説明

ロウパスフィルタ

【課題】スイッチングモード電気回路におけるクロストーク、ジッタ、スパイクを抑圧し、整合終端回路、スナバ、部分共振回路を不要とし、データのビット並列高速伝送や、高速電力変換を可能とする。
【解決手段】絶縁体層3は、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等を主剤とする接着剤シートから成っている。磁性体層2および4は、導体箔1および5の一面に、金属ガラス溶射コーティング法によって形成される。図1の伝送線路構造チップは、導体箔1と磁性体層2、並びに導体箔5および磁性体層4で構成される二重層金属箔の磁性体層2および4で絶縁体層3を挟んで配置し、加熱圧縮して形成される。伝送線路構造チップは配線構造中の絶縁体層中に埋め込まれ、伝送線路構造チップを内蔵するロウパスフィルタ素子は印刷配線基板上に搭載されて、スイッチング素子の出力端子と伝送線路の間に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロウパスフィルタに関し、特に、スイッチングモード電気回路を使用する、情報技術装置やディジタルデータ通信機器、並びに高周波DC−DCコンバータ等の電力変換器に使用し、小型軽量化が可能で、信号伝送回路に適用することによって、クロストーク、リンギング、並びにスパイクノイズが抑圧されるため、並列ビット伝送による超高速データ通信を可能にすることが出来る、ロウパスフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータを初めとするディジタル回路システムの高性能、小型化の要求が強い。ディジタル回路システムを構成するトランジスタの高速化は、高性能化に効果があるが、電磁ノイズやクロストークが増えるとともに整合終端回路の設計が困難になると考えられて来た。
【0003】
半導体技術の先端を進む半導体集積回路においてはトランジスタの高速化が進んでいる。最新の国際半導体技術ロードマップ (ITRS)によると、2010年のテクノロジノードにおける高性能MPUのPチャネル型電界効果トランジスタの最小スイッチング時間(ゲートディレー)は1.56[ps](ピコ秒)であり、電源電圧は0.97ボルトである。しかし、半導体集積回路または半導体集積回路を搭載するボードの演算処理速度やディジタルデータ伝送性能は10Gbps前後に止まっており、前記トランジスタのスイッチング時間に見合う約400Gbpsより遙かに劣っているし、クロストーク問題のために並列ビット伝送を10Gbps前後で行うことは数センチメートルの距離でも非常に困難な状況である。
【0004】
電磁気学によると、回路の状態には活性状態(exited states)、定常状態(stationary states)および、実用上は定常状態と見なせる準定常状態(quasi stationary states)が存在する。活性状態とは、回路上の電界と磁界が変化または振動している状態であり交流回路はその一例である。振動する電界と磁界は電磁波となって誘電体中を進行する。該誘電体が真空空間の場合は、電磁波は光速で進行する。
【0005】
定常状態とは、回路上の電界と磁界が静止している状態であり直流回路はその一例である。準定常状態とは、電界と磁界が電磁波となって回路上を進行するが、電磁波の波長が回路長に対して非常に長いため、電磁放射が無視できる程度であり回路内での電磁波の挙動が強弱のベクトルだけと見なすことが出来る状態である。低周波アナログ回路や、およそ1ナノセコンド以上のスイッチング時間を有するトランジスタとおよそ10cm以下の長さの配線で構成される回路は、実用上、準定常状態と見なすことの出来る回路の一例であるとされて来た。
【0006】
電磁気学によると、活性状態にある回路の導線の電流は、アンペールの法則に従って導線の周囲の磁界Hを平均磁路長lに亘って周回積分して求めるとことが出来、次式で示される。この式から、活性状態における電流の本質は磁界であることが分かる。
【0007】
【数1】

【0008】
電磁気学によると、電位Vは、電界の及ばない無限遠から1点までの電界の積分値と定義されるが、大地上の空間に置かれた導体の電位は、大地面と導体の間の電界を大地面から導体までの距離rで定積分した値であって、次式から求められる。この式から、電位または電圧の本質は電界であることが分かる。
【0009】
【数2】

【0010】
マックスウエルは、先人が構築した磁界に関する理論と電界に関する理論を融合することによってマックスウエルの方程式を構築し1873年に発表した。続いてこの式をダランベールの波動方程式の形式に変形し、ベクトル波動方程式を導出した。この式を用いて、マックスウエルは、1862年頃から主張していた電磁波と光はともに光速で伝搬するとうアイデアを理論的に証明することに成功した。これにより線形電磁波理論(以下電磁波理論)を含む電磁気学の完成度が高まった。ヘルツは、1887年に、実験によって電磁波の存在を実証し、マックスウエルが完成させた電磁波理論の正しさを証明した。
【0011】
電磁気学によると、時間的に変化する電界と磁界は相互に作用しつつ横波となって空間または誘電体中を伝搬する。真空中を伝搬する電磁波の速度は光速である。空間を伝搬する電磁波は、周期および極性が一致し振幅ベクトルが進行方向に対して直交する電界波と磁界波とから構成される。この状態の電磁波はTEM(transverse electromagnetic)波と呼ばれる。TEM波を構成する電界波の振幅を磁界波の振幅で割った値は波動インピーダンス(surge impedanceまたはwave impedance)と呼ばれる。伝搬する電磁波は、単位時間内に単位面積を通過するエネルギーのレベルを表すベクトルであると解釈するポインチングベクトルの考え方によって、電界と磁界のベクトル積で求められる電力を伝搬する。
【0012】
電磁気学によると、電磁波は空間だけでなく媒体中も進行する。損失のない誘電体または誘電体中を進行する電磁波の速度は、光速に対して比誘電率の平方根だけ遅くなり、波長は比誘電率の平方根だけ短くなる。後者は、波長圧縮と呼ばれる。
【0013】
電磁気学によると、損失のある媒体中を進行する電磁波は、伝搬定数γに従って進行し、進行に伴って振幅が減少し位相が変化する。周波数をf、導体の誘電率をε、導体の透磁率をμ、導体の導電率をσとすると、伝搬定数γは、次式のようにγから求めることが出来る。
【0014】
【数3】

【0015】
式(3)において、γの実数項であるαは減衰定数、γの虚数項であるβは位相定数と呼ばれる。αは、nep/m(ネパー/メートル)の単位で表される。1 [nep/m]は、電磁波が1メートル進行すると振幅がexp−1または0.368倍に減衰することを意味する。
【0016】
電磁気学によると、式(3)中のγを変形して得られる次式の括弧の項は、損失のある誘電体に関する複素誘電率と定義され、虚数部(σ/εω)を実数部(ε)で割った値を誘電体損失の正接と呼び、tanδで表す。しかし、tanδは、電磁気学上、深い意味を持たない。
【0017】
【数4】

【0018】
電磁波が導体中を進行する場合は、導体中には電磁波に作用することのできる電荷は存在せず、導体の導電率σは
ωεに比べて非常に大きいので、γは次式で表される。次式中における減衰定数αの逆数であるδは、表皮深さと呼ばれる。
【0019】
【数5】

【0020】
電磁気学によると、導体中を進行する電磁波の電界と磁界の比である固有インピーダンスZは、ωεに比べて非常に大きい導電率σを有する損失のある媒体の固有インピーダンスと考えることが出来、次式で与えられる。
【0021】
【数6】

【0022】
電界と磁界がほぼ静止している定常状態においては、導体中の電荷の移動速度として定義される導体電流を、回路電流と考えることが出来る。
【0023】
物理学によると、導体中には無尽蔵に近い自由電子すなわち電荷が存在する。導体に電位勾配すなわち電界が印加されると電界の方向と逆向きに導体電流が流れるが、電荷が充満している導体には大きな電界を印加しなくても大きな電流が流れる。このため、電流が大きくても導体中の電荷の平均移動速度は極めて遅い。
【0024】
例えば、1平方ミリメートルの断面を有する銅線中を10アンペアの電流が流れているときの電荷の平均速度を物理学に従って計算すると、常温で0.368mm/sとなる。電荷の平均速度がこのように遅くても、抵抗器等のような固定負荷が導体の他端に接続されている場合は、導体の一端から消費に見合う量の電荷が供給されれば固定負荷への静電磁気エネルギーの供給は支障なく行われる。
【0025】
伝送線路上の電気信号の進行を扱うのが電気通信工学である。電気通信工学によると、直流的に絶縁された2本の導体間に電気信号を与えると、電気信号は電流波と電圧波となって伝送線路を進行するとしている。
【0026】
電気通信工学では、電流を、導体中の電荷の平均移動速度(dq/dt)すなわち導体電流と定義している。交流回路理論によると、電流の定義は電気通信工学と同様であり、さらにコンデンサは、電荷または前導体電流を充放電する機能を有しているとしている。しかし、電磁気学の基礎を成すマックスウエルの方程式においては、導体電流は、時間の関数を持たない電流密度Jに対応させており、光速に近い速度で進行する電流は式(1)で定義している。従って、電気通信工学や交流回路理論における電流の定義は、これらの上位理論である電磁気学に反している。
【0027】
交流回路理論を支える重要な法則の一つであるキルヒホッフの法則が発表されたのが1845年で、マックスウエルが電磁波の存在を理論的に証明しヘルツによって実験で電磁波の存在が確認される42年前である。また、電気通信工学を支える重要な理論の一つである電信方程式が開発されたのが1874年で、同様に電磁波の存在が確認される13年前である。従って、交流回路理論および電気通信工学が実用化された当時は、回路の作用を電磁波の作用とする考え方が存在していなかった。さらに、その後も交流回路理論や電気通信工学に修正が行われなかった。このため、現在においても、交流回路理論や電気通信工学は、電流をdq/dtと定義していると考えられる。
【0028】
電気通信工学の基礎を成す電信方程式では、しかしながらdq/dtで定義される電流が導体中を光速で流れることが出来るとしている。この根拠となっているのはダランベールの波動方程式である。電磁気学が完成した1873年より77年前の1750年に発表されたダランベールの波動方程式では、波動の主体をスカラー量のラプラシアンとするベクトル関数で表現し、波動の主体を特定していない。導体電流が導体間電圧とともに波となることは、ダランベールの波動方程式から導くことが出来ても、電気通信工学の基礎理論である電磁気学と整合していない。従って、このような電圧と電流に関する回路方程式をダランベールの波動方程式に対比させて得られている電信方程式には物理学上の根拠が無いことになる。
【0029】
電流の定義が電磁気学に整合していないと、線路の電圧や、インピーダンス、電磁波との関係、さらには伝送損失に関しても電磁気学と少なからず矛盾が生じる。電気通信工学はこのような問題を内在していることは明かであるが、従来の連続波を扱う限り電気通信工学応用製品では、電磁気学との矛盾が顕在化することはほとんど無い。これは、電気通信工学の長い歴史の中で豊富な適用実績を繰り返しつつ構築されたノウハウや経験式、さらには製品検査時の熟練者による微調整が、電磁気学との矛盾を繕ってきたと考えられる。
【0030】
スイッチング波またはディジタル波のような間欠波を対象とする回路設計においては、電気通信工学に基づくと効率的で高い信頼性が得られると考えられている。しかしディジタル技術またはスイッチング技術の歴史が比較的浅いためにノウハウや経験式が少なく、さらに、製品検査時の熟練者による微調整は非常に嫌われる。このため、前述のような電磁気学との矛盾が、例えば電磁干渉や電磁ノイズ問題となって顕在化していると考えられるが、この原因はより深いところにあり、電気通信工学に基づく前記手法での解決は不可能である。詳細は後述する。
【0031】
電磁気学によれば、2個の導体と該2個の導体に挟まれた絶縁体で構成される伝送線路に変化する電圧が印加されると、電圧の印加方向に電界が、電圧の印加方向と垂直の方向に磁界が発生する結果、TEMモードとなる電磁波は、絶縁体中を電界軸と磁界軸で形成される平面に垂直の方向に準光速で進行する。絶縁体が真空であれば進行速度は光速となる。このとき伝送線路で観測される電流や電圧は、それぞれ式(1)および式(2)から求められるので、これらの実態は伝送線路の誘電体中を進む電界波と磁界波であると言うことが出来る。
【0032】
電気通信工学では、導体間の有効静電容量で、導体間の有効相互インダクタンスを割った値の平方根を、伝送線路の特性インピーダンスと定義している。前記の有効とは、伝送線路上を進行する電磁波の内、信号として有効に利用できるものという意味を有していると考えられ、これまで多くの計算式が提案されてきた。特性インピーダンスは、電気通信工学で独自に定義されているものであり、電磁気学の定義には無いが、比較的高い周波数帯域における実用性は高い。同様に交流回路理論で定義されている交流インピーダンスは、電磁気学との整合性は高くないが、比較的低い周波数帯域における実用性は高い。
【0033】
電気通信工学によると、誘電体の厚さをa[m]、導体の幅をw[m]、誘電体の誘電率をε、誘電体の透磁率をμとすると、平行板線路の特性インピーダンスZは次式で求められる。
【0034】
【数7】

【0035】
電気通信工学によると、外導体の内半径をD [m]、内導体の半径をd [m]、ケーブル内に充填されている誘電体の誘電率をε、透磁率をμとすると、同軸ケーブルの特性インピーダンスZは次式から求めることが出来る。
【0036】
【数8】

【0037】
電気通信工学によると、線の直径をd[m]、線の中心軸の間隔をD[m]、線間に充填されている誘電体の比誘電率をεrとすると、レッヘル線路または平行円柱線路の特性インピーダンスZは次式から求めることが出来る。
【0038】
【数9】

【0039】
電気通信工学によると、真空の固有インピーダンスをZ、誘電体の比誘電率をεr、誘電体の厚さをh[m]とすると、マイクロストリップ線路の特性インピーダンスは次式から求めることが出来る。
【0040】
【数10】

【0041】
ストリップ導体の幅をW[m]、ストリップ導体の厚さをt[m]、自然定数(2.718)をeとすると、式(9)中のWe[m]は、次式から求めることが出来る。
【0042】
【数11】

【0043】
式(9)中の電気通信工学によると、t/hが0.05から0.5の範囲にあるストリップ線路の特性インピーダンスは次式から求めることが出来る。
【0044】
【数12】

【0045】
電気通信工学によると、既知の特性インピーダンスZを有する伝送線路を通して未知の特性インピーダンスZを有する伝送線路に電磁波を注入したときの、
前記二つの伝送線路の接続点における反射係数S11は、次式で表される。
【0046】
【数13】

【0047】
電気通信工学によると、伝送線路上を進行する信号の挙動は、伝送線路の特性インピーダンスと伝搬定数によって決まる。伝搬定数は反射係数と透過係数から成る。電気通信工学には、損失を有する媒体中または損失を有する媒体を壁面に有する伝送線路における伝搬定数を求める手法が示されている。これらの考え方の細部に関しては問題があるものの、おおむね電磁気学と整合している。
【0048】
電気通信工学では、伝搬定数を散乱行列によって表す方法が採用されている。散乱行列(Scattering matrix)は、絶対値を進行波の電力の平方根に、位相を進行波の電圧または電界の横方向成分の位相に等しい複素数で定義される波振幅を用いて、伝送線路の開口部の特性を表すものであり、散乱行列を構成するのがSパラメータである。散乱行列の考え方は電磁気学と整合している。
【0049】
散乱行列を使用すると、直列に接続された2種の伝送線路を電磁波が進行する場合の境界部の透過係数S21Γは、反射係数をS11とすると次式で表される。
【0050】
【数14】

【0051】
減衰定数αを有する長さzの伝送線路の透過係数S21αは、次式でされる。
【0052】
【数15】

【0053】
電磁気学によると、実用的な伝送線路の減衰定数は、電磁波が損失のある誘電体内を進行するときの減衰と、電磁波が誘電体内を進行する過程でその一部が導体内に侵入して熱になる導体損と、伝送線路外に漏れ出る放射損との和となると考えることが出来る。
【0054】
非特許文献1によると、台形波の上昇時間または降下時間tに対する平坦部の時間の比が7から13の間であれば、次式で与えられる実効周波数fs以外の高調波のエネルギーが15%以下であるとされている。すなわち、この条件下の台形波は、ほぼ一つの波から構成されていると考えることが出来る。
【0055】
【数16】

【0056】
本特許のアイデアの理論的な根拠については下記の非特許文献に記載されている。従来の演算処理回路やディジタルデータ伝送回路の現状は下記の特許文献に記載されている。下記の特許文献の要点と問題点は後述される。
【特許文献1】特開平7−295700
【特許文献2】特開平8−18583
【特許文献3】特開平9−46006
【特許文献4】特開2000−124565(P2000−124565A)
【特許文献5】特開2001−144452(P2001−144452A)
【特許文献6】特開2003−78402(P2003−78402A)
【特許文献7】特開2004−363315(P2004−363315A)
【特許文献8】特開2006−19590(P2006−19590A)
【特許文献9】特開2006−66454(P2006−66454A)
【非特許文献1】Chung-Kuan Cheng, John Lillis, Shen Lin, Norman Chang著 「Interconnect Analysis and Synthesis」, 2000,John Wiley & Sons, Inc.
【非特許文献2】HirokazuTohya and Noritaka Toya著 「A Novel Design Methodology of theOn - Chip Power Distribution Network Enhancing the Performance and SuppressingEMI of the SoC」、IEEE InternationalSymposium on Circuits and Systems 2007、pp. 889-892、 May 2007.
【非特許文献3】遠矢弘和、遠矢紀尚 著 「SoCの性能とEMCを大きく改善するオンチップ電源分配回路の新しい設計法」、電子情報通信学会 信学技報、Vol.107、No. 149、 EE2007-20、pp.73-78、2007年7月.
【非特許文献4】遠矢弘和、遠矢紀尚 著 「オンチップインバータが励起する孤立波の電源線路および信号線路上での挙動についての一考察」、電気学会 電子回路研究会資料、 ECT-09-54、pp. 7-12、2009年6月.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0057】
解決しようとする問題点の第1は、特許文献1に関する。特許文献1は、SCSIバスライン終端装置に関し、バスラインの過電流を未然に防止しノイズスパイクを除去する技術を開示している。しかし、バスラインを構成する信号線路毎に、プルアップ終端抵抗、トランジスタ回路で構成される信号ライン増強電流キッカー回路、および信号線路上のトランジェントを除去するために上限電圧と下限電圧の範囲を制限する抑止回路手段を有する信号ラインインピーダンス整合終端装置とで構成されており、設計が複雑であり使用部品数も多かった。また、開示されている技術によって、LSIの性能を最大限引き出すことが困難であった。
【0058】
解決しようとする問題点の第2は、特許文献2に関する。特許文献2は、バスの終端での消費電力を低く抑え、かつ高速伝送を可能とすることを目的として、終端電源と伝送線路との間に2個の抵抗が直列に接続され、2個の抵抗器の接続部とグランドとの間にコンデンサが接続され、伝送線路に接続されている伝送線路の特性インピーダンスにほぼ等しい値を有する抵抗とコンデンサとローカットフィルタを形成する伝送線路終端方法を開示している。しかし、電源の端子インピーダンスやコンデンサのインピーダンスを必要とされる広い帯域に亘って充分低い値とすることが非常に困難なことや、抵抗器は電磁気学に基づく素子ではないため、開示されている技術によって、高ビットレートのディジタルデータを高品位で伝送することは困難であった。
【0059】
解決しようとする問題点の第3は、特許文献3に関する。特許文献3は、グランド層の上に誘電体がありその上に導体が複数本あるマイクロストリップラインにおいて、信号線路間のクロストークを低減させることを目的として、信号線路用ストリップ線の間にグランド層に一部が接続されたストリップ線を挟む技術を開示している。しかし、ストリップ線の数が増えるために、開示されている技術によって、配線密度の高い伝送線路構造で高ビットレートのディジタルデータを高品位で伝送することは非常に困難であった。
【0060】
解決しようとする問題点の第4は、特許文献4に関する。特許文献4は、グランド層の上に誘電体がありその上に導体が複数本あるマイクロストリップラインにおいて、信号線路間のクロストークを低減させることを目的として、信号線路の間にグランド層に両端が整合終端され送受回路に接続されていないダミー線路を挟む技術を開示している。しかし、ストリップ線路および終端抵抗の数が増えるために、開示されている技術によって、配線密度の高い伝送線路構造で高ビットレートのディジタルデータを高品位で伝送することは非常に困難であった。
【0061】
解決しようとする問題点の第5は、特許文献5に関する。特許文献5は、多層プリント基板における配線のクロストークを低減し、しかも多層プリント基板の大型化とコストアップを防止することを目的として、多層プリント基板を、二つの第1の誘電体層と、これら二つの誘電体層に挟まれるように形成された第2の誘電体層と、二つの第1の誘電体層の上面と下面に形成されたGNDプレーン層と、二つの第1の誘電体層の間に挟まれかつ垂直方向に対向するように配置された二本の信号線とで構成し、第2の誘電体層の比誘電率を第1の誘電体層の比誘電率より小さくする技術を開示している。しかし、第1の誘電体層と第2の誘電体層の比誘電率の差を、クロストークが低減出来るほど大きくすることは実用上困難であり、信号線を広範囲に亘って垂直方向に対向するように配置することも実用上困難であった。
【0062】
解決しようとする問題点の第6は、特許文献6に関する。特許文献6は、トランジス
タの動作時における出力電圧の傾きを緩やかにして急激な電圧変動が発生しないようにすることによって、LSIオンチップインターコネクトでの、クロストークノイズを安定して減少させ、クロストークノイズに起因する回路誤動作を確実に防止することを目的として、入力に2個のトランジスタを使用して共通出力端の電圧を段階的に変化させる技術を開示している。しかし、信号の上昇及び降下時間が長くなり性能を低下させてしまう、2段階で変化させてもクロストークノイズが1/2しか低減されない、およびトランジスタや配線の数が増えてしまうといった問題があり、実用化するのは困難であった。
【0063】
解決しようとする問題点の第7は、特許文献7に関する。特許文献7は、クロストークノイズにより信号の伝送品質を劣化させることなく、高密度に配線パターンを配線することができるプリント配線板を得ることを目的として、一対のストリップ線路とグラウンド層との間にグラウンドパターンを形成し、他の一対のストリップ線路とグラウンド層との間にグラウンドパターンを形成する技術を開示している。しかし、グラウンドパターンを形成するための配線層が増えるために、開示されている技術によって、配線密度の高い伝送線路構造で高ビットレートのディジタルデータを高品位で伝送することは非常に困難であった。
【0064】
解決しようとする問題点の第7は、特許文献7に関する。特許文献7は、クロストークノイズにより信号の伝送品質を劣化させることなく、高密度に配線パターンを配線することができるプリント配線板を得ることを目的として、一対のストリップ線路とグラウンド層との間にグラウンドパターンを形成し、他の一対のストリップ線路とグラウンド層との間にグラウンドパターンを形成する技術を開示している。しかし、グラウンドパターンを形成するための配線層が増えるために、開示されている技術によって、配線密度の高い伝送線路構造で高ビットレートのディジタルデータを高品位で伝送することは非常に困難であった。
【0065】
解決しようとする問題点の第8は、特許文献8に関する。特許文献8は、外部から侵入する電磁波に対する耐性の向上、及び基板内から発生する電磁波に対する放出の抑制とともに、シグナルインテグリティ特性の劣化を防止することを目的として、信号用のライン配線が設けられた信号層と、最上層及び/又は最下層に積層され、磁性材料と絶縁材との複合材料からなる磁性層とを備え、磁性層には信号用のライン配線を設けないとする多層プリント回路基板技術を開示している。しかし、開示されている技術は、多層プリント回路基板の外部空間での電磁干渉に関してはある程度有効であるが、シグナルインテグリティに直接関わる、多層プリント回路基板の内部での電磁干渉に関しては効果が無い。従って、開示されている技術によって、シグナルインテグリティ特性の劣化を効果的に防止すること困難であった。
【0066】
解決しようとする問題点の第9は、特許文献9に関する。特許文献9は、基板間通信を誘導性結合によって実現する場合に、複数の通信チャネルを近接して並列に並べてもクロ
ストークの発生を実際上無視できる程度に小さくすることができる電子回路を提供することを目的として、送信コイルを下のチップに、受信コイルを上のチップに設けて、チップ間の距離をX、通信チャネル間の距離(すなわち、コイル中心間の水平距離)をYとしたとき、所定のYにおいて、送信コイルに起因する受信コイル内の磁束密度が0になる位置が存在する。すなわち、Yが小さいと大きなクロストークが発生し、Yが大きいと逆符号の小さなクロストークが発生するため、その途中で磁束密度Bを受信コイル内で積分した値が0になる位置が必ず存在することになる。この位置においては原理的にクロストークが発生しないとする電子回路を開示している。
【0067】
しかし、開示されている技術は、時間的に変化する電磁界は電磁波となって線路上を進行するという電磁気学に従っていない。停止している静磁界の分布によってクロストークの生じない位置を特定出来るとしているが、静磁界はクロストークを発生させない。クロストークは線路上を進行する電磁波の漏洩によって生じるので、クロストークの生じない位置を特定することは原理的に出来ない。従って、開示されている技術によって、クロストークを効果的に抑圧することは不可能であった。
【0068】
電磁気学の定義に従うと、ディジタルデータ処理回路の多くは準定常回路に該当すると考えられ、設計には交流回路理論が使用されている。準定常状態の回路は電磁波理論が支配しているが、回路を定常と見なして設計や解析しても実用上の誤差が少ないということを意味する。ディジタルデータ処理回路のトランジスタのスイッチング速度が向上すると電磁ノイズが増加し、その対策は非常に難しいとされている。スイッチング周波数が高くなると小型軽量化が計られることはよく知られているが、電磁ノイズの増加が、ディジタル回路システムの高周波化を妨げている大きな要因の一つとなっている。
【0069】
定常回路を扱う交流回路理論では、電磁波である電磁ノイズの対策は不可能であることは自明である。従って、トランジスタの高速化に伴って発生する電磁ノイズ問題を解決するためには、ディジタル回路システムを構成する配線の設計において、配線の長さにかかわらず電磁波理論を適用する必要があることになる。しかし、電磁気学で確立している線形波形を扱う電磁波理論を使用してスイッチングモード電気回路の設計や解析を行うことは、原理的に不可能であった。
【0070】
アナログ回路は、回路状態の変化が比較的緩やかで始まりと終わりが明確でないことが多い。従って、特に低周波アナログ回路の設計においては、マックスウエルが確立した電磁波理論の代わりに、定常状態の回路を扱う交流回路理論を適用しても、実用上、問題が生じることはほとんど無かった。
【0071】
一方、演算処理回路やディジタルデータ伝送回路は、アナログ回路と異なり、状態の変化の期間が短く変化の始まりと終わりは明確である。演算処理回路やディジタルデータ伝送回路の状態の変化は非常に急激であり、急激な電界または磁界の変化は、電磁気学に従い大きなレベルの電磁波を励起する。ディジタルデータ処理回路における電界または磁界の変化は一般に間歇的である。さらに、演算処理回路やディジタルデータ伝送回路においては、スイッチングの周期はクロック回路を除いて一般に不定である。
【0072】
以上のようにアナログ回路と演算処理回路やディジタルデータ伝送回路は、電磁気学の観点からは大きく異なっている。しかし、演算処理回路やディジタルデータ伝送回路の設計や解析には、従来からアナログ回路と同様、交流回路理論が使用されて来た。この原因の一つは、ディジタル波がひずみ波の一種とみなされて来たことに因る。
【0073】
1812年に開発されたフーリエ変換法によると、ディジタル波は正弦波である多数の高調波から構成されているとされる。これらの高調波は始まりと終わりが無い多数の正弦波である。そうであるとすれば、回路上の信号を高調波毎に解析してその結果を加算すれば、ディジタル波について解析したことになる。しかし、演算処理回路やディジタルデータ伝送回路におけるディジタル波の周期は前述のように不定である。クロック回路のように周期が一定の場合は、フーリエ変換法は利便性が高いが、演算処理回路やディジタルデータ伝送回路において最重要であるタイミングの設計や解析にはフーリエ変換法は無力である。
【0074】
以上から、演算処理回路やディジタルデータ伝送回路の設計や解析にフーリエ変換法を適用するのは、前述の電気通信工学においてダランベールの波動方程式のみに依存して導体電流と導体間電圧が光速で進行するとしているのと同様、実用的にも物理学の観点からも問題が有り、好ましく無い。
【0075】
ディジタルデータ処理回路を誤り無く高い性能で動作させるためには、信号線路間でのクロストークを抑制することが必要である。また、信号線路の終端に到達した電磁波を終端で充分に減衰させる必要がある。しかし、従来のようにスイッチング波形を歪み波として扱うと、信号線路間が接近している場合のクロストークを抑制することが非常に難しく、信号線路の終端に到達した電磁波を終端で充分に減衰させることも非常に難しい。このため、多くのディジタルデータ伝送回路において、クロストークの心配が無く整合終端回路が1個で良いシリアルビット伝送方式が採用されているが、パラレルビット伝送方式に比べて信号伝送速度が低いという問題があった。
【0076】
スイッチング技術を電力の交流から直流、直流から交流への変換に使用すると、変換機器の大きさ、重量、価格を大幅に小さくすることが出来る。スイッチング速度を高めてスイッチングの繰り返し周波数を高めると、変換機器の大きさ、重量、価格をさらに小さくすることが出来るが、スイッチング時に発生する電磁ノイズやクロストークを抑制することが難しく、スイッチングの繰り返し周波数を高めることが出来ないという問題があった。
このため、部分共振回路を付加してスイッチング時に発生する電磁ノイズやクロストークを抑制する方法が提案されているが、変換機器の大きさ、重量、価格の低減に対する阻害要因になることが多かった。
【0077】
本発明は、上記問題を根本的に解決する手段を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0078】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、ロウパスフィルタに係り、伝送線路構造チップが、第1の二重層金属箔と、第2の前記二重層金属箔と、第1の前記二重層金属箔と第2の前記二重層金属箔の間に形成される絶縁体層とから構成されて形成されることを特徴としている。
【0079】
また、請求項2記載の発明は、ロウパスフィルタに係り、請求項1記載のロウパスフィルタにおいて、ロウパスフィルタ素子が、前記伝送線路構造チップと、該伝送線路構造チップの線路長方向の両端にそれぞれ設けられる信号端子とグランド端子とから構成されて形成されることを特徴としている。
【0080】
また、請求項3記載の発明は、ロウパスフィルタに係り、請求項1から請求項2記載のロウパスフィルタにおいて、前記伝送線路構造チップが、前記二重層金属箔と、金属箔と、前記二重層金属箔と前記金属箔との間に形成される前記絶縁体層とから構成されて形成されることを特徴としている。
【0081】
また、請求項4記載の発明は、ロウパスフィルタに係り、請求項1から請求項3記載のロウパスフィルタにおいて、前記二重層金属箔が、磁性体層と前記導体箔とから構成されて形成されることを特徴としている。
【0082】
また、請求項5記載の発明は、ロウパスフィルタに係り、請求項1から請求項4記載のロウパスフィルタにおいて、前記磁性体層が、少なくとも鉄、ケイ素、ホウ素、リン、および炭素を含む金属ガラス合金を前記導体箔の一面に溶射することによって、20μmから100μmの厚さに形成されることを特徴としている。
【0083】
また、請求項6記載の発明は、ロウパスフィルタに係り、請求項1から請求項5記載のロウパスフィルタにおいて、前記磁性体層が、1000S/m以上の導電率を有するとともに、軟磁性特性を有し、少なくとも、1MHzにおいて700、10MHzにおいて500、100MHzにおいて300、1GHzにおいて200、10GHzにおいて50の比透磁率を有することを特徴としている。
【0084】
また、請求項7記載の発明は、ロウパスフィルタに係り、請求項1から請求項6記載のロウパスフィルタにおいて、前記絶縁体層が、絶縁体薄膜の一面に第1の前記二重層金属箔上の前記磁性体層を接して配置し、前記絶縁体薄膜の他面に第2の前記二重層金属箔上の前記磁性体層を接して配置し、または前記絶縁体薄膜の一面に前記二重層金属箔上の前記磁性体層を接して配置し、前記絶縁体薄膜の他面に前記導体箔を接して配置し、少なくとも前記絶縁体薄膜を加熱した状態で、前記第1の二重層金属箔と前記第2の二重層金属箔の間、または前記二重層金属箔と前記導体箔の間に圧力を加えることによって形成されることを特徴としている。
【0085】
また、請求項8記載の発明は、ロウパスフィルタに係り、請求項1から請求項7記載のロウパスフィルタにおいて、前記絶縁体薄膜が、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、またはこれらの混合物もしくは変性物から選択される1種以上の樹脂を主剤とし、接着剤シートとして形成されることを特徴としている。
【0086】
また、請求項9記載の発明は、ロウパスフィルタに係り、請求項1から請求項8記載のロウパスフィルタにおいて、前記ロウパスフィルタ素子および前記伝送線路構造チップが、該ロウパスフィルタ素子および該伝送線路構造チップに直列に接続して使用される伝送線路の特性インピーダンスに対して−10%から+90%の範囲内にある、前記特性インピーダンス値を有するように、少なくとも、該伝送線路構造の外形寸法と、前記磁性体層の厚さと、該磁性体層の導電率と、該磁性体層の透磁率と、前記絶縁体層の厚さと、該絶縁体層の誘電率が決定されて形成されることを特徴としている。
【0087】
また、請求項10記載の発明は、ロウパスフィルタに係り、請求項1から請求項9記載のロウパスフィルタにおいて、前記ロウパスフィルタ素子および前記伝送線路構造チップが、スイッチングモード伝送線路に直列に接続して使用された状態で、該スイッチングモード伝送線路を駆動するスイッチング素子が切断状態から導通状態に変化する時間と円周率の積の逆数として求められる周波数において、−10dB以下の透過係数と、−10dB以下の反射係数を有するように、少なくとも、該伝送線路構造の外形寸法と、前記磁性体層の厚さと、該磁性体層の導電率と、該磁性体層の透磁率と、前記絶縁体層の厚さと、該絶縁体層の誘電率が決定されて形成されることを特徴としている。
【0088】
また、請求項11記載の発明は、ロウパスフィルタに係り、請求項1から請求項10記載のロウパスフィルタにおいて、前記ロウパスフィルタ素子が印刷配線基板上に搭載して使用され、前記伝送線路構造チップが前記印刷配線基板の絶縁体層中または半導体集積回路のオンチップインターコネクト構造の前記絶縁体層中に埋め込んで使用されることを特徴としている。
【0089】
また、請求項12記載の発明は、ロウパスフィルタに係り、請求項1から請求項11記載のロウパスフィルタにおいて、前記スイッチングモード伝送線路が、ディジタル信号伝送線路、スイッチング電力伝送線路を含む伝送線路であり、前記スイッチング素子が、トランジスタまたは前記半導体集積回路中のインバータや前記トランジスタを含み、前記スイッチングモード伝送線路上に2つ以上の定常状態を有する電位変化を生じさせることを特徴としている。
【発明の効果】
【0090】
本発明をディジタル回路に適用すると、伝送線路に不可欠であった整合終端処理が全く不要となるので、特に高速ディジタル回路の設計が非常に容易になる。
【0091】
また、本発明をディジタル回路に適用すると、クロストークを初めとする回路内や回路間での電気干渉問題が大幅に改善されることによってパラレルビット伝送を誤り無く行うことが可能となるので、伝送距離に関係なく、ディジタル信号の伝送速度を並列の数を乗じた速度に高めることが可能になる。
【0092】
また、本発明を電力変換回路に適用すると、スイッチング時に発生する電磁ノイズやクロストークを抑圧するので、スイッチングの繰り返し周波数を大きく高めることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0093】
(実施の形態1)
図1は、伝送線路構造チップの一例である。図2は、伝送線路構造チップの他の一例である。図3は、二重層金属箔の一例である。
【0094】
図1において、伝送線路構造チップは、導体箔1、5、磁性体層2、4、および絶縁体層3で構成されている。図2において、伝送線路構造チップは、導体箔6、9、磁性体層7、および絶縁体層8で構成されている。図3において、二重層金属箔は、磁性体層11および導体箔12で構成されている。
【0095】
図1において、絶縁体層3は、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、またはこれらの混合物もしくは変性物から選択される1種以上の樹脂を主剤として形成される接着剤シートから成っている。図1の伝送線路構造チップは、絶縁体層3の両面に、導体箔1および磁性体層2で構成される図3の構造の二重層金属箔と、導体箔5および磁性体層4で構成される図3の構造の二重層金属箔を、磁性体層2および磁性体層4が対向するように配置して、加熱圧縮して形成される。
【0096】
図2において、絶縁体層8は、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、またはこれらの混合物もしくは変性物から選択される1種以上の樹脂を主剤として形成される接着剤シートから成っている。伝送線路構造チップは、絶縁体層3の一面に導体箔9を、絶縁体層3の他面に磁性体層7が対向するように配置して、加熱圧縮して形成される。
【0097】
図3において、二重層金属箔は、導体箔12と、導体箔12の一面に、鉄、ケイ素、ホウ素、リン、および炭素を含む金属ガラス合金を溶射することによって形成される磁性体層11とから構成されている。
【0098】
(実施の形態2)
図4は、ロウパスフィルタ素子の一例である。図5は、ロウパスフィルタ素子の一例の側面図である。図6は、ロウパスフィルタ素子のS21の計算値の一例である。図7は、ロウパスフィルタ素子のS11の計算値の一例である。図8は、ロウパスフィルタ素子の端子インピーダンスの計算値の一例である。図9は、ロウパスフィルタ素子の特性インピーダンスの計算値の一例である。図10は、ロウパスフィルタ素子のS21の計算値の他の一例である。図11は、ロウパスフィルタ素子のS11の計算値の他の一例である。図12は、ロウパスフィルタ素子の端子インピーダンスの計算値の他の一例である。図13は、磁性体層の比透磁率の周波数特性の一例である。
【0099】
図4において、本実施の形態におけるロウパスフィルタ素子は、絶縁体層23の一面に配置された3枚の導体箔21と3枚の導体箔30と1枚の導体箔28、導体箔28上に配置された絶縁体層25、二重層金属箔26を形成する導体箔27と磁性体層24、絶縁体層25に磁性体層24が接するように整列配置された3枚の二重層金属箔26、導体箔27の長さ方向の一端と3個の導体箔21との間を接続する3枚の導体箔22、導体箔27の長さ方向の他端と3個の導体箔30との間を接続する3枚の導体箔29から構成されている。
【0100】
図5において、本実施の形態におけるロウパスフィルタ素子は、絶縁体層45の一面に配置された導体箔31と導体箔36と導体箔39、導体箔36上に配置された絶縁体層35、二重層金属箔33を形成する導体箔37と磁性体層34、絶縁体層35に磁性体層34が接するように配置された二重層金属箔33、導体箔37の長さ方向の一端と導体箔31との間を接続する導体箔32、導体箔37の長さ方向の他端と導体箔39との間を接続する導体箔38、絶縁体層45の他面に配置された導体箔40と導体箔41と導体箔43と導体箔44、導体箔31と導体箔44ならびに導体箔36の一端と導体箔43ならびに導体箔36の他端と導体箔41ならびに導体箔39と導体箔40の間を接続するためのビア42から構成されている。
【0101】
周波数をf、静電容量をCとするとコンデンサの交流インピーダンスZは、次式から求められる。
【0102】
【数17】

【0103】
特性インピーダンスが50Ω の測定系の線路にコンデンサが並列に接続されたときの透過係数(S21C)は、次式から求めることが出来る。
【0104】
【数18】

【0105】
本実施の形態における伝送線路構造チップまたはロウパスフィルタ素子を特性インピーダンスがZ00の伝送線路の途中に接続して使用すると、低周波帯域においてはコンデンサとしてのインピーダンス特性を示すが、さらに低い周波数帯域では伝送線路の特性インピーダンスZ00に漸近すると考えられる。従って、ロウパスフィルタの、低周波帯域における端子インピーダンスZは、次式で表される。ここでn1は任意の数である。n1が大きいほど変曲点部が鋭角となる。
【0106】
【数19】

【0107】
伝送線路構造チップは、電極となる導体層と絶縁体層との間に導電性の磁性体層を有している。この場合の伝送線路構造チップの特性インピーダンスは、絶縁体層の厚さの代わりに実効厚さを使用することによって求めることが出来ると考えられる。絶縁体層の厚さをa、磁性体層の厚さをb、絶縁体の固有インピーダンスをZI、磁性体の固有インピーダンスをZとすると、絶縁体層の実効厚さdeは、次式で表すことが出来る。
【0108】
【数20】

【0109】
伝送線路構造チップの特性インピーダンスをZとすると、伝送線路構造チップを測定系の50Ωのケーブルに接続したときの反射の影響による伝送線路構造チップの透過係数S21Rは、反射境界が2つ存在するので、式(14)を変形して次式から求めることが出来る。
【0110】
【数21】

【0111】
本実施の形態におけるロウパスフィルタ素子の信号端子間の距離をzとしたときの信号端子間の静電容量C
とし、周波数がfのときのCのインピーダンスをZCTとすると、信号端子間での電磁結合による透過係数S21T
は、次式から求めることが出来る。
【0112】
【数22】

【0113】
伝送線路構造チップ中を電磁波が進行するとき、磁性体層中に電磁界が浸透することによって伝送損失が発生する。磁性体層の有効厚さをb、表皮厚さをδとするときの、厚さが無限大のときに対するbの厚さの磁性体層における損失の割合Aは、次式から求めることが出来る。
【0114】
【数23】

【0115】
特性インピーダンスがZ0で、線路幅がwの伝送線路の1つの壁面に磁性体層が配置されている伝送線路構造チップにおいて、磁性体層の導電率をσ、表皮厚さをδ、損失の割合をAとし、電気通信工学理論を電磁気学で修正すると、磁性体層による実効減衰定数αは次式で表される。
【0116】
【数24】

【0117】
磁性体層によって発生する実効減衰定数αによる、線路長がzの伝送線路構造チップの透過係数S21αは次式から求めることが出来る。
【0118】
【数25】

【0119】
伝送線路構造チップでの全周波数帯における反射による透過係数S21Rは、次式から近似的に求めることが出来る。
【0120】
【数26】

【0121】
反射と、内部での減衰を含む伝送線路構造の透過係数S21は、次式から求めることが出来る。
【0122】
【数27】

【0123】
端子間の電磁結合を考慮した本実施の形態におけるロウパスフィルタ素子の総合透過係数S21Mは、次式から近似的に求めることが出来る。
【0124】
【数28】

【0125】
伝送線路構造チップの特性インピーダンスをZ、静電容量をCとし、周波数がfのときの静電容量の交流インピーダンスをZとすると、全周波数帯における伝送線路構造チップの端子インピーダンスZ は、次式から近似的に求めることが出来る。ここでn2は任意の数である。n2が大きいほど変曲点部が鋭角となる。
【0126】
【数29】

【0127】
端子から空間への電磁放射を考慮した本実施の形態におけるロウパスフィルタ素子の端子インピーダンスZは、次式から近似的に求めることが出来る。
【0128】
【数30】

【0129】
本実施の形態におけるロウパスフィルタ素子を測定系の50Ωのケーブルに接続したときの接続部に於ける反射係数S11は、Zを50Ωとし、Zを式(30)から求めるZaに置き換えると、式(13)から求めることが出来る。
【0130】
本実施の形態で示した式と以下に示すパラメータを使用して、本実施の形態におけるロウパスフィルタ素子の、特性インピーダンス、並びに線路長毎の透過係数S21および端子インピーダンスの計算結果を図6から図12に示す。図6と図7は、ネットワークアナライザによって測定したときを想定した周波数特性を示しており、図7に示すS11特性は、図8の端子インピーダンスを使用して求めている。
【0131】
図10から図12は、本実施の形態におけるロウパスフィルタ素子を、スイッチングモード伝送線路に接続して使用する場合に使用するための特性曲線である。このために、図10から図12は、スイッチングモード伝送線路を駆動するスイッチング素子の切断状態から導通状態または導通状態から切断状態に変化する時間であるスイッチング時間(τまたはtr)が横軸となっている。図9に示す特性インピーダンス値は、線路長には無関係であり、透過係数S21および端子インピーダンスの計算に使用される。
【0132】
本実施の形態におけるロウパスフィルタ素子の特性計算において、伝送線路構造チップには図1の構造を使用し、実測した磁性体層の比透磁率特性から求めた近似特性曲線を図13、磁性体層の導電率を20kS/m、磁性体層の厚さを30μm、伝送線路構造チップの線路幅を50μm、絶縁体層の比誘電率を3.5、本実施の形態におけるロウパスフィルタ素子の端子間結合容量を10−18F/mとしている。伝送線路構造チップを印刷配線基板に埋め込んで使用する場合の端子間結合容量は10−19F/m以下になると推定される。
【0133】
(実施の形態3)
図14は、試作したロウパスフィルタ素子の一例である。図15は、試作したロウパスフィルタ素子のS21の実測値の一例である。図16は、試作したロウパスフィルタ素子のS11の実測値の一例である。図17は、試作したロウパスフィルタ素子のS21の計算値の一例である。図18は、試作したロウパスフィルタ素子のS11の計算値の一例である。図19は、試作したロウパスフィルタ素子の端子インピーダンスの計算値の一例である。
【0134】
図14において、本実施の形態におけるロウパスフィルタ素子は、JIS C 3202 2種エナメル銅線51の表面に、10μm厚さの場合の表面抵抗が3.3Ωのカーボンペーストで100μmの厚さのカーボングラファイト層52を形成し、カーボングラファイト層52の表面に銀ペースト層53を形成して試作されている。エナメル銅線51を構成する銅線の直径は100μmであり、銅線の表面に形成されているポリウレタン絶縁膜の厚さは5μmである。
【0135】
図15と図16は、本実施の形態におけるロウパスフィルタ素子のS11とS21の実測値である。いずれも縦軸の下端が−100dBで縦軸の上端が0dBの整数目盛、横軸の左端が100KHzで横軸の右端が3GHzの対数目盛で示されている。図17と図19は、カーボングラファイト層中に平均1μmの気泡が存在すると仮定して実施の形態2に示した方法によって計算で求めた、ロウパスフィルタ素子のS21特性曲線と端子インピーダンス特性曲線である。図18に示すS11特性曲線は、図19に示す端子インピーダンスの計算値から求めた。
【0136】
11とS21の測定にはネットワークアナライザを使用したが、このとき被測定物に接続される2本のケーブルの特性インピーダンスは50Ωであり、ネットワークアナライザ内においてそれぞれ50Ωで終端されている。測定周波数が直流に近い低周波になると被測定物に50Ωの終端抵抗が2個並列に接続されることになる。本実施の形態におけるロウパスフィルタ素子の特性計算においてはこの効果も考慮した。図15、図16と、図17、図18の特性曲線はそれぞれかなり合致しているので、実施の形態2に示した計算法の信頼性はかなり高いと推定できる。
【0137】
(実施の形態4)
図20は、基本的なスイッチングモード電気回路に関する等価回路の一例である。図21は、信号線路上の孤立電磁波の電界波形と信号線路の充電波形のイメージ一例である。図22は、電源線路上の孤立電磁波の電界波形と電源線路の放電波形のイメージ一例である。図23は、ロウパスフィルタを適用した場合の基本的なスイッチングモード電気回路に関する等価回路の一例である。図24は、ロウパスフィルタの入力端における孤立電界波の波形の計算結果の一例である。図25は、ロウパスフィルタの入力端における電位波形の計算結果の一例である。図26は、ロウパスフィルタ上を孤立電磁波が進行するときの波形のイメージの一例である。図27は、伝送線路構造チップを印刷配線基板に埋め込んだ状態の一例である。図28は、ロウパスフィルタ素子を印刷配線基板に搭載した状態の一例である。
【0138】
非特許文献4によると、半導体集積回路内のインバータは、切断状態から導通状態に変化または導通状態から切断状態に変化するスイッチング動作の過程で、非線形波動またはソリトンの一種である孤立電磁波を励起する。スイッチングモード電気回路を構成するトランジスタも、スイッチング動作の過程で、非線形波動またはソリトンの一種である孤立電磁波を励起する。
【0139】
トランジスタのスイッチング動作の過程における孤立電磁波の励起メカニズムは、1834年にJohn Scott Russell がソリトンを発見する際に行った種々の実験の内の水を貯めた水門(ゲート)を急に開くことによって生じたソリトンの発生メカニズムや、ソリトンの一種であると確認されているプレートが縦にずれることによって発生する津波の生成過程に極めて類似している。
【0140】
非特許文献1から非特許文献3に、伝送線路上に提起された孤立電磁波の挙動が示されている。非特許文献1から非特許文献4に従う考え方を孤立電磁波理論と称する。交流回路理論から推定すると、トランジスタがオフからオンにスイッチングした直後のトランジスタの電位は、前記直流電源の電圧を電源線路の特性インピーダンスと信号線路の特性インピーダンスで分割した値になる。物理学によると、トランジスタがオフからオンにスイッチングする直前のトランジスタの有するポテンシャルエネルギーはゼロである。
【0141】
孤立電磁波理論によると、トランジスタがオフからオンにスイッチングする過程で、電源線路上には電圧を分割電圧まで下げる正極性の孤立電磁波が、信号線路上には電圧を分割電圧まで上げる負極性の孤立電磁波がそれぞれ同時に同一振幅で励起され、電磁波理論に従い、互いにその振幅ベクトルが直交する孤立電界波と孤立磁界波を伴うTEM波となって伝送線路上を進行する。一般的な電圧源回路においては、孤立電磁波を構成する孤立電界波が挙動の主役を担い、直流電源60から静電エネルギーを引き出して伝送線路を充電、または静電エネルギーを吸収して伝送線路を放電する。
【0142】
図20において、特性インピーダンスZの伝送線路の途中にインバータ61が接続されている。特性インピーダンスZの電源線路64は、VDDボルトを出力する直流電源60とインバータ61との間に接続されており、特性インピーダンスZの信号線路65は、インバータ61と整合終端抵抗66との間に接続されている。インバータ61は、PチャネルMOSFET62とNチャネルMOSFET63によるコンプリメンタリー接続で形成されている。インバータ61のオン状態とは、PチャネルMOSFET62がオンでNチャネルMOSFET63がオフの状態であり、インバータ61のオフ状態はその逆である。
【0143】
図20から図22において、インバータ61がオンすると、図20中のB点とC点の電位は、図21(b)および図22(b)に示すような上昇または降下曲線を描いてVDD/2ボルトとなる。このとき、図21(a)および図22(a)に示す波形の孤立電界波67および69を含む孤立電磁波が、図20のインバータ61によって励起される。図21において、励起された孤立電界波67は図の右の方向すなわち整合終端抵抗66に向かって準光速で進行する。図22において、励起された孤立電界波69は図の左の方向すなわち直流電源60に向かって準光速で進行する。
【0144】
図20から図22において、図21(a)に示す孤立電界波67は、図21(b)に示すように、進行に伴って信号線路65を充電し電位を0ボルトからVDD/2ボルトに上昇させる。図22(a)に示す孤立電界波69は、図22(b)に示すように、進行に伴って電源線路64を放電し電位をEボルトからVDD/2ボルトに降下させる。
【0145】
伝送線路を進行する電磁波の磁界と電流の関係および電界と電位の関係は、電磁気学においてそれぞれ式(1)で表されるアンペアの法則、および式(2)で表される電位の式で定義される。式(1)および式(2)の積分は電界および磁界のベクトルが向いている線路軸に直交する断面に対して行うので、図21(a)および図22(a)に示す孤立電界波67および孤立電界波69の波形と、式(2)から得られる孤立電位波形は同形であり、式(2)から電界の向きと電位の向きは逆極性となる。図21(b)および図22(b)に示す電位波形と重なるために、孤立電界波の波形を観測することは困難である。
【0146】
電源線路75および信号線路76の電位の立ち上がり部分の波形は、図22(b)および図22(b)に示すように、正弦波の半周期波形に近似できる。非特許文献9および非特許文献10によると、この正弦波の周波数は、実効周波数(significant frequency)に近似出来る。実効周波数の定義は、トランジスタのスイッチングによって生じる電位波形の最大傾斜部の接線から得られる立ち上がり時間と円周率との積の逆数であって、近似の確かさ(accuracy)は92%以上と見込まれている。
【0147】
機器の電気回路設計は、時間的に変化する電気現象に特に注目して行われる。図20の等価回路において時間的に変化するのは、インバータ71がオンまたはオフになる過渡期間のみである。孤立電磁波理論によると、ソリトン波である孤立電磁波の代わりに正弦波である実効周波数で、インバータ71がオンまたはオフになる過渡期間の解析を行うことが可能である。
【0148】
図20から図22において、信号線路65上を進む孤立電界波67は整合終端抵抗66で最終的には消費されて消滅し、信号線路65の電圧はVDD/2ボルトまでしか上昇していない。一方、電源線路64の電位は、孤立電界波69が直流電源60に到達するまでにVDDボルトからE/2ボルトに降下する。直流電源60が、端子インピーダンスがゼロとみなせる理想電源であれば、電源線路64を進行する孤立電界波69は直流電源60で極性を反転して全反射する。
【0149】
図20から図22において、直流電源60の出力端Aで反射した後の孤立電界波の波形は振幅も含んで図20(a)と同形である。従って、直流電源60で反射した図20(a)の形状の反射波は電位をVDDに戻しながら電源線路64を進行してインバータ61に至る。このときインバータ61がオンの状態であれば、反射波はPチャネルMOSFET62を通過して信号線路65に入る。信号線路65に入った反射波は、信号線路65の電位をVDD/2ボルトからVDDボルトに上昇させながら進行し、整合終端抵抗66で消滅する。このような経緯をたどって、電源線路64および信号線路65の電位はVDDボルトの定常値に達する。
【0150】
図23に示す等価回路は、理想電源と見なせる直流電源71、ドライバ73、79、PチャネルMOSFET74およびNチャネルMOSFET75で構成されるドライバ73、実施の形態3に示したロウパスフィルタ77、電源線路72および信号線路78から構成されている。
【0151】
孤立電磁波理論によると、伝送線路上を進行する孤立電磁波の波長は次式で定義される。
【0152】
【数31】

【0153】
図23において、ドライバ73のスイッチング時間を50psとする。ロウパスフィルタ77には、実施の形態2に示したロウパスフィルタ素子を使用する。ドライバ73のスイッチング時間が50psの場合において、透過係数S21が−20dB以下で端子インピーダンスが50Ωに近い値を有するロウパスフィルタ77の最適線路長は、図9と図12から1.1mmとなる。
【0154】
1.1mmの線路長を有するロウパスフィルタ77に、スイッチング時間が50psに対応する孤立電磁波が入力されたときの、ロウパスフィルタ77の透過係数S21は図9から−25.6、ロウパスフィルタ77の端子インピーダンスは図12から42.6Ω、ロウパスフィルタ77の反射係数S11は図11から−19.5dBとなる。本実施の形態においては、ロウパスフィルタ77の端子インピーダンスが信号線路76の50Ωの特性インピーダンスと等しくないので、ロウパスフィルタ77の入力端Dの電位は反射波が到来するたびに上昇し、定常値に達する。
【0155】
電源線路72の線路長は波長に対して無視できるほど充分短く、信号線路76は50Ωの特性インピーダンスを有していて長さが10mmまたは20mm、信号線路78は50Ωの特性インピーダンスを有して孤立電磁波の波長に対して充分長いものとする。式(31)から求めたロウパスフィルタ中の孤立電磁波の波長は12.6mmであり、本実施の形態におけるロウパスフィルタ77の線路長は1.1mmであって孤立電磁波の波長に比べて充分短いので、ロウパスフィルタ77中での反射による電位の立ち上がり時間の増加は無視できる。
【0156】
図24は、インピーダンス不整合によって反射した孤立電磁波が理想電源と見なせる直流電源71の出力端Aで反射して帰ってくるときの、ロウパスフィルタ77の入力端での孤立電界波の波形である。縦軸は孤立電界波の電界強度の相対値であり、横軸は時間である。孤立電界波の電界強度は、ドライバ74および信号線路76の構造、寸法、並びに材料特性によって決定されるので、ここでは相対値としている。
【0157】
図24において、SEW0はドライバ73によって励起された孤立電界波の波形を示し、SEW1は、SEW0が信号線路76を進みロウパスフィルタ77の入力端Dに到来した孤立電界波と、ロウパスフィルタ77の入力端Dで反射した孤立電界波の合成波形である。
SEW2は、ロウパスフィルタ77の入力端Dで反射して信号線路76を進み直流電源71の出力端Aで反射して信号線路76経由でロウパスフィルタ77の入力端Dに到来した2番目の孤立電界波と、2番目の孤立電界波がロウパスフィルタ77の入力端Dで反射したときの孤立電界波の合成波形である。
【0158】
図25は、孤立電磁波によって充電される信号線路76上のロウパスフィルタ77の入力端における電位波形である。電位波形の計算は直流電源71の出力端Aで反射してロウパスフィルタ77の入力端に到来する7回までの孤立電界波を時間積分することによって求めている。図24に使用するロウパスフィルタ77の反射係数S11が−19.5dBとかなり小さいため、ロウパスフィルタ77の入力端における電位は、二回目に到来する反射波によってほぼ定常値の3Vに達している。
【0159】
図25において、ロウパスフィルタ77の入力端Dにおける電位の実効的な立ち上がり時間は、図25に示す接線が0Vと3Vを切る間の時間であり、54.5psである。ロウパスフィルタ77の入力端Dでの電位の立ち上がり時間がドライバ73のスイッチング時間50psよりやや長いのは、ドライバ73によって励起された孤立電界波の波長は変わらずに振幅がやや低くなったことが原因であり、ロウパスフィルタ77の反射係数S11を小さくするとロウパスフィルタ77の入力端Dでの電位の立ち上がり時間をドライバ73のスイッチング時間に近づけることが出来る。
【0160】
図26は、ロウパスフィルタ77中を伝搬する孤立電界波の一例である。図26において、孤立電界波81はロウパスフィルタ77の入力端Dにおける孤立電磁波の波形であり、孤立電磁波83はロウパスフィルタ77の出力端Eにおける孤立電磁波の波形である。
【0161】
スイッチング素子は、孤立電磁波を励起することによって伝送線路上に2つ以上の定常状態を有する電位変化を生じさせ、一般には定常状態は直流電源電位とグランド電位の2値である。定常電位においては時間的な変化が無いので静電磁気エネルギーに支配される。銅やアルミニウムのような良導体を使用する伝送線路の減衰定数は、時間的に電界または磁界が変化する電磁波に対して有効であり、静電磁気には作用しない。
【0162】
図23において、ロウパスフィルタ77の入力端Dに到達した孤立電磁波のほとんどは、ロウパスフィルタ77内を減衰しつつ進行する。本実施の形態の場合は、ロウパスフィルタ77を進行中に図26の指数曲線82に従って25.6dBだけ減衰する。図26において、ロウパスフィルタ77の出力端Eにおける孤立電磁波83の振幅は、ロウパスフィルタ77の入直端Dにおける孤立電磁波81の振幅の0.052倍に減衰する。
【0163】
孤立電磁波理論によれば、図23において振幅がEの孤立電磁波がロウパスフィルタ77内をz方向に進行する場合、無限大の距離では孤立電界波の振幅がゼロとなるので、ロウパスフィルタ77内での孤立電界波をESW1(z)とすると、ESW1(z)は次式で表される。
【0164】
【数32】

【0165】
ロウパスフィルタ77内での孤立電界波の振幅の包絡線E(z)は、初期値がゼロで無限大の距離では孤立電磁波の入力振幅値Eとなるので、次式で表される。
【0166】
【数33】

【0167】
孤立電界波ESW(z)がロウパスフィルタ77中を進行する場合には、式(32)と式(33)の現象が並行して発生し、ロウパスフィルタ77の入力端Dから出力端Eの間の各点における孤立電界波ESW(z)の振幅が決まると考えられるので、式(32)と式(33)の和Eは、次式のようになる。
【0168】
【数34】

【0169】
図12において、インバータのターンオン後にロウパスフィルタ77中を進行する孤立電磁波の振幅と孤立電磁波の振幅の包絡線は、図26に示すように負の値となる。従ってこの場合は式(34)から求められる電界は負の値となる。従って、式(32)から式(34)によると、ロウパスフィルタ77中を進行する孤立電磁波が、電源から静電エネルギーを引き出しながら進行することによって電位の減少分を補っていると考えることが出来る。
【0170】
この現象は、ロウパスフィルタ77は直流に対する減衰機能を有していないことや、図23の等価回路のように固定負荷が無ければ、定常状態において電荷の移動による導体電流が存在できないので、送端と受端間には定常的な電位差は生じないはずであることから推測できる。
【0171】
孤立電磁波理論によれば、誘電体による波長圧縮効果を無視するとロウパスフィルタ77中を進行中の孤立電磁波の波長は変化しないので、ゲートディレーτ、上昇時間t、または降下時間tを有するスイッチング素子によって励起された孤立電磁波の充放電作用によって生成されたスイッチングパルス電圧波は、ロウパスフィルタ77中を、振幅とゲートディレーτ、上昇時間t、または降下時間tが保たれたまま進行することになる。従って、ロウパスフィルタ77の端子インピーダンスとロウパスフィルタ77に接続される信号線路の特性インピーダンスが整合していると、ロウパスフィルタ77の前後の電位波形は全く変化しないことになり、信号品位が保たれる。
【0172】
図23において、ロウパスフィルタ77が使用されない場合は、F点に整合終端回路が必要である。しかし、本実施の形態においては、ロウパスフィルタ77のS21が−25.6dBと非常に小さいので、F点に整合終端回路を使用する必要はない。
【0173】
インバータ79には、非常に小さい値であるがゲート容量が信号線路78に対して直列に存在している。F点に到達した非常に低い振幅の孤立電磁波はゲート容量を透過してインバータ79の内部に侵入する。この場合、インバータ79を構成するトランジスタのドレインまたはソースの電位を一瞬わずかに変化させる。しかし、ゲート容量を透過した孤立電磁波に対しては直流電源71からの静電エネルギーの供給が絶たれるために、変化した電位を定常的に維持させることは出来ない。インバータ79は、ゲートに印加される電位の変化を感知してスイッチング動作に入り、インバータ73と同様の動作で逆の極性の孤立電磁波を励起し、オフ動作を完了する。
【0174】
図23において、ロウパスフィルタ77を透過した孤立電界波の振幅は25.6dBだけ減衰しているので、信号線路78の近傍に他の信号線路を密着して配置してもクロストーク障害を生じないし、信号線路を進行する電磁波に起因するEMC問題を発生することもない。
【0175】
(実施の形態5)
図27は、伝送線路構造チップを印刷配線基板に埋め込んだ状態の一例である。図28は、ロウパスフィルタ素子を印刷配線基板に搭載した状態の一例である。
【0176】
図27において、半導体集積回路86が印刷配線基板85上に搭載されており、伝送線路構造チップ96が印刷配線基板85の絶縁体層91中に埋め込まれている。半導体集積回路86のグランド端子87はグランドパッド93に接続され、ビア94によってグランドプレーン92に接続されている。半導体集積回路86の信号端子88は信号パッド95に接続されており信号を出力する。信号パッド95と伝送線路構造チップ96の一面または一面の一端と信号トレース90の一端が、導電性ペースト89によって相互に接続されている。伝送線路構造チップ96の他面は一面の両端はグランドプレーン93に接続されている。
【0177】
図28において、半導体集積回路102およびロウパスフィルタ素子107が印刷配線基板111上に搭載されている。半導体集積回路102のグランド端子103はビア112によってグランドプレーン101に接続されている。半導体集積回路102の信号端子104はビア113によって信号トレース114の一端に接続されており、信号を出力する。信号トレース114の他端はビア115によってロウパスフィルタ素子107の信号端子105に接続されている。ロウパスフィルタ素子107のグランド端子106および108はそれぞれビア116および118によってグランドプレーン117に接続されている。ロウパスフィルタ素子107の信号端子109はビア110によって信号トレース119の一端に接続されている。
【0178】
図27において、伝送線路構造チップ96に層構成が非対称な図2の構造の伝送線路構造チップを使用する場合は、図2の導体箔9をグランドプレーン92に接続するのが効果的である。図27における伝送線路構造チップ96、および図28におけるロウパスフィルタ素子107の作用は、実施の形態に4の図23におけるロウパスフィルタ77の作用と同様である。
【0179】
図27において、半導体集積回路86がインターポーザ基板を内蔵している場合は、伝送線路構造チップ96をインターポーザ基板上に搭載、またはインターポーザ基板の絶縁体層中に埋め込んで使用すると、インターポーザ基板でのクロストークを大幅に抑圧することが出来る。半導体集積回路のオンチップインターコネクトの絶縁体層中に伝送線路構造チップ96を埋め込んで使用すると、さらに大きな効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明は、従来の技術では解決が困難であったディジタル回路、DC−DCコンバータ回路、並びにインバータ回路を含むスイッチングモード電気回路を使用する電気・電子機器におけるEMC(電磁適合性)問題やクロストーク問題を解決する。また本発明は、超高速並列ビット伝送を可能とするためディジタルデータ伝送速度を大幅に向上させる。また本発明は、ディジタル信号伝送線路における整合終端回路を不要とする。また本発明は高速スイッチングDC−DCコンバータ回路、並びに高速スイッチングインバータ回路におけるスナバや部分共振回路を不要とする。
【0181】
本発明は半導体集積回路、並びに半導体集積回路を内蔵する、情報技術機器、マルチメディア機器、電力変換機器、通信機器、車載機器、携帯電話、情報端末機器、並びに科学医療機器の、高性能化、設計容易化と設計期間の短縮化、小型軽量化、低消費電力化、低コスト化、品質・信頼性の向上を実現させる。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】図1は、伝送線路構造チップの一例である。
【図2】図2は、伝送線路構造チップの他の一例である。
【図3】図3は、二重層金属箔の一例である。
【図4】図4は、ロウパスフィルタ素子の一例である。
【図5】図5は、ロウパスフィルタ素子の一例の側面図である。
【図6】図6は、ロウパスフィルタ素子のS21の計算値の一例である。
【図7】図7は、ロウパスフィルタ素子のS11の計算値の一例である。
【図8】図8は、ロウパスフィルタ素子の端子インピーダンスの計算値の一例である。
【図9】図9は、ロウパスフィルタ素子の特性インピーダンスの計算値の一例である。
【図10】図10は、ロウパスフィルタ素子のS21の計算値の他の一例である。
【図11】図11は、ロウパスフィルタ素子のS11の計算値の他の一例である。
【図12】図12は、ロウパスフィルタ素子の端子インピーダンスの計算値の他の一例である。
【図13】図13は、磁性体層の比透磁率の周波数特性の一例である。
【図14】図14は、試作したロウパスフィルタ素子の一例である。
【図15】図15は、試作したロウパスフィルタ素子のS21の実測値の一例である。
【図16】図16は、試作したロウパスフィルタ素子のS11の実測値の一例である。
【図17】図17は、試作したロウパスフィルタ素子のS21の計算値の一例である。
【図18】図18は、試作したロウパスフィルタ素子のS11の計算値の一例である。
【図19】図19は、試作したロウパスフィルタ素子の端子インピーダンスの計算値の一例である。
【図20】図20は、基本的なスイッチングモード電気回路に関する等価回路の一例である。
【図21】図21は、信号線路上の孤立電磁波の電界波形と信号線路の充電波形のイメージ一例である。
【図22】図22は、電源線路上の孤立電磁波の電界波形と電源線路の放電波形のイメージ一例である。
【図23】図23は、基本的なスイッチングモード電気回路に関する等価回路の他の一例である。
【図24】図24は、ロウパスフィルタ素子の入力端における孤立電界波の波形の計算結果の一例である。
【図25】図25は、ロウパスフィルタ素子の入力端における電位波形の計算結果の一例である。
【図26】図26は、ロウパスフィルタ中を孤立電磁波が進行するときの波形のイメージの一例である。
【図27】図27は、伝送線路構造チップを印刷配線基板に埋め込んだ状態の一例である。
【図28】図28は、ロウパスフィルタ素子を印刷配線基板に搭載した状態の一例である。
【0183】
1、5、6、9、12、21、22、27、28、29、30、31、32、36、37、38、39、40、41、43、44 導体箔
2、4、7、11、24、34 磁性体層
3、8、23、25、35、45、91 絶縁体層
26、33 二重層金属箔
42、94、110、112、113、115、116、118 ビア
51 ポリウレタン電線
52 カーボングラファイト層
53 銀ペースト層
60、71 直流電源
61、73、79 インバータ
62、74 PチャネルMOSFET
63、75 NチャネルMOSFET
64 電源線路
65、72、76、78 信号線路
66 整合終端抵抗
67、69、81,83 孤立電界波
68、70 電位波形
77 ロウパスフィルタ
82 孤立電界波の減衰包絡曲線
85、111 印刷配線基板
86、102 半導体集積回路
87、103、106、108 グランド端子
88、104、105、109 信号端子
89、97 導電性ペースト
90、114、119 信号トレース
92、101、117、120 グランドプレーン
93 グランドパッド
95 信号パッド
96 伝送線路構造チップ
107 ロウパスフィルタ素子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送線路構造チップが、第1の二重層金属箔と、第2の前記二重層金属箔と、第1の前記二重層金属箔と第2の前記二重層金属箔の間に形成される絶縁体層とから構成されて形成されることを特徴とする、ロウパスフィルタ
【請求項2】
請求項1記載のロウパスフィルタにおいて、ロウパスフィルタ素子が、前記伝送線路構造チップと、該伝送線路構造チップの線路長方向の両端にそれぞれ設けられる信号端子とグランド端子とから構成されて形成されることを特徴とする、ロウパスフィルタ
【請求項3】
請求項1から請求項2記載のロウパスフィルタにおいて、前記伝送線路構造チップが、前記二重層金属箔と、金属箔と、前記二重層金属箔と前記金属箔との間に形成される前記絶縁体層とから構成されて形成されることを特徴とする、ロウパスフィルタ
【請求項4】
請求項1から請求項3記載のロウパスフィルタにおいて、前記二重層金属箔が、磁性体層と前記導体箔とから構成されて形成されることを特徴とする、ロウパスフィルタ
【請求項5】
請求項1から請求項4記載のロウパスフィルタにおいて、前記磁性体層が、少なくとも鉄、ケイ素、ホウ素、リン、および炭素を含む金属ガラス合金を前記導体箔の一面に溶射することによって、20μmから100μmの厚さに形成されることを特徴とする、ロウパスフィルタ
【請求項6】
請求項1から請求項5記載のロウパスフィルタにおいて、前記磁性体層が、1000S/m以上の導電率を有するとともに、軟磁性特性を有し、少なくとも、1MHzにおいて700、10MHzにおいて500、100MHzにおいて300、1GHzにおいて200、10GHzにおいて50の比透磁率を有することを特徴とする、ロウパスフィルタ
【請求項7】
請求項1から請求項6記載のロウパスフィルタにおいて、前記絶縁体層が、絶縁体薄膜の一面に第1の前記二重層金属箔上の前記磁性体層を接して配置し、前記絶縁体薄膜の他面に第2の前記二重層金属箔上の前記磁性体層を接して配置し、または前記絶縁体薄膜の一面に前記二重層金属箔上の前記磁性体層を接して配置し、前記絶縁体薄膜の他面に前記導体箔を接して配置し、少なくとも前記絶縁体薄膜を加熱した状態で、前記第1の二重層金属箔と前記第2の二重層金属箔の間、または前記二重層金属箔と前記導体箔の間に圧力を加えることによって形成されることを特徴とする、ロウパスフィルタ
【請求項8】
請求項1から請求項7記載のロウパスフィルタにおいて、前記絶縁体薄膜が、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、またはこれらの混合物もしくは変性物から選択される1種以上の樹脂を主剤とし、接着剤シートとして形成されることを特徴とする、ロウパスフィルタ
【請求項9】
請求項1から請求項8記載のロウパスフィルタにおいて、前記ロウパスフィルタ素子および前記伝送線路構造チップが、該ロウパスフィルタ素子および該伝送線路構造チップに直列に接続して使用される伝送線路の特性インピーダンスに対して−10%から+90%の範囲内にある、前記特性インピーダンス値を有するように、少なくとも、該伝送線路構造の外形寸法と、前記磁性体層の厚さと、該磁性体層の導電率と、該磁性体層の透磁率と、前記絶縁体層の厚さと、該絶縁体層の誘電率が決定されて形成されることを特徴とする、ロウパスフィルタ
【請求項10】
請求項1から請求項9記載のロウパスフィルタにおいて、前記ロウパスフィルタ素子および前記伝送線路構造チップが、スイッチングモード伝送線路に直列に接続して使用された状態で、該スイッチングモード伝送線路を駆動するスイッチング素子が切断状態から導通状態に変化する時間と円周率の積の逆数として求められる周波数において、−10dB以下の透過係数と、−10dB以下の反射係数を有するように、少なくとも、該伝送線路構造の外形寸法と、前記磁性体層の厚さと、該磁性体層の導電率と、該磁性体層の透磁率と、前記絶縁体層の厚さと、該絶縁体層の誘電率が決定されて形成されることを特徴とする、ロウパスフィルタ
【請求項11】
請求項1から請求項10記載のロウパスフィルタにおいて、前記ロウパスフィルタ素子が印刷配線基板上に搭載して使用され、前記伝送線路構造チップが前記印刷配線基板の絶縁体層中または半導体集積回路のオンチップインターコネクト構造の前記絶縁体層中に埋め込んで使用されることを特徴とする、ロウパスフィルタ
【請求項12】
請求項1から請求項11記載のロウパスフィルタにおいて、前記スイッチングモード伝送線路が、ディジタル信号伝送線路、スイッチング電力伝送線路を含む伝送線路であり、前記スイッチング素子が、トランジスタまたは前記半導体集積回路中のインバータや前記トランジスタを含み、前記スイッチングモード伝送線路上に2つ以上の定常状態を有する電位変化を生じさせることを特徴とする、ロウパスフィルタ

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−176558(P2011−176558A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38557(P2010−38557)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(706001123)株式会社アイキャスト (37)
【Fターム(参考)】