説明

ロータリー除雪車

【課題】より効率的に除雪を行なうことができるロータリー除雪車を提供する。
【解決手段】ロータリー除雪車1は、走行駆動装置M1により自走可能な車両2と、前記車両2の前方に設置され、除雪駆動装置M2により駆動する除雪装置3とを備え、前記除雪装置3は、雪を回収するオーガ4と、前記オーガ4で回収した回収雪を所定方向へ放射するブロア5とを備える。積雪高さに応じて前記車両2が予め定めた制限速度以下で走行するように前記車両走行用モータM1のみを制御する走行制御手段20を備える。前記走行制御手段20は、積雪高さを設定する設定装置23と、前記設定装置23で入力された積雪高さに対応した前記制限速度を予め記憶した記憶部29とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリー除雪車に関し、特にオーガにより回収した雪をブロアによって所定方向へ放射するロータリー除雪車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、道路に積もった雪を効率的に除雪するため、オーガにより集積した雪をブロアによって投棄するロータリー除雪車が普及してきた(例えば、特許文献1、2参照)。このようなロータリー除雪車は、ヘリカルリボン形状をしたオーガと、回転式ブロアを備えた除雪装置を車両の前部に装着して構成されている。そして、エンジンからの動力は、除雪車としての車両の走行装置に動力を伝達する走行動力伝達系統と、オーガおよびブロアを回転するための動力を伝達する除雪動力伝達系統とに分岐して伝達される。各動力伝達系統はエンジンに直結された2つの油圧ポンプから別系統の油圧管路で夫々の油圧モータに接続して構成されている。その結果、除雪車としての車両の走行に供される油圧モータと、オーガやブロアを駆動する油圧モータの回転数とは連動することはなく、夫々の油圧モータは異なる回転数で回転することになる。
【0003】
回転するオーガにより集積した雪をブロアによって投棄するロータリー除雪車に関しては、大規模なものから小規模なものまで各種サイズの除雪車がある。その理由は除雪対象となる道路には、幹線道路である車道から歩道にいたるまで各種サイズの道路が存在するからである。ここで、幹線道路の除雪は除雪専門業者に委託される場合が多く、大型のロータリー除雪車を用いて行なわれる。また、除雪作業に従事するオペレータも経験豊かで優れた技能を有した者が殆どである。このような経験豊かなオペレータは、積雪情況を的確に判断してロータリー除雪車の走行速度を微妙に加減し、積雪情況が異なる場合あっても、効率よく除雪をしている。
【0004】
一方、小さな小路や歩行者用の歩道の除雪も次第に機械化が進み、ロータリー除雪車を用いて行なわれるようになってきたが、そのような小規模な道路の除雪は専門業者による熟練したオペレータにより行なわれる機会は少なく、多くの場合、素人に近い不慣れなオペレータによって行われている。
【0005】
ところが、このような不慣れなオペレータによって従来方式のロータリー除雪車、すなわち、除雪車としての車両の走行に供される油圧モータと、オーガやブロアを駆動する油圧モータが夫々独立しており、2つの油圧モータの回転が連動していないロータリー除雪車を用いて除雪を行う場合、除雪作業の効率が著しく低下することがある。たとえば、路上に積もった雪の量が多く、しかも踏み固められた状態の雪を除雪する場合には、オーガの駆動に要する負荷が増大し、オーガおよびオーガの回転と連動するブロアの回転数も低下する。そして、ブロアの回転数がある程度以下に低下すると、投棄に必要なエネルギを雪に付与することが出来ず、うまく除雪することが出来なくなる。さらに、ブロアの回転数が低下した状態であっても、車両の走行に供される油圧モータは、ブロアの駆動に供される油圧モータとは異なるので、車両の走行は停止することなく続行する。したがって、固く踏み固められた状態の雪を除雪する場合のようにオーガに大きな負荷が作用し、オーガやブロアの回転数が低下した状態では除雪を上手く行なうことはできず、適宜車両の走行を手動で停止してオーガやブロアの回転数が上昇するのを待って、再度除雪を開始する操作を行う必要があった。このような車両の走行停止のタイミングは微妙なものがあり、経験の浅いオペレータにとっては困難な操作であった。
【0006】
このような問題点を解決するため、動力により自走可能とした車両と、前記車両の前部にオーガとブロアを有する除雪装置を備え、前記オーガを回転することにより集積した雪をブロアによって吹き飛ばして投棄するロータリー除雪車において、前記オーガの駆動系統に回転数を検出する回転数検出器を取付け、前記オーガの回転数が所定の値以下に低下した場合、車両の走行を自動停止するようにしたロータリー除雪車が開示されている(例えば、特許文献3)。このような構成により、上記特許文献1は、オーガに大きな除雪負荷が作用した場合であっても、オーガの回転が停止することはなく、除雪作業に不慣れな者であっても安全で効率的な除雪を行なうことができるという優れた効果を発揮することができるものである。
【特許文献1】特開平10−96219号公報
【特許文献2】特開2000−240027号公報
【特許文献3】特開2006−37618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1においても、ロータリー除雪車は、オーガに作用した除雪負荷を取り除くため、車両を一端停止せざるを得ず、必ずしも効率的な除雪作業を行うことができるものとはいえない、という問題があった。
【0008】
そこで本発明は上記した問題点に鑑み、より効率的に除雪を行なうことができるロータリー除雪車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、走行駆動装置により自走可能な車両と、前記車両の前方に設置され、除雪駆動装置により駆動する除雪装置とを備え、前記除雪装置は、雪を回収するオーガと、前記オーガで回収した回収雪を所定方向へ放射するブロアとを備えるロータリー除雪車において、積雪高さに応じて前記車両が予め定めた制限速度以下で走行するように前記走行駆動装置のみを制御する走行制御手段を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、前記走行制御手段は、積雪高さを設定する設定装置と、前記設定装置で入力された積雪高さに対応した前記制限速度を予め記憶した記憶部と、前記設定装置で入力された積雪高さに対応した前記制限速度を記憶部から読み出し、前記制限速度に基づいて所定の走行制御信号を出力する制御部とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、前記走行制御手段は、アクセルペダルから踏込み量に応じて出力されるアクセル信号を記憶するアクセル信号記憶部と、前記車両の速度を一定に保持する自動走行動作の開始及び終了を前記制御部に指示する動作スイッチとを備え、前記動作スイッチがオンすることにより、前記アクセル信号記憶部に記憶された前記アクセル信号に対応した速度で前記車両を自動走行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1記載のロータリー除雪車によれば、車両を一端停止させることなく、雪詰まりを防止できるので、より効率的に除雪作業を行うことができる。
【0013】
また、請求項2に記載のロータリー除雪車によれば、積雪高さを設定するのみで、制限速度以下で走行させることができるので、オペレータの熟練度に頼らずに画一的に除雪作業を行うことができる。
【0014】
また、請求項3に記載のロータリー除雪車によれば、ユーザが所望のタイミング及び速度で、車両に自動走行をさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施の形態)
以下図面を参照して、本発明の好適な第1の実施の形態について説明する。図1に示すロータリー除雪車1は、雪が積もった道路や歩道上を走行する4輪駆動の車両2と、この車両2の前部に装着された除雪装置3とからなる。車両2には、車両2の走行動力源ならびに除雪装置3に備えられたオーガ4やブロア5を駆動するための除雪動力源としてのエンジン6が搭載されている。エンジン6には低速回転域でのトルクが大きいディーゼルエンジンが用いられる場合が多い。
【0016】
車両2には運転席2aが設けられている。運転席2aには、本ロータリー除雪車1の走行機能及び除雪機能を制御するための操作パネル(後述する)が設けられている。
【0017】
車両2の前部にはオーガ4とブロア5とを備えた除雪装置3が取付けられている。オーガ4は回転軸にヘリカルリボン形状をしたブレードを取付けたものであり、軸方向の中央に関して左右対称に配置されている。すなわち、オーガ4のブレードの捩れ方向は左右逆方向とされている。そして、オーガ4を正転方向に回転すると、路上の雪はオーガ4の中央部に搬送されるようになっている。
【0018】
オーガ4の後方には回転式ブロア5が設けられている。ブロア5はオーガ4により集積した雪を吸入して遠方へ投棄するためのものである。雪を吸入して遠方へ投棄するためには、ブロア5の羽根の周速度は所定の値以上でなければならない。ブロア5の羽根の必要周速度は機種や雪質によっても異なるが、概ね8〜12m/sec以下では上手く雪を投棄することができないことが経験的に知られている。
【0019】
通常の除雪作業は、オーガ4を正転させ、雪をオーガ4の中央部に集めてからブロア5によってシュート10から回収雪を遠方に放射する。ただし、狭隘道路を除雪する場合や、雪を飛ばして投棄する場所が無い場合には、オーガ4を逆転させる。これにより、ロータリー除雪車1の前方の雪は車両2の前進に伴って両外側に排除され、プラウと同様の除雪効果が得られる。
【0020】
図2に示すように、エンジン6の出力軸6aには油圧ポンプである車両走行用ポンプP1および除雪装置駆動ポンプP2の駆動軸7が連結されている。車両走行用ポンプP1から送り出される高圧の作動油は、走行駆動装置としての車両走行用モータM1に供給される。一方、除雪装置駆動ポンプP2から送り出される高圧の作動油は、除雪駆動装置としての除雪装置駆動モータM2に供給される。車両走行用モータM1の出力軸8は、トランスミッション9の入力軸9aに連結され、車両走行用モータM1の回転速度は減速される。トランスミッション9の2つの出力軸9b,9cは、ユニバーサルジョイント等の自在継手11を介して、車両2の前後の各車軸を駆動するための差動歯車減速機12の入力軸12aに連結されて4輪駆動が可能な構造とされている。
【0021】
車両走行用ポンプP1および除雪装置駆動ポンプP2は、市販されている汎用の斜板ピストンポンプであり、斜板の角度を変化させることによって作動油の流れを切り替えることができる構造を有している。すなわち、斜板をピストンの軸方向に直角にした中立位置にすると、ポンプの吐出量はゼロとなり、この中立位置を挟んでいずれかの方向へ斜板を傾けるとポンプの吐出量が次第に増加するようになっている。換言すると、中立位置を挟んで斜板の傾ける方向を変化させると、作動油の流れ方向を逆方向に変えることができるとともに、ポンプの吐出量をも変化させることができるものである。
【0022】
このような斜板ピストンポンプを車両走行用ポンプP1に用いると、斜板の角度を操作することにより車両2の前後進を切り替えることができるとともに、車両2の進行速度をも容易に調整できる。したがって、トランスミッション9の構造が簡素化され、車両走行装置全体として製作コストを低減できるメリットがある。また、このような斜板ピストンポンプを除雪装置駆動ポンプP2に用いると、斜板の角度を操作することによりオーガ4およびブロア5の回転方向を正転または逆転に切り替えることができる。なお、エンジンにはアクチュエータを駆動するための油圧を発生するギアポンプP3も連結されている。
【0023】
次に本発明の特徴的部分である走行制御手段について説明する。走行制御手段20は、車両走行用ポンプP1から車両走行用モータM1に所定流量の作動油を送るように構成されている。
【0024】
走行制御手段20は、図3に示すように、各種機能を統括的に制御する速度制御装置21に対し、アクセルペダル22と、積雪高さを設定する設定装置23と、雪詰まり防止スイッチ24と、油圧バルブ25とが接続されて構成されている。
【0025】
速度制御装置21は、入力された各種信号を増幅するアンプ部26と、制御部27とを備え、アンプ部26に、アクセルペダル22、設定装置23が接続されている。
【0026】
アクセルペダル22は、車両2の運転席2aの足元に設置され、オペレータがアクセルペダル22を踏込むと、ペダルの踏込み量に応じたアクセル信号を速度制御装置21に出力し得る構成となっている。
【0027】
また、エンジン6には制御レバー28が接続されており、制御レバー28は、揺動させることによって、エンジン6の回転数を変えることができる。これにより、エンジン6に直結された車両走行用ポンプP1、除雪装置駆動ポンプP2の回転数を変え得る構成となっている。
【0028】
設定装置23と、雪詰まり防止スイッチ24とは、図4に示すように、前記操作パネル30に設置される。設定装置23は、オペレータが所望の積雪高さにダイアル31を合わせることにより、ダイアル31の位置に対応した積雪高さ信号を速度制御装置21に出力し得る構成となっている。因みに、操作パネル30には、除雪装置の回転数を表示する表示部32、モード切替スイッチ33、走行切換スイッチ34が設けられ、オペレータが除雪作業に伴って必要な情報を得られると共に、円滑な操作を可能とし得るように構成されている。また雪詰まり防止スイッチ24は、通常走行モードと雪詰まり防止モードとを切替えるスイッチであり、オペレータがオンした場合、雪詰まり防止信号を速度制御装置21へ出力する。
【0029】
また、走行切換スイッチ34は、前進モード、中立モード、後進モードとを切替可能に構成され、車両走行用ポンプP1の前進/後進および中立の切り替えをし得る。従って、走行切換スイッチ34を前進モードにすると、車両走行用ポンプP1の斜板も前進位置になり、車両走行用モータM1に作動油が送られて車両2は前進する。一方、走行切換スイッチ34を後進モードにすると、車両走行用ポンプP1の斜板も後進位置になり、車両走行用モータM1に作動油が送られて車両2は後進する。さらに、走行切換スイッチ34を中立モードにすると、車両走行用ポンプP1の斜板は中立位置になり、車両走行用モータM1に作動油は送られることなく車両2は停止する。このようにして走行切換スイッチ34を切り替えることにより車両2の走行状態を制御することができる。尚、初期状態は中立モードであり、エンジン6始動時には走行切換スイッチ34は中立モード状態とする。
【0030】
上記のように構成された走行制御手段では、制御部27が、アクセルペダル22からアクセル信号が入力されると、アクセル信号に対応した走行制御信号を生成する。雪詰まり防止スイッチ24がオフとなっている場合、すなわち、通常走行モードの場合には、制御部27は、そのまま走行制御信号を油圧バルブ25へ出力する。
【0031】
一方、雪詰まり防止スイッチ24がオンとなっている場合、すなわち、雪詰まり防止モードの場合には、制御部27は、設定装置23から積雪高さ信号を取得する。制御部27は、積雪高さ信号を取得すると、積雪高さに対応づけられた制限速度を予め記憶した記憶部29から積雪高さに対応した制限速度を読み出す。ここで、制限速度は積雪高さに対応して、ロータリー除雪車1が雪詰まりを起さずに除雪しながら走行し得る最高速度である。そして、制御部27は、アクセル信号に対応した走行制御信号を、必要に応じて前記制限速度以下に変換して油圧バルブ25へ出力する。
【0032】
油圧バルブ25は、走行制御信号が入力されると、走行制御信号に応じてバルブを動作させて、車両走行用ポンプP1から車両走行用モータM1へ所定量の作動油を供給する。車両走行用モータM1は、この所定量の作動油により、車両走行用モータM1は、車両2を所定速度で走行させ得る。
【0033】
因みに、図5にロータリー除雪車を用いた場合における積雪高さと走行速度の関係を示す。図5の曲線Aは、過負荷走行停止の作動速度と積雪高さの関係であり、図5の曲線Bは、熟練オペレータの標準作動速度と積雪高さの関係である。この図から明らかなように、速度制御装置21を使用して除雪を行った場合、積雪高さが30(cm)のとき走行速度2.0(km/h)で作業を行うことができ、速度制御装置21を使用せずに熟練オペレータが作業した場合(1.0km/h)に比べ、格段に効率を向上することができることが分かった。従って、速度制御装置21は、熟練オペレータではなくても効率的に除雪作業を行うことができ、さらに、速度制御装置21を使用せずに熟練オペレータが作業した場合に比べ、格段に作業効率を向上することができる。
【0034】
また、ロータリー除雪車1は、車両2が安定して走行していることを確認できたら、自動走行モード(オートクルージングともいう)に切り替えることにより、車両2の速度を一定に保ちながら自動走行し得るように構成される。これにより、ロータリー除雪車1は、オペレータの負荷を低減することができる。
【0035】
実際には、制御部27は、タイマ35、速度計測手段としての速度メータ36に接続される。制御部27は、走行制御信号の出力を開始した時点からタイマ35で経過時間を計測すると共に、速度メータ36から速度信号を取得することにより車両2の速度を計測し、前記車両2の速度が、所定時間一定に保持されたと判断した場合、アクセル信号の有無にかかわらず、油圧バルブ25に対し前記速度に対応した走行制御信号を出力し続ける。これにより、ロータリー除雪車1は、オペレータがアクセルペダル22を踏み続けることなく、車両2を前記速度で走行させ続けることができるので、オペレータの負荷を軽減することができる。
【0036】
因みに、ロータリー除雪車1は、図示しないが、自動走行モードに切り替わったことをオペレータに通知する通知手段を備えることとしてもよい。また、ロータリー除雪車1は、オペレータがブレーキをかけた場合、自動走行モードを解除して車両2を停止させる構成とすることにより、安全に通常の走行状態へ移行することができる。
【0037】
次に、オーガ4とブロア5の駆動機構について説明する。図2に示すように、原動機としてのエンジン6の出力軸6aには、車両走行用ポンプP1とともに、除雪装置3に備えられたオーガ4とブロア5を駆動するための除雪装置駆動ポンプP2も連結されている。除雪装置駆動ポンプP2も車両走行用ポンプP1と同様の斜板ピストンポンプであり、斜板の角度を変化させることによって作動油の流れを切り替えることができる。すなわち、斜板をピストンの軸方向に直角にした中立位置においては、ポンプの吐出量はゼロとなり、この中立位置を挟んでいずれかの方向へ斜板を傾けるとポンプの吐出量が次第に増加するようになっている。換言すると、中立位置を挟んで斜板の傾ける方向を変化させると、作動油の流れ方向を逆方向に変えることができる構造を有している。
【0038】
除雪装置駆動ポンプP2からの高圧の作動油は、配管路により除雪装置駆動モータM2に供給される。そして、除雪装置駆動ポンプP2の斜板の角度を変化させることにより、除雪装置駆動モータM2は、除雪装置駆動ポンプP2から供給される作動油によって正逆両方向に選択的に回転できるようになっている。
【0039】
除雪装置駆動モータM2の出力軸40は、ベベルギア41、42を内蔵した2つの出力軸43、44を有する歯車減速機45の入力軸46に連結されている。この歯車減速機45の2つの出力軸43、44のうちの一方の出力軸44にはブロア5の回転軸が連結されており、他方の出力軸43には、自在継手47を介してチェーン伝動機48の入力軸49が連結されている。さらに、このチェーン伝動機48の出力軸50は、オーガ4に作用する負荷トルクを制限するためのシェアピン継手51を介してオーガ4に連結され、オーガ4を駆動するようになっている。
【0040】
したがって、除雪装置駆動モータM2が回転すると、シェアピン継手51の規定トルク以下の駆動トルクであれば、オーガ4とブロア5は連動して回転する。また、除雪装置駆動ポンプP2の斜板の角度を操作して除雪装置駆動モータM2の回転方向を切り替えることにより、オーガ5の回転方向を切り替えることができるようになっている。
【0041】
車両2には、ブロア5から回収雪を所定方向へ放射するためのシュート10が設けられている。シュート10は略縦型の筒状をしており、上下方向に伸縮可能である。さらに、平面内において回転可能な構造とされ、上端に設けた蓋体は雪の放射口を任意の開度で開口できる。シュート10上端の放射口の位置と向きを適当に定めることにより、雪を飛ばす位置を任意に設定することができるようになっている。
【0042】
以上のような構成によれば、ロータリー除雪車1は、設定装置23で設定した積雪高さに対応して予め定めた制限速度以下で車両2を走行させ得る。これにより、ロータリー除雪車1は、除雪装置3の雪詰まりを防止して、熟練者でなくてもより効率的に除雪作業を行うことができる。
【0043】
また、ロータリー除雪車1は、予め定めた制限速度以下で車両2を走行させることにより、除雪装置3への雪詰まりを防止する構成とした。これにより、ロータリー除雪車1は、従来のようにオーガ4の回転数を回復させるため車両2を一端停止させる必要がないので、より効率の向上を図れる。
【0044】
また、ロータリー除雪車1は、車両2を一端停止させずに雪詰まりを防止する構成としたことにより、一定速度で車両2を走行させながら除雪作業を行う自動走行を行なうことができる。従って、ロータリー除雪車1は、作業者の負担を軽減することができる。
【0045】
また、ロータリー除雪車1は、積雪高さに対応した制限速度を記憶した記憶部29を備えるので、確実に雪詰まりを防止することができる。従って、ロータリー除雪車1では、オペレータの熟練度に頼ることなく、オペレータが積雪高さを設定するだけで画一的、かつ効率的に除雪作業を行うことができる。尚、前記制限速度は、雪質などに応じて管理者によって書き換え可能としてもよいことはもちろんである。
【0046】
また、ロータリー除雪車1は、アクセル信号に基づいて生成した走行制御信号を、必要に応じて前記制限速度以下に変換して油圧バルブ25へ出力する構成とした。これにより、ロータリー除雪車1は、雪詰まり防止モードにおいてもアクセルペダル22による速度制御を可能とし、オペレータが違和感なく操作することができるので、効率を向上することができる。
【0047】
また、ロータリー除雪車1は、走行制御手段20が積雪高さに応じて制限速度以下で走行するように車両走行用モータM1のみを制御するように構成した。これにより、ロータリー除雪車1は、車両走行用モータM1とは独立して除雪装置駆動モータM2を回転させることができるので、制限速度以下で走行する雪詰まり防止モード下においても確実に除雪作業を行なうことができる。
【0048】
以上のように本実施の形態では請求項に対応して、ロータリー除雪車1は、積雪高さに応じて前記車両2が予め定めた制限速度以下で走行するように前記車両走行用モータM1のみを制御する走行制御手段20を備えるから、車両2を一端停止させることなく、雪詰まりを防止できるので、より効率的に除雪作業を行うことができる。
【0049】
また、ロータリー除雪車1は、前記走行制御手段20が、積雪高さを設定する設定装置23と、前記設定装置23で入力された積雪高さに対応した前記制限速度を予め記憶した記憶部29と、前記設定装置29で入力された積雪高さに対応した前記制限速度を記憶部29から読み出し、前記制限速度に基づいて所定の走行制御信号を出力する制御部27とを備えるから、積雪高さを設定するのみで、制限速度以下で走行させることができるので、オペレータの熟練度に頼らずに画一的に除雪作業を行うことができる。
【0050】
また、ロータリー除雪車1は、前記走行制御手段20が、前記車両2の走行速度を計測する速度計測手段と、走行開始からの経過時間を計測するタイマ35とを備え、前記車両2の速度が、所定時間、一定に保持されたと判断した場合、該速度を保持し自動走行するように構成したから、オペレータの負担を軽減し、効率を向上することができる。
【0051】
また、ロータリー除雪車1は、前記制限速度を、積雪高さ30cmに対応して、時速1kmを超え、かつ、2km以下の範囲で設定したから、熟練のオペレータより効率的に除雪することができる。
【0052】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載した事項の範囲内で種々の変形実施をすることができる。たとえば、上記実施形態では走行制御手段20としてデジタル式のものを用いて説明したが、アナログ式の手段を採用してもよい。また、上記実施形態では車両走行装置に動力を伝達する方式として、油圧ポンプと油圧モータを用いた油圧伝動方式を用いているが、機械式動力伝動方式を用いる場合にも適用できる。
【0053】
また、上記した実施の形態では、車両走行用ポンプの前進/後進および中立の切り替えを切換スイッチにより行う構成について説明したが、本発明はこれに限らず、機械的構成によって実現することも可能である。例えば、図6および図7は車両走行用ポンプP1の前進/後進および中立の切り替えを走行レバー61により行なう構成を示す略図である。車両走行用ポンプP1の斜板の角度を変化させる操作棹62は、リンクまたはワイヤーロープ63により走行レバー61と連結されている。したがって、走行レバー61を前進位置にシフトすると、車両走行用ポンプP1の斜板も前進位置になり、車両走行用モータM1に作動油が送られて車両2は前進する。一方、走行レバー61を後進位置にシフトすると、車両走行用ポンプP1の斜板も後進位置になり、車両走行用モータM1に作動油が送られて車両2は後進する。さらに、走行レバー61を中立位置にシフトすると、車両走行用ポンプP1の斜板は中立位置になり、車両走行用モータM1に作動油は送られることなく車両2は停止する。このようにして走行レバー61の位置をシフトすることにより車両2の走行状態を制御することができる。
(第2の実施の形態)
次に図3に対応する図8を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態に係るロータリー除雪車1は、上記第1の実施の形態に対し、走行制御手段71の構成のみが異なる。すなわち、走行制御手段71は、アクセル信号を取得し記憶するアクセル信号記憶部72と、車両2の速度を一定に保持する動作の開始及び終了を制御部27へ指示する動作スイッチ73とを備える点においてのみ異なる。
【0054】
ロータリー除雪車1は、アクセル信号の入力に応じて所定速度で走行し、走行中、動作スイッチ73をオンすることにより、アクセルペダル22の踏込み量に関わらず、前記所定速度を保持し得るように構成されている。
【0055】
実際には、走行制御装置71は、アンプ部26、制御部27、記憶部29、アクセル信号記憶部72とを備え、アクセルペダル22、設定装置23、雪詰まり防止スイッチ24、速度メータ36、油圧バルブ25、動作スイッチ73が接続されている。
【0056】
走行制御装置71は、アクセルペダル22からアクセル信号が入力されると、アクセル信号に対応した走行制御信号を生成し、油圧バルブ25へ出力する。これにより、ロータリー除雪車1は、油圧バルブ25に走行制御信号が入力されることにより、所定速度で走行する。
【0057】
同時に、走行制御装置71は、アクセル信号記憶部72にアクセル信号を記憶させる記憶動作をさせる。因みに、走行制御装置71は、最新のアクセル信号をアクセル信号記憶部72に記憶させるため、所定時間毎に前記記憶動作をさせることとしてもよい。
【0058】
このように、ロータリー除雪車1がアクセルペダル22の踏込み量に応じた所定速度で走行している状態において、ユーザが動作スイッチ73をオンすると、動作信号が制御部27へ入力され、制御部27は自動走行動作を開始する。すなわち、制御部27は、動作信号に基づいて、アクセル信号記憶部72からアクセル信号を読み出し、該アクセル信号に対応した走行制御信号を生成する。制御部27で生成された走行制御信号は、油圧バルブ25へ出力される。これにより、ロータリー除雪車1は、所定速度で自動走行することができる。因みに制御部27は、自動走行動作を開始すると共に、前記記憶動作を終了し、動作スイッチ73がオフされるまで、動作スイッチ73をオンした時点のアクセル信号に基づいて、自動走行動作を行う。
【0059】
以上のように、本実施の形態においては、ロータリー除雪車1は、アクセル信号記憶部72と、自動走行動作を開始させる動作スイッチ73を備えるように構成した。これにより、ロータリー除雪車1では、ユーザが所望のタイミング及び速度で、車両2に自動走行をさせることができる。
【0060】
また、ロータリー除雪車1は、動作スイッチ73をオンした時点におけるアクセルペダル22の踏込み量に対応した速度で自動走行させ得るように構成した。これにより、ロータリー除雪車1では、自動走行動作の切り替わりをスムーズに行え、操作性を向上することができる。
【0061】
また、本実施の形態においても、走行制御手段71は、上記第1の実施形態と同様の効果を奏することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるロータリー除雪車の側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるロータリー除雪車の動力伝達系統図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における走行制御手段の回路構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における操作パネルの構成を示す正面図である。
【図5】積雪高さと走行速度の関係を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態におけるロータリー除雪車の走行レバーと斜板ポンプ間の接続を示す略図である。
【図7】本発明の第1の実施形態における走行レバーを示す図面である。
【図8】本発明の第2の実施形態における走行制御手段の回路構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0063】
1 ロータリー除雪車
2 車両
3 除雪装置
4 オーガ(除雪装置)
5 ブロア(除雪装置)
M1 車両走行用モータ(走行駆動装置)
M2 除雪装置駆動モータ(除雪駆動装置)
20 走行制御手段
23 設定装置
29 記憶部
71 走行制御手段
72 アクセル信号記憶部
73 動作スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行駆動装置により自走可能な車両と、
前記車両の前方に設置され、除雪駆動装置により駆動する除雪装置とを備え、
前記除雪装置は、雪を回収するオーガと、前記オーガで回収した回収雪を所定方向へ放射するブロアとを備える
ロータリー除雪車において、
積雪高さに応じて前記車両が予め定めた制限速度以下で走行するように前記走行駆動装置を制御する走行制御手段を備える
ことを特徴とするロータリー除雪車。
【請求項2】
前記走行制御手段は、
積雪高さを設定する設定装置と、
積雪高さに対応した前記制限速度を予め記憶した記憶部と、
前記設定装置で入力された積雪高さに対応した前記制限速度を記憶部から読み出し、前記制限速度に基づいて所定の走行制御信号を出力する制御部とを備える
ことを特徴とする請求項1記載のロータリー除雪車。
【請求項3】
前記走行制御手段は、
アクセルペダルから踏込み量に応じて出力されるアクセル信号を記憶するアクセル信号記憶部と、
前記車両の速度を一定に保持する自動走行動作の開始及び終了を前記制御部に指示する動作スイッチとを備え、
前記動作スイッチがオンすることにより、前記アクセル信号記憶部に記憶された前記アクセル信号に対応した速度で前記車両を自動走行させる
ことを特徴とする請求項1又は2記載のロータリー除雪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−35903(P2009−35903A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200081(P2007−200081)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(501028390)国土交通省北陸地方整備局長 (12)
【出願人】(391023518)社団法人日本建設機械化協会 (19)
【出願人】(591117631)株式会社日本除雪機製作所 (18)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【出願人】(591121443)開発工建株式会社 (2)
【出願人】(503132257)新潟トランシス株式会社 (16)