説明

ロック機構付きシート体供給装置

【課題】 画像形成装置の側方に設置され、ロック状態ではシート体が不所望に出し入れされることを防ぐことができ、しかもロック解除状態ではシート体の出し入れおよび詰ったシート体の取除きを容易に行うことができるロック機構付きシート体供給装置を提供する。
【解決手段】 可動台4は、画像形成装置2の側部11に対して近接離反する方向Aにスライド変位可能に、基台3に設けられる。可動台ロック機構10は、前記側部11に対する可動台4のスライド変位を近接位置で阻止するロック状態と前記側部11に対する可動台4のスライド変位を許容するロック解除状態とに切換え可能である。カセット部5には、出し入れ口16が形成される。この出し入れ口16は、カバー部7によって開閉可能に覆われる。カバー部ロック機構9は、カバー部7の開放を阻止するロック状態とカバー部7の開放を許容するロック解除状態とに切換え可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック機構付きシート体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置の印刷品位は低く、このような画像形成装置で写真などの画像を印刷した場合、銀塩写真方式との相違は明らかであった。したがって一般的には、画像形成装置では、写真などの画像の印刷は行われていなかった。
【0003】
近年、画像形成装置の印刷品位は、高解像度化によって向上している。画像形成装置の解像度は、従来の主流であった300dpiから、現在では1,200dpiへと高解像度化している。このように画像形成装置が高解像度化するに従い、写真などの画像を画像形成装置で印刷したいという要求が増加している。
【0004】
写真などの画像を印刷するためには、コート紙が用いられる。コート紙は、用紙を表面コートしたものである。このようなコート紙を用いることによって、鮮明な画像が得られる。コート紙は、市場では普通紙に比べて高価な用紙として市販されている。
【0005】
このような高価な用紙を用いて印刷を行う場合、用紙の無駄を省くために、一般的には、画像形成装置の側部に装着されている手差しトレイに、必要な枚数の用紙を積載して、印刷を行う。このようにして印刷を行う場合、写真などの画像を多量に印刷するときおよび写真などの画像を頻繁に印刷するときには、手差しトレイに用紙を補給する頻度が多くなり、用紙の補給作業が煩わしい。
【0006】
そこで、ユーザの要求に応じて、手差しトレイに代えてシート体供給装置が画像形成装置の側部に装着することが考えられる。シート体供給装置は、コート紙専用の給紙装置として用いられる。シート体供給装置は、シート体であるコート紙を収容し、コート紙を1枚ずつ、画像形成装置に供給する。
【0007】
近年、シート体である用紙を収容するカセット部である給紙カセットに、この給紙カセットの開閉を規制するロック機構を設けることで、給紙カセットに収容される用紙の管理が行われている。たとえば特許文献1には、複数の給紙カセットを有し、1つの給紙カセットを施錠することで、他の給紙カセットも施錠することができる給紙装置が開示される。また特許文献2には、複数の給紙カセットを有し、各給紙カセットにロック手段がそれぞれ設けられ、給紙カセットごとにロック手段のロック状態とロック解除状態を設定することができる画像形成装置が開示される。特許文献1および2に開示される技術では、給紙カセットに対して用紙が不所望に出し入れされることを防ぐことができる。
【0008】
【特許文献1】特開2004−292144号公報
【特許文献2】特開2001−265172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
手差しトレイの場合は、シート体の出し入れおよび詰ったシート体の取除きが容易である。これに対して前記シート体供給装置の場合は、シート体の収容空間およびシート体の搬送経路が外部に露出していないので、シート体の出し入れおよび詰ったシート体の取除きが困難である。
【0010】
特許文献1および2に開示される技術では、画像形成装置の下部に配置されるフロントアクセス構造の給紙装置が想定されており、画像形成装置の側部に手差しトレイに代えて装着される前記シート体供給装置は想定されていない。このような特許文献1および2に開示される技術を前記シート体供給装置に適用した場合、シート体が不所望に出し入れされることは防ぐことができるけれども、シート体の出し入れおよび詰ったシート体の取除きについては容易化することができない。
【0011】
本発明の目的は、画像形成装置の側方に設置され、ロック状態ではシート体が不所望に出し入れされることを防ぐことができ、しかもロック解除状態ではシート体の出し入れおよび詰ったシート体の取除きを容易に行うことができるロック機構付きシート体供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、シート体に画像を形成する画像形成装置の側部に設けられる基台と、
前記側部に対して近接離反する方向にスライド変位可能に、基台に設けられる可動台と、
可動台に設けられ、画像形成装置によって画像が形成されるべきシート体を収容し、シート体を出し入れするための出し入れ口が形成されるカセット部と、
可動台とともにスライド変位可能に設けられ、カセット部に収容されるシート体を1枚ずつ、画像形成装置に搬送する搬送部と、
前記側部に対する可動台のスライド変位を搬送部によるシート体の搬送が可能な位置で阻止するロック状態と前記側部に対する可動台のスライド変位を許容するロック解除状態とに切換え可能に構成される可動台ロック機構と、
カセット部の前記出し入れ口を開閉可能に覆うカバー部と、
カバー部の開放を阻止するロック状態とカバー部の開放を許容するロック解除状態とに切換え可能に構成されるカバー部ロック機構とを含むことを特徴とするロック機構付きシート体供給装置である。
【0013】
また本発明は、前記カセット部は、前記側部に近い側の部分が、前記側部に対する前記可動台のスライド方向に直交する水平な角変位軸線まわりに角変位可能に、前記可動台に設けられ、
前記可動台に対する前記カセット部の角変位を前記搬送部によるシート体の搬送が可能な位置で阻止するロック状態と前記可動台に対する前記カセット部の角変位を許容するロック解除状態とに切換え可能に構成されるカセット部ロック機構をさらに含むことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記カセット部ロック機構は、前記可動台に設けられる係合部と、前記カセット部に設けられ、係合部が係合される被係合部とを有することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記カセット部ロック機構は、
前記可動台に設けられ、電磁力による駆動力によって前記係合部を駆動させる電磁駆動源をさらに有し、
外部から隔離するように設けられることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記カバー部ロック機構は、カセット部ロック機構と連動することを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記可動台ロック機構は、前記カセット部の角変位によって状態を切換え可能に構成されることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記可動台ロック機構は、前記カセット部に設けられる係合部と、前記側部に設けられ、係合部が係合される被係合部とを有することを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記搬送部は、シート体が搬送される搬送経路に関して上下に対を成して、少なくとも一方のローラが回転駆動されるローラ対を有し、
ローラ対の各ローラは、カセット部が搬送部によるシート体の搬送が可能な位置から角変位したとき、互いに離間することを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記ローラ対は、可動台に設けられる可動台側ローラと、カセット部に設けられるカセット部側ローラとを有することを特徴とする。
【0021】
また本発明は、前記基台と前記可動台との間には、前記可動台を前記基台に対してスライド変位させるためのスライド機構が設けられることを特徴とする。
【0022】
また本発明は、前記スライド機構は、ボールリテナーによって保持される多数のボールを介して複数のスライド部材が互いにスライド変位可能に連結されて構成されることを特徴とする。
また本発明は、前記シート体は、コート紙であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、画像形成装置の側部には、基台が設けられる。基台には、可動台が設けられる。可動台には、カセット部が設けられる。カセット部には、画像形成装置によって画像が形成されるべきシート体が収容される。カセット部に収容されるシート体は、搬送部によって1枚ずつ、画像形成装置に搬送されて、画像形成装置によって画像が形成される。
【0024】
可動台は、前記側部に対して近接離反する方向にスライド変位可能に、基台に設けられる。可動台ロック機構は、前記側部に対する可動台のスライド変位を搬送部によるシート体の搬送が可能な位置で阻止するロック状態と前記側部に対する可動台のスライド変位を許容するロック解除状態とに切換え可能に構成される。ロック状態では、搬送部によってシート体を確実に搬送することができる。ロック解除状態では、可動台をスライド変位させ、この可動台とともに搬送部をスライド変位させて、搬送部の搬送方向下流側を開放させることができ、これによって搬送部に詰ったシート体を、搬送部の搬送方向下流側から容易に取除くことができる。
【0025】
カセット部には、出し入れ口が形成される。カセット部に対しては、前記出し入れ口を介して、シート体が出し入れされる。カセット部の前記出し入れ口は、カバー部によって開閉可能に覆われる。カバー部ロック機構は、カバー部の開放を阻止するロック状態とカバー部の開放を許容するロック解除状態とに切換え可能に構成される。ロック状態では、カセット部の前記出し入れ口を介してシート体が不所望に出し入れされることを防ぐことができる。ロック解除状態では、カバー部を開放することができ、これによってカセット部を取出すことなく、カセット部の前記出し入れ口を介してシート体を出し入れすることができる。
【0026】
また本発明によれば、カセット部は、前記側部に近い側の部分が、前記側部に対する可動台のスライド方向に直交する水平な角変位軸線まわりに角変位可能に、可動台に設けられる。カセット部ロック機構は、可動台に対するカセット部の角変位を搬送部によるシート体の搬送が可能な位置で阻止するロック状態と可動台に対するカセット部の角変位を許容するロック解除状態とに切換え可能に構成される。ロック状態では、搬送部によってシート体を確実に搬送することができる。ロック解除状態では、カセット部を角変位させて、搬送部の搬送方向上流側を開放させることができ、これによって搬送部に詰ったシート体を、搬送部の搬送方向上流側から容易に取除くことができる。
【0027】
また本発明によれば、カセット部ロック機構は、可動台に係合部が設けられ、カセット部に被係合部が設けられる。係合部が被係合部に係合した状態がロック状態であり、係合部と被係合部との係合が解除された状態がロック解除状態である。このような本発明では、簡単な構成で、カセット部ロック機構を実現することができる。
【0028】
また本発明によれば、可動台には、電磁駆動源が設けられる。電磁駆動源は、電磁力による駆動力によって係合部を駆動させ、これによってカセット部ロック機構の状態を切換えることができる。このような電磁駆動源を有するカセット部ロック機構は、外部から隔離するように設けられるので、手指などによってカセット部ロック機構の状態が不所望に切換えられてしまうことを防ぐことができる。
【0029】
また本発明によれば、カバー部ロック機構とカセット部ロック機構とが連動するので、カバー部ロック機構のロック解除とカセット部ロック機構のロック解除とを個別に行う必要がなく、各ロック機構のロックの解除に要する手間を軽減することができる。
【0030】
また本発明によれば、可動台ロック機構は、カセット部の角変位によって状態を切換え可能に構成されるので、可動台ロック機構の状態を容易に切換えることができる。
【0031】
また本発明によれば、可動台ロック機構は、カセット部に係合部が設けられ、前記側部に被係合部が設けられる。係合部が被係合部に係合した状態がロック状態であり、係合部と被係合部との係合が解除された状態がロック解除状態である。このような本発明では、簡単な構成で、可動台ロック機構を実現することができる。
【0032】
また本発明によれば、搬送部は、ローラ対を有する。ローラ対は、シート体が搬送される搬送経路に関して上下に対を成して、少なくとも一方のローラが回転駆動される。このようなローラ対によってシート体を挟持し、少なくとも一方のローラを回転駆動することによって、シート体を搬送することができる。
【0033】
ローラ対の各ローラは、カセット部が搬送部によるシート体の搬送が可能な位置から角変位したとき、互いに離間する。これによってローラ対によるシート体の挟持が解除される。
【0034】
したがって搬送部に詰ったシート体を取除くにあたって、シート体をローラ対から円滑に引抜くことができ、シート体の取除きに対する作業性を向上することができる。またシート体を引抜く際にローラ対に大きな負荷がかかることがなく、したがってローラ対の加圧力が変わってしまうことを防ぐことができる。さらにシート体を引抜く際にシート体に大きな引張力が作用することがなく、したがってシート体が破断してシート体の一部が搬送部に残ってしまうことを防ぐことができる。
【0035】
また本発明によれば、ローラ対は、可動台側ローラとカセット部側ローラとを有する。可動台側ローラは、可動台に設けられ、カセット部側ローラは、カセット部に設けられる。したがってカセット部が搬送部によるシート体の搬送が可能な位置から角変位したとき、ローラ対の各ローラが互いに離間する。本発明では、簡単な構成で、このようなローラ対を実現することができる。
【0036】
また本発明によれば、基台と可動台との間には、可動台を基台に対してスライド変位させるためのスライド機構が設けられるので、可動台を基台に対して円滑にスライド変位させることができる。
【0037】
また本発明によれば、ボールリテナーによって保持される多数のボールを介して複数のスライド部材が互いにスライド変位可能に連結されて、スライド機構が構成される。基台と可動台との間には、このようなスライド機構が設けられるので、可動台を基台に対して、より一層に円滑にスライド変位させることができる。
【0038】
また本発明によれば、シート体としてコート紙が用いられる。本発明のロック機構付きシート体供給装置は、コート紙専用の給紙装置として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1は、本発明の実施の一形態であるロック機構付きシート体供給装置1の構成を示す断面図である。本実施の形態のロック機構付きシート体供給装置(以下、単に「シート体供給装置」という)1は、シート体に画像を形成する画像形成装置2の側方に設置される。シート体供給装置1は、画像形成装置2によって画像が形成されるべきシート体を1枚ずつ、画像形成装置2に供給するために用いられる。本実施の形態では、シート体はコート紙であり、シート体供給装置1は、コート紙専用の給紙装置142として用いられる。
【0040】
シート体供給装置1は、画像形成装置2にオプションとして装備される。画像形成装置2には、手差しトレイ101(図10参照)が標準装備されている。シート体供給装置1は、手差しトレイ101に代えて、画像形成装置2の側部11に装着される。ユーザは、必要に応じて、手差しトレイ101とシート体供給装置1とを選択的に、画像形成装置2の側部11に装着することができる。
【0041】
シート体供給装置1は、基台3と、可動台4と、カセット部5と、搬送部6と、カバー部7と、カセット部ロック機構8と、カバー部ロック機構9と、可動台ロック機構10とを含む。
【0042】
基台3は、画像形成装置2の側部11に設けられる。可動台4は、前記側部11に対して近接離反する方向Aにスライド変位可能に、基台3に設けられる。本実施の形態では、前記側部11に対する可動台4のスライド方向Aは、画像形成装置2が設置される設置面に対して水平な方向である。可動台4は、前記側部11に対して近接した近接位置と、前記側部11から離反した離反位置とにわたってスライド変位可能である。
【0043】
基台3と可動台4との間には、可動台4を基台3に対してスライド変位させるためのスライド機構12が設けられる。これによって可動台4を基台3に対して円滑にスライド変位させることができる。スライド機構12は、ボールリテナーによって保持される多数のボールを介して複数のスライド部材が互いにスライド変位可能に連結されて構成される。基台3と可動台4との間には、このようなスライド機構12が設けられるので、可動台4を基台3に対して、より一層に円滑にスライド変位させることができる。
【0044】
カセット部5は、画像形成装置2によって画像が形成されるべきシート体を収容する。カセット部5には、シート体を収容する収容空間15が形成される。図示しないけれども、収容空間15には、シート体の先端を押さえる先端押さえ板と、シート体の後端を押さえる後端押さえ板と、シート体の両側端をそれぞれ押さえる一対の側端押さえ板とが設けられる。また収容空間15には、収容空間15内の所定の供給位置にシート体を上昇させる積載板などがさらに設けられる。このようなカセット部5には、シート体を出し入れするための出し入れ口16が形成される。前記出し入れ口16は、上方に臨んで開放される。
【0045】
カセット部5は、前記側部11に近い側の部分17が、前記側部11に対する可動台4のスライド方向Aに直交する水平な角変位軸線L11まわりに角変位可能に、可動台4に設けられる。カセット部5は、前記設置面に対して水平に配置される水平位置と、前記設置面に対して傾斜して配置される傾斜位置とにわたって角変位可能である。傾斜位置では、水平位置に比べて、前記側部11から遠い側の部分18が下降している。
【0046】
搬送部6は、カセット部5に収容されるシート体を1枚ずつ、画像形成装置2に搬送する。このような搬送部6は、可動台4とともにスライド変位可能に設けられる。搬送部6は、ピックアップ部分21と、ピックアップ部分21よりも搬送方向下流側に設けられる分離部分22と、分離部分22よりも搬送方向下流側に設けられる搬送部分23とを有する。
【0047】
ピックアップ部分21は、カセット部5に収容されるシート体を1枚ずつ取出して、分離部分22に搬送する。ピックアップ部分21は、シート体が搬送される搬送経路に垂直な幅方向に平行な回転軸線まわりに回転駆動されるピックアップローラ24を有する。ピックアップローラ24は、カセット部5に収容される最上位のシート体に接触する接触位置と、接触位置よりも上方に退避する退避位置とにわたって変位される。このようなピックアップローラ24を、接触位置に変位させた状態で回転駆動することによって、カセット部5に収容される最上位のシート体を、分離部分22に搬送することができる。
【0048】
分離部分22は、ピックアップ部分21から搬送されてきたシート体を分離して、搬送部分23に搬送する。分離部分22は、搬送経路に関して上下に対を成して、少なくとも一方のローラが回転駆動されるローラ対である分離ローラ対を有する。このような分離ローラ対によってシート体を挟持し、少なくとも一方のローラを回転駆動することによって、シート体を搬送することができる。
【0049】
分離ローラ対は、搬送経路に垂直な幅方向に平行な回転軸線まわりに回転駆動される駆動ローラ26と、駆動ローラ26の軸線に平行な回転軸線まわりに回転可能に設けられる従動ローラ27とを有する。従動ローラ27には、たとえばトルクリミッタが備えられる。このトルクリミッタは、駆動ローラ26と従動ローラ27との間に複数枚、たとえば2枚のシート体が同時に入り込んで従動ローラ27のトルクが高くなったとき、従動ローラ27の回転を阻止して停止させる。これによって、駆動ローラ26に接触しているシート体は、駆動ローラ26から搬送力を受け、従動ローラ27に接触しているシート体は、従動ローラ27から前記搬送力とは逆向きの摺動抵抗力を受ける。このようにして駆動ローラ26に接触しているシート体だけを、搬送部分23に搬送することができる。
【0050】
分離ローラ対の駆動ローラ26は、可動台4に設けられる可動台側ローラである。分離ローラ対の従動ローラ27は、カセット部5に設けられるカセット部側ローラである。カセット部5が水平位置にあるとき、駆動ローラ26と従動ローラ27とは、シート体を挟持するように互いに弾発的に接触する。カセット部5が傾斜位置にあるとき、駆動ローラ26と従動ローラ27とは、互いに離間する。このように分離ローラ対は、カセット部5が搬送部6によるシート体の搬送が可能な位置である水平位置から角変位したとき、分離ローラ対の各ローラ26,27が互いに離間する。本実施の形態では、簡単な構成で、このような分離ローラ対を実現することができる。
【0051】
搬送部分23は、分離部分22から搬送されてきたシート体に搬送力を与え、搬送部分23よりも搬送方向下流側にシート体を搬送する。搬送部分23は、搬送経路に関して上下に対を成して、少なくとも一方のローラが回転駆動されるローラ対である搬送ローラ対を有する。このような搬送ローラ対によってシート体を挟持し、少なくとも一方のローラを回転駆動することによって、シート体を搬送することができる。
【0052】
搬送ローラ対は、搬送経路の幅方向に平行な回転軸線まわりに回転駆動される駆動ローラ28と、駆動ローラ28の軸線に平行な回転軸線まわりに回転可能に設けられる従動ローラ29とを有する。本実施の形態では、搬送ローラ対の各ローラ28,29は、可動台4に設けられる。駆動ローラ28と従動ローラ29とは、シート体を挟持するように互いに弾発的に接触する。
【0053】
カバー部7は、カセット部5の前記出し入れ口16を開閉可能に覆う。カバー部7は、前記出し入れ口16に対向する対向部31と、基部32と、対向部31と基部32とを連結する連結部33とを有する。カバー部7によって前記出し入れ口16を閉塞した状態において、基部32は、対向部31の前記側部11に近い側の部分35の真上に位置する。基部32は、カセット部5の角変位軸線L11に平行な角変位軸線L12まわりに角変位可能に、可動台4に設けられる。連結部33の基部32に連なる側とは反対側の部分34は、対向部31の前記側部11に近い側の部分35に連なる。
【0054】
このようなカバー部7が角変位されることによって、カセット部5の前記出し入れ口16が開閉される。カバー部7は、前記出し入れ口16を閉塞する閉塞位置と、前記出し入れ口16を開放する開放位置とにわたって角変位可能である。カバー部7が閉塞位置にあるとき、カセット部5に対して前記出し入れ口16を介してシート体を出し入れすることは不可能である。カバー部7が開放位置にあるとき、カセット部5に対して前記出し入れ口16を介してシート体を出し入れすることが可能である。
【0055】
図2は、カセット部ロック機構8およびカバー部ロック機構9を拡大して示す断面図である。図1をも参照して、カセット部ロック機構8およびカバー部ロック機構9は、カセット部5の角変位軸線L11に関して前記側部11とは反対側に設けられる。カセット部ロック機構8およびカバー部ロック機構9は、搬送経路の幅方向両側に設けられてもよく、あるいは搬送経路の幅方向一方側にだけ設けられてもよい。
【0056】
カセット部ロック機構8は、ロック状態とロック解除状態とに切換え可能に構成される。ロック状態では、可動台4に対するカセット部5の角変位を搬送部6によるシート体の搬送が可能な位置である水平位置で阻止することができる。ロック解除状態では、可動台4に対するカセット部5の角変位を許容することができる。
【0057】
カセット部ロック機構8は、可動台4に設けられる係合部41と、カセット部5に設けられ、係合部41が係合される被係合部42とを有する。被係合部42は、前記収容空間15内に配置される。係合部41が被係合部42に係合した状態がロック状態であり、係合部41と被係合部42との係合が解除された状態がロック解除状態である。このような本実施の形態では、簡単な構成で、カセット部ロック機構8を実現することができる。
【0058】
係合部41は、カセット部5の上方に配置される基部43と、基部43の下方に連なる爪部44とを有する。基部43は、カセット部5の角変位軸線L11に平行な角変位軸線L13まわりに角変位可能に、可動台4に設けられる。被係合部42は、カセット部5に固定される。被係合部42には、係合部41の爪部44が嵌まり込む係合孔45が形成される。
【0059】
係合部41は、ロック位置P11とロック解除位置P12とにわたって角変位可能である。ロック位置P11では、係合部41の爪部44が被係合部42の係合孔45に嵌まり込み、これによって係合部41が被係合部42に係合する。ロック解除位置では、係合部41の爪部44が被係合部42の係合孔45から離脱し、これによって係合部41と被係合部42との係合が解除される。
【0060】
係合部41の基部43には、操作片46がさらに設けられる。操作片46は、外部に露出する。ユーザは、操作片46を操作することによって、係合部41を角変位させて、カセット部ロック機構8の状態を切換えることができる。
【0061】
カバー部ロック機構9は、ロック状態とロック解除状態とに切換え可能に構成される。ロック状態では、可動台4に対するカバー部7の角変位を閉塞位置で阻止して、カバー部7の開放を阻止することができる。ロック解除状態では、可動台4に対するカバー部7の角変位を許容して、カバー部7の開放を許容することができる。
【0062】
カバー部ロック機構9は、可動台4に設けられる係合部51と、カバー部7に設けられ、係合部51が係合される被係合部52とを有する。係合部51が被係合部52に係合した状態がロック状態であり、係合部51と被係合部52との係合が解除された状態がロック解除状態である。このような本実施の形態では、簡単な構成で、カバー部ロック機構9を実現することができる。
【0063】
係合部51は、カセット部5の上方に配置される基部53と、基部53の側方に連なる爪部54とを有する。基部53は、カセット部5の角変位軸線L11に平行な角変位軸線L14まわりに角変位可能に、可動台4に設けられる。被係合部52は、カセット部5に連なり、係合部51の爪部54が係合される爪部55を有する。この爪部55は、カセット部5の対向部31の前記側部11に近い側の部分35に連なる。
【0064】
係合部51は、ロック位置P21とロック解除位置P22とにわたって角変位可能である。ロック位置P21では、係合部51の爪部54が被係合部52の爪部55に係合し、これによって係合部51が被係合部52に係合する。ロック解除位置P22では、係合部51の爪部54と被係合部52の爪部55との係合が解除され、これによって係合部51と被係合部52との係合が解除される。
【0065】
本実施の形態では、カセット部ロック機構8の係合部41の角変位軸線L13とカバー部ロック機構9の係合部51の角変位軸線L14とが共通な一直線を成し、カセット部ロック機構8の係合部41の基部43とカバー部ロック機構9の係合部51の基部53とは共通である。したがってカセット部ロック機構8とカバー部ロック機構9とが連動する。これによってカセット部ロック機構8のロック解除とカバー部ロック機構9のロック解除とを個別に行う必要がなく、各ロック機構8,9のロックの解除に要する手間を軽減することができる。
【0066】
図3は、可動台ロック機構10を拡大して示す断面図である。図1をも参照して、可動台ロック機構10は、カセット部5の角変位軸線L11に関して前記側部11と同一側に設けられる。可動台ロック機構10は、搬送経路の幅方向両側に設けられてもよく、あるいは搬送経路の幅方向中央に設けられてもよい。
【0067】
可動台ロック機構10は、ロック状態とロック解除状態とに切換え可能に構成される。ロック状態では、前記側部11に対する可動台4のスライド変位を搬送部6によるシート体の搬送が可能な位置である近接位置で阻止することができる。ロック解除状態では、前記側部11に対する可動台4のスライド変位を許容することができる。
【0068】
可動台ロック機構10は、カセット部5に設けられる係合部61と、前記側部11に設けられ、係合部61が係合される被係合部62とを有する。係合部61が被係合部62に係合した状態がロック状態であり、係合部61と被係合部62との係合が解除された状態がロック解除状態である。このような本実施の形態では、簡単な構成で、可動台ロック機構10を実現することができる。
【0069】
係合部61は、基部63と、基部63に連なる爪部64とを有する。基部63は、カセット部5の前記側部11に近い側の部分17に固定される。被係合部62には、係合部61の爪部64が嵌まり込む係合孔65が形成される。
【0070】
可動台ロック機構10は、カセット部5の角変位によって状態を切換え可能に構成される。したがって可動台ロック機構10の状態を容易に切換えることができる。カセット部5が水平位置にあるとき、係合部61の爪部64が被係合部62の係合孔65に嵌まり込み、これによって係合部61が被係合部62に係合する。カセットが傾斜位置にあるとき、係合の爪部64が被係合部62の係合孔65から離脱し、これによって係合部61と被係合部62との係合が解除される。
【0071】
図1を再び参照して、画像形成装置2に対するシート体の供給が可能な状態である使用状態では、可動台4は近接位置に配置され、カセット部5は水平位置に配置され、カバー部7は閉塞位置に配置される。また各ロック機構8〜10は、ロック状態である。
【0072】
このような使用状態では、カセット部ロック機構8によって、可動台4に対するカセット部5の角変位が水平位置で阻止され、かつ、可動台ロック機構10によって、前記側部11に対する可動台4のスライド変位が近接位置で阻止される。したがって搬送部6によってシート体を確実に搬送することができる。
【0073】
また使用状態では、カバー部ロック機構9によって、可動台4に対するカバー部7の角変位が閉塞位置で阻止される。したがってカセット部5の前記出し入れ口16を介してシート体が不所望に出し入れされることを防ぐことができる。これによってユーザのうち管理者だけがカセット部5に対してシート体を出し入れ可能にすることができる。したがってカセット部5に対しては、コート紙が収容されるべきであるにも拘わらず、管理者以外のユーザによって、間違って普通紙が入れられてしまうことを防ぐことができる。
【0074】
図4は、カセット部5の前記出し入れ口16の開放に係る状態の変化を説明するための図であり、図4(1)はカセット部ロック機構8およびカバー部ロック機構9をロック状態からロック解除状態にした状態を示し、図4(2)はカセット部5の前記出し入れ口16を開放した状態を示す。カセット部5に対して前記出し入れ口16を介してシート体を出し入れするためには、前記出し入れ口16を開放する必要がある。
【0075】
前記出し入れ口16の開放にあたっては、まず、ユーザは、操作片46を操作して、図4(1)に示すように、カセット部ロック機構8の係合部41を、ロック位置P11からロック解除位置P12に角変位させる。これによってカセット部ロック機構8は、係合部41と被係合部42との係合が解除される。このようにしてカセット部ロック機構8がロック状態からロック解除状態になる。
【0076】
このとき、カバー部ロック機構9の係合部51も、ロック位置P21からロック解除位置P22に角変位する。これによってカバー部ロック機構9は、係合部51と被係合部52との係合が解除される。このようにしてカバー部ロック機構9も、カセット部ロック機構8に連動して、ロック状態からロック解除状態になる。
【0077】
次に、ユーザは、カバー部7を操作して、図4(2)に示すように、カバー部7を閉塞位置P31から開放位置P32に角変位させる。このようにして前記出し入れ口16を開放することができる。これによってカセット部5を取出すことなく、カセット部5の前記出し入れ口16を介してシート体を出し入れすることができる。
【0078】
図5は、搬送部6の搬送方向両側の開放に係る状態の変化を説明するための図であり、図5(1)は搬送部6の搬送方向上流側を開放した状態を示し、図5(2)は搬送部6の搬送方向下流側を開放した状態を示す。搬送部6に詰ったシート体を取除くためには、搬送部6の搬送方向上流側または搬送部6の搬送方向下流側を開放する必要がある。搬送部6の搬送方向両側の開放にあたっては、まず、ユーザは、前述の図4に示すように状態を変化させる。
【0079】
この後、ユーザは、カセット部5を操作して、図5(1)に示すように、カセット部5を水平位置から傾斜位置に角変位させる。このようにして搬送部6の搬送方向上流側を開放することができる。これによって搬送部6に詰ったシート体を、搬送部6の搬送方向上流側から容易に取除くことができる。
【0080】
しかも本実施の形態では、カセット部5を水平位置から傾斜位置に角変位させたとき、搬送部6の分離部分22は、分離ローラ対の各ローラ26,27が互いに離間する。これによって分離ローラ対によるシート体の挟持が解除される。
【0081】
したがって搬送部6に詰ったシート体を取除くにあたって、シート体を分離ローラ対から円滑に引抜くことができる。これによってシート体の取除きに対する作業性を向上することができる。また分離ローラ対の各ローラ26,27が破損することを防ぐことができる。
【0082】
またシート体を引抜く際に分離ローラ対に大きな負荷がかかることがなく、したがって分離ローラ対の加圧力が変わってしまうことを防ぐことができる。これによって分離ローラ対および搬送ローラ対の加圧力バランスの変化を防ぎ、次の搬送時のトラブルを防ぐことができる。
【0083】
さらにシート体を引抜く際にシート体に大きな引張力が作用することがなく、したがってシート体が破断してシート体の一部が搬送部6に残ってしまうことを防ぐことができる。搬送部6に残ったシート体の一部が、次の搬送時に画像形成装置2に搬送されると、画像形成装置2で不具合が発生することがある。本実施の形態では、このような不具合の発生を防ぐことができる。
【0084】
カセット部5を水平位置から傾斜位置に角変位させたとき、可動台ロック機構10は、係合部61と被係合部62との係合が解除される。このようにして可動台ロック機構10は、ロック状態からロック解除状態になる。
【0085】
次に、ユーザは、可動台4を操作して、図5(2)に示すように、可動台4を近接位置から離反位置にスライド変位させる。このようにして搬送部6の搬送方向下流側を開放させることができる。これによって搬送部6に詰ったシート体を、搬送部6の搬送方向下流側から容易に取除くことができる。
【0086】
図6は、本発明の実施の他の形態であるロック機構付きシート体供給装置71の構成を簡略化して示す断面図である。本実施の形態のロック機構付きシート体供給装置(以下、単に「シート体供給装置」という)71は、前述の実施の形態のシート体供給装置1と類似するので、対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、異なる点についてだけ説明する。
【0087】
本実施の形態では、カセット部ロック機構8Xは、可動部4に覆われて、外部から離隔するように設けられる。カセット部ロック機構8Xは、電磁駆動源である電磁ソレノイド72をさらに有する。電磁ソレノイド72は、可動台4に設けられ、電磁力による駆動力によって係合部41を駆動させる。電磁ソレノイド72は、可動鉄心73を有し、この可動鉄心73は、前進または後退することができるように設けられる。可動鉄心73の先端部は、係合部41の操作片46に連結される。
【0088】
このような本実施の形態によれば、電磁ソレノイド72は、電磁力による駆動力によって係合部41を駆動させ、これによってカセット部ロック機構8Xの状態を切換えることができる。このような電磁ソレノイド72を有するカセット部ロック機構8Xは、外部から隔離するように設けられるので、手指などによってカセット部ロック機構8Xの状態が不所望に切換えられてしまうことを防ぐことができる。
【0089】
また本実施の形態では、搬送ローラ対の駆動ローラ28Xは、可動台4に設けられる可動台側ローラであり、搬送ローラ対の従動ローラ29Xは、カセット部5に設けられるカセット部側ローラである。カセット部5が水平位置にあるとき、駆動ローラ28Xと従動ローラ29Xとは、シート体を挟持するように互いに弾発的に接触する。カセット部5が傾斜位置にあるとき、駆動ローラ28Xと従動ローラ29Xとは、互いに離間する。このように搬送ローラ対は、カセット部5が搬送部6によるシート体の搬送が可能な位置である水平位置から角変位したとき、搬送ローラ対の各ローラ28X,29Xが互いに離間する。本実施の形態では、簡単な構成で、このような搬送ローラ対を実現することができる。
【0090】
図7は、カセット部ロック機構8の電気的構成を示すブロック図である。入力操作部75には、ロック解除指令が入力される。制御部76は、入力操作部75から入力されるロック解除指令に応答して、電磁ソレノイド72に通電する。
【0091】
図8は、カセット部5の前記出し入れ口16の開放に係る状態の変化を説明するための図であり、図8(1)は、カセット部ロック機構8Xおよびカバー部ロック機構9をロック状態からロック解除状態にした状態を示し、図8(2)はカセット部5の前記出し入れ口16を開放した状態を示す。図8は、前記図4に類似するので、共通する点については説明を省略し、異なる点についてだけ説明する。
【0092】
本実施の形態では、ユーザは、操作片46を操作するのではなく、入力操作部75を操作する。ユーザは、入力操作部75を操作して、ロック解除指令を入力する。制御部76は、入力操作部75から入力されるロック解除指令に応答して、電磁ソレノイド72に通電する。
【0093】
電磁ソレノイド72は、通電されると、可動鉄心73が変位する。可動鉄心73が変位すると、操作片46が変位し、図8(1)に示すように、カセット部ロック機構8Xの係合部41が、ロック位置P11からロック解除位置P12に角変位する。これによってカセット部ロック機構8Xは、係合部41と被係合部42との係合が解除される。このようにしてカセット部ロック機構8がロック状態からロック解除状態になる。このとき、カバー部ロック機構9も、カセット部ロック機構8Xに連動して、ロック状態からロック解除状態になる。
【0094】
図9は、搬送部6の搬送方向両側の開放に係る状態の変化を説明するための図であり、図9(1)は搬送部6の搬送方向上流側を開放した状態を示し、図9(2)は搬送部6の搬送方向下流側を開放した状態を示す。図9は、前記図5に類似するので、共通する点については説明を省略し、異なる点についてだけ説明する。
【0095】
本実施の形態では、搬送部6の搬送部分23Xについても、カセット部5を水平位置から傾斜位置に角変位させたとき、搬送ローラ対の各ローラ28X,29Xが互いに離間する。これによって搬送ローラ対によるシート体の挟持も解除される。
【0096】
したがって搬送部6に詰ったシート体を取除くにあたって、シート体の搬送ローラ対からも円滑に引抜くことができる。これによってシート体の取除きに対する作業性をさらに向上することができる。また搬送ローラ対の各ローラ28X,29Xについても破損することを防ぐことができる。
【0097】
またシート体を引抜く際に搬送ローラ対にも大きな負荷がかかることがなく、したがって搬送ローラ対の加圧力が変わってしまうことを防ぐことができる。これによっても分離ローラ対および搬送ローラ対の加圧力バランスの変化を防ぎ、次の搬送時のトラブルを防ぐことができる。
【0098】
さらにシート体を引抜く際にシート体に大きさ引張力が作用することがなく、したがってシート体が破断してシート体の一部が搬送部6に残ってしまうことを防ぐことができる。搬送部6に残ったシート体の一部が、次の搬送時に画像形成装置2に搬送されると、画像形成装置2で不具合が発生することがある。本実施の形態では、このような不具合の発生を確実に防ぐことができる。
【0099】
図10は、画像形成装置2を簡略化して示す断面図である。図10には、画像形成装置2に手差しトレイ101が装着された状態を示す。シート体供給装置1,71は、手差しトレイ101に代えて、画像形成装置2に装着される。
【0100】
画像形成装置2は、複写機、プリンタおよびファクシミリ装置としての機能を有するデジタル複合機である。画像形成装置2は、スキャナ部102と、画像形成部103とを有する。
【0101】
スキャナ部102は、原稿画像を読取る。スキャナ部102は、透明ガラスから成る原稿載置台105と、両面自動原稿送り装置(Reversing Automatic Document Feeder、略称RADF)106と、原稿読取部107とを有する。
【0102】
両面自動原稿送り装置106は、原稿トレイにセットされた原稿を1枚ずつ、原稿載置台105に搬送するとともに、読取り後の原稿を排出トレイに排出する。両面自動原稿送り装置106は、読取り後の原稿を裏返して、再び原稿載置台105に搬送することもできる。
【0103】
原稿読取部107は、原稿載置台105の下方に配置され、原稿載置台105上の原稿画像を1ラインごとに読取る。原稿読取部107は、第1走査ユニット111と、第2走査ユニット112と、光学レンズ113および光電変換素子(Charge Coupled Device、略称CCD)ラインセンサ114を有する。以下、「光電変換素子ラインセンサ」を「CCDラインセンサ」という。
【0104】
第1走査ユニット111は、光源と、原稿の反射光を第2走査ユニット112に導く第1反射ミラーとを有する。第1走査ユニット111は、原稿載置台105に沿って図6の左側から右側に一定速度Vで移動する。
【0105】
第2走査ユニット112は、第2および第3反射ミラーを有する。第2および第3反射ミラーは、第1走査ユニット111の第1反射ミラーからの光を光学レンズ113およびCCDラインセンサ114に導く。第2走査ユニット112は、第1走査ユニット111に追随してV/2の速度で移動する。
【0106】
光学レンズ113は、第2走査ユニット112からの反射光を、CCDラインセンサ114上で結像させる。CCDラインセンサ114は、光学レンズ113からの光をアナログの電気信号に変換する。この電気信号は、図示しない画像処理部によってデジタルの画像データに変換され、図示しないメモリに記憶される。
【0107】
画像形成部103は、スキャナ部102で読取られた画像データおよび外部からの画像データに基づいて、シート体に対してモノクロ画像を形成する。画像形成部103は、感光体ドラム121と、帯電器122と、露光ユニット123と、現像器124と、転写器125と、クリーニング器126と、定着器127とを含む。
【0108】
帯電器122は、感光体ドラム121の表面を、所定の電位に均一に帯電させる。帯電器122としては、非接触式の帯電器、たとえばチャージャ型の帯電器が用いられる。帯電器122は、接触式の帯電器、たとえばローラ型の帯電器およびブラシ型の帯電器などが用いられてもよい。
【0109】
露光ユニット123は、画像データに基づいて、帯電器122によって均一に帯電された感光体ドラム121の表面を露光して、感光体ドラム121の表面に、画像データに応じた静電潜像を形成する。露光ユニット123としては、レーザスキャニングユニット(Laser Scanning Unit、略称LSU)が用いられる。レーザスキャニングユニットは、半導体レーザ光源と、半導体レーザ光源からのレーザ光を反射させて感光体ドラム121に導く反射ミラーとを有する。図10に示す画像形成装置2の露光ユニット123は、複数、具体的には2つの半導体レーザ光源を有し、2つのレーザ光を用いて、一度に2ドットずつ露光する。これによって印刷に対する高速化を図ることができる。露光ユニット123は、エレクトロルミネセンス(Electroluminescence、略称EL)および発光ダイオード(Light Emitting Diode、略称LED)などの発光素子がアレイ状に並べられた書込みヘッドが用いられてもよい。
【0110】
現像器124は、感光体ドラム121の表面に形成された静電潜像を、黒トナーによって現像し、トナー像を形成する。転写器125は、感光体ドラム121の表面に形成されたトナー像をシート体に転写する。クリーニング器126は、転写後に残留したトナーなどを感光体ドラム121から除去して回収する。
【0111】
感光体ドラム121の表面に形成されたトナー像は、転写器125によって、シート体に転写される。転写器125は、シート体に関して感光体ドラム121とは反対側に配置される。転写器125には、電圧が印加され、これによって転写のための電界が発生する。たとえば、トナー像がマイナスの電荷を有しているときは、転写器125の電圧印加極性はプラスとなる。
【0112】
転写器125は、転写ベルト131と、転写ローラ132と、駆動ローラ133と、テンションローラ134とを有する。転写ベルト131は、転写ローラ132、駆動ローラ133およびテンションローラ134に張架される。転写ベルト131は、所定の抵抗値、たとえば1×10〜1×1013Ω・cmの範囲の抵抗値を有する。
【0113】
転写ローラ132は、転写ベルト131を介して感光体ドラム121に対向する。転写ローラ132は、駆動ローラ133およびテンションローラ134とは異なる導電性を有し、転写電界を発生させることができる。転写ローラ132は、弾性を有し、これによって感光体ドラム121と転写ベルト131とが、線接触ではなく、転写ニップと呼ばれる所定の幅を有する面接触となり、シート体への転写効率の向上が図られる。駆動ローラ133は、転写ベルト131を回転駆動させる。テンションローラ134は、転写ベルト131が円滑に回転駆動するように、転写ベルト131に適切な張力を付与する。
【0114】
転写ベルト131の転写領域の下流側には、除電ローラが設けられる。除電ローラは、感光体ドラム121とは反対側から転写ベルト131に接触する。除電ローラは、次工程へのシート体の搬送を円滑に行うために、シート体から過剰な電荷を除去する。
【0115】
転写器125には、転写ベルト131からトナーを除去するクリーニングユニットと、転写ベルト131を除電する除電ユニットとがさらに設けられる。除電ユニットは、画像形成装置2を介して接地してもよく、あるいは転写電界とは逆極性の電界を印加ようにしてもよい。
【0116】
定着器127は、シート体に転写されたトナー像を、シート体に定着させる。定着器127は、シート体を加熱し、これによって未定着トナーを溶融させてシート体に定着させる。定着器127は、加熱ローラ136と、加圧ローラ137とを有する。
【0117】
加熱ローラ136の外周には、シート体剥離爪と、ローラ表面温度検出部材であるサーミスタと、ローラ表面のクリーニング部材が配置される。加熱ローラ136の内部には、加熱ローラ136の表面を所定温度(定着設定温度:160〜200℃)とする熱源が設けられる。加圧ローラ137は、所定圧力で、加熱ローラ136に当接する。加圧ローラ137の外周には、シート体剥離爪と、ローラ表面のクリーニング部材が配置される。
【0118】
このような定着器127は、定着ニップ部と呼ばれる、加熱ローラ136と加圧ローラ137との当接部において、搬送されるシート体上の未定着トナーを、加熱ローラ136からの熱で溶融させる。そして、加圧ローラ137からの押圧力によるシート体上への投鋲作用で、未定着トナーをシート体上に定着させる。
【0119】
画像形成装置2には、給紙トレイ141と、給紙装置(Large Capacity Cassette、略称LCC)142と、手差しトレイ101と、排紙トレイ143とを含む。
【0120】
給紙トレイ141には、画像形成部103によって画像が形成されるべきシート体が収容される。給紙トレイ141は、画像形成部103の下方に配置される。給紙トレイ141には、定型サイズのシート体が収容される。画像形成部103で高速印刷処理を行うことができるように、給紙トレイ141には、シート体を500〜1500枚収容可能である。給紙トレイ141は、1つであってもよく、あるいは複数であってもよい。図10では、給紙トレイ141は2つである。
【0121】
給紙装置142には、画像形成装置2によって画像が形成されるべきシート体が収容される。給紙装置142は、複数の種類のシート体を多量に収容可能である。給紙装置142は、シート体を1枚ずつ、画像形成装置2に供給する。給紙装置142は、画像形成装置2の側方に設置される。
【0122】
手差しトレイ101には、画像形成装置2によって画像が形成されるべきシート体が載置される。手差しトレイ101には、主として不定型サイズのシート体が載置される。手差しトレイ101は、画像形成装置2の側部11に装着される。手差しトレイ101は、画像形成装置2に関して給紙装置142と同一側に配置される。
【0123】
排紙トレイ143には、画像形成部103によって画像が形成されて画像形成部103から排出されたシート体が載置される。排紙トレイ143は、画像形成装置2の側部11に装着される。排紙トレイ143は、画像形成装置2に関して手差しトレイ101とは反対側に配置される。このような排紙トレイ143に代えて、複数段の排紙トレイを有する排紙トレイユニットが装着されてもよい。また排紙トレイ143に代えて、ステープル機能およびパンチ機能などを有する後処理装置が設けられてもよい。
【0124】
前述の実施の各形態は、本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲内において構成を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の実施の一形態であるロック機構付きシート体供給装置1の構成を示す断面図である。
【図2】カセット部ロック機構8およびカバー部ロック機構9を拡大して示す断面図である。
【図3】可動台ロック機構10を拡大して示す断面図である。
【図4】カセット部5の前記出し入れ口16の開放に係る状態の変化を説明するための図である。
【図5】搬送部6の搬送方向両側の開放に係る状態の変化を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の他の形態であるロック機構付きシート体供給装置71の構成を簡略化して示す断面図である。
【図7】カセット部ロック機構8の電気的構成を示すブロック図である。
【図8】カセット部5の前記出し入れ口16の開放に係る状態の変化を説明するための図である。
【図9】搬送部6の搬送方向両側の開放に係る状態の変化を説明するための図である。
【図10】画像形成装置2を簡略化して示す断面図である。
【符号の説明】
【0126】
1,71シート体供給装置
2 画像形成装置
3 基台
4 可動台
5 カセット部
6 搬送部
7 カバー部
8 カセットロック機構
9 カバー部ロック機構
10 可動台ロック機構
12 スライド機構
26 分離ローラ対の駆動ローラ
27 分離ローラ対の従動ローラ
28,28X 搬送ローラ対の駆動ローラ
29,29X 搬送ローラ対の従動ローラ
41 カセット部ロック機構8,8Xの係合部
42 カセット部ロック機構8,8Xの被係合部
51 カバー部ロック機構9の係合部
52 カバー部ロック機構9の被係合部
61 可動台ロック機構10の係合部
62 可動台ロック機構10の被係合部
72 電磁ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート体に画像を形成する画像形成装置の側部に設けられる基台と、
前記側部に対して近接離反する方向にスライド変位可能に、基台に設けられる可動台と、
可動台に設けられ、画像形成装置によって画像が形成されるべきシート体を収容し、シート体を出し入れするための出し入れ口が形成されるカセット部と、
可動台とともにスライド変位可能に設けられ、カセット部に収容されるシート体を1枚ずつ、画像形成装置に搬送する搬送部と、
前記側部に対する可動台のスライド変位を搬送部によるシート体の搬送が可能な位置で阻止するロック状態と前記側部に対する可動台のスライド変位を許容するロック解除状態とに切換え可能に構成される可動台ロック機構と、
カセット部の前記出し入れ口を開閉可能に覆うカバー部と、
カバー部の開放を阻止するロック状態とカバー部の開放を許容するロック解除状態とに切換え可能に構成されるカバー部ロック機構とを含むことを特徴とするロック機構付きシート体供給装置。
【請求項2】
前記カセット部は、前記側部に近い側の部分が、前記側部に対する前記可動台のスライド方向に直交する水平な角変位軸線まわりに角変位可能に、前記可動台に設けられ、
前記可動台に対する前記カセット部の角変位を前記搬送部によるシート体の搬送が可能な位置で阻止するロック状態と前記可動台に対する前記カセット部の角変位を許容するロック解除状態とに切換え可能に構成されるカセット部ロック機構をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のロック機構付きシート体供給装置。
【請求項3】
前記カセット部ロック機構は、前記可動台に設けられる係合部と、前記カセット部に設けられ、係合部が係合される被係合部とを有することを特徴とする請求項2に記載のロック機構付きシート体供給装置。
【請求項4】
前記カセット部ロック機構は、
前記可動台に設けられ、電磁力による駆動力によって前記係合部を駆動させる電磁駆動源をさらに有し、
外部から隔離するように設けられることを特徴とする請求項3に記載のロック機構付きシート体供給装置。
【請求項5】
前記カバー部ロック機構は、カセット部ロック機構と連動することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載のロック機構付きシート体供給装置。
【請求項6】
前記可動台ロック機構は、前記カセット部の角変位によって状態を切換え可能に構成されることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載のロック機構付きシート体供給装置。
【請求項7】
前記可動台ロック機構は、前記カセット部に設けられる係合部と、前記側部に設けられ、係合部が係合される被係合部とを有することを特徴とする請求項6に記載のロック機構付きシート体供給装置。
【請求項8】
前記搬送部は、シート体が搬送される搬送経路に関して上下に対を成して、少なくとも一方のローラが回転駆動されるローラ対を有し、
ローラ対の各ローラは、カセット部が搬送部によるシート体の搬送が可能な位置から角変位したとき、互いに離間することを特徴とする請求項2〜7のいずれか1つに記載のロック機構付きシート体供給装置。
【請求項9】
前記ローラ対は、可動台に設けられる可動台側ローラと、カセット部に設けられるカセット部側ローラとを有することを特徴とする請求項8に記載のロック機構付きシート体供給装置。
【請求項10】
前記基台と前記可動台との間には、前記可動台を前記基台に対してスライド変位させるためのスライド機構が設けられることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載のロック機構付きシート体供給装置。
【請求項11】
前記スライド機構は、ボールリテナーによって保持される多数のボールを介して複数のスライド部材が互いにスライド変位可能に連結されて構成されることを特徴とする請求項10に記載のロック機構付きシート体供給装置。
【請求項12】
前記シート体は、コート紙であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載のロック機構付きシート体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−12869(P2009−12869A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173065(P2007−173065)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】