説明

ロータディスクの翼溝部の探傷装置

【課題】肩部の傾斜角度が異なる複数種類のロータディスクを走査可能なタービンロータの翼溝部の探傷装置を提供する。
【解決手段】探傷装置10は、超音波探傷プローブ12と、超音波探傷プローブ12を上下方向へ移動させる移動台13と、超音波探傷プローブ12及び移動台13を支持する支持台11と、を備えている。支持台11は、窪み部20aを有する超音波探傷プローブ支持体20と、超音波探傷プローブ支持体20の上端部に揺動可能に連結された肩部接触体30と、超音波探傷プローブ支持体20に対する肩部接触体30の揺動角度を固定する角度固定具40と、を備えている。肩部3の傾斜角度αに合わせて肩部接触体30の傾斜を角度固定具40で調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンのタービンブレードの翼根部を収納するロータディスクの翼溝部に生じる応力腐食割れを、超音波探傷プローブを用いて検出するロータディスクの翼溝部の探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントにおける高・中圧蒸気タービンのロータは、高い温度条件で運転されるために、長期間使用されると、応力を受ける部位に応力腐食割れが発生することがある。この応力は、タービンブレードの翼根部が嵌合されているロータディスクの翼溝部の肩部に作用するため、当該肩部はタービンロータの余寿命を評価する上で重要な部位である。しかしながら、この翼溝部には翼根部が嵌合されているために、表面から見えない。そこで、従来から超音波を利用した応力腐食割れの非破壊検出方法が採用されてきた。例えば、特許文献1には、図15に示すように、ロータディスクの翼溝部を超音波により探傷する探傷装置80が開示されている。この探傷装置80は、超音波探傷プローブ12と、超音波探傷プローブ12をロータディスクの半径方向へ移動させる移動台13と、移動台13を支持する支持台11と、を備えている。ロータディスクの翼溝部を検査する場合には、作業員が支持台11の屈曲部11bをロータディスクの肩部(傾斜面)に当接させて、支持台11をロータディスクに位置決めする。この状態で、超音波探傷プローブ12はロータディスクの側面に密着している。そして、肩部を基準面として支持台11をロータディスクの周方向に移動させながら、ロータディスクの全周にわたり、超音波探傷プローブ12によって応力腐食割れの検出を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−186446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の探傷装置では、肩部の傾斜角度が異なる他のロータディスクを走査しようとしても、支持台の屈曲部の傾斜角度が異なるため、支持台の設置状態が不安定となり、超音波探傷プローブを所定位置に正確に配置できないという問題点があった。したがって、肩部の傾斜角度が異なる複数種類のロータディスクを走査する場合には、それぞれの傾斜角度に応じた探傷装置を準備しなければならなかった。このため、製作にコストがかかるとともに、走査作業に手間がかかってしまう。
【0005】
そこで、本発明は係る従来技術の問題点に鑑み、肩部の傾斜角度が異なる複数種類のロータディスクを走査可能なタービンロータの翼溝部の探傷装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した問題を解決する本発明に係るロータディスクの翼溝部の探傷装置は、タービンブレードの翼根部を収納するロータディスクの翼溝部に生じる応力腐食割れを、超音波探傷プローブを前記ロータディスクの側部に接触させて検出するロータディスクの翼溝部の探傷装置であって、
前記ロータディスクの側面に接触する接触面を有する超音波探傷プローブと、
前記超音波探傷プローブの前記接触面を前記ロータディスクの前記側面と対向する位置に配置する超音波探傷プローブ支持体と、
前記超音波探傷プローブ支持体の上端部に揺動可能に軸支されて、前記ロータディスクの前記側面の上部に形成された傾斜を有する肩部に接触して前記超音波探傷プローブ支持体を前記ロータディスクの前記側面に沿って位置決めする肩部接触体と、
前記超音波探傷プローブ支持体の上端部に設けられて、前記肩部の傾斜に対応するように前記肩部接触体の角度を固定する角度固定手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記ロータディスクの翼溝部の探傷装置によれば、超音波探傷プローブ支持体、肩部接触体及び角度固定手段を備えているため、肩部接触体を肩部の傾斜に沿うように傾けて固定することができる。これにより、肩部の傾斜角度が異なる複数種類のロータディスクを走査することができる。
【0008】
また、前記肩部接触体は、複数のローラを介して前記肩部の周方向に移動可能としてもよい。
【0009】
本発明に係る探傷装置で探傷作業を行う際は、肩部接触体をロータディスクの肩部に載置させる。肩部接触体は平面的に形成されているため、曲率の大きいロータディスクの肩部に肩部接触体を載置すると、不安定な状態となってしまう場合がある。しかし、複数のローラを肩部に当接させることで、探傷装置を安定した状態で肩部に載置することができる。また、曲率の異なる複数種類のロータディスクにも適用することができる。さらに、ローラを備えるので、探傷装置の移動を容易にし、手動走査を容易にすることができる。
【0010】
また、前記肩部接触体は、前記肩部接触体と前記肩部との間の隙間の広さを調整する調整手段を備え、
前記隙間を広くしたときに前記超音波探傷プローブ支持体を前記ロータディスクの径外方向へ移動せしめ、前記隙間を狭くしたときに前記超音波探傷プローブ支持体を前記ロータディスクの径内方向へ移動せしめることとしてもよい。
【0011】
このように、調整手段を備えているため、肩部接触体と肩部との間の隙間の広さを調整することができる。そして、隙間を広くしたときに超音波探傷プローブ支持体をロータディスクの径外方向へ移動させて、隙間を狭くしたときに超音波探傷プローブ支持体をロータディスクの径内方向へ移動させることができる。即ち調整手段により、超音波探傷プローブを配置する位置を微調整することができる。
【0012】
また、前記肩部接触体は、前記肩部にローラ面が接する複数のローラと、前記肩部接触体と前記肩部との間の隙間の広さを調整する調整手段を備え、
前記調整手段はネジ機構から構成され、前記ローラは前記調整手段に接続されており、
前記隙間を広くしたときに前記超音波探傷プローブ支持体を前記ロータディスクの径外方向へ移動せしめ、前記隙間を狭くしたときに前記超音波探傷プローブ支持体を前記ロータディスクの径内方向へ移動せしめることとしてもよい。
【0013】
このように、ローラ及び調整手段を備えているため、調整手段でローラを移動させることにより、肩部接触体と肩部との間の隙間の広さを調整することができる。そして、隙間を広くしたときに超音波探傷プローブ支持体をロータディスクの径外方向へ移動させて、隙間を狭くしたときに超音波探傷プローブ支持体をロータディスクの径内方向へ移動させることができる。即ち調整手段により、超音波探傷プローブを配置する位置を微調整することができる。
また、本発明に係る探傷装置で探傷作業を行う際は、肩部接触体をロータディスクの肩部に載置させる。肩部接触体は平面的に形成されているため、曲率の大きいロータディスクの肩部に肩部接触体を載置すると、不安定な状態となってしまう場合がある。しかし、複数のローラを肩部に当接させることで、探傷装置を安定した状態で肩部に載置することができる。また、曲率の異なる複数種類のロータディスクにも適用することができる。さらに、ローラを備えるので、探傷装置の移動を容易にし、手動走査を容易にすることができる。
【0014】
また、前記超音波探傷プローブ支持体は、前記ロータディスクの側面にローラ面が接するローラを有し、
前記超音波探傷プローブ支持体及び前記肩部接触体は、それぞれ磁気的吸引力を生じさせる磁石を有し、
前記磁石の磁気的吸引力によって前記超音波探傷プローブ支持体及び前記肩部接触体を前記ロータディスクに前記ローラを介して吸着させてもよい。
【0015】
このように、磁石を備えているため、超音波探傷プローブ支持体及び肩部接触体をロータディスクにローラを介して吸着させることができる。これにより、手を離しても探傷装置の位置がずれないため、作業員の負担を低減することができる。したがって、超音波探傷の手動走査が安定するとともに、作業効率を向上させることができる。
そして、従来、磁石からなるローラが用いられており、ローラにごみが吸着されてローラが回転不能となる場合があったが、本発明に係るローラは磁石では無いため、ごみが吸着されて回転不能となることはない。また、超音波探傷プローブ支持体及び肩部接触体をロータディスクにローラを介して吸着させているため、超音波探傷プローブ支持体及び肩部接触体はロータディスクに非接触である。これにより、ごみが超音波探傷プローブ支持体及び肩部接触体に吸着しても、探傷装置とロータディスクとの距離を変化させることなく、一定のまま探傷装置を走査させることができる。これにより、応力腐食割れを精度良く検出することができる。
【0016】
また、前記超音波探傷プローブ支持体は、前記超音波探傷プローブ支持体から前記ロータディスク側に向かって前記ロータディスクに当接するまで延設されたスカートを更に備え、
前記超音波探傷プローブ支持体と前記ロータディスクとの間に接触媒質を保持することとしてもよい。
【0017】
このように、スカートを備えているため、超音波探傷プローブ支持体とロータディスクとの間に接触媒質を保持することができる。これにより、接触媒質の給油回数を低減できるため、作業効率が向上する。
【0018】
また、前記超音波探傷プローブ支持体は、前記超音波探傷プローブが前記超音波探傷プローブ支持体から脱落することを防止するプローブ押え治具を更に備えることとしてもよい。
【0019】
このように、プローブ押え治具を備えているため、超音波探傷プローブを手で押さえなくても超音波探傷プローブは落下しない。これにより、超音波探傷の手動走査がさらに安定するとともに、作業効率が向上する。
【0020】
また、前記超音波探傷プローブ支持体は、前記超音波探傷プローブの前記接触面と前記ロータディスクの前記側面との間に介在するスペーサを備え、前記超音波探傷プローブの前記接触面が前記ロータディスクの前記側面に接触することを防止することとしてもよい。
【0021】
このように、スペーサを備えているため、超音波探傷プローブの表面の摩耗を防止できる。これにより、超音波探傷プローブの交換頻度が少なくなるため、メンテナンス費を低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、肩部の傾斜角度が異なる複数種類のロータディスクを走査可能なタービンロータの翼溝部の探傷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一実施形態に係る探傷装置をロータディスクに設置した状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る探傷装置をロータディスクに設置した状態を示す側面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る探傷装置をロータディスクに設置した状態を示す正面図である。
【図4】角度固定具の他の実施例を示す側面図である。
【図5】角度固定具の他の実施例を示す正面図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る探傷装置をロータディスクに設置した状態を示す側面図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る探傷装置をロータディスクに設置した状態を示す正面図である。
【図8】高さ調整手段の他の実施例を示す側面図である。
【図9】図8のA矢視図である。
【図10】高さ調整手段の他の実施例を示す図である。
【図11】本発明の第三実施形態に係る探傷装置をロータディスクに設置した状態を示す側面図である。
【図12】本発明の第三実施形態に係る探傷装置をロータディスクに設置した状態を示す正面図である。
【図13】本発明の第四実施形態に係る探傷装置をロータディスクに取り付けた状態を示す斜視図である。
【図14】図13のB−B断面図である。
【図15】従来のロータディスクの翼溝部の探傷装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。なお、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0025】
図1〜図3は、それぞれ本発明の第一実施形態に係る探傷装置をロータディスクに設置した状態を示す斜視図、側面図、正面図である。
図1〜図3に示すように、ロータディスク1の外周端部には、全周にわたり外方に向かって開口した翼溝部2が設けられている。タービンブレード4の下部には一体に翼根部5が形成され、タービンブレード4の翼根部5がロータディスク1の翼溝部2に嵌合されることにより、複数のタービンブレード4がロータディスク1の外周端部に接続されている。
【0026】
タービンブレード4の外周端には、タービンブレード4を所定枚数毎に連結するシュラウド6が設けられている。また、ロータディスク1には、翼溝部2に対面した位置に、ロータディスク1の周方向に沿って傾斜面からなる肩部3が形成されている。
【0027】
発電プラントにおける高・中圧蒸気タービンは、高い温度条件で運転されるために、長期間使用されると、繰り返し応力を受ける部位には応力腐食割れcが発生することがある。この応力腐食割れcを探傷するロータディスク1の翼溝部2の探傷装置(以下、ロータディスク1の翼溝部2の探傷装置を単に探傷装置10という)について以下で説明する。
【0028】
本発明に係る探傷装置10は、超音波探傷プローブ12と、超音波探傷プローブ12を上下方向へ移動させる移動台13と、超音波探傷プローブ12及び移動台13を支持する支持台11と、を備えている。
【0029】
支持台11は、窪み部20aを有する超音波探傷プローブ支持体20と、超音波探傷プローブ支持体20の上端部に揺動可能に連結された肩部接触体30と、超音波探傷プローブ支持体20に対する肩部接触体30の揺動角度を固定する角度固定具40と、を備えている。
超音波探傷プローブ支持体20の窪み部20aに肩部接触体30の凸部30aが係合されている。角度固定具40は、超音波探傷プローブ支持体20と肩部接触体30とが係合している箇所を貫通するボルト21と、当該ボルト21に螺合するナット22とから構成されている。角度固定具40のボルト21、ナット22を締結することにより、肩部接触体30を超音波探傷プローブ支持体20に固定することができる。即ち肩部接触体30の揺動角度を固定することができる。また、ボルト21、ナット22を緩めることにより、肩部接触体30の揺動角度を可変とすることができるので、肩部接触体30の固定位置は、矢印a方向(図2参照)に調整可能である。
【0030】
超音波探傷プローブ12は、窪み部20a内に配置されており、バネ構造体15を介して支持台11に取り付けられている。
移動台13は、ボルト14によって支持台11に締付け固定されるが、移動台13の固定位置は、ボルト14を緩めることによって矢印b方向(図3参照)に移動可能である。
また、超音波探傷プローブ12は、バネ構造体15によって、ロータディスク1の側面1aに密着した状態で、側面1aの面内で矢印d方向(図3参照)に揺動可能である。
【0031】
このような構成からなる探傷装置10において、ロータディスク1の翼溝部2の周辺を検査する場合には、まず、肩部3の傾斜角度αに合わせて肩部接触体30の傾斜を角度固定具40で調整する。続いて、肩部接触体30を肩部3に当接するように配置する。この状態で、超音波探傷プローブ支持体20に支持された超音波探傷プローブ12はロータディスク1の側面1aに密着している。そして、肩部3に沿って肩部接触体30をロータディスク1の周方向に摺動させながら、ロータディスク1の全周に亘って探傷作業を行う。また、探傷作業中に、超音波探傷プローブ12とロータディスク1の側面1aとの間の接触媒質が不足したら、支持台11の上方から給油する。
【0032】
上述したように、本実施形態に係る探傷装置10によれば、超音波探傷プローブ支持体20、肩部接触体30及び角度固定具40を備えているため、肩部接触体30を肩部3の傾斜角度αに合わせて傾けることができる。これにより、肩部3の傾斜角度αが異なる複数種類のロータディスク1を走査することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、角度固定具40としてボルト21、ナット22を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図4及び図5に示すように、調整ベルト23を用いて肩部接触体30を傾けてもよい。調整ベルト2用いた場合について以下に説明する。肩部接触体30の凸部30aと超音波探傷プローブ支持台20とは、ピン24で揺動自在に連結されている。超音波探傷プローブ支持台20の一方側端部20e及び肩部接触体30の凸部30aには、それぞれ貫通孔20d、30dが形成されている。また、超音波探傷プローブ支持台20の他方側端部20fの窪み部20a側の面には、穴20gが形成されている。一方側端部20e側から挿入されたピン24が貫通孔20d、30d内を挿通し、先端部が穴20g内で支持されている。
【0034】
また、超音波探傷プローブ支持体20の側面20hには、回転自在な走行ローラ25と、当該走行ローラ25の下方に設けられて、回転自在なストッパー付ローラ26とが取り付けられている。ストッパー付ローラ26はねじを有しており、このねじを締め付けることにより、回転を止めることができる。また、肩部接触体30には、回転しない固定軸27が設けられている。調整ベルト23の両端は、それぞれ固定軸27、ストッパー付ローラ26に接続されている。また、調整ベルト23の中央部は、走行ローラ25に巻きつけられている。
【0035】
このように構成された探傷装置10は、ストッパー付ローラ26を所定方向に回転させると調整ベルト23がストッパー付ローラ26に巻き付けられることで、肩部接触体30が図4中の矢印m方向に傾斜する。一方、ストッパー付ローラ26を所定方向と反対に回転させると調整ベルト23がストッパー付ローラ26から繰り出されることにより、肩部接触体30が図4中の矢印n方向に傾斜する。肩部接触体30を所望の傾斜角度で固定する際は、ストッパー付ローラ26を固定することで、肩部接触体30を所望の傾斜角度で固定することができる。
【0036】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。以下の説明において、上述した実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。第二実施形態に係る探傷装置は、第一実施形態に係る探傷装置の肩部接触体30に走行ローラを追加したものである。
【0037】
図6及び図7は、それぞれ本発明の第二実施形態に係る探傷装置をロータディスクに設置した状態を示す側面図、正面図である。
図6及び図7に示すように、探傷装置50の肩部接触体30は、複数の走行ローラ16と、各走行ローラ16の高さ位置を調整する高さ調整手段17と、備えている。
高さ調整手段17は、各走行ローラ16をそれぞれ回動可能に支持する複数の枠31と、各枠31同士を連結する連結板32と、一端が連結板32に接続された送りねじ33と、を備えている。各走行ローラ16、各枠31及び連結板32は、肩部3と対向する面(以下、対向面30bという)に設けられている。また、各走行ローラ16、各枠31及び連結板32は、肩部接触体30の対向面30bに形成された凹部34内に収容されている。送りねじ33は、肩部接触体30の上面30cから凹部34までを貫通するように形成されたねじ穴35に螺合し、上端部が肩部接触体30の上面30cから突出するように設けられている。送りねじ33を回転させることにより、複数の走行ローラ16を一括して移動させることができる。これにより、肩部接触体30の対向面30bから突出するすべての走行ローラ16の長さを同一にすることができる。また、送りねじ33を回転させて、肩部接触体30の対向面30bと肩部3との間の隙間の広さを調整することで、超音波探傷プローブ支持体20をロータディスク1の径方向に移動させることができる。具体的には、隙間を広くしたときに超音波探傷プローブ支持体20をロータディスク1の径外方向へ移動させて、隙間を狭くしたときに超音波探傷プローブ支持体20をロータディスク1の径内方向へ移動させることができる。
【0038】
探傷装置50を走査させる際は、まず、角度固定具40を調整して、肩部接触体30の傾斜角度を肩部3の傾斜角度αに合わせる。そして、各走行ローラ16のローラ面が肩部3に当接するように肩部接触体30をロータディスク1の肩部3に載置する。このとき、肩部接触体30の対向面30bと肩部3との間には隙間が形成されている。
次に、送りねじ33を回転させて各走行ローラ16の高さ位置を調整することで、超音波探傷プローブ12を所望の高さ位置に設置する。このとき、超音波探傷プローブ支持体20に支持された超音波探傷プローブ12はロータディスク1の側面1aに密着している。
その後、各走行ローラ16を肩部3に摺接させながら、即ち肩部3に沿って肩部接触体30をロータディスク1の周方向に摺動させながら、ロータディスク1の全周に亘って探傷作業を行う。
【0039】
上述したように本実施形態に係る探傷装置50によれば、複数の走行ローラ16を介して肩部接触体30をロータディスク1の肩部3に載置することができる。肩部接触体30は平面的に形成されているため、曲率を有する肩部3に肩部接触体30を直接、載置すると、探傷装置50が不安定な状態となってしまう。しかし、複数の走行ローラ16を肩部3に当接させて走行ローラ16で肩部接触体30を支持しているため、探傷装置50を安定した状態で設置することができる。また、曲率の異なる複数種類のロータディスク1にも適用することができる。さらに、走行ローラ16を利用することで、探傷装置50の移動を容易にし、手動走査を容易にすることができる。
そして、高さ調整手段17で走行ローラ16の高さ位置を調整することで、超音波探傷プローブ支持体20及び肩部接触体30をロータディスク1の径方向に移動させることができる。即ち、超音波探傷プローブ支持体20で支持された超音波探傷プローブ12の高さ位置を容易に調整することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、肩部接触体30に形成された凹部34内に走行ローラ16、枠31及び連結板32を収容する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、肩部接触体30の対向面30bの下方にこれらを設けてもよい。例えば、図8及び図9に示すように、肩部接触体30を貫通するように形成されたねじ穴35に螺合する送りねじ33を設け、当該送りねじ33の下端に走行ローラ16、枠31及び連結板32を接続することとしてもよい。係る場合には、伸縮自在なベローズ36を肩部接触体30の対向面30bに接続して、枠31及び連結板32を囲ってもよい。また、例えば、図10に示すように、肩部接触体30を貫通するように形成された複数のねじ穴35にそれぞれ螺合する送りねじ33を設け、各送りねじ33の下端に走行ローラ16及び枠31を接続することとしてもよい。係る場合には、両送りねじ33を連結ベルト37で連結して、一方の送りねじ33を所定角度回転させると他方の送りねじ33も同じ向きに同じ角度だけ回転するようにする。
【0041】
次に、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態に係る探傷装置は、第二実施形態に係る探傷装置50に磁石を追加したものである。
【0042】
図11及び図12は、それぞれ本発明の第三実施形態に係る探傷装置を示す側面図、正面図である。
図11及び図12に示すように、超音波探傷プローブ支持体20は、複数の磁石41と、複数の走行ローラ25とを備えている。各磁石41は、ロータディスク1の側面1aと対向する面(以下、対向面20bという)に埋め込まれている。各磁石41は、超音波探傷プローブ支持体20の対向面20bと面一になるように設けられている。また、各走行ローラ25は、対向面20bに形成された凹部18内に収容されている。
肩部接触体30は、複数の磁石46を備えている。各磁石46は、肩部接触体30の対向面30bに埋め込まれている。各磁石46は、肩部接触体30の対向面30bと面一になるように設けられている。
【0043】
上述した構成からなる探傷装置60を走査させる際は、まず、角度固定具40を調整して、肩部接触体30の傾斜角度を肩部3の傾斜角度αに合わせる。次に、肩部接触体30及び超音波探傷プローブ12の各走行ローラ16、25がそれぞれ肩部3、ロータディスク1の側面1aに当接するように配置する。続いて、送りねじ33を回転させて各走行ローラ16の高さ位置を調整することで、超音波探傷プローブ12を所望の高さ位置を設置する。その後、各走行ローラ16、25を摺接させながら、肩部接触体30を肩部3に沿ってロータディスク1の周方向に摺動させながら、ロータディスク1の全周に亘って探傷作業を行う。
【0044】
上述したように、本実施形態に係る探傷装置60によれば、磁石41、46を備えているため、超音波探傷プローブ支持体20及び肩部接触体30をロータディスク1に走行ローラ25を介して吸着させることができる。これにより、手を離しても探傷装置60の位置がずれないため、作業員の負担を低減することができる。したがって、手動走査が安定するとともに、作業効率を向上させることができる。
そして、従来、磁力を有するローラが用いられており、このローラにごみが吸着されてローラが回転不能となる場合があったが、本発明に係る走行ローラ16、25は磁力を有していないため、ごみが吸着されて回転不能となることはない。また、超音波探傷プローブ支持体20及び肩部接触体30をロータディスク1に走行ローラ16、25を介して吸着させているため、超音波探傷プローブ支持体20及び肩部接触体30はロータディスク1に非接触である。これにより、ごみが超音波探傷プローブ支持体20や肩部接触体30に吸着しても、探傷装置60とロータディスク1との距離を変化させることなく一定のまま探傷装置60を走査させることができる。これにより、応力腐食割れを精度良く検出することができる。
また、超音波探傷プローブ支持体20及び肩部接触体30は、走行ローラ16、25を介してロータディスク1の側面1aに接触しているため、探傷作業中に接触媒質を供給する作業を省くことができる。
【0045】
次に、本発明の第四実施形態について説明する。第四実施形態に係る探傷装置は、第一実施形態に係る探傷装置にスカート、プローブ押え治具及びスペーサを追加したものである。
【0046】
図13は、本発明の第四実施形態に係る探傷装置をロータディスク1に取り付けた状態を示す斜視図である。また、図14は、図13のB−B断面図である。
図13及び図14に示すように、探傷装置70は、スカート42と、プローブ押え治具43と、スペーサ44とを備えている。
【0047】
スカート42は、超音波探傷プローブ支持体20からロータディスク1側に向かって延設されている。スカート42のロータディスク1側の端部は、ロータディスク1の側面1aに当接している。また、スカート42は、超音波探傷プローブ支持体20の両側面及び下面にそれぞれボルト45で取り付けられている。これにより、走査中に探傷装置70の上方から給油される接触媒質を、超音波探傷プローブ支持体20とロータディスク1との間に保持することができる。
スカート42として、本実施形態では、耐油性及び耐摺動性を有する厚手のゴム板を用いたが、この材質に限定されるものではなく、耐油性及び耐摺動性を有する高分子材料であれば他のものを用いてもよい。
【0048】
プローブ押え治具43は、その一端部が超音波探傷プローブ12のロータディスク1と反対側の端面に接し、他端部が超音波探傷プローブ支持体20にボルト47で取り付けられている。これにより、ロータディスク1と反対側へ向かう超音波探傷プローブ12の移動を抑制することができる。即ち超音波探傷プローブ12が超音波探傷プローブ支持体20から落下することを防止できる。
プローブ押え治具43として、本実施形態では、薄手のゴム板を用いたが、この材質に限定されるものではなく、超音波探傷プローブ12を保持できる程度の強度を有し、かつ、変形容易な柔質材料であれば他のものを用いてもよい。
【0049】
スペーサ44は、L字型の断面形状を有しており、その一端部が超音波探傷プローブ12のロータディスク1側の端面に接し、他端が超音波探傷プローブ支持体20の対向面20bに接着剤で接続されている。探傷装置70で走査する際に、スペーサ44の一端部が、超音波探傷プローブ12とロータディスク1との間に介在することで、超音波探傷プローブ12がロータディスク1面に接触することを阻止する。
スペーサ44として、本実施形態では、フッ素樹脂からなるものを用いたが、この材質に限定されるものではなく、耐摺動性及び耐摩耗性を有する材料であれば他のものを用いてもよい。
【0050】
上述したように、本実施形態に係る探傷装置70によれば、スカート42を備えているため、超音波探傷プローブ支持体20とロータディスク1との間に接触媒質を保持することができる。これにより、接触媒質の給油回数を低減できる。
また、プローブ押え治具43を備えているため、超音波探傷プローブ12を手で押さえなくても超音波探傷プローブ12は落下しない。これにより、超音波探傷の手動走査が安定する。そして、接触媒質の給油回数を低減できることと相俟って、作業効率が向上する。
さらに、スペーサ44を備えているため、超音波探傷プローブ12の表面の摩耗を防止できる。これにより、超音波探傷プローブ12の交換頻度が少なくなるため、メンテナンス費を低減することができる。
【0051】
なお、本実施形態においては、第一実施形態の探傷装置10にスカート42、プローブ押え治具43及びスペーサ44を取り付けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第二実施形態の探傷装置50及び第三実施形態の探傷装置60にも取り付け可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 ロータディスク
1a 側面
2 翼溝部
3 肩部
4 タービンブレード
5 翼根部
6 シュラウド
10 探傷装置
11 支持台
12 超音波探傷プローブ
13 移動台
14 ボルト
15 バネ構造体
16 走行ローラ
17 高さ調整手段
18 凹部
20 超音波探傷プローブ支持体
20a 窪み部
20b 対向面
20d 貫通孔
20e 一方側端部
20f 他方側端部
20g 穴
20h 側面
21 ボルト
22 ナット
23 調整ベルト
24 ピン
25 ローラ
26 ストッパー付ローラ
27 固定軸
30 肩部接触体
30a 凸部
30b 対向面
30c 上面
30d 貫通孔
31 枠
32 連結板
33 送りねじ
34 凹部
35 ねじ穴
36 ベローズ
37 連結ベルト
40 角度固定具
41 磁石
42 スカート
43 プローブ押え治具
44 スペーサ
45 ボルト
46 磁石
47 ボルト
50 探傷装置
60 探傷装置
70 探傷装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンブレードの翼根部を収納するロータディスクの翼溝部に生じる応力腐食割れを、超音波探傷プローブを前記ロータディスクの側部に接触させて検出するロータディスクの翼溝部の探傷装置であって、
前記ロータディスクの側面に接触する接触面を有する超音波探傷プローブと、
前記超音波探傷プローブの前記接触面を前記ロータディスクの前記側面と対向する位置に配置する超音波探傷プローブ支持体と、
前記超音波探傷プローブ支持体の上端部に揺動可能に軸支されて、前記ロータディスクの前記側面の上部に形成された傾斜を有する肩部に接触して前記超音波探傷プローブ支持体を前記ロータディスクの前記側面に沿って位置決めする肩部接触体と、
前記超音波探傷プローブ支持体の上端部に設けられて、前記肩部の傾斜に対応するように前記肩部接触体の角度を固定する角度固定手段と、を備えることを特徴とするロータディスクの翼溝部の探傷装置。
【請求項2】
前記肩部接触体は、複数のローラを介して前記肩部の周方向に移動可能であることを特徴とする請求項1に記載のロータディスクの翼溝部の探傷装置。
【請求項3】
前記肩部接触体は、前記肩部接触体と前記肩部との間の隙間の広さを調整する調整手段を備え、
前記隙間を広くしたときに前記超音波探傷プローブ支持体を前記ロータディスクの径外方向へ移動せしめ、前記隙間を狭くしたときに前記超音波探傷プローブ支持体を前記ロータディスクの径内方向へ移動せしめることを特徴とする請求項1に記載のロータディスクの翼溝部の探傷装置。
【請求項4】
前記肩部接触体は、前記肩部にローラ面が接するローラと、前記肩部接触体と前記肩部との間の隙間の広さを調整する調整手段を備え、
前記調整手段はネジ機構から構成され、前記ローラは前記調整手段に接続されており、
前記隙間を広くしたときに前記超音波探傷プローブ支持体を前記ロータディスクの径外方向へ移動せしめ、前記隙間を狭くしたときに前記超音波探傷プローブ支持体を前記ロータディスクの径内方向へ移動せしめることを特徴とする請求項1に記載のロータディスクの翼溝部の探傷装置。
【請求項5】
前記超音波探傷プローブ支持体は、前記ロータディスクの側面にローラ面が接するローラを有し、
前記超音波探傷プローブ支持体及び前記肩部接触体は、それぞれ磁気的吸引力を生じさせる磁石を有し、
前記磁石の磁気的吸引力によって前記超音波探傷プローブ支持体及び前記肩部接触体を前記ロータディスクに前記ローラを介して吸着させることを特徴とする請求項2又は4に記載のロータディスクの翼溝部の探傷装置。
【請求項6】
前記超音波探傷プローブ支持体は、前記超音波探傷プローブ支持体から前記ロータディスク側に向かって前記ロータディスクに当接するまで延設されたスカートを更に備え、
前記超音波探傷プローブ支持体と前記ロータディスクとの間に接触媒質を保持することを特徴とする請求項1〜5のうち何れか一項に記載のロータディスクの翼溝部の探傷装置。
【請求項7】
前記超音波探傷プローブ支持体は、前記超音波探傷プローブが前記超音波探傷プローブ支持体から脱落することを防止するプローブ押え治具を更に備えることを特徴とする請求項1〜6のうち何れか一項に記載のロータディスクの翼溝部の探傷装置。
【請求項8】
前記超音波探傷プローブ支持体は、前記超音波探傷プローブの前記接触面と前記ロータディスクの前記側面との間に介在するスペーサを備え、前記超音波探傷プローブの前記接触面が前記ロータディスクの前記側面に接触することを防止することを特徴とする請求項1〜7のうち何れか一項に記載のロータディスクの翼溝部の探傷装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図6】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−61286(P2013−61286A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200911(P2011−200911)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】