説明

ローラチェーンカップリング装置

【課題】グリースを必要とせず、メンテナンス負担が軽減され、環境汚染が少なく、長寿命のローラチェーンカップリング装置を提供する。
【解決手段】実質的に同軸上に配置された一対のボス付きスプロケット130、140間に2列ローラチェーン120を巻き掛け、一対のボス付きスプロケットの歯部135、145に2列ローラチェーン120を噛み合わせ、一対のボス付きスプロケット130、140間でトルクを伝達するローラチェーンチェーンカップリング装置において、ボス付きスプロケット130、140の歯部135、145に低摩擦コーティングが施されているとともに、2列ローラチェーン120に無給油ローラチェーンが使用されていることにより前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動側の回転軸と被駆動側の回転軸とを、両回転軸の軸心のずれ、曲がり、たわみを吸収しつつトルクを伝達するカップリング装置に関し、さらに詳しくは、2列ローラチェーンと一対のボス付きスプロケットを用いて、ローラチェーンとスプロケットとの間のガタによって、両回転軸の軸心のずれなどを吸収しつつトルクを伝達するローラチェーンカップリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ローラチェーンカップリング装置は、強度的観点から、その主要構成要素であるボス付きスプロケット及びローラチェーンは、金属製のものが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−208141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述したような従来のローラチェーンカップリング装置は、図3に示すように金属製のボス付きスプロケットの歯部とローラチェーンとが噛み合うため、多量のグリースが必要であった。グリースを使用しない場合、ボス付きスプロケットの歯部及びローラチェーンが早期摩耗を引き起こし、装置の長寿命化が阻まれていた。ここで、図3は、従来のローラチェーンカップリング装置200の二つ割りのカバーケース210の片側を外して、無端状に継いだ2列ローラチェーン220の連結ピン225の1つを抜いて、一対のボス付きスプロケット230、240のそれぞれの歯部235、245が見えるように描写した斜視図である。
【0004】
また、ローラチェーンカップリング装置200は、使用とともにグリースが劣化したり、減少したりするため、約2000〜4000時間毎に機械の運転を停止し、グリースを交換する必要があった。そして、グリースを封入するため、必ずカバーケース210が必要であり、そのため、部品点数が増加し、装置のコストアップを招いていた。さらに、カバーケース210を用いても完全にはシールすることができず、グリースが外部に漏れて、使用環境を汚染する原因にもなっていた。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、グリースを必要とせず、メンテナンス負担が軽減され、環境汚染が少なく、長寿命のローラチェーンカップリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
まず、本請求項1に係る発明は、実質的に同軸上に配置された一対のボス付きスプロケット間に2列ローラチェーンを巻き掛け、前記一対のボス付きスプロケットの歯部に前記2列ローラチェーンを噛み合わせ、前記一対のボス付きスプロケット間でトルクを伝達するローラチェーンカップリング装置において、前記ボス付きスプロケットの歯部に低摩擦コーティングが施されているとともに、前記2列ローラチェーンに無給油ローラチェーンが使用されていることによって、前記課題を解決したものである。
【0007】
ここで、本発明における「無給油ローラチェーン」としては、内プレートに圧入されるブシュに含油焼結ブシュを用い、含浸させたグリースをブシュとピンの間に供給するようにしたローラチェーンや、ブシュとピンの間又はブシュとローラの間にグラファイトシートで形成された摺動部材が設けられている固体潤滑無給油チェーンなどを用いることができる。
【0008】
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係るローラチェーンカップリング装置において、前記ボス付きスプロケットの歯部に施された低摩擦コーティングが、テフロン(登録商標)コーティングであることによって、前記課題をさらに解決したものである。
【0009】
また、本請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係るローラチェーンカップリング装置において、前記2列ローラチェーンのローラ、内プレート、外プレートにテフロン(登録商標)コーティングが施されていることによって、前記課題をさらに解決したものである。
ここで、本発明における「テフロン(登録商標)」とは、米国デュポン社によって製品化されたテトラフルオロエチレンの重合体であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を意味している。
【発明の効果】
【0010】
本請求項1に係る発明によれば、実質的に同軸上に配置された一対のボス付きスプロケット間に2列ローラチェーンを巻き掛け、前記一対のスプロケットの歯部に前記2列ローラチェーンを噛み合わせ、前記一対のボス付きスプロケット間でトルクを伝達するローラチェーンカップリング装置において、前記ボス付きスプロケットの歯部に低摩擦コーティングが施されているとともに、前記2列ローラチェーンに無給油ローラチェーンが使用されていることによって、ボス付きスプロケットの歯部とローラチェーンとの間にグリースを要することなく円滑に噛み合うため、グリースを封入するためのカバーケースが不要となり装置の部品点数の削減及び製造コストの削減が図られるとともに、メンテナンス負担が軽減され、環境汚染が抑制され、装置の長寿命化が達成される。
【0011】
そして、本請求項2に係る発明によれば、請求項1に係るローラチェーンカップリング装置において、前記ボス付きスプロケットの歯部に施された低摩擦コーティングが、テフロン(登録商標)コーティングであることによって、テフロン(登録商標)が摩擦係数がきわめて小さい物質であるため、ボス付きスプロケットの歯部とローラチェーンとの間にグリースを用いないにも関わらず、ボス付きスプロケットの歯部及びローラチェーンの摩耗が抑制され、より一層のメンテナンス負担の軽減、環境汚染の抑制、装置の長寿命化が達成される。
【0012】
また、本請求項3に係る発明によれば、請求項1又は請求項2に係るローラチェーンカップリング装置において、前記2列ローラチェーンのローラ、内プレート、外プレートにテフロン(登録商標)コーティングが施されていることによって、ボス付きスプロケットの歯部と2列ローラチェーンとの摩擦がより一層低減されるため、更なるメンテナンス負担の軽減、装置の長寿命化が達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のローラチェーンカップリング装置は、実質的に同軸上に配置された一対のボス付きスプロケット間に2列ローラチェーンを巻き掛け、前記一対のボス付きスプロケットの歯部に前記2列ローラチェーンを噛み合わせ、前記一対のボス付きスプロケット間でトルクを伝達するものであって、前記ボス付きスプロケットの歯部に低摩擦コーティングが施されているとともに、前記2列ローラチェーンに無給油ローラチェーンが使用されていることによって、グリースを封入するためのカバーケースが不要となり装置の部品点数の削減及び製造コストの削減が図られるとともに、メンテナンス負担が軽減され、環境汚染を抑制し、装置の長寿命化が達成されるものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0014】
以下、本発明のローラチェーンカップリング装置の一実施例について、図1及び図2に基づいて説明する。
【0015】
ここで、図1は、本実施例のローラチェーンカップリング装置の軸方向断面図であり、図2は、図1のローラチェーンカップリング装置を矢視II方向から見たときの側面図である。
【0016】
本発明のローラチェーンカップリング装置100は、図1及び図2に示すように、実質的に同軸上に配置された一対の鋼製のボス付きスプロケット130、140の歯部135、145間に2列ローラチェーン120を巻き掛け、この一対のボス付きスプロケット130、140の歯部135、145に2列ローラチェーン120のローラ124を噛み合わせることによって、一対のボス付きスプロケット130、140の間でトルクを伝達している。
【0017】
ここで、2列ローラチェーン120は、ブシュ126の両端が、一対の内プレート122に穿孔されたブシュ孔にそれぞれ圧入され、ブシュ126の外側に回転可能なローラ124を有し、この一対の内プレート122の両外側に配置された一対の外プレート121を有する2つのローラチェーンが、一対の外プレートの片側同士が接触して中間プレート123を構成し、2つのローラチェーンの幅よりも若干長い連結ピン125によって、2つのローラチェーンを横方向に連結した構造となっている。
【0018】
また、1対のボス付きスプロケット130、140の歯部135、145には、テフロン(登録商標)によるコーティングが施されている。これにより、ボス付きスプロケット130、140の歯部135、145と2列ローラチェーン120との摩擦が著しく低減されるため、グリースによる潤滑が不要となりメンテナンス負担が軽減される。さらに、2列ローラチェーン120のローラ124、内プレート122、外プレート121に対してもテフロン(登録商標)によるコーティングを施すことによって、ボス付きスプロケット130、140の歯部135、145と2列ローラチェーン120との摩擦がより一層低減され、更なるメンテナンス負担の低減が図られる。
【0019】
さらに、グリースが不要になることによって、グリース漏れがなくなり、環境汚染が抑制されるとともに、これまで必須であったカバーケースが不要になるため、部品点数の削減が図られる。
【0020】
また、本実施例においては、2列ローラチェーン120として、図示はされていないが、ブシュ126と連結ピン125との間又はブシュ126とローラ124との間にグラファイトシートで形成された摺動部材が設けられている固体潤滑無給油チェーンを用いている。
【0021】
この摺動部材は、ブシュ126と連結ピン125との間又はブシュ126とローラ124との間に設けることができ、潤滑特性に優れたものであれば、その材質は如何なるものであっても構わないが、本実施例においては、潤滑特性に特に優れていて、450〜600℃というような高温雰囲気においても、潤滑性能を失うことがない点で黒鉛100%のグラファイトシートを用いている。ここで、黒鉛とは、天然黒鉛、人工黒鉛又はこれらの混合物を意味している。
【0022】
また、その形状は、予めグラファイトシートを圧縮して円筒状に形成するか、あるいは、ブシュ126やローラ124の内周面又は連結ピン125やブシュ126の外周面に、グラファイトシートを加圧圧縮して摺動部材を形成することにより、潤滑性能がさらに高められるとともに、ブシュ126、ローラ124、連結ピン125の摺動面全体が黒鉛と接触するので、摺動摩耗が著しく低減されて、2列ローラチェーン120の長寿命化が達成できる。
【0023】
このように、2列ローラチェーン120として、固体潤滑無給油チェーンを用いることによって、2列ローラチェーン120自体の潤滑も不要となるため、その効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例であるローラーチェーンカップリング装置の軸方向断面図。
【図2】図1のローラチェーンカップリング装置を矢視II方向から見たときの側面図。
【図3】従来のローラチェーンカップリング装置の斜視図。
【符号の説明】
【0025】
100、200 ・・・ ローラチェーンカップリング装置
120、220 ・・・ 2列ローラチェーン
121 ・・・ (2列ローラチェーンの)外プレート
122 ・・・ (2列ローラチェーンの)内プレート
123 ・・・ (2列ローラチェーンの)中間プレート
124 ・・・ (2列ローラチェーンの)ローラ
125、225 ・・・ (2列ローラチェーンの)連結ピン
126 ・・・ (2列ローラチェーンの)ブシュ
130、140、230、240 ・・・ ボス付きスプロケット
135、145、235、245 ・・・ (ボス付きスプロケットの)歯部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に同軸上に配置された一対のボス付きスプロケット間に2列ローラチェーンを巻き掛け、前記一対のボス付きスプロケットの歯部に前記2列ローラチェーンを噛み合わせ、前記一対のボス付きスプロケット間でトルクを伝達するローラチェーンカップリング装置において、
前記ボス付きスプロケットの歯部に低摩擦コーティングが施されているとともに、
前記2列ローラチェーンに無給油ローラチェーンが使用されていることを特徴とするローラチェーンカップリング装置。
【請求項2】
前記ボス付きスプロケットの歯部に施された低摩擦コーティングが、テフロン(登録商標)コーティングであることを特徴とする請求項1記載のローラチェーンカップリング装置。
【請求項3】
前記2列ローラチェーンのローラ、内プレート、外プレートにテフロン(登録商標)コーティングが施されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のローラチェーンカップリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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