周波数対透過率の変化を表す選択特性を求めて選択特性メモリ40bに記憶する。
【0028】
ここで、透過率Tは、ローパスフィルタ26bの出力値PD1rとローパスフィルタ31bの出力値PD2rとの比PD1r/PD2rで得られるから、波長λrを変化させつつ、その波長λrと透過率Tとを対応づけて選択特性メモリ40bに記憶する。
【0029】
なお、エタロン型の光フィルタ25の透過率は、理論的に次のようにして求めることができる。
【0030】
エタロンは、多重干渉を利用した光デバイスで、2つの部分透過型のミラーの間で反射型共振器を形成しており、その波長透過率T(λ)は、次式(1)で表されることが知られている。
【0031】
T(λ)=(1−A−R)(1−A−R
/{[1−(R×R1/2
+4(R・R1/2×sin(δ/2)} ……(1)
ただし、δ=4π・n・d・cosθ/λ
、Aは、ミラーの吸収率、R、Rはミラーの反射率、δは位相シフトを示す。
nはキャビティの屈折率(エアギャップ方式の場合n=1)、dはミラー間隔、λは波長、θは入射角(エタロン内部)を示す。
【0032】
ここで、二つのミラーの反射率がともにRに等しいとし、吸収率が無視できるほど小さいとすると、波長透過率T(λ)は以下のようになる。
【0033】
T(λ)=(1−R)
/{(1−R)+4×R×sin(δ/2)} ……(2)
ただし、δ=4π・n・d・cosθ/λ
【0034】
波長透過率T(λ)を周波数透過率T(f)に直すと、
T(f)=(1−R)
/{(1−R)+4×R×sin(δ/2)} ……(3)
ただし、δ=4π・n・d・cosθ/(c/f)
cは光速
となる。
【0035】
周波数変化に対する透過率変化の周期FSR(Free Spectral Range)は、
FSR=c/(2・n・d) ……(4)
で表される。
【0036】
数値例をあげると、例えばエタロン型の光フィルタ25のFSRを2GHzに設定する場合、ミラー間隔dは式(4)から74.948mmとなり、反射率R=10%、屈折率n=1とした場合の透過率は、図2のようになる。
【0037】
このような透過率特性をもつ光フィルタ25に周波数未知の被測定レーザ光を入射した場合、そのときの透過率変化を周波数変化に換算することができ、これによって被測定レーザ光の周波数変動を測定できる。
【0038】
ただし、被測定レーザ光の周波数変動領域が、透過率特性が極大、極小変化する領域に重なると変動方向の特定ができないので、被測定レーザ光の周波数変動領域(透過率の変化範囲)が、透過率特性の最大値と最小値のほぼ中間の単調変化領域内となるように光フィルタ25を調整して、被測定レーザ光の周波数の増減に対応して透過率が1対1で増減変化するように設定する。
【0039】
前記した光フィルタ調整手段40cはこの調整を行うものであり、光スイッチ23を光入射部21側に接続し、被測定レーザ光Pinを光フィルタ25に入射させた状態で、ローパスフィルタ26bおよびローパスフィルタ31bの出力PD1x、PD2xを取得してその比PD2x/PD1xから初期透過率Tx0を求め、この初期透過率Tx0が、選択特性メモリ40bに記憶されている特性の透過率の最大値と最小値の中間値となるように、光フィルタ25の共振周波数を調整する。
【0040】
この調整により、被測定レーザ光Pinの入射時の初期周波数f0に対して、光フィルタ25の透過特性が例えば図3のように右に(周波数が高い方に)シフトする。
【0041】
このように被測定レーザ光Pinの入射時の初期周波数f0が、透過特性の単調変化領域のほぼ中間にあれば、被測定レーザ光の周波数変動に正しく対応して透過率が変化する。
【0042】
ここで、光フィルタ25の透過率特性が微調整によってシフトしても、透過率特性のカーブ(FSR)はほとんど変化しない。
【0043】
例えば、上記数値例で共振器長を0.2μm程度変化させると、透過率特性を周波数軸に沿ってFSRの1/4周期(500MHz)程度シフトすることができる。
【0044】
それに対し、共振器長が74.948mmのときのFSR=2.000003GHzに対し、共振器長を0.2μm短縮して74.9478mmにしたときのFSRは2.000005GHzとなり、元の周波数に対して2kHz変化するが、これは、10−8の誤差に過ぎず、共振器長を微調整したことによる透過率特性の周期の変化は無視できる。
【0045】
つまり、共振器長を微調整して透過率の特性をFSRの1/4周期程度シフトしても、そのFSR自体の変化は無視できる程小さく、特性のカーブ(透過率の変化に対する周波数の相対的変化量)の変化は無視できる。
【0046】
周波数変動特性算出手段40dは、上記微調整状態から、二つの受光出力PD1x、PD2xの比からその透過率Txを求め、その透過率Txの変化を選択特性メモリ40bに基づいて光周波数の変化量に換算するという処理を、一定時間毎に継続して行い、その光周波数の変化量を累積することで、図4に示すように時間経過に伴う被測定レーザ光の周波数変動特性を求める。この測定結果から被測定レーザ光の周波数変動周期と振動振幅を把握することができ、被測定レーザ光の周波数変動に関する評価が行える。
【0047】
また、周波数変動特性算出手段40dは、図5のような周波数ヒストグラムを求めて表示し、このヒストグラムから被測定レーザ光の周波数変動幅(例えば半値幅)を統計的に求めてもよい。
【0048】
このように、実施形態のレーザ周波数変動評価装置20およびその評価方法は、波長可変レーザ光源22から出射されたレーザ光を、ファブリペローエタロン型の光フィルタ25に入射させた状態でレーザ光の波長を変化させ、その光フィルタの光周波数対透過率の変化を表す選択特性を求め、被測定レーザ光を光フィルタ25に入射させたときの透過率を求め、その被測定レーザ光の周波数変動に伴う透過率の変化の領域が、光フィルタ25の波長選択特性の最大透過率と最小透過率の間で単調変化領域となるように光フィルタの共振周波数を調整した後に、被測定レーザ光に対する光フィルタ25の透過率の変化を求め、その透過率の変化と波長選択特性に基づいて、被測定レーザ光の周波数変動特性を算出しているので、安価に構成でき、迅速な評価測定が行える。
【0049】
上記実施形態では、共振器長の可変範囲が限定されている単一の光フィルタ25の透過率特性を用いて被測定レーザ光の周波数変動を測定していたが、共振器長が異なる複数の光フィルタを選択的に用いることで、被測定レーザ光の周波数変動の振幅の大小に対応することができ、測定レンジを拡大することができる。
【0050】
図6はその一つの実施形態を示すものであり、光分岐器24の後段に、光フィルタ選択用の切替器51、共振器長の異なる複数nの光フィルタ25(1)〜25(n)、各光フィルタ25(1)〜25(n)の透過光強度をそれぞれ検出するための複数の透過光強度検出手段26(1)〜26(n)、切替器51と連動し、各透過光強度検出手段26(1)〜26(n)の出力のうち、切替器51で選択された光フィルタに対応する出力を選択的にA/D変換器28に出力する切替器52を設けている。
【0051】
この装置の場合、被測定レーザ光の予想される周波数変動幅が大きい場合には、共振器長が長く、図7の(a)のように透過率特性の単調変化領域の幅が広い(FSRが大きい)は光フィルタを切替器51で選択し、それに対応する透過光強度検出手段の出力を切替器52で選択する。
【0052】
また、逆に、被測定レーザ光の周波数変動幅が小さい場合には、共振器長が短く、図7の(b)のように透過率特性の単調変化領域の幅が狭い(FSRが小さい)光フィルタを切替器51で選択し、それに対応する透過光強度検出手段の出力を切替器52で選択する。
【0053】
なお、この実施形態では、共振器長が異なる複数(n)の光フィルタ25(1)〜25(n)にそれぞれ対応させて透過光強度検出手段26(1)〜26(n)を複数(n)組設けているが、光フィルタ25(1)〜25(n)の後段に切替器51と連動する光の切替器を設けて、光フィルタのみを切り替えて共通の透過光強度検出手段26で透過光の強度を検出する方式、あるいは複数の受光器26a(1)〜26a(n)の出力を切替器52で選択して共通のローパスフィルタ26bに入力する方式を採用してもよい。
【符号の説明】
【0054】
20……レーザ周波数変動評価装置、21……光入射部、22……波長可変レーザ光源、23……光スイッチ、24……光分岐器、25、25(1)〜25(n)……光フィルタ、26……透過光強度検出手段、26a……受光器、26b……ローパスフィルタ、28……A/D変換器、31……入射光強度検出手段、31a……受光器、31b……ローパスフィルタ、33……A/D変換器、40……測定処理部、40a……選択特性取得手段、40b……選択特性メモリ、40c……光フィルタ調整手段、40d……周波数変動特性算出手段、41……表示部、51、52……切替器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定レーザ光を入射させる光入射部(21)と、
波長可変レーザ光源(22)と、
前記光入射部に入射された被測定レーザ光と前記波長可変レーザ光源から出射されたレーザ光とを受け、その一方を選択的に出射する光スイッチ(23)と、
前記光スイッチから出射された光を分岐する光分岐器(24)と、
光に対する共振周波数を可変でき、前記光分岐器によって分岐された一方の光を受けて前記共振周波数帯域の光を選択的に出射するファブリペローエタロン型の光フィルタ(25)と、
前記光フィルタを透過した光の強度を検出する透過光強度検出手段(26)と、
前記光分岐器によって分岐された他方の光を受けて、前記光フィルタに入射される光の強度を検出する入射光強度検出手段(31)と、
前記波長可変レーザ光源、前記光スイッチおよび前記光フィルタを制御しつつ、前記透過光強度検出手段および前記入射光強度検出手段の出力を受けて、前記被測定レーザ光の周波数変動特性を求める測定処理部(40)とを有するレーザ周波数変動評価装置であって、
前記測定処理部は、
前記波長可変レーザ光源から出射されたレーザ光を前記光フィルタに入射させた状態で、該レーザ光の波長を変化させながら前記透過光強度検出手段および前記入射光強度検出手段の出力を取得して、前記光フィルタの光周波数対透過率の変化を表す選択特性を求めて記憶する選択特性取得手段(40a)と、
前記被測定レーザ光を前記光フィルタに入射させた状態で、前記透過光強度検出手段および前記入射光強度検出手段の出力を取得してその比から透過率を求め、前記被測定レーザ光の周波数変動に伴う透過率の変化範囲が、前記波長選択特性取得手段によって求めた波長選択特性の最大透過率と最小透過率の間の単調変化領域内となるように前記光フィルタの共振周波数を調整する光フィルタ調整手段(40c)と、
前記光フィルタ調整手段によって前記光フィルタの共振周波数が調整された後の前記透過光強度検出手段と前記入射光強度検出手段の出力を連続的に取得し、その比で得られる透過率と前記光フィルタの選択特性に基づいて、前記被測定レーザ光の周波数変動特性を算出する周波数変動特性算出手段(40d)とを備えたことを特徴とするレーザ周波数変動評価装置。
【請求項2】
前記光フィルタが、共振器長が互いに異なる複数の光フィルタ(25(1)〜25(n))からなり、
前記複数の光フィルタのいずれかを選択的に用いる切替手段(51、52)を有しており、
前記測定処理部は、被測定レーザ光の周波数変動の変動幅に応じて、前記複数の光フィルタを選択的に用いることを特徴とする請求項1記載のレーザ周波数変動評価装置。
【請求項3】
波長可変レーザ光源から出射されたレーザ光を、ファブリペローエタロン型の光フィルタに入射させた状態でレーザ光の波長を変化させ、該光フィルタの光周波数対透過率の変化を表す選択特性を求める段階と、
被測定レーザ光を前記光フィルタに入射させてその透過率を求め、該被測定レーザ光の周波数変動に伴う透過率の変化範囲が、前記波長選択特性取得手段によって求めた波長選択特性の最大透過率と最小透過率の間の単調変化領域内となるように前記光フィルタの共振周波数を調整する段階と、
前記光フィルタの共振周波数が調整された後の前記被測定レーザ光に対する前記光フィルタの透過率の変化を求め、該透過率の変化と前記求めた波長選択特性に基づいて、被測定レーザ光の周波数変動特性を算出する段階とを含むことを特徴とするレーザ周波数変動評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−63264(P2012−63264A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208037(P2010−208037)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】