ロータリーキルン
【課題】内筒の加熱区間と非加熱区間との境界付近の温度勾配が大きくなりにくいロータリーキルンを提供することを課題とする。
【解決手段】ロータリーキルン1は、加熱装置2と、外側加熱区間30と外側非加熱区間31f、31rとを有する金属製の外筒3と、外筒3の径方向内側に配置され内側加熱区間40と内側非加熱区間41f、41rとを有し内部を被処理物Wが軸方向に移動するセラミックス製の内筒4と、外側加熱区間30と内側加熱区間40との間に介在する加熱隙間50と、外側非加熱区間31f、31rと内側非加熱区間41f、41rとの間に介在する非加熱隙間51f、51rと、を備える。加熱部20の熱が、加熱隙間50から非加熱隙間51f、51rに移動し、内側非加熱区間41f、41rが加熱されることにより、内側加熱区間40と内側非加熱区間41f、41rとの境界付近の温度勾配が大きくなるのを抑制する。
【解決手段】ロータリーキルン1は、加熱装置2と、外側加熱区間30と外側非加熱区間31f、31rとを有する金属製の外筒3と、外筒3の径方向内側に配置され内側加熱区間40と内側非加熱区間41f、41rとを有し内部を被処理物Wが軸方向に移動するセラミックス製の内筒4と、外側加熱区間30と内側加熱区間40との間に介在する加熱隙間50と、外側非加熱区間31f、31rと内側非加熱区間41f、41rとの間に介在する非加熱隙間51f、51rと、を備える。加熱部20の熱が、加熱隙間50から非加熱隙間51f、51rに移動し、内側非加熱区間41f、41rが加熱されることにより、内側加熱区間40と内側非加熱区間41f、41rとの境界付近の温度勾配が大きくなるのを抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物を周方向に揺動させながら軸方向に搬送するロータリーキルンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内筒と外筒と不定形断熱材とを備えるロータリーキルンが開示されている。内筒はセラミックス製である。外筒は金属製である。内筒と外筒とは、同軸的に配置されている。不定形断熱材は、内筒と外筒との間の隙間に充填されている。被処理物は、内筒の内部を軸方向に移動する。
【0003】
内筒および外筒は、各々、加熱区間と非加熱区間とを備えている。加熱区間は、加熱部に収容されている。非加熱区間は、加熱部に収容されていない。外筒の加熱区間、不定形断熱材、内筒の加熱区間を経由して移動する加熱部からの熱により、内筒内部の被処理物は、移動しながら加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−3054号公報
【特許文献2】特開平3−79984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、セラミックス製の内筒は、金属製の内筒と比較して、熱伝導性が低い。このため、高温の加熱区間と低温の非加熱区間との境界付近では、温度勾配(軸方向単位長さあたりの温度変化の割合)が大きくなりやすい。したがって、当該温度勾配により、加熱区間と非加熱区間との境界付近に、大きな熱応力が発生しやすい。併せて、セラミックス製の内筒は、金属製の内筒と比較して、一般的に靭性が低い。よって、内筒に不具合が発生するおそれがある。
【0006】
この点、特許文献1のロータリーキルンによると、同文献の[0020]に記載されているように、内筒が外筒により支持されている。このため、温度勾配により内筒に多少のクラックが発生しても、不具合が生じにくい。
【0007】
特許文献2には、内筒と外筒と隙間とを備えるロータリーキルンが開示されている。内筒および外筒は、セラミックス製である。内筒と外筒とは、同軸的に配置されている。内筒と外筒との間の隙間には、不活性ガスが封入されている。
【0008】
内筒および外筒は、各々、加熱区間と非加熱区間とを備えている。加熱区間は、加熱部に収容されている。非加熱区間は、加熱部に収容されていない。外筒の加熱区間、不活性ガス、内筒の加熱区間を経由して移動する加熱部からの熱により、内筒内部の被処理物は、移動しながら加熱される。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載のロータリーキルンによると、内筒のみならず外筒もセラミックス製である。このため、内筒のみならず外筒についても、加熱区間と非加熱区間との間の温度差を考慮する必要がある。また、セラミックス製の外筒は、金属製の外筒と比較して、熱伝導性が低い。このため、加熱部の熱が被処理物に伝わりにくい。
【0010】
本発明のロータリーキルンは、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明のロータリーキルンは、加熱部の熱が被処理物に伝わりやすく、内筒の加熱区間と非加熱区間との境界付近の温度勾配が大きくなりにくいロータリーキルンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記課題を解決するため、本発明のロータリーキルンは、加熱部を有する加熱装置と、軸回りに回転可能に略水平に配置され、該加熱部に収容される外側加熱区間と、該加熱部に収容されない外側非加熱区間と、を有する金属製の外筒と、該外筒に同期して軸回りに回転可能に、該外筒の径方向内側に同軸的に配置され、該加熱部に収容される内側加熱区間と、該加熱部に収容されない内側非加熱区間と、を有し、内部を被処理物が軸方向に移動するセラミックス製の内筒と、該外側加熱区間と該内側加熱区間との間に介在する加熱隙間と、該外側非加熱区間と該内側非加熱区間との間に介在し、該加熱隙間に連通する非加熱隙間と、を備え、該加熱部の熱が該加熱隙間から該非加熱隙間に移動し、該内側非加熱区間が加熱されることにより、該内側加熱区間と該内側非加熱区間との境界付近の温度勾配が大きくなるのを抑制することを特徴とする(請求項1に対応)。
【0012】
本発明のロータリーキルンは、加熱装置と外筒と内筒と加熱隙間と非加熱隙間とを備えている。外筒は、外側加熱区間と外側非加熱区間とを備えている。内筒は、内側加熱区間と内側非加熱区間とを備えている。
【0013】
加熱部と内側加熱区間つまり被処理物との間には、径方向外側から径方向内側に向かって、加熱部→外筒の外側加熱区間→加熱隙間→内筒の内側加熱区間という伝熱経路(以下、適宜「第一伝熱経路」と称す。)が確保されている。第一伝熱経路を経由する熱により、内側加熱区間の内部の被処理物は、移動しながら加熱される。ここで、金属製の外筒は、セラミックス製の外筒と比較して、熱伝導性が高い。このため、加熱部の熱が被処理物に伝わりやすい。また、熱伝導性が高いため、外側加熱区間と外側非加熱区間との境界付近で、温度勾配(軸方向単位長さあたりの温度変化の割合)が大きくなりにくい。したがって、当該温度勾配により、外側加熱区間と外側非加熱区間との境界付近に、大きな熱応力が発生しにくい。併せて、金属製の外筒は、セラミックス製の外筒と比較して、一般的に靭性が高い。よって、外筒に不具合が発生しにくい。
【0014】
また、外筒と内筒との間には、加熱隙間と非加熱隙間とが確保されている。上述したように、加熱隙間は、第一伝熱経路の一部を構成している。このため、加熱部からの熱により、加熱隙間は加熱される。非加熱隙間は加熱隙間に連通している。このため、加熱隙間の熱は、非加熱隙間に移動する。移動した熱により、非加熱隙間は加熱される。非加熱隙間の径方向内側には、内筒の内側非加熱区間が配置されている。このため、非加熱隙間の熱により、内側非加熱区間は加熱される。このように、加熱部と内側非加熱区間との間には、加熱部→外筒の外側加熱区間→加熱隙間→非加熱隙間→内筒の内側非加熱区間という伝熱経路(以下、適宜「第二伝熱経路」と称す。)が確保されている。第二伝熱経路を経由する熱により、内側非加熱区間は加熱される。
【0015】
本発明のロータリーキルンによると、第一伝熱経路により内側加熱区間を加熱できるのみならず、第二伝熱経路により内側非加熱区間を加熱することができる。このため、内側加熱区間と内側非加熱区間との境界付近の温度勾配が大きくなるのを抑制することができる。
【0016】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記加熱隙間および前記非加熱隙間の径方向幅は、1mm以上である構成とする方がよい(請求項2に対応)。加熱隙間および非加熱隙間の径方向幅を1mm以上としたのは、1mm未満の場合、加熱隙間から非加熱隙間に、熱が移動しにくいからである。特に、熱媒体となる流体が、加熱隙間から非加熱隙間に、流れにくくなるからである。
【0017】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、さらに、前記内筒と前記外筒との間の軸方向の熱膨張差を許容し、前記非加熱隙間を外部から封止する隙間封止部を有する構成とする方がよい(請求項3に対応)。
【0018】
金属製の外筒は、セラミックス製の内筒よりも、線膨張係数が大きい。このため、外筒は内筒よりも熱膨張しやすい。したがって、外筒の方が内筒よりも、軸方向変形量が大きくなる。変形量の差が大きいと、非加熱隙間を外部から封止しにくい。この点、本構成によると、隙間封止部が配置されている。このため、内筒と外筒との間の軸方向変形量の相違を許容しながら、非加熱隙間を外部から封止することができる。
【0019】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記外側加熱区間は、前記加熱部と前記加熱隙間とを連通する伝熱孔を有する構成とする方がよい(請求項4に対応)。
【0020】
本構成によると、熱媒体となる流体が、伝熱孔を介して、加熱部から加熱隙間に流動する。このため、熱伝達により、熱を移動させることができる。また、加熱部の熱源の表面から、輻射熱が、伝熱孔を介して、加熱部から内側加熱区間に放出される。このため、熱放射により、熱を移動させることができる。このように、本構成によると、加熱部の熱が、内側加熱区間(つまり被処理物)および内側非加熱区間に、移動しやすくなる。
【0021】
(5)好ましくは、上記(4)の構成において、前記外側加熱区間の外周面の面積を100%として、前記伝熱孔の開口面積は10%以上である構成とする方がよい(請求項5に対応)。伝熱孔の開口面積を10%以上としたのは、10%未満の場合、上述した熱伝達、熱放射による伝熱効果が、充分に得られないからである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、加熱部の熱が被処理物に伝わりやすく、内筒の加熱区間と非加熱区間との境界付近の温度勾配が大きくなりにくいロータリーキルンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態のロータリーキルンの斜視図である。
【図2】同ロータリーキルンの軸方向断面図である。
【図3】同ロータリーキルンの加熱部付近の径方向断面図である。
【図4】同ロータリーキルンの前端部分の斜視図である。
【図5】同ロータリーキルンの連結部の分解斜視図である。
【図6】同ロータリーキルンの前面図である。
【図7】同ロータリーキルンの前方のタイヤの分解斜視図である。
【図8】同ロータリーキルンの後端部分の斜視図である。
【図9】図2の枠IX内の拡大断面図である。
【図10】(a)は図2の枠X内の拡大図である。(b)は(a)に示す部分の内筒の距離−温度関係の模式図である。
【図11】温度測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のロータリーキルンの実施の形態について説明する。
【0025】
<ロータリーキルンの構成>
まず、本実施形態のロータリーキルンの構成について説明する。図1に、本実施形態のロータリーキルンの斜視図を示す。図2に、同ロータリーキルンの軸方向断面図を示す。図3に、同ロータリーキルンの加熱部付近の径方向断面図を示す。なお、図9以外の図においては、説明の便宜上、外筒3と内筒4との間の隙間を強調して示す。
【0026】
図1〜図3に示すように、本実施形態のロータリーキルン1は、加熱装置2と、外筒3と、内筒4と、加熱隙間50と、一対の非加熱隙間51f、51rと、隙間封止部6と、一対のタイヤ8f、8rと、連結部9と、一対のローラ70fと、一対のローラ70rと、を備えている。
【0027】
[ローラ70f、70r]
一対のローラ70fは、架台(図略)に配置されている。一対のローラ70fは、左右方向に並んで配置されている。ローラ70fは、軸周りに回転可能である。ローラ70fの前後方向両端には、フランジ700fが配置されている。一対のローラ70rは、所定間隔だけ離間して、一対のローラ70fの後方に配置されている。一対のローラ70rは、左右方向に並んで配置されている。ローラ70rは、軸周りに回転可能である。
【0028】
[内筒4]
内筒4は、アルミナ製であって、前後方向に延在する円筒状を呈している。内筒4は、略水平(前方から後方に向かって緩やかに下降している)に配置されている。被処理物Wは、前方から後方に向かって、内筒4の内部を搬送される。
【0029】
内筒4は、内側加熱区間40と、前後一対の内側非加熱区間41f、41rと、を備えている。内側非加熱区間41fは、内側加熱区間40の前方に配置されている。内側非加熱区間41rは、内側加熱区間40の後方に配置されている。
【0030】
[外筒3]
外筒3は、ステンレス鋼(SUS)製であって、前後方向に延在する円筒状を呈している。外筒3は、略水平(前方から後方に向かって緩やかに下降している)に配置されている。外筒3は、内筒4の径方向外側に配置されている。外筒3は、内筒4と同軸的に配置されている。内筒4の前後方向両端は、外筒3から前後方向に突出している。
【0031】
外筒3は、外側加熱区間30と、前後一対の外側非加熱区間31f、31rと、多数の伝熱孔32と、前後一対のフランジ33f、33rと、スプロケット(図略)と、を備えている。外側非加熱区間31fは、外側加熱区間30の前方に配置されている。外側非加熱区間31rは、外側加熱区間30の後方に配置されている。多数の伝熱孔32は、外側加熱区間30に、全周的に配置されている。外側加熱区間30の外周面の面積を100%とした場合、多数の伝熱孔32の総開口面積は、11%を占めている。フランジ33fは、外筒3の前端に配置されている。フランジ33fの前面には、周方向に120°ずつ離間して、外端取付孔330f(後述する図5参照)が穿設されている。フランジ33rは、外筒3の後端に配置されている。スプロケットは、フランジ33rの前方に配置されている。スプロケットは外筒3の外周面に周設されている。スプロケットを介して、モータ(図略)から外筒3に、軸周り回転方向の駆動力が伝達される。
【0032】
[加熱装置2]
加熱装置2は、加熱室20と、多数のヒータ21u、21dと、外壁22と、断熱壁23と、を備えている。加熱室20は、本発明の加熱部に含まれる。加熱室20には、外筒3の外側加熱区間30と、内筒4の内側加熱区間40と、が収容されている。外壁22は、SUS製であって、直方体箱状を呈している。断熱壁23は、多数の耐火煉瓦が組み合わされて形成されている。断熱壁23は、外壁22の内面に固定されている。加熱室20は、断熱壁23の内部に区画されている。多数のヒータ21uは、加熱室20における、外筒3の上方に配置されている。多数のヒータ21uは、前後方向に並んでいる。多数のヒータ21dは、加熱室20における、外筒3の下方に配置されている。多数のヒータ21dは、前後方向に並んでいる。
【0033】
[連結部9]
図4に、本実施形態のロータリーキルンの前端部分の斜視図を示す。図5に、同ロータリーキルンの連結部の分解斜視図を示す。図6に、同ロータリーキルンの前面図を示す。なお、図5においては、内筒4を透過して示す。また、図6においては、内筒4にハッチングを施す。図4〜図6に示すように、連結部9は、内筒4の外周面と、外筒3のフランジ33fと、を連結している。
【0034】
連結部9は、三つの保持具90と、三つの連結部材91と、三つのリンクアーム92と、六つのリンクピン93と、を備えている。保持具90は、鋼製であって、周方向に略120°に亘って延在する、部分円弧状を呈している。三つの保持具90は、後述する三つの連結部材91を介して、環状に連なっている。三つの保持具90は、内筒4の外周面を周方向に略120°ずつ覆っている。三つの保持具90は、フランジ33fの前方に配置されている。図6に細線で示すように、内筒4に取り付けられる前の自然状態の保持具90の内周面の曲率は、内筒4の外周面の設計曲率よりも、大きく設定されている。このため、保持具90は、広げられた状態で(曲率を小さくされた状態で)、内筒4の外周面に取り付けられている。保持具90の内周面は、内筒4の外周面に線接触している。すなわち、三つの保持具90は、内筒4に、略120°ずつ離間した三箇所で、線接触している。保持具90の周方向略中央には、内端取付部900が配置されている。内端取付部900には、内端取付孔900aが穿設されている。保持具90の周方向両端は、径方向外側に折り曲げられている。一対の当該屈曲部分には、各々、連結部901が形成されている。
【0035】
リンクアーム92は、鋼製であって、細板状を呈している。リンクアーム92は、フランジ33fと保持具90とを、径方向に連結している。リンクアーム92は、合計三つ配置されている。リンクアーム92は、外端孔920と内端孔921とを備えている。外端孔920は、リンクアーム92の外端に穿設されている。外端孔920と、フランジ33fの外端取付孔330fと、は前後方向に並んでいる。リンクピン93は、これら外端孔920と外端取付孔330fとに挿入されている。このため、リンクアーム92は、リンクピン93を中心に、揺動可能である。内端孔921は、リンクアーム92の内端に穿設されている。内端孔921と、保持具90の内端取付孔900aと、は前後方向に並んでいる。リンクピン93は、これら内端孔921と内端取付孔900aとに挿入されている。このため、保持具90は、リンクピン93を中心に、揺動可能である。
【0036】
連結部材91は、周方向に隣接する保持具90同士を連結している。連結部材91は、ボルト910と、ナット911と、コイルスプリング912と、を備えている。ボルト910は、隣り合う一対の連結部901を、図6における時計回り方向に、貫通している。ナット911は、ボルト910の貫通端に螺着されている。コイルスプリング912は、ナット911と連結部901との間に介装されている。ボルト910とナット911とを締結することにより、コイルスプリング912には、伸張方向の付勢力が蓄積されている。すなわち、コイルスプリング912の付勢力は、周方向に隣り合う一対の連結部901を互いに近づける方向に、作用している。
【0037】
[タイヤ8f、8r]
図7に、本実施形態のロータリーキルンの前方のタイヤの分解斜視図を示す。なお、外筒3を透過して示す。図7に示すように、タイヤ8fは、内輪80fと、三つのリンクアーム82fと、外輪83fと、六つのリンクピン84fと、を備えている。外輪83fは、鋼製であって円弧状を呈している。図4に示すように、外輪83fは、左右一対のローラ70f上に、転動可能に載置されている。また、外輪83fは、前後一対のフランジ700f間に介在している。図7に戻って、外輪83fには、周方向に120°ずつ離間して、外端取付孔830fが穿設されている。
【0038】
内輪80fは、鋼製であって円弧状を呈している。内輪80fは、外輪83fの径方向内側に配置されている。内輪80fは、外筒3の外周面を全周的に覆っている。内輪80fには、周方向に120°ずつ離間して、内端取付部800fが配置されている。内端取付部800fには、内端取付孔800faが穿設されている。
【0039】
リンクアーム82fは、鋼製であって、細板状を呈している。リンクアーム82fは、内輪80fと外輪83fとを、径方向に連結している。リンクアーム82fは、合計三つ配置されている。リンクアーム82fは、外端孔820fと内端孔821fとを備えている。外端孔820fは、リンクアーム82fの外端に穿設されている。外端孔820fと、外輪83fの外端取付孔830fと、は前後方向に並んでいる。リンクピン84fは、これら外端孔820fと外端取付孔830fとに挿入されている。このため、リンクアーム82fは、リンクピン84fを中心に、揺動可能である。内端孔821fは、リンクアーム82fの内端に穿設されている。内端孔821fと、内輪80fの内端取付孔800faと、は前後方向に並んでいる。リンクピン84fは、これら内端孔821fと内端取付孔800faとに挿入されている。
【0040】
タイヤ8rの構成は、タイヤ8fの構成と同様である。タイヤ8rの配置は、タイヤ8fの配置と前後対称である。したがって、ここでは説明を割愛する。
【0041】
[隙間封止部6]
図8に、本実施形態のロータリーキルンの後端部分の斜視図を示す。図9に、図2の枠IX内の拡大断面図を示す。図8、図9に示すように、隙間封止部6は、段付フランジ60とシールリング61とを備えている。段付フランジ60は、鋼製であって、基部600と突出部601とを備えている。基部600は円環状を呈している。基部600は、外筒3のフランジ33rに、ボルトおよびナットにより、固定されている。突出部601は円環状を呈している。突出部601は、基部600の内周面から後方に突出して、形成されている。
【0042】
シールリング61は、耐熱性グランドパッキンであって、円環状を呈している。シールリング61は、フランジ33rの後面と、突出部601の前面と、の間に介装されている。シールリング61は、内筒4の外周面に弾接している。このため、非加熱隙間51rは、外部から隔離されている。また、内筒4の外周面は、シールリング61に対して、相対的に前後方向に摺動可能である。このため、内筒4は、外筒3に対して、相対的に前後方向に変位可能である。
【0043】
このように、内筒4と外筒3とは、前端部分の連結部9および後端部分の隙間封止部6により、軸方向(前後方向)に変位可能に、かつ同期して軸周りに回転可能に、連結されている。
【0044】
[加熱隙間50、非加熱隙間51f、51r]
図2に示すように、加熱隙間50は、内筒4の内側加熱区間40と、外筒3の外側加熱区間30と、の間に介在している。非加熱隙間51fは、内筒4の内側非加熱区間41fと、外筒3の外側非加熱区間31fと、の間に介在している。非加熱隙間51rは、内筒4の内側非加熱区間41rと、外筒3の外側非加熱区間31rと、の間に介在している。これら非加熱隙間51fと加熱隙間50と非加熱隙間51rとは、前後方向に連通している。加熱隙間50、非加熱隙間51f、51rの径方向幅は、共に2.5mmである。
【0045】
<ロータリーキルンの動き>
次に、本実施形態のロータリーキルン1の動きについて説明する。前述したように、外筒3には、スプロケットを介して、モータから、回転方向の駆動力が伝達される。当該駆動力は、図2に示すように、連結部9および隙間封止部6を介して、内筒4に伝達される。このため、外筒3および内筒4は、一対のローラ70fおよび一対のローラ70r上を、同期して軸周りに回転する。
【0046】
被処理物Wは、内筒4の内部を、径方向に揺動しながら(内筒4が回転しているため)、前方から後方に向かって移動する。内筒4の内側加熱区間40は、加熱室20に収容されている。このため、被処理物Wは、内側加熱区間40を通過する際、ヒータ21u、21dにより加熱される。具体的には、図3に示すように、ヒータ21u、21dにより加熱された加熱室20の空気が、伝熱孔32を介して、加熱隙間50に流れ込む。また、ヒータ21u、21dの表面から、輻射熱が、伝熱孔32を介して直接的に内側加熱区間40に放出される。このような熱の移動により、内筒4内部の被処理物Wは加熱される。
【0047】
図10(a)に、図2の枠X内の拡大図を示す。図10(b)に、図10(a)に示す部分の内筒の距離−温度関係の模式図を示す。なお、図10(b)においては、説明の便宜上、温度勾配を直線で示す。
【0048】
図10(a)、(b)に示すように、内筒4の内側加熱区間40と内側非加熱区間41rとの境界付近には、温度勾配が存在する。すなわち、加熱室20から遠ざかるにつれ、徐々に内筒4の温度は低下する。
【0049】
仮に、加熱隙間50と非加熱隙間51rとが隔離されている場合、あるいは加熱隙間50、非加熱隙間51rそのものが存在しない場合、内筒4の内側加熱区間40と内側非加熱区間41rとの境界付近の温度勾配は、直線L2のように大きくなる。これに対して、加熱隙間50と非加熱隙間51rとが連通している場合、図10(a)に矢印で示すように、加熱隙間50から非加熱隙間51rに、空気が流動することができる。このため、内筒4の内側加熱区間40と内側非加熱区間41rとの境界付近の温度勾配は、直線L1のように小さくなる。
【0050】
<作用効果>
次に、本実施形態のロータリーキルン1の作用効果について説明する。図3に示すように、加熱室20と内側加熱区間40つまり被処理物Wとの間には、径方向外側から径方向内側に向かって、加熱室20→外側加熱区間30→加熱隙間50→内側加熱区間40という第一伝熱経路が確保されている。第一伝熱経路を経由する熱により、被処理物Wは、移動しながら加熱される。ここで、金属製の外筒3は、セラミックス製の外筒と比較して、熱伝導性が高い。このため、加熱室20の熱が被処理物Wに伝わりやすい。また、熱伝導性が高いため、図2に示すように、外側加熱区間30と外側非加熱区間31f、31rとの境界付近で、温度勾配が大きくなりにくい。したがって、当該温度勾配により、外側加熱区間30と外側非加熱区間31f、31rとの境界付近に、大きな熱応力が発生しにくい。併せて、金属製の外筒3は、セラミックス製の外筒と比較して、一般的に靭性が高い。よって、外筒3に不具合が発生しにくい。
【0051】
また、外筒3と内筒4との間には、加熱隙間50と非加熱隙間51f、51rとが確保されている。上述したように、加熱隙間50は、第一伝熱経路の一部を構成している。このため、加熱室20からの熱により、加熱隙間50は加熱される。非加熱隙間51f、51rは加熱隙間50に連通している。このため、加熱隙間50の熱は、非加熱隙間51f、51rに移動する。移動した熱により、非加熱隙間51f、51rは加熱される。非加熱隙間51f、51rの径方向内側には、内筒4の内側非加熱区間41f、41rが配置されている。このため、非加熱隙間51f、51rの熱により、内側非加熱区間41f、41rは加熱される。このように、加熱室20と内側非加熱区間41f、41rとの間には、加熱室20→外筒3の外側加熱区間30→加熱隙間50→非加熱隙間51f、51r→内筒4の内側非加熱区間41f、41rという第二伝熱経路が確保されている。第二伝熱経路を経由する熱により、内側非加熱区間41f、41rは加熱される。
【0052】
本実施形態のロータリーキルン1によると、第一伝熱経路により内側加熱区間40を加熱できるのみならず、第二伝熱経路により内側非加熱区間41f、41rを加熱することができる。このため、図10(b)に示すように、内側加熱区間40と内側非加熱区間41f、41rとの境界付近の温度勾配を小さくすることができる。
【0053】
また、図2に示すように、加熱隙間50、非加熱隙間51f、51rの径方向幅は、共に2.5mmである。すなわち、1mm以上である。このため、熱媒体となる空気が、加熱隙間50から非加熱隙間51f、51rに、流動しやすい。
【0054】
また、図9に示すように、内筒4および外筒3の後端部分には、隙間封止部6が配置されている。このため、内筒4がアルミナ製、外筒3がSUS製であるにもかかわらず、両部材間の線膨張係数の差による軸方向変形量の相違を、許容することができる。並びに、非加熱隙間51rを外部から封止することができる。また、シールリング61の弾接力により、両部材間の線膨張係数の差による径方向変形量の相違を、許容することができる。すなわち、非加熱隙間51rの径方向幅が変化しても、非加熱隙間51rを外部から封止することができる。
【0055】
また、図3に示すように、外筒3には、多数の伝熱孔32が穿設されている。このため、空気が、伝熱孔32を介して、加熱室20から加熱隙間50に流動する。したがって、熱伝達により、熱を移動させることができる。また、輻射熱が、伝熱孔32を介して、ヒータ21u、21dの表面から内側加熱区間40に放出される。このため、熱放射により、熱を移動させることができる。このように、本実施形態のロータリーキルン1によると、加熱室20の熱が、内側加熱区間40(つまり被処理物W)および図2に示す内側非加熱区間41f、41rに、移動しやすくなる。また、多数の伝熱孔32を介して空気が流動するため、内側加熱区間40の温度がばらつくのを抑制することができる。このため、被処理物Wを均一に加熱しやすくなる。
【0056】
また、外側加熱区間30の外周面の面積を100%とした場合、多数の伝熱孔32の総開口面積は、11%を占めている。総開口面積が10%以上であるため、上記熱伝達、熱放射による伝熱効果を、充分に得ることができる。
【0057】
また、図6に示すように、内筒4および外筒3の前端部分には、連結部9が配置されている。このため、内筒4がアルミナ製、外筒3がSUS製であるにもかかわらず、両部材間の線膨張係数の差による径方向変形量の相違を、許容することができる。すなわち、非加熱隙間51fの径方向幅が変化しても、内筒4と外筒3とを連結し続けることができる。
【0058】
また、図2に示すように、ローラ70fにはフランジ700fが配置されている一方、ローラ70rにはフランジが配置されていない。このため、熱膨張による外筒3の軸方向の変形を許容することができる。また、図7に示すように、タイヤ8fの内輪80fと外輪83fとの間には、隙間が区画されている。このため、熱膨張による内輪80fおよび外筒3の径方向の変形を許容することができる。
【0059】
<その他>
以上、本発明のロータリーキルンの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0060】
伝熱孔32の形状、配置、数、開口面積は特に限定しない。ヒータ21u、21dの配置、被処理物Wの種類などに応じて、適宜設定すればよい。加熱隙間50、非加熱隙間51f、51rを流れる熱媒体は特に限定しない。熱媒体は不活性ガスなどであってもよい。また、熱媒体は、気体は勿論、液体であってもよい。外筒3および内筒4への駆動力伝達機構は特に限定しない。ローラ70f、70rを駆動して、外筒3および内筒4を回転させてもよい。加熱室20の熱源は特に限定しない。バーナーなどであってもよい。内筒4の材質は特に限定しない。ムライト、ジルコニアなど、他のセラミックス製としてもよい。外筒3の材質は特に限定しない。一般構造用圧延鋼(SS)、機械構造用炭素鋼(SC)など、他の金属製としてもよい。
【実施例】
【0061】
以下、内筒4の内周面の軸方向(前後方向)における温度分布を測定した、温度測定実験について説明する。実施例は、上記実施形態のロータリーキルン1である。図2に示すように、内筒4の前後方向全長は2000mm、外径(直径)は160mm、内径(直径)は148mmである。外筒3の前後方向全長は1564mm、外径(直径)は178mm、内径(直径)は165mmである。加熱隙間50、非加熱隙間51f、51rの径方向幅は、共に2.5mmである。外側加熱区間30の外周面の面積を100%とした場合、多数の伝熱孔32の総開口面積は、11%である。加熱室20の前後方向全長(=外側加熱区間30の前後方向全長=内側加熱区間40の前後方向全長)は950mmである。比較例は、上記実施形態のロータリーキルン1に対して、外筒3を有しないロータリーキルン(つまり既存の単管(内筒4に対応)のロータリーキルン)である。
【0062】
図2に示すように、内筒4の内周面の、加熱装置2の後壁の前後方向中央部分を点B、点Bから前方に200mmの加熱室20内の部分を点A、点Bから後方に125mmのタイヤ8r配置部分を点Cとした。これら点A〜点Cを、温度測定位置とした。温度測定結果を、表1、図11に示す。
【表1】
【0063】
表1、図11に示すように、実施例、比較例共に、加熱室20から遠ざかるにつれ、温度が低下することが判った。点A〜点B間の温度勾配は、実施例が0.75(℃/mm)(=(840−690)/200)、比較例が1.4(℃/mm)(=(860−580)/200)だった。点B〜点C間の温度勾配は、実施例が2.08(℃/mm)(=(690−430)/125)、比較例が2.16(℃/mm)(=(580−310)/125)だった。点A〜点C間の温度勾配は、実施例が1.26(℃/mm)(=(840−430)/325)、比較例が1.69(℃/mm)(=(860−310)/325)だった。すなわち、実施例の方が、比較例よりも、温度勾配が小さいことが判った。
【符号の説明】
【0064】
1:ロータリーキルン、2:加熱装置、3:外筒、4:内筒、6:隙間封止部、8f:タイヤ、8r:タイヤ、9:連結部。
20:加熱室(加熱部)、21d:ヒータ、21u:ヒータ、22:外壁、23:断熱壁、30:外側加熱区間、31f:外側非加熱区間、31r:外側非加熱区間、32:伝熱孔、33f:フランジ、33r:フランジ、40:内側加熱区間、41f:内側非加熱区間、41r:内側非加熱区間、50:加熱隙間、51f:非加熱隙間、51r:非加熱隙間、60:段付フランジ、61:シールリング、70f:ローラ、70r:ローラ、80f:内輪、82f:リンクアーム、83f:外輪、84f:リンクピン、90:保持具、91:連結部材、92:リンクアーム、93:リンクピン。
330f:外端取付孔、600:基部、601:突出部、700f:フランジ、800f:内端取付部、800fa:内端取付孔、820f:外端孔、821f:内端孔、830f:外端取付孔、900:内端取付部、900a:内端取付孔、901:連結部、910:ボルト、911:ナット、912:コイルスプリング、920:外端孔、921:内端孔。
W:被処理物。
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物を周方向に揺動させながら軸方向に搬送するロータリーキルンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内筒と外筒と不定形断熱材とを備えるロータリーキルンが開示されている。内筒はセラミックス製である。外筒は金属製である。内筒と外筒とは、同軸的に配置されている。不定形断熱材は、内筒と外筒との間の隙間に充填されている。被処理物は、内筒の内部を軸方向に移動する。
【0003】
内筒および外筒は、各々、加熱区間と非加熱区間とを備えている。加熱区間は、加熱部に収容されている。非加熱区間は、加熱部に収容されていない。外筒の加熱区間、不定形断熱材、内筒の加熱区間を経由して移動する加熱部からの熱により、内筒内部の被処理物は、移動しながら加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−3054号公報
【特許文献2】特開平3−79984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、セラミックス製の内筒は、金属製の内筒と比較して、熱伝導性が低い。このため、高温の加熱区間と低温の非加熱区間との境界付近では、温度勾配(軸方向単位長さあたりの温度変化の割合)が大きくなりやすい。したがって、当該温度勾配により、加熱区間と非加熱区間との境界付近に、大きな熱応力が発生しやすい。併せて、セラミックス製の内筒は、金属製の内筒と比較して、一般的に靭性が低い。よって、内筒に不具合が発生するおそれがある。
【0006】
この点、特許文献1のロータリーキルンによると、同文献の[0020]に記載されているように、内筒が外筒により支持されている。このため、温度勾配により内筒に多少のクラックが発生しても、不具合が生じにくい。
【0007】
特許文献2には、内筒と外筒と隙間とを備えるロータリーキルンが開示されている。内筒および外筒は、セラミックス製である。内筒と外筒とは、同軸的に配置されている。内筒と外筒との間の隙間には、不活性ガスが封入されている。
【0008】
内筒および外筒は、各々、加熱区間と非加熱区間とを備えている。加熱区間は、加熱部に収容されている。非加熱区間は、加熱部に収容されていない。外筒の加熱区間、不活性ガス、内筒の加熱区間を経由して移動する加熱部からの熱により、内筒内部の被処理物は、移動しながら加熱される。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載のロータリーキルンによると、内筒のみならず外筒もセラミックス製である。このため、内筒のみならず外筒についても、加熱区間と非加熱区間との間の温度差を考慮する必要がある。また、セラミックス製の外筒は、金属製の外筒と比較して、熱伝導性が低い。このため、加熱部の熱が被処理物に伝わりにくい。
【0010】
本発明のロータリーキルンは、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明のロータリーキルンは、加熱部の熱が被処理物に伝わりやすく、内筒の加熱区間と非加熱区間との境界付近の温度勾配が大きくなりにくいロータリーキルンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記課題を解決するため、本発明のロータリーキルンは、加熱部を有する加熱装置と、軸回りに回転可能に略水平に配置され、該加熱部に収容される外側加熱区間と、該加熱部に収容されない外側非加熱区間と、を有する金属製の外筒と、該外筒に同期して軸回りに回転可能に、該外筒の径方向内側に同軸的に配置され、該加熱部に収容される内側加熱区間と、該加熱部に収容されない内側非加熱区間と、を有し、内部を被処理物が軸方向に移動するセラミックス製の内筒と、該外側加熱区間と該内側加熱区間との間に介在する加熱隙間と、該外側非加熱区間と該内側非加熱区間との間に介在し、該加熱隙間に連通する非加熱隙間と、を備え、該加熱部の熱が該加熱隙間から該非加熱隙間に移動し、該内側非加熱区間が加熱されることにより、該内側加熱区間と該内側非加熱区間との境界付近の温度勾配が大きくなるのを抑制することを特徴とする(請求項1に対応)。
【0012】
本発明のロータリーキルンは、加熱装置と外筒と内筒と加熱隙間と非加熱隙間とを備えている。外筒は、外側加熱区間と外側非加熱区間とを備えている。内筒は、内側加熱区間と内側非加熱区間とを備えている。
【0013】
加熱部と内側加熱区間つまり被処理物との間には、径方向外側から径方向内側に向かって、加熱部→外筒の外側加熱区間→加熱隙間→内筒の内側加熱区間という伝熱経路(以下、適宜「第一伝熱経路」と称す。)が確保されている。第一伝熱経路を経由する熱により、内側加熱区間の内部の被処理物は、移動しながら加熱される。ここで、金属製の外筒は、セラミックス製の外筒と比較して、熱伝導性が高い。このため、加熱部の熱が被処理物に伝わりやすい。また、熱伝導性が高いため、外側加熱区間と外側非加熱区間との境界付近で、温度勾配(軸方向単位長さあたりの温度変化の割合)が大きくなりにくい。したがって、当該温度勾配により、外側加熱区間と外側非加熱区間との境界付近に、大きな熱応力が発生しにくい。併せて、金属製の外筒は、セラミックス製の外筒と比較して、一般的に靭性が高い。よって、外筒に不具合が発生しにくい。
【0014】
また、外筒と内筒との間には、加熱隙間と非加熱隙間とが確保されている。上述したように、加熱隙間は、第一伝熱経路の一部を構成している。このため、加熱部からの熱により、加熱隙間は加熱される。非加熱隙間は加熱隙間に連通している。このため、加熱隙間の熱は、非加熱隙間に移動する。移動した熱により、非加熱隙間は加熱される。非加熱隙間の径方向内側には、内筒の内側非加熱区間が配置されている。このため、非加熱隙間の熱により、内側非加熱区間は加熱される。このように、加熱部と内側非加熱区間との間には、加熱部→外筒の外側加熱区間→加熱隙間→非加熱隙間→内筒の内側非加熱区間という伝熱経路(以下、適宜「第二伝熱経路」と称す。)が確保されている。第二伝熱経路を経由する熱により、内側非加熱区間は加熱される。
【0015】
本発明のロータリーキルンによると、第一伝熱経路により内側加熱区間を加熱できるのみならず、第二伝熱経路により内側非加熱区間を加熱することができる。このため、内側加熱区間と内側非加熱区間との境界付近の温度勾配が大きくなるのを抑制することができる。
【0016】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記加熱隙間および前記非加熱隙間の径方向幅は、1mm以上である構成とする方がよい(請求項2に対応)。加熱隙間および非加熱隙間の径方向幅を1mm以上としたのは、1mm未満の場合、加熱隙間から非加熱隙間に、熱が移動しにくいからである。特に、熱媒体となる流体が、加熱隙間から非加熱隙間に、流れにくくなるからである。
【0017】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、さらに、前記内筒と前記外筒との間の軸方向の熱膨張差を許容し、前記非加熱隙間を外部から封止する隙間封止部を有する構成とする方がよい(請求項3に対応)。
【0018】
金属製の外筒は、セラミックス製の内筒よりも、線膨張係数が大きい。このため、外筒は内筒よりも熱膨張しやすい。したがって、外筒の方が内筒よりも、軸方向変形量が大きくなる。変形量の差が大きいと、非加熱隙間を外部から封止しにくい。この点、本構成によると、隙間封止部が配置されている。このため、内筒と外筒との間の軸方向変形量の相違を許容しながら、非加熱隙間を外部から封止することができる。
【0019】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記外側加熱区間は、前記加熱部と前記加熱隙間とを連通する伝熱孔を有する構成とする方がよい(請求項4に対応)。
【0020】
本構成によると、熱媒体となる流体が、伝熱孔を介して、加熱部から加熱隙間に流動する。このため、熱伝達により、熱を移動させることができる。また、加熱部の熱源の表面から、輻射熱が、伝熱孔を介して、加熱部から内側加熱区間に放出される。このため、熱放射により、熱を移動させることができる。このように、本構成によると、加熱部の熱が、内側加熱区間(つまり被処理物)および内側非加熱区間に、移動しやすくなる。
【0021】
(5)好ましくは、上記(4)の構成において、前記外側加熱区間の外周面の面積を100%として、前記伝熱孔の開口面積は10%以上である構成とする方がよい(請求項5に対応)。伝熱孔の開口面積を10%以上としたのは、10%未満の場合、上述した熱伝達、熱放射による伝熱効果が、充分に得られないからである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、加熱部の熱が被処理物に伝わりやすく、内筒の加熱区間と非加熱区間との境界付近の温度勾配が大きくなりにくいロータリーキルンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態のロータリーキルンの斜視図である。
【図2】同ロータリーキルンの軸方向断面図である。
【図3】同ロータリーキルンの加熱部付近の径方向断面図である。
【図4】同ロータリーキルンの前端部分の斜視図である。
【図5】同ロータリーキルンの連結部の分解斜視図である。
【図6】同ロータリーキルンの前面図である。
【図7】同ロータリーキルンの前方のタイヤの分解斜視図である。
【図8】同ロータリーキルンの後端部分の斜視図である。
【図9】図2の枠IX内の拡大断面図である。
【図10】(a)は図2の枠X内の拡大図である。(b)は(a)に示す部分の内筒の距離−温度関係の模式図である。
【図11】温度測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のロータリーキルンの実施の形態について説明する。
【0025】
<ロータリーキルンの構成>
まず、本実施形態のロータリーキルンの構成について説明する。図1に、本実施形態のロータリーキルンの斜視図を示す。図2に、同ロータリーキルンの軸方向断面図を示す。図3に、同ロータリーキルンの加熱部付近の径方向断面図を示す。なお、図9以外の図においては、説明の便宜上、外筒3と内筒4との間の隙間を強調して示す。
【0026】
図1〜図3に示すように、本実施形態のロータリーキルン1は、加熱装置2と、外筒3と、内筒4と、加熱隙間50と、一対の非加熱隙間51f、51rと、隙間封止部6と、一対のタイヤ8f、8rと、連結部9と、一対のローラ70fと、一対のローラ70rと、を備えている。
【0027】
[ローラ70f、70r]
一対のローラ70fは、架台(図略)に配置されている。一対のローラ70fは、左右方向に並んで配置されている。ローラ70fは、軸周りに回転可能である。ローラ70fの前後方向両端には、フランジ700fが配置されている。一対のローラ70rは、所定間隔だけ離間して、一対のローラ70fの後方に配置されている。一対のローラ70rは、左右方向に並んで配置されている。ローラ70rは、軸周りに回転可能である。
【0028】
[内筒4]
内筒4は、アルミナ製であって、前後方向に延在する円筒状を呈している。内筒4は、略水平(前方から後方に向かって緩やかに下降している)に配置されている。被処理物Wは、前方から後方に向かって、内筒4の内部を搬送される。
【0029】
内筒4は、内側加熱区間40と、前後一対の内側非加熱区間41f、41rと、を備えている。内側非加熱区間41fは、内側加熱区間40の前方に配置されている。内側非加熱区間41rは、内側加熱区間40の後方に配置されている。
【0030】
[外筒3]
外筒3は、ステンレス鋼(SUS)製であって、前後方向に延在する円筒状を呈している。外筒3は、略水平(前方から後方に向かって緩やかに下降している)に配置されている。外筒3は、内筒4の径方向外側に配置されている。外筒3は、内筒4と同軸的に配置されている。内筒4の前後方向両端は、外筒3から前後方向に突出している。
【0031】
外筒3は、外側加熱区間30と、前後一対の外側非加熱区間31f、31rと、多数の伝熱孔32と、前後一対のフランジ33f、33rと、スプロケット(図略)と、を備えている。外側非加熱区間31fは、外側加熱区間30の前方に配置されている。外側非加熱区間31rは、外側加熱区間30の後方に配置されている。多数の伝熱孔32は、外側加熱区間30に、全周的に配置されている。外側加熱区間30の外周面の面積を100%とした場合、多数の伝熱孔32の総開口面積は、11%を占めている。フランジ33fは、外筒3の前端に配置されている。フランジ33fの前面には、周方向に120°ずつ離間して、外端取付孔330f(後述する図5参照)が穿設されている。フランジ33rは、外筒3の後端に配置されている。スプロケットは、フランジ33rの前方に配置されている。スプロケットは外筒3の外周面に周設されている。スプロケットを介して、モータ(図略)から外筒3に、軸周り回転方向の駆動力が伝達される。
【0032】
[加熱装置2]
加熱装置2は、加熱室20と、多数のヒータ21u、21dと、外壁22と、断熱壁23と、を備えている。加熱室20は、本発明の加熱部に含まれる。加熱室20には、外筒3の外側加熱区間30と、内筒4の内側加熱区間40と、が収容されている。外壁22は、SUS製であって、直方体箱状を呈している。断熱壁23は、多数の耐火煉瓦が組み合わされて形成されている。断熱壁23は、外壁22の内面に固定されている。加熱室20は、断熱壁23の内部に区画されている。多数のヒータ21uは、加熱室20における、外筒3の上方に配置されている。多数のヒータ21uは、前後方向に並んでいる。多数のヒータ21dは、加熱室20における、外筒3の下方に配置されている。多数のヒータ21dは、前後方向に並んでいる。
【0033】
[連結部9]
図4に、本実施形態のロータリーキルンの前端部分の斜視図を示す。図5に、同ロータリーキルンの連結部の分解斜視図を示す。図6に、同ロータリーキルンの前面図を示す。なお、図5においては、内筒4を透過して示す。また、図6においては、内筒4にハッチングを施す。図4〜図6に示すように、連結部9は、内筒4の外周面と、外筒3のフランジ33fと、を連結している。
【0034】
連結部9は、三つの保持具90と、三つの連結部材91と、三つのリンクアーム92と、六つのリンクピン93と、を備えている。保持具90は、鋼製であって、周方向に略120°に亘って延在する、部分円弧状を呈している。三つの保持具90は、後述する三つの連結部材91を介して、環状に連なっている。三つの保持具90は、内筒4の外周面を周方向に略120°ずつ覆っている。三つの保持具90は、フランジ33fの前方に配置されている。図6に細線で示すように、内筒4に取り付けられる前の自然状態の保持具90の内周面の曲率は、内筒4の外周面の設計曲率よりも、大きく設定されている。このため、保持具90は、広げられた状態で(曲率を小さくされた状態で)、内筒4の外周面に取り付けられている。保持具90の内周面は、内筒4の外周面に線接触している。すなわち、三つの保持具90は、内筒4に、略120°ずつ離間した三箇所で、線接触している。保持具90の周方向略中央には、内端取付部900が配置されている。内端取付部900には、内端取付孔900aが穿設されている。保持具90の周方向両端は、径方向外側に折り曲げられている。一対の当該屈曲部分には、各々、連結部901が形成されている。
【0035】
リンクアーム92は、鋼製であって、細板状を呈している。リンクアーム92は、フランジ33fと保持具90とを、径方向に連結している。リンクアーム92は、合計三つ配置されている。リンクアーム92は、外端孔920と内端孔921とを備えている。外端孔920は、リンクアーム92の外端に穿設されている。外端孔920と、フランジ33fの外端取付孔330fと、は前後方向に並んでいる。リンクピン93は、これら外端孔920と外端取付孔330fとに挿入されている。このため、リンクアーム92は、リンクピン93を中心に、揺動可能である。内端孔921は、リンクアーム92の内端に穿設されている。内端孔921と、保持具90の内端取付孔900aと、は前後方向に並んでいる。リンクピン93は、これら内端孔921と内端取付孔900aとに挿入されている。このため、保持具90は、リンクピン93を中心に、揺動可能である。
【0036】
連結部材91は、周方向に隣接する保持具90同士を連結している。連結部材91は、ボルト910と、ナット911と、コイルスプリング912と、を備えている。ボルト910は、隣り合う一対の連結部901を、図6における時計回り方向に、貫通している。ナット911は、ボルト910の貫通端に螺着されている。コイルスプリング912は、ナット911と連結部901との間に介装されている。ボルト910とナット911とを締結することにより、コイルスプリング912には、伸張方向の付勢力が蓄積されている。すなわち、コイルスプリング912の付勢力は、周方向に隣り合う一対の連結部901を互いに近づける方向に、作用している。
【0037】
[タイヤ8f、8r]
図7に、本実施形態のロータリーキルンの前方のタイヤの分解斜視図を示す。なお、外筒3を透過して示す。図7に示すように、タイヤ8fは、内輪80fと、三つのリンクアーム82fと、外輪83fと、六つのリンクピン84fと、を備えている。外輪83fは、鋼製であって円弧状を呈している。図4に示すように、外輪83fは、左右一対のローラ70f上に、転動可能に載置されている。また、外輪83fは、前後一対のフランジ700f間に介在している。図7に戻って、外輪83fには、周方向に120°ずつ離間して、外端取付孔830fが穿設されている。
【0038】
内輪80fは、鋼製であって円弧状を呈している。内輪80fは、外輪83fの径方向内側に配置されている。内輪80fは、外筒3の外周面を全周的に覆っている。内輪80fには、周方向に120°ずつ離間して、内端取付部800fが配置されている。内端取付部800fには、内端取付孔800faが穿設されている。
【0039】
リンクアーム82fは、鋼製であって、細板状を呈している。リンクアーム82fは、内輪80fと外輪83fとを、径方向に連結している。リンクアーム82fは、合計三つ配置されている。リンクアーム82fは、外端孔820fと内端孔821fとを備えている。外端孔820fは、リンクアーム82fの外端に穿設されている。外端孔820fと、外輪83fの外端取付孔830fと、は前後方向に並んでいる。リンクピン84fは、これら外端孔820fと外端取付孔830fとに挿入されている。このため、リンクアーム82fは、リンクピン84fを中心に、揺動可能である。内端孔821fは、リンクアーム82fの内端に穿設されている。内端孔821fと、内輪80fの内端取付孔800faと、は前後方向に並んでいる。リンクピン84fは、これら内端孔821fと内端取付孔800faとに挿入されている。
【0040】
タイヤ8rの構成は、タイヤ8fの構成と同様である。タイヤ8rの配置は、タイヤ8fの配置と前後対称である。したがって、ここでは説明を割愛する。
【0041】
[隙間封止部6]
図8に、本実施形態のロータリーキルンの後端部分の斜視図を示す。図9に、図2の枠IX内の拡大断面図を示す。図8、図9に示すように、隙間封止部6は、段付フランジ60とシールリング61とを備えている。段付フランジ60は、鋼製であって、基部600と突出部601とを備えている。基部600は円環状を呈している。基部600は、外筒3のフランジ33rに、ボルトおよびナットにより、固定されている。突出部601は円環状を呈している。突出部601は、基部600の内周面から後方に突出して、形成されている。
【0042】
シールリング61は、耐熱性グランドパッキンであって、円環状を呈している。シールリング61は、フランジ33rの後面と、突出部601の前面と、の間に介装されている。シールリング61は、内筒4の外周面に弾接している。このため、非加熱隙間51rは、外部から隔離されている。また、内筒4の外周面は、シールリング61に対して、相対的に前後方向に摺動可能である。このため、内筒4は、外筒3に対して、相対的に前後方向に変位可能である。
【0043】
このように、内筒4と外筒3とは、前端部分の連結部9および後端部分の隙間封止部6により、軸方向(前後方向)に変位可能に、かつ同期して軸周りに回転可能に、連結されている。
【0044】
[加熱隙間50、非加熱隙間51f、51r]
図2に示すように、加熱隙間50は、内筒4の内側加熱区間40と、外筒3の外側加熱区間30と、の間に介在している。非加熱隙間51fは、内筒4の内側非加熱区間41fと、外筒3の外側非加熱区間31fと、の間に介在している。非加熱隙間51rは、内筒4の内側非加熱区間41rと、外筒3の外側非加熱区間31rと、の間に介在している。これら非加熱隙間51fと加熱隙間50と非加熱隙間51rとは、前後方向に連通している。加熱隙間50、非加熱隙間51f、51rの径方向幅は、共に2.5mmである。
【0045】
<ロータリーキルンの動き>
次に、本実施形態のロータリーキルン1の動きについて説明する。前述したように、外筒3には、スプロケットを介して、モータから、回転方向の駆動力が伝達される。当該駆動力は、図2に示すように、連結部9および隙間封止部6を介して、内筒4に伝達される。このため、外筒3および内筒4は、一対のローラ70fおよび一対のローラ70r上を、同期して軸周りに回転する。
【0046】
被処理物Wは、内筒4の内部を、径方向に揺動しながら(内筒4が回転しているため)、前方から後方に向かって移動する。内筒4の内側加熱区間40は、加熱室20に収容されている。このため、被処理物Wは、内側加熱区間40を通過する際、ヒータ21u、21dにより加熱される。具体的には、図3に示すように、ヒータ21u、21dにより加熱された加熱室20の空気が、伝熱孔32を介して、加熱隙間50に流れ込む。また、ヒータ21u、21dの表面から、輻射熱が、伝熱孔32を介して直接的に内側加熱区間40に放出される。このような熱の移動により、内筒4内部の被処理物Wは加熱される。
【0047】
図10(a)に、図2の枠X内の拡大図を示す。図10(b)に、図10(a)に示す部分の内筒の距離−温度関係の模式図を示す。なお、図10(b)においては、説明の便宜上、温度勾配を直線で示す。
【0048】
図10(a)、(b)に示すように、内筒4の内側加熱区間40と内側非加熱区間41rとの境界付近には、温度勾配が存在する。すなわち、加熱室20から遠ざかるにつれ、徐々に内筒4の温度は低下する。
【0049】
仮に、加熱隙間50と非加熱隙間51rとが隔離されている場合、あるいは加熱隙間50、非加熱隙間51rそのものが存在しない場合、内筒4の内側加熱区間40と内側非加熱区間41rとの境界付近の温度勾配は、直線L2のように大きくなる。これに対して、加熱隙間50と非加熱隙間51rとが連通している場合、図10(a)に矢印で示すように、加熱隙間50から非加熱隙間51rに、空気が流動することができる。このため、内筒4の内側加熱区間40と内側非加熱区間41rとの境界付近の温度勾配は、直線L1のように小さくなる。
【0050】
<作用効果>
次に、本実施形態のロータリーキルン1の作用効果について説明する。図3に示すように、加熱室20と内側加熱区間40つまり被処理物Wとの間には、径方向外側から径方向内側に向かって、加熱室20→外側加熱区間30→加熱隙間50→内側加熱区間40という第一伝熱経路が確保されている。第一伝熱経路を経由する熱により、被処理物Wは、移動しながら加熱される。ここで、金属製の外筒3は、セラミックス製の外筒と比較して、熱伝導性が高い。このため、加熱室20の熱が被処理物Wに伝わりやすい。また、熱伝導性が高いため、図2に示すように、外側加熱区間30と外側非加熱区間31f、31rとの境界付近で、温度勾配が大きくなりにくい。したがって、当該温度勾配により、外側加熱区間30と外側非加熱区間31f、31rとの境界付近に、大きな熱応力が発生しにくい。併せて、金属製の外筒3は、セラミックス製の外筒と比較して、一般的に靭性が高い。よって、外筒3に不具合が発生しにくい。
【0051】
また、外筒3と内筒4との間には、加熱隙間50と非加熱隙間51f、51rとが確保されている。上述したように、加熱隙間50は、第一伝熱経路の一部を構成している。このため、加熱室20からの熱により、加熱隙間50は加熱される。非加熱隙間51f、51rは加熱隙間50に連通している。このため、加熱隙間50の熱は、非加熱隙間51f、51rに移動する。移動した熱により、非加熱隙間51f、51rは加熱される。非加熱隙間51f、51rの径方向内側には、内筒4の内側非加熱区間41f、41rが配置されている。このため、非加熱隙間51f、51rの熱により、内側非加熱区間41f、41rは加熱される。このように、加熱室20と内側非加熱区間41f、41rとの間には、加熱室20→外筒3の外側加熱区間30→加熱隙間50→非加熱隙間51f、51r→内筒4の内側非加熱区間41f、41rという第二伝熱経路が確保されている。第二伝熱経路を経由する熱により、内側非加熱区間41f、41rは加熱される。
【0052】
本実施形態のロータリーキルン1によると、第一伝熱経路により内側加熱区間40を加熱できるのみならず、第二伝熱経路により内側非加熱区間41f、41rを加熱することができる。このため、図10(b)に示すように、内側加熱区間40と内側非加熱区間41f、41rとの境界付近の温度勾配を小さくすることができる。
【0053】
また、図2に示すように、加熱隙間50、非加熱隙間51f、51rの径方向幅は、共に2.5mmである。すなわち、1mm以上である。このため、熱媒体となる空気が、加熱隙間50から非加熱隙間51f、51rに、流動しやすい。
【0054】
また、図9に示すように、内筒4および外筒3の後端部分には、隙間封止部6が配置されている。このため、内筒4がアルミナ製、外筒3がSUS製であるにもかかわらず、両部材間の線膨張係数の差による軸方向変形量の相違を、許容することができる。並びに、非加熱隙間51rを外部から封止することができる。また、シールリング61の弾接力により、両部材間の線膨張係数の差による径方向変形量の相違を、許容することができる。すなわち、非加熱隙間51rの径方向幅が変化しても、非加熱隙間51rを外部から封止することができる。
【0055】
また、図3に示すように、外筒3には、多数の伝熱孔32が穿設されている。このため、空気が、伝熱孔32を介して、加熱室20から加熱隙間50に流動する。したがって、熱伝達により、熱を移動させることができる。また、輻射熱が、伝熱孔32を介して、ヒータ21u、21dの表面から内側加熱区間40に放出される。このため、熱放射により、熱を移動させることができる。このように、本実施形態のロータリーキルン1によると、加熱室20の熱が、内側加熱区間40(つまり被処理物W)および図2に示す内側非加熱区間41f、41rに、移動しやすくなる。また、多数の伝熱孔32を介して空気が流動するため、内側加熱区間40の温度がばらつくのを抑制することができる。このため、被処理物Wを均一に加熱しやすくなる。
【0056】
また、外側加熱区間30の外周面の面積を100%とした場合、多数の伝熱孔32の総開口面積は、11%を占めている。総開口面積が10%以上であるため、上記熱伝達、熱放射による伝熱効果を、充分に得ることができる。
【0057】
また、図6に示すように、内筒4および外筒3の前端部分には、連結部9が配置されている。このため、内筒4がアルミナ製、外筒3がSUS製であるにもかかわらず、両部材間の線膨張係数の差による径方向変形量の相違を、許容することができる。すなわち、非加熱隙間51fの径方向幅が変化しても、内筒4と外筒3とを連結し続けることができる。
【0058】
また、図2に示すように、ローラ70fにはフランジ700fが配置されている一方、ローラ70rにはフランジが配置されていない。このため、熱膨張による外筒3の軸方向の変形を許容することができる。また、図7に示すように、タイヤ8fの内輪80fと外輪83fとの間には、隙間が区画されている。このため、熱膨張による内輪80fおよび外筒3の径方向の変形を許容することができる。
【0059】
<その他>
以上、本発明のロータリーキルンの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0060】
伝熱孔32の形状、配置、数、開口面積は特に限定しない。ヒータ21u、21dの配置、被処理物Wの種類などに応じて、適宜設定すればよい。加熱隙間50、非加熱隙間51f、51rを流れる熱媒体は特に限定しない。熱媒体は不活性ガスなどであってもよい。また、熱媒体は、気体は勿論、液体であってもよい。外筒3および内筒4への駆動力伝達機構は特に限定しない。ローラ70f、70rを駆動して、外筒3および内筒4を回転させてもよい。加熱室20の熱源は特に限定しない。バーナーなどであってもよい。内筒4の材質は特に限定しない。ムライト、ジルコニアなど、他のセラミックス製としてもよい。外筒3の材質は特に限定しない。一般構造用圧延鋼(SS)、機械構造用炭素鋼(SC)など、他の金属製としてもよい。
【実施例】
【0061】
以下、内筒4の内周面の軸方向(前後方向)における温度分布を測定した、温度測定実験について説明する。実施例は、上記実施形態のロータリーキルン1である。図2に示すように、内筒4の前後方向全長は2000mm、外径(直径)は160mm、内径(直径)は148mmである。外筒3の前後方向全長は1564mm、外径(直径)は178mm、内径(直径)は165mmである。加熱隙間50、非加熱隙間51f、51rの径方向幅は、共に2.5mmである。外側加熱区間30の外周面の面積を100%とした場合、多数の伝熱孔32の総開口面積は、11%である。加熱室20の前後方向全長(=外側加熱区間30の前後方向全長=内側加熱区間40の前後方向全長)は950mmである。比較例は、上記実施形態のロータリーキルン1に対して、外筒3を有しないロータリーキルン(つまり既存の単管(内筒4に対応)のロータリーキルン)である。
【0062】
図2に示すように、内筒4の内周面の、加熱装置2の後壁の前後方向中央部分を点B、点Bから前方に200mmの加熱室20内の部分を点A、点Bから後方に125mmのタイヤ8r配置部分を点Cとした。これら点A〜点Cを、温度測定位置とした。温度測定結果を、表1、図11に示す。
【表1】
【0063】
表1、図11に示すように、実施例、比較例共に、加熱室20から遠ざかるにつれ、温度が低下することが判った。点A〜点B間の温度勾配は、実施例が0.75(℃/mm)(=(840−690)/200)、比較例が1.4(℃/mm)(=(860−580)/200)だった。点B〜点C間の温度勾配は、実施例が2.08(℃/mm)(=(690−430)/125)、比較例が2.16(℃/mm)(=(580−310)/125)だった。点A〜点C間の温度勾配は、実施例が1.26(℃/mm)(=(840−430)/325)、比較例が1.69(℃/mm)(=(860−310)/325)だった。すなわち、実施例の方が、比較例よりも、温度勾配が小さいことが判った。
【符号の説明】
【0064】
1:ロータリーキルン、2:加熱装置、3:外筒、4:内筒、6:隙間封止部、8f:タイヤ、8r:タイヤ、9:連結部。
20:加熱室(加熱部)、21d:ヒータ、21u:ヒータ、22:外壁、23:断熱壁、30:外側加熱区間、31f:外側非加熱区間、31r:外側非加熱区間、32:伝熱孔、33f:フランジ、33r:フランジ、40:内側加熱区間、41f:内側非加熱区間、41r:内側非加熱区間、50:加熱隙間、51f:非加熱隙間、51r:非加熱隙間、60:段付フランジ、61:シールリング、70f:ローラ、70r:ローラ、80f:内輪、82f:リンクアーム、83f:外輪、84f:リンクピン、90:保持具、91:連結部材、92:リンクアーム、93:リンクピン。
330f:外端取付孔、600:基部、601:突出部、700f:フランジ、800f:内端取付部、800fa:内端取付孔、820f:外端孔、821f:内端孔、830f:外端取付孔、900:内端取付部、900a:内端取付孔、901:連結部、910:ボルト、911:ナット、912:コイルスプリング、920:外端孔、921:内端孔。
W:被処理物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部を有する加熱装置と、
軸回りに回転可能に略水平に配置され、該加熱部に収容される外側加熱区間と、該加熱部に収容されない外側非加熱区間と、を有する金属製の外筒と、
該外筒に同期して軸回りに回転可能に、該外筒の径方向内側に同軸的に配置され、該加熱部に収容される内側加熱区間と、該加熱部に収容されない内側非加熱区間と、を有し、内部を被処理物が軸方向に移動するセラミックス製の内筒と、
該外側加熱区間と該内側加熱区間との間に介在する加熱隙間と、
該外側非加熱区間と該内側非加熱区間との間に介在し、該加熱隙間に連通する非加熱隙間と、
を備え、該加熱部の熱が該加熱隙間から該非加熱隙間に移動し、該内側非加熱区間が加熱されることにより、該内側加熱区間と該内側非加熱区間との境界付近の温度勾配が大きくなるのを抑制するロータリーキルン。
【請求項2】
前記加熱隙間および前記非加熱隙間の径方向幅は、1mm以上である請求項1に記載のロータリーキルン。
【請求項3】
さらに、前記内筒と前記外筒との間の軸方向の熱膨張差を許容し、前記非加熱隙間を外部から封止する隙間封止部を有する請求項1または請求項2に記載のロータリーキルン。
【請求項4】
前記外側加熱区間は、前記加熱部と前記加熱隙間とを連通する伝熱孔を有する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のロータリーキルン。
【請求項5】
前記外側加熱区間の外周面の面積を100%として、前記伝熱孔の開口面積は10%以上である請求項4に記載のロータリーキルン。
【請求項1】
加熱部を有する加熱装置と、
軸回りに回転可能に略水平に配置され、該加熱部に収容される外側加熱区間と、該加熱部に収容されない外側非加熱区間と、を有する金属製の外筒と、
該外筒に同期して軸回りに回転可能に、該外筒の径方向内側に同軸的に配置され、該加熱部に収容される内側加熱区間と、該加熱部に収容されない内側非加熱区間と、を有し、内部を被処理物が軸方向に移動するセラミックス製の内筒と、
該外側加熱区間と該内側加熱区間との間に介在する加熱隙間と、
該外側非加熱区間と該内側非加熱区間との間に介在し、該加熱隙間に連通する非加熱隙間と、
を備え、該加熱部の熱が該加熱隙間から該非加熱隙間に移動し、該内側非加熱区間が加熱されることにより、該内側加熱区間と該内側非加熱区間との境界付近の温度勾配が大きくなるのを抑制するロータリーキルン。
【請求項2】
前記加熱隙間および前記非加熱隙間の径方向幅は、1mm以上である請求項1に記載のロータリーキルン。
【請求項3】
さらに、前記内筒と前記外筒との間の軸方向の熱膨張差を許容し、前記非加熱隙間を外部から封止する隙間封止部を有する請求項1または請求項2に記載のロータリーキルン。
【請求項4】
前記外側加熱区間は、前記加熱部と前記加熱隙間とを連通する伝熱孔を有する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のロータリーキルン。
【請求項5】
前記外側加熱区間の外周面の面積を100%として、前記伝熱孔の開口面積は10%以上である請求項4に記載のロータリーキルン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−145004(P2011−145004A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6041(P2010−6041)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(390008431)高砂工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(390008431)高砂工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】
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