説明

レーダ装置

【課題】2周波数を同時に受信し2周波数を独立に可変できるレーダ装置。
【解決手段】異なる第1及び第2RF中心周波数を持つ異なるRFパルスに対する第1及び第2RF信号を同時に受信する装置で、第1及び第2RF中心周波数の平均周波数を発生するローカル周波数発生器3の出力に基づき90度位相差を有する2つのローカル信号を生成し出力する90度分配器5の出力と第1及び第2RF信号の各々を同一の2つのRF信号に分配する分配器1の出力とを混合するミクサ7a,7b、ミクサのIF信号をフィルタリングするフィルタ9a,9b、この出力をA/D変換するA/D変換器11a,11b、この出力をリサンプルしてサンプリング間隔を変更するリサンプル回路13a,13bの各々は同一特性であって、この出力を合成する90度ハイブリッド15を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、2つの周波数を同時に受信するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーダ装置の受信系では、受信されるRF信号が一度、中間周波数信号(IF信号)にダウンコンバートされた後に、このIF信号は、位相検波回路によりI/Qビデオ信号に周波数変換されていた。
【0003】
しかし、I/Qビデオ信号に重畳されるDCオフセットの除去が困難であった。このため、元のIF信号を直接A/D変換することで位相検波処理をディジタル処理で行うIFダイレクトサンプリングと言う方法が主力となりつつある。
【0004】
このIFダイレクトサンプリング方式においては、I/Qビデオ信号よりも周波数の高いIF信号をA/D変換する。このため、A/D変換速度の制約により比較的低いIF周波数を用いる必要がある。このため、RF信号をIF信号にダウンコンバートする時に発生するイメージ信号(不要信号)を除去するRFフィルタは、イメージ周波数を除去可能な狭帯域の特性が必要となる。
【0005】
ここで、リファレンスであるローカル信号周波数をfr、ダウンコンバートした後のIF周波数をfcとした場合、受信すべき周波数が(fr+fc)とした場合のイメージ周波数は(fr−fc)である。この組み合わせは逆の場合もあるが、ここでは受信すべき周波数を(fr+fc)、イメージ周波数を(fr−fc)として説明する。
【0006】
なお、イメージ周波数は、イメージ周波数帯に不要信号などがある場合は勿論、イメージ周波数の帯域に含まれる雑音も希望信号に混入して性能劣化を引き起こすため、イメージ周波数を除去する必要がある。受信すべきRF周波数にも帯域幅が必要であり、それと同様にイメージ周波数にも同じ帯域幅が発生する。このため、低いIF周波数を用いる場合のイメージ周波数除去フィルタは設計が困難であるばかりでなく、その狭帯域のRFフィルタを用いる構成では受信周波数を広帯域にわたって可変できない。
【0007】
このような受信系構成において、広帯域に受信周波数を可変し、かつ、イメージ周波数を容易に除去するためには、周波数の高いIFを用いる必要がある。このため、高周波数の第1―IF,低周波数の第2―IFという2回(もしくは、それ以上)のダウンコンバートを行う構成を採用し、IFダイレクトサンプリング方式を適用することも行われていた。
【0008】
ここで、RFフィルタによらないイメージ周波数除去の原理について説明する。図5は、従来のレーダ装置の構成図で、イメージ周波数除去の受信系構成例を示している。ローカル信号周波数がfrでIF周波数がfcであるとき、RF周波数が(fr+fc)の信号をダウンコンバートしたIF信号が90度ハイブリッド15の上側周波数端子(端子番号3)に出力される。RF周波数が(fr−fc)の信号をダウンコンバートした信号は90度ハイブリッド15の下側周波数端子(端子番号4)に分離されて出力される。
【0009】
この場合、イメージ周波数である(fr−fc)の周波数が分離されて、受信すべき信号とは別の端子に出力されるため、イメージ周波数成分をRFフィルタで事前に除去する必要がなく、IFとして低周波数のIF信号を採用することができる。
【0010】
なお、この回路構成を採用しない場合には、前述したようにRF入力の手前でイメージ周波数のRF信号を除去するため、IF周波数帯域に相当するような狭帯域のRFフィルタを挿入する必要があり、RFを広帯域に可変できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−248124号公報
【特許文献2】特開2002−198746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述の構成を採用した場合には、受信系の構成部品数が増加、即ち、コストが増加するという欠点がある。さらに、異なる周波数の送信パルスからなる複合した送信パルスを用いるような2周波数を同時に受信する必要があるレーダにおいては、この受信系を2系統独立に必要とするため、小型化も困難であり、簡易な構成が求められていた。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、RF周波数からIF周波数に直接ダウンコンバートするとともにイメージ除去フィルタを用いずにイメージ周波数を除去でき、2周波数を同時に受信でき且つ2周波数を独立に可変できる受信系を持つ小型で安価なレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、実施形態に係るレーダ装置は、異なる第1及び第2RF中心周波数を持つ2種類の第1及び第2RFパルスに対する第1及び第2RF信号を同時に受信するレーダ装置であって、前記第1及び第2RF中心周波数の平均周波数をローカル周波数として発生するローカル周波数発生器と、前記ローカル周波数発生器の出力に基づき互いに90度位相差を有する2つのローカル信号を生成し生成された2つのローカル信号を出力する90度分配器と、前記第1及び第2RF信号の各々について同一の2つのRF信号に分配する分配器と、前記第1及び第2RF信号の各々について前記分配器の出力を前記90度分配器の出力と混合してIF信号を出力する一対のミクサと、前記第1及び第2RF信号の各々について前記一対のミクサからのIF信号をフィルタリングする一対のフィルタと、前記第1及び第2RF信号の各々について前記一対のフィルタの出力をA/D変換する一対のA/D変換器と、前記第1及び第2RF信号の各々について前記一対のA/D変換器の出力をリサンプルしてサンプリング間隔を変更する一対のリサンプル回路と、前記第1及び第2RF信号の各々について前記一対のリサンプル回路の出力を合成する90度ハイブリッドとを有し、前記一対のミクサ、前記一対のフィルタ、前記一対のA/D変換器及び前記一対のリサンプル回路の各々は、同一特性を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係るレーダ装置の構成ブロック図である。
【図2】アナログ回路で表現された90度ハイブリッドの構成ブロック図である。
【図3】デジタル回路で表現された90度ハイブリッドの構成ブロック図である。
【図4】第2の実施形態に係るレーダ装置の構成ブロック図である。
【図5】従来のレーダ装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態に係るレーダ装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図5に示す従来のレーダ装置における90度ハイブリッド15は、上側周波数と下側周波数を分離するための回路であって、そのいずれかがイメージ周波数(不要信号)である場合にそのイメージ信号の分離・除去を行うことができるが、図1に示す第1の実施形態のレーダ装置は、上側周波数と下側周波数との両方の2周波数を受信する2周波数受信系として積極的に使用することが1つの特徴である。
【0018】
図1に示すレーダ装置は、分配器1、可変ローカル発生器3、90度分配器5、ミクサ7a,7b、LPF(低域通過フィルタ)9a,9b、A/D変換器11a,11b、リサンプル回路13a,13b、90度ハイブリッド15を有して構成されている。
【0019】
このレーダ装置は、異なる第1RF中心周波数(fr+fc)及び第2RF中心周波数(fr−fc)を持つ2種類の第1及び第2RFパルスを送信し、送信された2種類の第1及び第2RFパルスに対する第1及び第2RF信号を同時に受信する。分配器1は、第1及び第2RF信号の各々について同一の2つのRF信号に分配する。
【0020】
可変ローカル発生器3は、第1RF中心周波数(fr+fc)と第2RF中心周波数(fr−fc)との平均周波数をローカル周波数frとして発生する。2周波数を受信する受信系として使用するために、受信したい2周波数が90度ハイブリッド15の上側周波数、即ち、第1RF中心周波数(fr+fc)と、下側周波数、即ち、第2RF中心周波数(fr−fc)となるようにローカル周波数frを上側周波数(fr+fc)と下側周波数(fr−fc)との中央の周波数frに設定する。可変ローカル発生器3は、上側周波数と下側周波数のそれぞれの周波数を自由に選択できるようにローカル周波数frを設定により可変する。
【0021】
なお、受信したい第1RF中心周波数(fr+fc)と第2RF中心周波数(fr−fc)の2周波数にも一定の帯域幅が必要であるが、一般にレーダの帯域はIF周波数の帯域、もしくはそれに相当する受信系としての最小帯域によって決定される。
【0022】
90度分配器5は、可変ローカル発生器3の出力に基づき互いに90度位相差を有する2つのローカル信号(SIN,COS)を生成し生成された2つのローカル信号を出力する。
【0023】
ミクサ7aは、第1及び第2RF信号の各々について分配器1の出力を90度分配器5からのローカル信号(SIN)と混合して低周波数のIF信号をLPF9aに出力する。ミクサ7bは、第1及び第2RF信号の各々について分配器1の出力を90度分配器5からのローカル信号(COS)と混合して低周波数のIF信号をLPF9bに出力する。
【0024】
なお、以下に示すIF周波数は、IF周波数帯域における中心周波数(即ち、RF中心周波数をダウンコンバートした周波数)を意味するものとして説明する。入力されるRF信号の周波数およびダウンコンバートした結果であるIF信号の周波数はこの帯域内であれば任意の周波数に設定できる。即ち、IF信号の周波数は上記の中心周波数とは必ずしも一致しない。
【0025】
従って、受信すべきRF周波数に対してIF周波数帯域内にダウンコンバートした後のIF信号が入るようにローカル周波数を設定すればよいため、その条件を満たす範囲内において2つの周波数の概ね中央の周波数にローカル周波数を設定することができる。
【0026】
LPF9aは、第1及び第2RF信号の各々についてミクサ7aからのIF信号を低域フィルタリングしてA/D変換器11aに出力する。LPF9bは、第1及び第2RF信号の各々についてミクサ7bからのIF信号を低域フィルタリングしてA/D変換器11bに出力する。
【0027】
A/D変換器11aは、LPF9aからのIF信号をA/D変換してディジタル信号をリサンプル回路13aに出力する。A/D変換器11bは、LPF9bからのIF信号をA/D変換してディジタル信号をリサンプル回路13bに出力する。
【0028】
A/D変換器11a,11bの以降の処理をディジタル制御により柔軟に可変できるようにする。上側周波数と下側周波数の組み合わせによって、IF周波数は変化するが、A/D変換におけるサンプリング速度の制約からその上限周波数は決定される。A/D変換のサンプリング周波数をfsとしたとき、IF周波数の上限値はfs/2となることは原理的な制約である。
【0029】
なお、図1に示すLPF9a,9bは、IF周波数の上限周波数(fs/2)を超える周波数の信号及び雑音が折り返し雑音として混入することを防ぐためのフィルタに相当する。
【0030】
図1ではLPF9a,9bを用いたが、取り扱うIF信号によってはBPF(帯域通過フィルタ)を用いたり、異なる特性の複数のフィルタを切り替えたりすることもできる。
【0031】
このようにA/D変換器11a,11bによりA/D変換された信号は、90度ハイブリッド15により上側周波数と下側周波数に分離することができる。上側周波数と下側周波数に分離されて以降の処理は、従来IFダイレクトサンプリング方式で行われていたディジタル処理による位相検波などである。
【0032】
ここで、90度ハイブリッド15は、アナログ回路で表現した場合(図5に示す構成の場合)には、図2に示す入力側の端子1に接続される分配器17a、入力側の端子2に接続される分配器17b、+90度移相器19a,19b,出力側の端子3に接続される合成器21a、出力側の端子4に接続される合成器21bで構成される。
【0033】
分配器17aは、リサンプル回路13aからのディジタル信号を合成器21aと+90度移相器19bとに分配する。分配器17bは、リサンプル回路13bからのディジタル信号を合成器21bと+90度移相器19aとに分配する。合成器21aは、分配器17aからの信号と+90度移相器19aからの信号とを合成する。合成器21bは、分配器17bからの信号と+90度移相器19bからの信号とを合成する。
【0034】
ここで、90度ハイブリッド15の上側周波数と下側周波数との分離の原理を説明する。まず、三角関数の積和公式から、
2*cosα*sinβ=sin(α+β)―sin(α―β) ・・・上側経路(ミクサ7a〜90度ハイブリッド15の端子1)
2*cosα*cosβ=cos(α+β)+cos(α―β) ・・・下側経路(ミクサ7b〜90度ハイブリッド15の端子2)
ここで、βをローカル周波数(2πfrt)と考え、αを入力RF周波数と想定する。上側周波数(即ち、α=β+γ(γ>0))の場合、右辺の2つの信号がミキサ出力であり、LPF出力であるIF信号はその第2項であるため、上側経路出力(端子1入力)は−sinγとなり、下側経路出力(端子2入力)は、cosγとなる。
【0035】
ここで、sin(γ+π/2)=cosγ、cos(γ+π/2)=―sinγであることを考慮して、90度ハイブリッド出力は、端子3において、ー2*sinγであり、端子4において、0となり、RF周波数とローカル周波数の差周波数が端子3に出力される。
【0036】
逆に、下側周波数(即ち、α=β―γ(γ>0))の場合、LPF出力であるIF信号を表す第2項は、上側経路出力(端子1入力)において、sinγとなり、下側経路出力(端子2入力)において、cosγとなる。
【0037】
この場合、90度ハイブリッド出力は、端子3において、0となり、端子4において、2*sinγとなり、RF周波数とIF周波数の差周波数が端子4に出力される。
【0038】
なお、第1の実施形態においては、ディジタル化されたIF信号に対して90度ハイブリッド処理を行っているため、位相シフトとして扱っている。これに対して、IFダイレクトサンプリング方式で行われているディジタル処理により位相検波までを予め行って、I/Q信号と呼ばれるベースバンド信号において実部虚部の入れ替えなどの演算によって90度ハイブリッド処理を行うこともできる。
【0039】
即ち、A/D変換以降においても、位相情報が保存される同一のディジタル処理を施した両方の結果である上側経路及び下側経路の結果に対して90度ハイブリッド処理を行うことも可能である。
【0040】
また、90度ハイブリッド15をディジタル回路で構成する場合には、図3に示すような分岐器18a,18b、遅延回路23a,23b、加算回路22a,22bにより実現することができる。
【0041】
分岐器18aは、リサンプル回路13aからのディジタル信号を加算器22aと遅延回路23bとに分岐する。分岐器18bは、リサンプル回路13bからのディジタル信号を加算器22bと遅延回路23aとに分岐する。加算器22aは、分岐器18aからの信号と遅延回路23aからの信号とを加算する。加算器22bは、分岐器18bからの信号と遅延回路23bからの信号とを加算する。
【0042】
遅延回路23a,23bの遅延量は、図2に示すアナログ回路の+90度移相器19a,19bにおける90度遅延量と等価なものであり、IF周波数の4倍オーバーサンプリングにおける1クロック遅延として取り扱うことができる。
【0043】
IF周波数の4倍オーバーサンプリングとは、この方式ではRF信号の2周波数の差周波数の概ね半分であるIF信号の中心周波数(IF周波数)の4倍のサンプリング周波数(この場合には、リサンプル後のデータレート:fd=4*fc)でリサンプリングすることを指すものであり、この時に1クロック遅延が90度遅延に対応する。
【0044】
A/D変換器11a,11bのサンプリング周波数はfs(即ち、データ間隔は1/fs)である。リサンプル回路13a,13bは、A/D変換器11a,11bからの信号を4倍オーバーサンプリングのデータ間隔(即ち、1/fd=1/(4*fc))にリサンプリングして、データ間隔を変更することで処理を実現している。
【0045】
さらに、リサンプル回路13a,13bは、A/D変換器11a,11bで変換されたデータから受信すべき帯域の信号を取り出す、即ち、他の不要な帯域の信号・雑音などを除去するためのBPFとしてのディジタルフィルタの役割を有している。
【0046】
前述したように、レーダの帯域はIF周波数の帯域、もしくはそれに相当する受信系としての最小帯域で決まるが、このようなリサンプルを行う場合には、IF信号段におけるフィルタとこのリサンプリングのフィルタ特性との両者の特性で受信系としての最小帯域が決定される。例えば、フィルタとしてLPF9a,9bを用いれば、IF周波数が自由に変更できるという利点があり、その場合の受信系の帯域はリサンプル回路13a,13bのフィルタ特性で受信系としての周波数特性が決定される。
【0047】
また、4倍オーバーサンプリング周波数の整数倍(例えば8倍など)の周波数でリサンプルを行うことも可能であり、処理データ量の増加は発生するが、整数クロックの遅延となるため、同様の効果が得られる。
【0048】
なお、上記内容は設計中心周波数とIF周波数(fc)とが同じであるとして4倍オーバーサンプリングなどについて説明しているが、前述したようにRF入力として取り扱う周波数には一定の帯域幅があり、同様にIF周波数も同じ帯域幅がある。
【0049】
このため、入力されるIF信号そのものの4倍オーバーサンプリングを実施するものではなく、IF信号の帯域内で設計の中心周波数を選定することもできるため、その設計中心周波数をIF周波数としてディジタル回路の設計が行われることに注意が必要である。
【0050】
また、ミクサ7a,7bの出力であるIF信号には上側周波数及び下側周波数のRF受信帯域内の信号が両者ともに存在して、最終的には90度ハイブリッド15において上側周波数と下側周波数として合成・分離される。
【0051】
このため、ミクサ7a,7bから90度ハイブリッド15までの各々の回路は同一の特性を持つ回路である必要がある。即ち、ミクサ7aとLPF9aとA/D変換器11aとリサンプル回路13aと、ミクサ7bとLPF9bとA/D変換器11bとリサンプル回路13bとの対応する各部において、IF信号に対する周波数特性が同一特性を持つ回路を用いている。以上の回路において2周波数を受信可能な受信系を1系統で構成することができる。
【0052】
なお、図1においては、ローカル信号を90度分配器で分配し、RF信号を同一信号に2分配したが、逆に、ローカル信号を2分配し、RF信号を90度分配器で分配することもできる。
【0053】
このように第1の実施形態のレーダ装置によれば、A/D変換器11a,11b、リサンプル回路13a,13b及びディジタル回路の90度ハイブリッド15を用い、且つ一対のミクサ7a,7b、LPF9a,9b、A/D変換器11a,11b及びリサンプル回路13a,13bの各々を同一特性を有する回路を用いたので、RF周波数からIF周波数に直接ダウンコンバートするとともにイメージ除去フィルタを用いずにイメージ周波数を除去でき、また、2周波数を同時に受信できる簡易な受信系を構成できるため、2周波数を同時に受信でき、かつ、その周波数を可変できる小型で安価なレーダ装置を提供することができる。
【0054】
(第2の実施形態)
図4は第2の実施形態に係るレーダ装置の構成ブロック図である。図1に示す構成では、受信可能な2周波数の周波数差はA/D変換器11a,11bのサンプリング周波数が上限値となる。この周波数差がさらに大きな周波数差となる場合に対応する方法として、図4に示すようにA/D変換をアンダーサンプリングまたはバンドパスサンプリングと呼ばれる手法で使用する方法も考えられる。
【0055】
この場合、IF信号に対するフィルタにはBPF25a,25bを用いて帯域制限を行い、A/D変換器11a,11bによってA/D変換を行う。これにより、A/D変換後のIF周波数がfc−N*fs(ただし、Nは次の条件を満たす任意の整数;−fs/2<fc−N*fs<fs/2)のように周波数変換される。
【0056】
なお、N=0の場合、図1に示した第1の実施形態に相当するものであり、N>0の場合、アンダーサンプリングに該当する。
【0057】
このように第2の実施形態のレーダ装置によれば、第1の実施形態のレーダ装置の効果が得られるとともに、さらに、受信可能な2周波数はA/D変換のサンプリング周波数(fs)よりも大きな差をもつ2周波数についても同一の受信系で取り扱うことができる。
【0058】
但し、この方法の場合、周波数を可変するためにはBPF25a,25bを可変型とする必要があるが、勿論BPF25a,25bをいくつか用意して切り替えることも可能であり、その必要性に応じてフィルタを構成することができる。
【0059】
さらに、IF信号に対する受信系の特性がこのBPF25a,25bによって決定されるならば、リサンプル回路13a,13bにおけるフィルタ特性は第1の実施形態で示したようなBPFの特性ではなく、LPFの特性をもつディジタルフィルタによっても実現することができる。
【0060】
また、上記Nの値によって90度ハイブリッド15の出力端子のどちらに上側周波数の信号が出力されるかが変わってしまうため、その点を考慮して制御する必要がある。
【0061】
このように、第1及び第2の実施形態のレーダ装置によれば、RF周波数からIF周波数に直接ダウンコンバートするとともにイメージ除去フィルタを用いずにイメージ周波数を除去でき、また、2周波数を同時に受信できる簡易な受信系を構成できるため、2周波数を同時に受信でき、かつ、その周波数を可変できる小型で安価なレーダ装置を提供することができる。
【0062】
第1及び第2の実施形態のレーダ装置は、異なる第1及び第2RF中心周波数を持つ2種類の第1及び第2RFパルスを送信したが、例えば、レーダ装置が第1RFパルスを送信し、外部のレーダ装置が第2RFパルスを送信し、当該レーダ装置が、第1RFパルスに対する第1RF信号と外部のレーダ装置で送信された第2RFパルスに対する第2RF信号とを同時に受信するようにしても良い。
【0063】
さらに、レーダ装置が第1RFパルスを送信し、第1RFパルスに対する第1RF信号とともに、これとは周波数の異なる電波であって外部の装置が発する電波を第2RF信号として同時に受信するようにしても良い。
【0064】
以上のように、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1,17a,17b 分配器
3 可変ローカル発生器
5 90度分配器
7a,7b ミキサ
9a,9b LPF
11a,11b A/D変換器
13a,13b リサンプル回路
15 90度ハイブリッド
18a,18b 分岐器
19a,19b +90度移相器
21a,22b 合成器
22a,22b 加算器
23a,23b 遅延回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる第1及び第2RF中心周波数を持つ2種類の第1及び第2RFパルスに対する第1及び第2RF信号を同時に受信するレーダ装置であって、
前記第1及び第2RF中心周波数の平均周波数をローカル周波数として発生するローカル周波数発生器と、
前記ローカル周波数発生器の出力に基づき互いに90度位相差を有する2つのローカル信号を生成し生成された2つのローカル信号を出力する90度分配器と、
前記第1及び第2RF信号の各々について同一の2つのRF信号に分配する分配器と、
前記第1及び第2RF信号の各々について前記分配器の出力を前記90度分配器の出力と混合してIF信号を出力する一対のミクサと、
前記第1及び第2RF信号の各々について前記一対のミクサからのIF信号をフィルタリングする一対のフィルタと、
前記第1及び第2RF信号の各々について前記一対のフィルタの出力をA/D変換する一対のA/D変換器と、
前記第1及び第2RF信号の各々について前記一対のA/D変換器の出力をリサンプルしてサンプリング間隔を変更する一対のリサンプル回路と、
前記第1及び第2RF信号の各々について前記一対のリサンプル回路の出力を合成する90度ハイブリッドとを有し、
前記一対のミクサ、前記一対のフィルタ、前記一対のA/D変換器及び前記一対のリサンプル回路の各々は、同一特性を有することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記90度ハイブリッドは、前記リサンプル回路からのディジタル信号を遅延させる遅延回路と、
前記ディジタル信号と前記遅延素子で遅延されたディジタル信号とを加算する加算器と、
を有することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記ローカル周波数発生器は、発生する周波数を可変できる可変ローカル周波数発生器からなり、且つ前記リサンプル回路の出力のデータ間隔が、前記第1及び第2RF中心周波数の差周波数、又は前記第1又は第2RF中心周波数と前記ローカル周波数との差の2倍の周波数、を2倍した周波数の逆数に一致することを特徴とする請求項2記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記一対のフィルタは、前記IF信号に対する帯域通過フィルタからなり、前記リサンプル回路の出力のデータ間隔が、前記第1及び第2RF中心周波数の差周波数、又は前記第1又は第2RF中心周波数と前記ローカル周波数との差の2倍の周波数から―fs<(f1−f2)−N*fs<fs(f1,f2はそれぞれ第1,第2RF中心周波数(f1>f2)、Nは任意の偶数でfsはサンプリング周波数)を満足するように前記サンプリング周波数の整数倍の周波数を引いて、その結果である差周波数を2倍した周波数の逆数と一致することを特徴とする請求項2記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記ローカル周波数発生器は、発生する周波数が可変できる可変ローカル周波数発生器からなり、且つ前記一対のフィルタは、通過帯域を可変できる帯域通過フィルタ又は異なる通過帯域を持つフィルタを切換えることにより構成されることを特徴とする請求項4記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記異なる第1及び第2RF中心周波数を持つ2種類の前記第1及び第2RFパルスを送信する送信手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記第1RFパルスを送信し、前記第1RFパルスに対する前記第1RF信号と外部装置で送信された前記第2RFパルスに対する前記第2RF信号とを同時に受信する送受信手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記第1RFパルスを送信し、前記第1RFパルスに対する前記第1RF信号と外部装置で送信された第1RF信号とは周波数の異なるRF信号を第2RF信号として同時に受信する送受信手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−42387(P2012−42387A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185306(P2010−185306)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】