説明

ロールプレス装置

【課題】ロールプレス装置において、シート上の成型対象の厚みにばらつきが生じた場合であっても、成型対象を所望の厚みに成型可能とする。
【解決手段】第1ロール2と第2ロール3とを互いの回転軸方向に沿って反対方向に移動するロール移動手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールプレス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、板材を圧延加工する圧延装置としては、例えば、特許文献1に示すように、対向配置された一対のロール間で板材を圧延する装置が用いられている。
このような圧延装置では、例えば特許文献1に示すように、圧延時におけるロールの撓みを補正する補正機構を設置し、シート材の厚みを均一とする方法が用いられている。
また、圧延装置では、例えば特許文献2に示すように、クラウン形状において傾斜角度が異なる領域を有するロールを対向配置し、対向配置されたロールを回転軸方向の反対方向に移動することによって、シート端部における厚みとシート中央部における厚みとを調節している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−260356号公報
【特許文献2】特開2002−11503号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「二次電池用電極材シートの圧縮加工ロール設備事業 −日立エンジニアリングサービスの高精度ロールプレス機−」、渡辺健一、産業機械誌2004年8月号、第65頁〜67頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年は、非特許文献1に示すように、二次電池の製造過程において、基材としての極板母板上に電極材が配置された電極材シートをロールプレス装置で製造することが提案されている。
このようなロールプレス装置は、極板母板上に配置された電極材を圧縮して成型するためのものであり、対象物を圧延して薄く変形させる上述の圧延装置とは異なるものであるが、非特許文献1に記載されているように、ロールの撓みを補正する補正機構を用いて電極材シートの厚みを均一化する試みがなされている。
【0006】
しかしながら、通常、電極材シートをロールプレス装置で製造する場合には、大量生産を可能とするために、極板母板の幅方向に電極材を含む塗布膜を多条に複数配列し、多条に複数配列された塗布膜を一度にロール間でプレス加工している。
そして、異なる条として塗布される塗布膜は、異なるノズルから塗布液が吐出されて形成されるため、ノズルの吐出精度のばらつきから、条ごとの塗布膜の厚みにばらつきが生じることがある。
つまり、ロールプレス装置では、成型対象(例えば塗布液)の厚みにばらつきが生じやすい。
【0007】
ロールの撓みを補正する補正機構では、大きさは可変であるものの、ロール撓み補正カーブは1つであるため、成型対象(例えば塗布膜)の厚みにばらつきが生じると、全ての成型対象を所望の厚みに成型することが難しい。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ロールプレス装置において、シート上の成型対象の厚みにばらつきが生じた場合であっても、成型対象を所望の厚みに成型可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、平行に対向配置される第1ロールと第2ロールとのギャップにおいてシート上に配置された成型対象を上記シートごとプレス加工するロールプレス装置であって、上記第1ロール及び上記第2ロールのクラウン形状が互いの回転軸に対して傾斜する傾斜領域を有し、上記第1ロールと上記第2ロールとを互いの回転軸方向に沿って反対方向に移動するロール移動手段を備えるという構成を採用する。
【0010】
本発明によれば、ロール移動手段によって、第1ロールと第2ロールとを回転軸方向に沿って反対方向に移動可能とされている。
このため、第1ロールと第2ロールとのクラウン形状が直線でなければ、第1ロールと第2ロールとを反対方向に移動させることによって、回転軸方向におけるギャップ距離を場所によって変化させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シート上の成型対象の厚みにばらつきが生じた場合であっても、成型対象を所望の厚みに成型可能とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態におけるロールプレス装置の斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるロールプレス装置の動作を説明するための模式図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるロールプレス装置の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係るロールプレス装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0014】
本実施形態のロールプレス装置1は、極板母板S上に多条に複数配列された塗布膜T(成型対象)をシートごとプレス加工して成型して電極材シートを製造するものであり、図1及び図2に示すように、上側ロール2(第1ロール)と、下側ロール3(第2ロール)と、上側シフトビーム4(第1シフトビーム)と、下側シフトビーム5(第2シフトビーム)と、ロールベンディング装置6と、ギャップ調節装置7と、上側ロールシフトシリンダ8(第1シリンダ)と、下側ロールシフトシリンダ9(第2シリンダ)とを備えている。
なお、塗布膜Tは、電極材材料を含む材料であり、電極材材料を含む流動体(塗布液)のバインダが所定量乾燥してやや固化したものである。このため、塗布膜Tは、極板母板Sの下側面に塗布された場合であっても、極板母板Sから剥離することなく固着するものである。
【0015】
上側ロール2は、極板母板Sの上側に当接して極板母板S上の塗布膜Tを成型するものであり、回転軸が極板母板Sの進行方向と直交する水平方向に向けて配設されている。
この上側ロール2は、下側ロール3の上方に配置されており、当該下側ロール3と平行に対向配置されている。
【0016】
下側ロール3は、極板母板Sの下側に当接して極板母板S上の塗布膜Tを成型するものであり、上側ロール2の下方に当該上側ロール2と平行に配設されている。
【0017】
なお、上側ロール2と下側ロール3とは、各々が不図示の駆動装置と接続されており、当該駆動装置から回転動力を伝達されることによって、極板母板Sの進行方向に向けて互いに逆方向に同速にて回転駆動される。
【0018】
そして、図2に示すように、本実施形態のロールプレス装置1において、上側ロール2のクラウン形状(極板母板Sの進行方向から見た場合の押圧面の輪郭形状)は、端部領域R1と、中央領域R2とによって構成されている。
【0019】
端部領域R1aは、極板母板Sの端部を押圧する領域であり、図2において、上側ロール2の回転軸方向における左端側に設けられている。端部領域R1bは、極板母板Sの端部を押圧する領域であり、図2において、上側ロール2の回転軸方向における右端側に設けられている。
そして、2つの端部領域R1a,R1bは、ギャップにおいて上側ロール2の回転軸に対して傾斜角度θ1にて傾斜されている。具体的には、端部領域R1aは、図2において左側に向かうにつれて縮径している。端部領域R1bは、図2において右側に向かうにつれて拡径している。
【0020】
なお、本実施形態のロールプレス装置1においては、図1及び図2に示すように、幅方向に対して塗布膜Tが等間隔で8つ配列された極板母板Sに対してプレス加工を行う。つまり、本実施形態のロールプレス装置1によってプレス加工を行う極板母板Sは、当該極板母板Sの幅方向に対して塗布膜Tが多条に複数配列されている。
このような塗布膜Tは、1つの供給管から塗布液が供給されると共に条ごとに配置されるノズルから塗布液が吐出されて形成される。
【0021】
そして、本実施形態のロールプレス装置1においては、端部領域R1aは、複数配列された塗布膜Tのうち極板母板Sの最左端に位置する塗布膜Tのみを押圧するように幅が設定されている。また、端部領域R1bは、複数配列された塗布膜Tのうち極板母板Sの最右端に位置する塗布膜Tのみを押圧するように幅が設定されている。
【0022】
中央領域R2は、端部領域R1a,R1bによって押圧される極板母板Sの端部に挟まれた中央部を押圧する領域であり、端部領域R1aと端部領域R1bとに挟まれて配置されている。
この中央領域R2は、端部領域R1a,R1bと異なる傾斜角度に設定されている。具体的には、中央領域R2は、端部領域R1a,R1bの傾斜方向が正方向とすると、負方向に傾斜されており、その傾斜角度θ2が端部領域R1a,R1bの傾斜角度θ1よりも小さく設定されている。すなわち、中央領域R2は、図2において右側に向かうにつれて縮径している。
【0023】
一方、下側ロール3のクラウン形状は、上側ロール2のクラウン形状に対して上下左右に反転された形状に設定されている。すなわち、上側ロール2のクラウン形状と、下側ロール3のクラウン形状とは同一である。ただし、上側ロール2の端部領域R1aは図2において左端に位置しているが、下側ロール3の端部領域R1aは図2において右端に位置している。また、上側ロール2の端部領域R1bは図2において右端に位置しているが、下側ロール3の端部領域R1bは図2において左端に位置している。すなわち、下側ロール3は、上側ロール2に対して反転している。
この結果、下側ロール3が上側ロール2と平行に配置されていることから、下側ロール3のクラウン形状は、図2に示すように、上側ロール2のクラウン形状と同様に端部領域R1a,R1bと中央領域R2とによって構成されている。
【0024】
上述のように上側ロール2のクラウン形状と、下側ロール3のクラウン形状とを設定することによって、互いの端部領域R1a同士を遠ざけると共に互いの端部領域R1b同士を近づける方向に上側ロール2と下側ロール3とを回転軸方向に沿って反対方向に移動させた場合(図2において、上側ロール2を左側に移動させ、下側ロール3を右側に移動させた場合)には、互いの中央領域R2同士が遠のく(図3(a)参照)。この結果、ギャップにおいて、多条配列された塗布膜Tのうち最端のものを成型する領域のギャップ距離が小さくなり、その他の領域のギャップ距離が大きくなる(同図参照)。
【0025】
一方、互いの端部領域R1a同士を近づけると共に互いの端部領域R1b同士を遠のく方向に上側ロール2と下側ロール3とを回転軸方向に沿って反対方向に移動させた場合(図2において、上側ロール2を右側に移動させ、下側ロール3を左側に移動させた場合)には、互いの中央領域R2同士が近づく(図3(b)参照)。この結果、ギャップにおいて、条配列された塗布膜Tのうち最端のものを成型する領域のギャップ距離が大きくなり、その他の領域のギャップ距離が小さくなる(同図参照)。
【0026】
なお、本実施形態のロールプレス装置1においては、中央領域R2の傾斜角度θ2が端部領域R1a,R1bの傾斜角度θ1よりも小さく設定されているため、上側ロール2と下側ロール3とを反対方向に移動した場合におけるギャップ距離の変化率は、条配列された塗布膜Tのうち最端のものを成型する領域が他の領域よりも大きくなる。
【0027】
上側シフトビーム4は、上側ロール2の上方に配置されており、上側ロール2を軸支する軸受10が固定されると共に上側ロール2に沿って配設されている。
下側シフトビーム5は、下側ロール3の下方に配置されてり、下側ロール3を軸支する軸受11が固定されると共に下側ロール3に沿って配設されている。
【0028】
また、図1に示すように、上側ロール2及び下側ロール3の両端側には、対向配置される一対のフレーム12が固定されている。
そして、軸受10及び軸受11がフレーム12によって支持されており、これによって上側ロール2、下側ロール3、上側シフトビーム4及び下側シフトビーム5が支持されている。
なお、軸受10及び軸受11は、上側ロール2及び下側ロール3の回転軸方向に独立してスライド可能に支持されている。
【0029】
なお、図2に示すように、軸受10は、軸箱10Aを介して上側シフトビーム4に固定されており、上側ロール2に固定されるインナーレース10aと、軸箱10Aに固定されるアウターレース10bと、インナーレース10aとアウターレース10bとの間に介在されるコロ10cとを有している。
【0030】
また、図2に示すように、軸受11は、軸箱11Aを介して下側シフトビーム5に固定されており、下側ロール3に固定されるインナーレース11aと、軸箱11Aに固定されるアウターレース11bと、インナーレース11aとアウターレース11bとの間に介在されるコロ11cとを有している。
【0031】
ロールベンディング装置6は、上側ロール2あるいは下側ロール3の撓みを補正するためのものである。
そして、図2に示すようにロールベンディング装置6は、上側ロール2と下側ロール3との各々に対して設けられている。
【0032】
上側ロール2の撓みを補正するロールベンディング装置6は、上側シフトビーム4に固定されており、軸受6aによって上側ロール2の両端と接続されている。そして、ロールベンディング装置6は、軸受10によって支持された上側ロール2の両端を持ち上げるあるいは持ち下げることによって上側ロール2を湾曲させて撓みを補正する。
なお、図2に示すように、軸受6aは、軸箱6bを介して上側シフトビーム4に固定されており、上側ロール2に固定されるインナーレース6a1と、軸箱6bに固定されるアウターレース6a2と、インナーレース6a1とアウターレース6a2との間に介在されるコロ6a3とを有している。
【0033】
また、下側ロール3の撓みを補正するロールベンディング装置6は、下側シフトビーム5に固定されており、軸受6aによって上側ロール2の両端と接続されている。そして、ロールベンディング装置6は、軸受11によって支持された下側ロール3の両端を持ち上げるあるいは持ち下げることによって下側ロール3を湾曲させて撓みを補正する。
なお、図2に示すように、軸受6aは、軸箱6bを介して下側シフトビーム5に固定されており、下側ロール3に固定されるインナーレース6a1と、軸箱6bに固定されるアウターレース6a2と、インナーレース6a1とアウターレース6a2との間に介在されるコロ6a3とを有している。
【0034】
なお、図2に示すように、軸受10のインナーレース10aと上側ロール2のロール本体との間、及び、軸受10のインナーレース10aと軸受6aのインナーレース6a1との間には、位置決めスリーブ13が設置されている。
また、上側ロール2の端部には、軸受6aのインナーレース6a1を位置決めするための位置決めカップ14がボルト締めされている。
これらの位置決めスリーブ13と位置決めカップ14とによって、軸受10及び軸受6aと上側ロール2との位置決めがなされている。
【0035】
また、図2に示すように、軸受11のインナーレース11aと下側ロール3のロール本体との間、及び、軸受11のインナーレース11aと軸受6aのインナーレース6a1との間には、位置決めスリーブ15が設置されている。
また、下側ロール3の端部には、軸受6aのインナーレース6a1を位置決めするための位置決めカップ16がボルト締めされている。
これらの位置決めスリーブ15と位置決めカップ16とによって、軸受11及び軸受6aと下側ロール2との位置決めがなされている。
【0036】
ギャップ調節装置7は、上側ロール2と下側ロール3とのギャップ距離を調節するものであり、フレーム12に設置されている。
そして、ギャップ調節装置7は、下側シフトビーム5を昇降することによって、上側ロール2と下側ロール3とのギャップ距離を調節する。
【0037】
上側ロールシフトシリンダ8は、上側ロール2を回転軸方向に移動するものであり、フレーム12に固定され、上側シフトビーム4に接続されている。
この上側ロールシフトシリンダ8は、上側シフトビーム4を上側ロール3の回転軸方向に押すあるいは引くことによって上側ロール2を回転軸方向に移動する。
【0038】
下側ロールシフトシリンダ9は、下側ロール3を回転軸方向に移動するものであり、フレーム12に固定され、下側シフトビーム5に接続されている。
この下側ロールシフトシリンダ9は、下側シフトビーム5を下側ロール3の回転軸方向に押すあるいは引くことによって下側ロール3を回転軸方向に移動する。
【0039】
そして、本実施形態のロールプレス装置1では、本発明のロール移動手段が、上述の上側ロールシフトシリンダ8と下側ロールシフトシリンダ9とによって構成されている。
【0040】
また、本実施形態のロールプレス装置1は、不図示の制御装置を備えており、当該制御装置の制御の下、上側ロールシフトシリンダ8と下側ロールシフトシリンダ9によって、上側ロール2と下側ロール3とを回転軸と平行にかつ反対方向に移動する。
【0041】
このように構成された本実施形態のロールプレス装置1においては、上側ロール2と下側ロール3との間のギャップに、塗布膜Tが多条配列された極板母板Sが供給され、当該ギャップにおいて上側ロール2と下側ロール3とによって与えられる荷重のみで塗布膜Tが極板母板Sごとプレス加工される。
なお、上側ロール2及び下側ロール3の撓みはロールベンディング装置6によって補正される。また、ギャップ距離の全体的な調節は、ギャップ調節装置7によって行われる。
【0042】
ここで、ロールプレス装置1の上流側においては、極板母板Sの幅方向に配列された複数のノズルから極板母板Sに塗布膜Tが吐出されて塗布される。この際、全てのノズルに対して、1つの配管から塗布膜Tが供給されるため、複数のノズルのうち端に位置するノズルは、内圧が低くなり、吐出量が他のノズルよりも減少しやすい。
【0043】
そして、本実施形態のロールプレス装置1においては、塗布膜Tの吐出量の減少によって、極板母板S上に多条配列された塗布膜Tのうち、端部に位置する塗布膜Tの厚みが他の塗布膜Tの厚みよりも減少した場合には、制御装置の制御の下、上側ロール2と下側ロール3とを、互いの端部領域R1a同士を近づけると共に互いの端部領域R1b同士を遠ざけるように移動する(図3(b)参照)。
なお、制御装置は、ロールプレス装置1の下流に配置される厚み計測器の計測結果や、作業者によって操作される操作部からの指令に基づいて、塗布膜Tの厚み情報を取得する。
【0044】
また、全てのノズルから均一に塗布膜Tが吐出されている場合には、端部領域R1におけるギャップ距離と中央領域R2におけるギャップ距離とが均等となるように、上側ロール2と下側ロール3とを近づける。
【0045】
以上のような本実施形態のロールプレス装置1によれば、上側ロール2と下側ロール3とを回転軸方向に沿って反対方向に移動可能とされている。
このため、本実施形態のように上側ロール2と下側ロール3とのクラウン形状が直線でなければ、上側ロール2と下側ロール3とを反対方向に移動させることによって、回転軸方向におけるギャップ距離を場所によって変化させることができる。
したがって、本実施形態のロールプレス装置1によれば、極板母板S上の塗布膜Tの厚みにばらつきが生じた場合であっても、塗布膜Tを所望の厚みに成型可能とすることが可能となる。
【0046】
特に、本実施形態のロールプレス装置1においては、端部領域R1及び中央領域R2を有する上側ロール2及び下側ロール3によって、最も厚みのばらつきが生じやすい極板母板Sの端部に配置される塗布膜Tの厚みを柔軟に変化させることができる。
【0047】
また、本実施形態のロールプレス装置1においては、上側シフトビーム4を移動することによって上側ロール2を移動し、下側シフトビーム5を移動することによって下側ロール3を移動する。
上側ロール2及び下側ロール3に直接当接するアクチュエータをロール移動手段として用いることもできるが、このような場合には、当該上側ロール2及び下側ロール3を移動する際に、上側ロール2及び下側ロール3の一部に対して局所的に荷重が作用して上側ロール2と下側ロール3とに望まない変形を生じさせる可能性がある。
これに対して、上側シフトビーム4を移動することによって上側ロール2を移動し、下側シフトビーム5を移動することによって下側ロール3を移動することによって、上側ロール2及び下側ロール3に対して局所的に荷重が作用することを防ぎ、精度高くギャップ距離を調節することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態のロールプレス装置1は、上側ロール2と下側ロール3とによって与えられる荷重によって塗布膜Tをプレス加工している。このため、さらなる荷重を必要とする場合に設置されるバックアップロールを備える必要がなく、単純で安価なロールプレス装置となっている。
また、このような構成を採用することによって、上述のような上側シフトビーム4及び下側シフトビーム5を容易に設置することが可能となり、精度高くギャップ距離を調節することが可能となる。
【0049】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0050】
例えば、上記実施形態においては、極板母板S上に配置された塗布膜Tを成型する構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、極板母板S以外のシートに塗布膜T以外の成型対象を配置してプレス加工するプレスロール装置に適用することが可能である。
また、本発明は、シート上に何らかの塗布液を塗布して形成される塗布膜を成型するロールプレス装置に適用することが可能であり、例えば、太陽電池に用いられる電極材シートを製造する過程で用いることもできる。
【0051】
また、上記実施形態においては、塗布膜Tが極板母板Sの進行方向に一連とされている構成について説明した。
しかしながら、本発明における成型を行う塗布膜は、これに限定されるものではなく、塗布膜が極板母板Sの進行方向に複数に分割されていても良い。
【0052】
また、上記実施形態においては、上側ロール2及び下側ロール3のクラウン形状が、直線によって形成されている構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、図4に示すように、端部領域R1a,R1bと中央領域R2とが湾曲された構成を採用することも可能である。このようにロール2,3に丸みをつけると、ロール軸芯線のたわみによるロールギャップの板幅方向分布の変動を、ロール2,3のシフトによって補正制御しうる効果が大きくなる。
【符号の説明】
【0053】
1……ロールプレス装置、2……上側ロール(第1ロール)、3……下側ロール(第2ロール)、4……上側シフトビーム(第1シフトビーム)、5……下側シフトビーム(第2シフトビーム)、6……ロールベンディング装置、7……ギャップ調節装置、8……上側ロールシフトシリンダ(第1シリンダ)、9……下側ロールシフトシリンダ(第2シリンダ)、10,11……軸受、12……フレーム、R1……端部領域、R2……中央領域、S……極板母板(シート)、T……塗布膜(成型対象)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に対向配置される第1ロールと第2ロールとのギャップにおいてシート上に配置された成型対象を前記シートごとプレス加工するロールプレス装置であって、
前記第1ロール及び前記第2ロールのクラウン形状が互いの回転軸に対して傾斜する傾斜領域を有し、
前記第1ロールと前記第2ロールとを互いの回転軸方向に沿って反対方向に移動するロール移動手段を備えることを特徴とするロールプレス装置。
【請求項2】
前記ロール移動手段は、
前記第1ロールを軸支する軸受が固定されると共に前記第1ロールに沿って配設される第1シフトビームと、
前記第2ロールを軸支する軸受が固定されると共に前記第2ロールに沿って配設される第2シフトビームと、
前記第1シフトビームを前記第1ロールの回転軸方向に移動する第1シリンダと、
前記第2シフトビームを前記第2ロールの回転軸方向に移動する第2シリンダと
を備えることを特徴とする請求項1記載のロールプレス装置。
【請求項3】
前記第1ロールと前記第2ロールとによって与える荷重のみで前記成型対象をプレス加工することを特徴とする請求項1または2記載のロールプレス装置。
【請求項4】
前記第1ロールのクラウン形状は、前記シートの端部を押圧すると共に前記第1ロールの回転軸に対して傾斜された端部領域と、前記端部に挟まれた前記シートの中央部を押圧すると共に前記端部面領域と異なる傾斜角度に設定された中央領域とを有し、
前記第2ロールのクラウン形状は、前記第1ロールクラウン形状の上下左右に反転された形状に設定されている
ことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のロールプレス装置。
【請求項5】
前記シートの幅方向に対して前記成型対象が多条に複数配列される場合に、前記第1ロールの前記端部領域が複数配列された前記成型対象のうち最端の成型対象を押圧することを特徴とする請求項4記載のロールプレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−110928(P2012−110928A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261486(P2010−261486)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】