説明

ロータリ圧縮機

【課題】過圧縮損失を低減させて、圧縮効率を向上し、COPを向上させたロータリ圧縮機を得ること。
【解決手段】側部に放射状に吸入孔及びベーン溝が設けられた環状のシリンダと、前記シリンダの端部を閉塞する端板と、モータにより回転駆動される回転軸の偏芯部に嵌合され前記シリンダのシリンダ内壁に沿って該シリンダ内を公転し前記シリンダ内壁との間に作動室を形成する環状ピストンと、前記シリンダに設けられたベーン溝内から前記作動室内に突出して前記環状ピストンに当接し該作動室を吸入室と圧縮室とに区画するベーンと、を備えて成る圧縮部を有するロータリ圧縮機において、前記端板の前記ベーン溝近傍に前記圧縮室に連通する吐出孔を設け、前記端板の前記吐出孔の前記ベーン溝側に、前記圧縮室の圧縮冷媒ガスを前記吐出孔に逃がす凹部を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の冷凍サイクルに使用されるロータリ圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリ圧縮機は、側部に放射状に吸入孔及びベーン溝が設けられた環状のシリンダと、このシリンダの端部を閉塞する端板と、モータにより回転駆動される回転軸の偏芯部に嵌合されシリンダのシリンダ内壁に沿ってシリンダ内を公転しシリンダ内壁との間に作動室を形成する環状ピストンと、シリンダに設けられたベーン溝内から作動室内に突出して環状ピストンに当接し作動室を吸入室と圧縮室とに区画するベーンと、を備える圧縮部を有し、端板のベーン溝近傍に圧縮室内の圧縮冷媒を圧縮室外に吐出する吐出孔が設けられている。上記の構造を有するロータリ圧縮機においては、環状ピストンがシリンダ内を公転して吐出孔を通過した後に、シリンダ内壁と環状ピストンとベーンにより囲まれた小空間で、吐出口から吐出されない冷媒ガスが圧縮されて過圧縮損失となり、圧縮効率が低下してCOPが悪化する、という問題があった。
【0003】
従来、密閉容器と前記密閉容器内に収容された電動要素及び圧縮要素とを備え、前記圧縮要素は内側に作動室を有するシリンダと、回転軸の偏芯部によって前記シリンダ内を回転するローラ(環状ピストン)と、前記ローラに接して前記シリンダに設けられた案内溝を摺動して前記シリンダの作動室を圧縮室及び吸入室に区画するベーンと、前記シリンダの作動室を封じる枠体(端板)とで構成され、前記枠体には前記シリンダの圧縮室に連通する吐出孔が設けられている密閉型圧縮機(ロータリ圧縮機)において、前記吐出孔は完全に前記シリンダの圧縮室の内側に位置し、且つ、前記ローラの内周縁より内側にはみ出さない円形、長孔形、又は三ヶ月形の形状にされ、更に前記ローラは円筒形、又は吐出孔側の端面部が厚くなっている円筒形にされている密閉型圧縮機が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、密閉ケース内に電動機部と、この電動機部と回転軸を介して連結された回転圧縮機構部を収納してなり、上記回転圧縮機構部が、シリンダ室を形成するシリンダと、上記シリンダの両端面に設けられ上記シリンダ室を覆う第1及び第2の蓋部材と、上記シリンダ室内を圧縮室と吸込室とに分離するローラ及びベーンとを備えた密閉型回転式圧縮機において、上記第1及び第2の蓋部材の少なくとも一方に上記シリンダ室内で圧縮された冷媒を吐出する吐出孔を設け、この吐出孔を、上記ベーンが下死点に位置するときの上記圧縮室の断面積をB(m)、上記吐出孔の断面積をC(m)としたとき、C/B≦0.15となるように設定するとともに、上記吐出孔の長さを3mm以下にし、上記吐出孔がシリンダ室に臨む面積の割合を吐出孔の断面積の87%以上とするとともに、上記シリンダには冷媒吐出用の切欠き溝を設けない密閉型回転式圧縮機が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−133363号公報
【特許文献2】特開2007−198319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された従来の技術によれば、吐出ポートを完全にシリンダの圧縮室の内側に位置させ、シリンダの圧縮室に吐出切欠きを設けないので、再膨張損失を低減することはできるが、ローラが吐出孔を通過した後に、シリンダの内壁とローラとベーンにより囲まれた空間で、吐出されない冷媒ガスが圧縮されて過圧縮損失となり、圧縮効率が低下してCOPが悪化する、という問題がある。
【0007】
また、特許文献2に開示された従来の技術によれば、吐出孔がシリンダ室に臨む面積の割合を吐出孔の断面積の87%以上としているため、特許文献1に開示されたものよりも、ローラが吐出孔を通過した後の、シリンダの内壁とローラとベーンにより囲まれた空間の容積が減少し、過圧縮損失は若干低減するが、それでも圧縮効率は低下し、COPが悪化する。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、過圧縮損失を低減させて、圧縮効率を向上し、COPを向上させたロータリ圧縮機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、側部に放射状に吸入孔及びベーン溝が設けられた環状のシリンダと、前記シリンダの端部を閉塞する端板と、モータにより回転駆動される回転軸の偏芯部に嵌合され前記シリンダのシリンダ内壁に沿って該シリンダ内を公転し前記シリンダ内壁との間に作動室を形成する環状ピストンと、前記シリンダに設けられたベーン溝内から前記作動室内に突出して前記環状ピストンに当接し該作動室を吸入室と圧縮室とに区画するベーンと、を備えて成る圧縮部を有するロータリ圧縮機において、前記端板の前記ベーン溝近傍に前記圧縮室に連通する吐出孔を設け、前記端板の前記吐出孔の前記ベーン溝側に、前記圧縮室の圧縮冷媒ガスを前記吐出孔に逃がす凹部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、過圧縮損失が小さく、圧縮効率が高く、COPが高いロータリ圧縮機が得られる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明に係るロータリ圧縮機の実施例を示す縦断面図である。
【図2】図2は、実施例1の第1、第2の圧縮部を示す横断面図である。
【図3】図3は、図2のA部拡大図である。
【図4】図4は、実施例1の上端板を示す下面図である。
【図5】図5は、実施例2の第1、第2の圧縮部を示す横断面図である。
【図6】図6は、図5のB部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかるロータリ圧縮機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明に係るロータリ圧縮機の実施例を示す縦断面図であり、図2は、実施例1の第1、第2の圧縮部を示す横断面図であり、図3は、図2のA部拡大図であり、図4は、実施例1の上端板を示す下面図である。
【0014】
図1に示すように、実施例1のロータリ圧縮機1は、密閉された縦置き円筒状の圧縮機筐体10の下部に配置された圧縮部12と、圧縮機筐体10の上部に配置され、回転軸15を介して圧縮部12を駆動するモータ11と、を備えている。
【0015】
モータ11のステータ111は、圧縮機筐体10の内周面に焼きばめされて固定されている。モータ11のロータ112は、ステータ111の中央部に配置され、モータ11と圧縮部12とを機械的に接続する回転軸15に焼きばめされて固定されている。
【0016】
圧縮部12は、第1の圧縮部12Sと、第1の圧縮部12Sと並列に設置され第1の圧縮部12Sの上側に積層された第2の圧縮部12Tと、を備えている。図2に示すように、第1、第2の圧縮部12S、12Tは、側部に放射状に、第1、第2吸入孔135S、135T、第1、第2ベーン溝128S、128Tが設けられた環状の第1、第2シリンダ121S、121Tを備えている。
【0017】
図2に示すように、第1、第2シリンダ121S、121Tには、モータ11の回転軸15と同心に、円形の第1、第2シリンダ内壁123S、123Tが形成されている。第1、第2シリンダ内壁123S、123T内には、シリンダ内径よりも小さい外径の第1、第2環状ピストン125S、125Tが夫々配置され、第1、第2シリンダ内壁123S、123Tと、第1、第2環状ピストン125S、125Tとの間に、冷媒ガスを吸入し圧縮して吐出する第1、第2作動室130S、130Tが形成される。
【0018】
第1、第2シリンダ121S、121Tには、第1、第2シリンダ内壁123S、123Tから径方向に、シリンダ高さ全域に亘る第1、第2ベーン溝128S、128Tが形成され、第1、第2ベーン溝128S、128T内に、夫々平板状の第1、第2ベーン127S、127Tが、摺動自在に嵌合されている。
【0019】
図2に示すように、第1、第2ベーン溝128S、128Tの奥部には、第1、第2シリンダ121S、121Tの外周部から第1、第2ベーン溝128S、128Tに連通するように第1、第2のスプリング穴124S、124Tが形成されている。第1、第2のスプリング穴124S、124Tには、第1、第2ベーン127S、127Tの背面を押圧するベーンスプリング(図示せず)が挿入されている。ロータリ圧縮機1の起動時は、このベーンスプリングの反発力により、第1、第2ベーン127S、127Tが、第1、第2ベーン溝128S、128T内から第1、第2作動室130S、130T内に突出し、その先端が、第1、第2環状ピストン125S、125Tの外周面に当接し、第1、第2ベーン127S、127Tにより、第1、第2作動室130S、130Tが、第1、第2吸入室131S、131Tと、第1、第2圧縮室133S、133T(図2においては、容積が略ゼロとなっている。)とに区画される。
【0020】
また、第1、第2シリンダ121S、121Tには、第1、第2ベーン溝128S、128Tの奥部と圧縮機筐体10内とを、図1に示す開口部Rで連通して圧縮機筐体10内の圧縮された冷媒ガスを導入し、第1、第2ベーン127S、127Tに、冷媒ガスの圧力により背圧をかける第1、第2圧力導入路129S、129Tが形成されている。
【0021】
第1、第2シリンダ121S、121Tには、第1、第2吸入室131S、131Tに外部から冷媒を吸入するために、第1、第2吸入室131S、131Tと外部とを連通させる第1、第2吸入孔135S、135Tが設けられている。
【0022】
また、図1に示すように、第1シリンダ121Sと第2シリンダ121Tの間には、中間仕切板140が配置され、第1シリンダ121Sの第1作動室130Sと第2シリンダ121Tの第2作動室130Tとを区画している。第1シリンダ121Sの下端部には、下端板160Sが設置され、第1シリンダ121Sの第1作動室130Sを閉塞している。また、第2シリンダ121Tの上端部には、上端板160Tが設置され、第2シリンダ121Tの第2作動室130Tを閉塞している。
【0023】
下端板160Sには、下軸受部161Sが形成され、下軸受部161Sに、回転軸15の下軸受支持部151が回転自在に支持されている。上端板160Tには、上軸受部161Tが形成され、上軸受部161Tに、回転軸15の上軸受支持部153が回転自在に支持されている。
【0024】
回転軸15は、互いに180°位相をずらして偏心させた第1偏芯部152Sと第2偏芯部152Tとを備え、第1偏芯部152Sは、第1の圧縮部12Sの第1環状ピストン125Sに回転自在に嵌合し、第2偏芯部152Tは、第2の圧縮部12Tの第2環状ピストン125Tに回転自在に嵌合している。
【0025】
回転軸15が回転すると、第1、第2環状ピストン125S、125Tが、第1、第2シリンダ内壁123S、123Tに沿って第1、第2シリンダ121S、121T内を図2の反時計回りに公転し、これに追随して第1、第2ベーン127S、127Tが往復運動する。この第1、第2環状ピストン125S、125T及び第1、第2ベーン127S、127Tの運動により、第1、第2吸入室131S、131T及び第1、第2圧縮室133S、133Tの容積が連続的に変化し、圧縮部12は、連続的に冷媒ガスを吸入し圧縮して吐出する。
【0026】
図1に示すように、下端板160Sの下側には、下マフラーカバー170Sが配置され、下端板160Sとの間に下マフラー室180Sを形成している。そして、第1の圧縮部12Sは、下マフラー室180Sに開口している。すなわち、下端板160Sの第1ベーン127S近傍には、第1シリンダ121Sの第1圧縮室133Sと下マフラー室180Sとを連通する第1吐出孔190S(図2参照)が設けられ、第1吐出孔190Sには、圧縮された冷媒ガスの逆流を防止する第1吐出弁200Sが配置されている。第1吐出孔190Sの詳細については後述する。
【0027】
下マフラー室180Sは、環状に形成された1つの室であり、第1の圧縮部12Sの吐出側を、下端板160S、第1シリンダ121S、中間仕切板140、第2シリンダ121T及び上端板160Tを貫通する冷媒通路136(図2参照)を通して上マフラー室180T内に連通させる連通路の一部である。下マフラー室180Sは、吐出冷媒ガスの圧力脈動を低減させる。また、第1吐出弁200Sに重ねて、第1吐出弁200Sの撓み開弁量を制限するための第1吐出弁押さえ201Sが、第1吐出弁200Sとともにリベットにより固定されている。
【0028】
図1に示すように、上端板160Tの上側には、上マフラーカバー170Tが設置され、上端板160Tとの間に上マフラー室180Tを形成している。上端板160Tの第2ベーン127T近傍には、第2シリンダ121Tの第2圧縮室133Tと上マフラー室180Tとを連通する第2吐出孔190T(図2参照)が設けられ、第2吐出孔190Tには、圧縮された冷媒ガスの逆流を防止する第2吐出弁200Tが設置されている。また、第2吐出弁200Tに重ねて、第2吐出弁200Tの撓み開弁量を制限するための第2吐出弁押さえ201Tが、第2吐出弁200Tとともにリベットにより固定されている。上マフラー室180Tは、吐出冷媒の圧力脈動を低減させる。第2吐出孔190Tの詳細については後述する。
【0029】
第1シリンダ121S、下端板160S、下マフラーカバー170S、第2シリンダ121T、上端板160T、上マフラーカバー170T及び中間仕切板140は、通しボルト175等により一体に締結されている。通しボルト175等により一体に締結された圧縮部12のうち、上端板160Tの外周部が、圧縮機筐体10にスポット溶接により固着され、圧縮部12を圧縮機筐体10に固定している。
【0030】
円筒状の圧縮機筐体10の外周壁には、軸方向に離間して下部から順に、第1、第2貫通孔101、102が、第1、第2吸入管104、105を通すために設けられている。また、圧縮機筐体10の外側部には、独立した円筒状の密閉容器からなるアキュムレータ25が、アキュムホルダー252及びアキュムバンド253により保持されている。
【0031】
アキュムレータ25の天部中心には、冷凍サイクルと接続するシステム接続管255が接続され、アキュムレータ25の底部に設けられた底部貫通孔257には、一端がアキュムレータ25の内部上方まで延設され、他端が、第1、第2吸入管104、105の他端に接続される第1、第2低圧連絡管31S、31Tが接続されている。
【0032】
冷凍サイクルの低圧冷媒をアキュムレータ25を介して第1、第2の圧縮部12S、12Tに導く第1、第2低圧連絡管31S、31Tは、吸入部としての第1、第2吸入管104、105を介して第1、第2シリンダ121S、121Tの第1、第2吸入孔135S、135T(図2参照)に接続されている。すなわち、第1、第2吸入孔135S、135Tは、冷凍サイクルに並列に連通している。
【0033】
圧縮機筐体10の天部には、冷凍サイクルと接続し高圧冷媒ガスを冷凍サイクルに吐出する吐出部としての吐出管107が接続されている。すなわち、第1、第2吐出孔190S、190Tは、冷凍サイクルに連通している。
【0034】
圧縮機筐体10内には、およそ第2シリンダ121Tの高さまで潤滑油が封入されている。また、潤滑油は、回転軸15の下部に挿入された羽根ポンプ(図示せず)によって圧縮部12を循環し、摺動部品の潤滑及び微小隙間によって圧縮冷媒の圧縮空間を区画している箇所のシールをしている。
【0035】
次に、図1〜図4を参照して、実施例1のロータリ圧縮機1の特徴的な構成について説明する。下端板160S及び上端板160Tの、第1、第2圧縮室133S、133T(図2参照)側の、第1、第2ベーン溝128S、128T近傍には、第1、第2圧縮室133S、133Tに連通する第1、第2吐出孔190S、190Tが設けられている。
【0036】
実施例1のロータリ圧縮機1では、第1、第2吐出孔190S、190Tは、完全に、第1、第2シリンダ内壁123S、123Tの内側に配置されている。第1、第2吐出孔190S、190Tは、円形の輪郭線が、第1、第2シリンダ内壁123S、123T、及び、第1、第2ベーン溝128S、128Tの第1、第2圧縮室133S、133T側の壁面の延長線128Sa、128Taに接するように配置されている。
【0037】
下端板160S及び上端板160Tには、第1、第2吐出孔190S、190Tの第1、第2ベーン溝128S、128T側の輪郭線と、第1、第2シリンダ内壁123S、123Tの輪郭線と、第1、第2ベーン溝128S、128Tの第1、第2圧縮室133S、133T側の壁面の延長線128Sa、128Taと、に夫々沿う線(この線は、前記の輪郭線、延長線と多少ずれていてもよい。)で囲まれた、略三角形の、深さ1〜2mmの凹部190Sa、190Taが形成されている。なお、実施例1では、下端板160S及び上端板160Tの両方に凹部190Sa、190Taを形成したが、下端板160S又は上端板160Tのいずれか一方にのみ凹部190Sa又は190Taを形成するようにしてもよい。下端板160S及び上端板160Tの材質は、潤滑性及び加工性の面から、焼結合金材を用いるのが望ましい。
【0038】
凹部190Sa、190Taは、第1、第2環状ピストン125S、125Tが反時計回りに公転し、第1、第2環状ピストン125S、125Tと第1、第2シリンダ内壁123S、123Tの接点が第1、第2ベーン溝128S、128Tに近づき、第1、第2環状ピストン125S、125Tが第1、第2吐出孔190S、190Tを完全に塞いだ後も、第1、第2圧縮室133S、133Tを第1、第2吐出孔190S、190Tに連通させ、第1、第2圧縮室133S、133T内の圧縮冷媒ガスを第1、第2吐出孔190S、190Tに逃がし、冷媒の過圧縮を防ぎ、過圧縮損失を低減させて、圧縮効率を向上し、COPを向上させる。
【実施例2】
【0039】
次に、図5及び図6を参照して、実施例2のロータリ圧縮機1の特徴的な構成について説明する。図5は、実施例2の第1、第2の圧縮部を示す横断面図であり、図6は、図5のB部拡大図である。下端板160S及び上端板160T(図1参照)の、第1、第2圧縮室133S、133T(図5参照)側の、第1、第2ベーン溝128S、128T近傍には、第1、第2圧縮室133S、133Tに連通する第1、第2吐出孔192S、192Tが設けられている。
【0040】
実施例2のロータリ圧縮機1では、第1、第2吐出孔192S、192Tの一部は、第1、第2シリンダ内壁123S、123Tの外側に配置されている。第1、第2吐出孔192S、192Tは、円形の輪郭線が、第1、第2ベーン溝128S、128Tの第1、第2圧縮室133S、133T側の壁面の延長線128Sa、128Taに接するように配置されている。
【0041】
下端板160S及び上端板160Tには、第1、第2吐出孔192S、192Tの第1、第2ベーン溝128S、128T側の輪郭線と、第1、第2ベーン溝128S、128Tの第1、第2圧縮室133S、133T側の壁面の角部と第1、第2吐出孔192S、192Tの第1、第2シリンダ内壁123S、123Tの外側の輪郭線との接線と、第1、第2ベーン溝128S、128Tの第1、第2圧縮室133S、133T側の壁面の延長線128Sa、128Taと、に夫々沿う線(この線は、前記の輪郭線、接線、延長線と多少ずれていてもよい。)で囲まれた、略三角形の、深さ1〜2mmの凹部192Sa、192Taが形成されている(なお、凹部192Sa又は192Taのいずれか一方のみとしてもよい。)。また、第1、第2シリンダ内壁123S、123Tの、第1、第2吐出孔192S、192Tに重なる部分には、吐出切欠き部123Sa、123Taが設けられている。
【0042】
凹部192Sa、192Taは、第1、第2環状ピストン125S、125Tが反時計回りに公転し、第1、第2環状ピストン125S、125Tと第1、第2シリンダ内壁123S、123Tの接点が第1、第2ベーン溝128S、128Tに近づき、吐出切欠き部123Sa、123Taを通過して、第1、第2吐出孔192S、192Tを完全に塞いだ後も、第1、第2圧縮室133S、133Tを第1、第2吐出孔192S、192Tに連通させ、第1、第2圧縮室133S、133T内の圧縮冷媒ガスを第1、第2吐出孔192S、192Tに逃がし、冷媒の過圧縮を防ぎ、過圧縮損失を低減させて、圧縮効率を向上し、COPを向上させる。
【0043】
なお、実施例1及び2では、2シリンダ型ロータリ圧縮機の実施例を説明したが、本発明のロータリ圧縮機は、単シリンダ型ロータリ圧縮機及び2段圧縮型ロータリ圧縮機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 ロータリ圧縮機
10 圧縮機筐体
11 モータ
12 圧縮部
15 回転軸
25 アキュムレータ
31S 第1低圧連絡管
31T 第2低圧連絡管
101 第1貫通孔
102 第2貫通孔
104 第1吸入管
105 第2吸入管
107 吐出管(吐出部)
111 ステータ
112 ロータ
12S 第1の圧縮部
12T 第2の圧縮部
121S 第1シリンダ(シリンダ)
121T 第2シリンダ(シリンダ)
123S 第1シリンダ内壁(シリンダ内壁)
123Sa 吐出切欠き部
123T 第2シリンダ内壁(シリンダ内壁)
123Ta 吐出切欠き部
124S 第1スプリング穴
124T 第2スプリング穴
125S 第1環状ピストン(環状ピストン)
125T 第2環状ピストン(環状ピストン)
127S 第1ベーン(ベーン)
127T 第2ベーン(ベーン)
128S 第1ベーン溝(ベーン溝)
128T 第2ベーン溝(ベーン溝)
129S 第1圧力導入路
129T 第2圧力導入路
130S 第1作動室(作動室)
130T 第2作動室(作動室)
131S 第1吸入室(吸入室)
131T 第2吸入室(吸入室)
133S 第1圧縮室(圧縮室)
133T 第2圧縮室(圧縮室)
135S 第1吸入孔(吸入孔)
135T 第2吸入孔(吸入孔)
136 冷媒通路
140 中間仕切板
151 下軸受支持部
152S 第1偏芯部(偏芯部)
152T 第2偏芯部(偏芯部)
153 上軸受支持部
160S 下端板(端板)
160T 上端板(端板)
161S 下軸受部
161T 上軸受部
170S 下マフラーカバー
170T 上マフラーカバー
175 通しボルト
180S 下マフラー室
180T 上マフラー室
190S、192S 第1吐出孔(吐出孔)
190Sa、192Sa 凹部
190T、192T 第2吐出孔(吐出孔)
190Ta、192Ta 凹部
200S 第1吐出弁
200T 第2吐出弁
201S 第1吐出弁押さえ
201T 第2吐出弁押さえ
252 アキュムホルダー
253 アキュムバンド
255 システム接続管
R 第1、第2圧力導入路の開口部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
側部に放射状に吸入孔及びベーン溝が設けられた環状のシリンダと、
前記シリンダの端部を閉塞する端板と、
モータにより回転駆動される回転軸の偏芯部に嵌合され前記シリンダのシリンダ内壁に沿って該シリンダ内を公転し前記シリンダ内壁との間に作動室を形成する環状ピストンと、
前記シリンダに設けられたベーン溝内から前記作動室内に突出して前記環状ピストンに当接し該作動室を吸入室と圧縮室とに区画するベーンと、
を備えて成る圧縮部を有するロータリ圧縮機において、
前記端板の前記ベーン溝近傍に前記圧縮室に連通する吐出孔を設け、
前記端板の前記吐出孔の前記ベーン溝側に、前記圧縮室の圧縮冷媒ガスを前記吐出孔に逃がす凹部を設けたことを特徴とするロータリ圧縮機。
【請求項2】
前記吐出孔は、完全に前記シリンダ内壁の内側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項3】
前記吐出孔は、一部が前記シリンダ内壁の外側に配置され、前記シリンダ内壁の前記吐出孔に重なる部分には、吐出切欠き部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項4】
2シリンダ型又は2段圧縮型であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のロータリ圧縮機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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