説明

ロボット溶接のアークスタート制御方法

【課題】溶接ワイヤと母材とを一旦短絡させた後に溶接ロボットによって溶接トーチを後退移動させて溶接ワイヤを母材から引き離してアークを発生させるアークスタート方法の性能を向上させること。
【解決手段】本発明は、溶接ワイヤと母材とを一旦短絡させた後に引き離して初期アークを発生させ、溶接トーチを所定位置まで後退移動させると共に初期アーク電流Iasを通電し、その後は溶接ワイヤの定常送給及び定常溶接電流Icの通電を開始して初期アークから定常アークに移行させるロボット溶接のアークスタート制御方法において、前記初期アーク発生時点から再短絡防止期間Th中は、再短絡を防止するために前記初期アーク電流Iasよりも大きな値の再短絡防止電流Ihを通電するロボット溶接のアークスタート制御方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ワイヤと母材とを一旦短絡させた後に溶接ロボットによって溶接トーチを後退移動させて溶接ワイヤを母材から引き離してアークを発生させるリトラクトアークスタートの性能を改善するためのロボット溶接のアークスタート制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は、消耗電極アーク溶接を行うロボット溶接装置の構成図である。ロボット制御装置RCは、ロボット本体(マニピュレータ)RMに配置された複数軸のサーボモータを動作制御するための動作制御信号Mcを出力すると共に、溶接電源PSとの間で溶接開始信号St、送給速度設定信号Fr、溶接電圧設定信号Vr及び短絡/アーク判別信号Saを含むインターフェース信号を送受信する。溶接電源PSは、上記のインターフェース信号を送受信し、溶接電圧Vw及び溶接電流Iwを出力すると共に、ワイヤ送給モータWMを制御するための送給制御信号Fcを出力する。ロボット本体RMは、ワイヤ送給モータWM、溶接トーチ4等を載置し、溶接トーチ4の先端位置(TCP)を予め教示された溶接線に沿って移動させる。溶接ワイヤ1は、ワイヤ送給モータWMによって溶接トーチ4内を通って送給されて、母材2との間でアーク3が発生して溶接が行われる。
【0003】
図6は、上述したロボット溶接装置を使用したリトラクトアークスタート方法のタイミングチャートである。同図(A)は溶接開始信号Stの、同図(B)は送給速度設定信号Frの、同図(C)は溶接電圧Vwの、同図(D)は短絡/アーク判別信号Saの、同図(E)は溶接電流Iwの、同図(F)は給電チップ4a・母材間距離Ltの、同図(G)はワイヤ先端・母材間距離(アーク発生中はアーク長La)Lwの時間変化を示し、同図(H1)〜(H5)は各時刻におけるアーク発生個所の状態を示す模式図である。以下、同図を参照して説明する。
【0004】
(1)時刻t1〜t2のスローダウン送給期間
時刻t1において、ロボットによって溶接トーチが溶接開始位置に到達して停止し、同図(A)に示すように、ロボット制御装置RCから溶接開始信号Stが出力(Highレベル)されると、同図(B)に示すように、送給速度設定信号Frはスローダウン送給速度となり、溶接ワイヤは遅いスローダウン送給速度で送給される。同時に、同図(C)に示すように、溶接電源PSは出力を開始し、溶接電圧Vwは無負荷電圧となる。この期間中は、同図(F)に示すように、溶接トーチは停止しているので、チップ・母材間距離Ltは一定値である。他方、同図(G)に示すように、ワイヤ先端・母材間距離Lwはスローダウン送給によって次第に短くなる。
【0005】
(2)時刻t2〜t3の短絡期間
時刻t2において、同図(H2)に示すように、ワイヤ先端が母材に短絡すると、同図(C)に示すように、溶接電圧Vwは低い短絡電圧値となり、同図(D)に示すように、この電圧変化を判別して短絡/アーク判別信号SaがHighレベル(短絡)になる。これに応動して、同図(B)に示すように、送給速度設定信号Frはゼロになり、送給は停止する。同時に、同図(E)に示すように、20〜80A程度の小電流値の短絡電流が通電する。さらに、同時に、溶接トーチが母材から引き離される方向への移動(後退移動)を開始し、同図(F)に示すように、チップ・母材間距離Ltが徐々に長くなる。
【0006】
(3)時刻t3〜t4のリトラクト期間
時刻t3において、同図(H3)に示すように、溶接トーチの後退移動によってワイヤ先端と母材との間に隙間ができると初期アーク3aが発生し、同図(C)に示すように、溶接電圧Vwは数十Vのアーク電圧Vaになり、同図(D)に示すように、短絡/アーク判別信号SaはLowレベル(アーク)に変化する。これに応動して、同図(E)に示すように、溶接電流Iwは上記の短絡電流と同程度の値の初期アーク電流Isが通電する。この初期アーク電流Isは電流値を一定値にするために定電流制御されることが多い。同図(F)に示すように、溶接トーチの後退移動は所定位置に到達する時刻t4まで継続する。同図(H4)に示すように、この期間中初期アーク3aのまま維持されて、同図(G)に示すように、アーク長La(=Lw)は後退移動距離に対応する距離だけ徐々に長くなる。この期間は100〜500ms程度である。
【0007】
(4)時刻t4以降の定常期間
時刻t4において、同図(F)に示すように、溶接トーチの後退移動が所定位置に到達すると、同図(B)に示すように、送給速度設定信号Frは定常送給速度となり、溶接ワイヤの定常送給が開始される。同時に、同図(E)に示すように、定常送給に対応した定常溶接電流Icの通電が開始する。溶接トーチは溶接線に沿って移動を開始する。すなわち、時刻t4以降は、通常の消耗電極アーク溶接のアークスタート制御と同様になる。このときのアーク長Laは、同図(G)に示すように、定常アーク長へ収束し、同図(H5)に示すように、初期アーク3aから定常アーク3bへと移行する。
【0008】
上記の時刻t1〜t2の期間においては、溶接ワイヤを送給して短絡状態にしたが、送給は停止したままで溶接トーチを母材に近づく方向へ移動(前進移動)させて短絡させる場合もある。上述したリトラクトアークスタートは、通常のアークスタートではアークスタート性が悪い材料(アルミニウム合金、ステンレス鋼等)に対しても確実に良好なアークスタートを行うことができる。また、リトラクトアークスタートは、鉄鋼材であってもアークスタート時のスパッタ発生量を大幅に減少させることができる。これらの特徴を有するために、リトラクトアークスタートは高品質溶接に使用されている。上述した従来技術については、特許文献1及び2を参照。
【0009】
【特許文献1】特開2002−178145号公報
【特許文献2】特開2002−205169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図6に示すように、時刻t3において、溶接トーチの後退移動によってワイヤ先端と母材との間にわずかな隙間ができるとその隙間に初期アークが発生する。その後も溶接トーチの後退移動が継続されて、同図(G)に示すように、次第にアーク長は長くなる。ところで、溶接ワイヤは溶接トーチのケーブル内を送給される。このときにケーブル内である程度蛇行しながら送給される。この蛇行分が送給の遊び分となる。この送給の遊び分は溶接トーチの溶接姿勢によって多くなる。また、ロボットの移動には小さな振動が伴うために、後退移動時に溶接トーチも振動する。時刻t3直後において、ワイヤ先端に隙間ができたために上記の溶接ワイヤの遊び分によってワイヤ先端位置が急に変化することがある。同様に、溶接トーチの振動によってもワイヤ先端位置が変化する。このワイヤ先端位置の変化は1、2mm程度と小さなものである。しかし、時刻t3直後の隙間(アーク長)は1mm程度よりも短いために、このワイヤ先端位置が母材側へ変化するとワイヤ先端と母材との再短絡が生じる。他方、ワイヤ先端位置が母材から離れる方向に変化したときは、アーク長が少し長くなる程度であり悪影響は少ない。再短絡が発生すると、初期アークによってワイヤ先端の表面は溶融状態にあるので、ワイヤ先端は母材に溶着することになる。溶着が一旦生じると、これを解除するためには数百Aの大電流を通電する必要があり、スパッタが多く発生する不良アークスタートとなる。したがって、初期アーク発生直後の再短絡を防止することは良好なアークスタート性を得るために重要である。
【0011】
そこで、本発明では、初期アーク発生直後の再短絡を防止して良好なアークスタート性を得ることができるロボット溶接のアークスタート制御方法を提供する。

【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、溶接ワイヤと母材とを一旦短絡させた後に溶接ロボットによって溶接トーチを後退移動させて溶接ワイヤを母材から引き離して初期アークを発生させ、この初期アークを維持したままで溶接トーチを所定位置まで後退移動させると共にこの初期アーク期間中は定常溶接電流よりも小さな値の初期アーク電流を通電し、その後は溶接ワイヤの定常送給及び定常溶接電流の通電を開始して初期アークから定常アークに移行させると共に溶接線に沿って溶接トーチの移動を開始するロボット溶接のアークスタート制御方法において、
前記初期アーク期間の開始時点から再短絡防止期間中は、前記初期アーク発生直後のワイヤ先端と母材との再短絡を防止するために前記初期アーク電流よりも大きな値の再短絡防止電流を通電し、その後は前記初期アーク電流を通電する、ことを特徴とするロボット溶接のアークスタート制御方法である。
【0013】
また、第2の発明は、第1の発明記載の再短絡防止期間は、アーク電圧が所定アーク長に対応する所定値に略等しくなった時点で終了する期間である、ことを特徴とするロボット溶接のアークスタート制御方法である。
【0014】
また、第3の発明は、前記再短絡防止電流を、アーク電圧に応じて略反比例するように変化させる、ことを特徴とする第1又は第2の発明記載のロボット溶接のアークスタート制御方法である。
【発明の効果】
【0015】
上記第1の発明によれば、初期アーク発生時点から大きな値の再短絡防止電流を通電することによってアーク長を急速に長くすることができる。このために、上述した遊び分及び振動によるワイヤ先端位置の急な変化が生じてもワイヤ先端と母材との再短絡を防止することができ、良好なアークスタート性を得ることができる。
【0016】
上記第2の発明によれば、上記効果に加えて、アーク電圧に応じて再短絡防止期間を可変制御することによって、再短絡防止期間終了時点でのアーク長を適正値に調整することができ、アークスタート性をさらに向上させることができる。
【0017】
上記第3の発明によれば、上記効果に加えて、アーク電圧に応じて再短絡防止電流を可変制御することによって、再短絡防止期間終了時点でのアーク長を適正値に調整することができ、アークスタート性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係るロボット溶接のアークスタート制御方法を示すタイミングチャートである。同図(A)は溶接開始信号Stの、同図(B)は送給速度設定信号Frの、同図(C)は溶接電圧Vwの、同図(D)は短絡/アーク判別信号Saの、同図(E)は溶接電流Iwの、同図(F)はチュプ・母材間距離Ltの、同図(G)はワイヤ先端・母材間距離Lw(=アーク長La)の時間変化を示す。使用する溶接装置については上述した図5の構成と同一である。同図は上述した図6と対応しており、時刻t3までの動作は同一なので説明は省略する。以下、時刻t3以降について説明する。
【0020】
時刻t3において、同図(G)に示すように、溶接トーチの後退移動によってワイヤ先端と母材との間に隙間ができると初期アークが発生し、同図(C)に示すように、溶接電圧Vwはアーク電圧Vaに上昇し、同図(D)に示すように、短絡/アーク判別信号SaはLowレベル(アーク)に変化する。これに応動して、同図(E)に示すように、予め定めた再短絡防止期間Th中は大きな値に予め定めた再短絡防止電流Ihを通電する。これにより、同図(G)に示すように、アーク長Laは急速に長くなる。これは、大きな値の再短絡防止電流Ihの通電によってワイヤ先端を溶融させて燃え上がらせてアーク長を長くしたためである。したがって、再短絡防止期間Th及び再短絡防止電流Ihは、この燃え上がりが適正となる値に設定される。また、両値の適正値は溶接ワイヤの材質、直径、溶接法等によって変化する。数値例を示すと、再短絡防止期間Thは5〜50ms程度である。再短絡防止電流Ihは、20〜80A程度の初期アーク電流Iasよりも大きな値であり、定常溶接電流Ic付近の値に設定する。この再短絡防止期間Th中にアーク長Laは急速に長くなるので、上述した遊び分及び振動によってワイヤ先端位置が急に母材側に近づいても再短絡は発生しない。
【0021】
時刻t31において、再短絡防止期間Thが終了すると、同図(E)に示すように、溶接電流Iwは再短絡防止電流Ihから初期アーク電流Iasに変化する。この初期アーク電流Iasは、ワイヤ先端をほとんど溶融しない程度の小電流値であれば良い。したがって、再短絡防止電流Ihの通電制御は、定電流制御でも定電圧制御でも良い。時刻t4において、同図(F)に示すように、溶接トーチが後退移動によって所定位置に到達すると、同図(B)に示すように、送給速度設定信号Frは定常送給速度に変化し、溶接ワイヤは定常送給を開始する。同様に、同図(E)に示すように、溶接電流Iwは定常送給速度に対応した定常溶接電流Icになり、初期アークから定常アークへと円滑に移行する。同図(E)では、再短絡防止電流Ihを一定値としているが、時間経過と共に減少する右下がりの電流でも良い。これは、初期アーク発生後のアーク長をできるだけ速やかに長くするためである。同図に示すように、時刻t3〜t31の再短絡防止期間Thは、時刻t3〜t4の初期アーク期間の半分以下の時間である。
【0022】
[実施の形態2]
図2は、本発明の実施の形態2に係るロボット溶接のアークスタート制御方法を示すタイミングチャートである。同図は上述した図1と対応しており、再短絡防止期間Thの可変制御のみが異なる。以下、同図を参照してこの異なる点について説明する。
【0023】
再短絡防止期間Thは、時刻t3において初期アークが発生した時点から開始し、時刻t31においてアーク長Laが所定値Lmになった時点で終了する。すなわち、同図(G)に示すように、アーク長Laが所定値Lmに達したことを、同図(C)に示すように、アーク電圧Vaが所定アーク長Lmに対応する所定値Vmに達したことによって判別している。これにより、再短絡防止期間Thが終了する時点でのアーク長Laを常に適正値に調整することができる。したがって、溶接条件に応じて予め実験によって再短絡防止期間Thの適正値を求める手間が省ける。また、上述したワイヤ先端位置の変動量及び変動方向はその都度異なっているので、これらの変動を吸収してアーク長を所定値に調整することができる。このためにアークスタート性をさらに向上させることができる。
【0024】
[実施の形態3]
図3は、本発明の実施の形態3に係るロボット溶接のアークスタート制御方法を示すタイミングチャートである。同図は上述した図1と対応しており、再短絡防止電流Ihの可変制御のみが異なる。以下、同図を参照してこの異なる点について説明する。
【0025】
再短絡防止電流Ihは、同図(C)に示すアーク電圧Vaの変化と略反比例するように制御させる。すなわち、Ih=f(Va)として、再短絡防止電流Ihをアーク電圧Vaの関数として変化させる。アーク電圧Vaが上昇すると再短絡防止電流Ihは減少する反比例の関係にある。関数例を挙げると、Ih=Ih0−70・(Va−Vr)とする。ここで初期値Ih0≒Icとし、Vrは溶接電圧設定値である。この関数によれば、アーク電圧Vaが1V上昇すると再短絡防止電流Ihは70A減少する。再短絡防止期間Thは所定値とする。このようにすることによって、結果的には、同図(G)に示すように、アーク長La(アーク電圧Va)が所定値Lmになるように再短絡防止電流Ihを可変制御していることになる。すなわち、上述した実施の形態2ではアーク電圧Vaに応じて再短絡防止期間Thを可変することで、本実施の形態ではアーク電圧Vaに応じて再短絡防止電流Ihを可変することで、再短絡防止期間Th終了時点でのアーク長Laを所定値Lmに調整している。
【0026】
[実施の形態4]
図4は、本発明の実施の形態4に係るロボット溶接のアークスタート制御方法を示すタイミングチャートである。同図は上述した図1〜3と対応しており、再短絡防止期間Th及び再短絡防止電流Ihが共に可変制御される点が異なる。以下、同図を参照してこの異なる点について説明する。
【0027】
同図では、アーク電圧Vaに応じて再短絡防止期間Th及び再短絡防止電流Ihが可変制御される。再短絡防止期間Thは、実施の形態2と同様に、アーク電圧Vaが所定値Vmに達した時点で終了する。再短絡防止電流Ihは、実施の形態3と同様に、アーク電圧Vaの変化に略反比例して変化する。すなわち、本実施の形態は、実施の形態2及び3を同時に行うものである。これによって、再短絡防止期間Th終了時点でのアーク長Laが所定値Lmに等しくなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1に係るロボット溶接のアークスタート制御方法を示すタイミングチャートである。
【図2】本発明の実施の形態2に係るロボット溶接のアークスタート制御方法を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の実施の形態3に係るロボット溶接のアークスタート制御方法を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の実施の形態4に係るロボット溶接のアークスタート制御方法を示すタイミングチャートである。
【図5】従来技術のロボット溶接装置の構成図である。
【図6】従来技術におけるロボット溶接のアークスタート制御方法を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0029】
1 溶接ワイヤ
2 母材
3 アーク
3a 初期アーク
3b 定常アーク
4 溶接トーチ
4a 給電チップ
Fc 送給制御信号
Fr 送給速度設定信号
Ias 初期アーク電流
Ic 定常溶接電流
Ih 再短絡防止電流
Is 初期アーク電流
Iw 溶接電流
La アーク長
Lm 所定アーク長
Lt チップ・母材間距離
Lw ワイヤ先端・母材間距離
Mc 動作制御信号
PS 溶接電源
RC ロボット制御装置
RM ロボット本体
Sa 短絡/アーク判別信号
St 溶接開始信号
Th 再短絡防止期間
Va アーク電圧
Vm 所定値
Vr 溶接電圧設定信号
Vw 溶接電圧
WM ワイヤ送給モータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ワイヤと母材とを一旦短絡させた後に溶接ロボットによって溶接トーチを後退移動させて溶接ワイヤを母材から引き離して初期アークを発生させ、この初期アークを維持したままで溶接トーチを所定位置まで後退移動させると共にこの初期アーク期間中は定常溶接電流よりも小さな値の初期アーク電流を通電し、その後は溶接ワイヤの定常送給及び定常溶接電流の通電を開始して初期アークから定常アークに移行させると共に溶接線に沿って溶接トーチの移動を開始するロボット溶接のアークスタート制御方法において、
前記初期アーク期間の開始時点から再短絡防止期間中は、前記初期アーク発生直後のワイヤ先端と母材との再短絡を防止するために前記初期アーク電流よりも大きな値の再短絡防止電流を通電し、その後は前記初期アーク電流を通電する、ことを特徴とするロボット溶接のアークスタート制御方法。
【請求項2】
請求項1記載の再短絡防止期間は、アーク電圧が所定アーク長に対応する所定値に略等しくなった時点で終了する期間である、ことを特徴とするロボット溶接のアークスタート制御方法。
【請求項3】
前記再短絡防止電流を、アーク電圧に応じて略反比例するように変化させる、ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のロボット溶接のアークスタート制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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