説明

ロジウムの回収方法

【課題】ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム溶液から、高収率でロジウムスポンジを回収する方法を提供する。
【解決手段】 ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム水溶液にギ酸を添加して、ロジウムをロジウムブラックとして還元回収した後、ロジウムブラックを水素雰囲気中で焼成することによりロジウムスポンジを得る、ロジウムの回収方法において、
ロジウムブラックを水洗することなく焼成することにより、より高収率でロジウムスポンジを得る、ロジウムの回収方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム溶液から、ギ酸を添加してロジウムブラックを回収した後、水素雰囲気下で焼成することにより、ロジウムスポンジを高収率で回収する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム溶液にギ酸を添加して、ロジウムブラックとしてロジウムを回収する技術は、特公 平1-30896「貴金属含有溶液からの貴金属抽出方法」に開示されている。
【0003】
しかしながら、ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム溶液から、ロジウムスポンジを高収率で得る方法については開示されていない。
【0004】
本発明者らは、ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム溶液から、ロジウムをギ酸で還元回収して得たロジウムブラックを、水素雰囲気下において焼成することにより、不純物品位の低いロジウムスポンジを得る方法において、ロジウムブラックを水洗しないことにより、不純物品位は同等で、より高収率でロジウムスポンジが得られることを知見した。
【特許文献1】特公 平1-30896「貴金属含有溶液からの貴金属抽出方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム溶液から、高収率でロジウムスポンジを回収する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく以下の発明をなした。
即ち、本発明は、
(1)ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム水溶液にギ酸を添加して、ロジウムをロジウムブラックとして還元回収後に、水素雰囲気下で焼成し、ロジウムスポンジを得る操作において、ロジウムブラックの水洗を実施せずに焼成することにより、より高収率で、不純物品位の低いロジウムスポンジを得る、ロジウムの回収方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のロジウム回収方法は、
(1)ロジウムブラックの水洗を実施することなく焼成することにより、水洗によるロジウムの溶解ロスを回避し、ロジウムをより高収率で回収できる。
(2)なおかつ、不純物品位は水洗を実施した場合と同等のロジウムスポンジを得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明に関して、詳細に説明する。
ロジウムメタルを得る方法として、ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム水溶液にギ酸を添加して、ロジウムをロジウムブラックとして還元回収後に、水素雰囲気下で焼成するものがあるが、ギ酸還元後液より濾別回収したロジウムブラックには塩酸及びギ酸が付着しており、そのまま焼成すると、焼成炉が例えばSUS製の場合、設備の腐食によりロジウムが汚染される恐れがあり、また、焼成後のロジウムに塩素が残留する恐れもあるため、焼成する前にロジウムブラックを水洗する必要があると考えられていた。
【0009】
一方、ロジウムブラック自体は水洗により溶解することはないが、本発明者らは、上記方法で濾別回収したロジウムブラックを水洗すると、一部が溶解し、ロジウムのロスが発生することを知見した。
これは、濾別回収物の一部に再晶析したと思われるヘキサクロロロジウム酸アンモニウムが混入しているためと考えられ、ヘキサクロロロジウム酸アンモニウムは水に溶解するため、水洗時に溶解ロスが発生すると思われる。
この水洗時のロジウム溶解ロスは、10%前後生じる。
【0010】
また、ギ酸還元によりロジウムブラックを濾別回収するに当り、一部ヘキサクロロロジウム酸アンモニウムとしても濾別回収することで、濾液へのロジウムのロスが低減できる。
このような、ロジウムブラック水洗時のロジウム溶解ロスに対して、ロジウムブラックの水洗をすることなく、還元雰囲気中で焼成することにより、水洗によるロジウム溶解ロスをゼロにすることができる。
【0011】
また、水洗を実施しない場合、ロジウムブラックへのヘキサクロロロジウム酸アンモニウムの混入によるロジウムスポンジの不純物品位の上昇が懸念されたが、水洗なしであっても、水洗を実施した場合と同等の不純物品位のロジウムスポンジを得ることができることがわかった。
【0012】
これは、第1に、ギ酸還元前液に含まれるロジウム以外の金属(Pt,Pd,Ru,Ir,Cr,Fe,Ni,Al,Cu,Pb、Ag等)濃度が、1mg/l以下と十分に低いために、還元後液のロジウムブラック付着液からの不純物混入が少ない。
第2に、ロジウムブラック付着液として混入する塩酸については、還元雰囲気中750〜850℃で焼成することにより、蒸発するためロジウムスポンジに残留することはない。
【0013】
塩酸による設備の腐食については、ロジウムが汚染される恐れのある部分について、例えばアルミナ等の材質を用いることで、設備腐食によるロジウムへの不純物混入を防止できる。
【0014】
本発明について、図1、図2に示すフローシートに沿って説明する。実施例及び比較例の分析は、溶液についてはICP発光分光分析装置により、ロジウムスポンジについてはグロー放電質量分析装置により行なった。
【実施例】
【0015】
本発明で使用したRh含有溶液の組成を表1に示す。


【表1】

上記表1の液1Lに、Rhに対する還元当量に対して、3当量に相当するギ酸107mlを添加し、90℃で加熱攪拌後、室温まで放冷した後ろ過処理を行った。
その結果、ろ液中のRhは、0.4g/lと少なく、RhブラックとしてRhを99.2%
回収した。
その後、水洗を行わずに、Rhブラックを、水素5%とアルゴン95%の混合ガス還元雰囲気中において800℃で2時間焼成し、ロジウムスポンジを得た。なお、焼成は管状炉を用い、鉄等の汚染を未然に防止するため、アルミナ管を用いた。
【0016】
回収したロジウムスポンジは、51.9gであり、収率は、98.7%と高い値であった。
また不純物も162ppmときわめて低い値であった。
表2に、上記の各値を示した。
【表2】

また、表3に不純物の各組成等を示す。
【0017】




【表3】









(比較例1)
【0018】
上記表1の液1Lに、Rhに対する還元当量に対して、3当量に相当するギ酸107mlを添加し、90℃で加熱攪拌後、室温まで放冷した後ろ過処理を行った。
その結果、ろ液中のRhは、0.4g/lと少なく、RhブラックとしてRhを99.2%
回収した。
その後、水洗を行った。
この際のろ液中へのロスは、Rh2.7g/lと9.5%のロスと成った。
水洗後、Rhブラックを、水素5%とアルゴン95%の混合ガス還元雰囲気中において800℃で2時間焼成し、ロジウムスポンジを得た。
【0019】
回収したロジウムスポンジは、46.8gであり、収率は89.0%と、実施例と比較し低い値であった。
また不純物は204ppmと実施例と同程度の値であった。
表2に、上記の各値を示した。
また、表3に不純物の各組成等を示す。
【0020】
(比較例2)
実施例と同様な条件で、SUS製の管を用いて点のみ異なる条件にて、焼成を行ったところ、ロジウムスポンジ中に鉄が40ppm含まれ、好ましい製品が得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例の処理フローを示す。
【図2】本発明の比較例の処理フローを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム水溶液にギ酸を添加して、ロジウムをロジウムブラックとして還元回収した後、ロジウムブラックを水素雰囲気中で焼成することによりロジウムスポンジを得る、ロジウムの回収方法において、
ロジウムブラックを水洗することなく焼成することにより、より高収率でロジウムスポンジを得る、ロジウムの回収方法。
【請求項2】
請求項1における焼成に際し、アルミナ製の焼成管を用い、鉄等の汚染を未然に防止することを特徴とするロジウムの回収方法。






















【図1】
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【図2】
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