説明

ローカル周波数誤差測定装置、方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】ローカル周波数の誤差を測定する。
【解決手段】直交復調器10が、RF入力(周波数:fc+Δf)とローカル信号とを乗算する同相乗算器16Iと、RF入力と直交ローカル信号とを乗算する直交乗算器16Qと、ローカル信号出力器12とを有し、ローカル信号の周波数が所定値fcに設定される。直交復調器10におけるローカル信号の周波数の所定値fcに対する周波数誤差ferrを、ローカル周波数誤差測定装置20が測定する。ローカル周波数誤差測定装置20は、同相側A/D変換器24I、直交側A/D変換器24Q、直交復調器10の出力の位相を時間に対応付けて導出する位相特性導出部26と、周波数誤差ferrを導出する周波数誤差導出部28とを備える。しかも、同相側A/D変換器24Iおよび直交側A/D変換器24Qのサンプリング周波数fsを、ΔfまたはΔf/(2n)(ただし、nは正の整数)とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直交復調器のローカル周波数の誤差の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ローカル発振器を有する直交復調器が知られている(例えば、特許文献1の図1参照)。ここで、ローカル発振器の出力するローカル信号の周波数(「ローカル周波数」という)が、所望の設定値からずれることがある。ローカル周波数の実際の値と、所望の設定値との差分がローカル周波数の誤差である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−211619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ローカル周波数の誤差を測定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、アナログ入力信号を受け、(1)前記アナログ入力信号とローカル信号とを乗算する同相乗算器と、(2)前記アナログ入力信号と、前記ローカル信号の位相を90度ずらした直交ローカル信号とを乗算する直交乗算器と、(3)前記ローカル信号を出力するローカル信号出力器とを有し、前記ローカル信号の周波数が所定値に設定される直交復調器における前記ローカル信号の周波数の前記所定値に対する周波数誤差を測定するローカル周波数誤差測定装置であって、前記同相乗算器の出力する同相側アナログ信号を、同相側デジタル信号に変換する同相側A/D変換器と、前記直交乗算器の出力する直交側アナログ信号を、直交側デジタル信号に変換する直交側A/D変換器と、前記同相側デジタル信号および前記直交側デジタル信号に基づき、前記直交復調器の出力の位相を時間に対応付けて導出する位相特性導出部と、前記位相特性導出部の導出結果に基づき、前記周波数誤差を導出する周波数誤差導出部と、を備え、前記アナログ入力信号の周波数と前記所定値との差をΔfとしたときに、前記同相側A/D変換器および前記直交側A/D変換器のサンプリング周波数を、ΔfまたはΔf/(2n)(ただし、nは正の整数)とするローカル周波数誤差測定装置である。
【0006】
上記のように構成されたローカル周波数誤差測定装置によれば、アナログ入力信号を受け、(1)前記アナログ入力信号とローカル信号とを乗算する同相乗算器と、(2)前記アナログ入力信号と、前記ローカル信号の位相を90度ずらした直交ローカル信号とを乗算する直交乗算器と、(3)前記ローカル信号を出力するローカル信号出力器とを有し、前記ローカル信号の周波数が所定値に設定される直交復調器における前記ローカル信号の周波数の前記所定値に対する周波数誤差が測定される。
【0007】
しかも、上記のように構成されたローカル周波数誤差測定装置によれば、同相側A/D変換器が、前記同相乗算器の出力する同相側アナログ信号を、同相側デジタル信号に変換する。直交側A/D変換器が、前記直交乗算器の出力する直交側アナログ信号を、直交側デジタル信号に変換する。位相特性導出部が、前記同相側デジタル信号および前記直交側デジタル信号に基づき、前記直交復調器の出力の位相を時間に対応付けて導出する。周波数誤差導出部が、前記位相特性導出部の導出結果に基づき、前記周波数誤差を導出する。さらに、前記アナログ入力信号の周波数と前記所定値との差をΔfとしたときに、前記同相側A/D変換器および前記直交側A/D変換器のサンプリング周波数を、ΔfまたはΔf/(2n)(ただし、nは正の整数)とする。
【0008】
なお、本発明にかかるローカル周波数誤差測定装置は、前記周波数誤差導出部は、前記位相特性導出部の導出結果における、前記位相の前記時間に対する変化の割合に基づき、前記周波数誤差を導出するようにしてもよい。
【0009】
本発明は、アナログ入力信号を受け、(1)前記アナログ入力信号とローカル信号とを乗算する同相乗算器と、(2)前記アナログ入力信号と、前記ローカル信号の位相を90度ずらした直交ローカル信号とを乗算する直交乗算器と、(3)前記ローカル信号を出力するローカル信号出力器とを有し、前記ローカル信号の周波数が所定値に設定される直交復調器における前記ローカル信号の周波数の前記所定値に対する周波数誤差を測定するローカル周波数誤差測定方法であって、前記同相乗算器の出力する同相側アナログ信号を、同相側デジタル信号に変換する同相側A/D変換工程と、前記直交乗算器の出力する直交側アナログ信号を、直交側デジタル信号に変換する直交側A/D変換工程と、前記同相側デジタル信号および前記直交側デジタル信号に基づき、前記直交復調器の出力の位相を時間に対応付けて導出する位相特性導出工程と、前記位相特性導出工程の導出結果に基づき、前記周波数誤差を導出する周波数誤差導出工程と、を備え、前記アナログ入力信号の周波数と前記所定値との差をΔfとしたときに、前記同相側A/D変換工程および前記直交側A/D変換工程のサンプリング周波数を、ΔfまたはΔf/(2n)(ただし、nは正の整数)とするローカル周波数誤差測定方法である。
【0010】
本発明は、アナログ入力信号を受け、(1)前記アナログ入力信号とローカル信号とを乗算する同相乗算器と、(2)前記アナログ入力信号と、前記ローカル信号の位相を90度ずらした直交ローカル信号とを乗算する直交乗算器と、(3)前記ローカル信号を出力するローカル信号出力器とを有し、前記ローカル信号の周波数が所定値に設定される直交復調器における前記ローカル信号の周波数の前記所定値に対する周波数誤差を測定するローカル周波数誤差測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記同相乗算器の出力する同相側アナログ信号を同相側デジタル信号に変換する同相側A/D変換器と、前記直交乗算器の出力する直交側アナログ信号を直交側デジタル信号に変換する直交側A/D変換器とから得られた前記同相側デジタル信号および前記直交側デジタル信号に基づき、前記直交復調器の出力の位相を時間に対応付けて導出する位相特性導出処理と、前記位相特性導出処理の導出結果に基づき、前記周波数誤差を導出する周波数誤差導出処理と、をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記アナログ入力信号の周波数と前記所定値との差をΔfとしたときに、前記同相側A/D変換器および前記直交側A/D変換器のサンプリング周波数を、ΔfまたはΔf/(2n)(ただし、nは正の整数)とするプログラムである。
【0011】
本発明は、アナログ入力信号を受け、(1)前記アナログ入力信号とローカル信号とを乗算する同相乗算器と、(2)前記アナログ入力信号と、前記ローカル信号の位相を90度ずらした直交ローカル信号とを乗算する直交乗算器と、(3)前記ローカル信号を出力するローカル信号出力器とを有し、前記ローカル信号の周波数が所定値に設定される直交復調器における前記ローカル信号の周波数の前記所定値に対する周波数誤差を測定するローカル周波数誤差測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、前記同相乗算器の出力する同相側アナログ信号を同相側デジタル信号に変換する同相側A/D変換器と、前記直交乗算器の出力する直交側アナログ信号を直交側デジタル信号に変換する直交側A/D変換器とから得られた前記同相側デジタル信号および前記直交側デジタル信号に基づき、前記直交復調器の出力の位相を時間に対応付けて導出する位相特性導出処理と、前記位相特性導出処理の導出結果に基づき、前記周波数誤差を導出する周波数誤差導出処理と、をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、前記アナログ入力信号の周波数と前記所定値との差をΔfとしたときに、前記同相側A/D変換器および前記直交側A/D変換器のサンプリング周波数を、ΔfまたはΔf/(2n)(ただし、nは正の整数)とする記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態にかかるローカル周波数誤差測定装置20の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】位相特性導出部26の出力の一例を示す図である。
【図3】サンプリングクロックの周波数fsをΔfとしたときの、同相側A/D変換器24Iおよび直交側A/D変換器24Qの出力の周波数を説明するための図である。
【図4】比較例における位相特性導出部26の出力の一例を示す図である。
【図5】サンプリングクロックの周波数fsがΔf/2であるときの、同相側A/D変換器24Iおよび直交側A/D変換器24Qの出力の周波数を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態にかかるローカル周波数誤差測定装置20の構成を示す機能ブロック図である。ローカル周波数誤差測定装置20は、直交復調器10におけるローカル信号の周波数の所定値fcに対する周波数誤差ferrを測定する。
【0015】
直交復調器10は、ローカル信号出力器12、90°移相器14、同相乗算器16I、直交乗算器16Q、同相側ローパスフィルタ17I、直交側ローパスフィルタ17Qを有する。なお、直交復調器10には、アナログ入力信号であるRF(radio frequency)入力が与えられる。RF入力の周波数は、fc+Δfである。
【0016】
ローカル信号出力器12は、ローカル信号を出力する。ローカル信号の周波数は所定値fcに設定される。しかし、ローカル信号の周波数の実際の値は、所定値fcに対して周波数誤差ferrがある。よって、ローカル信号の周波数の実際の値は、fc+ferrとなる。
【0017】
90°移相器14は、ローカル信号の位相を90°ずらして出力する。90°移相器14の出力を直交ローカル信号という。
【0018】
同相乗算器16Iは、RF入力(アナログ入力信号)を受け、さらに、ローカル信号出力器12からローカル信号を受ける。同相乗算器16Iは、RF入力(アナログ入力信号)とローカル信号とを乗算する。乗算結果は、周波数Δf−ferrの成分と、周波数2fc+Δf+ferrの成分とを有することになる。
【0019】
直交乗算器16Qは、RF入力(アナログ入力信号)を受け、さらに、90°移相器14から直交ローカル信号を受ける。直交乗算器16Qは、RF入力(アナログ入力信号)と直交ローカル信号とを乗算する。乗算結果は、周波数Δf−ferrの成分と、周波数2fc+Δf+ferrの成分とを有することになる。
【0020】
同相側ローパスフィルタ17Iは、同相乗算器16Iの出力する同相側アナログ信号から高周波ノイズ(例えば、周波数2fc+Δf+ferrの成分)をカットして出力する。すると、同相側ローパスフィルタ17Iから、周波数Δf−ferrの信号が出力されることになる。
【0021】
直交側ローパスフィルタ17Qは、直交乗算器16Qの出力する直交側アナログ信号から高周波ノイズ(例えば、周波数2fc+Δf+ferrの成分)をカットして出力する。すると、直交側ローパスフィルタ17Qから、周波数Δf−ferrの信号が出力されることになる。
【0022】
ローカル周波数誤差測定装置20は、サンプリング周波数設定部21、サンプリングクロック付与部22、同相側A/D変換器24I、直交側A/D変換器24Q、位相特性導出部26、周波数誤差導出部28を有する。
【0023】
同相側A/D変換器24Iは、高周波ノイズがカットされた同相側アナログ信号を、同相側ローパスフィルタ17Iを介して、同相乗算器16Iから受ける。同相側A/D変換器24Iは、高周波ノイズがカットされた同相側アナログ信号を、サンプリングクロック付与部22から付与されたサンプリングクロックに基づいてサンプリングを行い、同相側デジタル信号に変換する。
【0024】
直交側A/D変換器24Qは、高周波ノイズがカットされた直交側アナログ信号を、直交側ローパスフィルタ17Qを介して、直交乗算器16Qから受ける。直交側A/D変換器24Qは、高周波ノイズがカットされた直交側アナログ信号を、サンプリングクロック付与部22から付与されたサンプリングクロックに基づいてサンプリングを行い、直交側デジタル信号に変換する。
【0025】
サンプリングクロック付与部22は、同相側A/D変換器24Iおよび直交側A/D変換器24Qに同じサンプリングクロックを付与する。
【0026】
サンプリング周波数設定部21は、サンプリングクロック付与部22が付与するサンプリングクロックの周波数fsを設定する。ただし、サンプリングクロックの周波数fsは、Δf, Δf/2, Δf/4,
… , Δf/(2n)である(ただし、nは正の整数であり、2nは2のn乗を示す)。なお、Δfは、アナログ入力信号の周波数fc+Δfと所定値fcとの差ということになる。
【0027】
なお、同相側A/D変換器24Iおよび直交側A/D変換器24Qに入力される同相側アナログ信号および直交側アナログ信号の周波数は、ほぼΔfである。よって、これまでの技術常識によれば、サンプリングクロックの周波数fsは、2Δfを超える値にする必要がある。ナイキスト周波数が、Δfを超えるようにするためである。しかし、本発明の実施形態によれば、あえて、サンプリングクロックの周波数fsをΔf, Δf/2, Δf/4, … , Δf/(2n)(ただし、nは正の整数)とし、あえて2Δf未満の値としていることに留意されたい。
【0028】
位相特性導出部26は、同相側A/D変換器24Iから同相側デジタル信号を受け、直交側A/D変換器24Qから直交側デジタル信号を受ける。位相特性導出部26は、同相側デジタル信号および直交側デジタル信号に基づき、直交復調器10の出力する復調信号の位相を時間に対応付けて導出する。復調信号の位相は、例えば、tan-1((直交側デジタル信号)/(同相側デジタル信号))として求めることができる。位相特性導出部26は、所定の時間における復調信号の位相を導出する。
【0029】
図2は、位相特性導出部26の出力の一例を示す図である。図2を参照して、復調信号の位相を縦軸に、時間を横軸にとったときの、位相特性導出部26の出力を黒点A、B、C、Dで図示している。これらの黒点を、原点を通る一次関数で近似したときの、その一次関数の傾きが復調信号の周波数となる。復調信号の周波数は、後で説明するように、周波数誤差ferrとなる。
【0030】
周波数誤差導出部28は、位相特性導出部26の導出結果に基づき、周波数誤差ferrを導出する。
【0031】
図3は、サンプリングクロックの周波数fsをΔfとしたときの、同相側A/D変換器24Iおよび直交側A/D変換器24Qの出力の周波数を説明するための図である。
【0032】
同相側A/D変換器24Iおよび直交側A/D変換器24Qには、周波数Δf−ferrの同相側アナログ信号および直交側アナログ信号が与えられる。ここで、サンプリングクロックの周波数fsはΔfであるので、ナイキスト周波数はΔf/2である。ここで、Δf−ferr>Δf/2であるとする。すると、同相側A/D変換器24Iおよび直交側A/D変換器24QによるA/D変換の際に折り返しが発生し、同相側A/D変換器24Iおよび直交側A/D変換器24Qの出力(同相側デジタル信号および直交側デジタル信号)の周波数はferrとなる。
【0033】
よって、周波数誤差導出部28は、位相特性導出部26の出力である黒点A、B、C、D(図2参照)を、原点を通る一次関数で近似したときの、その一次関数の傾きとして、周波数誤差ferrを導出する。なお、かかる一次関数の傾きは、位相特性導出部26の導出結果における、位相の時間に対する変化の割合であるといえる。
【0034】
なお、図2を参照して、周波数誤差導出部28は、かかる一次関数の傾きを、時間が最も離れた黒点A、Dにおける位相の時間に対する変化の割合={(黒点Dの位相)−(黒点Aの位相)}/{(黒点Dの時間)−(黒点Aの時間))}として導出してもよい。また、周波数誤差導出部28は、かかる一次関数の傾きを、黒点A、B、C、Dを用いて最小二乗法により導出してもよい。
【0035】
次に、本発明の実施形態の動作を説明する。
【0036】
ローカル周波数誤差測定装置20は、直交復調器10におけるローカル信号の周波数の所定値fcに対する周波数誤差ferrを測定するためのものである。ローカル信号の周波数は、所定値fcからずれてしまい、実際にはfc+ferrとなってしまう。
【0037】
まず、RF入力(周波数:fc+Δf)が、直交復調器10に与えられる。RF入力は、同相乗算器16Iにより、ローカル信号(周波数:fc+ferr)と乗算される。また、RF入力は、直交乗算器16Qにより、直交ローカル信号(周波数:fc+ferr)と乗算される。
【0038】
同相乗算器16Iの出力する同相側アナログ信号から、同相側ローパスフィルタ17Iにより高周波ノイズがカットされ、ローカル周波数誤差測定装置20の同相側A/D変換器24Iに与えられる。同相側A/D変換器24Iには、周波数Δf−ferrの同相側アナログ信号が与えられる。
【0039】
直交乗算器16Qの出力する直交側アナログ信号から、直交側ローパスフィルタ17Qにより高周波ノイズがカットされ、ローカル周波数誤差測定装置20の直交側A/D変換器24Qに与えられる。直交側A/D変換器24Qには、周波数Δf−ferrの直交側アナログ信号が与えられる。
【0040】
同相側A/D変換器24Iおよび直交側A/D変換器24Qは、サンプリングクロック付与部22から付与された同じサンプリングクロック(サンプリング周波数設定部21により、周波数がΔfに設定されている)に基づいてサンプリングを行い、同相側アナログ信号および直交側アナログ信号(周波数:Δf−ferr)を、同相側デジタル信号および直交側デジタル信号に変換する。
【0041】
すると、図3を参照して説明したように、同相側A/D変換器24Iおよび直交側A/D変換器24QによるA/D変換の際に折り返しが発生し、同相側A/D変換器24Iおよび直交側A/D変換器24Qの出力する同相側デジタル信号および直交側デジタル信号の周波数はferrとなる。
【0042】
位相特性導出部26は、同相側デジタル信号および直交側デジタル信号に基づき、直交復調器10の出力する復調信号の位相を時間に対応付けて導出する(例えば、図2の黒点A、B、C、Dを参照)。
【0043】
周波数誤差導出部28は、位相特性導出部26の出力である黒点A、B、C、D(図2参照)を、原点を通る一次関数で近似したときの、その一次関数の傾きとして、周波数誤差ferrを導出する。
【0044】
ここで、本発明の実施形態の効果を、比較例と対比しながら説明する。
【0045】
比較例は、これまでの技術常識に従い、サンプリングクロックの周波数fsを、2Δfを超える値にしたものである。比較例は、本発明の実施形態とは異なるものである。
【0046】
図4は、比較例における位相特性導出部26の出力の一例を示す図である。図4を参照して、復調信号の位相を縦軸に、時間を横軸にとったときの、位相特性導出部26の出力を黒点a、b、c、dで図示している。これらの黒点を、原点を通る一次関数で近似したときの、その一次関数の傾きが復調信号の周波数となる。
【0047】
サンプリングクロックの周波数fsを、2Δfを超える値にしたので、ナイキスト周波数がΔfを超える。よって、同相側アナログ信号および直交側アナログ信号(周波数:Δf−ferr)を、同相側デジタル信号および直交側デジタル信号に変換しても、折り返しが発生しない。よって、同相側デジタル信号および直交側デジタル信号の周波数はΔf−ferrとなる。
【0048】
位相特性導出部26は、同相側デジタル信号および直交側デジタル信号に基づき、直交復調器10の出力する復調信号の位相を時間に対応付けて導出する(図4の黒点a、b、c、dを参照)。
【0049】
周波数誤差導出部28は、位相特性導出部26の出力である黒点a、b、c、d(図4参照)を、原点を通る一次関数で近似したときの、その一次関数の傾きとして、Δf−ferrを導出する。そして、既知のΔfから、導出したΔf−ferrを減じて、周波数誤差ferrを導出する。
【0050】
このような比較例によっても、本発明の実施形態によっても、周波数誤差ferrを導出できるという点は同じである。
【0051】
しかし、このような比較例と比較すると、本発明の実施形態は以下のような効果を奏する。
【0052】
まず、本発明の実施形態によれば、位相特性導出部26の出力である黒点A、B、C、D(図2参照)を、原点を通る一次関数で近似したときの、その一次関数の傾きが周波数誤差ferrである。一方、比較例によれば、位相特性導出部26の出力である黒点a、b、c、d(図4参照)を、原点を通る一次関数で近似したときの、その一次関数の傾きがΔf−ferrであり、周波数誤差ferrではない。
【0053】
すなわち、比較例によれば、一次関数の傾きΔf−ferrを導出後、さらに、既知のΔfから、導出したΔf−ferrを減じるといった工程が必要となる。しかし、本発明の実施形態によれば、一次関数の傾きが周波数誤差ferrなので、一次関数の傾きを導出すれば、そのまま周波数誤差ferrとなる(既知のΔfから、導出したΔf−ferrを減じるといった工程が不要)。よって、本発明の実施形態によれば、周波数誤差導出部28によって、周波数誤差ferrを導出する労力を軽減できる。
【0054】
しかも、本発明の実施形態(サンプリングクロックの周波数fs = Δf)によれば、比較例(サンプリングクロックの周波数fs>2Δf)よりも、サンプリングクロックの周波数を小さくすることができる。これにより、本発明の実施形態によれば、サンプルデータ数を少なくすることができる。サンプルデータ数が少ないことにより、位相特性導出部26および周波数誤差導出部28によるデータ処理量を軽減できる。
【0055】
なお、本発明の実施形態の一部において、サンプリングクロックの周波数fsをΔfとして説明してきた。しかし、周波数Δf−ferrのアナログ信号をデジタル信号に変換したときの折り返しの信号の周波数がferrとなるのであれば、サンプリングクロックの周波数fsはΔf以外の値でもよい。具体的には、サンプリングクロックの周波数fsは、Δf/2, Δf/4, … , Δf/(2n)であってもよい(ただし、nは正の整数)。
【0056】
図5は、サンプリングクロックの周波数fsがΔf/2であるときの、同相側A/D変換器24Iおよび直交側A/D変換器24Qの出力の周波数を説明するための図である。
【0057】
同相側A/D変換器24Iおよび直交側A/D変換器24Qには、周波数Δf−ferrの同相側アナログ信号および直交側アナログ信号が与えられる。ここで、サンプリングクロックの周波数fsがΔf/2であるので、ナイキスト周波数はΔf/4である。ここで、Δf−ferr>Δf/2であるとする。すると、同相側A/D変換器24Iおよび直交側A/D変換器24QによるA/D変換の際に折り返しが発生し、同相側A/D変換器24Iおよび直交側A/D変換器24Qの出力の周波数はferrとなる。
【0058】
同様に、サンプリングクロックの周波数fsがΔf/(2n)(ただし、nは正の整数)であれば、同相側A/D変換器24Iおよび直交側A/D変換器24Qの出力の周波数はferrとなる。
【0059】
また、上記の実施形態は、以下のようにして実現できる。CPU、ハードディスク、メディア(フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROMなど)読み取り装置を備えたコンピュータに、上記の各部分、例えば位相特性導出部26および周波数誤差導出部28を実現するプログラムを記録したメディアを読み取らせて、ハードディスクにインストールする。このような方法でも、上記の機能を実現できる。
【符号の説明】
【0060】
10 直交復調器
12 ローカル信号出力器
14 90°移相器
16I 同相乗算器
16Q 直交乗算器
17I 同相側ローパスフィルタ
17Q 直交側ローパスフィルタ
fc 所定値
ferr 周波数誤差
fc+Δf RF入力の周波数
20 ローカル周波数誤差測定装置
21 サンプリング周波数設定部
22 サンプリングクロック付与部
24I 同相側A/D変換器
24Q 直交側A/D変換器
26 位相特性導出部
28 周波数誤差導出部
fs サンプリングクロックの周波数
A、B、C、D 黒点
a、b、c、d 黒点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ入力信号を受け、(1)前記アナログ入力信号とローカル信号とを乗算する同相乗算器と、(2)前記アナログ入力信号と、前記ローカル信号の位相を90度ずらした直交ローカル信号とを乗算する直交乗算器と、(3)前記ローカル信号を出力するローカル信号出力器とを有し、前記ローカル信号の周波数が所定値に設定される直交復調器における前記ローカル信号の周波数の前記所定値に対する周波数誤差を測定するローカル周波数誤差測定装置であって、
前記同相乗算器の出力する同相側アナログ信号を、同相側デジタル信号に変換する同相側A/D変換器と、
前記直交乗算器の出力する直交側アナログ信号を、直交側デジタル信号に変換する直交側A/D変換器と、
前記同相側デジタル信号および前記直交側デジタル信号に基づき、前記直交復調器の出力の位相を時間に対応付けて導出する位相特性導出部と、
前記位相特性導出部の導出結果に基づき、前記周波数誤差を導出する周波数誤差導出部と、
を備え、
前記アナログ入力信号の周波数と前記所定値との差をΔfとしたときに、前記同相側A/D変換器および前記直交側A/D変換器のサンプリング周波数を、ΔfまたはΔf/(2n)(ただし、nは正の整数)とする、
ローカル周波数誤差測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のローカル周波数誤差測定装置であって、
前記周波数誤差導出部は、前記位相特性導出部の導出結果における、前記位相の前記時間に対する変化の割合に基づき、前記周波数誤差を導出する、
ローカル周波数誤差測定装置。
【請求項3】
アナログ入力信号を受け、(1)前記アナログ入力信号とローカル信号とを乗算する同相乗算器と、(2)前記アナログ入力信号と、前記ローカル信号の位相を90度ずらした直交ローカル信号とを乗算する直交乗算器と、(3)前記ローカル信号を出力するローカル信号出力器とを有し、前記ローカル信号の周波数が所定値に設定される直交復調器における前記ローカル信号の周波数の前記所定値に対する周波数誤差を測定するローカル周波数誤差測定方法であって、
前記同相乗算器の出力する同相側アナログ信号を、同相側デジタル信号に変換する同相側A/D変換工程と、
前記直交乗算器の出力する直交側アナログ信号を、直交側デジタル信号に変換する直交側A/D変換工程と、
前記同相側デジタル信号および前記直交側デジタル信号に基づき、前記直交復調器の出力の位相を時間に対応付けて導出する位相特性導出工程と、
前記位相特性導出工程の導出結果に基づき、前記周波数誤差を導出する周波数誤差導出工程と、
を備え、
前記アナログ入力信号の周波数と前記所定値との差をΔfとしたときに、前記同相側A/D変換工程および前記直交側A/D変換工程のサンプリング周波数を、ΔfまたはΔf/(2n)(ただし、nは正の整数)とする、
ローカル周波数誤差測定方法。
【請求項4】
アナログ入力信号を受け、(1)前記アナログ入力信号とローカル信号とを乗算する同相乗算器と、(2)前記アナログ入力信号と、前記ローカル信号の位相を90度ずらした直交ローカル信号とを乗算する直交乗算器と、(3)前記ローカル信号を出力するローカル信号出力器とを有し、前記ローカル信号の周波数が所定値に設定される直交復調器における前記ローカル信号の周波数の前記所定値に対する周波数誤差を測定するローカル周波数誤差測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記同相乗算器の出力する同相側アナログ信号を同相側デジタル信号に変換する同相側A/D変換器と、前記直交乗算器の出力する直交側アナログ信号を直交側デジタル信号に変換する直交側A/D変換器とから得られた前記同相側デジタル信号および前記直交側デジタル信号に基づき、前記直交復調器の出力の位相を時間に対応付けて導出する位相特性導出処理と、
前記位相特性導出処理の導出結果に基づき、前記周波数誤差を導出する周波数誤差導出処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記アナログ入力信号の周波数と前記所定値との差をΔfとしたときに、前記同相側A/D変換器および前記直交側A/D変換器のサンプリング周波数を、ΔfまたはΔf/(2n)(ただし、nは正の整数)とする、
プログラム。
【請求項5】
アナログ入力信号を受け、(1)前記アナログ入力信号とローカル信号とを乗算する同相乗算器と、(2)前記アナログ入力信号と、前記ローカル信号の位相を90度ずらした直交ローカル信号とを乗算する直交乗算器と、(3)前記ローカル信号を出力するローカル信号出力器とを有し、前記ローカル信号の周波数が所定値に設定される直交復調器における前記ローカル信号の周波数の前記所定値に対する周波数誤差を測定するローカル周波数誤差測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、
前記同相乗算器の出力する同相側アナログ信号を同相側デジタル信号に変換する同相側A/D変換器と、前記直交乗算器の出力する直交側アナログ信号を直交側デジタル信号に変換する直交側A/D変換器とから得られた前記同相側デジタル信号および前記直交側デジタル信号に基づき、前記直交復調器の出力の位相を時間に対応付けて導出する位相特性導出処理と、
前記位相特性導出処理の導出結果に基づき、前記周波数誤差を導出する周波数誤差導出処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、
前記アナログ入力信号の周波数と前記所定値との差をΔfとしたときに、前記同相側A/D変換器および前記直交側A/D変換器のサンプリング周波数を、ΔfまたはΔf/(2n)(ただし、nは正の整数)とする、
記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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