説明

ロボット教示用の安全装置

【課題】同一の安全柵内に設置された2台以上のロボットに対する教示用安全装置を提供する。
【解決手段】安全柵2に設けられた開閉扉12と、開閉扉に取外し不能に取り付けられた単一の安全プラグ14と、開閉扉の閉位置でのみ安全プラグと接続可能な単一の自動安全ソケット16と、開閉扉の開位置でのみ安全プラグと接続可能な複数の教示安全ソケット18A,18B,18Cとを備える。各教示安全ソケット18A,18B,18Cは、それぞれ別のロボット1A,1B,1Cに対応して設けられており、各ロボット1A,1B,1Cは、安全プラグ14と自動安全ソケット16が接続された場合にのみ自動運転可能であり、安全プラグ14と対応する教示安全ソケット18A,18B,18Cのいずれかが接続された場合にのみ対応するロボットの教示操作が可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2台以上のロボットが、同一の安全柵内に設置され、それぞれのロボットの教示操作等を安全柵内で操作しなければならない場合のロボット教示用の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械や産業用ロボットなどの機械設備は、設置エリアの周囲を安全柵(防護柵)で囲み、作業者が不用意に設置エリア内に入れないようにしている。
また、かかる設置エリアの出入り口の近傍に安全プラグおよび安全ソケットを設け、設置エリア内に入るときには、作業者が安全プラグを安全ソケットから引き抜いて携帯することによって、設置エリア内の機械設備が動作できないようにしている。
【0003】
しかしながら、作業者が上記安全プラグを引き抜くのを忘れて設置エリア内に入ってしまったような場合には、設置エリア内に作業者がいるにも拘らず、他の作業者が、それに気づかずに産業用ロボットなどを起動する可能性があった。
【0004】
そこで、このような場合でも、作業者の安全を高い信頼性で確保できる安全システムとして、特許文献1が提案されている。
【0005】
特許文献1では、図1に示すように、設置エリア内に設置された工作機械や産業用ロボットなどの機械設備に通電して機械設備を起動するには、通電許可用安全ソケット57の複数の装着部57aに、複数の安全プラグ50aの全てが装着されていなければならず、一方、設置エリア内に作業者が入るための出入り口の扉のロックを解除するためには、複数の安全プラグ50aの少なくともいずれか1個を、ロック解除用安全ソケット56の装着部に装着しなければならず、通電許可用安全ソケット57の複数のセーフティプラグ50aを抜き忘れて扉のロックを解除することはできないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−198560号公報、「安全システム」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
2台以上のロボットが、同一の安全柵内に設置され、それぞれのロボットの教示操作等を安全柵内で操作しなければならない場合、それぞれのロボット毎に教示用操作箱を用意して、操作員が安全柵内に入り教示操作を行っていた。
【0008】
しかし各ロボットにはそれぞれ別の教示用操作箱があるため、操作員が誤って意図していないロボットの教示用操作箱を操作した場合、意図していないロボットが動作するおそれがあった。
また、教示用操作箱が複数あるため、ある操作員が安全柵内であるロボットの教示操作を行っているときに、その操作員が認識していない別の操作員が別のロボットの教示操作を始めるおそれがあった。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、2台以上のロボットが、同一の安全柵内に設置され、それぞれのロボットの教示操作等を安全柵内で操作しなければならない場合に、(1)操作員が意図していないロボットの教示用操作箱を操作しても、意図していないそのロボットの作動を確実に防止することができ、(2)ある操作員が安全柵内であるロボットの教示操作を行っているときに、別の操作員による別のロボットの教示操作を確実に防止することができるロボット教示用の安全装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、2台以上のロボットが同一の安全柵内に設置され、それぞれのロボットの教示操作を安全柵内で操作するためのロボット教示用の安全装置であって、
前記安全柵内に操作員が出入りするために安全柵に設けられた開閉扉と、
該開閉扉に取外し不能に取り付けられた単一の安全プラグと、
開閉扉が閉じた位置でのみ前記安全プラグと接続可能な単一の自動安全ソケットと、
開閉扉が開いた位置でのみ前記安全プラグと接続可能な複数の教示安全ソケットとを備え、
各教示安全ソケットは、それぞれ別のロボットに対応して設けられており、
前記各ロボットは、安全プラグと自動安全ソケットが接続された場合にのみ自動運転可能であり、
安全プラグと対応する教示安全ソケットが接続された場合にのみ対応するロボットの教示操作が可能に構成されている、ことを特徴とするロボット教示用の安全装置が提供される。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によれば、各ロボットの制御盤に設けられ、前記安全プラグと自動安全ソケットが接続された場合にのみ自動運転を可能にする自動運転接点と、
各ロボットの制御盤に設けられ、前記安全プラグと対応する教示安全ソケットが接続された場合にのみ対応するロボットの教示操作を可能にする教示操作接点とを備える。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明の構成によれば、安全柵に設けられた開閉扉に取外し不能に取り付けられた単一の安全プラグと、開閉扉が閉じた位置でのみ安全プラグと接続可能な単一の自動安全ソケットとを備えるので、安全プラグと自動安全ソケットが接続された場合には、安全に自動運転でき、かつ自動運転中に開閉扉からの人の侵入を防止することができる。
【0013】
また、この状態で開閉扉を開くためには、安全プラグを自動安全ソケットから引き抜く(外す)必要があり、その引き抜きにより接続が切断され、自動運転が停止するので、引き抜きを忘れることなく、操作員が安全に開閉扉から出入りすることができる。
【0014】
また、上記本発明の構成によれば、開閉扉が開いた位置でのみ安全プラグと接続可能な複数の教示安全ソケットを備え、各教示安全ソケットは、それぞれ別のロボットに対応して設けられており、単一の安全プラグと対応する教示安全ソケットが接続された場合にのみ対応するロボットの教示操作が可能に構成されているので、安全プラグとある教示安全ソケットが接続された場合には、対応するロボットの教示操作はできるがその他のロボットの教示操作はできない。
従って、操作員が意図していないロボットの教示用操作箱を操作しても、意図していないそのロボットの作動を確実に防止することができる。
【0015】
また、ある操作員が安全柵内であるロボットの教示操作を行っているときには、単一の安全プラグと教示操作中のロボットに対応する教示安全ソケットが接続されているので、安全プラグを引き抜かない限り別のロボットの教示操作はできない。
従って、別の操作員による別のロボットの教示操作を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】特許文献1の安全システムの説明図である。
【図2】本発明によるロボット教示用安全装置の構成図である。
【図3】図2のロボット制御盤の模式的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0018】
図2は、本発明によるロボット教示用安全装置の構成図である。
本発明のロボット教示用安全装置10は、2台以上(この例では3台)のロボット1A,1B,1Cが同一の安全柵2内に設置され、それぞれのロボット1A,1B,1Cの教示操作を安全柵内で操作するためのロボット教示用の安全装置である。
なお、この図において、3は各ロボット1A,1B,1Cの動作範囲である。また、4A,4B,4Cは、それぞれロボット1A,1B,1Cに対応するロボット制御盤であり、5A,5B,5Cはそれぞれロボット制御盤4A,4B,4Cに対応する教示用操作箱である。
【0019】
本発明において、ロボットとは、産業用ロボットを想定しているが、本発明はこれに限定されず、安全柵2内に設置される限りで、その他のロボットやFA機器であってもよい。
ロボット制御盤4A,4B,4Cの設置位置は任意であり、この例では安全柵2の外側であるが、安全柵2の内側であってもよい。また、ロボット制御盤4A,4B,4Cは単一の制御盤であってもよい。
教示用操作箱5A,5B,5Cは、それぞれ対応するロボット制御盤4A,4B,4Cとのみ制御線またはワイヤレスで通信可能に構成されている。ロボット制御盤4A,4B,4Cを単一の制御盤で構成した場合でも、それぞれ対応するロボット1A,1B,1Cに対応する制御にのみ機能するようになっている。
なお、教示用操作箱5A,5B,5Cが単一の教示用操作箱であってもよく、その場合には、切替スイッチ等により、ロボット1A,1B,1Cのうち1台のみを選択するのが好ましい。
【0020】
図2において、本発明のロボット教示用安全装置10は、開閉扉12、単一の安全プラグ14、単一の自動安全ソケット16、及び複数(この例で3台)の教示安全ソケット18A,18B,18Cを備える。
【0021】
開閉扉12は、安全柵2内に操作員が出入りするために安全柵2に開閉可能に設けられている。開閉扉12の形式は、この例では蝶番で外側に開く外開き扉であるが、本発明はこれに限定されず、内開きでも、スライド式でもよい。
【0022】
単一の安全プラグ14は、開閉扉12に取外し不能に取り付けられている。取外し不能の取付けは、道具を用いずに外せない限りで、チェーン結合、ワイヤ結合、リンク機構等でもよい。
【0023】
単一の自動安全ソケット16は、開閉扉12が閉じた位置でのみ安全プラグ14と接続可能に構成されている。自動安全ソケット16は、開閉扉12が閉じた位置の近傍に固定され、道具を用いずに外せないようになっている。
【0024】
複数(この例では3つ)の教示安全ソケット18A,18B,18Cは、開閉扉12が開いた位置でのみ安全プラグ14と接続可能に構成されている。各教示安全ソケット18A,18B,18Cは、開閉扉12が開いた位置の近傍に固定され、道具を用いずに外せないようになっている。取外し不能の取付けは、道具を用いずに外せない限りで、チェーン結合、ワイヤ結合、リンク機構等でもよい。
また、各教示安全ソケット18A,18B,18Cは、それぞれ別のロボット1A,1B,1Cに対応して設けられている。
【0025】
図3は、図2のロボット制御盤の模式的構成図である。この図において、(A)はロボット1Aに対応するロボット制御盤4Aであり、(B)はロボット1Bに対応するロボット制御盤4Bであり、(C)はロボット1Cに対応するロボット制御盤4Cである。
【0026】
各ロボット1A,1B,1Cは、安全プラグ14と自動安全ソケット16が接続された場合にのみ自動運転可能に構成されている。
図3において、各ロボット1A,1B,1Cのロボット制御盤4A,4B,4Cには、自動運転接点20A,20B,20Cがそれぞれ設けられている。これらの自動運転接点20A,20B,20Cは、安全プラグ14と自動安全ソケット16が接続された場合にのみ接続され、ロボット制御盤4A,4B,4Cの自動運転A1,B1,C1を可能にするようになっている。この自動運転は単独でも、全体が連動してもよい。
自動運転接点20A,20B,20Cは、この例では開接点であるが、閉接点であってもよい。
【0027】
また、各ロボット1A,1B,1Cは、安全プラグ14と対応する教示安全ソケット18A,18B,18Cのいずれか1つが接続された場合にのみ、対応するロボット1A,1B,1Cの教示操作が可能に構成されている。
図3において、各ロボット1A,1B,1Cのロボット制御盤4A,4B,4Cには、教示操作接点22A,22B,22Cがそれぞれ設けられている。これらの教示操作接点22A,22B,22Cは、安全プラグ14と対応する教示安全ソケット18A,18B,18Cのいずれか1つが接続された場合にのみ、対応するロボットの教示操作A2,B2,C2を可能にするようになっている。従って、この教示操作A2,B2,C2はいずれか1つしか同時にはできないようになっている。
教示操作接点22A,22B,22Cは、この例では開接点であるが、閉接点であってもよい。
【0028】
さらに本発明のロボット教示用安全装置10は、「ロックアウトとの併用」と「教示用操作箱の教示モードロック機能の併用」を行っている。
【0029】
(ロックアウトとの併用)
安全柵内での作業中に、誤って別の人が教示安全ソケット18A〜18Cに接続してある安全プラグ14を抜いて、開閉扉12を閉めて自動安全ソケット16にさしてしまい、自動運転を開始してしまうことを防止するために、ロックアウトを併用し、安全を確保する。
具体的には、ロボット制御盤4A〜4Cの動力電源を入れる事ができないように、例えば錠前でロックしてしまう、動力電源用スイッチのキーを抜いて安全柵内に立ち入る、などを実施する。
【0030】
(教示用操作箱の教示モードロック機能の併用)
上記と同様、別の作業員が誤って自動運転を開始しないようにするため、教示用操作箱の教示モードロック機能を併用することが望ましい。
この教示モードロック機能を有効にすると、ロボット制御盤4A〜4Cで運転モードを変更しようとしても、教示モードから変更する事ができず、ロボット制御盤4A〜4Cから操作を行う事ができなくなる。
【0031】
上述した本発明の構成によれば、安全柵2に設けられた開閉扉12に取外し不能に取り付けられた単一の安全プラグ14と、開閉扉12が閉じた位置でのみ安全プラグ14と接続可能な単一の自動安全ソケット16とを備えるので、安全プラグ14と自動安全ソケット14が接続された場合には、開閉扉12が閉じた状態であり、安全に自動運転でき、かつ自動運転中に開閉扉12からの人の侵入を防止することができる。
【0032】
また、この状態で開閉扉12を開くためには、安全プラグ14を自動安全ソケット16から引き抜く(外す)必要があり、その引き抜きにより接続が切断され、自動運転が停止するので、引き抜きを忘れることなく、操作員が安全に開閉扉から出入りすることができる。
【0033】
また、上述した本発明の構成によれば、開閉扉12が開いた位置でのみ安全プラグ14と接続可能な複数の教示安全ソケット18A,18B,18Cを備え、各教示安全ソケット18A,18B,18Cは、それぞれ別のロボット1A,1B,1Cに対応して設けられており、単一の安全プラグ14と対応する教示安全ソケット18A,18B,18Cが接続された場合にのみ対応するロボット1A,1B,1Cの教示操作が可能に構成されているので、安全プラグ14とある教示安全ソケット18A,18B,18Cが接続された場合には、対応するロボットの教示操作はできるがその他のロボットの教示操作はできない。
従って、操作員が意図していないロボットの教示用操作箱を操作しても、意図していないそのロボットの作動を確実に防止することができる。
【0034】
また、ある操作員が安全柵内であるロボットの教示操作を行っているときには、単一の安全プラグ14と教示操作中のロボットに対応する教示安全ソケット18A,18B,18Cのいずれかが接続されているので、安全プラグ14を引き抜かない限り別のロボットの教示操作はできない。
従って、別の操作員による別のロボットの教示操作を確実に防止することができる。
【0035】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
1A,1B,1C ロボット(FA機器)、2 安全柵、
3 ロボットの動作範囲、4A,4B,4C ロボット制御盤、
5A,5B,5C 教示用操作箱、
10 ロボット教示用安全装置、12 開閉扉、
14 安全プラグ、16 自動安全ソケット、
18A,18B,18C 教示安全ソケット、
20A,20B,20C 自動運転接点、
22A,22B,22C 教示操作接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2台以上のロボットが同一の安全柵内に設置され、それぞれのロボットの教示操作を安全柵内で操作するためのロボット教示用の安全装置であって、
前記安全柵内に操作員が出入りするために安全柵に設けられた開閉扉と、
該開閉扉に取外し不能に取り付けられた単一の安全プラグと、
開閉扉が閉じた位置でのみ前記安全プラグと接続可能な単一の自動安全ソケットと、
開閉扉が開いた位置でのみ前記安全プラグと接続可能な複数の教示安全ソケットとを備え、
各教示安全ソケットは、それぞれ別のロボットに対応して設けられており、
前記各ロボットは、安全プラグと自動安全ソケットが接続された場合にのみ自動運転可能であり、
安全プラグと対応する教示安全ソケットが接続された場合にのみ対応するロボットの教示操作が可能に構成されている、ことを特徴とするロボット教示用の安全装置。
【請求項2】
各ロボットの制御盤に設けられ、前記安全プラグと自動安全ソケットが接続された場合にのみ自動運転を可能にする自動運転接点と、
各ロボットの制御盤に設けられ、前記安全プラグと対応する教示安全ソケットが接続された場合にのみ対応するロボットの教示操作を可能にする教示操作接点とを備える、ことを特徴とする請求項1に記載のロボット教示用の安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−247243(P2010−247243A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96579(P2009−96579)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】