説明

レーダ用空中線装置

【課題】パルスレーダにおいて装置構成を複雑化することなく同一パルス繰り返し周期内で開口面積を変化できるようにする。
【解決手段】空中線装置は、複数のアンテナそれぞれに設けられ、アンテナから高周波信号をパルス繰り返し周期内の第1及び第2の送信区間に選択的にパルス送信する複数の送受信ユニット1を備える。送受信ユニット1は、位相切替信号にしたがって第1及び第2の送信区間のパルスを互いに異なる位相に切り替える位相信号制御回路32と、第1及び第2の送信区間をそれぞれ指定する送信ゲート信号と、送受信ユニット1毎に第1及び第2の送信区間のパルス送信のオン/オフをそれぞれ制御する送信制御信号と、上記位相切替信号とに基づいて、送信ゲート信号と位相切替信号とにより指定された送信区間に対して送信制御信号にしたがって送信ゲートを設定するゲート信号制御回路34とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パルスレーダに用いられる空中線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の送受信ユニットから構成されるパルスレーダ用空中線装置は、同一の繰り返し周期(PRI:Pulse Repetition Interval)内に送信信号を2パルス出力する場合に、開口面積を変化させることを目的として、送受信ユニット毎にそれぞれのパルスをON/OFFする機能が必要となる場合がある。従来は、開口を制御する系統ごとに、送信ゲート信号を別々に配線することで、この機能を実現していた。
【0003】
なお、本願に関連する公知文献としては、例えば次のようなものがある。
【特許文献1】特開2005−130198公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来は、開口を制御する系統ごとに送信ゲート信号を各送受信ユニットに配線していたため、配線が増えて装置構成が複雑化してしまうという問題があった。
【0005】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、装置構成を複雑化することなく同一PRI内で開口面積を変化させることができるレーダ用空中線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためにこの発明に係るレーダ用空中線装置は、複数のアンテナと、前記アンテナ毎に設けられ、前記アンテナから高周波信号をパルス繰り返し周期内の第1及び第2の送信区間に選択的にパルス送信し、その反射信号を受信する複数の送受信ユニットとを具備し、前記複数の送受信ユニットそれぞれは、位相切替信号にしたがって前記第1及び第2の送信区間のパルスを互いに異なる位相に切り替える移相制御部と、前記第1及び第2の送信区間をそれぞれ指定する送信ゲート信号と、前記送受信ユニット毎に前記第1及び第2の送信区間のパルス送信のオン/オフをそれぞれ制御する送信制御信号と、前記位相切替信号とに基づいて、前記送信ゲート信号と前記位相切替信号とにより指定された送信区間に対して前記送信制御信号にしたがって送信ゲートを設定する送信ゲート制御部とを備える。
【0007】
上記構成によれば、パルスレーダに使用する空中線装置について、同一繰り返し周期内で送信信号を2パルス出力する場合に、送信ゲート信号の種別を増やすことなく、2パルスそれぞれをオン/オフする機能を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
したがってこの発明によれば、装置構成を複雑化することなく同一PRI内で開口面積を変化させることができるレーダ用空中線装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る空中線装置の制御に関わる系統図である。空中線装置は複数のアンテナ2−1〜Nと、アンテナ2−1〜Nそれぞれに設けられる複数の送受信ユニット1−1〜Nとを備える。各送受信ユニット1−1〜Nに対して動作制御信号、送信ゲート信号、および位相切替信号の3種類の信号が入力される。以下、送受信ユニット1−1〜Nを送受信ユニット1と総称する。
【0010】
図2にこれらの信号のタイミング図を示す。動作制御信号は、送受信ユニットの動作制御を行うためのシリアル信号であり、送受信ユニット1それぞれに1対1で入力される。送信ゲート信号および位相切替信号は、全ての送受信ユニット1に対して同一の信号が入力される。
【0011】
送信ゲート信号は、送信パルスを出力するタイミングを送受信ユニットに与えるタイミング信号である。本実施形態に係る空中線装置は、同一の繰返し周期(PRI:Pulse Repetition Interval )内に送信信号を2パルス出力するため、送信ゲート信号は同一の繰返し周期内に2つの送信区間(送信区間1および送信区間2)を有する。
【0012】
位相切替信号は、上記2つの送信パルスに対して、それぞれ送受信ユニット内の移相器の設定状態を変えるために与えるタイミング信号であり、2つの送信パルスの間に論理が反転する。送信ゲート信号および位相切替信号の2つのタイミング信号は、すべての送受信ユニット1に対して同一の信号が並列に入力される。
【0013】
動作制御信号は、送信制御信号(図2中A1およびA2)、および位相制御信号(図2中B1およびB2)を含む。送信制御信号は1ビット、位相制御信号は送受信ユニット1内の移相器のビット数以上のビットとなる。本実施形態では、この送信制御信号により、上記3つの信号から送信パルスを、送信区間1と送信区間2の両方で出力、送信区間1のみで出力、送信区間2のみで出力、送信区間1と送信区間2のどちらも出力しない、の4状態に設定でき、かつ各々の送受信ユニット1の状態を独立に設定できる。
【0014】
図3は、送受信ユニット1内の回路構成を示した図である。動作制御信号はシフトレジスタ31に入力され、送信制御信号(A1およびA2)をゲート信号制御回路34に、位相制御信号(B1およびB2)を位相信号制御回路32に入力する。位相信号制御回路32は、位相切替信号にしたがって位相制御信号のうちB1およびB2のいずれか一方を選択して、移相器制御信号として移相器制御回路33に出力する。
【0015】
ゲート信号制御回路34には、送信制御信号(A1およびA2)、位相切替信号、送信ゲート信号の3つの信号が入力される。このとき、送信区間1の送信パルスを制御するビットをA1、送信区間2の送信パルスを制御するビットをA2とする。ゲート信号制御回路34内では、図4に示した論理に基づき、内部ゲート信号を生成し、送信制御回路35に入力する。送信制御回路35は、内部ゲート信号に基づいて送信パルスを出力する。
【0016】
図5乃至図8は、送信制御信号の条件ごとの動作を示すタイミングチャートである。ここでは、送信制御信号A1は送信区間1の送信ゲート信号を、送信制御信号A2は送信区間2の送信ゲート信号を、それぞれON/OFF制御するものとする。図5では送信区間1と送信区間2の両方で送信パルスを出力し、図6では送信区間2のみで出力し、図7では送信区間1のみで出力し、図8では送信区間1と送信区間2のどちらも出力しない、の4つの状態に設定できる。
【0017】
従来、この設定は、送受信ユニット毎に異なる送信ゲート信号を入力することで実現していた。上記実施形態の例では、送信区間1と送信区間2にそれぞれ対応する2つの送信ゲート信号を各送受信ユニットに入力していた。このようにすることで、開口を制御する系統ごとに送信ゲート信号の配線が増え、装置構成が複雑化してしまうという問題があった。
【0018】
これに対し、上記実施形態に係る空中線装置は、複数のアンテナ2−1〜Nそれぞれに設けられ、各アンテナ2−1〜Nから高周波信号をパルス繰り返し周期内の2つの送信区間に選択的にパルス送信する複数の送受信ユニット1を備える。そして、送受信ユニット1は、位相切替信号にしたがって各送信区間のパルスを互いに異なる位相に切り替える位相信号制御回路32と、2つの送信区間をそれぞれ指定する送信ゲート信号と、送受信ユニット1毎に各送信区間のパルス送信のオン/オフをそれぞれ制御する送信制御信号と、上記位相切替信号とに基づいて、送信ゲート信号と位相切替信号とにより指定された送信区間に対して送信制御信号にしたがって送信ゲートを設定するゲート信号制御回路34とを備えるものである。
【0019】
このように構成することで、送信ゲート信号を複数系統で共通とすることができるため、配線数を削減することができる。したがって、上記実施形態によれば、パルスレーダにおいて装置構成を複雑化することなく同一パルス繰り返し周期内で開口面積を変化させることが可能となる。
【0020】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る空中線装置の制御に関わる系統図。
【図2】送受信ユニットに入力される信号のタイミングチャート。
【図3】送受信ユニットの内部構成を示すブロック図。
【図4】内部ゲート信号の状態を示す図。
【図5】送受信ユニットの動作を示すタイミングチャート。
【図6】送受信ユニットの動作を示すタイミングチャート。
【図7】送受信ユニットの動作を示すタイミングチャート。
【図8】送受信ユニットの動作を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0022】
1−1〜N…送受信ユニット、2−1〜N…アンテナ、31…シフトレジスタ、32…位相信号制御回路、33…移相器制御回路、34…ゲート信号制御回路、35…送信制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナと、
前記アンテナ毎に設けられ、前記アンテナから高周波信号をパルス繰り返し周期内の第1及び第2の送信区間に選択的にパルス送信し、その反射信号を受信する複数の送受信ユニットと
を具備し、
前記複数の送受信ユニットそれぞれは、
位相切替信号にしたがって前記第1及び第2の送信区間のパルスを互いに異なる位相に切り替える移相制御部と、
前記第1及び第2の送信区間をそれぞれ指定する送信ゲート信号と、前記送受信ユニット毎に前記第1及び第2の送信区間のパルス送信のオン/オフをそれぞれ制御する送信制御信号と、前記位相切替信号とに基づいて、前記送信ゲート信号と前記位相切替信号とにより指定された送信区間に対して前記送信制御信号にしたがって送信ゲートを設定する送信ゲート制御部と
を備えることを特徴とするレーダ用空中線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−186245(P2009−186245A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24563(P2008−24563)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】