説明

ロールアイロナー

【課題】良好な仕上げとすることができ、押圧ベルトの長さ、張力、押圧力が変化したり洗濯物に関する諸条件が変化したりしても、洗濯物を確実に搬送することができるロールアイロナーを提供する。
【解決手段】回転する加熱ロール11、12と、加熱ロール11、12に圧接するように加熱ロール11、12の外側を周回する押圧ベルト18、20と、駆動力を発生するモータ21と、該モータ21からの駆動力を押圧ベルト18、20に伝達する伝達手段と、を備え、該伝達手段によって伝達される駆動力を押圧ベルト18、20に付与して該駆動力によって押圧ベルト18、20を周回させて、洗濯済みの洗濯物を加熱ロール11、12と押圧ベルト18、20との間に挟みながら搬送することにより洗濯物の乾燥・皺伸ばしを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯し脱水した洗濯物の乾燥・皺伸ばしを行うロールアイロナーに関する。
【背景技術】
【0002】
ホテルや病院などで使用されるシーツ、カバー等の布類等の洗濯物の洗濯を行う産業用ランドリー機械においては、ロールアイロナーを用いて洗濯、脱水済みの洗濯物の乾燥・皺伸ばしを行っている。
【0003】
このロールアイロナーの中でカレンダータイプのロールアイロナーは、1個または複数個の加熱した加熱ロールと、該加熱ロールに掛け回された押圧ベルトとを有している。加熱ロールは、内部に高圧蒸気を導入して熱せられたものが一般的に使用され、加熱ロールに掛け回される押圧ベルトは耐熱ベルトとなっている。そして、駆動源からの駆動力を、チェーンやVベルトといった駆動力伝達装置を介して加熱ロールに伝達して、加熱ロールを回転させており、加熱ロールと押圧ベルトとの間で洗濯物を挟みながら送ることで、洗濯物が該加熱ロールに押し付けられて周回し、洗濯物の乾燥と皺伸ばしを行うようになっている。
【0004】
加熱ロールの数を増加すれば、洗濯物の投入速度が速くても、洗濯物を複数の加熱ロールに渡って移動させながら乾燥を進めて仕上げることができる。
【0005】
かかる従来のロールアイロナーにおいては、押圧ベルトの送りが加熱ロールに押圧された摩擦力のみでなされている。そのため、洗濯物の濡れ具合や厚さ等が変わったりすると、摩擦力が変化し、スリップして洗濯物の搬送遅れが発生して、皺が発生して洗濯物の仕上げ品質が悪化するという問題がある。または、経年変化や温度変化によって押圧ベルトが伸縮して押圧ベルトの張力が変化した場合にも、同様の問題が発生する。例えば、従来のロールアイロナーで使用する押圧ベルトはその材質特性によって、温度が上昇すると縮む傾向があり、使用開始時は温度が低いので張力が小さくなって、押圧力が減少する。
【0006】
そのため、特許文献1では、押圧ベルトの周回路に軸直角方向に位置調整可能に設けられたテンションローラを備え、該テンションローラを空気圧シリンダによって付勢しており、この空気圧シリンダに供給される空気圧の供給または遮断を加熱ロールまたは押圧ベルトの温度に関連付けて制御して、押圧ベルトの張力を調整しており、また、加熱ロールの回転速度と、押圧ベルトの速度との間で速度差が検出されたときに、空気圧シリンダによって押圧ベルトの張力を付与している。
【0007】
【特許文献1】特開2000−354700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載のような空気圧シリンダを用いて押圧ベルトの張力を調整するには、その微妙な張力の調整が必要であり、調整が困難であるという問題がある。
【0009】
また、バネなどで張力を常時押圧ベルトに付与するということも考えられるが、不安定な要因が払拭できず、安定した洗濯物の搬送は困難である。
【0010】
その他、従来のロールアイロナーにおいては次のような課題がある。
・洗濯物が加熱ロールから離脱するのは、重力や遠心力によって剥がれることでなされるのであるが、実際の使用条件下では、洗濯物の濡れ具合や厚さ等が変わったり、投入速度を速く設定したりすると、剥がれの遅延が発生し、搬送中に洗濯物が引っ掛り巻き込んでしまい、または、次の加熱ロールへの進入が遅れて皺伸ばしが不十分になり、仕上げが悪化するという問題がある。
・カレンダータイプに限らず、ロールで洗濯物を搬送するロールアイロナーにおいて、洗濯物の搬送速度を速くすれば業務効率が向上するのであるが、速くしすぎると乾燥が不十分となってしまい、仕上げが悪化するという問題がある。
【0011】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、本発明の第1の目的は、良好な仕上げとすることができるロールアイロナーを提供することである。
【0012】
また、本発明の他の目的は、前記第1の目的に加えて、押圧ベルトの長さ、張力、押圧力が変化したり洗濯物に関する諸条件が変化したりしても、洗濯物を確実に搬送することができるロールアイロナーを提供することである。
【0013】
また、本発明の他の目的は、前記第1の目的に加えて、加熱ロールからの剥がれが遅れて次の加熱ロールへの進入が遅れることがなく、皺伸ばしを行うことができるロールアイロナーを提供することである。
【0014】
さらに、本発明の他の目的は、前記第1の目的に加えて、洗濯物の搬送速度と乾燥との関係を適切に調整することができるロールアイロナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、回転する加熱ロールと、加熱ロールに押圧されるように加熱ロールの外側を周回する押圧ベルト、とを備えて、洗濯済みの洗濯物を加熱ロールと押圧ベルトとの間に挟みながら搬送することにより洗濯物の乾燥・皺伸ばしを行うロールアイロナーにおいて、
駆動力を発生する駆動源と、該駆動源からの駆動力を前記押圧ベルトに伝達する伝達手段と、を備え、該伝達手段によって伝達される駆動力を前記押圧ベルトに付与して該駆動力によって押圧ベルトを周回させることを特徴とする。
【0016】
前記駆動源は、加熱ロールを駆動する駆動源と異なる駆動源とすることができるが、請求項2記載の発明は、請求項1記載のものにおいて、前記駆動源からの駆動力を加熱ロールに伝達する第2伝達手段を備え、該第2伝達手段によって伝達される駆動力によって前記加熱ロールを回転させることを特徴とする。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のものにおいて、前記加熱ロール及び前記押圧ベルトが複数組設けられており、後段の加熱ロール及び押圧ベルトの周回速度は、それよりも前段の加熱ロール及び押圧ベルトの周回速度よりもそれぞれ速いことを特徴とする。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の前記押圧ベルトが、対応する加熱ロールの周回速度と等しい周回速度となるように駆動されることを特徴とする。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の前記押圧ベルトが、対応する加熱ロールの周回速度と速度差を持つように駆動されることを特徴とする。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のものにおいて、前記加熱ロールを通過した洗濯物の温度を検出する温度センサを備え、該温度センサからの信号に応じて前記駆動源の駆動速度を変化させることを特徴とする。
【0021】
請求項7記載の発明は、駆動源と、該駆動源からの駆動力によって回転するロールと、を備え、洗濯済みの洗濯物を該ロールの周囲に圧接させて搬送させながら加熱し、乾燥・皺伸ばしを行うロールアイロナーにおいて、
前記ロールを通過した洗濯物の温度を検出する温度センサを備え、該温度センサからの信号に応じて前記駆動源の駆動速度を変化させることを特徴とする。
【0022】
請求項8記載の発明は、請求項7記載のものにおいて、空気流を洗濯物に向けて吹き出す空気吹き出し部を備え、前記温度センサは、空気吹き出し部から空気流を吹きかけられた後の前記洗濯物の温度を計測することを特徴とする。
【0023】
請求項9記載の発明は、請求項7記載のものにおいて、空気流を吹き出す空気吹き出し部を備え、前記温度センサは、空気吹き出し部から吹き出されて前記洗濯物を通過した空気流の温度を計測することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載の発明によれば、押圧ベルトに、加熱ロール等との摩擦力以外の駆動力を付与することによって、加熱ロール及び押圧ベルトの両方がそれぞれ駆動力によって駆動されるために、押圧ベルトの長さ、張力、押圧力が変化したり洗濯物に関する諸条件が変化したりしても、押圧ベルトの張力の微妙な調整をすることなく、洗濯物及び押圧ベルトのスリップが防止され、洗濯物の搬送遅れ、皺の発生を防止することができ、洗濯物の仕上げ品質を良好にすることができる。
【0025】
請求項2記載の発明によれば、加熱ロールと押圧ベルトとを同じ駆動源によって駆動することになるため、駆動源の駆動速度が変化しても、加熱ロールと押圧ベルトとのそれぞれの駆動力の関係は一定に保つことができる。尚、第2伝達手段と伝達手段とは、一部またはその全部が重複してもよいし、または全く別であってもよい。
【0026】
請求項3記載の発明によれば、後段の加熱ロール及び押圧ベルトの周回速度を、それよりも前段の加熱ロール及び押圧ベルトの周回速度よりもそれぞれ速くすることにより、加熱ロール間を洗濯物が移動するときに、前段の加熱ロールからの離脱が確実になって後段の加熱ロールへの進入が遅れることを防ぐので、搬送途中の巻き込みが防止でき、皺伸ばしが行われ、仕上げ品質を良好にすることができる。
【0027】
請求項4記載の発明によれば、押圧ベルトと対応する加熱ロールの周回速度とを等しくすることで、両者間のスリップを一層確実に防ぐことができる。
【0028】
請求項5記載の発明によれば、押圧ベルトと対応する加熱ロールの周回速度とで速度差を持たせるようにすることで、洗濯物を加熱ロールからの剥がれ易くすることができる。
【0029】
請求項6記載の発明によれば、温度センサによって洗濯物の乾燥具合を検出することができるので、その乾燥具合に応じて駆動速度を変化させることで、洗濯物の搬送速度を変化させて、適度な乾燥が行われるように調整することができる。
【0030】
請求項7記載の発明によれば、温度センサによって洗濯物の乾燥具合を検出することができるので、その乾燥具合に応じて駆動速度を変化させることで、洗濯物の搬送速度を変化させて、適度な乾燥が行われるように調整することができる。
【0031】
請求項8記載の発明によれば、洗濯物に空気流を吹きかけることにより、気化熱により洗濯物の温度変化を促進させて温度差を顕著にすることができるので、その洗濯物の温度センサで計測することで、洗濯物の乾燥具合を適切に検出することができる。
【0032】
請求項9記載の発明によれば、洗濯物を通過する空気流の温度が低ければ気化熱を奪われており、洗濯物の乾燥具合が低く、空気流の温度が高ければ洗濯物の乾燥具合が高いと、判断することができるので、空気流の温度を温度センサで計測することで、洗濯物の乾燥具合を適切に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係るカレンダータイプのアイロナーの全体斜視図、図2は、その第1実施形態を表す模式側面図である。図の例では、ロールアイロナー10は、2本の加熱ロール11、12を備えている。加熱ロール11、12は、筐体13内において回転可能に軸支されており、内部に高圧蒸気が導入されて熱せられる。
【0034】
筐体13の前方を、投入ベルト14が筐体13に軸支されたローラによって周回している。該投入ベルト14の上部分が投入部13aとなっており、洗濯及び脱水済みで乾燥前の洗濯物が投入ベルト14上に載せられて図中の矢印方向に進むようになっている。
【0035】
投入ベルト14の上方には、投入押さえベルト15が筐体13に軸支されたローラによって周回している。投入された洗濯物は、投入ベルト14と投入押えベルト15に挟まれながら加熱ロール11の方へと進む。投入ベルト14の周回速度と、加熱ロール11との周回速度との間には速度差が存在しており、加熱ロール11に渡って移動する際に洗濯物を押えるようになっており、これによって、洗濯物の引き伸ばし効果を図ることができる。
【0036】
加熱ロール11は、図2中、右回りに回転しており、洗濯物は加熱ロール11に接しながら周回する。加熱ロール11の駆動については後述する。
【0037】
加熱ロール11の上方には、複数の圧迫ロール16が設けられる。圧迫ロール16には図示しない空気シリンダからの圧力が作用して、圧迫ロール16は加熱ロール11に向かって付勢されており、圧迫ロール16は、加熱ロール11に圧接することで加熱ロール11の回転力で従動回転し、洗濯物に圧接するようになっている。洗濯物は乾燥の初期段階で水を多く含んでいるので、この圧迫ロール16によって洗濯物を押圧することで、水分除去と皺伸ばしを行うようになっている。
【0038】
また、圧迫ロール16と洗濯物との間には、洗濯物が圧迫ロール16に張り付くのを防止するためガイドテープまたは導糸17が配回されている。
【0039】
圧迫ロール16とガイドテープまたは導糸17の先には、押圧ベルト18が加熱ロール11の一部周面(約半周)に掛け回されている。押圧ベルト18は、複数の耐熱のベルトが並列したものから構成される。押圧ベルト18は、筐体13に軸支される複数の補助ロールによって周回されており、この押圧ベルト18の駆動については後述する。押圧ベルト18によって、洗濯物は加熱ロール11と押圧ベルト18に挟まれると共に加熱ロール11に圧接させられながら周回し、乾燥が行われる。
【0040】
押圧ベルト18が加熱ロール11から接線方向に離反している接線部分11aを洗濯物が越えると、洗濯物は重力及び遠心力によって加熱ロール11から剥がれて、押圧ベルト18によって搬送され、押圧ベルト18の折り返し部分に設けられた渡り棒19上に載って、加熱ロール12に移動する。
【0041】
加熱ロール12は、図中、左回りに回転しており、洗濯物は加熱ロール12に接しながら周回する。加熱ロール12の駆動については後述する。
【0042】
加熱ロール12には、押圧ベルト20が加熱ロール12の一部周面(約3/4周)に掛け回されている。押圧ベルト20は、複数の耐熱のベルトが並列したものから構成される。押圧ベルト20は、筐体13に軸支される複数の補助ロールによって周回されており、この押圧ベルト20の駆動については後述する。押圧ベルト20によって、洗濯物は加熱ロール12と押圧ベルト20に挟まれると共に加熱ロール12に圧接させられながら周回し、乾燥がさらに進行する。洗濯物は加熱ロール11と加熱ロール12の熱せられた面に、表裏の面がそれぞれ接して、乾燥される。
【0043】
押圧ベルト20が加熱ロール12から接線方向に離反している接線部分12aを洗濯物が越えると、洗濯物は重力及び遠心力によって加熱ロール12から剥がれて、押圧ベルト20によって搬送されて、乾燥皺伸ばしが完了して排出口13bから排出される。
【0044】
以上説明した例では、ロールアイロナー10は2本の加熱ロール11、12を備えていたが、これに限るものではなく、1本または3本以上(通常1〜6本程度)の加熱ロールを備えることができる。この場合には、洗濯物は複数個の加熱ロールによって順次伸ばされて乾燥されていく。
【0045】
以上の加熱ロール11、12及び押圧ベルト18、20の駆動について、図3を参照して説明する。筐体13内には駆動源としての減速ギヤを内蔵するモータ21が配設されている。
【0046】
モータ21の出力軸と同軸に設けられた駆動スプロケット21aに掛け渡されたチェーン22が加熱ロール11,12に同軸に設けられたスプロケット11b、12bに巻き掛けられている。ここで、モータ21の出力軸、駆動スプロケット21a、チェーン22及びスプロケット11b、12bは、加熱ロール11、12のためにモータからの駆動力を伝達する伝達手段を構成する。但し、伝達手段としては任意の構成を採用可能である。図中、モータ21が右回りに回転することで、加熱ロール11は右回りに、加熱ロール12は左回りに回転する。
【0047】
加熱ロール11には、さらにスプロケット11cがスプロケット11bと同軸に一体回転可能に設けられる。そして、スプロケット11cに巻き掛けられたチェーン23が、筐体13に軸支される輪軸24の小輪24aに巻き掛けられている。さらに、輪軸24の大輪24bに巻き掛けられたチェーン25が、スプロケット26aに巻き掛けられる。スプロケット26aは、押圧ベルト18を周回させるための1つの補助ロール26と一体となっている。これらスプロケット11c、チェーン23、輪軸24、チェーン25、スプロケット26a及び補助ロール26は、モータ21の出力軸、駆動スプロケット21a、チェーン22及びスプロケット11bと共に、押圧ベルト18のためにモータ21からの駆動力を伝達する伝達手段を構成する。但し、伝達手段としては任意の構成を採用可能であり、またこのように、加熱ロール11、12のためにモータ21からの駆動力を伝達する伝達手段と一部または全部重複しても、しなくてもよい。こうして、押圧ベルト18には伝達手段によってモータ21からの回転駆動力が付与される。
【0048】
また、駆動スプロケット21aに掛け渡されたチェーン22は、筐体13に軸支される輪軸28の小輪28aにも巻き掛けられている。輪軸28の大輪28bに巻き掛けられたチェーン29がスプロケット27aに巻き掛けられる。スプロケット27aは、押圧ベルト20を周回させるための1つの補助ロール27と一体となっている。これら、輪軸28、チェーン29、スプロケット27a及び補助ロール27は、モータ21の出力軸、駆動スプロケット21a、チェーン22と共に、押圧ベルト20のためにモータ21からの駆動力を伝達する伝達手段を構成する。但し、伝達手段としては任意の構成を採用可能であり、またこのように、加熱ロール11、12のためにモータ21からの駆動力を伝達する伝達手段と一部または全部重複しても、しなくてもよい。こうして、押圧ベルト20には伝達手段によってモータ21からの回転駆動力が付与される。
【0049】
また、駆動スプロケット21aに掛け渡されたチェーン22は、筐体13に軸支される輪軸30の小輪30aにも巻き掛けられている。輪軸30の大輪30bに巻き掛けられたチェーン31がスプロケット32aに巻き掛けられる。スプロケット32aは、投入ベルト14を周回させるための1つの補助ロール32と一体となっている。これら、輪軸30、チェーン31、スプロケット32a及び補助ロール32は、モータ21の出力軸、駆動スプロケット21a、チェーン22と共に、投入ベルト14のためにモータ21からの駆動力を伝達する伝達手段を構成する。こうして、投入ベルト14には伝達手段によってモータ21からの回転駆動力が付与される。
【0050】
加熱ロール11と押圧ベルト18との周回速度は、初期状態(洗濯物が無い状態)で、等しくなるように、輪軸24の小輪24aと大輪24bの径とスプロケット26a、11b、11cの径とが決められている。同様に、加熱ロール12と押圧ベルト20との周回速度は、初期状態(洗濯物が無い状態)で、等しくなるように、輪軸28の小輪28aと大輪28bの径とスプロケット27aの径とが決められている。但し、加熱ロール11と押圧ベルト18の周回速度は多少の速度差を付けることも可能である。同様に、加熱ロール12と押圧ベルト20との周回速度は多少の速度差を付けることも可能である。押圧ベルトと加熱ロールとでは、押圧ベルトの方が摩擦が大きいため、多少の速度差を付けた場合には、洗濯物は押圧ベルトに追随することで、加熱ロールからの洗濯物の剥がれ促進を図ることができる。また、洗濯物と加熱ロールとの間で滑りが発生することで、加熱ロールによるアイロン効果が期待できる。
【0051】
また、加熱ロール11及び押圧ベルト18と加熱ロール12及び押圧ベルト20とでは、後段の加熱ロール12及び押圧ベルト20の方が前段の加熱ロール11及び押圧ベルト18よりも周回速度がそれぞれ僅かに速くなるように、スプロケット11bとスプロケット12bの径が決められる。
【0052】
以上のように押圧ベルト18、20にモータ21からの回転駆動力を付与することにより、押圧ベルト18、20は、加熱ロール11、12及び/または洗濯物からの摩擦駆動力に加えて回転駆動力によって駆動される。そして、各押圧ベルト18,20を対応する加熱ロール11,12とほぼ同じ周回速度で回転駆動することにより、押圧ベルト18、20の張り具合などの微妙な張力の調整が不要となり、押圧ベルト及び洗濯物のスリップが発生することなく、洗濯物の搬送遅れ、皺の発生を防止することができる。
【0053】
また、加熱ロール11及び押圧ベルト18と加熱ロール12及び押圧ベルト20とでは、加熱ロール12及び押圧ベルト20の方が周回速度がそれぞれ僅かに速くなっているので、加熱ロール11から加熱ロール12へと移動する際に、加熱ロール11から離れて押圧ベルト18に載って進む洗濯物の先端部が、僅かに速く回る加熱ロール12と押圧ベルト20に挟まれると、加熱ロール11と押圧ベルト18に挟まれる後端部との間で、速度差によって少し引っ張られることになり、洗濯物が加熱ロール11から剥がれ易くなり、且つ皺の引き伸ばし効果が得られる。そして、加熱ロール11と加熱ロール12との間で洗濯物が常に引っ張られながら加熱ロール11から加熱ロール12へと移動していくので、加熱ロール11からの剥がれの遅延を防ぐことができて、搬送途中の巻き込みを防ぐことができる。
【0054】
また、加熱ロール11、12と押圧ベルト18、20の駆動源としてのモータ21が共通しているので、常に、加熱ロール11,12と押圧ベルト18,20の駆動は同期がとれたものとなる。但し、加熱ロール11,12と押圧ベルト18,20との駆動源を別々の駆動源とすることも可能である。
【0055】
尚、3本以上の加熱ロールを使用する場合においても、同様に、後段の加熱ロール及び押圧ベルトの周回速度は、それよりも前段の加熱ロール及び押圧ベルトの周回速度よりもそれぞれ速くなるように設定されるとよい。
【0056】
図4は、本発明による第2の実施形態を表す模式側面図である。同図において、第1実施形態と同一の部材は、同一の符号を付し、その詳細説明を省略する。
【0057】
この実施形態では、加熱ロール12と排出口13bとの間に、搬送される洗濯物に沿って空気噴流吹き出し口33と温度センサ34とが並んで配置されている。空気噴流吹き出し口33は、加熱ロール11、12を通過した洗濯物に対して、押圧ベルト20の複数のベルトの間から空気流を吹き当てるものである。温度センサ34は、空気流が吹きかけられた洗濯物の温度を非接触に計測する。
【0058】
図5に示すように、温度センサ34は制御部36に接続されており、制御部36はモータ調整回路38に接続されており、モータ調整回路38からの信号によってモータ21が駆動される。
【0059】
温度センサ34は、空気流を吹きかけずに直接洗濯物の温度を計測するようにしてもよいが、空気流を吹きかけることで、気化熱により洗濯物の温度変化を促進させて、乾燥状態が悪い場合と良い場合とで、顕著な温度差を得ることができる。
【0060】
温度センサ34からの計測信号は、制御部36に送出され、制御部36においては、この計測信号に応じてモータ調整回路38への信号を制御し、モータ21の回転速度を制御する。
【0061】
この制御の方法としては、温度センサ34での検出温度が低ければ、モータ21の回転速度を遅く、温度センサ34での検出温度が高ければ、モータ21の回転速度を速くするように制御することができる。
【0062】
例えば、規定温度と検出温度との比較が行われ、検出温度が規定温度よりも低い場合には、乾燥具合が不十分であるので、搬送速度を遅くするべくモータ調整回路38を駆動してモータ21の回転速度を下げる。こうして洗濯物が加熱ロール11、12と接する時間を増加させることによって、適度な乾燥を行わせることができる。反対に、検出温度が規定温度よりも高い場合には、乾きすぎであるので、搬送速度を速くするべくモータ調整回路38を駆動してモータ21の回転速度を上げる。こうして洗濯物が加熱ロール11、12と接する時間を減少させることによって、適度な乾燥を行わせることができ、また、乾燥時間を低減させることができる。その具体的な方法としては、比例フィードバック制御、または比例積分フィードバック制御とすることができる。
【0063】
または、温度センサ34からの検出温度が所定温度範囲内にあるか否かを判定し、所定温度範囲にある場合には、その搬送速度を維持し、所定温度範囲よりも低い場合には、モータ調整回路38を駆動してモータ21の回転速度を所定量下げ、所定温度範囲よりも高い場合には、モータ調整回路38を駆動してモータ21の回転速度を所定量上げる制御を行うこともできる。
【0064】
こうして、洗濯物の適度な乾燥によって仕上げ品質の向上・安定と、業務効率の向上とを図ることができる。
【0065】
図6は、第2実施形態の変形例を表す。この変形例では、加熱ロール12と排出口13bとの間に、搬送される洗濯物を挟んで、空気噴流吹き出し口33と温度センサ34とが対向するように配置されている。空気噴流吹き出し口33は、加熱ロール11、12を通過した洗濯物に対して、押圧ベルト20の複数のベルトの間から空気流を吹き当てるものである。温度センサ34は、洗濯物に当たって洗濯物を通過する空気流の温度を計測する。温度センサ34で計測される温度が低い場合には、気化熱を洗濯物に多く奪われており、洗濯物の乾燥状態が悪いと判断され、計測される温度が高い場合には、気化熱がさほど奪われておらず、洗濯物の乾燥状態は良いと判断される。
【0066】
この変形例によっても同様に温度センサ34からの信号に応じてモータ21の駆動速度を変化させることができる。
【0067】
尚、この第2の実施形態では、カレンダータイプのロールアイロナーを例にとって説明したが、これに限るものではなく、ベッドタイプのロールアイロナーにおいても同様に適用可能であり、この場合に、ロールは、加熱ベッドとの間で洗濯物を挟みながら洗濯物を搬送するので、そのロールの回転速度を制御することで、適切な乾燥を行うことができる。
【0068】
前記温度センサの位置は、排出口の手前に配置する他にも、前段のロールと後段のロールとの間に配置することも可能であり、前段のロールを通過した洗濯物の乾燥具合に応じて全体のロールの回転速度を変化させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係るカレンダータイプのロールアイロナーの全体斜視図である。
【図2】本発明に係るカレンダータイプのロールアイロナーの第1実施形態の全体構成を表す模式側面図である。
【図3】第1実施形態の駆動部分の構成を表す模式側面図である。
【図4】本発明に係るカレンダータイプのロールアイロナーの第2の実施形態の全体構成を表す模式側面図である。
【図5】第2の実施形態の制御ブロック図である。
【図6】本発明に係るカレンダータイプのロールアイロナーの第2の実施形態の変形例の全体構成を表す模式側面図である。
【符号の説明】
【0070】
10 ロールアイロナー
11、12 加熱ロール(ロール)
11b スプロケット(伝達手段、第2伝達手段)
11c スプロケット(伝達手段)
12b スプロケット(第2伝達手段)
18、20 押圧ベルト
21 モータ(駆動源)
21a 駆動スプロケット(伝達手段、第2伝達手段)
22 チェーン(伝達手段、第2伝達手段)
23 チェーン'(伝達手段)
24 輪軸(伝達手段)
25 チェーン(伝達手段)
26 補助ロール(伝達手段)
26a スプロケット(伝達手段)
27 補助ロール(伝達手段)
27a スプロケット(伝達手段)
28 輪軸(伝達手段)
29 チェーン(伝達手段)
33 空気噴流吹き出し口
34 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する加熱ロールと、加熱ロールに押圧されるように加熱ロールの外側を周回する押圧ベルト、とを備えて、洗濯済みの洗濯物を加熱ロールと押圧ベルトとの間に挟みながら搬送することにより洗濯物の乾燥・皺伸ばしを行うロールアイロナーにおいて、
駆動力を発生する駆動源と、該駆動源からの駆動力を前記押圧ベルトに伝達する伝達手段と、を備え、該伝達手段によって伝達される駆動力を前記押圧ベルトに付与して該駆動力によって押圧ベルトを周回させることを特徴とするロールアイロナー。
【請求項2】
前記駆動源からの駆動力を加熱ロールに伝達する第2伝達手段を備え、該第2伝達手段によって伝達される駆動力によって前記加熱ロールを回転させることを特徴とする請求項1記載のロールアイロナー。
【請求項3】
前記加熱ロール及び前記押圧ベルトは複数組設けられており、後段の加熱ロール及び押圧ベルトの周回速度は、それよりも前段の加熱ロール及び押圧ベルトの周回速度よりもそれぞれ速いことを特徴とする請求項1または2記載のロールアイロナー。
【請求項4】
前記押圧ベルトは、対応する加熱ロールの周回速度と等しい周回速度となるように駆動されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のロールアイロナー。
【請求項5】
前記押圧ベルトは、対応する加熱ロールの周回速度と速度差を持つように駆動されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のロールアイロナー。
【請求項6】
前記加熱ロールを通過した洗濯物の温度を検出する温度センサを備え、該温度センサからの信号に応じて前記駆動源の駆動速度を変化させることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のロールアイロナー。
【請求項7】
駆動源と、該駆動源からの駆動力によって回転するロールと、を備え、洗濯済みの洗濯物を該ロールの周囲に圧接させて搬送させながら加熱し、乾燥・皺伸ばしを行うロールアイロナーにおいて、
前記ロールを通過した洗濯物の温度を検出する温度センサを備え、該温度センサからの信号に応じて前記駆動源の駆動速度を変化させることを特徴とするロールアイロナー。
【請求項8】
空気流を洗濯物に向けて吹き出す空気吹き出し部を備え、前記温度センサは、空気吹き出し部から空気流を吹きかけられた後の前記洗濯物の温度を計測することを特徴とする請求項7記載のロールアイロナー。
【請求項9】
空気流を吹き出す空気吹き出し部を備え、前記温度センサは、空気吹き出し部から吹き出されて前記洗濯物を通過した空気流の温度を計測することを特徴とする請求項7記載のロールアイロナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−142337(P2009−142337A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320147(P2007−320147)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000154428)株式会社ムサシノキカイ (6)
【Fターム(参考)】