ロータリー圧縮機
【目的】 ブレードとローラとの相対移動をなくし、摩擦損失及び動力損失を小さくできると共に、ブレードの背面室から吸入室と圧縮室へのガス漏れをなくすることができ、更に圧縮室から吸入室へのガス漏れを少なくして、容積効率及び指示効率を高める。
【構成】 シリンダ4のシリンダ室41を圧縮室Xと吸入室Yとに画成するブレード8をローラ7に、該ローラ7の径方向外方に突出するように一体的に設けると共に、シリンダ4にブレード8の突出側先端部を受入れる受入溝11aをもつ支持体11を回動可能に設けて、前記ローラ7を、該ローラ7が嵌合され、かつ、常時潤滑油が供給されている駆動軸の偏心軸部に対し相対回転させることにより摩擦損失及び動力損失を小さくし、更にブレード7の背圧をなくし、この背圧の吸入室Y・圧縮室Xへの漏れをなくし、容積効率及び指示効率を高めると共に、圧縮室Xから吸入室Yへの漏れを少なくするようにした。
【構成】 シリンダ4のシリンダ室41を圧縮室Xと吸入室Yとに画成するブレード8をローラ7に、該ローラ7の径方向外方に突出するように一体的に設けると共に、シリンダ4にブレード8の突出側先端部を受入れる受入溝11aをもつ支持体11を回動可能に設けて、前記ローラ7を、該ローラ7が嵌合され、かつ、常時潤滑油が供給されている駆動軸の偏心軸部に対し相対回転させることにより摩擦損失及び動力損失を小さくし、更にブレード7の背圧をなくし、この背圧の吸入室Y・圧縮室Xへの漏れをなくし、容積効率及び指示効率を高めると共に、圧縮室Xから吸入室Yへの漏れを少なくするようにした。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、主に冷凍装置に使用するロータリー圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ロータリー圧縮機は、例えば実開昭61−114082号公報に記載されている。この従来の圧縮機は図16及び図17で示したように、密閉ケーシング内にモータで駆動される圧縮要素Aを配設しており、この圧縮要素Aは、シリンダ室BをもったシリンダCと、前記モータから延びる駆動軸Dの偏心軸部に挿嵌され、該駆動軸Dの回転により前記シリンダ室B内を公転するローラEと、前記シリンダCに設けた吸入口Fと吐出口Gとの中間部位に進退動可能に配設されたブレードHとを備えており、このブレードHは、その背面側に、前記吐出口Gから吐出された高圧ガスの一部を背圧として作用させ、この背圧により前記ブレードHの先端部を前記ローラEの外周面一部に常時接触させることにより、前記シリンダ室Bを圧縮室Xと吸入室Yとに区画するようにしている。また、前記吐出口Gには、その出口周りに形成される弁座面に衝合して前記吐出口Gを開閉する板状の弁体Iを設けている。
【0003】そして、前記駆動軸Dの回転により前記ローラEをシリンダ室B内で公転させながら、前記ブレードHで画成されるシリンダ室B内の圧縮室Xでガスを圧縮し、この圧縮行程を終了して吐出行程に移行したとき、圧縮された高圧ガスを前記弁体Iの開動作で前記吐出口Gからケーシング内へと吐出させ、また、吐出行程を終了して吸入行程に移行するとき、前記弁体Iを閉動作させて前記吐出口Gを閉鎖し、前記吸入口Fから前記シリンダ室B内の前記ブレードHで画成される吸入室Yへと低圧ガスを吸入して、前記圧縮行程と吐出行程とを繰り返すのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】所が、以上のように、ブレードHをシリンダCに進退動可能に支持すると共に背圧を作用させて、該ブレードHの先端をローラEの外周面に接触させ、このブレードHとローラEとを相対移動させるようにした場合、前記ブレードHには背圧を作用させて該ブレードHの先端をローラ外周面に押圧し、接触させる必要があり、しかも、ブレードHのローラ外周面との接触は油が介在されずに金属接触になるから、ブレードHとローラ外周面との摺動による摩擦損失が大きいし、動力損失も大きい問題があった。その上、前記ブレードHの背面に、吐出口Gから吐出された高圧ガスによる背圧をかけて、該ブレードHの先端部を前記ローラEの外周面に接触させているため、前記ブレードHの背面室の高圧ガスが、図16の矢印aで示したように、ブレードHの側面とブレード摺動溝との間を経て前記吸入室Yに漏れ、容積効率が低下する問題があったし、また、前記圧縮室Xは、低圧から高圧まで変動するのであるから、前記圧縮室Xの内圧が背圧より低い場合には、前記背面室に作用する高圧ガスが前記ブレードHの側面とブレード摺動溝との間を経て圧縮室Xに洩れることになり、指示効率が低下する問題もあった。更に、前記ブレードHの先端部とローラEとの接触部位から図16の矢印bで示したように、前記圧縮室Xで圧縮される高圧ガスが前記吸入室Yに漏れることもあり、前記したブレードH側面からの漏れと相俟って容積効率が更に低下する問題があった。
【0005】本発明は以上の問題点に鑑み発明したもので、目的は、ブレードのローラとの相対移動をなくして、摩擦損失及び動力損失を小さくでき、しかも、ブレード背面室や圧縮室から吸入室へのガス洩れを少なくして容積効率及び指示効率を高めることができるようにする点にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、図1に明示するように、シリンダ室41をもつシリンダ4と、前記シリンダ室41に内装され、該シリンダ室41内を公転するローラ7及び、前記シリンダ室41を圧縮室Xと吸入室Yとに区画するブレード8とを備えた圧縮要素3をもち、吸入口3aから吸入したガス流体を圧縮して吐出口3bから吐出するようにしたロータリー圧縮機において、前記ブレード8を前記ローラ7に、該ローラ7の径方向外方に突出するように一体的に設けると共に、前記シリンダ4に、前記ブレード8の突出側先端部を受入れる受入溝11aをもった支持体11を回動可能に設けたことを特徴とするものである。
【0007】また、同図1に示すように、前記ローラ7の外周部で前記吐出口3bとの対向部位に、この吐出口3bに向かって突出し、該吐出口3bに突入可能とした突起75を設けるのが好ましい。
【0008】更に、図14又は図15に示すように、ローラ7の高さを、圧縮室X側に接する高温側壁部7aで低く、吸入室Y側に接する低温側壁部7bで高く設定するのも好ましい。
【0009】
【作用】以上のロータリー圧縮機では、前記ローラ7と、該ローラ7が嵌合され、かつ、潤滑油が供給されている駆動軸の偏心軸部との間で相対回転させ、従来例のようにブレードとローラとの相対移動をなくしたのであるから、ブレードとローラとが相対移動するようにした従来例に比較して摩擦損失及び動力損失を少なくできるのである。即ち、前記ローラ7を嵌合する駆動軸の偏心軸部には、駆動軸の給油路から常時潤滑油が供給されていて、流体接触しているからローラ7と偏心軸部との相対回転においてはその摩擦抵抗を小さくできるのであって、ブレード8に背圧を作用させて、ブレードとローラとを相対移動させる場合に比較して摩擦損失を小さくできるのであり、動力損失も小さくできるのである。その上、ブレード8をローラ7に設けて、ブレード8に背圧をかける必要がないようにしているから、ブレードの背面室から吸入室Y及び圧縮室Xへのガス漏れをなくすることができて、容積効率及び指示効率を高めることができ、更に、ブレード8をローラ7に設けているから、圧縮室Xから吸入室Yへのガス漏れも少なくでき、前記背面室からのガス漏れがないことと相俟って容積効率をより一層高めることができるのである。
【0010】また、ローラ7の外周部で吐出口3bに対向する部位に、前記吐出口3bに向かって突出し、該吐出口3bに突入可能とした突起75を設けることにより、圧縮行程から吐出行程へと移行するとき、前記ローラ7に設けた突起75を、吐出口3bに対し離れた位置から前記吐出口3bに徐々に突入させることができ、またこの突入時、吐出口3b内の圧縮ガスを外部に押出すように突入させることができるから、トップクリアランスを少なくでき、前記吐出行程の終了後に吸入行程へと移行して前記吸入室Y内に低圧ガスを吸入するとき、前記吐出口3b内に残留した高圧ガスの前記吸入室Y側への逆流量を少なくできるのである。この結果、圧縮損失や前記吸入室Y内での吸入ガスの過熱及び脈動が防止できるし、また、以上の吐出行程の開始時、つまり、吐出量が多くなる吐出行程初期には、前記突起75が吐出口3bに突入していないから、ガスの吐出通路を十分に確保できるのであるから、ガス吐出抵抗を小さくでき、ガスの過圧縮を防止でき、この過圧縮による動力損失をなくすることもできるのである。
【0011】更に、ローラ7の高さを、圧縮室X側に接する高温側壁部7aで低く、吸入室Y側に接する低温側壁部7bで高く設定することにより、ローラ7が非自転式となり、運転時、該ローラ7の円周上に沿って生じる温度差に起因して、ローラ7の高さ方向に熱膨張量の差が現れることによる不利益も解消できるのである。即ち、図16に示した従来のブレード往復動式のものでは、ローラEが駆動軸Dの回転に引きずられて自転し得るから、その外面が低温の吸入室Yと高温の圧縮室Xとに交互に接触し、ローラEはその円周上に沿ってほぼ均等な温度となり得るが、ローラ7が非自転式の場合、低温の吸入室Yと高温の圧縮室Xとに接触する壁部分が円周上で固定的に決まるから、図11に示すようにブレード8の突出部を基点0度として時計方向に角度をとった場合、ローラ7の壁部温度は図12に示すように変化し、高温のピークが270度付近に、低温のピークが90度付近にできてしまうことになる。このため、270度付近を山として圧縮室X側に接する高温側壁部7aでは熱膨張が大きく、90度付近を谷として吸入室Y側に接する低温側壁部7bでは熱膨張が小さく、これらの熱膨張の差により、ローラ7の高さは、図13の想像線で極端に示したように数十ミクロンオーダーの差が生じることになる。一方、シリンダ4は、高圧の吐出ガスが充満されるケーシング内に置かれているため、その熱膨張はシリンダ室41の円周上に沿ってほぼ均一とみることができ、又、シリンダ4の高さは、最大熱膨張量を見込んで設定しているから、結局、吸入室Y側に接し、その熱膨張量の小さい低温側壁部7bの上下端面に大きな隙間ができ、図13中矢印eで示す漏れが生じ、吸入ガスを加熱して容積効率を低下させる不利益が生じるのである。そこで、図14又は図15に示すように、ローラ7の高さを、圧縮室X側に接する高温側壁部7aで低く、吸入室Y側に接する低温側壁部7bで高く設定することにより、運転時には、その熱膨張の差を積極的に利用し、同各図中想像線で示すように、これら高温側壁部7aと低温側壁部7bとの高さを揃えて、ローラ7の高さのアンバランスによる漏れを解消したのである。
【0012】
【実施例】図10に示したロータリー圧縮機は、密閉ケーシング1の内方上部にモータ2を配設すると共に、該モータ2の下部側に圧縮要素3を配設して、前記モータ2から延びる駆動軸21を前記圧縮要素3に連動連結させている。この圧縮要素3は、内部にシリンダ室41をもつシリンダ4と、該シリンダ4の上下開放部に対設されたフロントヘッド5及びリヤヘッド6と、前記シリンダ室41内に公転可能に内装されたローラ7とを備え、前記各ヘッド5,6に設けた軸受部に前記駆動軸21の下部側を軸受支持すると共に、この駆動軸21の偏心軸部22に前記ローラ7を回転自由に挿嵌させて、前記駆動軸21の回転に伴いその偏心軸部22に対し前記ローラ7を摺接させながら回転させるようにしている。また、前記駆動軸21の中心側に、前記ケーシング1における底部油溜め1bに開口する給油路23を設け、この給油路23の入口にポンプ要素24を取付け、また、前記給油路23の中間出口を、前記ローラ7と偏心軸部22との摺接面に開口させて、前記ポンプ要素24で前記油溜め1aから汲上げた潤滑油を、前記給油路23から前記摺接面に供給するようにしている。
【0013】また、前記圧縮要素3には、前記シリンダ4のシリンダ室41に開口する吸入ガス流体の吸入口3aと、同じく前記シリンダ室41に開口する圧縮ガス流体の吐出口3bとをそれぞれ形成する。例えば、図1で明らかなように、前記シリンダ4の側壁に前記シリンダ室41に開口する吸入口3aを、また、該吸入口3aの近くで前記シリンダ4の側壁に前記シリンダ室41に開口する吐出口3bをそれぞれ形成して、これら吸入口3aと吐出口3bとの中間部位に、前記シリンダ室41内を圧縮室Xと吸入室Yとに画成するブレード8を設けると共に、前記吐出口3bには、その出口周りに形成される弁座面に衝合して前記吐出口3bを開閉する板状の弁体9を配設する。尚、図1において、10は前記弁体9の受板、また、図10において、1aは前記ケーシング1の上部側に接続した外部吐出管である。
【0014】しかして以上のロータリー圧縮機において、図1で明らかにしたように、前記ブレード8を前記ローラ7の外周一部に、該ローラ7の径方向外方に向けて突出するように設けると共に、前記シリンダ4における前記吸入口3aと吐出口3bとの中間内方部に円筒形や球形等の円形保持孔42を設けて、この保持孔42に、一端が前記シリンダ室41側に開口された受入溝11aをもつ支持体11を回動可能に保持して、該支持体11の受入溝11a内に前記ブレード8の突出側先端部を摺動可能に挿入させる。
【0015】前記ローラ7の外周一部に前記ブレード8を設けるに際しては、例えば図1で示したように、前記ローラ7側に前記ブレード8の基端一部を挿入可能とした取付溝71を形成し、この取付溝71内に前記ブレード8の基端一部を挿入させて接着剤で接着一体化させるか或はロウ付けにより一体化させるのである。又は、図2R>2、図3で示すように、前記ローラ7の半径方向外周に、軸方向中央部を深溝72aとし、両端側を浅溝72bとした段付溝72と、この段付溝72の深溝部両端面から軸方向外方に貫通する嵌合孔73とを設けると共に、前記ブレード8の基端に、前記段付溝72の深溝部に嵌合する嵌合突起81aをもった嵌合部81を設けて、前記嵌合突起81aに嵌合孔82を設け、前記ブレード8の嵌合部81を前記段付溝72に嵌合して、前記各嵌合孔73、82に一本のピン83を挿嵌することにより、前記ブレード8をローラ7に固定するのである。この場合、前記嵌合部81の段付溝72への嵌合部分には補助的に接着剤を付着させるのが好ましい。又、図4で示すように、前記ローラ7の外周一部に突部74を設けると共に、前記ブレード8側に前記突部74に突入可能な溝部84を設けて、該溝部84に前記突部74を介入させた状態で前記突部74とブレード8とにピン85を貫通させると共に、ブレード8とローラ7との対向面間に接着剤を装填することにより、このブレード8を前記ローラ7に固定してもよい。
【0016】そして、前記駆動軸21の駆動に伴い前記ローラ7に設けたブレード8を、その突出先端部を前記支持体11の受入溝11a内で出入させ、かつ、該支持体11の回動を伴い、揺動しながら径方向へと進退動させることにより、前記シリンダ室41の内部を圧縮室Xと吸入室Yとに画成するのである。以上の構成とすることにより、前記ローラ7を、偏心軸部22に対し相対回転させ、従来のように前記ブレード8の先端部が前記ローラ7の外周面に接触して、ブレード8とローラ7とが相対移動することがないため、前記ブレード8とローラ7との摩擦による摩耗及び前記摩擦による動力損失をなくすことができるのである。即ち、ブレード8とローラ7とが相対移動しない代わりに、ローラ7と偏心軸部22とが相対回転することになるのであるが、前記ローラ7を嵌合する駆動軸21の偏心軸部22には、駆動軸21の給油路23から常時潤滑油が供給されていて、流体接触しているから摩擦抵抗を小さくできるのであって、ブレード8に背圧を作用させ、ブレード8をローラ7に接触させて相対移動させる場合に比較して摩擦損失を小さくできるのであり、動力損失も小さくできるのである。
【0017】更に、前記ブレード8は、前記ローラ7に設けているため、従来のように背圧を作用させる必要がなく、従って、従来例のようにブレードの背面室から前記吸入室Yや圧縮室Xへのガス漏れがなくなり、容積効率及び指示効率を高くできるのである。また、前記圧縮室Xから前記吸入室Yへのガス漏れも少なくなって容積効率をより一層高くできるのである。即ち、前記ブレード8の両側壁面と、該ブレード8が挿入される前記支持体11の受入溝11aとの間から、前記圧縮室X内のガス流体が前記吸入室Y側に漏れることがあるが、前記圧縮室X内のガスは、低圧から高圧まで変動するのであるから、この圧縮室X内のガス流体圧力が吸入室Yのガス流体圧力との圧力差が所定圧以上になったときにのみガス漏れを招き、それ以外にはガス漏れが発生しないために、従来のものに較べて圧縮室Xから吸入室Yへのガス漏れ量を大幅に少なくできるのである。
【0018】また、前記ローラ7の外周部で前記吐出口3bとの対向部位には、この吐出口3bよりも径小とした略円柱状の突起75を設けて、吐出量が多くなる吐出行程開始時、前記突起75が吐出口3bに突入しない位置にあり、吐出行程が進行して吐出量が減少するのに伴い前記突起75が徐々に前記吐出口3bに突入するようにし、かつ、この突入により前記吐出口3b内の圧縮ガスを外部に押し出すようになすのである。
【0019】次に、以上の構成としたロータリー圧縮機の作用について説明する。先ず、図5で示したように、前記ローラ7の公転角度が0度の場合で吸入及び圧縮行程を開始しようとするときには、前記ブレード8が前記支持体11における受入溝11aの奥内部にまで挿入された状態にあり、また、このときには、前記ローラ7に設けた突起75が前記吐出口3b内に突入された状態にある。そして、以上の状態から前記ローラ7が90度公転されると、図6で示したように、前記突起75が前記吐出口3bから離間され、かつ、前記ブレード8は前記支持体11を回動させながら揺動し、その受入溝11aから外方側へと摺動されて、前記ローラ7の公転に伴い前記ブレード8で画成される前記シリンダ室41内の圧縮室Xでガス流体の圧縮が行われ、又、前記吸入室Y側では前記吸入口3aからのガス流体の吸入が行われる。
【0020】また、図7で示したように、前記ローラ7の公転角度が180度となったときには、前記圧縮室Xでのガス流体の圧縮と前記吸入室Yでのガス流体の吸入とが継続され、このとき前記ブレード8は前記支持体11の受入溝11aから最大量引き出された状態にある。更に、図8で示したように、前記ローラ7の公転角度が270度となって吐出行程に至ったときには、前記ローラ7の公転に伴い、該ローラ7に設けたブレード8が徐々に内方側へと摺動されながら、前記圧縮室Xで圧縮されたガス流体が前記吐出口3bから外部吐出され、また、このときには前記突起75が前記吐出口3b内への突入を開始する。そして、図9で示したように、前記ローラ7が315度から360度(図1)にかけて公転されるときに、前記圧縮室Xで圧縮されたガス流体の前記吐出口3bからの吐出が終了し、このとき前記突起75が前記吐出口3b内に突入され、該吐出口3bのトップクリアランスが小とされて、前記吐出口3b内の残留ガス量を少なくでき、この残留ガスが図5の吸入室へ逆流することによる容積効率の低下を少なくできる。
【0021】以上のように、前記吐出行程へと移行するとき、前記ローラ7に設けた突起75は、吐出口3bに対し離れた位置にあり、前記ローラ7の揺動角度に対応して前記吐出口3b内に前記突起75が徐々に突入すると共に、この突入時、吐出口3b内の圧縮ガスを外部に押出すように突入するのである。従って、トップクリアランスを少なくでき、前記吐出行程の終了後に吸入行程へと移行して前記吸入室Y内に低圧ガスを吸入するとき、前記吐出口3b内に残留した高圧ガスの前記吸入室Y側への逆流量を少なくできるのである。この結果、圧縮損失や前記吸入室Y内での吸入ガスの過熱及び脈動が防止できるし、また、以上の吐出行程の開始時、つまり、吐出量が多くなる吐出行程初期には、前記突起75が吐出口3bに突入していないから、ガスの吐出通路を十分に確保できるのであるから、ガス吐出抵抗を小さくでき、ガスの過圧縮を防止でき、この過圧縮による動力損失をなくすることもできるのである。
【0022】ところで、ローラ7の高さは、図14に示すように、そのローラ7の上下端面を、ブレード突出部を基点として時計方向にとった角度で最高温になる270度付近が最も低く、最低温となる90度付近が最も高くなる傾斜面701,702で形成することにより、圧縮室X側に接する高温側壁部7aで低く、吸入室Y側に接する低温側壁部7bで高く設定するのが好ましい。この場合には、運転時、元々高さの低い高温側壁部7aが、元々高さの高い低温側壁部7bよりも大きく熱膨張し、図中想像線で示すように、これら高温側壁部7aと低温側壁部7bとの高さが均一に揃えられ、ローラ7の円周上に沿って、その上下端面部の隙間を均等な小隙間に保つことができ、該ローラ7の上下端面部を介した漏れを低減できて、吸入ガスの加熱を一層良好に低減でき、容積効率を更に向上することができるのである。尚、ローラ7は、モリブデン・ニッケル・クロム合金等を用いており、高温側壁部7aと低温側壁部7bとの高さの差は、数十ミクロン程度に設定している。
【0023】又、ローラ7の高さは、図15に示すように、圧縮室X側に接し、角度180度〜360度までの半円筒部分から成る高温側壁部7aを一律に低く、吸入室Y側に接し、角度0度〜180度までの半円等部分から成る低温側壁部7bを一律に高くし、その上下端面を、段差703,704をもつ形状にしてもよく、この場合には、段差の部分で多少端面に不均一が生じるが、図14に示したものに比べて加工を簡易にできるし、単一高さの円筒で形成するものに比べて運転時における高温側壁面7aと低温側壁面7bとの端面を概ね揃えることができ、その端面部を介した漏れを低減することができるのである。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のロータリー圧縮機では、シリンダ4のシリンダ室41を圧縮室Xと吸入室Yとに画成するブレード8をローラ7に、該ローラ7の径方向外方に突出するように一体的に設けると共に、前記シリンダ4に前記ブレード8の突出側先端部を受入れる受入溝11aをもつ支持体11を回動可能に設けて、前記ローラ7と、該ローラ7が嵌合され、かつ、潤滑油が供給されている駆動軸の偏心軸部との間で相対回転させ、従来例のようにブレードとローラとの相対移動をなくしたのであるから、ブレードとローラとが相対移動するようにした従来例に比較して摩擦損失及び動力損失を少なくできるのである。即ち、前記ローラ7を嵌合する駆動軸の偏心軸部には、駆動軸の給油路から常時潤滑油が供給されていて、流体接触しているのであるから、ブードとローラとの接触に比較して摩擦抵抗を小さくできるのであって、ブレード8に背圧を作用させてブレードとローラとを相対移動させる場合に比較して摩擦損失を小さくできるのであり、動力損失も小さくできるのである。その上、ブレード8をローラ7に設けて、ブレード8に背圧をかける必要がないようにしているから、ブレードの背面室から吸入室Y及び圧縮室Xへのガス漏れをなくすることができて、容積効率及び指示効率を高めることができ、更に、ブレード8をローラ7に設けているから、圧縮室Xから吸入室Yへのガス漏れも防止でき、前記背面室からのガス漏れがないことと相俟って容積効率をより一層高めることができるのである。
【0025】また、ローラ7の外周部で吐出口3bに対向する部位に、前記吐出口3bに向かって突出し、該吐出口3bに突入可能とした突起75を設けることにより、圧縮行程から吐出行程へと移行するとき、前記ローラ7に設けた突起75を、吐出口3bに対し離れた位置から前記吐出口3bに徐々に突入させることができ、また、この突入時、吐出口3b内の圧縮ガスを外部に押出すように突入させることができるから、トップクリアランスを少なくでき、前記吐出行程の終了後に吸入行程へと移行して前記吸入室Y内に低圧ガスを吸入するとき、前記吐出口3b内に残留した高圧ガスの前記吸入室Y側への逆流量を少なくできるのである。この結果、圧縮損失や前記吸入室Y内での吸入ガスの過熱及び脈動が防止できるし、また、以上の吐出行程の開始時、つまり、吐出量が多くなる吐出行程初期には、前記突起75が吐出口3bに突入していないから、ガスの吐出通路を十分に確保できるのであるから、ガス吐出抵抗を小さくでき、ガスの過圧縮を防止でき、この過圧縮による動力損失をなくすることもできるのである。
【0026】更に、ローラ7の高さを、圧縮室X側に接する高温側壁部7aで低く、吸入室Y側に接する低温側壁部7bで高く設定することにより、運転時、ローラ7の円周上に沿って生じる温度差に起因した熱膨張の差を積極的に利用でき、高温側壁部7aと低温側壁部7bとの高さを揃えることができるため、ローラ高さのアンバランスによる漏れを低減でき、吸入ガスの加熱を一層良好に低減できて、容積効率を更に向上することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のロータリー圧縮機に備えるシリンダの要部を示す平断面図である。
【図2】ブレードの取付構造例を示す断面図である。
【図3】図2の中央縦断面図である。
【図4】同ブレードの他の取付構造例を示す断面図である。
【図5】ローラの公転角度が0度の場合を示す平断面図である。
【図6】同ローラの公転角度が90度の場合を示す平断面図である。
【図7】同ローラの公転角度が180度の場合を示す平断面図である。
【図8】同ローラの公転角度が270度の場合を示す平断面図である。
【図9】同ローラの公転角度が315度の場合を示す平断面図である。
【図10】ロータリー圧縮機の全体構造を示す縦断面図である。
【図11】他の実施例を説明するシリンダの要部を示す平断面図である。
【図12】同他の実施例を説明するローラの角度に対する壁部温度を示す図である。
【図13】同他の実施例を説明するシリンダの要部を示す縦断面図である。
【図14】同他の実施例におけるローラの具体的形状の一例を示す断面図である。
【図15】同じくローラの具体的形状の変形例を示す断面図である。
【図16】従来にかかるロータリー圧縮機の圧縮要素を示す平断面図である。
【図17】同従来にかゝるロータリー圧縮機の部分断面図である。
【符号の説明】
3 圧縮要素
3a 吸入口
3b 吐出口
4 シリンダ
41 シリンダ室
7 ローラ
7a 高温側壁部
7b 低温側壁部
75 突起
8 ブレード
11 支持体
11a 受入溝
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、主に冷凍装置に使用するロータリー圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ロータリー圧縮機は、例えば実開昭61−114082号公報に記載されている。この従来の圧縮機は図16及び図17で示したように、密閉ケーシング内にモータで駆動される圧縮要素Aを配設しており、この圧縮要素Aは、シリンダ室BをもったシリンダCと、前記モータから延びる駆動軸Dの偏心軸部に挿嵌され、該駆動軸Dの回転により前記シリンダ室B内を公転するローラEと、前記シリンダCに設けた吸入口Fと吐出口Gとの中間部位に進退動可能に配設されたブレードHとを備えており、このブレードHは、その背面側に、前記吐出口Gから吐出された高圧ガスの一部を背圧として作用させ、この背圧により前記ブレードHの先端部を前記ローラEの外周面一部に常時接触させることにより、前記シリンダ室Bを圧縮室Xと吸入室Yとに区画するようにしている。また、前記吐出口Gには、その出口周りに形成される弁座面に衝合して前記吐出口Gを開閉する板状の弁体Iを設けている。
【0003】そして、前記駆動軸Dの回転により前記ローラEをシリンダ室B内で公転させながら、前記ブレードHで画成されるシリンダ室B内の圧縮室Xでガスを圧縮し、この圧縮行程を終了して吐出行程に移行したとき、圧縮された高圧ガスを前記弁体Iの開動作で前記吐出口Gからケーシング内へと吐出させ、また、吐出行程を終了して吸入行程に移行するとき、前記弁体Iを閉動作させて前記吐出口Gを閉鎖し、前記吸入口Fから前記シリンダ室B内の前記ブレードHで画成される吸入室Yへと低圧ガスを吸入して、前記圧縮行程と吐出行程とを繰り返すのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】所が、以上のように、ブレードHをシリンダCに進退動可能に支持すると共に背圧を作用させて、該ブレードHの先端をローラEの外周面に接触させ、このブレードHとローラEとを相対移動させるようにした場合、前記ブレードHには背圧を作用させて該ブレードHの先端をローラ外周面に押圧し、接触させる必要があり、しかも、ブレードHのローラ外周面との接触は油が介在されずに金属接触になるから、ブレードHとローラ外周面との摺動による摩擦損失が大きいし、動力損失も大きい問題があった。その上、前記ブレードHの背面に、吐出口Gから吐出された高圧ガスによる背圧をかけて、該ブレードHの先端部を前記ローラEの外周面に接触させているため、前記ブレードHの背面室の高圧ガスが、図16の矢印aで示したように、ブレードHの側面とブレード摺動溝との間を経て前記吸入室Yに漏れ、容積効率が低下する問題があったし、また、前記圧縮室Xは、低圧から高圧まで変動するのであるから、前記圧縮室Xの内圧が背圧より低い場合には、前記背面室に作用する高圧ガスが前記ブレードHの側面とブレード摺動溝との間を経て圧縮室Xに洩れることになり、指示効率が低下する問題もあった。更に、前記ブレードHの先端部とローラEとの接触部位から図16の矢印bで示したように、前記圧縮室Xで圧縮される高圧ガスが前記吸入室Yに漏れることもあり、前記したブレードH側面からの漏れと相俟って容積効率が更に低下する問題があった。
【0005】本発明は以上の問題点に鑑み発明したもので、目的は、ブレードのローラとの相対移動をなくして、摩擦損失及び動力損失を小さくでき、しかも、ブレード背面室や圧縮室から吸入室へのガス洩れを少なくして容積効率及び指示効率を高めることができるようにする点にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、図1に明示するように、シリンダ室41をもつシリンダ4と、前記シリンダ室41に内装され、該シリンダ室41内を公転するローラ7及び、前記シリンダ室41を圧縮室Xと吸入室Yとに区画するブレード8とを備えた圧縮要素3をもち、吸入口3aから吸入したガス流体を圧縮して吐出口3bから吐出するようにしたロータリー圧縮機において、前記ブレード8を前記ローラ7に、該ローラ7の径方向外方に突出するように一体的に設けると共に、前記シリンダ4に、前記ブレード8の突出側先端部を受入れる受入溝11aをもった支持体11を回動可能に設けたことを特徴とするものである。
【0007】また、同図1に示すように、前記ローラ7の外周部で前記吐出口3bとの対向部位に、この吐出口3bに向かって突出し、該吐出口3bに突入可能とした突起75を設けるのが好ましい。
【0008】更に、図14又は図15に示すように、ローラ7の高さを、圧縮室X側に接する高温側壁部7aで低く、吸入室Y側に接する低温側壁部7bで高く設定するのも好ましい。
【0009】
【作用】以上のロータリー圧縮機では、前記ローラ7と、該ローラ7が嵌合され、かつ、潤滑油が供給されている駆動軸の偏心軸部との間で相対回転させ、従来例のようにブレードとローラとの相対移動をなくしたのであるから、ブレードとローラとが相対移動するようにした従来例に比較して摩擦損失及び動力損失を少なくできるのである。即ち、前記ローラ7を嵌合する駆動軸の偏心軸部には、駆動軸の給油路から常時潤滑油が供給されていて、流体接触しているからローラ7と偏心軸部との相対回転においてはその摩擦抵抗を小さくできるのであって、ブレード8に背圧を作用させて、ブレードとローラとを相対移動させる場合に比較して摩擦損失を小さくできるのであり、動力損失も小さくできるのである。その上、ブレード8をローラ7に設けて、ブレード8に背圧をかける必要がないようにしているから、ブレードの背面室から吸入室Y及び圧縮室Xへのガス漏れをなくすることができて、容積効率及び指示効率を高めることができ、更に、ブレード8をローラ7に設けているから、圧縮室Xから吸入室Yへのガス漏れも少なくでき、前記背面室からのガス漏れがないことと相俟って容積効率をより一層高めることができるのである。
【0010】また、ローラ7の外周部で吐出口3bに対向する部位に、前記吐出口3bに向かって突出し、該吐出口3bに突入可能とした突起75を設けることにより、圧縮行程から吐出行程へと移行するとき、前記ローラ7に設けた突起75を、吐出口3bに対し離れた位置から前記吐出口3bに徐々に突入させることができ、またこの突入時、吐出口3b内の圧縮ガスを外部に押出すように突入させることができるから、トップクリアランスを少なくでき、前記吐出行程の終了後に吸入行程へと移行して前記吸入室Y内に低圧ガスを吸入するとき、前記吐出口3b内に残留した高圧ガスの前記吸入室Y側への逆流量を少なくできるのである。この結果、圧縮損失や前記吸入室Y内での吸入ガスの過熱及び脈動が防止できるし、また、以上の吐出行程の開始時、つまり、吐出量が多くなる吐出行程初期には、前記突起75が吐出口3bに突入していないから、ガスの吐出通路を十分に確保できるのであるから、ガス吐出抵抗を小さくでき、ガスの過圧縮を防止でき、この過圧縮による動力損失をなくすることもできるのである。
【0011】更に、ローラ7の高さを、圧縮室X側に接する高温側壁部7aで低く、吸入室Y側に接する低温側壁部7bで高く設定することにより、ローラ7が非自転式となり、運転時、該ローラ7の円周上に沿って生じる温度差に起因して、ローラ7の高さ方向に熱膨張量の差が現れることによる不利益も解消できるのである。即ち、図16に示した従来のブレード往復動式のものでは、ローラEが駆動軸Dの回転に引きずられて自転し得るから、その外面が低温の吸入室Yと高温の圧縮室Xとに交互に接触し、ローラEはその円周上に沿ってほぼ均等な温度となり得るが、ローラ7が非自転式の場合、低温の吸入室Yと高温の圧縮室Xとに接触する壁部分が円周上で固定的に決まるから、図11に示すようにブレード8の突出部を基点0度として時計方向に角度をとった場合、ローラ7の壁部温度は図12に示すように変化し、高温のピークが270度付近に、低温のピークが90度付近にできてしまうことになる。このため、270度付近を山として圧縮室X側に接する高温側壁部7aでは熱膨張が大きく、90度付近を谷として吸入室Y側に接する低温側壁部7bでは熱膨張が小さく、これらの熱膨張の差により、ローラ7の高さは、図13の想像線で極端に示したように数十ミクロンオーダーの差が生じることになる。一方、シリンダ4は、高圧の吐出ガスが充満されるケーシング内に置かれているため、その熱膨張はシリンダ室41の円周上に沿ってほぼ均一とみることができ、又、シリンダ4の高さは、最大熱膨張量を見込んで設定しているから、結局、吸入室Y側に接し、その熱膨張量の小さい低温側壁部7bの上下端面に大きな隙間ができ、図13中矢印eで示す漏れが生じ、吸入ガスを加熱して容積効率を低下させる不利益が生じるのである。そこで、図14又は図15に示すように、ローラ7の高さを、圧縮室X側に接する高温側壁部7aで低く、吸入室Y側に接する低温側壁部7bで高く設定することにより、運転時には、その熱膨張の差を積極的に利用し、同各図中想像線で示すように、これら高温側壁部7aと低温側壁部7bとの高さを揃えて、ローラ7の高さのアンバランスによる漏れを解消したのである。
【0012】
【実施例】図10に示したロータリー圧縮機は、密閉ケーシング1の内方上部にモータ2を配設すると共に、該モータ2の下部側に圧縮要素3を配設して、前記モータ2から延びる駆動軸21を前記圧縮要素3に連動連結させている。この圧縮要素3は、内部にシリンダ室41をもつシリンダ4と、該シリンダ4の上下開放部に対設されたフロントヘッド5及びリヤヘッド6と、前記シリンダ室41内に公転可能に内装されたローラ7とを備え、前記各ヘッド5,6に設けた軸受部に前記駆動軸21の下部側を軸受支持すると共に、この駆動軸21の偏心軸部22に前記ローラ7を回転自由に挿嵌させて、前記駆動軸21の回転に伴いその偏心軸部22に対し前記ローラ7を摺接させながら回転させるようにしている。また、前記駆動軸21の中心側に、前記ケーシング1における底部油溜め1bに開口する給油路23を設け、この給油路23の入口にポンプ要素24を取付け、また、前記給油路23の中間出口を、前記ローラ7と偏心軸部22との摺接面に開口させて、前記ポンプ要素24で前記油溜め1aから汲上げた潤滑油を、前記給油路23から前記摺接面に供給するようにしている。
【0013】また、前記圧縮要素3には、前記シリンダ4のシリンダ室41に開口する吸入ガス流体の吸入口3aと、同じく前記シリンダ室41に開口する圧縮ガス流体の吐出口3bとをそれぞれ形成する。例えば、図1で明らかなように、前記シリンダ4の側壁に前記シリンダ室41に開口する吸入口3aを、また、該吸入口3aの近くで前記シリンダ4の側壁に前記シリンダ室41に開口する吐出口3bをそれぞれ形成して、これら吸入口3aと吐出口3bとの中間部位に、前記シリンダ室41内を圧縮室Xと吸入室Yとに画成するブレード8を設けると共に、前記吐出口3bには、その出口周りに形成される弁座面に衝合して前記吐出口3bを開閉する板状の弁体9を配設する。尚、図1において、10は前記弁体9の受板、また、図10において、1aは前記ケーシング1の上部側に接続した外部吐出管である。
【0014】しかして以上のロータリー圧縮機において、図1で明らかにしたように、前記ブレード8を前記ローラ7の外周一部に、該ローラ7の径方向外方に向けて突出するように設けると共に、前記シリンダ4における前記吸入口3aと吐出口3bとの中間内方部に円筒形や球形等の円形保持孔42を設けて、この保持孔42に、一端が前記シリンダ室41側に開口された受入溝11aをもつ支持体11を回動可能に保持して、該支持体11の受入溝11a内に前記ブレード8の突出側先端部を摺動可能に挿入させる。
【0015】前記ローラ7の外周一部に前記ブレード8を設けるに際しては、例えば図1で示したように、前記ローラ7側に前記ブレード8の基端一部を挿入可能とした取付溝71を形成し、この取付溝71内に前記ブレード8の基端一部を挿入させて接着剤で接着一体化させるか或はロウ付けにより一体化させるのである。又は、図2R>2、図3で示すように、前記ローラ7の半径方向外周に、軸方向中央部を深溝72aとし、両端側を浅溝72bとした段付溝72と、この段付溝72の深溝部両端面から軸方向外方に貫通する嵌合孔73とを設けると共に、前記ブレード8の基端に、前記段付溝72の深溝部に嵌合する嵌合突起81aをもった嵌合部81を設けて、前記嵌合突起81aに嵌合孔82を設け、前記ブレード8の嵌合部81を前記段付溝72に嵌合して、前記各嵌合孔73、82に一本のピン83を挿嵌することにより、前記ブレード8をローラ7に固定するのである。この場合、前記嵌合部81の段付溝72への嵌合部分には補助的に接着剤を付着させるのが好ましい。又、図4で示すように、前記ローラ7の外周一部に突部74を設けると共に、前記ブレード8側に前記突部74に突入可能な溝部84を設けて、該溝部84に前記突部74を介入させた状態で前記突部74とブレード8とにピン85を貫通させると共に、ブレード8とローラ7との対向面間に接着剤を装填することにより、このブレード8を前記ローラ7に固定してもよい。
【0016】そして、前記駆動軸21の駆動に伴い前記ローラ7に設けたブレード8を、その突出先端部を前記支持体11の受入溝11a内で出入させ、かつ、該支持体11の回動を伴い、揺動しながら径方向へと進退動させることにより、前記シリンダ室41の内部を圧縮室Xと吸入室Yとに画成するのである。以上の構成とすることにより、前記ローラ7を、偏心軸部22に対し相対回転させ、従来のように前記ブレード8の先端部が前記ローラ7の外周面に接触して、ブレード8とローラ7とが相対移動することがないため、前記ブレード8とローラ7との摩擦による摩耗及び前記摩擦による動力損失をなくすことができるのである。即ち、ブレード8とローラ7とが相対移動しない代わりに、ローラ7と偏心軸部22とが相対回転することになるのであるが、前記ローラ7を嵌合する駆動軸21の偏心軸部22には、駆動軸21の給油路23から常時潤滑油が供給されていて、流体接触しているから摩擦抵抗を小さくできるのであって、ブレード8に背圧を作用させ、ブレード8をローラ7に接触させて相対移動させる場合に比較して摩擦損失を小さくできるのであり、動力損失も小さくできるのである。
【0017】更に、前記ブレード8は、前記ローラ7に設けているため、従来のように背圧を作用させる必要がなく、従って、従来例のようにブレードの背面室から前記吸入室Yや圧縮室Xへのガス漏れがなくなり、容積効率及び指示効率を高くできるのである。また、前記圧縮室Xから前記吸入室Yへのガス漏れも少なくなって容積効率をより一層高くできるのである。即ち、前記ブレード8の両側壁面と、該ブレード8が挿入される前記支持体11の受入溝11aとの間から、前記圧縮室X内のガス流体が前記吸入室Y側に漏れることがあるが、前記圧縮室X内のガスは、低圧から高圧まで変動するのであるから、この圧縮室X内のガス流体圧力が吸入室Yのガス流体圧力との圧力差が所定圧以上になったときにのみガス漏れを招き、それ以外にはガス漏れが発生しないために、従来のものに較べて圧縮室Xから吸入室Yへのガス漏れ量を大幅に少なくできるのである。
【0018】また、前記ローラ7の外周部で前記吐出口3bとの対向部位には、この吐出口3bよりも径小とした略円柱状の突起75を設けて、吐出量が多くなる吐出行程開始時、前記突起75が吐出口3bに突入しない位置にあり、吐出行程が進行して吐出量が減少するのに伴い前記突起75が徐々に前記吐出口3bに突入するようにし、かつ、この突入により前記吐出口3b内の圧縮ガスを外部に押し出すようになすのである。
【0019】次に、以上の構成としたロータリー圧縮機の作用について説明する。先ず、図5で示したように、前記ローラ7の公転角度が0度の場合で吸入及び圧縮行程を開始しようとするときには、前記ブレード8が前記支持体11における受入溝11aの奥内部にまで挿入された状態にあり、また、このときには、前記ローラ7に設けた突起75が前記吐出口3b内に突入された状態にある。そして、以上の状態から前記ローラ7が90度公転されると、図6で示したように、前記突起75が前記吐出口3bから離間され、かつ、前記ブレード8は前記支持体11を回動させながら揺動し、その受入溝11aから外方側へと摺動されて、前記ローラ7の公転に伴い前記ブレード8で画成される前記シリンダ室41内の圧縮室Xでガス流体の圧縮が行われ、又、前記吸入室Y側では前記吸入口3aからのガス流体の吸入が行われる。
【0020】また、図7で示したように、前記ローラ7の公転角度が180度となったときには、前記圧縮室Xでのガス流体の圧縮と前記吸入室Yでのガス流体の吸入とが継続され、このとき前記ブレード8は前記支持体11の受入溝11aから最大量引き出された状態にある。更に、図8で示したように、前記ローラ7の公転角度が270度となって吐出行程に至ったときには、前記ローラ7の公転に伴い、該ローラ7に設けたブレード8が徐々に内方側へと摺動されながら、前記圧縮室Xで圧縮されたガス流体が前記吐出口3bから外部吐出され、また、このときには前記突起75が前記吐出口3b内への突入を開始する。そして、図9で示したように、前記ローラ7が315度から360度(図1)にかけて公転されるときに、前記圧縮室Xで圧縮されたガス流体の前記吐出口3bからの吐出が終了し、このとき前記突起75が前記吐出口3b内に突入され、該吐出口3bのトップクリアランスが小とされて、前記吐出口3b内の残留ガス量を少なくでき、この残留ガスが図5の吸入室へ逆流することによる容積効率の低下を少なくできる。
【0021】以上のように、前記吐出行程へと移行するとき、前記ローラ7に設けた突起75は、吐出口3bに対し離れた位置にあり、前記ローラ7の揺動角度に対応して前記吐出口3b内に前記突起75が徐々に突入すると共に、この突入時、吐出口3b内の圧縮ガスを外部に押出すように突入するのである。従って、トップクリアランスを少なくでき、前記吐出行程の終了後に吸入行程へと移行して前記吸入室Y内に低圧ガスを吸入するとき、前記吐出口3b内に残留した高圧ガスの前記吸入室Y側への逆流量を少なくできるのである。この結果、圧縮損失や前記吸入室Y内での吸入ガスの過熱及び脈動が防止できるし、また、以上の吐出行程の開始時、つまり、吐出量が多くなる吐出行程初期には、前記突起75が吐出口3bに突入していないから、ガスの吐出通路を十分に確保できるのであるから、ガス吐出抵抗を小さくでき、ガスの過圧縮を防止でき、この過圧縮による動力損失をなくすることもできるのである。
【0022】ところで、ローラ7の高さは、図14に示すように、そのローラ7の上下端面を、ブレード突出部を基点として時計方向にとった角度で最高温になる270度付近が最も低く、最低温となる90度付近が最も高くなる傾斜面701,702で形成することにより、圧縮室X側に接する高温側壁部7aで低く、吸入室Y側に接する低温側壁部7bで高く設定するのが好ましい。この場合には、運転時、元々高さの低い高温側壁部7aが、元々高さの高い低温側壁部7bよりも大きく熱膨張し、図中想像線で示すように、これら高温側壁部7aと低温側壁部7bとの高さが均一に揃えられ、ローラ7の円周上に沿って、その上下端面部の隙間を均等な小隙間に保つことができ、該ローラ7の上下端面部を介した漏れを低減できて、吸入ガスの加熱を一層良好に低減でき、容積効率を更に向上することができるのである。尚、ローラ7は、モリブデン・ニッケル・クロム合金等を用いており、高温側壁部7aと低温側壁部7bとの高さの差は、数十ミクロン程度に設定している。
【0023】又、ローラ7の高さは、図15に示すように、圧縮室X側に接し、角度180度〜360度までの半円筒部分から成る高温側壁部7aを一律に低く、吸入室Y側に接し、角度0度〜180度までの半円等部分から成る低温側壁部7bを一律に高くし、その上下端面を、段差703,704をもつ形状にしてもよく、この場合には、段差の部分で多少端面に不均一が生じるが、図14に示したものに比べて加工を簡易にできるし、単一高さの円筒で形成するものに比べて運転時における高温側壁面7aと低温側壁面7bとの端面を概ね揃えることができ、その端面部を介した漏れを低減することができるのである。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のロータリー圧縮機では、シリンダ4のシリンダ室41を圧縮室Xと吸入室Yとに画成するブレード8をローラ7に、該ローラ7の径方向外方に突出するように一体的に設けると共に、前記シリンダ4に前記ブレード8の突出側先端部を受入れる受入溝11aをもつ支持体11を回動可能に設けて、前記ローラ7と、該ローラ7が嵌合され、かつ、潤滑油が供給されている駆動軸の偏心軸部との間で相対回転させ、従来例のようにブレードとローラとの相対移動をなくしたのであるから、ブレードとローラとが相対移動するようにした従来例に比較して摩擦損失及び動力損失を少なくできるのである。即ち、前記ローラ7を嵌合する駆動軸の偏心軸部には、駆動軸の給油路から常時潤滑油が供給されていて、流体接触しているのであるから、ブードとローラとの接触に比較して摩擦抵抗を小さくできるのであって、ブレード8に背圧を作用させてブレードとローラとを相対移動させる場合に比較して摩擦損失を小さくできるのであり、動力損失も小さくできるのである。その上、ブレード8をローラ7に設けて、ブレード8に背圧をかける必要がないようにしているから、ブレードの背面室から吸入室Y及び圧縮室Xへのガス漏れをなくすることができて、容積効率及び指示効率を高めることができ、更に、ブレード8をローラ7に設けているから、圧縮室Xから吸入室Yへのガス漏れも防止でき、前記背面室からのガス漏れがないことと相俟って容積効率をより一層高めることができるのである。
【0025】また、ローラ7の外周部で吐出口3bに対向する部位に、前記吐出口3bに向かって突出し、該吐出口3bに突入可能とした突起75を設けることにより、圧縮行程から吐出行程へと移行するとき、前記ローラ7に設けた突起75を、吐出口3bに対し離れた位置から前記吐出口3bに徐々に突入させることができ、また、この突入時、吐出口3b内の圧縮ガスを外部に押出すように突入させることができるから、トップクリアランスを少なくでき、前記吐出行程の終了後に吸入行程へと移行して前記吸入室Y内に低圧ガスを吸入するとき、前記吐出口3b内に残留した高圧ガスの前記吸入室Y側への逆流量を少なくできるのである。この結果、圧縮損失や前記吸入室Y内での吸入ガスの過熱及び脈動が防止できるし、また、以上の吐出行程の開始時、つまり、吐出量が多くなる吐出行程初期には、前記突起75が吐出口3bに突入していないから、ガスの吐出通路を十分に確保できるのであるから、ガス吐出抵抗を小さくでき、ガスの過圧縮を防止でき、この過圧縮による動力損失をなくすることもできるのである。
【0026】更に、ローラ7の高さを、圧縮室X側に接する高温側壁部7aで低く、吸入室Y側に接する低温側壁部7bで高く設定することにより、運転時、ローラ7の円周上に沿って生じる温度差に起因した熱膨張の差を積極的に利用でき、高温側壁部7aと低温側壁部7bとの高さを揃えることができるため、ローラ高さのアンバランスによる漏れを低減でき、吸入ガスの加熱を一層良好に低減できて、容積効率を更に向上することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のロータリー圧縮機に備えるシリンダの要部を示す平断面図である。
【図2】ブレードの取付構造例を示す断面図である。
【図3】図2の中央縦断面図である。
【図4】同ブレードの他の取付構造例を示す断面図である。
【図5】ローラの公転角度が0度の場合を示す平断面図である。
【図6】同ローラの公転角度が90度の場合を示す平断面図である。
【図7】同ローラの公転角度が180度の場合を示す平断面図である。
【図8】同ローラの公転角度が270度の場合を示す平断面図である。
【図9】同ローラの公転角度が315度の場合を示す平断面図である。
【図10】ロータリー圧縮機の全体構造を示す縦断面図である。
【図11】他の実施例を説明するシリンダの要部を示す平断面図である。
【図12】同他の実施例を説明するローラの角度に対する壁部温度を示す図である。
【図13】同他の実施例を説明するシリンダの要部を示す縦断面図である。
【図14】同他の実施例におけるローラの具体的形状の一例を示す断面図である。
【図15】同じくローラの具体的形状の変形例を示す断面図である。
【図16】従来にかかるロータリー圧縮機の圧縮要素を示す平断面図である。
【図17】同従来にかゝるロータリー圧縮機の部分断面図である。
【符号の説明】
3 圧縮要素
3a 吸入口
3b 吐出口
4 シリンダ
41 シリンダ室
7 ローラ
7a 高温側壁部
7b 低温側壁部
75 突起
8 ブレード
11 支持体
11a 受入溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シリンダ室41をもつシリンダ4と、前記シリンダ室41に内装され、該シリンダ室41内を公転するローラ7及び、前記シリンダ室41を圧縮室Xと吸入室Yとに区画するブレード8とを備えた圧縮要素3をもち、吸入口3aから吸入したガス流体を圧縮して吐出口3bから吐出するようにしたロータリー圧縮機において、前記ブレード8を前記ローラ7に、該ローラ7の径方向外方に突出するように一体的に設けると共に、前記シリンダ4に、前記ブレード8の突出側先端部を受入れる受入溝11aをもった支持体11を回動可能に設けていることを特徴とするロータリー圧縮機。
【請求項2】ローラ7の外周部で吐出口3bに対向する部位に、前記吐出口3bに向かって突出し、該吐出口3bに突入可能とした突起75を設けている請求項1記載のロータリー圧縮機。
【請求項3】ローラ7の高さを、圧縮室X側に接する高温側壁部7aで低く、吸入室Y側に接する低温側壁部7bで高く設定している請求項1又は請求項2記載のロータリー圧縮機。
【請求項1】 シリンダ室41をもつシリンダ4と、前記シリンダ室41に内装され、該シリンダ室41内を公転するローラ7及び、前記シリンダ室41を圧縮室Xと吸入室Yとに区画するブレード8とを備えた圧縮要素3をもち、吸入口3aから吸入したガス流体を圧縮して吐出口3bから吐出するようにしたロータリー圧縮機において、前記ブレード8を前記ローラ7に、該ローラ7の径方向外方に突出するように一体的に設けると共に、前記シリンダ4に、前記ブレード8の突出側先端部を受入れる受入溝11aをもった支持体11を回動可能に設けていることを特徴とするロータリー圧縮機。
【請求項2】ローラ7の外周部で吐出口3bに対向する部位に、前記吐出口3bに向かって突出し、該吐出口3bに突入可能とした突起75を設けている請求項1記載のロータリー圧縮機。
【請求項3】ローラ7の高さを、圧縮室X側に接する高温側壁部7aで低く、吸入室Y側に接する低温側壁部7bで高く設定している請求項1又は請求項2記載のロータリー圧縮機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開平5−202874
【公開日】平成5年(1993)8月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−252750
【出願日】平成4年(1992)9月22日
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【公開日】平成5年(1993)8月10日
【国際特許分類】
【出願日】平成4年(1992)9月22日
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
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