説明

ローラ清掃装置

【課題】
本発明は、清掃布によって、ローラの表面を清掃する場合に、ローラの表面の空気の層又は空気の流れを乱さないこと。
【解決手段】 清掃布6をローラ2の表面に押し付ける押圧体9を搭載した清掃ユニット3をローラ2の長手方向に沿って移動可能にサポートバー4に支持し、清掃ユニット3をローラ2の長手方向に移動させてローラの表面を清掃するローラ清掃装置1であって、ローラ2の回転方向を基準にして、押圧体9の下流側に配置され、ローラ2の長さと略同一の長さで、ローラ2の表面付近の空気の層又は空気の流れの部分的な乱れをローラ2の長さ方向に拡散させる拡散体27を有する拡散手段10を備え、清掃ユニット3によってローラ2の表面5の近傍の空気の層又は空気の流れが部分的に乱れることに対して、拡散手段10によって乱れた空気を拡散しローラ2の長手方向に均一化を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フイルム成形装置などに使用されるローラの表面を清掃するローラ清掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フイルム成形装置は、成形の過程でフイルムを冷却したり搬送するための多数のローラを備えている。これらのローラの表面は、常に清浄に維持されていることが望ましい。しかし、運転中に、ローラの表面は、いろいろな原因で異物が付着する。ローラに異物が付着すると、その異物は、成形したフイルムの品質を悪化させる。
【0003】
ローラの表面に付着した異物は、清掃布によって拭き取る必要がある。特許文献1には、ローラの表面に付着した異物を、清掃布によって自動的に拭き取るためのローラ清掃装置が記載されている。特許文献1のローラ清掃装置は、清掃布を供給する供給ロール、供給ロールから供給される清掃布を巻き取る巻取りロール及び供給ロールと巻取りロールの間に配置された押圧機構を備えている。
【0004】
押圧機構は、清掃布を回転しているローラの表面に押し付ける。そうすると、ローラの表面の異物は、清掃布によって拭きとられる。特許文献1に記載されたローラ清掃装置は、清掃布の幅が、ローラの長さに比較して狭くなっている。これは、清掃布の幅をローラの長さと同じ幅にすると、ローラ清掃装置の構造が大がかりになるためである。その代わりに、拭き取りを行う清掃ユニットをローラに沿ったレールによって移動可能とした。清掃ユニットを移動可能とすることにより、幅の狭い布であっても、ローラの全長を清掃することが可能である。幅が狭い清掃布を使用する場合は、ローラ清掃装置が簡単で保守が容易になるほか、清掃布とローラ表面の摩擦力が小さくなるという利点がある。
【0005】
フイルム成形装置は、多様な用途のフイルムを成形する。中には、非常に精密な均一さが要求されるフイルムがある。このような精密なフイルムを成形する場合は、幅の狭い清掃布を使用すると問題が発生する。その理由は、清掃装置によって、ローラの表面付近の空気の層又は空気の流れが不均一になるところにある。
【0006】
特許文献2には、Tダイ法によるフイルム成形装置の構成が示されている。特許文献2のフイルム成形装置は、溶融したフイルム原料をカーテン状に押し出してキャスティングローラに引き渡し、薄く均一になるように成形する。ローラは回転すると、表面付近に空気の層又は空気の流れが形成される。この空気の層又は空気の流れは、ローラの表面の全長にわたって均一に分散又は安定していることが望ましい。ローラ表面の近傍の空気の層又は空気の流れに部分的な乱れがあったり、空気の層又は空気の流れが不安定であると、成形するフイルムの均一性が実現できない。その結果、一般的に、特許文献2のフイルム成形装置のローラは、精密なフイルムを生産しているときには、ローラの清掃を行わない。これは、ローラを清掃している間は、ローラを清掃している部分の周辺の空気の層又は空気の流れが部分的に乱れて不均一になるためである。ローラ表面付近の空気の層又は空気の流れが部分的に乱れると、その乱れが成形前のフイルムまで到達し、フイルムの均一性に影響を与える。
【0007】
フイルム成形装置で、精密なフイルムを成形する場合は、フイルム成形装置の動作を実際にフイルムを生産するフイルム生産モードとフイルムの生産を行わない非生産モードに分け、ローラの清掃は、非生産モードで行うようにしていた。
【0008】
特許文献3には、走行するウエブの表面の空気の層を、ブレードによって除去した印刷機が記載されている。この印刷装置は、ウエブが走行しているときに引き連れてくる空気の層を除去するものである。また、特許文献4には、回転するローラに近接したハウジングのエッジの部分に、ダクト状の隔壁を設けて、隔壁によって、ハウジング内とハウジング外でミストの出入りを遮蔽する構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−086474号公報
【特許文献2】特開2000−153547号公報
【特許文献3】特開平06−320702号公報
【特許文献4】特開2010−094928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の精密なフイルムの成形に使用するフイルム成形装置のローラ清掃装置は、フイルムの生産中には清掃動作をさせることができなかった。この原因は、特にローラ清掃装置で使用する清掃布の幅がローラの全長より狭い場合に、清掃布とローラが接触すると、清掃布の影響によって、ローラの表面付近の空気の層が部分的に乱れたり、不安定になるところにある。
本発明は、清掃布によって、ローラの表面を清掃する場合に、ローラの表面の空気の層又は空気の流れが部分的に乱れても、その乱れをローラの長手方向に沿って拡散させることのできるローラ清掃装置を実現する。
また、特に、ローラ清掃装置で使用する清掃布の幅がローラの全長より狭い場合であっても、ローラの清掃によって、ローラの表面付近の空気の層又は空気の流れの部分的な乱れが生じても、その乱れをローラの長手方向に沿って拡散させるローラ清掃装置を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ローラの表面を拭き取る清掃布を供給する供給手段、前記供給手段から供給される前記清掃布を巻き取る巻取り手段、前記供給手段及び前記巻取り手段の間にあって、前記清掃布をローラの表面に押し付ける押圧体を搭載した清掃ユニットと、前記清掃ユニットを前記ローラの長手方向に沿って移動可能に支持するサポートバーと、前記清掃ユニットを前記ローラの長手方向に移動させる駆動手段を備えたローラ清掃装置において、
前記ローラの回転方向を基準にして、前記押圧体の下流側に配置され、前記ローラの長さと略同一の長さで、前記清掃ユニットに起因する前記ローラの表面付近の空気の層又は空気の流れの部分的な乱れを前記ローラの長手方向に沿って拡散させる拡散手段を備えたことを特徴とするローラ清掃装置とした。
【0012】
さらに、本発明は、以下の技術的な思想を包含する。
(1)前記拡散手段は、前記ローラと略同一の長さで前記ローラに沿って設けられ、固定側は前記ローラに沿って固定され、前記固定側と対向する拡散側は前記ローラの表面に接近した位置にあり、前記拡散側に、前記ローラの長さと略同一の長さで、前記ローラの表面付近の空気の層又は空気の流れの部分的な乱れを拡散してローラの長手方向について空気の層又は流れを均一化する拡散体を備えたことを特徴とするローラ清掃装置としたこと。
(2)前記拡散体は、柔軟な合成樹脂であり、ほぼ前記ローラの外周に合わせて成形したものであり、前記ローラの表面に近接又は弱く接触していることを特徴とするローラ清掃装置としたこと。
(3)前記拡散体は、シートであり、前記ローラの回転にともなって、前記ローラの表面から浮上することを特徴とするローラ清掃装置としたこと。
(4)前記拡散体は、袋状のループ体であることを特徴とするローラ清掃装置としたこと。
(5)前記拡散体は、前記ローラの表面に接触又は前記ローラの表面に近接したブレードであることを特徴とするローラ清掃装置としたこと。
(6)前記拡散体は、前記ローラの表面に接触しないブラシであることを特徴とするローラ清掃装置としたこと。
(7)前記拡散体は、前記ローラの表面に接触する接触ブラシであることを特徴とするローラ清掃装置としたこと。
(8)前記拡散体は、前記ローラの長手方向に沿って、前記ローラの表面に近接して設けた、前記ローラの表面に向けて開口を備えた開口ダクトであることを特徴とするローラ清掃装置としたこと。
(9)前記ローラの回転方向を基準にして、前記押圧体の上流側及び下流側に配置され、前記ローラの長さと略同一の長さで、前記清掃ユニットに起因する前記ローラの表面付近の空気の層又は空気の流れの部分的な乱れを前記ローラの長さ方向について空気の層または流れを拡散する一対の拡散手段を備えたことを特徴とするローラ清掃装置としたこと。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、清掃ユニットの押圧体によって清掃布をローラの表面に接触させ、しかも清掃ユニットをローラの長手方向に移動させても、押圧体の下流側に、ローラの表面付近の空気の層又は空気の流れの部分的な乱れを拡散させる拡散手段を備えた。清掃布を接触させると、清掃布を接触させていない部分に比較して、ローラの表面付近の空気の層又は空気の流れが乱れる。拡散手段は、ローラの長手方向に沿って、空気の層又は流れを拡散させて均一化する。従って、清掃ユニットの存在による空気の層の乱れ又は空気の流れの部分的な乱れは拡散手段によって拡散し、ローラの表面付近の空気の層又は空気の流れの部分的な乱れが、ローラの外周全体に及ばないようにした。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の側面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の携帯の正面図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施の形態の側面図である。
【図4A】図4Aは、本発明の第3の実施の形態の側面図である。
【図4B】図4Bは、本発明の第3の実施の形態の変形例を示す部分側面図である。
【図5】図5は、本発明の第4の実施の形態の側面図である。
【図6】図6は、本発明の第5の実施の形態の側面図である。
【図7】図7は、本発明の第6の実施の形態の側面図である。
【図8】図8は、本発明の第7の実施の形態の側面図である。
【図9】図9は、本発明の第8の実施の形態の側面図である。
【図10】図10は、空気の層又は空気の流れの部分的な乱れの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ローラの回転方向を基準にして、押圧体の下流側に、ローラの長さと略同一の長さで、ローラの表面付近の空気の層又は流れの部分的な乱れを拡散させる拡散手段を設け、空気の層又は空気の流れをいったん遮蔽したり制限することで実現した。
以下に、本発明の実施の態様を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、第1の実施の形態の側面図である。図2は、図1に示した実施の態様の正面図である。図1は、図2の記号N1、N2から側面を見た図であり、図2は図1の記号M1、M2から正面を見た図である。
【0017】
図1において、1はローラ清掃装置である。2はローラである。ローラ2は、図1において記号Rに示すように、反時計方向に回転する。3は、清掃ユニットであり、4はサポートバーである。清掃ユニット3は、ローラ2の表面5を拭き取る清掃布6を供給する供給手段7、供給手段7から供給される清掃布6を巻き取る巻取り手段8、供給手段7及び巻取り手段8の間にあって、清掃布6をローラ5の表面5に押し付ける押圧体9を搭載している。
【0018】
10は、ローラ2の回転方向Rを基準にして、押圧体9の下流側に配置した拡散手段である。拡散手段10は、ローラ2の長さLと略同一の長さがあり、ローラ2の表面5付近の空気の層又は空気の流れの部分的な乱れを拡散して均一化することにより、空気の層又は空気の流れの部分的な乱れが拡散手段10の下流に及ばないようにする。
【0019】
図2において、11、12は、フイルム成形装置のフレームである。13、14は、ローラ2をフレーム11、12に対して回転可能に支持する回転軸である。ローラ2は、特定のフイルム成形装置の特定のローラに限定はされないが、特許文献2に記載されたTダイ法によるフイルム成形装置の例で説明すれば、Tダイの直後のキャスティングローラに相当する。なお、キャスティングローラの表面温度は、80度Cから200度C程度の高温に維持されている。
【0020】
サポートバー4は、支持構造体15、16によってフレーム11、12に両端が支持された剛体である。サポートバー4には、レール17、18が取り付けられている。清掃ユニット3には、移動ブロック19、20が取り付けられている。清掃ユニット3は、移動ブロック19、20とレール17、18との組み合わせにより、サポートバー4のレール17、18に案内されて滑らかにローラ2の長手方向に移動可能である。
【0021】
21は、送りねじである。送りねじ21は、フレーム11に固定されたモーター22によって回転駆動される。23は、清掃ユニット3の側に取り付けられた送りブロックである。送りブロック23は、送りねじ21と螺合され、送りねじ21の回転により、送りブロック23が移動する。すなわち、モーター22、送りねじ21及び送りブロック23は、清掃ユニット3を、レール17、18に沿ってローラ2の長手方向に移動させる駆動手段を構成する。
【0022】
清掃布6は、供給手段7から送られ、押圧体9によってローラ2の表面に押し付けられ、巻取り手段8によって巻き取られる。押圧体9は、図1に示した態様ではばね性を持ったブレードであるが、ゴムのパッドやローラであってもよい。ブレードによって構成される押圧体9は、回転軸24に回転可能に取り付けられている。押圧体9の長さは、ほぼ清掃布6の幅と同じでよいが、望ましくは、清掃布6の幅よりも短いほうがよい。押圧体9の長さが清掃布6の幅よりも短ければ、押圧体9のブレードの先端は、清掃布6によって完全に覆われ、ローラ2の表面5に直接接触することはない。
【0023】
図2に示すように、清掃布6の幅Fは、ローラ2の長さLよりも短い。そのため、清掃ユニット3は、サポートバー4に沿って移動することよって、ローラ2の長さLを清掃することができる。ローラ2の長さLに比べて清掃布6の幅Fが狭い利点は、ローラ2の表面5と清掃布6の摩擦抵抗が小さくなるところにある。摩擦抵抗が小さければ、ローラ2の回転に対する負荷が小さくなる。そのため、摩擦抵抗を適切に小さくすることが可能であれば、フイルム成形装置が生産モードであるときにも清掃が可能となる。
【0024】
拡散手段10は、ほぼローラ2の全長Lと同じ長さの細長い板状の構造体である。ローラ2の長手方向に沿って延びる板状の構造体の一方の側部とそれと反対の他方の側部は、一方を固定側25と他方を拡散側26として設けられている。固定側25はサポートバー4に固定され、一方、拡散側26は、ローラ2の表面5の近くまで伸びている。拡散手段10の拡散側26には、拡散体27が設けられている。拡散体27は、柔軟な合成樹脂であり、ほぼローラ2の外周に合わせて成形したものである。拡散体27は、ローラの2の外周5に近接して非接触であるか、又はローラ2の表面5に弱く接触していてもよい。
【0025】
ローラ2の表面5は、鏡面に形成されており、ローラ2が回転することによって、表面5及びその近傍に空気の層又は空気の流れを誘発する。その空気の層又は空気の流れは、清掃布6が表面5の接触している部分の円周と、清掃布6が接触していない部分の円周では状態が異なる。
【0026】
図10は、空気の層又は空気の流れの部分的な乱れの説明図であり、図1に示した拡散手段10を持たない場合の例である。45は、Tダイを模式的に示したものである。フイルムの素材46は、カーテン状にTダイ45から押し出されて、47に示す位置でローラ2の表面5と接する。また、フイルムの素材46は、ローラ2の表面5の48で示す位置でローラ2から離れる。
【0027】
清掃ユニット3の清掃布6は、符号49に示す位置でローラ2の表面5に接触する。そうすると、清掃布6が、ローラ2に接触する場合は、ローラ2の表面の符号48で示す位置から符号49で示す位置までのFの領域と、符号49の位置から符号47に示す位置までのGの領域に分断される。一方、清掃布6が接触しない場合は、Fの領域とGの領域は連続している。拡散手段を持たないローラ清掃装置の場合は、Gの領域において、特に清掃布6の端の部分で、表面5付近の空気の層又は空気の流れに部分的な乱れが生じ、その乱れはフイルムの素材46に付近に到達する。
【0028】
図2において、拡散手段10がないと仮定すると、ローラ2の回転方向を基準にして、清掃布6が接触した部分の下流側のAの部分と、清掃布6が接触しないBの部分では、空気の層又は流れの状態に差が生じる。そして、空気の層又は空気の流れの異なる状態は、清掃ユニット3の移動とともに変化する。この変化は、フイルム成形装置のキャスティングローラについてはフイルムの性質を不均一にする原因となるため、望ましくない。すなわち、フイルム成形装置で成形するフイルムの素材46に対しては、風圧の乱れとして作用する。
【0029】
そこで、ローラ2の回転方向Rを基準にして、押圧体9の下流側に、ローラ2の長さと略同一の長さで、ローラ2の表面5付近の空気の層又は流れの部分的な乱れを拡散させる拡散手段10を設けるようにした。拡散手段10は、ローラ2の回転方向Rを基準にして清掃ユニット3の下流側にあり、空気の層又は空気の流れをいったん遮蔽したり制限することにより、図2の領域A及び領域Bの空気の層又は空気の流れを拡散混合することにより均一化する作用がある。
【0030】
27は、拡散手段10の拡散側26に沿って設けた拡散体である。拡散体27は、ローラ2の表面5に対して、接触していてもよいが、わずかに離れていてもよい。拡散体27のすぐ下流(たとえば、ローラ2の回転方向の角度で3度)を均一化する必要がある場合には、拡散体27は、ローラ2の表面5に接触していたほうがよい。一方、拡散体27から離れた位置(たとえば、ローラ2の回転方向の角度で25度)を均一化する必要がある場合には、拡散体27をローラ2の表面5に接触させないように設けることができる。拡散体27をローラ2の表面5に接触させない場合は、拡散体27には、偶発的な異物の付着がないため、ローラ清掃装置1を、長時間連続して動作させることが可能となる。図1に示した例では、拡散手段10と拡散体27は、相互に分離可能な構造体として示したが、拡散手段10の一部を加工して拡散体27を形成してもよい。この場合は、拡散手段10の拡散側26が拡散体27を兼ねることになり、構造が簡単になる。
【0031】
図3は、本発明の第2の実施の形態の側面図である。図3において、28は拡散体としてのシートであり、拡散手段10の拡散側26に沿って設けた例である。シート28は、布、不織布、ゴム、合成樹脂、金属、復元力のあるフイルム及びそれらを組み合わせたものであってよい。また、シート28は、ローラ2がキャスティングローラである場合は耐熱性があることが望ましい。シート28は、ローラ2の表面5に常時接触するようにすることもできるが、ローラ2の回転速度によっては、ローラ2の表面5からローラ2の表面5の近傍の空気の層又は空気の流れによって浮上するようにすることができる。図3のおいて、Sは、表面5からのシート28の浮上高さを模式的に描いており、実際の高さSは、表面5の平滑度、ローラ2の回転速度及びシート28の構造によって異なる。シート28の自由端側Tが、ローラ2の表面5から浮上すると、シート28は表面5に接触しない。シート28は、ローラ2の表面5で波うつ現象が生じないような質量または柔軟さをもったものが良い。
【0032】
図4Aは、本発明の第3の実施の形態の側面図である。図4Aにおいて、29は拡散体としてのループ体であり、拡散手段10の拡散側26に沿って設けた例である。ループ体29は、チューブ状になっており、外皮30で示すようにフイルム、不織布、マイクロファイバなどの布などを袋状に成形したものでよい。外皮30は、1枚ではなく、複数枚の材料を重ねて構成することもできる。外皮30の内側31は、単に大気に開放した中空であるほか、高圧空気で満たしたり、発砲した柔軟な合成樹脂などで満たすことができる。内側31を、高圧空気で満たす場合は、外皮30に柔軟な材料を使用し、ループ体29に弾力性を持たせることができる。ループ体29は、ロール2の表面5に接触させてもよく、わずかに離れるようにしてもよい。ループ体29をマイクロファイバなどの布を重ねて構成し、高圧空気で満たすと、ループ体29の表面からは、常にわずかに空気が噴き出すようにすることができる。その結果、ループ体29と表面5の距離がわずかに離れた位置で安定する。また、ループ体29と表面5が接触する場合でも、接触圧が安定する。拡散体が図4Aに示すループ体29の場合は、清掃装置1が、ローラ2に対して天地が反転した状態で動作する場合であっても、ループ体29の形状を維持することが容易である。
【0033】
図4Bは、図4Aに示した本発明の第3の実施の形態の変形例である。拡散体としてのループ体29は、拡散側26に沿ってループ50に示すように、ローラ2の表面50に垂らすように形成した。ループ50は、1枚の布でもよいが、マイクロファイバや不織布などの布を複数枚重ねて形成することができる。ループ体29は、部分的にあるいは全体が、振動や揺らぎが生じる可能性がある。しかし、布は、複数枚重ねることにより、振動などが発生しても相互にこすれあうため、振動や揺らぎのエネルギーを吸収することができる。また、ループ50の自重によって表面5へ接触するため、表面5への無理な接触圧が生じない。
【0034】
図5は、本発明の第4の実施の形態の側面図である。図5において、32は拡散体としてのブレードであって、拡散側26に沿って設けた例である。ブレード32の先端33は、ローラ2の表面5と接触しているか、又はわずかに離れている。ブレード32は、拡散手段10の本体と一体に設けてもよく、別の構造体であってもよい。ブレード32は、先端33が1枚なので、先端33と表面5の距離の管理が容易である。なお、ブレード32の少なくとも先端33の部分は、表面5と衝突しても、表面5に傷を生じないゴムや樹脂などの柔らかい材料が適している。
【0035】
図6は、本発明の第5の実施の形態の側面図である。図6において、34は拡散体としての非接触ブラシであって、ブラシ34を、拡散側26に沿って設けた例である。ブラシ34は、先端35が、ローラ2の表面5に接触しない非接触ブラシである。ブラシ34は、耐熱性が必要なければ動物の毛、合成樹脂、植物の繊維などでよく、耐熱性が必要であれば合成樹脂が使用できる。拡散体としてブラシ34を使用すれば、先端35と表面5の距離の管理が容易であるという利点がある。
【0036】
図7は、本発明の第6の実施の形態の側面図である。図7において、36は拡散体としての接触ブラシである。接触ブラシ36の先端37は、ローラ2の表面2に接触している。接触ブラシ36は、耐熱性が必要なければ、鳥の羽根、動物の毛、植物の繊維、布を細く切ったもの、合成樹脂を繊維や紐状に加工したものなどが使用でき、耐熱性が必要な場合は、それらの中から選択する。拡散体として接触ブラシ36を使用する利点は、先端37と表面5の接触状態が自由に選択できるところにある。ローラ2の表面温度が低い場合は、接触ブラシ36に鳥の羽根を使用した例では、羽根の弾力及び表面状態と相まって、接触ブラシ36と表面5の接触抵抗を、極めて少なくすることが可能である。
【0037】
図8は、本発明の第7の実施の形態の側面図である。図8において、38は拡散体としての開口ダクトである。開口ダクト38は、拡散側26に沿って設けた、ローラ2の表面5に向けて開口を備えた開口ダクトである。開口ダクト38の開口の先端39は、ローラ2の表面5に近接するが接触はしない。開口ダクト38は、ダクト40、41のように複数並べることができる。開口ダクト38は、ダクト40、41などによって、ロール2の表面5の近傍の空気の層又は空気の流れをまきあげて、開口ダクト38の下流側の空気の層又は空気の流れの部分的な乱れを拡散する。拡散体として開口ダクト38を使用する利点は、開口の先端39と表面5の距離が比較的離れていても遮蔽及び均一化の作用があるところにある。そのため、耐熱構造が、容易に実現可能である。開口ダクト38の少なくとも先端39は、ローラ2に接触したときに表面5に傷を生じないように、ローラ2の表面5よりも柔らかい合成樹脂などで成形するのがよい。また、ダクトの数は、図8に示した2本に限らず、1本でもよく、3本以上であってもよい。
【0038】
図9は、本発明の第8の実施の態様の側面図である。図9に示す例では、大部分は図1に示した例と同様の構成であるが、ローラ2の回転方向Rを基準にして、押圧体9を挟んで、下流側に拡散手段10を設け、上流側に拡散手段42を設けた。拡散手段10は、拡散手段42とともに、ローラ2の表面5の空気の層又は空気の流れの部分的な乱れの原因である清掃ユニット3を囲むようにした。このことにより、構造は複雑になるが、空気の層又は空気の流れの乱れの原因となる清掃ユニット3を完全に閉じ込めることが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ローラ清掃装置
2 ローラ
3 清掃ユニット
4 サポートバー
5 表面
6 清掃布
7 供給手段
8 巻取り手段
9 押圧体
10 拡散手段
26 拡散側
27 拡散体
28 シート
29 ループ体
32 ブレード
34 非接触ブラシ
36 接触ブラシ
38 開口ダクト
42 上流側拡散手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラの表面を拭き取る清掃布を供給する供給手段、前記供給手段から供給される前記清掃布を巻き取る巻取り手段、前記供給手段及び前記巻取り手段の間にあって、前記清掃布をローラの表面に押し付ける押圧体を搭載した清掃ユニットと、
前記清掃ユニットを前記ローラの長手方向に沿って移動可能に支持するサポートバーと、
前記清掃ユニットを前記ローラの長手方向に移動させる駆動手段を備えたローラ清掃装置において、
前記ローラの回転方向を基準にして、前記押圧体の下流側に配置され、前記ローラの長さと略同一の長さで、前記清掃ユニットに起因する前記ローラの表面付近の空気の層又は空気の流れの部分的な乱れを前記ローラの長手方向に沿って拡散させて空気の層又は流れを均一化する拡散手段を備えたことを特徴とするローラ清掃装置。
【請求項2】
前記拡散手段は、前記ローラと略同一の長さで前記ローラに沿って設けられ、固定側は前記ローラに沿って固定され、前記固定側と対向する拡散側は前記ローラの表面に接近した位置にあり、前記拡散側に、前記ローラの長さと略同一の長さで、前記ローラの表面付近の空気の層又は空気の流れの部分的な乱れを拡散させてローラの長手方向に沿って空気の層又は流れを均一化する拡散体を備えたことを特徴とする請求項1に記載のローラ清掃装置。
【請求項3】
前記拡散体は、柔軟な合成樹脂であり、ほぼ前記ローラの外周に合わせて成形したものであり、前記ローラの表面に近接又は弱く接触していることを特徴とする請求項2に記載のローラ清掃装置。
【請求項4】
前記拡散体は、シートであり、前記ローラの回転にともなって、前記ローラの表面から浮上することを特徴とする請求項2に記載のローラ清掃装置。
【請求項5】
前記拡散体は、袋状のループ体であることを特徴とする請求項2に記載のローラ清掃装置。
【請求項6】
前記袋状のループ体は、布を複数枚重ねて構成したことを特徴とする請求項5に記載のローラ清掃装置。
【請求項7】
前記拡散体は、前記ローラの表面に接触又は前記ローラの表面に近接したブレードであることを特徴とする請求項2に記載のローラ清掃装置。
【請求項8】
前記拡散体は、前記ローラの表面に接近した非接触ブラシであることを特徴とする請求項2に記載のローラ清掃装置。
【請求項9】
前記拡散体は、前記ローラの表面に接触する接触ブラシであることを特徴とする請求項2に記載のローラ清掃装置。
【請求項10】
前記拡散体は、前記ローラの長手方向に沿って、前記ローラの表面に近接して設けた、前記ローラの表面に向けて開口を備えた開口ダクトであることを特徴とする請求項2に記載のローラ清掃装置。
【請求項11】
ローラの表面を拭き取る清掃布を供給する供給手段、前記供給手段から供給される前記清掃布を巻き取る巻取り手段、前記供給手段及び前記巻取り手段の間にあって、前記清掃布をローラの表面に押し付ける押圧体を搭載した清掃ユニットと、
前記清掃ユニットを前記ローラの長手方向に沿って移動可能に支持するサポートバーと、
前記清掃ユニットを前記ローラの長手方向に移動させる駆動手段を備えたローラ清掃装置において、
前記ローラの回転方向を基準にして、前記押圧体の上流側及び下流側に配置され、前記ローラの長さと略同一の長さで、前記清掃ユニットによる前記ローラの表面付近の空気の層又は空気の流れの部分的な乱れを前記ローラの長さ方向に沿って拡散させて空気の層又は流れを均一化する一対の拡散手段を備えたことを特徴とするローラ清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−245492(P2012−245492A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121069(P2011−121069)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000230113)日本ボールドウィン株式会社 (23)
【出願人】(594113126)
【Fターム(参考)】