説明

ロボットの移動管理システム及び移動管理方法

【課題】優先度の高低に基づいてロボットのエレベータへの搭乗順を設定する。
【解決手段】本発明の一形態に係るロボットの移動管理システム100は、位置推定手段12と、経路生成手段13と、ロボット1がエレベータ4で移動する際に消費可能な時間を算出る搭乗時間算出手段141と、並べ替えた搭乗順位に基づくロボット毎のエレベータ4で実際に移動する際に消費する時間を算出し、エレベータ4で実際に移動する際に消費する時間が、エレベータ4で移動する際に消費可能な時間以上であるか否かを判定する判定手段221と、判定結果に基づいて、該当するロボット1の遅延情報を生成する遅延情報生成手段142と、判定結果に基づいて、該当するロボット1に対して到着地点まで移動させる制御を実行させる移動指示手段143と、遅延情報が通知される通知手段32と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの移動管理システム及び移動管理方法に関し、特にエレベータを用いて移動する複数のロボットの移動管理システム及び移動管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病院内やオフィス内等を移動するロボットが実用化されている。このようなロボットは、エレベータに搭乗して他のフロアに移動することになるが、ロボットが複数の場合、ロボットがエレベータに搭乗する順番は、エレベータ管理システムに搭乗要求した順となっている。
【0003】
ところで、特許文献1には、移動ロボットから送られた要求に対して優先順位を設定し、優先順位に従ってエレベータを移動させる技術が開示されている。これにより、移動ロボットが対応した来客者のうち、優先順位の高い来客者をエレベータに搭乗させることができる。但し、移動ロボットがエレベータに搭乗する際の優先順位を設定する技術ではない。
【0004】
特許文献2には、エレベータに搭乗したロボットに時間的な遅延が生じると、警報を監視盤に出力する技術が開示されている。これにより、ロボットに時間的な遅延が生じたか否かを作業者が認識することができる。但し、予め遅延が生じることを予想して、作業者に通知する技術ではない。
【0005】
特許文献3には、部品格納フロア及び生産ラインフロアをエレベータを用いて無人搬送車が移動する生産設備において、部品供給を必要とする各ステーションにおける部品消費時間と、そのステーションと部品庫間を無人搬送車が往復する往復時間とが、ほぼ等しくなるように、無人搬送車の走行経路と走行速度との少なくとも一方を設定する技術が開示されている。これにより、部品の供給が遅延することを防ぐことができる。但し、無人搬送車がエレベータに搭乗する際の優先順位を設定したり、遅延が生じることが予想される場合に、その旨を通知したりする技術ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−198730号公報
【特許文献2】特開2007−137650号公報
【特許文献3】特開平8−155761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の技術のように、エレベータ管理システムに搭乗要求した順にロボットをエレベータに搭乗させると、優先度の低いロボットが先にエレベータに搭乗し、優先度の高いロボットが定められた時間内に目的地に到着しない場合がある。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、優先度の高低に基づいてロボットのエレベータへの搭乗順を設定することができるロボットの移動管理システム及び移動管理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係るロボットの移動管理システムは、エレベータに搭乗して目標とする到着地点まで移動する、複数のロボットの移動管理システムであって、前記ロボットの現在位置を推定する位置推定手段と、前記ロボットの到着地点情報及び位置情報に基づいて、使用するエレベータの情報を含む経路情報を生成する経路生成手段と、前記ロボットの位置情報及び経路情報に基づいて、前記ロボットが前記エレベータで移動する際に消費可能な時間を算出する搭乗時間算出手段と、予め定められた優先順位に基づいて、前記ロボット毎の搭乗順位を決定し、前記搭乗順位に基づく前記ロボット毎の前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間を算出し、前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間が、前記エレベータで移動する際に消費可能な時間以上であるか否かを判定する判定手段と、前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間が、前記エレベータで移動する際に消費可能な時間以上であると、該当する前記ロボットの遅延情報を生成する遅延情報生成手段と、前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間が、前記エレベータで移動する際に消費可能な時間未満であると、該当する前記ロボットに対して前記到着地点まで移動させる制御を実行させる移動指示手段と、前記遅延情報が通知される通知手段と、を備える。
【0010】
上記のロボットの移動管理システムにおいて、前記遅延情報生成手段は、前記判定結果が前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間が、前記エレベータで移動する際に消費可能な時間以上であると、他に利用可能なエレベータがあるか否かを判定し、他に利用可能なエレベータがあると、前記経路生成手段に対して、該当する前記ロボットの前記エレベータを用いた経路情報を生成させ、他に利用可能なエレベータがないと、該当する前記ロボットの遅延情報を生成すること、が好ましい。
【0011】
上記のロボットの移動管理システムにおいて、前記遅延情報生成手段は、前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間と現在時刻とに基づいて、前記ロボットの到着予定時刻情報を生成し、前記通知手段に出力すること、が好ましい。
【0012】
上記のロボットの移動管理システムにおいて、前記判定手段は、前記ロボット毎のタスクの種類又は前記エレベータで移動する際に消費可能な時間に基づいて重みを算出し、前記重みに基づいて前記ロボット毎の優先順位を設定すること、が好ましい。
【0013】
上記のロボットの移動管理システムにおいて、前記ロボットは、前記位置推定手段と、前記経路生成手段と、前記搭乗時間算出手段と、前記遅延情報生成手段と、前記移動指示手段と、を備える自立移動型のロボットであって、前記ロボットと、前記判定手段を備えるエレベータ管理システムと、ユーザが前記ロボットの到着地点及び到着希望時刻を入力可能な入力手段と前記通知手段とを備える通信端末と、の間は、無線通信が可能な構成とされること、が好ましい。
【0014】
本発明の一形態に係るロボットの移動管理方法は、エレベータに搭乗して目標とする到着地点まで移動する、複数のロボットの移動管理方法であって、前記ロボットの現在位置を推定するステップと、前記ロボットの到着地点情報及び位置情報に基づいて、使用するエレベータの情報を含む経路情報を生成するステップと、前記ロボットの位置情報及び経路情報に基づいて、前記ロボットが前記エレベータで移動する際に消費可能な時間を算出するステップと、予め定められた優先順位に基づいて、前記ロボット毎の搭乗順位を決定し、前記搭乗順位に基づく前記ロボット毎の前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間を算出し、前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間が、前記エレベータで移動する際に消費可能な時間以上であるか否かを判定するステップと、前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間が前記エレベータで移動する際に消費可能な時間以上であると、該当する前記ロボットの遅延情報を生成するステップと、前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間が前記エレベータで移動する際に消費可能な時間未満であると、該当する前記ロボットに対して前記到着地点まで移動させる制御を実行させるステップと、前記遅延情報を通知するステップと、を備える。
【0015】
上記のロボットの移動管理方法において、前記判定結果が前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間が前記エレベータで移動する際に消費可能な時間以上であると、他に利用可能なエレベータがあるか否かを判定するステップと、他に利用可能なエレベータがあると、該当する前記ロボットの前記エレベータを用いた経路情報を生成するステップと、他に利用可能なエレベータがないと、該当する前記ロボットの遅延情報を生成するステップと、を備えること、が好ましい。
【0016】
上記のロボットの移動管理方法において、前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間と現在時刻とに基づいて、前記ロボットの到着予定時刻情報を生成し、当該到着時間情報を通知するステップを備えること、が好ましい。
【0017】
上記のロボットの移動管理方法において、前記判定結果を出力するステップでは、前記ロボット毎のタスクの種類又は前記エレベータで移動する際に消費可能な時間に基づいて重みを算出し、前記重みに基づいて前記ロボット毎の優先順位を設定すること、が好ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上、説明したように、本発明によると、優先度の高低に基づいてロボットのエレベータへの搭乗順を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るロボットの移動管理システムを概略的に示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るロボットの移動管理システムが用いられる形態を概略的に示す図である。
【図3】経路評価部のブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係るロボットの移動管理方法のフローチャート図である。
【図5】タスクの内容に基づく重み付けを説明する図である。
【図6】エレベータで移動する際に消費可能な時間に基づく重み付けを説明する図である。
【図7】ロボットの搭乗順位の並べ替えを説明する図である。
【図8】通知部に遅延情報及び到着予定時刻を通知した状態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。但し、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0021】
先ず、本実施形態のロボットの移動管理システム(以下、移動管理システムという場合がある。)の構成を簡単に説明する。
移動管理システム100は、図1に示すように、複数のロボット1、エレベータ管理システム2、通信端末3を備える。ユーザが通信端末3を操作してロボット1の到着地点、タスク(仕事内容)、到着希望時刻等を設定すると、エレベータ管理システム2は、複数のロボット1の中から実際に当該タスクを実行させるロボット1を選択する。
【0022】
選択されたロボット1は、当該到着地点までの経路情報を生成して搭乗予定のエレベータで移動する際に消費可能な時間を算出し、算出した時間情報と当該エレベータの搭乗要求情報とをエレベータ管理システム2に出力する。
【0023】
エレベータ管理システム2には、選択されたロボットが算出した時間情報と搭乗要求情報とが入力され、予め設定されているロボット毎の優先順位に基づいて、搭乗要求のあったエレベータでのロボット毎の優先順位を決定し、エレベータで実際に移動する際に消費する時間を算出し、エレベータで実際に移動する際に消費する時間が、エレベータで移動する際に消費可能な時間以上であるか否かを判定し、判定結果をロボット毎に出力する。
【0024】
判定結果が入力されたロボット1は、エレベータで実際に移動する際に消費する時間が、エレベータで移動する際に消費可能な時間以上であると、通信端末3に遅延情報を出力させる。一方、ロボット1は、エレベータで実際に移動する際に消費する時間が、エレベータで移動する際に消費可能な時間未満であると、生成した経路情報に倣って移動する。
【0025】
これにより、優先度の高低に基づいてロボット1の搭乗順位を設定することができる。しかも、遅延するロボット1へ指示を与えたユーザには、通信端末3に遅延情報が出力されるので、ロボット1の到着が遅延することを認識することができる。
【0026】
以下、移動管理システム100の構成を具体的に説明する。
ロボット1は、図2に示すように、エレベータ4を用いて建屋内を自律的に移動する自立移動型のロボットである。本実施形態では、このようなロボット1を複数有する。これらのロボット1は、エレベータ管理システム2のロボット管理部21によって、受け付けているタスクの内容、稼働状態、現在の位置情報等が管理され制御されている。
【0027】
ロボット1には、エレベータ管理システム2から到着地点情報、タスク情報、到着希望時刻情報、当該タスクを入力した通信端末3の識別情報、エレベータ4で実際に移動する際に消費する時間が当該エレベータ4で移動する際に消費可能な時間以上であるか否かの判定結果、搭乗許可情報、降機許可情報等が入力される。一方、ロボット1は、エレベータ管理システム2に対して、エレベータ4で移動する際に消費可能な時間情報、位置情報、搭乗要求情報、搭乗許可要求情報等を出力する。また、ロボット1は、タスクを入力した通信端末3に対して、エレベータ4で実際に移動する際に消費する時間が当該エレベータ4で移動する際に消費可能な時間以上である旨の遅延情報、到着予定時刻等を出力する。
【0028】
このロボット1は、図1に示すように、駆動部11、位置推定部12、経路生成部13、経路評価部14、通信部15を備える。駆動部11は、図示を省略するが、車輪、駆動モータ等の駆動源等を備え、生成した経路情報に倣ってロボット1を移動させることができるように、駆動モータに所定のトルクを発生させる。
【0029】
位置推定部12は、ロボット1の現在位置を推定する。つまり、位置推定部12は、レーザレンジセンサ等の環境情報取得部(図示を省略)を備え、当該環境情報取得部が取得した環境情報と予め取得している各フロアのマップとを照合させて、当該マップ上の現在位置を推定する。
【0030】
経路生成部13は、当該経路生成部13が搭載されたロボットが実際にタスクを実行させるロボットに選択されると、入力される到着地点情報等に基づいて、当該到着地点までの経路を生成する。つまり、経路生成部13は、入力される到着地点情報と、ロボット1の位置情報と、予め取得している各フロアのマップと、に基づいて、例えばロボット1の現在位置から最も近いエレベータ4を選択して、ロボット1の現在位置から到着地点までの最短経路を生成する。
【0031】
経路評価部14は、図3に示すように、搭乗時間算出部141、遅延情報生成部142、移動指示部143を備える。搭乗時間算出部141は、入力されるロボット1の位置情報と、使用するエレベータ情報が含まれた経路情報と、ロボット1の到着希望時刻と、に基づいて、ロボット1がエレベータ4で移動する際に消費可能な時間を算出する。なお、算出手法については、後述する。
【0032】
搭乗時間算出部141は、算出した搭乗時間情報をエレベータ管理システム2に出力する。また、搭乗時間算出部141は、入力される経路情報に含まれるエレベータ情報に基づいて、搭乗しようとしているエレベータ4を判定し、当該エレベータ4の搭乗要求情報をエレベータ管理システム2に出力する。
【0033】
遅延情報生成部142は、エレベータ4で実際に移動する際に消費する時間が、エレベータ4で移動する際に消費可能な時間以上であると、遅延する旨の遅延情報を生成し、エレベータ管理システム2を経由、又は入力される通信端末3の識別情報に基づいて直接、当該通信端末3に遅延情報を出力する。また、遅延情報生成部142は、入力されるエレベータ4で実際に移動する際に消費する時間と現在時刻とに基づいて、ロボット1が到着位置に到着する到着予定時刻を生成し、エレベータ管理システム2を経由又は直接通信端末3に当該到着予定時刻を出力する。
【0034】
移動指示部143は、エレベータ4で実際に移動する際に消費する時間が、エレベータ4で移動する際に消費可能な時間未満であると、後述するようにエレベータ管理システム2の制御等に基づいて、ロボット1を到着地点まで移動させる制御を駆動部11に実行させる。また、移動指示部143は、入力されるエレベータ4で実際に移動する際に消費する時間と現在時刻とに基づいて、ロボット1が到着位置に到着する到着予定時刻を生成し、通信端末3に当該到着予定時刻を出力する。さらに移動指示部143は、入力される経路情報に含まれるエレベータ情報に基づいて、搭乗しようとしているエレベータ4を判定し、当該エレベータ4の搭乗許可要求情報をエレベータ管理システム2に出力する。
【0035】
通信部15は、エレベータ管理システム2の通信部23、通信端末3の通信部33との間の無線通信を実現する。ちなみに、通信方式は、一般的な通信方式を用いることができる。
【0036】
エレベータ管理システム2には、複数のロボット1からエレベータ4で移動する際に消費可能な時間情報、位置情報、エレベータ4への搭乗要求情報や搭乗許可要求情報等が入力される。また、複数又は単数の通信端末3から到着地点情報、タスク情報、到着希望時刻、当該通信端末3の識別情報等が入力される。一方、エレベータ管理システム2は、選択したロボット1に対して、到着地点情報、タスク情報、到着希望時刻、当該ロボット1に実行させるタスクを入力した通信端末3の識別情報、エレベータ4で実際に移動する際に消費する時間が当該エレベータ4で移動する際に消費可能な時間以上か否かの判定結果等を出力する。また、エレベータ管理システム2は、ロボット1に対して、搭乗許可情報や降機許可情報等を出力する。
【0037】
このエレベータ管理システム2は、図1に示すように、ロボット管理部21、エレベータ管理部22、通信部23を備える。ロボット管理部21は、ロボット1から入力される位置情報や、通信端末3から入力されるタスク情報や当該通信端末3の識別情報等に基づいて、ロボット毎に受け付けているタスクの内容、タスクを指示した通信端末、稼働状態、現在の位置情報等を管理する。つまり、ロボット管理部21は、移動管理システム100で管理される各ロボット1の状態を管理する。
【0038】
ロボット管理部21は、ロボット1から入力される位置情報、通信端末3から入力される到着地点情報やタスク情報等に基づいて、複数のロボット1のうち、例えば現在、タスクを受け付けているか否か、最も到着地点に近いか否か等の条件によって実際に指示を実行させるロボット1を選択する。さらにロボット管理部21は、選択したロボット1に、到着地点情報、タスク情報、到着希望時刻及び当該ロボット1に実行させるタスクを入力した通信端末3の識別情報を出力する。なお、このようなロボットの管理技術は、公知の手法を用いることができる。
【0039】
エレベータ管理部22は、エレベータ4の運行を管理する。つまり、エレベータ管理部22は、ロボット1からの搭乗許可要求情報に基づいて、当該ロボット1に搭乗許可情報や降機許可情報を出力したり、エレベータ4を昇降させたり、エレベータ4の扉を開閉させたりする。
【0040】
詳細には、エレベータ管理部22は、ロボット1のエレベータ4への搭乗、及びエレベータ4からの降機を以下のような実行させる。先ずロボット1が搭乗するエレベータ4の扉の前に到着すると、当該ロボット1の移動指示部143は、搭乗許可要求情報をエレベータ管理部22に出力する。エレベータ管理部22は、入力される搭乗許可要求情報に基づいて、ロボット1が待機しているフロアにエレベータ4を停止させて扉を開放させ、ロボット1の移動指示部143に搭乗許可情報を出力する。ロボット1の移動指示部143は、入力される搭乗許可情報に基づいて、駆動部11を制御して当該ロボット1をエレベータ4に搭乗させる。エレベータ管理部22は、ロボット1から搭乗完了通知を受け取った際、ロボット管理部21から入力される到着位置情報等に基づいて、エレベータ4を所定のフロアまで昇降させ、所定のフロアに到着するとエレベータ4の扉を開放する。そして、エレベータ管理部22は、ロボット1の移動指示部143に降機許可情報を出力する。ロボット1の移動指示部143は、入力される降機許可情報に基づいて、駆動部11を制御して当該ロボット1をエレベータ4から降機させる。
【0041】
エレベータ管理部22は判定部221を備える。判定部221は、ロボット1の搭乗時間算出部141からのエレベータ4への搭乗要求情報を受け付け、予め定められている優先順位に基づいて、搭乗要求のあったエレベータ4でのロボット毎の搭乗順位を決定する。なお、優先順位の設定については、後述する。
【0042】
判定部221は、搭乗順位に基づくロボット毎のエレベータ4で実際に移動する際に消費する時間を算出し、このエレベータ4で実際に移動する際に消費する時間が、ロボット1から入力されるエレベータ4で移動する際に消費可能な時間以上であるか否かを判定し、判定結果をロボット1に出力する。
【0043】
通信部23は、ロボット1の通信部15、通信端末3の通信部33との間の無線通信を実現する。
通信端末3には、ロボット1からエレベータ4で実際に移動する際に消費する時間が当該エレベータ4で移動する際に消費可能な時間以上である旨の遅延情報、到着予定時刻等が入力される。一方、通信端末3は、エレベータ管理システム2に対して、到着地点情報、タスク情報、到着希望時刻情報、当該通信端末3の識別情報等を出力する。
【0044】
この通信端末3は、入力部31、通知部32、通信部33を備える。入力部31は、予め通信端末3に記憶されている複数の到着地点情報やロボット1に実行させる複数のタスク情報等を読み出して、例えば表示装置を有する通知部32に表示させる。そして、入力部31は、ユーザに対して表示させた到着地点の選択肢の選択を促したり、ロボットに実行させるタスクの選択肢の選択を促したり、到着希望時刻の入力を促したりする。ユーザは、入力部31から到着地点の選択肢を選択したり、ロボット1に実行させるタスクの選択肢を選択したり、到着希望時刻を入力したりする。これにより、通信端末3は、到着地点情報、タスク情報、到着希望時刻情報及び当該通信端末3の識別情報をエレベータ管理システム2に出力する。
【0045】
通知部32は、表示装置を備える。通知部32には、入力される遅延情報や到着予定時刻、さらにタスクの選択肢や到着位置の選択肢、到着予定時刻の入力フォーム等が表示される。
【0046】
通信部33は、ロボット1の通信部15、エレベータ管理システム2の通信部23との間の無線通信を実現する。
【0047】
このような構成の移動管理システム100は、図4に示すように動作する。ちなみに、図4では、ロボット側で実行される処理を左側に示し、エレベータ管理システム側で実行される処理を右側に示している。
【0048】
先ず、ユーザが通信端末3の入力部31を操作して、到着地点、タスク、到着希望時刻を入力すると、通信端末3は、これらの到着地点情報、タスク情報、到着希望時刻情報及び当該通信端末3の識別情報を通信部33及びエレベータ管理システム2の通信部23を介して、エレベータ管理システム2に出力する。
【0049】
エレベータ管理システム2のロボット管理部21は、入力される到着地点情報、タスク情報に基づいて、複数のロボット1のうち実際にタスクを実行させるロボット1を選択する。そして、ロボット管理部21は、通信部23及びロボット1の通信部15を介して当該ロボット1に到着位置情報、タスク情報、到着希望時刻情報及び当該通信端末3の識別情報を出力する。
【0050】
ロボット1の経路生成部13は、入力された到着位置情報や位置推定部12が推定したロボット1の位置情報等に基づいて、当該到着地点までの経路を生成し、経路情報を経路評価部14に出力する(S1)。
【0051】
ロボット1の経路評価部14は、入力されたロボット1の位置情報と、経路情報と、到着希望時刻情報と、に基づいて、ロボット1がエレベータ4で移動する際に消費可能な時間を算出する(S2)。つまり、経路評価部14の搭乗時間算出部141は、ロボット1の位置情報と経路情報とに基づいて、搭乗フロアにおけるロボット1の現在位置からエレベータ4までの距離(da)、降機フロアにおけるエレベータ4から到着位置までの距離(db)を算出する。そして、搭乗時間算出部141は、算出した搭乗フロアにおけるロボット1の現在位置からエレベータ4までの距離(da)、降機フロアにおけるエレベータ4から到着位置までの距離(db)、予め設定されているロボット1の仮想速度(vt)、到着希望時刻(tl)、経路計画時点の現在時刻(tc)に基づいて、以下の<式1>でエレベータ4の移動で消費可能な時間(rt)を算出する。ちなみに、現在時刻情報はロボット1が備える時計機能から取得しても良く、外部から入力されても良い。
<式1> rt=(tl−tc)−(da+db)/vt
【0052】
搭乗時間算出部141は、搭乗要求情報を生成し、当該搭乗要求情報と、算出したエレベータ4の移動で消費可能な時間情報とを、通信部15及びエレベータ管理システム2の通信部23を介して、エレベータ管理システム2に出力する(S3)。
【0053】
エレベータ管理システム2におけるエレベータ管理部22の判定部221は、ロボット1からのエレベータ4への搭乗要求情報を受け付け(S4)、予め定められている優先順位に基づいて、搭乗要求のあったエレベータ4でのロボット毎の搭乗順位を決定する。
【0054】
このとき、判定部221は、ロボット毎のタスクの種類やエレベータ4で移動する際に消費可能な時間等に基づいて重みを算出し、この重みに基づいてロボット毎の優先順位を設定する(S5)。
【0055】
ここで、ロボット毎の優先順位は、以下のように設定される。図5に例示するように、予めタスクに対して重み付けがされている。さらに図6に例示するように、予めエレベータ4の移動に消費できる時間に対して重み付けがされている。ちなみに、図示例のように、各タスクや消費可能な時間に対してパラメータが振り分けられる。
【0056】
判定部221は、入力されたタスク情報と、エレベータ4の移動で消費可能な時間情報と、に基づいて、当該タスクの重みと、当該消費可能な時間の重みと、を積算する。例えば、判定部221は、ロボットα1号機に実行させるタスクが建屋内の巡回であり、消費可能な時間が3分の場合、ロボットα1号機の重みは、図5及び図6を参照すると、3×7で21となる。このように判定部221は、図7に示すように、ロボット毎(例えばロボットα1号機〜α5号機)の重みを算出する。そして、判定部221は、当該重みの高い順にエレベータ4に搭乗させるロボットを並べ替える(S6)。例えば、図7の例では、ロボットα1号機は5番目に搭乗要求しているが、並び替え後は4番目に順位付けされている。ちなみに、ユーザが到着希望時刻を入力していない場合は、当該消費可能な時間の重みを2(即ち、最も時間を消費できる状態)としてロボットの重みを算出する。
【0057】
判定部221は、搭乗順位に基づくロボット毎のエレベータ4で実際に移動する際に消費する時間を算出する(S7)。
【0058】
ここで、ロボット毎のエレベータ4で実際に移動する際に消費する時間は、以下のように算出される。先行してエレベータ4に搭乗するロボット1が当該エレベータ4を使用し終える時間(a1)、ロボット1が搭乗するエレベータ4の扉の前に到着してから、エレベータ管理システム2に対して搭乗許可要求情報を出力するまでの時間(a2)、ロボット1が搭乗許可要求情報を出力してから、エレベータ管理システム2の制御によってロボット1が待機するフロアにエレベータ4が到着するまでの時間(a3)、エレベータ4が当該フロアに到着してから、エレベータ管理システム2の制御によってロボット1が搭乗したエレベータ4が所定のフロアに到着するまでの時間(a4)、エレベータ4が所定のフロアに到着してから、エレベータ管理システム2の制御によってロボット1を降機させ、扉を閉鎖するまでの時間(a5)等に基づくと、エレベータ4で実際に移動する際に消費する時間(et)は、以下の<式2>で算出できる。但し、必要に応じて適宜、他の消費時間が追加される。
<式2>et=a1+a2+a3+a4+a5・・・
【0059】
判定部221は、算出したエレベータ4で実際に移動する際に消費する時間が、入力されるエレベータ4で移動する際に消費可能な時間以上であるか否かを判定し(S8)、判定結果をロボット1に出力する(S9)。ここで、判定部221は、判定結果に合わせて算出したエレベータ4で実際に移動する際に消費する時間情報をロボット1に出力することが好ましい。
【0060】
ちなみに、ユーザが予め許容できる待ち時間を判定部221に設定しておき、当該判定部221が判定した結果、算出したエレベータ4で実際に移動する際に消費する時間が、エレベータ4で移動する際に消費可能な時間以上であるだけでなく、当該許容時間も超える場合は、当該ロボット1に対して経路変更通知を出力しても良い。
【0061】
ロボット1には、判定結果やエレベータ4で実際に移動する際に消費する時間等が入力される。そして、ロボット1の経路評価部14は、当該判定結果を参照する(S10)。エレベータ4で実際に移動する際に消費する時間が、エレベータ4が移動する際に消費可能な時間未満であると、経路評価部14の移動指示部143は、駆動部11に経路生成部13で生成した経路情報に倣ってロボット1が移動するように制御させる(S14)。駆動部11は、入力される実行指示情報に基づいて、生成された経路情報に倣って、ロボット自身の位置情報を参照しつつ到着地点まで移動するように駆動モータを制御する。
【0062】
このとき、移動指示部143は、入力されたエレベータ4で実際に移動する際に消費する時間情報、現在時刻情報に基づいてロボット1の到着予定時刻情報を生成し、通信端末3に当該到着予定時刻情報を出力することが好ましい。
【0063】
一方、エレベータ4で実際に移動する際に消費する時間が、エレベータ4が移動する際に消費可能な時間以上であると、経路評価部14の遅延情報生成部142は、他に使用可能なエレベータ4が存在するか否かを判定する(S11)。他に使用可能なエレベータ4が存在するとS1に戻る。
【0064】
一方、遅延情報生成部142は、他に使用可能なエレベータが存在しないと、実行する予定のタスク等を入力した通信端末3に、エレベータ管理システム2を経由又は直接エレベータ4で実際に移動する際に消費する時間が、エレベータ4が移動する際に消費可能な時間以上である旨を示す遅延情報を出力すると共に、到着予定時刻を出力する(S12)。これにより、ユーザは、図8に示すように、通信端末3に遅延情報が出力されるので、ロボット1の到着が遅延することを認識することができる。
【0065】
このとき、通信端末3は、ロボット1にタスクの実行を中止させるか否かの入力を促すことが好ましい(S13)。ユーザが通信端末3の入力部31を介してタスクの実行の中止を入力すると、ロボット1はタスクの実行を中止する(S13のYESの場合)。一方、ユーザが通信端末3の入力部31を介してロボット1にタスクの実行を入力すると、ロボット1の経路評価部14は、駆動部11に経路生成部13で生成した経路情報に倣ってロボット1が移動するように制御させる(S13のNOの場合)。駆動部11は、入力される実行指示情報に基づいて、生成された経路情報に倣って、ロボット自身の位置情報を参照しつつ到着地点まで移動するように駆動モータを制御する。
【0066】
このようなロボットの移動管理システム及び移動管理方法は、予めタスクやロボットの移動に消費可能な時間等に基づいて設定された優先度の高低により、ロボット1の搭乗順位を設定することができる。このとき、タスクやロボットの移動に消費可能な時間等に対して重み付けをして優先度の高低を設定するので、簡単に優先度を設定することができる。
【0067】
しかも、遅延するロボット1へ指示を与えたユーザには、通信端末3に遅延情報が出力されるので、ロボット1の到着が遅延することを認識することができる。
【0068】
以上、本発明に係るロボットの移動管理システム及び移動管理方法の実施形態を説明したが、上記の構成に限らず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、変更することが可能である。
【0069】
上記実施形態では、ロボット1が位置推定部12、経路生成部13、経路評価部14を備えているが、その一部又は全部が外部のサーバ等に格納され、逐次、ロボット1との間で情報通信が行われる形態でも良い。
【0070】
上記実施形態では、エレベータ管理システム2がロボット管理部21を備えているが、外部のサーバ等に格納され、逐次、エレベータ管理システム2又はロボット1との間で情報通信が行われる形態でも良い。
【符号の説明】
【0071】
1 ロボット、11 駆動部、12 位置推定部、13 経路生成部、14 経路評価部、141 搭乗時間算出部、142 遅延情報生成部、143 移動指示部、15 通信部
2 エレベータ管理システム、21 ロボット管理部、22 エレベータ管理部、221 判定部、23 通信部
3 通信端末、31 入力部、32 通信部
4 エレベータ
100 移動管理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータに搭乗して目標とする到着地点まで移動する、複数のロボットの移動管理システムであって、
前記ロボットの現在位置を推定する位置推定手段と、
前記ロボットの到着地点情報及び位置情報に基づいて、使用するエレベータの情報を含む経路情報を生成する経路生成手段と、
前記ロボットの位置情報及び経路情報に基づいて、前記ロボットが前記エレベータで移動する際に消費可能な時間を算出する搭乗時間算出手段と、
予め定められた優先順位に基づいて、前記ロボット毎の搭乗順位を決定し、前記搭乗順位に基づく前記ロボット毎の前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間を算出し、前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間が、前記エレベータで移動する際に消費可能な時間以上であるか否かを判定する判定手段と、
前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間が、前記エレベータで移動する際に消費可能な時間以上であると、該当する前記ロボットの遅延情報を生成する遅延情報生成手段と、
前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間が、前記エレベータで移動する際に消費可能な時間未満であると、該当する前記ロボットに対して前記到着地点まで移動させる制御を実行させる移動指示手段と、
前記遅延情報が通知される通知手段と、
を備えるロボットの移動管理システム。
【請求項2】
前記遅延情報生成手段は、前記判定結果が前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間が、前記エレベータで移動する際に消費可能な時間以上であると、他に利用可能なエレベータがあるか否かを判定し、他に利用可能なエレベータがあると、前記経路生成手段に対して、該当する前記ロボットの前記エレベータを用いた経路情報を生成させ、他に利用可能なエレベータがないと、該当する前記ロボットの遅延情報を生成する請求項1に記載のロボットの移動管理システム。
【請求項3】
前記遅延情報生成手段は、前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間と現在時刻とに基づいて、前記ロボットの到着予定時刻情報を生成し、前記通知手段に出力する請求項1又は2に記載のロボットの移動管理システム。
【請求項4】
前記判定手段は、前記ロボット毎のタスクの種類又は前記エレベータで移動する際に消費可能な時間に基づいて重みを算出し、前記重みに基づいて前記ロボット毎の優先順位を設定する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のロボットの移動管理システム。
【請求項5】
前記ロボットは、前記位置推定手段と、前記経路生成手段と、前記搭乗時間算出手段と、前記遅延情報生成手段と、前記移動指示手段と、を備える自立移動型のロボットであって、
前記ロボットと、前記判定手段を備えるエレベータ管理システムと、ユーザが前記ロボットの到着地点及び到着希望時刻を入力可能な入力手段と前記通知手段とを備える通信端末と、の間は、無線通信が可能な構成とされる請求項1乃至4のいずれか1項に記載のロボットの移動管理システム。
【請求項6】
エレベータに搭乗して目標とする到着地点まで移動する、複数のロボットの移動管理方法であって、
前記ロボットの現在位置を推定するステップと、
前記ロボットの到着地点情報及び位置情報に基づいて、使用するエレベータの情報を含む経路情報を生成するステップと、
前記ロボットの位置情報及び経路情報に基づいて、前記ロボットが前記エレベータで移動する際に消費可能な時間を算出するステップと、
予め定められた優先順位に基づいて、前記ロボット毎の搭乗順位を決定し、前記搭乗順位に基づく前記ロボット毎の前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間を算出し、前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間が、前記エレベータで移動する際に消費可能な時間以上であるか否かを判定するステップと、
前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間が前記エレベータで移動する際に消費可能な時間以上であると、該当する前記ロボットの遅延情報を生成するステップと、
前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間が前記エレベータで移動する際に消費可能な時間未満であると、該当する前記ロボットに対して前記到着地点まで移動させる制御を実行させるステップと、
前記遅延情報を通知するステップと、
を備えるロボットの移動管理方法。
【請求項7】
前記判定結果が前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間が前記エレベータで移動する際に消費可能な時間以上であると、他に利用可能なエレベータがあるか否かを判定するステップと、
他に利用可能なエレベータがあると、該当する前記ロボットの前記エレベータを用いた経路情報を生成するステップと、
他に利用可能なエレベータがないと、該当する前記ロボットの遅延情報を生成するステップと、
を備える請求項6に記載のロボットの移動管理方法。
【請求項8】
前記エレベータで実際に移動する際に消費する時間と現在時刻とに基づいて、前記ロボットの到着予定時刻情報を生成し、当該到着時間情報を通知するステップを備える請求項6又は7に記載のロボットの移動管理方法。
【請求項9】
前記判定結果を出力するステップでは、前記ロボット毎のタスクの種類又は前記エレベータで移動する際に消費可能な時間に基づいて重みを算出し、前記重みに基づいて前記ロボット毎の優先順位を設定する請求項6乃至8のいずれか1項に記載のロボットの移動管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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