説明

ロータ及びモータ

【課題】有効磁束の増加を図ることが可能なロータを提供すること。
【解決手段】ロータ11の第1〜第4ロータコア21〜24は、回転軸12の軸方向に沿って配設されている。第1〜第4ロータコア21〜24は、周方向に沿って交互に配置された爪状磁極21b〜24bを有している。各爪状磁極21b〜24bは、軸方向に沿って互いに逆方向に向って延びるように形成されている。第1爪状磁極21bの周方向両端面と径方向内側側面21fとにより、各第1爪状磁極21bの周方向両端に形成される軸方向視三角形状の部分は、極間磁石31の磁束を第1爪状磁極21bの径方向外側側面21e、即ちステータと対向する第1爪状磁極21bの端面に導く磁束誘導部として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロータ及びモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、周方向に複数のフランジ部をそれぞれ有して組み合わされる複数対(例えば2対)の磁極板と、各対の磁極板により挟持され隣合うフランジ部を互いに異なる磁極とする永久磁石を備えた、いわゆる永久磁石界磁のランデル型構造のロータがある(例えば、特許文献1参照)。また、このロータにおいて、各対の磁極板は、同じ極性の円盤部が接するように配置されている。例えば、N極となる2つの円盤部は軸方向両端に配置され、S極となる2つの円盤部は軸方向において隣接して配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−43749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように構成されるロータを備えたモータにおいて、性能の向上(例えば、高出力化)が要求されている。そのため、ロータにおいて、有効磁束の増加が求められている。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、有効磁束の増加を図ることができるロータ及びモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、円盤状のコアベースの外周部から突出するとともに前記対となるロータコア側に向って軸方向に沿って延出形成され、周方向に沿って交互に配置された複数の爪状磁極を有し、軸方向に配列された少なくとも一対のロータコアと、対となるロータコア間に配置され、軸方向に沿って磁化された界磁磁石と、周方向に隣合う前記爪状磁極の間にそれぞれ配設され、各爪状磁極と同極性の面が対向するように磁化された複数の極間磁石と、を備え、前記爪状磁極の先端部には、前記極間磁石の磁束を前記爪状磁極の外周側側面に導く磁束誘導部を形成したものである。
ことを特徴とするロータ。
この発明によれば、極間磁石は周方向に隣り合い互いに異なる磁極として機能する爪状磁極の間の漏れ磁束を低減する。そして、爪状磁極の先端部に形成された磁束誘導部は、極間磁石の磁束を爪状磁極の外周側側面に誘導する。従って、爪状磁極の外周側側面における磁束は、界磁磁石による磁束と極間磁石の磁束を含むことになり、有効磁束量が増加する。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のロータにおいて、前記磁束誘導部は、径方向内側側面の周方向中央を周方向両側よりも径方向外側側面に近づけることにより形成されてなる。
この発明によれば、爪状磁極の径方向内側側面と、その側面と対向するコアベースの外周面との間に空隙が形成され、この空隙により、爪状磁極とコアベースとの間の漏れ磁束が低減される。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のロータにおいて、軸方向に沿って少なくとも二対の前記ロータコアが配列され、軸方向両端の前記ロータコアが有する爪状磁極基端の周方向の幅は、他のロータコアが有する爪状磁極基端の周方向の幅よりも狭く形成されたものである。
軸方向両端に配置されたロータコアにおいて漏れ磁束が生じる。従って、各ロータコアの爪状磁極を全て同じ形状とした場合、環状磁石の磁束の一部が漏れ磁束となる。そして、ロータコアの爪状磁極基端部の幅を、各ロータコアの爪状磁極を全て同じ形状とした場合と比べ、広くすることができる。従って、各ロータコアの爪状磁極を全て同じ形状とした場合と比べ、環状磁石の磁力を多くする、つまり強力な永久磁石を用いることが可能となる。そのため、各爪状磁極における磁束量が多くなる、つまり有効な磁束量を多くすることが可能となる。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のロータにおいて、前記磁束誘導部は、周方向中央部を径方向内側に向って突出して形成されてなる。
この発明によれば、径方向内側に突出する部分では磁気飽和が生じるため、爪状磁極とコアベースとの間の漏れ磁束が低減される。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のうちの何れか一項に記載のロータを備えたモータである。
この発明によれば、有効磁束量の増加を図ることが可能なロータを備えたモータを提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、有効磁束の増加を図ることが可能なロータ及びモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態のモータの概略断面図。
【図2】第一実施形態のロータの概略斜視図。
【図3】(a)(b)はロータコア,極間磁石の説明図。
【図4】(a)(b)はロータコアの概略斜視図。
【図5】第一実施形態のロータの概略断面図。
【図6】(a)〜(d)は爪状磁極の別の形態を示す説明図。
【図7】(a)(b)は第二実施形態のロータの概略斜視図。
【図8】(a)(b)はロータコア,極間磁石の説明図。
【図9】第二実施形態のロータの概略断面図。
【図10】(a)(b)は爪状磁極の別の形態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、モータ1のモータケース2は、有底筒状に形成されたハウジング3と、該筒状ハウジング3のフロント側(図1中、左側)の開口部を閉塞するエンドプレート4とを有している。また、ハウジング3のリア側(図1中、右側)の端部には、回路基板等の電源回路を収容したボックス5が取着されている。ハウジング3の内周面にはステータ6が固定されている。ステータ6は、径方向内側に延びる複数のティースを有する電機子コア7と、電機子コア7のティースに巻装されたセグメントコンダクタ(SC)巻線8とを有する。ロータ11は回転軸12を有し、ステータ6の内側に配置されている。回転軸12は非磁性金属であって、ハウジング3の底部3aとフロントエンドプレート4にそれぞれ配設された軸受13,14により回転可能に支持されている。
【0014】
(第一実施形態)
図2に示すように、ロータ11は、回転軸12に沿って配設された第1〜第4ロータコア21〜24を有している。第1ロータコア21と第2ロータコア22は対をなすように組み合わされる。同様に、第3ロータコア23と第4ロータコア24は対を成すように組み合わされる。
【0015】
先ず、第1ロータコア21と第2ロータコア22を説明する。
図3(a)に示すように、第1ロータコア21は、回転軸12に取着された第1コアベース21aを有している。この第1コアベース21aは、円盤状に形成されている。第1ロータコア21は、第1コアベース21aの外周部から径方向外側に突出する複数(本実施形態では5つ)の第1爪状磁極21bを有している。5つの第1爪状磁極21bは、第1コアベース21aの周方向に沿って等間隔に配列されている。
【0016】
図3(b)に示すように、第2ロータコア22は回転軸12と一体回転可能に取着された第2コアベース22aを有している。この第2コアベース22aは、円盤状に形成されている。第2ロータコア22は、第2コアベース22aの外周部から径方向外側に突出する複数(本実施形態では5つ)の第2爪状磁極22bを有している。5つの第2爪状磁極22bは、第2コアベース22aの周方向に沿って等間隔に配列されている。
【0017】
図4(a)に示すように、第1爪状磁極21bは、第1コアベース21aから径方向外側に向って延びる突出部21cと、突出部21cの軸方向端面の1つから軸方向に沿って延びる爪部21dを有している。図4(b)に示すように、第2爪状磁極22bは、第2コアベース22aから径方向外側に向って延びる突出部22cと、突出部22cの軸方向端面の1つから軸方向に沿って延びる爪部22dを有している。
【0018】
図5に示すように、第1ロータコア21と第2ロータコア22は、それぞれの爪状磁極21b,22bが軸方向に沿って互いに逆方向に向って突出するように組み合わせられる。そして、図2に示すように、第1ロータコア21の爪状磁極21bと第2ロータコア22の爪状磁極22bは、ロータ11の周方向に沿って交互に配置される。
【0019】
そして、第1爪状磁極21bの爪部22dは、第2コアベース22aと対向する第1コアベース21aの面から、第2コアベース22aにおいて第1コアベース21aと反対側の面まで延びるように形成されている。同様に、第2爪状磁極22bの爪部22dは、第1コアベース21aと対向する第2コアベース22aの面から、第1コアベース21aにおいて第2コアベース22aと反対側の面まで延びるように形成されている。
【0020】
図5に示すように、第1コアベース21aと第2コアベース22aの間には、環状磁石28が配置されている。本実施形態の環状磁石28は円環状に形成されている。環状磁石28の外径φ1は、第1コアベース21aと第2コアベース22aの外径φ2と同じに設定されている。そして、第1ロータコア21の第1コアベース21aと、第2ロータコア22の第2コアベース22aは、回転軸12の軸方向において、環状磁石28を挟持する。
【0021】
環状磁石28は、表裏方向(回転軸12の軸方向)に沿って着磁された平板状の永久磁石である。そして、環状磁石28の第1の主面(例えば、N極の面)は第1コアベース21aと密着する。環状磁石28の第2の主面(例えばS極の面)は第2コアベース22aと密着する。従って、環状磁石28は、第1ロータコア21の爪状磁極21bを第1の磁極(N極)として機能させ、第2ロータコア22の爪状磁極22bを第2の磁極(S極)として機能させる。
【0022】
図3(a)に示すように、突出部21cは、軸方向視円弧状に形成されている。周方向における各第1爪状磁極21bの幅(外周側の弧の長さ)L3は、周方向に隣り合う2つの第1爪状磁極21bの間隔L4より小さく設定されている。図4(a)に示すように、周方向に面した爪部21dの2つの側面は、周方向に面した突出部21cの2つの側面とそれぞれ同一平面上となるように形成されている。また、爪部21dの径方向外側側面21eは、突出部21cの径方向外側側面と、同じ円弧上となるように形成されている。そして、径方向内側の爪部21d側面21fは、爪部21dの周方向両端よりも周方向中央部が爪部21dの径方向外側側面21eに近づくように形成されている。なお、本実施形態では、図3(b)に示すように、径方向内側側面21fは、2つの平面により形成されている。
【0023】
このように形成された径方向内側側面21fと、この径方向内側側面21fと径方向に対向する第2コアベース22aの外周面22gは、軸方向に沿って延びる略三角柱状の空隙25を形成する。そして、径方向内側側面21fの周方向中心、即ち2つの平面の交線、つまり、空隙25の径方向外側頂点は、第1爪状磁極21bの中心線(爪状磁極21bの周方向中心と回転軸12の軸中心とを結ぶ直線)上にある。
【0024】
図3(b)に示すように、突出部22cは、軸方向視円弧状に形成されている。周方向における各第2爪状磁極22bの幅(外周側の弧の長さ)L5は、周方向に隣り合う2つの第2爪状磁極22bの間隔L6より小さく設定されている。図4(b)に示すように、周方向に面した爪部22dの2つの側面は、周方向に面した突出部22cの2つの側面とそれぞれ同一平面上となるように形成されている。また、爪部22dの径方向外側側面22eは、突出部22cの径方向外側側面と、同じ円弧上となるように形成されている。そして、径方向内側の爪部22d側面22fは、爪部22dの周方向両端よりも周方向中央部が爪部22dの径方向外側側面22eに近づくように形成されている。なお、本実施形態では、図3(a)に示すように、径方向内側側面22fは、2つの平面により形成されている。このように形成された径方向内側側面22fと、この径方向内側側面22fと径方向に対向する第1コアベース21aの外周面21gは、軸方向に沿って延びる略三角柱状の空隙26を形成する。そして、径方向内側側面22fの周方向中心、即ち2つの平面の交線、つまり、空隙26の径方向外側頂点は、第2爪状磁極22bの中心線(爪状磁極22bの周方向中心と回転軸12の軸中心とを結ぶ直線)上にある。
【0025】
図5に示すように、回転軸12の軸方向両端に配置された第1ロータコア21と第4ロータコア24は互いに同じ形状に形成されている。第1ロータコア21と第4ロータコア24の間に配置された第2ロータコア22と第3ロータコア23は互いに同じ形状に形成されている。
【0026】
第3ロータコア23と第4ロータコア24との間には、環状磁石29が配置されている。環状磁石29は、上記の環状磁石28と同じ形状に形成されるとともに磁化されている。
【0027】
そして、環状磁石29の第4の主面(例えば、N極の面)は第4コアベース24aと密着する。環状磁石29の第3の主面(例えばS極の面)は第3コアベース23aと密着する。従って、環状磁石29は、第4ロータコア24の爪状磁極24bを第4の磁極(N極)として機能させ、第3ロータコア23の爪状磁極23bを第3の磁極(S極)として機能させる。
【0028】
図2に示すように、第1ロータコア21と第4ロータコア24は、それぞれの爪状磁極21b,24bが回転軸12の軸方向に沿って配列されるように、回転軸12に取着されている。また、第1ロータコア21と第4ロータコア24は、それぞれの爪状磁極21b,24bが互いに逆方向に向って延びるように配置されている。従って、第1ロータコア21の爪状磁極21b先端と、第4ロータコア24の爪状磁極24b先端は、互いに当接している。
【0029】
同様に、第2ロータコア22と第3ロータコア23は、それぞれの爪状磁極22b,23bが回転軸12の軸方向に沿って配列されるように、回転軸12に取着されている。そして、第2ロータコア22と第3ロータコア23は、それぞれの爪状磁極22b,23bが互いに逆方向に向って延びるように配置されている。従って、第2ロータコア22の爪状磁極22b基端と、第3ロータコア23の爪状磁極23b基端は、互いに当接している。
【0030】
図3(a)に示すように、周方向に隣合う第1爪状磁極21bと第2爪状磁極22bとの間には、極間磁石31が配置されている。各極間磁石31は、回転軸12の軸方向視、略径方向に沿って延びる長方形状に形成されている。図3(b)に示すように、各極間磁石31の略径方向の長さは、第1爪状磁極21bの周方向側面の径方向の長さとほぼ等しい。また、各極間磁石31は、図2に示すように、回転軸12の径方向視長方形状に形成されている。つまり、各極間磁石31は直方体状に形成されている。
【0031】
図2に示すように、各極間磁石31は、回転軸12の軸方向に沿って延びるように形成されている。各極間磁石31の長さは、回転軸12の軸方向において露出する2つの端面、即ち第1ロータコア21の軸方向外側端面から、第4ロータコア24の軸方向外側端面までの距離と等しい。
【0032】
そして、図3(a)に示すように、各極間磁石31は、ロータ11の径方向に対して角度を持つように配置されている。即ち、各ロータコア21〜24の爪状磁極は、爪状磁極間にそれぞれ配置される極間磁石31が、各ロータコア21〜24の径方向に対して角度を持つようにされている。例えば、図3(a)に示すように、第1爪状磁極21bは、周方向両側に隣接する2つの極間磁石31の中心を通る線分(一点鎖線にて示す)の交点O1が、ロータ11の回転中心、即ち回転軸12の中心よりも径方向外側であって、第1爪状磁極21bに近づく位置となるように形成されている。なお、この交点O1は、周方向における爪状磁極21bの中心と回転軸12の中心を結ぶ中心線上に設定されている。つまり、周方向において爪状磁極21bと隣接する2つの極間磁石31は、爪状磁極21bの中心線に対して対称となるように、爪状磁極21bの周方向両側面の角度が設定されている。
【0033】
また、図3(b)に示すように、第2爪状磁極22bは、周方向両側に隣接する2つの極間磁石31の中心を通る線分(一点鎖線にて示す)の交点O2が、ロータ11の回転中心、即ち回転軸12の中心よりも径方向外側であって、第2爪状磁極22bから遠ざかる位置となるように形成されている。なお、この交点O2は、周方向における爪状磁極22bの中心と回転軸12の中心を結ぶ中心線上に設定されている。つまり、周方向において爪状磁極22bと隣接する2つの極間磁石31は、爪状磁極22bの中心線に対して対称となるように、爪状磁極22bの周方向両側面の角度が設定されている。
【0034】
従って、第1爪状磁極21b基端部の周方向の幅(図3(a)参照)は、第2爪状磁極22b基端部の周方向の幅(図3(b)参照)よりも狭くなっている。具体的には、第1爪状磁極と第2爪状磁極を互いに同じ形状としたときの基端部の幅を基準幅L0とする。第1爪状磁極21b基端部の幅L1は、基準幅L0よりもΔLだけ狭い。一方、第2爪状磁極22b基端部の幅L2は、基準幅L0よりもΔLだけ広い。
【0035】
各極間磁石31は、周方向に爪状磁極と隣接する面が、隣接する爪状磁極と同じ極性となるように磁化されている。例えば、各極間磁石31は、回転軸12の軸中心と直交する平面を通り、その平面上のそれぞれの中心と直交する方向に沿って磁化されている。そして、極間磁石31のN極は、第1爪状磁極21bに接触し、極間磁石31のS極は、第2爪状磁極22bに接触している。
【0036】
第3ロータコア23の爪状磁極23bは、第2ロータコア22の爪状磁極22bと同様に形成されている。また、第4ロータコア24の爪状磁極24bは、第1ロータコア21の爪状磁極21bと同様に形成されている。従って、第3ロータコア23の爪状磁極23bと第4ロータコア24の爪状磁極24bの詳細な説明及び図面を省略する。
【0037】
次に、上記のモータ1の作用を説明する。
モータ1は、回路収容ボックス5内の電源回路を介してセグメントコンダクタ(SC)巻線8に駆動電流が供給されると、ステータ6でロータ11を回転させるための磁界が発生され、ロータ11が回転駆動される。
【0038】
周方向に隣合う第1爪状磁極21bと第2爪状磁極22bの間に配置された極間磁石31において、極間磁石31のN極は、同じ極性の第1爪状磁極21bと接し,S極は第2爪状磁極22bと接する。そして、第1爪状磁極21bの周方向側端面の略径方向の長さは、極間磁石31の略径方向の長さとほぼ等しい。そして、極間磁石31のN極は、環状磁石28によりN極として機能する第1爪状磁極21bの周方向端面に当接している。従って、極間磁石31の磁束は、第1爪状磁極21bの周方向端面から第1爪状磁極21b内に入り、第1爪状磁極21bの径方向外側側面21eからステータ6(図1参照)に至る。つまり、第1爪状磁極21bとステータ6との間に発生する磁束は、環状磁石28による磁束と、極間磁石31による磁束を含む。即ち、第1爪状磁極21bの周方向両端面と径方向内側側面21fとにより、各第1爪状磁極21bの周方向両端に形成される軸方向視三角形状の部分は、極間磁石31の磁束を第1爪状磁極21bの径方向外側側面21e、即ちステータ6と対向する第1爪状磁極21bの端面に導く磁束誘導部として機能する。このように、ロータ11からステータ6に向う磁束の量が、環状磁石28のみの磁束の量よりも増加する。
【0039】
また、周方向に隣合う第1爪状磁極21bと第2爪状磁極22bの間に配置された極間磁石31は、環状磁石28により機能する爪状磁極の極性と同じ極性の面が接触する。従って、各極間磁石31は、第1爪状磁極21bから第2爪状磁極22bに向う直接的な磁束の形成を阻害する。この結果、第1爪状磁極21bと第2爪状磁極22bの間の直接的な漏洩磁束が減少する。
【0040】
なお、環状磁石28によりS極として機能する第2爪状磁極22bの爪部22dの径方向内側側面22fは、第1爪状磁極21bの爪部21dと同様に形成されている。従って、第2爪状磁極22bの周方向両端面と径方向内側側面22fとにより、各第2爪状磁極22bの周方向両端に形成される軸方向視三角形状の部分は、ステータ6と対向する第2爪状磁極22bの端面、即ち第2爪状磁極22bの径方向外側側面22eから入る磁束を極間磁石31に導く磁束誘導部として機能する。
【0041】
第1爪状磁極21bの径方向内側側面21fは、周方向両側端部に対して周方向中央部分が第1爪状磁極21bの径方向外側側面21eに近づくように形成されている。そして、この径方向内側側面21fと、対向する第2コアベース22aの外周面22gは、空隙25を形成する。この空隙25は、N極として機能する第1爪状磁極21bから、環状磁石28のS極に当接する第2コアベース22aの外周面22gに向う磁束の形成を抑制する。従って、空隙25は、第1爪状磁極21bから第2コアベース22aに向う漏れ磁束を低減する。
【0042】
図3(a)及び図3(b)に示すように、第1爪状磁極21b基端部の周方向の幅は、各ロータコア21〜24の爪状磁極を同一形状としたときの基準幅よりも狭く設定され、第2爪状磁極22b基端部の周方向の幅は基準幅よりも広く設定されている。従って、周方向に隣合う第1爪状磁極21bと第2爪状磁極22bの間に配置された各極間磁石31の中心線の交点は、各爪状磁極21b,22bの中心線の交点、即ちロータ11の回転中心からずれている。従って、ロータ11を回転したとき、各極間磁石31は、遠心力により、第1爪状磁極21bの周方向側面に押し付けられる。このため、ロータ11から各極間磁石31の抜け出しが防止される。
【0043】
第1爪状磁極21b基端部の周方向の幅は、各ロータコア21〜24の爪状磁極を同一形状としたときの基準幅よりも狭く設定されている。従って、基端部の幅を基準幅で形成したロータコアと比べ、第1ロータコア21と第4ロータコア24の体積が小さくなる。即ち使用材料(例えば鉄材)の量が少なくなる。また、体積が小さいため、ロータ11が軽くなる。
【0044】
上記のように、第1ロータコア21と第2ロータコア22とにおける作用を説明した。第3ロータコア23は第2ロータコア22と同じ形状であり、第4ロータコア24は第1ロータコア21と同じ形状である。従って、第3ロータコア23と第4ロータコア24においても、上記と同様の作用を奏する。
【0045】
図5に示すように、同じ極性(本実施形態ではN極)として機能する爪状磁極21b,24bをそれぞれ有するロータコア21,24のコアベース21a,24aは、軸方向両側において露出している。従って、これらのコアベース21a,24aから爪状磁極21b,24bに向わない磁束(漏れ磁束)が生じる。一方、S極として機能する爪状磁極22b,23bをそれぞれ有するロータコア22,23のコアベース22a,23aは、互いに隣接するとともに、軸方向外側に環状磁石28,29が隣接するため、露出していない。従って、これらのコアベース22a,23aにおける漏れ磁束は生じない。これにより、コアベース21a,24aから爪状磁極21b,24bに向う磁束量と、爪状磁極22b,23bからコアベース22a,23aに向う磁束量との間に差が生じる。
【0046】
[各ロータコア21〜24の爪状磁極を互いに同じ形状に形成した場合]
各ロータコア21〜24の爪状磁極が互いに同じ形状であるため、内側に配置されたロータコア22,23の爪状磁極基端部を通過可能な磁束量により、環状磁石28,29の磁力が設定される。環状磁石28,29の発する磁束量を多くしても、ロータコア22,23の爪状磁極基端部において磁気飽和となり、回転に有効な磁束とならないからである。このとき、軸方向両端に配置されたロータコア21,24において漏れ磁束が生じるため、これらのロータコア21,24の爪状磁極基端部では磁気飽和しない。
【0047】
[本実施形態の爪状磁極21b〜24bの場合]
図3(a)及び図3(b)に示すように、爪状磁極21b,24b基端部の幅は、基準幅(各ロータコア21〜24の爪状磁極を互いに同じ形状としたときの基端部の幅)よりも狭く、爪状磁極22b,23b基端部の幅は、基準幅よりも広い。従って、基準幅の爪状磁極を備えたロータコアに用いられる環状磁石を用いた場合、爪状磁極22b,23bにおいて磁気飽和が生じない。つまり、環状磁石の磁力を多くすることができる。なお、この環状磁石を用いた場合、本実施形態の爪状磁極21b,24b基端部においても、磁気飽和が生じないように、爪状磁極21b,24b基端部の幅が設定される。例えば、各爪状磁極21b〜24b基端部の幅と、環状磁石28,29の磁力は、各爪状磁極21b〜24bにおいて磁気飽和が生じるように設定される。このように磁力を多くした環状磁石28,29を用いたロータ11は、各爪状磁極を同じ形状としたロータと比べ、爪状磁極21b〜24bにおける磁束量が増加する。つまり、ロータ11の回転に有効な磁束量が増加する。
【0048】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1a)ロータ11の第1〜第4ロータコア21〜24は、回転軸12の軸方向に沿って配設されている。第1,第2ロータコア21,22の爪状磁極21b,22bは、コアベース21a,22aの外周部から径方向外側に突出形成され、周方向に沿って交互に配置されている。各爪状磁極21b,22bは、軸方向に沿って互いに逆方向に向って延びるように形成されている。同様に、第3,第4ロータコア23,24の爪状磁極23b,24bは、コアベース23a,24aの外周部から径方向外側に突出形成され、周方向に沿って交互に配置されている。各爪状磁極23b,24bは、軸方向に沿って互いに逆方向に向って延びるように形成されている。
【0049】
第1爪状磁極21bの周方向両端面と径方向内側側面21fとにより、各第1爪状磁極21bの周方向両端に形成される軸方向視三角形状の部分は、極間磁石31の磁束を第1爪状磁極21bの径方向外側側面21e、即ちステータ6と対向する第1爪状磁極21bの端面に導く磁束誘導部として機能する。このように、ロータ11からステータ6に向う磁束の量を、環状磁石28のみの磁束の量よりも増加させる、すなわち有効磁束量を増加することができる。
【0050】
環状磁石28によりS極として機能する第2爪状磁極22bの爪部22dの径方向内側側面22fは、第1爪状磁極21bの爪部21dと同様に形成されている。従って、第2爪状磁極22bの周方向両端面と径方向内側側面22fとにより、各第2爪状磁極22bの周方向両端に形成される軸方向視三角形状の部分は、ステータ6と対向する第2爪状磁極22bの端面、即ち第2爪状磁極22bの径方向外側側面22eから入る磁束を極間磁石31に導く磁束誘導部として機能する。従って、ロータ11における有効な磁束量を増加させることができる。
【0051】
(1b)爪状磁極21b〜24bとコアベース21a〜24aとの間に磁石を設けることなく、直接的な磁束を低減することができる。これにより、有効な磁束量を多くすることができる。また、爪状磁極21b〜24bとコアベース21a〜24aとの間の磁石を必要としないため、その分、部品点数や製造工程の増加を抑制することができる。
【0052】
(1c)対となる第1及び第2ロータコア21,22のコアベース21a,22a間には、環状磁石28が配設され、この環状磁石28はコアベース21a,22aにより挟持されている。同様に、対となる第3及び第4ロータコア23,24のコアベース23a,24a間には、環状磁石29が配設され、この環状磁石29はコアベース23a,24aにより挟持されている。
【0053】
軸方向両端に配置されたロータコア21,24の爪状磁極21b,24b基端部の周方向の幅は、ロータコア22,23の爪状磁極22b,23b基端部の幅よりも狭く形成されている。従って、各ロータコア21〜24の爪状磁極を全て同じ形状とした場合と比べ、ロータコア22,23の爪状磁極22b,23b基端部の幅が広くなる。
【0054】
軸方向両端に配置されたロータコア21,24において漏れ磁束が生じる。従って、各ロータコアの爪状磁極を全て同じ形状とした場合、環状磁石の磁束の一部が漏れ磁束となる。そして、ロータコア22,23の爪状磁極22b,23b基端部の幅を、各ロータコア21〜24の爪状磁極を全て同じ形状とした場合と比べ、広くすることができる。従って、各ロータコア21〜24の爪状磁極を全て同じ形状とした場合と比べ、環状磁石の磁力を多くする、つまり強力な永久磁石を用いることができる。その結果、各爪状磁極21b〜24bにおける磁束量が多くなる、つまり有効な磁束量を多くすることが可能となり、ひいては高出力化を図ることができる。
【0055】
(1d)周方向に隣合う爪状磁極21b,22bの間に極間磁石31が配置されている。各極間磁石31は、周方向に隣合う爪状磁極21b,22bと同極性が対向するように磁化されている。従って、極間磁石31の磁束は、爪状磁極21b,22bとステータ6との間の磁束に含まれる。これにより、有効な磁束量を多くすることができる。また、極間磁石31によって、爪状磁極21b,22bの間における直接的な磁束の発生を抑制することができる。これにより、有効な磁束量を多くすることができる。
【0056】
(1e)極間磁石31は、第1ロータコア21の端面から第4ロータコア24の端面まで延びるように形成されている。従って、各ロータコア21〜24に対応する極間磁石を容易する場合と比べ、ロータ11を構成する部品の点数を少なくすることができる。
【0057】
(1f)爪状磁極21b,22bの間(爪状磁極23b,24bの間)に配置された極間磁石31は、その中心線が回転軸12の軸中心を通る直線に対して角度を成すように、各爪状磁極21b〜24bが形成されている。従って、ロータ11を回転したとき、各極間磁石31は、遠心力により、第1爪状磁極21bの周方向側面に押し付けられる。このため、ロータ11から各極間磁石31の抜け出しを防止することができる。
【0058】
なお、上記の実施形態は、以下のように変更しても良い。
・上記形態では、図3(a)及び図3(b)に示すように、爪状磁極21b,22bの径方向内側側面21f,22fを、2つの平面により形成したが、内周側側面の形状を適宜変更してもよい。例えば、図6(a)に示すように、径方向内側側面22fを、コアベースと対向する平坦な部分を含む形状としてもよい。また、図6(b)に示すように、径方向内側側面22fを、軸方向視円弧状の曲面としてもよい。また、図6(c)に示すように、径方向内側側面22fの長さを、例えばロータ11の回転方向等に応じて、2つの平面の周方向の長さを互いに異なる値に設定してもよい。また、図6(d)に示すように、径方向内側側面22fの中央部を、径方向外側側面22eまで達するように形成してもよい。なお、図6(a)〜(d)は第2爪状磁極22bについて図示したが、第1,第3,第4爪状磁極21b,23b,24bについても同様に変更可能であることは言うまでもない。
【0059】
・上記形態では、各極間磁石31を、第1ロータコア21の端面から第4ロータコア24の端面まで延びるように形成したが、軸方向に沿って複数の極間磁石を配置するようにしてもよい。
【0060】
(第二実施形態)
図8(a)に示すように、第1ロータコア41は、回転軸12に取着された第1コアベース41aを有している。この第1コアベース41aは、円盤状に形成されている。第1ロータコア41は、第1コアベース41aの外周部から径方向外側に突出する複数(本実施形態では5つ)の第1爪状磁極41bを有している。5つの第1爪状磁極41bは、第1コアベース41aの周方向に沿って等間隔に配列されている。
【0061】
図8(b)に示すように、第2ロータコア42は回転軸12と一体回転可能に取着された第2コアベース42aを有している。この第2コアベース42aは、円盤状に形成されている。第2ロータコア42は、第2コアベース42aの外周部から径方向外側に突出する複数(本実施形態では5つ)の第2爪状磁極42bを有している。5つの第2爪状磁極42bは、第2コアベース42aの周方向に沿って等間隔に配列されている。
【0062】
図7(b)に示すように、第1爪状磁極41bは、第1コアベース41aから径方向外側に向って延びる突出部41cと、突出部41cの軸方向端面の1つから軸方向に沿って延びる爪部41dを有している。図4(b)に示すように、第2爪状磁極42bは、第2コアベース42aから径方向外側に向って延びる突出部42cと、突出部42cの軸方向端面の1つから軸方向に沿って延びる爪部42dを有している。
【0063】
第1ロータコア41と第2ロータコア42は、それぞれの爪状磁極41b,42bが軸方向に沿って互いに逆方向に向って突出するように組み合わせられる。そして、図7(a)に示すように、第1ロータコア41の爪状磁極41bと第2ロータコア42の爪状磁極42bは、ロータ40の周方向に沿って交互に配置される。
【0064】
そして、第1爪状磁極41bの爪部42dは、第2コアベース42aと対向する第1コアベース41aの面から、第2コアベース42aにおいて第1コアベース41aと反対側の面まで延びるように形成されている。同様に、第2爪状磁極42bの爪部42dは、第1コアベース41aと対向する第2コアベース42aの面から、第1コアベース41aにおいて第2コアベース42aと反対側の面まで延びるように形成されている。
【0065】
図9に示すように、第1コアベース41aと第2コアベース42aの間には、円環状に形成された環状磁石28が配置されている。第1コアベース41aと第2コアベース42aの外径は、環状磁石28の外径と同じに設定されている。そして、第1ロータコア41の第1コアベース41aと、第2ロータコア42の第2コアベース42aは、回転軸12の軸方向において、環状磁石28を挟持する。
【0066】
環状磁石28は、表裏方向(回転軸12の軸方向)に沿って着磁された平板状の永久磁石である。そして、環状磁石28の第1の主面(例えば、N極の面)は第1コアベース41aと密着する。環状磁石28の第2の主面(例えばS極の面)は第2コアベース42aと密着する。従って、環状磁石28は、第1ロータコア41の爪状磁極41bを第1の磁極(N極)として機能させ、第2ロータコア42の爪状磁極42bを第2の磁極(S極)として機能させる。
【0067】
図8(a)に示すように、突出部41cは、周方向の幅が径方向外側に向って徐々に狭くなる軸方向視略台形状に形成されている。突出部41cの外周側側面は、軸方向視円弧状の曲面に形成されている。周方向における各突出部41cの外周側側面の長さ(外周側の弧の長さ)は、周方向に隣り合う2つの突出部41c外周端の間隔より小さく設定されている。
【0068】
図8(b)に示すように、突出部42cは、周方向の幅が径方向外側に向って徐々に狭くなる軸方向視略台形状に形成されている。突出部42cの外周側側面は、軸方向視円弧状の曲面に形成されている。周方向における各突出部42cの外周側側面の長さ(外周側の弧の長さ)は、周方向に隣り合う2つの突出部42c外周端の間隔より小さく設定されている。
【0069】
図8(b)に示すように、第1ロータコア41の爪部41dは、組み合わせられる第2ロータコア42の突出部42cに対応する形状に形成されている。突出部42cは周方向の幅が径方向外側に向って徐々に狭くなる略台形状に形成されている。爪部41dは、この突出部42cの周方向両側側面に対応し、各側面と平行な面を有する形状に形成されている。図8(a)及び図8(b)に示すように、爪部41dの径方向外側部分は、突出部42c(突出部41c)の径方向外側部分と等しい円弧状に形成されている。また、爪部41dの径方向内側部分は、台形状の突出部42cに対応し、径方向内側に向って突出する略三角形状に形成されている。従って、爪部41dの周方向の幅は、径方向外側よりも径方向内側に向って狭くなるように形成されている。そして、爪部41dの三角状部分の周方向両側の2つの側面41fは、周方向にそれぞれ隣合う第2ロータコア42の突出部42cの周方向側面と平行な平面状に形成されている。
【0070】
図8(a)に示すように、第2ロータコア42の爪部42dは、組み合わせられる第1ロータコア41の突出部41cに対応する形状に形成されている。突出部41cは周方向の幅が径方向外側に向って徐々に狭くなる略台形状に形成されている。爪部42dは、この突出部41cの周方向両側側面に対応し、各側面と平行な面を有する形状に形成されている。図8(a)及び図8(b)に示すように、爪部42dの径方向外側部分は、突出部41c(突出部42c)の径方向外側部分と等しい円弧状に形成されている。また、爪部42dの径方向内側部分は、台形状の突出部41cに対応し、径方向内側に向って突出する略三角形状に形成されている。従って、爪部42dの周方向の幅は、径方向外側よりも径方向内側に向って狭くなるように形成されている。そして、爪部42dの三角状部分の周方向両側の2つの側面42fは、周方向にそれぞれ隣合う第1ロータコア41の突出部41cの周方向側面と平行な平面状に形成されている。
【0071】
図9に示すように、第3ロータコア43と第4ロータコア44との間には、環状磁石29が配置されている。環状磁石29は、上記の環状磁石28と同じ形状に形成されるとともに磁化されている。従って、第一実施形態と同様に、環状磁石29は、第4ロータコア44の爪状磁極44bを第4の磁極(N極)として機能させ、第3ロータコア43の爪状磁極43bを第3の磁極(S極)として機能させる。
【0072】
図7(a)に示すように、第1ロータコア41と第4ロータコア44は、それぞれの爪状磁極41b,44bが回転軸12の軸方向に沿って配列されるように、回転軸12に取着されている。また、第1ロータコア41と第4ロータコア44は、それぞれの爪状磁極41b,44bが互いに逆方向に向って延びるように配置されている。従って、第1ロータコア41の爪状磁極41b先端と、第4ロータコア44の爪状磁極44b先端は、互いに当接している。
【0073】
同様に、第2ロータコア42と第3ロータコア43は、それぞれの爪状磁極42b,43bが回転軸12の軸方向に沿って配列されるように、回転軸12に取着されている。そして、第2ロータコア42と第3ロータコア43は、それぞれの爪状磁極42b,43bが互いに逆方向に向って延びるように配置されている。従って、第2ロータコア42の爪状磁極42b基端と、第3ロータコア43の爪状磁極43b基端は、互いに当接している。
【0074】
周方向に隣合う2つの爪状磁極の間には極間磁石が配設されている。本実施形態において、爪状磁極は、突出部と爪部とから構成されている。そして、図8(a),図8(b)に示すように、周方向における突出部の幅は、基端部に対して外周端が狭い、略台形状に形成され、周方向に隣合う突出部の間に爪部が配置される。その爪部の径方向内側部分は、突出部の周方向側面に対応する略三角形状に形成されている。
【0075】
従って、極間磁石は、周方向に沿って隣合う突出部と爪部との間にそれぞれ配設されている。即ち、図2に示すように、第1ロータコア21の突出部21cと第2ロータコア22の爪部22dとの間に第1極間磁石51aが配設され、第1ロータコア21の爪部21dと第2ロータコア22の突出部22cの間に第2極間磁石51bが配設されている。同様に、第4ロータコア24の爪部24dと第3ロータコア23の突出部23cの間に第3極間磁石51cが配設され、第4ロータコア24の突出部24cと第3ロータコア23の爪部23dとの間に第4極間磁石51dが配設されている。
【0076】
なお、上記したように、第1ロータコア41の爪状磁極41b先端と第4ロータコア44の爪状磁極44b先端、即ち第1ロータコア41の爪部41dと第4ロータコア44の爪部44dは、軸方向に沿って配設されている。従って、両爪部41d,44dの内周側側面は、同一平面上にある。また、第2ロータコア42の爪状磁極42b基端と第3ロータコア43の爪状磁極43b基端、即ち、第2ロータコア42の突出部42cと第3ロータコア43の突出部43cは、軸方向に沿って配設されている。従って、両突出部42c、43cの周方向側面は同一平面上にある。このため、第2極間磁石51bと第3極間磁石51cは、一体形成されている。
【0077】
各極間磁石51a〜51dは、軸方向視平行四辺形状に形成されている。また、各極間磁石51a〜51dは、径方向視長方形状に形成されている。そして、各極間磁石51a〜51dは、ロータ40の径方向に対して角度を持つように配置されている。即ち、各ロータコア41〜44の爪状磁極は、爪状磁極間にそれぞれ配置される極間磁石51a〜51dが、各ロータコア41〜44の径方向に対して角度を持つようにされている。
【0078】
例えば、図8(b)に示すように、第1爪状磁極41bは、周方向両側に隣接する2つの極間磁石51aの中心を通る線分(一点鎖線にて示す)の交点O1が、ロータ40の回転中心、即ち回転軸12の中心よりも径方向外側であって、第1爪状磁極41bに近づく位置となるように形成されている。なお、この交点O1は、周方向における爪状磁極41bの中心と回転軸12の中心を結ぶ中心線上に設定されている。つまり、周方向において爪状磁極41bと隣接する2つの極間磁石51aは、爪状磁極41bの中心線に対して対称となるように、爪状磁極41bの周方向両側面の角度が設定されている。
【0079】
同様に、図8(a)に示すように、第2爪状磁極42bは、周方向両側に隣接する2つの極間磁石51bの中心を通る線分(一点鎖線にて示す)の交点O2が、ロータ40の回転中心、即ち回転軸12の中心よりも径方向外側であって、第2爪状磁極42bから遠ざかる位置となるように形成されている。なお、この交点O2は、周方向における爪状磁極42bの中心と回転軸12の中心を結ぶ中心線上に設定されている。つまり、周方向において爪状磁極42bと隣接する2つの極間磁石51bは、爪状磁極42bの中心線に対して対称となるように、爪状磁極42bの周方向両側面の角度が設定されている。
【0080】
各極間磁石51a〜51dは、周方向に爪状磁極と隣接する面が、隣接する爪状磁極と同じ極性となるように磁化されている。そして、極間磁石51a,51bのN極は、第1爪状磁極41bに接触し、極間磁石51a,51bのS極は、第2爪状磁極42bに接触している。同様に、極間磁石51c,51dのN極は、第4爪状磁極44bに接触し、極間磁石51c,51dのS極は、第3爪状磁極43bに接触している。
【0081】
次に、上記のロータ40の作用を説明する。
周方向に隣合う第1爪状磁極41bと第2爪状磁極42bの間に配置された極間磁石51a,51bにおいて、極間磁石51a,51bのN極は、同じ極性の第1爪状磁極41bと接し,S極は第2爪状磁極42bと接する。そして、第1爪状磁極41bの爪部41dは、周方向中心が径方向内側に突出する略三角形状に形成されている。従って、極間磁石51aの磁束は、第1爪状磁極41bの爪部41dから第1爪状磁極41b内に入り、第1爪状磁極41bの外周面41eからステータ6(図1参照)に至る。つまり、第1爪状磁極41bとステータ6との間に発生する磁束は、環状磁石28による磁束と、極間磁石51aによる磁束を含む。即ち、爪部41dにおいて、周方向中心が径方向内側に突出する略三角形状に形成された部分は、極間磁石51aの磁束を第1爪状磁極41bの外周面、即ちステータ6と対向する第1爪状磁極41bの端面に導く磁束誘導部として機能する。このように、ロータ40からステータ6に向う磁束の量が、環状磁石28のみの磁束の量よりも増加する。
【0082】
また、周方向に隣合う第1爪状磁極41bと第2爪状磁極42bの間に配置された極間磁石51a,51bは、環状磁石28により機能する爪状磁極の極性と同じ極性の面が接触する。従って、各極間磁石51a,51bは、第1爪状磁極41bから第2爪状磁極42bに向う直接的な磁束の形成を阻害する。この結果、第1爪状磁極41bと第2爪状磁極42bの間の直接的な漏洩磁束が減少する。
【0083】
また、爪部41dは、周方向中心部分が径方向内側に向って突出する略三角形状に形成されている。従って、N極として機能する爪部41dからS極となる第2コアベース42aに向う磁束は、突出する頂点部分に集中する。従って、爪部41dの径方向内側の頂点部分において磁気飽和が生じるため、爪部41dからコアベース42aに向う磁束の量が少なくなる。つまり、爪部41dの径方向内側部分を略三角形状に形成することにより、爪部41dからコアベース42aに向う磁束、つまり漏れ磁束の量を低減する。
【0084】
図8(a)及び図8(b)に示すように、周方向に隣合う第1爪状磁極41bと第2爪状磁極42bの間に配置された各極間磁石51a,51bの中心線の交点は、各爪状磁極41b,42bの中心線の交点、即ちロータ40の回転中心からずれている。従って、ロータ40を回転したとき、各極間磁石51a,51bは、遠心力により、第1爪状磁極41bの周方向側面に押し付けられる。このため、ロータ40から各極間磁石51a,51bの抜け出しが防止される。
【0085】
図7(b)に示すように、第1ロータコア41は、第1コアベース41aの外周部から径方向外側に向って突出する突出部41cと、その突出部41cから軸方向に沿って延びる爪部41dを有している。図9に示すように、環状磁石28による磁束は、コアベース41aから突出部41cと爪部41dを介してステータ6(図1参照)に至る。しかし、爪部41dは突出部41cから軸方向に突出しているため、環状磁石28の磁束が通り難い。その結果、爪状磁極41bにおいて、基端側(突出部41c)の磁束密度と先端側(爪部41d)の磁束密度の間に差が生じる。
【0086】
本実施形態では、図2に示すように、極間磁石51aのN極は、N極として機能する爪部41dに当接している。従って、極間磁石51aの磁束は、爪部41dを介してステータ6に至ることになる。このため、爪部41dの磁束量を極間磁石51aにより増加することで、爪状磁極41bにおいて、基端側(突出部41c)の磁束密度と先端側(爪部41d)の磁束密度の間に差を低減することが可能となる。
【0087】
上記のように、主として第1ロータコア41における作用を説明した。上記したように、第2〜第4ロータコア42〜44は第1ロータコア41と同じ形状である。従って、第2〜第4ロータコア42〜44においても、上記と同様の作用を奏する。
【0088】
図9に示すように、同じ極性(本実施形態ではN極)として機能する爪状磁極41b,44bをそれぞれ有するロータコア41,44のコアベース41a,44aは、軸方向両側において露出している。従って、これらのコアベース41a,44aから爪状磁極41b,44bに向わない磁束(漏れ磁束)が生じる。一方、S極として機能する爪状磁極42b,43bをそれぞれ有するロータコア42,43のコアベース42a,43aは、互いに隣接するとともに、軸方向外側に環状磁石28,29が隣接するため、露出していない。従って、これらのコアベース42a,43aにおける漏れ磁束は生じない。このため、コアベース41a,44aから爪状磁極41b,44bに向う磁束量と、爪状磁極42b,43bからコアベース42a,43aに向う磁束量との間に差が生じる。
【0089】
本実施形態では、図2に示すように、第1ロータコア41の爪部41dに極間磁石51aが当接し、第2,第3ロータコア42,43の爪部42d、43dに極間磁石51b,51cが当接し、第4ロータコア44の爪部44dに極間磁石51dが当接している。各極間磁石51a〜51dの磁力を互いに異なるようにすることが可能である。従って、第1,第4ロータコア41,44の爪部41d、44dに当接する極間磁石51a,51dの磁力を多くすることにより、上記の配置に基づく漏れ磁束に対応する磁束を補充ことが可能となる。これにより、コアベース41a,44aから爪状磁極41b,44bに向う磁束量と、爪状磁極42b,43bからコアベース42a,43aに向う磁束量との間に差を低減する、つまり磁束量をほぼ均一化することが可能となる。
【0090】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(2a)ロータ40の第1〜第4ロータコア41〜44は、回転軸12の軸方向に沿って配設されている。第1,第2ロータコア41,42の爪状磁極41b,42bは、コアベース41a,42aの外周部から径方向外側に突出形成され、周方向に沿って交互に配置されている。各爪状磁極41b,42bは、軸方向に沿って互いに逆方向に向って延びるように形成されている。同様に、第3,第4ロータコア43,44の爪状磁極43b,44bは、コアベース43a,44aの外周部から径方向外側に突出形成され、周方向に沿って交互に配置されている。各爪状磁極43b,44bは、軸方向に沿って互いに逆方向に向って延びるように形成されている。
【0091】
各爪状磁極41b〜44bの爪部41d〜44dは、周方向中心部が径方向内側に突出する略三角形状に形成されている。そして、この略三角形状に形成された部分の斜面に極間磁石51a〜51dが当接する。略三角形状に形成された部分は、極間磁石51a,51dの磁束を爪状磁極41b,44bの外周面、即ちステータ6と対向する爪状磁極41b,44bの端面に導く磁束誘導部として機能する。このように、ロータ40からステータ6に向う磁束の量を、環状磁石28,29のみの磁束の量よりも増加させる、すなわち有効磁束量を増加することができる。
【0092】
(2b)各爪状磁極41b〜44bの爪部41d〜44dは、周方向中心部分が径方向内側に向って突出する略三角形状に形成されている。従って、N極として機能する爪部41dからS極となる第2コアベース42aに向う磁束は、突出する頂点部分に集中する。従って、爪部41dの径方向内側の頂点部分において磁気飽和が生じるため、爪部41dからコアベース42aに向う磁束の量が少なくなる。つまり、爪部41dの径方向内側部分を略三角形状に形成することにより、爪部41dからコアベース42aに向う磁束、つまり漏れ磁束の量を低減することができ、ひいては有効磁束の減少を低減することができる。
【0093】
そして、爪状磁極41b〜44bとコアベース41a〜44aとの間に磁石を設けることなく、直接的な磁束を低減することができる。これにより、有効な磁束量を多くすることができる。また、爪状磁極41b〜44bとコアベース41a〜44aとの間の磁石を必要としないため、その分、部品点数(部品の種類)や製造工程の増加を抑制することができる。
【0094】
(2c)周方向に隣合う爪状磁極41b〜44bの間に極間磁石51a〜51dが配置されている。各極間磁石51a〜51dは、周方向に隣合う爪状磁極41b,42bと同極性が対向するように磁化されている。従って、極間磁石51a〜51dによって、爪状磁極41b,42bの間における直接的な磁束の発生を抑制することができる。これにより、有効な磁束量を多くすることができる。
【0095】
(2d)爪状磁極41b〜44bの間に配置された極間磁石51a〜51dは、その中心線が回転軸12の軸中心を通る直線に対して角度を成すように、各爪状磁極41b〜44bが形成されている。従って、ロータ40を回転したとき、各極間磁石51a〜51dは、遠心力により、当接する爪状磁極(爪部)に押し付けられる。このため、ロータ40から各極間磁石51a〜51dの抜け出しを防止することができる。
【0096】
なお、上記の第二実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記形態では、例えば図8(b)に示すように、爪部41dの周方向中心を径方向内側に突出させ、その頂点をコアベース42aに接するように形成した。これに対し、例えば、図10(a)に示すように、周方向中心が極間磁石51aから径方向内側に突出しないように平坦状に形成してコアベース42aから離間させるようにしてもよい。また、図10(b)に示すように、2つの極間磁石51aの間の部分を径方向外側に向って凹設するようにしてもよい。
【0097】
なお、上記の各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記形態では、各爪状磁極41b〜44bの中心線に対して極間磁石51a〜51dを対称に配置したが、非対称としてもよい。例えば、ロータ11の回転方向や回転数に応じて、極間磁石51a〜51dの傾きを変更する。このようにしても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0098】
・上記形態では、界磁磁石として環状磁石28,29を用いたが、平板状の永久磁石を周方向に沿って複数配列して各爪状磁極41b〜44bを界磁するようにしてもよい。また、一対のコアベース間に1つの円盤状の永久磁石を介在させて各爪状磁極41b〜44bを界磁するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0099】
11…ロータ、12…回転軸、21〜24…ロータコア、21a〜24a…コアベース、21b〜24b…爪状磁極、21c〜24c…突出部、21d〜24d…爪部、21e,22e…径方向外側側面、21f,22f…方向内側側面、28,29…環状磁石(界磁磁石)、31…極間磁石、40…ロータ、41〜44…ロータコア、41a〜44a…コアベース、41b〜44b…爪状磁極、41c〜44c…突出部、41d〜44d…爪部、51a〜51d…極間磁石。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状のコアベースの外周部から突出するとともに軸方向に沿って延出形成され周方向に沿って交互に配置された複数の爪状磁極を有し、軸方向に配列された少なくとも一対のロータコアと、
対となるロータコア間に配置され、軸方向に沿って磁化された界磁磁石と、
周方向に隣合う前記爪状磁極の間にそれぞれ配設され、各爪状磁極と同極性の面が対向するように磁化された複数の極間磁石と、
を備え、
前記爪状磁極の先端部には、前記極間磁石の磁束を前記爪状磁極の外周側側面に導く磁束誘導部を形成した、
ことを特徴とするロータ。
【請求項2】
請求項1に記載のロータにおいて、
前記磁束誘導部は、径方向内側側面の周方向中央を周方向両側よりも径方向外側側面に近づけることにより形成されてなる、ことを特徴とするロータ。
【請求項3】
請求項2に記載のロータにおいて、
軸方向に沿って少なくとも二対の前記ロータコアが配列され、
軸方向両端の前記ロータコアが有する爪状磁極基端の周方向の幅は、他のロータコアが有する爪状磁極基端の周方向の幅よりも狭く形成された、
ことを特徴とするロータ。
【請求項4】
請求項1に記載のロータにおいて、
前記磁束誘導部は、周方向中央部を径方向内側に向って突出して形成されてなる、ことを特徴とするロータ。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの何れか一項に記載のロータを備えたことを特徴とするモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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