ロータリーダイカッター用ダイプレートの成形方法
【課題】ロータリーダイカッター用ダイプレートを成形する際の不良品の発生を減少させるとともに、コストを軽減する。
【解決手段】多数の透孔15が開設された円弧面状の木製の成形体14からなる成形型1を負圧吸引装置13が設けられたベッド体2上に横置し、該成形型の頂上部18の両端部寄りに位置決孔19a〜19dを開設し、該成形型の下部にヒータ11を設け、接着剤41が塗布された木製単板40を複数枚重ね合わせることにより単板重合体Bを形成し、該単板重合体の長手方向に延びる中心線42上であって該単板重合体の両短側縁にそれぞれ釘43を該単板重合体を貫通するように打ち付けた後、該釘の先端部を前記位置決孔に嵌合することにより該単板重合体を成形型1の頂上部上に水平に支持し、その状態で該単板重合体の上に弾性シート33を被せて負圧吸引装置13により吸引することにより、単板重合体Bを成形型14に密着させ円弧面状に曲げ成形する。
【解決手段】多数の透孔15が開設された円弧面状の木製の成形体14からなる成形型1を負圧吸引装置13が設けられたベッド体2上に横置し、該成形型の頂上部18の両端部寄りに位置決孔19a〜19dを開設し、該成形型の下部にヒータ11を設け、接着剤41が塗布された木製単板40を複数枚重ね合わせることにより単板重合体Bを形成し、該単板重合体の長手方向に延びる中心線42上であって該単板重合体の両短側縁にそれぞれ釘43を該単板重合体を貫通するように打ち付けた後、該釘の先端部を前記位置決孔に嵌合することにより該単板重合体を成形型1の頂上部上に水平に支持し、その状態で該単板重合体の上に弾性シート33を被せて負圧吸引装置13により吸引することにより、単板重合体Bを成形型14に密着させ円弧面状に曲げ成形する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール紙等のシート状物を加工するためのロータリーダイカッターに用いられるダイプレートの成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
段ボール紙や合成樹脂シート等のシート状物を打ち抜き加工するためのロータリーダイカッターに用いられるダイプレートは、円筒をその中心軸線に沿ってほぼ二等分した円弧面状に成形した積層合板からなり、その外周面から刃先が突出するように打抜刃が植設され、該打抜刃によりシート状物を打ち抜き加工するものである。ところで、このように積層合板を円弧面状に曲げ成形する方法には、従来から接着剤を塗布した単板を複数枚重ね合わせ、これを雄型と雌型によって挟着して加圧すると同時に加熱し、接着剤を硬化させるホットプレス成形方法が知られている。
【0003】
しかし、従来のホットプレス成形方法では、積層合板を加圧するために雄型と雌型とからなる鋳物製の金型を必要とし、しかも、使用するロータリーダイカッターによって必要となるダイプレートの曲率が異なるために、その曲率に合わせて金型を多種類用意しなければならず、重量のある金型を交換することは容易でないため作業性もよくない欠点があった。このため従来ではダイプレートを成形するコストが高くなるという問題があった。
【0004】
一方、特許文献1に示されたダイプレート成形機は、ベッド体の上に円弧面状の成形型が横置され、該ベッド体の上方にゴム製シートのような弾性シートが支持枠によって昇降可能に支持され、接着剤が塗布された単板を複数枚重ね合わせてなる単板重合体を該成形型の上に載置し、該単板重合体の上にさらに弾性シートを被せ、負圧吸引装置により該弾性シートを吸引することにより、該単板重合体を該成形型の円弧面に密着させて該単板重合体を曲げ成形しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2585175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に示されたダイプレート成形方法では、成形型の単板重合体を載置するべき部分が円弧面状であることから、単板重合体が位置ずれし易く、位置ずれした状態で弾性シートが被せられたり、或いは弾性シートが被さる際に該単板重合体が大きく位置ずれするおそれがあった。このためその位置ずれ状態のままで該単板重合体が曲げられてしまい、多くの不良品を発生させるという問題があった。
本発明は上記課題を解決すべくなされたもので、成形型に上に単板重合体が位置ずれすることなく常に正確に支持され、不良品の発生をほとんど皆無にすることができるダイプレートの成形方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その目的を達成するため本発明に係るダイプレートの成形方法は、適宜間隔を離して多数の透孔が開設された円弧面状の木製の成形体からなる成形型を負圧吸引装置が設けられたベッド体上に横置し、該成形型の頂上部の両端部寄りに適宜間隔を離して複数の位置決孔を開設し、該成形型の下部にヒータを設け、接着剤が塗布された長方形状の木製単板を複数枚重ね合わせることにより単板重合体を形成し、該単板重合体の長手方向に延びる中心線上であって該単板重合体の両短側縁にそれぞれ釘を該単板重合体を貫通するように打ち付けた後、該単板重合体から下方に突出する該釘の先端部を前記位置決孔に嵌合することにより該単板重合体を該成形型の頂上部上に水平に支持し、その状態で該単板重合体の上に弾性シートを被せて該弾性シートを前記負圧吸引装置により吸引することにより、該単板重合体を前記成形型に密着させ該単板重合体を円弧面状に曲げ成形するとともに、前記ヒータにより前記単板重合体を加熱して前記接着剤を硬化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るダイプレートの成形方法によれば、成形型の上に単板重合体を位置ずれすることなく支持でき、弾性シートを被せても該単板重合体が位置ずれするおそれがないので、不良品の発生を大幅に減少させることができる。また、木製の成形型は交換が容易であるとともに、曲率半径の異なる多種類の成形型を比較的低コストで製作することができ、ダイプレートの成形に要するコストを大幅に軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るダイプレート成形機の正面図。
【図2】図1のダイプレート成形機の横断面図。
【図3】本発明に係るダイプレートの成形方法における単板重合体に釘を打つ際の単板重合体の斜視図。
【図4】本発明に係るダイプレートの成形方法における単板重合体に釘を打ったときの単板重合体の横断面図。
【図5】本発明に係るダイプレートの成形方法における単板重合体を成形型の上に支持する際の成形型の斜視図。
【図6】本発明に係るダイプレートの成形方法における単板重合体を成形型の上に支持した際のダイプレート成形機の横断面図。
【図7】図6の作動状態を示したダイプレート成形機の横断面図。
【図8】図6の作動状態を示したダイプレート成形機の横断面図。
【図9】図6の作動状態を示したダイプレート成形機の横断面図。
【図10】本発明に係る成形型の斜視図。
【図11】本発明に係る成形型の裏面の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1,図2に示したように、ダイプレート成形機Aは、成形型1が横置されるベッド体2と、該ベッド体の四隅に支柱3を鉛直に立設してなるフレーム4と、該ベッド体の上方にて支柱3に沿って昇降動するように設けられたシート支持枠5と、該シート支持枠の上方に位置し支柱3に沿って昇降動するように設けられたヒータ支持枠6とから概ね構成される。
【0011】
ベッド体2は、内部が中空状に形成され、水平な上壁面7の中央部に長手の開口8が開設され、該開口を覆うように成形型1が横置される。また、ベッド体2内部の中空部9に支持部10を設け、該支持部に加熱手段としての遠赤外線ヒータ11を配設し、該ヒータの輻射熱が開口8を通し上方へ放射されるようにする。また、開口8の両側のベッド体2の上壁面7に中空部9と連通する複数の通気孔12が適宜間隔で開設される。そして、ベッド体2に中空部9中の空気を真空吸引する負圧吸引装置13が配管される。
【0012】
成形型1は、図10,図11に示したように全体として略半円筒形を呈した木製のものであって、曲げ加工された積層合板により成形体14が円弧面状に製作され、該成形体14に適宜間隔を離して多数の透孔15が開設される。該成形体14の内周面には、アーチ状部材16が長手方向に沿って多数等間隔に固着され、該アーチ状部材16を設けることにより該成形型1が補強される。また、成形体14の両端縁に長板状の座板17が固着され、該座板をベッド体2の上壁面7に当接させることで、該成形型1は該ベッド体2上に着脱自在に横置される。また、該成形型1における成形体14の円弧面の頂上部18の両端部寄りに適宜間隔を離して複数(この実施形態では4個ずつ)の位置決孔19a〜19dを開設する。
【0013】
また、ベッド体2上に成形型1を横置した状態で該成形体14の両端部の開口を塞ぎ得るように山形の受凸部20,20が該ベッド体2上に固設されている。該受凸部20,20は、一定の厚みを有し、図5に示されるように、上縁部が成形型1の成形体14の外周面とほぼ同じ円弧面状に形成されると共に両側下部がベッド体2の上壁面7上に緩やかに連なるような山裾野状の形態に形成されている。また、成形型1の両側に横断面がほぼ直角三角形状の棒状の一対の補助杆21,21を配設し、該補助杆の両端を受凸部20,20の内側面に当接させている。このように補助杆21,21を配設することにより、成形型1の頂上部18からベッド体2の上壁面7上までがなだらかな曲面状になるようにしている。
【0014】
シート支持枠5は、平面視にて成形型1を囲うことができる大きさの長方形状に形成され、該シート支持枠5の四隅部に腕片22を突設し、該各腕片22の先端にスライド筒23を設け、該スライド筒23を前記支柱3に沿って摺動させ、図示しない電動機等の動力源を駆動することにより、該シート支持枠5が支柱3に沿って自在に昇降するように構成される。該シート支持枠5の両短側辺の下縁24,24は前記受凸部20,20の上縁部の形状と同じく山形に形成され、該シート支持枠5を下降させたとき該下縁24,24が受凸部20,20の上縁部に密接し得るようにしている。また、該シート支持枠5の両長側辺の中央部外面にエアーシリンダ25,25を固設し、該エアーシリンダ25,25の両側部位には複数の軸受体26を適宜間隔で固設し、該エアーシリンダ25,25のスピンドル27,27に継板28,28を介し横断面コ字棒状の挟着部材29,29を連結するとともに、前記各軸受体26に摺動自在なるように支軸30を貫挿し該各支軸30を継板31を介して挟着部材29,29に連結している。このためエアーシリンダ25,25を作動させると挟着部材29,29が水平方向に進退動し、該挟着部材29,29間の距離が変動する。なお、32はシート支持枠5の両長側辺の上縁部に上方に向けて斜めに突設され後述する遮熱用カーテン38を内向きに案内するために設けられた棒状部材である。
【0015】
そして、厚さ10mm程度のゴム製シートからなる長方形の弾性シート33の両側縁を前記挟着部材29,29に挿入して該弾性シート33の両側縁を挟着支持し、該挟着部材29,29により該弾性シート33がほぼ水平に支持されるようにする。なお、該弾性シート33は、ゴム製でなくても、可撓性、耐熱性、軟質、耐摩耗性、非通気性の材料であれば合成樹脂製のシートを用いてもよい。
【0016】
また、ヒータ支持枠6は、シート支持枠5を上方から囲い得るような大きさで下方が開放されたフード状に形成され、四隅部に腕片35を突設し、該各腕片の先端にスライド筒36を設け、該スライド筒36を前記支柱3に沿って摺動させ、図示しない電動機等の動力源を駆動することにより、該ヒータ支持枠6が支柱3に沿って自在に昇降するように構成され、該シート支持枠5内に加熱手段としての遠赤外線ヒータ37が配設され、該ヒータ37の輻射熱が下方へ放射されるようにしている。38はヒータ37の熱を外部に逃がさないようにするためにシート支持枠5の下縁部から吊下された遮熱用カーテンで、該ヒータ支持枠6を下降させたとき該遮熱用カーテンは前記棒状部材32に当たって内向きに案内されシート支持枠5の内側に導かれる。
【0017】
次にこのダイプレート成形機Aを使用したダイプレートの成形方法について説明する。図3,図4に示すように、厚さ1〜2mm程度の長方形状の木製単板40に接着剤を塗布し、該木製単板40をその接着剤41が間になるように複数枚(この実施形態では5枚)重ね合わせることにより単板重合体Bを形成する。そして該単板重合体Bの長手方向に延びる中心線42上であって該単板重合体Bの両短側縁にそれぞれ釘43,43を該単板重合体Bを貫通するように打ち付ける。44は該釘43を打ち付ける際に使用すると便利な物差しを示し、該物差し44は両端部の一側縁に釘43を貫挿し得る切込45,45が形成され、該切込45,45間の距離が前記成形型1の頂上部18の両端部寄りに開設された位置決孔19a,19a間の距離、または位置決孔19b,19b間の距離、または位置決孔19c,19c間の距離、または位置決孔19d,19d間の距離と等しくなるように設定される。このため該物差しを単板重合体Bの中心線42上に置いて該切込45,45に釘43,43の先を位置させ、金槌で該釘43,43を打ち付ければ、該釘43,43間の距離が位置決孔19a,19a間の距離、または位置決孔19b,19b間の距離、または位置決孔19c,19c間の距離、または位置決孔19d,19d間の距離と等しくすることができる。このように釘43,43を打ち付けることにより、該釘43,43の先端部を該単板重合体Bから下方に突出させる。
【0018】
そして、接着剤41が未硬化状態である間に、図5,図6に示したように、釘43,43の先端部をそれぞれ位置決孔19a〜19dのいずれかに嵌合する。このとき釘43,43の距離は、物差し44を使うことで上記のように位置決孔19a,19a〜19d,19d間の距離と等しくなるので嵌合が確実にできる。これにより該単板重合体Bは該成形型1の頂上部18上に水平に支持され、この状態でシート支持枠5を下降させ、図7に示したように該単板重合体Bの上に弾性シート33を被せ、該シート支持枠5の両短側辺の下縁24,24を該弾性シート33の上から前記受凸部20,20に密着させる。そして、負圧吸引装置13を作動させ中空部9中の空気を真空吸引することで、前記透孔15および通気孔12を通して該弾性シート33を吸引する。その際、エアーシリンダ25,25のスピンドル27,27を伸縮させ、挟着部材29,29を接近または離間させることにより、該弾性シート33を適宜弛緩状態または引張状態にすることにより該弾性シート33がなるべく皺にならないようにし、気密が保たれるようにする。このため該弾性シート33が強力に単板重合体Bに吸着され、該単板重合体Bを曲げ変形させ、図8に示したように、該単板重合体Bが成形体14の表面に沿って密着することで、該単板重合体Bが円弧面状に曲げられる。
【0019】
そして、ヒータ11の輻射熱が開口8,透孔15を通して該単板重合体Bに放射され、該単板重合体Bが下方から加熱されるようにすると同時に、図9に示したようにヒータ支持枠6を下降させ、ヒータ37によって上方からも該単板重合体Bが加熱されるようにする。なお、加熱温度は接着剤の種類に応じて異なるが、例えば10分間程度加熱し、単板重合体Bの温度が100〜130℃となるようにする。こうして単板重合体Bを加熱し、木製単板40間の接着剤41を硬化させることにより、該単板重合体Bが円弧面形状に保形される。このように接着剤が硬化し円弧面形状に保形されたところで、中空部9中に空気を導入し、ヒータ支持枠6およびシート支持枠5を上昇させ、弾性シート33を該単板重合体Bから離脱させることにより、目的とする形状のダイプレートを得ることができる。
【0020】
前記受凸部20,20および補助杆21,21を配置することでは、弾性シート33を吸引した際に弾性シート33になるべく皺を生じさせることなく該弾性シート33を成形型1に密着させることができ気密性が保たれるので、単板重合体Bを曲げ得る強力な成形力が得られる。
また、成形型1に複数の位置決孔19a〜19dを開設したことから、必要とするダイプレートの長さに応じた位置決孔に釘を嵌合することができる。
【0021】
また、このダイプレート成形機Aを使用することにより上記成形体14よりも一回り大きい曲率半径の単板重合体Bを成形することができる。このためこうして成形された単板重合体Bを新たな成形型の成形体として使用することによりさらに一回り大きい曲率半径の単板重合体Bを成形することが可能になる。このようにダイプレート成形機Aを使用して新たな成形型の成形体を成形することもできるので、このダイプレート成形機Aにより曲率半径が異なる多種類の成形型を比較的低コストで製作することができ、該成形型は木製で軽量で取り扱いが容易で型交換も容易にできることと相俟って、多種のロータリーダイカッター用ダイプレートを成形するに要するコストを大幅に軽減することができる。
【符号の説明】
【0022】
A ダイプレート成形機
B 単板重合体
1 成形型
2 ベッド体
5 シート支持枠
6 ヒータ支持枠
11 ヒータ
13 負圧吸引装置
14 成形体
15 透孔
18 頂上部
19a〜19d 位置決孔
33 弾性シート
37 ヒータ
40 木製単板
41 接着剤
42 中心線
43 釘
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール紙等のシート状物を加工するためのロータリーダイカッターに用いられるダイプレートの成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
段ボール紙や合成樹脂シート等のシート状物を打ち抜き加工するためのロータリーダイカッターに用いられるダイプレートは、円筒をその中心軸線に沿ってほぼ二等分した円弧面状に成形した積層合板からなり、その外周面から刃先が突出するように打抜刃が植設され、該打抜刃によりシート状物を打ち抜き加工するものである。ところで、このように積層合板を円弧面状に曲げ成形する方法には、従来から接着剤を塗布した単板を複数枚重ね合わせ、これを雄型と雌型によって挟着して加圧すると同時に加熱し、接着剤を硬化させるホットプレス成形方法が知られている。
【0003】
しかし、従来のホットプレス成形方法では、積層合板を加圧するために雄型と雌型とからなる鋳物製の金型を必要とし、しかも、使用するロータリーダイカッターによって必要となるダイプレートの曲率が異なるために、その曲率に合わせて金型を多種類用意しなければならず、重量のある金型を交換することは容易でないため作業性もよくない欠点があった。このため従来ではダイプレートを成形するコストが高くなるという問題があった。
【0004】
一方、特許文献1に示されたダイプレート成形機は、ベッド体の上に円弧面状の成形型が横置され、該ベッド体の上方にゴム製シートのような弾性シートが支持枠によって昇降可能に支持され、接着剤が塗布された単板を複数枚重ね合わせてなる単板重合体を該成形型の上に載置し、該単板重合体の上にさらに弾性シートを被せ、負圧吸引装置により該弾性シートを吸引することにより、該単板重合体を該成形型の円弧面に密着させて該単板重合体を曲げ成形しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2585175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に示されたダイプレート成形方法では、成形型の単板重合体を載置するべき部分が円弧面状であることから、単板重合体が位置ずれし易く、位置ずれした状態で弾性シートが被せられたり、或いは弾性シートが被さる際に該単板重合体が大きく位置ずれするおそれがあった。このためその位置ずれ状態のままで該単板重合体が曲げられてしまい、多くの不良品を発生させるという問題があった。
本発明は上記課題を解決すべくなされたもので、成形型に上に単板重合体が位置ずれすることなく常に正確に支持され、不良品の発生をほとんど皆無にすることができるダイプレートの成形方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その目的を達成するため本発明に係るダイプレートの成形方法は、適宜間隔を離して多数の透孔が開設された円弧面状の木製の成形体からなる成形型を負圧吸引装置が設けられたベッド体上に横置し、該成形型の頂上部の両端部寄りに適宜間隔を離して複数の位置決孔を開設し、該成形型の下部にヒータを設け、接着剤が塗布された長方形状の木製単板を複数枚重ね合わせることにより単板重合体を形成し、該単板重合体の長手方向に延びる中心線上であって該単板重合体の両短側縁にそれぞれ釘を該単板重合体を貫通するように打ち付けた後、該単板重合体から下方に突出する該釘の先端部を前記位置決孔に嵌合することにより該単板重合体を該成形型の頂上部上に水平に支持し、その状態で該単板重合体の上に弾性シートを被せて該弾性シートを前記負圧吸引装置により吸引することにより、該単板重合体を前記成形型に密着させ該単板重合体を円弧面状に曲げ成形するとともに、前記ヒータにより前記単板重合体を加熱して前記接着剤を硬化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るダイプレートの成形方法によれば、成形型の上に単板重合体を位置ずれすることなく支持でき、弾性シートを被せても該単板重合体が位置ずれするおそれがないので、不良品の発生を大幅に減少させることができる。また、木製の成形型は交換が容易であるとともに、曲率半径の異なる多種類の成形型を比較的低コストで製作することができ、ダイプレートの成形に要するコストを大幅に軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るダイプレート成形機の正面図。
【図2】図1のダイプレート成形機の横断面図。
【図3】本発明に係るダイプレートの成形方法における単板重合体に釘を打つ際の単板重合体の斜視図。
【図4】本発明に係るダイプレートの成形方法における単板重合体に釘を打ったときの単板重合体の横断面図。
【図5】本発明に係るダイプレートの成形方法における単板重合体を成形型の上に支持する際の成形型の斜視図。
【図6】本発明に係るダイプレートの成形方法における単板重合体を成形型の上に支持した際のダイプレート成形機の横断面図。
【図7】図6の作動状態を示したダイプレート成形機の横断面図。
【図8】図6の作動状態を示したダイプレート成形機の横断面図。
【図9】図6の作動状態を示したダイプレート成形機の横断面図。
【図10】本発明に係る成形型の斜視図。
【図11】本発明に係る成形型の裏面の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1,図2に示したように、ダイプレート成形機Aは、成形型1が横置されるベッド体2と、該ベッド体の四隅に支柱3を鉛直に立設してなるフレーム4と、該ベッド体の上方にて支柱3に沿って昇降動するように設けられたシート支持枠5と、該シート支持枠の上方に位置し支柱3に沿って昇降動するように設けられたヒータ支持枠6とから概ね構成される。
【0011】
ベッド体2は、内部が中空状に形成され、水平な上壁面7の中央部に長手の開口8が開設され、該開口を覆うように成形型1が横置される。また、ベッド体2内部の中空部9に支持部10を設け、該支持部に加熱手段としての遠赤外線ヒータ11を配設し、該ヒータの輻射熱が開口8を通し上方へ放射されるようにする。また、開口8の両側のベッド体2の上壁面7に中空部9と連通する複数の通気孔12が適宜間隔で開設される。そして、ベッド体2に中空部9中の空気を真空吸引する負圧吸引装置13が配管される。
【0012】
成形型1は、図10,図11に示したように全体として略半円筒形を呈した木製のものであって、曲げ加工された積層合板により成形体14が円弧面状に製作され、該成形体14に適宜間隔を離して多数の透孔15が開設される。該成形体14の内周面には、アーチ状部材16が長手方向に沿って多数等間隔に固着され、該アーチ状部材16を設けることにより該成形型1が補強される。また、成形体14の両端縁に長板状の座板17が固着され、該座板をベッド体2の上壁面7に当接させることで、該成形型1は該ベッド体2上に着脱自在に横置される。また、該成形型1における成形体14の円弧面の頂上部18の両端部寄りに適宜間隔を離して複数(この実施形態では4個ずつ)の位置決孔19a〜19dを開設する。
【0013】
また、ベッド体2上に成形型1を横置した状態で該成形体14の両端部の開口を塞ぎ得るように山形の受凸部20,20が該ベッド体2上に固設されている。該受凸部20,20は、一定の厚みを有し、図5に示されるように、上縁部が成形型1の成形体14の外周面とほぼ同じ円弧面状に形成されると共に両側下部がベッド体2の上壁面7上に緩やかに連なるような山裾野状の形態に形成されている。また、成形型1の両側に横断面がほぼ直角三角形状の棒状の一対の補助杆21,21を配設し、該補助杆の両端を受凸部20,20の内側面に当接させている。このように補助杆21,21を配設することにより、成形型1の頂上部18からベッド体2の上壁面7上までがなだらかな曲面状になるようにしている。
【0014】
シート支持枠5は、平面視にて成形型1を囲うことができる大きさの長方形状に形成され、該シート支持枠5の四隅部に腕片22を突設し、該各腕片22の先端にスライド筒23を設け、該スライド筒23を前記支柱3に沿って摺動させ、図示しない電動機等の動力源を駆動することにより、該シート支持枠5が支柱3に沿って自在に昇降するように構成される。該シート支持枠5の両短側辺の下縁24,24は前記受凸部20,20の上縁部の形状と同じく山形に形成され、該シート支持枠5を下降させたとき該下縁24,24が受凸部20,20の上縁部に密接し得るようにしている。また、該シート支持枠5の両長側辺の中央部外面にエアーシリンダ25,25を固設し、該エアーシリンダ25,25の両側部位には複数の軸受体26を適宜間隔で固設し、該エアーシリンダ25,25のスピンドル27,27に継板28,28を介し横断面コ字棒状の挟着部材29,29を連結するとともに、前記各軸受体26に摺動自在なるように支軸30を貫挿し該各支軸30を継板31を介して挟着部材29,29に連結している。このためエアーシリンダ25,25を作動させると挟着部材29,29が水平方向に進退動し、該挟着部材29,29間の距離が変動する。なお、32はシート支持枠5の両長側辺の上縁部に上方に向けて斜めに突設され後述する遮熱用カーテン38を内向きに案内するために設けられた棒状部材である。
【0015】
そして、厚さ10mm程度のゴム製シートからなる長方形の弾性シート33の両側縁を前記挟着部材29,29に挿入して該弾性シート33の両側縁を挟着支持し、該挟着部材29,29により該弾性シート33がほぼ水平に支持されるようにする。なお、該弾性シート33は、ゴム製でなくても、可撓性、耐熱性、軟質、耐摩耗性、非通気性の材料であれば合成樹脂製のシートを用いてもよい。
【0016】
また、ヒータ支持枠6は、シート支持枠5を上方から囲い得るような大きさで下方が開放されたフード状に形成され、四隅部に腕片35を突設し、該各腕片の先端にスライド筒36を設け、該スライド筒36を前記支柱3に沿って摺動させ、図示しない電動機等の動力源を駆動することにより、該ヒータ支持枠6が支柱3に沿って自在に昇降するように構成され、該シート支持枠5内に加熱手段としての遠赤外線ヒータ37が配設され、該ヒータ37の輻射熱が下方へ放射されるようにしている。38はヒータ37の熱を外部に逃がさないようにするためにシート支持枠5の下縁部から吊下された遮熱用カーテンで、該ヒータ支持枠6を下降させたとき該遮熱用カーテンは前記棒状部材32に当たって内向きに案内されシート支持枠5の内側に導かれる。
【0017】
次にこのダイプレート成形機Aを使用したダイプレートの成形方法について説明する。図3,図4に示すように、厚さ1〜2mm程度の長方形状の木製単板40に接着剤を塗布し、該木製単板40をその接着剤41が間になるように複数枚(この実施形態では5枚)重ね合わせることにより単板重合体Bを形成する。そして該単板重合体Bの長手方向に延びる中心線42上であって該単板重合体Bの両短側縁にそれぞれ釘43,43を該単板重合体Bを貫通するように打ち付ける。44は該釘43を打ち付ける際に使用すると便利な物差しを示し、該物差し44は両端部の一側縁に釘43を貫挿し得る切込45,45が形成され、該切込45,45間の距離が前記成形型1の頂上部18の両端部寄りに開設された位置決孔19a,19a間の距離、または位置決孔19b,19b間の距離、または位置決孔19c,19c間の距離、または位置決孔19d,19d間の距離と等しくなるように設定される。このため該物差しを単板重合体Bの中心線42上に置いて該切込45,45に釘43,43の先を位置させ、金槌で該釘43,43を打ち付ければ、該釘43,43間の距離が位置決孔19a,19a間の距離、または位置決孔19b,19b間の距離、または位置決孔19c,19c間の距離、または位置決孔19d,19d間の距離と等しくすることができる。このように釘43,43を打ち付けることにより、該釘43,43の先端部を該単板重合体Bから下方に突出させる。
【0018】
そして、接着剤41が未硬化状態である間に、図5,図6に示したように、釘43,43の先端部をそれぞれ位置決孔19a〜19dのいずれかに嵌合する。このとき釘43,43の距離は、物差し44を使うことで上記のように位置決孔19a,19a〜19d,19d間の距離と等しくなるので嵌合が確実にできる。これにより該単板重合体Bは該成形型1の頂上部18上に水平に支持され、この状態でシート支持枠5を下降させ、図7に示したように該単板重合体Bの上に弾性シート33を被せ、該シート支持枠5の両短側辺の下縁24,24を該弾性シート33の上から前記受凸部20,20に密着させる。そして、負圧吸引装置13を作動させ中空部9中の空気を真空吸引することで、前記透孔15および通気孔12を通して該弾性シート33を吸引する。その際、エアーシリンダ25,25のスピンドル27,27を伸縮させ、挟着部材29,29を接近または離間させることにより、該弾性シート33を適宜弛緩状態または引張状態にすることにより該弾性シート33がなるべく皺にならないようにし、気密が保たれるようにする。このため該弾性シート33が強力に単板重合体Bに吸着され、該単板重合体Bを曲げ変形させ、図8に示したように、該単板重合体Bが成形体14の表面に沿って密着することで、該単板重合体Bが円弧面状に曲げられる。
【0019】
そして、ヒータ11の輻射熱が開口8,透孔15を通して該単板重合体Bに放射され、該単板重合体Bが下方から加熱されるようにすると同時に、図9に示したようにヒータ支持枠6を下降させ、ヒータ37によって上方からも該単板重合体Bが加熱されるようにする。なお、加熱温度は接着剤の種類に応じて異なるが、例えば10分間程度加熱し、単板重合体Bの温度が100〜130℃となるようにする。こうして単板重合体Bを加熱し、木製単板40間の接着剤41を硬化させることにより、該単板重合体Bが円弧面形状に保形される。このように接着剤が硬化し円弧面形状に保形されたところで、中空部9中に空気を導入し、ヒータ支持枠6およびシート支持枠5を上昇させ、弾性シート33を該単板重合体Bから離脱させることにより、目的とする形状のダイプレートを得ることができる。
【0020】
前記受凸部20,20および補助杆21,21を配置することでは、弾性シート33を吸引した際に弾性シート33になるべく皺を生じさせることなく該弾性シート33を成形型1に密着させることができ気密性が保たれるので、単板重合体Bを曲げ得る強力な成形力が得られる。
また、成形型1に複数の位置決孔19a〜19dを開設したことから、必要とするダイプレートの長さに応じた位置決孔に釘を嵌合することができる。
【0021】
また、このダイプレート成形機Aを使用することにより上記成形体14よりも一回り大きい曲率半径の単板重合体Bを成形することができる。このためこうして成形された単板重合体Bを新たな成形型の成形体として使用することによりさらに一回り大きい曲率半径の単板重合体Bを成形することが可能になる。このようにダイプレート成形機Aを使用して新たな成形型の成形体を成形することもできるので、このダイプレート成形機Aにより曲率半径が異なる多種類の成形型を比較的低コストで製作することができ、該成形型は木製で軽量で取り扱いが容易で型交換も容易にできることと相俟って、多種のロータリーダイカッター用ダイプレートを成形するに要するコストを大幅に軽減することができる。
【符号の説明】
【0022】
A ダイプレート成形機
B 単板重合体
1 成形型
2 ベッド体
5 シート支持枠
6 ヒータ支持枠
11 ヒータ
13 負圧吸引装置
14 成形体
15 透孔
18 頂上部
19a〜19d 位置決孔
33 弾性シート
37 ヒータ
40 木製単板
41 接着剤
42 中心線
43 釘
【特許請求の範囲】
【請求項1】
適宜間隔を離して多数の透孔が開設された円弧面状の木製の成形体からなる成形型を負圧吸引装置が設けられたベッド体上に横置し、該成形型の頂上部の両端部寄りに適宜間隔を離して複数の位置決孔を開設し、該成形型の下部にヒータを設け、接着剤が塗布された長方形状の木製単板を複数枚重ね合わせることにより単板重合体を形成し、該単板重合体の長手方向に延びる中心線上であって該単板重合体の両短側縁にそれぞれ釘を該単板重合体を貫通するように打ち付けた後、該単板重合体から下方に突出する該釘の先端部を前記位置決孔に嵌合することにより該単板重合体を該成形型の頂上部上に水平に支持し、その状態で該単板重合体の上に弾性シートを被せて該弾性シートを前記負圧吸引装置により吸引することにより、該単板重合体を前記成形型に密着させ該単板重合体を円弧面状に曲げ成形するとともに、前記ヒータにより前記単板重合体を加熱して前記接着剤を硬化させることを特徴としたロータリーダイカッター用ダイプレートの成形方法。
【請求項1】
適宜間隔を離して多数の透孔が開設された円弧面状の木製の成形体からなる成形型を負圧吸引装置が設けられたベッド体上に横置し、該成形型の頂上部の両端部寄りに適宜間隔を離して複数の位置決孔を開設し、該成形型の下部にヒータを設け、接着剤が塗布された長方形状の木製単板を複数枚重ね合わせることにより単板重合体を形成し、該単板重合体の長手方向に延びる中心線上であって該単板重合体の両短側縁にそれぞれ釘を該単板重合体を貫通するように打ち付けた後、該単板重合体から下方に突出する該釘の先端部を前記位置決孔に嵌合することにより該単板重合体を該成形型の頂上部上に水平に支持し、その状態で該単板重合体の上に弾性シートを被せて該弾性シートを前記負圧吸引装置により吸引することにより、該単板重合体を前記成形型に密着させ該単板重合体を円弧面状に曲げ成形するとともに、前記ヒータにより前記単板重合体を加熱して前記接着剤を硬化させることを特徴としたロータリーダイカッター用ダイプレートの成形方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−236336(P2012−236336A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106913(P2011−106913)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(593007774)株式会社千代田 (3)
【出願人】(000170381)合資会社水野木工ミシン透彫工業所 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(593007774)株式会社千代田 (3)
【出願人】(000170381)合資会社水野木工ミシン透彫工業所 (2)
【Fターム(参考)】
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