説明

ロックビット

【課題】坑壁からの面圧を低減、かつ振動発生を抑制することができるロックビットを提供する。
【解決手段】ジャーナル部2を有するビットボディ4と、前記ビットボディ4に対して回転可能なコーン部6と、前記コーン部6とジャーナル部2の間の軸受部8と、前記コーン部6とジャーナル部2の間に設けられ、前記軸受部8を密封するためのシール10とを備えるトリコンビットと、前記トリコンビットの外周に固定され、先端に坑井の側壁と接触するリングビット32が設けられている円筒形のリング部30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロックビットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
坑井掘削用のロックビットとして、従来からトリコンビットが用いられている。
トリコンビットは、図2に示すようにジャーナル部2を有するビットボディ4と、ビットボディ4に対して回転可能なコーン部6と、コーン部6とジャーナル部2の間の軸受部8と、コーン部6とジャーナル部2の間に設けられ、軸受部8を密封するためのシール10を備える。コーン部6には多数の超硬チップ12、14が埋め込まれている。この超硬チップは坑井の底部と接触する超硬チップ12と、坑井の側壁と接触するゲージチップ14を含む。コーン部6には、ゲージチップ14の内側(ビットボディ4とジャーナル部2の方向)に坑井の側壁と接触するゲージサーフェイス16が形成され、このゲージサーフェイス16にも超硬チップ(ゲージサーフェイスチップ)18が配置されている。ゲージサーフェイス16に配置されている超硬チップ18は、超耐摩耗性を有するが、坑壁を研削しないでチッピング、圧壊させている。図2に示すように軸受部8にはボールベアリング8aとメタルベアリング8bが設けられている。
【0003】
特許文献1ではゲージチップ及びゲージサーフェイスチップの耐摩耗性強化のため、天然または人造ダイヤの超高圧手法での検討が示され、特許文献2ではゲージサーフェイスに多結晶ダイヤと超硬合金チップを配して耐摩耗性を強化している。特許文献1も特許文献2もチップが積極的に坑壁を削るようには設定していない。
【0004】
特許文献3には坑井の掘削径を一定にするためにゲージサーフェイスを維持する試みが開示されている。特許文献3においては、多結晶ダイヤ(PDC、TSP)、CBNなどを超硬合金と複雑に組み合わせて、かつチップ形状を整えて坑壁を切削する試みを示しているが、これらはゲージサーフェイスの耐摩耗性を目的とした強化策であり、応力、振動を抑制するためのものではなく、従って、軸受部8やシール10を保護する目的のものではない。
【0005】
シール10に関しては、その構造に関する研究(特許文献4では2重シールについての強化策が提案されている。)と、シール材料の研究(例えば特許文献5ではOリングの表面改質が提案されている。)に重点が置かれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5119714号明細書
【特許文献2】米国特許第4940099号明細書
【特許文献3】米国特許第5346026号明細書
【特許文献4】米国特許第6431293号明細書
【特許文献5】米国特許第5456327号明細書
【特許文献6】米国特許第6837317号明細書
【特許文献7】国際公開2006/080302号公報 (米国特許第637981号明細書)
【特許文献8】日本国特願第2009−142837号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
坑井掘削用ロックビットの懸案の一つに、泥水がシール10を通過して軸受部8に進入し、この泥水が研磨材になってシール10、ベアリング8a、8bを摩滅させることがある。ベアリング8a、8bを摩滅すると、コーン部6の回転が歪み、超硬チップ12、14が岩石と滑りを生じて磨耗が促進する。さらには、ジャーナル部2からコーン部6が抜け落ちる重大な事故を引き起こすおそれがある。
【0008】
掘削中のビットに掛る坑井側壁からの圧力(図2のF)はコーン部6が抜け落ちる方向(水平方向)に働く。この坑壁からの圧力は全てベアリング8a、8bが受け止めている。ロックビットにおいては、ゲージサーフェイス16の摩耗防止のためにゲージサーフェイス16に超硬チップ(時にはPCDチップ)18等を配置している。この超硬チップ18等は1mmほど頭出し状態で圧入され、コーン部6の回転に伴い坑壁岩盤を砕き、押し潰している。無理やりに側壁を押し潰す事によってコーン部6は坑壁から極めて大きな圧力を受ける。これらの水平方向の圧力Fは全てベアリング8a、8bが受け止めるため、ベアリング8a、8bには急激に摩耗、疲労を引き起こされる。
【0009】
また、ビットボディ4は長く伸びた先端部にジャーナル部2を形成してコーン部6を支える仕組みになっているが、見掛けほど頑丈ではなく、ビットボディ4の先端部には過大な力の集中があり、坑壁からの圧力でたわみを生じコーン部6の回転を歪ませて超硬チップ14、16の磨耗を促進する。まれにはビットボディ4の破損を引き起こす事例もある。
【0010】
コーン部6の回転に伴いゲージサーフェイス16に埋め込まれた超硬チップ18の凸部が坑壁を接線方向に叩き、岩盤にチッピングを起こして掘削するが、この時コーン部6は激しい振動を発生する。この振動の方向は水平であるため、シール10への土砂噛み込みを助長している。これはシール10の摩滅と、土砂の軸受部8への進入、そしてその土砂が研摩材となって軸受けおよびベアリングを摩滅させる。
【0011】
本発明の主な目的は、坑壁からの面圧を低減、かつ振動発生を抑制することができるロックビットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ジャーナル部2を有するビットボディ4と、ビットボディに対して回転可能なコーン部6と、コーン部とジャーナル部の間の軸受部8と、コーン部とジャーナル部の間に設けられ、軸受部を密封するためのシール10とを備えるトリコンビットと、このトリコンビットの外周に固定され、先端に坑井の側壁と接触するリングビット32が設けられている円筒形のリング部30と、を備える、ロックビットである。トリコンビットのコーン部6には、従来例と異なり、坑井の側壁と接触するゲージチップ14が設けられておらず、坑井の底部と接触する超硬チップ12のみが設けられている。
リングビットにダイヤモンド複合材料を設置、好ましくは広く滑らかに設置することができる。
リングビットに超硬合金或いは鉄系金属などと積層した文献7,8記載のダイヤモンド複合材料を設置、好ましくは広く滑らかに設置することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、掘削坑の外周部を円筒状のリング部30のビット32で研削して、残った中央部の円柱状岩石を通常のトリコンビットで掘削するとすれば、トリコンビットのゲージサーフェイスに坑壁からの圧力は掛からない。
【0014】
ビット外周部は回転スピードが速く、リングビットの研削条件にマッチングするが、中央部は回転速度が遅いために、従来例によるトリコンビットで砕きながら掘削すると理想的である。また、円筒状のリング部30は、掘削屑がシール10への侵入することを防ぎ、さらに冷却効率が高まることで、地熱などの高温からシールを保護する。この場合トリコンビットは掘削径を維持する役目を必要とせず、(リングビットに役目を移管する)ゲージサーフェイス磨耗などの心配は不要である。
【0015】
さらにシールには平行方向の圧力と振動は掛からず、ビットコーン部は理想的な環境で回転できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例によるロックビットの断面図である。
【図2】従来例によるロックビットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に基づいて、本発明の実施例によるロックビットを説明する。このトリコンビットは、ジャーナル部2を有するビットボディ4と、ビットボディ4に対して回転可能なコーン部6と、コーン部6とジャーナル部2の間の軸受部8を有する。軸受部8はボールベアリング8aとメタルベアリング8bを備える。ロックビットは更に、コーン部6とジャーナル部2の間に設けられ、軸受部8を密封するためのシール10を備える。
【0018】
ビッドボディ4の外周部にリング部30が設けられている。このリング部30の先端にはリングビット32が設けられている。また、トリコンビットのコーン部6には坑井の側壁と接触するゲージチップ、ゲージサーフェイスチップが設けられておらず、坑井の底部と接触する超硬チップ12のみが設けられている。
【0019】
リングビット32には、ダイヤモンド複合材料(図示せず)が設置、好ましくは広く滑らかに設置されている。
このダイヤモンド複合材料としては前述した製造方法で製造した特許文献7或いは特許文献8に記載のダイヤモンド複合材料を用いることができる。特に、特許文献8に記載のダイヤモンド複合材料を超硬合金、鉄系金属などと積層させてリングビット32に設置、好ましくは広く滑らかに設置することができる。この複合材料の厚さはリングビット32の厚さ(例えば1〜5cm)とほぼ同じにすることができる。
【0020】
この実施例のロックビットによれば、掘削坑の外周部を円筒状のリング部30の先端のリングビット32で研削して、残った中央部の円柱状岩石を通常のリング部30の内側のトリコンビットで掘削するとすれば、トリコンビットのゲージサーフェイス16に坑壁からの圧力は掛からない。
【0021】
ビット外周部は回転スピードが速く、リングビットの研削条件にマッチングするが、中央部は回転速度が遅いために、従来例によるトリコンビットで砕きながら掘削すると理想的である。また、円筒状のリング部30は、掘削屑がシール10への侵入することを防ぎ、さらに冷却効率が高まることで、地熱などの高温からシール10を保護する。
【0022】
この事から、トリコンビットの外周部にリングビットを設置して、リングビット32とトリコンビットを融合した形状も有効である。(以後:融合ビット)
この場合トリコンビットは掘削径を維持する役目を必要とせず、(リングビットに役目を移管する)ゲージサーフェイス磨耗などの心配は不要である。
さらにシール10には平行方向の圧力と振動は掛からず、リング部30は理想的な環境で回転できる。
【符号の説明】
【0023】
2 ジャーナル部
4 ビットボディ
6 コーン部
8 軸受部
8a ボールベアリング
8b メタルベアリング
10 シール
12、14 超硬チップ
14 ゲージチップ
16 ゲージサーフェイス
18 ゲージサーフェイスチップ
20 ダイヤモンド複合材料
30 リング部
32 リングビット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャーナル部を有するビットボディと、
前記ビットボディに対して回転可能なコーン部と、
前記コーン部とジャーナル部の間の軸受部と、
前記コーン部とジャーナル部の間に設けられ、前記軸受部を密封するためのシールとを備えるトリコンビットと、
前記トリコンビットの外周に固定され、先端に坑井の側壁と接触するリングビットが設けられている円筒形のリング部と、を備える、ロックビット。
【請求項2】
前記リングビットにダイヤモンド複合材料を設置した、請求項1記載のロックビット。
【請求項3】
前記ダイヤモンド複合材料は、超硬合金と積層して設置されている、請求項1または2に記載のロックビット。
【請求項4】
前記ダイヤモンド複合材料は、鉄系金属と積層して設置されている、請求項1または2に記載のロックビット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−197667(P2012−197667A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−88438(P2012−88438)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【分割の表示】特願2010−13040(P2010−13040)の分割
【原出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(595045886)株式会社ティクスホールディングス (9)
【Fターム(参考)】