説明

レース付スラストころ軸受

【課題】保持器3と第一、第二両スラストレース4a、5aとの分離防止機能を確保しつつ、相対回転する1対の部材の偏心に対する許容量を大きくし、且つ、内部に流通させる潤滑油の量を多くする。そして、取り扱い性が良好で、しかも、厳しい使用条件下でも安定した運転状態を確保できる構造を実現する。
【解決手段】前記第一スラストレース4aの外周縁部に形成した外径側フランジ8aの外径を60〜120mmとし、前記内径側フランジ5aの内周縁部に形成した内径側フランジ11aの内径を40〜80mmとして、内部隙間を1〜2mmとする。この為に、前記外径側フランジ8aの先端縁に外径側係止部9aを、円周方向に関して間欠的に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のトランスミッション等、各種回転機械の回転支持部分に加わるスラスト荷重を支承する為、この回転支持部分に組み付けた状態で利用するレース付スラストころ軸受(スラストニードル軸受を含む)の改良に関する。具体的には、保持器と1対のスラストレースとの分離防止機能を確保しつつ、相対回転する1対の部材の偏心に対する許容量を大きくし、且つ、内部に流通させる潤滑油の量を多くする事により、取り扱い性が良好で、しかも、厳しい使用条件下でも安定した運転状態を確保できる構造の実現を図るものである。
【背景技術】
【0002】
トランスミッションの如き各種回転機械の回転支持部分には、例えば特許文献1に記載されている様なスラストころ軸受を装着して、回転軸等の回転部材とケーシング等の静止部材との間に加わるスラスト荷重を支承しつつ、この回転部材の回転を許容する様にしている。又、この様なスラストころ軸受を介して相対回転する1対の部材が、必要とする硬度を確保する事が難しい材料である場合、或いは、必要とする平滑面に加工する事が困難乃至は面倒である場合には、1個の保持器及び複数本のころと2枚のレースとを組み合わせた、レース付スラストころ軸受を使用する。
【0003】
図7は、従来から広く知られているレース付スラストころ軸受1の1例を示している。このレース付スラストころ軸受1は、広く知られている様に、放射方向に配列された複数のころ2と、これら各ころ2を保持する保持器3と、これら各ころ2を、この保持器3の軸方向に関して両側から挟持する、第一、第二両スラストレース4、5とから成る。この保持器3は全体を円輪状に造られたもので、前記各ころ2と同数のポケット6を、円周方向に関して等間隔に、放射状に配列して成る。
【0004】
又、前記第一、第二両スラストレース4、5は、それぞれが軸受鋼或いは肌焼鋼等の、十分な硬度を有する硬質金属板に、プレスによる打ち抜き加工及び曲げ加工を施す事により造られている。一般的に外輪と呼ばれる第一スラストレース4は、平坦で円輪状の第一スラストレース部7と、この第一スラストレース部7の外周縁から軸方向片側に折れ曲がった状態で設けられた、円筒状の外径側フランジ8とを備える。又、この外径側フランジ8の先端縁に、径方向内方に折れ曲がった外径側係止部9を設けている。これに対して、一般的に内輪と呼ばれる第二スラストレース5は、平坦で円輪状の第二スラストレース部10と、この第二スラストレース部10の内周縁から軸方向片側に折れ曲がった状態で設けられた、円筒状の内径側フランジ11とを備える。又、この内径側フランジ11の先端縁に、径方向外側に折れ曲がった内径側係止部12を設けている。
【0005】
前記外径側フランジ8の内径は前記保持器3の外径よりも大きくし、前記内径側フランジ11の外径はこの保持器3の内径よりも小さくして、これら両フランジ8、11同士の間にこの保持器3を、前記両スラストレース4、5に対する相対回転を自在に配置可能としている。又、前記外径側係止部9の内接円の直径は、前記保持器3の外径よりも少しだけ小さくし、前記内径側係止部12の外接円の直径は、この保持器の内径よりも少しだけ大きくしている。そして、前記両フランジ8、11を弾性変形させつつ、前記各ころ2を保持した前記保持器3と前記両スラストレース4、5とを組み合わせ、組み合わせ後には、これら各部材3、4、5が相対回転自在で、且つ、不用意に分離しない様にしている。尚、図示の例では、前記第一スラストレース4を、硬度の高い鉄系合金製の部材に、前記第二スラストレース5を、硬度の低いアルミニウム系合金製の部材に、それぞれ組み付ける事を考慮している。この為、前記第二スラストレース5の厚さ寸法を、前記第一スラストレース4の厚さ寸法よりも大きくしている。
【0006】
上述の様に構成されるレース付スラストころ軸受1は、例えば図8に示す様に、前記第一スラストレース4の外周縁に形成した外径側フランジ8を、ケーシング13に形成した保持部14に内嵌した状態で、スラスト荷重が発生する回転部分に装着する。又、前記第二スラストレース5を、相手部材15の端面に当接させる。この状態で、この相手部材15を前記ケーシング13に対し、回転自在に支持する。これら相手部材15とケーシング13との間に加わるスラスト荷重は、前記レース付スラスト軸受1が支承する。
【0007】
上述した様なレース付スラスト軸受1には、次の(1)〜(4)の様な機能が、できる限り高次元で並立させられる事が要求される。
(1) 前記保持器3と前記両スラストレース4、5とが不用意に分離しない事。
この機能は、前記レース付スラスト軸受1を軸受の製造工場からトランスミッション等の組立工場に輸送し、所定部分に組み付けるまでの間、前記各部材3、4、5が分離する事で、前記レース付スラスト軸受1本来の性能を得られなくなったり、トランスミッション等の組立作業が面倒になるのを防止する為に必要である。
(2) トランスミッション等の運転時に、前記両スラストレース4、5同士の間で、前記保持器3及び前記各ころ2を設置した内部空間を流通する潤滑油の流量(潤滑油流量)を確保できる事。
この機能は、トランスミッション等の運転時に、前記各ころ2の転動面と前記第一、第二両レース部7、10との転がり接触部に形成される油膜の強度を確保すると共に、これら各転がり接触部を効果的に冷却する為に必要である。
(3) 前記両スラストレース4、5の回転中心が多少ずれた(これら両スラストレース4、5が多少の偏心運動をする)場合でも、前記両スラストレース4、5に対する前記保持器3の相対回転が保障される事。
この機能は、前記レース付スラスト軸受1やトランスミッション等の製造誤差、組み付け誤差等により、前記両スラストレース4、5の回転中心が多少ずれた場合でも、前記レース付スラスト軸受1の機能を確保する為に必要である。
(4) 前記ケーシング13等に対して、前記レース付スラストころ軸受1を所定方向にのみ組み付け可能である(逆方向には組み付け不能である)事。
この機能は、前記レース付スラストころ軸受1を逆方向に組み付ける事で、潤滑油の流路が塞がれて、このレース付スラストころ軸受1に、焼き付き等の損傷が発生するのを防止する為に必要である。
【0008】
従来構造の場合、上述の(1)〜(4)に示した機能を高次元で並立させる事が難しく、トランスミッション等、レース付スラスト軸受を組み込んだ各種機械装置の性能向上を図る上で不利であった。以下、この点に就いて説明する。
前記(1)(2)の機能を高次元で両立させる為には、前記外径側、内径側各係止部9、12と前記保持器3の周縁部との係り代を大きくしつつ、前記外径側、内径側両フランジ8、11とこの保持器3の外内両周面との間に存在する隙間を広くする必要がある。但し、前記両スラストレース4、5と前記保持器3との組立性を考慮すれば、前記係り代を過度に大きくする事はできない。例えば、この保持器3と前記第一スラストレース4とを組み合わせる場合には、図9の(A)→(B)→(C)に示す様に、前記外径側フランジ8を径方向外方に弾性変形させつつ、前記保持器3の外周縁部を前記外径側係止部9を乗り越えさせる。この作業は、前記外径側フランジ8の内周面からのこの外径側係止部9の突出量δが大き過ぎると難しくなる。
【0009】
前記外径側係止部9として従来から、前記外径側フランジ8の先端縁部を全周に亙って径方向内方に曲げ形成して成る、所謂フルカール構造と、同じく周方向に関して間欠的に存在する複数箇所をそれぞれ径方向内方に曲げ形成して成る、所謂パーシャルカール構造とがある。このうちのフルカール構造の場合には、前記突出量δを相当に小さくするか、或いは、この突出量δを確保する代わりに、前記保持器3の外径を前記外径側フランジ8の内径よりも相当に小さくしなければ、この保持器3をこの外径側フランジ8の内側に組み込めない。但し、前記保持器3の外径を前記外径側フランジ8の内径よりもあまり小さくする事は、前記第一スラストレース4に対する前記保持器3の径方向に関する位置決め性を確保する(この保持器3の径方向振れを抑える)面からは好ましくない。この為、前記フルカール構造を採用する場合には、前記突出量δを小さくする必要がある。本発明が対象とする、外径側フランジの外径が60〜120mm、前記内径側フランジの内径が40〜80mm程度のレース付ころ軸受1で、前記外径側係止部9をフルカール構造とした場合には、前記突出量δを0.4mmを越えて大きくすると、前記保持器3を前記外径側フランジ8の内側に組み込む事が難しくなる。
【0010】
これに対し、前記パーシャルカール構造を採用すれば、前記保持器3を前記外径側フランジ8の内側に組み込む際に於ける、前記外径側フランジ8の弾性変形量を多く(弾性変形する範囲を広く)できる。従って、前記外径側係止部9の突出量δを大きくし、且つ、前記保持器3の外径と前記外径側フランジ8の内径との差を或る程度小さくしても、この保持器3を前記外径側フランジ8の内側に、特に面倒なく組み込める。そして、特許文献2の図3〜4に記載された如く、外径側フランジの先端縁の円周方向複数箇所にパーシャルカール型の外径側係止部を形成すると共に、この外径側フランジのうちで、円周方向に隣り合う外径側係止部同士の間部分の軸方向に関する高さ寸法を小さくすれば、第一、第二両スラストレース同士の間で保持器及び各ころを設置した内部空間の外径側の開口面積を広くして、潤滑油流量を確保でき、前記(1)(2)の機能を得られる。
【0011】
但し、上述した特許文献2の図3〜4に記載された構造によっても、前記(3)(4)の機能を得る事はできない。例えば、このうちの(3)の機能を得る為には、前記レース付スラストころ軸受1を構成する、前記第一、第二両スラストレース4、5同士の径方向に関する相対変位を或る程度(過大ではなく、適度に)許容する構造である事が必要である。即ち、これら両スラストレース4、5は、互いに相対回転する1対の部材にそれぞれ支持された状態で、これら両部材と共に回転する。従って、これら両部材の回転中心が径方向にずれていると、前記両スラストレース4、5が互いに振れ回り運動する。そして、この振れ回り運動の半径(偏心量)が大きくなると、図10に示す様に、前記保持器3の一部が、前記外径側フランジ8の内周面と前記内径側フランジ11の外周面との間で強く挟持される(保持器の「挟み込み」が発生する)。この結果、この保持器3の一部に大きなラジアル荷重が加わり、この保持器3に割れや亀裂等の損傷が発生し易くなる。又、この保持器3が回転しなくなって、前記各ころ2の公転及び自転が不能となり、これら各ころ2の転動面と、前記第一、第二両レース部7、10の第一、第二両スラストレース面17、20とが擦れ合い(滑り接触し)、前記レース付スラストころ軸受1に、これら両スラストレース面17、20と前記各ころ2の転動面との接触部の焼き付きや、前記保持器3の破損等の、重大な損傷を発生する。
【0012】
本発明が対象とする、外径側フランジの外径が60〜120mm、前記内径側フランジの内径が40〜80mm程度のレース付スラストころ軸受1の場合、前記外径側係止部9としてフルカール型のものを採用し、この外径側係止部9の内径側を、前記保持器3を通過可能にすると、前述した通り、この外径側係止部9の径方向突出量を0.4mm程度に抑える必要がある。この条件では、前記レース付スラストころ軸受1の内部隙間は0.6〜1.6mm程度に止まり、前記両部材の回転中心の径方向のずれ(前記振れ回り運動の半径)が0.5mmを超えると、上述の様な損傷を発生する可能性が高くなる。前記特許文献2にも、この様な損傷を防止する為の技術は記載されていない。
【0013】
又、前記レース付スラスト軸受1を前記ケーシング13と前記相手部材15との間に組み付ける場合、組み付け方向を間違えると、潤滑不良により耐久性が損なわれる等、前記レース付スラスト軸受1に十分な性能を発揮させる事ができない。即ち、このレース付スラストころ軸受1は、前記ケーシング13に対し、図8に示した正規状態とは逆方向に(不正規状態で)組み付ける事も可能である。但し、不正規状態に組み付けられた場合、前記第一スラストレース4が、前記ケーシング13と前記相手部材15との間の隙間16を塞ぎ、前記レース付ころ軸受1の内部に潤滑油が流通する事を妨げる。
【0014】
この様な不都合を発生する逆組み付けを防止する為の構造として、例えば特許文献3の図11〜12には、第二スラストレースの第二スラストレース部の外径を、第一スラストレースの外径側フランジの外径よりも大きくした構造が記載されている。この様な構造によれば、前記第二スラストレースをケーシングの保持部内に挿入できないので、この第二スラストレースが、過ってこのケーシングの保持部に組み付けられる事を防止できる。即ち、この保持部には、本来内嵌すべき第一スラストレースしか組み付けられないので、前記逆組付けを防止できる。但し、この様な特許文献3の図11〜12に示した従来構造の場合には、前記第二スラストレース部の外周縁寄り部分で前記外径側フランジの外周面よりも径方向外方に突出した部分が、レース付スラストころ軸受の内部空間の外径側開口のかなりの部分を塞ぎ、潤滑油流量を少なくする為、前記(2)の機能が損なわれる。
以上の説明から分かる様に、従来構造の場合には、前記(1)〜(4)に示した機能を高次元で並立させる事が難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2005−164023号公報
【特許文献2】特開2008−039031号公報
【特許文献3】特開2004−028342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、保持器と1対のスラストレースとの分離防止機能を確保しつつ、相対回転する1対の部材の偏心に対する許容量を大きくし、且つ、内部に流通させる潤滑油の量を多くする事により、取り扱い性が良好で、しかも、厳しい使用条件下でも安定した運転状態を確保できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のレース付スラストころ軸受は、保持器と、複数本のころと、第一、第二両スラストレースとを備える。
このうちの保持器は、円輪状で、それぞれが放射方向に長いポケットを円周方向複数箇所に設けている。
又、前記各ころは、前記各ポケット内に転動自在に設けられている。
又、前記両スラストレースは、前記保持器と相対回転を自在に、且つ、非分離に組み合わされたもので、何れも、硬質金属板を曲げ形成して成る。
このうちの第一スラストレースは、平坦で円輪状の第一スラストレース部と、この第一スラストレース部の外周縁から軸方向片側に折れ曲がった状態で設けられた円筒状の外径側フランジと、この外径側フランジの先端縁の一部で円周方向複数箇所に、この外径側フランジの先端縁から径方向内側に突出する状態で設けられた外径側係止部とを備える。又、前記外径側フランジの軸方向に関する高さ寸法を、この外径側係止部を設けていない部分で、同じく設けた部分よりも小さくしている。更に、前記外径側フランジの外径が60〜120mmである。
一方、前記第二スラストレースは、平坦で円輪状の第二スラストレース部と、この第二スラストレース部の内周縁から軸方向片側に折れ曲がった状態で設けられた円筒状の内径側フランジと、この内径側フランジの先端縁の一部で円周方向複数箇所に、この内径側フランジの先端縁から径方向外側に突出する状態で設けられた内径側係止部とを備える。又、前記内径側フランジの内径が40〜80mmである。
【0018】
特に、本発明のレース付スラストころ軸受に於いては、内部隙間が1〜2mmである。この内部隙間とは、各部材の弾性変形を伴わずに、前記両スラストレースが径方向に相対変位可能な寸法であり、前記両フランジと前記保持器とを同心に配置したと仮定した状態で、このうちの外径側フランジの内周面及び内径側フランジの外周面と前記保持器の内外両周面との間にそれぞれ存在する、環状隙間の径方向寸法の和である。
【0019】
この様な本発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、前記保持器を、第一、第二両保持器素子を組み合わせる事により、全体を中空環状としたものとする。又、これら両保持器素子のうちの前記第一スラストレース部側に配置される第一保持器素子を、円輪状の第一平板部の内外両周縁から軸方向に関して互いに同じ方向に直角に折り曲げた、第一内径側、第一外径側両嵌合円筒部を形成して成るものとする。これに対して、前記第二スラストレース部側に配置される前記第二保持器素子を、円輪状の第二平板部の内外両周縁から軸方向に関して互いに同じ方向で、且つ、前記第一内径側、第一外径側両嵌合円筒部と反対方向に直角に折り曲げた、第二内径側、第二外径側両嵌合円筒部を形成して成るものとする。そして、前記第一内径側嵌合円筒部を前記第二内径側嵌合円筒部に内嵌すると共に、前記第一外径側嵌合円筒部を前記第二外径側嵌合円筒部に外嵌する事により、前記両保持器素子を互いに組み合わせる。更に、前記第二外径側嵌合円筒部の直径を、前記第二平板部寄りの基半部よりもこの第二平板部から遠い側の先半部で大きくし、前記第一外径側嵌合円筒部を前記第二外径側嵌合円筒部に、この先半部でのみ外嵌する。
【0020】
又、上述の様な本発明を実施する場合に好ましくは、請求項3に記載した発明の様に、前記第二スラストレースを、円輪状の第二スラストレース部(スラストレース本体)と、この第二スラストレース部の外周縁の一部から径方向外方に突出する状態で設けられた、少なくとも1個の突片とを備えたものとする。そして、前記第二スラストレース部の外径を前記外径側フランジの内径よりも小さく、前記突片を含む前記第二スラストレースの外接円の直径を、この外径側フランジの外径よりも大きくする。
この様な請求項3に記載した発明を実施する場合に、より好ましくは、請求項4に記載した発明の様に、前記突片の厚さ寸法を、前記第二スラストレース部の厚さ寸法よりも小さくする。そして、この突片のうちで前記外径側フランジの先端縁と対向する片面と、前記第二スラストレース部のうちで前記各ころを転がり接触させるレース面との境界部に、段差部を存在させる。
この様な請求項4に記載した発明を実施する場合に、更に好ましくは、請求項5に記載した発明の様に、前記突片を、前記第二スラストレース部の外周縁の複数箇所に、円周方向に関して等間隔に設ける。
【発明の効果】
【0021】
上述の様に構成する本発明のレース付スラストころ軸受によれば、前記(1)〜(4)に示した機能を、高次元で並立させる事ができる。具体的には、保持器と1対のスラストレースとの分離防止機能を確保しつつ、相対回転する1対の部材の偏心に対する許容量を大きくし、且つ、内部に流通させる潤滑油の量を多くする事により、取り扱い性が良好で、しかも、厳しい使用条件下でも安定した運転状態を確保できる。
【0022】
このうち、前記(1)の分離防止機能は、外径側係止部と保持器の外周縁との係合により、この保持器と第一スラストレースとを、内径側係止部とこの保持器の内周縁との係合により、この保持器と第二スラストレースとを、それぞれ非分離に組み合わせる事により図れる。
この様に、これら両スラストレースと前記保持器とを非分離に組み合わせる為に、外径側、内径側両フランジの先端縁にそれぞれ設けた、外径側、内径側各係止部は、何れも、それぞれのフランジの先端縁の円周方向複数箇所に間欠的に形成されている。従って、前記各係止部の径方向に関する突出量を大きくしても、前記両スラストレースと前記保持器とを組み合わせる事ができる。そして、前記各係止部の径方向に関する突出量を大きくできる分、前記外径側フランジの内径と前記保持器の外径との差、並びに、前記内径側フランジの外径とこの保持器の内径との差を或る程度大きくしても、この保持器と前記両スラストレースとの分離防止機能を確実に果たせる。この結果、前記レース付スラストころ軸受の内部隙間として、1〜2mmと言った、比較的大きな値を採用できる。
【0023】
この内部隙間として、この様に大きな値を採用する事により、前記両スラストレースが多少の振れ回り運動をした場合でも、これら両スラストレースに対する前記保持器の相対回転を保障できる。即ち、前記内部隙間が大きい為、前記振れ回り運動に基づいて、前記外径側フランジの内周面と前記内径側フランジの外周面との間隔が、円周方向の一部で狭くなっても、当該部分の間隔を、前記保持器の径方向幅よりも大きな値に保てる。従って、この保持器の円周方向の一部が、前記外径側フランジの内周面と前記内径側フランジの外周面との間で強く挟持される事がなくなる。この結果、両スラストレースの回転中心が多少ずれた場合でも、これら両スラストレースに対する前記保持器の相対回転を保障できて、前記(3)の機能を奏する事ができる。
【0024】
又、前記内部隙間として比較的大きな値を採れる事と、前記外径側フランジのうちで前記外径側係止部を設けていない部分の軸方向に関する高さ寸法を小さくしている事とにより、前記内部空間に流通する潤滑油の量を確保できる。即ち、前記外径側フランジの高さ寸法を一部で小さくする事により、潤滑油がこの外径側フランジを径方向に通過し易くできる。又、前記内部隙間を大きくする事で、潤滑油が、前記保持器の内外両周縁と前記外径側フランジの内周面及び前記内径側フランジの外周面との間を通過し易くできる。この結果、運転時にレース付スラストころ軸受の潤滑油流量を確保して、前記(2)の機能を、高次元で奏する事ができる。
【0025】
又、請求項2に記載した発明の様に、保持器を構成する第一保持器素子の外周縁に形成した第一外径側嵌合円筒部を、第二保持器素子の外周縁に形成した第二外径側嵌合円筒部に、この第二外径側嵌合円筒部の先半部でのみ外嵌すれば、前記保持器の外周縁と外径側係止部との係り代の確保と、これら保持器の外周縁と外径側係止部との擦れ合い防止との両立を図り易くできる。
更に、請求項3〜5に記載した発明の様に、第二スラストレースを構成する第二スラストレース部の外周縁に突片を設ける事により、回転支持部分に対してレース付スラストころ軸受を、過って逆方向に組み付ける事を確実に防止でき、前記(4)の機能を奏する事ができる。前記突片の円周方向幅は限られているので、この突片が前記内部空間に流通する潤滑油の流れを妨げる事は少なく、逆組み防止機能を備えたとしても、前記(2)の機能が損なわれる事は殆どない。特に、請求項4に記載した発明の様に、前記突片の厚さ寸法を小さくすれば、この突片の片面と前記外径側フランジの先端縁との間の隙間を十分に広くして、この突片が潤滑油の流れを妨げる程度を、より一層低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す部分断面図。
【図2】第一スラストレースの形状の2例を示す、図1の下方から見た図(a)及び径方向から見た図(b)。
【図3】第二スラストレースの形状の2例を示す、図1の上方から見た図。
【図4】本発明の実施の形態の第2例を示す部分断面図。
【図5】第一、第二両スラストレースを偏心させて運転した場合の耐久性に関する試験の実施状況を示す断面図。
【図6】潤滑油の流通量に関する試験の実施状況を示す断面図。
【図7】従来から知られているレース付スラスト軸受の1例を示す部分断面図。
【図8】このレース付スラスト軸受の組み付け状態の1例を示す部分断面図。
【図9】第一スラストレースと、各ころを保持した保持器とを組み合わせる工程を順番に示す部分断面図。
【図10】第一、第二両スラストレースの偏心運動に基づいて、保持器が外径側フランジと内径側フランジとの間に噛み込まれた状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[実施の形態の第1例]
図1〜3は、請求項1、3〜5に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例のレース付スラストころ軸受1aは、保持器3と、複数本のころ2と、第一、第二両スラストレース4a、5aとを備える。このうちの保持器3及び各ころ2の構成に就いては、前述の図7に示した従来構造と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明は省略する。又、前記第一、第二両スラストレース4a、5aが、硬質金属を曲げ形成して成り、前記保持器3と相対回転を自在に、且つ、非分離に組み合わせた点に関しても、前記従来構造と同様である。
【0028】
前記両スラストレース4a、5aのうちの第一スラストレース4aは、第一スラストレース部7aと、外径側フランジ8aと、複数{図2の(A)の構造では3個、(B)に示した構造では6個}の外径側係止部9a、9aとを備える。このうちの第一スラストレース部7aは、平坦且つ円輪状であり、軸方向片面(図1の下面)を第一スラストレース面17としている。又、前記外径側フランジ8aは、短円筒状で、前記第一スラストレース部7aの外周縁から、前記第一スラストレース面17が存在する軸方向片側(図1の下側)に、ほぼ直角に折れ曲がった状態で設けられている。
【0029】
又、前記各外径側係止部9a、9aは、前記外径側フランジ8aの先端縁の一部で円周方向等間隔の複数箇所{図2の(A)の構造では3箇所、(B)に示した構造では6箇所}を径方向内方に向け、90度未満だけ折り曲げる事により、前記外径側フランジ8aの先端縁から径方向内側に突出する状態で設けられている。前記各外径側係止部9a、9aの内接円の直径は、前記保持器3の外径よりも少しだけ(例えば1〜2mm程度)小さくしている。
【0030】
更に、前記外径側フランジ8aの先端縁の残部で、円周方向に隣り合う前記各外径側係止部9a、9a同士の間部分に、切り欠き部18、18を形成している。そして、これら各切り欠き部18、18の存在に基づき、前記外径側フランジ8aの軸方向に関する高さ寸法を、前記各外径側係止部9a、9aを設けていない部分で、同じく設けた部分よりも小さくしている。前記各切り欠き部18、18の形状は特に問わない。図2の(A)(b)に示す様な台形状であっても、或いは、図2の(B)(b)に示す様な円弧状であっても良い。上述の様な第一スラストレース4aの大きさは、前記外径側フランジ8aの外径で、60〜120mmとしている。
【0031】
一方、前記第二スラストレース5aは、第二スラストレース部10aと、内径側フランジ11aと、複数(図示の例では4個)の内径側係止部12a、12aと、複数{図3の(A)構造では3個、(B)に示す構造では2個}の突片19、19とを備える。このうちの第二スラストレース部10aは、平坦且つ円輪状であり、軸方向片面(図1の上面)を第二スラストレース面20としている。又、前記内径側フランジ11aは、短円筒状で、前記第二スラストレース部10aの内周縁から、前記第二スラストレース面20が存在する軸方向片側(図1の上側)に、ほぼ直角に折れ曲がった状態で設けられている。
【0032】
又、前記各内径側係止部12a、12aは、前記内径側フランジ11aの先端縁の一部で円周方向複数箇所(図示の例では4箇所)を径方向外方に向け、この内径側フランジ11aの先端縁から径方向外側に突出する状態で設けられている。本例の場合に前記各内径側係止部12a、12aは、前記内径側フランジ11aの先端縁を径方向外側に向け、軸方向から見た形状が略V字形となる様に曲げ形成して成る。尚、この様な前記各内径側係止部12a、12aの形状等に就いては、前記特許文献3の図8〜10に記載された「係止部7a、7a」と同様であり、従来から広く知られている形状であるから、詳しい説明は省略する。前記内径側フランジ11aの先端縁に関しても、円周方向に隣り合う前記各内径側係止部12a、12a同士の間部分に切り欠き部21、21を形成して、前記内径側フランジ11aの軸方向に関する高さ寸法を、前記各内径側係止部12a、12aを設けていない部分で、同じく設けた部分よりも小さくしている。
【0033】
更に、前記各突片19、19は、前記第二スラストレース部10aの外周縁のうちで、円周方向等間隔複数箇所{図3の(A)の構造では3箇所、(B)に示した構造では2箇所}に、前記第二スラストレース部10aの外周縁から径方向外方に突出する状態で形成している。前記各突片19、19の形状は特に問わない。図3の(A)に示す様な半円形であっても、或いは(B)に示す様な矩形であっても良い。前記各突片19、19の厚さ寸法tは、前記第二スラストレース部10aの厚さ寸法Tよりも小さい(t<T)。但し、前記第二スラストレース面20と反対側(図1の下側)で、前記第二スラストレース部10aと前記各突片19、19とは同一平面上に存在する。従って、前記第二スラストレース面20の側で、これら各突片19、19の片面(図1の上面)と前記第二スラストレース面20との境界部に、高さ寸法h(=T−t)を有する、段差部22が存在する。この様な形状を有する、前記第二スラストレース5aの大きさは、前記内径側フランジの内径で40〜80mm程度である。又、前記第二スラストレース部10aの外径は、前記各ころ2の外接円の直径よりも大きく、前記外径側フランジ8aの内径よりも小さい。又、前記各突片19、19の外接円の直径は、この外径側フランジ8aの外径よりも大きい。
【0034】
更に、本例のレース付スラストころ軸受1aは、前記保持器3の外径及び内径と、前記外径側フランジ8aの内径と、前記内径側フランジ11aの外径とを適切に規制する事により、内部隙間の大きさを1〜2mmとしている。この内部隙間とは、前記レース付スラストころ軸受1aを構成する各部材3、4a、5aの弾性変形を伴わずに、このうちの第一、第二両スラストレース4a、5aが径方向に相対変位可能な寸法である。これら両スラストレース4a、5aが偏心して、前述の図10の上部に示す様に、前記外径側、内径側両フランジ8a、11aの周面同士の間で前記保持器3の円周方向の一部を挟持すると、径方向反対側では、前述の図10の下部に示す様に、この保持器3の内外両周面と、前記内径側フランジ11(11a)の外周面及び前記外径側フランジ8(8a)の内周面との間に、それぞれ隙間が介在する状態となる。これら両隙間の径方向寸法をそれぞれC、Cとすると、前記内部隙間は、(C+C)/2となる。言い換えれば、前記外径側、内径側両フランジ8a、11aと前記保持器3とを同心に配置したと仮定した状態で、このうちの外径側フランジ8aの内周面と前記保持器3の外周面との間に径方向寸法がc(=C/2)の環状隙間が、前記内径側フランジ11aの外周面と前記保持器3の内周面との間にc(=C/2)の環状隙間が、それぞれ介在する状態となる。前記内部隙間の値は、これら両環状隙間の径方向寸法の和(c+c)で表される。
【0035】
本例のレース付スラストころ軸受1aは、上述の様に構成する為、前記保持器3と、前記第一、第二両スラストレース4a、5aとの分離防止機能を確保しつつ、これら両スラストレース4a、5aを支持した状態で相対回転する1対の部材の偏心に対する許容量を大きくし、且つ、内部に流通させる潤滑油の量を多くできる。この結果、取り扱い性が良好で、しかも、厳しい使用条件下でも安定した運転状態を確保できるレース付スラストころ軸受1aを実現できる。
【0036】
先ず、前記各部材3、4a、5a同士の相対回転を許容しつつ分離を防止する機能は、前記各外径側係止部9a、9aと前記保持器3の外周縁との係合により、この保持器3と前記第一スラストレース4aとを、前記各内径側係止部12a、12aとこの保持器3の内周縁との係合により、この保持器3と前記第二スラストレース5aとを、それぞれ非分離に組み合わせる事により図れる。本例のレース付スラストころ軸受1aの場合には、前記外径側、内径側各係止部9a、12aは、何れも、それぞれ外径側、内径側両フランジ8a、11aの先端縁の円周方向複数箇所に間欠的に形成されている。従って、前記各係止部9a、12aの径方向に関する突出量を或る程度大きくしても、前記両スラストレース4a、5aと前記保持器3とを組み合わせる事ができる。
【0037】
即ち、ぞれぞれの先端縁の円周方向複数箇所に前記外径側、内径側各係止部9a、12aを間欠的に設けた、前記外径側、内径側両フランジ8a、11aの曲げ剛性は、全周に亙って(フルカール型の)係止部を設けたフランジに比べて低く、前記保持器3の外周縁部又は内周縁部を通過させ易い。この為、上述の様に、前記各係止部9a、12aの径方向に関する突出量を大きくできる。そして、これら各係止部9a、12aの突出量を大きくできる分、前記外径側フランジ8aの内径と前記保持器3の外径との差、並びに、前記内径側フランジ11aの外径とこの保持器3の内径との差を大きくしても、この保持器3と前記第一、第二両スラストレース4a、5aとの分離防止機能を確実に果たせる。この結果、前記レース付スラストころ軸受1aの内部隙間として、1〜2mmと言った、比較的大きな値を採用できる。
【0038】
そして、本例のレース付スラストころ軸受1aは、前記内部隙間として、上述の様に大きな値(1〜2mm)を採用する事により、前記第一、第二両スラストレース4a、5aが多少の振れ回り運動(偏心運動)をした場合でも、これら両スラストレース4a、5aに対する前記保持器3の相対回転を保障できる。即ち、前記内部隙間が大きい為、前記振れ回り運動に基づいて、前述の図10の上部に示す様に、前記外径側フランジ8aの内周面と前記内径側フランジ11aの外周面との間隔が、円周方向の一部で狭くなっても、当該部分の間隔を、前記保持器3の径方向幅よりも大きな値に保てる。従って、この保持器3の円周方向の一部が、前記外径側フランジ8aの内周面と前記内径側フランジ11aの外周面との間で強く挟持される事がなくなる。この結果、第一、第二両スラストレース4a、5aの回転中心が多少ずれた場合でも、これら両スラストレース4a、5aに対する前記保持器3の相対回転を保障できる。例えば、前述の図7に示した従来構造の場合、前記回転中心同士のずれが0.5mmを超えると、前述した様に、保持器3の破損や、スラストレース面と各ころ2の転動面との接触部の焼き付き等の損傷が発生し易くなる。これに対して、本例のレース付スラストころ軸受1aの場合には、前記内部隙間を大きくできるので、前記回転中心同士のずれが0.6mmを超える様な、厳しい使用条件下でも、上述の様な損傷の発生を防止できる。
【0039】
又、前記内部隙間として比較的大きな値(1〜2mm)を採れる事と、前記外径側、内径側両フランジ8a、11aのうちで前記外径側、内径側各係止部9a、12aを設けていない部分に前記各切り欠き部18、21を形成し、この部分の軸方向に関する高さ寸法を小さくしている事とにより、前記内部空間に流通する潤滑油の量を確保できる。即ち、前記外径側、内径側両フランジ8a、11aの高さ寸法を一部で小さくする事により、これら外径側、内径側両フランジ8a、11aと前記保持器3の周縁部との間に存在する、前記内部空間の開口部の面積を、前記図7に示した従来構造に比べて、2〜10倍程度にまで広くできる。そして、前記内部空間内への潤滑油の流入、この内部隙間からの潤滑油の排出を円滑にして、この内部空間内に潤滑油を、径方向に通過し易くできる。又、前記内部隙間を大きくする事で、潤滑油が、前記保持器3の内外両周縁と、前記外径側フランジ8aの内周面及び前記内径側フランジ11aの外周面との間の環状隙間を通過し易くできる。この結果、運転時に前記レース付スラストころ軸受1aの潤滑油流量を十分に確保できて、前記図7に示した従来構造に比べ、この潤滑油の流量を20%以上、例えば40%程度増大させる事が可能になり、その分、前記レース付スラストころ軸受1aの信頼性及び耐久性の向上を図れる。
【0040】
更に、本例のレース付スラストころ軸受1aの場合には、前記第二スラストレース5aを構成する前記第二スラストレース部10aの外周縁に、前記各突片19、19を設けている。これら各突片19、19の外接円の直径は、前記外径側フランジ8aの外径よりも大きい。従って、例えば前述の図8に示したケーシング13の保持部14に対し、前記外径側フランジ8aを設けた前記第一スラストレース4aは内嵌できるが、前記各突片19、19を設けた前記第二スラストレース5aは内嵌できない。この為、回転支持部分を構成する前記ケーシング13に対して前記レース付スラストころ軸受1aを、過って逆方向に組み付ける事を確実に防止できる。
【0041】
又、前記各突片19、19の円周方向幅は限られているので、これら各突片19、19が前記内部空間に流通する潤滑油の流れを妨げる事は少ない。従って、逆組み防止機能を備えたとしても、前記潤滑油流量を十分に確保できる。しかも、本例のレース付スラストころ軸受1aの場合には、前記各突片19、19の厚さ寸法tを、これら各突片19、19のうちで、前記外径側フランジ8aの先端縁に対向する面側を凹ませる事で小さくしている。この為、前記各突片19、19の片面と前記外径側フランジ8aの先端縁との間の隙間を十分に広くして、これら各突片19、19が潤滑油の流れを妨げる程度を、より一層低減できる。
【0042】
[実施の形態の第2例]
図4は、請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、保持器3aの構造を工夫する事により、この保持器3aの外周縁と、第一スラストレース4aの外周縁部に設けた複数の外径側係止部9aとの係り代の確保と、これら保持器3aの外周縁と外径側係止部9aとの擦れ合い防止との両立を図り易くしている。
【0043】
前記保持器3aの基本的構成自体は、上述した実施の形態の第1例と同様であり、第一、第二両保持器素子25、26を組み合わせる事により、全体を中空環状としている。これら両保持器素子25、26のうち、前記第一スラストレース4aの第一スラストレース部7a側に配置される、前記第一保持器素子25は、第一平板部27と、第一内径側嵌合円筒部28と、第一外径側嵌合円筒部29とを備える。このうちの第一平板部27は、円輪状で、円周方向等間隔複数箇所に、それぞれが径方向に長い長矩形の第一透孔30を、放射状に形成している。又、前記第一内径側、第一外径側両嵌合円筒部28、29は、前記第一平板部27の内外両周縁から軸方向に関して互いに同じ方向に直角に折り曲げて成る。又、第二スラストレース5bの第二スラストレース部10b側に配置される、前記第二保持器素子26は、第二平板部31と、第二内径側嵌合円筒部32と、第二外径側嵌合円筒部33とを備える。このうちの第二平板部31は、円輪状で、円周方向等間隔複数箇所に、それぞれが径方向に長い長矩形で、前記各第一透孔30と同数の第二透孔34を、放射状に形成している。又、前記第二内径側、第二外径側両嵌合円筒部32、33は、前記第二平板部31の内外両周縁から軸方向に関して互いに同じ方向で、且つ、前記第一内径側、第一外径側両嵌合円筒部28、29とは反対側に直角に折り曲げて成る。更に、前記第二外径側嵌合円筒部33の直径を、前記第二平板部31寄りの基半部35よりも、この第二平板部31から遠い側の先半部36で大きくして、前記第二外径側嵌合円筒部33を、段付円筒状としている。
【0044】
上述の様な第一、第二両保持器素子25、26は、前記第一内径側嵌合円筒部28を前記第二内径側嵌合円筒部32に締り嵌めで内嵌すると共に、前記第一外径側嵌合円筒部29を前記第二外径側嵌合円筒部33の先半部36に締り嵌めで外嵌する事により、前記両保持器素子25、26を互いに組み合わせ、前記保持器3aとしている。この際、前記第一外径側嵌合円筒部29は前記第二外径側嵌合円筒部33に、前記先半部36でのみ外嵌する。この為に、前記第一外径側嵌合円筒部29の高さ(軸方向寸法)を、この先半部36の高さ以下としている。尚、前記両保持器素子25、26の組み合わせ作業は、これら両保持器素子25、26の第一、第二両平板部27、31に形成した、前記第一、第二各透孔30、34の位相を合わせると共に、これら各透孔30、34同士の間にそれぞれころ2を配置した状態で行う。これら各透孔30、34の長さ(径方向寸法)はこれら各ころ2の長さよりも大きく、これら各透孔30、34の幅(周方向寸法)はこれら各ころ2の外径よりも小さい。従って、前記第一、第二両保持器素子25、26を組み合わせて前記保持器3aを構成すると、前記各ころ2は、前記第一、第二各透孔30、34同士の間に、脱落を阻止された状態で、転動自在に保持される。即ち、これら第一、第二各透孔30、34が合わさって、ポケット6を構成する。
【0045】
上述の様に構成する本例の構造によれば、前記保持器3aの外周縁と、前記第一スラストレース4aの外周縁部に設けた複数の外径側係止部9aとの係り代の確保と、これら保持器3aの外周縁と外径側係止部9aとの擦れ合い防止との両立を図れる。即ち、本例の構造の場合には、前記保持器3aの最大外径部である、前記第一外径側嵌合円筒部29の高さを小さくしている為、この第一外径側嵌合円筒部29と前記外径側係止部9aとが、径方向に関して重畳しない様にできる。この為、レース付スラストころ軸受1cの運転時に、円周方向に関して間欠的に設けられた前記各外径側係止部9aと前記保持器3aの外周縁とが擦れ合う事を防止できて、この保持器3aの円滑な回転を保障し、延いては前記レース付スラストころ軸受1cの運転状態を安定させ易くできる。
【0046】
その他の部分の構成及び作用に就いては、突片19(図1、3参照)を省略している点を除き、前述した実施の形態の第1例とほぼ同様であるから、重複する説明は省略する。尚、本例の構造に関しても、前述した実施の形態の第1例と同様に、特許請求の範囲中の請求項3〜5に記載した発明を併せて実施すべく、前記第二スラストレース5bを構成する前記第二スラストレース部10bの外周縁に、前記突片19を設ける事もできる。
【実施例1】
【0047】
本発明の効果を確認する為に行った試験に就いて、表1、2及び図5〜6を参照しつつ説明する。このうち、表1及び図5は、レース付スラストころ軸受の内部隙間の大きさが、第一、第二両スラストレースを互いに偏心させて運転した状態での耐久性に及ぼす影響を知る為の試験(偏心試験)と、同じく、スラスト荷重を負荷した状態と負荷しない状態とを交互に繰り返す運転状態が耐久性に及ぼす影響を知る為の試験(荷重ON/OFF試験)との2種類の試験の条件及び結果等に就いて示している。これら2種類の試験に共通する条件は、下記の通りである。
レース付スラストころ軸受の外径 : 85mm
同じく内径 : 54mm
同じく軸方向厚さ(軸受幅) : 5.4mm
試験荷重(P/C) : 0.4(Fa=12600N)
回転速度(第一スラストレース側回転) : 6000min-1
潤滑条件 : ATFにより回転中心まで浸漬する油浴
潤滑油温度 : 120℃
又、偏心試験では、図5に示した偏心治具23により、第一、第二のスラストレースの中心軸を0.6mmずらせた。
更に、荷重ON/OFF試験では、被試験体であるレース付スラストころ軸受1bと別のスラスト軸受24を介してこのレース付スラストころ軸受1bに、前記試験荷重を、2秒毎に(1サイクル4秒として)繰り返し加えた。第一、第二のスラストレースは互いに同心とした。
【0048】
試験は、振動計により前記レース付スラストころ軸受1b部分で発生する振動を計測しつつ行い、この振動が予め設定した閾値を超えて大きくなった場合には、当該レース付スラストころ軸受1bが寿命に達したとして、その時点で試験を打ち切った。下記の表1には、打ち切りまでの時間と共に、不合格を表す「×」印を記載した。又、60時間(hr)経過するまで振動が大きくならなかった場合には、その時点で試験を打ち切り、当該レース付スラストころ軸受1bを分解して、保持器の損傷の有無、スラストレース面のフレーキング等の損傷の有無を目視で観察し、何れかの損傷があった場合には不合格を表す「×」印を、何れの損傷もなかった場合には合格を表す「○」印を、表1中にそれぞれ記載した。
【0049】
【表1】

【0050】
この表1中、実施例1〜6は、何れも、内部隙間の大きさが1〜2mmの範囲内に収まっており、0.6mmと言った、大きな偏心量の下で運転した場合でも、何れも、計算寿命60時間に到っても、保持器破損やフレーキング等の損傷は発生しなかった(内部隙間を1mm以上とする事による効果)。又、荷重ON/OFF試験では、スラスト荷重が抜けた状態で(荷重OFF時に)保持器が自重により落下し、その後荷重がONされた状態でレース付スラストころ軸受が回転する事に伴って、前記保持器の周方向の一部が、外径側フランジの内周面と内径側フランジの外周面との間に挟持される挟み込みが発生した。但し、この場合でも、保持器の摩耗は軽微であり、計算寿命である60時間に到っても、レース付スラストころ軸受の何れの部分にも、特に問題となる様な損傷は発生しなかった(内部隙間を2mm以下に抑える事による効果)。
これに対して、内部隙間の大きさが本発明の範囲(1〜2mm)から外れる比較例1〜7の場合には、偏心試験と荷重ON/OFF試験との一方又は双方で、不合格となった。即ち、前記内部隙間が小さい、比較例1、2、4、6、7は、上述した何れの試験でも保持器の挟み込みが発生した。そして、一部に60時間経過するまで試験を継続できたものもあったが、当該レース付スラストころ軸受を分解して各部品を調べると、亀裂或いはフレーキング等の損傷が発生していた。
上述の様な、表1にその結果を表した試験から、内部隙間を1〜2mmに規制する事により、優れた耐久性を有するレース付スラストころ軸受を実現できる事が確認できた。
【0051】
次に、レース付スラストころ軸受の構造の相違が、当該レース付スラストころ軸受の潤滑油流量に及ぼす影響を知る為に行った試験に就いて説明する。試験条件は次の通りである。
レース付スラスト軸受の外径 : 85mm
同じく内径 : 54mm
同じく軸方向厚さ(軸受幅) : 5.4mm
試験荷重(P/C) : 0.05(Fa=12600N)
回転速度(第二スラストレース側回転) : 500min-1、3000min-1、5000min-1の3段階
潤滑条件 : ATFを5kPaの圧力で内径側から供給
潤滑油温度 : 100℃
第一スラストレースの厚さ : 0.8mm
第二スラストレースの厚さ : 1.6mm
この様な条件で行った試験の結果を、次の表2に示す。尚、実施例1〜6及び比較例1〜7の構造は、それぞれ表1と表2とで対応している(同じ仕様である)。
【0052】
【表2】

【0053】
上述の様な条件で行った試験の結果を表した表2の記載から明らかな通り、本発明の技術的範囲に属する実施例1〜6のレース付スラストころ軸受は、何れも、回転速度に拘らず、本発明の技術的範囲から外れる比較例1〜7のレース付スラストころ軸受に比べて、内部空間を通過する潤滑油の量を2倍以上確保できた。
以上、表1、2にそれぞれの結果を表した、3種類の試験の結果から明らかな通り、本発明の技術的範囲に属するレース付スラストころ軸受によれば、取り扱い性が良好で、しかも、厳しい使用条件下でも安定した運転状態を確保できる構造を実現できる。
【0054】
尚、比較例1の構造は、フルカール型の外径側係止部を備えたものであるが、内部隙間が0.8mmで、挟み込み量が0.2mmとなり、60時間経過して試験を終了したが、内部を確認したところ、保持器に割れが発生していた。荷重ON/OFF試験に就いては、60時間経過後も異常は発生しなかった。但し、潤滑油流量に就いては、開口面積が狭い事から少なく、使用条件が厳しくなると、十分な耐久性を確保しにくい事が分かった。
【0055】
又、比較例2〜5に関しては、それぞれ外径側フランジの先端縁部に複数の外径側係止部を、円周方向に間欠的に形成すると共に、円周方向に隣り合う外径側係止部同士の間に切り欠きを形成し、更に、内部隙間を0.8mm、又は2.3mmとした事で、偏心試験では比較例3、5に関する限り合格であった。但し、これら比較例3、5の場合、内部隙間が過大である為、荷重ON/OFF試験では、OFF時に於ける保持器の落下量が多い事により、途中で保持器の破損が発生した。又、比較例2、4に関しては、偏心試験で、保持器の外周縁部の摩耗に基づき、この保持器が破損した。潤滑油流量に関しては、比較例2〜7の場合には、比較例1に比べて増大したが、実施例1〜6に比べれば未だ少なかった。尚、これら実施例1〜6中、逆組み防止用の各突片を薄くした(段差を設けた)実施例2、3、5、6に関しては、特に薄くしていない実施例1、4に比べても、更に潤滑油流量を多くできた。
【0056】
更に、比較例6、7に関しては、前述の様に、例えば特許文献3の図1〜2に示されている如く、従来から広く実施されている、通常タブ構造であるが、前述の図1、7に示した如く、薄肉の第一スラストレースを構成する外径側フランジの先端縁に、突出量の大きな外径側係止部を設ける事は難しく、従って、内部隙間を確保する事も難しい。即ち、前記比較例6、7に関しては、内部隙間が、それぞれ0.6mm、0.4mmと小さく、偏心試験では途中で保持器の外周縁部に摩耗が発生して保持器が破断した。又、荷重ON/OFF試験でも、途中で保持器の破損が発生した。尚、比較的厚肉の第二スラストレースを構成する内径側フランジの先端縁には、上述の様な通常タブ構造でも、大きな突出量を確保し易い。従って、前述の図1、3に示した本発明の実施の形態の第1例に関しても、内径側フランジ11aの先端縁に形成した内径側係止部12a、12aとして、上述の様な通常タブ構造を採用している。又、潤滑油流量に関しては、前記比較例6、7の場合も、前述の比較例1〜5と同様の傾向を示した。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のレース付スラストころ軸受は、自動車のトランスミッションに限らず、農業機械、建設機械、鉄鋼機械、コンプレッサの如きエンジン用補機等の、各種回転機械の回転支持部分に利用できる。
又、本発明を実施する場合に使用する保持器は、図示の実施の形態では、それぞれが金属板を曲げ形成して成る1対の保持器素子を中空環状に組み合わせて成る構造を採用している。これら両保持器素子を構成する金属板としては、例えば、厚さが0.4mm程度の炭素鋼板(例えばSPCC材)を窒化処理して、表面硬度をHv400〜Hv850としたものを使用できる。但し、1枚の金属板を断面クランク形に折り曲げて全体を円輪状としたものや、合成樹脂(例えばPA66、PA46、PPS等)製の保持器を使用する事もできる。
【0058】
何れの保持器を使用する場合でも、保持器の軸方向厚さは、各ころの直径の80%以下とする事で、この保持器の軸方方向両側面と第一、第二両スラストレース面との間の環状空間の厚さを確保し、潤滑油流量の確保を図る事が好ましい。但し、前記保持器の軸方向厚さを、前記各ころの直径の50%未満にすると、この保持器に形成した各ポケットの内面とこれら各ころの転動面とを係合させ難くなり(この保持器の軸方向位置を各ころにより規制する事が難しくなり、無理に規制しようとすると、前記各ポケットの内面とこれら各ころの転動面とが強く擦れ合い)これら各ころの円滑な転動が妨げられる可能性が高くなる。そこで、前記保持器の軸方向厚さは、これら各ころの直径の50〜80%の範囲内に収める事が好ましい。
【0059】
又、前記第一スラストレースの厚さ寸法に関しては、前述の様な0.8mmに限らずに実施できる。例えば、この第一スラストレースを、SK85等の、炭素含有量(C%)が0.5〜1.0重量%のずぶ焼き材、或いは、SCM415等の浸炭材(素材のC%=0.1〜0.5重量%)を用いる事により、前記第一スラストレースの厚さが0.6〜2.0mmの範囲で、パーシャルカール加工が可能になる。尚、フルカール加工の場合には、厚さが1.0mmを超えると、低コストで行えるプレス加工では、外径側係止片の加工が難しくなる。
第二スラストレースに関しては、使用できる材料は、上述した第一スラストレースと同様である。厚さは、先に2.0mmの場合に就いて説明したが、0.6〜5.0mmの範囲で実施可能である。
【符号の説明】
【0060】
1、1a、1b、1c レース付スラストころ軸受
2 ころ
3、3a 保持器
4、4a 第一スラストレース
5、5a、5b 第二スラストレース
6 ポケット
7、7a 第一スラストレース部
8、8a 外径側フランジ
9、9a 外径側係止部
10、10a、10b 第二スラストレース部
11、11a 内径側フランジ
12、12a 内径側係止部
13 ケーシング
14 保持部
15 相手部材
16 隙間
17 第一スラストレース面
18 切り欠き部
19 突片
20 第二スラストレース面
21 切り欠き部
22 段差部
23 偏心治具
24 スラスト軸受
25 第一保持器素子
26 第二保持器素子
27 第一平板部
28 第一内径側嵌合円筒部
29 第一外径側嵌合円筒部
30 第一透孔
31 第二平板部
32 第二内径側嵌合円筒部
33 第二外径側嵌合円筒部
34 第二透孔
35 基半部
36 先半部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが放射方向に長いポケットを円周方向複数箇所に設けた円輪状の保持器と、これら各ポケット内に転動自在に設けられた複数本のころと、この保持器と相対回転を自在に且つ非分離に組み合わされた第一、第二両スラストレースとを備え、このうちの第一スラストレースは、硬質金属板を曲げ形成して成るもので、平坦で円輪状の第一スラストレース部と、この第一スラストレース部の外周縁から軸方向片側に折れ曲がった状態で設けられた円筒状の外径側フランジと、この外径側フランジの先端縁の一部で円周方向複数箇所に、この外径側フランジの先端縁から径方向内側に突出する状態で設けられた外径側係止部とを備えたものであり、前記外径側フランジの軸方向に関する高さ寸法は、この外径側係止部を設けていない部分で、同じく設けた部分よりも小さく、前記外径側フランジの外径が60〜120mmであり、前記第二スラストレースは、硬質金属板を曲げ形成して成るもので、平坦で円輪状の第二スラストレース部と、この第二スラストレース部の内周縁から軸方向片側に折れ曲がった状態で設けられた円筒状の内径側フランジと、この内径側フランジの先端縁の一部で円周方向複数箇所に、この内径側フランジの先端縁から径方向外側に突出する状態で設けられた内径側係止部とを備えたものであり、前記内径側フランジの内径が40〜80mmであるレース付スラストころ軸受に於いて、前記両フランジと前記保持器とを同心に配置したと仮定した状態で、このうちの外径側フランジの内周面及び内径側フランジの外周面と前記保持器の内外両周面との間にそれぞれ存在する環状隙間の径方向寸法の和をレース付スラストころ軸受の内部隙間とした場合に、この内部隙間が1〜2mmである事を特徴とするレース付スラストころ軸受。
【請求項2】
前記保持器が、第一、第二両保持器素子を組み合わせる事により、全体を中空環状としたものであり、これら両保持器素子のうちの前記第一スラストレース部側に配置される第一保持器素子は、円輪状の第一平板部の内外両周縁から軸方向に関して互いに同じ方向に直角に折り曲げた、第一内径側、第一外径側両嵌合円筒部を形成して成るものであり、同じく前記第二スラストレース部側に配置される前記第二保持器素子は、円輪状の第二平板部の内外両周縁から軸方向に関して互いに同じ方向で、且つ、前記第一内径側、第一外径側両嵌合円筒部と反対方向に直角に折り曲げた、第二内径側、第二外径側両嵌合円筒部を形成して成るものであり、前記第一内径側嵌合円筒部を前記第二内径側嵌合円筒部に内嵌すると共に、前記第一外径側嵌合円筒部を前記第二外径側嵌合円筒部に外嵌する事により、前記両保持器素子を互いに組み合わせており、前記第二外径側嵌合円筒部の直径を、前記第二平板部寄りの基半部よりもこの第二平板部から遠い側の先半部で大きくしており、前記第一外径側嵌合円筒部を前記第二外径側嵌合円筒部に、この先半部でのみ外嵌している、請求項1に記載したレース付スラストころ軸受。
【請求項3】
前記第二スラストレースが、円輪状の第二スラストレース部と、この第二スラストレース部の外周縁の一部から径方向外方に突出する状態で設けられた、少なくとも1個の突片とを備えたものであり、前記第二スラストレース部の外径が前記外径側フランジの内径よりも小さく、前記突片を含む前記第二スラストレースの外接円の直径が、この外径側フランジの外径よりも大きい、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載したレース付スラストころ軸受。
【請求項4】
前記突片の厚さ寸法が前記第二スラストレース部の厚さ寸法よりも小さく、この突片のうちで前記外径側フランジの先端縁と対向する片面と、前記第二スラストレース部のうちで前記各ころを転がり接触させるレース面との境界部に、段差部が存在する、請求項3に記載したレース付スラストころ軸受。
【請求項5】
前記突片が、前記第二スラストレース部の外周縁の複数箇所に、円周方向に関して等間隔に設けられている、請求項4に記載したレース付スラストころ軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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