説明

ローラの異物除去装置

【課題】双方向スクレーパを回転可能に取り付け、ローラの回転方向に係わらず双方向スクレーパの片側のみがローラの表面に接触するようにして、ローラの表面の異物を確実に除去することができるとともに、負荷トルクを低減することができるようにする。
【解決手段】双方向に回転可能なローラの表面に当接するスクレーパと、該スクレーパを保持するスクレーパ保持部材とを有し、前記スクレーパは、互いに平行であるとともに前記ローラの軸方向に延在する一対のエッジ部を備え、前記ローラの軸方向に延在する前記スクレーパ保持部材の軸心を中心に回転可能であり、前記ローラが回転すると、前記一対のエッジ部のいずれか一方のみがローラの表面に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラの異物除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行、信用金庫、郵便局、消費者金融会社等の金融機関の支店等に配設されたATM(Automatic Teller Machine:現金自動預払機)、CD(Cash Dispenser:現金自動支払機)等の自動取引装置や両替機、また、商店や路上に配設された自動販売機等には紙幣等の有価証券の真偽を判別したり媒体の種別を判別したりするための媒体鑑別装置が配設されている。そして、該媒体鑑別装置において紙幣等の媒体の真偽を判別するために、媒体の厚みを検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この場合、媒体の搬送路に配設されている一対のローラの間を媒体が通過する際に、一方のローラが上下に変位する変位量を計測することによって媒体の厚みを検出するようになっている。しかし、長期間使用すると、ローラの表面に紙粉等の異物が付着して、媒体の厚みを正確に検出することができなくなってしまう。そこで、ローラの表面に付着した異物を除去するための異物除去装置が配設されている。
【0004】
図2は従来のローラの異物除去装置の構成を示す図である。
【0005】
図において、121は、図示されない紙幣鑑別装置等の媒体処理装置内に配設された媒体搬送路であり、媒体処理装置の挿入口から挿入された媒体122が、図示されない搬送ローラ、搬送ベルト等によって上流側(図における左側)から下流側(図における右側)に向けて搬送される。なお、前記媒体搬送路121は、媒体122を下流側から上流側に向けても搬送可能な双方向搬送タイプの搬送路である。
【0006】
そして、前記媒体搬送路121には、互いに対向する検知ローラ111と基準ローラ112とから成る厚み検知用ローラ対が配設されている。ここで、前記基準ローラ112は、媒体処理装置の図示されないフレームに回転自在に取り付けられている。また、検知ローラ111は、ブラケット113に回転自在に取り付けられている。そして、該ブラケット113は、一端が回動軸114を中心にして回転自在に前記フレームに取り付けられ、他端が押圧スプリング115によって下方に向けて付勢されている。これにより、前記検知ローラ111は、基準ローラ112に圧接される。
【0007】
また、検知ローラ111の上方には、該検知ローラ111の上下方向の変位量を計測する非接触式の変位計測センサ116が配設されている。そして、媒体搬送路121に沿って搬送される媒体122が検知ローラ111と基準ローラ112との間を通過すると、検知ローラ111が上方に変位するので、該検知ローラ111の変位量を変位計測センサ116によって計測することにより、前記媒体122の厚みを検出することができる。これにより、媒体処理装置は、前記媒体122に厚み異常があったり、テープ等が貼(てん)付されていたりする場合には、前記厚み異常やテープ等の貼付を判別することができる。
【0008】
前記媒体処理装置を長期間に亘(わた)って使用し、多数の媒体122が検知ローラ111と基準ローラ112との間を通過すると、前記検知ローラ111及び基準ローラ112の表面に紙粉等の異物が付着する可能性がある。そして、前記検知ローラ111又は基準ローラ112の表面に異物が付着していると、変位計測センサ116によって計測される検知ローラ111の変位量が異物の厚みの分だけ変化するので、媒体122の厚みを正確に検出することができなくなってしまう。
【0009】
そこで、検知ローラ111及び基準ローラ112の表面から異物を除去するための異物除去装置として、スクレーパが配設されている。なお、媒体搬送路121が双方向搬送タイプの搬送路であって、媒体122が双方向に搬送され、これに伴い検知ローラ111及び基準ローラ112の回転方向が反転するので、前記スクレーパは、上流側に配設された上流側スクレーパ101a及び下流側に配設された下流側スクレーパ101bを含んでいる。これにより、検知ローラ111及び基準ローラ112がいずれの方向に回転した場合であっても、その表面に付着した異物を除去することができる。
【0010】
次に、前記スクレーパの構成について説明する。なお、検知ローラ111用のスクレーパと基準ローラ112用のスクレーパとは、前者がブラケット113に取り付けられるのに対して後者がフレームの下方支持部材117に取り付けられる点を除いて実質的に同一の構成を有するので、ここでは、基準ローラ112用のスクレーパについてのみ説明する。
【0011】
図3は従来のローラの異物除去装置の拡大図である。
【0012】
図に示されるように、上流側スクレーパ101a及び下流側スクレーパ101bは、いずれも、基端が固定されたカンチレバー状の板ばね118の先端に取り付けられ、該板ばね118の付勢力によって所定の押圧力で基準ローラ112の表面に押し付けられている。これにより、基準ローラ112の表面に付着した異物を掻(か)き落として除去することができる。
【0013】
また、板ばね118が弾性的に捩(ねじ)れ変形するので、取付誤差が吸収され、上流側スクレーパ101a及び下流側スクレーパ101bの先端がその全範囲に亘って基準ローラ112の表面に密着することが可能となり、いわゆる片当たりの発生が防止される。
【特許文献1】特開平9−212704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前記従来のローラの異物除去装置においては、検知ローラ111及び基準ローラ112がいずれの方向に回転した場合であっても検知ローラ111及び基準ローラ112の表面に付着した異物を除去するために、上流側スクレーパ101a及び下流側スクレーパ101bの両方を配設する必要があるので、上流側スクレーパ101a及び下流側スクレーパ101bを配設するためのスペースが必要となり、媒体処理装置が大型化してしまう。
【0015】
また、検知ローラ111及び基準ローラ112の表面に上流側スクレーパ101a及び下流側スクレーパ101bの両方が常時押し付けられているので、検知ローラ111及び基準ローラ112の回転に対する抵抗が大きくなり、その結果、検知ローラ111及び基準ローラ112を回転させるためのトルク、すなわち、ローラの負荷トルクが大きくなってしまう。
【0016】
さらに、検知ローラ111及び基準ローラ112に対する上流側スクレーパ101a及び下流側スクレーパ101bの取付誤差が大きいと、板ばね118の捩れ変形の量が誤差に対して不十分になるので、上流側スクレーパ101a及び下流側スクレーパ101bの先端がその全範囲に亘って検知ローラ111及び基準ローラ112の表面に密着することが不可能となり、片当たりが発生してしまう。もっとも、上流側スクレーパ101a及び下流側スクレーパ101bを取り付ける際に、取付位置の調整を行えば、取付誤差が小さくなり、片当たりの発生を防止することが可能となるが、この場合、作業工程が増加するので、製造コストが高くなってしまう。
【0017】
本発明は、前記従来の異物除去装置の問題点を解決して、双方向スクレーパを回転可能に取り付け、ローラの回転方向に係わらず双方向スクレーパの片側のみがローラの表面に接触するようにして、ローラの表面の異物を確実に除去することができるとともに、負荷トルクを低減することができるローラの異物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
そのために、本発明のローラの異物除去装置においては、双方向に回転可能なローラの表面に当接するスクレーパと、該スクレーパを保持するスクレーパ保持部材とを有し、前記スクレーパは、互いに平行であるとともに前記ローラの軸方向に延在する一対のエッジ部を備え、前記ローラの軸方向に延在する前記スクレーパ保持部材の軸心を中心に回転可能であり、前記ローラが回転すると、前記一対のエッジ部のいずれか一方のみがローラの表面に当接する。
【0019】
本発明の他のローラの異物除去装置においては、さらに、前記スクレーパ保持部材は、その軸心を中心に回転可能である。
【0020】
本発明の更に他のローラの異物除去装置においては、さらに、前記スクレーパは、スクレーパ取付部材を介して前記スクレーパ保持部材に取り付けられ、該スクレーパ保持部材の軸心を中心に回転可能である。
【0021】
本発明の更に他のローラの異物除去装置においては、さらに、前記スクレーパ取付部材は、弾性を備える材料から成る。
【0022】
本発明の更に他のローラの異物除去装置においては、さらに、前記スクレーパは、付勢部材によって前記ローラに向けて付勢されている。
【0023】
本発明の更に他のローラの異物除去装置においては、さらに、前記ローラは、媒体の厚みを検出する厚み検出装置のローラである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ローラの異物除去装置は、双方向スクレーパが回転可能に取り付けられ、ローラの回転方向に係わらず双方向スクレーパの片側のみがローラの表面に接触する。これにより、ローラの表面の異物を確実に除去することができるとともに、負荷トルクを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の第1の実施の形態におけるローラの異物除去装置を有する媒体の厚み検知装置の構成を示す図である。
【0027】
図において、20は本実施の形態における媒体の厚み検出装置であり、自動取引装置、自動販売機、両替機、ゲーム機等の装置に配設された紙幣鑑別装置等の媒体処理装置において媒体32の厚みを検知するために使用される。なお、前記媒体32は、例えば、紙幣であるが、ビール券、ギフト券、商品券等の金券、トラベラーズチェック、小切手、株券等の有価証券、入場券等の施設利用券、切符、帳票、カード、通帳等であってもよく、いかなる種類のものであってもよい。
【0028】
ここでは、説明の都合上、前記媒体32が紙幣である場合について説明する。この場合、前記媒体処理装置は、厚み検出装置20によって媒体32の厚みを検出して媒体32の厚み異常、テープ等の貼付を認識し、これにより、媒体32の真偽を判別する。
【0029】
そして、前記媒体処理装置は、自動取引装置のように媒体32として紙幣を受領する装置における紙幣の搬送経路や紙幣の取扱装置に配設され、受領した紙幣の真偽を判別する。なお、前記紙幣を受領する装置は、一般的には、銀行、信用金庫、郵便局等の金融機関の支店等の営業店や、コンビニエンスストア、スーパーマーケット等の商店の店舗に配設されているATM、CD等の自動取引装置であるが、紙幣を受領するための装置であれば、鉄道、バス等の交通機関の券売機、飲料、タバコ等の自動販売機、両替機、ゲーム機等いかなる装置であってもよい。そして、前記紙幣を受領する装置は、前記媒体処理装置が判別した真偽に基づいて、不正な紙幣として排除する。
【0030】
また、31は、前記媒体処理装置内に配設された媒体搬送路であり、媒体処理装置の挿入口から挿入された媒体32が、図示されない搬送ローラ、搬送ベルト等によって上流側(図における左側)から下流側(図における右側)に向けて搬送される。なお、前記媒体搬送路31は、媒体32を下流側から上流側に向けても搬送可能な双方向搬送タイプの搬送路である。
【0031】
そして、前記厚み検出装置20は、媒体搬送路31に配設された厚み検知用ローラ対を有する。該厚み検知用ローラ対は、互いに対向して当接するローラとしての検知ローラ21及び基準ローラ22を備える。ここで、該基準ローラ22は、媒体処理装置の図示されないフレームに回転自在に取り付けられている。また、検知ローラ21は、ブラケット23に回転自在に取り付けられている。そして、該ブラケット23は、一端が回動軸24を中心にして回転自在に前記フレームに取り付けられ、他端が押圧スプリング25によって下方に向けて付勢されている。これにより、前記検知ローラ21は、基準ローラ22に圧接される。
【0032】
また、検知ローラ21の上方には、該検知ローラ21の上下方向の変位量を計測する非接触式の変位計測センサ26が配設されている。そして、媒体搬送路31に沿って搬送される媒体32が検知ローラ21と基準ローラ22との間を通過すると、検知ローラ21が上方に変位するので、該検知ローラ21の変位量を変位計測センサ26によって計測することにより、前記媒体32の厚みを検出することができる。これにより、媒体処理装置は、前記媒体32に厚み異常があったり、テープ等が貼付されていたりする場合には、前記厚み異常やテープ等の貼付を判別することができる。
【0033】
前記媒体処理装置を長期間に亘って使用し、多数の媒体32が検知ローラ21と基準ローラ22との間を通過すると、前記検知ローラ21及び基準ローラ22の表面に紙粉等の異物が付着する可能性がある。そして、前記検知ローラ21又は基準ローラ22の表面に異物が付着していると、変位計測センサ26によって計測される検知ローラ21の変位量が変化するので、媒体32の厚みを正確に検出することができなくなってしまう。
【0034】
そこで、検知ローラ21及び基準ローラ22の表面から異物を除去するために、ローラの異物除去装置としてのスクレーパユニット10が配設されている。本実施の形態においては、媒体搬送路31が双方向搬送タイプの搬送路であって、媒体32が双方向に搬送されるので、これに伴い検知ローラ21及び基準ローラ22の回転方向が反転する。しかし、前記スクレーパユニット10により、検知ローラ21及び基準ローラ22がいずれの方向に回転した場合であっても、その表面に付着した異物を除去することができる。
【0035】
次に、前記スクレーパユニット10の構成について説明する。なお、検知ローラ21用のスクレーパユニット10と基準ローラ22用のスクレーパユニット10とは、前者がブラケット23に取り付けられるのに対して後者がフレームの下方支持部27に取り付けられる点を除いて実質的に同一の構成を有するので、ここでは、検知ローラ21用のスクレーパユニット10についてのみ説明する。
【0036】
図4は本発明の第1の実施の形態における検知ローラ用のスクレーパユニットの構成を示す図である。なお、(a)は媒体搬送路の上流側から観た図、(b)媒体搬送路の側面から観た図である。
【0037】
図に示されるように、スクレーパユニット10は、側面形状が三日月状のスクレーパである双方向スクレーパ11と、該双方向スクレーパ11が取り付けられたスクレーパ取付部材としてのスクレーパ取付ロッド14と、該スクレーパ取付ロッド14が取り付けられたスクレーパ保持部材としてのスクレーパホルダ12と、該スクレーパホルダ12を支持するホルダ支持ロッド13と、前記双方向スクレーパ11を付勢する付勢部材としてのコイルスプリング15とを有する。
【0038】
そして、前記ホルダ支持ロッド13は、円柱状の部材であり、スクレーパホルダ12を回転可能に支持するとともに、両端がブラケット23に取り付けられている。なお、前記ホルダ支持ロッド13の軸心はスクレーパホルダ12の軸心とほぼ一致する。また、前記スクレーパ取付ロッド14は、上下方向に延在し、上端がスクレーパホルダ12に固定され、下端には双方向スクレーパ11が回転可能、かつ、スライド可能に取り付けられている。これにより、前記双方向スクレーパ11は、ホルダ支持ロッド13の軸心を中心に回転することができ、スクレーパ取付ロッド14の軸心を中心に回転することができ、かつ、スクレーパ取付ロッド14の軸心方向に移動することができる。
【0039】
また、前記双方向スクレーパ11は、互いに平行であるとともに検知ローラ21の軸方向に延在する一対のエッジ部、すなわち、上流側エッジ部11a及び下流側エッジ部11bを備える。そして、前記双方向スクレーパ11は、側面から観て、スクレーパ取付ロッド14の軸心に関して左右対称な形状を備え、検知ローラ21に対向する面は、検知ローラ21の表面よりも曲率の小さな円筒面であり、上流側エッジ部11a及び下流側エッジ部11bのみが検知ローラ21の表面に当接する。さらに、前記双方向スクレーパ11は、スクレーパ取付ロッド14の周囲を取り巻くように配設されたコイルスプリング15によって、スクレーパホルダ12から離間する方向に、すなわち、下方に向かって付勢されることにより、検知ローラ21の表面に押し付けられる。
【0040】
なお、前記双方向スクレーパ11は、必ずしも側面形状が三日月状のものである必要はなく、側面から観て、スクレーパ取付ロッド14の軸心に関して左右対称な形状を備え、上流側エッジ部11a及び下流側エッジ部11bのみが検知ローラ21の表面に当接するようなものであれば、いかなる形状のものであってもよい。
【0041】
このように、双方向スクレーパ11は、ホルダ支持ロッド13の軸心を中心に回転することができるので、検知ローラ21の回転方向に応じて傾斜し、上流側エッジ部11a又は下流側エッジ部11bのいずれか一方のみが、検知ローラ21の表面に当接する。したがって、検知ローラ21の負荷トルクを低減することができる。
【0042】
また、双方向スクレーパ11は、スクレーパ取付ロッド14の軸心を中心に回転することができるので、上流側エッジ部11a及び下流側エッジ部11bの長手方向(図4(a)における左右方向)が検知ローラ21の軸心方向に一致する。したがって、上流側エッジ部11a及び下流側エッジ部11bは、その長手方向の全範囲に亘って検知ローラ21の表面に密着することが可能となり、片当たりが発生することがない。
【0043】
さらに、双方向スクレーパ11は、スクレーパ取付ロッド14の軸心方向に移動することができ、かつ、コイルスプリング15によって下方に向かって付勢されているので、上流側エッジ部11a及び下流側エッジ部11bは、検知ローラ21の表面に押し付けられる。したがって、検知ローラ21の表面に付着した異物を確実に掻き落として除去することができる。
【0044】
次に、前記構成のスクレーパユニット10の動作について説明する。
【0045】
図5は本発明の第1の実施の形態における検知ローラ用のスクレーパユニットの動作を示す図である。
【0046】
ここでは、媒体32が下流側から上流側に向けて搬送されるものとする。この場合、検知ローラ21は、図において矢印Aで示される方向に回転する。
【0047】
前記双方向スクレーパ11は、検知ローラ21が回転しない状態において、図4(b)に示されるような姿勢を保ち、上流側エッジ部11a及び下流側エッジ部11bは、ともに検知ローラ21の表面に当接している。しかし、検知ローラ21が回転すると、上流側エッジ部11a及び下流側エッジ部11bと検知ローラ21の表面との間の摩擦力によって、上流側エッジ部11a及び下流側エッジ部11bは、検知ローラ21の表面の回転方向下流側に引きずられ、その結果、前記双方向スクレーパ11は、ホルダ支持ロッド13の軸心を中心に回転して傾斜する。
【0048】
したがって、検知ローラ21が矢印Aで示される方向に回転すると、前記双方向スクレーパ11は、図5に示されるように傾斜し、その結果、上流側エッジ部11aのみが検知ローラ21の表面に当接し、下流側エッジ部11bは検知ローラ21の表面から離間した状態となる。なお、双方向スクレーパ11がコイルスプリング15によって下方に向かって付勢されているので、上流側エッジ部11aは、検知ローラ21の表面との当接を確実に維持することができる。しかも、上流側エッジ部11aにおける検知ローラ21の表面の回転方向上流側に位置する面と、検知ローラ21の表面との間に形成される角が、鈍角となっているので、検知ローラ21の表面に付着した異物は、上流側エッジ部11aによって確実に掻き落とされる。
【0049】
また、媒体32が上流側から下流側に向けて搬送される場合には、検知ローラ21が矢印Aで示される方向と反対方向に回転する。したがって、前記双方向スクレーパ11は、図5に示される傾斜方向と反対方向に傾斜し、その結果、下流側エッジ部11bのみが検知ローラ21の表面に当接し、上流側エッジ部11aは検知ローラ21の表面から離間した状態となる。この場合も、双方向スクレーパ11がコイルスプリング15によって下方に向かって付勢されているので、下流側エッジ部11bは、検知ローラ21の表面との当接を確実に維持することができる。しかも、下流側エッジ部11bにおける検知ローラ21の表面の回転方向上流側に位置する面と、検知ローラ21の表面との間に形成される角が、鈍角となるので、検知ローラ21の表面に付着した異物は、下流側エッジ部11bによって確実に掻き落とされる。
【0050】
さらに、基準ローラ22用のスクレーパユニット10も、検知ローラ21用のスクレーパユニット10と同様に動作する。すなわち、基準ローラ22の回転方向に応じて、双方向スクレーパ11が傾斜し、上流側エッジ部11a又は下流側エッジ部11bのいずれか一方のみが基準ローラ22の表面に当接し、他方が基準ローラ22の表面から離間した状態となる。
【0051】
このように、本実施の形態においては、双方向スクレーパ11がホルダ支持ロッド13の軸心を中心に回転可能に取り付けられている。これにより、検知ローラ21及び基準ローラ22が回転すると、双方向スクレーパ11の上流側エッジ部11a又は下流側エッジ部11bのいずれか一方のみが検知ローラ21及び基準ローラ22の表面に当接する。したがって、検知ローラ21及び基準ローラ22の負荷トルクを低減することができ、例えば、「背景技術」の項で説明した従来のローラの異物除去装置の半分程度に低減することができる。
【0052】
また、双方向スクレーパ11がホルダ支持ロッド13の軸心及びスクレーパ取付ロッド14の軸心を中心に回転することができるので、双方向スクレーパ11の上流側エッジ部11a又は下流側エッジ部11bのいずれか一方が、確実に検知ローラ21及び基準ローラ22の表面と線接触して密着するので、片当たりが発生することがない。
【0053】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0054】
図6は本発明の第2の実施の形態における検知ローラ用のスクレーパユニットの構成を示す図である。なお、(a)は媒体搬送路の上流側から観た図、(b)媒体搬送路の側面から観た図である。
【0055】
本実施の形態におけるスクレーパユニット10は、前記第1の実施の形態と同様に、双方向スクレーパ11及びスクレーパホルダ12を有するが、該スクレーパホルダ12を支持するホルダ支持ロッド13、及び、前記双方向スクレーパ11を付勢する付勢部材としてのコイルスプリング15が省略されている。
【0056】
そして、本実施の形態におけるスクレーパユニット10は、スクレーパ取付部材として、スクレーパ取付ロッド14に代えて、スクレーパ取付板44を有する。該スクレーパ取付板44は、例えば、スポンジ、ゴム等の弾性を備える材料から成り、それ自体で、軸方向(図における上下方向)、捩り方向及び曲げ方向に弾性的に変形可能となっている。また、スクレーパ取付板44は、その上端がスクレーパホルダ12に固定され、その下端が双方向スクレーパ11に固定されている。さらに、スクレーパホルダ12は、両端がブラケット23に固定されている。
【0057】
本実施の形態においては、スクレーパ取付板44自体が軸方向、捩り方向及び曲げ方向に弾性的に変形することによって、双方向スクレーパ11は、スクレーパホルダ12の軸心を中心に回転することができ、スクレーパ取付板44の軸心を中心に回転することができ、かつ、スクレーパ取付板44の軸心方向に移動することができる。さらに、スクレーパ取付板44が付勢部材として機能することによって、前記双方向スクレーパ11は、スクレーパホルダ12から離間する方向に、すなわち、下方に向かって付勢されることにより、検知ローラ21の表面に押し付けられる。
【0058】
なお、その他の点の構成については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。また、基準ローラ22用のスクレーパユニット10の構成についても、検知ローラ21用のスクレーパユニット10の構成と実質的に同一であるので、その説明を省略する。
【0059】
次に、本実施の形態におけるスクレーパユニット10の動作について説明する。
【0060】
図7は本発明の第2の実施の形態における検知ローラ用のスクレーパユニットの動作を示す図である。
【0061】
ここでは、前記第1の実施の形態と同様に、媒体32が下流側から上流側に向けて搬送されるものとする。この場合、検知ローラ21は、図において矢印Aで示される方向に回転する。
【0062】
前記双方向スクレーパ11は、検知ローラ21が回転しない状態において、図6(b)に示されるような姿勢を保ち、上流側エッジ部11a及び下流側エッジ部11bは、ともに検知ローラ21の表面に当接している。しかし、検知ローラ21が回転すると、上流側エッジ部11a及び下流側エッジ部11bと検知ローラ21の表面との間の摩擦力によって、上流側エッジ部11a及び下流側エッジ部11bは、検知ローラ21の表面の回転方向下流側に引きずられ、その結果、前記双方向スクレーパ11は、スクレーパホルダ12の軸心を中心に回転して傾斜する。
【0063】
したがって、検知ローラ21が矢印Aで示される方向に回転すると、前記双方向スクレーパ11は、図7に示されるように傾斜し、その結果、上流側エッジ部11aのみが検知ローラ21の表面に当接し、下流側エッジ部11bは検知ローラ21の表面から離間した状態となる。なお、双方向スクレーパ11がスクレーパ取付板44自体のばね性によって下方に向かって付勢されているので、上流側エッジ部11aは、検知ローラ21の表面との当接を確実に維持することができる。しかも、上流側エッジ部11aにおける検知ローラ21の表面の回転方向上流側に位置する面と、検知ローラ21の表面との間に形成される角が、鈍角となっているので、検知ローラ21の表面に付着した異物は、上流側エッジ部11aによって確実に掻き落とされる。
【0064】
また、媒体32が上流側から下流側に向けて搬送される場合には、検知ローラ21が矢印Aで示される方向と反対方向に回転する。したがって、前記双方向スクレーパ11は、図7に示される傾斜方向と反対方向に傾斜し、その結果、下流側エッジ部11bのみが検知ローラ21の表面に当接し、上流側エッジ部11aは検知ローラ21の表面から離間した状態となる。この場合も、双方向スクレーパ11がスクレーパ取付板44自体のばね性によって下方に向かって付勢されているので、下流側エッジ部11bは、検知ローラ21の表面との当接を確実に維持することができる。しかも、下流側エッジ部11bにおける検知ローラ21の表面の回転方向上流側に位置する面と、検知ローラ21の表面との間に形成される角が、鈍角となるので、検知ローラ21の表面に付着した異物は、下流側エッジ部11bによって確実に掻き落とされる。
【0065】
さらに、基準ローラ22用のスクレーパユニット10も、検知ローラ21用のスクレーパユニット10と同様に動作する。すなわち、基準ローラ22の回転方向に応じて、双方向スクレーパ11が傾斜し、上流側エッジ部11a又は下流側エッジ部11bのいずれか一方のみが基準ローラ22の表面に当接し、他方が基準ローラ22の表面から離間した状態となる。
【0066】
このように、本実施の形態においては、双方向スクレーパ11が弾性的に変形可能なスクレーパ取付板44に取り付けられている。これにより、簡単な構成でありながら、前記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるローラの異物除去装置を有する媒体の厚み検知装置の構成を示す図である。
【図2】従来のローラの異物除去装置の構成を示す図である。
【図3】従来のローラの異物除去装置の拡大図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における検知ローラ用のスクレーパユニットの構成を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における検知ローラ用のスクレーパユニットの動作を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態における検知ローラ用のスクレーパユニットの構成を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における検知ローラ用のスクレーパユニットの動作を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
10 スクレーパユニット
11 双方向スクレーパ
11a 上流側エッジ部
11b 下流側エッジ部
12 スクレーパホルダ
14 スクレーパ取付ロッド
15 コイルスプリング
20 厚み検出装置
21 検知ローラ
22 基準ローラ
32 媒体
44 スクレーパ取付板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)双方向に回転可能なローラの表面に当接するスクレーパと、
(b)該スクレーパを保持するスクレーパ保持部材とを有し、
(c)前記スクレーパは、互いに平行であるとともに前記ローラの軸方向に延在する一対のエッジ部を備え、前記ローラの軸方向に延在する前記スクレーパ保持部材の軸心を中心に回転可能であり、
(d)前記ローラが回転すると、前記一対のエッジ部のいずれか一方のみがローラの表面に当接することを特徴とするローラの異物除去装置。
【請求項2】
前記スクレーパ保持部材は、その軸心を中心に回転可能である請求項1に記載のローラの異物除去装置。
【請求項3】
前記スクレーパは、スクレーパ取付部材を介して前記スクレーパ保持部材に取り付けられ、該スクレーパ保持部材の軸心を中心に回転可能である請求項1又は2に記載のローラの異物除去装置。
【請求項4】
前記スクレーパ取付部材は、弾性を備える材料から成る請求項3に記載のローラの異物除去装置。
【請求項5】
前記スクレーパは、付勢部材によって前記ローラに向けて付勢されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のローラの異物除去装置。
【請求項6】
前記ローラは、媒体の厚みを検出する厚み検出装置のローラである請求項1〜5のいずれか1項に記載のローラの異物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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