説明

ローラ軸平行保持装置及びローラ取付方法

【課題】複数のローラを互いに軸方向が平行となるように所定の取付箇所に取り付け固定する作業をこれまでになく簡便に行える画期的な技術を提供する。
【解決手段】架設体Aに所定の並設間隔Lを介して一対の取付係合部1を設け、この取付係合部1と係合する係止部2をローラ3の回動軸3aの端部,若しくは回動軸3aの端部を支持する軸支持部4に設けて、この係止部2に架設体Aの取付係合部1を係合することで架設体Aをローラ3の軸端部に取り付け固定し得ると共に、この架設体Aを一対のローラ3の軸端部間に架設状態に取り付け固定することでこの軸端部間を所定の離間距離に保持する構成とし、この架設体Aを一対のローラ3の軸方向両側の軸端部間に夫々架設状態に取り付け固定した際この一対のローラ3の回動軸3aが互いに平行に保持されるように各架設体Aに設ける前記一対の取付係合部1間の並設間隔Lを夫々設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複数のローラを所定のローラ取付箇所に取り付け固定する際に、各ローラの軸方向が互いに平行となるように保持した状態で前記取り付け固定作業が行えるローラ軸平行保持装置、及びこのローラ軸平行保持装置を用いたローラ取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、薄膜フィルムやテープなどのシート材を搬送するシート搬送装置が種々提案されている。これらは、搬送用のローラを互いに回動軸が平行となるように搬送方向に複数配設して、これら各ローラによりシート材にテンションをかけながら所定の搬送方向に搬送するものである。
【0003】
従って、各ローラ同志の回動軸が平行でなかった場合、このローラ間に緊張させたシート材に横方向(巾方向)の余計なテンションが付与し、これが搬送中のシート材に捩れや歪みを生じさせ、ひいては、シート材の損傷や変形などのトラブルを招く問題となる。
【0004】
よって、この種のシート搬送装置を使用するにあたっては、搬送装置本体に取り付け固定する各ローラの取付位置や取付姿勢を適宜調整して各ローラの回動軸が互いに平行となるようにセッティングする作業が必須である。
【0005】
このセッティング作業は一般に、搬送装置本体に取り付け固定するローラの回動軸を水準器などを使用して水平にセットした上で、搬送装置本体に予め水平に固定された一方のローラ(固定側ローラ)の回動軸に対して、もう一方のローラ(調整側ローラ)の回動軸を平行にセットしてこの調整側ローラを搬送装置本体に取り付け固定する。具体的には測長器などを用いて固定側ローラの一端部と調整側ローラの一端部,及び固定側ローラの他端部と調整側ローラの他端部の離間距離を均一に合わせることで双方のローラの回動軸を平行にセットして前記調整側ローラの取り付け固定を行う。このセッティング作業を順次繰り返すことで、搬送装置本体に複数のローラを次々と互いに回動軸が平行となるように取り付け固定していく。
【0006】
ところで、この種のシート搬送装置において、ローラを搬送装置本体に取り付け固定する手段としては、例えばボルトとナットなどの締結具を使用した締結固定手段(例えばボルトを挿通する取付孔を装置側とローラ側に夫々設け、これら取付孔を合わせてボルトを挿通しナットで締結固定する。特にこの装置側とローラ側のいずれかの取付孔が長孔形状となっており、この長孔をボルトが移動可能な範囲において、搬送装置本体に対してローラの取り付け固定位置を移動調整(平行調整)して所定位置にて締結固定する。)が一般的であるから、この締結具の締め付け操作によりローラが僅かに位置ズレするなどして、どうしてもローラの取り付け固定時に位置ズレが生じ易かった。そこで、例えば、ローラの一端側を搬送装置本体に取り付け固定した後、この一端側の取り付け固定位置のズレのぶんだけ他端側の取り付け位置を補正して取り付け固定したとしても、結局この他端側の取り付け固定の際にも前記位置ズレが生ずる為、ローラを所期通りの回動軸の軸方向(即ち、他のローラの回動軸に対して平行な軸方向)に取り付け固定することは困難であった。
【0007】
このローラの回動軸の軸方向のズレ自体はたとえ非常に僅かでも、搬送されるシート材には確実に捩れや歪みの原因となる余計なテンションが付与され、シートの破損や変形などのトラブルの原因となるなど、その影響は大きい。
【0008】
そこで、これまで、上記ローラのセッティング作業を行う際には、ローラの一端側及び他端側を何度も搬送装置本体に取り付けたり、取り外して位置補正したりを繰り返しながら徐々にズレを補正してローラの回動軸を適正な軸方向に合わせるという作業を行っていた為、非常に作業性が悪く、高い熟練と多くの時間や手間並びにコストを要する非常に厄介な作業であった。
【0009】
尚、例えばこの種のシート搬送装置において、ローラの回動軸が自動的に適正な軸方向に補正される機能を具備したタイプも従来から提案されており、例えば、特開2002−255421号公報には、ローラの回動軸の端部を回動自在に支持する軸受け部が揺動してシート材に余計なテンションが付与しないように適正な軸方向に回動軸を補正する機能を具備したものが開示されている。
【0010】
しかし、これら軸方向を自動補正するタイプは、どうしても複雑な構造となってしまう為、装置自体の生産性に劣るだけでなく、上記の一般的なタイプに比して著しくコスト高となるなどの問題があり実用的とは言えない。
【0011】
【特許文献1】特開2002−255421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述したようにこれまで高い熟練と、多くの手間や時間並びにコストを要した厄介なシート搬送装置の複数の各ローラのセッティング作業を、簡単に短時間で効良く、しかも確実にローラ同志の回動軸が互いに平行となるように精度良く実施できる極めて作業性及び実用性に秀れた画期的なローラ軸平行保持装置、及びこのローラ軸平行保持装置を用いたローラ取付方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0014】
ローラ3の回動軸3a間に架設する架設体Aに一対の取付係合部1を所定の並設間隔Lを介して設け、この架設体Aに設けた取付係合部1を係合する係止部2をローラ3の回動軸3aの端部,若しくはこの回動軸3aの端部を支持する軸支持部4に設けて、この係止部2に前記架設体Aの取付係合部1を係合することでこの架設体Aを前記ローラ3の軸端部に取り付け固定し得るように構成すると共にこの架設体Aを一対のローラ3の軸端部間に架設状態に取り付け固定することでこの一対のローラ3の軸端部間を所定の離間距離に保持するように構成し、この軸間距離を保持する架設体Aを前記一対のローラ3の軸方向両側の軸端部間に夫々架設状態に取り付け固定した際にこの一対のローラ3の回動軸3aが互いに平行に保持されるように各架設体Aに設ける前記一対の取付係合部1間の並設間隔Lを夫々設定したことを特徴とするローラ軸平行保持装置に係るものである。
【0015】
また、前記ローラ3の回動軸3aの端部,若しくはこの回動軸3aの端部を支持する軸支持部4は、スライド調整固定機構Sを介してこのローラ3の回動軸3aの軸方向と直交する方向にスライド調整して所定の位置で位置決め固定可能に構成し、このスライド調整固定機構Sを介してスライド調整固定可能な前記回動軸3aの端部若しくは軸支持部4に前記係止部2を設ける構成としたことを特徴とする請求項1記載のローラ軸平行保持装置に係るものである。
【0016】
また、前記一対のローラ3の回動軸3aを互いに平行とした際、この一対のローラ3の軸方向一側に設けた各係止部2間の離間距離,及び軸方向他側に設けた各係止部2間の離間距離が等しい距離となるように各ローラ3に設ける係止部2の配設位置を夫々設定し、この一対のローラ3の軸方向両側の軸端部間に夫々架設状態に取り付け固定する各架設体Aに設ける前記一対の取付係合部1間の並設間隔Lは互いに等しい距離に夫々設定したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載のローラ軸平行保持装置に係るものである。
【0017】
また、前記ローラ3の係止部2は、このローラ3の回動軸3aの軸方向端部面,若しくはこの回動軸3aの端部を支持する軸支持部4の軸方向端部面に軸方向に形成した係止凸部2若しくは係止凹部2としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のローラ軸平行保持装置に係るものである。
【0018】
また、前記架設体Aは、平板材に前記取付係合部1として前記ローラ3の係止凸部2若しくは係止凹部2に嵌合係止する取付係合凹部1若しくは取付係合凸部1を所定の並設間隔Lを介して形成し、この架設体Aを前記ローラ3の回動軸3aの軸方向端部面,若しくはこの回動軸3aの端部を支持する軸支持部4の軸方向端部面に沿設状態に取り付け固定し得るように構成したことを特徴とする請求項4記載のローラ軸平行保持装置に係るものである。
【0019】
また、請求項1〜5のいずれか1項に記載のローラ軸平行保持装置Hを用い、前記ローラ3の回動軸3aの端部,若しくはこの回動軸3aの端部を支持する軸支持部4は、スライド調整固定機構Sを介してこのローラ3の回動軸3aの軸方向と直交する方向にスライド調整して所定の位置で位置決め固定可能に構成し、このスライド調整固定機構Sを介してスライド調整固定可能な前記回動軸3aの端部若しくは軸支持部4に前記係止部2を設ける構成とし、一対のローラ3に設けた各係止部2と、前記架設体Aに設けた一対の取付係合部1とを係合し得るように前記スライド調整固定機構Sを介してローラ3の位置をスライド調整し、この一対のローラ3の軸方向両側の軸端部間に夫々前記架設体Aを架設状態に取り付け固定した上で、この各ローラ3の回動軸3a若しくは軸支持部4を前記スライド調整固定機構Sにより位置決め固定することを特徴とするローラ取付方法に係るものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上述のように構成したから、例えば各ローラの回動軸が互いに平行となるように複数のローラを取り付け固定する作業を、これまでに無く簡単にして確実に達成できる作業性及び実用性に秀れたローラ軸平行保持装置となる。
【0021】
即ち、本発明は、一対のローラの軸方向両側の軸端部間に夫々架設体を取り付け固定することで、この一対のローラの軸方向両側の軸端部間を夫々所定の離間距離に保持し、これにより一対のローラの回動軸を互いに平行となるように保持できる。故に、このようにローラを平行保持状態としたまま例えば上記のローラの取り付け固定作業を実施すれば、従来例のようにローラ取り付け固定時の位置ズレの問題は生ぜず、ローラをたった一度の取り付け固定作業で所期通りの位置に確実に取り付け固定するといったことも本発明を用いることで容易に実現可能である。
【0022】
よって、本発明は、単に予め所定の並設間隔で取付係合部が設けられた架設体を、ローラ間に架設状態に取り付け固定したうえで、ローラをローラ取り付け箇所に適宜取り付け固定するだけの極めて簡単な作業で、これまで非常に厄介とされていたローラのセッティング作業(互いに回動軸が平行となるようにローラを取り付け固定する作業)を誰でも簡単に短時間で、しかも確実に高い平行精度にて実施でき得る極めて作業性及び実用性に秀れた画期的なローラ軸平行保持装置となる。
【0023】
また、請求項2記載の発明においては、例えば、スライド調整固定機構を介して一対のローラの離間距離、即ち、ローラの軸方向一側の軸端部間の離間距離,及び軸方向他端側の軸端部間の離間距離を夫々調整して、この軸方向両側の軸端部間に夫々架設体を架設状態に取り付け固定し、この各架設体によりこの一対のローラを互いに回動軸が平行となるように保持した状態で前記スライド調整固定機構によりこの各ローラの軸端部を位置決め固定することで、この一対のローラを簡便に互いに回動軸が平行となるように取り付け固定できるなど、上記秀れた作用効果を確実に発揮し得るローラの取り付け固定作業を一層簡易にして確実に実施できる。
【0024】
また、請求項3記載の発明においては、一対のローラの軸方向両側の軸端部間に夫々架設状態に取り付け固定する各架設体に設ける前記一対の取付係合部間の並設間隔を、単に互いに等しい距離に夫々設定すれば良いので、それだけこの各取付係合部の配設位置の設定が簡単に行え、それだけ各架設体を簡易に設計実現できると共に、例えば軸方向両側に夫々架設状態に取り付け固定する各架設体を同一形状とすることも容易で、それだけ生産性やコスト性の向上を容易に図り得る。
【0025】
また、請求項4記載の発明においては、単に凹凸嵌合による係合係止構造を採用することで、ローラの軸端部への架設体の取り付け固定作業を簡単な作業で確実に達成できることとし、それだけ一層実用性に秀れる。
【0026】
また、請求項5記載の発明においては、単に平板材に凸部や凹部を形成するだけのシンプルな構造で、本発明の上記秀れた作用効果を確実に発揮し得る架設体Aを構成することができ、この点においても生産性やコスト性に秀れ、実用性に秀れる。
【0027】
また、請求項6記載の発明においては、請求項1〜5記載のローラ軸平行保持装置を用いて、誰でも簡単にして確実に互いの回動軸が平行となるように複数のローラを位置決め固定(取り付け固定)できる作業性及び実用性に秀れた画期的なローラ取付方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0029】
架設体Aに設けた取付係合部1を、ローラ3の回動軸3aの端部,若しくはこの回動軸3aの端部を支持する軸支持部4に設けた係止部2に係合することでこの架設体Aを前記ローラ3の軸端部に取り付け固定できる。
【0030】
また、この架設体Aには、前記取付係合部1を所定の並設間隔Lを介して一対設けているので、一対のローラ3の各係止部2に夫々この架設体Aの取付係合部1を係合してこの一対のローラ3の軸端部間にこの架設体Aを架設状態に取り付け固定できると共に、この際、この架設体Aを架設した前記軸端部間を所定の離間距離に保持できる。
【0031】
更に、この架設体Aを一対のローラ3の軸方向両側の軸端部間に夫々架設状態に取り付け固定した際に、この一対のローラ3の回動軸3aが互いに平行に保持されるように前記各架設体Aに設ける前記一対の取付係合部1間の並設間隔Lを夫々設定している。
【0032】
従って、一対のローラ3の軸方向両側の軸端部間に夫々この架設体Aを架設状態に取り付け固定することで、この一対のローラ3の回動軸3aを互いに平行に保持できることとなる。
【0033】
よって、本発明は、例えば図4に図示したように、所定の搬送方向に配設した複数のローラによりシート材を搬送するシート搬送装置などにおけるローラ3のセッティング作業時においても、一対のローラ3の軸方向両側の軸端部間に夫々架設体Aを架設状態に取り付け固定してこの一対のローラ3の回動軸3aを互いに平行に保持した状態のままで、適宜な固定手段により搬送装置本体にローラ3の取り付け固定が行えるから、このセッティング作業における従来までの問題(位置ズレ)は生じ得ず、それ故、これまでのように前記セッティング作業を行う際にローラ3を搬送装置本体に何度も取り付け・取り外しして取り付け位置の微量調整を図るといった極めて厄介な作業を行う必要は一切無く、単に架設体Aを架設させた上でローラ3の取り付け固定だけで(たった一度の取り付け固定作業で)確実にローラ3同志を互いに回動軸3aが平行となるように取り付け固定できるなど、作業性及び実用性に秀れたローラ軸平行保持装置となる。
【0034】
また、例えば、前記ローラ3の回動軸3aの端部,若しくはこの回動軸3aの端部を支持する軸支持部4は、スライド調整固定機構Sを介してこのローラ3の回動軸3aの軸方向と直交する方向にスライド調整して所定の位置で位置決め固定可能に構成し、このスライド調整固定機構Sを介してスライド調整固定可能な前記回動軸3aの端部若しくは軸支持部4に前記係止部2を設ける構成とした場合には、例えば図2に図示したように、一対のローラ3に設けた各係止部2と、前記架設体Aに設けた一対の取付係合部1とを係合し得るように前記スライド調整固定機構Sを介してローラ3の位置をスライド調整して(一対のローラ3の軸端部に設けた各係止部2間の離間距離と、架設体Aに設けた一対の取付係合部1間の並設間隔Lとを一致させて)、図3に図示したようにこの一対のローラ3の軸方向両側の軸端部間に夫々前記架設体Aを架設状態に取り付け固定した上で、各ローラ3を前記スライド調整固定機構Sにより位置決め固定するといったことが可能となる。
【0035】
即ち、一対のローラ3の軸方向両側の軸端部間を各架設体Aにより所定の離間距離に保持して、この一対のローラ3の互いの回動軸3aを平行に保持したまま各ローラ3の位置決め固定が行える為、従来までの問題点が生ずること無く、即ちこのローラ3の位置決め固定時のローラ3の位置ズレの問題が生ずることなく、ローラ3同志を確実に互いに軸方向3aが平行となるように位置決め固定するといったことが可能となる。
【実施例】
【0036】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0037】
本実施例は、ローラ3の回動軸3a間に架設する架設体Aに一対の取付係合部1を所定の並設間隔Lを介して設け、この架設体Aに設けた取付係合部1を係合する係止部2をローラ3の回動軸3aの端部,若しくはこの回動軸3aの端部を支持する軸支持部4に設けて、この係止部2に前記架設体Aの取付係合部1を係合することでこの架設体Aを前記ローラ3の軸端部に取り付け固定し得るように構成すると共に、この架設体Aを一対のローラ3の軸端部間に架設状態に取り付け固定することでこの一対のローラ3の軸端部間を所定の離間距離に保持するように構成し、この軸間距離を保持する架設体Aを前記一対のローラ3の軸方向両側の軸端部間に夫々架設状態に取り付け固定した際にこの一対のローラ3の回動軸3aが互いに平行に保持されるように各架設体Aに設ける前記一対の取付係合部1間の並設間隔Lを夫々設定したローラ軸平行保持装置Hである。
【0038】
尚、本実施例は、図4に図示したように、複数のローラ3を搬送方向に複数配設して、この複数のローラ3によりシート材8を搬送するシート搬送装置において、前記複数の各ローラ3を搬送装置本体9の所定の取付箇所に取り付け固定する際に使用するもので、具体的には、ローラ3を互いに回動軸3aが平行となるように前記搬送装置本体9に取り付け固定(セッティング)する為のものである。
【0039】
図4に図示したシート搬送装置は、外周部に巻回されたシート材8を順次送り出す始端部の巻出しローラ3,シート材8を外周部に順次巻き取る終端部の巻取りローラ3,一対のローラによりシート材8を挟持して該シート材8を所定の搬送方向に送り出す搬送ローラ3,及びシート材8と当接して該シート材8の搬送方向をガイドするガイドローラ3などの種々のローラ3から成る構成である。
【0040】
架設体Aは、図2,図3に図示したように、平板材に取付係合部1を設けて成る構成である。
【0041】
この架設体Aの取付係合部1は、ローラ3の軸端部に設ける係止凸部2若しくは係止凹部2と嵌合係止する取付係合凹部1若しくは取付係合凸部1であって、本実施例においては、図2,図3に図示したように、平板材に取付係合凹部1を複数設けた構成としている。また、この取付係合凹部1は貫通孔でも貫通していない凹溝でも良いが、本実施例においては平板材の板面に貫通孔を穿設して前記取付係合部1(取付係合凹部1)を構成している。
【0042】
更に、本実施例においては、架設体Aの長さ方向一端側及び他端側に夫々複数の取付係合部1(貫通孔)を設け、この複数の取付係合部1のうちのいずれか一組(一対)を適宜選択して使用できるように構成している(即ち、選択した取付係合部1に応じて一対の取付係合部1間の並設間隔Lが夫々異なる。)。その為、この架設体Aの複数の取付係合部1のうちから適宜選択することで互いに離間距離の異なる複数組の一対のローラ3に対応(架設状態に取り付け固定)することも可能である。
【0043】
尚、本実施例では、一対のローラ3の軸方向両側の軸端部間に夫々架設状態に取り付け固定する一対の架設体Aは互いに同一形状のものを採用している。
【0044】
この架設体Aを取り付け固定するローラ3は、図1〜図3に図示した本実施例においては、回動軸3aに対してローラ3を回動自在に設けて、この回動軸3aの端部を軸支持部4にボルト止めして支持固定し、この軸支持部4を前記搬送装置本体9に固定する構成としているが、これに限らず、例えばこの回動軸3aの端部を搬送装置本体9に直接支持固定する構成でも良い。また、回動軸3aとローラ3を回り止め固定し、回動軸3aの両端部を軸支持部4に回動自在に支持することで回動軸3aとローラ3とを一体回動するように構成しても良い。
【0045】
また本実施例では、ローラ3の回動軸3aの端部を支持する前記軸支持部4に係止部2を設けている。この係止部2は、図1〜図3に図示したように、このローラ3の回動軸3aの端部を支持する軸支持部4の軸方向端部面に、上述した架設体Aの貫通孔(取付係合部1)と嵌合係止する係止凸部2を軸方向に凸設して成る構成としている。また、この係止凸部2は、前記架設体Aの取付係合凹部1に丁度合致嵌合(回動自在に合致嵌合)する形状としている。
【0046】
また、架設体Aを架設状態に取り付け固定する一対のローラ3において、前記係止部2を設ける回動軸3aの軸方向端部面若しくは軸支持部4の軸方向端部面(本実施例では軸支持部4の軸方向端部面)は略面一となるように形成している。
【0047】
従って、一対のローラ3の軸支持部4の軸方向端部面に凸設した係止凸部2に平板状の前記架設体Aの貫通孔(取付係合部1)を嵌合係止することで、この一対のローラ3の軸支持部4の軸方向端部面に、平板状の前記架設体Aを沿設当接状態に取り付け固定する構成である。
【0048】
尚、ローラ3の軸方向一側の係止凸部2と、軸方向他側の係止凸部2とは、各係止凸部2を設けた軸方向一側,他側から軸方向視した際に、前記ローラ3の軸中心位置を中心座標として想定すると等しい座標位置となるようにこの軸方向一側,他側の各係止凸部2の配設位置を夫々設定している。
【0049】
また、この係止凸部2は、例えば軸支持部4の軸方向端部面に軸方向に雌ネジ溝を形成し、この雌ネジ溝に螺着杆体の基端のネジ部を螺着してこの軸支持部4の軸方向端部面から前記螺着杆体の先端を突出させるなどして凸設すれば良い。また、例えば前記雌ネジ溝を複数設けて螺子杆体を複数凸設、即ち係止凸部2を複数凸設したり、複数の雌ネジ溝のいずれか一つを適宜選択して前記螺子杆体の基端のネジ部を螺着して係止凸部2の位置を適宜変更できるように構成しても良い。また、ローラ3の軸端部に係止凹部2を凹設し、平板状の架設体Aの板面から突出状態に取付係合凸部1を凸設する構成としても良い。
【0050】
本実施例においては、各ローラ3の回動軸3aの端部か、若しくはこの回動軸3aの端部を支持する軸支持部4(本実施例においては前記係止部2が設けられた軸支持部4)をスライド調整固定機構Sを介して少なくともこのローラ3の回動軸3aの軸方向と直交する方向にスライド調整して上記搬送装置本体9の所定の位置で位置決め固定可能に構成している。
【0051】
このスライド調整固定機構Sは、ローラ3の軸支持部4を軸方向と直交する方向にスライド調整して所定位置にて前記搬送装置本体9に位置決め固定自在に調整可能な構成であればどのようなスライド調整固定機構Sを採用しても良いが、図示した本実施例においては、ローラ3の軸支持部4の下部に取付孔5を設け、一方、搬送装置本体8の上面にして前記ローラ3の軸支持部4を載置配設する載置部には長孔形状の取付ガイド孔6を設け、このローラ3の軸支持部4を搬送装置本体9の載置部に載置配設して前記取付孔5と取付長ガイド孔6とを重合し、前記取付孔5側からボルト7を挿通することで、このボルト7が長孔形状の前記取付ガイド孔6の長さ方向に移動可能な範囲内において搬送装置本体9に対して軸支持部4がスライド可動自在となるように構成している。
【0052】
尚、ローラ3の軸支持部4を載置する前記搬送装置本体9の載置部は水平面に設定しておき、各ローラ3は、その軸支持部4を前記搬送装置本体9の載置部に載置配設することで水平に保持されると共にこの水平な載置部上面に沿って水平に上記スライド可動を行うように構成している。
【0053】
この取付孔5は、前記ボルト7の幹部を挿通して略合致する孔形状とし、取付ガイド孔6は搬送装置本体に取り付けるローラ3の軸方向と直交する方向(即ち、シート材8の搬送方向)に長い長孔形状としている。
【0054】
従って、取付ガイド孔6に挿通したボルト7がこの取付ガイド孔6の孔長さ方向にガイドされることで、搬送装置本体9に対して前記軸支持部4のスライド方向はローラ3の軸方向と直交する方向(取付ガイド孔6の孔長さ方向)にガイドされることとなる。
【0055】
また更に、このボルト7にナット7aを螺着することにより、前記ローラ3の軸支持部4と搬送装置本体8とを締結し位置決め固定できるものである。
【0056】
以上のように構成した本実施例のローラ軸平行保持装置Hを用いたローラ取付方法を、以下に説明する。
【0057】
本実施例は、先ず、図1に図示したように、搬送装置本体9の前記取付ガイド孔6が形成された載置部にローラ3の各軸支持部4を夫々載置して、各取付ガイド孔6と、ローラ3の軸支持部4に形成した各取付孔5とを合わせ、ボルト7を挿通する。
【0058】
次いで、図2に図示したように、予め搬送装置本体9にボルト7とナット7aにより締結固定して搬送装置本体9に位置決め固定された一方のローラ3(以下、固定ローラ3と呼ぶ)に対し、他方のローラ3(以下、調整ローラ3と呼ぶ)の離間位置をスライド調整固定機構Sを介してスライド位置調整し、固定ローラ3の軸端部に設けた係止凸部2と、調整ローラ3の軸端部に設けた係止凸部2とを夫々、架設体Aの所定の並設間隔Lを介して設けられた貫通孔(取付係合部1)に嵌合係止してこの固定ローラ3の軸端部と調整ローラ3の軸端部との間に架設体Aを架設状態に取付固定する。具体的には、一対の架設体Aの互いに等しい並設間隔Lを介して形成された貫通孔(取付係合部1)を各ローラ3の係止凸部2に夫々嵌合係止することで、この一対の架設体Aによりこの一対のローラ3の軸方向両側の軸端部間(係止凸部2間)を等しい離間距離に保持する。
【0059】
これにより、図3に図示したように、一対の架設体Aにより固定ローラ3の回動軸3aに対して調整ローラ3の回動軸3aが平行に保持される。
【0060】
この状態のままで前記調整ローラ3をスライド調整固定機構Sにより(ボルト7にナット7aを螺着して締結固定することにより)搬送装置本体9に位置決め固定することで、ナット7aの締め付け操作などにより調整ローラ3の位置がズレるといった従来の問題が生ずることなく(調整ローラ3が固定ローラ3に対して架設体Aにより平行保持規制されている状態で取り付け固定を行うこととなる為)、確実にこの双方のローラ3を互いに回動軸3aが平行となるように搬送装置本体9に取り付け固定することが可能である。
【0061】
以上、本実施例によれば、複数の各ローラ3を搬送装置本体9にセッティングする際に、単に架設体Aをローラ3の軸端部に凹凸嵌合係止してローラ3間に架設状態に取り付け固定するだけで、これまで高い熟練と多大な時間とコストを要した厄介なローラ3のセッティング作業を誰でも簡単且つ良好に行えることとする極めて作業性及び実用性に秀れたローラ軸平行保持装置Hとなる。
【0062】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施例に係るローラ軸平行保持装置Hを用いたローラ取付方法を説明する図である。
【図2】本実施例に係るローラ軸平行保持装置Hを用いたローラ取付方法を説明する図である。
【図3】本実施例に係るローラ軸平行保持装置Hを用いたローラ取付方法を説明する図である。
【図4】本実施例に係るシート搬送装置を示す説明正面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 取付係合部,取付係合凸部,取付係合凹部
2 係止部,係止凸部,係止凹部
3 ローラ
3a 回動軸
4 軸支持部
A 架設体
H ローラ軸平行保持装置
L 並設間隔
S スライド調整固定機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラの回動軸間に架設する架設体に一対の取付係合部を所定の並設間隔を介して設け、この架設体に設けた取付係合部を係合する係止部をローラの回動軸の端部,若しくはこの回動軸の端部を支持する軸支持部に設けて、この係止部に前記架設体の取付係合部を係合することでこの架設体を前記ローラの軸端部に取り付け固定し得るように構成すると共にこの架設体を一対のローラの軸端部間に架設状態に取り付け固定することでこの一対のローラの軸端部間を所定の離間距離に保持するように構成し、この軸間距離を保持する架設体を前記一対のローラの軸方向両側の軸端部間に夫々架設状態に取り付け固定した際にこの一対のローラの回動軸が互いに平行に保持されるように各架設体に設ける前記一対の取付係合部間の並設間隔を夫々設定したことを特徴とするローラ軸平行保持装置。
【請求項2】
前記ローラの回動軸の端部,若しくはこの回動軸の端部を支持する軸支持部は、スライド調整固定機構を介してこのローラの回動軸の軸方向と直交する方向にスライド調整して所定の位置で位置決め固定可能に構成し、このスライド調整固定機構を介してスライド調整固定可能な前記回動軸の端部若しくは軸支持部に前記係止部を設ける構成としたことを特徴とする請求項1記載のローラ軸平行保持装置。
【請求項3】
前記一対のローラの回動軸を互いに平行とした際、この一対のローラの軸方向一側に設けた各係止部間の離間距離,及び軸方向他側に設けた各係止部間の離間距離が等しい距離となるように各ローラに設ける係止部の配設位置を夫々設定し、この一対のローラの軸方向両側の軸端部間に夫々架設状態に取り付け固定する各架設体に設ける前記一対の取付係合部間の並設間隔は互いに等しい距離に夫々設定したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載のローラ軸平行保持装置。
【請求項4】
前記ローラの係止部は、このローラの回動軸の軸方向端部面,若しくはこの回動軸の端部を支持する軸支持部の軸方向端部面に軸方向に形成した係止凸部若しくは係止凹部としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のローラ軸平行保持装置。
【請求項5】
前記架設体は、平板材に前記取付係合部として前記ローラの係止凸部若しくは係止凹部に嵌合係止する取付係合凹部若しくは取付係合凸部を所定の並設間隔を介して形成し、この架設体を前記ローラの回動軸の軸方向端部面,若しくはこの回動軸の端部を支持する軸支持部の軸方向端部面に沿設状態に取り付け固定し得るように構成したことを特徴とする請求項4記載のローラ軸平行保持装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のローラ軸平行保持装置を用い、前記ローラの回動軸の端部,若しくはこの回動軸の端部を支持する軸支持部は、スライド調整固定機構を介してこのローラの回動軸の軸方向と直交する方向にスライド調整して所定の位置で位置決め固定可能に構成し、このスライド調整固定機構を介してスライド調整固定可能な前記回動軸の端部若しくは軸支持部に前記係止部を設ける構成とし、一対のローラに設けた各係止部と、前記架設体に設けた一対の取付係合部とを係合し得るように前記スライド調整固定機構を介してローラの位置をスライド調整し、この一対のローラの軸方向両側の軸端部間に夫々前記架設体を架設状態に取り付け固定した上で、この各ローラの回動軸若しくは軸支持部を前記スライド調整固定機構により位置決め固定することを特徴とするローラ取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−24475(P2008−24475A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200800(P2006−200800)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(592037077)クリーン・テクノロジー株式会社 (22)
【Fターム(参考)】